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窒素でパージしたから安全と思うな

2023年6月新潟県にある化学工場で配管切断工事中に死亡事故が起きた 作業員1名が死亡したという
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/234041
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1140/20230614_denka_omi.pdf
事故には予兆があると言われるが、今年4月に入って何度も火災事故が起きていた
消防の立ち入り検査も受けていた。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/457858?display=1
数年前にも工事で事故を起こしている。https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/762/20200907_denka_omi.pdf
2023年6月起きた配管切断工事中の死亡事故の中間報告が先日企業から公表されていた
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1179/20231122_denka_omi.pdf 
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1181/20231122_denka_omi_interim_report.pdf
事故の要因を要約するとこうだ。乾燥すると爆発する危険な物質が配管内に残っていた
乾燥すると危険なことはわかっていたので,事前に水で湿らせて洗浄はした
しかし、水があると配管切断時液が噴き出すとリスクもあるので安全の為に窒素で再度パージした
誰でも,窒素でパージすれば安全と思い込む。ところが、この危険な物質は乾燥させると危険な状態になる物質だった
一度水で洗浄したから,湿らせて大丈夫と思い込んでいたようだ。しかし、配管内を窒素でパージしたことにより乾燥してしまった
配管を電動のこぎりのような道具で,切り始めたとき当然摩擦熱というのが発生する。100度ぐらいだったようだ
配管内に残っていた危険な物質は。100度ぐらいで発火する物質だった
火がついて配管内を炎が逸走した。配管の一部に、この危険な残渣が残っており炎で爆発的な現象が起こり配管が吹き飛んだ
これにより,近くにいた作業員が死亡したという事故だ
乾燥させると危険な状態になる物質が関係する事故だ。窒素でパージしたことで,乾燥状態になり爆発したのだ
窒素でパージしたから安全と思わないで欲しい。乾燥させると危険な物質も沢山あるからだ

 

2023年11月30日

最近のHAZOPに思うこと

HAZOPと言う安全性評価手法がある
日本で、この手法が使われ始めたのは1980年代だ。いまから40年前だ
1970年代は事故が多発した。当時はまだ、事故が起きてから、原因と対策を考える時代だった
しかし、事故が起きてからでは遅い。事故が起きる前に、事故が起こる可能性を事前評価して事故の発生を減らしたいと皆が考えていた
そこに現れたのが、HAZOPという安全性評価手法だ。イギリスで開発された、安全性評価手法だ
仕掛けは簡単だ。プラントというのは、ずれが事故を引き起こすという所に着目している
温度が変われば、プラントのトラブルにつながる。圧力の変化も、トラブルにつながる
つまり、プラントでずれが起こると事故になるということに着目した安全性評価手法だ
まず、ずれが起きたとき、どんな悪いことが起こるか考える。ヒヤリで済むのか、漏洩か火災か爆発するのかを考える
ずれから悪いことが起こるシナリオを考えるのだ。つぎに、この悪いことに対して現状の安全設備がどうなっているのかを考える
まずは、異常に気づけるかだ。わかりやすく言うと警報があるのか無いのかだ。警報すら無ければ異常に気づけない
次は、異常に気づいたら事故にならないように対処できるのかを考える。人で対応できるならそれで良し
しかし、時間的に余裕がないなど人で対応できなければインターロックなど機械的安全装置が必要だ
このように、現状の警報や安全設備で事故が起きないかをシステマチックに検証していくのがHAZOPだ
この確認作業を配管一本一本、機器毎に確認していく。手間もかかる作業だが抜けがなければプロセスを網羅的にチェックできる
最近のHAZOPでは、さらに深掘りしてリスクベースで評価する手法も追加されている
機器故障確率やミスの発生頻度までも考察させている。ものすごく手間も暇もかかる手法になってきている
HAZOP導入当初の目的は、ずれから最悪の事態を予測して現状の設備で事故が防げるのかを簡便に評価していたはずだ
それがいつの間にか、人のミスの発生頻度、機械の故障確率など確率論的要素が追加され、時間を要する評価手法になってきている
限られた時間の中で、安全性は評価するしかない。HAZOPはやればいいものでは無い
HAZOPと言う物は、深掘りできるかも重要な要素だ
ずれから起こる、最悪な事態を直感的に予測する能力を常に研ぎ澄ます方にも時間を使って欲しい

 

2023年11月25日

乾燥炉トラブルが社会に大きな影響を及ぼすことがある

車のバネを製造する工場で爆発事故が起きた
この事故でトヨタの工場が停止するなど大きな影響がでたという
トヨタは在庫を持たない主義だから影響は甚大だった
https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20231026_30863
トヨタの国内8工場13ラインが稼働を停止したとのことだ
このように、生産トラブルが起こると大きな影響を及ぼすこともあるのが今の現状だ
労災自体は軽症で済んだ乾燥炉の爆発事故ですが、顧客の事業継続に多大なる影響を与えてしまった事故だ
乾燥炉の爆発原因はこうだ。通常、燃焼室のバーナーで作り出した熱を乾燥炉へ送り込んでいる
ところが、燃焼室と乾燥炉の間を循環しているダクトのフィルターの目詰まりが起きてしまった
目詰まりの原因は、近くで粉塵が出るような設備の撤去工事が行われていたからだ
工事の粉塵で、フィルターが詰まり、結果として空気循環が悪化したことにより、
燃焼室内の温度が上がりすぎた。温度が高くなったことから、運転対応としてバーナー燃焼用の空気供給量を抑えたところ
燃焼室から不完全燃焼のガスが発生、乾燥炉内に流入、蓄積するような状況となった
その後、炉内温度が下がり過ぎたため、バーナーへの空気供給量を増やす対応をした
当然、一気に燃焼量が増え、バーナーの火が強まり、乾燥炉内に溜まっていた不燃ガスに到達し引火して一気に爆発したようだ
最初のきっかけは、隣接エリアでの撤去工事で発生した粉塵の影響でフィルターが目詰まりしたことだ
次に、炉の温度変化に対し運転操作がうまくいかず不完全燃焼から爆発に至ったというわけだ
火が消えていれば、安全に停まるようなインターロックは持っていたはずだ。つまり失火検知機能だ
不完全燃焼時の対応は、たぶん人に頼るところが大きかったのかも知れない
他社でも空気ダンパーの急変などで同様な事故も起きている
トラブルが起きたときは安全に停めた方が事故にはならない 生産優先だったのかも知れない
乾燥炉を持っている企業は参考にして欲しい事故事例だ

 

2023年11月19日

AIと言うツールとどうつきあうか

AIというツールに世の中関心が集まっている
コンピューターがなせる技だ
1980年代日本でもコンピューターが登場した。NECが8001という機種をパーソナルコンピューターとして販売し始めた
BASICという言語でプログラムをつくり色々なことをやり始めた
私の務めていた企業でも、化学工場のメンテナンス計画をプログラミングしたのを覚えている
記憶できる量も、フロッピーデスクで1Mバイトだったと覚えている
この頃化学工場でもDCSという道具を使い始めた。外部記憶容量はまだ20Mバイトだった気がする
そのころ人工知能という言葉がはやり始め、チャレンジしてみたがやれることに限界があった
自分の知っている情報の範囲内で答えを出す方式で、まだまだ連想して答えを出す方式ではなかった
つまり使える情報は自分の情報だけだったからだ
ところが昨今のように、クラウドなどのシステムができたことによる取り扱える情報量が無限になった
おまけに翻訳システムも進化したので、海外の情報も自動翻訳して知識の一端として使えるようになった
このクラウドというインターネットシステムが使えるからこそ昨今のAIが効果的に使えると考えていいのだろう
ただクラウドにある情報は、著作権の壁を越え勝手に使われているという現状がある
一度クラウドにあげてしまうと著作権はあるようで無いと思った方がいい
この法律の壁を越え無限の情報を手に入れられるシステムがあるから急速にAIが成り立っている
今の世の中膨大な情報を簡単に手に入れられ、推論に使えるからだ
ビックデーターも手に入れられれば、更に分析能力は高まる
自分の持っている情報を対価も得ずに盗み取られるのがAIでもある
知的財産を持つ人は、AIと上手につきあうことも考えて欲しい
巨大AI産業だけがどんどん利益を得ていく構図だ
個々人の持つ知識が正当に評価され、対価が得られるAIであって欲しい

 

2023年11月10日

配管撤去で場所を間違える事故

2016年10月にドイツにある大手化学会社BASFで死傷者の出る大きな事故が起こっている。
何人もの人が亡くなり、数十人もの負傷者が出た。
https://blog.knak.jp/2016/10/basf-ludwigshafen.html
https://www.dw.com/en/cause-of-deadly-explosion-at-basf-chemical-plant-in-ludwigshafen-remains-unclear/a-36072867
原因は、何本もの配管が通っているパイプラインで誤って生きている配管を切断して漏れた油に火が付き爆発した事故だ。
BASFといえば100年以上の歴史ある化学会社だ。アメリカのDUPONなどともならび安全管理には厳しい会社であるはずだ。
誤って生きている配管を切るという事故は、日本でも繰り返し繰り返し起きている。
私も、撤去工事で工事業者が生きているメタノール配管を切りヒヤリとしたことがある。
幸い着火はしなかったが、いまでも、もし火が付いていたらどうなったのだろうとおもう重大ヒヤリだ。
日本でも、工事は工事業者任せになっていないだろうか。
安易に現場の立ち会いを減らすとこのような事故はおこる。
発注者側の管理体制がどうなっていたのかを知りたいところだ。
ある英文記事を見ていたら、着火源は近くでさび取りをしていた火花という情報もある。
パイプラインの中で、ごく近い位置での同時並行作業が招いた事故なのかもしれない。
運転中の火花の出る工事は、しつこい位に現場管理を行うことだ。
いくら立派な工事計画が立てられていようとも、現場でそれが守られているかを管理していない限り事故は起こる。
安全担当者はしつこいくらいに現場を回ることだ。
海外で起きている事故の情報はほとんど手に入ることはない
参考までの2016年に海外で起こっている主要タンク事故を紹介している文献がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/55/3/55_121/_pdf
世界中でとんでもない事故が繰り返し起きているということだ
過去の事故事例に学んで欲しい

 

2023年11月06日
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