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事故の背景にある技術技能伝承の問題

技術伝承ほど難しいことは無い。人から人へ技術を伝承していくことはたやすいことでは無い。
会社員が企業で勤める期間は約40年だ。そこで得た知識や経験は次の世代に受け継いでいく必要がある。
会社に入ってくる若い人は約20歳前後で入社する。その人たちに技術を引き渡すわけだが、そんなに悠長に引き継ぐわけではない。
たぶん数年で引き継ぐことが求められる。つまり、40年かかった経験を数年で引き継ぐのだから、かなりの効率が求められる。
つまり、ポイントを絞り込んで伝えなければいけないのだが、人はそう簡単に自分の経験を要約することは出来無い。
あーでもない、こうでもないと後輩に言っている間に、数年が過ぎ去り技術が伝承されないのだ。
技術伝承の中で選別しなければいけないのは、100年後でも伝えなければならないものと今伝えなければいけないものを選別しておくことだ。
100年後に伝えなければいけないものは文字で書き残す必要がある。
文字に表すとものすごく時間がかかり効率は悪いが文字で伝える手法が必要だ。
今すぐに伝えなければいけないのは、言葉で話すのが効率がいい。
写真やイラストを添えると更に効果的だ。技術伝承とは最適な手法を選択して効率良く伝えることだ。
今の社会は,昔のように現場で働いているのは社員だけではない
派遣の人達も職場にはいる。請負という仕事の形態もある.現場を支える人の形態がそもそも変わっている
これらを考えて会社は技術伝承というものを考えなけれればいけないのだが、旧態依然の手法で技術伝承を行っている
これでは,仕事が回るはずがない 職場によっては,社員より派遣の人のが多い職場もある
派遣の人のが社員よりスキルが高くなっているのに旧態依然として社員だけの技術伝承にこだわっている企業がある
誰が技術を持っているのかを見極めて、技術伝承の仕組みを作って欲しい
人に技術有りなのだからだ
川崎消防が出している資料で,危険物事故の背景になる技術伝承に関するとってもいい資料がある
是非見て欲しい資料だ
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10970825/www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000066/66065/kikenbutujikokeikou.pdf

 

2024年07月25日

埋もれている安全やリスクに関するレポートは多い

インターネットは便利な道具だ 特に検索という機能があることは実に便利だ
だからといって目的の情報が,検索結果の一番先頭に来るとは限らない
検索結果の 最後の最後に,自分の欲しい情報がならんでいることもある
安全と言うことに関して,仕事を始めてかれこれ20年以上になる
色々な情報を目にしてきた
要約された素晴らしい文献に行き当たることもある
既に公開をやめてしまって今では見れなくなった情報も沢山ある
URLが変わって見れなくなることもある。企業がホームページを更新して見れなくなることもある
民間企業などが公開していた資料は時間が経つにつれ見れなくなるものも多い
銀行や保険会社は、リスクに関して膨大な情報を持っている
化学プラントの事故、労働災害などの情報を沢山収集している
保険料の算定には必要な情報だからだ
例えば銀泉という会社がある 保険関係の会社だ
ここでは、安全やリスクに関して非常に良いレポートを出している
最近は,新しいレポートを出すのはやめたが,過去の資料はまだ公開している
例えば2010年代の重大事故に関してこんなレポートを出している
https://ginsen-risk.com/narage/newsletter/rsr_m_20131225.pdf
労働災害に関してもこんないいレポートがある
https://www.ginsen-gr.co.jp/news_pdf/rsr_m_20140507.pdf
https://ginsen-risk.com/narage/newsletter/rsr_m_20121217.pdf
気候変動などではこんなレポートもある
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2023/05/GRS-RMR-May2023.pdf
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2022/10/GRS-RMR-October-2022.pdf
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2022/04/GRS-RMR-April-2022.pdf
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/09/GRS-RMR-september.pdf
以下のURLで他のレポートも見れる 興味があれば見ると良い
https://ginsen-risk.com/?page_id=9

 

2024年07月20日

実ガスで気密テストをしたときのリスクを甘く見るな

定修などで機器の気密テストをすることはあるはずだ。一般的には窒素ガスが使われる
窒素は不活性ガスだから、火災や爆発の恐れがないからだ
とはいえ、必ずしも気密テストでは窒素が使われることはない。空気や実プロセスで使われる、プロセスガスを使って気密テストをすることも多い
過去には高圧の空気や,酸素を使って事故が起きている。酸素は酸化剤だから,設備に残渣などがなこっていると酸素と反応して事故になるのだ
酸素は強力な酸化剤で危険と感じてくれないからだ。
機器の気密テストにプロセスガスを用いるときは、縁切りが重要だ。他の系統で窒素で気密テストをしていると,漏れ混むからだ
こんな事故事例がある。気密テストに使った可燃性ガスがプラントの窒素のラインに入り込んでしまった
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000085.html
可燃性ガスが漏れ混んだことにより、窒素は、必ずしも安全な100%窒素ではなくなった
事故が起きたのは、この窒素を使って窒素パージをしているときに事故が起きた
熱交換器のボルトを締めるため、インパクトレンチという工具を使ってボルトを締めていた
その時工具から、金属火花が発生していた
漏れ出ていた、可燃性ガスを含む窒素にこの金属火花で火が付いたのだ
誰もが窒素パージをしている機器なのだから火が付くとはおもわなかった
ところが、窒素に可燃性のプロセスガスが漏れ混んでいたから事故が起きたのだ
だれでも、窒素の配管があると100%の窒素だと思い込む
ところが、化学工場などでは配管が色々な所と接続されていて、思わぬところから可燃性ガスが漏れ混もことがある
この漏れ込みが事故を引き起こしている
短い定修期間で効率良く作業を済ませようとすると、窒素配管がプロセス機器へ予め接続されていてバルブ一つで縁切りされているからだ
バルブ一つで縁切りと言うことは、バルブが漏れればプロセス側から窒素配管に逆流して漏れるリスクはある
定修中は,窒素配管系への実ガスを用いた気密テストのガスが漏れ込むリスクはしっかり検証して欲しい
窒素の配管と安易にプロセス機器と常時接続をすることもリスクだ。バルブ一つで縁切りしていて漏れ混んだ事例もある

 

2024年07月15日

活性炭による事故--吸着熱

発熱が事故につながると言うことはご存じだろう。とはいえ発熱には色々なパターンがある。
反応熱というと誰でも事故に関係する熱だと理解するが、反応熱以外の発熱となると案外理解していないのが現状だ。
吸着熱などという熱も、事故につながるとは考えていない事故事例が多い。
発熱温度が500度近くもなるのだから、誰でも知っていて欲しいのだが現実ほとんど知られていないから繰り返し事故が起こっている。
私も、この吸着熱に関心を持ったのは今から約20年くらい前だ。
下関と言うところにある工場に赴任していたとき,活性炭による吸着工程があるプラントを担当していた。
活性炭には発熱があるとは聞いていたがたいしたことは無いと思っていた。
あるとき活性炭は産地によりその特性が大きく変わると聞かされた。
最初は吸着性能だと思っていたが、良く聞くと発熱温度がかなり変わると言うことがわかった。
さらに聞くととんでもない温度迄上がると言うことがわかったのだ。
一般的に物質の発火点は300度だ。吸着熱はこれ以上になるという。400度~800度位にもなるという
活性炭を使えば発火することもあるのだ。活性炭を通過するガスが、爆発混合気の濃度なら火災では無く爆発にもなる
活性炭は着火源と考えた方がいい
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/08/a0703_01.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200109.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000089.html
活性炭を扱う装置なら、温度計は必ずつけて欲しい。一定温度を超えたら警報が鳴るようにして欲しい
活性炭は新品に交換したときが危ない。活性度が上がり、吸着熱が上昇するからだ
夏場外気温が上がるときも危ない。屋外に置いておいて自然発火した事例も多い
活性炭などの吸着性物質は、脱臭などの工程で多く使われている
活性炭は着火源と思ってしっかり管理して欲しい

 

2024年07月10日

企業の安全監査に思う

私の以前勤めていた石油化学企業では、安全監査制度というのがあった
安全担当の役員が、各工場をまわって安全について監査する制度だ
半年に1回行われていた。当時2つの工場があったので、1年毎にどちらかの工場を監査するという制度だった
監査のキーワードは実に様々だ
プロセス固有の危険性の評価、設計部門の監査、保全部門の監査、研究部門の監査
物流部門の監査、世の中で起きた重大事故への対応状況など時代時代に応じてタイムリーに監査が行われていた
1997年にある企業と合併し、その後この監査制度は無くなった
工場の数が2工場から7工場になったこともあるのだろう 手間もかかるのでやめたのだろう
いい制度ではあったが、工場を計画的に監査するという制度は無くなった
監査をしなくなったこととの因果関係はわからないが、その後事故は起こっている
2012年岩国にある工場で大きな爆発死亡事故が起きた
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2013/pdf/130123_02.pdf
この事故は、酸化反応プラントだ。過酸化物という非常に温度に敏感な物質を扱う。冷却が不十分であれば、反応暴走で爆発する
事故のきっかけは、工場の蒸気が停まったことだ。本来化学工場であればまず重要な用役である蒸気が停まることはない
ところが、長年の省エネで蒸気の発生源が、冗長化されなくなり、単一の蒸気発生源に頼っていた
その装置が停止したことで、工場全体の蒸気が簡単に停まってしまったのだ
用役の信頼性が、時間をかけて落ちていたことが事故の背景にある
もし、安全監査を続けていれば、この工場の用役の信頼性についてはどこかで監査のメスがはいったかも知れない
昨今、外部機関による安全監査に頼ることが増えてきているようだが、企業自らが基幹となる部分には監査をして欲しい
プロセスそのものの危険性などは、なかなか外部機関では深掘りした監査は難しいはずだ
安全監査を外部に丸投げしないで欲しい

 

2024年07月06日
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