ブログ一覧

事故や災害に思う-約20年前の自分が経験した事故に思う

今から約20年以前の2001/4/23当時勤務していた工場で爆発事故が起きた
朝の10時頃だ ものすごい音がしてキノコ雲のような煙が見えた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012016.html
圧縮機の中で爆発が起きた事故だ
取り扱っていたのは支燃性のガスで、半導体の製作時に使われるガスだが、海外ではロケットの燃料にも使われる可燃性ガスだ
火がつけば爆発することもあるガスだ
このブログを始めたきっかけの事故でもある
化学物質の持つエネルギーのすごさをはじめて感じたのがこの事故だ
2009年にもこの工場で爆発事故があり、この時は爆発時の写真がある
https://blog.goo.ne.jp/kecha2/e/298b4c68506f900af25742d149b5a723
化学物質の持つエネルギ-を、会社にいて感じるのはいかに難しいかこの事故を経験して始めてわかった
化学物質の種類によっては、試験管ベースでも爆発すればすごいエネルギーだ
ドラム缶や化学工場のタンク規模になればとんでもないエネルギーだと気づいたのがこの事故だ
事故は経験しなければわからない 特にその化学物質のエネルギーのすごさは文字では表せない
事故の怖さを伝えるのは本当に難しい。なぜなら、事故の恐怖心を文字で伝えるのは難しいからだ
炎や爆風の衝撃音を文字では書き表せない 驚きという感情も、文字で表現するには難しい
技術伝承の難しいところはそこにある。事故を自ら経験した人にしか事故を伝えるのは難しいからだ
体全体で表現していかないと、経験した事故は表現は難しい
最近ある化学系企業の新入社員60名に労働災害や事故の話をした 新入社員教育の最終日だ
教えるではなく気づかせる工夫をかなり織り込んだ
これからも機会ある限り事故の悲惨さを伝えていきたい

 

2024年04月25日

反応器の冷却能力は十分か--事故や災害に思う-12年前の事故に思う

今から12年前の今日(2012/4/22)当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起き、まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔はそうでは無かったのかも知れないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう
反応器などの装置は、発熱量に対して冷却能力はどのくらいの安全率を見て設計しているのだろうか。
機械の設計をする際には、材料強度に対して3倍程度の安全率を見て設計すると言われる。JISなどで、安全率が規定されているからだ
化学工学の世界では、冷却能力の設計に当たって安全率という数値的な基準は企業の中で、きちんと決まっているのだろうか。
技術者の設計に任されているのだろうか。
化学プラントにある発熱を伴う装置については、冷却能力の安全率について深く考えてみる価値があるような気がする
冷却能力不足で起こる事故事例は多いからだ 

2024年04月20日

廃棄物置き場火災

スクラップ置き場が火災という記事が出ていた。廃棄物置き場での火災だ。
廃棄物に関する爆発や火災は繰り返し起きている。
https://www.youtube.com/watch?v=dmvKsNFMtCI
廃棄物倉庫、廃液タンク、廃液ドラム缶、廃液ピットなど「廃」という字がつくと、人間は管理が甘くなる。
「廃」というのは、いらないもの。つまり、たいしたものでは無いと人は思い込む癖がある。
たいしたものでは無いと、考えるとそれは安全であると感じてしまう。
むしろ「廃」という字がつくと「ハイ」リスクと考えなければいけない。
廃液タンクやドラム缶であれば混触で良く事故が起こる。
混ぜるからである。廃液ピットなどでは、近くで火気工事をしていたとき油が流れてきて火災になることがある。
廃棄物倉庫などであれば、積み重ねたことにより自然発火することがある。積み重ねると熱が逃げにくくなる。
廃棄物の中で蓄熱が起こることが多い。熱がため込まれると廃棄物の温度はどんどん上昇する。着火点を越えたら当然発火する。
今頃のように、急に気温が上がり始めた頃にこのような事故が起き始める。
サーモビュアーという赤外線カメラをお持ちなら、ちょっと現場で危ない所は見て欲しい。
赤く表示されているところがあればすぐに対策を取って欲しい。
http://www.hitd.jp/html/thermo_gallery08.html
温度の高いところを検知して異常に早く気づいて欲しい
たかが廃棄物置き場と甘く見ないで欲しい
蓄熱などによる自然発火も起こる。 本来混ぜてはいけない薬液での混触反応も留意点だ
廃棄物置き場を甘く見ないで欲しい
蓄熱発火の可能性が高い場所だ
「廃」という字を甘く見ないで欲しい

 

2024年04月14日

ダクト火災を甘く見るな

ダクト火災は世の中で繰り返し起こる事故だ
事故の原因は、ダクトの中の状態が見えないからだ。ダクト内に色々な物が堆積しているのに気づかず事故になることが多い
ダクトの中に堆積物が溜まり蓄熱し自然発火する事例だ
ゴムや樹脂ペレット、ペンキなどがたまり時間の経過ともに、炭化し発火点が下がり火が付くことも多い
今回こんなダクト爆発事故があるのを知ったので紹介しておく。
結論から言うとダクト内の粉塵爆発だ。
https://www.rodo.co.jp/news/84153/
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG18H1C_Y7A210C1CC0000/
当初の報道では、爆発したとの情報だけだったが、その後企業の発表した情報では排気ダクトが爆発と言うことがわかった
企業が発表している事故の中間報告では、推定原因が書かれている
https://www.hsk.co.jp/ja/ir/news/news770459198963925383/main/0/link/00.pdf
ダクト内に溜まって付着していたアルミの粉を含む固まりが、当日の強風であおられた。
次に、その固まりがダクト内にある排気ファンの所に落ちて砕かれ粉状になった。
何らかの着火源で、着火し粉塵爆発となったということだ。
最終報告書が企業から出されているが、着火源は特定できなかったという。
https://www.hsk.co.jp/ja/ir/news/news8996936175914980609/main/0/link/00.pdf
最終報告書には、着火源の推定が3つ書かれている。

① 塗料乾固物と排気ファン衝突衝撃による着火
② 塗装ブース内非防爆非防塵リミットスイッチ内における着火
③ 排気ファン破損によるケーシングとの摩擦発熱による着火
対策も書かれているが、以下の記述は参考になる
(1)塗料乾固物の堆積/落下防止
① 水カーテン方式ブースの採用
② 排気ダクト点検、清掃の容易化

ダクト事故防止の基本はとにかく、ダクト内を容易に点検できる構造で設計することだ
その上で、定期的に点検して内部に付着物を残さないことだ
ダクトは日常の維持管理が大切だ

 

2024年04月11日

設備の老朽化事故を考える

日本で経済が急激に発展し始めたのは、1960年代だ。
この頃、日本では大型インフラ産業である製鉄所や製油所が造られた。
これらの、インフラ設備も手直ししながら使ってきたが、建設後約40年目に当たる2000年代から大きな事故が起き始めた。
2003年8月にエクソンモービル名古屋油槽所で火災が起きている。
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
http://tank-accident.blogspot.com/2016/04/2003.html
老朽化したタンクの開放準備中の火災だ。6名の死亡事故だ。省人化が進む中での事故だ。
その翌月には、名古屋である製鉄所でガスタンクの事故が起きている。
1960年代に造られたタンクの老朽化が原因だ。
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
省人化によりタンクの検査の専門家をおかず、単なる運転員の見回りだけで対応させていたという事故だ
老朽化すればするほど検査にも手をかけなければいけないのだが現実は安全を無視して使用していた事故だ
技術革新の激しい業態であれば設備は10年も使えばお払い箱になる。つまり、老朽化という問題は起こらない。
設備は、次から次へと新しくなるからだ。
ところが、石油や鉄鋼などは技術的には確立された産業であるから設備は長く使える。
設備は、しっかりと維持管理すれば長く使うこともできる。
しかし、日本では1989年にバブルが崩壊し企業にお金が無くなってしまう状況が発生した。
この結果、老朽化が進むものの、補修費は削減される一方で設備にお金はかけられなかった。
コストダウンにむけて、省力化、合理化、人員削減などが急速に進んでいったのが当時の状況だ。
つまり、老朽化に歯止めがかからなくなったのだ。
結果として、設備の管理もおろそかになり大きな事故が起きた。
2003年に厚生労働省から出された通達がある。
http://www.joshrc.org/files/20031225-001.pdf
当時の重大事故の背景がわかる。
それから約20年が経ち、老朽化の事故は後を絶たない
老朽化が大きな事故につながることもあることを知って欲しい

 

2024年04月05日
» 続きを読む