はじめに
このホームページは化学プラントで起こる事故や災害を少しでも減らしたいとの思いから立上げました。
石油化学製品を製造する企業に勤めて、50歳の時に爆発という事故を経験しました。ものすごい爆音がして、何があったのか一瞬わかりませんでした。事故が起こったとき、部下を全て呼び戻し点呼をした際、1人だけ点呼をしてもいなかったのです。まさかという思いが、頭をよぎりました。幸いにして、部下は無事だったのですが、現場の悲惨な状況を見て、もしかしたら部下の命を奪っていたかもしれないという気持ちを抱いたのがこの時でした。
それから約半年後の夏のある日に化学物質を充填したドラム缶が破裂するという事故が起こりました。幸いにしてけが人はなかったのですが、もしそのドラム缶が人に当たっていたらと思うとぞっとする思いでした。この時思ったのが、なぜ事故が起こるのだろうという思いでした。この頃から、化学プラントではなぜ事故が起こるのだろうかという疑問が頭をよぎり始めました。化学物質を取り扱う限り、事故のリスクは必ず存在するものの、事故を防ぐにはどうすればいいのだろうかと思い始めたのです。
サラリーマン生活の3/4を過ぎた頃、化学プラントの運転員の人材育成に携わる仕事をさせてもらうことが出来ました。団塊の世代が、大量に退職する2007年度問題への対応のため、大量に採用する若手化学プラント運転員を育成する専門組織「技術研修センター」を立ち上げ運営するという仕事を経験することができました。約6年間、人づくりという仕事にかかわるという貴重な経験を得ることが出来ました。
2012年技術研修センターの運営を後任の所長に移管して、数ヶ月も経たない時期に私の勤めていた企業のある工場で爆発事故が起きてしまいました。この事故で、私の教え子が命を落としてしまったのです。まだ、20代の若い運転員でした。
この事故を契機に、このような悲惨な事故を起こさない為には自分が少しでも役に立つことはないのだろうかと考え始めました。「事故はなぜ起こるのか」、「どうしたら防げるのか」という長年の研究成果を集大成して少しでも多くの人が事故に遭う機会を減らしたいと考えるようになったのです。企業を辞めた後も自分の持っている知識や経験を、一企業のためではなく広く化学産業に従事する次の世代の人達に役立てるような活動が出来ないかと考え始めたのがこの事故でした。
そんな思いを持っていたところ、岡山県倉敷のコンビナート地区にある山陽人材育成という所で私の構想に興味を持ってくれました。幸いなことに、2013年から化学プラントで「事故はなぜ起こるのか」という安全講座を開設して活動を始めることができました。その後も色々な機会を得て、化学企業や業界などで、事故や災害を防ぐ知恵を紹介する安全講演や講義活動を展開することが出来ました。
退職後は、長年勤めた千葉県にあるコンビナートの人達にも私の知っていることを伝えたいと思っていたところ、今度は千葉にある京葉臨海コンビナート人材育成講座というところで講義が出来ることになったのです。ここでは2つの講座を開設しました。私が調べた、過去50年分の数千件という事故事例から抽出した教訓を伝えるものです。
一つ目の講座は、実際に起こった化学プラントの事故事例を材題に「事故の原因」を切り口にした講座です。「物質危険性」、「人」、「設備」に分類して事故事例からの教訓を体系的に学べる講座です。
もう一の講座は、管理(マネージメント)という切り口の安全講座です。管理面での教訓を体系的に学ぶ講座です。設計管理、安全性評価、運転管理、設備管理、工事管理、教育・訓練、変更管理などに7つに分類して管理の失敗による事故事例を材題に管理のキーワードを学んでいく講座です。どちらの講座でも、図、イラストや写真などを取り込み効果的に学習できる手法を取り入れています。
今回このような活動を、少しでも多くの人に知ってもらいたいとの思いからこのホームページを開設してみました。まずはホームページを立ち上げ、今後は、化学プラントの事故や災害に関する私の思いなどを順次公開していきたいと思います。
化学産業の「貴重な事故の教訓」は、他の業種でも活用できるものも多く、今後は活動の範囲を異業種にも展開していきたいと考えています。
講演、安全教育、執筆や企業の安全活動などの相談を希望の方は、私の所にメールを下さい
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