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反応器の冷却能力は十分か--事故や災害に思う-12年前の事故に思う

今から12年前の今日(2012/4/22)当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起き、まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔はそうでは無かったのかも知れないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう
反応器などの装置は、発熱量に対して冷却能力はどのくらいの安全率を見て設計しているのだろうか。
機械の設計をする際には、材料強度に対して3倍程度の安全率を見て設計すると言われる。JISなどで、安全率が規定されているからだ
化学工学の世界では、冷却能力の設計に当たって安全率という数値的な基準は企業の中で、きちんと決まっているのだろうか。
技術者の設計に任されているのだろうか。
化学プラントにある発熱を伴う装置については、冷却能力の安全率について深く考えてみる価値があるような気がする
冷却能力不足で起こる事故事例は多いからだ 

2024年04月20日

廃棄物置き場火災

スクラップ置き場が火災という記事が出ていた。廃棄物置き場での火災だ。
廃棄物に関する爆発や火災は繰り返し起きている。
https://www.youtube.com/watch?v=dmvKsNFMtCI
廃棄物倉庫、廃液タンク、廃液ドラム缶、廃液ピットなど「廃」という字がつくと、人間は管理が甘くなる。
「廃」というのは、いらないもの。つまり、たいしたものでは無いと人は思い込む癖がある。
たいしたものでは無いと、考えるとそれは安全であると感じてしまう。
むしろ「廃」という字がつくと「ハイ」リスクと考えなければいけない。
廃液タンクやドラム缶であれば混触で良く事故が起こる。
混ぜるからである。廃液ピットなどでは、近くで火気工事をしていたとき油が流れてきて火災になることがある。
廃棄物倉庫などであれば、積み重ねたことにより自然発火することがある。積み重ねると熱が逃げにくくなる。
廃棄物の中で蓄熱が起こることが多い。熱がため込まれると廃棄物の温度はどんどん上昇する。着火点を越えたら当然発火する。
今頃のように、急に気温が上がり始めた頃にこのような事故が起き始める。
サーモビュアーという赤外線カメラをお持ちなら、ちょっと現場で危ない所は見て欲しい。
赤く表示されているところがあればすぐに対策を取って欲しい。
http://www.hitd.jp/html/thermo_gallery08.html
温度の高いところを検知して異常に早く気づいて欲しい
たかが廃棄物置き場と甘く見ないで欲しい
蓄熱などによる自然発火も起こる。 本来混ぜてはいけない薬液での混触反応も留意点だ
廃棄物置き場を甘く見ないで欲しい
蓄熱発火の可能性が高い場所だ
「廃」という字を甘く見ないで欲しい

 

2024年04月14日

ダクト火災を甘く見るな

ダクト火災は世の中で繰り返し起こる事故だ
事故の原因は、ダクトの中の状態が見えないからだ。ダクト内に色々な物が堆積しているのに気づかず事故になることが多い
ダクトの中に堆積物が溜まり蓄熱し自然発火する事例だ
ゴムや樹脂ペレット、ペンキなどがたまり時間の経過ともに、炭化し発火点が下がり火が付くことも多い
今回こんなダクト爆発事故があるのを知ったので紹介しておく。
結論から言うとダクト内の粉塵爆発だ。
https://www.rodo.co.jp/news/84153/
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG18H1C_Y7A210C1CC0000/
当初の報道では、爆発したとの情報だけだったが、その後企業の発表した情報では排気ダクトが爆発と言うことがわかった
企業が発表している事故の中間報告では、推定原因が書かれている
https://www.hsk.co.jp/ja/ir/news/news770459198963925383/main/0/link/00.pdf
ダクト内に溜まって付着していたアルミの粉を含む固まりが、当日の強風であおられた。
次に、その固まりがダクト内にある排気ファンの所に落ちて砕かれ粉状になった。
何らかの着火源で、着火し粉塵爆発となったということだ。
最終報告書が企業から出されているが、着火源は特定できなかったという。
https://www.hsk.co.jp/ja/ir/news/news8996936175914980609/main/0/link/00.pdf
最終報告書には、着火源の推定が3つ書かれている。

① 塗料乾固物と排気ファン衝突衝撃による着火
② 塗装ブース内非防爆非防塵リミットスイッチ内における着火
③ 排気ファン破損によるケーシングとの摩擦発熱による着火
対策も書かれているが、以下の記述は参考になる
(1)塗料乾固物の堆積/落下防止
① 水カーテン方式ブースの採用
② 排気ダクト点検、清掃の容易化

ダクト事故防止の基本はとにかく、ダクト内を容易に点検できる構造で設計することだ
その上で、定期的に点検して内部に付着物を残さないことだ
ダクトは日常の維持管理が大切だ

 

2024年04月11日

設備の老朽化事故を考える

日本で経済が急激に発展し始めたのは、1960年代だ。
この頃、日本では大型インフラ産業である製鉄所や製油所が造られた。
これらの、インフラ設備も手直ししながら使ってきたが、建設後約40年目に当たる2000年代から大きな事故が起き始めた。
2003年8月にエクソンモービル名古屋油槽所で火災が起きている。
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
http://tank-accident.blogspot.com/2016/04/2003.html
老朽化したタンクの開放準備中の火災だ。6名の死亡事故だ。省人化が進む中での事故だ。
その翌月には、名古屋である製鉄所でガスタンクの事故が起きている。
1960年代に造られたタンクの老朽化が原因だ。
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
省人化によりタンクの検査の専門家をおかず、単なる運転員の見回りだけで対応させていたという事故だ
老朽化すればするほど検査にも手をかけなければいけないのだが現実は安全を無視して使用していた事故だ
技術革新の激しい業態であれば設備は10年も使えばお払い箱になる。つまり、老朽化という問題は起こらない。
設備は、次から次へと新しくなるからだ。
ところが、石油や鉄鋼などは技術的には確立された産業であるから設備は長く使える。
設備は、しっかりと維持管理すれば長く使うこともできる。
しかし、日本では1989年にバブルが崩壊し企業にお金が無くなってしまう状況が発生した。
この結果、老朽化が進むものの、補修費は削減される一方で設備にお金はかけられなかった。
コストダウンにむけて、省力化、合理化、人員削減などが急速に進んでいったのが当時の状況だ。
つまり、老朽化に歯止めがかからなくなったのだ。
結果として、設備の管理もおろそかになり大きな事故が起きた。
2003年に厚生労働省から出された通達がある。
http://www.joshrc.org/files/20031225-001.pdf
当時の重大事故の背景がわかる。
それから約20年が経ち、老朽化の事故は後を絶たない
老朽化が大きな事故につながることもあることを知って欲しい

 

2024年04月05日

重大事故のキーワード 生産優先、ルール無視と休日夜間

多くの事故を見てくると、その事故本質的な原因を表す事故のキーワードがある
1991/12/22の日曜日に大阪で起きた死者8人の死亡重大事故を今回取り上げる
https://gcoe.tus-fire.com/archive_cms/kobayashi-k/cms/wp-content/uploads/2010/02/3ea56a8dae51cb3a9f18f3f5b77a24f3.pdf
この工場はケーキやチョコレートなどの食用油を作る工場だ。事故はクリスマスの数日前だから、その食用油を大量に作っていた
ところが、突然機械が停止した。急いで機械を修理しなければ、生産上重大な問題を起こすと現場の人は考えたのだろう
生産優先の気持ちが働いてしまったのだ
本来、装置の中に入るのは3時間以上パージしなければいけないのに、1時間で装置の中に入り作業を始めた
これが一つ目の過ちだ。ルールを無視して生産を優先させたのだ
二つ目の過ちは、ガス検知もしなかったことだ。装置では、引火点-22℃のヘキサンという物質を使っていた
引火点が低いから、何か着火源があれば簡単に火が付く
事故が起きた日は、日曜日だった。休日だから、工場には管理者はいなかった
管理者がいればどこかでブレーキがかかったのかも知れないが、残念ながらブレーキはかからなかった
装置の中に10人ほど入り作業を始めたとたん爆発火災が起こり多くの人が被災した事故だ
この事故から見える事故のキーワードは、「生産優先」、「ルール無視」、「休日夜間は管理体制が弱い」だ
この企業は事故が起こる前から何度も事故が起きていた。
火気工事での着火事故が何度も起こっていることを見ると前からガス検知で安全を再確認する文化は根ずいていなかったように思える
事故後労基から事故防止の通達がでている。通達文だけを見ると単調だが意図はこうだ
一つ目は作業規程をしっかり作れだ。作業方法や手順は文字に書いて見える化しろと言うことだ
その上で教育や訓練もしろといっている。文字に書かれていても、その背景を説明しておかないと人は納得しないからだ
人は納得しないとルールを守らないと考えておくべきだ。符落ちさせることが事故防止につながる
人は頭でわかってもなかなか行動には移せない。頭と体が一体で動くようにしておく必要がある。訓練をしておけば,頭と体が動くようになる
次に管理体制をしっかりせよといっている。人が集まると指揮者がいる。指揮者を決めて管理しなければ烏合の衆になると言うことだ
次は、工事前の最後の砦である可燃物の濃度測定を行えとしている。当たり前のことだが、これが徹底せず事故が繰り返し起こっている
最後は、安全意識の高揚を図れといっている
これは企業トップが安全の旗を振らなければ事故は防げ無いと言っているのだ
安全に関しては,企業トップの関与が強く求められている

 

2024年03月30日

事故を考える-- 過去の知見や事故情報の有効活用

日本で化学産業が始まったのは約100年前だ
当時の事故の詳細記録などは公開されてもいないし残ってもいない
わずかながら残っているのは、企業の社史に記載されている事故くらいのものだ
しかも死亡事故など大きな事故だけだ。内容などはわからない
事故データーベースなどで記録が残ってはいるが、件名程度で詳細はわからない
1958年に日本ではコンビナートが動き始めた 1970年代くらいから事故の記録が残り始めた
日本では高度経済成長が終わり、大量生産が始まった時代だ。大量生産が始まれば、装置はどんどん大型化する
人は大型化について行けたかというと、そうはいかなかった
結局装置の大型化に人はついて行けず、1970年は事故が多発した
事故は社会や経済が変化するから起こる
1980年代には、大量生産が終わり少量高付加価値の生産形態に移行した
少量だが危険度の高い物質も現れ始めた。それを、制御できずに事故も頻発した
1990年代は不景気だ。2010年頃まで日本経済は不景気が続いた
この間色々な社会変革が起こった
企業は金が無いから、業務の下請け化を推進した
今まで社員がやって来た業務を下請けに転換した
下請けが社員と同じスキルを持っているわけがない。結果として、事故は増える形となる
景気が悪いと企業は人を採用しない
人を採用しないと技術伝承が続かない。そんな時代が今に続いてきた
2000年中頃からは、事故や災害を多く経験してきた、人達が退職し始めた
2010年代には、事故や災害を経験してきた団塊の世代と呼ばれる人達が会社を去ってしまった
2020年代 なんとか企業は生き延びている
過去の事故や災害に関する知的財産は企業に沢山あるはずだ
Aiなどの最新技術を用いて有効活用できないだろうか
過去の知見をAIなどの技術を使って、高速で必要な情報を抽出し役立つようにして欲しい

 

2024年03月25日

人に技術有り

工場や研究所で事故が起こるのは世代交代が関係している
経験を積んだ人が退職すると、しばらくして大きな事故が起こることが多い
人が仕事で経験して得た知識が、会社に残っているかというとそうでは無い
作業手順書や技術標準に残されているように思えるが100%ではない
文字に書ける物が記録されただけで、文字に書き表せにくい暗黙知は企業には残らない
文字に書けるのは人の経験のどのくらいかはわからないが、1割にも満たないのではないだろうか
最近、アメリカのボーイングという飛行機会社の飛行機がトラブルが多いという記事があった
製造段階や検査段階でのミスが事故につながっている
この原因に、コロナ禍でのベテラン従業員の大量退職が関係しているとの記事を読んだ
コロナの時は、皆さん旅行にも行かず飛行機も生産しなかった
仕事がないので飛行機会社は大量の従業員を解雇した
若者もベテランも解雇された
人が辞めれば、企業には技術は残らない
コロナも終わり、再び景気が戻り人を採用したがベテラン従業員は戻って来なかった
ボーイングという会社はアメリカの西海岸にある
多くの優良企業もそこには存在する
ベテラン従業員を雇うにはそれなりの給与を払う必要がある
ところが、競合企業の方が給与も高くそこに人は流れた
結果として、ボーイングにはベテラン従業員の多くは戻って来なかった
その穴を埋めたのは、経験も無い若手従業員だ
飛行機産業は、自動車産業と違いほとんどが手作業だ
やはりそこには経験がいる
経験の無い若い従業員への教育にも手がまわらなかったののだろう
結果として製造や検査のミスを見抜けなかったという
昨今転職で人を補充する時代に変わってきている
そうは言っても職種によっては、時間をかけて技術伝承を必要とするものがある
やはり、IOTを進めていくに当たっても人に技術有りを考えて欲しい

 

2024年03月20日

安全弁作動時の異常振動を甘く見るな--サポートの大切さ

安全弁の「安全」という文字にだまされないで欲しい
安全という名前が付いているから事故は起きないかというとそうでは無い
安全弁は作動しなければ、その危険性はわからない
安全弁は作動したときに、激しい振動が起こることがある
高圧のガスなどが安全弁から大量に噴き出すのだから、反動で激しく安全弁や廻りの配管が振動する
配管サポートがしっかりしていなかったために、振動を吸収できずに何度も事故が起こっている
こんな事故事例がある。ポンプの出口側にある調節弁が突然全閉になった
原因は、計装設備の故障だ
調節弁ポジショナー内部の電気信号配線が切れてしまったからだ
ポンプは、出口側を締め切られると、閉めきり運転状態になり圧力が急上昇するという問題点がある
ポンプの出口側に安全弁があったことから、その安全弁が吹いてしまった
安全弁が吹き始めたことで、安全弁は激しく振動し続けた
安全弁廻りの配管サポートがしっかりとなされていなかったので異常振動が起きていた
結果として配管に亀裂が発生し、可燃物が漏れてしまったという事故だ
安全弁が吹く原因は何であれ、安全弁は何らかの原因で吹くことがある
その時の異常振動を考えて欲しい
こんな事故事例もある
安全弁は取り外して、定期的に点検することがある
取り外した際、配管サポートが邪魔だったので一時的にサポートを取り外した
ところが、安全弁を復旧する際このサポートを取り付けるのを忘れた
現場の運転員も、サポートが復旧されていないことを確認していなかった
あるとき安全弁が吹いた際、異常振動を起こし事故になった
安全弁のサポートには敏感になって欲しい

 

2024年03月15日

東北大震災から13年目に思う

忘れもしない午後2時46分。11年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、勤務していた技術研修センターという所にいた
勤めていた技術研修センターは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/training/index.htm 
当日、朝からこの技術研修センターで各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
安全工学会の主催だ 午前中も順調に進み午後からも安全体験が始まった
1時間半ほどの体験が終わり皆さんが休憩をしていたところだったと思うが、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた 地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 私の場所から30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった 翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
地震への備えは不可欠だ 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
東北大震災の余震と言われる震度6の地震もその後起きている。千葉県にあるコンビナートでも影響を受け、停電で化学プラントが停止した
当時の福島原子力発電所の原子炉が破壊しなかったのは奇蹟だ
化学プラントも巨大なエネルギーの固まりだ
最悪の事態を考え行動することが常に求められている。地震への備えをこつこつと行っていって欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/6/50_410/_pdf/-char/ja

 

2024年03月11日

残渣を甘く見るな

残渣とは、油かすのようなものを言う。
化学工場であれば、タンクの底に溜まったりする油かすだ。
この残渣が原因で多くの事故が起きているが余り知られていないのが実情だ。
残渣という言葉から連想するのは、残りかすでそれほど危ないものではないと思うのだろう。
ところが、残渣が原因で起こっている重大事故は沢山ある。
残渣の種類によっては蓄熱して自然発火する事故もある
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101094
たかが油かすと思わないことだ
残渣が原因で「詰まったり」することもある。これが事故の引き金になる。
タンクの排気弁が残渣で詰まりタンクが膨らむ事故も多い
排気弁は定期的につまりの点検が必要だ
残渣が原因でバルブなどが詰まると、液が抜き出せなくなる。
針金などでバルブをつついていて、突然液が噴き出し事故になるケースは多い。
次に残渣は、残渣の中にガス分が含まれていることで起こる事故事例も多い。
タンクなどに溜まった残渣を取り除く作業で起こる事故のパターンだ。
作業を始める前にタンク内をガス検しても、残渣の中にあるガスは測定できない。残渣はかき回さないとガスがでて来ないからだ。
それで、ガス検異常なしで、簡単に工事の許可が出てしまう。
ところが、残渣をスコップなどで取り出す作業を始めると残渣の中に隠れていた可燃性ガス分などが出てくる。
それに気づかず、作業を進めていると突然残渣が着火する事故だ。
逃げ遅れて大やけどをして死亡する事故が昔から起きている。
もう一つの事故のパターンは、残渣の自然発火だ。
残渣というものは混合物だ。発火点の低いものから高いものまで色々な物質が混在している。
残渣は油の固まりだから、固まりの中で発熱する物質があれば当然蓄熱する。
しばらくすると、発火点の低い物質に火がつき火災となるのだ。
こんな事故もあるので参考にして欲しい
反応副生物が蒸留残渣に蓄積して爆発した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000093.html

 

2024年03月05日

OFF-OJTをうまく進めるには

人材育成や技術伝承の用語に「Off-JT」という用語がある
OJT(On The Job Training)に対して現場を離れて、人を育てる手法だ。
会議室に集めて集合教育をするのもOFF-JT教育だ
上手に行うためには何点か注意点がある
OFF-JTの善し悪しは、先生の質と、教材の善し悪しで決まってくる
誰でも先生になれるわけではない。教える技術と、話す技術が必要だ
難しことを易しく説明できなければ教育の効果は上がらない。たとえ話を、さらに理解させる手法も使わないと効果が上がらない。
教えるとは相手にわかってもらうことだ。相手の目や表情を見て理解しているか探る必要もある
話す技術も必要だ。単調な話は眠くなる。抑揚を持たせたり、大事なところを繰り返し表現を変えて話すことも必要だ。
話をするとき、最初の5分が大切だと言われる
話しに関心を持たせるには、最初が肝心と言うことだ。
話しに興味を持たなければ、人はその後テンションが落ちていく。結果として話は聞いてくれないことになる。
次に、教材の善し悪しでOFF-JTの質も変わる
文字ばかりのパワーポイントもあきられる。例えば、パワーポイントをワードのように文字を沢山書く人の資料だ。
ポイントとなるキーワードを書いて、後は言葉で補足するのだ
文字数が多すぎると、受講者は文字を追うことばかりに力を使い、肝心の先生の話を聞く余力が無くなるからだ
写真やイラストを使うのも有効だ。写真やイラストは、見せるだけで数百文字分の情報がイメージとして伝えられるからだ
イラストというのは特に有効だ。強調したいところを、わざと強調して描けば更に効果が上がる
動画を使えば更に効果が上がる
文字よりも映像は多くの情報が含まれているからだ
教材作りにも力を入れて欲しい
最近は無料イラストもふんだんにある
日頃からこつこつとイラストを集め効果的な教材作りをして欲しい

 

2024年02月25日

OJTをうまく進めるには

OJTをうまく進めるにはコツがいる
人材育成や技術伝承の用語に「OJT」という用語がある
On The Job Trainingを略した用語だ 現場で先輩などが新人を直接指導して人を育てる手法だ
現場で先輩が後輩に直接会話をしながら技術や技能を伝えていく
非常にいい方法だが上手に行うためには何点か注意点がある
OJTをやると時には、先生が生徒の目線で考えて話ができるかがポイントだ
相手はわかるだろうと先生が考えてしまって、相手の理解度も考慮しないでやみくもにOJTを進めると生徒が消化不良を起こす
結果、中途半端な理解のまま時間だけが経っていくことになる。かならず、相手が理解できたかを確認しながら前に進むこともポイントだ
生徒からの返ってきた答えで,OJTの理解の度合いはわかるはずだ 理解度をしっかり先生が把握しなければOJTはうまくいかない
もう一つは,計画を立ててOJT教育をすることだ。教えることに日々「関連性」を持たせて,順序立てて教えていくことだ
バラバラの知識を与えるより、関連性を持たせながら継続的にトレーニングをした方が効率が上がるからだ
その為には,先生は教えることをリストアップし計画表を作って実施していく必要がある
思いつきで教育をしていてはだめだと言うことだ
次に、「なぜ」を説明することだ
教える目的は何かを説明して、なぜこの知識が必要かと説明してあげると良い
もう一つ、OJTの先生になる人は「教える技術」を学んで欲しい
教えるにも技術がある。話し方にも技術がある やみくもに話しても相手が理解しなければ教えたことにはならない
企業は、OJTの講師の人達にも事前に教育する必要がある 誰でも先生になれるわけではない
先生になってもらうには、最低限教える技術というのを企業は教育する必要がある
これを怠って、単にOJTをやっているのではうまく人は育たない
教える技術に関しては、いろいろな書籍なども販売されている
講演会などもある
OJTで教える立場にある先生は教える技術をまず身につけて欲しい
OJTをうまく進めるには、まず先生に教える知識のスキルアップが大切だ

 

2024年02月20日

仕切り板操作作業で起こる事故

仕切り板で起こる事故がある。
安全確保のため仕切り板を挿入するのであるが、挿入や取り外しで事故が起きては何にもならない。
一番単純なのは、仕切り板の挿入箇所を間違えるだ。うっかりでは済まされない。
計画段階でのミスや現場作業時でミスで多くの事故が起きている。
生きているラインで誤ってフランジをゆるめ始めてしまったなどという事例もある。
完全に脱圧や脱液が終わっていないのに作業者がフランジをゆるめ始め液が噴き出してきたという事例もある。
工事の着工許可も出ていないのに作業員が作業を始めてしまった事例だ。
現場説明を現地ですると、それで許可が出たと勘違いする協力会社員もいる。
社員が現場を離れたとたんもう作業を開始してこのような事故が起こることがある。
正式の仕切り板を使わず、強度の無いブリキ板を使って起こった事故事例もある。
1970年代当時はそのような事故が何件か続いた。
仕切り板を抜き取っていたときに摩擦熱で可燃物が着火した事例もある。
わずかに残っていた可燃性ガスに火がついたのだ。
仕切り板を抜き取るときはゆっくりと摩擦や火花が起こらないようにする配慮も必要だ
仕切り板挿入時誤って近くのボール弁のコックに手が触れ弁が突然開き液が噴き出したという事例もある。
ボール弁はハンドル廻しを外しておかないとこんな事故になる。
仕切り板を抜くとき圧があるのにまだラインは使用されていないと思い込み事故になった事例もあるhttps://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2015-200.pdf
ベテラン運転員だからわかるだろうと、情報を与えなかったことにより起きた事故だ
たかが仕切り板作業と思わないことだ。

 

2024年02月15日

HAZOPでは先入観を取り払え

HAZOPというのは1970年代にイギリスに始まった安全性評価の手法だ
日本に伝わったのは、10年後の1980年代だ
私の勤めていた会社でこの事故がきっかけで、HAZOPを始めるようになった。こんな1983/3/5の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000148.html
廃液タンクの爆発事故だ。1970年頃に新設されたタンクで、窒素シールも設置されていた
窒素シールがしてあれば誰も爆発が起こるとは考えていなかった
廃液だから危険ではないという先入観もあったようだ
このタンクは、プロセスで使われるトルエンという溶剤を、循環しながら一時的に貯めるタンクだ
通常運転がうまくいっていれば、タンクにはトルエンと、水しか入ってこない
ところが運転中に二つのトラブルが同時に起きた
本来入るはずのない、過酸化水素という物質がタンクに入り込んだ
その後、運転操作でミスをして苛性ソ-ダを含んだアルカリ性の水を入れてしまった
過酸化水素はアルカリと混ざると混触反応を起こす。混触反応では、大量の酸素を発生させる
過酸化水素は、アルカリだと、酸素を発生するという混触危険性を理解していなかったのだ
酸素は、廃液中に含まれる過酸化物である「過酸化水素」とタンク内のアルカリ液とで発生した
廃液量が多く、しかも廃液から大量の酸素が発生し爆発混合気ができて爆発した事故だ
たかが廃液タンクだと思わないことだ
窒素シールがあるから大丈夫だと思い込まないで欲しい
現場の人達が知識や経験が無いと、事故の予見性を見抜くのは難しい
安全性評価をすれば事故を防げるわけではない。危険なことを見抜くには豊富な事故事例を知っておく必要がある
リスクを見抜けるには、事故に関係するキーワードが直感的に頭の中に出て来ないと難しい
この事故をHAZOPで解析してもらうと多くの人は、タンクに窒素シールがあるから大丈夫だという先入観を持つはずだ
廃液だからそれほど危険ではないという、先入観を持つ人もいる
HAZOPは先入観を持たないことだ
最悪の事態を常に考えなければ、事故は防げ無い
安全性評価はそんな甘い物では無い

 

2024年02月10日

ヒヤリハット事例を有効に活用するには

ヒヤリ事故というのがある
事故には至らなかったというトラブル事例だ
ヒヤリハット事例は有効だということで多くの企業で、ヒヤリハット事例を活用している
集めるだけで有効活用できているかというとそうではない気がする
確かに、このヒヤリ事例は事故にはならなかったという貴重な情報の宝庫ではある
災害になるのをくい止めた事例もあるはずだ
装置の故障であれば、故障時の応急操作が適切だったはずだ 咄嗟の対応かもしれないがどう対応したかは貴重な情報だ
何故災害にならなかったかと言えば,ほとんどの場合事故回避の流れからわかるように,トラブル時の応急操作が適切であったからだろう
とはいえ、企業で本当にヒヤリハット事例がうまく利用されているかというと疑問点が多い
ヒヤリハット報告書の書式に問題点がある 単純に事実を書かせているのであれば、それは事故防止には使えない
「なぜ」ヒヤリでくい止められたが、情報と書かれていなければ事故防止に有効な情報とは言えない
たとえば、「もう一度チェックした」、「担当者に再確認した」、「すぐに作業を始めなかった」、「上司に再確認した」など
事故に至らないような何かの機転があるはずだ その情報を引き出さなければヒヤリは生きてこない
ヒヤリハット活動をただやるのではなく、事故にならなかったキーワードを徹底的に抽出して欲しい
ヒヤリハットを報告する書式にも工夫をして欲しい
つまり、事故を防いだ「ワンポイントキーワード欄」を設けて欲しい
なにが、事故に至らなかったかを情報として取り出すことが大切だ
ヒヤリハット活動はただやるだけでいいわけではない、効果的に災害防止に結びつける情報を抽出することを考えて欲しい
ヒヤリハット事例を災害防止の貴重な情報源として捉えて欲しい
参考となる情報をいかに紹介しておく
厚生労働省の情報だ
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/anrdh00.html
企業が公表している情報だ
https://www.shinetsu.co.jp/jp/news/other/%E3%83%92%E3%83%A4%E3%83%AA%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%

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2024年02月05日

共振という振動現象を甘く見るな

振動が原因で多くの事故が起きている
化学工場では多くの場所で振動が起きている
ポンプや圧縮機などはモーターを使うから必ず振動が起きる
工場にある設備はほとんどが金属でできている。金属は固くて上部なのだが、この固いことが事故につながる
柔らかければ、振動は吸収されるが、固ければ振動は吸収されず金属が損傷する
配管やフレキであれば亀裂が生じ漏洩する
振動の中でも注意しなければいけないのが。「共振」という現象だ
振動には周期がある。配管やフレキの長さによっては、振動の周期によっては激しく振動する現象がある
これを共振現象という
例えば、金属フレキの長さと共振する周期の波長が合致してしまうと、想定外の激しい振動現象が起こる
その結果フレキが振動で破れて事故になることもある
タービンの試運転時共振で事故が起きたこともある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000602.html
原子力発電所で温度計保護管の共振により事故も起きている
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/37/3/37_3_189/_pdf
共振が起こると短時間に金属は破壊されることが多い
フレキやホースを設置するとき、振動周期と長さがちょうど合致すると共振という現象が起こる
フレキやホースのある場所の振動を確認して欲しい
温度計の保護管でも共振による破損事故も起きている
設計段階から共振をチェックして欲しい
共振現象ということにも関心を持って欲しい

 

2024年01月30日

電気火災を甘く見ないで欲しい

電気設備が原因で事故が起こることがある。事故の原因は、様々だが接触不良と老朽劣化が多い
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/29/8/29_612/_pdf/-char/ja
電気は電線を伝って流れる つまりどこかで、電気装置と電線とつながる部分がある
そのつながる部分、いわゆる接続部に接触不良があると熱を持つ
温度が上がってしまうと、電線を包んでいる樹脂製の部分が溶けて燃えだしてしまう
電線の被覆は、難燃性のものもあるがコストが高いのでどうしても安い難燃性を持たないものが多用される
電線に火がつくと、最初はくすぶりながら周りに熱が広がっていく。そのうち、あっという間に周辺の電線に火がつき広がっていく
電線に油などが付着していると速いスピードで火災が進展する
電線を床の下にはわせる方式では、このケーブルダクトの中を見てみれば工場の電気火災に対する管理状態がわかる
2002年に宮崎県の化学工場で大きな電気火災事故が起きている
https://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile/NCODE/10610
当時の安全担当者に聞いたことがあるが、工場の人達は、まさかケーブルが燃えるとは思っていなかったというコメントがある
大きな間違いだ ケーブルが燃えると相当な発熱量がある しかも、延焼するから広範囲に燃える大火災になる
プラスチックやゴムの燃焼熱量は、ガソリンの燃焼とさほど変わらないと言われているからだ
この電気火災では大火災となり周辺住民を大量に避難させる事故であった
通報が遅れたことも原因だ。課長が消防への通報指示はすぐに出したが、誰が通報するということが決められていなかった
誰かが通報したと皆が思い込んでいて、結果として通報が遅れてしまった
通報者を決めておかなかったのが、通報遅れによる被害の拡大につながった
もう一つ地下のケーブルダクトに大量の油があったことも要因だ
この工場では、機械に使われている油が地下のケーブルダクトに時間をかけて流れ込んでいた
ところが誰もその油が危険とは思い込んでいなかった。電気火花で当然油にも火が着いてしまった
時間が経ってからケーブルの接触不良が起こることもある
新設時のねじの締め付け忘れや、締め付けのもれが時間が経ってから問題を起こす
1970年代に会社に入った頃は良くケーブルの増し締め作業を定修時にしていたのを覚えている
20年~30年経過した電源設備は老朽化という問題もある
私のブログでも何回か電気設備の老朽化の話をしているので検索してみるといい
ネズミなどがケーブルダクトに侵入して事故になることもある。ケーブルをかじるからだ ネズミ対策もしっかりと必要だ

 

2024年01月25日

長期間停止した設備の再稼働で起こる事故--現場パトロールの大切さ

長期にわたって設備を停めていると再稼働時事故を起こすことある。
企業活動の中で,設備を休止することもある。時間がたって再稼働したときに思わぬ事故に逢うこともある
今回過去に起こっている再稼働時の事故につていて紹介したい
東北大震災以降長期間停止した、原子力発電所を再起動していたときに起こった事故だ
九州の原子力発電所を再稼働してしばらくして蒸気が漏れたという事故だ
配管からの蒸気漏れだと言うことだったので、ガスケットの不良かと思っていた。
いつもよく見る世界のタンク事故情報を公開しているホームページを見ていたら、原子力発電所の蒸気漏れ事故の情報が記載されていた
2018年4月8日号の記事だ。写真もあるので興味のある方はみて欲しい。
配管の外面腐食に関する、診断法や維持管理のガイドライン等の文献等の紹介もあるので参考になるはずだ
http://tank-accident.blogspot.com/search?updated-max=2018-04-15T17:23:00%2B09:00&max-results=7
蒸気漏洩の原因はガスケットではなく、配管の腐食だと書いてあった、直径1cm程の穴が開いていたという。
蒸気の配管だから、当然保温がしてある
通常、蒸気を流していれば保温材の中は温度が高いから、保温材の中に雨水が入っても蒸発してしまう。
ところが、長期間蒸気を停めてしまえば保温材のすきまなどからしみ込んだ雨水などは蒸発せず配管を腐食させてしまったのだ
この原子力発電所は、約7年間という長期にわたって停めていたという。
蒸気配管の材質は鉄だった。腐食するには十分な材質だ。保温材の外側には、鉄が錆びたようなシミが付いていたという。
保温材を被った配管でシミが付いていたら、その場所で事故が起こる可能性があると思って欲しい。
鉄さびのようなシミであれば、内部で配管の腐食が進んでいると考えて欲しい。
もう一つ油のようなシミだ。配管の上のほうに油のようなシミがあるならそこから配管内部に油がしみ込んでしまったと考えて欲しい。
蒸気のような高温配管であれば、保温材にしみ込んだ油が温められ発火点を超え発火することがある。
油は新品の時の発火点と、古くなったものでは発火点が変わってくる。
過去の発火事故の文献などでは、油は古くなると発火点は新品時の2/3迄下がっている事例がある。
つまり、火が付きやすくなっているのだ。
更に、油は空気と触れて酸化するとき、酸化熱という熱を出すから保温材の中の温度は酸化熱も加わり相当高くなると思って欲しい。
現場をパトロールするときの感性を上げて欲しい。
たかが配管にシミが付いているだけだと思わないで欲しい。
保温材の中で何かが起きていると考え、早めに保温材を外して点検することが事故防止の基本だ。

 

2024年01月20日

FRPタンク天板からの転落事故は繰り返す

FRPなどの非金属でできたタンクの天板から人が転落する事故がある
太陽の紫外線などで天板が劣化していて強度が無くなっているのに、それを知らずに人が乗ってしまうからだ
2011年8月千葉県の船橋で2人が塩酸の入ったFRPタンクに落ちて死亡事故が起きている。
http://spotjn.blog.fc2.com/blog-entry-8.html
http://saigaijirei.sblo.jp/article/54558107.html
大学の研究室でのFRPの劣化について調査報告が以下のURLにある
http://www.cit.nihon-u.ac.jp/kouendata/No.39/6_MA/6-009.pdf
この事故以外でも過去に同様の事故が起きている。
http://www.kotobuki-grp.com/technology/pdf/topics1.pdf
FRPなどの樹脂でできているタンクは、古くなれば太陽の光などで劣化する
どんなことがあっても、天板の上には人を入れてはいけない。
FRPタンクを保有しているなら一度は上記の資料は読んで欲しい文献だ
昔、鳥取労働局がFRPなどの材質を使った塩酸タンクの事故事例と対策という文章を出している
参考になるはずだ
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/seido/ensan_taisaku2402.pdf
FRPなどの樹脂でできているタンクは、古くなれば太陽の光などで劣化する。どんなことがあっても、天板の上には人が乗ってはいけない
タンクへの転落防止には,タンクの猿ばしご付近にイラスト入りの転落注意の表示を取り付けて欲しい
厚生労働省のホームページにも事故事例がイラスト付きで載せられている
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101319
FRPタンクからの転落事故は繰り返し起きている
FRPタンクを所有しているなら参考にして欲しい

 

2024年01月15日

最近のHAZOPに思うこと

HAZOPと言う安全性評価手法がある。日本で、この手法が使われ始めたのは1980年代だ。いまから40年前だ
1970年代は事故が多発した。当時はまだ、事故が起きてから、原因と対策を考える時代だった
しかし、事故が起きてからでは遅い。事故が起きる前に、事故が起こる可能性を事前評価して事故の発生を減らしたいと皆が考えていた
そこに現れたのが、HAZOPという安全性評価手法だ。イギリスで開発された、安全性評価手法だ
仕掛けは簡単だ。プラントというのは、ずれが事故を引き起こすという所に着目している
温度が変われば、プラントのトラブルにつながる。圧力の変化も、トラブルにつながる
つまり、プラントでずれが起こると事故になるということに着目した安全性評価手法だ
まず、ずれが起きたとき、どんな悪いことが起こるか考える。ヒヤリで済むのか、漏洩か火災か爆発するのかを考える
ずれから悪いことが起こるシナリオを考えるのだ。つぎに、この悪いことに対して現状の安全設備がどうなっているのかを考える
まずは、異常に気づけるかだ。わかりやすく言うと警報があるのか無いのかだ。警報すら無ければ異常に気づけない
次は、異常に気づいたら事故にならないように対処できるのかを考える。人で対応できるならそれで良し
しかし、時間的に余裕がないなど人で対応できなければインターロックなど機械的安全装置が必要だ
このように、現状の警報や安全設備で事故が起きないかをシステマチックに検証していくのがHAZOPだ
この確認作業を配管一本一本、機器毎に確認していく。手間もかかる作業だが抜けがなければプロセスを網羅的にチェックできる
最近のHAZOPでは、さらに深掘りしてリスクベースで評価する手法も追加されている
機器故障確率やミスの発生頻度までも考察させている。ものすごく手間も暇もかかる手法になってきている
HAZOP導入当初の目的は、ずれから最悪の事態を予測して現状の設備で事故が防げるのかを簡便に評価していたはずだ
それがいつの間にか、人のミスの発生頻度、機械の故障確率など確率論的要素が追加され、時間を要する評価手法になってきている
限られた時間の中で、安全性は評価するしかない。HAZOPはやればいいものでは無い
HAZOPと言う物は、深掘りできるかも重要な要素だ
ずれから起こる、最悪の事態を直感的に予測する能力を常に研ぎ澄ますことにも時間を使って欲しい
機器故障確率や人のミスの発生頻度までも考察させている手法は時間がかかる。ずれだけで、リスクを簡便に摘出する手法も併用して欲しい

 

2024年01月10日

長期の休み明けで事故が起こることがある

今から10年前の2014年1月9日に三重県四日市で起こった熱交換器の爆発事故を覚えていますか
爆発により多くの人が死亡した事故です。
https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-0612.html
この事故は、多くの教訓を与えてくれています。
年末から年始にかけて長時間窒素でパージしていれば安全と考えていたことが事故につながりました
熱交換器に残っていた物質は乾燥させると危険な状態になる物質でした
ドライ窒素のようなの乾燥した気体では爆発感度がものすごく上がることが事故報告書にも記載されています
乾燥した、窒素でパージしたことが結果として事故の被害を大きくしました
窒素でパージすれば安全という、思い込みが事故につながっています
乾燥させると危険な物質も世の中には沢山あると考えて下さい
特殊な物質を扱っていたから起こった事故だと単純に捉えてはいけません。
熱交換器の開放時に起きた事故です
どこの化学工場でもやっている熱交換器の開放作業に関わる事故だととらえておく必要があります
熱交換器の蓋を開ける前に、無害化されているかがきちんと確認できるシステムになっていなかったことが事故になっていたのです
安全かどうかは経験則に頼っていたのでは駄目だと言うことです
本質的な意味で、化学工学的に安全だという作業マニュアルになっていなかったのです
長期の休み明けで、安全だということを確認する方法を明確にしておいてください
休み明けで起こる事故も多いからです
休み明けの現場確認をしっかりやってください

 

2024年01月05日

世の中なにが起こるかわからない

年始めに大きな地震だ 元旦のんびりしていたら、突然地震警報器が鳴り出す
我が家には、全国の地震を検知して警報を出す機器が3台ある
元旦16時過ぎ、3台ある警報器が突然なりだした なんなんだろうとテレビをつけたところ能登の地震だ
昨年能登は旅行に行ったばかりなので、輪島や能登空港の姿をしっかりと思い出す
震度7はとんでもない地震だ
輪島の大火災は、やはり初期消火は地震ではうまくいかなければこうなると感じた
しばらくして原発の情報も伝えられた
やはり、変圧器の事故が起こっていた 幸い火災にはならなかったが絶縁油が漏れた
過去原発では変圧器の火災がおこっている
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h20/1/7/cat2/871.html変圧器は油を使う 油が漏れれば火災になる 原発で怖いのはこのこの事故の教訓は活かされていたのだろうか
原発は電気で冷却ポンプなどを動かして冷却している 電気がなければ冷却出来なくて事故になる
電気が来なくなることはものすごくこわい
2重3重に電源系統があるから安全だと行っているが、地震のようなケースではそれが保障できるとは言い切れない
最悪の事態というのは、必ずしも想定された範囲内で起こるとは限らない
人は今まで経験してきた範囲でしかものを考えられないからだ
元旦が明け、1/2になったら羽田で飛行機事故が起きた
考えられない事故だ
滑走路上で飛行機どうしがぶつかるなんて考えられない事故だ
同じ滑走路に飛行機が2機あれば起こる事故だ
GPSがあるこの時代、滑走路上にある機体と侵入してくる飛行機と瞬時にAIで検出して警報を出せないのだろうか
人である限りミスはする
AI技術などを使って少しでも事故をなくせる技術を早く導入していきたい
今回の事故でも、基本は誰かの人にミスだ
人のミスは、機械でなんとかするしかない
技術をうまく使っていきたいと考えた年始めだ

 

2024年01月03日

今年一年の重大事故を振り返って 

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
1月は千葉県での火災だ。バイオマス発電所の燃料貯蔵サイロで木質ペレットの自然発火と言う事故がある
https://www.daigasgps.co.jp/emergency/index.html 近隣で異臭が継続していた事故だ。
可燃物を大量に貯蔵すれば酸化熱で自然発火するリスクが存在する。石炭の自然発火事例も多い。原材料の貯蔵リスクを甘く見なことだ。
4月 新潟にある化学企業で火災が発生した。その後も事故が続いた
https://www.uxtv.jp/ux-news/%E7%81%AB%E7%81%BD%E3%81%AA%E3%81%A9%E7%9B%B8%E6%AC%A1%E3%81%90%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%AB%E9%9D%92%E6%B5%B7%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E3%81%A7%E5%AE%89%E5%85%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%82%92%E7%A2%BA%E8%AA%8D/
6月には新潟のこの企業で配管を電動ノコで切断中爆発死亡事故が発生した
https://www.youtube.com/watch?v=4bTnVhvFEPw
その後事故の中間報告が出されている https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1181/20231122_denka_omi_interim_report.pdf
窒素などで乾燥させると爆発感度が上がる物質が存在していたという
7月に四国にある化学企業で塩素が漏れる事故が発生した。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/591310
8月には実験中に爆発事故が起きている https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/630454?display=1
8月にボイラーの爆発事故が起きている https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230830548152/
https://kuni2.com/mitsubishi-paper-mills-hachinohe-plant-boiler-explosion-accident/
ボイラーの事故は、たびたび起きているが事故の情報というのは公表されない。危険物でも無く。高圧ガス設備でも無い。
労安法の規制を受ける設備だ。ボイラー協会などが情報を持っているが、なかなか積極的に情報を公開していはいない
8月倉敷のコンビナートで落雷火災があった。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230823/k10014171391000.html
9月タンク爆発事故がある https://www.youtube.com/watch?v=YnGelX90JbU
11月徳山で工場爆発があった 死亡事故なのに、その後情報は公開されていない https://www.tosoh.co.jp/news/info/2023/20231108.html
11月名古屋で電気集塵機による火災があった この企業はすみやかに事故の原因を公表している
https://www.nissanchem.co.jp/news_release/news/n2023_11_17.pdf
企業によって事故の情報の公表のしかたが大きく異なる
真摯に情報を公開する企業もあれば、今後関係省庁と連携し調査していきますと書いただけで何らその後情報を公開しない企業もある
事故の原因を公開してくれた企業に感謝したい。事故を防ぐには、事故から学んだ情報が必要だからだ

 

2023年12月30日

事故は他人事ではない 技術技能伝承の難しさ

過去の石油や化学工場の事故事例を見ると,世の中では10年周期で大きな事故が起こっている
10年も経つと,人も技術も,環境も変わってくるからだ
長い間事故が無いと企業は安全だと思い込んでしまう
経営者も、管理者も、現場で働く従業員も皆そうだ
事故が無ければ安全と考えるのは当たり前のかもしれないが、たまたま事故が起きなかっただけである
事故の芽は常に企業の中にある
老朽化などは典型的な例だ。新設の機械は事故は起きないが、やはり時間が経てば機械は壊れて事故を起こす
ベテランが退職していけば、組織の実力は落ちる 技術伝承はしていると思っても、全ての技術は伝承できない
文書化できないこともある いわゆる、文字に書けない暗黙値といわれる技術や技能は沢山ある
技術や技能は人が退職すれば失われていくものは多い
人に技術有りだからだ
企業は成長して存在意義がある 成長をつかさどった人は常に年を取り退職していく
ベテランがいなくなれば企業の技術力や安全力も低下する
事故が起こるのはそれに気づかないからだ
いままで大丈夫だったは通用しない 企業の安全を守るにはかなりの努力がいる
事故が起きるのは、企業への警鐘だ そろそろ手を打ちなさいと警鐘しているのだ
自分たちでなんとしようと思うのは大切だが、スピードが大切だ
世の中に色々な技術を持っている人は沢山いる
その人達の力を借りることだ
いわゆる安全のプロの力を借りて早く問題を解決することが企業の存続につながるのだろう
暗黙知と言われる分野は技術伝承が難しい
事故は必ず起きる
事故を防ぐのは,なぜ事故が起きるのかを知らないからだ
事故が起きるメカニズムを知って欲しい

 

2023年12月25日

フォークリフトのエンジンが着火源になることもある

フォークリフトのエンジンは、着火源となることがあると思っているだろうか
可燃物を取り扱うようなところでフォークリフトを使うことはある。
たとえば廃油などを扱う工場では、廃油はそれほど危険ではないと思っている人も多い
だから、廃油処理関係の工場では事故が繰り返し起こることがある
廃油そのものの引火点は、それほど低くないが廃油を処理するときには
メタノールという可燃性の液を使うことがある
メタノールは、引火点が低く着火源があれば簡単に火がつく
2019年3月17日に廃油の処理工場でこのような爆発死亡事故が起こっている
http://tank-accident.blogspot.com/2017/03/3.html
この事故は、ポンプ出口側にに取り付けてあった樹脂製ホースが外れ
可燃物の混ざった処理中の廃油が流れ出した
従業員が、近くにあったホークリフトのエンジンをかけ退避しようと動かし始めたところ
それが着火源になり爆発した事故だ
エンジン点火用の装置の火花が原因のようだ
危険物保安技術協会から、詳しい報告が出ているので
それも参考にして欲しい
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/187/kikenbutsu_jikokanren_info01.pdf
工場内でなにもトラブルがないときは安全かも知れないが
可燃性ガスが万一発生した時には、フォークリフトなどの車両は着火源と考えて欲しい
安易に動かさないことだ
可燃物を取り扱う工場では、防爆のフォークリフトも販売されているので導入を検討しておくことだ
フォークリフトが着火源になることもあると思って欲しい

 

2023年12月20日

コンビナートの計器室

コンビナートにある計器室を見たことがあるだろうか
コンクリートでできた丈夫な建物だ
爆風にも耐えられるように、頑丈なコンクリートでできている
化学プラントがある方向には、窓は取り付けられていない 過去に窓から爆風が吹き込んで事故になったことがあるからだ
万一爆発が起こっても、計器室内に爆風が入らないように製造プラント側に窓がない仕様になっているのだ
外国では過去に爆発で、計器室が爆風で大きな被害を受けたことがある
その教訓が日本にとり入れられているのだ
1974年イギリスで大きな爆発があった その時計器室が大きな被害を受け沢山の死傷者が出た
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0058048.html
化学プラントがある方向にガラスの窓があったことから爆風をもろに計器室内で受けた事故だ
これを教訓に、プラント側には窓は作らないのが世の中の流れとなった
こんな巨大な爆発事故もある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/2/30_122/_pdf/-char/ja
ケーブルダクトを通って計器室に火が入りそうになった事故だ
この事故の教訓から、ケーブルダクトの延焼防止なども強化された
計器室は地面より少し高めに作られている。密度の重いガスが漏れて地上を流れてきても計器室内に流入しないようにしているのだ
さらに、計器室内はわずかに加圧している。室内の圧力を少し高めているのだ
工場で万一有毒なガスが漏れても、計器室内に入り込んでこないような設計をしているのだ
人は過去の失敗に学ぶという
先輩方の失敗に学び今の設備はできていると思って欲しい
過去の失敗事例をこつこつと学んで欲しい

 

2023年12月16日

ガスケットで起こる事故

ガスケットで起こる事故は多い。ガスケットのことはパッキンとも言われる
材質を間違えるという事故の形態も多い
ガスケットは、温度、圧力、耐食性を総合的に判断して最適の物を選定する
ところが、これらの条件を考慮せず選定して事故になることも多い
一つは、温度などの条件を甘く見たというケースだ
本来なら最悪の条件でガスケットの選定を考えるべき所を通常の運転条件で判断していたケースだ
サイズを間違える事故事例も多い。取り付けた物の面圧が足りず、漏れたという事故も多い
ガスケットは見かけは似ていても材質が違うものも多い
しょっかりと荷札などを付け識別管理をしなくてはいけないのに、それを怠っていたことで起こる事故も多い
倉庫などでの管理をしっかり行うことだ
仮ガスケットで起こる事故も多い
定修工事中に、洗浄作業をする際、本来の材質要理はグレードの低い仮ガスケットを使うことがある
例えば水洗浄する為に安価なシートガスケットを使う
本来なら、運転にはいる前にこの仮ガスケットを取り外し正規のガスケットに戻すはずだ
ところがうっかり仮ガスケットのままスタートしてしまい事故を起こす事例も多い
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000186.html
仮がガスケットの管理をしっかりやって欲しい
仮ガスケットであることが目立つような表示をつけるなどして事故を防いで欲しい

 

2023年12月10日

HAZOPでの失敗事例 警報の見落とし

HAZOPという安全性評価ツールがある。どんな、安全性の評価をしようと、見落とすこともある
そこそこの安全対策では、100%事故が防げるわけでは無い
例えば、警報があるから事故に気づき、事故は起こらないと考えたら大間違いだ
警報はあっても、聞き漏らすこともあると考えなくてはいけない
通常運転で、なにもトラブルが無いときなら警報を見落とすことも無いかも知れない
ところが、スタートアップや停止作業時では警報がいっぱい鳴る時などでは見落とすこともあると考えた方が良い
スタート時に、警報を見落とし加熱炉内の炉床が火災事故になった事例があるので紹介しておく
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-217.pdf
加熱炉は、元々は燃料ガスによる単独の炉だったのだろう
あるとき、プロセス内で発生する排ガスを有効利用し炉で燃焼しようと考えたようだ
蒸留塔のリフラックスドラムから発生するガスを、この加熱炉に引き込んで燃焼させ有効利用しようと設備改造を行った
この廃ガスを燃料として有効利用していたようだ
ところが、プラントのスタート時リフラックスドラムの液面がHIレベルを超えているのに警報を見落とした
ダラム内の液が、結果としてオーバーフローし、ベンドガスラインを通って加熱炉内に流れ込んだ
流れ込んだ液は、燃焼性の高い液だったので加熱炉内で異常燃焼が起こって事故になってしまったのだ
警報で事故を防止する手法は、人に大きく頼る安全性手法だ
人が100%警報を認識するという保障は無い
HAZOPの信頼性を上げるには、人が警報を見落としても安全かを考えて欲しい
人が異常に気づかず重大事故になるならインターロックを追加する対策を考えて欲しい

 

2023年12月07日

窒素でパージしたから安全と思うな

2023年6月新潟県にある化学工場で配管切断工事中に死亡事故が起きた 作業員1名が死亡したという
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/234041
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1140/20230614_denka_omi.pdf
事故には予兆があると言われるが、今年4月に入って何度も火災事故が起きていた
消防の立ち入り検査も受けていた。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/457858?display=1
数年前にも工事で事故を起こしている。https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/762/20200907_denka_omi.pdf
2023年6月起きた配管切断工事中の死亡事故の中間報告が先日企業から公表されていた
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1179/20231122_denka_omi.pdf 
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1181/20231122_denka_omi_interim_report.pdf
事故の要因を要約するとこうだ。乾燥すると爆発する危険な物質が配管内に残っていた
乾燥すると危険なことはわかっていたので,事前に水で湿らせて洗浄はした
しかし、水があると配管切断時液が噴き出すとリスクもあるので安全の為に窒素で再度パージした
誰でも,窒素でパージすれば安全と思い込む。ところが、この危険な物質は乾燥させると危険な状態になる物質だった
一度水で洗浄したから,湿らせて大丈夫と思い込んでいたようだ。しかし、配管内を窒素でパージしたことにより乾燥してしまった
配管を電動のこぎりのような道具で,切り始めたとき当然摩擦熱というのが発生する。100度ぐらいだったようだ
配管内に残っていた危険な物質は。100度ぐらいで発火する物質だった
火がついて配管内を炎が逸走した。配管の一部に、この危険な残渣が残っており炎で爆発的な現象が起こり配管が吹き飛んだ
これにより,近くにいた作業員が死亡したという事故だ
乾燥させると危険な状態になる物質が関係する事故だ。窒素でパージしたことで,乾燥状態になり爆発したのだ
窒素でパージしたから安全と思わないで欲しい。乾燥させると危険な物質も沢山あるからだ

 

2023年11月30日

最近のHAZOPに思うこと

HAZOPと言う安全性評価手法がある
日本で、この手法が使われ始めたのは1980年代だ。いまから40年前だ
1970年代は事故が多発した。当時はまだ、事故が起きてから、原因と対策を考える時代だった
しかし、事故が起きてからでは遅い。事故が起きる前に、事故が起こる可能性を事前評価して事故の発生を減らしたいと皆が考えていた
そこに現れたのが、HAZOPという安全性評価手法だ。イギリスで開発された、安全性評価手法だ
仕掛けは簡単だ。プラントというのは、ずれが事故を引き起こすという所に着目している
温度が変われば、プラントのトラブルにつながる。圧力の変化も、トラブルにつながる
つまり、プラントでずれが起こると事故になるということに着目した安全性評価手法だ
まず、ずれが起きたとき、どんな悪いことが起こるか考える。ヒヤリで済むのか、漏洩か火災か爆発するのかを考える
ずれから悪いことが起こるシナリオを考えるのだ。つぎに、この悪いことに対して現状の安全設備がどうなっているのかを考える
まずは、異常に気づけるかだ。わかりやすく言うと警報があるのか無いのかだ。警報すら無ければ異常に気づけない
次は、異常に気づいたら事故にならないように対処できるのかを考える。人で対応できるならそれで良し
しかし、時間的に余裕がないなど人で対応できなければインターロックなど機械的安全装置が必要だ
このように、現状の警報や安全設備で事故が起きないかをシステマチックに検証していくのがHAZOPだ
この確認作業を配管一本一本、機器毎に確認していく。手間もかかる作業だが抜けがなければプロセスを網羅的にチェックできる
最近のHAZOPでは、さらに深掘りしてリスクベースで評価する手法も追加されている
機器故障確率やミスの発生頻度までも考察させている。ものすごく手間も暇もかかる手法になってきている
HAZOP導入当初の目的は、ずれから最悪の事態を予測して現状の設備で事故が防げるのかを簡便に評価していたはずだ
それがいつの間にか、人のミスの発生頻度、機械の故障確率など確率論的要素が追加され、時間を要する評価手法になってきている
限られた時間の中で、安全性は評価するしかない。HAZOPはやればいいものでは無い
HAZOPと言う物は、深掘りできるかも重要な要素だ
ずれから起こる、最悪な事態を直感的に予測する能力を常に研ぎ澄ます方にも時間を使って欲しい

 

2023年11月25日

乾燥炉トラブルが社会に大きな影響を及ぼすことがある

車のバネを製造する工場で爆発事故が起きた
この事故でトヨタの工場が停止するなど大きな影響がでたという
トヨタは在庫を持たない主義だから影響は甚大だった
https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20231026_30863
トヨタの国内8工場13ラインが稼働を停止したとのことだ
このように、生産トラブルが起こると大きな影響を及ぼすこともあるのが今の現状だ
労災自体は軽症で済んだ乾燥炉の爆発事故ですが、顧客の事業継続に多大なる影響を与えてしまった事故だ
乾燥炉の爆発原因はこうだ。通常、燃焼室のバーナーで作り出した熱を乾燥炉へ送り込んでいる
ところが、燃焼室と乾燥炉の間を循環しているダクトのフィルターの目詰まりが起きてしまった
目詰まりの原因は、近くで粉塵が出るような設備の撤去工事が行われていたからだ
工事の粉塵で、フィルターが詰まり、結果として空気循環が悪化したことにより、
燃焼室内の温度が上がりすぎた。温度が高くなったことから、運転対応としてバーナー燃焼用の空気供給量を抑えたところ
燃焼室から不完全燃焼のガスが発生、乾燥炉内に流入、蓄積するような状況となった
その後、炉内温度が下がり過ぎたため、バーナーへの空気供給量を増やす対応をした
当然、一気に燃焼量が増え、バーナーの火が強まり、乾燥炉内に溜まっていた不燃ガスに到達し引火して一気に爆発したようだ
最初のきっかけは、隣接エリアでの撤去工事で発生した粉塵の影響でフィルターが目詰まりしたことだ
次に、炉の温度変化に対し運転操作がうまくいかず不完全燃焼から爆発に至ったというわけだ
火が消えていれば、安全に停まるようなインターロックは持っていたはずだ。つまり失火検知機能だ
不完全燃焼時の対応は、たぶん人に頼るところが大きかったのかも知れない
他社でも空気ダンパーの急変などで同様な事故も起きている
トラブルが起きたときは安全に停めた方が事故にはならない 生産優先だったのかも知れない
乾燥炉を持っている企業は参考にして欲しい事故事例だ

 

2023年11月19日

AIと言うツールとどうつきあうか

AIというツールに世の中関心が集まっている
コンピューターがなせる技だ
1980年代日本でもコンピューターが登場した。NECが8001という機種をパーソナルコンピューターとして販売し始めた
BASICという言語でプログラムをつくり色々なことをやり始めた
私の務めていた企業でも、化学工場のメンテナンス計画をプログラミングしたのを覚えている
記憶できる量も、フロッピーデスクで1Mバイトだったと覚えている
この頃化学工場でもDCSという道具を使い始めた。外部記憶容量はまだ20Mバイトだった気がする
そのころ人工知能という言葉がはやり始め、チャレンジしてみたがやれることに限界があった
自分の知っている情報の範囲内で答えを出す方式で、まだまだ連想して答えを出す方式ではなかった
つまり使える情報は自分の情報だけだったからだ
ところが昨今のように、クラウドなどのシステムができたことによる取り扱える情報量が無限になった
おまけに翻訳システムも進化したので、海外の情報も自動翻訳して知識の一端として使えるようになった
このクラウドというインターネットシステムが使えるからこそ昨今のAIが効果的に使えると考えていいのだろう
ただクラウドにある情報は、著作権の壁を越え勝手に使われているという現状がある
一度クラウドにあげてしまうと著作権はあるようで無いと思った方がいい
この法律の壁を越え無限の情報を手に入れられるシステムがあるから急速にAIが成り立っている
今の世の中膨大な情報を簡単に手に入れられ、推論に使えるからだ
ビックデーターも手に入れられれば、更に分析能力は高まる
自分の持っている情報を対価も得ずに盗み取られるのがAIでもある
知的財産を持つ人は、AIと上手につきあうことも考えて欲しい
巨大AI産業だけがどんどん利益を得ていく構図だ
個々人の持つ知識が正当に評価され、対価が得られるAIであって欲しい

 

2023年11月10日

配管撤去で場所を間違える事故

2016年10月にドイツにある大手化学会社BASFで死傷者の出る大きな事故が起こっている。
何人もの人が亡くなり、数十人もの負傷者が出た。
https://blog.knak.jp/2016/10/basf-ludwigshafen.html
https://www.dw.com/en/cause-of-deadly-explosion-at-basf-chemical-plant-in-ludwigshafen-remains-unclear/a-36072867
原因は、何本もの配管が通っているパイプラインで誤って生きている配管を切断して漏れた油に火が付き爆発した事故だ。
BASFといえば100年以上の歴史ある化学会社だ。アメリカのDUPONなどともならび安全管理には厳しい会社であるはずだ。
誤って生きている配管を切るという事故は、日本でも繰り返し繰り返し起きている。
私も、撤去工事で工事業者が生きているメタノール配管を切りヒヤリとしたことがある。
幸い着火はしなかったが、いまでも、もし火が付いていたらどうなったのだろうとおもう重大ヒヤリだ。
日本でも、工事は工事業者任せになっていないだろうか。
安易に現場の立ち会いを減らすとこのような事故はおこる。
発注者側の管理体制がどうなっていたのかを知りたいところだ。
ある英文記事を見ていたら、着火源は近くでさび取りをしていた火花という情報もある。
パイプラインの中で、ごく近い位置での同時並行作業が招いた事故なのかもしれない。
運転中の火花の出る工事は、しつこい位に現場管理を行うことだ。
いくら立派な工事計画が立てられていようとも、現場でそれが守られているかを管理していない限り事故は起こる。
安全担当者はしつこいくらいに現場を回ることだ。
海外で起きている事故の情報はほとんど手に入ることはない
参考までの2016年に海外で起こっている主要タンク事故を紹介している文献がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/55/3/55_121/_pdf
世界中でとんでもない事故が繰り返し起きているということだ
過去の事故事例に学んで欲しい

 

2023年11月06日

フィルムデトネーション現象

フィルムデトネーション現象という言葉を知っているだろうか。
爆発より威力の高いものを爆轟(ばくごう)と呼んでいる。爆轟とは、英語でデトネーションと読んでいる。
フイルム状に爆轟が起こることをこの、フィルムデトネーションと呼ばれる。
https://www.youtube.com/watch?v=RVXUbYSm_yY
配管の中にたまったフィルムのような薄い油状のものに火がつき激しい爆発が起こることを一般的にいっている。
いわゆる、高圧圧縮機などの潤滑油が、吐出側の配管に付着している状態で配管内で爆轟を起こす現象だ。
日本では昭和58年に起こった事故が、失敗百選で公開されている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000196.html
学会誌安全工学にもこんな文献が公表されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/24/3/24_165/_pdf/
高圧の空気圧縮機を持っている企業の方々は一度読んでほしい。
空気は高圧になると、強力な酸化剤になる。圧縮機に使われる、潤滑油は可燃物だ.使っているうちに、油は劣化する。
劣化すれば当然発火点は下がるから、火がつきやすくなり着火すればフィルムデトネーションと呼ばれる爆発的な現象が起こることがある。
実験室や研究室でも、空気圧縮機は使われているはずだ。
ベビコンを含めた空気圧縮機には、給油式タイプと無給油式タイプの2種類ある。
そのうち、給油式タイプのものを使用している場合には、取扱説明書には定期的な清掃、点検が必要だと書いてある。
なぜなら、長時間使用しているうちに潤滑油の劣化物が配管の内側に膜状にこびりつく
そこに静電気とか断熱圧縮あるいは自然発火など何らかの着火源が発生した時に、爆発する恐れがあるからだ。
潤滑油のフィルムデトネーションを意図してのことだが、そこまで読み取れる人は少ない。
フィルムデトネーションと呼ばれる現象がおこれば、機械の損傷はもちろんのこと、配管が噴破するなどして人身事故につながることもある。
フィルムデトネーションという現象も知っておいて欲しい。
最後にある潤滑油メーカーのホームページに空気圧縮機の発火事故という情報もあるのでこれも是非見て欲しい。
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0706.php

 

2023年10月29日

圧力差を甘く見ていないか 吹抜け事故

化学プラントの製造装置であれば運転圧力は気になるところだ
圧力が高い高圧機器であればかなり気をつかうところだ
化学プラントの機器は配管でつながっている
圧力に応じて耐圧性能に値する金属材料が選定される
化学プラントは順調に運転されていれば問題は無いが、当然運転トラブルは起きる
運転トラブルの中で怖いのは吹抜けと呼ばれる現象だ
高圧の機器から低圧の機器へ液やガスが吹き抜ける現象だ
低圧側の耐圧性能を越える流体が流れ込めば、低圧機器は簡単に破壊する
一般的に、機器は安全率を見て約3倍の圧力がかかっても破裂しないように設計はされている
しかし、設計圧力の3倍を超えるような圧力が加われば機器は破壊される
過去の事故事例を見ると、4倍以上の圧力がかかれば破壊されている
これからわかることは、HAZOPなどで安全性を評価するときにも圧力差があるプロセスにはこの吹抜けをしっかり調査する必要がある
つまり、プロセスの中で、上流または下流側の運転圧力がおよそ3倍を超えるようなプロセスではこの吹抜けをしっかりとチェックすることだ
吹抜けで機器の破損が起こっている事例は沢山ある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/1/30_57/_pdf/-char/ja
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00149_s.pdf
この事故は,155MPaの高圧ドラムから0.9MPaで運転する低圧ドラムに吹抜けドラムが破裂した事故だ
死者こそ出なかったが,損害額は当時の価値で119億円だ
原因は吹抜けに気づかなかったことだ。液面計は沢山あったが,アラームを見落とした
インターロックはあったが、液面計の誤作動も多く配線を外していたという
つまりインターロックは作動しないまま長期間放置されていたという重大な過失があった
さらに、低圧ドラムの安全弁も火災の輻射熱しか想定しておらず,吹抜け対応で設計されていなかったと言う
設計段階のミスと安全装置の運用管理で失敗した事故だ
リスクマネージメントでもこの圧力差を見落とさないで欲しい

圧力のエネルギーを甘く見ないで欲しい

 

2023年10月25日

化学物質を扱う子会社の安全管理

工場内の敷地にある子会社で事故が起こることがある
事故が起こってしまえば、親会社も、責任を追求される
子会社化や分社が進んだのは、1980年代後半だ。その頃日本経済はバブル経済が破綻し企業の更なるコストダウン化が進んだ
製品の製造には、複雑な製造機能もあれば、単純作業の製造作業もある
原料の受け入れや、製品の移動運搬、貯蔵の業容は別会社化や下請け化が進んだ
企業は少しでもコストダウンしたいから、単純と思われる作業はコストの安い手法を採用する
請負という作業形態もある。子会社化や分社化という手法も使われる
コストは安くなるが、安全管理というレベルはそれ相応に下がる 安全はただではない。安全にはお金がかかるからだ
請負側や子会社や分社した組織に親会社並みの専門知識を持った技術者は確保できないのが現実だ
では、親会社が安全面をフォローすればいいと思うがそう簡単にはいかない
親会社とて、潤沢な人材を持っているわけではない。その結果、子会社で事故が起きるようになる
製品を入れた移動式タンクで静電気が原因で起こった事故がある
アース不良で静電気で粉塵爆発が起きた事故だ
https://blog.knak.jp/2010/04/post-724.html
固定式のタンクなら、しっかりと接地がなされ静電気事故のリスクは低い
ところが、移動式であれば接地がおろそかになるというリスクを甘く見ていて起きた事故だ
タンクが塗装されていれば、接触不良も起きやすい
事故後、親会社である発災企業から再発防止策が公開されている
https://www.sumitomo-chem.co.jp/news/files/docs/20100512_1.pdf
参考にして欲しい
生産機能を細切れにし、安全管理の責任をあいまいにすると事故も起きるということだ
子会社化、分社化すれば、安全管理の機能は落ちる
そこをどう補っていくかもしっかり考えて欲しい
人に技術有りだ
最近は企業のDX化が話題になる
しかし、企業活動というものは、単純にAIやIOTで補えないものも沢山あると思って欲しい

 

2023年10月21日

配管の腐食漏洩事故防止の難しさ

化学プランは配管だらけだ。小さなプラントでも数千m、大きくなれば数万mもの長さがある
つまり。対象となる配管が大量にあると言うことだ。腐食に対し検査はするものの全数検査ではない
重要なところの抜き取り検査が主体となる。結果として、想定していなかったところから漏れて事故になる
配管の肉厚検査をしても、数センチ離れれば状況は違う 局部的な腐食も起こるからだ
では、放射線検査で写真をとって平面的に見ればいいのだが、点で検査する超音波検査などに比べコストがかかる
腐食漏洩事故は、2種類ある。外面腐食と内面腐食だ。
やっかいなのは保温を被せた配管だ。保温材の中に入り込んだ水で徐々に腐食が進行する
保温材をはぐってみないと腐食状況がわからないので対応が難しいところがある

化学災害事例を見て見ると、配管の腐食漏洩事例が多い
保温材や保冷材を被せている配管での事故事例が多い
間欠運転であれば、配管に液などが流れていたり、いなかったりするからおこる事故の形態もある
温度のある流体であれば、配管が冷えたり、熱くなったりを繰り返すのだ
冷えれば、空気中の水分が結露する。保温材や保冷材のすき間を通って配管表面に水分が侵入する
時間が経てば、配管の外面腐食が起きて穴が開くのだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-028.pdf
間欠運転で使用する配管は、保温や保冷材にすき間がないかをしっかり見て欲しい
結露で配管腐食事例は多いからだ
間欠運転でもう一つ配管で気おつけなければいけないのは、スラッジだ
連続的に流体が流れていれば、スラッジは溜まりにくいが、間欠運転だとどうしてもスラッジが配管内部に溜まりやすい
配管の立ち上がり部などにスラッジは溜まることになる
腐食性の物質が含まれていれば、スラッジ部で濃縮されたりして腐食速度は上がる
気づかずに運転していると突然穴が開いて噴き出す事例も多い
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00082.pdf
間欠運転だからと行って、管理密度を下げないで欲しい
連続運転や間欠運転で起こる事故要因にも目を向けて欲しい

 

2023年10月15日

安全配慮義務とは

安全配慮義務という言葉がある 誰が誰に対する義務かというと、【労働契約法第5 条】ではこう定めている
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする
」使用者とは、賃金を払う人だとこの法律では定めている。つまり、雇用主と労働者の関係で求められる義務ということになる
労働契約法と、労働基準法とは異なるので注意が必要だ。労働契約法とは、民法だ。刑事罰のような罰則は無い
労働基準監督署の行政指導の対象でも無い。しかし、安全配慮義務を怠ると損害賠償請求を起こす根拠となる
民事上の損害賠償請求を、使用者は求められることになる。使用者と労働者の関係であれば化学企業の中でも安全配慮義務は存在する
化学工場で労働者が機械に巻き込まれたりすれば、安全配慮義務違反という問題も発生する
労働安全衛生法という法律がある。この法律は、事業者(会社)が守るべきこと及び労働者が守るべきことを規定している
事業者が機械を設計する際安全を配慮した設計をせず法律も守っていなければ、安全配慮義務違反にもなる
刑法の法違反は刑事罰で処分されるし、民法上の安全配慮義務違反は民事裁判等で審議される
では、化学企業が装置を停止して、建設業などの協力会社に定修工事を発注するときは安全配慮義務は生じるのかどうかである
発注書は、元請け企業に発注する。元請けは、下請けに仕事を発注するのが建設業などの形態だ
工事で、下請けの労働者が怪我をしたとしよう。
化学企業は、怪我をした労働者の使用者では無い。では、安全配慮義務は生じないかというとそうはいかない
たとえば、下請けの労働者は、化学物質で薬傷を負ったとしよう。発注者は、作業をする労働者が薬傷などを負わないような配慮が必要だ
例えば、装置や配管などの薬液を抜き、十分な水で洗浄を行い安全な環境を確保する必要がある。
それを怠っていれば、安全配慮義務違反から逃れることはできない
発注者は、使用者では無いから安全配慮義務は問われないと思わないで欲しい
多層の契約形態であっても、労働者の安全に関わる事項であれば、上流である発注者までその責任が及ぶことがある
安全配慮義務に関する法令や違反事例については、勉強しておいて欲しい
https://www.oreyume.com/column/p-cat-02/9449/
https://www.irric.co.jp/risk_info/worker/31.php
イラスト出典 https://www.think-sp.com/2013/08/19/kikikanri-anzenhairyogimu/
協力会社が作業するに当たって安全な環境を発注者が提供できていなければ、安全配慮義務を問われることもある
化学企業も人がどんどん減ってきている。事故や災害を自ら経験した人も既に退職している
協力会社に振り向けられる、マンパワーや時間も減ってきている
とはいえ、いかに安全な環境を提供できるかしっかりと発注者は考えて欲しい

2023年10月10日

自動弁が突然開く重大事故は繰り返し起きている

工事の安全管理の中で、「縁切り」という重要な作業がある。危険な物を遮断する作業だ
工場には、危険なものが沢山存在するから、この作業は非常に重要だ。
可燃物が外に出てきてしまえば、火災になる。毒性ガスや、窒素などが漏れ出せば、人は中毒になったり、酸欠になる。
化学工場などは、色々な装置と配管でつながれている。
万一配管を伝って、これらの危険な物が漏れ出せば事故になるから、この縁切りという作業が必要になる。
つまり、「縁切り」とは危険なものを確実に遮断する作業だと考えて欲しい。
配管のフランジ部などに、仕切り板(ブランク版と呼ぶこともある)といわれる金属製の板を挿入して遮断するのが一般的だ。
手動弁を閉めて、縁切りする方法もあるが、バルブは漏れることも考えておく必要がある。
したがって、手動弁を使う場合は2つのバルブを同時に閉めておく必要がある。
つまり、2重にして縁切りの信頼性を確保する方法だ。
一番危ないのは、手動弁ではなく自動弁を使う方法だ。しかも、自動弁を一つだけ使って、縁切りする方法だ。
自動弁が突然開いてしまえば確実な縁切りとはならない。人が間違って、弁を動かして開けてしまうこともあるからだ。
計装空気などで動く自動弁であれば、空気が停止すれば動き始めて弁が突然開いてしまうことがある。
自動弁が意図せず開いてしまうと、可燃物や危険なガスが外に漏れ出し重大な事故につながる。
このような事故は繰り返し起こっているのだが、案外知られていない。
公開されている以下の出典を見て過去の事故事例を勉強して欲しい。
1973/10/8 停電で誤って生きている反応器の自動弁を開き4人死亡 http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000146.html
1987/12/10 自動弁一つで縁切りしていてタンク事故 http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000086.html
1989/10/23 アメリカで23人死亡 https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/2/30_122/_pdf/-char/ja
1994/4/14 大口径自動弁で縁切りして漏れ出し http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000006.html
2003/7/9 一酸化炭素漏れ出しによる中毒事故 http://www.joshrc.org/~open/files/20031118-001.pdf
2007/12/21 高温油漏洩火災で4人死亡事故https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2016_10-2.pdf
自動弁一つだけで縁切りをすることは、大変危険だと仲間にも伝えて欲しい

 

2023年10月08日

有機溶剤中毒

有機溶剤に関して,今まで爆発や火災という切り口ではブログを書いてきた
しかし,中毒などの健康障害という切り口ではコメントはしていなかった
有機溶剤は確かに燃えるから爆発火災というリスクは存在する
有機溶剤は便利な液体だ。色々なものを溶かすという性質がある
水で溶かせれば問題は無いのだが,水では溶かせないという物質も沢山ある
底で登場するのが有機溶剤だ
シンナやトルエン、ベンゼンなどの用語を聞いたことがあるだろう
シンナーというのは,よく使われるのは塗料を溶かす溶剤だ
トルエンなどの有機溶剤の集まりだ
有機溶剤を吸って死亡事故にもなることもある
どのくらいの濃度が危険なのか知っていて欲しい
数十%オーダーの溶剤を吸えばすぐに中毒になる 死亡事故にもなる
数%オーダーの溶剤でも条件によってはすぐに意識を失う
防毒マスクを使えるのもそれ以下の濃度だ
作業環境でやはり数十PPM程度の濃度ではないと人にやさしいとは言えない
数PPMMオーダまで濃度を下げる必要がある
局所排気装置が必要だ
作業者の立ち位置も重要だ
必ず風上側の立たせて作業をする必要がある
有機溶剤は便利な薬液で多くの産業に使われている
しかし、便利さ故に健康障害も多い
有機溶剤を甘く見ないで欲しい

 

2023年09月30日

HAZOP講習

HAZOPに関する講習会を始めてもう6年になる
毎年1から2回ほどWeb方式で講義している
遠隔の方もWebだと酸化したいはずだ
今年最後の私のHAZOP講義は下記のURLにある
https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AG231058.php?gclid=CjwKCAjwgsqoBhBNEiwAwe5w06S9Ae5LjA9LJ9Ivl70-bEifuQDXTd9DClhRUPVyb0f7wfUGMZ0TLRoChmYQAvD_BwE
今年はこれが最後の講義なので興味のある方は聞いて欲しい
HAZOPの講演を始めたのはこんな理由だ
多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている
なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ
つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが多くの企業の現状だ
その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えていて、肝心のHAZOPで見落とすような危険源を教えていないからだ
また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある
HAZOPを使ったり、HAZOP的な思考をすることは大変いいことだと思う
しかし、HAZOPの失敗事例を学ばなければ、企業としての実力はついていかない
心のあるかたは聞いてみて欲しい
私の知っている6000件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例だ。 10月18日開催だ

 

2023年09月26日

製品受け入れ検査の大切さ

過去多くの事故の中で、製品の受け入れ検査を省略化したことで多くの事故が起きている
機械設備を購入したたらやはり受け入れ検査が必要だ
機械を製造メーカーに発注してしまえばそれで終わりでない
製造メーカーがきちんと要求通り製作できているか検査しなければ設置後思わぬ事故が起こることがある
事故が起きるのは、メーカーお任せにするからだ
メーカーとて神様ではない
発注者が、メーカーがきちんと検査しているか管理する必要がある。つまり、発注者はしっかり検査する必要がある
発注者が専門家では無いから検査は無意味だと思わないで欲しい
発注者が、検査しないと言えばメーカは手を抜く。それが世の常だ
ところが、発注者はメーカーに検査に行くとなったとたんメーカはやはり検査への対応を始める
発注者は専門家ではないのだから、検査の中身はそれほど専門的である必要は無い。検査に行くという行動が必要なのだ
多くのメーカ-は発注者にそれほどの技術力は無いと甘く見ている
自社のルールで作った物をユーザーに届ければいいと考えているメーカーは沢山ある
だから事故が起きる
メーカーの検査体制とて完璧ではない。発注者が検査に首を突っ込まなければ検査ミスによる製品も納入される
数十年前だが、硫酸ポンプのエアー抜き弁が材質選定ミスで納入された事例がある
使用を開始して数年後、突然エアー抜きプラグが腐食して外れ運転員が薬傷を負った事故事例だ
検査コストも省略しないで欲しい。必要不可欠だ
メーカー丸投げで事故も数多く起きている
しっかりとした検査をすることも事故防止の基本だ
発注者しっかりと検査する姿勢を見せなければメーカー側の検査は甘くなる
受け入れ検査を大切にして欲しい

 

2023年09月21日

10年毎に大きな地震はやってくる

コンビナートなどで、10年周期で大きな事故は起こっている
10年くらい経つと、環境や技術、人も変わってくるからだ
同じように、地震という災害もやはり10年毎にやってくる
過去約半世紀を振り返ると
1964/6/16新潟にあった当時の製油所で人型地震で大きな火災が起こった
マグニチュード7.5,震度5だ
1978/6/12宮城県沖地震が起こる マグニチュード7.4,震度5だ 仙台が大きな被害を受けた
1983/5/26日本海中部沖地震が起こる マグニチュード7.7,震度5だ 秋田が大きな被害を受けた
男鹿半島で7mの津波が起こっている
1995/1/17兵庫県で地震が起こる 神戸の地震だ マグニチュード7.3,震度7だ 直下型地震だ
2003/9/26北海道十勝沖地震が起こる  マグニチュード8.0,震度6だ 
2011/3/11東北大震災が地震が起こる マグニチュード9,震度7だ 津波で大きな被害が起こる
2023/9/11 地震はおきなかったが、関東大震災(1923年)から100年目だ

これをみると、10年周期で日本のどこかで大きな地震後起こっている
コンビナート地区もこつこつ地震対策を強化していくことが必要だということだ
2011年の東北大震災では、東北地区の企業が大なり小なり地震の影響があった
しかし、おもったほどその被害は多く無い
調べてみると、地震を想定してかなり早い時期から地震対策への投資をこつこつ行っていたという
地震対策の費用は膨大だ。一度に対策は出来ない
こつこつ分割して投資していくしかない
昨今大雨も心配のタネだ
排水設備の能力増強にも投資が必要だろう
地震や大雨などの外乱への投資をこつこつ行っていって欲しい

2023年09月15日

運転中の安易な補修工事で起こる事故

運転中にトラブルがおこればメンテナンス部門は修理する
修理がうまくいけば問題は無いのだが、必ずしもうまくいく修理ばかりではない
こんな失敗事例がある。製油所で起きた事故だ。運転中に小さなピンホールが配管に見つかった
本来なら装置を停めて修理すべきなのに、運転しながら修理することにした
LPGという可燃物の配管だから失敗すれば火がつく可能性はある
それでもこの企業は装置を停めずに修理作業を始めた。ボックスイン工法という手法だ
漏れている部分の外周に箱(ボックス)のようなものを取り付けて封じ込めてします工法だ
企業の参考情報があるので、工法のイメージとして紹介しておく
https://www.ipros.jp/product/detail/2000270319/
事故が起きたときの、工事工法は漏れている配管部分の外周にひと回り太い配管を溶接して周りを囲んで漏れを止める工事工法だった
圧力は1.4MPaある為、溶接するも漏れが生じている部分があり何度も溶接を繰り返した
そのうち時間が経ち、ピンホールの部分の穴が拡大してしまい、いっきにLPGを含んだ水が吹き出した着火した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000151.html
水でシールしながら火を使う工事をしても安全だと思い込んで起きた事故だ
LPGという可燃物が混入している水であれば簡単に着火すると考えるのが正論なのだが水があるから大丈夫だと思い込んだのだ失敗要因だ
大型の製造装置は誰でも装置は停止したくはない
立ち上げるのに時間とコストもかかるからだ
しかし安易に、運転しながら修理をすればちょっとした失敗でこのような事故になる
作業というのは、100%うまくいくという保障は無い
人はうまくいくと信じて作業をすることが多い
「うまくいかなかった」ときのリスクマネージメントもして欲しい
失敗への備えが必要だ。運転中の工事で失敗した事例を学んで欲しい

 

2023年09月10日

安全弁で起こる事故

安全弁という安全装置がある 安全装置が作動しなければ当然事故になる
安全弁は機械式の装置だ 錆び付いたりバネが引っかかれば作動はしない
だから定期的に動作点検をする必要がある
昔は、安全弁を過信して点検もせず使っていていざというときに作動しない事故事例も多かった
設定値の設定ミスというのも事故につながる
安全弁には基本的に元弁はつけない
なぜなら、元弁を開けるのを忘れていていざという時安全弁が役立たなかったという事故事例もあるからだ
安全弁は作動すると、設定圧力まで戻る間は吹きっぱなしの状態になるのが一般的だ
ところが、開いたり閉じたりを繰り返すチャタリング現象というのが起こることがある
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2016/03/DANWA2013_04_No82.pdf
非常に短い時間で開閉を繰り返すので激しい振動が起こることがある
安全弁廻りの配管サポートが弱いと配管などが折れることがある非常に怖い現象だ
今から20年ほど前だが製油所でこのチャタリング現象が起こったことがある
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00192.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00192_s.pdf
安全弁は作動しなければ、問題は無いが作動時の振動に対する対策も必要だ
作動時は、大量のガスなどを放出するのだから激しい振動と反動もある
サポートが弱ければ、配管が切断することもある
怖いのは安全弁の入口側の配管破断だ
配管が壊れれば、流出は停まらない
安全弁の振動対策をしっかりと行って欲しい

 

2023年09月04日

落雷事故-避雷針は万能では無い

先日倉敷の製油所で雷が落ち、火災になった事故が起きている
https://news.yahoo.co.jp/articles/32b1ffcd71e7a351f7c56c8eba9ae20e510b75fb
避雷針があれば雷は大丈夫だと思っている人は多いのかも知れないが、100%避雷針があれば安全というわけではない
雷は、避雷針をめがけていつも落ちてくるわけではないからだ 避雷針以外の所にも当然落ちる
日本では、雷による化学工場災害はあまりないが、外国では雷災害が繰り返し多発している
http://tank-accident.blogspot.com/search?q=%E9%9B%B7
http://tank-accident.blogspot.com/2020/07/blog-post_27.html
http://tank-accident.blogspot.com/2013/08/blog-post_21.html
雷のエネルギーはものすごいものだ。雷もうまく避雷針を狙って落ちてくれればそれでいいのだがそうはうまくいかない
避雷針を離れたところで雷が落ちるとどうなるかだ
落ちたところにわずかに金属同士のすきまがあればそこに火花が飛ぶ
タンクなどのように可燃物を貯蔵している設備であれば火花が着火源となる
あっという間にタンクに火が着き火災になる
つまり、避雷針があれば雷の災害を防げるわけではないというのだ
近年異常気象が続いている とてつもない雷も来る
アメリカでもタンク内の雷放電による事故を減らそうと努力をしているがなかなか被害を減らすことはできない
雷のエネルギはとんでもない量だからだ
雷が落ちた時金属に電気が流れると電磁誘導が起こる いわゆる磁力が発生する
これにより、金属が異常振動することがある
サポートの弱い配管で、腐食した配管が振動で折れる事故も過去にある
ポンプの8Bという太い出口配管が、雷で割れた事故事例だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000071.html
ポンプ出側の配管がエロージョンで減肉しているところに雷を受けたので激しく揺れて配管が割れたものだ
当然割れたところから可燃物が漏れ着火して火災になった事故だ
雷のエネルギはものすごいものだ

 

2023年08月25日

設備保全を深く考えるに当たって参考となる書籍

設備というのは設置したら終わりではない。維持管理していかなければならない
ところが、経営者からみれば今正常に動いている機械にそれほどお金はかけたくない
だから、保全担当者にとってメンテナンス費用の確保は容易ではない
昔メンテナンスを担当していたとき、保全費の獲得に悩んだものだ
メンテナンスにお金をいくらかけたらいいのか悩むところではある
設備は正常に動いていても、定期的に点検していなければ突然故障する
小トラブルで済めばいいのだが、影響が大きければ火災や、爆発事故につながっていくこともある
今回、保全について書かれた書籍を紹介しておく
1冊目は古い書籍だが、良い本なので紹介する。丸善株式会社が出版していた本だ
化学プラントの安全対策技術という4冊シリーズの第3巻だ
書名は 「保安・保全の管理技術」だ。化学工学協会編だ。1979年に発行された名著だ。
絶版ではあるが、ネットで検索すれば手に入れられることもある
化学工学会の会員であれば、ホームページから閲覧できるという
https://www.scej.org/publication/viewable-books.html

もう一冊は、2005年に発行された書籍だ。2000年代というのは設備の老朽化が問題となり始めた時期だ
産業ジャーナリストの丸田敬さんという人が書いた本だ 
タイトルは 危機を救うメンテナンスビジネス 「工場はなぜ燃えたのか」だ
エネルギーホーラムという出版社が発行している
ネットで探してもらえば今でも手に入る https://books.rakuten.co.jp/rb/3712474/
メンテナンスと事故についても書かれている。メンテナンスコストという切り口でも考察している
工場などの設備のメンテナンスを担当している人は読んでみる価値のある書籍だと思う


2023年08月20日

空冷式熱交換器の事故--エアフィンクーラー

夏の暑い時期、空冷式熱交換器の漏洩事故も増えてくる
冷却水で冷やす熱交換器もあるが、空気で冷やす熱交換器も工場で多く使われている
空気で冷却する熱交換器は、エアーフィンクーラーなどと呼ばれる
冷媒として空気を使えば、コストメリットはある。空気はただで手に入れることができるからだ
空冷式の熱交換器は、構造は実に簡単だ。
高温の設備を取り扱う製油所などでよく使われている
換気扇のような大きな羽根を、空冷式熱交換器の近くで回して強制的に冷やすのだ
ところが、この空冷式熱交換器は、結構事故を起こしている
冷却される液体を入れた細い配管チューブが腐食などで穴が開き、漏れたとき火災になる事例だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-150.pdf
流体温度は、数百℃だ。可燃性の油などがこの空冷式熱交換器で冷やされる
ガスケットのゆるみで漏れることもある
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2009-037.pdf
油が漏れると、重力があるから漏れた油は下に落ちていく
下に落ちた際、高温物体がなければいいのだが、たいていは下の方に高温物体がある
スチームトレースをしている蒸気配管などがありそれが着火源になることもある
蒸気の圧力によっては、数百度もあるので、流れ出た物質の発火点を超えていれば簡単に着火する
高温のポンプがエアーフィンクーラーの真下に設置されていて火災になることもある
空冷式熱交換器の下に高温の機器や配管を設置しないで欲しい。万一エアーフィンクーラーから可燃物が漏れれば自然発火する
高温機器の上下レイアウトは、漏れを考慮した配置として欲しい

 

2023年08月15日

最悪の事態を考え人は退避させよ

退避という言葉がある。避難させよという言葉だが、ものすごく意義深い言葉だ
事故が起きたとき、現場に人が沢山いるから被害が大きくなるという事実がある
現場に人がいなければ、被害者は出ない
ところが、トラブルが起きると人はどうしても現場に集まる癖がある
状況を見たいのだ
しかし、トラブルが起こったときは、現場に人を近づけてはいけないのだ
何が原因かもわからない段階で人が近づくことは危険だ
異音がする、異臭がすることがあれば大爆発の前兆と考えた方が良い
過去多くの事故の中でも、異常が起きたからと現場に多くの人が駆けつけたときに爆発が起こっている
1982年03月31日に製油所で多くの人が負傷した爆発事故が起こっている
パトロール中白煙を見つけた。そこへ現場の人が多く集まってきた
5人が死亡し6人が負傷する大事故だ
計器室に2名だけを残し、8人が現場確認のため集った
緊急停止をするために計器室に引返そうとした時だった
現場で可燃物の漏出が始まって4~5分という短時間で破裂したため大きな被害となった。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057045.html
見たい知りたいは人間の欲望だからこれを押さえるのは難しい
とはいえ、化学工場などでトラブルが起きたときは現場に人を近づかせないことだ
現場に近づいて爆発火災で大勢の人が犠牲になっているからだ

2023年08月10日

高温機器の安全管理

製油所や高温の製造装置などがある化学工場では、熱に関する管理が重要だ
常温で運転している機械ばかりではない
温度を上げて運転したり、低温で運転する機器もある
温度を上げて運転する機器はやはり温度管理が重要だ
高温機器の温度管理の目安は、まずは100度だ
水を扱う機器であれば100度を超えれば突沸現象などがおこる
100度前後の温度管理も重要だ
次のポイントは300度くらいだ
300度というのは多くの化学物質の発火点だ。発火点を超えれば火がつくと考える必要がある
300度程度の化学物質がフランジから漏れれば火がつくと考えた方が良い
300度前後の温度をしっかりと管理して欲しい
温度が急に下がると、急冷ということが問題となる。急に雨が降ってきて、冷やされると金属は急激に縮む
フランジなどが急冷して漏れて事故になることは多い
熱交換器のフランジ部では熱による事故も多い
雨が急に降ってきて、フランジが急冷され隙間ができて漏れる事故も多い
急激に金属が冷やされて隙間ができる事故だ
高温の熱交換器は、雨で影響を受けないようにフランジ廻りは雨よけカバーがつけられてい
ウエザーカバーという薄い金属でできた鉄板で保護している
雨よけのカバーをウエザーカバーという。.雨よけのためだから保温と言う機能は無い
単なる雨よけのカバーのはずなのだが、たまに誤解をして保温材をカバーに組み込んでしまうことがある
保温をしてしまうと、今度はカバーの中が温度が上昇しすぎて事故になることがある
温度が上がりすぎて事故になってしまうのだ。
フランジ廻りというのはほどほどの温度にしておかないと金属が伸びすぎて事故になる
暖めすぎず冷やしすぎずが管理のポイントだ
でもそこがなかなか難しい
人は、熱を無駄にしないように余計な保温をするからだ。暖めすぎればやはり問題が起こる
熱を上手にコントロールして欲しい

 

2023年08月05日

廃油をバキュームカーで処理して起こった着火事故

夏の暑い時期に工場の廃液をバキュームカーで処理していて起きた事故を紹介する
工場で廃液がでたときは、バキュームカーが使われることもある
排水など不燃性の流体は問題は無いのだが、可燃物となると着火爆発のリスクを考えなければならない
なぜならば、バキュームカーは車だから着火源となるものが存在する
エンジンやマフラーという高温部がある。更に機器を操作するスイッチ類もある。電気品は防爆ではないから火花は出る
可燃性物質は発火点や引火点が存在する。車の高温部と発火点や引火点が近ければ着火すると思わなければいけない
1974/8/2に川崎にある製油所で臨時の排水処理作業で起こった事故だ
<公開情報は無いが、高圧ガス保安協会が平成3年に発行した「コンビナート事故事例集」の事故事例NO125に詳細は記載されている>
事故の顛末はこうだ
廃油タンク(ガソリン、灯油他)の配管変更の工事を行なうことになった
300mある既設配管内の廃油の抜き取り作業を行なっていた
フランジのボルトをゆるめて、配管を吊り上げ廃油を少しずつ流出させて油を受ける小容器に受けながらバキュームカーで吸引していた
ところが、油の流れが悪いので30mの配管を吊りあげたところ配管のたわみ部に溜まっていた油が、一気に出て油受けから溢れてしまった
油受け皿と、バキュームカーが2m程しか離れていなかった。ルールではもっと離すことになっていたが守られていなかった
溢れた油が、バキュームカーの停まっている近くまで拡がってしまった
その結果、エンジン排気管付近から引火したという
バキュームカーの主電源スイッチを切ったときの火花で着火したという
配管の脱液が不完全だった事故ではあるが、バキュームカーを使ったことが法令違反だということだ
消防法ではガソリンなどの第一石油類はバキュームカーでの汲み上げはできないことになっている
引火点40度未満だからだ
バキュームカーが火気であるとの認識が薄れていたことが事故の原因でもある
更に法令で引火点40℃以下の可燃物はバキュームカーを使ってはいけないということを知らなかったことも要因だ
車は火花を出したり、高温部分もある
車は着火源でもあると考えて欲しい

 

2023年07月30日

電気ケーブル火災

電気ケーブルというのは工場で沢山使われている
電気ケーブルの被覆はプラスチックだから火がつけば当然燃える
ケーブルという物は可燃物なのに火災という切り口での関心は薄い
電気ケーブルに火がつく事例で、油の付着で劣化が進み漏電して火がつく事例がある
ケーブルの外側に油が付けば、ケーブルを保護しているプラスチックやゴムが劣化する
劣化が進むと、どこかで放電が起こる
ゴムやプラスチックは可燃物だから着火する
最初はくすぶる程度だが、炎が大きくなるとあっという間に延焼していく
工場などでは、ケーブルダクトに沢山の電線が張り巡らせてあるから当然近くのケーブルにも延焼する
コンビナートで電気火災に関心を持ち始めたのは今から50年前の1970年代だったと思う
色々な所で、電気室火災が起こり始めたからだ
電気ケーブル工事でケーブルに傷をつけたことにより起こった火災もある
ケーブルにわずかな傷でもあるとそこを起点に放電する性質があるからだ
端子の接触不良で発熱して火災になった事故もある
ケーブルダクトに延焼防止剤を塗布しておらず、トンネル効果で炎が広がった事例もある
この頃を契機に、各工場ではケーブルダクトの防火区画を設けるようになった
数十m置きに、難燃性の樹脂をケーブルダクト内に充填して延焼防止をはかったものだ
とはいえ、開放型のケーブルダクトではこれだけでは延焼防止はむりだ
とにかく電気ケーブルが発火しない環境を作り出すことだ
通風の悪いところは発火し易い 高温の製造装置からは、ケーブルダクトはかなり離すことだ
高温機器の真上にケーブルダクトを通していれば、どうぞ発火してくださいというようなものだ
油や油ミストがかかる位置にケーブルを配置しないことだ。ケーブルの寿命を短くするからだ
たかが電気ケーブルと思わないで欲しい.良く燃える可燃物だと思って欲しい
昨今、発熱の早期発見で赤外線カメラを使う企業も多い
異常に早く気づく為の安全投資にも力を入れて欲しい

 

2023年07月25日

使わなくなった設備早めに撤去せよ

学工場で使わなくなって放置していた設備が事故を起こすことが多い
まだ使うかもしれないから撤去しないケースもあるだろう
撤去したいが、撤去費が無いから撤去できないケースもある
多くはお金が無いから撤去できないというのが企業の実情だ
すぐに撤去できないで装置を放置していると色々な事故が起こる
多くの装置は鉄で出来ている。鉄は時間が経てば腐食する
腐食すれば穴が開くことがある。ならば、装置内の液を抜いておくことが望ましい
液に水分や腐食性のものがあれば必ず時間がたてば腐食が進行する
製油所で不要配管撤去中重油が漏洩した事例がある
本来使わなくなったのだから液を抜ききちんと洗浄すべきなのに液を入れたまま放置していたのだ
液には腐食性物質が含まれていた。時間とともに腐食が進行していたが気づいていなかった
腐食した部分は錆が発生し錆こぶが出来ていた
錆こぶのおかげで、漏れなかったが撤去のためチッ素で加圧したため錆こぶがとれ内部の液が漏洩した事故だ
https://shippai.org/fkd/cf/CC0000182.html
使わなくなった配管に水がたまり、冬場凍結して事故になった事例もある
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00207.pdf
15年間野ざらしにしていた反応器を再び使い始め破裂した事故もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057048.html
使わなくなった配管をバルブ1つで縁切りしていて起きた事故事例がある
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200096.html
ボイラーにつながる配管で、バルブ漏れで可燃物がボイラー側に流れ込みボイラー内で爆発が起きた事故だ
撤去せず安易にバルブ1つで縁切りしていたことが問題点だ
仕切り板でしっかり縁切りすることが大切だ
撤去費はなかなか企業でも認可されにくいという傾向がある
使わなくなった設備はそのまま放置しておけばいいという考え方が一般的だ
しかし、放置しておけばいつか色々な問題を起こす
使わなくなったら早めに撤去するかしっかりと既存の装置と縁切りして欲しい

 

2023年07月21日

タンクの窒素シール事故

可燃タンクには窒素シールが行われている
タンク内部をチッ素でシールして爆発混合気を作らないようにしている
可燃物のタンクであれば、可燃性液体が蒸発すれば当然可燃性蒸気がタンク内に出来る
可燃性蒸気は空気が存在すれば爆発混合気ができる
何らかの着火源があれば、タンク内で爆発が起こる可能性がある
この危険性を除去する為に、タンク内にチッ素を入れ込む方式がタンク窒素シールと言われる
このタンク窒素シールというのを企業が導入し始めたのは1970年代だ
それ以前は、タンクの爆発事故が多発した
では窒素シールという設備を導入したら安全かというと維持管理しなければ事故は起きる
チッ素が停まっているにに気づかなければやはり事故になる
チッ素はタンクが破裂しないように一定圧力で供給される
圧力調節計という計器で供給量が制御される
この圧力調節計を長いこと計器の点検をしなかったことで、タンク圧力が異常に高くなり事故が起きることがある
12年間計器を点検していなかったことによりタンクが破裂したこともある
計器にはゴムの部品が使われており、劣化していたのだ
タンクには圧力が高くなったとき、圧力を逃がす排気弁という安全装置も併用して設置されている
圧力調整用の計器が故障しても、圧力を安全に逃がせるようにしている
しかし、この圧力を逃がす排気弁も長期間点検されておらず故障していたのだ
装置の内部が錆び付いていて、正常に作動していなかったのだ
安全装置や計装機器は定期的に作動点検が必要だ
機械は時間が経てば故障することもある
定期的に正常の動作しているか確認して欲しい
機械は据え付けたら終わりではない
常に維持管理が必要だ

2023年07月15日

保護具の選定は最悪の事態を考えて選定せよ

保護具に何を使うかはよく考えて欲しい。目を守るのであれば、メガネを使う
ゴミや塵の飛散物から目を守るのであれば、ガラスを強化した保護メガネ(平メガ)が使われる
しかし、薬液から目を守るのには、これでは不十分だ 上下や側面から飛散した液が入ることがあるからだ
では、ゴーグルでいいかというとそうでもない 完全に密閉したゴーグルでは曇りがでるから、一部に空気抜きを設けているゴーグルもある
この空気抜きから薬液が入り込んだ事例もある
そうなると、ゴーグルの外側に透視面という透明のお面のようなものを併用することになる
こうすればほぼ100%に近い確率で目の保護が可能になる
ある化学工場での定期修理中で起きた猛毒のシアン系設備を洗浄中に起こった作業員の中毒死亡事故が起こっている
熱交換器という装置の中を高圧の水を吹きかけて、内部を洗浄する作業中作業員が死亡した事故だ
洗浄機器の中に残っていた猛毒のシアン化水素(青酸)を含んだ液を吸い込んだか飲み込んだという
https://www.sumitomo-chem.co.jp/news/detail/20220113.html
270PPMで即死と言うから、微量吸い込んだだけでも死にいたる物質だ
高圧の水を吹きかけて装置の中の残留物を吹き飛ばし除去する作業をしていた
作業員はゴムでできた作業着と、顔の部分には保護カバーの付いたマスクを着用していた
今までこの作業は、15年間行われており事故は無かったという
ところが、今回死亡事故が起きてしまったのだ
高圧ガス保安協会から事故の報告書が公開されている
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/2022/02_2021-000.pdf
作業員の保護具は単なる顔を水しぶきから守るゴム製マスクだけだったという
このマスクは、呼吸のために小さな穴が開いていてそこからガスを吸い込んだか、液が入り込み口に入り5日目に死亡したという
問題点は何かというと、完全密閉型の保護具を使っていなかったと言うことだ
私が以前勤めていた企業でもこの有毒なガスを製造していた。やはり、過去に死亡事故が起きている
猛毒の物質の洗浄作業なのだから、本来は万一を考えエアーラインマスクを使うべきだったのだろう
保護具に甘さがあつたと言うことだ 今まで事故が起きなかったのが不思議なくらいだ
猛毒の物質を使う企業は他にも沢山ある 今まで事故が起きなかったから、今の保護具で安全と言うことではない
命に関わる作業での保護具は、ワンランク上の保護具の採用も考えて欲しい
保護具の選定は最悪の事態を考えて選定して欲しい

 

2023年07月10日

低温というリスクを見落とすな

温度が髙いや低いは[HAZARD]として意識しているのだろうかいつも気になるところだ
自分のプラントに使われている金属は何度まで使えるか考えたことはあるのだろうか
たいていのプラントで使われているのは、鉄だ。この鉄は、高温なら何度まで使えるか知っているかだ
普通の鉄なら、350°くらいだ。ちょっと温度が髙いボイラーでも、550℃ぐらいと言うところだ
800℃や1000℃では鉄は使えない。ならば鉄は低温まで使えるかというと、低温には実に弱い
マイナス20℃がいいとこだ。ちょっとした寒波が来れば鉄はかなり「リスク」がある
低温脆化という言葉を知っているだろうか.金属は温度が下がると、脆くなり割れたりすることがある現象だ
皆さん方の所で、低温脆化をどれだけリスク評価しているのだろうか
低温脆化の事故事例は少ないが甘く見ないで欲しい。こんな事故事例もある。参考にして欲しい
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00271.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00272.pdf
ネットを見ていたら中国での化学工場事故が載っていた
http://tank-accident.blogspot.com/2019/08/15.html
酸素や窒素、アルゴンなどのガスを製造する極低温を取り扱う工場だ
液化温度はマイナス150位の温度になるので,非常に低い温度(極低温という)で運転することになる
非常に温度が低いため、設備は熱の移動を防ぐ為2重構造で設計されている
いわゆる魔法瓶のような構造だ。極低温のガスや液体が通る設備の外側には,断熱材が張り詰められている
その外側には,断熱材をカバーするような金属製の外筒が付けられている
内側の装置は、極低温で運転するのだから、低い温度でも耐えられる金属材料を選定する
しかし、外側の金属製の外筒は大気と接する温度なので,極低温に耐える金属は使用することは無い
つまり、価格の安い鉄が使われる。鉄は、常温では十分な強度を持っているが,マイナスの温度になると極端に金属強度が落ちる
今回の,中国の事故は内側の装置からマイナス150位の極低温のガスが漏れ出していた
結果として,極低温のガスが外側の,低温には弱い金属部まで達したようである
外側のカバーは,極低温のガスに触れたことによりもろくなり破裂してしまったようだ
HAZOPでも,温度の低いガスの近隣の設備はこの低温脆化のリスクを徹底的につぶしておくことが必要だ
極低温ガスが逆流すれば,鉄配管はひとたまりもない。熱交換器でも,急激な気化が起これば蒸発により急激に温度が下がることもある
零度以下の低温側への温度のずれについて常に関心を持って欲しい

 

2023年07月07日

小口径配管が引き起こす事故

製油所や化学工場では沢山の配管が存在する
太い配管は、漏洩などがおきればリスクが高いのでしっかりと点検や整備が行われる
ところが、口径の小さな配管は案外おろそかにされる
そこで多くの事故が起こっている
小口径配管という用語がある。配管サイズが1B未満の配管だ
ミリサイズで表現すると、直径25mm以下の小さな配管だ
計装設備の配管はこの小口径配管だ
ポンプ廻りの、エアー抜き配管やドレン配管も、この小口径配管だ
ポンプであれば当然振動もある。この小口径配管のサポートをしっかり取っていなければ、振動で折れることもある
小口径配管というのは、ネジ接続が多く使われる。ネジは、強度的に弱いのだがコスト的に安いのでこのネジが使われる
ネジ接続は、長期間振動が加わるとネジ部が破損する事故事例が多い
小口径配管は、口径にかかわらずきちんと配管サポートを取るべきなのにサポートはしっかり取られていない
結果として、長期間の振動でネジ部が外れたり折れたりして液の漏洩により事故が繰り返し起こっている
配管サポートは口径の大小にかかわらず必要だ
たかがサポートと思わないで欲しい エアー抜き弁だけではなく、ドレン弁の振動で配管折損事故も多い
ポンプや圧縮機などは目には見えなくても機械は微妙に振動している
振動が繰り返せば一番弱いところが壊れる
たいていはネジで接続した部分だ ネジは折れやすいからだ
振動だけでは無く、腐食事故もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000028.html
一度自分のプラントを「配管サポート」という切り口で点検して欲しい

 

2023年06月30日

ホットボルテングで起こる事故

配管の接続方法には「溶接」,「フランジ」,「ネジ」の 3 種類を使い分けて使用するのが一般的だ.
溶接で接続すれば,漏れが起こる確率は少ない.漏れてはいけない可燃性流体や,毒性ガスなどにはこの溶接方式が使われる.
フランジは,何かあったとき取り外して点検したり出来るのが利点だ
ところが、フランジはボルトで締め付けることから事故が起こり易い
締め付け力が足りていなければ当然漏れる。可燃物が漏れれば火災へとつながる
フランジを使うとやっかいなのがこの漏れである
更に装置の温度は一定では無い。常温から徐々に加熱していく作業もある。
逆に、停止する為温度を下げていくこともある
ボルトは、金属でできているから、温度変化により伸びたり縮んだりする
温度変化の大きいところであれば,フランジの締め付けボルトが熱で伸び縮みして締め付け力が緩む
そこで、スタートアップやシャットダウン時には、「ホットボルテング」と呼ばれるボルトの増し締め操作が行われる
低温系では、温度を下げていくときやはり「コールドボルテング」という締め付け管理が必要となる
ホットボルテングが事故の原因として理解され始めたのは、1970年代ころからだ
最初の頃は、増し締めするタイミングが理解できていなかった
ホットボルテングを300℃から始めて漏れた事例もある。事故後、200℃からホットボルテングを始めたという事故の記録もある
1回しかホットボルテングを実施せず失敗した事例もある
温度の変化が大きければ、1回やればいいわけでは無く、温度上昇の過程毎に繰り返す必要もある
また、大口径のフランジはホットボルテングは必要だが、小口径は不要との誤解も多かった
温度が変化するなら、口径にかかわらずホットボルテングは必要だ
温度を変化させるスピードも影響する。1時間当たり100度も変化させ漏れたという事例もある
事故後、昇温スピードは50度/時に変更してリスクを減らしたそうだ
温度の変化も漏れには重要なキーワードだ
フランジの熱応力に関するいい文献があるので紹介しておく
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/management/pdf/no-2.pdf
温度によるボルトのゆるみを甘く見ないで欲しい

 

2023年06月25日

目新しい事故が増えているわけではない 

例年5月末に,消防庁から火災などの事故の統計データーが公表される
一つは、全国の危険物事故データー集計版だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/230529_kiho_1.pdf
もう一つは,コンビナート地区での事故データーを集計したものだ
https://www.soumu.go.jp/main_content/000881793.pdf
相変わらず,コンビナート地区の事故件数は高止まりだ
事故の内容を見ても、半分くらいは人のミスだ。誤操作、誤判断などを繰り返している
設計や工事のミスも毎年同程度だ  徐々に増えているのが老朽化だ
化学産業が始まって約100年になる。
日本で化学産業などの工業が始まったのは1910代だ
多くの化学企業がこの頃に起業している
当時から事故の情報は資料としてほとんど残っていない
石油や化学工場での事故情報が活字で残るようになったのは、1960年代からだ
日本でコンビナートという化学産業形態ができたのが1958年だ
石油を原料とした石油化学産業が台頭した
石油精製は、戦後すぐに動き出したがやはり、1950年代からだ
つまり、1960年代から多くの事故が起き記録として残っているが、解析してみるとやはり同じような事故の繰り返しだ
事故のデーターベースがあるのでここに紹介しておく まずは高圧ガス事故だ
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.khk.or.jp%2FPortals%2F0%2Fkhk%2Fhpg%2Faccident%2F2022%2Fincident_db_2022.xlsm&wdOrigin=BROWSELINK
労働安全総合研究所の事故データーベースだ
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
これらの事故データーを見ると 目新しい事故が増えているわけではない 同じような事故が世の中で繰り返し起こっているだけだ
99%近くが同じような事故とも言われている
同じような事故が起こっていると言うことは人は同じミスを繰り返すと言うことだ
時間が経てば忘れる 10年も経てば,社会環境や技術も変化する だから技術伝承や変更管理が必要なのだ
過去を学んで欲しい 過去に起こった事故は将来起こる 過去に学事故を繰り返さないで欲しい

 

2023年06月20日

配管工事時の縁切りの大切さ

昨日新潟県にある化学工場で配管切断工事中に死亡事故が起きた 作業員1名が死亡したという
https://www.fnn.jp/articles/-/542229
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1140/20230614_denka_omi.pdf
事故には予兆があると言われるが、今年4月に入って何度も火災事故が起きていた
消防の立ち入り検査も受けていた
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/457858?display=1
数年前にも工事で事故を起こしている
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/762/20200907_denka_omi.pdf
この工場に限らず、現場工事では何度も事故が起きている 過去の事故事例で配管工事に関わる事例をいくつかを紹介する
石油精製や化学工場で火気工事をするなら、縁切りが必要だ
工場内では可燃物や毒性ガスが沢山あるからだ 当然残圧があれば破裂事故も起きる
今から、26年前1987年には大きなタンクの爆発事故が3件起きている
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/28/3/28_167/_pdf/-char/ja
1987/5/26日におきたタンクの爆発事故を紹介する
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000053.html
東京品川の電力会社の発電所の燃料タンクの事故だ 4人が爆発で吹き飛ばされ死亡した事故だ
火気工事管理のずさんさが招いた事故だ
タンクは在液のままであった。内容物は原油と他の混合油だ。当然可燃物である
タンクから液を抜き出すポンプ廻りで配管の枝出しをしようとして火気工事を始めたという
タンクと火気工事場所を配管の縁切りをしていたかというと、一部は実施したがポンプからタンクへ戻る配管はしていなかった
タンクは当然蒸気圧分のガスはあるから、この戻り配管を伝ってガスが火気工事場所に行ってしまった
結果として、配管周りで爆発して作業員が吹き飛ばされた この火炎は当然、タンク側へ戻りタンクそのものも大爆発してしまったのだ
火を使う工事であれば、しつこいくらいに危険物の除去や縁切り作業が必要だ
火を使う工事を甘く見ないで欲しい
現場工事の管理レベルというのは長い時間かけて出来上がったものだ
人に依存するところも多い ベテラン社員が退職していけば管理レベルも変化してくる 人に技術有りだからだ
現場の安全管理力が維持向上できているかチェックして欲しい

 

2023年06月15日

緊急時に作動させるスイッチなどの配置に思う

色々な企業や工場を見る機会がある
装置のそばには緊急時のスイッチが設置されているのを見る
労働災害を考えて、緊急停止スイッチが設けられている
機械に万一人が巻き込まれたときに作動させるスイッチだ
配置場所をよく見てみると、挟まれた人から遠すぎる配置になっている事例が多い
つまり、実際に事故が起こったことを考えずただスイッチを配置しただけなのだ
この位置では、どう見ても挟まれた人の手が届かないという事例を多く見かける
スイッチではいざという時、ピンポイントで押さなければいけない
痛みをこらえて押せるとは限らない
そこで、ヒモを引っ張る緊急時SWの形態や足で踏むタイプのSWを併用している企業も多い
労働災害対応用の緊急時SWは、配置場所や作動方法も深掘りして考えて欲しい
いざという時に本当に被害者が作動できるか見直して欲しい
火災などの事故を想定しての緊急時スイッチも配置場所が大切だ
火災を想定してのケースでは、発火場所に近すぎてもいけない
炎が大きすぎて、スイッチの近くまで行けなくて自動消火機能が作動しなかった事故事例も多い
つまり、現場に近すぎてもいざという時作動させられないのだ
そこそこの距離を離しておくことも大切だ
とはいえあまり離れると、いざという時設置場所を忘れていて対応が遅れるケースもある
出来れば、災害想定場所と少し離れた場所の2箇所に緊急時スイッチは設置したい
緊急時に使用する設備の作動スイッチはレイアウトもしっかり考えて欲しい
いざという時現場に近づけず作動させられ無かったということにならないようにして欲しい

 

2023年06月10日

電気火災におもう

電気や計装の事故解析をしてもう何十年にもなる
電気設備が原因で事故が起こることがある 電気設備には特有の事故原因がある
事故の原因は、様々だが電気が多く流れすぎたか、本来とは違うところに流れ込んだ現象である漏電が原因だ
電気設備には特有の事故は過電流による事故、漏電事故の二つだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/29/8/29_612/_pdf/-char/ja
過電流の原因は、異常電流に耐えられず電気部品がショートするからだ。つまり、絶縁不良がおこり電流が流れすぎて火がつくのだ
老朽化が原因となることもある。本体の性能が落ちてケーブルが劣化して短絡事故が起こることがある
漏電は水分が影響することもある。
工場で多いのは、塵や水分などが多い。粉塵対策がしっかり出来ていない電気の盤などでよく起こる
工場の雰囲気が悪いからだ。パトロールしていて電気盤内が汚れていれば粉塵が原因だとすぐわかる
電気火災は過電流と漏電が原因なのだから、事故を防ぐ手はある
過電流は、電気回路にしっかりと過電流遮断器を複数組み込んでおけば、かなりの確率で発火を防げる
しかし漏電は、過電流遮断器だけでは防げ無い。漏電遮断機という装置が必要だ
漏電発火事故が起こるのは、案外この漏電遮断機が設置されていない事例が多い
過電流遮断器というのはヒューズのような装置だ。ヒューズは必要なことは結構知られているが、過電流遮断器は知られていない
電気事故防止には、ヒューズの機能をする過電流遮断器は最低限必要だ
ところが、漏電遮断機は設置されていないケースが多くて漏電事故が多数起きている
電気設備の事故を無くすには、過電流遮断器と漏電遮断機をセットで設置する必要がある
電気回路の安全を守るにはこれらの遮断機を効果的に配置することが必要だ。これを系統設計という
企業の電気回路を見て、漏電遮断機が少ないか、設置されてなければやはり電気火災は起こる
電気事故防止にはそれなりの安全装置が必要だ。安全装置があれば小火は起こるかも知れないが、本格的な火災はくい止められる
安全担当者は製造系や機械系の技術者が多い。電気に関する事故は、電気の専門家で無ければ事故の本質を見抜くのは難しい
電気というのは目に見えないものだからだ
電気事故に関しては、電気の専門家のアドバイスが必要だ


2023年06月05日

危険物や高圧ガスで法規制されていない物質だからといって安心するな

時代の変化に伴って、新しい化学物質が生まれてくる
1990年代から2000年代にかけて、半導体産業やフロンガスの代替製品の開発で新しい物質が開発された
2000年6月10日に大きな爆発を起こした化学物質がある
ヒドロキシルアミンと言う反応性に富んだ物質だ
爆発で4人の死者が出て58人が怪我をしたという。以下のURLで事故の概要がわかる
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000050.html
当時危険なことはわかっていたが、国は消防法での規制はしていなかった
毒劇物での規制だけしかしていなかった
国内ではこの企業しか生産しておらず稼働率も高かったという
海外でのこの物質を生産する企業も少なく、物質危険性に関する情報も少なかったと思われる
とはいえ、アメリカで1992年2月にこの物質を造る工場で爆発死亡事故が起きている
海外で事故が起こっても、日本に情報が伝達するには時間がかかる
日本に情報が伝達されても、詳細情報が手に入るという保障は無い
事故を起こした企業が、海外の情報を入手していたかはわからない
結果として多くの死傷者出す爆発事故が日本で起きた
企業は事業を再開することも出来ず倒産した
事故後日本でも、法指定の有無が検討され、最終的に、消防法の規制対象になったという
危険なことはわかっていても、なかなか法規制の対象品目になるとは限らない
法は最低限の規制だからだ
法律で規制されないから安全だと思わないで欲しい
まだまだ化学物質については、わからないことは沢山あるのだ
非危険物だから安全だと思い込まないで欲しい

2023年05月30日

確立された技術だから安全だと思い込んでいないか

自分たちが取り扱っている技術を見て欲しい
まだまだ未熟な技術だと考えれば人は、危険だと思う
ところが開発されて数十年も経ち使われてきた技術は人は安全だと思い込む
そこに事故の芽がある
今まで安全だから、大丈夫と思い込むからだ
化学の世界で安全はない
危険な物をコントロールできているから安全で有り、少し間違えれば危険なことが起こる
人は危険な物は最初はかなり慎重になるが、時間が経つにつれ感性が鈍ってくる
そこで事故が起こるのだ
こんな事故がある。1970/5/15に起こった事故だ
アセトアルデヒド法の酢酸を製造するプロセスの爆発事故だ
当時は、この製造方法は確立されていて事故は起こるとは思われていなかった
スタートアップ時に、アセトアルデヒドの濃度管理が明確で無かったことにより異常反応が起きた事故だ
運転マニュアルも甘えがあったのかお粗末だった
濃度に関するチェック項目も無く、反応器に仕込んだ量を監視する液面警報も無くかなりずさんな管理だった
結果として濃度が高く爆発した事故だ
今まで大丈夫だったという考え方から、警報やマニュアルの整備も進んでいなかったのだろう
その当時は日本ではまだHAZOPも導入されていなかった。HAZOPを日本で使い始めたの1980年代だ
HAZOP的な対応をしていれば防げた事故だ
異常に気づく仕組みを導入して欲しい
警報があれば安全というわけでは無い。警報を聞き漏らしても安全な対策を立案して欲しい
HAZOPとはどんな物かは、私もセミナーで講演することがある
7/26にWebでの講演をするので興味があれば聞いてみて欲しい
https://www.rdsc.co.jp/seminar/230763

 

2023年05月25日

自動制御の進化

石油精製や化学工場では、自動制御があって成り立っている
広大な敷地にある設備を少ない人間で制御できているのは、自動制御が存在するからだ
しかし、すべて自動制御で行えばいいかというとそうはいかない
自動制御にはお金がかかるからだ
どこかで妥協点が必要だ
ここは人が見る、この領域は自動制御に任せると決めておく必要がある
自動機械の信頼性と、コストによりその業務分担は左右される
単純な仕事は機械に任せたい
とはいえ単純なら人のがコストは安いかも知れないが、人は単純な作業でもミスを犯す
複雑になると機械が必ずしもこなせるとは限らない。高度化に対応する機械を導入すればコストもかかる
人と機械の分岐の難しいところだ
人が得意なのは、何かだ。機械が得意なのは何かだ
瞬時の判断だと、必ずしも人は得意だとは限らない
時間が沢山あれば、有効な判断を人がしてくれるかも知れない
お金との兼ね合いはあるが、人が不得手なところは機械に任せればいい
今から40年くらい前の話だが運転がうまい人が沢山いた
なぜうまいのかと言えば、色々な経験をしてプロセス変動を先読みをするノウハウを持っていた
過去の経験値が沢山頭の中に詰まっていて、それを運転技術に活かしていた
しかし、もうそんなノウハウを持った人は工場にはいなくなってきている
たぶんそれを補うのはデジタル技術なのだろう。AIが昨今論議されるようになってきている
自動制御も単純なフィードバック制御から、AIなどの支援による制御へと進化していくのだろう
とはいえ技術の導入には人も金もかかる
対象分野を選んで上手に投資していくことが求められるのだろう

 

2023年05月20日

HAZOPでは2つ以上の安全対策の組み合わせを常に考えて欲しい

HAZOPはずれを想定して事故を未然に防ぐ安全性評価手法だ
基本的な手法は実に簡単だ。化学工場であれば、まず、製造プロセスで起こるずれを想定する
例えば、流量を考えてみよう。通常運転時から、流量が変化することはずれとなる
流れが減ったとか、増えたは「ずれ」となる
ある加熱炉の事故事例をHAZOP的に考えてみよう
鉄さびでポンプストレーナーが詰まり、蒸留塔への原料が減りそれが引き金で起こった事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-217.pdf
定修の期間が、いつもより長くなったことで配管内で錆がいつもの定修より増えていた
スタートアップ時には、この錆を取るため循環運転をしていた
しかし、循環運転の時間は、いつもより長めにすることはしなかった
このため、蒸留塔へ原料を供給し始めたものの運転は安定せず、本来塔頂側に行かない留分が行ってしまった
そこで、2番目のずれが発生した。リフラックスのポンプが過負荷で停止したのだ
その結果、リフラックスドラムが満液となった。3番目はリフラックスドラムの液面のずれだ
液が満液となったことで、リフラックスドラムから溢れた液は、フレアーラインにつながる気液分離ドラムへ流れ込んだ
4番目にずれは、気液分離ドラムの液面上昇だ。警報は鳴ったが、1回限りの警報で運転員は聞き漏らした
本来なら、気液分離ドラムから発生するガスは配管で加熱炉に送り込まれ、燃料用ガスとして用いられていた
ところが、本来行かないはずの燃料用ガス配管に液が入り込み、加熱炉へ流れ込んでしまった
結果として、炉床で異常燃焼が発生した事故である
HAZOP的にはどのような問題点があったか考えてみると良い
まず警報があれば大丈夫と考えるところが落とし穴だ。この事例のように1回限りの警報では聞き漏らすこともあるからだ
大事なポイントは、警報を見落としたときの対策だ。何分おきかで、繰り返し警報を鳴らすのも手ではある
しかし、異常に気づかなかったときはやはりインターロックで自動的に遮断して本質的な安全を確保するしかない
HAZOPで考えて欲しいのは、警報などの一つだけの安全対策では破られたら終わりだと言うことだ
2つ以上の安全対策の組み合わせを常に考えて欲しい

 

2023年05月15日

設計や保全部門を分社化するとどんな問題が起こるか

石油精製や化学企業などでは設計を担当する部署と、保全や工事を担当する部署がある
設計部門は、装置の設計をしたり改造をする部門だ。設計や エンジニアリング部門とも呼ばれることがある
保全は修理をしたり維持管理する部署だ。新設や定修時の工事管理も行うこともある。保全やメンテナンス部門と呼ばれることもある
工事管理の機能は、エンジニアニアリング部門に入れるかメンテナンス部門に入れるかは企業によって違う
企業内にこの設計や保全部門を保有する企業もあるが、これら部門を分社化しているケースもある
過去の歴史を見ると、エンジニアリング部門は分社化させ独立した事例も多い
三井系の企業で、昔東洋高圧工業(現三井化学)という企業があった。アンモニアの製造技術を保有し世界の企業に技術輸出をしていた
1960年代、そのノウハウを持ったエンジニアリングの技術者達を分社化させ独立させた事例がある
東洋エンジニアリングというエンジニアリング会社だ。エンジニアリングの分社化で成功した事例だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B4%8B%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0
保全や工事管理部門もその後、三井東圧機工や東圧プラント建設と企業として分社化している
企業内の合理化の延長のなかでいわゆる工務系(設計・保全・工事など)とよばれる人員削減のため、従来の社内保有技術を外部
に活用して稼げという分社化だ。企業内の一部機能を分社化するので機能分社とも言う
不景気や合理化という波はその後もやってくる
1980,1990年代に多くの企業で、工務系(設計・保全・工事など)などの分社化が行われた
分社後企業のねらい通り人員削減は行われて行ったものの人に技術有りだから、人が減るにつれ技術力や組織力は落ちていった
石油精製や化学企業などの親会社は、分社化した企業に仕事を頼む形で設計・保全・工事が行われていた
設計・保全・工事というのは、分割出来るところもあるが、分割するとそれなりの不具合も出てくる
例えば設計思想が、きちんと保全部門に伝わっていなければしっかりしたメンテナンスは出来ない
2000年代石油精製企業で配管の内部腐食事故が起きた 被害額は60~70億円と言われる
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200043.html
この事故を契機にして2000年代、石油精製や化学企業は分社化していたエンジニアリングやメンテナンス部門を本体側に戻していった
機能を分割するというのは簡単だが、すぐには弊害が出てこない。時間が経ってから問題が出てくるのが常だ
2010年代に石油精製や化学企業などの大きな事故が立て続けに起こった
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_15/15rijityou2.pdf
生産技術を細切れにし、安全管理の責任をあいまいにしたことも背景にあるのだろう

 

2023年05月09日

化学企業が行っているDX

2000年頃からDX(デジタルトランスホーメーション)という技術革新が始まった
コンピューター技術の革新がこのデジタル技術を使った技術革新を急速に推進してきている
企業には膨大な情報がある
化学産業であれば、製品を製造するときの運転時の温度や圧力などの情報が沢山ある
いつも、運転がまくいき製品が製造できるとは限らない
失敗のデーターも沢山ある
ならば、失敗を解析し2度と不具合品を生産しないようにと思うのは人の常だ
データーを解析しどの様な条件で不具合品が生まれるかを解析すれば
不具合品が出なくなることにより生産性は上がる。これがDXの一つの利点でもある
運転が難しいのであれば、ベテランのノウハウを蓄積し運転を自動化する技術を確立していけば良い
人が持つノウハウをデジタル化して、見える化すれば技術伝承に画期的な変化を起こさせることができる
ベテランの知恵をデジタル情報として収集し活用する
運転の難しい装置を、ベテランのノウハウを数値化し運転を容易にする
運転だけではなく、研究開発にも積極的にDXは行われている,下記資料の2-5項参照
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/010_04_00.pdf
今までは実験しなければわからなかったものが、デジタル技術でシミュレーションできる
企業が保有する膨大な情報を活かすことが、このDX革命だ
手法は様々だが、膨大な情報を解析し、用途毎に有効に利用する技術がDXの一つでもある
企業の中に埋もれている情報は膨大にある
それをどう解析し、有効に活かしていくかが今後のDXなのだろう
難しい運転プロセスをDXで運転容易にする
運転トラブル時は、AIによる運転支援など人を間接的に支援してくれるのだろう
そうは言っても未知の問題にはAIは答えてくれない
人という感性を研ぎ澄ます努力も必要なのだろう

 

2023年05月05日

ライニング機器が引き起こす事故

ライニングという言葉を知っているだろうか
化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
耐食性機器の内張などにこのライニングというものが使われる。本体そのものを、耐食性のある高級金属を使うとコスト面で割高になるからだ
本体は安価な鉄を使い、内張にライニング材を貼り付ければ機器を安く作れるという利点がある
そうは言っても、ライニングは、はがれてしまえば効果は無くなる。つまり、維持管理が大事なのだ
しっかりと、点検していれば良いのだがライニングが剥離すると思わぬ事故になる
硫酸などの酸を入れているタンクの内張の一部が破損すると母材の鉄と酸が反応して水素が出来る
酸と金属が触れると水素が発生する性質があるからだ
たまたま、火を使ってタンクなどの改造を始めたとき、水素に着火して爆発する事例が多い
鉄と酸による水素の発生は、案外知られていないから繰り返しこの種の事故が起きている
水素の発生を知らなくても、火気工事前にガス検知さえやっていれば防げる事故のパターンだ
ライニングに関する事故のパターンその-2は静電気だ。配管がライニング材で起きたこんな事故事例がある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200083.html
ライニング材は、電気を通さない非導電性材料が多いから静電気は起きやすい
可燃性の液体や粉体を入れればライニングで静電気が発生することが多い
これが原因で着火や爆発事故が繰り返し起きている。ライニング機器は、しつこいくらい静電気に留意して欲しい
原材料の投入時には、確実に窒素置換をして爆発混合気を作らせないことだ
定修工事などでのジェット洗浄時にも注意して欲しい。高圧ジェットの洗浄水の水しぶきでも静電気は発生する
過去にグラスライニング機器のジェット洗浄中に爆発事故が起きている
ライニングに付着していたポリマー物質に微量に含まれていた有機溶剤がガス化して可燃性ガスとなってドラム内に充満していたからだ
ジェット洗浄作業で静電気が発生しそれが着火源で爆発混合気に着火した事故だ。溶剤を使うプラントでは注意して欲しい
ライニング機器で注意して欲しいことがもう一つある
解体時だ。内部にゴムライニングがしてあることに気づかず火で溶断していて着火火災になった事例も多い
装置の内部に可燃性のライニングがあつたことで、火気解体時事故が起きている
ライニング機器を使うメリットもある。しかし、リスクも必ず存在する
しっかりとリスクを管理しながらライニング機器を使って欲しい

 

2023年04月30日

バルブ(弁)はゆっくりあけろ

工場の中にバルブ(弁)は沢山ある
バルブ操作の大原則はゆっくり開けろだ
弁というのは,せっかちに開閉操作をして良いことは無い
高圧のガスを扱う弁ならば急激に開けたり閉めたりすると,断熱圧縮という事故の要因で事故が起こる
急激に気体を圧縮すると起こるのがこの断熱圧縮現象だ
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11127012836
気体は、急に弁をしめて流れを停めると,急激に温度が上がる
物質には発火点がある
発火点を超える温度になれば,物質は火がつく
つまり、急激に圧力の変化が起こると温度が上がり火がつくことになる
しかし、圧力の変化が急激な温度の上昇につながり発火点を超えれば火がつくか爆発することをわかっている人は少ない
だから,事故が起きている.高圧ガスを取り扱う時にはとにかくゆっくりバルブを開けて欲しい
温度も圧力もエネルギだー。エネルギはエネルーの保存則によりエネルギーの形が変わる
温度になったり圧力になったりエネルギーの形態が変化するわけだ
このエネルギーが変化する原理原則があまり理解されていない
そこで事故が起こる
断熱圧縮という現象はあまり知られていないことも問題点だ
学校ではまず教えてくれない
これは、企業に入ってから教えなくてはいけない物理現象なのだが、企業もしっかり教えていない
断熱圧縮では、圧力がどのくらい変化すると、どのくらい温度が上昇するかも教えていない
だいたいの物質の発火点は300度だ。気体だと,1MPa位でほぼその温度まで上がる
液体もバルブはゆっくり開けるが基本中の基本だ
脱液時バルブを急に開けると、静電気などで火がつくことがある
よく言われるように、流速1m以下で液体を流せだ
有機溶剤や油など電気を通さない流体であれば、静電気で火がつくこともある
バルブはゆっくりと開けて欲しい

 

2023年04月25日

化学物質の安全管理とDX(デジタルトランスフォーメーション)

化学物質の安全管理という言葉は非常に幅広い意味を持つ
人が化学物質を取り扱うことへの人体への影響もある。排気や排水することによる動植物への影響
化学工場であれば、爆発火災の危険性という切り口で考える必要もある
いずれにせよ、しっかりとSDSや文献を集めて物質そのものが持つリスクを解析しておく必要がある
とはいえSDSですべてがわかるわけでは無い
混触反応など、色々な化学物質との組み合わせの情報がすべてSDSに書かれているわけではない
混触のリスクは重要なのだが、書籍もほとんどない
そこに混触を管理することの難しさもある
今から、数十年前にこんな書籍が出たのが最後だとおもう「化学薬品の混触危険ハンドブック 第2版」日刊工業新聞
この書籍のデーターは、労働安全衛生総合研究所から公表されている。利用されたい
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2021_03_HDDB.html
反応性や爆発性などの関する情報もそう簡単に手に入るわけでは無い
温度や条件によって物質は性質が変わる。更に濃度も違えば変わってくる
純物質での性質と、混合物での性質も又変わるということだ
多くの条件で情報が整理されてどこかに保管されているわけでは無い
そこに、物質危険性の情報を的確に得ることの難しさがある
小さな化学工場でも危険な物質を取り扱っている
小さな工場で化学の専門家を沢山保有しているわけでは無い
したがって、化学物質の安全性を迅速に捉えられるかというとそうはいかない
企業規模が小さければ、色々な情報を収集できない。そこに、事故の芽がある
物質危険性や事故や災害に関する情報を集約的に管理しきめ細かく公開する機関が欲しい
日本国内を見ても、安全に関して国の外郭団体がバラバラに存在する
それらの機関が又、バラバラに情報を発信している
インターネットで情報をうまくヒットできるかというとそうはいかないのが現実だ
企業でも個人でも安全管理に関する情報を効果的に入手できるような体制づくりが不可欠だ
化学物資を安全に取り扱うためにもこの分野のDXは進めていく必要がある

現状ばらばらに存在しているビックデーターを効果的に使えるようにしていくことだ


2023年04月20日

高圧ガスや消防に関する事故情報の入手の難しさ

行政などが事故の情報を公開する機会は少ない
事故情報を公開しているのは、経済産業省だ
高圧ガスの事故などは、毎年公開している
かなり詳細な情報を提供してくれる。高圧ガス保安協会という外郭団体が情報を公開している
高圧ガス保安協会のホームページから事故情報を入手出来る
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/comb.html
一方、 消防関係はというと、タイムリーに情報公開はしない
消防庁から公開される情報は限定的だ
年度毎に情報公開があるが、限定的な情報だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/454b64419c90e3ceddc24189a42ef1ff45727a40.pdf
消防関係の外郭機関、危険物情報協会という組織のメンバ-に入会するれば情報を入手出来るが有償だ
http://www.khk-syoubou.or.jp/hazardinfo/guide.html
無償で、火災や事故の情報を入手するのは難しい
ところが2021年に消防庁がかなりの火災爆発、漏洩事故事例情報を公開している事実がある
こんなに情報を提供するのは、消防という行政機関としてはまれな事例だ
そうは言っても貴重な事故事例を入手出来るのは事実だ
化学企業、石油精製、製鉄所、金属加工など多くの業種での災害事例が公開されている
2部に分かれ情報公開されている
一つは火災、爆発編だ
https://www.fdma.go.jp/publication/database/items/kikentoukei03.pdf
もう一つは漏洩編だ
https://www.fdma.go.jp/publication/database/items/kikentoukei04.pdf
これらのデーターを有効活用して欲しい
行政が事故データーを多数公開するのはめったにない
石油精製、化学企業、製鉄業、金属加工業など多くの業種でなぜ事故が起こっているのかの情報が満載されている
有効活用して欲しい
事故のパターンを学び取るにはいい情報だ

 

2023年04月15日

ボイラーや加熱炉で起こる事故

ボイラーや炉は多くの工場で使われている
ボイラーは蒸気を発生させる装置だ
炉は流体の加熱や乾燥などに使われる装置だ
いずれも火を燃やしている設備だから火災や爆発に注意しなければいけない
事故が起こりやすいのは、スタート時だ
火をつける時に、失敗して火災や爆発を起こす
点火前のパージが不完全で爆発事故が多数起こっている。燃料の漏れ込みに気づかず火をつけて爆発することもある
運転中で怖いのが、突然火が消えてしまうことだ。失火と呼ばれている
失火に気づかなければ、未燃焼の燃料で爆発混合気ができてしまう
怖いのは未燃焼ガスが残っていて何らかの着火源で爆発することだ
燃料が入らず火が消えたときはまだ安全だが、燃料は流れ込んでいて火が消えるのはとてつもなく危ない
装置を停止していくときにも事故は起こる
上手に燃料を停止していきながら火を徐々に消していかなくてはならないからだ
点火や消火は自動化が進んできてはいるが、機械も故障することもあるからしっかりとした知識と技能が必要だ
自分が取り扱っているボイラーが突然火が消えた時どう対応するかだ
火が消える理由をすぐに想定することだ
燃料系のトラブルと、燃焼空気系のトラブルかが想定されるはずだ
燃料の弁を誰かが誤って閉めるケースもある。重油などの燃料では配管が詰まり、燃料の供給が停まることもある
燃焼用空気のトラブルもある。空気ダンパーが突然閉まった事例がある
空気ブロワーが停電で停まったケースもある
排ガスや廃燃料を燃やすボイラーであれば、排ガス発生プロセスの異常で原料が突然停まるトラブルもある
多様な燃料を使えば使うほどトラブルの要因は多くなってくる
ボイラーや加熱炉などの燃焼設備を持っているなら設備の火が消えたときどう操作するかを論議しあい訓練して欲しい
トラブル時にどうすればいいかしっかりリスクマネージメントして欲しい
トラブルを想定して、訓練しておくことは大切だ
常日頃からの想定訓練が役に立つことは多い

 

2023年04月11日

真空プロセスで起こった死亡事故に思う

今から半世紀前の鹿島コンビナートで起こった、3人の若き研究者達が死亡した事故だ
1973年の12月4日に茨城県の鹿島コンビーナートで起こった爆発死亡事故を紹介する
1973年(昭和48年)というのは事故が多発した年だ 大きな事故が何十件も起きていた

新規開発した真空プロセスでの破裂事故である 死者3人、重軽傷者3人の大事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000107.html

事故の顛末はこうだ
新規開発で実験をしていたところ色々トラブルも起きていた しかし、原因を究明せず実験は続けられた
開発スケジュールのプレッシャもあったのかもしれない

結果としてトラブルが引き金で実験設備が爆発し、尊い命が失われた
真空系設備の事故は意図して空気を吸い込むことで起こる
装置の一部から空気が漏れ込んでいるのに気づいていなかったのが原因だ
さらに、爆発性の高い副生物もできていたがそれに気がついていなかった
結果として爆発事故を引き起こしてしまったのだ
当時の担当部門であるお役所の労働省から詳細な事故報告書も発行されている
今から半世紀前の紙で出された報告書だが今は世の中には存在しない
紙というものは時間が経てば棄てられるからだ
この事故が起きる前に私はこの企業の就職試験を受けたことがある
たぶん事故の起こる1年前だったはずだ 結果として、この企業には就職しなかった
今でも思うのは、もしこの企業に就職していればこの新規開発事業に参画していたかもしれない
そこに自分が入れば、事故に巻き込まれていたかもしれない つまり死んでいたかも知れないのだ
その後私は、その企業とは別の化学会社に就職した。同じ化学の世界を歩むことになったもだが命拾いをしたのかも知れない
おかげでこのようなブログも発信できる
運命とはわからないものだ

 

2023年04月05日

新人OJT教育の失敗が引き起こした重大事故

4月からは工場などにも新人が入る時期だ
入社時の基礎教育が終われば、職場に配置されOJ(On the Job Training)による教育が始まる
現場で先輩などについて行う実習教育だ
企業によっては、OJTでしっかり教えてくれることもあるが。即戦力的に入社後すぐに新人を使い始める企業もある
そこで問題が起こる
新人OJT教育中で起きた、こんな事故事例がある。今から半世紀前の1974/4/30に四日市で起きた重大事故だ

4月に入社した新人の指導を先輩が行っていた
塩素を取り扱う設備だ。塩素が漏れ、住民1万2千人が被害を受けた事故だ
公害裁判となった事件で、裁判記録も公開されている
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=22951
原因はこうだ
新人にバルブ操作を任せ、指導員は現場を離れた
新人は、弁操作を間違え、大量の塩素を大気に放出してしまったという事故だ
見習い者の初歩的ミスが一時原因だが、その後の応急対策が1時間半もかかった
工場全体の不手際など遅れが問題となった公害裁判事故だ
指導していた作業員が途中で現場をはなれていたことも問題点だ
背景には、人手不足で作業を掛け持ちしていたようだ
裁判では、見習社員を指導していた熟練社員と、管理者である係長が監督責任を問われ有罪となった
裁判で問われた事故の予見性であるが、新人であればこのようなミスが起こることは十分予見されると結論つけている
OJTというのは、マンツーマンで教えることだ
先輩が見本をまず見せて、新人にやらせてみる。まずいところがあれば、それを指摘し、技能を身につけさせる手法だ
手本も見せず、丸投げでやらせればこのような事故は起きる
これから、色々な企業で新人の教育が始まるはずだ
現場での新人教育で手を抜かないで欲しい

 

2023年03月31日

ヒヤリハット--事故解析の大切さ

ヒヤリ事故というのがある
事故には至らなかったというトラブル事例だ
当然原因と対策は考えるが、このヒヤリ事例は事故にはならなかったという貴重な情報の宝庫と考えるべきだ
災害になるのをくい止めたからだ
装置の故障であれば、故障時の応急操作が適切だったはずだ 咄嗟の対応かもしれないがどう対応したかは貴重な情報だ
何故災害にならなかったかと言えば,ほとんどの場合事故回避の流れからわかるように,トラブル時の応急操作が適切であったからである
災害事故 が発生した場合原因を分析することも重要である
しかし、災害が発生しないというヒヤリでの情報も有効だ
災害になるのを 喰い止めた応急操作の要因を分析することもで次に起こるかも知れない事故をくい止めることが出来る
ヒヤリハット事例を企業として公開している企業もある
https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2022/07/2022%E5%B9%B47%E6%9C%88%E3%83%92%E3%83%A4%E3%83%AA%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%88-1.pdf
かなり前から定期的にヒヤリハット事例を公開している
企業によって業務内容が異なるから、必ずしも参考になるとは限らないが、情報源としては有効だ
企業で労災が起これば原因や対策を考える
しかしこれは、後追いの事故防止策だ
本来なら、事故が起こる前に事故の芽を絶ちたいはずだ
そこで、このヒヤリハットをうまく活用して欲しい
現場で起こるヒヤリハットを、しっかりと情報として活用し、作業マニュアルなどの反映していけば労災の発生確率は減る
ヒヤリとしたことは、個人の情報で留めるのではなく、一緒に作業する作業員へも展開するのだ
交代勤務職場では、昼間にヒヤリを体験しているなら、その情報を夜勤の人へもうまく展開することが効果的だ
ヒヤリハット活動をただやるのではなく、運転作業書(運転マニュアル)や作業マニュアルへ反映を考えて欲しい
ヒヤリハット活動はただやるだけでいいわけではない、効果的に災害防止に結びつけることを考えて欲しい
ヒヤリハット事例を災害防止の情報源として捉えて欲しい

 

2023年03月26日

ダクト火災を甘く見るな-定期点検しなければ事故は起こる

研究所や工場での排ガスなどを流すダクト内部に溜まった物に火がつき火災になる事例は沢山ある
http://www.opus-gr.com/duct-fire
煙や排ガスを排出するダクトと呼ばれる装置は、工場や研究所であればどこにでも存在する。
でも、たかが煙や排気ガスが流れる装置と思っていると事故が起こる。
温度の低い煙なら問題は無いが、だいたい100度を超える煙だと火災などが起きることがある
物質の発火点はだいたい300℃前後だが、それは新品の場合だ。劣化して酸化された物質は、発火点がその半分くらいになることもある
さらに、ダクト内に油などが堆積してしまうと。表面から放熱が悪いため、内部が蓄熱して更に温度が高くなる
油やペンキの燃えかすだとか、粉などがダクトの内側に溜まっていれば思っているより低い温度で着火する
ダクトも中の様子を点検できるような設計になっていれば良いのだが点検口もなく、中の様子が見えないものが多い。
排煙ダクトの中を流れるガスも、流速が早ければ、燃えかすや粉なども溜まりにくい
しかし、ダクトが太すぎると流速が遅く色々な物が溜まりやすくなる
設計段階で、ダクト内に物が溜まらないように流速を考慮しておくことが大切だ。
ダクト内を点検や清掃ができるような設計をしておくことも事故のリスクを減らしてくれる。
設計の善し悪しで、事故が起こる確率は大きく変わる。又、可燃物が流れるダクトは金属製として欲しい。
過去、塩ビなど燃える可能性のある材料を使っていて火事になっている事例も多いからだ。
ダクトの内部点検を、年間の安全管理項目に織り込んでいるかも見て欲しい。
ダクト内部に、何か燃える物が溜まっていればいつか発火事故になる。点検清掃が肝心だ
安全確認項目にダクト内の、異物残留点検を織り込んで欲しい。冬場乾燥してくれば、乾燥して火がつきやすくなる。
ダクト内の滞留物が火災事故につながる。排煙ダクト内の異物点検を考えて欲しい。
工場も当然ですが、研究所の排煙ダクトも点検して欲しい。研究所の火災事例も沢山発生しているからだ。
製造設備はしっかり管理していても、実験や研究設備が盲点にならないように安全管理を行って欲しい。
たかが排煙、排ガスダクトと思わないで欲しい
ダクトの中に燃える物が蓄積すればいつか発火して火災になる
ダクトの中を見れるように、設計の段階からのぞき窓も出来れば設置して欲しい 点検しやすいように地上に近い所が望ましい
ダクトの中は、見える化が大切だ
点検口がなければいつか火災事故は起きる 
あなたの工場や研究所は大丈夫か一度点検して欲しい

 

2023年03月19日

電気室火災への対応を強化していますか

企業が電気室火災に関心を持ち始めたのは、今から半世紀前の1970年代だ
1974/2/18千葉県市原市のコンビナートにある製油所で電気室火災が発生した
水を使って消火したので、電気品が駄目になり5ヶ月間操業が停止した
今なら、電気火災用消火器が当たり前のように電気室には備え付けられているが当時は、当たり前では無かった
電気設備で大きな火災が起きるという関心もそれほど無かった
電気室には、電気ケーブルもある。その被覆はプラスチックだから火がつけば当然燃える
でも当時は、電気火災のリスクも甘かったのだ
翌年の1975/4/23にやはり千葉のコンビナートで電気室火災が起きている
遮断機の配線がゆるんでいて、接触不良で火災が発生した
配線のゆるみが原因だ
これらの事故の教訓から企業は、電気室火災への対策を強化していった
異常を早く検知するために、火災報知器や煙検知器を設置した
延焼を防ぐ為、ケ-ブルダクトの延焼防止剤を積極的に設置した
電気の漏電遮断機という設備も積極的に導入し設置した
電気火災は過電流だけでは無く、漏電でも起こるからだ
過電流遮断器も、小まめに設置した。大容量の過電流遮断器一つだけでは、遮断したときには影響が拡大しているからだ
事故を未然に防ぐために大事なのは、「異常」に早く気づくことだ
法定の火災報知器や煙検知器の設置台数では、異常に早く気づくのはやはり難しい
法定台数より上乗せした検知器を設置して欲しい。検知器はたかだか数万円だ
それをけちって、大きな火災になり損失を受けている事例も多い
電気設備も老朽化すれば事故が起きやすくなる。発火事故もしかりだ
電気部品の故障で大きな火災になることもある
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
電気設備関係の安全投資をけちらないで欲しい
昨今、発熱の早期発見で赤外線カメラを使う企業も多い
異常に早く気づく為の安全投資にも力を入れて欲しい

 

2023年03月12日

安全装置はつけたら終わりではない

安全装置をつけてしまえば、安全と考えている人は多い
安全装置はつけたら終わりではない
化学工場で機械は何十年も稼働する
定期的に点検して,機械はその機能を果たすことができる
何も点検しなければ,故障したり,いざという時に作動しない
昔安全弁がいざという時作動しないトラブルが多発した
安全弁が錆び付いていざという時作動しなかったからだ
タンクも昔は,一度も開放点検する必要はなかった
危険物タンクでも法的規制はなく、タンクは開放点検もせず無期限に使えた時代があった
鉄で出来たタンクは当然腐食する。時間が経って底板やアニュラ板に穴が開いて漏洩事故が多発した
つまり,機械は定期的な点検が不可欠だということだ
HAZOPで安全性を評価すれば,安全対策として警報やインターロックや,安全弁を設置するだろう
安全装置を設置すると決めると,みんなここで満足してしまう
だから,事故が繰り返すのだ
安全装置は設置したらそれで終わりではない
かならず,点検周期を決めてしっかりとメンテナンスする必要がある
しかし、HAZOPでの検討では点検周期まで論議はしない
だから,点検周期をあいまいにして結果として安全装置が作動せず事故が起きる
安全装置を設置したら,しっかりと点検周期を決めて欲しい
インターロックもつけたら終わりではない
運用管理の基準を決めておくことだ
特に、解除していい条件は、明確に数値で決めておくことだ。温度や圧力などの数値だ
上司の許可を取れば解除していいという運用は事故になることが多い
今から約10年前に、インタ-ロックを解除してこんな事故が起きている
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2012/pdf/120829.pdf
安全装置はつけたら終わりではない。点検基準や運用基準を明確にしておくことだ

 

2023年03月04日

技術伝承の難しさ --文字だけで伝えるのは限界がある

数日前に、腕時計が1分ずれているの気がついた。
電波時計で、狂うはずが無いと思っていたのに狂っていたのだ。
早速、取扱説明書を引っ張り出して調整を始めることにした。
Aボタンを押して、強制受信をさせて現在時間を確認せよ。
基準となる日時が合っているかBボタンを押して確認せよと取扱説明書には書いてあった。
指図道理にやっのだけど、うまく復旧しない。
どんどん深みにはまっていき、なんだかおかしな時間を時計がさすようになる。
あとで、落ち着いて取扱説明書を読み直すと、「読み違えていた」ところも有るのに気づく。
何秒以上ボタンを押せとは書いてあるが、その後結果が出るまでどのくらいかかるとは書かれていなかったからだ
「すぐに結果が出る」と思い、何かのボタンを次にすぐに押してしまい結果としてエラーになってしまっていたのだ。
説明書を書いている本人は、十分時計の機能はわかっているから「操作をしたらしばらく待つのは」あたり前のことだと思っている。
でも取説を読んでいる人はわからいことだらけなのである。当然、早く問題を解決したいのだから、それほど多く待つことはない
わかりすぎている人が、文書でちょっとしたことを書くのを省略しているからこのようなミスマッチングが起こる。
作業手順書や運転マニュアルでも同じような問題を起こしている
ベテランは常識だと思うことは、「書かない」ことが多い。常識が省略されてしまうという問題点がある
過去にもこんな事故がある。大量のベテランが退職し、大量の若手が採用された時期に起きた「自動弁が突然開いた」大事故だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200807.html
ベテランが書いた作業手順書を若手が読んで作業していたとき大量の油が噴き出した事故だ
ベテランが書いた手順書には、空気で動く自動弁が誤って動かないようにするのは常識だから「空気を止める」とは書かなかった
空気を止めずに作業したことにより起きた事故だ
当たり前という価値観は、全く門外漢の人には適用しない。
特に、始めてトラブルに遭遇した人は「当たり前」というのは全く想定外の出来事だ。
文章で、人に何かを伝えるのは難しい。
相手のレベルが良くわからないときは特に難しい。年齢だけで相手のレベルがわかるわけではないからだ
私も色々な人に講義をするが、相手の理解度がどのレベルに有るのかを見極めのにかなり注意を払う。
説明のしかたが、易しすぎても問題がある。難しすぎても当然問題はある。
人に技術を伝えるのは難しいものだ。口だけで伝えられることにも限界はある。
人は、文字だけではなく、写真やイラストを使うなどしてイメージを加えて色々なことを捉えている。
写真やイラストなどのイメージは、文字にすると数百文字分の情報が含まれているという
文字や話し言葉だけではなく、写真。イラストや映像を併用して上手に技術伝承をしてほしい

 

2023年02月27日

装置のスタートアップ準備の大切さ 動作確認が必要だ

化学プラントなどは定期的に装置を止めて、修理や検査をする
検査をしたから、問題なく装置を起動できるかというとそうでは無い
装置を長いこと止めておくと、運転時とは違う状況が起こる。装置は動いていると問題は無いのだが、停止すると固着して動かないこともある
つまり、装置を動かす前にもう一度安全確認が必要となる
一つは、気密テストや耐圧テストだ
装置を色々分解したりすれば、元通りに組み付けられている保障は無い。組み付けが正常かどうかの検査が必要となる
漏れの有無に関しては、気密テストや耐圧気密テストをすることになる
圧力関係で漏れが無いからといって安全ではない
機能が問題ないか確認も必要だ
電気や空気を定期検査時などに止めていれば、計装計器がしっかり動作するかも再確認が必要となる
機器を停止していると、どこか固着して動かなくなることもあるからだ
計装装置関係では、装置が動く前に必ず調節弁のストロークテストというのを実施する
計器室から模擬信号を出し、現場にある調節弁が予定通りの開度で動くか検査するのだ
例えば調節弁の開度が100%の指示を出しているのに、開度がその通りになっていないこともある
50%や80%開度を示していれば、その調節弁はおかしいとして、ストローク調整や修理するのだ
調節弁にはポジショナーという弁開度を制御する装置がある。それが故障して正しい開度で動かないこともある
ポジショナーと弁本体と接続する金具がゆるんでいたり、外れていたりして動作不良と言うこともある
定期修理が終了して、そのままうまくスタートアップできるという保障は無いということだ
時間が経てば、今まで正常だった機械も故障することもあると考えて欲しい
必ず、機械の動作確認が必要なのだ
機械は、いつも正常に動くと思わないで欲しい
機械は常に作動確認が必要だ
設備は設置したら終わりではない
機械は常に作動確認が必要だ
装置のスタートアップ時はしっかりと計器や機器類の動作確認をして欲しい

 

2023年02月22日

硫酸タンクと事故 その-2

前回のブログで硫酸タンクでの爆発事故を紹介した
いつもは濃硫酸を入れていたが、あるとき希硫酸を入れたので水素が発生した事故だ
希硫酸で水素が発生し、火気工事中が着火源となり起こった水素爆発事故だ
水などで希釈された濃度の低い希硫酸は、このように水素を発生する
しかし、濃硫酸ならば,一般的に水素は発生しないといわれている
濃硫酸の場合、含まれる水が少ないため電離した水素イオンが発生しにくいからだ
ただし、それは純粋な濃硫酸の話である いわゆる,新品の状態の時である
購入してまだ使用していない,新品の話なら濃硫酸は水素は発生しないと考えて良い
しかし,プロセスで使用した濃硫酸を循環して利用することもあるはずだ
水分が混入してくれば、濃硫酸でも、いつの間にか薄められて希硫酸になる
希硫酸になっていることに気づかなければ、水素で事故が起こることがある
濃硫酸内では鉄の溶解速度は十分に低いので. 濃硫酸タンクに鉄が広く用いられている
タンクに濃硫酸送る配管にも、鉄が使われる
鉄を使うことには、問題は無いのだが配管流速はしっかり管理する必要がある
流速と鉄の溶け出しは、相関関係があるからだ
流速が早すぎると、腐食速度が増し、鉄が急速に溶け出していく
こんな文献がある https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/41/11/41_11_777/_pdf
こんな事故が,1975/8/27千葉県市原で起こっている
濃硫酸タンクから液を送るポンプの循環ラインが頻繁に腐食していた
配管が細すぎて、流速が早く鉄が溶けて腐食していたのだ
ポンプから、タンクへ戻す配管だから腐食して溶けた鉄は、時間をかけてタンク内の濃硫酸に溶け込んでいた
溶け込んだ鉄は、H2SO4+Fe→FeSO4+H2のように水素が発生していた
あるとき、腐食した配管を交換しようと火気工事を始めたところ発生していた水素で爆発し作業員が死亡した
事故後、調べた所濃硫酸の中の鉄は1wt%入っていたという
色も透明では無く、灰白色に変色していたという 濃硫酸の鉄分や色は定期的にチェックして欲しい
火気工事前には必ずガス検知をしっかりして欲しい

 

2023年02月17日

硫酸タンクと事故 その-1

硫酸タンクで爆発事故が起こることを知っているだろうか
硫酸は,薬傷などの危険性については皆よく知っている
しかし,硫酸そのものは可燃物では無いので火気工事などでも危険だと思わないところに事故の芽がある
硫酸は可燃性では無いから安全だと思わないで欲しい
硫酸は酸性物質だ。酸性物質は,鉄などの金属と反応して水素という物質を発生する。
つまり、安易に火気工事をすれば発生した水素に火がつき爆発が起こることがある
硫酸などの水素イオンを持つ物質は常に金属と触れると水素が発生すると考えて欲しい。
硫酸の分子式の中に、H2という水素分子がある。薄められた硫酸水の水にもH2というのがある。
この水素イオンから水素が発生すると思って欲しい。タンクの材質は鉄だとすると、イオン化傾向の原則により起こるのだ
硫酸と鉄が反応すると次のように水素が発生する
H2SO4+Fe→FeSO4+H2
硫酸と言っても,濃硫酸のような濃度の高いものもある。水で希釈した,濃度の低い硫酸もある。
濃度の高い濃硫酸では水素は発生することはない。
水素を発生するのは、水などで希釈された濃度の低い硫酸だ
濃度の違いで,事故の確率は違う。
いつもは,濃硫酸を入れていたはずのタンクの硫酸濃度が下がったことに気づかず水素が発生し火気工事で爆発した事故がある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2015_07.pdf
水素は,とんでもない爆発力がある

酸は金属と触れると水素が発生すると思って欲しい
水素は臭いもしないから,嗅覚で感じることはできない
ガス検知もせず安易に火気工事をすれば,水素で爆発が起こる
水素の持つエネルギーを甘く見ないで欲しい。
硫酸を扱っていれば,水素が発生することもあると思って欲しい
可燃物ではないから、事故は起きないと思わないで欲しい

 

2023年02月12日

電気設備の技術者をしっかり確保せよ

近年化学工場でも電気系の技術者の採用が難しくなってきているという
電気というと、半導体などの微弱な電流を扱う分野もある
一方化学工場などでは。何万ボルトなどの高圧電力を扱う分野もある
大学を出た学生さんは、どちらかというと半導体などの電子分野の企業に就職する
結果として、化学工場の電気エンジニアーの採用が難しくなってきている
そうは言っても、工場には高圧電気を取り扱うエンジにアーも不可欠だ
工場がほしいいのはエネルギーだ。だから何万ボルトもの高電圧を取り扱うことになる
電気は目に見えない。この目に見えない物を取り使うのも一つの技術だ
工場の中のエンジにアーを見ると主流は機械エンジにアーだ
彼らは、目に見える物を扱う。機械は目に見えるからだ
ところが電気エンジニアーは、電気という全く目に見えない物を扱う
そこに難しさがある
電気というのは、電気配線でつながっている
工場の中でどこかで短絡などのトラブルが起これば、被害が及ぶ範囲は最小限にする必要がある
いわゆる電源ヒューズや、遮断機など瞬時に電気を遮断するシステムがふんだんに張り巡らされている
トラブルが起きたときに、何ミリ秒、何マイクロ秒の世界で、事故が起きた箇所を縁切りする
異常を工場全体に波及させないような設計が電気の世界では行われている
一つのトラブルが工場全体に波及しないような設計を系統設計とも言う
こんな仕掛けが工場で行われていることは、電気エンジニアー以外は知られていない
この仕組みは、化学工場だけではなく、日本の電力会社ネットワーク全体で行われている
電気の安全を守るためには電気のスペシャリストが必要だ
日本の企業も、しっかりと電気のスペシャリストを雇用維持して欲しい

 

2023年02月07日

「行き止まり配管」という用語にも関心を持って欲しい

「行き止まり配管」という言葉を知っているだろうか。
HAZOP的には、流れ「無し」がずれのキーワードだ。
流れが無いと安全だと思いがちだが、そうではない。
流れが無い部分は、流速がゼロなのだから汚れや残渣が溜まりやすいという傾向がある。
腐食性の物質が溜まれば、時間が経てば配管に穴が開く。
爆発性の物質が溜まれば、蓄積して高濃度になれば爆発することもある。
「行き止まり配管」という言葉が使われるようになったのは1980年代だ。
1982年3月31日に鹿島にある製油所で爆発が起きた。この事故では5人の命が失われている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057045.html
安全弁の出口側の配管で爆発が起きている。
安全弁の出口配管は、通常安全弁が作動しない限り流れが無い配管だ。
ところが、出口配管を温度の高い別の配管へ戻す設計をしていたため事故が起きたのだ。
流れが無い配管でも、温度差があると、中の流体はヒートパイプ現象と行って温度の高い方から低い方へ流れ始める。
つまり、配管内で流動が起こるのだ。
この為、鉄でできた安全弁出口側配管に腐食性物質が入り込み穴が開き可燃物の漏洩により爆発したのだ。
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00056.pdf
1989年3月6日には、水島コンビナートにある製油所でやはり行き止まり配管が原因の事故が起きている。
配管改造をした際、流れにくい部分ができてしまったのが原因だ。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000003.html
改造工事における変更管理の失敗事例でもある。
近年、高圧ガスの認定制度などの法改正で長期連続運転ができるようになってきている。
スタートアップにしか使わない配管も行き止まり配管だと考えて欲しい。
そんなところに腐食性のスケールが長期間たまっていればやはり突然穴が空いて事故になる。
行き止まり配管がどこにあるのかを把握してしっかりと管理をして欲しい。
行き止まり配管の持つリスクもしっかりと教育して欲しい

 

2023年02月03日

大型タンク内での火災死亡事故から学ぶこと

今から約20年前の1月、大型タンクの清掃中に5人が死亡する事故が日本で起きている。2006/1/17の事故だ
http://khk-syoubou.or.jp/pdf/accident_case/manabu_18_2_3.pdf
浮き屋根式の原油タンクの開放のため内部を清掃中に起こった事故だ。直径は約75M、高さも24mある大型タンクだ
エアーラインマスクを付けた作業員が中に入り、タンク底部にある残渣を軽油で溶解させポンプで回収して取り出していた
換気はしていたが、大型タンクで完全には換気ができていなかっため、スラッジから軽質分が気化して,爆発混合気を形成し爆発したといわれている
原油残渣の引火点は-20℃だ。何らかの着火源があれば簡単に火はつく
主要な再発防止策は、事故報告書に4つ書かれている
1つ目は,極力無人で洗浄する工法を取ると言うことだ
つまり、人が入る前に内部にある可燃性ガスを発生するスラッジを可能な限り無人状態で取り除くこと
原油洗浄と温水洗浄を併用し、無人作業でタンク内の油分・原油スラッジをできるだけ回収するという
危険作業は無人化することでリスクを減らすということだ
2つ目は。タンク内へ人を入れるときの許可基準を見直したという
作業中は、可燃性ガス濃度(1,400ppm以下→500ppm以下)を引き下げた
3つ目は、ガス検知の強化だ。さらに、タンク内部全体の可燃性ガス濃度および酸素濃度の測定ポイントを増やし、測定方法も工夫するという
タンク内作業場所に可燃性ガス検知器および酸素濃度計を常設し、異常に早く気づけるようにした
作業員の一人以上は携帯式の可燃性ガス検知器および酸素濃度計を常時携帯するように改善した
異常に早く気付けば事故のリスクは減るからだ
4つ目は発火源の削減だ。工事用電気機器のタンク内持込の制限を強化したという
この事故では、作業員の一人が「スタンド式の投光器が倒れ、しばらくして火が出た」と証言している
投光器は防爆型のスタンド式照明装置で、3台設置され、約1.4mの高さに位置に調整されていたが、固定されていなかった
このうちの1台が転倒していることが確認され、着火源は投光器による可能性が高いとみられていた
実証テストが行われたが、断定できる結果は得られず最終的には原因は不明とされている
とはいえこんな報告書もある。静電気が着火源だった可能性もあると言う。参考にされたい
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2014_03.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/2/50_101/_pdf/-char/ja
タンク内清掃に関する貴重な事故の教訓だ。活用して欲しい

 

2023年01月30日

寒波や凍結で起こる事故 その2

凍結で起こる事故が、とんでもない規模の事故になってしまう事故も沢山ある
凍結で装置が壊れ大量の可燃物が外に出て大事故になるケースだ
1985/1/18西ドイツで起こった事故だ。エチレンプラントで配管凍結で可燃物が漏れ蒸気雲爆発だ
使用していない予備ポンプの3Bバイパスライン内に滞留した水分が凍結して配管が折れ、大量のエチレンとプロピレンが漏れた
当日は-10℃であった。凍結で50cmの亀裂が生じたという
事故のキーワードは予備機と言うところだ。通常、使用していない機器や配管に関しては運転・保全の関係者はどうしても関心が薄くなる
つまり、予備のポンプとは言え、運転中機器と同一の管理が必要だと言うことだhttps://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00231.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00231_s.pdf
1989/12/1カナダの製油所で起こった凍結爆発事故だ。使用していない配管に水がたまり、凍結破損した事故だ
事故のキーワードは、遊休機器だ。使っていない配管で事故が起きている
使わないなら、すぐに配管を撤去しておけば起きなかった事故だ
企業の中に使わなくなった者は沢山あるが、なかなか撤去費をかけてまで撤去が進まない
いらなくなった物に金はかけたくないというのが背景にある
ところが、世の中この使わなくなった配管で起こる事故事例は実に多い
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00207.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00207_s.pdf 
1999/2/5 兵庫県にある製油所で起こった冬場の事故だ。
製油所近辺は異常な寒波に見舞われていた。内部流体は温度390℃、圧力14.7MPaの高温部配管の下側に保温をしていなかった
気温0℃、風速1.5m/sの異常寒波が襲来した。寒波で急冷しフランジにすきまが出来漏洩し火災になった事故だ
フランジの上側は雨カバ-があったが、下側は保温が無かった
折からの寒波に晒され、上下フランジの温度差が大きくなり、その繰り返しによりリングガスケットの当り面に微小な変化が生じ、漏えい自然発火に至った事故だ
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00198.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00198_s.pdf
ここに紹介したのは事故事例として公開されているものだ。公開されていない事例は沢山あるはずだ
気温の下がるこの時期の、寒冷対策はしっかりやって欲しい

 

2023年01月25日

寒波や凍結で起こる事故 その1

日本では今頃から、冷え込みが激しくなってくる
しっかりと、凍結対策を行わないととんでもない事故になる
凍結で事故が起こるのは、水が原因であることが多い
たかが水だと思うかも知れないが、凍結すれば体積が膨張する
配管内などで閉じ込められた状態で、凍結すれば簡単に配管は破壊される
可燃物を取り扱う工場であれば、わずかでも流体に水を含んでいればこのような凍結破壊事故を引き起こす
水分を含むラインでは、定期的な水抜きが冬場いかに大切かだ
水封器周りの管理も大切だ。冬場凍結しないようにしっかりと水を長し続ける必要があるからだ
調節弁の作動不良にも注意が必要だ。緊急遮断弁の動きも鈍くなる。空気シリンダーの動きが悪くなるからだ
計器の導圧管の保温を誤って停めて事故になった例もある
フェノールという凝固点40度の流体を窒素シールしているタンクの圧力計器の保温を誤って停めたからだ
こんな事故事例もある
冬場、配管工事をした後、水張り検査をした
水を抜いたものの完全に抜けきれず。配管の一部に水がたまっていた
夜になり、凍結して配管が壊れたと言う事故だ
冬場水を使う漏れテストでは注意を払って欲しい
高温配管フランジの保温が不十分だったという事故事例がある
フランジの周りの保温カバーは上側は取り付けていたももの、下側は何もなく冷やされ上下の温度差がガスケットがゆるんだという事故だ
こんな文献があるので紹介しておく
「寒冷積雪地における化学工場の冬季保安対策」という文献だ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/20/5/20_256/_pdf/-char/ja
凍結事例とその対策というのも記載されている
参考にして欲しい
この時期は、凍結対策をしっかりやって欲しい

 

2023年01月21日

なぜ事故が起こるのか HAZOP的視点で

なぜ事故が起こるかという問題を考えると色々な切り口がある
一つは、危険源が存在するからだという切り口だ
世の中にある、危険源は、物質危険性、人のミス、設備の故障、外乱がある
もう一つの切り口は、管理が悪かったという切り口だ
危険源があるということはわかっているのだから、危険源をどうコントロールするかだ
設計の段階で、危険源を押さえ込むこともできる
安全性評価をして、危険源を排除することもできる
運転操作や作業で出てくる危険源であれば、運転管理や作業管理を徹底することで事故を起こさないようにすることもできる
では、HAZOP的な視点で事故を起こさないようにするのはどうするかと考えてみたい
HAZOPはずれが事故を引き起こすというのが原点にある
ずれが起こることで、事故のシナリオが出来、安全対策が不十分であれば事故になるというロジックだ
ということは、事故が起きるのは「ずれ」に気づかなかったというのが、最初の入り口だ
ずれに気づいていれば人は何らかの対応をとり、事故は防げたかも知れない
つまり、ずれに気づけるような環境があるかが重要だ
計器に警報がついていなければ、よほどの偶然がない限り異常に人は気づけない
異常に気づくには、警報という設備がついているかがポイントとなる
次に人が異常に気づいても、事故を防げるとは限らない。時間的に余裕がなければ対応できない
時間的に余裕がなければ、機械的な安全装置が不可欠だ。安全弁をつけておくとか、自動インターロックをつけておくかだ
ではそれで、事故は起きないかというとそうでは無い
設備管理や、運用管理などがしっかり出来ていなければ事故は起こる
安全弁は、定期的に点検していなければいざという時に作動はしない
インターロックも、点検やインターロック解除条件などの運用管理が必要だ
事故を防ぐには異常に早く気づく道具や環境が必要だ
更に、気づいたら人にあまり負担をかけずに安全に停止するハードウエアーも備えておくことだ
安全は人と機械とバランスがとれておくことが大切だ

 

2023年01月15日

事故を防ぐ技術--事故はやみくもに起こるわけでは無い

事故はやみくもに起こるわけでは無い
労働災害という事故がある。火災爆発と化学物質に関わる事故もある。保安防災とも言われる領域だ
事故は大きく分けると、労働災害と化学災害がある
事故の原因は無知というのが基本にある
可燃物に火を近づければ燃えるのだが、取り扱っている物質が燃えるものだとは知らなかったという事例も多い
物質危険性の肝となるキーワードが伝えられていないからだ
着火点と引火点の違いが何かと質問したらきちんと答えられるかだ
着火点と引火点の数値はどちらが大きいかと質問したら即座に答えられるかだ
案外基本的なことが、きちんと理解されていないから事故は起こる
事故は、目に見えないものから起こると言われている
例えば静電気だ。静電気は直接目には見えない
静電気の事故は無知故に起こることが多い
静電気そのものに関する基礎的な知識が身に付いていない
導電性の無い可燃性液体を、バルブを開けて流出させていれば静電気は起こる
流速が1m/sを越えると静電気で着火する事故が多い
でも、流速1m/sを体感的に理解できていないから事故は繰り返し起こっている
静電気のように目に見えない物は人は危険と感じない
静電気の危険性を教えるのはたやすいことではない
人は目に見えない物は危険と感じないからだ
事故がなぜ起こるのかと言えば、世の中に危険源があるからだ
危険なこと危険な物が、世の中に存在する
では、何が危険源かと問うてもそう簡単に答えを返す人は少ない
事故の要因は沢山あるが、人は体系的にそれが何かを簡単に要約できないからだ
事故が起こる原因は沢山ある。企業の安全担当者がそれで済ましていては事故は防げ無い
なぜ事故が起こるのかを体系的に知っておくことが基本となる
体系的にとは何かだが、そう簡単に世の中には情報存在しない
そこに難しさがある

 

2023年01月13日

HAZOPでインターロックの作動不良をどう考えるか

HAZOPの講義でHAZOPでインターロックは作動しないことも想定するのかという質問があった。
作動しない原因は何かまで突き止めていれば、想定は不要と答えた。想定に当たってこのように考えてはどうかと回答した
つまり、検討を進める過程では、今あるインターロックは、「正常に作動する」として、それでも爆発や破裂などのHAZARDが発生するのか、しないのかをまず考える。
次は、インターロックの機能が働かない、つまり「作動しない」状況も考えてみる。
まずインターロックを作動させる、要素に着目するのだ。いわゆる、検出端と呼ばれるものだ。
例えば圧力異常を検出して、インターロックを作動させるなら「圧力発信器」の故障だ。液面なら、液面計という検出器の故障だ。
インターロックが作動する場合、通常まず警報が鳴るような設計をしているはずだ。例えば、圧力HIの警報が鳴る。
警報を聞いて、人が対応する。それでも対処し切れなければ圧力HI-HIのアラームが鳴る。それでも圧力が上がれば、自動的にインターロックが作動するような設計がなされているはずだ。
HAZOPで見抜かなければいけないのは、警報を出す圧力計とインターロックを作動させる圧力計が同じ計器になっていないかだ。
何を言いたいかというと、同じ計器で警報とインターロックを作動させるようにしていれば、計器の故障で警報も、インターロックもどちらもいっぺんに機能を失うことになる。
確実に対処するためには、HI警報用の発信器と、インターロックを作動させる発信器は別々の物になっている必要がある。
警報用の計器と、インターロック用の計器は別々のものにしておかなかったために過去事故が起きているからだ。
インターロックを作動する計器の故障を考えたら、次はインターロックにBY-PASSなどの解除SWがあるか見て欲しい。
運転中にインターロックを解除されてしまえば、インターロックは機能しない。つまり、作動しないことになる。
HAZOPでは、ソフト的な管理がしっかりしているかも検証する必要がある
なぜなら、人はインターロックというシステムがあるから安全だと思い込んでしまうからだ
ソフト面では、インターロックを解除などをする判断基準が明確に決められているか確認して欲しい。
上司の許可を取れば良いなどと言う曖昧な判断は駄目だ。現実今から約10年前にインターロックを解除して爆発事故が起こっている
http://handa.jpn.org/1/posts/post447.html
人が変われば、判断条件が変わる。上司も替わることがある。経験や知識も違うからだ。
解除していい条件など、温度や圧力条件などが数値化されているか確認して欲しい。判断は見える化が必要だ。
最後は、維持管理だ。計器やインターロック機能の点検周期が明確かを確認しておくことだ。
何も点検しなければ、インターロックの故障に気づかないからだ。設備は設置したら終わりでは無い。維持管理もポイントだ。
HAZOPでは、ハード、ソフト(運用管理、機能検査、設備管理)と両面で問題が無いか見抜いて欲しい
インターロックというシステムがあるから安全だと思い込まないで欲しい

 

2023年01月11日

寒くなって起こる事故ーー凍結トラブル

コンビナートで起こる事故を見ていくときに季節性というキーワードがある
夏に起こる事故、冬に起こる事故とそれぞれパターンがある
夏は温度が高いから、当然反応は進む
屋外に置いたドラム缶が蓄熱自然発火など温度上昇故の事故が多発する
とにかく化学物質は、日陰や冷暗所で保管しないと思わぬ反応が起こる
温度に敏感な過酸化物が、夏場事故を起こすケースが多い
ならば、冬は温度が低いから事故は少ないかというとそうではない
冬特有の事故が起こる
凍結での対応事例の失敗だ。最近は、温暖化で冬はあまり温度が下がらなくなってきたが以前はよく凍結トラブルに悩まされた
11月くらいになるとプラントをパトロールしながらスチームトレースを活かし始める
最初のうちは、勢いよく蒸気を出してくれるのだが、やはり蒸気は停めておくと鉄さびがスチームトラップに詰まる
蒸気を活かしてからもう一度パトロールが必要だ。これがスチームを活かすときのコツだ
スチームの元弁を開いたから大丈夫と思い込むと、あとで凍結トラブルに遭う
蒸気のトラップが作動していても、蒸気の量も見ておくことだ。吹き出し量が少ないと時間が経てば蒸気は停まることもある
10年に一度は大寒波がきて凍結事故が起こったものだ
凝固点が40℃くらいある物質を取り扱っているときはよく凍結トラブルに悩まされた
おまけにその当時は、保温材に石綿が使われていた
当時は、石綿が有毒だとはあまり意識せず軍手で触っていた。マスクもしてはいなかった
2000年頃に、規制がかかるまでは石綿の有毒性はほんとに皆意識していなかった
それでも、私より5才くらい年を取った人は、石綿による病気、中皮腫にかかった人がいる
機械系の保全担当者だ
やはり、石綿は怖いものだったのだとそのとき実感した
本題に戻るが、温暖化とはいえ急に気温が下がることもあるだろう
スチームトラップの点検には手を抜かないで欲しい

 

2023年01月09日

化学物質の貯蔵保管の失敗で起こる事故

化学物質の貯蔵保管の失敗で起こる事故事例は多い
物質という物は時間が経てば変質する
夏場であれば温度が影響する。湿度も関係することもある。水分を含むと悪いことが起こる事例も多いからだ
こんな事故事例がある。塗料工場で起こった事故だ。原料を長期間保管しておいたため、水分が混入していた
水分の混入に気づかず、反応させていたところ反応暴走が起こってしまった
規格以上の水分が混入したからだ。成分検査をしっかりしていれば防げた事故だ
長期間保管した原材料は、万一を考え成分検査をしてから使用することだ
貯蔵している物質の組成の変化に気づかずに起こした事例がある
燃料タンクでの事故だ。原油を原料にして燃焼させて製品をつくる工場での事故だ
原油に含まれる水分量が増えているのに気づいていなかった。そのまま、運転を続けていたところ突然炉が失火したという事故だ
油の中に水分量が増えれば、燃えにくくなるのは当然だ。水分量の管理は必須なのに怠ったというお粗末な事故だ
やはり、成分管理はしっかりと行う必要がある
タンクで反応性のある物質を一時的に保管して失敗した事故事例がある
約10年前の2012年に起きたタンク爆発事故だ。いつもとは違い、満液の状態で撹拌をしなかったことにより起きた事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2012-000.pdf
いつもは、タンク内に入る液はわずかで、冷却用コイルもタンクの底部にしか取り付けられていなかった
工事の時の廃液を一時的に入れる中間タンク、管理上重要視されておらず温度計も警報も取り付けられていなかった
反応器は重要とだれでも考えるが、貯蔵に使われるタンクはそれほど危険は無いとおもってしまうからこのような事故が起こる
化学物質の貯蔵保管について警鐘を鳴らず化学工学会の談話記事があるのでこれも参照されたい
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/10/DANWA2020_10_No172.pdf
たかが貯蔵保管と思わないで欲しい
化学物質であればしっかりと管理して欲しい
HAZOPでも貯蔵によるずれを見逃さないで欲しい

 

2023年01月07日

バルブの誤操作が事故につながる

バルブの誤操作による事故事例は多い。
ヒヤリから大事故に至るまで、化学工場の現場で起こるヒューマンエラーの中で主要な事故要因ではないだろうか。
誤操作の原因は様々だ
多いのは「忘れる」だ。開けるのを忘れたというのもあるが、閉めるのを忘れたという方が致命傷になることが多い
ドレン弁を開けていて、ちょっと現場を離れたケースだ。帰ってきたら、油が流れ出ていて着火した事故も多い
勘違いと思い込みも多い。本来開ける弁を閉めてしまったり、その逆もある。無知や教育不足、図面の確認ミスだ
本来動かしてはいけない弁であれば、施錠して欲しい
現場の標識表示や行き先表示が無くて誤って別の弁を操作する事例も多い。標識表示は充実して欲しい
複雑な配管で間違える事例は、ほとんどが表示の不備だ
バルブ配置が悪いという事例もある
本来正面から弁が操作できるならいいが、弁周りの空間が複雑で、逆手で弁操作をしていて勘違いして事故になることもある
配管設計時のレイアウトで、事故が起こりにくい環境をつくって欲しい
緊急停止時の操作が複雑だったという事故事例もある
新人にバルブ操作を任せ大きな事故になった事例もある
http://www.hamamatsusogo.com/hanrei/scs631027k42-8-1109.html
日本では、1973年という年にものすごく多くの事故が起きた。
1960年代にコンビナートができはじめ、1970年代には規模も大きくなり人が機械について行けなかった時代だ。
その頃、安全関係で多くの論文を出されていた横浜国立大学の井上さんのいい文献がある。
「化学工場における最近の災害事故と防止対策」というタイトルで、1974年にでた文献だ。
下記のURLからダウンロードできるので興味のある方は読んでほしい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/12/4/12_4_184/_pdf
この文献の中では、S44年当時の事故とS48年の事故多発時の比較やバルブ誤操作というヒューマンエラ-に関する考察がある。
今でも教訓として使える貴重な情報があるので1度目を通してみてはいかがだろうか。

 

2023年01月05日

教育について考える 人は知らなければ事故は起きる

人は知らなければ事故は起きる
無知故に事故が起こることがある
知識という物は時間が経てば身に付くものもある
とはいえ、なかなか日常の業務経験の積み重ねだけでは思いつかないものもある
だから教育が必要だ
自然に身に付く物は教育しなくても良い
ところが、時間が経っても自然に経験したり知り得ない物はやはり教育という手段で知識を与えていく必要がある

教育という物はやれば効果は出るものの、教育には費用も時間もかかる
何をどのくらい時間をかければいいのか企業は真剣に検討することも必要だ
法に定められた教育はしょうが無いが、技術や技能を向上させる教育はコストと効果を真剣に考えるべきだ
教育の時間は、消費税率の変化にたとえられる
全就業時間の3%、5%、8%、10%とも言われる
仕事の高度化が進めば教育の時間も増えていく
そうは言っても限りある時間だ

教育の内容や時間についても見直して欲しい
さらに効果も検証して欲しい
教材も陳腐化していないか検証して欲しい
教える人材にも教える技術を身につけさせて欲しい
単に喋るだけで技術は伝承しない
教育を受ける相手が教育から気づきを得ない限り人は成長していかないと思って欲しい
人は納得しないと知識を受け入れない動物だからだ

2023年01月03日

新年のごあいさつ  事故から何を学んできたのか

新しい年が始まる
このブログを始めて8年目になる
なぜ事故が起こるのかを情報発信してきた
事故が起こるのはパターンがある
そのパターンを知らないから事故が起きる
日本の化学産業が起こってから100年になる
石炭を原料とした化学産業から始まり、石灰を原料としたアセチレン産業も栄えた
天然瓦斯を原料とした時代もあった
1950年代後半からは石油を原料とした石油化学産業へと変遷した
事故が起こるのは、物質危険性、人のミス、設備の故障に加えて自然災害などの外乱が要因だ
100年経った今でもそれは変わり無い
事故の要因は変わらないのに、その要因は的確に伝えられていない
なぜなら、事故は起こらないようになってきている
今の若い人は事故を経験することもなくなってきている
失敗を経験することはない
人は失敗から学んで成長してきた
しかし、今の世の中失敗を経験できないという矛盾がある
事故が無いことはいいことなのだが、事故はやはり起こる
事故を対処する能力は不可欠なのだが、それを学ぶ機会が無い
過去の事故事例を学ぶしかない
とはいえ、過去の事故事例がわかり易く整理され企業内で伝承されているかというとそうでも無い
事故から学んだ失敗を伝承するのは難しい
日本の化学産業、事故から何を学んできたかを本にしたいのだが、なかなか時間がとれない
いつか、本にしてなぜ事故が起こるのかは伝承したい

 

2023年01月01日

今年一年の国内の重大事故を振り返って その2

今年最後のブログになる。年末ぎりぎりまで、事故は起きている。今日現在までの情報をまとめておく
2022/3/1火薬類を製造する工場で爆発死亡事故。 一人作業で、死亡しているため原因はわかっていない
https://www.youtube.com/watch?v=25_ulg_7Ohttps://www.youtube.com/watch?v=25_ulg_7OjE
2022/3/7 鉄粉を加工する大型機械が爆発死亡事故。粉塵爆発だ
https://matomebu.com/news/hyogo-jiko20220307/
2022/3/13 リン製品を製造する工場で火災6時間後鎮火 原因はわかっていない
https://tadatabilife.hatenablog.com/entry/2022/03/14/051717
2022/9/6 ボイラー爆発  
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/pdf/017_03_00.pdf
https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20220922535194&pid=140120220922535194
2022/11/28 燃やした木くずの灰を集めて冷却する設備の内部で、清掃をしていた作業員が灰に埋まり1人は救助されたが、2人が死亡
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20221128/3000026202.html
請負作業員の崩落事故だ。上から落ちてきた灰に埋まった事故だ
いつも行う作業で慣れていたのかも知れないが、今回は状況が違っていたようだ
慣れた作業でも、危険性は絶えず存在すると言うことだ。しつこいくらいに事前確認するという基本に忠実であることが求められている
塔槽内に入るときは、上からの崩落というリスクを考えておく必要がある
2022/12/27 東京の石鹸工場で火災  油脂工場の火災だ
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6448933
https://www.msn.com/ja-jp/news/entertainment/%E5%A2%A8%E7%94%B0%E5%8C%BA%E3%81%AE%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E7%81%AB%E7%81%BD-%E3%81%9B%E3%81%A3%E3%81%91%E3%82%93%E9%85%8D%E5%90%88%E5%AE%A4%E4%BB%98%E8%BF%91%E3%81%A7%E5%87%BA%E7%81%AB%E3%81%8B/vi-AA15ITQ9?ocid=winp0dash&pc=WSPWWU&cvid=9d2efa40e15641f9bb354208a0410da5&category=foryou
火の回りが早い。何が燃えたのかはわからないが今後の事故調査を期待したい
2022/12/29 三重県でアルミ工場の粉塵爆発。火気工事で粉塵に火がついたという
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/257219?display=1
アルミの粉の粉塵爆発は繰り返し起こっている。粉を甘く見ないことだ
過去の失敗事例に常に学んで欲しい

 

2022年12月30日

今年一年の重大事故を振り返って その1

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
事故の報道はされるが、1年経過しても原因や背景などはほとんどその後報道されることは無い
報道は,起きた事実だけを伝えるものだからだ 時間が経ってから2度と報道されることはほとんど無い
ここに、今年の国内外の主要事故を書いておく
2022/1/6 半導体の材料を製造する工場で爆発2人が重軽傷
https://www.rasa.co.jp/info2022011301.pdf
赤リンが関係する事故だ。消防法で危険物第二類として可燃性固体(着火しやすい固体や低温で引火しやすい固体)に指定されている
半導体材料の大手で市場へ与える影響も大きい。その後も、事故の原因は公表されていない
参考までに、2015年10月14日に起きた赤リンが関係する化学工場での事故事例があるので紹介しておく
事故の原因は、窒素を入れずに赤リンを投入していたからだ
原料として赤リンを入れていたが、投入網が赤燐の投入により動いたため、衝撃及び摩擦により発火して着火源となり、攪拌釜内のエーテル蒸気に引火したと言われる
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101509
2022/2/11 新潟の米菓工場で火災、アルバイト従業員4人を含む6人が死亡
夜間に起きた火災で、すぐに停電し煙の充満により非常口から脱出できなかった事故だ
この事故は企業から中間報告と最終報告の事故報告書が出されている
https://www.sanko-seika.co.jp/pdf/news20220601_1.pdf
https://www.sanko-seika.co.jp/apology/pdf/news20221215.pdf
火災時の避難訓練は、社員のみならず嘱託や協力会社員、アルバイトも含め必ず実施しておくことが大切だということだ。
非常灯は正常時には見えても、火災発生時は煙で見えない。やはり、訓練で逃げ道を体感させておかないといけないと言うことだ
着火源は油かすとの表現がある。職場の清掃がいかに大切か感じさせる事故だ
設備周りダクト周りの堆積物には常に注意を払う必要があると言うことだ
消防庁からも中間報告が出ている。参考にされたい
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/cf3de8ff43d91834b30f49931ad7cd1de74c7bfb.pdf
天井に張り付けられた発泡ポリウレタンが火災拡大につながったとの記述がある
引用すると
「発泡ポリウレタン※2が吹き付けられた火災現場を模した天井(10×5m)にガスバーナーを近づけたところ、10秒程度で天井表面に着火した。
2~3分程度で天井全体に炎が回り、5分程度で天井全面がほぼ燃え尽きることが確認された。

2022年12月28日

ガラス製機器が引き起こす事故--ガラス製のぞき窓

ガラス製のぞき窓の事故事例について紹介する
反応器やドラムなどにのぞき窓をつけていて破裂する事例は多い
安全弁や破裂板をつけていれば防げた事故だ
ガラス機器を取り付けるなら、その耐圧以下で作動する安全弁や破裂板をつけておいて欲しい
HAZOPを実施するときにも、ガラス機器が設置されている機器を見逃さないで欲しい
P&IDフローシートでは、のぞき窓の有無は確認できないはずだ
のぞき窓近くに照明機器があるならそれも注意して欲しい
機器の管理がずさんでケーブルの短絡を起こし漏れたガスで着火や爆発事故が起きている
可燃物を取り扱う機器なら、照明機器は防爆が不可欠だ
開閉できるのぞき窓なら開閉時可燃性ガスが漏れるはずだ
のぞき窓と照明器具に関わる事故事例も多い
トラブルが起きたときあわてて中を見ようとしてのぞき窓を開けて事故になることも多い
開ければ、空気が機器内に入り込むからだ
空気と可燃物が混ざり爆発混合気をつくり着火爆発している事例も多い
のぞき窓も開ければ空気が入り事故になると教育して欲しい
ボイラーなど温度の高い機器ののぞき窓は、高温環境にある
冷却用に空気を吹き付けたりしているものの冷却効果などが落ちると割れることもある
冷却性能の日常管理も必要だ
高温機器ののぞき窓についても注意を払って欲しい
タンクに付いているのぞき窓も割れることもある
タンク内の圧力が急に上がり破裂したこんな事故もある
https://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/2ca78a57e28a7a0cb56bc3137a579d21
タンクとて急激な圧力上昇があればのぞき窓は破裂する
繰り返すが、安全弁や破裂板の設置も忘れないで欲しい

2022年12月26日

ガラス製機器が引き起こす事故--ガラス式液面計

化学工場などではガラスでできた機器が使われることがある
ガラス式液面計、ローターメーター、サイトグラス(のぞき窓)が使われる
ガラスは機械的な強度が弱いことから、割れたり破裂したりして事故が起きている
ガラス式液面計の事故事例について紹介する
増し締めをした時締め付け過ぎて割れた事故事例がある。強く締め付け過ぎたからだ
決められたトルクで締め付ける必要がある
とはいえ漏れがあるなら、締め付けるよりパッキンそのものを更新した方がよい
パッキンが劣化した状態で無理に締め付ければ割れるのは当然だ
ガラスそのものにキズがあることもある
安易に対処療法で締め付けると割れて事故になる
ガラスもパッキンも時間が経てば劣化すると思って欲しい

突然ガラスが割れて液化塩素という液が噴き出したという事例もある
本来なら、自動止め弁が作動する仕様になっていたがなぜか作動しなかったという
おまけに塩素の蒸発による気化熱で手動弁の温度が下がり固着して弁そのものを閉められなかったという事故もある
そもそも漏れたら大変な有毒物質にガラス機器を選定したというのが間違いのもとだ
機器選定で、ガラスを使ってもいい条件をきちんと決めておく必要がある

メーカーの製作時のミスで引き起こした事故もある
ガスケットがきちんと組み込まれておらず、時間が経って2年後にガラスが割れて液が噴き出した事例だ
液が噴き出すと自動的に吹き出しを停める自動閉止弁付きではなかったので大量に液が噴き出し火災になった
自動閉止弁付きの仕様で購入していれば被害は極小化できたかも知れない
この事例は、運転温度40℃、圧力5MPaの高圧ラインで起きた事故だ
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00021.pdf
そもそも、このような高圧系にガラス機器を使うことも問題点だ
事故後、選定基準を見直し、別の金属でできた液面計に変更したという
機器選定の自社基準をしっかりと制定しておくことも事故防止には有効だ

 

2022年12月24日

粉塵爆発--ダクト内の清掃を怠るな

可燃性の粉を取り扱う工場では粉塵爆発のリスクが存在する
ところが、案外可燃性の粉ということに気づいていない事例が多い
さらに、粉が危険と言うことに感じていない事故事例が多い

粉を投入する設備で空気が同伴し粉塵爆発を起こす事例も多い
粉の投入時は、空気の漏れ込みにものすごく注意しなければいけないのにここが見落とされる
ダクトの切断中の事故も多い
粉塵が内部に堆積している状態で火気工事をするからだ
切断中に内部に付着した粉に着火し火災となる
ダクトというのは,1度火がつくと一気に燃え広がるのが特徴だ
煙突やダクトにはトンネル効果という現象がある
ダクトなどは入り口と出口とは高低差がある
高い所と低いところでは,わずかではあるが気圧の差ができる
水が高い所から低いところに流れるように,気体も上空の気圧の低い方へ自然に流れていく
更に、上空に風が吹いていれば気体の流出効果は増す
つまり,ダクト内に1度火がつくと火炎がダクト内を逸走するのだ
事故が起こらないポイントは3つだ
ダクトの内部を点検できるような構造にしておくことだ
次に,内部に堆積物をためないことだ。定期的にダクト内を清掃することがポイントだ
もうひとつ、大事なことはダクト内に流入する粉塵を含んだ気体の温度をできるだけ下げることだ
10℃でも、20℃でもいい。発火点に近づけなければ着火しないからだ
たかがダクトと思わないで欲しい
ダクトで起こる火災や爆発事例も知っておいて欲しい
年末の点検項目などにも織り込んで欲しい

 

2022年12月22日

調節弁の長期にわたる振動が引き起こした事故

高圧ポリエチレンを製造するプラントで起きた事故だ
調節弁の長期にわたる振動が引き起こした事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-463.pdf
設置から36年後。長期間の振動で金属疲労による割れが生じたものだ
振動による応力集中の事故だ
調節弁で発生する振動により常に下流側のベント弁の付け根の部分が振動していた
調節弁から40cmの離れた所にあるベント弁の溶接部が振動で破損した
流量調整弁の作動による繰り返し振動等で応力集中が繰り返し起こり、ベント弁の溶接部に亀裂が発生した事故だ

圧力13Mpa、-35℃、ベント弁は3/4Bと小口径配管だった。設備は36年前に設置されたものだった
約40年間振動は続いていたことになる
ベント弁のノズル亀裂部から漏洩した液化エチレンという物質が、保冷材内装のグラスウールの中にしみ込んだ
液が放出される際、ミスト状で放出された為に静電気が発生して可燃性の液に火がついたという
物的被害としては保温材約1mが消失だけですんだ
ひとつ間違えば大事故にもなったかも知れない事故だ

調節弁の振動にも関心を持って欲しい
微妙な振動でも基準値を超える振動であれば,時間が経てば何らかの影響が出る
自分の会社の,振動管理値はいくらなのか調べてみて欲しい
振動管理の数値だけではなく、実際に装置に触れたときの振れの感覚も知っておいて欲しい
この程度の振れが事故になるというのを実感して欲しい
理論的なことを単にに知っているだけでは、しばらくすると忘れてしまう
体感を含めた知識を持って知識の継続性を高めて欲しい

2022年12月19日

調節弁の差圧が大きくて異常振動

アンモニアを製造するプラントで起きた事故だ
差圧の大きい配管の調節弁の異常振動事故だ
運転中に8Bの調節弁に大きな振動が発生し、調節弁まわりのブルドン管圧力計取りだし部から突然液が吹き出した
配管折損により、4名被液した事故だ
対策として振動防止用サポートを強化したものの,すぐに同じような事故が起きた
調節弁の差圧が約2MPaもあり、出口側はフラッシュして気液混層となる使われ方をしていたのが異常振動の原因だ
アンモニアは沸点は常圧では-33℃だが、圧力を加えると沸点は常温近くとなる
1MPaにもなれば沸点は30度になるから、気液混層状態となり始める

更に配管設計も悪かった
弁の後方は口径が20B(調節弁は8B)と急激に配管が太くなっており、時々激しいフラッシュ現象を起こし、配管が激しく振動したていたという
液が瞬間的に気化すれば,ガス化により体積は千数百倍にもなる
気液平衡状態であれば、すぐに一部は再液化して体積が縮小する
これを繰り返せば異常振動で配管が折れるのは当たり前だ
単純な配管サポートだけで問題は収まらない
再発防止の為、事故が起こらないように2つの対策を実施したという
一つは弁の形式を,アングル弁に変更した
もう一つは弁の下流側に,流れを緩やかに拡大する拡張管という部品を取り付けた
これにより異常な振動を抑えることができた
使用条件が,気液混層になる条件であればこのような振動に配慮することだ
高差圧である弁も振動には注意が必要だ
弁形式もグローブ弁やケージ弁では適さないこともある
アンモニアは,毒性も有り爆発性もある
ひとつ間違えば大事故にもなったかも知れない事故だ
圧力変化に応じた蒸気圧曲線を見て、使用圧力で沸点が外気温に近くなれば気液混層状態になり始めると考えて欲しい
https://www.sdk.co.jp/assets/files/products/finegas-list/nh3_h.pdf
調節弁の異常振動にも関心を持って欲しい

2022年12月17日

変更管理の失敗事例 調節弁の内弁サイズ変更

1974/8/8に鹿島のコンビナートで起きた事故だ
調節弁と言うのは,流量や圧力を制御する弁だ
順調に制御できているときはいいのだが、圧力損失が極端に大きかったりすると異常振動を起こすことがある
いわゆる差圧が変わると問題を起こすのだ
この事故は、弁のサイズアップという変更管理の失敗事故でもある
調節弁の異常振動事故だ
弁の入り口と出口のΔP(差圧)が1Mpaもある高差圧弁だ
配管中のコントロールバルブ(調節弁)の処理能力を大きくするため,その内弁の大きさを5Bから6Bへ変更した
その結果、コントロールバルブが振動をおこしたのだ
バルブ内弁サイズアップによる振動発生とそれによる周辺亀裂・緩みが生じた
ノズル付根部分にクラック(割れ)が入り,炭酸カリ溶液10Lが霧状に漏洩した
内弁のサイズを変更したことにより、バルブの流量特性が変化し,ハンチングをおこしたからだ
弁の開閉を操作する空気シリンダーの推力不足が原因だ
空気シリンダーを動かす空気の圧力が不足していて、十分な推力のある空気シリンダーとなっていなかったのだ

事故後、空気シリンダーを動かす空気の圧力を0.24→0.28MPaにあげたという
内弁を変えたら,内弁を制御する空気シリンダの推力も十分検証しなければならない
単純に内弁を変えただけでOKと思い込んだのだろう
何かを変更したら必ず現場を見てまわることだ
かなりの異常振動が起こっていたはずだ
現場を見ていれば防げた事故だ
酸化エチレンというとんでもない爆発力を持つプラントの事故だ
大事故にもなったかも知れない異常振動だ
計装設備である調節弁を何か変更するならしっかりと変更管理を行って欲しい

2022年12月15日

気液混相流で起こる事故

物性というのを考えて欲しい
化学物質は、温度や圧力の条件により様態は変わる
液体であったり、気体であったり、固体だったりする
物質の様態の変化に関心を寄せて欲しい
化学装置の中で、流体は変化する。液体が気化したり、液飛沫を分離したり様々なことを行っている
気体と液体を分離することがある。気体と液体が混在する装置では色々な事故が起こる
気液分離槽という容器に穴が開いて爆発した事故だ。容器中に気体と液体が混ざった物を入れて、液とガスを分離して液を回収する装置だ
高速で気液が入り込むので、スプレ-ノズルを取り付け流速を落として分離させていた
とはいえ、容器の壁にこの気液が長期間衝突したことによりエロージョンコロージョンで穴が開きガスが漏れ爆発した事故だ
企業は、原因を調査し調査報告書を公表したものの、実は10年前にも同じようなトラブルがあり、官庁にも届けず無断で修理したことがわかった
社内の調査委員会のメンバーもそれを知っていたのにかかわらず、調査報告書には過去の事例は記載しなかった
更に調べると、同社の他工場でも高圧ガス保安法で定める手続き通り検査もせずに工事を行っていたことがわかった
結果として、高圧ガスの認定も取り消され、社内の経営陣も責任を取って社内処分も行われた事案だ
https://ceh.cosmo-oil.co.jp/csr/publish/sustain/pdf/2006/sus2006_05-06.pdf
機器の内部構造を変更したことにより起きた変更管理に関わる事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-082.pdf
安易に、気液分離方法をバッフル方式から、スプレーノズル方式に変えればトラブルの再発は起こらないと判断したのかも知れない
気液が分離している2層流というのはエロージョンコロージョンの事故が起こり易い
定点検査で肉厚検査をしていると、減肉箇所を発見できないこともある。場所が数センチ変わっただけでも、削られ方が変わるからだ
2層流の事故事例を紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200098.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-123.pdf
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2019-353.pdf
法規制のある機器を変更すれば、当然許可や届出が必要になってくる。時間もかかる。時間がかかれば生産損も出ると考えたのだろう
企業倫理を現場の末端まで徹底するのは難しい
たかが変更管理と考えないで欲しい
変更すれば、法に関わることも出てくると教育周知して欲しい

 

2022年12月10日

保温材にしみ込んだ油の発火

冬になると火災が増える.乾燥して火がつきやすくなるからだ。
化学工場でもこの時期火災には注意が必要だ。
保温材に油がしみ込んで着火し、火災になる事例をご存じだろうか。
保温をした配管の板金などが黒ずんで、油が内部にしみ込んだ形跡があるなら要注意だ。
通常の配管板金なら、汚れや染みなどは無いはずだ。
板金の表面に黒ずんだ油の跡などがあれば、油が保温材の内部にしみ込んだ可能性がある。
しみ込んだ油は、時間の経過とともに周辺の空気で酸化されていく。
酸化されると、酸化熱という熱を発生するので油のしみ込んだ箇所は温度が上がっていく。
更に、油は酸化されると通常の発火点より低い温度で発火するようになる。
例えば通常なら300度位の発火点の油でも、その1/2から2/3程度の低い温度で発火するようになる。
つまり、150~200度程度で自然発火する状態になる。
保温を実施しているところでは、蒸気などで暖めていることも多いので、その蒸気の温度で発火することになる。
SDSなどに書かれている発火点が高いから大丈夫だと思わないで欲しい。
それは、新品の時の話だ。劣化したり、酸化されれば発火点はどんどん下がってくる。
保温材の中は、空気も沢山ある。つまり、燃焼の3要素が成り立つ条件がそろっている。
油という燃える物があり、支燃性ガスである空気が存在する。
発火点は下がっているのだから、酸化された油は自然発火することになる。
工場内で多くの現場で起こっているが、小火程度であれば公開されることは少ないので案外この現象は知られていないというのが実情だ。
以下に公開されている、保温材に油がしみ込んだ事例を紹介しておく。
http://www.japc.co.jp/news/press/2002/pdf/141220a.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00452.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012011.html
保温材の中に油がしみ込むと、火災になると思って欲しい。
現場をパトロールしたときに、配管などの保温材に油の染みがあったら、早めに保温材をはぐって点検して欲しい。
保温材の内部に油がしみ込んでいたらすぐに、撤去して新品にやり替えて欲しい。

2022年12月08日

破裂板で起こる事故 その2

破裂板が原因で起こる事故について前回に引き続き書いてみたい
破裂板が設定圧とは異なる圧力で作動してしまう事例がある
一つはメーカーの製造ミスや品質不良だ
わずかに表面が荒れて製作されたことで設計値とは違う圧力で作動している事例もある
破裂した破裂板と同一ロットの破裂板を検査したところ、表面加工の仕上がりが粗く
コーナーの角度の加工が非常に鋭かったことから、表面加工傷に何らかの応力が集中し、亀裂が進展し破裂に至った事故もある
メーカー品だから大丈夫だと言うことはない
安全弁なら受け入れテストで作動確認ができるが、破裂板は破裂させては元も子もない
こんな事故事例もある
破裂板出口側の配管が狭かったことで起きた事故もある
放出配管の口径が小さく、またサポートが十分でなかったため作動時先端部分が振れ、配管が折れ曲がり破損した事故だ
流出した流体が折れ曲がった部分で断熱圧縮状態となり分解爆発を生じた事故だ
出口側が詰まるような設計をしていると、圧力が高いと断熱圧縮が起きて温度が上がり放出ガスに着火した事例だ
出口側配管が狭いと断熱圧縮で温度が上がり、異常反応が起こることも忘れないで欲しい
サポートもしっかりしていなかったことも関係している
出口側配管は、直角の曲げをつけてしまうとガス放出時の圧力でこのようなことになる
破裂板からのガス放出時はとんでもない圧力がかかる
放出部の設計も甘く見ないで欲しい
破裂板は金属だ。放出時に破片が飛び散ると金属同士ぶつかって火花を生じることもある
この火花が、着火源になることもある
破裂板に十文字のスリットが入っている物があるが、スリットのおかげで破片を飛び散りにくいようにしている
金属破片が着火源になることもあると言うことだ

破裂板放出口周りで問題になる設計が存在しないか現場で確認して欲しい
サポートもしっかり取られているのか。ゆるんでいたり外れている物が無いか見て欲しい

2022年12月04日

破裂板で起こる事故 その1

破裂板が原因で起こる事故について書いてみたい
化学工場では、圧力が上昇したときの装置の破壊防止のため破裂板や安全弁が使われる
破裂板は安全弁よりコストも安く、構造も簡単な為多くの設備に使われている
https://yuruyuru-plantengineer.com/rupture-disc-selection/
破裂板が破裂したとき大気に放出してはいけない物質であれば大気開放型は適さない
しかし、大気開放型であった為、周辺住民などに中毒などの被害を出すこともある
イタリアで起こったセベソの事故などはこの例だ
ダイオキシンという猛毒のガスが市街に流れ込み数十万人が被害を受けた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0300002.html
破裂板が作動するのも困ることだが、作動しないのも問題だ
破裂板に元弁を付けているケースだ
元弁を開けるのを忘れて、いざという時破裂板が作動せず装置そのものが破裂したという事故もある
http://www.shippai.org/fkd/hf/HB0011017.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000038.html
本来なら、破裂板や安全弁などは元弁は付けない方が良い このような事故を起こさないためにもだ
コンビナートにある化学工場などでは、このようなヒューマンエラーを防止する為に元弁は付けない
ところが、町中の設備は装置を使用中に安全弁を点検することが多いのでこのように元弁を付けることになる
バルブに施錠して管理してくれればいいのだが、そこまでの知識は持ち合わせていないケースが多い
結果としてこのような破裂事故を起こす
破裂板が作動しないケースをもう一件紹介しておく
破裂板に至る配管が詰まっているケースだ
ポリマーなど固まりやすい物質を取り扱うケースで起こる
結晶化する物質を取り扱う時にも起こる
凝固点や粘度に注目して欲しい
保温があって結晶化して詰まらないように対策をしていても、保温の管理が悪くて事故が起きていることもある
破裂板周りのパトロールも忘れないで欲しい

 

2022年11月30日

フレキシブルホースで起こす事故

フレキで起きた最大の事故はこの事故だろう
1974年6月1日イギリスでフレキ配管が折れ大量の可燃物が漏れ出す事故だ
死者28人、負傷者89人の大惨事だ
http://www.shippai.org/fkd/hf/HB0058048.pdf
http://www.sydrose.com/case100/306/
事故の顛末はこうだ
反応器が何台かある工場で、腐食により反応器に穴が開いた
修理のため一時的に、仮設で反応器を結ぶ配管を仮設した
本来は、金属でできた配管で反応器間をつないでいたが、フレキ配管で反応器と反応器の間を結んだ
フレキという弱い部分が仮設により存在するようになったが、それを保護するサポートは十分ではなかった
装置の運転をスタートしたとき、反応器を流れる流体の温度は徐々に上昇していった
温度が上がれば、配管やフレキなどの金属は膨張して延びていく
この金属の膨張による、フレキを支えていた支持部が外れフレキが外れ大量の可燃物が外に漏れ出した
しばらくして、漏れた可燃物に火がつき大爆発を起こしたのだ

金属製の鋼管配管であればそう簡単に漏れることはない
ところが、フレキというような薄い金属であれば無理な力が加われば破れることもある
仮設という作業を甘く見たことにより引き起こされた変更管理の事故だ
HAZOPでもずれが事故につながると考えリスクの検証をする
「変更」というのもずれの一つだ

PSM(プロセスセーフテイマネージメント)という概念の中にも、変更管理は重要な管理項目としていちずけられている
そうは言っても、現実の世界、変更と人が意識しなければ変更管理の意識は働かない
そこに変更管理の難しさがある

 

2022年11月28日

洗浄不十分で起こる事故  アルカリ洗浄

装置で何かを製造するには、清潔であることが不可欠だ
異物の混入は事故につながるからだ
水洗浄も一般的だが苛性ソーダなどのアルカリが洗浄に使われることもある
酸は金属を溶かすがアルカリなどは油分を溶かしてくれる
苛性ソーダなどを皮膚に付けるとぬるぬるするようになる
皮膚のタンパク質を苛性ソーダが溶かすからだ
アルカリ洗浄は便利なのだが、万一アルカリが残ったときにアルカリと反応することがないか検証しておくことが大切だ
アルカリと混触反応を起こす物質も沢山あるからだ
配管をアルカリ洗浄した。その後水で洗浄したものの、アルカリ分が残っていたことで事故が起きることがある
運転を始めたところ、原料と一緒にアルカリ分が蒸留缶に入ってしまった
蒸留缶内で、アルカリとの混触が起こり装置が破裂した事故だ
ニトロアミンは濃アルカリと混ぜると爆発する性質があったからだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000099.html
乾燥機のアルカリ洗浄後運転を始めたところアルカリ分がわずかに残っていた為、反応して爆発している事故もある
洗浄不足だ。水洗浄を行ったが、完全にアルカリ分が除去されていなかったからだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000136.html

アルカリを使えば効果的に洗浄できるものもある。しかし、アルカリ洗浄後に水洗浄してもアルカリは微量に残る
洗浄とは抽出操作なので、100%除去はできないからだ
わずかでもアルカリが残ると、混触反応が起こるならアルカリの洗浄はやめるべきだ
今回は紹介しなかったが、アルカリ分は応力腐食も起こす
時間が経ってから腐食で事故が起こることがあるのだ
効率より安全を優先すべきだろう

公開されている事例のみ紹介したが、現実は多くのアルカリに関する事故が起きているはずだ
自分の企業のアルカリに関する災害事例を調べてみることだ

 

2022年11月26日

安全弁や破裂板の大気開放型は正しい設計なのか

可燃物や有毒ガスなどの安全弁の大気開放型は問題は無いのだろうか
多くの工場を見て見ると安全弁の出口側配管は大気開放が沢山ある
本当にそれでいいのだろうか
安全弁は作動することはないという前提でそうしているのだろうか
ところが、ひとたび安全弁が作動すればとんでもないことが起こるはずだ
可燃性ガスの安全弁であれば、作動すれば着火することもある 静電気で簡単に着火する
水素などを含むガスであれば、噴出帯電で簡単に着火する
過去には安全弁が作動して、近くの高温蒸気配管で着火した事故事例もある
高温のガスが安全弁から放出して自然着火した事故事例もある
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-231.pdf
スタート時安全弁が作動し、同時に火気工事もしていたので着火した事故事例もある
http://blog.knak.jp/2019/10/post-2297.html
有毒ガスであれば、拡散して中毒事故が起こる
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0300002.html
安易に安全弁や破裂板の出口を大気開放型にして起こる事故は多い
大気開放型の設計は問題を多く起こしている
設計に当たってはもっとリスクを考えて欲しい
静電気着火対策であれば、出口側に蒸気を流して着火防止をしている対策もある
ブローダウンタンクへの放出も考えるべきだ
有毒ガスであれば、除害設備へ送る方式にするなどの対策も必要だ
安易に安全弁や破裂板の出口を大気開放型で設計しないで欲しい

 

2022年11月24日

調節弁のステライト盛りで起こる事故

ステライトという物質を知っているだろうか
固い金属だ。コバルトを主成分とした合金だ
https://www.hayaden.net/stellite/30
https://www.chiyoda-x.co.jp/latest-case/entry/entry000053.html
化学工場などでは、多くの金属が多く使われる
柔らかい金属も使われるが固い金属も使われる
調節弁の弁座は固くて漏れない方がいい。ステライト漏れは金属を固くする手法の一つだ
調節弁などは弁座の漏れを少なくするためこの固い金属で弁座をつくることもある
とはいえ全てを固い金属でつくるわけではなく、母材の表面に固い金属を盛り付ける
固いといことは調節弁などでは、弁座が削られることがなくなるため漏れが起きにくいという利点がある
いいことなのだが、腐食という観点からは万能では無い
硝酸を使うプラントでの事故だ
本来はSUS304Lむく材の調節弁内弁だった
ところが弁座にステライトが盛られていた

硝酸が使われる工程であった為ステライの盛り付け部が腐食で割れて漏れたという事故だ
腐食性環境でなければ、ステライトは固くて弁座で削られることもない
したがって弁座漏れにはなりにくい
ところが、腐食性環境だとこのような事故も起こる
2つの金属を組み合わせるからだ
結合が悪ければ事故になる

金属材料の選定は難しい

 

2022年11月20日

洗浄不十分で起こる事故  行き止まり配管の洗浄不足と水洗浄後の突沸

装置で何かを製造するには、清潔であることが不可欠だ
異物の混入は事故につながる
装置を起動させる前には、徹底的に装置内を洗浄するはずだ
わずかな異物が事故につながるからだ
異物混入には色々なものがある。金属片、製品カス、微量不純物、触媒残渣、修理作業に使った工具などだ
洗浄に使った水や薬剤も事故の要因になることがある
水で洗浄してもうまく洗浄できない部分は沢山ある
配管の行き止まり配管部だ
行き止まりと言うことは流れが無いということだから、水も行き渡らない
結果として洗浄不足となるのだ
ドレン弁も行き止まり配管だ
曲がれが無いからどうしても残渣などが残ってしまう
だから、ドレン弁などを一度開けて洗浄するのだがそれもまた事故の要因となる
バルブの閉め忘れだ
水を停めてしまえば、ドレン弁部は水は出なくなる
スタートアップ時にしっかりと閉めてくれればいいのだが、閉め忘れて事故になることも多い
ドレン弁出口配管に配管キャップを付けるようになったのは
この閉め忘れを防ぐためでもある
キャップが閉まっていれば、安全だからだ
洗浄に水を使ったときもう一つ注意することがある
水の沸点は100度だ
洗浄後100度を越える流体が流れてくるなら突沸も考えておく必要がある
どこかに水が残っていれば突沸が起こる可能性があるからだ
高温の油などが流れる配管はあるはずだ
突沸にも注意して欲しい

 

2022年11月18日

自動化を進めて省人化をするときに考えること

企業は生き残るために、省人化する
自動化をして一人でも人を減らそうと努力する
人が減れば、企業の固定費が減るから利益は増える
では、化学産業でどこまで人を切り詰めることができるかだ
今から数十年前は、化学プラントの運転員は今の2倍から3倍いた
ところが、1980年代DCSという道具が現れた
DCSはコンピューターによる運転システムだ
落ちついた平常運転時は、DCSで自動運転が行われることにより運転員の負担は減った
だから、トラブルさえなければ、少ない運転員で運転は可能になったことは事実だ
とはいえ機械という物は、いつも順調に動いているわけでは無い
機械は時間が経てば壊れる
機械が壊れたら、DCSが自ら修理してくれるわけではない
DCSは機械の故障で発生した警報を鳴らす機能しか無い
異常を感じて修復してくれる機能は無い
プラントが乱れれば、やはり人が対応しなければいけないのだ
昔のようにDCSも無く年中トラブルを経験してた運転員ならば対応は可能かも知れない
しかし、DCSでトラブルが減った現状の運転員はそトラブルの体験が少なくなっているはずだ
人は常にトラブルから学んで成長してきた
ところが、トラブルを経験できないような世界にしてしまえば、トラブル対応能力は向上しない
自動化すればするほど、人はトラブル時にはより高度な行動ができる能力が求められてくる
とはいえ自動化でトラブルが経験できなくなるのだから、矛盾する
そこを補うべき、高度なトレーニングシュミレーターが開発され訓練に時間をかけれるならいいのだがそんなところにコストはかけないだろう
やはり、半自動化でそこそこトラブルを経験させながら機械と人間の駆け引きをさせ
一歩ずつ自動化を進めるのが落としどころなんだろう
所詮人間と機械のバランスが取れなければ社会はうまくいかないのだろ
人は失敗から学びながら成長するからだ

 

2022年11月16日

ジェット洗浄作業で起きた中毒死亡事故に思う

1年ほど前に、ある工場での定期修理中で起きた猛毒のシアン系設備を洗浄中に起こった作業員の中毒死亡事故だ
熱交換器という装置の中を高圧の水を吹きかけて、内部を洗浄する作業中作業員が死亡した事故だ
洗浄機器の中に残っていた猛毒のシアン化水素(青酸)を含んだ液を吸い込んだか飲み込んだという
https://www.sumitomo-chem.co.jp/news/detail/20220113.html
シアン化水素は青酸カリなどに使われる化学物質だ。微量に吸い込んでも死に至る可能性がある物質だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%B3%E5%8C%96%E6%B0%B4%E7%B4%A0
270PPMで即死と言うから、微量吸い込んだだけでも死にいたる物質だ
高圧の水を吹きかけて装置の中の残留物を吹き飛ばし除去する作業を水ジェット洗浄という
こびりついた異物を取り除く一般的な工法ではある
高圧の水と残留物が作業中周囲に吹き飛ぶため、作業員はゴムでできた作業着と、顔の部分には保護カバーの付いたマスクを着用する
今回洗浄作業をしていたのは、猛毒の物質を製造した設備だ
当然、作業前には水や、空気、窒素などを使って装置の中は事前に工場側で洗浄は行われていた
今までこの作業は、15年間行われており事故は無かったという
ところが、今回死亡事故が起きてしまったのだ
その後企業側から、事故の詳細は報告されることはなかったが、先日高圧ガス保安協会から事故の報告書が公開されていた
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/2022/02_2021-000.pdf
これを読むと、類似の別プラントで過去洗浄作業をした際、シアン化水素が微量に検出されていたという
別のプラントでは、安全のため作業に使う保護具はエアーラインマスクに改めたという
ところが、今回事故が起こったプラントではこの情報は水平展開されず、単なる顔を水しぶきから守るゴム製マスクだけだったという
このマスクは、呼吸のために小さな穴が開いていてそこからガスを吸い込んだか、液が入り込み口に入ったという
結果として意識を失い病院へ搬送されたものの5日目に死亡したという
私が以前勤めていた企業でもこの青酸を製造していた。やはり、過去に死亡事故が起きている
猛毒の物質の洗浄作業なのだから、本来は万一を考えエアーラインマスクを使うべきだったのだろう
保護具に甘さがあつたと言うことだろう
今まで事故が起きなかったのが不思議なくらいだ
保護具の選定は最悪の事態を考えて選定して欲しい

 

2022年11月14日

電気室火災への対応を強化して欲しい

火災が起きたら、すぐに水で火を消すというのは誰でもわかっている
そうは言っても、消火器で消すというのも知っている
消火器で消火するというのは誰でもわかっているが消火器が近くにないとやはり水を使ってしまう
消火器も色々な種類がある
一般火災用もあれば、電気火災用もある
電気室などで火災が起きたときには、当然電気火災用の消火器を使うのだが、焦っていると水を使うことになる
それが思わぬ被害を起こす事例は多い
電気に水分は天敵だ
やはり。電気火災用消火器を使わなければいけないのだが
知識がないと水をかける
これが思わぬ被害を及ぼす。水は電気を通すのでショートする。火花も出る
こんな知識不足で、過去事故も多く起きている
高圧の電源設備は、このようなミスが起きると大事になるので、多くの企業では一酸化炭素消火器が付けられている
これも消化性能は抜群のだが、窒息というリスクもある
消火設備はどんどん進化している
消火設備のリスクもしっかりと職場で教育して欲しい
もう一つ大事なのは、「異常」に早く気づくことだ
法定の火災報知器や煙検知器の設置台数では、異常に早く気づくのはやはり難しい
法定台数より上乗せした検知器を設置して欲しい
検知器はたかだか数万円だ
それをけちって、大きな火災になり損失を受けている事例も多い
電気設備も老朽化すれば事故が起きやすくなる。発火事故もしかりだ
電気部品の故障で大きな火災になることもある
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
電気設備関係の安全投資をけちらないで欲しい
異常に早く気づく為の安全投資にも力を入れて欲しい

 

2022年11月12日

HAZOP的な思考で事故事例を活用しているか

HAZOPは、1980年代から活用されている安全性評価手法だ
「ずれ」が事故を引き起こすという基本的な概念を使った手法だ
例えば、反応器の冷却水が通常運転時より少なくなれば反応暴走になるかも知れない
タンクの入り口と出口の流量がずれて、入口側の液量が増えればタンクはオーバーフローとなる
つまり、ずれが起こると事故が起こることがあるという考えから事故の可能性を検証する手法だ
HAZOPの手法を知っていれば事故は防げるかというとそうはいかない
過去の事故事例をやはり知っておく必要がある
ところが過去の発生した事故のデーターベースなどの記述はHAZOP的な切り口では書いていない
単純な原因と結果といういう記述に終わっている表現が多い
そこから、HAZOP的なずれを抜き出さないといけない
そこに難しさがある
何十頁にもわたる事故報告書であれば、ずれという切り口で事故の要因は探れる
しかし、数行の事故DBではその辺は情報が不足して無理がある
もう一つ大切なのは、HAZOPは単一故障を前提とする
ところが世の中で事故が起きているのは、2つ以上の事故の要因が重なって事故は起こってしまう
2ツ以上の事故の要因がどう重なって重大な事故が起きたかがわかっていないと、HAZOPをやっているからと言って事故は防げ無い
一つ一つの事故をこつこつと、「ずれ」という視点で考えるくせを付けて欲しい
さらに、2つ以上の事故の要因が重なった事故も知っておいて欲しい
事故を防ぐには、2重、3重の歯止めがなければならない
1000年、10000年に一度の事故の発生確率に落とし込むには、ハードとソフトを複雑に組合わせた対策が必要だ
単に、アラームや安全装置を付けたから安全と思い込んでいたら事故は起きる
運用管理体制などソフト的な管理体制に甘さがあれば事故は起こる
インターロックを設置すれば安全と、おもわないで欲しい
インターロックを解除する運用規定がきちんと整備されていなければ、解除されて事故になることもあるからだ
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/08/a0502_02.pdf
HAZOP的な視点で事故を解析し、失敗に至った事例も学んで欲しい

 

2022年11月10日

タンクの防液堤の管理

タンクから液が漏れることがある
万一を考え液が漏れたときでも液を溜置く安全装置として防液堤というものがある
防液堤は、防油堤とも呼ばれる
1960年代に,新潟地震というものがあった
新潟にある製油所から大量の油が漏れた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012035.html#:~:text=6%E6%9C%8816%E6%97%A513,%E6%99%82%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%87%83%E3%81%88%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%81%9F%E3%80%82
当時の防油堤は,今のようなコンクリート一体構造ではなく単にブロックを積み上げた物だった
その為,地震で簡単に崩れ去り油が漏れ出てしまった
更に,防油堤に配管を通す貫通部に耐震性がなく地震の揺れで隙間ができ油を漏らす結果となった
1970年代に防液堤が関係する重大事故が起きたことがある
瀬戸内海の海に大量に油が流れ出た事故だ
https://digioka.libnet.pref.okayama.jp/detail-jp_c/id/kyo/M2004090621134837606
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012040.html
防油堤はあったものの,防油堤の一部が破損して油が海まで流れ出た事故だ
その後、法令が改正され、大型タンクの存在するコンビナートでは、一つの防油堤が壊れてもすぐに油などが海に漏れ出さないようになった
つまり、防油堤の外側を更に囲む防油堤が義務ずけられた。お城で言えば、内堀の外に外堀を設けたようなものだ
現在の法律では,可燃物にせよ毒劇物にせよタンクなどの貯槽にはこの防液堤の設置が義務ずけられている
きちんと防液堤が管理されていれば、全量漏れても防液堤内に納めることができる
ならば,防液堤があれば外部へ漏洩事故が起きないかというと管理が悪ければ事故は起こる
防液堤の外まで可燃物や毒劇物を流出させた事故の原因で多いのは防油堤に付いている水抜き弁を開けっぱなしにしていた事例が多い
水ぬき弁は、本来常時閉じておくことが原則だ
大雨などで、防液堤内に雨水が大量に溜まった時だけ、水抜き弁を開ける
しかし、運用管理がいい加減でいつも水抜き弁を開けているときにタンクから液が漏れて防液堤外に流れる事例が多い
タンクの水抜き弁はしっかり管理して欲しい

 

2022年11月08日

換気の大切さ

化学物質は濃度が高くなればなるほど危険さは増す
だから、薄めることも事故防止では重要な要素となる
可燃性物質には爆発範囲というのがある
濃すぎてもいけない。100%で爆発するかというとそうでは無い
80%、90%くらいになり,爆発範囲に入っていれば可燃性ガスなどは爆発する
濃度が低いから安全かというと言うと数%の濃度でも爆発範囲に入る物質も多数ある
物質を取り扱う時は、しっかりと爆発範囲を調べておく必要がある
可燃物を取り扱うなら、濃度0近くまで希釈しておく必要がある
つまり、爆発範囲にならない濃度まで薄めておかないと突然爆発する
化学物質は、濃度を下げよが事故防止の基本だ
密閉された空間であれば、換気でガス濃度を下げることになる
換気も自然換気と強制換気の両方がある
自然換気というのは,マンホールなどを開けて自然の風力を使って換気する方法だ
一つだけのマンホールでは駄目だ。2つ以上のマンホールを開けておかないと風は通らない
大型の装置になれば装置の奥まで自然換気できる保障は無い
送風機などを使って強制換気しないと均一な換気は行えない
過去換気不良で何度も事故が起きている
人が装置に入る作業で,酸欠事故だ。自然換気だけで、換気が不十分な事故が多い
換気が不十分で,可燃性ガスが残っていて電気火花などで着火爆発する事故も多い
鹿島のコンビナートで起きた事故だ まだ19才の運転員が爆発で死亡している
換気装置はあったものの,金網が詰まっていて十分な換気量が確保できなかったのだ
換気不足で爆発混合気ができているときに,照明灯の火花で着火した事故だ
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101268
たかが換気と思わないで欲しい
換気不足で起きた事故事例も学んで欲しい

2022年11月06日

保安防災と労働安全

保安防災という言葉を知っているだろうか
労働安全という言葉はかなり知られているが、「保安防災」という言葉はまだまだ幅広く知られていない
労働安全というのは、人がケガをするのを防ぐことだ
日本化学工業会の中で、RC(レシポンシブルケアー)活動を紹介する項目の中でこの「保安防災」という用語が書かれている
https://www.nikkakyo.org/responsible_care/doyouknow
レスポンシブル・ケアの実施項目の中に用語が存在する
●環境保全 (地球上の人々の健康と自然を守ります)
●保安防災 (設備災害の防止に努めます)
●労働安全衛生 (働く人々の安全と健康を守ります)
●化学品・製品安全 (化学製品の性状と取り扱い方法を明確にし、顧客も含めた全ての取扱者の
安全と健康、環境を守ります)
●物流安全 (化学品の輸送途上での事故を防ぎ、人の安全と健康と環境を守ります)
つまり,保安防災というのは設備に起因する災害を防止するということになる
労働安全は,人に起因する災害防止活動が主体になる。保安防災というのは、工場(設備の集まり)がケガをすることを防ぐのだ
つまり、工場が火災になったり爆発したりするようなことを防止するのだ。劇毒物なども,漏らしたりしてはならない
どちらも、バランス良く対応しなければいけないのだが、どちらかというと労働安全が工場の安全活動のメインになることもある
爆発や火災はめったに起きないことなので関心の度合いは低いからだ
そうは言っても、ひとたび爆発や火災が起これば大騒ぎになる
事故はいつも起こるわけではない。突然起こる
なぜ事故が起こるのか。どうすれば事故は防げるのかは、知識としてしっかりと企業内に展開し保安防災活動を展開していく必要がある
経営トップが先頭に立ち、安全文化と安全基盤をこつこつと構築していくことだ
工場に存在する設備リスクを特定し,評価して、対策を打っていく必要がある
時間やお金、人財は限られている。長期的な視点で、行っていくのが保安防災活動だ

 

2022年11月04日

調節弁の安全方向 フェイルセイフ

工場で多くの計装用調節弁が使われている
自動制御用の弁だ
この弁の設計には、トラブルが起きたときの安全対策を考慮して設計されている
いわゆる,フェイルセイフという設計思想だ
弁というのは,開けるか閉めるかだ
弁を動かすのは,空気か電気か,油圧などだ
これを駆動源という
空気や電気は,突然途絶えることもある。用役トラブルだ。停電などが引き金になることもある
配管が折れることもある。空気の供給源が故障することもある
電気とて停電することもあるからだ
ならば,万一のことを考えこの電気や空気が途絶えたときでも調節弁などの自動制御弁が安全な方向へ動くよう設計する必要ががある
例えば,反応器の冷却水の調節弁なら、安全方向として弁は開く方向になるようにして設計しておく
トラブルが起きたら,冷却水は多く流した方が良いからだ
弁が閉まる方向に設計されていたら,反応器の温度は上がり反応暴走になることもある
万一調節弁の空気が途絶えたり,電気信号が来なくなっても,安全となるように開くようにして冷却水を流し続けるのだ
この,安全な方向に動かすという設計思想は非常に重要だ
万一、設計をまちがえれば危険な方向になる
こんな事故事例がある
計器点検中誤って反応器の温度調節計のスイッチを切り,冷却水が停まり反応制御できず反応工程の塩化反応器が反応暴走した事故だ
調節弁のフェイラーポジションの設計ミスでもある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000020.html
安全な方向へ動くよう当初から設計されていなかった事故だ
設計時だけではなく,調節弁などを転用するときにもこのフェイラーポジションを確認して欲しい
調節弁を転用したときにフェイラーポジションの確認を怠たったことで起きた事例もある
自分達のプラントの調節弁のフェイラーポジションが本当に安全方向にあるか一度検証して欲しい

 

2022年11月02日

溶解度を甘く見て起こる事故 灯油はガソリンを吸収する性質がある

物質に関する情報として溶解度というものがある
SDSにも溶解度は書かれているが,それほど「溶解度」とい語句を気にする人は少ないはずだ
気体が液体などに溶け込みやすさという指標だ
たいしたことではない指標と思うのだろうが、やはり過去この溶解度が事故に関係している
昔、製油所で頻発した事故だ
1960年代ガソリンを積み込んだあと、灯油をタンクローリーに積み込むと事故が多発した
ガソリン運搬後灯油を積み込んだことにより事故が起こっていた
なかなか原因が突き止められなかったが、原因はこうだ
溶解度が関係した事故だ
灯油は、ガソリン蒸気を急激に吸収する性質がある
タンクローリは,灯油を積み込む前はガソリンが入っていたのだからローリーのタンク内にはまだガソリンの蒸気などが残っている
しかし、ガソリン蒸気で満たされていれば爆発範囲には入らない
ところが、灯油を積み込み始めると、タンクローリー内のガソリンガス濃度が急激に減る
灯油はガソリン蒸気を吸収してしまう性質があるからだ。つまり,溶解してしまうからだ
ガソリン蒸気が減ることは一見良いように見えるが、高濃度のガソリン蒸気が下がって爆発混合気の濃度になってしまったのだ
ガソリンは濃すぎてしまえば爆発混合気にはならないが、ほどよく濃度が減ると爆発混合気になってしまうためである
その後30年経過した後でも、このようなことはやはり技術伝承されずに,1990年代にも同じ事故が起こっている
作業手順書には反映されていたものの、そこに書かれている意味が作業者は十分理解できず再発した事故だ
「なぜ」がわからないと事故は起きる。溶解度などはよほどしっかり教育しないと理解されない物性値だ
手順書に手順が書かれていても,なぜそういう手順で作業をするのが,書かれていなければ人は納得しなければ事故を起こす
タンクが凹む事故がある。溶解度が関係している事故を紹介する
アンモニアを貯めるタンク内に誤って水を入れてしまった事故だ
タンク内のガスが急激に水に吸収されてタンク内が負圧になり変形してしまったのだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2008-272.pdf
物質危険性に関する教育は難しい
溶解度が原因で起こる事故も教えて欲しい

 

2022年10月31日

受け入れ検査の重要性

企業であれば必ずメーカーから設備を購入する
購入前に設備仕様をメーカー側に提出する
その通り製作してくれればいいのだが,必ずしもそうではない事例もある
製作時にメーカーが製作欠陥を起こしてしまうこともある
よくあるのが,鋳物製品で鋳物の中に巣があるにそのまま出荷して時間が経ってから装置が壊れる事故だ
過去にも,高圧の圧縮機が突然壊れる事故が起きている
放射線検査を予め要求しておけば防げる事故だ
金属の焼き戻しが不十分で起きた事故などもある
https://slidesplayer.net/slide/16470358/
ライニング機器のピンホール事故などもある
では、納入時の受け入れ検査をどうするかだ
メーカーに検査を丸投げして済ます方法もある
とはいえ最低限、メーカーの検査内容を吟味しておく必要がある
メーカーとて万能では無い
昨今は、メーカーが検査もせず出荷するコンプライアンス事例も多い
発注者がどうリスクを回避するかよくよく考えなければいけない
とはいえ、発注者はあらゆる面で検査はできない マンパワーを十分にかけるわけにはいかない
そこそこの知識はあるが,深掘りした専門知識があるわけではない
詳細な検査はどうしてもメーカー任せになる
結論として,受け入れ検査に関する基本的な考え方はやはり発注者として整備しておく必要がある
つまり、丸投げではメーカーの意のままになる
どこかにブレーキをかける要素を入れておく必要がある
工場に出向いて立ち会い検査をするも良し。詳細な検査報告書を出させるのも良し
メーカーとユーザーのバランスが取れて製品の品質は保たれる
丸投げは,とにかくやめて欲しい
受け入れ検査や立ち会い検査の重要性を忘れないで欲しい

 

2022年10月29日

耐圧気密テストで起こる事故  複雑な配管では事故が起こりやすい 

先日、こんな災害事例を見つけた。 怪我で済んだからいいものの、ひとつ間違えば死亡事故にもつながりかねない
耐圧気密試験時脱圧していないところを開放し高圧窒素ガス噴出したという事故だ
残圧確認不足だが、配管も複雑なのに簡易フローシ-トを使っていて操作する弁を間違えた事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/02-02_2018-406.pdf
工事期間中に工務部が主管する耐圧気密テストと製造部が主管する総合気密を輻輳して行っていたことが事故につながった
別々の部門が管理する加圧操作が同時に行われていたことが,事故の要因でもある
同時並行で,色々な作業をすればどこかでミスが起きる
同時並行作業は,極力減らすことだ

耐圧気密試験で安全を確保するには,いくつかの対策が必要だ
一つ目は,テスト計画書を作成し,しっかりとした検査用P&IDをつくることだ
簡易フロー図では事故が起こるから,マスターのP&IDフローシートから図面を作成することだ
バルブの開閉状態をしっかりと図面に書き込むことが不可欠だ
さらに,加圧時はしつこいくらいに圧力計を付けることだ。たった一つでは,駄目だ。2個以上は不可欠だ
指示値が見えれば,加圧状態がわかる
更に立ち入り禁止を徹底することだ。万一破裂しても,人がいなければ事故にはならない
縁切りは仕切り板を使うことだ。もしくは,ダブルブロック中抜きの対応を取ることだ。弁一つでは必ず漏れる。

化学工学会などにもこんな記事もあるので参考にして欲しい
https://www.aiche.org/ccps/resources/process-safety-beacon/archives/2013/september/japanese
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2016/03/DANWA2013_09_No87.pdf
とにかく圧力を甘く見ないで欲しい
人は目に見えない物は危険と感じない
圧力もその一つだ

2022年10月27日

耐圧気密テストで起こる事故-- 不燃性の窒素や水を使え

耐圧気密試験に使うのは普通なら窒素か水を使う
しかし、耐圧気密試験に空気を使ったことで何度も事故が起きている
空気は支燃性ガスだ。つまり物を燃やす性質がある
特に、物を燃やす性質は空気の圧力が高くなればなるほど増大する
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/24/3/24_165/_pdf/-char/ja
つまり高圧空気で耐圧検査をしているなら、わずかな可燃物があれば何かの着火源で燃焼や爆発が起こるということだ
こんな事故事例がある。16MPaという高圧機器の耐圧気密検査で起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200023.html
2つの機器があり、一つの機器の検査を終えた後、バルブを開いてもう一つの機器へ高圧の空気を移送した
この時、バルブを急に開いたので、断熱圧縮という現象が起きた
断熱圧縮とは、気体を急激に圧縮すると温度が急激に上昇する現象だ。いわゆる圧縮熱というのが発生する
たとえば、試験管内に閉じ込めた空気を急激に圧縮しても200℃や300度近くにもなる
この事故では、配管内に450度で発火する残留物質が残っていたため、断熱圧縮現象で温度が上がり配管内の可燃物が発火した
再現実験では圧縮熱は650度を超えていたと言われる

耐圧気密検査に使う気体は、不燃性気体である窒素を使って欲しい
空気は、燃えるものが配管内にわずかでもあれば簡単に火がつくからだ
高圧酸素ボンベなどは、接続配管にわずかに人の手垢(油分)が付いていただけで発火する事故も起きている

耐圧テストは、窒素を使わず水で実施することもできる いわゆる水圧テスト
水は非圧縮性なので、万一破裂したとしても飛散度は少ない
水が使えるなら、水を基本的に使って欲しい

 

2022年10月25日

耐圧気密テストで起こる事故    水素ぜい化

定修の終わり頃、高温高圧反応器の耐圧気密検査で、装置が破裂した事故を紹介する
圧力は5.5MPaで、製油所で起きた事故だ
44個の破片が100m四方に飛び散ったが幸い深夜で負傷者は出なかった
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057044.html
原因は、約17年前の製作時の溶接欠陥だ
溶接時に溶接棒を間違えていたことにすぐに気づいた
間違えた箇所を削り取り再溶接をした
ところが、わずかな傷が残っていて、使用している間に少しずつ成長していた
さらに、この反応器内には水素が入るため、水素により水素脆化という現象が起こっていた
水素脆化とは、高温高圧の環境下で水素が存在すると、金属の組織内に水素が浸透する現象だ
金属結晶内に水素が浸透すると割れが起こってくる

この企業では、設備を設置してから毎年溶接部は全て検査をしていた
ところが、新設時から8年間が経過したとき、今まで問題が無いのだから全ての検査は必要は無いと判断してしまった
その後事故が起こる、約10年前からは溶接部の抜き取り浸透探傷検査と目視検査だけで、全数詳細検査をすることはなかった
つまり、溶接部全点検査をやめてしまったのだ
当然、検査コストも手間も大幅に減るというメリットもあるからそうしたのだろう
ところが、目視検査では内部の亀裂の進行はわからない
最後は耐圧検査の圧力に耐えられず破裂したのだ

当時は、この使用温度や圧力では水素脆化は起こらないと考えられていたので検査を簡略化したのだろう
この事故がきっかけで、水素浸食の目安となる、ネルソン線図の見直しが行われたという

高温高圧機器の溶接部の検査は、毎年検査で異常が無いからといって安易に抜き取り検査に変更しないことだ
機械設備は、時間が経てば立つほど傷んでいくと考えるべきだ 内部の傷は目視ではわからない
今まで大丈夫だったは検査に関しては通用しないということだ

 

2022年10月23日

耐圧気密テストを甘く見るな

今から半世紀ほど前の話しだが、私が勤めていた化学会社で耐圧気密検査中4人が死亡する事故が起きている
1965年9月13日だ
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=%E5%B2%A9%E5%9B%BD%E3%80%80%E6%B0%97%E5%AF%86
耐圧気密の検査中に、縁切りが悪く装置が破壊し飛び散った破片で死亡した事故だ
4MPaの高圧の気体で検査は行われていた。破裂したのは、耐圧性能は0.4MPaしかない部分だ
当然、高圧がかからないように縁切りという措置はしていた
しかし、縁切りは単純に弁を閉めることだけで行われていた。ところが、弁が少しではあるが漏れていたが気がつかなかった。
いわゆる、弁の内漏れということだ
万一、弁が内漏れをしていても、耐圧性能の無い装置側のベント弁かドレン弁を開けておけば問題は無かった
つまり、漏れ込みがあっても圧力が逃げてくれるからだ。しかし、残念ながらベント弁やドレン弁は開けられていなかった
結果として、耐えられる圧力の約十倍の圧力がかかり破裂して死亡事故になった事例だ 
1960年代の事故で、当時はまだ石油化学産業が始まって間もない時期だった
耐圧気密試験の要領や作業手順書も完全には整備されていない時代だった。事故の翌年から、手順書などが整備されていった
事故を受け、耐圧気密検査の安全対策が要領書として整備された
1つ目は、検査には、基本は水を使えという基本方針が出された。水圧テストの方が、エネルギーは圧倒的に少なく安全だからだ
2つ目は、検査時の体制、方法を明確にした。製造部門の関与、検査を実行する保全や工務部門の体制を文書化した
事故以前は、担当者任せで管理の目が行き届いていなかったことへの反省だ
3つ目は縁切りは仕切り板で行うということだ。弁と違って漏れることはない。本質安全を確保すると言う考え方だ
仕切り板が基本だが、どうしても弁を使うなら、2つ以上の弁を閉め、その中間部を開放するという方法だ
4つ目は、検査のためにP&IDフローシートをしっかり作成し、加圧部を色塗りして検査箇所を明確にして、関係者と事前打ち合わせすることが義務ずけられた
5つ目は、ブルドン管圧力計を2つ以上付けるだ。1つだと針がひっかかかっていることもあり事故につながるからだ
6つ目は、現場の立ち入り禁止措置も徹底した。加圧中などの表示義務も課した。 それ以外にも色々なことが決められ、以後半世紀以上立つが同じような大事故は起こっていない
耐圧気密検査は、危ない作業だ。腐食して万一耐圧性能が無ければやはり装置は破壊する。高圧機器は、事前の放射線検査も義務づけられた
耐圧気密テストを甘く見ないで欲しい

 

2022年10月19日

危険物保安技術協会

危険物保安技術協会という組織を知っているだろうか。略称はKHKだ。高圧ガス保安協会(KHK)と同じ略称だ。
高圧ガス保安協会は、経済産業省の関連組織だ。
危険物保安技術協会というのは、総務省消防庁の関連組織である。つまり、消防関係の組織だ。
危険物関連の事故などはこの協会に多くある。ホームページを紹介している。http://www.khk-syoubou.or.jp/
この2つの組織の違いは、適用法令だ
一方は高圧ガス保安法、もう一つは消防法という違いがある
高圧ガス保安法が関連する、高圧ガス保安協会は、災害情報を無償で提供している
一方で、消防庁関連のこの危険物保安技術協会は、事故情報はさほどフリーでは公開していない
お金を払えば情報を得ることができる
http://www.khk-syoubou.or.jp/hazardinfo/guide.html
本来は、情報は公開されるべきなのに、このように外郭団体が入ると何らかの制限が入る
外郭団体の運営方針の違いはあるのだろうが、情報は無償で公開して欲しい
税金で運営される組織にあるなら、当然なのだが現実は,外郭団体であるから税金運営ではない
危険物保安技術協会は、機関誌、Safty&tomorrowを定期的に発行している
http://www.khk-syoubou.or.jp/guide/magazine.html
2018年からは、機関誌の中身は全て情報公開している。ありがたいことだ
この中に事故情報もある。貴重な情報源だ
情報はただでは無い
価値ある情報は金を出しても手に入れるべきなのだろう

 

2022年10月17日

たかがドラム缶と思って起こる事故

化学工場などに勤めていると、化学物質の危険性にマヒしてくる
入社してすぐの頃は、新人教育で危険性を教えられて少しは危険と感じているが時間とともにその感性は薄れていく
化学物質に対する慣れが、時間とともに出てくるのだ
それが一番怖い。事故につながるからだ
研究所にいる人も、たかが試験管ベースと思って事故になる
化学物質は、1滴でもとんでもないエネルギーを持っているからだ
まして、ドラム缶サイズの大きさになれば、とんでもないエネルギーと考えなければならない
ところが、現実そう考えてくれないからドラム缶で事故が起こる
ドラム缶に関する事故のビデオがあるので紹介しておく
https://www.youtube.com/watch?v=sESmSpde7a4
https://www.youtube.com/watch?v=XJRJXBF5OpQ
直射日光でドラム缶が暖められて起こる事故もある
ドラム缶の中に入っている化学物質が反応して破裂する事故がある
夏場などに、急に外気温度が上がり始めるとよく起きる事故だ

工場内をパトロールしてみて欲しい
屋外に置かれたドラム缶やペール缶が無いか見て欲しい
シートもかけず、屋根の無い所においていないか確認して欲しい
物質によっては、直射日光で暖めるだけで反応を始めるものがある
温度が30℃上がれば、反応速度は約8倍になる
反応速度は温度上昇で倍倍ゲームのごとく上がる
太陽光を甘く見ないで欲しい

2022年10月15日

世界の貯蔵タンク事故--個人のブログ紹介

世界の貯蔵タンク事故というホームページをご存じだろうか
このURLで見ることが出来る。http://tank-accident.blogspot.com/2022/10/
日本国内での主要事故、海外でのタンクに関わる事故事例を紹介している。
写真などもありわかりやすい。教訓となることも多く書かれており、安全に関わる人は見て欲しいホームページだ。
9月の記事ではアルゼンチンの製油所で原油の円筒タンクが爆発・火災がでていた
http://tank-accident.blogspot.com/2022/09/blog-post_30.html
海外の製油所火災、日本でのタンク火災やタンク内清掃事故の事故事例など参考となる事故が載っている
2011年から公開されている、もう10年以上も情報を発信してきているブログだ
タンク事故以外にも色々な情報を提供しくれている
興味のある方は、目を通して欲しい

 

2022年10月09日

電気火災に思う--電気ケーブル火災

電気ケーブルの寿命はどのくらいかと聞かれることがある
まずは、20年から30年と答える
電線メーカーも公式的にはそう言っているからだ
https://www.jcma2.jp/files/gijutsu/Shiryo/107.pdf
電気設備というものは、だいたいこの程度の期間は使えるように設計されている
但し、誤解してはいけないのはあくまでも、電気メーカーの標準設計条件に合う使われ方をしている場合だ
つまり、電気設備に周囲の温度は、一般的な外気温とあまり変わらないこと。つまり、0~40度程度
周囲の空気も、正常で腐食性ガスなどが存在していないという条件が満たされるケースだ
つまり、高温部や腐食環境などであれば、寿命はもっと短くなるということだ
過去の事故事例を見ると、機械の周囲の電線で常時油がかかるような所では数年で電線がトラブルを起こしている
室内で高温の装置がある近くを通っている電気ケーブルは10年も経たないうちに短絡事故を起こしている事例もある
使われる所の条件によって、寿命は大きく変わってくると考えた方がよい
一般的な電気火災の原因は「短絡」だ。つまり、ショートが原因で電気ケーブルの被覆や絶縁材に火がつくのだ。
ケーブルを施工したときに、工事で傷がついたことが発端になることもある
ケーブルの皮剥きの時の傷や、工事時のくぎや、ボルトの残材で傷がついた事例もある
傷があれば、微細放電する。時間をかけてその周りの劣化が進み最後は放電短絡となる
ケーブルは一般的に難燃剤被覆だ。最初はくすぶる程度で収まっても、ケーブルに油脂類が付着していればあっという間に燃える
ここ最近起こった、半導体工場の火災も、電線の短絡が原因だと言われている
ケーブル火災で怖いのは、延焼だ
ケーブルダクトはトンネル効果というものがある
燃え始めると上昇気流であっという間に延焼する
温度の高いところで使うケーブルは、まずは難燃ケーブル選定することだ
更に、ダクト内の延焼防止対策を行って欲しい

2022年10月03日

HAZOPで逆流というリスクを見落とすな--コーンルーフタンクの破裂

ポンプを停めるときに失敗すれば、高圧の吐出側から、吸入側へ逆流が起こる。
高圧のポンプで、逆流すればポンプ吸入側に接続している機器の耐圧がなけれ装置が破壊される
ポンプ停止は、人が行うものだ
人は必ずミスをする。ベテランだからと言って人は失敗しないわけではない
ポンプがあれば必ず逆流を考えて欲しい
逆流防止対策で、逆止弁を付ければ安全かというと100%安全というわけではない
逆止弁は100%作動するという保証は無いからだ。点検管理が行われていなければ、故障して作動しないこともある
逆止弁があるから大丈夫と思い込んで、何度も何度も事故が繰り返し起こっている現実がある 逆止弁はHAZOPで注意が必要なところだ
過去に起こっている事故事例で公開されているものがあるので一つ紹介しておく
岡山県の倉敷で1988/3/18日に起こった事故事例だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000135.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026_a.pdf
HAZOPでポンプがあれば必ず逆流を考えて欲しい
ポンプが高圧ポンプであればその逆流リスクは徹底的に見て欲しい
ポンプの吸入側(IN)が圧力に弱いコーンルーフタンクであれば、逆流すれば簡単にタンクは破壊されると思って欲しい
逆流防止弁を付けたからと言って安全ではない。機械は故障することがあるからだ。HAZOPで注意しなけれいけないのは歯止めがいくつあるかだ
HAZOPで大事なことは、異常に気づく仕掛けがあるかだ。逆流なら、逆流で警報が出るかだ
液が噴き出して気づくのではもう遅い。少なくとも逆流検知器はほしい。警報は最低限欲しい
異常に気づいても、逆止弁は作動しないことはある
定期的に点検しなければ、いざという時作動する保証は無いからだ
逆流で時間的余裕がなければ、逆流を検知してすぐに流れを停める緊急遮断弁を併設しておくことだ
手動で操作できる緊急遮断弁があるからと安心しないで欲しい。手動では対応が遅れがちだ
逆流を検知した設備と連動して自動的に作動させて欲しい。人が気づいて作動させるのでは遅い
安全とは、2つ以上の安全対策を人の力を借りずに自動的に行うことも必要だと考えて欲しい
安全対策は1つでは破られる。人はミスをするから機械の力をかりるのだ

 

2022年10月01日

反応器で起こる事故--攪拌機の停止

反応器で起こる事故で、攪拌機の停止がきっかけというのがある
反応機を安定的に運転するには、2つの要素が同時に成立する必要がある
たいていの反応器は、発熱反応だから温度を常に一定に保つ必要がある
つまり、しっかりと冷却が行われることが条件となる
反応熱量は、温度との相関関係がある。しかし、直線的な関係ではない
指数関数的な関係だ。ちょっと温度が上がっただけで、反応暴走になることも多い
中途半端な冷却能力では反応暴走になる
攪拌機の停止を甘く見ないで欲しい
攪拌機が何分以上停止したら事故になるのか、設計書に書いてあるのかを調べて欲しい
設計書がないなら、もう一度安全検証して欲しい
攪拌機の停止は、過去致命的な事故を起こしているからだ
たった数分間の撹拌停止でも大きな事故が起こっている
再起動したときに、反応器内の溶液が激しく撹拌され、すぐに激しい反応が始まり事故になる事例だ
撹拌停止で、2相分離する反応形態に多い事故のパタ-ンだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000103.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000104.html
反応器の撹拌停止は、思いかけないことでおこる
停電だ。突然停電が起こることもあるはずだ
撹拌モーターの故障もある
電源系統のトラブルもある
撹拌停止の原因は様々だ
攪拌が停止しても安全が確保されるか検証して欲しい
反応暴走という現象にも関心を持って欲しい
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/srr/SRR-88-7.pdf

2022年09月29日

生産革新という言葉

1990年代頃化学業界で生産革新という言葉が使われ始めた。今から30年前だ 
https://www.jma.or.jp/seisankakushin/imgs/pdf/JMA201010.pdf
化学企業と言っても、古くからの小規模プラントが存在する時代だ
企業間にかなりの格差があった
DCSを完全に使いこなしている企業もあった。まだまだ、職人芸的なことをしている企業も沢山あった
そんな背景から、生産革新という言葉を打ち出した企業があった。政府もそれに乗り、生産革新という言葉をもてはやした
背景にはバブルがはじけた上、海外からの追い上げで化学業界も苦しい時代だったからだ
当時先進的な工場は、一つのプラントは数百メートル規模のプラントだ
しかし、昔ながらの古い小規模生産型の化学企業はたかだか数十メートル規模のプラントが工場内に乱立していた
明治、大正、昭和の家内工業的化学企業もまだ1990年代は存在していた
当然小規模プラントを多く持つこれらの企業が、生産革新に飛びついた
当時千葉県の京葉コンビナートで仕事をしていたが、この生産革新的なことは既に終わっていた
当時京葉コンビナートではそんなことは、とうの昔に完了しており、DCSで全て織り込まれていた
ところが、プラント規模の小さい岩国にある工場は、この生産革新という言葉に乗った
小規模の職人的な仕事をシステム化しようという活動だ
機能の全く違う小規模プラントを、無理矢理統合化しても本来それほど人は減らせない。しかも、人手がかかるバッチプラントだ
しかし、金額的な成果を出すためにはかなり無理な省人化をした。おかげで、安定化するまでに時間がかかった記憶がある
でもなぜか、当時の政府は生産革新をもてはやした。あたかも、すごいことのようにだ
昔ながらの小規模プラントの塊をあたかも統合化して生産革新をしたかのように言っていたのだがそれはそれで当時はもてはやされた
時代時代をみて思うのは、プラントの規模や特性を見て生産革新を続けていくことだ
化学産業を見て見ると、ものすごく企業間で、文化、技術、知識の差はある
一律に、生産革新という言葉はあり得ない
しっかりと、自分の企業の立ち位置を見ておくことだ
国内だけではなく、グローバルで見て見るとものすごい企業格差は存在する
だから事故は起こるのだ

2022年09月27日

装置の間欠運転で起こる事故

装置の使い方には、「連続」と「間欠」という使い方がある。この「間欠」という言葉に関心を持って欲しい
連続運転であれば、事故は起こらなかったのに「間欠運転」という運転方法であるが故に事故が起こることがある
労働災害で間欠運転が原因で起こる事故のパターンを紹介しておく
連続的に機械が動いていれば、音もしている。つまり、人は運転中に機械には手を出すことはない
ところが、間欠運転の機械では機械が停まっている時間がある。何も音ともしない状態だ
間欠運転する機械だとわかっていれば、手を出すことはないが、知らなければいきなり機械が動き始めて手や腕を巻き込まれたという事例が多い
化学災害事例を見て見ると、配管の腐食漏洩事例が多い
保温材や保冷材を被せている配管での事故事例が多い
間欠運転であれば、配管に液などが流れていたり、いなかったりする
温度のある流体であれば、配管が冷えたり、熱くなったりを繰り返すのだ
冷えれば、空気中の水分が結露する。保温材や保冷材のすき間を通って配管表面に水分が侵入する
時間が経てば、配管の外面腐食が起きて穴が開くのだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-028.pdf
間欠運転で使用する配管は、保温や保冷材にすき間がないかをしっかり見て欲しい
結露で配管腐食事例は多いからだ
間欠運転でもう一つ配管で気おつけなければいけないのは、スラッジだ
連続的に流体が流れていれば、スラッジは溜まりにくいが、間欠運転だとどうしてもスラッジが配管内部に溜まりやすい
配管の立ち上がり部などにスラッジは溜まることになる
腐食性の物質が含まれていれば、スラッジ部で濃縮されたりして腐食速度は上がる
気づかずに運転していると突然穴が開いて噴き出す事例も多い
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00082.pdf
間欠運転だからと行って、管理密度を下げないで欲しい
間欠運転故に生じるリスクに目を向けて欲しい

 

2022年09月25日

除害設備で起こる事故--過信するな

有毒な化学物質を扱う化学工場には除害設備というものがある。無害化して安全な状態で大気に放出する設備だ
製油所や化学工場では塩素やホスゲンなど有毒なガスが使われていたり、硫化水素などのガスの発生もある
万一大気に漏らすと人命にも関わることになる
除害設備で起こる事故にはパターンがある。処理能力が不足していて起こる事故も多い
最悪の事態を考え能力が決められていればいいが,多くの事故事例から能力不足という問題がある
よくある失敗は、ガスの流入を想定していたものの、液化塩素など液で流入してしまったケースだ。当然能力不足になる
例えば誤って、液化塩素を除害設備に流してしまう事故事例だ.液化塩素は気化すると容積が増え大量の有毒ガスが発生する
設計上の能力が、常時発生する排ガス程度であれば大幅に能力を超えることになる
停電で、装置が作動しなくて事故になることもある。運転員の作業ミスが引き金になることもある

除害設備というのは最悪の条件を想定して処理能力を決めておくことだ
更に、2系列化しておくことが望ましい。どちらか一つがうまく動かなくても他系列でカバーさせるのだ
停電でも確実に動くようにして欲しい。バックアップ電源が必要だと言うことだ。
異常時に自動起動する方式の除害設備は、定期的に作動テストをして欲しい。リレーが故障していていざという時作動しなかったという事例もある
地震時に設計が悪く除害設備が自動起動しなかった事例もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000197.html
非常用電源設備が,起動したもののすぐに停止してしまったからだ
地震の揺れで、冷却水の液面計が誤作動し、本来動くべきはずの非常用電源設備が動かなかったからだ
地震による液面計が誤作動する事例は多い.液面のスロッシングによる影響だ
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/analysis/372.html
除害設備を保有しているなら処理能力や動作条件を再検証して欲しい。最悪の事態でも対応できるかだ
保守も大切だ。確実に動くことを定期的に確認して欲しい

 

2022年09月21日

日本最大の粉塵爆発事故--安全神話にだまされるな

石油化学コンビナートができたのは今から60年前だ
それより前の化学工場の原料は石炭か石灰からつくるアセチレンという物質だった
石炭は、蒸し焼きにして化学物質の入ったガスを取り出す。石炭化学とも呼ばれた
蒸し焼きにした石炭は、製鉄産業の原料としても使われ、石炭というものは一石二鳥の物質だった
石炭は、地下から掘り出す。掘り出す際に細かな粉塵が発生する
採掘時には、この粉塵爆発に気をつける必要がある
電気機器は当然防爆型を使う。もう一つ大事なことは、絶えず水をまき粉塵を湿らせることをしていた
水分を含ませると、着火エネルギ-が高くなり簡単には火が着かないからだ
原始的ではあるが確実な方法だった
1963年11月9日福岡県大牟田市の三井三池炭鉱で、死者458人、重軽傷者555人という粉塵爆発災害が起こっている
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BA%95%E4%B8%89%E6%B1%A0%E4%B8%89%E5%B7%9D%E7%82%AD%E9%89%B1%E7%82%AD%E3%81%98%E3%82%93%E7%88%86%E7%99%BA
爆発に伴い発生した火災で、一酸化炭素により多数のCO中毒者を出した
この企業では、何十年も大きな粉塵爆発は無く、経営側も従業員も安全であるとの思い込みがあった。いわゆる安全神話があった
事故の起こった当時、この企業では労働争議があった。いわゆるストライキだ
ストライキで経営側と労働者側の関係は当然うまくいかなくなる
当然現場の安全管理もおろそかになる。現場の人が少なくなれば、粉塵爆発を防ぐ水まきの頻度も減る
火花が出ないように機器の補修をしなければいけないのにそれも怠った
安全管理レベルの落ちている状態で、石炭の採掘を続けた結果大爆発が起こってしまったのだ
いままで事故が起こっていないから安全だという企業側のおごりもあったのだろう。安全神話にだまされたのだ
大きな事故が起こるのは時代の変革というものも関係する
当時は、石炭から石油へと時代が変わり始めたことで、石炭産業が斜陽になり従業員に十分な給料を払えなくなっていったことが関係している
つまり、事故にはお金が大きく関係する
不景気になれば、安全に投資できない。人も採用できないからだ
人も採用できなければ、技術も伝承できない
企業はしっかりと稼いで、安全にお金を投資することだ

 

2022年09月19日

反応器で起こる事故--反応暴走

化学工場で起こる事故見て見ると、装置の種類によって事故のパターンというのがある
配管であれば、腐食漏洩。ポンプであれば、軸受け部からの漏洩や逆流。タンクであれば、底板腐食による漏洩などだ
今回は、反応器という装置に着目して事故のパターンを紹介してみたい
反応器であれば、最も怖いのは反応暴走だ
http://pe-eco.jp/articles/show/421/
発熱反応の物質であれば、冷却できなければこの反応暴走という現象が起こる
反応というのは、ある一線を越えると制御はできない。発熱量は、倍々ゲームのように指数関数的に増えるからだ
人間の手で何とかしようとすることはできない
今から10年前、当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起きた  まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が工場で停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔は蒸気の信頼性はかったかもしれないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう。自分のプラントの冷却能力を検証して欲しい
事故のリスクを減らすために、反応器の冷却能力を上げることも考えて欲しい
冷却能力不足で起こる事例は多いからだ

 

2022年09月17日

耐圧気密テストで起こる事故 

耐圧気密試験に使うのは普通なら窒素か水を使う
しかし、耐圧気密試験に空気を使ったことで何度も事故が起きている
空気は支燃性ガスだ。つまり物を燃やす性質がある
特に、物を燃やす性質は空気の圧力が高くなればなるほど増大する
つまり高圧空気で耐圧検査をしているなら、わずかな可燃物があれば何かの着火源で燃焼や爆発が起こるということだ
こんな事故事例がある。16MPaという高圧機器の耐圧気密検査で起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200023.html
一つの機器の耐圧気密検査を終えた後、バルブを開いてもう一つの機器へ高圧の空気を移送した
この時、バルブを急に開いたので、断熱圧縮という現象が起きた
断熱圧縮とは、気体を急激に圧縮すると温度が急激に上昇する現象だ。いわゆる圧縮熱というのが発生する
たとえば、試験管内に閉じ込めた空気を急激に圧縮しても200℃や300度近くにもなる
この事故では、配管内に450度で発火する残留物質が残っていたため、断熱圧縮現象で温度が上がり配管内の可燃物が発火した
再現実験では圧縮熱は650度を超えていたと言われる

耐圧気密検査に使う気体は、不燃性気体である窒素を使って欲しい
空気は、もえるものが配管内にわずかでもあれば簡単に火がつくからだ
高圧酸素ボンベなどは、接続配管にわずかに人の手垢(油分)が付いていただけで発火する事故も起きている

配管の中に逆止弁が入っていて完全に脱圧できていない状態で、破裂事故が起きている事例もある
耐圧気密テスト時は徹底的に逆止弁は取り除いて欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2008-333.pdf
耐圧テストは、窒素を使わず水で実施することもできる いわゆる水圧テスト
水は非圧縮性なので、万一破裂したとしても飛散度は少ない
水が使えるなら、水も使って欲しい

 

2022年09月13日

詰まったバルブで起こる事故のパターン

事故のパターンは、大きく分けて2つだ。
一つは、無理矢理、針金でつついて開けようとして起こる事故
バルブが詰まっていれば、安易に針金などでつついてみようと思う人は沢山いるはずだ
誰でも、バルブが詰まれば詰まりを解消したいと思うのは当たり前だ。ところが、この詰まりを取り除く作業には、思わぬ危険が潜んでいる。
詰まっているバルブの詰まりが突然とれたら、どうなるか考えて欲しい。
当然、詰まったものが噴き出してくるはずだ。
それで終われば良いのだが、たいていはバルブを開けた状態にして、詰まりを取り除こうとしているはずだ。
つまり、詰まりがとれればバルブは開放状態だから大量の液やガスが、その後噴き出してくる。
周りは、ガスや液が噴き出すのだから、霧がかかったような状態になるという。視界が極端に悪くなることもある。
可燃性の液やガスが噴き出してくれば、静電気で着火する。
毒性ガスが、噴き出してくれば周りにいる人がばたばたと倒れていく。
事故を、経験したことがない人はこの状況を予想できないだろうがこのような事故は過去に幾度も起きている。
今から半世紀ほど前の事故だが、詰まっているバルブを針金などでつついて詰まりを解消しようとして起きた事故がある。
製油所の事故だ。装置には硫化水素が含まれていた。定期修理に入るため、装置を停止していた。あるドラムで、液が抜けなかった。
現場の責任者達は、なんとか脱液しようと焦っていた。誰かが、針金を持ってきてドレン弁をつつき始めた。
バルブを開けた状態のまま針金でつついていたのだ。
しばらくして、突然詰まっていたものが取れ大量の硫化水素という毒性ガスを含んだ液が噴き出してきた。
周りにいた人達が次々に倒れ込んでいった。
毒性ガスが噴き出すとは思っていなかったので、防毒マスクも用意されていなかった。多くの人達がそこで命を失った事故だ。
バルブが詰まっていたら安易に針金でつついて詰まりを取ろうとしないで欲しい。
もう一つの事故のケースは、弁を少し開けて、液やガスが出てこないので、そのまま弁を開けたままにしていてしばらくして突然詰まりが取れる事故だ
バルブを開の状態にして。突然詰まりがとれてしまえば液やガスが噴き出してくる。弁が開放状態なのだからすごい勢いで噴き出してくる。
近づけないから、弁を閉めることもできない。とても恐ろしいことが起こると思って欲しい。
過去の事故事例を紹介しておく 参考にして欲しい
この事例は、詰まったバルブの弁を開けたままで仲間と相談中に突然詰まりが取れて起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200103.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00049.pdf

2022年09月11日

今から約100年前の化学工場の事故や労働災害

大正元年は1912年。昭和元年が1925年だ。
歴史のある日本の化学企業などもこの時代から、化学物質を作り始めている
私の勤めていた三井系の化学企業は、1912年に石炭から染料の原料であるアニリンという物質を製造している
住友系の化学企業は、1913年に創業し肥料を作り始めている
時を同じくして、九州の水俣にも化学工業が始まっている。アセチレンを原料とした化学産業だ
化学業界で、今から約100年前に何があったかというと、アンモニアという化学物質の製造が始まったことだ
画期的な発明であるが、ドイツで、空気からアンモニアをつくる新しい製法が発見された
チッソと水素があれば、アンモニアができるのだ。しかし、約50MPa、800度の高圧、高温下での反応だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E6%B3%95
https://www.titech.ac.jp/public-relations/about/stories/ammonia-synthesis
日本の企業は、まだ実験室で成功したばかりのこの技術を導入した
外国から技師を呼んで、外国製の機械も買い、日本でいきなり生産を始めようとした
外国製の機械とて、当時はそれほど信頼性は高くない。当然、水素が吹き出し着火爆発は日常茶飯事だったらしい
技術的に未確立の中で運転するのだから事故が起きて当然だ
当時の化学工場の様子はどうだったの色々調べてみたら、こんな本を見つけた
聞書水俣民衆史第4巻「合成化学工場と職工」草風館
http://www.sofukan.co.jp/books/33.html
数百ページの本の中に、当時の化学工場の運転状況や事故が書かれている
火災爆発は当たり前。町中に響きわたる、爆発音。
爆発するという前提で設計している。装置の廻りをコンクリートで覆い、爆風が上に抜ける設計だ
配管が破れれば、現場に飛んでいって弁を閉める。防毒マスクもないから、息を停めて現場に走り、弁を操作してくるのだ
生きるか死ぬかの世界だ。分析工も、薬液のガスを吸い長生きはしなかったようだ
職場によっては、1日で衣服が薬液でぼろぼろになると書いてある。とんでもない世界であったことが良くわかる
興味のある方は是非読んでみてほしい
この人達のおかげで今の化学産業がある
約100年前の平均寿命は43才から44才だったそうだ
https://www.taisho.co.jp/locomo/ba/sp/q1.html

2022年09月09日

タンク火災で起こるボイルオーバー事故

ボイルオーバ現象という言葉を知っているだろうか
タンク火災の時に起こる危険な現象の一つだ
タンクで火災が発生すると、タンク上部で油が燃える
油が長時間燃えているうち、突然タンク上部から油が爆発的に吹き上がり、火災が一挙に広がる現象だ
以下の資料を見て欲しい。イラストもあるのでイメージが掴めるはずだ
http://kikenbutu.web.fc2.com/90_TUTATU/2016H28/H280300manual/040900_manual_H2803.pdf
この現象が起こるには、水が必要だ。火災が起こると、泡などで消火する。泡と言っても水分が含まれている
水は油よりも思いから、時間とともにタンクの底に沈んでいく
つまり、タンクの底には水がたまることになる
タンクの上では火災が発生している。時間とともに、その熱でタンクの底にある水も徐々に温められていく
水は、100℃になると突沸する。つまり。上部からの伝熱で底にある水の温度が100℃になったときこのボイルオーバー現象が起きる
底にあった水は、突沸現象で上の油を押し上げタンク上部から燃えた油を吹き上げるからだ
過去に起こっているボイルオーバ現象に関する文献がある。興味のある方は読んでみると良い
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/55/4/55_253/_pdf/-char/ja

 

2022年09月07日

連続プロセス系とバッチ系の違い--事故の発生確率

化学プラントを見ると、バッチプロセスと連続プロセスがある
バッチプロセスというのは、容器に原料を入れ、何か反応とか混合をして、1回1回製品を作り上げる手法だ
原料を入れたり、温度を上げたり、撹拌をしたり人が色々とめんどうを見てやる必要がある
バッチプロセスは人が関与することが多い。人はミスを犯すから、どこかでトラブルが起こる確率は高い
連続プロセスというのは、人が関与せずかなりの部分が自動化されているので当然ヒューマンエラーが起こる確率は少ない
昔は、人件費もそれほど高くはなかったので、バッチプロセスが主流だった
ところが、人件費が上がるにつれ連続プロセスが主流になっていった
では、バッチプロセスの事故を見て見るととんでもない事故が過去起こっている
バッチプロセスというのは、同じような設備が存在することが多い
連続的に生産できないのだから、反応器は一つではない。何十個の反応器を設置して、切替えながら生産していくことになる
ある反応器は生産をさせているが、隣の反応器は生産を終え内部の清掃をしていることもある
つまり、生きている反応器と使っていない反応器が隣り合わせの状態で化学プラントが動いているのだ
現在のように、運転状態を監視できるモニターがしっかりと現場にあれば事故は起きないが昔はそうでは無かった
おまけに、運転員同士の連絡手段は今のように無線通信はなかった
そこで、すこしでも連絡がうまくいかないと、誤って生きている反応器でミスを犯すことになる
例えば、生きている反応器、つまり運転中の反応器のドレン弁を過って開いてしまう事故だ
たとえ、安全装置があっても人は、とんでもないことをする可能性はある
アメリカで起きた事故だがこんな事故がある。運転中の反応器のドレン弁の、安全蔵置を無視して強制的に開けた事故だ
大量の可燃物が吹き出し、5名の運転員が死亡した
https://www.youtube.com/watch?v=IRbC4kowrrY
https://www.csb.gov/assets/1/20/formosa_il_report.pdf?13838
日本でも、1960年代に同じような事故が九州の水俣にある塩ビ工場で起きている
バッチプロセスでは、人のミスをいかに抑えるかだ。バッチプロセスではヒューマンエラーを限りなく想定し、対策を打って欲しい

 

2022年09月05日

なぜ海外では大規模事故が起こるのか--日本と外国の違い

なぜ海外では大規模事故が起こっているのに
日本では一度に2桁を越えるような死亡事故や、数千人規模の被害者が出る大きな事故はなぜ起きないのかと聞かれることがある
国や文化が違うのだから、当然色々な要素がある
一つは、法規制だ 欧米と日本の法規制の考え方は違う
法というのは、当然個人や企業を規制する 法で規制を強化すれば、企業の活動を縛ることになる
法を守るには、お金もかかる。厳しくすればするほど、企業経営にも影響する
結果として、法は必要最低限で定めることになる
では、法律を守っていれば安全かというと、必要最低限だからそうはいかない
法規制の方法は、大きく分けて2つある
一つは、必要最低限の要求事項は定めるが、その要求を満たす手法については企業自ら考え実施させ安全を確保させる方法だ
企業が主体となる安全だ。政府や行政はあまり細かなことを法で定めない。法を守る手段は企業側にあるので、自主保安となる
この手法は、欧米系の国々で採用される。その代わり、ひとたび事故を起こせばペナルテイは大きい
もう一つは、日本の法令のように、事細かに定める手法だ。事故が起きるたびに規制は強化されていく。企業にあまり手段の選択肢はない
欧米系の法体系は、企業にとって自由度はある。しかし、企業側での安全対策は当然バラツキが出る
結果として、自主保安がうまくいかないと、大きな事故が起こることになる
もう一つ、行政の管理密度だ。管理密度が低ければ、事故の確率は増えてくる
中国などで、地方の化学工場で大規模事故が起こるのは、地方の行政当局の管理が甘いからだとも言われている
次に、事故が起こる要素として技術力も大いに関係する
1980年代インドなどで過去大きな事故が起きているのは、急速な経済成長に技術を使いこなす能力が追いついていなかったからと言われる
雇用形態も関係している。日本のような終身雇用制に近いものであれば、退職まで一貫して技術・技能の伝承もできる
しかし。海外のように転職が当たり前の企業では、技術レベルを保つのにかなりの努力が必要となる
企業の安全文化も関係する。海外では安全優先ではなく、生産優先で大きな事故を起こしている企業もある
現場の安全管理体制も関係する。海外では、トップダウン型だ。言われたことを担当者が行えば良い方式だ。指示通りにやらなければ罰せられる
日本では、トップダウンとボトムアップの組み合わせという手法を長年とってきた
改善提案、ヒヤリハット活動など日本独自の現場の安全活動もある。結果としてボトムアップが行われる
とはいえ日本も、少しずつ欧米化してきている
お金も時間も限られている。日本の良さを維持しながら、どう安全を構築していくかが求められている

 

2022年09月03日

変更管理の失敗事故に思う--変更管理の大切さ

生産優先か安全優先かというと、安全優先というのが世の中の主流にはなってきている
そうは言っても、やはり大型の工場を停めれば多額の生産損が出る
結果として、漏洩などの小トラブル程度であれば内密に修理して、そのまま再稼働する事例もある
そのまま、何もなけれ世の中に公表されることもないのだろうが、トラブルというのは本質的に対応できていなければ繰り返す
こんな事故事例がある
https://xtech.nikkei.com/dm/article/HONSHI/20060627/118638/
気液分離槽という容器に穴が開いて爆発した事故だ。容器中に気体と液体が混ざった物を入れて、液とガスを分離して液を回収する装置だ
高速で気液が入り込むので、スプレ-ノズルを取り付け流速を落として分離させていた
とはいえ、容器の壁にこの気液が長期間衝突したことによりエロージョンコロージョンで穴が開きガスが漏れ爆発した事故だ
企業は、原因を調査し調査報告書を公表したものの、実は10年前にも同じようなトラブルがあり、官庁にも届けず無断で修理したことがわかった
社内の調査委員会のメンバーもそれを知っていたのにかかわらず、調査報告書には過去の事例は記載しなかった
更に調べると、同社の他工場でも高圧ガス保安法で定める手続き通り検査もせずに工事を行っていたことがわかった
結果として、高圧ガスの認定も取り消され、社内の経営陣も責任を取って社内処分も行われた事案だ
https://ceh.cosmo-oil.co.jp/csr/publish/sustain/pdf/2006/sus2006_05-06.pdf
機器の内部構造を変更したことにより起きた変更管理に関わる事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-082.pdf
安易に、気液分離方法をバッフル方式から、スプレーノズル方式に変えればトラブルの再発は起こらないと判断したのかも知れない
気液が分離している2層流というのはエロージョンコロージョンの事故が起こり易い
定点検査で肉厚検査をしていると、減肉箇所を発見できないこともある。場所が数センチ変わっただけでも、削られ方が変わるからだ
2層流の事故事例を紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200098.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-123.pdf
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2019-353.pdf
法規制のある機器を変更すれば、当然許可や届出が必要になってくる。時間もかかる。時間がかかれば生産損も出ると考えたのだろう
企業倫理を現場の末端まで徹底するのは難しい
たかが変更管理と考えないで欲しい
変更すれば、法に関わることも出てくると教育周知して欲しい

2022年08月29日

化学プラントの事故災害に関する情報源を紹介 --化学工学会

アメリカにCCPSと言う組織がある Center for Chemical Process Safetyを略してCCPSと呼んでいる
化学プラントの安全に関わる活動をしている組織だ
https://www.aiche.org/ccps
CCPSでは、毎月一回程度事故や災害などに関する情報を世界中に発信している
https://www.aiche.org/sites/default/files/202207beaconenglish.pdf?utm_source=Informz&utm_medium=Email&utm_campaign=%5BADD%20Name%20of%20Email%5D&_zs=jKx2X&_zl=F1GA3
この英文情報を日本の化学工学会が和訳して提供してくれている
公益社団法人化学工学会 産学官連携センター SCE・Netのホームページを見て欲しい
http://sce-net.jp/main/group/anzen/anzen_danwa/
2001年から情報を提供してくれている。当初は発行頻度は少なかったが、今は毎月新しい情報が提供される
この頁を開けると、PSB 和訳及び安全談話室というのがある
情報一覧表の、PSB和訳というところをクリックすると和訳した文章が出てくる
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/03/202003BeaconEnglish-Japanese.pdf
2006年の4月号からは、談話室というのが公開されている
化学工学会の有識者のコメントが載せられている
最新の翻訳記事と談話室の記事だ
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2022/07/202207BeaconJapanese.pdf
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2022/07/DANWA2022_07_No193.pdf
化学物質を取り扱う工場の安全担当者や研究者などは是非みて頂きたい情報だ

 

2022年08月27日

事故データーベースの紹介

どんな事故データベースがあるのか聞かれることがある。公開されているものもあるので紹介しておく
過去の事故事例を学ぶことは重要だ。今まで、こんな事故事例データーベースを見て事故の教訓を集めてきた
①高圧ガス保安協会事故事例データーベース https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/incident_db.html
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/recent_hpg_incident.html
②産総研が提供する事故データーベース RISCAD https://riscad.aist-riss.jp/ (現在リニューアル中 一時閲覧停止中)
③Deyamaの提供する事故事例データーベース http://deyama.a.la9.jp/ver_1/saigai.html
④失敗知識データーベ-ス http://www.shippai.org/fkd/index.php
⑤労働安全衛生総合研究所事故データーベースだ。数千件の事故情報がある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
いい内容が書かれてはいるのだが惜しいことに何月何日という事故発生日の情報が不足しているのが欠点だ 正確な日付がわからないのが問題点だ
⑥神奈川県では高圧ガスに関係する事故情報を下記のURLで公開している
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14873.html
このホームページの中で更に詳細を見ていくと、事故の詳細等という項目がある
個別の事故に関する物も公開されている 高圧ガス事故事例情報シートというのがある
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14877.html
⑦早稲田大学と共同で特定非営利活動法人災害情報センターが運営しているデータベースで略称はADICというものがある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php
事故というのは、色々な視点で見ていかないと事故の教訓が得られない
特に、人という切り口で原因を書いているものは少ない。これからの事故データーベースについて求めたいのは、教訓を書いて欲しい
それから、変更管理の視点とリスクアセスメントの視点で失敗の要因を書いていく必要があると思う
とはいえ、データーベース提供者には感謝したい

 

2022年08月25日

可燃物を非金属ホースで抜き出すな--静電気

可燃物は静電気で着火する
可燃物を取り扱う時の静電気対策は基本中の基本の注意事項だ
でもこれは、なかなか徹底されていないから着火事故が起こる
装置内に残液が残れば、抜き出すことになる
最初から、残液を抜き出す設備がついていれば、安全に抜き出せるが全ての設備はそうであるわけでは無い
たいていはホースなどを仮設して、液を抜き出すことになる
そこに事故の芽がある
導電率の少ない可燃物であれば、静電気が発生する
液の流速が速ければ数千ボルトから数万ボルトの静電気が発生している
それに気づかず液を抜き出していれば、静電気は放電するので可燃物なら簡単に着火する
この手の事故事例は実に多いのだが、静電気に関しての教育が企業内で展開されることは無い
だから世の中で繰り返し静電気事故が起こる
ホースに関しては、アースが取れないと静電気を逃がすことはできない
金属製のホースならアースは逃がせるが、塩ビなどの樹脂製ホースを使っているとやはり静電気で事故が起こる
塩ビホースなどで抜き出していれば、静電気で着火することになる
耐熱性に関しても注意が必要だ
塩ビは耐熱性もないので、ホースも外れることもある
ホースで抜き出す作業を甘く見ないで欲しい
静電気と耐熱性についてはしっかりと教育して欲しい

 

2022年08月23日

夏場暑くなって起こる事故-過酸化物事故--停電が引き金

今から40年前の話ではあるが、大阪堺市の鉄砲町という所にあった化学工場で大爆発があった
夏の暑い8月21日の大事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000179.html
http://www.sydrose.com/creativedesignengine/HTML/bb4-01225/bb4-01225.html
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumona.nsf/html/shitsumon/a100008.htm
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumona.nsf/html/shitsumon/b100008.htm
死者6名・重傷者6名・軽傷者198名と多くの被災者が出た とんでもない大爆発だ
被害が大きかったのは、爆発の形態が蒸気雲爆発だったからだ
現在は、そこには工場はない。その場所は今はショッピングセンターとなっている
https://ameblo.jp/tetsudotabi/entry-12311917366.html
当時の状況を知ることはできない
事故の発端は、前日の停電だ
停電というのは、多くの大事故の引き金になる外乱だ
停電でまずは、小爆発が起きた。反応器の攪拌が止まったからだ。化学工場で反応器の停止は、事故につながる
反応暴走につながるからだ。
最初の小爆発を受け、反応器にある爆発につながる化学物質は処理できた
ところが、停電前に反応器へ投入する予定であった原材料を入れた容器の処理だけは忘れていた
原材料には、過酸化物が投入されており時間とともに反応が進んでいた
放置された、過酸化物を含む原材料が42時間経過後反応暴走を起こし爆発したのだ
爆発が起こる前、装置から煙が出たので一斉に従業員が現場確認へ向かったところで大爆発が起きた
異常を検知して一斉に皆が現場に駆け寄ったことで多くの人が巻き込まれたのだ
異常が起きたらすぐに安易に、現場へ向かわないで欲しい
過去の事故事例から、現場へ安易に向かって巻き込まれた事例は多い。異音、異臭、煙を見たなどで安易にすぐに現場に駆けつけないで欲しい
爆発が起これば巻き込まれるからだ
この事故は過酸化物の爆発事故だが、温度に敏感な過酸化物を甘く見ないで欲しい
引き金が停電だったことにも着目して欲しい。停電時の対応マニュアルができているかも見直して欲しい

 


2022年08月21日

安全工学

安全工学という用語がある
今から半世紀前には、安全についてと言う学問はありませんでした
爆発とは何か、火災とは何かという、論理的な学問は日本には存在していませんでした
学問が無いということは、大学で安全について専門的に教えられることもありませんでした
日本でコンビナートという産業形態ができたのは、1958年でした。ところが当時は、大学に安全を学問とする学部はなかったのです
化学工学や応用化学など、化学に関する学部はあるものの安全という学問は存在していませんでした
横浜国立大学というところで、安全工学科という学科ができたのは1967年です
北川先生という人が当時活躍されていました
1977年当時安全工学は、全国の大学で専門講座があった 当時の講義名一覧表がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/16/6/16_504/_pdf
今は安全工学という名前の学科は、日本の大学では見当たらないようだ
大学には、プロセス安全などを取り扱う研究室は見当たるが、学科名として安全工学は存在しないようだ
安全に関しての学会で安全工学会というのが有る
https://www.jsse.or.jp/about/History/history03
コンビナートが動き出す前年の1957年にできた学会です
文字通り安全をテーマにする学会です
この学会では、学会誌「安全工学」を古くから発行しています
安全工学会から発刊されている定期刊行物です。1962年が創刊号だからもう半世紀以上出版されています
会員なら、冊子が送付されてくるので見ることが出来るが、書店で売られているわけではありません
「安全工学」の冊子は、今はネットから見ることができます。つまり情報が公開されているので
発行開始当時からのバックナンバーも見れるので、実にありがたいことです
図書館に出かけなくてもみれるとは、すばらしいことです
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/safety/58/3/_contents/-char/ja
過去3年以上前の学会誌は公開されています
興味のある方は是非見て欲しい
安全に関する情報が詰め込まれている

 

2022年08月18日

労働災害から読み取れること--業種別

労働災害の教材を作るときは、災害の種類別に資料をつくる
労働災害とはという、基礎的な話をするときには、災害のパターンを説明するから種類別の資料分類が必要となる
ところが、業種別に話をするときには、別の分類が必要だ
研究開発部門、工場などの製造部門、工事部門、物流部門などだ。
研究部門なら、ガラス器具などの切れ・こすれという災害が多い。
とはいえ、試薬や実験などに危険なガスも使うのだから、物質危険性に関わる労働災害にも着目しておく必要がある。
製造部門は、やはり機械を使う関係上挟まれや巻きこまれという労働災害が多い。
挟まれ巻きこまれは、死亡事故にもなる、重大災害だ。
工事部門となると、墜落災害などが増えてくる。道具を使うから、切れこすれも多い
屋内などで発電機を使っていて酸欠になることなども落としてはならない災害だ。
夏になれば、熱中症など屋外での作業も増えてくる。
物流部門は、輸送中の車両事故だ。屋内であれば、フォークリフトという車両による交通事故が多い。
輸送用のベルトコンベアーなど巻き込まれ事故も重大労災になる。
全産業共通で多いのは、転倒労災だ。いわゆる、転ぶという災害だ。
元々、人類の先祖は四つ足で歩いていた。ところが、ある時点から二本足で歩くようになった。
赤ちゃんのころのよちよち歩きを思い出して欲しい。少しバランスを崩せば倒れてしまう。
人は、二本足で歩いていれば、段差など少しでもバランスを崩す物が存在すれば転倒する。
段差や突起物などは作業現場に沢山ある。だから転倒は、全産業共通のNO1の労働災害となる。
災害というのは、色々な切り口で見ていく必要がある。
災害を起こす本質を知っていくには、常に色々な切り口で物を見ることだ。
多様な見方ができると、事故からの教訓も上手に取り出せるようになる。

 

2022年08月16日

長期の休みで起こる事故

ゴールデンウイーク時の連休、夏季休暇、年末から正月にかけて長い休みの時期がある。
この時期を利用して化学企業などは色々なことをすることがある。
装置を、停めてしまう企業もあれば、運転を継続する企業もある。
装置を停めて、修理や点検をする企業もあるだろう。
「 長期の休み」というリスクは管理が甘くなるリスクも存在する。
交代勤務など現場の人は定員があるので、減ることは少ないが、現場の係長や課長などは当然休みに入る。
つまり管理者がいなくなることにより、管理の密度は減ることになる。
福島県の化学企業で2005年5月11日に起きた事故だ。
連休のため、通常タンク内には反応促進剤は1日しか入れないのに3週間という長期間入れて保管していた。
この為、反応促進剤の活性度は落ちていた。
それに気づかず、連休明け後にスタートを始めた。
運転員は、通常通り原料を反応器に入れて、反応促進剤もいつも通りいれた。
反応を始めたところ、なかなか温度は上がってこず反応は進まなかった。
それでも、運転を継続していたところ突然反応暴走が始まった。
気づいたときには、温度も圧力も異常に上がり安全弁から液が噴き出した。
噴き出した液は空気と混ざり、発火点以上だったため着火爆発したという事故だ。
長期間の休みを考慮せず、反応促進剤をタンクに入れたままにしていたことが引き起こした事故だ。
消防研究所が出している消防研究報告通貫101号の中の26頁にこの事故に関する記載がある。
興味がある方は見て欲しい。
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/houkoku/081-120/files/shoho_101s.pdf

長期間の休みを挟む作業には十分注意して欲しい

 

2022年08月12日

事故事例に学ぶ 熱交換器の重大事故--死者10名

高圧ガス保安協会が発行している協会誌「高圧ガス」に過去の事故事例に学ぶと言う特集が過去に組まれていることがある
2017年1月号から石油精製と石油化学分野で特集が組まれた
2017年2月号に過去の事故事例に、千葉県袖ヶ浦で起きた大きな事故の記事が出ていた
1992/10/16に起きた千葉県袖ケ浦市の製油所の熱交換器の事故が書かれていた。
熱交換器に関しては日本最大の犠牲者が出た事故だ。10人という死者が出た事故だ。それにしては、あっさりと書かれていた。
事故事例に学ぶという企画にしては、あまりにもあっさりとした文章だったのを覚えている。この事故は日本の産業界にとって実に貴重な事故だ。
反応器の事故は多くの犠牲者が出ると思っている人が多いが、反応器では犠牲者の数は少ない。むしろそれ以外の装置のが犠牲者の数は多い。
なぜなら、反応器は危険だと誰でも考えているから多くの安全装置を備え、事故に対する備えが多いからだ。
それに対して、熱交換器は誰でもそれほど危険と考えていない。だから事故が起こる。
高圧ガスという協会誌の記事は、会員しか見れないのでここには掲載できないので、他の記事のURLを紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011018.html
協会誌「高圧ガス」に記事を投稿してくれたのは、2017年頃の企業の安全部長さんだ
事故から、26年も経っているのだから、事故当時の当事者では無いだろう
事故から時間が経つと、事実を知っている人はどんどんいなくなる
それでも、誰かが過去の失敗を伝えなければいけないから記事を書く
この記事は、事故の当事者が書いているわけでは無い。過去の事故報告書を読んで書いたのだろう。
事故の事実を知らない人が、事故の本質を書くのは難しい。
過去の事故事例に学ぶと言うなら、この記事での論点は本来なぜ一度に10人もの犠牲者を出したかという所に論点を当てなければいけないはずだ。
しかし、当時の関係者で無ければそこまで深掘りした記事を書くことはできない。
一度失った命は、二度と戻ってこない。企業が、力を入れなければいけないのは死亡事故のような重大事故を防ぐことだ。
多くの事故を経験した人が自ら語っていくことが、事故の教訓に重みがある。
事故の教訓を伝えられるのは、事故を自ら経験した人しかいないからだ。
これからも情報を提供していきたい

 

2022年08月10日

計装設備が原因の事故

会社に入った時最初に配属されたのは「計装」という部署だ。
計装という業務は化学工場にある製造部門と直結する。温度や圧力など化学プラントの重要なパラメーターを管理するセンサーや制御を取り扱う部門だ。
今から50年くらい前のことだ。入社当時はDCSなどは無くアナログ計器だった。
空気式と電気式が混在していた。頻繁に計器も壊れるので、部品交換のたびに構造原理も自然と身に付いた。
プラントにもメンテナンスで出入りするので、化学プロセスに関する知識も自然と身に付いた。
おかげで石油化学工場にあるあらゆる製造部門を知ることもできた。
用役プラントや出荷設備なども担当させてもらった。このことが、今安全情報を発信する時に大いに役立っている。
最近は計装設備も壊れることが無くなり若い計装エンジニアーがトラブルを体験できないという。
プラントも建設する機会は無いからなおさらだ。
そんな背景もあり、2017年の1月から雑誌「計装」という月刊誌で計装設備のトラブルをシリーズ物で1年間執筆したことがある。
https://www.ice-keiso.co.jp/instrumentation.html
流量計、液面計、圧力計、温度計、分析計、調節弁類とトラブル事例を書いて紹介した。
過去も現在も化学プラントの事故事例を調べていくと計装計器が引き金になっているものも多い。
オリフィス流量計が関連した重大事故を紹介しておく
オリフィス板の下流側で起きたエロージョンコロージョンによる事故だ
数十年間点検せず、減肉に気づかず突然パイプが破裂して死傷者が出た事故だ
点検管理をしている協力会社が変わったことにより、点検周期データーが移管されず長期間点検漏れになった事例だ
配管の中にオリフィスを挿入すれば下流側は渦を巻く。鉄板をも削る。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011025.html
https://www.youtube.com/watch?v=PtvBSovjisM
温度計の保護管なども、下流側で渦をつくる。共振すれば、保護管も折れることがある
計装計器に関わる事故事例も知っておいて欲しい
私の知っていることを少しでもブログで発信し次の世代につなげていきたい。

 

2022年08月06日

吸着熱による事故事例その2

吸着熱の事故を紹介しておく
反応器などの反応熱による事故は関心があるかもしれないが、吸着熱による事故を知らない人は多い。
発熱という物は全て事故につながっていくと考えておくことだ。重合熱、酸化熱、中和熱など発熱にはいろいろある。
しかし、この吸着熱という物は案外事故の原因と知っている人は少ないのが現状だ。
しかし、繰り返し起こっている事故のパターンだ。
1976年3月9日姫路の企業で臭いのある物質を貯蔵するタンクで爆発事故が起きている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200109.html
臭いを取り去るため吸着性物質を使っていたところ、吸着熱が発火点を超えタンクが爆発した事故だ。
400度を超える温度まで、吸着熱で温度が上がっていたという。
1992年9月19日に千葉県茂原市にある工場で同様な事故が起きている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000089.html
廃液タンクで臭いを除去するため吸着性物質を使っていたときに起きた事故だ。この時の温度は500度を超えていたという。
同じ企業でその後同じように、また吸着剤による発火事故が起きている。
吸着剤による、発火事故は案外世の中では知られていないが、10~15年毎に爆発などの事故が起きているのは事実だ。
400度から500度くらいに温度が上がるのだから、たいていの物質の発火点を超えている。
2003年9月にも触媒抜き出し中に空気中の水分の吸着により発火事故が起きている
http://www.pref.kanagawa.jp/documents/15002/422124.pdf
触媒への水分吸着にも関心を持って欲しい
知らないと言うことほど恐ろしいものはない。

 

2022年08月04日

発熱による事故--吸着熱や酸化熱

発熱が事故につながると言うことはご存じだろう。とはいえ発熱には色々なパターンがある。
反応熱というと誰でも事故に関係する熱だと理解するが、反応熱以外の発熱となると案外理解していないのが現状だ。
吸着熱などという熱も、事故につながるとは考えていない事故事例が多い。
発熱温度が500度近くもなるのだから、誰でも知っていて欲しいのだが現実ほとんど知られていないから繰り返し事故が起こっている。
私も、この吸着熱に関心を持ったのは今から15年くらい前だ。
下関と言うところにある工場に赴任していたとき吸着性物質を取り扱うプラントを担当していた。
発熱があるとは聞いていたがたいしたことは無いと思っていた。あるとき吸着性物質は産地によりその特性が大きく変わると聞かされた。
いわゆる性能が大きく変わるというのだ。最初は吸着性能だと思っていたが、良く聞くと発熱温度がかなり変わると言うことがわかった。
さらに聞くととんでもない温度迄上がると言うことがわかったのだ。
今回のテーマは、酸化熱なので話を元に戻すと酸化熱も結構な温度になる。数百度にはなるのだ。
酸化熱で知っておいて欲しいのは、油の酸化だ。保温材などに油がしみ込むと酸化されて油の発火点が急激に下がる。
油は酸化されると発火点が下がる性質があるからだ。新品に比べ古くなった油は2/3程度の温度まで発火点は下がる。
発火点が下がれば、保温材を被った配管などはスチームトレースなどが施工されているからその温度で発火する。
スチーム程度の温度で酸化された油に火が付くのだ。空気が存在すれば必ず物は酸化される。
酸化されるときには酸化熱という熱が発生する。その熱を甘く見ると事故になる。
こんな事例がある。定修でタワーのマンホールの開放を行うため、水を流し内部は何回か洗浄された。
だいぶきれいになったと思い、マンホールを開けたところ翌日タワーが真っ赤になっているのが見つかった。
タワー内部に有機物が多く残っていたことにより、マンホールから侵入した空気で有機物が酸化され酸化熱でタワーが赤熱状態になっていたという事故だ。
空気があれば必ず物質は酸化される。その時必ず酸化熱という熱が発生していることを忘れないで欲しい。
定修でもタワーやドラムの中の温度計は活かしておいて欲しい
温度の異常に気づくのに遅れて火災になった事例は多い

 

2022年08月02日

電気火災に思う--赤外線カメラによる設備診断の有効性

電気設備の火災は起こると実に対応がやっかいだ。簡単に水をかけることはできず、大量の黒煙を発生する。
復旧も実に大変だ。ケーブルが焼ければ、一本一本つなぎ復旧していかなければならない。
ケーブルの調達も大変だ。ケーブルには色々仕様があり、大量生産されているわけではない。
一般的な電気火災の原因は「短絡」だ。つまり、ショートが原因で電気ケーブルの被覆や絶縁材に火がつくのだ。
長期間ケーブルを使っていれば、必ず劣化してくる。絶縁材が劣化すればいつか短絡が起こる。
電気設備の火災事故は、だいたい20年から30年くらい経ったときに起きるという事故報告が多い。
電気設備の更新を安易に伸ばすと事故になる。電気設備の更新計画をきちんとたてておかないと、思わぬ事故になる。
長期間の使用による劣化ではなければ、ケーブルなどの製造欠陥や設置時に工事の不手際で傷を付けたり異物を混入させたことが原因だ。
短絡が原因でなければ、接触不良を疑って見ることだ。ケーブルなどは、端子部分をネジで締め付けている。このネジが、時間が経つと緩むことがある。
最初から締め付けが甘いこともある。振動する設備が近くにあればその影響も受ける。
停電日などに、抜き取りで端子台の緩みをきちんと見ておくことだ。
一度も点検したことがないなら、電気火災のリスクは高い。端子の緩みを甘く見ないことだ。
なぜねじが緩むのかというと、気温の変化も影響する。一日の中でも温度差はある。年間を通じて、季節毎に温度も違う。
端子部は金属でできているから、温度が変化すれば必ず伸び縮みする。この伸縮で端子台が緩んだりすることがあるのだ。
昔は、定期的に増し締めを行っていたが、最近は赤外線カメラで端子部を見れば接触不良部は発熱しているので早期に発見することができる。
設備診断技術は進化している。診断技術やいい道具を、うまく使っていくことが事故防止につながる。

 

2022年07月29日

教育と訓練について--教育はコストか投資か

教育と訓練について書かれた今から約40年前の論文を読んだことがある。
出典は忘れたので紹介できないが、こんなことが書いてあったのを覚えている
1973年(昭和48年)に日本で化学プラントの事故が多発したときに書かれた論文だ。
当時、事故や災害が起きるのは、企業の教育や訓練に問題があるのでは無いかということが論議されていた。
今でも、当てはまる話題が書き綴られているので紹介したい。
最初の論議は、企業での教育は、本業務の一部なのか、余分な間接業務なのかだ。教育の位置づけに関する、根本に関わるところだ。
現在でも、この辺が曖昧にされているところに事故の芽が潜んでいるような気がする。
2番目の論議は、教育の主管は人事部門かだ。主管とは、責任を持って総合的に旗振りをするところだ。
責任とは、経営陣からお金を取ってくることも含めてだ。
いまや、各部門毎に教育の責任が振り分けられるものの、金銭的な裏付けは何も無く各部門の細々とした教育予算でなんとかやりくりされているのが実情では無いか
教育はコストだ。コストの切りつめがきびしいなか、製造や技術部門単独では教育の予算取りは難しい。
会社の中で教育の旗振り役がいなくなってきているところにも、最近の事故の芽があるような気がする。
誰が人を責任を持って育てるのか、企業の中でだんだん曖昧になってきているような気がする。
人は時間が経てば勝手に育つわけでは無い。
経験だけで育てようと思っても、今や失敗をあまり体験できない時代になってきている時代だ。
人を取り巻くリスクは消費税が上がるがごとくどんどん増えてきているのに、企業として人に知恵をつけることを怠っては事故は防げ無い。
教育は時間がかかる。少しずつでもいいから、こつこつと積み上げていくことだ。ちりも積もれば山となる。
教育訓練に手を抜かないことだ。時間もお金もかけることだ

 

2022年07月25日

暑くなると起こってくる事故-過酸化物事故

季節によって起こる事故のパターンがある
夏、温度が上がれば気温は上がる。化学物質は、温度が上がると反応を始めるのが一般的だ
つまり夏になると温度上昇で事故が起きやすくなる
温度に敏感な物質の一つに過酸化物というのがある
反応開始剤や、塗料の硬化剤などに使われる
少ない量で使われることから、あまり危険と感じず使われている事例が多い
過酸化物起こった最大の事故は、爆発で9人の人が命を落としている。とんでもない爆発エネルギーがある
1990年5月に起きた事故だ。http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200059.html
高純度の過酸化物を小分けしていたときに起きた爆発事故だ
わずかに含まれていたメタノール蒸気に着火爆発した事故だ
こんな事故もある
タンクに過酸化物を入れたものの、時間がかかり過酸化物の温度が計画よりも上がっていた
更にタンク内には冷却コイルはあったものの、上から下まで完全に冷却出来るようにはなっていなかった
冷却コイルよりはみ出した、過酸化物は冷えず温度が上がっていた
更に本来は、数日以内に消費されるはずが、試運転計画が遅れた
タンク内に、規定の温度を超える状態で保管されていた有機過酸化物が異常反応を始め事故になったのだ
https://www.asahi.com/articles/ASK7W42FFK7WUDCB00D.html
この企業では、2012年にも他の工場で有機過酸化物の爆発死亡事故が起きている

有機過酸化物を甘く見ていた事故事例だ
とにかく、有機過酸化物は冷やさなければ事故になる
種類によっては、屋外に置いて外気温程度で反応を始めるものもある
自分の工場で有機過酸化物が使われていないか検証して欲しい
有機過酸化物を甘く見ないことだ

 

2022年07月23日

安全文化を醸成することの大切さ--生産優先で起こる悲劇

生産優先の考え方が先行してしまうと思わぬ重大事故が起きるの
過去多くの事故がそれを教えてくれている
事故が起こりやすいのは、休日や夜間だと言われる
管理体制が甘くなる時だからだ。休日なら、管理者は出勤していない
交代勤務職場であれば、交代の責任者に権限がゆだねられることになる
今でこそ携帯などで簡単に連絡がつくが、昔は移動していればそう簡単には管理者と連絡がつかなかった
生産優先が引き起こした重大事故を紹介する
大阪で起こった、食品用油を製造する工場で起こった事故だ。死者8人を出す重大事故だ
事故の流れはこうだ。工場で食品用の油を抽出する装置が故障した
装置内は、ノルマルヘキサンという可燃物を取り合っていた
マニュアルでは、装置内に人が入り点検するには24時間換気をすると定められていた
ところが、数時間パージをしただけで装置内に人を入れてしまった
しかも、ガス検も実施せず人を装置内に入れ、作業を始めたのだ
まだ、装置内には可燃性の蒸気が蔓延していた
着火源は不明だが、可燃性蒸気に着火し大爆発を起こしたのだ
なぜ、こんなルール無視をしたかというと、当時この工場は稼働率が高くフル生産だったという
おまけに、チョコレート用の製品を製造していた。クリスマスを直前に控えて、工場はフル生産だった
たぶん、現場の管理職は少しでも生産を停めたくはないという思いがあったのだろう
1991/12/22日、日曜日の午後に事故は起こった。以下のURLで事故の概要がわかる
https://gcoe.tus-fire.com/archive_cms/kobayashi-k/cms/wp-content/uploads/2010/02/3ea56a8dae51cb3a9f18f3f5b77a24f3.pdf
国からはこんな通達も出ている https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-32/hor1-32-14-1-0.htm
安全文化はそう簡単に造り出されるものでは無い
企業トップがリーダーシップを取り、こつこつと作り上げていく必要がある

 

2022年07月21日

実験室解体中の爆発事故-休日夜間の工事管理体制は甘くなる

まだ企業に勤めていたときの研究所の解体工事での事故の経験だ
当時は、安全担当の仕事をしていていた
工事担当者から突然電話がかかってきた。工場に付属する研究部門の実験室を解体していたら突然爆発が起こったというのだ
解体する実験室は、今まで色々な化学薬品を使用して実験を続けていた場所だ
事故当日は、実験室の中の廃液を処理する流し台を解体していた
午前中、流し台の周りの板を剥がしていたところ薬品臭がした
作業員は危険だと思い、解体作業を停止した
しばらくして、薬品臭が消えた。工事に立ち会っていた研究所の担当者に工事を再開しても良いかと確認した
工事は再開してOKとの連絡を受け、再び工事を確認していたところ爆発が起こった
ちょうど、実験台周りの板を剥がしていて、電動工具で切断しようとしていたときに爆発は起きた
この研究所では、長年塩酸、硝酸、過塩素酸などなどの薬液を使って実験してきた

実験で残った液は、今回爆発した廃液処理流し台で処分してきた
長い間薬液を処理してきたので、飛び散っていた薬液が周辺の壁にしみ込んでいた
壁の中では、多くの薬液の混合により、副生物ができていた
この副生物は、衝撃を与えると爆発する物質だったが、研究所の人達はそれに気づいていなかった
結果として、撤去工事で流し台の周辺の板を工具で切断していた時に衝撃エネルギーで爆発が起こってしまったのだ
工事は、研究所で作業しない休日に行われていた
本来、工事には研究所側の管理者が立ち会うことになっていたが。立ち会っていなかった
代わりに、経験があまりない若手研究者が立ち会っていた
結果として、異臭がしていたのに事故を未然にに防ぐことができなかった
今回の事故を見ても、休日や夜間の工事は管理体制が甘くなる
多くの重大事故は、休日や夜間に起こる
休日や夜間の工事の安全管理をおろそかにしないで欲しい

 

2022年07月19日

粉塵爆発に思う--送風機の点検管理の大切さ

昨年の5月にこんな粉塵爆発が起こった
https://www.youtube.com/watch?v=i9D-3DJ-uRU
亜鉛の粉を取り扱う装置を起動していたとき爆発が起きたという
粉末に風を送る送風機で異音がして、しばらくして爆発したという
粉という物は着火源があれば簡単に火がつき、燃えるでは無く爆発することもある
亜鉛は金属だから燃えないと思う人がいるかもしれないが、金属でも条件さえ整えば燃えるのだ
粉になると空気と触れる表面積がどんどん増える。細かくなればなるほど、表面積と増えていく
当然火がつけば、表面積が多いのだから爆発的に燃焼する
http://www.bsb-systems.jp/page0136.html
今回の着火源は、異音がしたというのであれば摩擦熱の可能性もある
ファンの内部の羽根は金属でできている。羽根とファン本体の金属と接触すれば摩擦が起こる
もう一つは、金属と擦れ合えば金属火花も出る。金属火花も着火源だ
過去にも、ファンの摩擦熱で火災が起きている事例も多い
今回この事故の調査報告書が企業から公開されていた
https://www.sakai-chem.co.jp/jp/pdf/pr220107_3.pdf
https://www.sakai-chem.co.jp/jp/pdf/pr220107_2.pdf
原因は、ファンに粉塵がついていたことで、起動したとき回転軸のバランスが崩れたことだ
この結果ファンにつながるシャフトのベアリングカバーに無理な力が加わり固定部が割れたことだ
ベアリング固定がなくなったことでシャフトは激しく振動し、ファン本体部の改修カバーとシャフトが接触した
発火点を超える高温の金属粉が飛び散り、着火源となったというのだ
ファンで異音がしたら、無理に回さないことだ
できれば、定期的に点検をして欲しい
何十年も点検していなければ事故になると考えて欲しい

 

2022年07月17日

教育と訓練という言葉の違い--訓練の大切さ

教育訓練という言葉がある。何気なく使われる言葉だが、一体の用語ではない。
「教育」と「訓練」とは違う。
人間の体は、頭の部分と体の部分でできている
教育は「頭」の部分だ。「訓練」は体の部分だ
知識などは、頭の部分に蓄えられる。頭の中に蓄えられた「知識」はいざという時使えてこそ価値がある
ところが、人間の構造は、頭でわかっていても、いざという時、行動に移せないというのが一般的だ
だから、訓練が必要となる。いざという時、頭の中に蓄えた知識が行動に移せるかを試すのが訓練だ
世の中の人は、教育訓練という言葉を正しく理解できてない
教育と訓練は別物と理解していないからだ
今回、元国家元首が銃撃された
一回目の発砲では、弾は当たらなかった
かなりの、音がした
訓練では、たぶん元国家元首を守るには皆が覆い被さり、しかも元首の姿勢を低くして被弾しにくい姿勢を取らせると教えられたはずだ
でも訓練通りには行動は移せなかった
化学プラントの災害も同じだ。頭でわかっていても訓練をしていなければ、行動に移せるという保障は無い
昨今、色々な仕事が増えて、実地訓練の時間は削減されている
そうは言っても、実地訓練はいざという時に格段の効果はある
訓練はいざという時の効果的な保険だ
訓練に手を抜かないで欲しい

 

2022年07月15日

設備の種類毎に事故のパターンがある--タンクの凸や凹む事故

タンク事故を見て見ると多いのがタンク凸(破裂)やタンクが凹む事故だ
この事故は繰り返し繰り返し起こっている
タンクの凸やタンクが凹むという事故の教育は案外されているようでされてはいない
たかがタンクと思っている人が多いからだ
反応器など爆発する恐れのある機器については、しっかりと教育される。危険性が高いからだ
ところがタンクとなると、教育すらされないいないのが実情だ 爆発しないから大丈夫という思いがあるからだ
だから多くの企業でタンクの破裂や凹み事故が頻発する
背景には、なぜ事故が起こるのかが情報があまり公開されていないからだ
一企業の中でこの手の事故が起こる頻度は少ない
だから、多くの事故の教訓を一企業で持っているわけではない
業界単位で、情報の共有化が必要だ
そうはいっても、業界が事故情報を整理して持っているわけでは無い
日付順に情報は持っているのかも知れないが、設備の種類毎にきちんと整理しているわけではないのだろう
そこに難しさがある
私も、知っている情報をできる限り公開している
ブログでも公開している
http://handa.jpn.org/1/posts/post589.html
http://handa.jpn.org/1/posts/post588.html
http://handa.jpn.org/1/posts/post514.html
http://handa.jpn.org/1/posts/post478.html

半田化学プラント安全研究所のブログを有効に活用して欲しい

 

2022年07月13日

HAZOPをやる前に知っておくべきこと 機器の種類毎に起こる事故のパターン

HAZOPという安全性評価手法がある。「ズレ」をキーワードにして事故が起こるシナリオを考えるのだ
流量が減ったとか増えたとか、正常運転からのズレでどんな危険なことが起こるのかを考えるのだ
HAZOPを教える機会があるときに、こんなことを皆さんに言っている
まず、HAZOPの手法を習う前に、徹底的に機械の種類毎に起こる事故のパターンを身につけて欲しい
企業にも、HAZOPを導入するなら機器の種類毎に事故のパターンを書き出した一覧表をまず作成して欲しいとアドバイスしている
やみくもにHAZOPをやるのではなく、機器毎に着眼点を養って欲しいと入っているのだ
なぜならば、過去の事故事例から機器の種類毎に事故のパターンはわかっている
同じような事故が世の中で繰り返し起こるのだから、機器の種類毎に事故のシナリオパターンを理解させて欲しいのだ
例えば、ポンプを例に取ろう
ポンプの吸入側で流れ無しと言えば、空引きがおこる。時間が経てば、逆流が起こり事故につながるシナリオがある
ポンプの吐出側で流れ無しと言えば、締め切り運転事故の事例がある。短時間で液温が上昇する
仕切り板を抜くのを忘れていたという事例も多い
例えばこんな事故だ。液温上昇で、メカニカルシールが壊れ可燃物が漏洩着火というシナリオになる
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/188/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
流体が温度に敏感な過酸化物であれば、温度増というズレにより爆発か破裂事故になる
ポンプの吐出側弁を閉めて、吸入側に戻す循環運転を考えてみよう。液をグルグル回しにすると、やはり少しずつ液温が上がっている
結果として、過酸化物のような流体なら温度増というズレでやはり、爆発か破裂事故をこす
こんな事故事例がある。循環運転をすると温度が上昇するという知識が不足していたようだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200051.html
ポンプの種類によっても事故のパターンがあるので資料を集め整理しておくことだ
往復動ポンプは、締め切り運転をするとものすごく高圧となる。HAZOP的には出口側流れ無しのケースだ
ポンプ出口側につながる機器の耐圧が無ければ、機器が破裂する。ガラス式ローターメーターやサイトグラスはいっぺんで破壊される
対策としては安全弁を設置することになる
キャンドポンプは、内部で冷却用パイプが詰まり爆発して事例もある  http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0021002.html
構造原理まで見抜けないとHAZOP的には事故は防ぐのは難しい事例だ
HAZOPをやる前に機器毎に起こる事故のパターンを徹底的に身につけて欲しい

 

2022年07月11日

物質危険性-希釈熱という化学用語と事故事例を知っているだろうか?

希釈熱という物を知っているだろうか?。物質を希釈する時に発生する熱のことだ
硫酸や塩酸を水で薄める時などに熱が発生する。それが、希釈熱だ
苛性ソーダでも、希釈する時に発熱現象が起こる
熱という物は、事故につながる。発熱が引き金になり、事故という形になっていくのだ
重合反応などの「反応熱」というと、かなり発熱事故を知っている人は多い
しかし、「希釈熱」で事故が起こるとは考えている人は少ないから事故がたまに起こる
熱の発生のメカニズムにかかわらず、熱は事故の要因の一つとなる
今回、希釈熱の事故を紹介しておく。1998/11/9に福岡県の化学会社で起こった事故だ
過酸化物を含む硫酸廃液タンクで起きた事故だ
あるとき硫酸濃度が大きく異なる製品を造り始めた。これにより発生した廃液が廃液タンクに入ったことにより硫酸の濃度差が生じた
濃度の異なる廃酸が、廃液タンク内で混ざあうことによりり希釈熱が発生して、タンク内の温度が上昇した
廃液には、有機過酸化物という温度上昇で反応を始める有機過酸化物が含まれていたためタンク内で反応が始まった
有機過酸化物は温度の上昇で分解反応を始め、大量のガスがタンク内で発生した
タンクは圧力に耐えられず破裂して何らかの着火源で爆発した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200070.html
硫酸や塩酸など酸を扱っている職場は多いはずだ。無機物で可燃物では無いからと火災や爆発を想定していないと思わぬ事故となる
希釈熱について勉強して欲しい
こんな事故もある。冷却水が漏れて反応器内の発煙硫酸の希釈熱で起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000097.html
今後も、過去の事故から得られた貴重な教訓はブログで紹介していきたい

 

2022年07月09日

高圧ガス認定制度の変遷と2022年の法改正

高圧ガス認定制度というのがある 安全に関して安全文化や技術基盤がしっかりしている企業にインセンティブを与えようという制度だ
この制度は、海外との競争により日本の経済力が落ち始めた頃に運用が始まった
高圧ガス取締法のもと、長期連続運転が可能になったのは1987年からだ 今から35年前のことだ
従来1年毎に定期検査が必要だったのが、2年に延長された
そうは言っても、それに値する技術や管理体制のある企業に限られた。 これを、高圧ガス認定制度という
その後、約10年が経過した1997年に高圧ガス取締法が高圧ガス保安法と名称が変わる
1990年代は、バブルがはじけ経済は落ち込み、グロ-バル化が進んでいた時代だ
国が企業を取り締まるという体制から、企業自らが自主的な保安をおこうなうという世の中に変わった
がんじがらめの規制では、国際競争力を維持していくことが難しくなってきたという背景もある
確か1999年だったと思うが、2年から4年の長期連続運転が出来ることが可能になった。
2003~2007年頃認定取り消しを受けた企業が続発した。高圧ガス認定事業所で検査を未実施などの不祥事が多発し、2005年に認定要件が見直されている
4年連続運転が可能になって約20年経った、2017年から高圧ガスのスーパー認定制度というものが運用し始めた
最新の技術や高度な人材を育成して安全・安定運転が出来る能力を持った企業を認定する制度だ
この認定を受けることにより企業は最長8年という長期連続運転が可能というメリットを得ることが出来る
長期連続運転が可能になると言うことは、修繕費が大幅に削減でき企業にとって大きなメリットが発生する。
検査についても独自のものが可能となればコスト面でも有益となる。許可を得る範囲が減ると言うことは申請に費やす時間が減り人的コストが節約となる
そうは言っても、この制度を利用するには企業としていわゆる「高度な保安技術」を持っていることを証明しなければならない。企業はソフト、ハードの両面で国の要求条件を満たす必要がある。企業規模が大きくないと、かなりハードルがある制度だ。
2022年の通常国会で高圧ガス保安法が改正案が承認された。この認定制度も、世の中のニーズに対応して少し変わってくる
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220304004/20220304004.html
法改正前に経済産業省にコンサルタント会社からこのような石油や化学企業の事故や取り巻く課題を解析したレポートが出ている
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000284.pdf
実に参考になる情報だ。一度目を通す価値はある

 

2022年07月07日

HAZOP-連続プロセス系とバッチ系の違い--手順書HAZOP

石油精製、石油化学、化学物質を取り扱う化学工場では安全性評価の手段としてHAZOPの活用が求められている
HAZOPというのは、ズレが事故の要因になるという考え方から生まれた安全性評価手法だ
HAZOPは、もともと連続プロセスで始まった手法だ。では、バッチプロセスでも使える手法があるかといえばある
手順HAZOP又は手順書HAZOPなどと呼ばれている。バッチプロセスでは、運転手順書にしたがって生産が行われている
つまり、手順書からずれたことが起こったり、行われたりすると事故につながると考え、手順書からずれたらどうなるかを考えるのだ
連続プロセスHAZOPは、P&IDフローシートに書かれた配管を一つずつ順番にそこで起こるズレと影響を確認している
連続プロセスというのは、機械が主体となりプラントを自動制御している。したがって、ズレが起こるのは機械が故障したときだ
ポンプが壊れたり、計器が壊れたり、自動制御弁が故障したりするズレが事故を引き起こす
したがって機械の故障を重点的に、ズレと捉えて解析すれば、事故を未然に防げる
バッチプロセスは、配管一本一本をチェックしていくのではなく、手順書に書かれた項目を、1行1行順番にチェックしていくのだ
手順書には、製造手順が順番に書かれている。例えば、1つ目のステップでは、原料ポンプ1を起動する。ポンプ吐出弁を開けて反応器へ5トン送り込む
2つ目のステップでは、原料ポンプ2を起動する。ポンプ吐出弁を開けて反応器へ3トン送り込むというように手順が書かれていたとしよう
手順を間違えるとズレはこんな形で現れる
例えばNOだ。最初の手順では、ポンプ1を起動しないというずれもある。ポンプは起動したが、弁の操作を「忘れる」ズレもある
LESSなら、弁の操作が「不十分」又は投入量が不足した。MOREなら、弁を「開けすぎる」又は投入量が多すぎた
REVERSEならポンプを停めるとき液を逆流させたなどだ。otherであれば、「違う他のポンプの弁を操作した」などだ
2つ目のステップも、同様なズレが起こるはずだ。ポンプの起動忘れや、弁の開け忘れ、投入量の間違いなどだ
これらのズレに気づく警報や、安全装置があるのかまずチェックする。さらに、ズレでどんな悪いことが起こるのかも連続系HAZOPのように考える
更に、バッチ系HAZOPのガイドワードには、時間的な要素を追加する必要がある
バッチ系では手順が、時間通りに進むかも大切な要素となるからだ。例えば、操作するタイミングが、「速すぎた」、又は「遅すぎた」などだ。
所定の時間より、操作時間が短かかった、又は長すぎたなどだ。時間的要素も考慮する必要がある
つまり、バッチ系では、時間的なタイミングのずれも追加して考える必要がある
連続系で使う7つのガイドワードに加えて、時間的なズレのガイドワードを併用して使うのだ

 

2022年07月05日

私の勤めていた企業でHAZOPを始めるきっかけとなった事故

HAZOPというのは1970年代にイギリスに始まった安全性評価の手法だ
ズレ、すなわち変化に着目して事故が起こらないかをチェックする手法だ
日本に伝わったのは、10年後の1980年代だ
1980年代というのは、今から40年以上も前の話だ
1970年代というのは事故が多発した。だから、事故の原因と対策を徹底的に研究した
ところが、事故から学んだのは、事故が起きてから対策を考えても遅いと気づいたのがこの時代だ
事故が起こるまえに、事故が起こるシナリオを考え事故の未然防止を図りたいと考え始めたのだ
そうは言っても、事故が起こるシナリオを考えるのはそう容易ではない
1980年代日本に伝来したのが、HAZOPだ。事故は、「ズレ」が原因で起こるという概念だ
温度や圧力が正常範囲から、逸脱すれば。事故につながるということに着目するのだ
温度、圧力というパラメーターの変化はズレだ。安全安定運転にとっては好ましくないことだ
このズレが、事故につながる可能性がある
ならば、このズレを基点に、どんな悪い過去とが起こるかというシナリオを想定し
それに、今ある安全対策で対応できるのかを考えてみようというのがHAZOPだ
反応器で温度が上昇すれば事故につながる。ところが、温度上昇を検知して警報を出す道具が設置されていなければ異常には気づかない
異常に気づく道具があるか、まずチェックするのがHAZOPだ。警報が無いのに人は異常には気づかないからだ
私の勤めていた会社でこの事故がきっかけで、HAZOPを始めるようになった。こんな事故だ。1983/3/5の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000148.html
窒素シールもあった廃液タンクの事故だ。質素シールがしてあれば誰も爆発が起こるとは考えない
ところが、廃液量が多く、しかも廃液から大量の酸素が発生し爆発混合気ができて爆発した事故だ
酸素は、廃液中に含まれる過酸化物である「過酸化水素」とタンク内のアルカリ液とで発生した
過酸化水素は、アルカリだと、酸素を発生するという混触危険性を理解していなかったのだ
たかが廃液タンクだと思わないことだ
あなたは、この事故を、HAZOPで見抜けるか検証して欲しい
かなり、事故の予見性を見抜くのは難しい
安全性評価をすれば事故を防げるわけではない。見抜には豊富な事故事例を知っておく必要がある
安全性評価はそんな甘い物では無いということだ

 

2022年07月03日

リスクアセスメントの歴史を振り返ってみて

リスクアセスメントと言う言葉がある。今の時代当たり前のように使われている言葉だ
化学企業に今から半世紀前に就職したときは,リスクという言葉は使っていなかった気がする
新しい設備を作る際には、企業が定めた「安全性評価システム」に則り危険なことを明らかにして、それを危険で無い状態にできるかを論議した
研究開発の段階、事業化前の事前検討時、事業化決定後設備の基本設計段階、詳細設計段階、装置完成後の試運転前段階などで安全を確認した
試験管ベースから、装置が出来上がるまで、検討項目が見える化されていて安全性の評価をした記憶がある
私が、化学プラントの設計や保全に実務として携わっていたのは、1970年代~1980年代だ
この頃は、まだリスクという言葉ではなく「安全」ということばが主流だった気がする
1980年代頃から、HAZOPという安全性評価システムを使い始めたが、プロセス安全性評価というように「安全性評価」という言葉だった
リスクアセスメントの歴史を調べてみると、発祥はイギリスで、1991年にリスクとは、「発生確率」と「影響度」の産物と定義している
https://seisangenba.com/work-risk-assessment/
日本に持ち込まれたのは、1999年とある。 労働安全衛生マネージメントシステムに関する指針が出された年だ
http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-58-1-0.htm
安全をPDCAを回しシステマチックに管理しようとする試みが始まった頃だ。日本でもISOの認証取得なども始まった頃だ
2006年4月1日に改正され、労働安全衛生法に危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)の実施が努力義務規定として設けられた
リスクアセスメントの実施とその結果に基づき必要な措置を講ずることが定められたのだ
化学企業などでは、法の施行前よりリスクアセスメントの社内教育が始まり、作業工程でのアセスメントの評価が進んでいた
その後、国際的な安全の定義については2014年、ISO/IEC GUIDE 51:2014で「許容できないリスクがないこと」と定義されるようになった
2016年の法改正で、指定された化学物質(平成28年6月1日当時640種類~SDS交付義務もあり)の製造・取り扱う事業場に対して、リスクアセスメントの実施が義務化された。
労働災害のみならず、化学物質による危険性や有害性のリスク評価も進んできたと言える
2020年代に入った今では、2010年代に行ったリスククアセスメント結果を、再評価を行い危険源の漏れや評価の妥当性を検証している企業もある
リスク評価の進化が進んでいると言える。一度リスクを評価したらそれで終わりは無い
HAZOPのような「ずれ」の概念も織り込んでいく必要がある
1回目の評価では、化学物質を取り扱う人(管理者、担当者)も変わっているかもしれない。取扱量、製造工程や設備の変化もあるはずだ
時間が経ってから、2回。3回とリスクアセスメントの深掘りをして欲しい

 

2022年07月01日

静電気ーー噴出帯電

化学プラントで静電気はやっかいなものだ
着火源の一つだからだ。ピッいう音で,一瞬火花が出れば、簡単に着火する
しつこいくらいにアースを取っておかないと静電気が発生する
脱液するときには、とにかく流速を早めないことだ
当たり前のように言われている、流速1m以下にすることだ
バルブはゆっくりと、流し出す必要がある。しぶきが、ほとばしるようならもう完全に静電気ができている
液の中に気泡があれば、やはり静電気が発生していると考えなくてはならない
放出する配管の太さより、出ていく液の太さがちょっと細めくらいが安心な領域だ
もう一つ気おつけなければいけないのは、噴出帯電だ
導電性の無い流体がホースやノズルから勢いよく噴き出すとやはり静電気が発生する
つまり、噴出して周りの空気をかき乱すことで周辺に静電気が発生する
蒸気を噴出させても数千ボルトの静電気は発生する
スチームパージをしていて放電したこともある
危ないのは、ゴムホースの先端に金属製のノズルを付けたホースを使うと危ない
ゴムは電気を通さないから電気は逃げていかないのだ
ホースの先端に付けた金属製のノズルにアースを取ってくれればいいのだがほとんどの人はアースは取らない
そうすると、ホースから蒸気を出し始めると蒸気の出た周りの空気は蒸気の噴出で空気が帯電する
その帯電した空気から、金属ノズルに向かって放電が起こる
これが噴出帯電による現象だ
近くに可燃性ガスなどが漏れていれば一瞬で火がつく
この噴出帯電という現象は案外知られていない
安全体験などで体感できる機会があれば是非体験してみて欲しい
静電気に関する情報源としてこんなものがあるので紹介しておく
https://xn--1nrt08ch33ahravo.com/basic-static-electricity/manual/

 

2022年06月27日

安全はコストか投資か

経営者の姿勢を見るとき安全への関与度を見抜く必要がある
経営というのは所詮利益が物差しになる。株主がいる以上、利益は一つのバロメーターだ
安全にはお金がかかる。そこをどう経営者が理解しているかだ。安全にはお金が必要だ 誰でもそれはわかっている
ではいくらお金をかければいいのだろうか 目安があるのだろうか
保険というのがある 火災保険なら、火災が起きる確率はわかっている 
だから保険会社は、確率から計算して損をしない程度の保険料率を定める
自賠責という交通事故の保険も同じだ 自動車事故が起きる確率はわかっているからだ
化学プラントも火災や爆発事故の発生確率は長い歴史の間でわかっている
だから保険会社もそれをベースに火災保険料を策定する
平均値としてのデーターはわかっているが、企業の安全管理レベルにより事故の発生確率は、1桁~2桁くらいずれはあるはずだ
事故をよく起こす企業もある めったに事故を起こさない企業もある
それは、企業の安全基盤や安全風土に関係する
では、事故を防止する為にいくらお金をかければいいのかというとそう簡単には算出できない
今までかけてきたお金を基準にすればコストという考え方になる
事故を起こさない先行投資という考えにたてばこれは投資になる
企業利益の何%を投資すれば常に事故を防げるのかというとそれも答えは無い
人に投資すればいいわけでもない 安全設備などハード的な投資も必要だ
ソフトとハードの投資比率も難しい
人に技術有りだから、人すなわちソフトにも投資しないと事故を防ぐのは難しい
個人的考え方だが、消費税の利率程度は必要かもしれない。仕事をしている中で常に最低約1割程度安全のことを考えておく必要があるという意味だ
安全への投資はけっして減ることは無いはずだ 技術は高度化するし、人への負担も増えるからだ
企業はしっかりと収益を得て安全にも投資して欲しい
経営数値で安全にかけるお金もしっかり見て欲しい
安全にかけているお金は、サステナビリテイ(CSR、RC)報告書ではESGデーターとして公表されるべき数値だと考えている

 

2022年06月24日

乾燥設備や乾燥工程で起こる事故--乾燥工程にはリスクが存在する

製造工程には色々なリスクがある。反応工程だとしっかりリスクアセスメントはしてくれるが、乾燥工程はそれほど危険視されない
だから、乾燥工程で火災や爆発事故がかなりの頻度で起こる。事故の原因は、大きく分けて4つだ
一つ目は「乾燥させる物質」そのものに原因がある。もともと、熱を加えると燃えやすかったり、爆発しやすい性質を持っている場合だ
ゴムの乾燥作業などでよく火災が起こる。元々ゴムは燃えやすい。
着火点未満で、乾燥させていても装置内にゴムの破片などが残ってしまうと事故になる
残留したゴムは、長期間過熱されると炭化して着火点が下がるからだ。結果として、劣化したゴムの破片が自然発火して火災になる事例は多い
効率を考えると誰でも加熱温度は高くしたい。しかし温度を高くすれば燃えやすくなる 温度設定に慎重さを欠くと事故になる
事故防止策は、装置内の残留物である堆積物の清掃を定期的に行うことだ。燃える物が無ければ、燃焼の三要素が成り立たないからだ
熱で反応しやすい物質を乾燥していて起きた爆発事故を紹介する。きっかけは、乾燥機にある動く回転軸のグランドパッキンを強くしめたことだ
パッキンドを強く締め付ければ、動きにくくなるから当然、そこで摩擦熱が発生する この摩擦熱で乾燥していた物質が発火した事故だ
危険物第5類の自己分解性物質を乾燥していたときに起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000123.html
感光材による事故事例の報告書があるのでこれも紹介しておく https://www.toyogosei.co.jp/news/2008/07/2.html
二つ目は、「粉塵」だ。可燃性固体などを乾燥している時に起こる事故だ。固体が砕けると粉塵が発生する 粉塵濃度が高まると爆発が起こる
製薬会社で錠剤を製造するときなどで起こっているパターンだ 錠剤の破片が粉塵となって起こる事故だ 着火源は静電気が多い
三つ目は、「熱源」が原因だ。LPガスや、天然ガスを燃やして加熱する装置は多い。火が着いていても、突然火が消えることがある
火が消えている状態で、ガスはそのまま流れ続け、しばらくして何かの火種で再点火し爆発する事故も多い
それと、温度調節器が壊れたことで過熱され事故が起こるケースも多い。たいていは、設備の老朽化を放置していたからだ
温度計の設置位置が悪く正確に温度が計測されず、過熱気味になっていて事故が起こることもある
温度計の位置の設計ミスだ  電熱器過熱では、送風が停まると一部が異常過熱になり事故にもなる
四つ目は、乾燥させて「取り除きたい物質」が原因だ  加熱乾燥の目的は、付着している溶媒などを乾燥させるケースが多い
たとえば、塗装した部品などを乾燥すれば、シンナーガスなどが発生する
シンナーは可燃性で、一定濃度になれば爆発性ガスとなる。熱源に、電気ヒーターなどを使っていれば、故障で火花などが出れば火災や爆発になる
シンナー、ベンゼン、トルエン、アルコールなどの有機溶剤が使われた部品を乾燥することは多い。溶媒として使われることが多いからだ
製薬会社では、錠剤に含まれているアルコールなどを乾燥させているときの火災事例が多い
乾燥設備の電気設備は、防爆で設計することも考えて欲しい 換気と濃度管理も事故防止のキーワードだ
乾燥という名前のつく設備を甘く見ないで欲しい

 

2022年06月22日

2021年の消防事故統計が発表されていた

消防庁から、2021のコンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計実績が発表された。
毎年5月末に発表されているレポートだ。
コンビナートでの事故統計だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/454b64419c90e3ceddc24189a42ef1ff45727a40.pdf
ここ数年は300件/年の事故件数だ。2019年(令和1)から30件ほど件数が減っているが、これは届出の範囲が変わっているからだ
2018年までは、軽微な漏洩でも届出が必要だった。かに泡程度の漏洩でもだ
しかし、人身にも影響を与えない「かに泡」程度の漏洩は事故件数には含めないと考え方を変えたのだ
ここに、情報がある
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/koatsu_gas/pdf/013_02_02.pdf
PDFの頁数で、17/25頁に図8という円グラフがある。事故の要因だが、腐食疲労等劣化が少しずつ例年より増えている
いわゆる設備の老朽化が進んでいると言うことだろう
21/25から主要事故の記述がある。
事故の事実を伝えるだけではなく、事故からの教訓が欲しいところだ
せめて、リスクアセスメント的なコメントは書いて欲しい。こんなリスクアセスメントが抜けていたとかだ
こちらは危険物取り扱い施設での事故概要だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/95af717506fe8b5a6b79f4800adf6589ab44dfa4.pdf
昨年同様、危険物施設事故件数は横ばいだ
PDFの頁数で、29/31頁から、2021年(令和3年)に起きた主要事故の概要が記載されている
参考にするのも良いだろう
こんな情報もある。行政機関宛に送られる資料だ。事故事例は写真やイラストもある 対策や効果のコメントもある
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/b24505e04c38d99101dda5c42b7f5f8f36aec676.pdf
PDFの頁数で、68/82頁からイラスト付きの事故事例紹介がある
残念なのは発生日の情報が無いことだ
相変わらず元号で発表している。 グローバル化の中そろそろ考えを変えられないのだろうか
行政文書だからしょうが無いのかも知れないが、せめて表紙の部分だけでも西暦を併記書きすることくらいやって欲しい

 

2022年06月19日

HAZOPは文献を読んだらわかるものでは無い

7/4(月)にWeb方式でHAZOPの講義をする予定になっている。
https://tech-seminar.jp/seminar/2022-07-04-%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%82%84%E5%A4%B1%E6%95%97%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6HAZOP%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E8%AC%9B%E5%BA%A7
コロナ禍でもあり、Web講義だ。約20名ほどが参加申し込みを既にしていてくれる
HAZOPは、安全性評価手法として1980年頃から化学工場では使われ始めた手法だ。使用が開始されてから約40年が経つ。
40年が経過してはいるが、残念ながら日本ではHAZOPだけを主テーマにして取り扱った書籍は発行されてはいない。
安全関係の書籍の一部に安全性評価手法の紹介の一部として取り扱われる程度だ。
書籍だが安全工学会が発行している書籍でHAZOPについて書かれているものがある。
実践安全工学 シリーズ2「プロセス安全の基礎」 出版社は化学工業日報社である。
この分野の執筆者は、高木さんという人である。
毎年安全工学会で開催されるセミナーでも講演がある。興味があるなら聞いてみるとよい。
文献を紹介しておく まず高木さんが書かれている文献だ
非定常HAZOPの進め方-高木伸一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/53/4/53_244/_pdf
HAZOPの有効な適用方法
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/disaster/47.pdf
HAZOPに造形の深い先生で松岡さんという方がいる
ホームページを紹介しておく
http://www.hazop.jp/index.html
そうはいっても、文献を読んだだけでHAZOPと言う手法を使いこなせるわけでは無い
過去のHAZOPで見落とした事例も数多く知っておかないとHAZOPで深掘りできないからだ
まずは、HAZOPとは何かを概念として知ることも大切だ
興味があれば、私の話も聞いてみるのもいいだろう イラストなどを使って考え方や、HAZOPで失敗した事故事例も紹介する
講師紹介割引もある
期限も迫っているので申し込みは早めに!

 

 

2022年06月17日

タンクの地震対策--耐震補強

日本という国は地震は頻繁に来る
日本で最初にコンビナートが地震で被害を受けたのは、新潟大地震だ
今から60年前の出来事だ。製油所のタンクが地震で火災となった
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%9C%B0%E9%9C%87
この地震で多くのことを学んだ タンク周りの防液堤は、ブロックなどでは簡単に壊れてようをなさないことも学んだ
この地震で、液状化という現象も学んだ
防液堤は、ブロック壁ではなく、コンクリートの一体壁が必要だと事故報告書で述べられている
その後、色々な地震が起きた。地震というのは様々だ
1978年には宮城沖地震というのが起きた。仙台で起きた震度5の地震だ。東北の製油所が被害を受けた
1983年には秋田で地震が起きた。M7.7 震度5の日本海中部沖地震が11:59分に発生。地震動のスロッシングによる屋外タンク火災が起こっている
日本海中部地震により発電所の浮き屋根タンクリング火災を経験した
原油タンク浮屋根揺動,摩擦発火.新潟石油共同備蓄石油タンクでスロッシングも経験した。
火力発電所浮屋根シールタンク35000㎘タンクの浮屋根付近から黒煙が発生しリング火災にもなった。
泡消火設備が点検中で作動迄時間がかかり2時間燃え続けた。
2003/9/26には北海道で地震が起き、大きなタンク火災が起こった。大型タンクでは、泡消火設備が能力不足で機能しなかった事例だ
その後の日本各所のコンビナートでは消防能力の強化が図られた
2007/10月には新潟で地震が起こり電力開所の変圧器が火災を起こした。新潟県中越沖地震だ
新潟県中越沖地震で新潟県柏崎市原発のトランスが燃える事故も起こった
現場での地震強度の観測値は、東西方向2,058ガルで設計値834ガルを大きく超えていた。とんでもないガル数だ。
直下型では、とんでもない加速度が生じるといことだ。今までの想定対策を越える衝撃があると言うことだ
2011/3月には千葉県にある石油会社の球形タンクが火災を起こした
地震対策をしていても、とんでもない規模の地震が起こることは否めない
地震対策の限界があると言うことだ

 

2022年06月14日

本社の安全管理部門に求められること

1970年代事故が多発した。この時、問題提起されたのは本社の安全管理機能だ
当時は、工場に付属する安全管理部門が機能すれば事故は起こらないと考えられていた
ところが、工場長の指揮下にある安全管理部門は所詮工場長の指揮を受ける
結果として、やはり工場としては生産優先になる。そこに、事故の芽が出てくる
本来なら、危険なことがあればブレーキをかけるのが工場の安全部門だが、所詮工場長の指揮下であれば生産とのバランスを取ることになる
結果として、工場に帰属する安全部門では事故は防げ無いといういうことがわかったのが1970年代の事故の連鎖だ
行政もこれらを鑑み、企業に本社機構に安全を社長直下で統括する安全管理部門を設置することを求めた
企業をこれを受け、本社に安全管理部門をつくったのが1970年代だ
社長の指揮を受けるというのが、ガバナンスに大きく貢献した
最初のうちはそうそうたるメンバーがいたものの、時代とともに本社の安全管理部門は色あせていった
大きな事故が無ければ、安全管理部門の影は薄れていく
とはいえ工場に任せていれば安全は確保できるわけではない
1970年代行政が本社の安全管理部門に求めたのは、工場が気づいていないリスクや弱みを的確に把握する機能だ
さらに、本社経営陣に人材や資金をタイムリーの捻出させるスキルを本社の安全部門に要求している
本社の安全部門は単に、年間計画をこなすのが仕事ではない
工場が求める必要な人材や資金を最大限捻出する機能を果たすの本社の安全管理部門だ
更に、工場とは違う価値観で工場に潜在するリスクを拾い上げ、工場をガバナンス機能を持つことも求められている
工場の延長線上で考える人ではなく、ゼロベースでリスクを拾い上げられる人が本社に求められている
本社の安全管理部門の機能が、きちんと機能しているか検証して欲しい
工場とは違う価値観で考えられる人も本社は抱えて欲しい
そうは言っても工場が抱える人材や資源は限られている
そこを上手にフォローできる本社スタッフを本社安全部門は抱えて欲しい

 

2022年06月12日

製菓工場火災に思う--火災後の停電が怖いーー非常訓練を怠るな

今年の2月に新潟県にある大手菓子メーカーの工場で火災死亡事故が起こったのを覚えているだろうか
6人の方が、逃げられずに死亡した惨事だ
今回初めて社長が出てきて謝罪したという新聞報道があった
https://www.chunichi.co.jp/article/480879
この席上、調査報告書が出されたとの発表があった
事故報告書は以下のURLから入手できる
https://www.sanko-seika.co.jp/pdf/news20220601_1.pdf
この工場では、過去に何回も小火があったという。1988年7月~2019年11月、8件の火災が確認されている
部分焼が4件、ぼやが4件で、けが人はいなかったという 大きな火災にはならなかったが、事故を予見する兆候はあったと言うことだろう
過去の8件は、ほとんどが煎餅の生産工程で生地を乾燥させる機械に堆積した菓子くずから発火したというという
今回の火災を巡っては一部の従業員が「炭化した菓子のかすから出火した」と証言しているという情報もある
大きな事故が起きないと報道されないが、油が付着したかすなどが原因で起こる自然発火はよく知られた現象だ
自治体の防災関係の、広報にも沢山の情報がある
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/7415/sizenhakka.html
今回の報告書の中に、火災とほぼ同時に停電が起こっているとの記述がある
火災の炎で、機械の上の方にあったケーブルダクト内の高圧ケーブルがショートしたという
結果として、火災後停電が起こり、避難していた人達が非常口をうまく見つけられずに犠牲者が増えたと思われる
報告書の非常口の写真を見ると、防火シャッタの真横に位置する
煙で視界も悪く、更に停電で暗闇の中で、真横に位置する非常口を訓練などで知っていない限りそこから抜け出すことはできなかったのだろう
訓練さえしていれば、助かった命だ
非常訓練の大切さを感じさせる
報告書には書かれていないが、電気ケーブルを通すダクトの材質と経路だ
乾燥設備周りなど、自然発火しやすい設備の周りには、ケーブルダクト通さないのが一般的だ
万一を考えるのだ。材質も不燃性の金属ダクトを選ぶ。今回はどうだったのだろう
安価な樹脂製ケーブルダクトが使われていれば一気に燃えたはずだ
ケーブルダクトのレイアウトにも注意を払って欲しい

 

2022年06月10日

スケールアップで起こる事故--10倍以上のスケールアップで多くの事故が起こっている

スケールアップという言葉がある。
事業を拡大したいと思えば、必ず装置規模は拡大する。化学工場で言えば生産能力を上げることだ
そうは言っても、実験を重ね、商業化に結びつけるのはそうたやすいことではない
試験管ベースでうまく言ったからと言って、生産規模を簡単に増やせるものでは無い。
実験を重ね商業化していくには、スケールアップしていくことになる
試験管ベースでうまくいっても、量を増やせばうまくいくという保障は無い
少しずつ量を増やしながら、中規模の試験設備にたどり着く
商業化するには、更に大きな設備にしていく必要がある
化学反応を伴う物質であれば、反応熱を考慮に入れる必要がある。反応容器を大きくすればするほど、冷えにくくなる
異物の考慮も必要だ。装置を大きくすれば思わぬ異物も入り込んでくる
異物混入の事故事例も多い http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000125.html
混触反応のリスクも増えていく
冷却能力不足も致命的事故になることもある http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200004.html
2007年にアメリカで起きたスケールアップの失敗を紹介する
以下のURLを見て欲しい。英文の報告書とビデオがある
当初は1Lという小型反応器で製造を開始したが、いきなり10m3の反応器にスケールアップしてしまった
何バッチか製造する段階で、温度が異常に上昇することがあったが、それが暴走反応とは気づいていなかった
原因を調査せず漫然と反応器を大型化した失敗事例だ
https://www.csb.gov/t2-laboratories-inc-reactive-chemical-explosion/
スケールアップ比率で考慮すべき数値は、色々な情報から考えるに、一度に10倍を超えてはリスクがある
段階的にスケールアップする必要があると言うことだ
スケールアップに存在するリスクを甘く見ないで欲しい

 

2022年06月08日

タンク表面を直接火気工事して起こる事故

タンクの側板や天板などに直接火気工事などをして爆発事故が起こっている事例は知っているだろうか
タンクの鉄板に直接火を入れれば、火災や爆発などになる事故事例は多数あるのだがこれは案外知られていない
タンクの鉄板は数ミリだ。外側から、溶接などをすればすぐに厚さ数ミリの鉄板を伝って熱がタンク内部に伝わっていく
数分もしないうちに、タンク鉄板の内側は数百度にもなる
タンク鉄板の内側には、何らかの残渣が付着しているはずだ
可燃物を保管するタンクであれば、その残渣は可燃物だ
残渣は暖められれば、すぐにガスを出す。ガスは、可燃性のガスだ
結果として、発生したガスがタンク内に充満してくる
だんだんガスが増えれば、結果としてタンク内のガスは爆発範囲に入るのが一般的だ
爆発範囲に入っていれば、火がつけば爆発する
結果として作業者が爆風で吹き飛ばされて被害に遭う
この手の事故は、10年に一度くらい死亡事故になる
死亡事故にならなくとも、かなりの頻度でこの手の事故は起こっている
鉄板などを外側から加熱すれば、必ず中に伝熱していく
アセエチレンや酸素の溶接であれば。温度は数千度だ。あっという間に、伝熱でタンクなどの内側は数百度になる
数百度という温度は、普通の物質であれば発火点を超えるから火がつくと考えて欲しい
薄い鉄板の外側から火を加えれば、内部は火がつく状態になると考えて欲しい
火を使う工事を甘く見ないで欲しい
溶接の火の粉などは、数千度だ。しばらくして冷めたとしても数百度だ
数百度もあれば、発火点を超えていると常に思って欲しい
火を使う工事を甘く見ないで欲しい

 

2022年06月05日

予備機があれば大丈夫か --HAZOP冗長化

HAZOPで設備を検討すると、信頼性を上げる手段として機器の予備機を持つことが対応策として提言される
確かに、予備のポンプや圧縮機を持てば片方の機器が故障してもトラブルを乗り越えられる確率は高い
ところが、問題はトラブルが起きたときすんなり予備機に切り替えられるかだ
切り替え操作というのは、訓練していなければ間違うこともある
頭ではわかっていてもいざというとき確実に切り替えられるという保障は無い
ヒューマンエラーを考慮しておく必要があるということだ
HAZOPで検討する際には、うまく切り替えられなかったときでも安全が担保するのかを考えて欲しい
うまく切り替えられなかった時には、どんな悪いシナリオになるのかだ
時間的な要素も見て欲しい。切り替えに失敗して数分で事故になるなら、インターロックや機械的な安全対策が必要だ
例えば圧力上昇につながるなら、安全弁は不可欠だ。安全弁があればなんとか対応できる。それがなければ、破裂するかも知れない
温度上昇なら、どう対応するかだ
予備機があるから安全だと考えないで欲しい。切り替えにうまくいかなかったときのトラブルを想定して、それに対する安全策も深掘りして欲しい
こんな事故事例がある
圧縮機の切り替えに失敗して、反応暴走が起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000112.html
次に予備機の管理がどうなっているのかを見て欲しい
予備機は管理が甘くこともある。予備機だからと管理をおろそかにするケースだ
結果として、予備機故に事故になる事例は沢山ある
もともと、振動値が高く、しょうが無く予備機扱いにしていた事例を紹介しておく
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/konbi_soku/2017-083.pdf
色々対策は打ったものの振動値が高くやむを得ず予備機にしていたケースだ
あるとき、運転トラブルで予備機に切り替えたもののやはり振動が多く、しばらくして油が漏れたなどの事故事例も多い
予備機とて、正機器並みの管理が必要だ。予備機だからと甘く見ないで欲しい。管理の基準は同じにしなければ、いつか事故は起こる

予備機で起こるリスクを見落とさないで欲しい
予備機だからと甘く見ないことだ

 

2022年06月03日

工事の工法を勝手に協力会社が変えて起こる事故--工事管理

化学プラントなどでは工事を頼むとき元請けという協力会社に仕事を頼む。大手のエンジ会社だ
大手だから安心かというとそうでは無い。協力会社は、多層構造だからだ
元請けは仕事は受注するが、下請けに仕事を発注する。工事規模が大きければ更に孫請けに仕事を任せる
下請けの構造は何重にもなる。下に行けば行くほど技術の管理レベルは下がる。そこで問題が起こる
発注者である、企業は大手に頼んだから安全と思い込んでいる。しかし、現場の末端の仕事は大手がやるわけではない
孫請けレベルの協力会社がやっている。問題はその企業の実力だ。監督がしっかりしていれば、問題が無いがそうとは限らない
発注者が考えた思いが、最終的な施工者レベルまで届いていればいいのだがなかなかそうはいかない
発注者も、工事現場に立ち会って施工者が意図した工法で工事をしてくれるかと確認すればいいのに現実は丸投げだ
なぜなら、発注者側も人がいないからだ
企業はどんどん人を減らし、現場の工事の施工管理もかなり手薄になっている
おまけに、現場の工事を見る発注者側の担当も経験不足、工事を受注した強力会社側も監督者の技量は落ちている
こんな事故事例がある。大阪の化学企業で起きた解体工事中の火災事故だ
発注者は、解体する煙突周りのダクト内にはFRPという可燃物が貼り付けられているためそれを除去してから切断せよと指示した
ところが、工事を受注した協力会社は、いちいちFRPを外していては効率が悪く、工事の手間もかかるのでいきなり火を使って切断し始めた
結果としてFRPに着火して大きな火災になった
https://www.youtube.com/watch?v=UaIMQCbGFBY
発注者の要求した通り協力会社が工事をするわけではない
協力会社は常に効率を考える
手間暇をかけずに工事はやりたいのだ
一方で、発注者は言ったとおりにやってくれると単純に思ってる
歩合制ならまだしも、請けで仕事を受けるなら受注者は必ず効率の良い仕事の方法を考える
そこに発注者と受注者のミスマッチが起こる
仕事を人に頼むときは、発注方式を含めて考えて欲しい
受注額が決められた請負方式で発注すれば、受注者は必ず効率の良い方法を考える
そこにどうくさびを入れられるかが発注者の腕の見せ所だ
発注したとおりに仕事をやってもらうのは大変な苦労がいると考えて欲しい

 

2022年05月28日

たかがホースと思わないで欲しい--耐熱性や耐薬品性などの知識が必要だ

化学プラントの中でホースを使う仕事は沢山ある
脱液や移液などでホースは頻繁に使われる
ホースの種類は様々だ。用途に合ったホースを選定すればいいのがそうは問屋が卸さない
人は身近にあるホースを使ってしまうからだ
流す流体の温度が高いのに、耐熱性の低いホースを使って事故になる。薬品の耐酸性や耐油性にあわないホースを使って事故にもなる
なぜなら、ホースに関しての事故事例はあまり教育されていないからだ
自分の部下などに質問して欲しい。ホースの耐熱性についてだ。たぶん多くの人は、ホースと耐熱性はうまく答えられないと思う
塩ビのホースは、どの程度の温度に耐えるのかと質問しても多くの人は答えられない
たとえば蒸気だ。水の沸点は100℃だ。ビニルホ-スは蒸気に耐えられるかだ
一般的に言われているのは塩ビホースなら、60度迄が許容温度だ。いわゆる温水だ
お風呂の温度が約40度くらいだから、それより少し高い程度までしか持たない。
当然蒸気には耐えられない。
良く誤解されるのが。網線入り塩ビホースだ。かなり強度があると思われがちだが。80度まで持てばいい方だ
やはり、蒸気には使えない
蒸気に使える、黒っぽい蒸気ゴムホースでも130度から140度だ。低圧蒸気には使える、高圧蒸気には使えない
使える使いえないはあるが、温度が高くなれば柔らかくなる。締め付け部がゆるむというリスクもある
たとえ破れはしないにせよ、柔らかくなりすぎてホースの固定が甘くなることも考えなくてはいけない
しっかりとクランプされていればいいのだが、固定が緩ければホースが抜けて起こる事故もある
ホースの材質で何度まで使えるのかはしっかりと教育して欲しい
耐酸性など化学物質に対する耐候性も教えて欲しい
たかがホースと思っていると思わぬ労災が発生する

 

2022年05月26日

安全に関する経営トップや本社の関与--コンプライアンス ガバナンス

ガバナンスやコンプライアンスという用語が最近は頻繁に出てくる
法令や社内ルールをきちんと遵守した経営を行っていることが今の世の中は求められている
今の世の中安全に関しては、かならず経営トップの関与を聞かれる。経営トップは収益だけを見ていれば済む時代ではない
必ず安全についての関与を問われる。部下に任しているという答えではノーだ 権限委譲だけではことはすまない
いかに経営トップとしてリーダーシップを取っているかが求められる。いかに取り巻きが、経営者を支えてくれているかだ
経営トップは、事務方がトップになるケースもあれば、技術職が経営トップになるケースもある
どちらが、安全に関してセンスがあるかというと、どちらとも言えない。本人の資質だからだ
バランス感覚のいい人もいる。そうで無い人もいるのは当然だ
とはいえ、そこそこの及第点は取る必要がある。社員を食わせなければいけないからだ
安全に関しては、安全に関する重役を割り当て権限を委譲する経営形態もある
権限委譲ではあるが、経営者が直接的には関与しない形態だ。経営者の負担は減るがそれでいいのか疑問は残る
間接的に安全をガバナンスすることが本当に正しいのかは疑問が残る
経営トップとは言え、裸の王様ではない。いかにスタッフが、支援しているかだ
スタッフの力量で、トップのリアクションも変わる。事務局や安全スタッフの能力が問われるのだ
組織は個人で動いているわけでは無い。最終判断は、トップにゆだねられるが、判断の所以となる情報はあくまでも取り巻きが作り上げるのだ
スタッフの能力はものすごく経営に関与する。安全スタッフには、そこが求められている
上に対しても情報発信することが必要だ。工場や各職場に対しても、しっかりと実質的な行動に移せる情報発信が求められている
企業の中でスタッフの役割は、参謀なのだろう
企業統治ができるのは、第三者的な機能が存在するかだ。皆身内という意識では、チェック機能が働かない
工場監査をするにしても、他工場の人が入ると格段に監査の質は上がる 文化や風土の違うところで育った人だ
他工場の人は、指揮命令系統の範囲外となるから自由な意見が出てくるから
ガバナンスには、第三者機能をいかに取り込むかが重要だ

 

2022年05月24日

検査データー改ざんや検査の未実施、見逃し問題--検査管理部門の重要性

検査に関する不祥事が続いている
この問題は根が深い。単純に検査部門だけが悪いでは済まされない問題だ
根っこの一つに人が減ったと言う問題がある 経営という大きな問題も関与している
1990年代にバブルがはじけて、徹底的に削られたのが管理検査部門ではないだろうか
管理検査部門は、トラブルがなくて当たり前だ。何もトラブルがなければ、安易に人を減らせる部門だと経営側には考えられてしまう
結果として、人減らしが行われてきて、その後、不祥事が顕在化したのだと考えるべきだ
バブルがはじけた1990年の検査管理部門の人数と、現在の人数を比較して欲しい。半分にも満たない人数しかいないのが現状ではないだろうか
コンビナートにある化学プラントは、法律により行政機関の検査を受ける
ところが、1980年代後半から、認定を受ければ、企業自らが検査を実施できる体制に変わり始めた
海外とのグロ-バル競争が始まった時代だ。少しでも企業側にメリットが出るようにと、国が雲焼死始めた制度だ
高圧ガス認定制度の開始だ。検査も一部は企業が自ら実施できること、検査周期も1年毎にから、数年へと延長することができるようになった
当然、企業もしっかりと検査体制を整えなければいけないのに、今までの延長線で検査や法申請を行っていた
結果として、法申請漏れや、検査の未実施が多くの企業で見つかり大問題となった
ちょうど2000年代に入った頃だ。次から次へと、企業が高圧ガスの認定が取り消される事態が起こった
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento079_29_sanko-4.pdf
高圧ガスの認定事業所の体制基準などの見直しが行われた
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/46/1/46_30/_pdf/-char/ja
2017年末にも、自動車会社の検査資格を持たない検査員による最終検査問題。金属業界での検査データー問題があった
2018年には、新幹線の台車製作時の強度不足問題など問題が続いている。報道はされるものの、時間が経つにつれ忘れ去られていく。
報道も、現場に問題があるような表現でなされている
確かに、問題の原点は現場であるが、なぜ検査部門でそれを防げ無かったかについては深掘りされることはない
JR台車問題については、検査の話はほぼ素通りだ。現場の監督の資質が低かったと決めつけている
現場には、削るなと表示がされているのに現場は削っていたから問題だと報道されているが、削るなと現場に掲示した人達は一体何を管理していたのだろうか
https://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/rep-inci/keika180628.pdf
事故が起こるのは、危険源が職場に存在するからだ。しかし、それを管理する組織は、企業には存在すはずだ。いわゆる検査管理部門だ
ところが、この検査管理部門がしっかり検査していない。おまけに、昔からの問題も抱え引きずっているからだ
検査部門があれば問題は起きないかというとそうでは無い。検査部門とて問題は起こす。それを、どうガバナンスするかだ
最近もある製油所で高圧ガス認定が取り消されている 
検査部門のガバナンスについてしっかり見れる企業が生き残っていくはずだ
検査管理部門の役割を甘く見ないで欲しい

2022年05月22日

工事の品質管理は難しい--現場監督の力量

化学プラントでは、新設、改造、定期点検が常に行われて行く
高温、高圧の設備もある。毒性ガスの設備もある。漏れれば危険な物を沢山取り扱っている
工事や点検は社員自らやるわけではない。工事施工会社などに頼むわけだ
大手工事業者に頼めば安心かというとそうとは限らない
今から数十年前は,ベテランの監督や技能者が沢山いた。工事を沢山経験した人達だ
2007年度問題というのが過去にあった。団塊の世代という経験豊かな人達が大量に辞めていく時期があった
それでも日本政府は、再雇用という制度を作って退職時期を5年引き延ばした
つまり、今から10年前の2012年頃までは腕のいい職人は多数確保できた
何も言わなくても工事の品質は確保されていた
つまり、監督などがしっかりしていなくても末端で働く労働者の質が平均的にかなり高く,めったなことではトラブルは起きなかったからだ
ところが,昨今はそうはいかない。監督者も経験不足。現場の作業者も技量のバラツキが大きいという現実がある
現場の質が落ちたというより、現場作業者のバラツキが大きくなったと理解する方が正しい
監督者もたたき上げと言うより、頭でっかちの監督者が増えてきている。経験は無いのに,立場は監督者という構図だ
では,仕事を発注する側の立場で考えると、どう工事の品質を確保するかだ
溶接技量などは、技量検定資格などもあり,ある程度能力は見抜ける。実技試験もあるから、できばえも評価できる
ところが監督という職業は、技量検定という制度は定着していない
とにかく、現場監督の力量で工事の質は決まる 優秀な現場監督が確保できる企業を選ぶことだ
企業規模ではない 人に技術有りだからだ。企業評価をするときには書面だけでは駄目だ。キーマンとなる監督者層と話す機会を作ってもらうことだ
その上で,発注先の能力を評価して欲しい。現場監督の力量でかなり安全や工事の質は変わってくる
現場で先頭に立つ,監督者層の力量を見て欲しい
仕事というものは発注したら終わりではない。きちんと100%の要求事項を満足してくれるかだ
1%でも欠けていれば後で何かまずいことが起こることになる
有能な現場監督のいる企業を選択することだ

 

2022年05月20日

充填物の抜き出し作業で起こる事故--静電気着火

定修などで充填物を抜き出す作業はある。ドラムやタワ-などに充填されていた充填物だ
問題は充填物などに、有機溶剤などの可燃物が付着しているケースだ
石油化学コンビナートなどでは、多くの設備で可燃物を取り扱っている。
充填物を使っている場合、性能が劣化したり汚れが多くなると充填物を取り替える
問題は、充填物の取り出しだ
可燃性の液体を処理している充填物であれば、充填物に可燃物が付着している
付着している状態で充填物を抜き出せば、火災や爆発になる
しっかりと、ガス検知をして欲しいのだが案外そこはおろそかになる
充填物は、可燃性ではなく無機などの不燃性の材料も多いからだ。充填物の材料が、不燃性だとそれで安心してしまう
この為、可燃性ガスが同伴した形で、充填物を抜き出していて着火や爆発になる事例は多い
充填物を抜き出すなら、必ずガス検知はして欲しい。わずかにでも可燃性の液体が付着すれば、静電気で発火事故が起こるのだ
無機の充填物であっても周辺に可燃物が付着していれば火災や爆発は起こる
どうしても微量の可燃性ガスが同伴するなら、抜き出すときは水をかけながら抜き出して欲しい
静電気での着火を防止する為だ
充填物を抜き出しているときの、静電気での着火爆発事故事例は多い
充填物の抜き出し作業を行うときには、必ずガス検知を行って欲しい
抜き出しに使うシュートは、金属製のものを使って欲しい。静電気を逃がすためにアースもとって欲しい
抜き出し用シュートが、非金属であった為に静電気で着火爆発した事例も多い
受台側も、非金属で静電気での着火要因になることもある
充填物の抜き出しにはしつこいくらいに静電気対策を図って欲しい

 

2022年05月18日

酸欠事故--思い込み 窒素の危険性をしつこく教育せよ

酸欠事故は繰り返し繰り返し世の中で起こっている
化学プラントでも酸欠事故は多い。化学プラントでは爆発混合気をつくらせないためにチッソを使うことは多い
チッソという気体を使って装置の中を爆発しないようにパージする作業は多い
大部分は、ヒヤリですんではいるものも、時には死亡事故につながることもある
問題はその危険なチッソを取り除く作業をするときだ
空気を送り込んで、空気に置換する作業もある
装置のマンホールという蓋を開けて空気を中に入れ込んでいく方法もある。開けたマンホールから空気を入れてチッソを置換するのだ
問題はこのマンホールを開ける作業だ。単純に指示を受けてマンホールを開けるなら事故は起きない
でも世の中には、このマンホールを開けていた作業者が、マンホールの中に入り死亡する事例も数多くある
実例として、化学プラントで起こった酸欠死亡事故の詳細が公開されているので興味のある方は見て欲しい
2020/5/14に起こった酸欠事故だ。協力会社の現場監督が死亡している
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2020-455.pdf
事故の顛末はこうだ。ドラムのマンホールを開けて、立ち入り禁止措置をするだけの指示を協力会社は受けていた
ところが、なぜか協力会社の監督が、ドラムの中に入り酸欠で死亡したという事故だ
周りにいた作業員は、ドラムの中に監督が入るのを停めなかったという
停めるまもなく中に入り、すぐにドラム内に転落したのかも知れない
なぜそんなことが起こるのかと言えば、チッソは臭いもなく色もないからだ。チッソが危険と人が色や臭いで感じることができないからだ
チッソは吸い込むと瞬時に酸欠になる。あっという間に意識が無くなる。 ほんの数秒で意識を失う
更に,瞬時に筋力も無くなる。自分の体を支えることもできなくなる
つまり,逃げだそうとしても自分の力では逃げ出せないのだ。今回の事故でも猿ばしごでおりようとしたらしい
降り始めてすぐに意識が無くなっただろうから、猿はしごをつかむ力も無くなり奥へ落ちてしまったのだろう
この怖さを教育で教えるのは難しい。体験型教育で工夫してチッソの怖さを感じさせようとするのだがなかなか難しい
チッソのある場所の管理をしっかりして欲しい。チッソに関わる作業も甘く見ないことだ
協力会社だけで、チッソに関わる作業をさせないで欲しい。発注者側も大事なところには立ち会うなどして関与して欲しい
チッソ(窒素)を取り扱う作業を甘く見ないで欲しい
協力会社を含めてその危険性をしつこく教育して欲しい

 

2022年05月16日

工場火災と初期消火--怖いのは一酸化炭素中毒

火災が起きたときどこまで対応すれば良いかと聞かれることがある
工場火災と言っても色々な工場が。コンビナートの化学プラントもある。屋外にある工場だ。化学物質や危険物を取り扱う
一方、建屋内に製造設備がある工場もある。屋内に機械が配置されている工場だ。でも、原料や潤滑油やなど燃えるものもあるはずだ
事務所火災もある。電気室火災もある
コンビナートの火災であれば、消火器で消せるのは小火程度だ。
運転中であれば、油がにじみ出て火がついたケースもある。保温材に油がしみ込んで自然発火したケースなどだ
配管が腐食して穴が開き、液が噴き出し着火しているケースでは、消火器での初期消火は無理だ
いずれにせよ、一人で対処せず初期消火の前に、通報して仲間を呼ぶことが基本だ
119番して、公設消防力を借りなければ消火は無理だ。自衛消防隊があれば、出動して消防車で初期消火に入ることだ
建屋内に製造設備があるケースでの火災の初期消火は、企業によってルールがあるはずだからそれに従うことになる
とはいえ、初期消火では、状況が急変して煙に巻き込まれることもある
最近ではこんな事故事例もある
https://parstoday.com/ja/news/japan-i66272?msclkid=d6e2886ec6ce11ec9b69a0787810c43c
残念なことに初期消火をしていた従業員2名が命を落としている
よく言われるように、天井に火が移ったら逃げろと言われる
しかし、工場などの天井は、一般住宅と違いかなり高いからこの教訓では限界がある
やはり、炎が自分の背丈を超えてきたような場合は、消火器での対応は難しくなる
自分の背丈の、2倍程度まで炎が高くなったらもう逃げた方が良いと思う
機械装置などに火がつけば、電線ケーブルや潤滑油など不完全燃焼を起こしやすいものにも火がつく
つまり、一酸化炭素中毒を起こす環境になってくる
消防に連絡しても、すぐに来るわけではない。正門に到着してから、誘導などで時間もかかる
火災発生から、10分程度になっているはずである
つまり、消防が来るまで初期消火をやっていたら、一酸化炭素中毒などで命を落とすこともある
一般的に火災が発生して、火災報知器が鳴るまで数分かかる。すぐに、現場に駆けつけても発火して何分も経っているはずだ
そこからの、初期消火では炎は背丈を超えているはずだ。下手に、初期消火で頑張らせると煙に巻き込まれるはずだ
炎が、2~4m程度になったら、とにかく建屋からは出て欲しい。一酸化炭素中毒に巻き込まれないようにして欲しい

 

2022年05月14日

小分けという作業を甘く見るな--空気に触れるリスク

小分け作業という作業がある。小さな分量に分けるという作業である。多くの職場で行われる作業だ
人は「小」という字がつくとたいしたことはないとか、それほど危険性がないと思ってしまう傾向がある。
しかし、小分け作業でもリスクはある。化学物質を小分けするときは、大きな容器の蓋を開けて物質を取りだし小さな容器につめる作業が生じる。
この時、一時的ではあるにせよ化学物質を外に出す。つまり、空気と触れる状態が生じる。
化学物質は一般的に容器に閉じ込めておけば事故の可能性は少ない。しかし、外に取り出すとどうしても空気と触れることになる
そこに着火源があれば、着火したり爆発する可能性がある。
過去にも、小分け作業で多くに事故が起きている。小分け作業を甘く見ないことだ。参考までに、過去の事例を以下のURLで紹介する。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200081.html
この事故は、トルエンを含む液を小分け中に起きた爆発死亡事故だ
移液ポンプ自体は、防爆だった。ポンプのアースは取っていたが、肝心の充填容器は、アースを取っていなかった
容器に液を流し込むときには流動帯電という静電気が発生する。
アースを取っていなかった充填容器で静電気が徐々にたまり、アースを取っていた電位の低いポンプ側へ放電したのだろう
小分け場所では十分な換気も行われておらず、爆発混合気ができていた事例だ
有機溶剤などは、導電性が無いので静電気が発生する上、揮発し易く爆発混合気ができやすい
次の事例は、アクリル酸という重合反応する物質の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000126.html
アクリル酸は、冬場は凝固してしまう。ドラム缶の中に固まったものを使用する毎に電気ヒーターで暖め溶かして取り出していた
アクリル酸は、反応性物質なので反応を防止する為、反応禁止剤がドラム缶内のアクリル酸には添加されていた
ところが何回かに分けて小分けする形で液を取り出したことにより、小分けする毎に、重合禁止剤の濃度が薄まり効果が無くなってしまった
結果として、反応を抑える効果がなくなり異常反応した事故だ
反応禁止剤などが添加されているものなどでは、小分けを繰り返すことで反応防止剤が効かなくなることもおこるのだ
小分けで起こる事故事例も知っておいて欲しい

 

2022年05月12日

ロータリーバルブによる挟まれ巻き込まれ事故--労働災害

労働災害の中で重篤な災害の1つに、ロータリーバルブの巻き込まれと言うのがある
指や手を巻き込まれるのだ。場合によっては指などの切断事故になる
粉や粒状物質という粉粒体を取り扱っているとロータリーバルブという機械装置を使うことがある
この機械は粉粒体を移送するにはいい機械だが時々中で詰まることがある
この詰まったときに良く事故が起こる。詰まれば誰でも内部を点検したくなる
点検するなら機械を停めろが基本だが、これを知らない人は沢山いる。新入社員や経験の浅い人は教育されていないからだ
点検すると言っても単に状況を見るだけならば事故にはならない
人間というのは、必ず手を出そうとする。手を出せば、また正常に回り出すだろうと思い込むのだ
内部で何か引っかかったり、詰まったりしているからそれを取り除けばいいだろうと考えるのだ
機械が動いているケースでは、指を中に入れすぎて巻き込まれる。機械が止まっていても、誰かが動かしてしまうこともある
手を入れてしばらくして機械が動き始めるケースだ
すぐに手や指を引っ込めようとするのだが機械の動きの方が早いので巻き込まれてしまう
指先を切り落とすこともある。指そのものが切断されることもある。奥まで手を入れていれば,手まで巻き込まれる
私も化学企業で約40年間働いたが、災害事例で何度も聞いた。入社当時は、工場で数ヶ月おきにこの災害が起こっていた記憶がある
挟まれ巻き込まれないためには、LTTという安全対策がある
最初にやるべきことは機械が動かないようにすることだ 電気で動くなら,電気のSWを切るのだ。LOCKするのだ
次に、SWの所に表示をするのだ。つまり,目立つような札(Tag)を取り付けるのだ 触るなとか点検中だとかの札だ
最後は、本当に動かないか確かめるのだ。つまり、動かないことを自ら確かめるのだ これを,英語でTRY(試みる)という
この英語のLOCK、TAG、TRYの頭文字3文字を取ってLTTの安全対策という
言い方を変えると、安全には3つくらいの安全対策を同時に取っておかないと事故は防げ無いということだ
ところが、このLTTという概念はあまり日本では積極的に導入されていない。だから、この手の労働災害が頻繁に起こる
機械装置を使うなら,徹底的に挟まれ巻き込まれ対策を取って欲しい

 

2022年05月10日

化学物質の局部加熱で起こる事故--ドラム缶などの容器加熱を甘く見るな

局部加熱という言葉を知っているだろうか。部分的に温度が上がってしまう現象だ
化学物質は、ゆっくりと撹拌しながら均等に温度を上げていかないと事故になることが多い
部分的に温度が高くなると、そこで局部的に反応などが進んでしまうからだ
良く起こる事故では、ドラム缶を暖めるときに電気式のバンドヒーターを使う事例だ
ドラム缶の外側に電気ヒーターを巻き付けて暖める方法だ
温度計はドラム缶上部のキャップを外して入れる方式だから、実際の温度と温度計の示す温度はかなりの誤差が出る
しかも、温度というのはかなりの時間遅れがある。温度計の指示が上がってくるまでには時間がかかる
バンドヒーターを巻き付けた部分は既にかなりの高温になっているのに、温度計の指示はそれほど高くない
それで、まだ温度は上がっていないと勘違いしてしまうのだ
結果として、温度が上がりすぎて反応が始まり火災や破裂するなどの事故事例が沢山ある
こんな事故事例があるので紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000021.html
蒸気で加熱する時でも局部加熱は避ける必要がある
ドラム缶に固まったものを蒸気で溶かしていて事故になった事例を紹介しておく
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=100388
局部加熱で事故が起こることも教育して欲しい
加熱はゆっくりとしかも均等にが原則だ
化学工場でも研究所でも起こる事故のパターンだ
ドラム缶などの容器加熱を甘く見るな

 

2022年05月08日

熱交換器の上から転落--安全教育をイラストなどを使いわかり易く行うことだ

ホ-スを外すときに起こる労災は実に多い
残圧が残っているのに、圧力も確認せずに外そうとして外したときに災害になる事例だ
残圧が残っているかいないかは、やはり現場型圧力計を予め設置して置かなければ圧力はわからない
あんがい、この圧力計を準備し忘れていて起こる事故も多い
もう一つは、もともと脱圧を考えてホースをつないでいるかだ
脱圧弁なども付けずにホースをつないでしまえばやはり、圧力が残ってしまう
私が入社した1970年代はこのホースによる労災が多かった
教育されたのは、加圧するなら、脱圧するときのことを考えて加圧ラインを考えろとよく言われた
どこから、圧を抜くのかを予め考えろと言うことだ
つぎに、現場型圧力計を2つ用意せよと言われた。1つでは、狂っていることもあるからだ
さらに、ホースをつなぐところはできるだけ低い所にしろと言われた
接続するときや外すときの転落リスクを減らす為にだ
今回のイラストは、熱交換器の耐圧気密テスト後に、ホースを外すときに作業員が転落した労働災害だ
十分に脱圧もしていないのに、熱交換器の上のベント弁につないだ窒素ホースを外そうとしていたのだ
窒素ホースの元弁は閉めたものの、弁座の噛み込みでホースにはまだ残圧が残っていた
当然、ホースを外したとたんホースが激しく揺れて、作業員はバランスを崩し高さ1.7の所から地上に落ちた
死亡事故にはならなかったが、肋骨や頸椎を折り、休業60日の労災となった
圧力のかかったホースは、外れると激しく揺れるということは、今であれば安全教育でかなりの人が知っている
しかし、私が入社した半世紀前などは、まだまだ知らないことが沢山あった
今思うに、教育というのは本当に大切だ。こつこつと、安全教育をイラストなどを使いわかり易く行うことだ

 

2022年05月06日

コンビナート事故件数や消防統計--時代により積算根拠は変わる

私が会社に入った頃は、月に何回か工場内で自衛消防車が出動していた記憶がある。一週間に小火が何回というのが今でも記憶にある
火災という定義も今とは違う
小火は火災に入らない。消火器で消せれば、火災としてカウントはしない。当時はそういう解釈だった気がする
企業内の自衛消防隊で消火すれば、消防に通報する必要も無かった。つまり、火災統計には入らない
つまり、今から半世紀前の消防統計は、今の火災という定義と違うから一律に件数の比較は今の火災件数と比較できない
私は、千葉のコンビナートに今から半世紀前に勤めていた。ちょっとした現場の小火は多かった
何で、昔は小火が多かったかというと、それほど多くのガス検知器が製造現場に配置されていなかったからだ
ガス検知器も当時は高価だったので、十分な台数は配置されていなかった
火気工事をするなら、本来事前にガス検をすべきなのに台数もすくなかったので、状況判断で安易にガス検知を行っていなかった
サンダーやドリルによる工事であれば、それほどリスクはないとガス検知器などしていなかった
ところが、かなりの場所で残液や残ガスが残っていてやはり小火が起こっていた
直接火を使わなくても回転部の摩擦熱で、簡単に発火点を超えるからだ
確か1975年という年に、石防法という法律ができた
この法律で、コンビナートで起こる火災や爆発は届け出なくてはならないと定義された
つまり、それ以前は法律で届け出る基準はあまり明確にされていなかったのだ
つまり、企業内での管理が主体だ
統計というのは、データー採取基準が変わればズレが生じる
昔の災害データーと比較するときには、統計を取り始めた時の基本的な考え方をしっかりと調べて欲しい
時代時代により統計のデーター採取基準は変わるからだ

 

2022年05月04日

タンクの爆発事故- 不燃物という文字にだまされるな

タンクの爆発事故を今日は紹介してみたい。爆発で4人の人が亡くなっている
2009/12/24日に、大阪で起こった事故だ。無機系の化学会社で起こった事故だ。
http://celisith.blog109.fc2.com/blog-entry-5.html
タンク内のゴミを掻き出すために、側板をカッターで切断しているときに爆発が起こった事故だ。
タンク内を洗浄する為に安易に水を入れたことがきっかけだ。
このタンクは三フッ化ホウ素といって不燃性の物質を取り扱うタンクだ。
誰でも不燃性という言葉があれば危険物では無いと思い込んでしまう。
ところが、タンクの内壁には生産時に出た副生物が付着していた。スラッジだ。この中には、酸性の物質が存在した。
タンクの材質は、鉄であった。水を入れれば、酸と反応して水素が反応する。
世の中ではわかりきった物理化学現象だがそこの従業員は誰も気づいていなかった。
不燃物のプロセスだからと思い込み、作業前にタンク内の可燃性ガス検知は行わなかった。
タンク内には、酸と水とが反応して大量の水素ができているのに気づかなかったのだ。
そこへ、側板をいきなりカッターで切り始めたのだから火花で突然爆発が起こった。
この事故の教訓は何かと言えば、生産しているものが「不燃物」というキーワードだ。
製品が不燃物であったとしても、中間生成物や副生物が全て不燃物とは限らない。もしかしたら、製造過程の一部では可燃物も存在する。
製品が不燃物だからという思い込みで起こっている事故は多い。火気を使う工事を行う前には、ガス検知は絶対行って欲しい。
製品が不燃物であろうとガス検知は事故を防ぐ最低限の作業項目だ。事前のガス検知を行っていさえすれば死ななくていい事故は多いからだ。
火を使う工事や、カッターなどで火の粉が出るならガス検知はしつこいくらいに行って欲しい
金属と酸性物質が存在すれば、水素などの可燃性ガスが発生する恐れがかならずある
工場は金属だらけだ。しかも酸性物質も存在する。水素の発生も甘く見ないで欲しい

 

2022年05月02日

ポンプの締切運転が引き起こす事故--急激な温度上昇

ポンプに関連する事故事例は多い
今回は、ポンプの締切運転の事故事例を紹介する
危険物保安技術協会が、こんな事故事例を報告している
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/188/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
事故の概要はこうだ
ポンプの配管ルートを変更した際に、配管内に仕切り板が挿入されているのに気がつかなかった
ポンプを動かし、そのまま運転を続けていたところ、ポンプ内で温度上昇が起こり5時間後にポンプのシール材が焼損し油が漏れだした事故だ
5時間の締切運転でポンプ内の液体温度は、250度くらいまで上昇したようだ
ポンプは、吐出側の弁を閉めて締切運転をしたときに急激に流体の温度が上昇するのをご存じだろうか
昔、エネルギー保存の法則というのを習ったはずだ
通常ポンプに加えられたエネルギー(電力)は、液体を流すのに使われる
電力というエネルギーが、液体を動かす運動エネルギーに変わるわけだ
普通に液が流れていれば、電力は運動エネルギーに変わるので液温があがることはほとんど無い
ところが、ポンプを締切運転のような状態にすると、電力は運動エネルギ-に変換されない
つまり、ポンプ内に閉じ込めた液体の、温度を上げる為の熱エネルギーとしてせっせと加えられた電気エネルギーは消費される
締切運転をすることで、ポンプは電気ヒーターのような役目をしてしまうのだ
5.5KWのポンプで、ポンプ内に閉じ込めた液が10Lであれば1分間に4度あがるという、計算事例もある
時間に比例して温度は上昇する。たとえば、10分ならその10倍の40度になる
ポンプの電力量、効率、液の閉じ込め容積などがわかれば、温度上昇は理論的に計算できる
http://energy-kanrishi.com/pump-j/
とにかく、締切運転を長時間続ければ温度は確実に上がることを知っておいて欲しい
ポンプの締切運転は、急激な温度上昇で事故につながると知っておいて欲しい
今回は流体が、重油だったので発火点を超え火災になった
流れているものが、過酸化物などの爆発性のものであれば、爆発にもなる
ポンプの締めきり運転の危険性はしっかりと、繰り返し教育して欲しい

 

2022年04月30日

高度保安力強化という言葉の陰に隠れているもの

昨今、化学工場では高度保安力強化などの言葉がよく使われている
コンユーター技術などを積極的に使って保安力、すなわち安全の確保を図ろうとしているのだ
背景には、コンビナートなどでの化学工場で、新人の採用が難しくなってきているという
24時間勤務で働く化学工場の運転員の採用がそもそも難しくなってきてるというのだ
昔のように、現場で働いてくれる人が少なくなってきている
コンピューターなどのソフトウエアーの業種に人が移動しているのだ
結果として化学工場で働く運転員の確保が難しくなっている
そこのすき間を埋めようとして、色々な努力が払われている
1つの選択肢は、コンピューター技術でそれを補完しようとする考え方だ
いい考え方であるが、それはなかなか難しい
人は無限の考え方ができる
しかし、機械は過去に経験したことしか判断の根拠を持つことは出来ない
応用問題を解けるのは人にやはり優位性はある
とはいえ、IOTなどの技術活用は避けて通れない
この技術を取り扱える人材をいかに増やすかは企業の存亡に関わる
AIやIOT人材の育成計画については、きちんとESGという切り口で見て欲しい
短期的に育成できる課題ではない
企業がいかに長期的視点でものを見ているかも評価要素だ
安全というのは、いかに長期的視点でものが見えるかだ

 

2022年04月28日

安全弁の放出先は大気開放でいいか-海外グループ会社の安全管理

安全弁や破裂板は必ず作動したときにガスの放出が起こる
放出先は大気開放とすれば手間もかからない。しかし、可燃性ガスや毒性ガスであれば設計はそれでいいのだろうか
可燃性ガスであれば、着火源が無ければガスが安全弁から放出されても火がつくことはない
時間の経過とともに希釈されて安全上のリスクはなくなる
そうは言ってても、大気に放出されれば近くに着火源があれば火がつくはずだ
かなり放出先を高所に設置したとしてしてもガス密度によっては、ガスが地上近くに降りてくることもある
たまたま地上で火気工事などをしていればあっという間に火がつく。先日ネットを見ていたら、そんな事故がアメリカで起こっていた
この記事では事故の深層はわからないのだが、更にネットで英文記事を検索していたら事故の深層がわかってきた
英文ではあるが、こんなレポートがある
https://www.csb.gov/assets/1/20/csb_kuraray_factual_eng06.pdf?16387
この英文を要約すると、スタート中に反応器の温度制御がうまくいかなかった
温度上昇で反応器の安全弁が吹いた。安全弁出口は大気放出型で、エチレンという可燃性のガスが大量放出された
安全弁の近くでは、多くの協力会社が作業をしていて、火気工事をしていた作業者の火でこの放出された安全弁のガスに火がついた
あわてて作業員が逃げたものの大やけどをしたり、高所から飛び降りた人が多数怪我をしたというのだ
事故の背景には、反応器の除熱装置を変更したという記述がある
この除熱装置を、事前に性能テストしていたかの記述はないが、変更管理も関連する事故のようだ
除熱装置の能力確認も、スタート前にうまく確認していなかったのかも知れない
とはいえ、ものすごく簡単に火がつくエチレンというガスを取り扱っているのに安全弁の出口が大気開放というリスクが大きい
安全弁の大気開放が引き起こした事故だ。このアメリカの企業は、日本の企業の関係会社だと言うこともわかった
事故の発生により企業は、損害賠償を従業員から請求され結局数百億円で従業員側と和解したという
化学プラントをつくるときのリスクマネージメントは、海外事業展開でも甘く見ないことだ
さらに、スタート時に協力会社員を安易にプラント内に入れないことだ。
スタートアップ時の火気工事はリスクが高い。安易に許可すれば、こんな事故も起こると言うことだ。
火災や爆発が起これば重大な労働災害になる。日本の企業も海外に多くの事業展開をしている
海外グループ会社の安全管理も厳しく目を向けることが求められている

 

2022年04月26日

事故や災害に思う-約20年前の自分が経験した事故に思う

今から約20年前の2001/4/23当時勤務していた工場で爆発事故が起きた
朝の10時頃だ ものすごい音がしてキノコ雲のような煙が見えた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012016.html
圧縮機の中で爆発が起きた事故だ
支燃性のガスで半導体の製作時に使われるガスだが、海外ではロケットの燃料にも使われる可燃性ガスだ
火がつけば爆発することもあるガスだ
このブログを始めたきっかけの事故でもある
化学物質の持つエネルギーのすごさを始めて感じたのがこの事故だ
2009年にもこの工場で爆発事故があり、この時は爆発の時の写真がある
https://blog.goo.ne.jp/kecha2/e/298b4c68506f900af25742d149b5a723
化学物質の持つエネルギ-を会社にいて感じるのはいかに難しいかこの事故を経験して始めてわかった
試験管ベースでも爆発すればすごいエネルギーだ
ドラム缶や化学工場のタンク規模になればとんでもないエネルギーだと気づいたのがこの事故だ
事故は経験しなければわからない 特にその化学物質のエネルギーのすごさは文字では表せない

事故の怖さを伝えるのは本当に難しい
なぜなら、事故の恐怖心を文字で伝えるのは難しいからだ
炎や爆風の衝撃音を文字では書き表せない 驚きという感情も、文字で表現するには難しい
技術伝承の難しいところはそこにある
事故を自ら経験した人にしか事故を伝えるのは難しいからだ
体全体で表現していかないと、経験した事故は表現は難しい
これからも機会ある限り事故の悲惨さを伝えていきたい

 

2022年04月24日

反応器の冷却能力は十分か--事故や災害に思う-約10年前の事故に思う

今から10年前の今日(2012/4/22)当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起きた  まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔はそうでは無かったのかも知れないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう
自分のプラントの冷却能力を検証して欲しい
事故のリスクを減らすために、反応器の冷却能力を上げることも考えて欲しい
冷却能力不足で起こる事例は多いからだ

 

2022年04月22日

新規製品開発時のリスクマネージメントの難しさ--DX技術の活用

企業では常に新規製品の開発が求められる
高付加価値の製品が求められるからだ
開発の難易度が上がれば上がるほどプロセス上のリスクも増える
企業には、新製品開発時の安全性評価システムはあるが、難易度が上がってきている昨今それをどう運用しているかだ
安全性評価システムを作った人は、考えに考えてシステムを作り上げた。しかし、つくった人はもう企業にはいないだろう
時代が変化すれば、世代交代があるからだ
運転マニュアルもそうだ。運転マニュアルを作った人は、行間まで読み取ることができる
しかし、運転マニュアルを渡された次の世代の人達は、マニュアルに文字で表された部分しか読み取ることができないからだ
安全性評価システムも同じようなことが言える
文字に書かれた部分は、必ず事故やヒヤリなどの教訓から生み出されたものだ
ところが、過去の事故やヒヤリ情報が解説に書かれていないことが多い
結果として、書かれている言葉の背景もわからず安全性評価が行われるようになって行く
形だけの安全性評価だけで終わるようになる
これまでに無い製法や条件や生産するのだから、リスクの抽出を誤ると事故になる
運転限界値や混触、副生物など慎重に評価する必要がある

文献だけで評価すると事故になることも多い
少量でもいいからサンプルを作り、実験や熱分析をしておくことも大切だ
とはいえ時間は限られているはずだ
開発が始まってからでは遅い
こつこつと常日頃から、情報を集め整理して持っておくことだ
ドラえもんのポケットのように、さっと情報が出てくる仕組み作りも大切だ
DX(デジタルトランスホーメーション)という活動を企業でしているなら、事故や災害の情報をどう効率的に取り出せるかも検討して欲しい
DXの技術を保安防災や労働災害防止に生かすことも考えて欲しい

 

2022年04月20日

HAZOPの限界--HAZOPは万能では無い-単一故障を前提

化学工場の安全性評価手法としてHAZOPというものが使われる
運転条件から、ずれが起こったときどんな危険な状況が起こるかを事前評価するのに、このHAZOPが使われる
化学プラントで、温度や圧力が正常値よりずれたときどんな悪いことが起こるかを評価することによって事故を未然に防ぐことができる
HAZOPの基本的考え方は、ズレだ。
流量がずれたらどうなるのか。温度がずれたらどんな悪いことが起こるのか。圧力が上がったら問題が無いのか
液面変動でどんな悪いことが起こるのかなどを考えるのだ。反応器であれば、温度が上がれば反応暴走になる
ならば、異常に気づくために温度警報はあるのかなどを検証する。異常に人が気づけなければ事故に未然に対応できないからだ
さらに、異常に気づいても人がすぐに対応できるのかを考える。時間的に余裕がなければ、安全弁やインターロックの設置も必要だと考える
しかしHAZOPで、色々検討しても全ての事故の可能性を見つけ出せるかだ。HAZOPをやる人の能力にかかわってくるからだ
色々なトラブルを沢山経験していれば、想定されるかなりの確率で事故は考えられる
しかし、事故の経験が少なければ全ての事故要因を引き出せるとは限らない
つまり、HAZOPを実施しても所詮HAZOPを実施する人の能力や経験に左右されてしまうのだ
HAZOPは万能では無い。手法だけを学ばせていても事故は防げ無い。そこに難しさがある
HAZOPの基本的なやり方は、シングルフェイラーを想定するという方法だ。単一故障を前提に考えるのだ
シングルフェイラーとは、計器などが一つだけ故障した場合を想定するやり方だ
複数の計器などが同時に故障すると想定すると、検討にものすごく時間もかかるので、HAZOPでは計器は一つだけ故障したという前提で考える
しかし実際の事故では、2つ以上のミスが同時に発生して事故の連鎖が起きる
例えば、最初に出た警報を見落とし、次に時間が経ってから出た次の別の警報も聞き漏らす
さらに、別の警報は出たのだが、対応に手間取りそれも見落としてしまうケースもある
さらに、途中で交代時間になってしまい、これらのトラブルも次の交代メンバーへ情報が引き継がれずそのまま事故の連鎖へとつながる
HAZOPで警報があるからといって安心しないことだ
警報は見落とすことがある。警報を見落としたら、次に異常に気づく手段はあるのかを必ず考えて欲しい
異常に気づく手段が1つだけでは、事故の確率は高い
少なくとも、2つ以上の異常に気づく手段があるか必ず検討して欲しい
HAZOPでは常に最悪の事態を考えながら、検討することが求められている

 

2022年04月18日

変更管理の運用は難しい  変更管理に関する文献を紹介

変更管理は大切だと世の中で言われているものの、残念ながら「変更管理」について書かれた書籍は今のところお目にかかったことは無い
私が講義している、化学プラントの事故防止実践講座でも、変更管理も講義テーマにしている
https://www.ccjc-net.or.jp/~ccji-pj/s2.html
https://www.sangishin.com/kougi/detail/190
一時間しか枠が無いので、講義では情報が不足するところもある。私のブログを使って情報を補っておきたい
変更管理に関する文献を紹介しておく。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/advpub/0/advpub_JOSH-2014-0006-SHI/_pdf
労働安全衛生総合研究所の島田さんという人が書いている文献だ。化学プロセス向けに「変更管理」で考えるべきポイントを書いている。
とても良い文献なので一度は目を通して欲しい。
化学工学会に安全部会というものがある。そこで変更管理について検討を行ったときの資料もある。2009年から2012年にわたって検討されたようだ。化学講学会に参加している人は参考にして欲しい。
http://www2.scej.org/anzen/security/files/pdf/TR43.pdf
化学プラントの爆発火災災害防止のための変更管理の徹底等についてという2013年に出されている厚生労働省の通達がある。
これも一度は目を通しておいて欲しい。
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-54/hor1-54-26-1-0.htm
変更管理の運用で難しいのは、これは「変更」だと各人が考えてくれなければ、変更管理のテーブルに乗らないからだ
テーブルに乗らなければ、それから先へは進まない
変更管理の運用はむずかしい

 

 

2022年04月15日

空気を圧縮する圧縮機の事故--古くなった潤滑油は簡単に火がつき爆発することもある

燃焼の三要素が成り立てば火がつくと言うことは誰でも知っている。
潤滑油を使う空気圧縮機であれば、空気と潤滑油という燃える物が存在することになる。
後は、着火源があれば当然火がつく。
着火源は何かと言えば、潤滑油などの油かすなどがたまっているからだ。それが空気で酸化されて酸化熱という熱が発生する。
その熱が、じわりじわりとたまっていく。
いわゆる蓄熱という現象だ。酸化熱で数百度くらい迄温度は上がるから十分火がつく。
空気圧縮機で、長いこと出口配管などにたまっている潤滑油などを清掃しないで放っておくと爆発事故を起こすことがある。
空気は、常圧ならばそれほど着火しやすいとは言えないが、圧力が上がれば上がるほど火がつきやすくなる。
高圧の空気圧縮機なら、ものすごくこの潤滑油の着火に注意を払う必要がある。
過去起こっている、高圧空気圧縮機の事故が以下のURLで紹介されている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000196.html
潤滑油会社のホームページにも、潤滑油に関する事故のメカニズムが載せられている。
わかりやすい内容なので一度見て欲しい。
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0706.php
ここで言いたいのは、潤滑油は燃えると思って欲しいのだ。古くなって劣化した潤滑油は、新品とは違い燃えやすくなる。
更に、空気を圧縮する装置は、高圧の空気が存在しているのだから燃焼の3要素を十分に満たしていいる。
もし、高圧の空気圧縮機を使っているなら出口配管などに油かすが溜まっていないか定期的に点検して欲しい。
火がつくだけなら良いが、場合によっては爆発的な燃焼を起こす。潤滑油で爆発が起こることもあるのだ
デトネーションと呼ばれる激しい爆発現象だ。配管の中を音速以上の速さで爆発が進行する現象だ
https://kotobank.jp/word/%E3%83%87%E3%83%88%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-101191
潤滑油恐るべしである。
潤滑油は常に点検すること。時間がきたら新品に交換すること。劣化した潤滑油のかすなどは清掃して取り除く努力を惜しまないで欲しい
高圧の空気、古くなった潤滑油にも関心を持って欲しい
高圧の空気は特に危険だ。高圧の空気は強力な酸化剤になると考えて欲しい

 

2022年04月13日

マンホールを開けることで起こる事故

化学工場でマンホールは沢山使われている
中を見る為に使われることもある。中に物を投入するために使われることもある。中から物を書き出すときにも使われる
ドラムやタンク、タワーなどあらゆる装置にマンホールは設置されている
マンホールがあれば、必ずそれを開ける作業がある。それが危険につながることは実に多い
マンホールというのは蓋のことだ
装置のフタを開ければ、そこから必ず空気が入り込む
この空気が入り込むというのが事故につながるのだ
化学工場には可燃物は沢山ある。しかし、可燃物があるから火災になるわけではない
燃焼の3要素という、条件が全て整ったとき火災になる
燃焼の3要素とは、空気、燃える物、発火源の3つだ
化学工場であれば、燃える物は沢山ある。発火源は、溶接の火の粉や蓄熱という温度のあるものだ
装置などは普通、マンホールは閉じられている。
ところが、原料や触媒を装置の中に投入する時はやはり蓋を開けることになる
つまり、マンホールを開けるのだ。その時、当然あけたマンホールから空気が入る
空気が装置の中へ入ると、何か燃えるものがあれば、何らかの着火源で火がつく。つまり、火災が起こるのだ
マンホールを開けるというのは、空気が入るのだから火災になると考えて欲しい
ところが、マンホールを開ければ火災になるかもと考えつくれる人は皆無に等しい
だから、マンホールを開けたときに火災が沢山起こっている
マンホールを開けたら空気が入り、燃焼の三要素が成り立つんだと思って欲しい
マンホールを開けることは、火災のリスクがあると考えて欲しい

 

2022年04月11日

新入社員への安全教育--やってはいけないことから教えよ

4月は新人を受け入れる月だ。若手が入ってくる季節だ
技術は人から人へ移っていって企業は成り立つ。技術伝承無くしては企業の存在はない
教育にどこまで力を入れているかで企業の存亡は変わる
技術は自然に伝承されるものでは無い。計画的にしかも、意図的に技術伝承しなければ技術は伝承されていかない
次から次へと新しい技術もある。それを含めて毎年技術伝承のブラッシュアップが必要だ
企業は新人へは沢山教えたいという思いがある
しかし、教育というのは沢山教えればいいわけではない
人が吸収できる情報には限りがある。単位時間あたり、吸収できるのはわずかだ
高齢の経験豊かな人が講師になると、とにかく沢山教えたいと思い、いろんなことを新人に話し出す
これは、大間違いだ。経験豊かな人は、講師に向くとは限らない
なぜなら、新人目線でものを考えていないからだ
とにかく自分の目線で話すから、新人はなかなか意図が理解できない
結局、何時間の話をしても新人は消化不良で終わってしまう
新人教育を原点から考え直して欲しい
生徒が理解して吸収できなければ、時間の無駄だ
生徒の目線で、とにかく教育は考えて欲しい
新人への教育で最初にやることは、やってはいけないことを徹底的に教えることだ
大けがをしたり、命に関わることを最初のテーマにして欲しい
学校教育では、命に関わるようなことは教えていない
企業に入れば、命に関わることは沢山ある
入社したら、まず命に関わることに焦点を当て教育して欲しい
工場というのはエネルギーの固まりだ
エネルギーを甘く見るから、労働災害や化学災害が起きる
新人には、危険なことが何かをまず教えて欲しい

 

 

2022年04月09日

非金属製シュートで起こる発火事故

工場で品物を投入したり、排出しようとするとシュート(シューター)と呼ばれる道具が使われる
例えばタンクや反応器の中へ原料や触媒を投入する時にもシュートが使われる
出来上がった製品を,装置から抜き出すときにもやはりシュートが使われる
斜めに傾けて製品などを下に送り出すのだ
シュートを使う時に必ず材質を考えて欲しい
軽いのが誰でも好まれるので,塩ビなどの樹脂製シュートが使われることが多い
金属製であっても,軽量化のために表面はポリエチレンなどの樹脂でコーテングされているシュートも使われる
シュートが金属製であれば事故は起きないのだが、プラスチックなどの非金属や,樹脂ライニング製シュートで事故は起こる
樹脂を使えば非導電性だから静電気が発生する
わずかに可燃性の物質が存在すれば,発生した静電気で着火火災となる
樹脂でできたシューターならー静電気は数万ボルトも発生することがある
静電気で着火するのは,数千ボルトもあれば足りる
過去に多く起きている事故は,プラスチックを使ったシューターで原材料を入れていたり,製品を抜き出しているときに起こっている
事故が起きてから,実施している安全対策はシューターを金属製にしてアースを取るか導電性のあるシューターに取り替えるかだ
たかが,シューターと甘く見ないで欲しい
シューター部では必ず摩擦やこすれが起きる。非導電性材料であれば必ず静電気が発生する
静電気は着火源だ。可燃性蒸気や燃えるものがあれば簡単に火がつく
投入や搬出用シュートの材質をしっかり考えて欲しい
金属製で無ければ,静電気などは逃がせない。わずかでも可燃性の物質を取り扱うなら,非金属シューターは使えない
危険物や有機溶剤など多くの場所で使われているはずだ
導電性のあるシューターを使わなければ発火事故は起こる
自分の工場にある,シューターの材質が静電気が逃がせる物か検証して欲しい
石油、化学、金属加工、電気などあらゆる業種でシューターの材質が適切か点検確認して欲しい

 

 

2022年04月07日

商業化でのスケールアップの比率の許容限界はいくつか

実験を重ね商業化していくには、スケールアップしていくことになる
試験管ベースでうまくいっても、量を増やせばうまくいくという保障は無い
化学反応を伴う物質であれば、反応熱を考慮に入れる必要がある。反応容器を大きくすればするほど、冷えにくくなる
異物の考慮も必要だ。装置を大きくすれば思わぬ異物も入り込んでくる
異物混入の事故事例も多い http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000125.html
混触反応のリスクも増えていく
冷却能力不足も致命的事故になることもある http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200004.html
スケールアップで反応器などの容積が増えても、単純に冷却に関与する表面積が均等に増えるわけでは無い
反応熱に関係する体積は3乗で増えるが、冷却などの配管表面積は2乗でしか増えないからだ
スケールアップすれば、撹拌と冷却能力もバランス良く増やす必要がある。それを失敗すれば事故になる 
では、スケールアップは、どのくらいいの比率で進めていけば良いかだ
2倍なのか、5倍なのか、10倍なのか、50倍なのか、100倍なのかだ
数字が大きくなればなるほど、リスクは大きい
では、数字の大きい方で失敗した事例を紹介しておく
https://www.csb.gov/mfg-chemical-inc-toxic-gas-release/
スケールアップ比率で考慮すべき数値は、色々な情報から考えるに
1度に行うのは、最大1桁アップまででは無いかと感じている
プロセス危険性により変わるが、中試験ベースでも10倍毎くらいでスケールアップをするのが安全領域かと考える
こんな書籍も世の中で売られているので参考にして欲しい
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I023971472-00
スケールアップに存在するリスクを甘く見ないで欲しい

 

 

2022年04月05日

たかが塗装と思うな--下地処理が大切

工場で腐食を防止するために塗装が行われる
塗装というのは地味な作業だ。さほど重要では無いと考えられてしまうが塗装は、工場を長らえるための重要なキーファスターだ
過去の事故事例の中でも、塗装が関係する事例は多い
工場の中で使われる金属は大部分は鉄だ。鉄は安いから大量に使われる
しかし、鉄は腐食されるという問題点がある。雨に濡れれば簡単に腐食する
それを防止するには、塗料で塗装する必要がある
ペンキを塗るということなのだが、甘く見ないで欲しい
ペンキはただ塗ればいいわけではない
新設配管でのペンキ塗装でも注意が必要だ
とにかく、早く塗って欲しい。時間が経つと配管正面に錆や油かすが付着するからだ
錆や油分があると、ペンキ塗装してもしっかりと塗装が密着しないからだ。塗膜が浮き上がってしまうのだ
塗装が浮き上がった状態になると、塗装が徐々に浮き上がり、時間が経つと簡単に剥がれてしまう
塗装は、しっかりと配管などの本体部に付着しないと効果は無いと思って欲しい
新品の配管の塗装の時は、特に溶接部に気をつけて欲しい。溶接部は、薄い酸化皮膜がある
溶接部は、この酸化皮膜をブラシで取り除いてから塗装しないと、塗装が簡単に剥がれてしまう
配管表面の錆などの部分を取り除くことをケレンという
塗装というものは、しっかりと塗装を密着させるためには、配管表面などにある油や異物を事前に取り去る必要がある
すなわち金属表面上をきれいにしておく必要がある
塗装の基本は、下地が大切だ。塗る表面を以下にきれいにできるかで塗装の質が変わる
たかが塗装と思わないで欲しい
少々高くてもしっかりした塗装業者を選ぶことが安全につながる

 

2022年04月03日

ガス検知器が大量に鳴ったら--近隣企業のガス放出

運転中大量に,自社の工場のガス検知器が鳴ったらどう対応するかだ
こんな事故事例がある。2013年5月13日の鹿島コンビナートでの出来事だ
鹿島コンビナートにある化学工場のガス検知器が一斉に作動した。多くのガス検知器が鳴り始めたのだ
誰でも自分の工場のガス漏れと考えるはずだ
ところが、原因は近隣の工場で夜間に可燃性ガスを密かに放出していたためだった。夜ならわからないだろうと放出したのだ
風向きによって流れていく方向は違う
可燃性ガスの放出だったため、この時は風向きの影響で近隣企業のガス検が鳴ったのだ
放出していた、近隣工場から事前に放出の連絡を受けていなかったためあわてて消防に通報した
その後、時間が経ってから鹿島コンビナート内にあるM社のガス放出の影響とわかったがいい迷惑だった
ガスを放出したのは、コンビナート内の大手化学会社だ
たいしたことは無いと思って放出していたのだろうが、ガス放出は近隣企業のガス検に影響を与えることもある
安易なガス放出が引き起こした出来事だ
幸いにして自社のガス漏れでは無かったが、他社の無断のガス放出で迷惑を受けた事例だ
時に、一斉にガス検知器が鳴ったらコンビナートでは自社だけの問題では無いこともある
ガス検が鳴ったら地元消防機関にも伝え、近隣工場でのガス漏れも想定すべきだ

コンビナートは企業が密接している
何かをすれば、自分だけの問題では無いと考えよ
大量にガス検が鳴ったら、自社だけの問題では無いとも考えよ。近隣企業のガス漏れの可能性もある
近隣企業から影響を受けていることもあるかもしれないと考えて欲しい
わからないだろうと安易に思って、可燃性や毒性ガスの放出を行わないことだ

 

2022年03月31日

多目的プラントで起こる事故-混触による反応暴走--熱分析の大切さ

一つの反応器で色々な製品をつくることがある。多目的プラントとかマルチパーパスプラントとか呼ばれる
少量多品種の化学物質を生産することができる利点がある。しかし、気おつけないければいけないのが残渣だ
色々な化学物質を造るのだから、製品が変わる。都度都度反応器や配管などを洗浄する必要がある
化学物質には混触という反応がある
物質の組み合わせによっては激しい化学反応が起きる。このような現象を混触と呼ぶ
物質によっては組み合わせがまずいと、大爆発を起こすことがある
つまり、多目的プラントなどでは前に製造した製品の残渣などが残っていれば、このような混触反応を起こすのだ
昔大阪のある化学工場でこの多目的プラントを使っていて製品を造り始めて数バッチ目で大爆発を起こしたことがある
原因は前バッチで製造した物質が、わずかにフランジのすき間にに残っていて激しい混触反応を起こしたのだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200079.html
新しい製品をつくるときの、残渣など異物による混触反応を十分検証していなかった事故だ
もう一つの問題点は、反応器内の温度計不足だ
反応器の上の方には温度計が無く、激しい自己分解反応が始まったのを早期に検知できなかったことだ
過去の事故事例の中に温度計の設置個数が少なく異常を早期に検知できなかったという事例は多い
反応器は、しつこいくらいに温度計を設置して欲しい
特に、冷却コイルの無い部分には温度計を十分に設置することだ
過去の多くの事故事例も冷却コイルの無い部分で温度が上がっていたのに、温度計は上の方には付いていなかったというケースは多い
多目的プラントに使う反応器なら、温度計はしつこいくらいに付けて欲しい
この事故の教訓の中に、反応暴走に対するアセスメントが不十分というコメントがある
反応暴走の可能性のある物質は、DSCやARCなどの熱分析計で事前チョックできる
少量のサンプルをこの分析計の中に入れ、少しずつ暖めていき熱変化を見るのだ
どのくらいの温度から、急激な温度変化が現れるのか。反応に伴う発熱量はいくらかなどが分析できる
化学物質というのは文献データーだけではわからないことも多い
実際ににサンプルを使って反応熱や反応開始温度などの安全性分析をすることも大切だ

 

2022年03月29日

停電というトラブルに対してリスクアセスメントの難しさ

停電は事故の引き金になることがある リスクアセスメントで重要なキーワードだ
停電が起これば、色々なことが起こる それが引き金になり、トラブルの連鎖が続く
それに対応できなければ、事故という形になる
では、停電という言葉を考えたとき、停電の持つ意味は多様だ
停電といっても、全停電もある。部分停電もある。停電の発生する範囲の違いにより、リスク想定は大きく変わる
停電形態もいろいろある。非常に時間的に短い瞬時停電もある。数秒の停電もある。数時間の長期停電もある
このように、どんな事態を想定するかも必要だ
停電時間が短いから安全というわけでは無い。瞬時の停電でも、コンピュ-ターには影響を与える。制御が停まってしまうこともある
化学プラントで制御が停まることは致命傷だ。瞬時停電でも問題が起こらないように、バックアップ電源を設置しておく必要がある
バッテリーバックアップは、コンピュータに不可欠だ。
停電も、全停電なら安全に停まるケースもあるが、部分停電だと想定外のところが動いていて対応に失敗する事例もある
例えば、部分停電で反応系の所は動いていたが、反応系の冷却ポンプは停電して動かなかった事例だ
反応装置は動いていたが、冷やせなかったケースだ。やはり、部分停電は想定が難しく怖いケースだ
こんな事故事例がある。停電で引き起こされた事故だ。
名古屋の製鉄所で、停電が原因で何回もトラブルを起こした事故だ
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20141125_200_01.pdf
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20141125_200_02.pdf
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20141125_200_03.pdf
この停電事故の連鎖を一度報告書を通して読んでみてみてほしい
事故の深層には、設備の全体を把握できる技術者が企業にいなくなってきていると書かれている
つまり、設備というものはどこかを改造すれば、どこかに影響が出る。
どこにどのような影響が出るかを見抜けなければ、このような停電事故になるということだ
電気という設備は色々な電源系統が関与している。それら全体を理解してリスクアセスをしなければいけないのだ
更に、最近は企業にいる電気の技術者が極端に減ってきている
化学工場もしかりだ 電気トラブルが起きたらどのようになるのか、一度話し合ってみて欲しい

 

2022年03月27日

脱液作業で起こる着火事故のパターン--静電気や流速過大

脱液作業というのは、液をバケツなどに抜き出す作業だ。可燃性の液であれば、着火することがある
この脱液は、作業頻度も多い。特別な技量も必要としない、簡単な作業とみられている
結果として、脱液時の着火事故は実に多い
燃えるものが存在して、周りに空気があり、何らかの着火源があれば燃焼の3要素が成り立つからだ
脱液時の留意点は、しつこいくらいに教育しなければいけないのだが、脱液は簡単な作業だからと甘く見られている
着火事故のパターンで多いのが、アースを取らなかっただ。静電気で火がつくこともあるのに、アースを怠ったケースだ
流速も事故の原因だ。速く作業を済まそうと、バルブを大きく開けて液を抜き出すことをすれば大量の静電気が発生する
あっという間に火がつくことになる
流速は1m/s程度でちょろちょろと流すのが基本だ。配管の太さと流出液の太さが同じか、少し細めに液を出すが目安だろう
ドレン弁を開けすぎて、出口から液が霧状にほとばしる状態であれば、大量の静電気が発生している
あっという間に火がつくのは当たり前だ
もう一つの事故のパターンは、バケツの仕様だ
プラスチック製のバケツは、静電気を逃がすことができないから使ってはいけないのに使うケースで事故が起きる
理由を聞いてみると、近くに金属製のバケツがなかったからという単純な原因がほとんどだ
可燃物を取り扱う工場では、プラスチックのバケツを置かないことだ。ちょっとだけなら良いだろうというのが着火事故につながっている
金属製のバケツを使っていても、着火事故が起こることがある
バケツの取っ手が、プラスチックのタイプだ
取っ手をどこかに引っかけて、アースは取らなかったというパターンだ
プラスチックの取っ手がついた、バケツの着火事例も多い
脱液時の着火防止教育はしつこいくらいに、イラストなどを上手に使って教育して欲しい

 

2022年03月23日

弁の分解点検時起こる事故-液だまり

弁を分解点検する作業は沢山ある
弁を取り外してくるときに注意しなくてはいけないのは液だまりだ
危険な流体が流れていれば、外す前に洗浄することが必要だ
見える範囲の内部はきれいに洗浄できても、弁によっては、構造上液だまりという部分がある
例えばボール弁だ。ボール弁は外すときに半開状態で取り外すのが一般的だ
半開だと液だまりができないからだ
ところが、この液だまりという現象を知らない人は、全開状態で外してしまう
そうするとポケット部ができてしまってそのすき間に液が入り込んでしまっているのだ
それでも、弁を外したときに分解する前に弁を半開にしてポケット部の洗浄をしてくれればいい
でもたいていは、この液だまりを残したまま分解点検などのため修理場に持ち込むことがある
修理の作業員も、この液だまりという現象を知り尽くしているベテランならいいが若手は知らないことがある
弁を分解点検し始めたときにいきなり液が流れ出てきてあわてるのだ
可燃物の液なら、着火源があれば火がつくことになる。冬場、作業場にストーブなどが燃えていて火がつく事例は多い
硫酸や塩酸などの薬品なら、薬傷を起こす
ガスなら火がつくこともある。
有毒なガスは中毒を起こす
夏場の点検時などでは、屋外に液だまりのあるボール弁などを放置しておくと液だまり部で液封が起こってることもある
屋内に弁を入れて作業を始めようと弁を少し動かしたときに液が急に液封部から飛び出してくる
弁の構造を教育するときは、この液だまりが起こるポケット部について必ず触れて欲しい
ボール弁のカットモデルなどを使うとわかり易い
できれば、目の前で液だまりを体験させて欲しい

 

2022年03月21日

東北で最大震度6強の地震-地震は繰り返す

2011/3/11に起きた東北大震災からもう11年になる。私の住んでいる千葉県でも地震の時はかなり揺れた
そんなことを考えていた矢先、昨日の夜に再び大きな地震が起きた。自宅の2階にいたがかなりの揺れだった
地震速報では震度4と言っていたが、かなりの揺れだった。
千葉に住んでいると年中地震が来るのでかなり慣れているが、今回はやはり柱につかまった
長周期型の揺れだった
昨年の2/14にも、東北で東北大震災の余震-最大震度6強が起こっている。その時よりは、今回揺れは多いと感じた
今日家の中を再び見回してみると、書籍棚の扉がやはり半開きになっていた
棚類などは全て固定してあるのでなんともなかった。今回の地震は、東北地方では震度6強という報道が流れていた
津波は小さかったのは幸いだ
去年の地震の時は、千葉の姉ヶ崎地区のコンビナートのフレアーの火はかなりの炎が出ていた
コンビナート企業の化学プラントが停止していたからだ
大手の総合化学企業だ 地震で電力供給が落ちて安全のため停めたらしい
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00588242
今回の地震の被害は、まだ詳細には把握していないが、やはり東北地方や関東地区のの火力発電所は多数停まっているようだ
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220317010/20220317010.html
今回は、新幹線が脱線したという情報には驚いた
震度6強とはすごいガル数(加速度)になるということだ
http://blog-imgs-93.fc2.com/j/u/n/junskyblog/20160422134800bd4.jpg
東北大震災からもう11年も経つのに余震なのだろう。毎年大きな余震が続くということだ
大自然から見れば11年というのはホンの一瞬なんだろう

 

2022年03月17日

空気と窒素を間違えて起こる事故--酸欠

窒素と酸素を間違えて起こる事故がある
エアーラインマスクというのがある。密閉された空間などに入るときの保護具だ
マスクには常時空気が送られて、人が安全に呼吸できるようにする装置だ
ところが、誤って窒素を送ったため酸欠で死亡した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200060.html
本来は、工事の責任者がバルブ操作をするはずだったらしいが、現場の人達が勝手にホースをつないで起きた事故だ
弁の近くには、窒素という表示は無かったらしい
おまけに配管が、入り組んでいて区別が難しかったようだ
企業によっては、窒素の弁は施錠されていることが多いが、この企業は施錠はしていなかった
おまけに、社員では無く協力会社に弁操作をさせていたようだ
この事故事例は氷山の一角だ。死亡事故にはつながらなかったものの、ヒヤリ事例は山ほどある
現場でも社員の省人化が進んでいる
社員では無く、協力会社に権限を与えていることも増えてきている
この事故のように、簡単に操作ができてしまうことが事故につながる
できることなら施錠して欲しい。施錠が無理なら、針金で縛って、窒素という表示はして欲しい
窒素の弁の周りに、色を塗るのも一つの対策だ
一つでも歯止めのかかるものがあれば、防げる事故は多い
ホースステーションなどでの窒素管理を甘く見ないで欲しい

 

2022年03月15日

タンクの上で液をサンプリング中爆発事故--原因は静電気

タンクの上のマンホールを開けて、ベンゼンという液の成分分析のためにサンプリングしていて爆発事故が起きたことがある
横浜の製油所での事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200001.html
着火源は静電気だ
1972年の事故だが、当時は作業員は静電気を逃がす静電気防止服も着用していなかった
静電気を逃がす静電気防止靴も使用していなかったので人体に静電気がたまっていたのだ
今では、静電気防止服や靴は当たり前のように着用しているが、当時はまだまだ使用していなかったので静電気事故は多かった
更に当時のサンプリング手法を定めたJIS規格は、サンプリング用容器を吊すひも糸は木綿とされていた
導電性の無い木綿を使うのだから、静電気は逃げていかない。事故の後JISは改訂され、金属製の糸と規定された
事故が起きるまでは、導電性など何も考慮されていなかったのだ
もう一つの問題点は、当時はまだタンクに窒素シールを行うことは一般的ではなかったということだ
窒素シールされていないのだから、マンホールを開ければベンゼンという可燃性蒸気がそのまま出てきてしまっていたのだ
もう一つの問題点は、タンクの中に液を入れてからすぐにサンプリング着手したことだ
タンクの中に液を入れると、液がかき回され流動帯電という静電気が発生する
時間が経つと徐々に静電気は逃げていくのだが、かなりの時間がかかる
しばらく時間をかけて、静電気をにがしていくのだが、この必要な時間のことを、静置時間と呼ぶ
つまり、静電気が逃げるまでは安易にサンプリングをしてはいけないのだが当時はあまり考慮されていなかった
たかが静電気と思うかも知れないが、静電気に関しては色々学んで欲しい
タンクに液を入れたときの静置時間という教育はしっかりと行って欲しい
静電気に関する事故は、実に多いからだ
静電気を甘く見ないで欲しい

 

2022年03月13日

東北大震災から11年目に思う

忘れもしない午後2時46分。11年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、勤務していた技術研修センターという所にいた
勤めていた技術研修センターは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ 
当日、朝からこの技術研修センターで各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
安全工学会の主催だ 午前中も順調に進み午後からも安全体験が始まった
1時間半ほどの体験が終わり皆さんが休憩をしていたところだったと思うが、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた 地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 私の場所から30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった 翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
限られた資源、時間ではあるが日本にある以上、地震への備えは不可欠だ 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
東北大震災の余震と言われる震度6の地震もその後起きている。千葉県にあるコンビナートでも影響を受け、停電で化学プラントが停止した
当時の福島原子力発電所の原子炉が破壊しなかったのは奇蹟だ
化学プラントも巨大なエネルギーの固まりだ
最悪に事態を考え行動することが常に求められている。地震への備えをこつこつと行っていって欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/6/50_410/_pdf/-char/ja

 

2022年03月11日

事故や災害の原因 マンネリ化

事故や災害の原因の中に、慣れという要素がある
化学工場でどんな危険な物を取り扱っていても、毎日作業をしているとなれてしまう
危険なものを危険と感じなくなってくるのだ
そこに事故の芽が潜んでいる
慣れというのは恐ろしい。危険なことを感じさせなくなるのだ
企業はめったに事故を起こすわけではない
何十年も事故を起こさない企業も沢山ある
たまたま事故を起こした企業に聞くと、今まで安全だったから事故は起きるとは思ってはいなかったという答えが出てくる
しかし、よくよく調べてみるとそこには、おごりがある
今まで事故が起きていなかったというおごりだ
たまたま運が良く事故が起きていなかぅただけなのに、我が社は安全と勘違いしていたケースだ
事故は確率で起きる。事故の確率はゼロでは無い
どこか、事故対策がうまくいっていなければ事故は必ず起こる
事故の要因の中にマンネリ化というのがある
たまたま、長い間事故が起きないと、今までやっている作業は安全だと思い込んでしまうのだ
ところがその中には、ほんのわずかの危険性が存在していてたまたま気づいていなかっただけなのだ
企業の中で安全ミーテングというのがある
毎朝、毎週、など頻度は様々だ
この時の運営でマンネリ化にならないで欲しい。絶えずフレッシュな情報を織り込んで欲しい
マンネリ化した情報では、
危機感の共有化はえられない
過去に起こった事故は時間が経ってから繰り返すことがある
同じ事故は起きないが、同じような事故は繰り返す
製造や研究のミーテングではマンネリ化を防ぐ努力を続けて欲しい

 

2022年03月09日

試運転を甘く見るな

試運転などで起こる事故も多い。試運転というのは、非定常作業だ。通常とは違う運転体系になる
事故は非定常時に起きやすいというが、まさに試運転というのは非定常作業そのものだ
非定常作業の定義に、めったにやらない作業をするというものがある
試運転は、めったにやらない作業に該当する
試運転の「試」という時は、ためしにという意味を持つ
人間は、このためしという言葉でだまされる
試しだから、それほど危険では無いと思い込むのだ
本運転にはいるとなると、かなり慎重になるのだが、試運転は本運転の前だからそれほど力を入れてくれないのだ
試運転というのは、品質や能力が十分かを試すのが主目的だ。そうなると、メンバーも品質や性能など技術面に関心がいってしまう
結果として、安全という部分は後回しになる。そこに、事故の芽が潜んでいるのだろう
始めよければ終わり良しということわざがある
試運転も、最初が肝心だ。関係者としっかりと事前の打ち合わせをすることが大切だ
人は誰でも思い込みというのがある。だから、計画を関係者に説明し何か問題が無いかを相互確認しておく必要があるのだ
事前打ち合わせで、幹部が確認しなくてはいけないことがある
試運転担当者は、うまくいくとの前提で計画を立てるのが常だ。現実は、試運転を始めると色々な問題が起こる
想定されるトラブルが、試運転担当者に考え尽くされていなければ事故になる
試運転というのは、うまくいくと思い込んで試運転を進めるからトラブルにうまく対応できずに事故になる
試運転の会議で幹部は聞いて欲しい
どんな最悪の事態が起こるのかを説明させてみることだ。この最悪という言葉がポイントだ
いろいろなトラブルを考え抜いていないと、簡単に最悪のトラブルとはの質問に回答できないからだ
常に最悪のトラブルは何かを考えさえることだ
想定外では済まされないのだ

 

2022年03月07日

薬傷や中毒事故への対策もしっかり行え

工場で起こる事故は、火災爆発だけではない。労働者がいるのだから、労働災害も起きる
劇物や毒物を取り扱う工場で、薬傷や中毒事故を防ぐのに万全の対策が必要だ
製紙会社では薬傷や中毒などの事故事例も多い
化学工場ではないから安全かというとそうでは無いのだ
紙を造るときに苛性ソーダという薬品を使う。これによる薬傷事故も多い
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101329
昨年末には、タンク洗浄中中毒になったというニュースが報道されていた
http://tank-accident.blogspot.com/2021/12/2.html
硫化水素による中毒事故だ。中毒だけではすまず、死亡事故になることもある
http://tank-accident.blogspot.com/2018/06/blog-post.html
3人が死亡している中毒事故だが、企業からは事故報告書は公開されていない
事故を4M的に類推すれば、こんなことが問題点なのかも知れない
人という切り口であれば、作業員はもう危険なガスは無いと思い込んだ。いわゆる思い込みが大きく関係している事故も多い
管理面であれば、ガスが完全に除去されていないのに、安易に許可を出した。ガス検知がおこなわれていなかったなどだ
機械装置面であれば、除害装置が故障して動いていなかったのに気づかなかったとか能力が十分ではなかった
手法面であれば、慣れている作業なので、いつもより早い段階でタンク内に入ってしまったなどだ
作業手順書などに、時間に関する規定やタンクに入って良いという判断基準を織り込んでいないケースだ
などなど色々な推測ができる
とはいえ真実はわからない。この手の事故は事故原因が調査報告書の形で公開されないからだ
だから同じ事故が繰り返えし起こる
事故の原因が公開されないから、事故原因の共有化がなされないのだ
企業は事故の原因は公開して欲しい
5W1Hで情報が公開されていれば防げる事故は多い

 

2022年03月05日

研究部門の安全管理体制に問題は無いか

研究所や実験施設など研究部門の安全管理で気になることがある
企業は製造もあれば研究部門もある。安全に関して製造レベルで研究を見ているかというとそうでは無い
取り扱う量が少ないから安全と思っているからだ。そうは言ってもかなり危ない物質も取り扱っている
最近の例などだと、リチウムバッテリーの開発で失火事故などもそうだ
化学系の企業は、近年研究部門を増やしている。付加価値の高いものへシフトしているからだろう
製品の差別化を図るには当然研究に力を入れる必要があるからだ
ならば、研究部門の安全管理をきちんと整備しているかというとどうもそうでは無いような気がする
研究部門の事故でもよほど大きな事故では無ければ新聞沙汰にはならない
研究はまだまだ安全と考えてしまう所以だ
研究というのは、非定常作業だ。毎日同じことをやるわけでも無い。しかも、個室で一人でやる作業も多い
思い込みなどヒューマンエラーリスクはものすごくある
管理者も、研究テーマもいろいろあれば全てに目を配れない どんどん専門性が増しているからだ
管理者といえども、安全のスペシャリストでは無いはずだ。
企業が管理者に安全の教育を体系的にしているかというとそうでも無いような気がする
この背景には、まず多くの企業で研究所の専属安全スタッフが配置されていないことが要因だ
総務や人事の業務の片手間に安全を見ているという企業も多い
製造工場には安全スタッフは必要だが、研究所は安全スタッフは不要と考えている経営トップが多いからだ
研究所こそ,未知なる分野に挑戦することも多いのだから有能な安全スタッフがいなければいけないのにそこは充足していないのが現状だろう
安全の専任者がいなければ、教育用の資料も当然充実していかないはずだ
管理職が研究の合間に作成できる教育資料などはたかが知れている
研究所では、工場規模の爆発には至らないかも知れないが、可燃物の爆発は指や腕を吹き飛ばすほどのエネルギーはある
研究部門での爆発や火災を甘く見ないで欲しい 労働災害もしかりだ
工場だけではなく研究部門への安全管理体制も充足して欲しい

 

2022年03月03日

振動を甘く見るな--長期間の振動でいつか事故になる

化学工場では、振動を甘く見るなと言う教訓がある。振動というのは、時間をかけて金属製の部分を破壊していくからだ
溶接部などは、長期間の振動でひびが入ることがある。亀裂が入れば、漏洩火災事故にもなる配管にはサポート(支持)が取り付けられている
大きな配管であればその重量を支えるためにサポートを取る。1/2Bや3/4Bの小さな配管であってもサポートは必要だ
例えば、振動のあるケースだ。ポンプのエアー抜きやドレン弁などだ。なぜかと言えば、ポンプはモーターなどで回転している
わずかではあるが回転により、弁も微妙に振動する
ポンプ本体とエアー抜き弁などの接続は、小口径配管と呼ばれる細い配管はネジの場合が多い
ネジは強度的に弱い 振動が続けば折れることもある。つまりサポートを取らない弁で、ネジ接続の場合はいつかネジ部が折れることもあると言うことだ
実際にそんな事故は何度も起きている。エアー抜き弁の根元が折れればポンプ内の液が漏れ出す
可燃性のものであれば火災になると言うことだ。こんな事故が報告されている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200032.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00023_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00023.pdf
たかがサポートと思わないで欲しい エアー抜き弁だけではなく、ドレン弁の振動で配管折損事故も多い
ポンプや圧縮機などは目には見えなくても機械は微妙に振動している
振動が繰り返せば一番弱いところが壊れる
たいていはネジで接続した部分だ ネジは折れやすいからだ。溶接部も振動で破損する
20年から30年経過してネジ部や溶接部が破損することも多い
本管から枝出ししたベント配管などは、サポートを取っていなければ微妙に振動している
過去の事故報告書でも、取りだし部から長さ30cm以上あってサポートが無いものは総点検したという報告もある
一度自分のプラントを「配管サポート」という切り口で点検して欲しい

 

2022年03月01日

水抜き作業中は現場を離れるな--慣れた作業だから大丈夫と思うな

水抜きという作業がある。油の中に水が入るとまずいから、水を除去する作業だ
水という言葉を聞くとそれほど危険ではないと誰もが感じる。そこが、事故につながる。水抜きという作業には重大な危険が潜んでいる
石油精製や化学プラントなどでは、油の中にわずかに水が含有していることがある
販売する製品は基本的に油なので、水は不純物だ。
したがって、水を除去する作業が発生する。水は油より、密度が大きいので、相分離した場合下にたまる性質がある
タンクやドラムにたまれば、ドレン弁を開けて水を抜き出すことになる
バルブを開けて、水が出ている間は問題は無い。ところが、水が抜けて油が出始めたときが問題だ。
引火点が低い油であれば流速が速ければ静電気で着火することもある
作業中は現場を離れないで欲しい。時間がかかるから、ちょっとだけなら現場を離れても良いだろうと思わないで欲しい
いつもかかる時間は同じと考えないことだ。水の量が少なめであれば、いつもより短い時間で油が出てきてします
現場に人がいなければ、油が流れ出て火がつくこともある。事故事例を1件紹介しておく
水抜き作業中に現場を離れ火災が起きた事故だ。現場を離れる際、計器室にも連絡していなかったので対応も遅れた事例だ
ベテラン故の甘さが引き起こした事故でもある。慣れた作業だから大丈夫と思い込んでいたようだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-113.pdf
過去に、水抜き作業で静電気着火事故は起きている
衣服に火が回り死亡した事故もある
水抜き作業というのは、本来液を抜くときは密閉系で処理できると良い
配管を 伝って地下にある排水ドラムなどへ抜き出せば空気に触れることも無い
空気と油が触れさえしなければ発火事故にはならないからだ
ところが、多くの事故はドレン弁を開けて大気に液を放出する水抜き作業を行っているから事故が起こる
水抜き作業は、空気に触れないで行う方法を考えて欲しい

 

2022年02月27日

詰まったバルブを安易につつくな

バルブが詰まっていれば、安易に針金などでつついてみようと思う人は沢山いるはずだ
誰でも、バルブが詰まれば詰まりを解消したいと思うのは当たり前だ。ところが、この詰まりを取り除く作業には、思わぬ危険が潜んでいる。
詰まっているバルブの詰まりが突然とれたら、どうなるか考えて欲しい。
当然、詰まったものが噴き出してくるはずだ。
それで終われば良いのだが、たいていはバルブを開けた状態にして、詰まりを取り除こうとしているはずだ。
つまり、詰まりがとれればバルブは開放状態だから大量の液やガスが、その後噴き出してくる。
周りは、ガスや液が噴き出すのだから、霧がかかったような状態になるという。視界が極端に悪くなることもある。
可燃性の液やガスが噴き出してくれば、静電気で着火する。
毒性ガスが、噴き出してくれば周りにいる人がばたばたと倒れていく。
事故を、経験したことがない人はこの状況を予想できないだろうがこのような事故は過去に幾度も起きている。
今から半世紀ほど前の事故だが、詰まっているバルブを針金などでつついて詰まりを解消しようとして起きた事故がある。
製油所の事故だ。装置には硫化水素が含まれていた。定期修理に入るため、装置を停止していた。あるドラムで、液が抜けなかった。
硫化水素を含む液が中に入っていた。現場の責任者達は、なんとか脱液しようと焦っていた。誰かが、針金を持ってきてドレン弁をつつき始めた。
バルブを開けた状態のまま針金でつついていたのだ。
しばらくして、突然詰まっていたものが取れ大量の硫化水素という毒性ガスを含んだ液が噴き出してきた。
周りにいた人達が次々に倒れ込んでいった。
毒性ガスが噴き出すとは思っていなかったので、防毒マスクも用意されていなかった。多くの人達がそこで命を失った事故だ。
バルブが詰まっていたら安易に針金でつついて詰まりを取ろうとしないで欲しい。
バルブを開の状態にして。突然詰まりがとれてしまえば液やガスが噴き出してくる。弁が開放状態なのだからすごい勢いで噴き出してくる。
近づけないから、弁を閉めることもできない。とても恐ろしいことが起こると思って欲しい。
過去の事故事例を紹介しておく 参考にして欲しい
この事例は、詰まったバルブの弁を開けたままで仲間と相談中に突然詰まりが取れて起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200103.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00049.pdf

 

2022年02月25日

重大事故は事故の本質も考えて欲しい

前回のブログで、新潟県にある大手菓子メーカーの工場で火災死亡事故をとりあげた。6人の方が、逃げられずに死亡した惨事だ
https://news.yahoo.co.jp/articles/74cb250fc4359019e908ec1af5851dfa9a1a08a3
油かすや製品くずなどが蓄積して火災が起こることは紹介した
油かすなどが引き金になっている可能性は高い。蓄熱自然発火の可能性もある
だだ、今回は火災とほぼ同時に停電が起こっているとの情報もあるので、着火源は電線などのショートという可能性もある
電線はショートすれば、火花を出す。火花が、油かすに着火すればこのような事故の形態となる
事故の原因について推定したものの、事故の本質についてはまだ調査報告書が出てこないので触れなかった
事故には、直接原因もある。しかし、事故は直接原因だけで起こっているわけでは無い
事故の本質となる背景が隠れている。世の中常に変化している。企業も厳しい時代を生き抜いている
そこには、当然色々な事故の間接的な要因がある
最近の重大事故を見て見るとこんなことを感じる。工場で働く人達の雇用形態が昔と大きく変わってきているからだ
昔は、現場で働く人は社員だった.だから、全員に教育や訓練が行われていた
ところが、1990年代にバブルがはじけてから、皆が社員という形態は無くなっていった
アルバイトがいたり、派遣社員がいたり、製造の一部や製品充填などを下請け会社の社員が請け負うようになった
工場での、指揮命令系統が大きく変わってきたのだ
日本の労働安全衛生法は、安全の責任は事業者、つまり雇用主と労働者(雇われた人)の雇用関係で規定している
つまり、給料を払う人である雇用主が変われば、別々の責任形態となる
つまり、派遣社員への教育、訓練は派遣会社自らがやる必要がある。製造請負の場合もそうだ。
法律というのは、指揮命令系統が違えば教育や訓練の運用もかわってくる
工場の安全担当者が、直接派遣会社の社員に、訓練に参加しなさいとは言えないのだ.派遣会社を通して依頼という形になる
そうなると、めんどうな作業も発生するので訓練は社員だけにしておこうなどという形態になる
雇用形態だけの問題だけでは無い.雇っている人も、ものすごく少なってきている.ぎりぎりで運営している
人が沢山いれば、いろんなところに目配りできる。しかし、人そのものが少なければ異常に気づくのも遅れる
今の日本が抱える人という問題だ

2022年02月23日

製菓工場火災に思う--油かすは自然発火すると思って欲しい

先日、新潟県にある大手菓子メーカーの工場で火災死亡事故が起こった。6人の方が、逃げられずに死亡した惨事だ
https://news.yahoo.co.jp/articles/74cb250fc4359019e908ec1af5851dfa9a1a08a3
この工場では、過去に何回も小火があったという。1988年7月~2019年11月、8件の火災が確認されている
部分焼が4件、ぼやが4件で、けが人はいなかったという 大きな火災にはならなかったが、事故を予見する兆候はあったと言うことだろう
過去の8件は、ほとんどが煎餅の生産工程で生地を乾燥させる機械に堆積した菓子くずから発火したというという
今回の火災を巡っては一部の従業員が「炭化した菓子のかすから出火した」と証言しているという情報もある
大きな事故が起きないと報道されないが、油が付着したかすなどが原因で起こる自然発火はよく知られた現象だ
自治体の防災関係の、広報にも沢山の情報がある
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/7415/sizenhakka.html
家庭内でも、Yシャツに油のついた状態で、くるくるとたたんで置いていたところ自然発火したという事例は沢山ある
油の発火点は、300℃程度だから、外気温数十度では燃えるわけが無いと皆が思っているからだ
発火のメカニズムはこうだ。まず、油は劣化すると発火点はどんどん下がってくる。200℃くらいにもなってくる
次に、油は空気に触れると酸化される。酸化されるときに酸化熱という熱を発生する。つまり、空気に触れてどんどん発熱するのだ
熱が逃げてくれれば良いのだが、油のついた布を折り重ねていたり、くるんでいたりすると内部に熱が自然とたまっていく
熱が逃げないまま、発熱は継続するので発火点を超えて火がつくのだ
八尾市という自治体のホームページに自然発火の実験報告と発火映像のビデオがある 400℃まで温度が上がったと記載がある
https://www.city.yao.osaka.jp/0000019191.html
工場などでも報道されないだけで、油かすや製品くずなどが蓄積して小火が起こっている
今回の事例も、油かすなどが引き金になっている可能性は高い。蓄熱自然発火の可能性もある
だだ、今回は火災とほぼ同時に停電が起こっているとの情報もあるので、着火源は電線などのショートという可能性もある
電線はショートすれば、火花を出す。火花が、油かすに着火すればこのような事故の形態となる
いずれにせよ、油が付着したものや油かすなどには常に自然発火の可能性があると理解して欲しい
機械装置本体だけではなく、油が付着する可能性のある.排煙ダクトなども注意すべき設備だ
油は空気に触れて徐々に酸化されていけば、蓄熱で火がつくこともあると覚えていて欲しい
電気火花などでも、油に火がつくこともあると知っておいて欲しい
常に油の付着箇所は小まめに清掃して発火リスクを減らして欲しい

 

2022年02月21日

ライニング機器の事故

ライニング機器が原因となる事故も多い
化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
耐食性機器の内張などにこのライニングというものが使われる。本体そのものを、耐食性のある高級金属を使うとコスト面で割高になるからだ
本体は安価な鉄を使い、内張にライニング材を貼り付ければ機器を安く作れるという利点がある
そうは言っても、ライニングは、はがれてしまえば効果は無くなる。つまり、維持管理が大事なのだ
しっかりと、点検していれば良いのだがライニングが剥離すると思わぬ事故になる
硫酸などの酸を入れているタンクの内張の一部が破損すると母材の鉄と酸が反応して水素が出来る
酸と金属が触れると水素が発生する性質があるからだ
たまたま、火を使ってタンクなどの改造を始めたとき水素に着火して爆発する事例が多い
鉄と酸による水素の発生は、案外知られていないから繰り返しこの種の事故が起きている
水素の発生を知らなくても、火気工事前にガス検知さえやっていれば防げる事故のパターンだ
ライニングに関する事故のパターンその-2は静電気だ
ライニング材は、電気を通さない非導電性材料だから静電気は起きやすい
可燃性の液体や粉体を入れればライニングで静電気が発生することが多い
これが原因で着火や爆発事故が繰り返し起きている。ライニング機器は、しつこいくらい静電気に留意して欲しい
原材料の投入時には、確実に窒素置換をして爆発混合気を作らせないことだ
定修工事などでのジェット洗浄時にも注意して欲しい。高圧ジェットの洗浄水の水しぶきでも静電気は発生する
過去にグラスライニング機器のジェット洗浄中に爆発事故が起きている
ライニングに付着していたポリマー物質に微量に含まれていた有機溶剤がガス化して可燃性ガスとなってドラム内に充満していたのだ
ジェット洗浄作業で静電気が発生しそれが着火源で爆発混合気に着火した事故だ。溶剤を使うプラントでは注意して欲しい
ライニング機器で注意して欲しいことがもう一つある
解体時だ。内部にゴムライニングがしてあることに気づかず火で溶断していて着火火災になった事例も多い
装置の内部に可燃性のライニングがあつたことで、火気解体時事故が起きている
ライニング機器を使うメリットもある。しかし、リスクも必ず存在する
しっかりとリスクを管理しながらライニング機器を使って欲しい

 

2022年02月19日

ある反応暴走事故に思う--安易な蒸気加熱-変更管理の大切さ

高圧ガス保安協会から、事故の報告書が公開されていた
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2020-416.pdf
2020年11月、兵庫県高砂にある大手化学会社の塩ビ反応器の事故だ。この企業は半世紀以上前から塩ビを製造している老舗のメーカーだ
スタート時反応器内で異常反応が起こったという。冷却水を増やしたものの温度上昇は止まらなかった
反応禁止剤を投入したものの更に温度は上昇。そのうちに、反応器内の粘度が上がり攪拌機が停止していしまった
攪拌が停止したので、今度は下から窒素を投入しながら重合禁止剤も追加投入した
それでも温度上昇が続き、ついには圧力も上がって安全弁が吹いたというのだ
その後、なんとか温度も圧力も下がり最悪の事態は避けられたという。火がつかなかったのは幸いだった
事故のきっかけは、スタート時原料が固まっていて、応急処置として保温をはぎ取り蒸気で暖めながら溶かして液を反応器へ送り込んだという
本来は温水加熱なのに蒸気で加熱したことにより液体の一部が気化し、正確な流量が計測されていなかったことが関係している
流量計は容積式だったので、本来は液体の容積が計量されるはずが、ガス分も混ざったので誤差が出ていたようだ
原料が固まっていたのは、供給配管が2重管で、温水を流すところで錆がつまり温水が流れなかったとのことである
スタートのスケジュールもあったのだろうが、取り急ぎ安易に蒸気加熱で固まった部分を溶かす対応したのが最初のきっかけだ
その後、温度上昇が始まり、反応禁止剤を投入したものの効果がなかったのは、反応器の回収系の弁を閉じていなかったからという
弁の閉め忘れで、本来、禁止剤が反応液へ落ち込んでいくはずが、回収系配管へ流れて効果が出なかったようだ
更に、その後色々な手を打つものの、実質的に反応禁止剤が送り込まれるまでにかなり時間がかかりすぎたようだ
事故報告書を読んでみると、この事故には色々な要素が重なって起こっていることがわかる
報告書には書き表されていないが、私なりに考えるとこんなことも背景にあるのではないか
現場の運転員の世代交代だ。団塊の世代が、会社を辞めていったのは2000年代後半から2010年代前半だ
色々なトラブルを経験したベテランはもう現場にはいないのだろう。この事故も、トラブル経験が少ない若い人が運転していたのだろう
反応禁止剤を投入するのもはじめてだったのではないだろうか。反応温度がどんどん上がって入れは、焦るだろう
だから、本来閉めるべき回収系の弁も閉め忘れたのではないだろうか。よほど訓練されていなければ、手順通りに進まないはずだ
もう一つの要素は、安易な蒸気加熱だ。温水と蒸気とは熱量が大きく変わる。原料の気化が、事故につながるとは見抜けなかったのだろう
2012年9月29日、別の企業ではあるが同じ兵庫県の姫路で起こったアクリル酸タンクの爆発事故も、温水から蒸気に加熱を変えたことで起こっている
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2018/11/2018-11-Beacon-Japanese.pdf
蒸気加熱には、重大なリスクがあると感じて欲しい 温水から蒸気に変えることは重大な変更管理だ

 

2022年02月17日

日本の化学産業約100年- 2020年代-化学産業もIOT技術の活用が進む

2020年(令和2年).令和という時代に入った。2020年代はまだ始まったばかりだ
2000年代中頃に大量に団塊の世代と呼ばれる経験豊富な人達が過ぎ次々と退職し始めた
その人達に変わり大量に採用された若手社員も、もう15年以上の経験を持つ中堅社員になっているはずだ
化学産業も、もう完全に世代交代をしてると言っていいのだろう
事故は、10年毎に起きるという言い伝えもある。10年経つと、人も技術も変わってくるからだ
技術伝承は20年周期と言われることもある。20代の入社時にまず技術が伝えられる
次は40代前後だ.企業の中で中堅人材として最も働き盛りの頃だから色々な人と技術交流が自然と行われるからだ
次は、60代だ。定年も近くなり、次の世代に色々な経験を伝える時期だ
2010年代後半から始まったIOTという技術革新の波は2020年代に確実に花開いていくのだろう
コンピュータ技術を応用した技術革新だ。安全の分野ではスマート保安などとも呼ばれている。国もこの技術革新を推進してきている
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/sangyo_hoan_kihon/pdf/002_01_00.pdf
海外との競争、省人化、設備の老朽化、経験豊かな人材の退職など多くの課題を企業は抱えている
コンピュータを使った技術を使い、少しでもこれらの課題を解決したいと思うのは当然だ
運転支援分野で、AI(人工知能)の活用だ。運転者に、有効な運転ガイダンスを出すことも可能だ
運転の安定化には、統計手法を用いた解析技術が使われてきている。過去のトラブルデータを解析して、より安定な運転状況を創り出せる
異常監視分野ではセンサーの高度化が進んでいる。ガス漏れなどは、従来配置されたガス検知器に頼っていた
いわゆる、点での監視だ。ところが監視カメラの画像センサーと連動すれば、面での監視も可能となる
保全や点検分野では、ドローンの活用も進んでいる.従来、高所での点検は足場を設置する必要があった。お金も時間もかかるのが難点だ
ドローンならこの問題も解決してくれる
良いことずくめのようだが、課題も存在する.まずそれを使いこなす新たな人財が必要となることだ
当然現場をよく知っている必要もある。単なるコンピューター技術者ではない
もう一つの問題は、セキュリテイだ。データーの領域が増えれば増えるほど厳密な対策も必要だ。国も情報を公開している
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/hipregas/files/20190425iotsecuritymanualver2.pdf
必要とする技術分野はどんどん増えてきている。効率の良い技術伝承を常に考え続けることが求められている
次の2030年代はどんな世界になるのだろう。後、8年後の時代だ

 

2022年02月15日

日本の化学産業約100年- 2010年代-東北大震災を契機に製油所や化学工場などで事故が続く

2010年(平成22年)代が始まった、2011年3月に東北大震災が発生した
千葉県で、石油会社の球形タンクが地震により柱が折れ火災爆発となる大災害が発生した
それから約半年後、今度は山口県で蒸留塔の原料トラブルが発生した際、運転操作に失敗し爆発事故が発生する
現場で対応していた、係長が命を落とした
さらに、約半年後に同じ山口県の企業で、工場の蒸気が一斉に停止するトラブルが発生した
停止インターロックを作動させプラントを停めている途中でインターロックを解除したことにより化学プラントが爆発事故を起こした
22才の若い運転員が現場で死亡した
さらに約半年後、今度は兵庫県にある化学プラントが能力向上テスト中タンクの循環冷却操作を忘れ爆発事故を起こした
わずか2年の間に立て続けに大きな事故が4件起こったのである
しかも、最初の事故を除く他の3件は人が巻き込まれて死亡事故にもなってしまった災害だ。
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_15/15rijityou2.pdf
これらの事故を見ると、「地震」発生時、原料や用役トラブル発生時の「緊急停止時」、「試運転時」などいわゆる「非定常時」に起きている事故だ
通常運転時の安全対応は、企業は進めてきているもの、まだまだ非定常時の対応は十分とは言えないことかも知れない

2016年に労働安全衛生法が改正され 危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)を義務付けた
2017年に、高圧ガススーパー認定制度が始まった。通常認定では4年だが、8年の連続運転可能となり、保安検査の方法も自ら設定可能になった
認定要件には、高度なリスクアセスメントの実施や先進技術の活用が求められている。更に、高度な教育訓練や第3者知見活用などがあげられている2010年代は、リスクアセスメントやIOTなどの先進技術の活用が求められる時代となってきた
度重なる重大事故を受け、「人材育成・技術伝承」が不十分ということがたびたび言われている
物づくりは、人づくりからともいわれるからだ。
安全への投資には、設備だけではなく「人」への投資も怠るなと言うことなのだろう
企業はこつこつと、人を育てる努力を惜しまないことが100年の教訓なのかもしれない
時代は、2020年代へと移っていく

 

2022年02月13日

日本の化学産業約100年- 2000年代 多くのトラブルを経験してきた団塊の世代の大量退職

2000年(平成12年)代について考察してみたい。化学産業では変更管理という管理が求められてきた
海外では1980年代にインドのボパールでの有毒ガス大量漏洩事故など化学物質が大量に漏洩する重大事故が起きている
これを受け、その後安全マネージメントが大切であるとの認識が進んでいった
アメリカで、1992年に米国労働安全衛生庁(OSHA)により、PSM (Process SafetyManagement)というプロセス安全管理の仕組みが法制化された
PDCAを回してシステマチックに安全を管理することが企業に求められるようになってきたのである。
このような安全管理の考え方は、2005年の高圧ガス保安法一部改定(認定制度)で日本でも取り入れられている
「変更管理」という考え方が日本でも注目されるようになってきたのが2000年代頃からだったと思う
2009年には化学工学会の安全部会で変更管理に関する検討チームが作られ論議を開始していた
2000年代後半からは、団塊の世代と呼ばれる経験豊富な人が大量退職の時代を迎える。2007年頃より退職を始めた
当時、2007年度問題と言われ、技術伝承に大きな影響を与えた
団塊の世代というのは、1960年代後半から70年代前半にかけて企業に大量に入社して色々なことを経験してきた人達だ
日本の高度経済成長期に入社した人達で、化学プラントの建設、改造などを自ら多くを体験できた世代だ
1960年代、1970年代は、化学プラントでの事故も多発した。この時代に団塊の世代の人達は、安全対策を自ら考え実行してきた
つまり安全対策などについて豊富な知識と、安全技術を持った人達だ。そういう人達が、大量に会社を去り始める時期が2000年代に到来したのだ
団塊の世代の大量退職と相前後して、当然のことながら大量の新入社員を採用することになる
次の世代の人達に対する「技術伝承」というのが大きな問題になり始めた時代だ
技術伝承の失敗は事故につながる2007年12月鹿島のコンビナートでエチレンプラントの爆発死亡事故が起きた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200807.html
工事で縁切りをする際に、空気で作動させる遮断弁で縁切りをしていた時に起きた事故だ
工事が完了し、仕切り板を取り外そうとしていたときに突然縁切りに使っていた遮断弁が開き始め高温の液が噴き出した
周りで作業をしていた作業員4名が死亡した事故だ。担当していたのは、若い運転員だった
ベテランの運転員は、誤って弁が動かないように空気の元弁を閉めるか、弁につながる配管の一部を取り外すことは知っていた
弁の駆動源を無くしておくことは安全確保の基本である。元弁を閉めたりすることは、いわゆるベテラン層にとっては職場での常識であった
しかし、常識であるが故に作業マニュアルではその常識は文字では書き表されてはいなかった
当然、文字に書き表されていないのだから、なんらかの形で常識というものを知らなければ空気の元弁を閉めたりはしない。
工事を担当した、若い運転員には職場の常識は伝わっていなかった。作業マニュアルにはベテランの常識が書かれていなかったからだ
ベテランにとっては当たり前のことでも、きちんと次の世代に伝えなければ事故が起こると言うことだ
人が減りますます技術伝承が難しくなる環境は続いている。時代は、2010年代へと移っていく

 

2022年02月11日

日本の化学産業約100年- 1990年代-バブル経済崩壊後の不況

1990年(平成2年)10月イラクがクエートに侵攻。第3次石油危機が発生した
1980年代末に日本経済はバブルがはじけ不景気の時代となっていたので、不安定さは更に増すことになった
景気は低迷し、1990年代は失われた10年といわれることもある。多くの化学企業で人の採用が減った
人を採用しないということは、省人化などにより技術伝承が難しくなってきた時代だ 
更に、1960年代の高度成長期に建設された多くの設備が老朽化を迎える時期にも当たり厳しい時代環境だった
1990年代に入ると世界規模で環境に対する関心が高まってくる。地球環境をテーマにした国際会議が行われたのが1992年である
この国連環境開発会議では、地球環境の保全に関する宣言や条約が合意されている。リオ宣言と呼ばれる。
有害化学物質管理に関しては、「環境法を定める義務」、「有害な物質を他国に移転しない努力」、「汚染者費用負担」などが盛り込まれた
1996年にはOECD(経済協力開発機構)から日本を含めその加盟国に対して、有害化学物質管理を導入するよう勧告が行われた
日本で化学物質を管理するPRTR法が施行される背景となる国際会議だ
この時代には、フロンによるオゾン層破壊や地球温暖化現象が、地球存続の問題として提起されてくる。環境問題にも敏感になり始めた時代だ
当然化学物質の管理に関心が集まってくる。
1996年、高圧ガス取締法が、「高圧ガス保安法」と改称。規制中心の法体系から自主保安へと大きく変革する
優良な事業者には規制を緩和し、国際的な競争力もつけさせようというねらいもあった
この時代、ISO認証という新たなシステム化の時代が始まった。1996年9月にISO 14001環境マネジメントシステムが制定された 
1987年に制定された、ISO9001(品質)と1996年制定のISO14001(環境)への認証取得が活発化した時代だ
化学企業も国際化へ対応していくためには、ISO認証が求められる時代になってきた
コンピューター技術面では、1995年と1998年に、WINDOW95,98発売。パソコンが大衆化していく
一般家庭でもパソコンを使い始めた時代だ.企業もパソコンの活用を模索し始めた時代でもある
技術資料管理、設備保全計画にも使い始めた。経験と勘の保全から、データーの蓄積による保全管理が始まった
デジタルカメラも1990年代後半には多く使われ始める。設備点検時の記録やトラブル報告にデジタル写真が活用され始めたのだ
色々な事故や災害の記録が写真として残り始めたのがこの時代からだ
経済面では厳しい時代ではあったが、コンピューター技術などは確実に進歩していった時代でもある
1999年に化管法という法律ができる。PRTR法とも呼ばれる法律だ。有毒な物質の発生量や場所を明確にすることが目的だ 
世界的な有毒物質管理の流れに基づいて出来上がった法律だ
正式名称は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」だが、「化学物質把握管理促進法」を略して「化管法」とも呼ばれる。この法律では、化学品製造事業者はSDS(Safety Data Sheet)を作成し顧客などへ提供する義務を定めている。
失われた10年と言われる1990年代が終わり時代は、2000年代へと移っていく

 

2022年02月09日

日本の化学産業約100年- 1980年代 大量生産から少量多品種生産へ

1980年(昭和55年)代は、個人消費の鈍化により、GNP成長率が急激に低下してくる。国際競争力回復に向け、過剰設備の廃棄が進んだ
1970年代後半に登場したDCSという装置が1980年代になると本格的にプラント全体の制御に使われてきた
調節計や記録計を計器盤に組み付けて運転する計器盤による運転方式から、DCSによる運転方式へと変わっていく
1982年10月、NECが新しいパソコンを発売する。PC9801という、16Bitパソコンである
当時は,Microsoftのwindowsは登場していなかったので,Basicと言う言語でのプログラミングが必要だった
それでも、この新しいコンピューターは化学企業で取り入れられ、設備の点検計画や修繕費を算出する装置として利用され始めた
新規化学物質が増え始めたのもこの時代だ。1979年の第二次石油危機以降、石油を原料とする化学産業は大きな影響を受けた。
化学企業は新たな収益源として、高付加価値の化学物質の製造を試みるようになったのだ。医薬品や農薬など少量で高価な化学物質だ
いわゆるファインケミカル産業が発達し始めた。当然のことながら、新たな物質が出てくれば未知なる物質であるが故に事故は起こる。
1980年5月浦和にある薬品工場で爆発事故が起きている。この事故は、2名の死者と13名の負傷者を出し爆風で周辺の家屋を破壊した
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200058.html
原因は医薬品中間体である5CTという物質だ。事故後の調査で、衝撃を加えると爆発する不安定物質であることもわかった
医薬品のような物質は、一部を除き危険なものではないと当時は考えられていたので、化学工業界に衝撃を与えた事故だ
不安定物質のエネルギー評価に関心を持たせる契機になった事故だ
HAZOPの活用が始まった時代でもある。化学プロセスの運転・操作面を主体に安全性を評価する手法だ
化学プラントでは、通常運転から温度や圧力などに「ずれ」が生じると、トラブルが起こることがある
この、「ずれ」をキーワードに想定される危険源を考え、HAZARDと呼ばれる危険な状態を想定する
現状の設備や体制で安全性が確保されているかを評価する手法だ
そうは言っても、HAZOは万能では無い。手法だけを学ばせていても事故は防げ無い。そこに難しさがある
1986年、高圧ガス取締法が改正され自主保安認定制度始まる。1年毎の保安検査が2年になり、2年連続運転と言うものが可能となる
企業は、長期連続運転という経済的メリットを受けることになる.背景には、海外との国際競争力への対応があるからだ
一方で、定修機会が長期化することで、運転員がスタートや停止という非定常運転の経験が減っていったという問題点も生じてきた
大型プラントでは運転シミュレーターを導入し、スキルの補完を試みたものの必ずしも満足のいく物では無かった
1987年3月、ISO(国際標準化機構)によって品質保証のための国際規格ISO9000シリーズが制定される
国際的な対応が多くの化学企業も求められるようになったのだ
1989年、日本はバブル経済がはじけた。
時代は昭和から平成へと変わり、1990年代へと移っていく

 

2022年02月07日

日本の化学産業約100年- 1970年代 化学工場で事故が多発

1970年(昭和45年)は、コンビナートが本格的に稼働を始めていた時代である
技術革新、生産設備の高度化が進展するものの、設備の信頼性はまだ低く、設備故障も多発した
バルブの閉め忘れなど単純なヒュ-マンエラーの事故も多かった
人のミスであるヒュ-マンエラーに着目し始めたのもこの時代だ。
化学災害などの事故の情報が本格的に記録として残り始めたのもこの時代からだ
労働災害も多かった時代だ。災害の未然防止を進めようと国は1972年に労働基準法から安全衛生の部分を抜き出した
独立した法律として「労働安全衛生法」を施行している
1973年という年は、日本の石油や化学工場で事故が多発した。毎月のように事故が起こり新聞の一面を賑わしていた
事故の背景には急速な経済成長と、技術伝承の2つが関係したとも言われている
大量生産の時代を迎え、化学工場の装置はどんどん大型化していった。人が設備や技術の進化についていけなかったのだ
もう一つは、戦後化学産業に携わってきた人達が退職していく時期に当たっていたことだ
当時の定年はいまよりもずっと早く55才だ。工場を作り上げてきたベテラン従業員が退職することで技術伝承もうまくいっていなかった
若手人材への教育の大切さを認識し、教育体系をつくり教育の充実を図り始めたのもこの時代だ
一方で経済成長にブレーキをかける出来事も起こっている。1973年10月には、第1次石油危機が勃発した。 第4次中東戦争発生したから
OPECは原油公示価格の大幅値上げを通告してきた
石油の価格が上がり始めたのだ。石油化学の原料である石油の価格が上がることは石油化学産業に取って大きな痛手となる
更に、1978年、第2次石油危機発生 原油価格が急上昇した。 約5年にわたる長期不況の引き金となった
世界的なインフレ、生産消費の停滞、大量失業、国家財政の赤字増大、対外債務の増加、貿易の縮小と保護主義が台頭し始めた
貿易摩擦の拡大など世界的な同時不況をもたらした
1970年代後半頃、日本の企業で危険予知トレーニング(KYT)の手法が開発された
その後、中災防が開発した、問題解決4ラウンド法も使われるようになり日本の企業に危険予知活動が広まっていった
危険に対する感受性を鋭くし、一人一人が作業に潜む危険に気付くことで事故・災害を防ぐことの大切さに共感をよぶものであった。
その後、ゼロ災運動で指差し呼称も活用されるようになり一人一人が安全活動に参画するようになった時代でもある
1979年パソコンの時代が登場する。NECから発売されたPC-8001は1979年9月から市場に出回り始まる
8ビットのコンピューターだが、化学企業でもその活用を模索する動きが始まる
化学工場に存在する膨大な数の機器の保全計画を、コンピューターを使って試みようとすることが始まったのがこの時代だ
時代は、1980年代へと移っていく。高度成長が終焉、減速経済へと変わっていく

 

2022年02月05日

日本の化学産業約100年- 1960年代 日本の高度経済成長時代

1960年(昭和35年)代は、高度経済成長と呼ばれる時代。物は作ればつくるほど売れた時代だ。化学産業は、日本は大量生産の時代へと入っていく
1961年岡山県水島地区で製油所が稼働を始める。水島コンビナートが動き始めたのだ
1961年~1962年にかけて、大阪堺泉北地区の石油化学コンビナートも稼働を始める
計装分野では、空気式から電気式へと計器が変わり始める。https://www.azbil.com/jp/corporate/company/history/pdf/history100_12.pdf
1963年には徳山の製油所で電子式変位調節計が使われ始めたという。真空管からトランジスターへ電子技術も変化していく
1964年には徳山コンビナートで石油化学工場が動き出す.周南コンビナートも動き始めたのだ
一方で、工場規模が大きくなってきたことで災害の規模も大きくなり始めた
1964年は、新潟地震による新潟地区の製油所が被害を受ける。大規模な石油タンクの火災が起き地震対策の強化が図られた
https://www2.nhk.or.jp/archives/311shogen/disaster_records/detail.cgi?das_id=D0010060013_00000
1965年には、エチレン10万トン時代に入っていく。
1966年には、化学工業界初のプロセス制御用コンピューター(IBM1800)の導入された
https://ja.wikipedia.org/wiki/IBM_1800
大阪のコンビナートにあるアンモニア・尿素プラント、エチレンプラントの運転に活用されたという
ディジタル計算機により直接バルブが駆動されるDDC(Direct Digital Control)が実用化されたのだ
計算機が高価であったため多数のループを1台のCPUで制御する集中型であった。CPUが故障するとプラント全体が止まるというリスクはあった
1967年には、京葉コンビナートが動き出す。千葉での化学産業が始まった
静電気に関心が持たれ始めた時代だ。現場作業者への静電靴の着用が始まった.流速も1m/s以下を徹底し始めた時代だ
1967年は公害対策基本法が公布され公害問題へ対応が始まった時代だ。装置の大型化により公害という問題も起き始めた
1968年富山県の高岡で緊急停止中の、爆発死亡事故が起きている。当時は緊急停止が自動化されておらず、起こったヒューマンエラー事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000145.html
1960年代はまだまだ自動化は進んでいない時代だ。緊急停止も人手で、多くの現場操作をする中で起こった事故だ
ヒューマンエラ-対策がやっと始まった時代でもある
1969年には、千葉のコンビナートで30万トン/年の大型エチレンプラントが完成する
この年は、東名高速道路が完成し、宇宙開発分野では米国のアポロ11号で、月面にはじめて人間が立つた年でもある
経済は発展し、時代は、1970年代へと移っていく

 

2022年02月03日

日本の化学産業約100年- 1950年代 石油化学コンビナート始まる

1950年(昭和25年)と言う年は今から約70年前のことだ。日本の工業生産が戦前水準を回復した年でもある
1950年には山口県の岩国というところにある製油所がもう動き始めている
石油化学計画構想も出始め、わが国初の石油化学計画を通産省に提出している。化学産業の基礎原料が石炭から石油へと変わってきた時代だ
1950年という年は。朝鮮戦争が始まり大量の物資の生産が日本にも求められた。これを受け日本では化学物質なども増産を続けていく
塩化ビニルという化学物質の生産も始まった.現在でも使われている代表的なプラスチックだ
1951年には高圧ガスの利用拡大や石炭から石油への時代に対応して、高圧ガス保安法が公布された 
1952年になると、対日講和条約が発効され、日本に主権回復が回復して経済はますます活性化する
1953年には、日本初の白黒テレビ放送が始まる 
ポリエチレン製造に関しても、海外で低圧で触媒を使った製造法が開発されている。チーグラー触媒というものだ
1954年には、イタリアのナッタが、三塩化チタンを用いて、プロピレンの重合に成功した
チーグラー・ナッタ触媒(塩化チタンとトリアリキルアルミニウムとからなるものが代表的)によってポリエチレンやポリプロピレンなどオレフィンの重合の工業化と理論の解明が進んだ。石油を原料とした、プラスチックの時代が到来だ 
1954年は、国が石油化学工業育成の基本方針を決定した年でもある
民間の化学企業の動きは速く、1956年1月には石油化学計画を国に提出した企業が現れた。この年12月には工場の起工式が執り行われている
1958年には、山口県岩国と愛媛県新居浜市でコンビナートが動き始めた。当時のエチレン生産能力は、それぞれ2万トンと1.2万トン規模であった
コンビナートの稼働にも併せ、この年消防法が制定された
東京では、東京タワーが完成した年でもある。
翌年の1959年には、四日市のコンビナートでエチレンプラントが完成(2万2千トン)している.四日市コンビナートも稼働し始めたのである
誘導品のポリエチレンやエチレンオキサイドのプラントも動き始めたという。石油化学工業協会(石化協)という組織も発足した
http://www.jpca.or.jp/trends/50years.html  
法規制という観点からは、1959年に工場立地法が制定された.消防法も、規制の主体者が地方自治体から国へと移り始めた時代だ
エンジニアリング分野でも、ナフサ分解や液体原料のガス化などで高温技術の発展もしていく
1959年には、日本で始めて高張力鋼を採用した球形タンクが設置された。圧力容器に高張力鋼が使われ始めたのだ
とはいえ、溶接にはかなりの技量を必要とした
時代は、1960年代の高度経済成長へと移っていく

 

2022年02月01日

日本の化学産業約100年- 1940年代 戦後製油所が復活

1940年(昭和15年)にアメリカでは、高オクタン価ガソリンの需要急増で、石油化学工業が急激に発達しはじめた
1941年には、アメリカが日本への石油輸出を禁止した。同年12月には太平洋戦争が始まった
石油の輸入ができなくなったことにより、日本の化学工業は石炭から石油を作り始めた。人造石油と呼ばれていた
苦肉の策ではあったが、コストが高く採算の合う物では無かったという
工業用の潤滑油も不足していた。食用油から、潤滑油を作ることも軍の指導で行われた
1944年12月26日、和歌山県にある大豆から潤滑油を作り出す工場で大爆発が起きている
完成を間ぎわにした新設の大豆油脂抽出工場で、空気で加圧中軽油が漏れ近くの溶接工事の火で着火爆発した事故だ
死者13名, 重傷者21名, 軽傷者24名 軍人多数が現場で爆死したという
である油脂から潤滑剤をつくる工場で試運転中操作ミスで溶剤であるヘキサンが漏れ溶接火花で爆発したのだ
脂肪酸に水素添加して硬化油を製造する装置だ。終戦間際に、不足していた潤滑剤を製造中無理な試運転中の爆発でもある
何度か漏れがあり、補修を同時並行で実施。その最中に爆発。未完成の部分があって火気使用工事が行われていた
試運転と並行して電気溶接が行われていた。漏れたヘキサン蒸気に着火爆発し塔が飛散し, 破片により水素タンクが破損して発火した
約3時間燃焼したという
工場の稼働を急ぐあまり、試運転と火気工事による補修を同時並行で行ったことが事故につながった
気密テストには本来窒素を使うべきだが、戦時中で窒素が不足していたという
高圧の空気を気密テストに使ったことから燃焼を加速した
軍事機密の中での試運転であり本当の原因は何だったのか公開はされていない
1945年(昭和20年)戦争が終わると、日本の化学企業は一斉に肥料の生産に向かう。食糧事情を改善するためである
1948年には消防法が制定されている。戦後の復興で産業界でも危険物が多く使われるようになったからでもある
1949年に当時のアメリカ占領軍が、日本での製油所の復興を許可した、日本人ではじめて湯川秀樹氏が、ノーベル物理学賞を受賞した年でもある
製油所の復興は、日本のエンジニアリング技術を活性化させた。日揮や千代田化工などのエンジ会社が技術を蓄積したのもこの時代だ
その後、日本の石油精製企業が続々と稼働を開始していくことになる
一方で、この時代まだまだ工事管理は未熟で、運転中に火を使った工事大きな事故も起きている
1949/10/28で起きている事故だ。漏れていた、化学物質が爆発性の物質を造っているのに気づかず火気工事を進め8人が死亡した事故だ
時代は、1950年代へと移っていく

 

2022年01月30日

日本の化学産業約100年-昭和初期 1930年代

1930年(昭和5年)にアメリカのシェル石油が天然ガスからアンモニアを最初に生産開始した
天然ガスを原料にする化学産業が現れたのだ。
日本で天然ガスを利用した化学工業が始まるのは、戦後の1954年だ。新潟のガス田利用が最初だ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/15/9/15_9_474/_pdf
1930年には、フロンを米国GE社の研究者が開発している
昭和初期、当時の日本人の平均寿命を調べてみたら46歳だという。現在とものすごい違いだ
50才定年でも、生きていられるかという時代だ
1931年5月26日、日本で記録に残る最初の大規模な粉塵爆発が起きている。製粉会社での粉塵爆発事故だ
http://www.belca.or.jp/12l4.htm
この企業は事故から色々なことを学んだのだろう。今でも粉塵爆発について情報を提供している
https://www.nisshineng.co.jp/news/tech-info10.html
1933年(昭和8年)にはイギリスICI社で、超高圧基礎研究中に偶然ポリエチレン合成法を発見したという
気相での超高圧法(2400気圧、140-250℃)だ。高圧法によるポリエチレン生産技術が始まったのがこの時代だ
いまでもこんな高圧を扱うのは大変なのに、大変な思いをして運転していたのだろう
1935年(昭和10年)には、世界初の合成繊維ナイロン6.6の合成に成功(米デユポン社のカロザース)
石炭と水と空気から作られ、鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い、というのが当時のキャッチフレーズだった
1939年に日本でも石炭と石灰から製造するポリビニールアルコールを原料とした合成繊維ビニロン合成に成功している
ナイロンに次ぐ世界で2番目の合成繊維を日本でも造りだしたのだ
1939年5月9日日本でプラスチックの一種であるセルロイドによる大火災が起きている
セルロイド屑を運んできた貨物自動車の運転手の投げ捨てたたばこの火が、荷台のセルロイド屑に着火した
風にあおられ大火災となり多くの死傷者を出した
その年、ヨーロッパでは第2次世界大戦が始まり、時代は1940年代へと移っていく

 

2022年01月27日

日本の化学産業約100年-草創期 大正時代から昭和へ 1920年代

前回は、大正時代に始まった石炭化学とカーバイト化学について書いてみた
大正8年(1919年)にアメリカでは石油化学工業製品の製造に成功している。石油化学と言う時代がアメリカで始まり始めたのだ
世界最初の石油化学製品は、製油所ガス中のプロピレンから合成した「イソプロピルアルコール」だったという
日本で石油化学コンビナートができたのは1958年だから、実に約40年も前に外国では石油を原料とし始めたのだ
アメリカとは国力や技術力で圧倒的な差があったのがわかる事実だ
ヨーロッパではドイツのBASF社のボッシュ氏が尿素合成に成功している。尿素も肥料に使われる化学物質だ
明治から大正時代にかけてソーダ工業も発展してきた。食塩を原料として、塩素や苛性ソーダをつくる化学産業だ
ガス化した化学物質はボンベなどに充填することから、当時は高圧ガスによる事故が多発した  
日本では、現在の「高圧ガス保安法」の原点となる法律「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」が1922年に制定されている
制定のきっかけは、製氷業者からアンモニアガスが漏えいし大きな社会問題になった為と言われる  
1923年にはアンモニアからメタノールという化学の基礎物質がドイツのBASF社で合成された
1923年という年は、関東大震災を経験した年だ。大学の研究室で多くの火災が起こったという
原因は試薬瓶の倒壊による混触反応だ。この時代から、「混触反応」についての研究が進み始めたという 
日本でも独自技術によるアンモニア合成の成功し始めたのがこの時代でもある 

合成染料も重要な化学物質だ
第1次世界大戦でヨーロッパからの化学合成による染料輸入が途絶えた
これを受け、日本では「染料医薬品製造奨励法」ができ、染料製造が国策として進んだ
1927年(昭和2年)金融恐慌起こる。2年後は世界恐慌も発生した。日本経済は第1次世界大戦時の好況から一転して不況となる
さらに関東大震災後、「銀行が潰れたら、お金が引き出せなくなる」などの取り付け騒ぎが起こった
1929年という年には、アメリカで株式が大暴落した。 その後、世の中は世界恐慌へと続いていく
化学産業も大変だった時だ
時代は1930年代へと移っていく           

 

2022年01月25日

日本の化学産業約100年-草創期 明治~大正時代 1910年代石炭化学

前回は、日本の化学産業を簡単に振り帰って見た。
10年一昔という。10年くらい経つと、設備や技術などが変わってくる。当然人も変わる。うまく技術伝承できなければ事故になる
取り扱う物質も、種類や量も変わってくる
約10年くらいのくくりで、今回から化学産業の歴史を振り返ってみたい
明治時代の日本の産業の始まりは、鉄からだった。あの有名な八幡製鉄所ができたのが1901年だ。
鉄を作るには、熱源として石炭から作られたコークスが必要となる。石炭を高温で蒸し焼きにしてコークスを作る。
蒸し焼きにするときに、大量のガスが出る。このガスには多くの化学成分が含まれている。
この石炭ガスから化学成分を取りだしたのが、日本の化学産業の始まりだ。石炭から化学物質を取り出すので石炭化学と言われた
日本では1910年代に石炭化学産業が始まったと言われる。九州の大牟田というところで石炭が多く取れ、石炭コンビナートができていた
海外では、ドイツのBASF社が、ハ-バ-・ボッシュ法を用いた本格的なアンモニア合成工場を1912年に稼働(年産8700トン)した
BASF社は、既に アリザリン染料の商業化にも成功して、合成染料の生産高は、全世界の90%を占めていたという
1914年に第1次世界大戦が始まり、日本も外国から染料などの化学物質の輸入が途絶えた
これをきっかけに、石炭から色々な化学物質を生み出すことが求められるようになった
爆薬の原料になるフェノールという物質も、大分の石炭コンビナートでトルエンを使って生産を始めたのが1915年だ
また、石灰という原料から化学物質を造るカーバイト産業も1916年に大牟田で始まっている。石灰窒素事業と呼ばれていた
ハーバーがアンモニア合成の功によりノーベル賞を受賞(ドイツ)したのは、1918年だ
アンモニアというのは肥料生産に欠かせ無いものだ。
従来肥料は、天然資源から製造していたが当時の人口増加に天然資源では対応ができていなかった
空気から、窒素と水素を取りだしアンモニアを合成する技術は当時画期的だった
人を食べさせるには、肥料が必要だ。日本でもアンモニアを製造する技術を手に入れたかったが、当時はBASFから技術は公開されていなかった
日本がその後、合成アンモニアをつくる技術を外国から手に入れたのは、1931年だった

石炭堀イラストは、イラストAC無料イラストより引用

 

2022年01月23日

日本の化学産業約100年を振り返る

事故や災害を研究していると昔のことが気になる。過去があって現在があるからだ。
なにがしかのつながりがあって現在に至っている。今日は、日本の化学産業を簡単に振り返って見る。
今から約150年前の1868年が明治が始まった。この時期には、まだ化学産業という業態は無い。
大正元年が1912年だ。約110年前になる。あの有名な八幡製鉄所ができたのが1901年だ。
日本は欧米列強と戦うため、兵器や軍艦などを作るため鉄を必要とした時代だ。
鉄を作るには、熱源として石炭から作られたコークスが必要となる。石炭を高温で蒸し焼きにしてコークスを作る。
蒸し焼きにするときに、大量のガスが出る。このガスには多くの化学成分が含まれている。
この化学成分を取りだしたのが、日本の化学産業の始まりだ。石炭からコールタールという物質も得られる。
ベンゼンやトルエンから合成染料を作ることができる。当時染料は輸入品で高価だったことから染料産業も始まった。
トルエンは硝酸と化合させるとTNTなどの爆薬が作れることから軍需産業にも貢献した。当然医薬品や肥料などもつくられ始めた
日本には、石灰も沢山取れる。この為、石炭と石灰からカーバイトを作り出すカーバイト産業が盛んになる。
カーバイトという物質に水を作用させるとアセチレンという物質を造り出すことができる
アセチレン産業という新しい産業が生まれてきた。石炭のガス化で、メタノールやアンモニアなどのガス化産業も生まれてくる。
戦争が終わった、1950年代からは原料が石油へと変わってくる。
石油化学産業が勃発してきたのが、1950年代代だ。
1950年代後半の1958年には、日本ではコンビナートができた。今から約半世紀前だ。
その後、石油化学産業は成長を続ける。1960年代から大量生産時代が始まり、工場は大規模になって行く
1970年代に入ると石油危機が訪れ原料価格が高騰する。化学産業でも、少量で高価格品が模索されるようになる
1980年代からは、高機能製品を生み出すファインケミカルの時代も到来する。少量多品種で付加価値の高い化学製品をあみだしたのだ。
その後、日本は東南アジアや海外におされ厳しい状況になりつつあった。1990年代からは、海外に工場を設置するようになってきた
2000年代は、高度経済成長期につくった工場設備の老朽化が始まり老朽化という事故も増え始めた
さらに、2000年代後半からは、いろんな経験をしてきた団塊の世代と言われる人達が定年で会社を去っていった
2010年代に入ると、東北大震災や化学産業での事故も続いた。団塊の世代の退職も少なからず企業の安全力に影響してきているのだろう
2020年代は始まったばかりだ。IT技術で、安全を担保する動きも進んでいる。
限られた時間と、資源でどう安全を担保していくかだ。過去の失敗に学ぶことも大切だ

 

2022年01月21日

自動制御のおかげで化学プラントは運転できる

現代は巨大なコンビナートも、運転操作している人は実に少ない
何十万m2の広大な敷地を誇る化学工場でも、夜間運転に携わるひとは工場全体でも数百人もいない
私が化学工場に勤めていた頃の現役時代は工場にまだまだ沢山人がいた
今から半世紀前の1970年代だ
1970年代には電気式の調節計で化学工場が自動化されて運転されていたがまだ2倍近く人がいた気がする

日本ではじめてコンビナートができたのは、1958年だ。山口県の岩国と愛媛県の新居浜というところでコンビナートが動き始めた
その頃は、今の何倍もの人が化学工場にいた なぜなら、完全自動制御ではないからだ
当時の制御方式は空気式だ。しかし、フィードバック制御はもうこの時代には確立されていた
しかし、空気というのは、電気信号と違い計器信号を遠くへは伝送できない
したがって、計器室に全て情報が集まるわけではない 現場型の空気式調節計で運転されていたものも沢山あった
この為、絶えず、現場に出向き温度や圧力がうまく制御されているか確認しなければいけない作業が沢山あった
つまり監視には多くの人が必要だった 現場もそれほど自動化されず人による操作も多かった

いまでこそ、自動制御というのは当たり前だが、たかだか約半世紀前はまだ人海戦術だ
つまり、人が少しうっかりするとトラブルが起こり事故につながる。そんな世界があたり前だった

ところが、1960年代に入るとあっというまに状況は変わった トランジスターを使った自動調節計が使われるようになったからだ
1968年に確か当時の徳山にあった製油所で、電子式パネル調節計が使われるようになった
計器室で居ながらにして指示も見れるし、調節もできるようになったのだ
電気で動き、しかも現場に出向くことなく計器室で自動制御できる装置が世の中に出始めたのだ
電気式自動調節計だ

自動調節というのは、すごい世界だ 人間の仕事を画期的に減らしてくれた言ってもいいのだろう
これからも計装や制御機器は進化を続けていくのだろう
写真引用 DEYAMAさんホームページより http://deyama.a.la9.jp/

 

2022年01月19日

ライニング機器の事故-テフロンライニングのガス浸透

化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
耐食性機器の内張などに使われる。ライニング機器を使うに当たってライニング材の選定を間違うと事故になる
テフロンで内張ライニングをしたマグネット式ポンプから塩酸が漏れた事例を紹介する
使用を開始してから、3年目でテフロン膜を塩素ガスが浸透した結果鉄製本体部に穴が開き塩酸が漏れたという事故だ
購入後2年目の検査で異常は見つかっていなかったという

理由はこうだ。塩酸を流すポンプだが、塩素ガス分を含んだ流体だった。
テフロンは、液体は通さないが気体は、テフロンに空いた微細な穴を通って浸透していくという性質がある
ガス分を含むと言うことに配慮せず、テフロンライニングを選定したことがトラブルにつながったのだ
私も、過去に塩酸系のプロセスでテフロン製保護管内に納められた温度計シースが腐食しているのを見たことがある
まだ20代か30代の頃で、当時は原因がなぜかはわからなく単に温度計のシースを交換したことを覚えている
理由がわかったのは、それから20年後にこのテフロンライニングポンプのトラブル事例を知ったときだ

テフロンには微細な穴が開いていて、液は通さないがガス分は浸透することがあると思って欲しい
ライニング材質の選定に当たっては、ガス浸透を考慮に入れて欲しい

 

2022年01月17日

ライニング機器の事故-事故のパターン

ライニング機器が原因で起こる事故について書いてみたい
化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
酸を入れる耐食性機器の内張などに使われる。破裂板などの安全装置にも、ライニングをした板が使われることがある
ライニングの目的は、母材となる材料コストのコストダウンだ。酸などに耐える金属は、通常の鉄などと比べ格段に高くなる
ライニングをすれば、高級な金属をそのまま使うことがなくなり大幅なコストダウンになる
そこに目を付けて、ライニング機器が使われることになる

そうは言っても、ライニング機器故のトラブルはある。大きく分けて5つある
1つ目は、初期不良だ。製作段階で、微妙にピンホールなどができているケースだ。検査はするものの、すり抜けて後で問題を起こす
ライニングは、わずかなピンホールでもあればそこを通って腐食性物質などが漏れ母材を腐食する。結果としては漏洩事故になる
メーカー側も、欠陥のない製品を目指しているものの100%完璧なものは存在しない
2つ目は、ライニングの老朽劣化による剥離だ。しっかりと、点検していれば良いのだがライニングが剥離すると思わぬ事故になる
ライニング機器も、寿命があると考えなければいけない。点検もせずまだ使えると思い使い続けていていきなり漏洩事故を起こすパターンも多い
3つ目はライニング剥離時に、水素が発生して爆発を起こす事故だ。ライニング部が劣化して、金属と酸が接触すれば、水素が発生する
水素が発生しているのを知らずに火気工事をして爆発する事例は多い。火気工事前に、ガス検知器を怠るからだ
4つ目はライニング機器やライニングした投入シュートでの静電気事故だ
機器本体は金属でも、内側をライニングしてしまうと静電気を逃がすのは難しい。ライニング機器の静電気事故も甘く見ないことだ
5つ目は、改造や解体工事での事故だ。工事では、火を使うことになる。ゴムなどのライニングは、溶接の火の粉などが落ちれば着火する
溶接や溶断工事中火の粉が落ちて火災になる事例は多い
自分の工場でライニング機器やライニングした破裂板を使っているなら、事故のリスクをしっかりと知って使って欲しい

 

 

 

2022年01月15日

残液確認抜き取り作業での静電気着火事故

定修時や銘柄変更時などでドラム内を有機溶剤で洗浄することは多いだろう。
洗浄した液は、抜き出すもののいくらかの洗浄液は容器底部に残ることがあるだろう
底部にあるバルブを開けて残液を確認することが作業手順の中に含まれていると事故になることがある
可燃物を大気に出すのだから、このようなことが作業手順書に書かれていたらこの時の安全確保をどうするかだ
洗浄に有機溶剤を使っているのでば、底部にあるドレン弁はゆっくりゆっくり開けるはずだ
そうは言っても、サイズが大きければ少し開けただけでも液が多めに出るだろう.霧状にでれば、簡単に静電気で着火する
こんな事故がある 2014年5月14日の事故だ
http://www.gomutimes.co.jp/?p=66432
原因は抜き出し弁のサイズが普通使われるサイズよりかなり大きめだったこと。さらに、ドラム内にかなりの窒素の残圧が残っていたと記憶している
この事故の後、この企業は液の抜き出し確認をやめたという
つまり、大気に抜き出すのではなく、たぶん別途回収用ドラムに抜き出す専用配管を設けたと思われる
可燃性液体を大気に出さなければ、本質的に安全だからだ

可燃物を安易に残液確認だからと言って大気に出せば、静電気で着火する事例は多い
特に、窒素パージ後の圧力などが容器内に残ったままで脱液すれば思ったよりも激しく液が飛び出すことになる
現場の作業マニュアルの中に、容器内圧力確認を織り込んで欲しい
圧力が残ったまま液を抜き出せば思わぬ事故になるからだ
たかが残液確認作業だと思わないで欲しい

 

 

2022年01月13日

事故原因をしっかり解析して再発防止を図れ--なぜなぜ分析 4M分析を活用せよ

事故や災害が起きれば、企業は再発防止を図る。ところが、事故や災害要因の解析が甘ければ事故は本質的に削減することはできない
事故が起こると、事故を起こした本人に対して、注意するとか組織内で教育するとかの対策をとって再発を防止しようとするがこれではモグラたたきだ
同じ事故は起きないが、同じような事故は必ず起こる。事故が起きた職場だけに対策を取っても、違うところで必ず事故は起きるからだ
つまり、事故の要因を解析し、他の職場に水平展開しなければ企業内での事故の続発を防ぐことはできない
多くの企業の、労災報告書は仕事がら沢山見る。そこで気づくのは、報告書での記載事項の問題点だ
報告書の記述作業を全て、事故発生現場に丸投げしていることだ
事故を起こした職場は、安全解析の専門的知識を有しているわけではない。報告書の書式は決まっている。空欄は全て埋めなければいけないのだ
書式に従い4M解析などに関する記述欄の空欄を埋めることになる。一応空欄が埋まると受理されるのだろう
そのまま、全社展開ということになる
しかし、我々のような監査を仕事としているものから見ると、その企業の本社の安全部門がどこまで口を挟んでいるの疑問に思うものが実に多い
つまり、ほとんどの災害案件の対策が対処療法に過ぎないものが実に多い
教育するとか本人に注意するとかでお茶を濁している
私なりに、4M法で解析すれば、マネージメントの部分がものすごく欠落している
管理者は何をしていたのかと疑うように災害事例も多いのに、そのことは事故に再発防止策としてすっぽり抜けている
原因分析も曖昧なものも多い。なぜが、しっかり解明されていないからだ
なぜ、解明されないかというと、なぜの切り口がわかっていないか教育されていないからだ
なぜはまず人という切り口で見る必要がある。人がどんな理由で判断を間違えたり、作業を間違えたりしたかだ。ソフト的要因が切り口だ。
次に、物理的要因だ。機械の故障などハード的要因だ。ソフトとハードという両面で解析する必要がある。
事故や災害を防ぐには、ボトムアップとトップダウンも欠かせない
本人たちがいくら頑張っても限界がある。管理という仕組みでカバーが必要なのだ
再発防止策が曖昧だと事故は根絶しない

 

2022年01月11日

年の初めに考える--事故の教訓を伝えていこう

今から8年前の2014年1月9日に三重県四日市で起こった熱交換器の爆発事故を覚えていますか。爆発により多くの人が死亡した事故です。
事故後、事故報告書が作成され事故の原因はある程度公開されたものの、多くの人はなぜ事故がおこったのかという答えには満足していなかったのでは無いでしょうか。私もその1人です。https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-0612.html
公式の報告書が出ることは望ましいのですが、事故の教訓を自社に展開する為のキーワードが何かがわかりずらいのが公式の事故報告書ではないでしょうか。そんな思いもあり、もう少しわかりやすく事故の原因と教訓を伝えたいと考えていました。
当時私は、日本化学工業協会(日化協)の支援メンバーであったことから、この四日市の事故で伝えるべき教訓をビデオ化しまし。
その後、私は、日化協と協力しながら、東ソーの蒸留塔の事故、三井化学の反応器の事故、日本触媒のタンク事故とビデオを作成していきました。
脚本作りは自ら行いました。シナリオを自ら作り、脚本を考えました。
事故を伝えるには、事故の事実を伝えるのでは無く事故の教訓を伝えることに力点を置く必要性があります。それが、一番難しいのです。
ビデオ化すると、どうしても事故の事実を伝えようとする意向が強く反映され、肝心の教訓が消えさってしまうからですhttps://www.nikkakyo.org/press/5146 今回の事故は、多くの教訓を与えてくれています。
特殊な物質を扱っていたから起こった事故だと単純に捉えてはいけません。
熱交換器の開放時に起きた事故であり、どこの化学工場でもやっている熱交換器の開放作業に関わる事故だととらえておく必要があります。易しく言うと、熱交換器の蓋を開ける前に、無害化されているかがきちんと確認できるシステムになっていなかったことが事故になっていたのです。安全かどうかは経験則に頼っていたのです。本質的な意味で、化学工学的に安全だというマニュアルになっていなかったのです。年末から年始にかけて長時間窒素でパージしていれば安全と考えていたことが事故につながりました。熱交換器に残されていた物質は。ドライ窒素のようなの乾燥した気体では爆発感度がものすごく上がることが事故報告書に記載されています。乾燥した、窒素でパージしたことが結果として事故の被害を大きくしました。窒素でパージすれば安全という、思い込みが事故につながっています。これからも、チャンスがあれば事故の教訓をビデオ化してみたいと思います。過去に起こした、事故を教訓にしてビデオ化したい場合は相談して下さい。ビデオを作成するときにお手伝いは可能です。事故の事実を伝えることよりも、その教訓を伝えた方が再発防止には有効です。とはいえ、教訓とは何かを考えるのはなかなか難しいのです。何千件の化学プラントの事故事例を知り尽くした私でも悩むものです。事故を防ぐ究極の答えが教訓だからです。

 

2022年01月09日

年の初めに考える--非定常時作業などの技術伝承

化学工場で運転トラブルが発生すると、トラブルは、すぐに解消しなければいけないからベテランがさっさと対応する
若手は周囲にいてもトラブル対応への直接的に参画するチャンスは少ない。常にベテランがトラブルをすぐに解決してしまう
これでは、技術伝承はしていかない。失敗を伝えられないからだ
確かにトラブルが起これば時間との勝負だ。手遅れになれば、安全上問題になるかも知れない
生産損が生じるかも知れない。だから、トラブルが起これば、いつもベテランが短時間に解決する方法を選ぶ
これでは、なかなか後輩が育たないという現実がある
限られた時間の中で問題は解決しなくてはならないのだから、現実はこういうことになる
たしかに、トラブルは放置するわけにいかず、教育のために無駄な時間を割くことはできない
とはいえ、人にその技術を教えなければ企業は存続していかない
トラブルをどう対応するかは、自分だけの技術で終わらせないようにすることだ
自分が得たノウハウは、技術伝承しなければいけないのだ。それが企業存続への道なのだ
トラブルが起きているときは、技術伝承している暇は無い。それは認める
とはいえ、トラブルが一段落すれば時間はあるはずだ
100%は求めないが、トラブルで得た知見は次の世代に口答でも良いから伝えて欲しい
企業はそのような文化を育てて欲しい.機会も与えて欲しい
非定常時の技術伝承も大切だ

 

2022年01月07日

年の初めに考える--10年毎の事故の変革--技術伝承の大切さ

事故は10年毎に大きな事故が起こるという。10年くらいで、社会環境が変化していくのもあるだろう
2000年代で起きた事故のパターンは老朽化だ。戦後、50年たった石油精製系企業が軒並み事故を起こした
設備はいくらメンテナンスをしても、もって半世紀位だ。つまり老朽化の節目というのは、50年くらいと言うことを教えてくれたのだろう
2010年には、東北大震災をきっかけに半年ごとに大きな事故が化学産業で4件起こった
最初は、千葉で起こった球形タンクの柱が折れた事故だ。製油所での事故だ
省エネが進行し、ますます石油製品は売れなくなってきているという社会環境の変化もあるのだろう
その結果と、石油精製産業、昔と違い、経営利益は潤沢ではない。地震対策にお金も十分にかけられない。そこを襲ったのがこの事故だろう。
その後、山口県の徳山で事故が起きた。残念なことに、製造現場の係長が命を落とした
塩ビ系は鉄さびが触媒になるという、技術伝承が企業内でうまく伝承できていなかった事故だ
管理者が、事故が起きたとき何とかしようと思っても、化学物質はある一線を越えれば人がなんとかできるレベルではない
企業も事故時の危機管理を積極的に伝えていなかった不幸な事故だ
2012年4月今度は、過酸化物を扱うプラントで爆発事故が起こる。まだ22才の若い運転員が命を落とした
プラントで、異常が起こったらとにかく人を現場に出さないことだ。計器室の中にいれば爆風も避けられる
この事故では、まだ現場は安全と考え、人を現場に出したことが死亡事故につながった
反応器の近くで、コンプレッサーを起動しようとした運転員が爆発で死亡したのだ
インターロックを解除すれば、どんなリスクが生じるかがうまく技術伝承されていなかったじこでもある
2012/9/29今度は能力増強運転中爆発事故が起こる。アクリル酸という温度に敏感物質の事故だ
温度は40度程度で制御しないと、重合反応という反応が始まる物質だという
タンクの中にその反応性の物質を満液にしていたという
本来なら、タンクの中を循環させるポンプを運転させるはずだったがその操作をしなかった
結果として部分的に温度が上がりタンク内で反応暴走が起こりタンクが破裂した
めったに使用しないタンクで、液の循環を忘れたというのだ。非定常作業での事故だ
高温の液が近くにいた人達に降りかかり、消火作業をしていた消防士にも降りかかり死傷した事故が起きている
2010年代の事故は、何件かは過去に起こった事故とパターンは似ている
つまり、技術伝承がうまくいっていれば防げた事故かも知れない
2020年代はどんな重大事故が起こるのかはまだわからない
事故をくい止める努力は続けていきたい

2022年01月05日

年の初めに考える--現場では本当に安全を何よりも優先しているか

企業のCSRやサステイナブル報告書を見ると、企業の経営者が書いた安全方針には「安全優先」と書いてあることが多い
問題は、現場の課長層までその考え方が本当に届いているかだ
日々の運転管理を委託されている製造課長などは、装置を止めることなく運転を継続することが求められている
トラブルもなく安定的に運転していれば、安全装置を解除するようなことはない
ところが、運転にはトラブルは付きものだ。装置の調子が悪ければ、運転しながら装置を点検することになる
その時、安全装置をどうするかだ。点検中、万一装置が停まっては困ると思うのが管理者の常だ
点検中のミスで装置が停まって欲しくないのは当たり前だ。とはいえ、機械の調子が悪いのだから、何か問題があるのだ
ならば安全装置は解除してはいけないのだが、現実は生産優先という考え方で安全装置を解除して事故が起こってしまう
こんな事例がある。発電用タービンの調子が悪かった。点検しようと言うことになった
この時、点検中にタービンが突然停まってはいけないと思い管理者は、安全用インターロックは解除した
ところが不幸なことに、タービンが暴走回転を起こしタービンが吹き飛んだという事故が過去に起こっている
http://www.sydrose.com/case100/106/
https://www.isad.or.jp/pdf/information_provision/information_provision/no37/36p.pdf
こんな事故もある。千葉の京葉コンビナートにある東京電力の発電所での発電ボイラー爆発事故だ
発電所でボイラーの点検中爆発し作業員が死亡した事故だ
https://www.tepco.co.jp/cc/press/96071701-j.html
事故報告書は官庁に提出されているが、この企業はその後原因は公開していない
原因はこうだ。ボイラの負荷変動テストをしていた。その際、データー入力を間違えた
大型のボイラーのため、急変動により、ボイラー内で失火した
本来なら、火が消えれば自動的に燃料は停止するようになっていたが安全装置を切っていたため、炉内で未燃の燃料ガスが爆発したのだ
負荷変動テストの際、誤作動などにより誤ってボイラーが停止しないよう「安全装置」を解除していたことが事故につながった
安易に誤作動を気にして、肝心の安全をおろそかにした事故だ
安全装置はいついかなる時でも解除しないで欲しい
誤作動を気にして、安全装置を解除して重大な事故担った事例は多い
安全装置は、人を守る最後の砦だ。解除しないで欲しい

2022年01月03日

今年一年の国内外の重大事故を振り返って その2

2021年は今日で最後だ。2015年末から、このブログを書き始めて6年になる。
今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった 前回にひき続き、記憶に残る事故を紹介する
2021/7/6 トナー工場で粉塵爆発  安全対策を取って再稼働したものの 8/12 再び爆発が起こる
https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/2021081300000002.php
トナーという印刷に使う粉体の乾燥設備での事故だ
第三者委員会で対策は検討して、再稼働したはずだが、万全ではなかったようだ。 粉塵爆発への対策は難しい
2021/7/7 製紙工場のベルトコンベアーで火災
2019年4月と20年3月にも工場内のベルトコンベヤーから出火しており、温度を感知する装置を使った設備点検などの防火対策を講じてきたという。
https://www.sakigake.jp/news/article/20210817AK0015/
https://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/23d83930ffb83b8cabc130fc3c81f4fa
ベルトコンベヤアー火災は、世の中で繰り返し起きている。たまにしか報道されることはないが、事例は多い
ゴムが摩擦熱などで着火するのだ。ローラーなどが固着したり、ベルトが外れかけていて何かと当たり摩擦熱が生じることもある
2021/10/7 東京都と埼玉県で震度5強を観測する首都圏地震。
この事故で千葉県のコンビナートにある製油所で火災が起きた。大きな火災にならなくて良かった
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211008-OYT1T50042/
地震対策は難しい
2021/10/10 JR東京蕨変電所で火災 首都圏JR全面停止。首都圏地震の後だけに、地震との関連を知りたいのだが報告書は出ていない
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211011-OYT1T50238/
2021/11/29 大阪で物流倉庫火災。最近大規模建屋の火災が多い。窓もないので。消火が困難で長時間火災が続くパターンだ
逃げ遅れると一酸化炭素中毒にもなる。倉庫火災は恐ろしい
https://www.asahi.com/articles/ASPD23J56PD1PTIL01T.html
一年振り返ると色々な事故がある。近年倉庫の大型化で、大型倉庫火災も増えている
初期消火に失敗すれば、必ず大型火災になっている気がする
火災報知器が鳴ってから対応しても、現実は消火に至らないのだろう
こんなレポートもある。参考にして欲しい
https://gcoe.tus-fire.com/archive_cms/kobayashi-k/cms/wp-content/uploads/2017/09/e0f734e2bc5a186fbab044b000bd7f95.pdf

2021年12月31日

今年一年の国内外の重大事故を振り返って その1

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
事故の報道はされるが、1年経過しても原因や背景などはほとんどその後報道されることは無い
報道は,起きた事実だけを伝えるものだからだ 時間が経ってから2度と報道されることはほとんど無い
ここに、今年の国内外の主要事故を書いておく まずは、年初に起きた消火設備による死亡事故だ
2021/1/23二酸化炭素消火設備点検中誤作動で死亡事故
https://www.khk.or.jp/Portals/0/all_oshirase/2020/01_20210126_co2attention.pdf
過去にも沢山同様の事故は起こっている 以下のURLで過去の事例を見れる
http://labor.tank.jp/saigai/101007syoukasetubi.html
2021/3/19 半導体工場で火災
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210419/k10012982551000.html
まだ調査報告書は出されていない
2021/3/29 インドネシアの製油所で大規模火災
https://www.afpbb.com/articles/-/3339341
2021/4/26 セメント会社で5万KW発電用のボイラーが爆発
ボイラー内の水管が破れて水蒸気爆発が起きたという。報告書が出ているので参考にされたい
点検管理の大切さがわかる事例だ
https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/211109_2.pdf
2021/5/10 タンクで点検中タンク内に落ち死亡
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/790534
詳細はわからないが、腐食した天板などに乗ったことで転落事例もある 安易に天板などに乗らせないことだ
2021/5/11 亜鉛の粉末を製造している化学工場で爆発。粉塵爆発だ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1114R0R10C21A5000000/

今回紹介したいずれの事故も,1件を除き原因は報道されていない
事故が起きても、原因がわからなければ教訓として利用できない そこに,事故が繰り返される理由がある
事故の原因やその後の対策情報の公開を望みたい
イラスト 出典 イラストAC

 

2021年12月29日

事故調査方法の文献

事故や災害が起きると、時間をかけて調査をして調査報告書が作られる。
やみくもに調査を進めて、報告書を作ってもその報告書が活かさなければ何もしなかったのと同じことだ。
調査をする目的は、本来事故の再発防止が目的のはずだ。その目的にかなわなければ意味が無い。
とはいえ、何をどのように調査するかは知らなければ難しい。
労働災害発生時の調査や再発防止などは色々な情報が公開されている
https://www.tokubetu.or.jp/text_shokuan/text_shokuan9.html
危険物漏洩時の事故調査方法に関しては、消防庁からこんな資料が公開されている
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/h20/2008/200811-2houdou_b2.pdf
破壊事故の調査についてはこんな文献もある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws1943/52/4/52_4_357/_pdf/-char/ja
高圧ガス保安協会の方が書かれた事故調査に関するの文献も下記にあるので興味のある方は見て欲しい。
文献名は 事故調査と安全対策 著者は堤内さんだ このキーワードでもインターネットで検索できるはずです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/17/3/17_3_160/_article/-char/ja/
イラスト出典 いらすとや

 

2021年12月27日

排ガスを安易にパージ用ガスとして使うな--微量の成分でも反応する

排ガスは誰でも有効利用したいと思うのは当たり前だ
熱回収は当然行うだろう
燃焼後の排ガスなら,成分はほとんどがチッソだからパージ用ガスとして使いたいのはやまやまだろう
でも過去の事故事例を見て見ると失敗している事故事例は沢山ある
原因は,排ガスの中にわずかに可燃性ガスが含まれているケースだ
私の知るとこの最も古い事故事例は,1964年7月1日の四日市で起きた事故だ。ブタジエンを取り扱う合成ゴムプラントの事故だ
定修準備の為、反応器をパージしようとした。パージガスには、排ガスを利用していた。
ペンタンを燃焼させて出来る排ガスには、ブタジエンと反応する、NO2が数百PPM含まれていた。
当時は不活性ガスで事故がなぜ起きたか不明であったので、その後、時間が経ってから真相がわかった。
軽油の燃焼で製造された、微量のNO2を含む不活性ガスが反応器入口バルブのシール用に3B配管で供給されていた
この配管で爆発が発生,5mにわたり破裂飛散した。
事故の前に流量計が何度かハンチングしており、ペンタンを燃焼した際の加熱片が配管内に入り着火源になったという
原因は,排ガスパージ配管に枝管がありそこの弁の内漏れでブタジエンと排ガス中に含まれるNO2が反応してしまったのだ
ブタジエンは微量であれNO2と言う物質と反応して爆発性の物質を造る
その爆発性の物質が,爆発した事故だ
燃焼排ガスは,成分は100%窒素では無い。微量の不純物が混在する
その不純物が微量でも反応する物質がある箇所のパージには適さないということだ
安易に排ガスだからと言ってパージ用ガスとして使わないことだ
プロセス設計をするに当たっては、物質の性質をしっかり知っておくことだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/38/2/38_129/_pdf
イラスト出典 いらすとや フリーイラスト

 

 

2021年12月25日

安全配慮義務とは--化学産業

安全配慮義務という言葉がある 誰が誰に対する義務かというと、【労働契約法第5 条】ではこう定めている
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
使用者とは、賃金を払う人だとこの法律では定めている。つまり、雇用主と労働者の関係で求められる義務といことになる
労働契約法と、労働基準法とは異なるので注意が必要だ。労働契約法とは、民法だ。刑事罰のような罰則は無い
労働基準監督署の行政指導の対象でも無い。しかし、安全配慮義務を怠ると損害賠償請求を起こす根拠となる
民事上の損害賠償請求を、使用者は求められることになる。使用者と労働者の関係であれば化学企業の中でも安全配慮義務は存在する
化学工場で労働者が機械に巻き込まれたりすれば、安全配慮義務違反という問題も発生する
労働安全衛生法という法律がある。この法律は、事業者(会社)が守るべきこと及び労働者が守るべきことを規定している
事業者が機械を設計する際安全を配慮した設計をせず法律も守っていなければ、安全配慮義務違反にもなる
刑法の法違反は刑事罰で処分されるし、民法上の安全配慮義務違反は民事裁判等で審議される
では、化学企業が装置を止めて、建設業などに定修工事を発注するときは安全配慮義務は生じるのかどうかである
発注書は、元請け企業に発注する。元請けは、下請けに仕事を発注するのが建設業などの形態だ
工事で、下請けの労働者が怪我をしたとしよう。
化学企業は、怪我をした労働者の使用者では無い。では、安全配慮義務は生じないかというとそうはいかない
たとえば、下請けの労働者は、化学物質で薬傷を負ったとしよう。発注者は、作業をする労働者が薬傷などを負わないような配慮が必要だ
例えば、装置や配管などの薬液を抜き、十分な水で洗浄を行い安全な環境を確保する必要がある。
それを怠っていれば、安全配慮義務違反から逃れることはできない 発注者は、使用者では無いから安全配慮義務は問われないと思わないで欲しい
多層の契約形態であっても、労働者の安全に関わる事項であれば発注者までその責任が及ぶことがある
安全配慮義務に関する法令や違反事例については、勉強しておいて欲しい
https://www.oreyume.com/column/p-cat-02/9449/
https://www.irric.co.jp/risk_info/worker/31.php
イラスト出典 https://www.think-sp.com/2013/08/19/kikikanri-anzenhairyogimu/

 

2021年12月23日

ヒューマンエラー メカニズム--個人のミスか組織のミスか

事故や災害が起きると色々な解析が行われる
その切り口の一つに「人」がある。人がミスをするからと言う観点で問題を解析するのだ
ならばどんな切り口というキ-ワードがあるかというと。端的に教えてくれる教科書は無い
人というものが発端となるならこのようなポイントで解析するとよい
まず起点は脳だ
脳の入り口から見て見ることだ。つまり、まず必要な情報を入手できたかだ。そこを検証して欲しい
つまり、事故や災害であれば、人が異常に気づけたのかだ
疲れていて警報に気づかないこともあるだろう。警報音が小さすぎたら気づかないだろう(異常に気づく環境の問題)
異常に気づけたとすれば次は、脳での判断だ
的確に判断できたかがポイントだ。必要な教育訓練を、予め受けていなければ適切な判断はできないだろう。
十分な知識や技能が備えられていたかもチェックポイントだ
次は、判断は正しかったが行動に移せたかだ。
一人で対処できるならそれでいいが、部下がいるなら、指示命令が適切にできたかだ
情報が正しく関係者に分散できたかもポイントだ
この世の中、一人で何かを行っているわけでは無い
まず。個人としての情報入手、判断、情報の展開、指示ができていたかだ
その上で、組織として情報の入手、分析判断、情報の展開、指示ができていたかも検証することだ
ヒューマンエラーというのは個人だけのミスでは無い
組織としてのミスにも着目して欲しい
イラスト出典 https://ameblo.jp/enokingenokingenoking/image-12364316814-14159901191.html

 

2021年12月19日

事故や災害を防ぐにはシステマチックな対応が必要だ--なぜなぜ分析や4M解析

事故や災害を防ぐにはシステマチックな対応が必要だ。個人個人の努力も必要だが企業として組織的な対応が求められる。
とはいえ組織的な対応とは何かと問われると、なかなか理論立てて答えるのは難しい。
災害に対してきちんとPDCA回して、事故のリスクを減らす安全管理システムを活用することが今求められている。
2011年の東北大震災以降コンビナートで大きな事故が続発した。
これを受け、災害防止の取り組みについて国の主要機関で検討が進められてきた。
2014年5月16日に、内閣官房、消防庁、経済産業省、厚生労働省の4者連名により「石油コンビナート等における災害防止対策の推進について」と題し、企業や業界が取り組むべき事項について報告書がとりまとめられている。
これに書かれている内容を、わかりやすく解説している資料があるのでここで紹介しておく。
株式会社 インターリスク総研というところから出されている文献だ。下記のホームページにあるので参照されたい。https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/disaster/57.pdf
リスクアセスメントについては、非定常と変更管理で力を入れることを提言している。
技術伝承については、Know-Whyを織り込むことと、危険を予知する能力の伝承を強く求めている。
情報活用面では、自社の情報だけに頼らず広く社外の情報を活用することを求めている。
つまり、同じような事故は繰り返し繰り返し起こっている。過去の情報を知っていれば未然に防げる事故は多いと言うことだ。
そうは言っても、消防や警察に山のように埋もれている事故情報が公開されない限り現実問題、事故の情報を得ることは難しい。
公開されたと言っても、行政などが情報を要約加工した情報だけでは教訓を捉えることは難しい。
なぜなぜ分析や4M解析をするには、必要な情報が不足している
事故から学ぶことは事故の事実ではなく、事故の教訓だからだ。

 

 

2021年12月15日

酸とアルカリ物質の違い--アルカリ腐食

酸という化学物質がある 世の中に役立つから酸が存在する。アルカリという物質も存在する
酸という物質の代表的なものに、塩酸、硫酸、硝酸などが知られている
金属の表面洗浄などに使われる 酸化された黒っぽい金属を酸で洗えば汚れが取れてきれいになる
金属貨幣経済が始まった時に酸は重宝されたそうだ。明治の初め、大阪造幣局で貨幣を量産し始めたときに硫酸を大量生産したという記録がある
酸を使うときに気をつけなくてはいけないのが水素だ
金属は酸化されるときに水素を発生する。水素は爆発性物質だ。水素の発生を意識せず火を使えば爆発する
酸を扱えば、必ず水素が出てくると思って欲しい
では、カセーソーダなどのアルカリはどういう物質かと言えばこう考えて欲しい
酸は、金属を犯す。アルカリは、人の皮膚を犯すと考えて欲しい
人の細胞や皮膚は、タンパク質でできている。アルカリは、このタンパク質を犯すのだ
アルカリが目に入れば、失明することもある。皮膚につけば、皮膚が溶けてやけどのようになる
皮膚が犯されれば皮膚呼吸ができない
人間は口から呼吸しているわけでは無く皮膚の表面からも呼吸している
薬傷で皮膚が犯されれば、皮膚呼吸もできない
アルカリは皮膚など人間を壊すと考えて欲しい
化学産業などでアルカリは、油などの洗浄によく使われる。その際、アルカリは、ステンレスなどの金属でアルカリ腐食割れを起こすこともある。
https://www.ipros.jp/technote/basic-corrosion/
アルカリ割れの事故事例も、高圧ガス保安協会から紹介されている。酸の腐食は結構知られているが、アルカリ腐食も関心を持って欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2011-189.pdf
酸は、金属を溶かす、人にも薬傷を与える。アルカリは、金属をも壊すし、人の皮膚を溶かすと考えて欲しい
酸もアルカリも金属腐食などを起こす。しっかりと特性を知っておいて欲しい

 

2021年12月12日

除害設備の設計-処理能力に問題は無いか

有毒な化学物質を扱う化学工場には除害設備というものがある。無害化して安全な状態で大気に放出する設備だ
化学工場では塩素やホスゲンなど有毒なガスが使われていたり、硫化水素などのガスの発生もある
万一大気に漏らすと人命にも関わることになる
問題はその処理能力だ
最悪の事態を考え能力が決められていればいいが,多くの事故事例から能力不足という問題がある
処理能力は、何かを想定して通常決められている。一般的な決め方は、通常発生する有毒ガス量に安全率をかける方法だ
通常のガス量というのはそれほど多くない
ところが突然の運転トラブルや停電などで、通常時を大幅に超える事例も沢山ある。運転員の作業ミスが引き金になることもある
例えば誤って、液化塩素を除害設備に流してしまう事故事例だ
液化塩素は気化すると容積が増え大量の有毒ガスが発生する。設計上の能力が、常時発生する排ガス程度であれば大幅に能力を超えることになる
除害設備というのは最悪の条件を想定して処理能力を決めておくことだ
更に、2系列化しておくことが望ましい。どちらか一つがうまく動かなくても他系列でカバーさせるのだ
まら、停電でも確実に動くようにして欲しい。バックアップ電源が必要だと言うことだ。
異常時に自動起動する方式の除害設備は、定期的に作動テストをして欲しい。リレーが故障していていざという時作動しなかったという事例もある
地震時に設計が悪く除害設備が自動起動しなかった事例もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000197.html
非常用電源設備が,起動したもののすぐに停止してしまったからだ
地震の揺れで、冷却水の液面計が誤作動し、本来動くべきはずの非常用電源設備が動かなかったからだ
地震による液面計が誤作動する事例は多い.液面のスロッシングによる影響だ
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/analysis/372.html
除害設備を保有しているなら処理能力や動作条件を再検証して欲しい。最悪の事態でも対応できるかだ
保守も大切だ。確実に動くことを定期的に確認して欲しい

 

 

2021年12月10日

混触反応の法則--化学物質の組み合わせ

化学物質は混ざると危険というリスクがあることを知っているだろうか
化学物質というのは、単独では問題は無くても他の化学物質を混ぜ合わせると危険なことが起こることがある
これを混触リスクと呼んでいる
たとえば酸と水を混ぜた時を想定して欲しい
濃硫酸と水を混ぜると激しく発熱する。とんでもない発熱反応が起こる
酸とアルカリを混ぜても中和熱という熱が発生して液の温度が上昇する
化学物質で怖いのは、温度上昇だ。 温度が10℃上昇すると反応速度は2倍になる
30度上昇すると、かけ算だから2×2×2=8倍になる
8倍というのは、アバウトな感覚でいえば、反応速度が一桁上がると言うことだ
では、温度が100度まで上がると同じような計算式で2を10回かけ算することになる
答えは、1024倍だ
100℃まで温度が上がれば反応速度は約1000倍というとてつもない反応速度になる
このスピードで反応が急激に高まることを反応暴走という
通常の冷却では、この暴走を止めることはできない つまり、冷却能力は1000倍必要となるからだ
化学物質には常に組み合わせのリスクが存在すると考えて欲しい
混触反応は、組み合わせの法則だといえる
最低限どんな物質と組み合わせたらまずいのかは知っておいて欲しい
https://www.google.com/url?esrc=s&q=&rct=j&sa=U&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/24/1/24_37/_pdf/-char/ja&ved=2ahUKEwjMpaHG1tH0AhVdy4sBHRWRD58QFnoECAMQAg&usg=AOvVaw1j1YPzr--URnuclxcBIVcz

https://www.google.com/url?esrc=s&q=&rct=j&sa=U&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/47/4/47_229/_pdf/-char/ja&ved=2ahUKEwjMpaHG1tH0AhVdy

BHRWRD58QFnoECAcQAg&usg=AOvVaw30sgcAgFU2TPLBOZjWWR1l

 

 

2021年12月08日

粉塵爆発に思う--金属の粉でも爆発すると思え

粉塵爆発の事故が報じられていた
https://www.youtube.com/watch?v=i9D-3DJ-uRU
亜鉛の粉を取り扱う装置を起動していたとき爆発が起きたという
粉末に風を送る送風機で異音がして、しばらくして爆発したという
原因は不明と言うが、粉という物は着火源があれば簡単に火がつき、燃えるでは無く爆発することもある
亜鉛は金属だから燃えないと思う人がいるかもしれないが、金属でも条件さえ整えば燃えるのだ
粉になると空気と触れる表面積がどんどん増える。細かくなればなるほど、表面積と増えていく
当然火がつけば、表面積が多いのだから爆発的に燃焼する
http://www.bsb-systems.jp/page0136.html
アルミという金属も良く爆発事故を起こす。タイヤのホールを製造する工場では、アルミを削るとき大量の粉ができるからだ
自分の工場でも、大量の金属粉塵がでるなら粉塵爆発のリスクを検討して欲しい
今回の着火源は、異音がしたというのであれば摩擦熱の可能性もある
ファンの内部の羽根は金属でできている。羽根とファン本体の金属と接触すれば摩擦が起こる
もう一つは、金属と擦れ合えば金属火花も出る。金属火花も着火源だ
過去にも、ファンの摩擦熱で火災が起きている事例も多い
ファンで異音がしたら、無理に回さないことだ
できれば、定期的に点検をして欲しい
何十年も点検していなければ事故になると考えて欲しい
こんな文献もある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2017/100-column-2.html
粉塵爆発の映像があるビデオは消防庁から公開されている.興味があれば見て欲しい
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/post4.html

イラスト出典 いらすとやフリーイラスト

 

2021年12月06日

HAZOPは化学産業以外でも使われている-医療分野

HAZOPとは化学プラントなどで使われる安全性評価手法だ
http://hazop.jp/hazop_basic.html
化学プラントは、流量や温度、圧力、液面などが一定の条件で保たれていると安定的に生産ができる
ところが何かのトラブルが起こると。流量や温度が変化する。これを、ズレという。
ズレが起こると、化学プラントは乱れ始める。人がうまく対応すれば、もとの状態に戻せるが、うまくいかないケースがある
それが、事故だ。圧力が上がれば装置が破裂する。反応器などの温度が上がれば、反応暴走につながる
ならば、流量や温度などのズレが起これば、どんなまずいことが起こるのかを事前に検証すれば事故のリスクは減る
そこで考え出されたのが、ズレによる影響を解析し、対策を立てるとい安全性評価システムだ
ズレを考えるときの、キーワードが準備されている。外国からきた手法なのでこんな7つのキーワードがある。その中でいくつかを紹介すると
「No」:何もしなかったらどうなるのか? 「Less}:少なかったらどうなのか 「More]:量が多めだったらどうなるのか
「Reverse]:逆だったらどうなるのかなどがある
化学産業では、例えば「No」は、流量に関してみれば、流れないとどんな問題が起こるのかと考える
「less」は流量が規定より少なめなら、やはりどんな問題が起こるのかと考える
このように、ズレがおこると何か悪いことが起こるのではないかと考え安全対策を取っていく手法がHAZOPといわれている
最近は、このような手法は医学界などにも使われている
例えば「No」は、もし手術をしなければどんな悪いことが起こるかと考えるのだ
「Less」は、手術で取り除く範囲が、少なめだったら患者さんにどんな悪い影響が出るかを考える
「More」は、除去範囲が多すぎても悪いことが起こるのではないかと考えるのだ
「Less」は逆というキーワードだ。例えば手術する対象を逆にしてしまったケースだ
本来なら、右の肺を手術する予定だったのが、誤って左の肺を手術してしまうケースだ
X線の写真を左右取り間違えるケースなどで起こる。どうしたらそれが防げるかを、考えていくのだ
このように、HAZOPずれを想定して対策を打っていく処方なので、あらゆる業種で使うことも可能だ
ズレというものに常に着目して安全対策を取っていって欲しい

イラスト出典 いらすとやフリー素材

 

2021年12月04日

粉塵爆発を甘く見ていませんか

粉塵爆発は,頻度は少ないがひとたび事故が起こると甚大な被害を及ぼすことがある
化学工場では,粉よりも液体の危険物を取り扱うことは多い。だから、、粉に起因する事故事例の頻度は少ない
したがって,粉が原因で起こる事故は少ないが.少ないからと言って粉の事故を甘く見ないで欲しい
最近の、粉が関与する事故事例としては
2021/8/23に、印刷などに使われる粉であるトナー工場の爆発事故が起きている
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2108/13/news075.html
2017/12/1日、静岡県富士市の化学工場で多くの死傷者を出す粉塵爆発が起きている
事故から約1年が経った、11月20日に、この企業から事故報告書が発行されている。
http://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/document/news/20181120fuji7.pdf
事故報告書によると事故はこのようにして起きたという。
印刷インキ用樹脂を製造していた。固形樹脂を粉砕後フレコンと呼ばれる袋に粉状にして投入していたときに内部で静電気による放電が起きたのがきっかけという。袋の中で最初の粉塵爆発は起きた。これで、収まればこれほどの大事故にはならなかった。
粉塵爆発は怖いのが、最初の爆発が引き金となって次から次へと誘爆していくことだ。
フレコンと投入口は密閉構造では無かった為、炎は、投入口の近くにあった、粉塵除去用のダクトの中に吸い込まれていったようだ。
ダクトの中は清掃していなかったことから、当然粉塵は溜まっていた。
それにも火がつき、ダクト内で大きな粉塵爆発を起こした。
ダクトの出口から出た、爆風は室内のダクトの上などに溜まっていた粉塵を更に巻き上げ更なる粉塵爆発の連鎖を起こしたようだ。
最後は、室内に保管していた化学薬品に火がつき薬品火災も起こしてあのような大爆発となってしまったと書かれている。
報告書では、企業は粉塵爆発の危険性を感じていなかったとある。
しかし、粉を長年取り扱ってきている企業なのだから粉塵爆発にはかなり注意をしていたはずだ。
粉の取り扱いを甘く見ないで欲しい.粉塵爆発が起こるととんでもないエネルギーが放出される
人一人は簡単に殺せるエネルギーだ


2021年11月30日

研究所の実験設備の防爆管理を甘く見ていないか

研究所の安全管理で気になることは沢山ある
電気設備の防爆というのもその一つだ
可燃性物質の実験をするなら、着火爆発のリスクは限りなく存在する
しかし,研究所の幹部と話をしても防爆という用語の理解をする人は皆無に近い
だから,可燃物や有機溶剤の実験で事故は起こる
この背景には、まず多くの企業で研究所の専属安全スタッフが配置されていないことが要因だ
製造工場には安全スタッフは必要だが、研究所は安全スタッフは不要と考えている経営トップが多いからだ
研究所こそ,未知なる分野に挑戦することも多いのだから有能な安全スタッフがいなければいけないのにそこは充足していないのが現状だろう
研究所で可燃物を大なり小なり使えば必ず発火か爆発というリスクは存在する
電気ヒーター、電気で動く実験器具などは発火源となる。接点火花で、可燃性物質の着火源になるからだ
研究では、取り扱う化学物質の量が少ないから大丈夫と安易に考えないで欲しい
燃焼の三要素が整えば、物質は必ず燃えるし、激しく燃えれば爆発することもある
研究所では、工場規模の爆発には至らないかも知れないが、可燃物の爆発は指や腕を吹き飛ばすほどのエネルギーはある
研究部門での爆発や火災を甘く見ないで欲しい

可燃性の薬品を入れる冷蔵庫を市販の冷蔵庫を使っていて爆発したこともある
防爆の冷蔵を使っていなかったからだ
工場だけではなく研究部門への安全管理体制も充足して欲しい

 


2021年11月26日

タンク底板腐食--部分的な対応ではすますな

貯蔵用タンクなどは建設してからずっと使いつずけるはずだ
長いものでは,50年、60年使っているはずだ
タンクの材質は特別な理由がないかぎり材質は鉄だ
鉄は値段が安くて強度もあるから当然使われる
しかし、鉄には弱点がある。腐食に弱いと言うことだ
タンクに入れてある,物質に腐食性の物がわずかでも存在すれば少しずつ腐食していくことになる
タンクの中に入れる物質そのものは腐食性がなくても,わずかに水が混入してくることがある
例えば油などを入れるにしてもわずかに水が含まれることがある
水と油の比重を比べると,油は軽いので下の方に水はたまる
そうすると,タンクの底板と水が接触することになる
水の中に,塩素や硫黄などのイオンが含まれていれば,時間をかけて鉄は腐食されている
タンクの開放点検で底板に腐食が見つかったときどうするかだ
穴の開いたところを単純に補修するだけでは,単なる対処療法になる
全面肉厚測定をして,悪い箇所は広範囲に板を交換しない限り、次の開放点検までどこかで穴が開いていく
更に悪いことに,漏れた水は基礎部の土壌などにしみ込む
底板の裏面にも腐食性のある水などが回り込むことで、さらに外部からも腐食が広範囲に進行する
結果として最後は,内容物が腐食した穴を通って外部に流れ出す事故を起こすことになる
ここに,タンク底板腐食事故の情報があるので紹介しておく
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/199/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/h22/2211/221111_1houdou/05_houkokusyo.pdf
タンクの底板腐食を甘く見ないで欲しい

 


2021年11月24日

ボイラーの爆発事故--事故報告書が出されていたので紹介する-目視検査で大丈夫か

2021/4/26にボイラーの爆発事故があったのを覚えているだろうか
ビデオや写真を見るとかなり破片が吹き飛んでいる。近くの駐車場にあった車が燃えていた
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210426/k10012999561000.html
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210427-OYT1T50109/
これを見ると久々の大型ボイラーの爆発事故だ
5万KWの発電用ボイラーだという。燃料は石炭だという
ボイラーは法律としては労働安全衛生法で規制がかけられている 厚生労働省の管轄だ
ボイラー協会というところが民間の団体として活動している
事故の情報は沢山持っているようだが、会員以外には公開していないようだ
ボイラーの爆発大はきく分けると、燃料が原因の場合と水が原因の2種類だ
燃料は入れているのに火が消えたりすれば不完全燃焼が起こる。不完全燃焼が起こると、爆発混合気ができてしまう
そこで再点火すれば、爆発と言うことになる。スタート時でも、運転中でも起こる事故のパターンだ
もう一つは、ボイラーへの給水だ。ボイラーは、水を蒸発させる装置だ
蒸発装置は、中に入った水を加熱して蒸気を発生させる。蒸発した分だけ、水を自動的に補給して液面を維持している
ところが、何らかの不具合で水が無くなると空だきになる。装置は高温だから、そこへ水がかかれば水蒸気爆発を起こす
ボイラの中には,蒸気の元となる水を流している水管というものがある。この水管が,破れるとやはり炉内で水蒸気爆発が起こる
今回、この事故も調査報告も出ず,原因は公開されないのかなと思っていたら,企業から事故調査報告書が出されていた
水管の検査を、目視だけに頼って,減肉を定量的に管理できていなかったとの記述がある
目視検査という手法には限界がある。肉厚検査など、傾向管理も重要だ。コストとのバランスはあるが工学的検査手法を併用して欲しい
たかがボイラーと甘く見ないで欲しい爆発を起こすこともある装置だと考えて欲しい
イラスト出典 イラストAC無料イラスト

2021年11月22日

10年一昔-技術伝承 デジタルフォーメーション DX

1年も経てば、時代は変わる。まして、10年も経てば大きく変わっているのに人は気づかない
昨年の今頃を覚えているだろうか。3年前の今頃を覚えているだろうか。10年前の今頃を覚えているだろうか
数ヶ月前のことも覚えていなければ、もっと前のことはなかなか覚えていないはずだ
会社に入社して、退職するまではおよそ、約40年くらいだ。つまり、10年を四回繰り返すのだ
最初の10年は、新人としてがむしゃらに色々なことを覚える。次の10年は、後輩もいるだろうから、先輩として頑張る
次の10年は、昇進して管理者になる.責任ある地位になり、経営的な物の見方を覚える。最後の10年はどうう生きるかだ。
このように、サラリーマンをやっていれば10年毎の節目はある
設備も同じような、節目を持つ。最初は、トラブルも多く、色々手を加えて安定期に入る。
10年くらい経つと少し故障が出てくるが、手を加えれば正常に動く
20年経つと、少しずつガタが出てくる。でも、部品を交換すればまだ正常に動く
30年くらいから、すこし問題が出てくる.特に電気部品は、30年は持たない。更新が必要なのに、手をこまねいていると発火事故などを起こす
40年も経つと設備も寿命を迎える。でもそれを受け入れないから、火災や爆発という形で現れる
化学プラントに携わってきて、今振り返るとそう思う
10年という節目がある.それをしっかりと管理する必要がある
2020年代をどんな節目として捉えるかだ
DX技術が盛んにうたわれている.保有するデジタル情報をいかに有効に使うかが求められている
企業は膨大なデジタル情報を持っているが、それを使い切ってはいない。どう使いこなすかという人材も十分ではない
それ以前に、デジタル情報にどんな価値があるのかもわかっていない
化学産業も、1980年代からDCSというデジタル機器を使い始め、既に40年分の情報はあるはずだ
そろそろそれを使いこなしていい時期だ
でも、なかなかその価値をみいだす人材は育っていない
そこにDX推進の難しさがあるのだろう

イラスト出典 フリーのイラストルームホームページより

 

2021年11月20日

戦闘機の風防落下はパイロットの施錠ミス-人に頼らない安全対策も必要だ

航空自衛隊は、福岡県朝倉市付近で2021年10月、F2戦闘機から、操縦席を覆う約90キロの風防(キャノピー)が落下した事故がある
パイロットが、風防がロックされているかどうか確認しないまま飛行し、操縦席と外気との気圧差が生まれたのが原因とみられるという報道があった
パイロットは、ロックされていない場合に点灯する警告灯の確認もしていなかったという。
この報道をみて思うのは、高速で飛ぶ戦闘機が人がミスをすればそのまま何ら機械的な安全対策がなされず飛べてしまうと言う事実があると感じた
本来なら、戦闘機という道具を設計するに当たって、製造メーカーはフェイルセイフ、フールプルーフという概念で設計しているのかと思ったら現実はそうでは無いんだと感じ取れた
車であれば、シフトレバーをドライブに入れてあれば、エンジンキーを回してもエンジンは絶対かからない設計になっている
フールプルーフという安全設計思想で,事故が起きないように設計しているのだ
ところが、戦闘機になれば運転するのはプロだからという考えでこのキャノピーの安全対策はこのような設計がなされいない
ロックがされていなくてもて飛べてしまえるようだ
人はミスをすると考え方が、戦闘機には取り入れられていなくていいのだろうか
落下した、風防が一般人に被害を与えなかったから良かったものの、やはり設計上はおかしいという気がする
設計の背景には,とにかく軽くつくりたいという思いがあるのだろう
余計な部品を付ければ、機体は重くなる
設計の根幹では、民需品であれ軍需品であれ人はミスをするという考え方にもとずかないとこの手の事故は防げ無いのではないだろうか
プロだからミスをしないというわけでは無い。プロと素人の違いは単なる、ミスの確率の違いだけだ
所詮人である以上、ミスの確率はゼロではない
ミスが、致命的な事故につながるなら、プロアマ差を付けず、人に頼らない安全対策を実施すべきだ

写真出典 鉄道と飛行機の写真館

 

 

2021年11月18日

安全確保に必要なガバナンスの大切さ

安全に関する用語としてガバナンスという用語がある
企業統治などとも呼ばれる
大きな企業になればなるほど、末端の部分に経営者の目が届かなくなる
そうすると、色々な不祥事が生じる
大事にならないケースもあるが、末端での不祥事が企業をゆるがすことにもなる
安全に関しても、企業トップは部下に任していたでは、済まない
安易な権限委譲だけでは済まされない
実務的な権限委譲はしていても、最終判断という領域に関してはどれだけ経営トップが関与しているかは問われるところだ

最後は、経営トップに責任が求められるかだ
問題が起こらないように常に企業トップに情報が上がってくるシステムを構築し続けなくてはいけないのだ
PDCAがまわる仕組みが必要となる
企業を安全にコントロールすることが求められている


経営者に総合的な関与が求められている時代だ
安全をないがしろにしないで欲しい

2021年11月13日

延岡の半導体工場火災事故報告書が発行されていた

世の中半導体不足だ。半導体工場での火災事故が、日本では、2020年と2021年に立て続けに起きている。
2020/10/20、九州で半導体工場の事故が起きた 建屋内火災で数日間燃え続けた、大火災だ
この2020年宮崎県の延岡で起きた火災事故の報告書が出ていたので紹介しておく。
https://www.asahi.com/articles/ASP9G6WN5P9GTNAB005.html
企業が出した事故報告書もダウンロード出来る
https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2021/ze210914.html
半導体工場は秘密の固まりだ 事故の原因がわかってもたぶん公開されることはないだろうと思っていたがしっかりと公開してくれた
関連企業にとっては、本当にありがたい内容が数多く書かれている
推定原因と、再発防止策だ
推定原因では、電気関係と記述されている。電気ヒーターや、接点類も数多くある。発火源には十分なり得る
装置は、電気部周りは難燃性だが、周辺部にはプラスチック類も多く使われていて一度燃え始めると消すのは難しいとの記述もある
清浄剤として、アルコール類も使われており火炎逸走の被害拡大に関与したようだ
火災報知器はあったものの、人が先に異常に気づいたようだ。クリーンルーム内の空気循環で、検知が遅れたようだ
異常の早期発見には火災報知器の、設置場所にも工夫が必要であると記述している
更に、法定個数は満足していても、自主的に設置個数を増やすことも考えた方が良いとの表現もある
装置は、設置してから20年とある。電気部品などは、点検はしていたそうだが、SSRリレーなど交換部品はきちんと交換していたのだろうか
発熱リスクの高い部分の、交換などの記述はないが気になるところだ
報告書を読むと、いかに早期発見するかがポイントと読み取れる。難燃性の部材を積極的使うにしても、全ては難燃化できないからだ
人が気づいたときは、炎は2~3mあったとの記述もある。初期消火は難しいだろう。おまけに、一酸化炭素中毒の恐れもあり空気呼吸器を付け面体を付けた状態の視野の狭い中で、広がった炎を消すのは無理がある
火が出てしまえば、クリーンルームなどの密閉空間で初期消火はかなり難しいからだ
スプリンクラーも設計段階で考慮が必要だろう
以前私のブログでの半導体工場の事故について書いたことがある。そちらも参考にして欲しい。
2021/3/19未明に起きた半導体火災の事故報告書はまだ公表されていない.公表されることを期待したい

イラスト出典 イラストや

 

2021年11月11日

日本の炭鉱で起きた死者458人の粉塵爆発--粉塵爆発後一酸化炭素中毒

今から約半世紀前の、1963/11/9に九州にある炭鉱で石炭の粉塵による爆発が起こった
粉塵爆発の後、発生した一酸化炭素により、中毒も起こり死者458人、重軽傷者555人の大惨事となった事故がある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000611.html
1960年代というのは、産業構造が大きく変わり始めた年代だ
石炭から石油へと産業構造が大きく変わり始めていた
1958年には、日本では石油を原料とするコンビナートが生まれた
産業に使われていた原料が、石炭から石油へ変化することから、当時の主要産業であった炭鉱産業も大幅な変革を求められた
大規模なリストラが行われ、この事故を起こした炭鉱でも従業員が15000人から10000人に減らされた
人が減れば、当然安全対策もおろそかになる
石炭の粉は、粉塵爆発を起こすことは当時でも知られていた。粉塵爆発を防ぐには、水を常にまいて湿らせておくことが基本となる
この当たり前の事故防止策も、人が減れば十分にはできなくなる。
結果として、水まき作業などを怠るようになり、石炭を掘っていた坑道の中で粉塵爆発を起こしてしまったのだ
生産優先、安全をおろそかにした結果だ
産業構造が変化するとどうしても、経済性の劣る産業は無理をしてでも生産をすることになる
結果として安全対策がおろそかになってしまう
エネルギー政策の大きな変換点で日本で起こった悲惨な事故だ
今の世の中でも、企業経営の中でも採算性の悪い事業は、知らず知らずのうちに安全への投資がおろそかになる
安全投資についてもしっかりとした経営層のガバナンスが必要だ

 

2021年11月09日

「バイパス配管」が引き起こす事故-HAZOPでバイパス弁の閉め忘れを見落とすな

色々な設備には,バイパス配管と呼ばれる配管が取り付けられていることが多い
例えば、スタートアップの時は汚れた液が流れる場合は本来の配管を汚したくないためにバイパスする配管を取り付けることがある
バイパス配管は、正常な運転になれば流さないように弁をしっかり閉じて流れないようにするのが一般的だ
こんな事故事例がある。触媒を流す流量計の脇にバイパス配管が取り付けられていた 反応器に触媒を送る配管ラインだ
定期修理中は、流量計を異物から保護するため洗浄用の液はバイパス配管側を流していた
いよいよ,運転開始と言うときにこのバイパス配管側の弁を閉めるのを忘れた
装置の運転を開始し,触媒を流し始めたところ流量計の指示はあまり増えなかった
規定の量を入れようと流量計のバルブを更に開けていったところいきなり反応器内で異常反応が起こったという事故がある
事故の原因は,パイパス配管の弁を閉め忘れていたため流量計の指示量以上に大量の触媒が反応器へ流れ込んだからである
バイパス配管側を通って想定外の量の触媒が反応器へ送り込まれ異常反応が起こった事例だ
流量計の指示の8倍もの触媒が流れ込んでいたと報告書に書かれている。 結果として、反応器の温度計の針は500度を振り切れていた
異常に気づくのが遅れたのは、反応器の温度警報ヒューズが切れていたことも原因だ
つまりヒューズが切れていたことで、温度異常警報は鳴らなかったのだ
反応器からの安全弁から吹きだしていた白煙を見て始めて異常に気づいたという
幸いにして爆発はしなかったが、もう少し発見が遅ければ大災害になった事故だ
1971/8/5エチレンプラントのスタートアップ中の事故だ。ヒヤリで済んだので世の中の事故DBには載っていない
この事故の教訓は「バイパス配管の弁の閉め忘れ」が思わぬ重大事故を引き起こすと言うことだ
HAZOPでもどれだけの人が,バイパス配管を意識しているのだろうか
ぜひ、HAZOPでは計器のバイパス配管があれば,このような事故がおこると考えて欲しい
トラブルが起きれば、温度警報が必ず鳴るはずだと安易に考えないで欲しい 温度計が故障していることもあるはずだ
いつも警報が鳴るとは限らない 過去の事故事例の中でも,警報を聞き漏らしたという事例も多い
「バイパス配管」は、「ずれ」を引き起こす可能性のある危険源と思って欲しい
施錠するか、チエックリストをつくってしっかりと管理して欲しい

 

2021年11月07日

タンクのスロッシング現象ーー地震

地震が起こると怖いのは誰でも知っている
化学工場で地震が起こると、ある一定震度を超えると自動的に工場を停止するようになっていることも多い
装置は安全に停止するようになっているのは良いことだが、地震の揺れで思わぬことがおこることがある
タンクなどの液面が激しく揺れる現象だ。これを、スロッシング現象と呼ぶ
満液に近い状態でタンクに液をいれていれば、液面が激しく揺れたことにより思わぬトラブルになる
過去には、浮き屋根式タンクから液が漏れ着火した事故もある
新潟地震でのタンク火災だ
https://tank-accident.blogspot.com/search?q=%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%9C%B0%E9%9C%87
地震の揺れで液面が上下すれば、コーンルーフ型タンクであれば天板の溶接部に亀裂を生じることもある
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento100_14_shiryo3-2.pdf
長周期型と呼ばれる地震では、この地震による液面変動であるスロッシング現象が激しい
タンクをほぼ満液で使っていると地震時にこのような影響を受ける
地震に備え、液面管理はしっかりと行って欲しい

 

2021年11月05日

仕切り板を内蔵した弁もある

仕切り板を挿入することは、確実に縁切りができるというメリットがある
一方で、仕切り板を挿入する作業でミスが起こってしまえばやはり、漏洩、火災、爆発や薬傷などの事故になる
大口径の仕切り板を入れるとなると作業そのものも大変な作業になる。仕切り板も重量物となるからだ
場合によっては、足場や作業台の準備も必要になる。コストも馬鹿にならない
小口径配管なら、仕切り板を入れる場所を間違えたと言う事故事例もある
仕切り板を抜くとき、縁切りしていた自動弁が突然開き事故になった事例もある
茨城県の鹿島コンビナートで起こった事故がある。空気で動く自動弁の、下流側に挿入していた仕切り板を抜くときに起きた事故だ
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2016_10-2.pdf
空気式自動弁の、空気の元弁を閉めていなかったのだ。その為、仕切り板を抜くとき操作SWに触れ自動弁が突然開いてしまったのだ
大量の熱油が噴き出し、周りにいた作業員4名が死亡した事故だ。その後の安全対策として、仕切り板を内蔵したエスペロ弁という弁を採用したという
通常は普通の弁としての開の状態で使える。弁のハンドルを動かしていくと、内蔵された仕切り板が動いて、弁の中に仕切り板が入り込んで弁が閉まる構造だ
詳細は、メーカーのホームページを見て欲しい
http://www.insins.co.jp/wp/wp-content/uploads/2017/08/esperovalve.pdf
とはいえ、メーカにより微妙に構造も違う
過去にインドで、同じような仕切り板を内蔵した弁が半開状態になったときに液が漏れて火災になつた事故もある
http://tank-accident.blogspot.com/search?q=jaipur
この弁は構造上、半開状態で使うと、液が漏れ出す構造になっていたのだ
構造原理をしっかり理解してこの種の弁は利用して欲しい

 

2021年11月03日

HAZOP-連続プロセス系とバッチ系の違い

石油精製、石油化学、化学物質を取り扱う化学工場では安全性評価の手段としてHAZOPの活用が求められている
HAZOPというのは、ズレが事故の要因になるという考え方から生まれた安全性評価手法だ
連続プロセスと、バッチプロセスでHAZOPの違いがあるかとよく質問されることがある
私はこう答えている
連続プロセスというのは、機械が主体となりプラントを自動制御している。したがって、ズレが起こるのは機械が故障したときだ
ポンプが壊れたり、計器が壊れたり、自動制御弁が故障したりするズレが事故を引き起こす
したがって機械の故障を重点的に、ズレと捉えて解析すれば、事故を未然に防げる
ところが、バッチプロセスを見て見ると、人が介在する部分が連続系と比べて格段に増える。手動操作が加わるからだ
ということは、バッチ系では機械の故障もさることながら、人のズレも考慮に入れて解析しないと事故を未然に防げ無いことになる
人のズレはこんな形で現れる
例えばNOだ。弁の操作を「忘れる」。LESSなら、弁の操作が「不十分」。MOREなら、弁を「開けすぎる」。REVERSEなら、弁を「逆」に開けたと言うことになる
otherであれば、「余計なこと」をしただ。
更に、人のHAZOPのガイドワードには、時間的な要素を追加する必要がある
例えば、操作するタイミングが、「速すぎた」、又は「遅すぎた」などだ。
所定の時間より、操作時間が短かかった、又は長すぎたなどだ。時間的要素も考慮する必要がある
つまり、バッチ系では、人という切り口で、ズレを追加して考える必要がある
連続系とバッチ系の違いは、人という要素を考えるか考えないかだ

 

2021年10月31日

事故データーベース--産業安全総合研究所

日本では事故や災害のデーターベースは公開されているが、内容や情報量を考えるとまだまだ十分ではない
最近の公開情報を調べていたたら、産業安全総合研究所の事故データーベースが事故情報を追加し公開しているのがわかった
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
第6次の公開となるものだ
前回の第5次版と大きく変わったのは、新たにに1955年(昭和30年)から1964年(昭和39年)迄の情報が追加されたことだ
新たに2008年(平成20年)から2010年(平成22年)の新規追加もある
事故が多発した、1973年(昭和48年)と1974年(昭和49年)について事例を30件くらい追加している
公開されている、総件数は計6430件だ
鉄鋼、金属加工、化学工業、医薬製薬、石油精製、鉱山業など幅広い分野の事故情報が公開されている今回の新たな公開では、1950、1960年代の事故を追加で公開している
1950、1960年代は、日本でコンビナートという化学産業形態が始まる以前の時代だ
手工業的な従来の工場も多かったことが、データーベースから読み取れる
加熱源が直火が多いことが、事故の要因になっている。反応釜などから少し蒸気や液が漏れたとき、加熱用バーナなどに触れ着火事故が多く起こっている
又、自動制御も進んでいない時代だから、人のミスも多く見受けられる
興味のある方はこの事故DBを見て見ると良い

イラスト出典 IT用語辞典より

 

2021年10月29日

HAZOPをうまく活用するには--なぜ事故が起こるのか

石油精製、石油化学、化学物質を取り扱う化学工場では安全性評価の手段としてHAZOPの活用が求められている
HAZOPというのは、ズレが事故の要因になるという考え方から生まれた安全性評価手法だ
化学工場であれば、温度というずれが事故につながることがある。
例えば、反応器の冷却水が、流れなくなったとしよう。つまり流れ、無しというずれが発生したとする
結果として、反応器を冷やすことができなくなり、反応熱により反応暴走して爆発が起こるかも知れない
つまり、冷却水の流れが無しというずれが起これば、反応暴走という事故のシナリオが想定できる
事故につながる、ずれは流量だけではない。液面や、圧力、温度、化学物質の成分量など多くある
一つ一つのずれを、P&IDフローシートという図面でチェックしていけば潜在する事故の要因を全て拾い出すことができる
そうはいっても、ずれがどんな危険なことを起こし出すかを想定するのはたやすいことではない
そこそこの危ないことは想定できるだろうが、なかなか最悪の事態を想定するのは容易ではない
昔のように、事故を色々経験していれば、事故の想定は経験をもとに考えることはできるが、昨今のように事故やヒヤリの経験度合いが少ない現状では想像するのはなかなか難しい
HAZOPをやることはいいことだが、HAZOPをやる前にやはりなぜ事故が起きるかを体系的に教育することが不可欠だ
人はどんなミスを犯すのか、物質危険性が引き起こす事故、設備のトラブルがどのように事故に進展するのかを知っておく必要がある
HAZOPを有効に実施して行くにはやはり事故が起こるメカニズムについて体系的な基礎知識が必要だ

 

 

2021年10月27日

空冷式熱交換器の事故--エアフィンクーラー

空気で冷却する熱交換器も工場で使われている。エアーフィンクーラーなどと呼ばれる
冷媒として空気を使えば、コストメリットはある。空気はただで手に入れることができるからだ
空冷式の熱交換器は、構造は実に簡単だ。
高温の設備を取り扱う製油所などでよく使われている
換気扇のような大きな羽根を、空冷式熱交換器の近くで回して強制的に冷やすのだ
ところが、この空冷式熱交換器は、結構事故を起こしている
冷却される液体を入れた細い配管チューブが腐食などで穴が開き、漏れたとき火災になる事例だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-150.pdf
流体温度は、数百℃だ。可燃性の油などがこの空冷式熱交換器で冷やされる
ガスケットのゆるみで漏れることもある
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2009-037.pdf
油が漏れると、重力があるから漏れた油は下に落ちていく
下に落ちた際、高温物体がなければいいのだが、たいていは下の方に高温物体がある
スチームトレースをしている蒸気配管などがあるのだ
蒸気の圧力によっては、数百度もあるので、流れ出た物質の発火点を超えていれば簡単に着火する
高温のポンプが下に設置されていて火災になることもある
高温機器の上下レイアウトは、漏れを考慮した配置として欲しい

 

 

2021年10月25日

リスクアセスメントを成功させるには

今の世の中リスクアセスメントは企業にあっては必須条項だ
昔は事故が起こってから、事故の原因や対策を考えた。今の世の中、求められているのは事故が起こる前に対策を打つことだ
どうすれば、事故を未然に防げるかが求められている。この為には、自分の所に存在するリスクを評価することになる
そうは言っても、そう簡単にできるわけではない
経験や勘によってある程度は、リスクアセスはできる。しかし、個人差が出ては困る。システマチックにリスクを評価できることが求められる
そうはいっても、企業の管理者は皆同じレベルかと言えばそうでは無い
経験や教育訓練のレベルも違う。そこに問題がある。ならばどうするかだ。自前で教育をするのがいいかだ
どんなことをしても、必ず管理者にレベルの差は出てくる。これは避けられない
現場のたたき上げの人と、管理職が現場の知識に関して競争しても所詮勝てるわけがない
現場の知識は、現場の人がになえばいい
管理職に求められるのは、多様な価値観だ。常にその答えが正しいのかを、現場の人達とは違った価値観で考える能力だ
現場の人と同じ価値観で考えては、問題の発掘はできない。
皆が同じ考え方をしてしまうと、事故を防ぐのは難しい。どこかに、疑念を抱かなければいけないはずだ
管理職には、現場の人とは違う価値観を持っている人が求められているはずだ
とにかく管理職には、色々な価値観を持つ人と会うチャンスをつくってあげて欲しい
他職場の人、他工場の人、他社の人、違う業界の人、利害関係の異なる人、違う業種の人などとどれだけ接触できるかだ
井の中の蛙大海を知らずだ。多様な価値観を持つ管理者を育てなければ、企業の安全は向上しない

 

 

2021年10月23日

安全に関する経営トップの関与--ガバナンス--安全の掌握

今の世の中安全に関しては、かならず経営トップの関与を聞かれる。経営トップは収益だけを見ていれば済む時代ではない
必ず安全についての関与を問われる。部下に任しているという答えではノーだ
いかに経営トップとしてリーダーシップを取っているかが求められる。いかに取り巻きが、経営者を支えているかだ
経営トップは、事務方がトップになるケースもあれば、技術職が経営トップになるケースもある
どちらが、安全に関してセンスがあるかというと、どちらとも言えない
本人の資質だからだ。バランス感覚のいい人もいる。そうで無い人もいるのは当然だ
とはいえ、そこそこの及第点は取る必要がある。社員を食わせなければいけないからだ
安全に関しては、安全に関する重役を割り当て権限を委譲する経営形態もある
権限委譲ではあるが、経営者が直接的には関与しない形態だ。経営者の負担は減るがそれでいいのか疑問は残る
間接的に安全をガバナンスすることが本当に正しいのかは疑問が残る
経営トップとは言え、裸の王様ではない。いかにスタッフが、支援しているかだ
スタッフの力量で、トップのリアクションも変わる
事務局や安全スタッフの能力が問われるのだ
組織は個人で動いているわけでは無い。最終判断は、トップにゆだねられるが、判断の所以となる情報はあくまでも取り巻きが作り上げるのだ
スタッフの能力はものすごく経営に関与する
安全スタッフには、そこが求められている
上に対しても情報発信することが必要だ。工場や各職場に対しても、しっかりと実質的な行動に移せる情報発信が求められている
企業の中でスタッフの役割は、参謀なのだろう

出典イラスト イラストAC

 

 

2021年10月21日

保安防災と労働安全

保安防災という言葉を知っているだろうか
労働安全という言葉はかなり知られているが、「保安防災」という言葉はまだまだ幅広く知られていない
労働安全というのは、人がケガをするのを防ぐことだ
保安防災というのは、工場がケガをすることを防ぐのだ。つまり、工場が火災になったり爆発したりするようなことを防止するのだ
どちらも、バランス良く対応しなければいけないのだが、どちらかというと労働安全が工場の安全活動のメインになる
爆発や火災はめったに起きないことなので関心の度合いは低いからだ
そうは言っても、ひとたび爆発や火災が起これば大騒ぎになる
労働災害に関しては、かなり企業は情報を持っているが、保安防災に関しては十分な情報があるとは思えない
事故はいつも起こるわけではない。突然起こる
なぜ事故が起こるのか。どうすれば事故は防げるのかは、知識としてしっかりと企業内に展開して欲しい
事故や災害に関して色々と情報を持っている専門家の力を上手に活用して欲しい
一企業の中でできることは限られているからだ

 

2021年10月19日

金属に関する知識-鉄の強度

鉄という金属はあらゆる産業に使われている
金属の中では値段が安いのであらゆる所に使われる。
値段が安いと言うのは強みだ
そうは言っても鉄は万能では無い。低温脆化という問題点もある。温度が低くなると、金属は脆くなり割れなどが起こるのだ
鉄は高温領域でも使える。値段が安く強度もありあらゆる産業にて使われる
化学プラントでも金属選定では、あらゆる評価が行われる
強度、耐食性、コストなどを総合的に評価して材料選定が行われる
このバランスをとるのがなかなか難しい。経済性を考えすぎてもいけない。性能の限界を追ってはいけない。
どこかで妥協せざるを得ない。このバランスが難しい
鉄と言うものは、含有する炭素濃度によって性質はかわる
炭素分がほとんど入っていないと純鉄になる
炭素分が入らないと鉄の性質はとても固くなる。固いというのはいいことなのだが、折れやすいという欠点がある
日本刀であれば、炭素分が少なすぎると簡単に折れてしまう
鉄というのは、含有する炭素分を変えれば、固くすることもできる。逆に炭素分を増やせば柔らかくすることもできる
金属というのは実に面白い、微妙に成分を変えることで性質が変わってくる
金属の性質についても勉強して欲しい
化学工場で安全を担当するなら、金属に関する知識も必要だ

2021年10月16日

事故や災害情報の企業内展開のありかた--事故防止への効果を考えよ

大手の石油や化学企業が入手する事故情報はものすごくある。災害防止協議会、業界団体などから情報も入ってくる
労働災害にせよ、爆発火災漏洩など化学災害などの情報もかなりの情報が安全部門には入ってくるはずだ
企業は集めた情報を関係部署にそのまま流したらそれで効果があると思ったら大間違いだ
たれ流しの情報は何も役立たない
情報というモノは、ほしいと思った情報が手に入ればものすごく大切にするのだが、生半可に流れてきた生の情報はそれほど大切にはしない

安全環境部門が陥る最大のミスは、こんなに多くの事故情報を提供しているのに事故を未然に防げ無いと感ずることだ
事故情報は相手がどう捉えるかだ 情報を流しても相手が必要と感じなければ、情報は簡単に捨てられる
企業の安全担当部門が考えなければいけないのは、相手が本当に欲しい情報を提供しているかだ
欲しい情報を提供できなければ、企業の個別部門の安全スキルは上がらない

例えば、工場が定修に入る時期であれば、製造部門へは過去に起こった、プラントを停止していく際に起こった事故や労災情報を提供すればいい
定修に入ってしばらくしたら、定修工事で起こる災害事例。スタ-ト準備に入ったら、その時期に起こりやす災害事例やヒヤリ情報の提供
これから、だんだん気温が下がってくれば、寒波や凍結トラブル事例などタイミング良く欲しがる情報を流していくことだ

安全スタッフが常に考えて欲しいのは、現場がどんな情報を求めているのかを常にウオッチすることだ
情報というのは、必要とされない情報は簡単に捨てられる
常に、相手がどんな情報を求めているのかをウオッチして欲しい

イラスト出典 イラストボックス無料イラスト

 

2021年10月14日

地震後の影響を甘く見るな--電気トラブル

2021年10月7日、首都圏で震度5の地震が発生した。電車は停まり大変な目に遭った方も多いはずだ
千葉県の製油所で火災も起きた
幸い化学工場関連では大きなトラブルは他には起きなかった
だからといって、安心して欲しくない
2021/10/10東京でJRの変電所で火災が起きた。山手線始め、首都圏の電車が又全面的に止まった
まだ、地震との関連性は言及されていないが、地震後過去に化学企業でも電気トラブルを起こしている
地震が起これば地上も、地下も揺れる
電気設備というのは、地上や地下で色々な所でケーブルや電気設備が接続されている
接続部に無理な力がかかると、電気設備も事故を起こす
電気というのは隙間ができると、そこに放電するという現象が起こる。微細な火花ができ、その周辺に影響を与える
放っておくと火災や、爆発を起こす
地震が起これば、電気機器のケーブルや装置で引っ張りや、縮み現象が起こる
電気設備に負担がかかる
過去にも地震後、絶縁性を要求される碍子などが破損して化学工場でも発火事故が起きている
化学工場、製油所などは、電気設備についてもケーブルのたわみ損傷を見て欲しい
赤外線カメラを用いて、電気機器の温度異常の有無も見て欲しい
地震後しばらくして色々な所でトラブルが起こることもある
地震後のフォローを甘く見ないで欲しい

 

2021年10月12日

世の中に100%確立された技術は無い--化学工場への新技術の導入

技術というのは絶えず進歩している。この前の考え方が今は正しいとは限らない
会社員であれば入社したときに教育を受けるが、その後時間が経てばその当時教えられたことが今は正しいとは限らない
技術はどんどん進歩する、常に新しい考えをウオッチして受け入れることが技術者に求められている
とはいえ、明確な根拠も無しに今までの技術を否定するのもリスクがある
技術者に求められるのは、既存の技術は大切にしながら、新しい技術の裏ずけをとりながらスピーデーに受け入れるかだ
とはいえ技術の裏付けを取るのはたやすいことはない
石橋をたたきながら進歩するのも良い
そうは言っても、競争社会だ。少しでも前に出たいというのが営利企業だ
そのバランスを取るのは難しい
危険な物質を扱う化学産業では、根拠が明確ではないのに考え方を進めるのは難しい
とはいえ、社会どんどん進化している。追いつく必要性もある
新しい技術についていく必要がある
最近は化学工場でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入も進んできている
時間も限られている。覚えることもどんどん増えている
危険物を扱う産業の人達は、常に悩んでいるのだろう

イラスト出典 イラストAC無料

 

2021年10月10日

地震は忘れたころにやってくる

2011/3/21に起きた東北大震災からもう10年を越えた。私の住んでいる千葉県でも地震の時はかなり揺れた
大きな地震には、10年経っても余震がある言うが,2021/2/14に東北地方で震度6強の地震があったのを思い出した
この翌日のことだ。散歩をしていて、コンビナートの方を何げなく見ていたらいつもフレアーの火は小さいのにかなりの炎が出ていた
もう春の定修が始まったのかと思っていた。ところが、ネットでニュースを見ていたらコンビナート企業の化学プラントが停止しているという
大手の総合化学企業だ 地震で電力供給が落ちたり、安全のため停めたらしい
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00588242
この時は、東北地方の火力発電所は13基停まったという
仙台の製油所も配管などから油漏れがあったという
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210215006/20210215006.html
大きな被害は無いもののかなりの影響が出ていたという
そんなことを考えていた矢先、昨日の夜に再び大きな地震が首都圏で起きた 震源は千葉で震度5だという
千葉県の自宅の1階にいたがかなりの揺れだった。震度4だと報道していた
家の中を見回してみると、書籍棚の扉が半開きになっていた。書架の中のものもいくつか倒れていた
掛け時計も、外れかけている物が1台あった。ヒモで落ちないようにしてあったので落下は逃れた
棚類などは全て固定してあるのでなんともなかった
電気は大丈夫だったが、都市ガスは止まってしまった。風呂の追い炊きはできなくなった
外に出てガスメーターの、感震装置をリセットして事なきを得た

東北大震災からもう10年も経つ
大自然から見れば10年というのはホンの一瞬なんだろう

2021年10月08日

詰め込み教育が成功するとは限らない-効果的な教育を常に考えよ

教育に携わる人材は、色々教えようとする。教えるという意識があることはいいことなのだが,教育を受ける相手側の事情があることも意識して欲しい
教育をする先生は沢山教えたいと思うのは当然だ。ところが、生徒の視点でみれば、あまり色々言われても理解できないこともある
つまり、相手の受け入れる能力をきちんと先生は考えて講義をしなければいけないのだ
ところが、現実の世界では先生が一方的に自分のペースで合議を進めることが多い
結果として、先生は満足しても、生徒は消化不良で何も伝えてないという教育実態もある
教育というのは、単位時間当たり生徒が吸収できる量には限界があるということを常に考えておく必要がある
短時間に色々なことを教えたいという講師側の気持ちはわかるが、やはり詰め込みは無理だと理解して欲しい
パワーポイントなどを使って講義をするとすれば、一枚のパワポイントの中には理解できる情報量に絞り込んでおかないと無理が起こる
例えば、一枚のパワーポイントの中に数千字の情報を書き込んで説明しても、相手には的確に情報はつながらない
パワーポイントではなくワードになってしまっているからだ
一枚のパワーポイントに数十文字のエッセンスを書き言葉を添えるなら思いは伝わる
タイトルも大切だ。タイトルを見て、何を伝えたいかがわかる表題になっているかも常に検証して欲しい
単位時間当たり、相手に伝えられる情報は限界がある
常に、提供する情報の量をコントロールして欲しい
オーバーフローすれば、大切な情報とて伝わらない
教育をする人は常に、相手の目線に立ち必要な情報をコントロールしながら提供して欲しい
情報の過負荷を考えて欲しい

イラスト出典 文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249678.htm

 

 

2021年10月06日

HAZOPとは

HAZOPとは化学プラントなどで使われる安全性評価手法だ
http://hazop.jp/hazop_basic.html
化学プラントは、流量や温度、圧力、液面などが一定の条件で保たれていると安定的に生産ができる
つまり、変化がないことが安全安定運転につながる
ところが何かのトラブルが起こると。流量や温度が変化する。これを、ズレという。
ズレが起こると、化学プラントは乱れ始める。人がうまく対応すれば、もとの状態に戻せるが、うまくいかないケースがある
それが、事故だ。圧力が上がれば装置が破裂する。反応器などの温度が上がれば、反応暴走につながる
ならば、流量や温度などのズレが起これば、どんなまずいことが起こるのかを事前に検証すれば事故のリスクは減る
そこで考え出されたのが、ズレによる影響を解析し、対策を立てるとい安全性評価システムだ
ズレを起点に、化学プラントの異常へ向かうプロセスを考えるのだ
なぜズレが起こるのかを考える基点は、2つだ機械が壊れるか、人がミスをするかだ
計器が壊れたり、調節弁やポンプなどの故障も事故の引き金になる。人のミスは判断ミスや、操作ミスだ
色々なミスはあっても、問題は異常に気づくかだ。ミスの種類は様々だが、事故を未然に防げるかは、異常にまず人が気づくかだ
異常に気づけば人はかなりの確率で対応する。
とはいえ、警報などがなければ人は異常に気づくのは遅れる。警報の有無はHAZOPでの重要キーワードだ
次に異常に気づいても人で対処できるかだ。時間が無ければ、対応はできない
警報はあっても、異常の対処時間を考えることだ。時間的に余裕がなければ、機械的に処理が必要となる
自動インターロックで安全に停止するなどだ
ずれが、どんな危険な状況を引き起こすか見抜くのは難しい。かなり多くの事故事例を知らないと深掘りできない
計器に警報があるから安全と勘違いすることもある
警報は、聞こえないこともある。警報は、うっかりリセットすると再警報が出なければ重大事故につながることもある
重要警報なら、対応が取られるまで繰り返し警報が出るか、インターロックで安全に処理できることが必要だ
HAZOPは、そこそこ実施できればいいわけではない
深掘りできる能力が求められている

 

2021年10月04日

HAZOPなどで低温脆化というハザードを意識しているか--マイナス20℃以下では鉄は脆くなる

温度が髙いや低いは[HAZARD]として意識しているのだろうかいつも気になるところだ
自分のプラントに使われている金属は何度まで使えるか考えたことはあるのだろうか
たいていのプラントで使われているのは、鉄だ
この鉄は、高温なら何度まで使えるか知っているかだ
普通の鉄なら、350°くらいだ。ちょっと温度が髙いボイラーでも、550℃ぐらいと言うところだ
800℃や1000℃では鉄は使えない
ならば鉄は低温まで使えるかというと、低温には実に弱い
マイナス20℃がいいとこだ
ちょっとした寒波が来れば鉄はかなり「リスク」がある
皆さん方の所で、低温脆化をどれだけリスク評価しているのだろうか
-20℃の流体があれば、逆流などでのリスクを検証して欲しい
フラッシュして温度降下があるプロセスを持っていれば、低温脆化をHAZOPで考える必要がある
低温脆化の事故事例は少ないが甘く見ないで欲しい
こんな事故事例もある。参考にして欲しい
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00271.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00272.pdf

 

 

2021年10月02日

水抜きという作業を甘く見ていませんか

水抜きという作業がある。油の中に水が入るとまずいから、水を除去する作業だ
水という言葉を聞くとそれほど危険ではないと誰もが感じる。そこが、事故につながる。水抜きという作業には重大な危険が潜んでいる
石油精製や化学プラントなどでは、油の中にわずかに水が含有していることがある
販売する製品は基本的に油なので、水は不純物だ。
したがって、水を除去する作業が発生する。水は油より、密度が大きいので、相分離した場合下にたまる性質がある
タンクやドラムにたまれば、ドレン弁を開けて水を抜き出すことになる
バルブを開けて、水が出ている間は問題は無い。ところが、水が抜けて油が出始めたときが問題だ。
引火点が低い、油であれば流速が速ければ静電気で着火することもある
過去に、水抜き作業で静電気着火事故は起きている
衣服に火が回り死亡事故もある
水抜き中弁が半開で凍結して、LPGという液化石油ガスが大量に漏れて近くの高速道路を走って来るまで着火した事故事例もある
フランスの事故だが死者が45人も出ている
http://www.shippai.org/fkd/hf/HC0300001.pdf
http://tank-accident.blogspot.com/2015/01/lpg19661.html
水抜き作業というのは、本来液を抜くときは密閉系で処理できると良い
空気と油が触れさえしなければ発火事故にはならないからだ
ところが、多くの事故はドレン弁を開けて大気に液を放出する水抜き作業を行っているから事故が起こる
水抜き作業は、空気に触れない行う方法を考えて欲しい

 

2021年09月30日

運転中のインターロック検査で起こる事故

高圧ガスの認定工場では,長期連続運転が可能になる 2年、4年などプラントを停めずに長期連続運転ができる
その反面、安全装置の信頼性を確保するためインターロック装置などを運転中に検査することが求められる
運転中にインターロック機能を検査すると言うことはかなりの危険が伴う
運転を停止させないためには、一時的にインターロックを解除したり,装置が停止しないように処置をしなければいけないからだ
運転中にインターロックを検査しているときに誤ったことをすれば当然、事故につながる
2005年に運転中のインターロック検査中に爆発事故が起きている。人為的なミスがいくつか重なって起きている事故だが案外この事故は知られていない
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2005-335.pdf
その後、2018年9月26日に大阪の製油所で加熱炉のインターロック検査中に爆発事故が起きている
インターロック検査の準備段階での操作ミスだ。加熱炉の燃料弁が突然閉まり加熱炉が突然失火したのだ
あわてて、燃料弁を開けたため、炉内の未燃焼ガスが高温部に触れ着火爆発したようだ。原因は、弁を動かす計装計器の元弁だ
燃料配管系にある大気放出弁を開けようと、計装空気の元弁を閉めたところ、その元弁は燃料弁と共用されていた為突然燃料弁が閉まったのだ
消防関係の機関が発行している書籍に事故の詳細がある,燃料系のフロー図もあり 参考になるはずだ
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/191/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
この事故では、教訓となる事項も多い  高圧ガスの認定検査に関わる方は教訓にして欲しい
検査実施前に,リスクアセスをしたのはいいことだが、安易に定められた手順書以外の余計なことをしたことをしたのが事故につながっている
事故報告書には書かれていないが、インターロックを検査するために失火時の安全を確保する機能も一時的に解除していたのかもしれない
たとえば、失火時は再パージが行われない限り、燃料を自動的に遮断する緊急遮断弁は開にならない安全機能機能をインターロックに持たせているはずだ
このような機能も解除されいたため機能し無かったのかもしれない
もし、失火で燃料を自動遮断するインターロックがなければ、設置して欲しい
インターロックの運転中検査時に,トラブルが起きたときどう対処するかも教育訓練しておいて欲しい
2件の事故は幸い死傷者が出ていないが,爆発事故だから死傷者が出る可能性は十分あった
運転中の検査はものすごいリスクがあると思って欲しい
インターロックの運転中検査時に,トラブルが起きたときどう対処するかも繰り返し教育訓練しておいて欲しい

 

2021年09月28日

化学産業の重大事故に関係する根幹的問題点-行政の関わり方、事故調査のあり方、国際規格との整合性etc

何年か前に読んだ文献だが、再び読み直してみた
化学工場で重大事故が起こると、技術伝承不足、リスク評価不足、設備の老朽化、などが原因だというコメントは多い
そうは言っても、安全に対する行政の関わり方、事故調査のあり方、国際規格との整合性、公設消防と企業の自衛消防隊との権限のあり方など
もっと根っこの部分にまだまだ問題があるのではないかと言う2015年の文献だ
言われてみればそうだなと思うところが沢山ある
行政の縦割り問題だ。 総務省消防庁 厚生労働省 経済産業省などの役所が安全に複雑に関係している
事故が起これば、その上警察も加わってくる 膨大な情報が集まるのに公開されることはない
事故からの教訓が全く公開されず、もう百年も続いている
法規制のあり方についても問題点を指摘している
日本の法律は、仕様規定だ。細かく要求しすぎるから、企業の自由度がない。それでも、国は自主保安だと行っている。
自由度がなくがんじがらめなのにだ
外国では、性能規定だ。つまり、性能さえ満たせば企業が自由に方策が取れる
例えば日本のタンクの延焼防止の法規定は、何メーター離しなさいという規制のしかたをする
一方、外国では、性能規定だから、タンクは延焼しないように設計しなさいという条文になる。つまり、方策は企業が考えなさいなのだ
壁をつくって延焼しないようにしてもよい。距離は関係ないのだからだ
最近の重大事故は、行政が調査報告書を出すことは全く無い。行政が事故調査報告書を出さなくなってもう40年くらいになるのだろう
最近は、第三者委員会という名前のもとで企業が報告書を出すようになってしまった。当然裁判では不利になることは書かないから、見えない部分も多い
などなど、かなり考えさせられることが書いてある文献だ
興味がある方は読んでみると良い。ここに公開されている
http://www.cbims.net/doc/pdf/%20filename=2hasegawa.pdf

2021年09月26日

研究や化学実験における事故防止--リスクマネージメント

製油所や化学工場で起こる事故については、十分ではないが事故情報はそこそこ,行政機関からも公開されている
ところが大学や企業の実験室や研究所で起こる事故は公開されているかというと、ほとんど情報は無い
研究系でどんな事故が起こっているかは、整理した形で情報はほとんど公開されていないと言っても良い
こんな書籍がある。「化学実験における事故例と安全」という本だ。発行元はオーム社だ。2013年に発刊されている
https://www.ohmsha.co.jp/book/9784274213755/
研究系の安全管理に携わる人なら一度は読んで見てもいい書籍だ。
もう10年近く経つので、絶版になるまえに手に入れて欲しい
この本を読んでみてある程度の研究系リスクのキーワードはわかるかも知れない

もう一つ実験での事故の本を紹介しておく
丸善出版が発行している「有機化学実験の事故・危険 事例に学ぶ身の守り方」という本だ 2004年に発行されている
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b292881.html
研究系の事故で見られるのは、量が少ないから安全と安全と研究者が思いこむだ。
量が少ないと言うことが、大きな事故のキーワードだ
もう一つ、実験で勝手に方法を変えて起こる事故も多い。実験方法というのは厳密なものなのに安易にやり方を変えて事故になる
文献など資料探索の甘さも事故につながっている
SDSを鵜呑みにした事故事例もある。SDSに全ての情報が書かれているわけでは無い。濃度や温度条件が変われば化学物質の性質は変わる
実験条件と大きく異なるのに安易にSDSの情報を当てはめて起こる事故も多い
取り扱う薬品が多ければ、廃液処理時の混触事故も起こりやすい
研究系のリスクマネージメントも大切だ

 

 

2021年09月24日

計装計器の時間遅れを教えているか--計器検出値の伝達遅れ

製油所や化学工場などでは沢山の計器が使われている。入社後20年ほど計装設備の設計、保全、技術教育に関わったことがある
運転員に計装設備について教育するのだろうが、計器指示には時間遅れがあることは教えているのだろうかと気になった
流量計、圧力計、液面計などの計器類はプロセスが変化すればすぐに計器指示は変化する。検出にほとんど時間遅れはないからだ
ところが、温度計は時間遅れが生じる
温度計には、熱電対や測温抵抗体が検出器として使われる。ところが、検出器をそのまま装置には取り付けるのではなく保護管という保護カバーを取り付ける
保護カバーを取り付けることにより、熱が伝達してくるのに時間遅れが生じてしまうのだ
例えば加熱炉のような温度が比較的高い設備をスタートしていくときは、温度計の時間遅れを考慮して昇温操作していく必要がある
1960年代石油化学工業が始まったとき加熱炉の事故が多発した
昇温スピードをマニュアルで定量的に規定していなかったこともあり、運転員により個人差が出て、急激に温度を上げて事故も多かった
温度計に時間遅れがあるのに、まだ温度が上がらないと焦って燃料を多く入れすぎ加熱管が破損する事故も多かった
温度計の時間遅れを理解していなかったからだ
炉の最高運転温度も明確に規定していなかったりして事故も多かった
まだまだこの当時は、警報の数も少なく運転員が温度上昇に気づかなければやはり加熱によるチューブ破断も多かった

もう一つ分析計も時間遅れを生じる計器だ
配管などに直接設置される分析計なら、時間遅れはないが、分析計検出器とサンプリングポイントが離れている場合だ
分析計にサンプルが流れてくるまで、時間がかかることを考慮しておく必要がある
特に制御に使う計器ならなおさらだ
例えば反応器内の濃度を測る分析計なら注意が必要だ
指示がなかなか変化しないといって、原料や触媒を多く入れすぎて反応器が爆発した事例もある
計器に指示が正確に出てくるまで、時間を要する計器の種類があることをしっかりと教育してほしい
計装という技術もキーワードは伝承して欲しい

 

イラスと出典 長野計器ホームページより

 

2021年09月22日

安全講演に思う-気づき

私が化学企業に入社したのは今から半世紀ほど前だ
1970年代前半だ。製造部門ではなく、私は技術系部門で仕事を始めた
入社時教育は受けたが、その後今のように労働安全など体系的な教育は全く受けていなかった気がする
安全週間などでは、イベントはあるが単発的な教育だったようだ
当時は、たぶん高所作業という意味すらはっきり知らなかった気がする
企業が労働安全について体系的な教育をしていたかと聞かれれば、そうとは思えない 他に教えることに割く時間が多いからだ
今の状況も同じという感がする 昔とそれほど変わりはない
企業は自分でなんとかなると今でも思い続けているからだろうが、企業内の人材や資源で、できることは限界がある
労働安全にせよ保安防災にせよプロの知識を借りた方が良い
労働安全、保安防災に関しても、社員にインパクトを与えるような話ができる安全スタッフは企業内にはそれほどいない気がする
企業にはスタッフとして粛々と業務を処理する人はいるかも知れないが、講演できる人はそれほどいないはずだ

在職中、企業内に各工場の運転員を教育する技術研修センターという組織を作ったとき、企業内にいかに先生の資質を持った人がいないかと感じ取った
知識は持っているのだが、わかり易く人に伝える能力は備えていないのだ
教えるとは相手の目線に立って話す必要がある。新入社員なら、新人目線。ベテランなら、ベテラン目線で話す必要があるがそれが難しい
結果として、技術研修センター勤務時代は生徒を育てるより先生を育てるのに時間を多く割いた気がする

ただ単に安全講話をしても社員の意識レベルが上がるわけではない
色々な所で講演して感ずるのは、何かに気づいてくれたかだ。今までの価値観とは違う考え方が芽生えてくれたかだ
話をする目的は、聴講者に何かを感じてもらうことなのだ。聴講者が何かを感じて、前に進む原動力の一部を提供したいのだ
安全講演が少しでも役に立つことを願いたい

いらすと出典 いらすとやフリーいらすと

 

2021年09月20日

廃液処理の爆発事故に思う-廃液処理を甘く見るな- 変更管理の大切さ

2007/5/23日四日市のコンビナート工場の廃液処理で起きた事故だ
危険物保安技術協会の機関誌 Safty&tomorrow NO135 2011.1月号に詳細情報が載っているので興味のある方は文献検索して欲しい
負傷者も出ており工場長と現場責任者が、業務上過失傷害罪で起訴されている。起訴の理由は、作業手順書を適切に変更しなかったからだ
2人は農薬原料のうちの一つ「5フッ化プロパノール」の精製過程で、必要だった冷却作業をマニュアルに盛り込まなかったため、化合物が爆発
しやすい状態になっており、津地検は過失があると判断した。
農薬の原料であるフッ素化合物を製造する工場の廃液回収作業で爆発は起きている
貯めておいた廃液を、バッチ方式で処理して有効な薬液を濃縮して回収する作業だ
前年度である2006年度と2007年度では発生元の廃液の抜き出し工程が変化していて、大幅に不純物組成が変わっていた
廃液の抜き出し場所を変えたのだから、本来は変更管理の考えを適用し安全評価すべきだったが、実施していなかった
廃液は酸性なので、処理する際にKOHというアルカリ物質を入れて中和作業をしていた
廃液に含まれる不純物はアルカリ物質と混触反応を起こし、温度が上昇すると分解して大量のガスを発生するカリウム塩物質を形成する性質があった
今回、不純物の量が多いところから廃液を抜き出していたため、アルカリと不純物により激しい分解反応が起こった
反応熱に加え、酸とアルカリを中和しているのだから中和熱も発生し、分解反応はますます加速した
本来なら中和で温度上昇が起こるのだから、冷却が必要なのに冷却もしていなかった
容器内では、中和熱、混合熱が発生し温度は80度を超えていた。カリウム塩の分解温度を超えており、徐々に温度は上昇した
105度を超える時点から分解が激しくなった。分解はガスの発生が伴うので圧力が上昇し破裂した
爆発は4階建ての建物で、壁や屋根の一部が爆風で飛んだ。すさまじい爆風はコンビナートの壁を越えて、近くの信用金庫や理髪店のガラスまで割ったという

この事故の教訓は何かだ。一つは、廃液処理を甘く見るなと言うことだ。廃液には、混触反応を起こす物質があるということだ
もう一つは、廃液の成分や濃度は変わることがあると言うことだ。何かが変われば、変更管理の視点で見直すことが必要だ

廃液処理を甘く見ないで欲しい。自分たちの職場で、廃液処理時に適切に変更管理が行われているか見直して欲しい
新しい薬液を使い始めていないか。濃度は変化していないか。製造プロセスなどが変わっていないかだ

 

2021年09月17日

リスクマネージメント講座を立ち上げて5年

先日、今まで調査してきた化学プラントなどの火災爆発事故や破裂漏洩災害の数を調べてみたら6000件を越えていた。
事故や災害について、関心を持ち始めたのは、今から20年前のことだ。
下関にある工場で、爆発事故を経験して「なぜ事故が起きるのか」を考え始めてからだ。
そのころから、こつこつと書籍、事故調査報告書、公開されているインターネット情報を参考に「なぜ事故が起こるのか」について研究をしてきた。今から、11年前の2010年に調査してきた資料をデーターベース化する作業を始めてみたところ、同じような事故が、繰り返し起こっていることがはっきりわかってきた。つまり、事故や災害にはたねも仕掛けもあるのだ
それらを並べてみると、共通の要因がある。すなわち事故からの教訓と呼ばれるものだ。事故から学ぶことは、事故の事実ではない。
事故の原因や再発防止策から抽出した教訓だという考えに基づき、教訓を集めることに力点をおいて今まで作業を進めてきた。
つまり、事故を防ぐための普遍的な知恵が教訓だ。
今から、8年前にやっと「なぜ事故が起こるのか」の考え方を集大成し、岡山県の倉敷で2日間講座を立ち上げた。山陽人材育成という組織だ
2016年には、第二段階として「リスクマネージメントという」切り口で教訓を整理した2日間講座を立ち上げ、京葉コンビナート地区で講義を始めることにした。同年は、要望を受け岡山県の倉敷地区でも講義を行うことにした。
現在は、企業から私が依頼を受け工場に出向いて直接講義する形態も増えている。1日に短縮したコースも対応可能だ
HAZOPで見落としやすい危険源を教えるときもある
リスクマネージメントは、事故を未然に防ぐ有効な手段であるが。手法だけを学んでも効果的に化学プラントに存在する危険源を見つける能力が身に付くわけではない。つまり、設計段階でのリスクの見落としや評価の失敗事例。安全性評価の段階でリスク評価で抜け易いこと。
運転管理で管理すべきリスクは何か、過去どんなリスクマネージメントで失敗事例などがあるかなど各管理項目毎にリスク管理の失敗事例を実際の事故事例から学んでおくことが必要だからだ。
そろそろ、講義内容を書籍化してより多くの人に知らせたいと思っている。少しでも、化学プラントで事故が起こらないように自分の知っていることは伝承していきたいと思う今日この頃である。
とはいえどんどん仕事は増えている。なかなか時間が取れないのが現状だ。

 

2021年09月15日

工場で火災や爆発事故が起きたら-消防などへの情報提供

工場で火災や爆発が起きたら、どう対応するか考えているだろうか
110番や119番へ通報するのは当たり前だが、どのように到着した行政機関に情報を提供するかだ
起きている状況が目で見えるなら対応もしやすい
煙が出ているとか、炎が出ている、爆発音が聞こえたなど状況があるはずだ
そうは言っても、場所の特定は難しい。複雑に入り組んだ配管が錯綜するからだ
事故現場から逃れてきた人からの情報もあるはずだ
行政が知りたいのは、まず火災なのか、爆発なの、有毒ガスの発生なのかだ
火災ならば、消火という手段をとる。ところが、ここで大事なのは水を使うかだ。禁水性物質なら、水は使えない
そこをしっかり情報提供する必要がある。
火災でも高温設備があるかも重要だ。高温設備に水をかけると水蒸気爆発を起こすからだ
爆発が起こったなら、ガス爆発か、粉塵爆発かもみきわめも必要だ
ガスなら、ガス検知器で残留ガスを検知できる。粉塵だと、粉塵と意識すれば対応できるが2次爆発の恐れもある
反応暴走などの爆発は、2次爆発も怖い
有毒ガスの発生や漏洩もガスが特定できればいがそこがわからないと難しい
火災では、有毒ガスが副次的に発生するからだ
自分の工場でどんな事故が起こるかを考えて欲しい
その次に、行政機関に事故発生時どうわかりやすく情報を提供できるか社内で論議して欲しい

事故が起きてから考えるのでは無く、事故が起きる前に色々なことを考えておいて欲しい
事故が起きてから単にSDSを行政機関に提示しても、迅速な対応は難しい
どんな具体的なリスクが存在するか行政機関にわかり易く伝える努力をして欲しい

2021年09月13日

半導体工場の排気ダクト火災事故--停電がきっかけ

半導体工場での火災で社会は色々な影響を受けている
今や半導体は、産業の米だからだ
最近の半導体工場での火災事故は、事故速報はあれど、その本質的な事故の原因は全く公開されていない
事故の情報が公開されなければ、同じような事故はくりかえす

今回、公開されている半導体工場でダクト火災を紹介する
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200087.html
台風被害で停電が起きたが工場は安全に停止した。その後再稼働するときに事故は起きた事故事例だ
半導体工場では、モノシランガスという空気に触れると発火するガスを取り扱っていた
クリーンルーム内で半導体を製造し、残留ガスは排気ダクトから常時希釈され排気されていた
ところが、突然停電が起こり排気ダクト内でのガスの流れは止まった
時間の経過とともに、外部から少しずつ空気は流れ込んでいた。停電でも、排ガス設備は動くよう設計されていなかったからだ
しばらくして、電気が戻り、再稼働を始めたところ排ガス装置付近で発煙が起こった。
排ガスダクト部に、空気が漏れ混んでいたので空気と反応しモノシランガスが燃焼したのだ
異常に気づき、作業員は窒素でダクト内のパージを行った
ところが、トラブル時の作業要領書は無かった為、十分なダクト内換気が行われなかった。
中途半端な換気のまま、確認のため仕切り板を開けたところ再び空気がダクト内に混入してしまった
残留していた発火性ガスが空気に触れて本格的に発火してしまった事故だ

排気ダクトなどで排ガスが停電などで中途半端に滞留して、再起動時に除去が不十分だと事故が起こると言うことだ

自分の工場で停電が起こったとき、排気ダクト系が安全か検証して欲しい
停電時の排気系の電源バックアップも検討して欲しい

 

2021年09月11日

企業内エンジニアリング部門の分社化による問題点

企業によっては、エンジニアリング部門を本体から切り離し別会社化している企業も多い
設計部門は、自社の設計だけを請け負うのではなく、広く他社の設計を受注させ少しでも収益を上げたいとの思いがあるからだ
そうは言ってもそんなうまい話は、無い。本体以外の部門で仕事が増えれば、所詮本体部分に力は入らなくなる
結果として、本体部でいろいろな問題が起こり始める
設計だけを本体から切り離し、収益を上げる手段として使うならまだしも、保全まで別会社に切り出すこともある
私の勤めていた企業も、1997年の合併後、エンジニアリングを別会社に移し、エンジニアリング会社化していた時期もある
なぜそんなことをしたかというと、合併するとエンジニアリング部門の人が余るからだ
別会社化して、運用すれば本体は人件費負担が見かけ上はないから楽なのだ
結果として、別会社化されたエンジニアリング部門は人減らしをする
気づいたときには、エンジニアリング部門の人が減りすぎて、技術力のみならず、機動力も低下する
もともと、保全と設計部門の一体化は不可欠なのに無理矢理切り離していれば、情報の共有化も不足する
結果として、設計のミスや保全の不備で事故が起こるという結末になる
2000年代、今までエンジニアリング部門を別会社化していた大手化学企業が一斉に本体にエンジ部門を吸収していった
保全や設計という根幹に関わるところで事故が起こり始めたからだ
1990年頃バブルがはじけて、化学企業が生き抜く作戦としてエンジ部門を分社化していたのだろうが結局失敗に終わった
化学企業など、本体に設計~保全まで一体的に業務管理できる組織がなければいつか事故が起きる
エンジニアリングの分社化というのは姑息な手法だが、経営上はメリットがあるのだろう
分社化されて、外部から収益を得よと言われれば、所詮本体への忠誠心はなくなるのだがそれは誤差範囲と考えるのだろうか

エンジニアリング部門の役割も変わってきている。昔のように、自らが全て行える時代ではない。外注比率は増えているはずだ
設計保全下請け会社、メンテナンス会社など外注パートナーをきちんとコワークできるエンジニアーを抱えることが求められている
とはいえ、そんな人材を採用するのは難しい。自前で育てられるかという、それほどチャンスも無いし、先生もいない
悩ましい時代になってきている

 

イラスと出典 総務省統計局 https://www.stat.go.jp/data/jigyou/2006/hanashi/3_2.html

 

2021年09月09日

冷却塔の木製階段から墜落死亡事故--踏み抜き

前回、煙突の床が腐食で人が落ちた災害を紹介した
その記事を書きながら、そういえば隣の石油精製工場で冷却装置の階段から人が落ちた災害を思い出した
大阪堺泉北地区にあるコンビナートでのできごとだ
40才のベテラン運転員が13mある冷却塔の上部をパトロールしていた
13mの転落だった。冷却塔の下部にある水槽に落ちた。脳しんとうを起こし意識がなかったので溺死してしまった
冷却塔の木製階段の、床が腐っていて床板が一枚外れたのだ
木部が腐っていたのか、金属製の部品が腐っていたのかは詳細な情報はない。
金属であろうと木であろうと水分があれば必ず腐食する。
時間が経てばなおさらだ。冷却塔は、水分がふんだんにある機器だからだ

まさか階段の床が抜けるとは誰も思わないのだろうが、こんな事故も現実起こっているのだ
2000年1月1日  一瞬の出来事だった お正月の現場パトロールの最中に起こった災害だ
木製の床材の腐食にも関心を持って欲しい
一般社会でも、木製部の管理が悪ければ災害が起きる
こんな不幸な事故もある
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021050100117&g=soc
現場にある木製階段などをしっかりと点検して欲しい
異音やかたつきがあればおかしいと思って欲しい
現場の異常に敏感になって欲しい

 

2021年09月05日

140m煙突から転落死亡事故-踏み抜き事故

昨日大阪堺から仕事を終えて帰ってきた
ホテルから大阪堺泉北地区にあるコンビナートがよく見えた
沢山の高い煙突が見える。今から17年前の煙突事故を思い出した
7月の夏の暑い日だった。定修工事で、140mあるボイラープラントの煙突上部の避雷針と航空障害等を補修する工事だった
高さ100mの床だ。作業員数人で足場資材を吊り上げるため、床の中央部へ移動している時床が抜けて20m下へ作業員が転落した
安全ベルトをしていれば落下しなかったのだが、安全ベルトをロープに引っかけていなかった
ちょっとだけならという気持ちだったのだろうが真相はわからない
安全ベルトはしつこいくらいに着用して欲しい
自分の命をつなぎとめてくれるのが安全ベルトだと考えて欲しい

墜落の原因は、床が腐食して、紙のように薄くなっていたもののすすがたまっていてあたかも正常に見えたのだ
チェッカプレート鋼板で水はけが悪く、水がたまり腐食しやすかったのだ
事故後、床はチェッカープレート鋼板から、すきまがあり、水もたまらないグレーチング鋼材に変更された
25mの転落だった。墜落者を75m高さの床から下ろすのにも時間がかかり助けることはできなかった

金属であれば必ず腐食する。時間が経てばなおさらだ。煙突部周りは、硫黄酸化物も発生する。水と混ざれば硫酸を生成する
まさか床が抜けるとは誰も思わないのだろうが、こんな事故も現実起こっているのだ
2004年7月7日11時20分 一瞬の出来事だった まだ30才の若者だ
定期的に行う工事だが、周期が長い。10年くらい毎だ。長周期でやる工事のリスクに関して技術伝承ができていなかった
踏み抜きというリスクに対して安全管理がうまくいかなかったのだ
床材の腐食に関心を持って欲しい
踏み抜きという労働災害にも関心を持って欲しい

 

2021年09月03日

圧縮機破壊事故の教訓から学ぶ-38年間点検していなかったボルトのゆるみ

回転機器であるポンプの事故事例はかなり紹介されているが、圧縮機となるとなかなか事故事例は公開されることはない
しかも、写真などがついている情報などほとんど表には出てこない
いまから10年前の事故だが構造図や、原因が書かれている公開資料があるので紹介する
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-221.pdf
圧縮機は、ピストンを用いた往復動型だ。ピストンが行ったり来たりするのだから、当然金属部品で丈夫につくられている
製油所で使われていた圧縮機で、1段目が4MPa、2段目が10Mpa迄昇圧できる。
流体は水素だ。漏れれば簡単に火がつく。
使用してから38年になる圧縮機で、4年毎に重要部品であるピストンシリンダー部は点検していた
クランクという、往復運動を回転運動に変換する重要部分は12年毎に点検していた。
https://www.tetsugen.com/compressor-151210/
ところが、ピストンとクランクの間にある、クロスシューヘッドという構造部分は38年間1度も点検していなかった
圧縮機メーカーの要領書でも、その部分は点検対象にはなっていなかったという
そのクロスシューヘッドという重要部品を固定しているボルトが、38年間の間に徐々にゆるみ最後は破断して事故となったのだ
その結果、内部の金属部品は壊れ火花が生じ漏れた水素に火がついたのだ
事故の教訓は何かというと「ボルトは緩む」と言うことだ。38年間1度も点検しなければゆるみは見つけられない
再発防止の為、ダブルナット化し、しかも4年に一度トルク管理するようにしたという
たとえメーカー側の点検要領に点検推奨項目として取り上げられていなくても、ボルトのゆるみは点検してほしい
回転機器は、引っ張りと圧縮の応力がかかる。繰り返しの振動もある
20~30年を超えて使っている回転機器の点検要領書を見直して欲しい。一度も点検したことがない箇所は無いようにして欲しい
時間が経てばボルトは緩むと考えて欲しい

 

2021年08月29日

雑誌高圧ガス-事故の教訓から学ぶ

小雑誌で高圧ガスというものが発行されている。もう半世紀以上発行されている。高圧ガス保安協会という組織が発行している小冊子だ。
毎月発行され、協会員に配布されている。個人でも会員になることもできる。昔の資料だが、今1979年の特集号を読んでいる。
昭和48年(1973年)に事故が多発した時に、原因究明などが一段落したときに特集として組まれたものだ。
特集号の記事の中身は、当時の主要事故の調査報告書がある。徳山で起こった計装空気の元弁を誤ってしめてしまった事故。
市原で起こった、生きている反応器の弁を誤って開いていてしまった事故爆発事故。直江津で起こった、ハンドル廻しの爆発事故などだ。
2010年代に入って化学業界では、立て続けに大きな事故が起こっているが、昭和48年当時と酷似しているものがいくつかある。
日本の化学産業は、1950年代後半にコンビナートという形態ができた。
エンジニアリングや運転の中心になったのが、たぶん当時の30代から40代だろう。
当時の、定年は55歳だから、ちょうど1970年代に多くの人が退職する。
コンビナートの建設に携わった、経験豊かな人が1970年代に会社を去って行ったのだ。
だから、1973年という年に事故が多発したということにも符合する。特集号の中には、当時事故の再発防止に向けて色々な事柄が書かれている。一部は、法律として既に取り込まれているものもあるが、昨今の事故のでも通用するものも多いと感じる。
課長や部長などの管理スパンが広くなりすぎていた。本社安全部門の機能が形骸化していたなど当時の状況が再燃している。
つまり、本社機能が本来工場にも目を向けるべきなのに、官公庁との渉外に時間を取られ工場のリスクを見抜けていなかったなどだ。
安全衛生委員会も形骸化していたとの記述が、当時の資料にある。単なる報告に終わり、安全討議が行われていないなど厳しい指摘がある。
これは、多くの企業も耳が痛いところではないだろうか。
約50年前の事故教訓であるが、企業の安全担当者は一度は目を通して欲しい情報だ。
多くの事故から教訓を学んで欲しい
雑誌高圧ガス 1974年のVOL11 2月号だ 昭和48年の事故特集号だ
高圧ガス保安協会の東京の事務所に行くと、書庫がある。そこで、当時の高圧ガスという小冊子も見ることが出来る
興味があるなら一度見て欲しい。東京にある高圧ガス保安協会の書庫を訪ねて欲しい

 

2021年08月27日

事故防止に必要な知識-人に技術あり

化学物質や石油工場などで事故を防ぐにはどんな知識が必要かと問われることがある 決定的な解はない
業種により様々だ.装置の種類により伝えることは違う
とはいえ,本質的な部分は変わりは無い
事故を大きく分ければ,労働災害と化学災害に分かれる
人がケガをするのが労働災害だ。化学災害は,人ではなく装置がケガをすると考えて良い
いわゆる爆発や火災、破裂などで装置本体がダメージを受けることだ
装置の破損だけではとどまらない.労働災害も併せて発生する事例も多い

労働災害というのは、かなり企業は時間をかけて安全対策をとる
ところが,化学災害は危険性はわかっていても積極的に対策は取ってはいない
一つは,労働災害の専門家は多くいても、いざ化学災害となるとそれほど多くの専門家を企業は抱えていないからだ
爆発や火災はそう頻繁に起こるわけではない 過去の事例を知っていないときちんとした対策が取れるわけではない
過去の事故事例は,それほど多く公開されてはいない。結果として企業内にそれほど多くの化学災害の専門家は育たない
多くの化学災害は,10年周期で起こると言われる.十年一昔というように,10年くらい経つと人の入れ替わりがあるからだろう
技術は人にありと言われる。けっして、技術は全て明文化されるわけではない。暗黙知として存在するのは半分以上あるはずだ
退職などで人がいなくなれば,技術は自然に企業から無くなっていく。現在勤めている人の技術を、とにかく伝承する努力を怠らないで欲しい
技術を伝承する機会を計画的に構築して欲しい
技術の伝承が途絶えれば企業の存続は危ういと考えて欲しい
企業を構成する人そのものに技術ありなのだ

イラスト出典 イラストヤフリーイラスト

 

2021年08月25日

印刷用インク工場の粉塵爆発に思う

印刷用インクを製造する工場で粉塵爆発が起こった。先月に事故が起こり、対策を打って再スタートした
ところが、また同じような粉塵爆発がおこった
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2108/13/news075.html
ニュース記事の写真を見ると建屋の壁の一部が破損している
https://www.fnn.jp/articles/-/223601
一回目の事故で第三者委員会を立ち上げ原因を検討し、対策や教育を実施して再稼働したという
トナーという印刷用のインク粉体を乾燥する設備で起きた粉塵爆発だ
トナーという粉はプラスチックかできた粉体だから可燃性だ。粉であるから,空気があれば粉塵爆発は起こる

今回企業からは,1回目の事故報告書と対策内容は一切公開されていないからどんな処置を取っていたのかはわからない
可燃性粉体はとにかく,空気が周りにあれば静電気などで必ず着火する
今回の設備も乾燥機と言うから、乾燥した粉で空気が周りの存在すれば当たり前のように粉塵爆発を起こす可能性はある

通常は,窒素雰囲気で乾燥していかないと爆発を防ぐのは難しい
第三者委員会がどんな答申をしていたのかはわからないが、結果として中途半端な対策か
企業側が対策通りに製造しなかったかのいずれかだ

とにかく,事故を起こしたら事故報告書を公開して欲しい
事故を公開しないから同じ事故が繰り返し起こる
事故の連鎖を切って欲しい

 

2021年08月23日

挟まれ巻き込まれ-機械安全-最悪の事態を常に考えよ

工場は機械と人とバランスが取れていて安全が保たれる
機械の力を借りなければ,工場は成り立たない
とはいえ,機械には力がある。機械に巻き込まれれば人はひとたまりではない
以下に機械とうまくやっていけるかが工場の課題になる
工場を設計するときに,基本的に考えておくことは
1.人はミスをする
2.機械は故障する
3.絶対安全は存在しない
の三つだ

このホームページで重要な事項が書かれているので参考にして欲しい
https://www.jisha.or.jp/oshms/machinery/about01.html

本質的な安全な工場を作り上げて欲しい

人は必ずミスをする ミスをしても重大な災害にならないように設計して欲しい 2つ以上の安全対策をすることだ
1つは必ず破られる ハードとソフトと別々に安全対策を考えて欲しい

機械は故障する 故障時の対応でミスが起こる.故障時に安全な対応ができるように予め準備して欲しい.トラブル対応マニュアルは作成し教育して欲しい

絶対安全はない。常に危険が周りにある.今まで大丈夫だったは,通用しない
最悪の事態を考えて欲しい。最悪の事態は何かと,管理者に問いかけて答えがすぐに帰ってこなければまだまだ職場にリスクは存在する
最悪の事態を常に問いかけて欲しい

 

2021年08月21日

HAZOP教育の難しさ

HAZOPという教育に携わってもう10年以上になる
HAZOPという安全評価手法を知ったのは、いまから40年前の1980年代だ
1970年代にコンビナートで事故が多発して,化学企業は事故の未然防止を考え始めたころだ
1980年代当時、最初に私が勤めていた企業で、HAZOPを行ったのは気相法ポリエチレンプラントだ
その後、HAZOPを自ら使うことはなかったが、2000年代後半に運転員の教育に携わることになった
プロセス安全、労働安全など実に多くの教育カリキュラムを考え、当時勤めていた企業の技術研修センターというのを立ち上げた
今はもう4代目の所長が運営しているが、施設そのものやカリキュラム構成は私が立ち上げたときと大きな変化はない
http://www.mci-shayukai.com/activity/hiroba/sh0172.html
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/training/index.htm
2006年に技術研修センターを立ち上げたが,最初は若手の教育、次は中堅者、その後はベテランと教育カリキュラムを充実した
中堅層の安全教育カリキュラムとして、HAZOPを取り込んだ。2日間の体験学習だ。この二日間で,ずれを引き金にハザードシナリオ考えさせた
その後、この化学企業を退職し、HAZOPの教育を色々な企業に実施してきた
化学系の若手幹部候補生向け、化学系初心者、化学系安全担当専門家、メッキ業・金属加工業など業種に違うHAZOP教育も行った
教育でむずかしいのは、短時間に、どう効果を上げるかだ 全てを教えようとするといくら時間があっても足りない
初心者クラスなら、ずれという概念でHAZOP的な思考をすることによって事故を未然に防げることを意識つければ正解だ
中堅どころなら、HAZOPで見落とすところ重点的に知ってもらえばいいとおもう。HAZOPはやることに意義があるわけではないからだ
HAZOPリーダ-は、直感的に自分のプロセスのハザードシナリオを描けることだ.その上で,メンバーの多様な意見を引き出すことが大切感じさせることだ
ずれから、ハザードシナリオに展開できる能力を持ってもらえればあとは,場数を踏ませることだ。数をこなせば応用問題も解けるようになる

化学プラントの製造プロセスは様々だ.自分のプロセスのハザードが何かをまず知らなければHAZOPを使いこなすことは難しい
自分のプラントのハザードシナリオをいかに考えだせる能力を与えるかがHAZOP教育の肝なのだろう
教えるではなく考えさせるだ
体系的に考えさえるところが教育の肝になる そうは言うものJの,そこが難しい

 

2021年08月19日

酸欠災害を防げ-窒素パージ後の酸欠

酸欠という労働災害がある。くり返し起こし、なかなか減らない災害だ
化学工業の社会でも多い災害だ。化学プラントでは爆発混合気をつくらせないためにチッソを使うことは多い
チッソという気体を使って装置の中を爆発しないようにパージする作業は多い

問題はその危険なチッソを取り除く作業をするときだ
通常は、装置のマンホールという蓋を開けて空気を中に入れ込んでいく。開けたマンホールから空気を入れてチッソを排気するのだ
問題はこのマンホールを開ける作業だ。単純に指示を受けてマンホールを開けるなら事故は起きない
でも世の中には、このマンホールを開けていた作業者が、マンホールの中に入り死亡する事例も数多くある

なぜそんなことが起こるのかと言えば、チッソは臭いもなく色もないからだ。チッソが危険と人が色や臭いで感じることができないからだ
チッソは吸い込むと瞬時に酸欠になる。あっという間に意識が無くなる。 ほんの数秒で意識を失う
更に,瞬時に筋力も無くなる。自分の体を支えることもできなくなる
つまり,逃げだそうとしても自分の力では逃げ出せないのだ

この怖さを教育で教えるのは難しい。体験型教育で工夫してチッソの怖さを感じさせようとするのだがなかなか難しい
チッソのある場所の管理をしっかりして欲しい
チッソに関わる作業も甘く見ないことだ
協力会社だけで、チッソに関わる作業をさせないで欲しい
発注者側も大事なところには立ち会うなどして関与して欲しい

チッソ(窒素)を取り扱う作業を甘く見ないで欲しい

 

2021年08月17日

繰り返すタンク加圧 負圧変形事故 その2 サイホン現象

タンクが変形する事故は頻繁に起きている。 凹み、凸みなどの変形だ。
原因は、タンク内の圧力が急変するからだ。
タンクというのは、ほぼ密閉した容器だ。液を入れれば、排気設備がなければ当然タンク内の圧力は上がる
だから、排気設備が一般的には付けられている。ブリーザー弁やベント弁などとも呼ばれる装置だ
これによりタンクは、脹らむことはない。しかし、排気設備が故障すれば、液を入れていけば脹らむことになる
排気設備は、長期間点検しなければ錆び付いて動かなくなったり、金網などに異物が付き排気抵抗が大きくなる。
その結果、凸む事故が起こる
では、タンクから液を抜き出すときはどうだろう。やはり、吸気設備がなければ負圧になり凹んでしまう
吸気設備や吸気配管が必要となる。ブリーザー弁などと呼ばれる設備は、一般的に吸気と排気の両方の機能をもつ
しかし、時には排気機能はあっても、吸気機能を付けていなければタンクが凹む要因にもなる

タンクを凹ます要因の一つに、サイホン現象があることは案外知られていない
タンクの水張り検査などで、水を入れていているときに凹み事故が起こる
タンク上部のベント部にホーズをつないで、オーバーフローした水を地上に排出するようにしているときだ
タンク上部と、地上部では液ヘッド分だけ差圧がある
つまり、上から下へと液が一度流れ始めるとサイホン現象で水が止まらなくなるのだ
タンク内に水張りした水がどんどん減っていけばそこの空間部は負圧になる
水を止められなければ、結果として負圧空間がどんどん増え凹むのだ
事故事例を紹介する 川崎市が公開している資料だ
https://www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000096/96474/jikojirei.pdf
事故事例NO65を見て欲しい(資料の下に書いてある頁の139頁)

事故事例NO64にはタンクの膨らみ事故事例も紹介されている
事故事例NO66にはタンクの凹み事故事例もある

事故が起こるパターンはほぼ同じだ
タンクの凹みや凸む事故の危険源をしっかり学んで欲しい

 

2021年08月13日

繰り返すタンク加圧 負圧変形事故

タンクが変形する事故は頻繁に起きている。 通常使われるコーンルーフなどのタンクの耐圧は、水中圧で数百ミリ程度しかない
チッソなどで、タンクをパージしているとき、排気側の能力が低いか、詰まり気味であれば簡単にタンクは破裂する。
タンクの排気弁などは、出口側に金網が付けられていることが多い。ここを、定期的に清掃していなければ詰まることが多いからだ
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/193/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
タンクは圧力をかければ破裂するが、その反対の負圧になっても変形する。つまり、タンクは、+の圧力でも、-の圧力でも壊れると言うことだ
タンクは呼吸できなければ、変形すると考えて欲しい
多くの事故が起きているはずなのに、事故報告が公開されることはない。数少ない公開事例をここで紹介する
https://www.aiche.org/sites/default/files/2007-02-Beacon-Japanese_0.pdf
https://www.aiche.org/sites/default/files/2002-02-Beacon-Japanese_0.pdf
窒素シールで圧力コントロールをしているタンクもある この、窒素シールの元弁をスタート時に開け忘れてタンクを凹ました事例もある
タンクの中に貯蔵する液体の蒸気圧の変化でタンクが凹む事故も多い
例えば色々な液がタンクに入り込んで来ると、蒸気圧が変化することがある
新たに投入した液体が、今まで入っていた液体のガス分を吸収する性質の液体であれば一気に蒸気圧は低下する
あつという間にタンク内は負圧に近くなりタンクが変形することがある
タンクの場合は、混ぜることにより蒸気圧が変化することが怖い
急激に蒸気圧が低下すれば減圧状態になりタンクが変形するからだ
タンクに関しては、蒸気圧の変化にも敏感になって欲しい
混合タンクや中間タンクなど色々な液が混ざるタンクではこのような事故が起こりやすい
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=68412
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2008-272.pdf
工事でタンクを凹ましたりすることもある。塗装工事で、ペンキ屋さんが排気部を塞いだり、排気部の金網にペンキを塗って塞いだりする事例だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012007.html
タンクの均圧管に液がたまり、凹んだ事例もある。適度な配管の傾斜をしなかった事例だ
スチームパージしたタンクが凹んだ事例もある。パージ後、ベントやドレンのバルブをあけず、タンクを締め切っていたからだ 
パージに使ったホースを取り忘れ凹んだ事例もある。http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012008.html
スチームは、夜間温度が下がれば水滴になる。その結果密閉された、タンク内空間はバキュームになるからだ
タンク排気弁点検で、ブリーザー弁を取り外した後誤って仕切り板を取り付けた凹み事故もある http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000011.html

イラスト出典 職場の安全サイト 一部修正

 

 

2021年08月11日

縁切りという処置の大切さ

縁切りという言葉がある
化学工場の世界では危険な物を確実に遮断するという意味だ
遮断というと、配管内にある手動弁を閉めれば遮断できると思いがちだが弁(バルブ)は微量に漏れることがある
絶対に漏れてはいけないならば、弁は2重化が不可欠だ

ところが現実の世界は、2重化されるのはほんのわずかだ、バルブを閉めれば確実に遮断すると考える人が多いからだ
漏れる危険はわかっていても、確実な縁切りができていないのが世の中の現実だ

バルブは一つだけで縁切りは難しい。二つ使って、中抜きという操作が必要だ
もう一つは、仕切り板という遮蔽板を弁の前後に入れて確実に縁切りする必要がある

化学工場という世界では、少しでも漏れれば事故につながる事例は多い
縁切りというのは、100%危険な物を遮断する必要がある。99.9%では駄目なのだ。0.1%でも命に関わることも多いからだ

でもこの縁切りという言葉を知ってくれる人はそんなに多くはいない
命に関わる作業なのだが、言われた通りに処置や意味もわからずやっている人が大部分だ

なぜこの作業をするのか、教えていない。教える時間も無いのかも知れない

やはり、仕事を教えるならなぜを伝えて欲しい
昔、縁切りの失敗で人が何人も死んでいるならそれも伝えて欲しい

 

 

2021年08月09日

可燃物タンクの壁に直接溶接などを行えば爆発すると思っているか

鹿島のコンビナートでタンク周りの工事をしていて爆発が起こった事故がある
2018年9月6日 工事をしていた協力会社員が死亡した事故だ
https://m.facebook.com/roumuanzeneisei/posts/1838628246251426/
https://scontent-nrt1-1.xx.fbcdn.net/v/t1.6435-9/fr/cp0/e15/q65/41068570_1838623669585217_7685584590232092672_n.jpg?_nc_cat=106&ccb=1-3&_nc_sid=8024bb&_nc_ohc=o-QZ_cCnMnMAX9F_BfE&_nc_ht=scontent-nrt1-1.xx&oh=8bb5f575287b9355438af014dc36b0a9&oe=61326F59
写真を見ると天板が裂けていることから、かなりの爆風が作業員にかかったと思われる。心臓破裂との記事もあった
事故から約3年経った,21/7/23に検察が起訴した旨の情報が出ていた
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%9B%E3%82%AC%E3%82%B9%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%89/2018%E5%B9%B49%E6%9C%886%E6%97%A5%E3%80%80%E8%8C%A8%E5%9F%8E%E7%9C%8C%E7%A5%9E%E6%A0%96%E5%B8%82%E3%81%AE%E6%A8%B9%E8%84%82%E8%A3%BD%E9%80%A0%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E3%81%A7%E3%83%91%E3%83%A9
起訴されたのは、工事発注者で現場に立ち会っていた社員と工事を請け負った側の協力会社の監督だ
本来工事計画になかった、タンクにボルトを直接溶接したことから事故が起こっている
それを、上司にも報告せず止めもしなかったとして、発注者側の立ち会いしていた社員が起訴されている
タンクの側板や天板に直接溶接をして爆発している事故は今回が初めてではない
過去にこのような消防通達が出ている 今から40年前の通達だが、繰り返し同様な事故が起きているかがわかる
http://kikenbutu.web.fc2.com/90_TUTATU/1984S59/S590712KI69/S590712KI69.htm
事故というものは、決して目新しい事故が起きているわけでは無い。ほとんどは過去の事故の繰り返しだ
とはいえ、タンクに直接火を入れて爆発することがわかっている社員は1%もいないのでは無かろうか
だから事故は起こる

 

2021年08月07日

アルカリが引き起こす事故

化学物質の代表的なものとして、酸とアルカリがあることは世の中で良く知られている
酸は金属を溶かすと言われる。金属表面処理などにつかわれる。金属を腐食させたりするからだ
https://www.ipros.jp/technote/basic-corrosion/
アルカリはと言うと、人を溶かすとも言われる。人の皮膚などは、タンパク質でできているから、それを良く溶かすからだ
いわゆる皮膚の薬傷を起こさせる物質だ。目に入れば、眼球を損傷し失明させることもできる怖い化学物質だ
労働災害に関わることが多い薬品だ

酸は金属を犯すといったが、アルカリは金属にどんな影響を与えるのだろう
よく知られているのは、アルカリ腐食と言われる現象だ
https://www.ipros.jp/technote/basic-corrosion/
アルカリによるステンレスの応力腐食割れ事故も多い

アルカリは触媒になることがある。ある特定の化学物質では、激しく反応を起こすことがある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/2/2/2_106/_article/-char/ja/
無水マレイン酸という物質ではわずかなアルカリが存在していても異常反応を起こす。混触という見方で見ても良い
過去こんな事故が起きている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200093.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000121.html
2017年1月に和歌山の製油所で起きた配管漏れ火災もアルカリが関与している

酸が引き起こす事故も多いが、アルカリも関心を持って欲しい

 

写真出典 東工薬株式会社 ホームページより

 

2021年08月05日

アメリカで起きた日本企業への事故に関する損害賠償--数百億円

昨今、日本の企業と言えども、国内で利益を得ているわけではない
化学系企業によっては、半分以上が海外からの収益という会社は多い
では海外工場での安全管理はと言うと、現地法人にお任せという形態も多い
言語の問題、企業買収時の契約、法制度など多くの要因はある
ところがひとたび海外で事故が起これば、現地の法制度で色々な問題が起きる
アメリカなどでは、裁判が起こればとんでもない損害賠償を要求される。日本とは桁違いの損害賠償額だ。
ある企業のアメリカにある工場で火災事故が起きた。可燃物が漏れ、火災になった事故だ。
死者は出なかったが従業員が、やけどなどをした。従業員は、2百数十人の工場だ
事故後、火災により身体的、精神的苦痛を受けたと従業員などから訴訟が起こった。和解により、数百億円の費用がかかったとの報道がある
http://blog.knak.jp/2019/10/post-2297.html
https://www.kuraray.co.jp/news/2018/181130
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD239U70T21C20A2000000/
https://www.gomutimes.co.jp/?p=150660
事故の詳細は、日本ではあまり報道されていないがスタートアップ時の事故らしい
圧力が上昇したとき、安全弁が外れてしまったという情報もある
設備の復旧だけを見れば数億円だが、それ以外の事故の訴訟対応にかかった費用は100倍程度もあるのかもしれない
事故を単なる機会損失や、復旧費用だけで考えてはいけないという事例だろう

海外比率が増えてきている日本企業では、考えさせられる事例だ
事故が起これば、従業員を含めたステークホルダーへの精神的苦痛などへの対応も必要となるからだ

 

イラスト出典 イラストAC無料

 

 

2021年08月03日

硝酸を取り扱う工場での爆発事故

硝酸を扱う工場での、爆発事故も多い
2018年7月2日 13:40、福井県で硝酸などを混ぜていた化学材料を攪拌(かくはん)していた釜(タンク)で爆発死亡事故が起きている
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32506760S8A700C1000000/
https://www.asahi.com/articles/ASL725DKQL72PGJB008.html
事故は希硝酸が入った釜に触媒の薬品を投入後に発生した.硝酸濃度は67.5%で事故は作業の引継ぎ段階で発生した。
作業は3種類の化学薬品を混ぜるもので、同工場ではこれまで800回以上の実績があり、作業者は勤続16年で経験豊富だったと説明がある
温度管理ミスが原因だったらしい
温度を上げれば、反応は進行する。短い時間で反応できれば、作業性は向上する。
しかし、温度というものはある一線を越えると、爆発的な反応となり制御できない
温度管理はものすごく重要なのだが、なかなかこの思いは現場にはつながらない
反応生成物は有害性の低い3BHだった。3・t・ブチルヘキサン二酸となるものだ
従業員と、従業員への指導を怠ったとして現場の責任者2人のあわせて3人を、業務上過失致死の疑いで書類送検された
書類送検容疑では、作業員は攪拌作業中に釜の温度管理などの注意義務を怠ったほか
工場長と製造課長代理は、作業員への十分な教育指導を怠るなどして爆発を起こし、男性作業員を死亡させたとされていた。
事故から3年目の2021/7/19、福井地検は、業務上過失致死の疑いで書類送検された当時の工場長ら三人を不起訴とした。
処分理由は明らかにしていない。
三人はいずれも男性で、事故当時の立場はそれぞれ、爆発が起きた第一工場の工場長兼製造課長、製造課長代理、作業員。
近くで作業中だった小浜市の男性作業員=当時(39)=が、肺の損傷などで死亡した。
不起訴となった作業員も顔などに重傷を負った。
事故からもう3年だが、検察も不起訴で理由も開示されていない。企業側からも、事故の原因や対策は発表されていない
労基や検察などには、事故報告書は存在するのだが公開はされない。一方で、行政はリスクアセスメントを企業側には要求する
事故から学んだ、貴重な教訓が公開されなければ、リスクアセスメントの質の向上には結びつかない
この矛盾はなんとか解決してほしいものだ

2021年08月01日

繰り返す屋内での発電機による一酸化炭素中毒事故

またまたこんなニュースが流れていた。屋内で発電機を使いながら作業をしていて、気持ちが悪くなったという事故だ
https://news.yahoo.co.jp/articles/79e9ebf0eb395a4b16a8fdda244a2e07cb5321cb
幸い死亡事故にはならなかったが、これは発電機の排ガスによる一酸化炭素中毒だ
この手の事故は、頻発するが現場で作業する人はこの発電機排ガスによる危険性を知らない

簡易型のガソリン発電機が現場で使われるようになってきてから繰り返している事故事例だ
換気のない狭い部屋でガソリン発電機を動かしていればあっという間に一酸化炭素が室内に充満する
気がつかないうちに中毒になる

とにかく、燃焼する設備であれば酸素を消費するから酸欠になる
おまけに、燃焼で一酸化炭素を放出する
ガソリン発電機は、一酸化炭素発生装置だと思って欲しい

とにかく命を大切にして欲しい

 

 

2021年07月31日

火気を使って溶断工事中ゴムライニングに着火火災となる

化学工場で定修修理工事中の火災が報道されていた
https://www.news24.jp/nnn/news102bysvnxalciu92mpk.html
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%81%AB%E7%81%BD%EF%BC%9B%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E5%B7%A5%E4%BA%8B%E3%83%BB%E6%B8%85%E6%8E%83%E4%B8%AD%EF%BC%89/2021%E5%B9%B47%E6%9C%8819%E6%97%A5%E3%80%80%E5%91%A8%E5%8D%97%E5%B8%82%E3%81%AE%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E3%81%A7%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E4%BF%AE%E7%90%86%E4%B8%AD%E3%80%81
装置の中で金属部品を取り除く為、酸素などで金属を溶断していた時に火災が起こっている
酸素などで金属を溶断すれば、手っ取り早いが周りに燃えるものがあれば火がつく
鉄などの金属を溶断するときは、1000℃を超える温度が金属部で発生している

ものの発火点は数百度だから、近くに何かも得るものがあれば簡単に火がつく
今回の事故は、装置の中はゴムシートでライニングしてあったそうだ
耐酸性を持たせるため、ゴムの被覆を金属の上に被せていたようだ
ならば、当然着火防止の措置はしていたのだろうが詳細は報道されていないので全くわからない

過去多くに火災事例はこんなことが原因となっている
水をかけながら、火を使って溶断していたが水量が足りなかったら、狭い範囲しか水をかけていなかった
防火シートは被せていたが、すきまが有り、すきまから火の粉が内部に入っていたが気づかなかった
工事関係者に、燃えるものの情報が伝わっていなかった
工事の工法が、協力会社任せて発注者が業者に丸投げしていたなどだ
いずれにせよ、リスクを甘く見たことで火災につながっている
効率は悪くても、電動金ノコで切断するなど、より安全な工法の選択を考えて欲しい

2021年07月28日

過酸化物事故

過酸化物という物質を知っているだろうか。温度に敏感な物質だ。ある温度を超えると急激に激しく反応する物質だ
化学反応の反応開始剤として良く使われる。化学工場などで色々なところに使われているのに、その危険性は案外知られていない
過去何度も過酸化物による事故は起こっているのにその危険性は広く知られていない
昭和30年代(1950年代)過酸化物である過酸化ベンゾイルという物質の爆発事故が頻発した
その後も事故は起こっている
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-27/hor1-27-8-1-0.htm
便利な化学物質には必ず、リスクは存在する。いかにそのリスクを知って対処するかだ
この夏の暑い時期になると過酸化物の事故も多い。外気温が高まるからだ
2017/7/27に千葉県で過酸化物の事故が起きている
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%81%AB%E7%81%BD%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%9B%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E6%80%A7%E7%89%A9%E8%B3%AA%EF%BC%89/2017%E5%B9%B47%E6%9C%8827%E6%97%A5%E3%80%80%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E8%8C%82%E5%8E%9F%E5%B8%82%E3%81%AE%E4%B8%89%E4%BA%95%E5%8C%96%E5%AD%A6%E3%81%A7%E9%81%8E%E9%85%B8%E5%8C%96
動画ニュースもある
https://www.youtube.com/watch?v=SZ6mWKQsSfc
事故の原因は企業から詳しく報道されていないが、過酸化物が引き起こした事故だろう
事故の原因は、冷却不足だろう.過酸化物はとにかくしっかり反応開始温度以下に冷却されなければあっという間に反応を開始する
冷却能力は、余裕を見て欲しい
日本有機過酸化物工業会という組織もある。色々な情報を発信しているので興味のある方は見て欲しい
https://www.j-opa.jp/
イラスト出典 https://fukafukanet.com/class5_organic_peroxide

 

 

2021年07月25日

タイでスチレンモノマー工場爆発事故

スチレンモノマーという化学物質がある。化学反応させて梱包材などに使われる便利な物質だ。
とはいえ化学物質であるから、取り扱いは注意が必要だ。可燃性で良く燃える。わずかだが、腐食性もあり金属を腐食する。毒性もある
過去何度も事故を起こしている物質だ。世界中で事故を起こしている
最近の事故では、2021/7/14タイで爆発事故が起きている。消火中に爆発し、消防士が死亡している
http://tank-accident.blogspot.com/2021/
昨年は、同じ7月にコロナで工場管理が甘くタンクで異常反応がインドで起きている
https://tank-accident.blogspot.com/2020/07/12.html
スチレンモノマーというのは、冷却しないと反応を始めるやっかいな物質だ。たぶん、冷却管理を怠ったのだろう
このように、冷却を必要とする物質は夏暑いときに事故を起こしやすい。夏場は、反応性物質は特段の注意が必要だ
2019/6/9には韓国で事故が起きている
https://tank-accident.blogspot.com/2019/06/blog-post.html
日本でも、こんな大事故が大阪で起きている。停電が引き金となった、反応器の爆発事故だ
1982/8/20の夏の暑い日だ。死者が6名もでた大惨事だ
http://www.shippai.org/fkd/hf/HC0000179.pdf
1993/9/5のまだ夏の暑さが残るころ大阪のコンビナートでタンク事故が起きている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200008.html
反応して発熱する物質は、しっかり冷やさないと事故になると言うことだ
夏場はしっかりと化学物質を冷やしてほしい

 

 

2021年07月23日

事故事例教育では教訓を伝えて欲しい

事故事例教育をすると聴講者は、原因と対策を盛んに聞いてくる
事故という物は、原因と対策だけを学んでも事故を防ぐことはできない

なぜならば、一つの事故の原因と対策を詳しく学んでも、将来起こるかも知れない他の事故の防止にはあまり役に立たないからだ
一つの事故には確かに原因がある。原因があれば当然対策がある。
しかし、一つの事故の原因はその事故固有の原因であることも多い。
固有の原因に対する対策も、所詮固有の対策になる
事故というのは、大切なことはどうしたら防げたかだ。
事故が起きてからの対策ではなく、どうして未然に防ぐかが重要だ
つまり、事故というのは、原因と対策を考えるのでは無く、どう防ぐかを常に考えた方が普遍的な事故防止対策となる

このどうすれば防げたかという答えが、教訓だ
対策の中から最も効果的な施策を抽出して教訓を考えるのだ
考えて考え抜かないとそう簡単には教訓は出てこない。考え抜くことに、意義がある

事故解析には、原因と対策が必要だが、事故を技術伝承するためには、教訓に的を絞る方が効果的だ
教育に使える時間は限られているからだ

事故報告書に、教訓という欄を設けて欲しい。
事故を防ぐ方法を徹底的に考えてもらい、教訓欄に書き込んでもらうのだ

これを繰り返すことで、かなり事故に対する防止策のイメージが描けるようになる
「教訓」という言葉を大切にして欲しい

イラスト出典 いらすとやフリーイラスト

 

 

2021年07月21日

粉塵爆発に思う--送風機の摩擦が着火源になることがある

2ヶ月前の事故だが、粉塵爆発の事故が報じられていた
2021/5/11 福島県いわき市という所で起きた爆発だ
https://www.youtube.com/watch?v=Cqd4tKiLXSo
亜鉛の粉を取り扱う装置を起動していたとき爆発が起きたという
粉末に風を送る送風機で異音がして、しばらくして爆発したという
原因は不明と言うが、粉という物は着火源があれば簡単に火がつき、燃えるでは無く爆発することもある。詰まり粉塵爆発が起こると言うことだ
亜鉛は金属だから燃えないと思う人がいるかもしれないが、金属でも条件さえ整えば燃えるのだ
粉になると空気と触れる表面積がどんどん増える
細かくなればなるほど、表面積は増えていく
当然火がつけば、表面積が多いのだから爆発的に燃焼する
http://www.bsb-systems.jp/page0136.html
アルミという金属も良く爆発事故を起こす
タイヤのホールを製造する工場では、アルミを削るとき大量の粉ができるからだ
自分の工場でも、大量の金属粉塵がでるなら粉塵爆発のリスクを検討して欲しい
今回の着火源は、異音がしたというのであれば摩擦熱の可能性もある
送風ファンの内部の羽根は金属でできている。羽根とファン本体の金属と接触すれば摩擦が起こる
もう一つは、金属と擦れ合えば金属火花も出る。金属火花も着火源だ
過去にも、ファンの摩擦熱で火災が起きている事例も多い
ファンで異音がしたら、無理に回さないことだ
できれば、定期的に点検をして欲しい
何十年も点検していなければ事故になると考えて欲しい
たかが送風機と考えないで欲しい

イラスト出典 いらすとやフリーイラスト

 

2021年07月17日

不活性ガスの再利用が引き起こす事故

可燃性ガスをパージするときに不活性ガスが使われる
代表的なのはチッソだ。着火することもない安全なガスだ

100%の濃度の窒素ガスなら問題は無いが、化学プラントなどでは燃焼後の排ガスが不活性ガスとして使われることも多い
燃焼後であるから、大部分はチッソや二酸化炭素だ。これでも、可燃性ガスを除去して不燃性にするには十分だ

ところが、このような排ガスには、可燃性の成分が漏れ混んで入り込んでいることがある
それを知らずに、パージ用ガスとして使用していると当然発火事故を引き起こす

日本で、排ガスなどのパージガスを使っていて事故が起きた事例はは、今から半世紀前にわかっている
1964年四日市の合成ゴム会社で事故が起きている

ブタジエンという物質を取り扱う反応器の、ガスパージをこの排ガスで実施していた
ところが、パージに用いた排ガスにはブタジエンと反応する二酸化窒素という物質が漏れ混んでいた
この結果、ブタジエンと二酸化窒素が反応し反応器が爆発したのだ

この事故が起こるまで、日本で排ガスを用いた不活性ガスによる事故は起きていなかった。不活性ガスなら安全だと思いこんでいたのだ
ところが、プロセスから得られる排ガスは、時として他の危険な成分が紛れ込むことがある。縁切りが悪ければ、当然その可能性がある

この事故の教訓から、多くの企業は排ガスをパージ用ガスとして使うのは止めた
ところが、いまだに排ガスをパージガスとして使う企業は多い

コストメリットがあるからだ
排ガスをパージガスとして使うなら、少なくとも成分分析計は付けて欲しい。 可燃分がないことは、確認して欲しい
中途半端な不活性ガスは、事故を引き起こすという事実を見落とさないで欲しい
経済性と安全性のバランスをしっかり取って欲しい

イラスト出典 イラストや フリーイラスト

 

 

2021年07月15日

静電気を甘く見るな--アース(接地)設備の管理を怠るな

可燃物を取り扱っていれば火災のリスクはある
アルコールや有機溶剤など工場では多くの可燃物が取り扱われている
でも毎日可燃物を取り扱っていると慣れっこになっているはずだ
可燃物であれば、燃える可能性は100%あるのにその危険性を感じていない

燃えるには何らかの着火源が必要だ。通常工場は、火気厳禁だから火が自然につく要素はほとんどない。
ところが静電気という着火源は無限に存在する
静電気は、どこにでも発生する。発生するならそれを逃がせば良いのだ。つまり、大地に逃がせば良い
静電気は、アース線など接地線がしっかりと整備されていれば、確実に除去することができる

ところが、アース線の管理というのは結構ずさんだ
接地抵抗などは、定期的に検査されてはいないのが実情だろう
アース線が外れているところもある。工事などで、一時的に外されて復旧されていないのだ
一度アース線の接地状況や、接触抵抗など一斉にチェックして欲しい
思わぬ所で、設置されていない箇所が見つかるはずだ

工場だけでは無い。研究所でも、接地線が外れていてガス漏れが起きていたときにガス爆発が起こったことがある
事故が起こる前に、何度か放電するような音がしていたのに異常を感じ取れていなかった

静電気で起こる事故はものすごく多い
アース設備の維持管理は大切だ
アース(接地)というものにも関心を持って欲しい

イラスト出典 イラストAC無料イラスト

 

 

 

2021年07月13日

鉄粉が反応すると思っているか

鉄触媒と言う言葉がある
化学反応のスピードを、ものすごいスピードで上げてくれる物質だ。化学の世界ではありがたいことである
触媒という技術が発達したのは、今から80~100年くらい前なのだろう。画期的な技術だ
最初に着目されたのは鉄だ。鉄がものすごい反応スピードを上げてくれた。
今から100年前、チッソと水素からアンモニアを合成したときの、鉄の触媒が試されたとも言う
http://www.jaci.or.jp/gscn/img/page_04/GCS_008-web_v2.pdf
化学物質の生産面では触媒という物はありがたい
ところが、鉄に関してはこんな事故事例もある
1960年代の新潟地震という時の事故だ
地震で液状化現象が起き、倉庫に水が流れ込んだ。この結果、倉庫に保管していた鉄が水と反応して発火した事故だ
https://www.kanagawas.johas.go.jp/publics/index/202/detail=1/b_id=764/r_id=62/
大量の鉄粉が、水と反応して高温になり、地震で流れ出ていた油に火が着いたのだ
実験では1550℃にもなっていたという
同じ原理で、鉄粉を使ったカイロがつくられている
人間から出るわずかな水蒸気を基に鉄と水分を反応させるのだ。その発熱を使い人を暖めてくれる便利な物だ
鉄製品のグラインダー等の研磨作業で堆積した鉄粉が研磨で生じた火花で発火し火災になったケースもあるという
鉄も安全にコントロールできれば事故は起こらない
自分の企業で鉄分を扱うことがあれば発火のリスクを考えて欲しい

 

 

2021年07月11日

HAZOPを使いこなすことの難しさ

HAZOPという安全性評価手法を知っているだろうか。「Hazard and Operability Study」の略だ
化学プラントなどの安全性評価に使われる手法だ。「ずれ」が事故を引き起こすという概念だ
化学プラントでは、温度が上昇すれば事故になることもある。つまり正常温度からずれて、温度が高くなれば事故につながることもある
圧力もしかりだ。圧力が上がれば、装置が圧力に耐えきれず破壊することもある

ずれを起点に、ずれによりどんな最悪の事態が起こり、現状設置されている安全設備で事故が防げるのか、防げ無いのかを検討するのだ
現状の設備で不足するなら、追加の安全対策まで考えるのがHAZOPだ。
HAZOPを実施すれば、隠れている危険源をかなりの確率で見つけ出し対策することはできる
しかし、HAZOPも万能ではない。HAZOPを実施する人間の感性や経験度合いにより深掘りできるかできないのかに差が出る
まず、最初の登竜門が、ずれの想定だ。「Revers」という逆のずれは落としやすい。逆流現象などは見落とすことがある
「Others」というその他のずれも想定上の漏れが起こる。その他というのは、実に事象として沢山ある。抜けなく想定するには、かなりの事故経験が必要だ

HAZOPの実施は、労安法などの法的要求条件では無いが、実質的に実施が要求される分野も増えている
2005年3月には高圧ガス認定制度の法改正を行っている。この法改正で、危険源の特定が要求されるようになり各企業でHAZOPの導入が進んだ
事故の未然防止をする仕組みを企業に要求してきていると言う状況がある。HAZOPをやっていなければ、実質的に高圧ガスの認定が取れなくしている

とはいえ、HAZOPの手法に関する書籍は日本では発行されていない
アメリカでは、英文の書籍は出ているが日本では、書籍すらない 企業の中で実質的に行われているはずだとの考え方なのだろう
国はじわりじわりとHAZOPを要求してきている 高圧ガス保安協会などでも、講演会でHAZOPの説明はしているようだが、書籍は出していない
おかしなものである。要求するなら、本ぐらい出してほしいものである。
HAZOPとはなんぞやと公的な書籍もないのに、HAZOPを要求しているのだ
HAZOPという概念は今や、化学産業だけの物では無い。医療などの分野にも、その概念は使われている
HAZOPを文書化するのは難しいのだろうか。いまだに、化学工業の世界でも、医療の分野でもHAZOPの指南書は出てこない
概念はわかっていても、実質的な評価のしかたをうまく事例を挙げて紹介するのはむずかしいのかもしれない
HAZOPは慣れれば、誰でもできる。しかし、大事なところでは深掘りできなければ、潜在危険性見落とす
時間をかけても肝心な所で、危険源を見落とせば何もやらなかったのと同じだ。HAZOPは難しい
とはいえ、ずれという概念は使いこなすことはリスク回避の世界では不可欠だ

 


2021年07月09日

配管サポートを甘く見るな

工場内には無数の配管がある。配管は重みもあるので、配管を支持するサポートが数多く使われている
配管サポートは、頑丈に固定されていればいいかというと必ずしもそうでは無い
温度が変化する配管では、熱膨張を考慮する必要がある
金属という物は、温度変化により熱膨張したり、収縮する
つまり、延びたり縮んだりするのだ
伸び縮み量はほんのわずかかも知れないが、無理に動きが固定されていれば配管に無理がかかる
金属製の配管なら、まだ耐えられるのかも知れないが樹脂製の配管では無理な力が加われば亀裂が入ることがある

温度変化のある配管なら、強く固定する配管サポートは駄目だ。スライド式の配管固定を考えて欲しい
つまり、ネジでがっちり固定するタイプでは配管側に無理な力が加わり亀裂が生じることがある

たかが、温度変化による熱膨張と考えないで欲しい
数十度の温度変化があればかなりの延び縮みはある
この伸び縮みを繰り返せば、劣化して配管に傷が入る
これが配管からの漏洩につながる
伸び縮みの繰り返しは恐るべしだ
たかが配管サポートとと思わないで欲しい
配管サポートは、事故を防ぐ重要キーワードとして捉えて欲しい

 

 

2021年07月06日

リスク解析手法

事故が起きてから原因を解析する手法もあるが、事故は起きない方がいい
事故が起こる前に事故の要因を解析して事前に手を打つ方がいいのは誰でもわかっている

事故を起こさないためには、事故の要因を予め解析して、それを一つずつつぶしていくことが不可欠だ
この考え方が用いられ始めたのは、1940年代だ
軍隊で使う機材の故障を少なくすることが求められたからだ
戦場で戦車やトラックなどが故障すれば、命に関わる問題となる
故障が起きないようにすることは至上命令だった
このような背景から、故障を起こさないための技術解析手法が1940年代に開発された
まず最初に現れたのが、FMEAという故障解析手法だ
故障が起こる原因を拾い出し、その発生確率を調べ上げ、事故の起こる確率を調べ上げる手法だ
軍用車両の故障確率を徹底的に調べ上げ、その原因となるものを拾い上げ、基となる故障の発生確率を徹底的に下げる活動だ
故障確率を数学的に調べ上げ、故障の確率を徹底的に減らし軍事面で軍用設備の稼働率を上げようとしたのだ
その後、民間産業にもこの技術は使われ発展していった
結果として、色々な安全性評価手法が使われるようになった
FTA ETA What-if HAZOP チェックリストなどだ
HAZOPは、What-Ifの変形版だ。「もし」を「ずれ」というとらえ方で考えていく手法だからだ
それぞれの手法に特徴があるが、その違いを正確に理解している人は少ないようだ
何が違うのか一度比較して考えて欲しい

2021年07月04日

HAZOP-ずれをキーワードに使う安全性評価手法

安全性評価手法でずれを使う手法がある。HAZOPと言う手法だ
化学工場での安全性評価手法として使われ始めたのは1980年代だ
手法は実に簡単だ。正常の運転状態や、通常の状態より何かずれが起これば、それが致命的な事故につながらないかを考えるのだ
化学工場では、危険な設備として反応器がある
もし、反応器の温度が上がるという「ずれ」が生じればそれが、事故につながっていかないかを考えるのだ

ずれは、色々な原因で起こる。反応器に冷却水を供給するポンプが停止すれば、反応器は冷えなくなるので温度が上昇するというずれは起きる
この時の、ずれの着目点は温度だ。温度が、上昇するというずれだ。

ポンプの停止ではなくとも、流量を制御する自動弁が突然故障して閉まってしまえば、冷却水が流れなくなる
結果として、反応器の温度が上昇し事故になるかも知れない

ずれが起こるのは、一般的に機械が故障するからだ。機械が故障しなくても人がミスをすることもある
機械の故障か、人のミスで色々なずれは起こる
このずれがこっても、何事もなく火災や爆発事故にならなければいいのだがそうはいかない
結果としてずれが、事故につながる
ならば、ずれを考えて、そのずれが悪いことを引き起こすのか、それとも現状の安全装置で事故に歯止めをかけれるのか検討しておくことが大切だ
HAZOPと言う手法は、人のミスや設備でおこるずれを考える。温度や圧力などが正常範囲からずれたらどうなるのか
人が、手順書通り作業をしなかったら、事故になるのかなどを考える

HAZOPで難しいのは、このずれをどれだけ抜けなく考えられるかだ
更に難しいのは、ずれが起きたとき、どんな悪いシナリオになるのか想定できるのかだ
経験の度合いにより、ずれから発生する、最悪のシナリオ作りには個人差が出る
最悪のシナリオを想定できなければ、対策は甘くなる

安全性評価のシステムはあっても、最後は人の能力だ
こつこつと、過去の最悪の事故事例を学んで欲しい

 

 

2021年07月02日

企業の安全力-安全文化

国はしっかりリスクアセスメントをせよと提言している。大企業にも、中小企業にも一律同じようなことを要請している
正論ではあるが、企業規模により技術力の差はある。安全に関する知識は、普通に学校を出た人に備わっているわけでは無い
でも企業に入るといきなり安全担当者に指名されることがある。
外部の講習会をしっかりと受ければ、知識はつくのにそれも怠っている
多くの企業ではある日突然、何もわからないのに安全担当者となるのだ。これでは、事故は防げ無い
とはいえ、役所や外郭団体が企画する講習会は、時間をかけるものの、内容が伴わないものも多い
何で、こんなに時間をかけるのかと思う講習会が沢山ある。
これでは、安全の知識は国民には伝授できない
教育というのは難しい。
覚えることは沢山ある。それをいかに効率的に、かつ重要な物から伝えていけるかだ
時間をかければ、いいものでは無い。民間企業の人達は、、それほど時間があるわけではない
1を知って10を知る教育が望まれている。
しかし、延々と文字だけのパワポで講義する人がいる。
全くイラストや写真も使わず延々と喋りつずける講師がいる。
どれだけ、理解されたのか考えないのだろう。やることに意義を感じているだけなのだろう
まだ、企業が外部の力を借りて安全力を上げるのに努力しているならそれで良い。
大部分の企業は、自分の力ででなんとかなると思っているのだろう
井の中の蛙大海を知らずである。今の世の中、いかに上手に社外の技術や人を使うかである。
事故や災害そう頻繁に起こる物では無い。自分の会社だけの事故事例やヒヤリを解析して対策を考えていても所詮限界はある。
世の中で起こっている事故を、取り込んで自分の企業に当てはめて考える必要があるからだ
お金はかかるかも知れないが、外部の専門家の知恵を借りることだ
結果として、遠回りせずいい結果となることも多いはずだ
安全文化という言葉がある
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/worker/20.pdf
安全という企業文化を構築して欲しい

出典 https://www.jecc-net.co.jp/blog/c42 ジェックセミナーリポート

 

2021年06月29日

電気設備火災-難燃性材料を使え

電気はエネルギーだ。細い電線の中にとんでもないエネルギーを通している
トラブルが起これば、そのエネルギー故に火災や感電事故が起きる
最近、半導体産業などでも電気による火災事故も多い

電気の事故は大きく分けて3つある。まず代表的なのは、老朽化だ。電気設備は、寿命があるに更新せず火災が起きるケースだ
しっかりと更新計画を立てていれば、防げる事故だ。得てして、経営者がまだ使えるからと、電気の専門家の意見を無視して起こる事故だ
2番目は、工事での作業ミスだ。電気設備は、とにかく傷を付けてはいけない。
傷の部分から、電気の火花が飛び時間をかけて絶縁材が劣化し、漏電が起こりあっというまに火災となる。工事の施工ミスだ
3番目は、ケーブルなどへの着火だ。難燃性のケーブルを使っていなければ、火は着きやすい。漏電時の火花でケーブルに火が着き延焼するのだ
電線の周りの絶縁材は、可燃物だ。ポリエチレンなどのプラスチック材料だからだ
2017/1/5に大分の製鉄所で電気室火災が起きている。鎮火まで35時間かかっている事故だ
電気室からのケーブル類にも着火したことで消火に時間がかかったのだ
本来なら部分火災ですんだものが、ケーブルを伝っての延焼というのが事故を大きく拡大している。
確か、1980年代ころにケーブルの延焼防止は論議されたが、その後対策が甘くなっているのかも知れ無い。
電気室など密閉した建屋内で火災が起こると消火が難しい。電気設備には、水がかけられないこともありなおさら消火に手間がかかる 
この事故の1次原因は、高圧盤内の電気基板の故障だ。故障により、リレーと呼ばれる部品が高頻度で作動を繰り返した。
繰り返しの作動により繰り返しアークという火花が飛び、近くにあった感電防止用の透明なアクリル板に着火した。
アクリル板は、透明性は高いが、可燃性だ。この為、アーク火花でアクリル板に火が着き、回りに延焼して被害が拡大していった。
詳細は企業の事故報告書を見て欲しい。
http://www.nssmc.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
事故後、アクリル板を難燃性で自己消化性のあるの塩ビ板に替えたという。異常の早期検知に向け、火災警報器も増やしたという。
事故を防ぐには、難燃性の材料を使うことと、異常の早期検知が大切だと言うことだ。
操業再開は、その年の8月だった。約7ヶ月も製鉄所の操業が停止した大事故だ。
たかが電気設備と思わないで欲しい。電気がなければ、工場は動かないからだ。
電気盤の製造メーカーが、難燃性という所に意識してくれればこれほどの大火災にはならなかった事故だ
大手電機メーカーの高圧盤だ。企業の技術レベルもどんどん落ちているのかも知れない
自分の所の電気設備に使われている、感電防止板などが、可燃性のアクリル板でないか一度調べてみて欲しい
燃えにくい、塩ビなどの材料に取り替えることをお勧めする

出典 企業の事故調査報告書 11頁

 

2021年06月27日

タンク内に人が落ちる事故

タンクの中に人が落ちて死亡する事故が報道されていた
https://www.sanspo.com/geino/news/20210510/sot21051020030006-n1.html
どうやらタンクの上の方で計器などの点検をしていてタンクの中へ落ちたようだ
タンクの中には数メートルの高さまで液が入っていたのでおぼれたようだ

タンクの材質は不明なれど、一般的な金属製のタンクなら天板が腐食していたのかも知れない
腐食で強度が弱くなっているのに気づかず足をのせて穴が開き人が落ちた事例もある

FRPなどの樹脂製タンクであれば、やはり天板の強度が不足して足をのせたときタンクの中に落ちる事故も多い
FRPなどの樹脂は、太陽の紫外線で徐々に劣化していくからだ。10年程度経過すると、かなり強度は無くなるという
http://spotjn.blog.fc2.com/blog-entry-8.html
昔、鳥取労働局がFRPなどの材質を使った塩酸タンクの事故事例と対策という文章を出している
参考になるはずだ
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/seido/ensan_taisaku2402.pdf
大学の研究室でのFRPの劣化について調査報告が以下のURLにある
http://www.cit.nihon-u.ac.jp/kouendata/No.39/6_MA/6-009.pdf
この事故以外でも過去に同様の事故が起きている。
http://www.kotobuki-grp.com/technology/pdf/topics1.pdf
FRPなどの樹脂でできているタンクは、古くなれば太陽の光などで劣化する。どんなことがあっても、天板の上には人を入れてはいけない。
FRPタンクを保有しているなら一度は上記の資料は読んで欲しい文献だ

 

 

2021年06月25日

薬品管理のずさんさが招く事故

硝酸という危険な物質の管理を怠ったことで薬傷事故が起きたという報道があった
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210621/1000066044.html
硝酸を入れていたバケツに穴が開き床に硝酸がこぼれていたようだ
処理をしようとした従業員が硝酸に触れたり、発生していたガスを吸い込み軽い中毒になったようだ

別の報道によると、ずいぶん前にこの金属バケツに硝酸を入れそのまま入れたことを忘れていたようだ
時間の経過とともに、金属製バケツが腐食し底が抜け硝酸が漏れ出したようだ

硝酸は見かけ上は、水のような液体だからこぼれた液体を危険と思わず従業員が触れて被害が広がったようだ
工場では危険な化学薬品を沢山使っている
ちょっと管理を怠ればこのような事故が起こる

化学物質を取り扱うならきちんと管理責任書を決め管理を行って欲しい
今回、薬性だけで済んだようだが、ひとつ間違って目に入れば失明するかも知れないような薬品だ
化学薬品の危険性を甘く見ないで欲しい

 

 

2021年06月23日

急な電源トラブル-停電事故

東京の山手線での停電トラブルが報道されていた
https://noa.holo-imua.com/domestic/yamanoteteidennani620/
停電が起これば電車は動かない
原因の究明に時間がかかれば影響はとんでもない規模になる
電車のバッテリーも長時間の停電には対応できない
電気は色々なところとつながっている
トラブルがおこっても、原因をすぐに突き止めるのは容易ではない
火災や火花が出ていれば、場所の特定はできるのだが、くすぶったり煙が出た程度ではなかなか本質的な事故要因をすぐにつかむのは難しい
最近の新幹線は、バッテリーを保有して、停電が起こっても近くの駅までなんとか自走できる仕様になってきているという
とはいえ、在来線はまだまだそんな能力は備えていない
停電が起これば、線路をあるかされるのが当たり前だ
カラスや蛇、ネズミの感電事故も多い
むき出しのケーブルは、どうしても野生動物にかじられる
生き物による停電はなかなか避けられないが、老朽化による停電は投資さえすれば避けられる
電気設備は寿命がある。だいたい、産業用の電気設備といえども寿命は20~30年だ
きちんとした、老朽化更新計画を作成し投資していれば避けられる
今回のJRの停電事故の原因は電気ケーブルの傷だという
高圧の電気ケーブルは、ちょっとの傷があってもそこを起点に放電が起こる
放電により絶縁材が時間の経過とともに絶縁機能が落ちる。最後は、今回のように電気設備が破壊される
電流異常ですぐに安全装置は作動したので、火災にはならなかったのだろう
今回の事故は、工事施工時のミスかも知れない。とはいえ、電源ケーブルの老朽化も関与している可能性もある
化学工場でも、電源トラブルは起こる
電気設備の寿命を甘く見ている企業も多いからだ
今まで問題ないからと安易に考えていると突然ばたばたとトラブルが起きる
電気設備の老朽化対策はしっかりやってほしい

 

2021年06月21日

電気分解で起こる事故

電気分解という言葉を知っているだろうか
液体に電気を流して、電気で物質を分解して必要なものを取り出す技術だ

水はH2Oだ
電気を加えると、H2水素と 酸素O2に分解される
水素を集めれば、水素エネルギーとして利用できる
この原理を応用すれば、水素で動く自動車もつくることができる
産業界でも電気分解を利用して色々な物質を造り出している
私が昔勤めていた会社でもアンモニアと硝酸を使って、NF3と物質を造り出していた
この物質は半導体産業でも多く利用される物質だ
軍事用としては、ミサイルの燃料にも使われる

半導体産業では、洗浄剤として使われる
この物質を造り出すときに電気分解が行われる
製法上やっかいなのは、電気分解でNF3という物質を造り出すときに
爆発性の水素も発生すると言うことだ
水素は、空気と混ざれば爆発する。爆発範囲も幅広く、低濃度でも高濃度でも爆発する
製品のNF3と言う物質と、H2とは混ざり合わないよう隔離しているのだが、わずかなピンホールでもできると接触する
小さな穴を抜けて水素ガスと、物を激しく燃やす性質のあるNFが混ざれば瞬間的に小爆発が起こる

電気分解でやっかいなのは、漏れた水素が、他の物質と接触し反応することだ
水素はものすごい低いエネルギで反応を始める
反応性に富んだ物質だ
世の中水素エネルギーの利用も進んではいる
でも、水素の発火性や爆発性を甘く見ないことだ

 

出典 パブリックドメインQフリーイラスト

 

 

2021年06月19日

都市部で地震が起こると

3年前の今日、大阪に出かけていた。2018年6月17日である
翌日の月曜日に講演があるため、前日に移動していたのだ
新大阪から少し離れたホテルにその日は泊まった
翌日の月曜日、朝寝ていたら部屋がどんどんどんと大きな音を出す
朝の7時58分のことだ
同時に部屋が激しく垂直に動き出す。久しぶりの激しい揺れだ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%BA%9C%E5%8C%97%E9%83%A8%E5%9C%B0%E9%9C%87
私は千葉県に住んでいるので、地震は良く来る。震度2~3はいつものことだ
でもそれを越えるかなりの揺れだった。しかし、揺れてる時間は短かかった
もう30分も遅ければ、移動先に向かう電車の中で缶詰だったのだろう
https://www.youtube.com/watch?v=-2KJjn6pXjA
講演場所と連絡を取るも、やはり電話がつながらない。1時間くらいして、やっと連絡がつき講演取りやめを確認した
ホテルの周りを見ると何ら被害は無い 人も何ら変わりなく歩いている。
しばらくして、周りを歩いてみると駅と駅の間に電車が沢山止まっている
周りをあるいてみたのは10時くらいだったので、もう泊まっている電車の中に人はいなかった。
みんな避難したのだろう。
踏切は、閉まって警報音は鳴りっぱなしだ。
午後に新幹線が動くというので新大阪に行ってみたが人がいっぱいだ。
タクシーは長蛇の列。2000人ならんでいると報道が言っていた。
夕方になると、淀川の上の橋に人がいっぱいいる。在来線が動かないから歩いて帰るのだ
当日帰るのをあきらめ、ホテルでもう一泊して翌朝の飛行機で自宅へ帰った
都市部で地震が起こると交通網があっという間に被害を受ける
復旧まで相当な時間もかかる。帰宅困難者も発生する
都市部での地震は大変だ

 

イラスと出典 イラスとAC無料イラスト

 

2021年06月17日

コンピューターシステムへのサイバー攻撃

2021年5月アメリカで、石油製品を輸送するパイプラインを保有する企業がサイバー攻撃を受けた
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210513/k10013027311000.html
この攻撃で、石油製品の配送ができなくなりトラック輸送で対応した
今までコンピューターによる遠隔操作で自動化されていたものが、操作できなくなったからだ
今の世の中コンピューターで動いているから、コンピュータが使えなくなったら大問題となる
企業も色々な、対策をしているのだろうが悪知恵のが勝ることがある
コロナのおかげで、自宅と企業のコンピューターとつながる機会も多い
このルートでコンピューターウイルスを送り込まれるケースもあるのだろう
先日いつも見ている世界の石油タンク事故というブログを見ていたらアメリカのサイバー攻撃の情報が載っていた
http://tank-accident.blogspot.com/2021/05/blog-post_12.html
記事の中に、石油や化学工場への過去のサイバー攻撃の情報もある
興味のある方は読んでみると良い
海外では制御用コンピューターの管理責任を問う法整備も進められているという
下記の情報も参考になるはずである
http://tank-accident.blogspot.com/2021/01/blog-post.html

2021年06月15日

酸素配管ラインの溶接工事が引き起こした金属ストレーナー焼損事故

高濃度酸素のリスクについては、数日前に紹介した
定修工事で配管溶接時の金属くずが引き起こした事故を紹介する
高濃度酸素配管の溶接時に、溶接くずをきちんと清掃撤去しなかったことにより起きた事故だ
エチレンオキサイドという非常に爆発力のある危険な物質を製造するプラントで起きた重大事故だ
幸いなことに、金属製のストレーナーが高熱で溶けて吹きだした酸素が燃えた火災ですんだから大きな事故にはならなかった
ひとつ間違えば、爆発事故になったかも知れない事故だ
事故のレポートと溶けたストレーナーの写真があるので事故報告書で詳細は見て欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2004-405.pdf
配管内に金属くずがあれば、中を流れたときに配管内壁にぶつかったときに摩擦熱が発生する
気体を流す配管であれば、流速数十メートル/秒となる
高濃度酸素だったため、あっという間に金属片が赤熱し、酸素は支燃性などの激しく金属を燃焼させ、配管部の金属を溶かすくらいの温度まで上昇した事故だ
溶接くずが摩擦熱を引き起こすとは考えていなかったのだろう
又高濃度酸素の支燃性についても知識が無かったのだろう
溶接工事をするなら、機器や配管内に溶接くずが入り込まないようにして欲しい

 

 

2021年06月13日

企業の海外展開リスクマネージメント

日本の企業が海外展開を始めたのはいつ頃だろうか。日本は、1960年代が反映のピークだった。今から半世紀以上前だ
高度経済成長と呼ばれる時代だ。1970年代前半迄はそれが続いていた。いけいけどんどんの時代だ。
風向きが変わったのが、1973年の第一次オイルショックだ。石油が取れる中東で戦争が始まり石油の値段が高騰した
翌年の1974年では石油大国であるイランで政変がおこりますます石油の価格が上昇した
これを契機に世の中は急速に変わった。作れば作るだけ売れた、大量生産の時代は終わった
1980年代ころから、大量生産の時代は終わり少量多品種、付加価値のある製品へと変わっていった
1990年代、バブル経済がはじけ人件費の安い国へ日本の工場進出が始まる。
その後も日本経済は回復せず、結局安価な労働力に誘われて日本での工場新設はなくなっていく
現在、多くの企業は海外比率は高まっている。この傾向は変わらないであろう
とはいえ日本には、根幹となる技術はまだまだ存在する。それをスピーデイに海外へ転換できる体制が整えられているとそうでは無い
安易に、海外のパートナーに丸投げしているところもあるはずだ
日本が本当に生き抜いて行く為には、コアーな技術を日本がきちんと整理して持っておくことだ
つぎに、地政学、法制などの過去日本が海外進出して経験したリスクを整理して知的財産として企業が持っておくことだ
タイムリーに世界展開するためには、どんなリスクマネージメントが必要かのノウハウを整理しておくことが今後の海外展開につながるはずだ
ノウハウを文書でため込むのも大切だが、海外経験者などを招いて適宜報告会などを開き生の声をタイムリーに若い人に聞かせることだ
そうは言っても、わかり易く文章化できるメンバ-も報告会に同席させ、文字での蓄積も併用して進めて欲しい
ノウハウはこつこつ見える化して蓄積して欲しい

2021年06月05日

酸素という物質を甘く見るな

酸素は色々な分野で使われている。医療用にも使われる。医療に使われる酸素ボンベは、人の命を救うことができる
空気中にある酸素は、物を燃やすことができる。物を燃やすためには酸素が必要となる
しかし、火薬などの物質は、物質の中に酸素を持っているので、空気が無くても激しく燃えたり爆発することができる
化学産業にも酸素は使われる。
空気中の酸素濃度は21%だが、産業界では、この酸素の濃度を上げて100%濃度で取り扱われることがある
濃度を上げると酸素は、反応性に富んでくる
したがって、高濃度の酸素になると、多くの事故が起きている
酸素ボンベのバルブを開けたとき配管や減圧弁が発火する事故は多い
ボンベに配管や減圧弁を取り付けるときわずかに手垢などが付着するケースだ
手垢は油だ。高濃度の酸素は油を激しく燃やすことができる。
着火源は、断熱圧縮という現象だ。気体を急激に圧縮させると断熱圧縮現象が起こる
ボンベの弁を急に開けると、弁から出た酸素は勢いよく出てくるがすぐに行き止まりになり激しく圧縮される
圧縮されたガスは数百度にもなる。温度が上がれば、手垢などの油分に火が着く
高濃度の酸素は一度燃焼を始めると、金属をも溶かす温度まで上昇する
配管の中に、ゴミなどが入っていると流れたとき摩擦熱が発生する
摩擦熱も結構な温度になるので、発火源となる
http://www.yutaka-crown.com/technicaldata/pdf/other/19-4G-
バルブはゆっくり開けろと昔から言われているのに急に開けるから事故になる
酸素を取り扱う場合はわずかなゴミや油類が事故の発端になる
酸素を取り扱うならしっかりと事故事例を勉強して欲しい
G-016.pdfhttps://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/dannetu.pdf
https://www.aiche.org/sites/default/files/2017-01-Beacon-Japanese.pdf

イラスと出典 厚生労働省職場の安全サイト

 

 

2021年06月03日

仕切り板を挿入できる特殊な構造の弁で起こったインドの重大事故

2009年11月にインドで大きな事故が起きた。
仕切り板挿入時に起きている事故で記憶に残しておく重大事故だ。
インドの製油所で起きた事故だ。日本では使われてはいないが、インドではよく使われる仕切り板を挿入できる特殊な弁で起きた事故だ。
11名の死者と150名の負傷者を出す大事故だ。この特殊な弁を使って縁切りしているときにガソリンが漏れ出した。
なんとかしようと運転員が対応したが、噴き出すガソリンで意識を失った。
本来ならすぐにタンクの元弁(電動弁)を閉めれば流出は停まる。
しかし、タンク元弁の操作SWは防液堤の中で近づけなかった。
元弁は、計器室から遠隔操作できるようになっていなかったため漏れを停められず最後は蒸気雲爆発を起こしたという事故だ。
仕切り板機能の付いたその特殊な弁は、作動の途中段階では一時的に開口部が出来てしまう。
つまり、完全に液が来ないようにしておかなければいけないのにタンク側の元弁(電動弁)が半開だったため液が漏れ出したのだ。
日本だったらそんな危ない特殊な弁は使わないだろう。人が少しミスをすれば漏洩してしまう弁など危なくて使えない。
しかし、大口径の配管に仕切り板を取り付けるのは大変な作業になる。重機やチェーンブロックなども必要だ。
だがこの特殊な弁なら、それらも必要ない。
作業効率から言えば格段にいい道具だ。作業効率と安全を天秤にかけたのだろう。

原因はそれだけではない。教訓となる情報も多い。
詳細は以下のURLを開いてみて欲しい。http://tank-accident.blogspot.jp/2017/02/2009.html
弁の構造に関しては、この動画を見て欲しい
http://www.sammiw.com/main/main.php

2021年06月01日

粉塵爆発は身近で起こる現象だ

ガス爆発という言葉は知っていても、粉が爆発するとは思っていない人が沢山いる
粉は細かくなればなるほど、爆発しやすくなる
目安となるのは、小麦粉くらい粉が細かくなるかだ。粒子が砂糖や、塩の粒では粉塵爆発は起こさない。
粉というのは細かくなればなるほど、空気と接触する表面積が増える
接触面積が増えれば、当然反応しやすくなる。燃える粉であれば何かの衝撃で簡単に着火する
そもそも、粉塵爆発という用語も知られてはいないのが実態だ。粉は、爆発を起こすと言うこと自体が世の中では知られていない
1年間に6回程度粉塵爆発は起きているという
アルミなどの金属粉塵などの爆発も多い
トウモロコシや砂糖など穀物の粉塵爆発もある。食糧のサイロなどでの粉塵爆発も多い
粉は爆発しないと思っている人が多いが、本当に粉は簡単に爆発する
たかが粉と思わないで欲しい
以下に文献を紹介する
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/48/3/48_185/_pdf
粉を甘く見ないで欲しい

 

 

2021年05月30日

2020年の消防統計が発表されていた

消防庁から、2020のコンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計実績が発表された。
毎年5月末に発表されているレポートだ。
コンビナートでの事故統計だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/2021/
2018年、2019年と比較すると、件数は2020年はわずかながら事故件数は減っている
2連続して減ってはいるが、まだまだ高いレベルだ
16/20頁から主要事故の記述がある。
どこでどんな物質が関与しているのかもわからない。事故の教訓も書いていない
事故の事実を伝えるだけではなく、事故からの教訓が欲しいところだ


こちらは危険物取り扱い施設での事故概要だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/2021/
昨年同様、危険物施設の数は減っているのに、危険物事故の件数は確実に増えているとの記述がある。
背景にあるのは、管理密度がどんどん減っているからだろう。
つまり、人も金も投資は減っているはずだ。そこに背景はあるのだろう。

27/28頁から、2020年(令和2年)に起きた主要事故の概要が記載されている
参考にするのも良いだろう

相変わらず元号で発表している。 グローバル化の中そろそろ考えを変えられないのだろうか
せめて西暦を併記書きすることくらいやって欲しい

2021年05月28日

HAZOPは文献を読んだらわかるものでは無い

来週5/31(月)にWeb方式でHAZOPの講義をする予定になっている。https://www.rdsc.co.jp/seminar/210519
コロナ禍でもあり、Web講義だ。10名ほどが参加申し込みを既にしていてくれる
HAZOPは、安全性評価手法として1980年頃から化学工場では使われ始めた手法だ。使用が開始されてから約40年が経つ。
40年が経過してはいるが、残念ながら日本ではHAZOPだけを主テーマにして取り扱った書籍は発行されてはいない。
安全関係の書籍の一部に安全性評価手法の紹介の一部として取り扱われる程度だ。
今日のブログは、HAZOPに関連する書籍や文献を紹介したい。
まず、書籍だが安全工学会が発行している書籍でHAZOPについて書かれているものがある。
実践安全工学 シリーズ2「プロセス安全の基礎」 出版社は化学工業日報社である。
この分野の執筆者は、高木さんという人である。
毎年安全工学会で開催されるセミナーでも講演がある。興味があるなら聞いてみるとよい。今年聞き漏らしても、2021年度同じような講義はある。
昨年のプログラムを紹介しておく
https://www.jsse.or.jp/cabinets/cabinet_files/download/286/1dc8bd7b9eb0a1f68b6d690332710a37?frame_id=2618
文献を紹介しておく まず高木さんが書かれている文献だ
非定常HAZOPの進め方-高木伸一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/53/4/53_244/_pdf
HAZOPの有効な適用方法
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/disaster/47.pdf
HAZOPに造形の深い先生で松岡さんという方がいる
ホームページを紹介しておく
http://www.hazop.jp/index.html
そうはいっても、文献を読んだだけでHAZOPと言う手法を使いこなせるわけでは無い
過去のHAZOPで見落とした事例も数多く知っておかないとHAZOPで深掘りできないからだ
まずは、HAZOPとは何かを概念として知ることも大切だ
興味があれば、私の話も聞いてみるのもいいだろう
https://www.rdsc.co.jp/seminar/210519
期限も迫っているので申し込みは早めにどうぞ!

 

2021年05月26日

ボイラーの爆発事故

2021/4/26ボイラーの爆発事故の報道がなされていた
ビデオや写真を見るとかなり破片が吹き飛んでいる。近くの駐車場にあった車が燃えていた
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210426/k10012999561000.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/ea005020a02e6b301d3b18ba80f6d019653a5596
https://news.yahoo.co.jp/articles/ea005020a02e6b301d3b18ba80f6d019653a5596/images/000
これを見ると久々の大型ボイラーの爆発事故だ
5万KWの発電用ボイラーだという。燃料は石炭だという
ボイラーは法律としては労働安全衛生法で規制がかけられている 厚生労働省の管轄だ
ボイラー協会というところが民間の団体として活動している
事故の情報は沢山持っているようだが、会員以外には公開していないようだ
ボイラーの爆発大はきく分けると、燃料が原因の場合と水が原因の2種類だ
燃料は入れているのに火が消えたりすれば不完全燃焼が起こる。不完全燃焼が起こると、爆発混合気ができてしまう
そこで再点火すれば、爆発と言うことになる。スタート時でも、運転中でも起こる事故のパターンだ
もう一つは、ボイラーへの給水だ。ボイラーは、水を蒸発させる装置だ
蒸発装置は、中に入った水を加熱して蒸気を発生させる。蒸発した分だけ、水を自動的に補給して液面を維持している
ところが、何らかの不具合で水が無くなると空だきになる。装置は高温だから、そこへ水がかかれば水蒸気爆発を起こす
こんな事故事例がある
http://msadglobal.jp/overseasrisk/oversearisk/Boiler_Explosion-20140818-J.pdf
たかがボイラーと甘く見ないで欲しい
爆発を起こすこともある装置だと考えて欲しい

2021年05月24日

酸とアルカリ物質の違い

酸という化学物質がある 世の中に役立つから酸が存在する
アルカリという物質も存在する
酸とアルカリ、聞いたことはあるもののどんなものかはわかりやすく説明されていない
酸という物質の代表的なものに、塩酸、硫酸、硝酸などが知られている
金属の表面洗浄などに使われる 酸化された黒っぽい金属を酸で洗えば汚れが取れてきれいになる
酸を使うときに気をつけなくてはいけないのが水素だ
金属は酸化されるときに水素を発生する。水素は爆発性物質だ。水素の発生を意識せず火を使えば爆発する
酸を扱えば、必ず水素が出てくると思って欲しい

では、カセーソーダなどのアルカリはどういう物質かと言えばこう考えて欲しい
酸は、金属を犯す。アルカリは、人の皮膚を犯すと考えて欲しい
人の細胞や皮膚は、タンパク質でできている
アルカリは、このタンパク質を犯すのだ
アルカリが目に入れば、失明することもある
皮膚につけば、皮膚が溶けてやけどのようになる
皮膚が犯されれば皮膚呼吸ができない
人間は口から呼吸しているわけでは無く皮膚の表面からも呼吸している
薬傷で皮膚が犯されれば、皮膚呼吸もできない
アルカリは皮膚など人間を壊すと考えて欲しい
酸は、金属を溶かす。アルカリは、人の皮膚を溶かすと考えて欲しい

 

 

2021年05月22日

除害設備の設計-処理能力に問題は無いか

有毒な化学物質を扱う化学工場には除害設備というものがある
無害化して安全な状態で大気に放出する設備だ
化学工場では塩素やホスゲンなど有毒なガスが使われていたり、硫化水素などのガスの発生もある
万一大気に漏らすと人命にも関わることになる
問題はその処理能力だ
最悪の事態を考え能力が決められていればいいが,多くの事故事例から能力不足という問題がある
処理能力は、何かを想定して通常決められている。一般的な決め方は、通常発生する有毒ガス量に安全率をかける方法だ
通常のガス量というのはそれほど多くない
ところが突然の運転トラブルや停電などで、通常時を大幅に超える事例も沢山ある。運転員の作業ミスが引き金になることもある
例えば誤って、液化塩素を除害設備に流してしまう事故事例だ
液化塩素は気化すると容積が増え大量の有毒ガスが発生する。設計上の能力が、常時発生する排ガス程度であれば大幅に能力を超えることになる
除害設備というのは最悪の条件を想定して処理能力を決めておくことだ
更に、2系列化しておくことが望ましい。どちらか一つがうまく動かなくても片系列でカバーさせるのだ
停電でも確実に動くようにして欲しい
異常時の自動起動型は、定期的に作動テストをして欲しい。リレーが故障していていざという時作動しなかったという事例もある
地震時に設計が悪く除害設備が自動起動しなかった事例もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000197.html
除害設備を保有しているなら処理能力や動作条件を再検証して欲しい。最悪の事態でも対応できるかだ
保守も大切だ。確実に動くことを定期的に確認して欲しい

 

 

2021年05月20日

混触反応の法則--化学物質の組み合わせ

化学物質は混ざると危険というリスクがあることを知っているだろうか
化学物質というのは、単独では問題は無くても他の化学物質を混ぜ合わせると危険なことが起こることがある
これを混触リスクと呼んでいる
たとえば酸と水を混ぜた時を想定して欲しい
濃硫酸と水を混ぜると激しく発熱する。とんでもない発熱反応が起こる
酸とアルカリを混ぜとも中和熱という熱が発生して液の温度が上昇する
化学物質で怖いのは、温度上昇だ。 温度が10℃上昇すると反応速度は2倍になる
30度上昇すると、かけ算だから2×2×2=8倍になる
8倍というのは、アバウトな感覚でいえば、反応速度が一桁上がると言うことだ
では、温度が100度まで上がると同じような計算式で2を10回かけ算することになる
答えは、1024倍だ
100まで温度が上がれば反応速度は約1000倍というとてつもない反応速度になる
このスピードで反応が急激に高まることを反応暴走という
通常の冷却では、この暴走を止めることはできない つまり、冷却能力は1000倍必要となるからだ
化学物質には常に組み合わせのリスクが存在すると考えて欲しい
混触反応は、組み合わせの法則だといえる
最低限この組あわせの法則は知っておいて欲しい
どんな物質と組み合わせたらまずいのかだ

 

 

2021年05月18日

事故データーベースの紹介

最近⑤労働安全衛生総合研究所事故データーベースが更新されていた過去の事故事例を学ぶことは重要だ。今まで、こんな事故事例データーベースを見て事故の教訓を集めてきた
しかし見るたびに時間が経つとURLが変わっている
①高圧ガス保安協会事故事例データーベース https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/index.html
②産総研が提供する事故データーベース RISCAD https://riscad.aist-riss.jp/ (現在リニューアル中 一時閲覧停止中)
③Deyamaの提供する事故事例データーベース http://deyama.a.la9.jp/ver_1/saigai.html
④失敗知識データーベ-ス http://www.shippai.org/fkd/index.php
⑤労働安全衛生総合研究所事故データーベースだ。数千件の事故情報がある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
①や③の情報とは違う視点で、いい内容が書かれてはいるのだが惜しいことに何月何日という事故発生日の情報が不足しているのが欠点だ
⑥神奈川県では高圧ガスに関係する事故情報を下記のURLで公開している
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14873.html
このホームページの中で更に詳細を見ていくと、事故の詳細等という項目がある
個別の事故に関する物も公開されている 高圧ガス事故事例情報シートというのがある
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14877.html
⑦早稲田大学と共同で特定非営利活動法人災害情報センターが運営しているデータベースで略称はADICというものがある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php
事故というのは、色々な視点で見ていかないと事故の教訓が得られない
特に、人という切り口で原因を書いているものは少ない。これからの事故データーベースについて求めたいのは、教訓を書いて欲しい
それから、変更管理の視点とリスクアセスメントの視点で失敗の要因を書いていく必要があると思う
とはいえ、データーベース提供者には感謝したい
これらの情報が無ければ、過去の事例を学ぶのは難しいからだ。これからも、提供をお願いしたい

2021年05月16日

コンプライアンスー企業文化-不正

コンプライアンスという言葉が出始めてからかなりになる。確か、2000年ころから使われるようになつたと記憶している。
自動車会社のリコール隠し。食肉偽装事件。雪印ミルク事件などだ
化学業界でも2002年頃に高圧ガス検査データーの改ざんなどが立て続けにあったのを今でも覚えている
多くの大手化学企業が高圧ガス認定取り消しの報道があった
数年前にも 日本の自動車会社で燃費ごまかしのニュースが大きく報道されていた。
過去にも、自動車のリコール隠しを行っていた日本の大手自動車会社だ。企業の体質というのはなかなか変わらないものだ。
近年は、不祥事や法令違反を犯せば行政が公開する制度がある
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200312001/20200312001.html
企業文化という物は、長い時間をかけて上司や先輩から後輩へ受け継がれていく。
いい上司がいれば、良い文化が自然と受け継がれていくのだがなかなかそうは行かない。
企業では、コンプライアンス教育をしているがなかなか徹底が難しい
ほんのわずかな社員の不祥事でも会社の存亡にかかわる時代だ。
化学プラントで事故が起きるのも企業風土と関係している。
情報がオープンで、ヒヤリ事例がきちんと組織内に紹介されている職場は事故が起きにくい。
ヒヤリ事例というのは、事故に至らなかったという貴重な情報だ。
つまり、どうして事故にはならなかったという情報がそこに含まれているからだ。事故に至らなかった生の情報がヒヤリ情報には存在する。
企業にRC監査で出向くことがある。このヒヤリをどう扱っているかで企業の体質がある程度わかる
ヒヤリといえども大切にしているかどうかだ。
不祥事を未然に防げるかは企業文化によるところが大きい

 

出典 https://nikkan-spa.jp/641136/cl3_140513_06

 

2021年05月14日

粉塵爆発に思う

粉塵爆発の事故が報じられていた
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20210512-614261.php
亜鉛の粉を取り扱う装置を起動していたとき爆発が起きたという
粉末に風を送る送風機で異音がして、しばらくして爆発したという
原因は不明と言うが、粉という物は着火源があれば簡単に火がつき、燃えるでは無く爆発することもある
亜鉛は金属だから燃えないと思う人がいるかもしれないが、金属でも条件さえ整えば燃えるのだ
粉になると空気と触れる表面積がどんどん増える
細かくなればなるほど、表面積と増えていく
当然火がつけば、表面積が多いのだから爆発的に燃焼する
http://www.bsb-systems.jp/page0136.html
アルミという金属も良く爆発事故を起こす
タイヤのホールを製造する工場では、アルミを削るとき大量の粉ができるからだ
自分の工場でも、大量の金属粉塵がでるなら粉塵爆発のリスクを検討して欲しい
今回の着火源は、異音がしたというのであれば摩擦熱の可能性もある
ファンの内部の羽根は金属でできている。羽根とファン本体の金属と接触すれば摩擦が起こる
もう一つは、金属と擦れ合えば金属火花も出る。金属火花も着火源だ
過去にも、ファンの摩擦熱で火災が起きている事例も多い
ファンで異音がしたら、無理に回さないことだ
できれば、定期的に点検をして欲しい
何十年も点検していなければ事故になると考えて欲しい

2021年05月12日

業界としての事故情報の共有化

色々な業界がある。化学物質を取り扱う企業でも業界はある
業界の仲間だからといって、詳細な情報が公開されているわけではない
2014年1月9日四日市で多結晶シリコンを製造する化学工場で熱交換器を開放作業中爆発が起こり多くの死者が出たのは覚えているだろうか
いわゆる半導体の素材原料をつくる工場での事故だ
半導体というのは複合産業だ。原料シリコン製造、素材加工洗浄、回路エッチング、不要部分洗浄など多くの製造工程がある
半導体製造工場での火災が報告されているように多くのリスクが存在する
このような業種としての業界からも情報が提供されている
多結晶シリコンを扱う業界の安全対策はどうなっているのだろうと思って、研究をしていたところ、この業界がまとめた資料を見つけたhttp://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwixvLO1iLrwAhWJO5QKHbH3C8kQFjAAegQIBBAD&url=http%3A%2F%2Fwww.jsnm.or.jp%2Fabout%2Fpdf%2Fr2_actionplan.pdf&usg=AOvVaw3Fm8ygIJfr-n_TFTqo9zY3

多結晶シリコンを取り扱う業界の事故情報事故は起こるべくして起こった。火のないところに煙は立たないである
業界としての情報共有化も不足していたようだ
多結晶シリコンなどの製造事業所で起こっていた事故情報が公開されている。火災や爆発が何回も起こっている。どこかで、事故に関与した物質の、物性を詳しく調べていれば大きな事故は起こらなかったと言うことがよくわかる。
同じような物質を生産する企業は、事故情報を共有化していくことが求められている。

2021年05月09日

半導体工場の爆発事故--難燃性ケーブル

2004/1/28神奈川県の裾野市という所で起きた事故だ。半導体工場の爆発事故だ
工場内にある、拡散炉という設備での事故だ
点検の為、炉は過熱状態にされていた。温度も自動調節されている状態だった
但し,製品は炉内を流れてはいなかった
装置は,冷却用の冷媒が流れ混むようになっていた
冷媒の流れる量は,ローターメーターという流量計で検知され,万一流量が低いと自動的に炉の加熱源は停止されるようになっていた
ところが,肝心のローターメーターのフロートと呼ばれる部品が固着して正常な流量を示していなかった
本来なら流量が低ければ自動的に自動インターロックで炉の熱源を止め安全な状態になっているはずだった
ところが、ローターメーターの故障で、あたかも冷却用の冷媒は流れ込んでいる信号が出ていた。
装置は,冷媒が流れていると判断し,熱源を増加させたことにより炉の温度が上昇し付近のケーブルなどが燃え始めた
しばらくして,炉が発火した
高温になれば,電気ケーブルは燃える。塩化ビニルやポリエチレンなどのプラスチック材料が被覆に使われているからだ
ケーブルは可燃物として考えておく必要がある。火災になりたく無いのであれば,リスクのあるところは難燃性のケーブルを使うことだ
難燃性ケーブルは、P(燐)という物質が混入され燃えにくくなっている
火災リスクのあるところは,積極的に難燃性ケーブルを検討して欲しい
最近も半導体工場で事故が多発している。過電流による事故だという。
難燃性ケーブルの採用も考えて欲しい

2021年05月07日

投げ込み式電気ヒーター火災

投げ込み式電気ヒータは液が無い状態で使用すると高温になることを知っているだろうか
投げ込み式電気ヒーターは、簡単に液の温度を上げられることから産業界では多く使われている
便利で安価ではあるが、使い方に注意が必要だ
必ず、液に浸っていることが必要だ
固定せずにおいておけば、倒れたりして液から電熱部が露出することになる
液が減ってくれば、同様に電熱部が露出する
液の排出弁が緩んでいれば、いつの間にか液が無くなっている

電熱部が露出すれば数分で200~300℃にもなる。プラスチックであれば溶け始める
更に放置すれば、500℃~600迄温度は上昇するのでプラスチックなどの可燃物に火がつく
目で見て真っ赤に電熱部がなっているのがわかる
こんな事故があるので紹介しておく
消防博物館という所にある記事だ
https://www.bousaihaku.com/foffer/7337/
投げ込み式電気ヒーターを甘く見ないでおしい
使うにであれば、液面警報を必ず付けて欲しい
電気ヒーターはきちんと固定しておくことだ。簡単に外れないようにして欲しい。
投げ込み式電気ヒーターを甘く見ないで欲しい

 

 

2021年05月05日

企業の社会貢献報告書の変遷(RC,CSR,サステナビリティ報告書)

企業はお金に関わる情報として、財務状況を毎年報告する。法で定められているからだ
お金以外の「非財務情報」と呼ばれる情報も公表する報告書も企業は発行している
その一つにRC(レスポンシブル・ケア)報告書というのがある。RCとはカナダに始まった化学企業の活動だ
化学物質を扱う企業が化学製品の開発から製造、使用、廃棄に至る全ての過程において、自主的に環境・安全・健康を確保し
社会からの信頼性向上とコミュニケーションを行う活動のことだ 
1980年代化学物質の大量漏洩で世界中で大きな事故が起きたこともきっかけだ
1985年にカナダ化学品生産者協議会が化学物質の自主管理などを内容とするレスポンシブル・ケアを提唱したのがはじまりといわれている
RC(レスポンシブル・ケア)は、1992年の国連環境開発会議(UNCED)で採択された「アジェンダ21」(行動計画)のひとつとして奨励されている 
日本では、日本化学工業協会が日本レスポンシブル・ケア協議会を1995年に設立して、その活動を推進してきている
2000年代日本でも、RC活動を報告する形で報告書を各企業が発行するようになった
その後、企業は法で定められた以上のことをきちんとやっていることを報告する報告制度として化学産業以外の企業でも採用されていった
当初の名称はRC報告書であったが、CSR報告書(Corporation Social Responsibility(企業の社会的責任))と名称も変化してきた
2017~2020年代に入ると統合報告書の時代に入る 財務情報と、非財務の企業活動(RC)を統合した報告書だ
その後,サステイナブル(Sustainability)報告書という名称で発行する企業も出てきている
社会に貢献し、持続可能な企業であることを社会にアピールする報告書の形態になってきたのだ
RC報告書が出始めたころは、企業が現状やっていることの報告に過ぎなかった
ところが、最近発行されているサステナビリティ(Sustainability)報告書では、2030年代や2050年代を見据えた報告書になってきている
SDGSと企業との関連性、社会への貢献内容、将来にわたる企業体質の盤石さをわかりやすく紹介している
現在ではなく将来にわたり社会にしっかりと貢献する企業であることを報告する形になってきている
企業の持続性を明確に表現してきている報告者が増えてきている

2021年05月02日

2021年度事故災害防止セミナーの紹介

毎年私が講師でやっている、事故防止セミナーの紹介です
昨年は、コロナで中止しましたが今年は、リニューアルして開催します
10月~12月にかけて開催します  対面型で開催します
私の他に、もう一人専門家が加わりました
テーマは5つです
テーマ-1 労働災害
テーマ-2 4M解析、なぜなぜ分析
テーマ-3 工場研究所の事故事例とリスクマネージメント
テーマ-4 静電気事故防止
テーマ-5 技術伝承と教育訓練
このURLで詳細を確認できます。興味があれば参加下さい
https://www.e-jemai.jp/seminar/accident.html

 

 

2021年04月30日

投光器は着火源と思え-火災になることもある

2016年11月6日投光器の熱で着火事故が起きている。東京のある芸術作品展示場での火災だ。
木製の展示物で中に木くずが敷き詰めてあったという。当初の計画では、発熱の少ないLEDの照明を使う計画だった
なぜならば、白熱電球では、木くずに着火する恐れがあったからだ。ところが、安易に計画を変更してしまった。
夕方暗くなると周りが暗いため白熱電球製の投光器を展示物の中においてしまったという。数百ワットのかなり大きい投光器だ
表面温度は200度を越える状態だったという。局部的には,更に高い温度だったのだろう。木くずが燃えるのは,200度を超えたあたりからだ。
結果として、木くずに着火し子供の命が奪われた悲惨な事故だ
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/mag/15/320906/012300017/
https://www.sankei.com/affairs/news/161107/afr1611070045-n1.html
事故から2年半後、当時の関係者は書類送検されている。白熱電球の投光器が危険だとは思わなかったでは済まされないのだ
https://www.asahi.com/articles/ASM3L3CGRM3LUTIL004.html
白熱電球タイプの投光器は,ガラス面の表面は手で触れないほどになる。十分な着火源となる。化学プラントでも投光器による事故事例は多い。
定修などで装置の中に入って作業をすることが多いからだ。
事故のパターンで多いのが、本来防爆形を使わなくていけないのに非防爆を使って着火爆発のケースだ。
第2のケースは、ケーブルの被覆などが破れていて火花が出て事故になるケースだ。可燃性ガスが存在すれば当然着火源になり爆発する。
タンク内の作業でこの投光器の事故が起こると,多くの場合は爆発火災となるため逃げられずに焼死するケースが多い。
今回の東京の投光器の事故も,展示物内から逃げられず焼死事故につながっている。投光器は,着火源と考える癖が必要だ。
こんなビデオ実験映像があるので見て欲しい。https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/1411.html
最近は、LEDによる投光器へ移ってきているが熱源としての危険性からはLED化を進めて欲しい
とはいえ、ケーブルの損傷事故は存在するので日常点検は怠らないで欲しい。

 

 

2021年04月28日

アパートの木製階段が崩れ死亡事故

民間のアパートの階段が崩れ人が死亡したニュースが出ていた
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210422-OYT1T50265/
信じられない事故だ 木を使った部品が腐食していたという
普通に考えれば、アパートの階段は金属が使われているはずだ
なぜ,木造だったかはまだ今の段階では報告されていない
コンビナートにある化学工場では木造階段で死亡事故が過去に起きている
紹介しておきたい
化学工場には水を冷やす冷却塔という設備がある
設備によっては高さが10m程ある
当然設備周りを点検する為には点検用階段が設置されている
水が絶えず階段に降りかかるので,金属製では腐食する
そこで階段は木材で設置されていた
木材とて当然水があれば腐食する
この階段をあるとき運転員が点検で登っていたとき腐食していた踏み板が外れ転落した
残念なことに、落ちたところが貯水槽だったため溺死したという不幸な事故がある
材質が金属であれ、木製でああっても水分がある環境では腐食する
早め早めに腐食対策を行って欲しい

 

 

2021年04月25日

事故や災害に思う-約20年前の自分が経験した事故に思う

2001/4/23当時勤務していた工場で爆発事故が起きた
朝の10時頃だ ものすごい音がしてキノコ雲のような煙が見えた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012016.html
このブログを始めたきっかけの事故でもある
化学物質の持つエネルギーのすごさを始めて感じたのがこの事故だ

化学物質の持つエネルギ-を会社にいて感じるのはいかに難しいかこの事故を経験して始めてわかった
試験管ベースでも爆発すればすごいエネルギーだ
ドラム缶やタンク規模になればとんでもないエネルギーだと気づいたのが事故だ
事故は経験しなければわからない 特にそのエネルギーのすごさは文字では表せない

事故の怖さを伝えるのは本当に難しい
なぜなら、事故の恐怖心を文字で伝えるのは難しいからだ
炎や爆風の衝撃音を文字では書き表せない
技術伝承の難しいところはそこにある
事故を自ら経験した人にしか事故を伝えるのは難しいからだ
これからも機会ある限り事故の悲惨さを伝えていきたい

 

 

2021年04月23日

事故や災害に思う-約10年前の事故に思う

2012/4/22当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起きた  このブログを始めたきっかけの事故でもある
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  過酸化物という製品をつくる反応器が爆発した
事故報告書が出ているので詳細はそれを見て欲しい
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2013/pdf/130123_02.pdf#search='%E4%B8%89%E4%BA%95%E5%8C%96%E5%AD%A6+%E4%BA%8B%E6%95%85%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8'
調査報告書によれば、一度作動させた安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある

工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気が無くなるという設計になっていたのだ
昔はそうでは無かったのかも知れないが省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだ
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントは事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったのかもしれない
もっと冷却能力があれば事故は防げたのだろう
冷却能力を検証して欲しい
事故のリスクを減らすために、反応器の冷却能力を上げることも考えて欲しい

 

2021年04月22日

酸は水素を発生物質だと知っていますか

塩酸(HCL)、硫酸(H2SO4),硝酸(HNO3)などの酸は学校で習ったはずだ
化学式を見てもらえばわかるように、Hという記号が含まれている。Hとは水素そのことだ
通常は、2個一緒になって水素(H2)とよばれる状態で水素は存在する
つまり、塩酸や硫酸などには,化学式の中に水素があることから,反応するとこの水素が分離されて出てくることがある
反応して、水素ガスを発生すると理解しておく必要がある。水素は爆発する性質が有り、何らかの着火源があれば爆発する

良く、硫酸などを金属製タンクに入れて保管している時に金属と酸が反応してH2が発生して爆発事故が青こる
金属と酸と化学反応が起これば,水素ガスが発生すると知らないから頻繁に事故が起こるのだ
今回紹介する事故は、フッ酸(HF3)という酸による水素爆発事故だ。フッ化水素とも呼ばれる物質が原因だ
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2018_01.pdf
配管に穴が開いていた。穴を埋めることはできなかったので、新品の配管を用意した。温度を加えると加工できる樹脂製(ポリプロピレン)だ
作業員が、このフッ酸を回収する樹脂製(ポリプロピレン)配管部分を修理するため、ガスバーナーで配管部をあぶっていたとき爆発した事故だ
フッ酸は酸だから,製造工程で使用したとき反応により、水素が発生していた
水素は,修理しようとした配管内に残っていたが、パージ除去はされていなかった
フッ酸は水に溶けやすい性質があり、配管内に残っていた水にどんどん吸収され,配管内は負圧になってしまった
配管には穴が開いていたのだから,外部の空気が穴から吸い込まれ、配管内の水素と混じり,結果として爆発混合気ができてしまったのだ
その部分に,補修のためバーナーの火であぶったのだから当然爆発混合気に火がつき爆発してしまったのだ
酸は,水素爆発を引き起こすということは知られていない。だから,事故は起こる
酸という名前がつけば,水素爆発が起こるかも知れないと常に思って欲しい

 

2021年04月21日

技術士が発信している情報ホームページ紹介

技術士という資格がある 専門分野の知見を持った人達だ
技術士法という法律もある https://www.engineer.or.jp/c_topics/000/000009.html
安全や環境など多岐にわたる専門知識を持った技術士がいる
関西地区で、技術士が主体となってい情報発信しているホームページを見つけた
「Technology PE-eco」という名前だ
http://pe-eco.jp/
技術者及び社会とのネットワークの拡大・交流に役立てることを目指し、次の基本コンセプト
1.知識の構造化 2.集合知と不易流行 3.情報発信の実践 4.技術士 5.産学協働
を設定した情報発信ページとして発信しているとのことだ
私が活動している事故や災害に関する情報も散見される
興味のある方は一度見て見るといい
ここを見ると事故や災害に関係する情報が載っている
安全講演会の抜粋資料だ
http://pe-eco.jp/categories/list/49/
世の中にある情報は上手に活用して欲しい

2021年04月18日

自動弁だけで縁切りするな--自動弁は突然動くことがある

縁切りという言葉がある。化学工場であれば、危険な物を遮断するという意味だ。例えば弁を閉めて縁切りをする
こんな事故がある。定修中に工事をしていた。その工場は一酸化炭素というガスを取り扱っていた。
人が吸い込むと中毒になるガスだ。当然、企業としては労働災害が起きないように管理する必要がある
ところが、この企業の管理者はこの危険なガスを遮断するのに自動弁だけで縁切りしていた
自動弁というのは突然開くことがある。停電や誤って弁の開閉スイッチを作動させれば自動的に開いてしまうリスクがある
たとえ開かなくても、バルブは漏れるという原則がある。わずかに漏れることがあるのだ
この企業は定修中ではあったが一部の一酸化炭素を取り扱う工場は動いていた
この結果自動弁からわずかに一酸化炭素が漏れ出し現場で作業していた作業員が死亡した事故だ
2003/7/9に起きた事故だ http://www.knak.jp/flashnews.htm#release
事故から半年後、法令によりこの企業の課長や係長が送検されている
2004/2/13、労安法(有毒ガスによる健康障害防止義務)違反容疑で、工場係長(34)と法人を書類送検
係長は定期点検中プラントの運転管理責任者だったにもかかわらず、外注先社員がプラント内で、CO生成設備の不純物除去装置を清掃する際、COが流れ込まないようにバルブを二重に閉めるなどの必要な措置を怠った疑い
係長は現場に立ち会っておらず、作業した外注先の社員に具体的なバルブの構造なども伝えていなかった
2003/10/31業務上過失致死傷容疑で、定期点検の工事統括責任者の同社保全課長ら社員3人と外注先の社員1人計4人を書類送検している
事故を起こせば、企業の管理者も労安法や刑法で罰せられることがあると言うことだ
昨日も、駐車場でCO2消火設備が作動して現場で作業していた人が亡くなっている。今のところ原因は不明だが、元弁を閉めておらず自動弁が作動したのかも知れない。https://mainichi.jp/articles/20210415/k00/00m/040/427000c
このような事故を起こさない基本は、仕切り板を追加で入れるか、弁は2重にして中抜きをして確実な縁切りをしておくことだ
自動弁だけで縁切りしないで欲しい

 

 

2021年04月16日

法で言う危険物では無いからといって安全だと思い込むな-小麦粉や木粉による粉塵爆発

家庭で使われる小麦粉も事故を起こすことはある
なぜなら小麦粉は燃えるからだ 燃えると言うことは可燃物だ
では法で言う危険物かというとそうでは無い 通常の状態では燃えにくいからだ
消防法では危険物としては扱われていない。特定可燃物という扱いだ
大量に保管すると危険なので、市町村毎に数量に応じて決めろという考え方だ
つまり大量に保管しなければ、規制は受けないところが条件が変われば激しく燃える。
しかし、粉状にして粉塵が舞うような状況になれば、可燃物だから当然激しく燃えて粉塵爆発をおこす
理由は、空気中に舞うことで。可燃物である小麦粉の微粒子が空気と接触する面積が増えるからだ
小麦粉も燃えるが、木材も粉にすると激しく燃える
こんな事故が起きている 木材のリサイクルを扱う工場での粉塵爆発事故だ
家具などの木材を回収して、細かい木の粉にして再利用する工場だ。工場内には木の粉が大量に存在した
倉庫に保管されていた木の粉が空気中に漂い、連鎖的に着火する「粉じん爆発」が起きた
着火原因は、回収した木材に含まれていた「くぎ」だ
「くぎ」は金属だ。木材を、細かく破砕する為の機械の中で火花を出したことから、粉塵に着火し爆発したのが原因だ
2004/1月に起きている事故だ
https://www.bousaihaku.com/foffer/7321/
粉塵爆発の実験映像は公開されているものもある
https://www.youtube.com/watch?v=ycN6lY50sok
粉を甘く見ないで欲しい

 

2021年04月14日

反応禁止剤を過信するな

化学物質は安定した物質と、不安定な物資がある。温度や衝撃というエネルギーを加えると何らかの変化を始める物質もある
たとえば、屋外に置いていて太陽の温度が加わるだけでも化学物質が反応を始め爆発することもある
このような反応性に富んだ物質は、その反応を抑えるために反応禁止剤という物質を添加することがある
物質の違いにより色々な物質が用意されている
とはいえ。反応禁止剤は万能では無い。あらゆる条件で反応を抑制できるわけではない
比較的反応が穏やかな状態では、反応を抑制できるが、ひとたび反応が始まると抑制効果は期待できない
反応禁止剤は、時間が経てば効力が減っていく。一度、反応禁止剤を入れたから大丈夫と安心していると事故になることが多い
反応防止剤の効果は時間の経過で、効果が無くなると思って欲しい
アクリル酸という反応性の物質で起こった事故がある。タンクの中で反応暴走が起こりタンクが破裂した事故だ
タンク内の循環冷却を忘れていたことも原因だ
近くにいた消防士が死亡した事故だ
http://pe-eco.jp/articles/show/467/
反応禁止剤を投入しているから事故は起きないと考えていたようだ
ところが、この反応禁止剤はあらゆる反応に効果があるわけではない
あくまでも、特定の反応にしか効かない
結局、反応禁止剤の効かない反応が始まり異常温度になりタンクが爆発してしまった
反応禁止剤は万能では無い あらゆる反応を抑えるものでは無いと理解して欲しい
反応禁止剤を過信しないで欲しい

 

 

2021年04月12日

法で言う危険物では無いからといって安全だと思い込むな-さらしこによる爆発

高度さらし粉という物質を知っているだろうか。学校のプールや水道水を殺菌するなどにも使われる物質だ
今でも、それほど危険と思われていない物質の一つだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/16/2/16_94/_pdf
別名、次亜塩素酸カルシュームを70%含んだ物質で、高度さらし粉とも呼ばれている
殺菌などに有効な物質で幅広く使われている。コロナ禍のこの時期でも多く使われている物質だ
この物質は、過去に何度も発火や爆発事故を起こしている
消防法では、今は危険物第一類に登録されているが、大きな事故が起こる1970年代前半迄は危険物ではなかった
次亜塩素酸カルシュームは、酸化性物質に属する。粉末状の物質だ。名前から想像出来ると思うが、相手を酸化する能力を持つ
反応を始めると多量の酸素を放出し、相手を燃やす能力があると言うことだ。つまり、激しく燃焼させる能力を持つ
油などの有機物があれば、激しく燃える
構造式の中に塩素があるので、有毒な塩素を放出する。ポリ塩化アルミニウムとで混食し塩素ガスを出すとも言われている。
130度前後で反応を開始するという。過去、フォークリフトの排気ガスがドラム缶にかかり爆発した事例もある
排気ガスは、200℃位の温度が排気管からでたときにはあるそうだ
衝撃にも敏感だ フォークリフトでドラム缶を突き刺したことが原因だという事故もある
参考までにこんな資料がある。6人が死亡した事故の裁判記録が公開されている。
https://www.maia.or.jp/wp-content/uploads/pdf/accidents/%E3%89%99shouwa%20tyuu%20kouki.pdf

 

2021年04月10日

ドラム缶を安易に屋外に置くな

ドラム缶の中に入っている化学物質が反応して破裂する事故がある
今の時期のように、急に外気温度が上がり始めるとよく起きる事故だ

工場内をパトロールしてみて欲しい
屋外に置かれたドラム缶やペール缶が無いか見て欲しい
シートもかけず、屋根の無い所においていないか確認して欲しい
物質によっては、直射日光で暖めるだけで反応を始めるものがある
温度が30℃上がれば、反応速度は約8倍になる
反応速度は温度上昇で倍倍ゲームのごとく上がる
太陽光を甘く見ないで欲しい

 

 

2021年04月08日

消防防災の科学

一般財団法人消防防災科学センターという組織がある 名前の通り消防関連の機関だ
https://www.isad.or.jp/
この機関から消防防災に関わる情報が提供されている。季刊「消防防災の科学」という書籍が発行されている
その情報は電子版として公開されている https://www.isad.or.jp/information_provision/information_provision/
消防防災に関する調査研究の動向等を広く地方公共団体、消防機関等に紹介し、その業務の推進に役立ててもらうため、(一財)日本宝くじ協会の助成を受けて昭和60 年度から季刊「消防防災の科学」を作成し、現在に至る迄137 号を刊行している
消防・防災に関する調査研究の成果をはじめ、国、地方公共団体等の防災施策及び研究者の論説等を掲載するとともに、毎号消防防災上の重要課題についての特集記事を掲載している。
事故や自然災害を研究する人達にとって有効な情報も数多い
興味のある方は一度見て見ると良い

2021年04月06日

非定常作業での事故防止 作業手順書

事故や災害はめったに起こるものではない。思わぬ時に事故は起こるのが現実だ
事故は非定常作業で多く発生すると言われる
非定常とはどういうことかというと、定常では無いということだ
わかり易く言えば、通常ではない状況と言うことだ
人がやる作業で考えると、いつもやらない作業をするときも非定常作業だ
例えば、何年に1回くらいお客様からの要望を受けて製品を造るような作業だ
日頃慣れていない作業をするのだから非定常作業だ
この場合の事故が起きる要因は、作業に慣れていないと言うことだ
人間は、慣れてくるとミスを犯しにくいという性質がある。慣れていればミスの確率は低いが、めったにやらない作業であれば事故の確率は上がる
非定常作業で事故が起こるのは、作業の手順書ができていないこともある
常に行う作業は、作業手順書は作られているはずだ。ところがめったにやらない作業は、手間暇かけて手順書を作ることはしないケースが多い
作業の手本となる、手順書が無ければ、人はどこかでミスを犯す確率は高まる
一度でもその作業をしたことがあれば記憶をたどることもできるが、初めての作業であればミスを犯す確率は非常に高くなる
過去の災害事例を見ると、経験の浅い若手に非定常作業を任せて事故につながる事例は多い
非定常作業は基本的に、若手では無くベテランを投入することだ。技術伝承もかねて若手に作業を見学させることも必要だ
さらに手順書が無ければ、管理職と作業者とがきちんとホワートボードなどを使って手順を書いて見ることだ。納得の上で作業を開始させることだ
突発の作業であっても、作業の注意点などを事前に摘出できればかなりの確率で事故は防げる
めったに起きない状態も非定常だ。例えば、緊急事態だ。急に停電した、地震が起きた、火災が起きたなど思わぬことが急に起こっている状況だ
めったに起きないことでも、こつこつと対応策を文書化するなど見える化して欲しい

 

 

2021年04月04日

安全装置(インターロック)の解除が致命的な事故になることがある

旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故から、約35年が経っ。1986年4月26日に起きた運転中の非定常作業で起きた事故だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85
この事故を若い人は知らないのかもしれない。世界に衝撃を与えた、史上最悪の放射能漏れ事故だ。
未だに、半径数十キロには人は住めず周りは廃墟となっているという。
この事故は、原子力発電所の装置の機能確認点検中に起きた事故だ
原子力発電所の外部電源が切れた時を想定して、非常用設備が安全に機能するかを確かめる試験をしていた時に事故が起きてしまった 
本来なら、万一試験中に異常が起きても安全に原子炉が止まるようにしておかなければいけないのに、安全装置を解除した状態で、試験をしていた
安全装置を解除した状態で、試験を続けていたところ運転操作に失敗し原子炉が制御できなくなってしまい爆発が起こってしまった。
爆発により大量の放射能が拡散したにもかかわらず、情報を隠したことにより被害が広範囲に広まった
設計段階から、運転操作が難しいという特性もあった。
つまり、運転が難しいと言うことは、それに見合った十分な教育訓練が行われていなければならないのに十分な教育訓練は行われていなかったという。
この原子炉は、低出力では不安定という特性であったのに、試験はその危険な低出力運転状態で試験をするというハイリスクな試験だった。
なのに、安全装置を解除した状態であったことがこの致命的な事故につながってしまった。
2010年代、日本でも化学プラントでインターロックを解除して大きな爆発事故が起きている。2012年4月12日のことである
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2013/pdf/130123_02.pdf
工場の蒸気が停まり、プラントは停止インターロックを作動させ安全に停止操作に入った
ところが、停止操作中運転員が温度の下がりが悪いと思い別の冷却水に切り替えようとインターロックを解除してしまった
インターロック解除で反応器内の攪拌が停止したことに気づかず、しばらくして異常反応で爆発した事故だ
一時的ではあれ、安易にインターロックを解除したことで大きな事故につながった事例だ
安全装置を解除するれば事故につながると常に自分に言い聞かせることだ 

 

 

2021年04月01日

企業の実力-事故災害防止の技術力-外部監査

多くの企業と接することがあるが、企業の実力はピンからキリまである
大企業だから、優れているわけでもない.中小企業でも大企業並みの実力を備えている企業もある
コンサルタントや企業監査などを数多く経験してきているからそれがわかる
CSR報告書などを企業が公表しているが、文字からその企業の実力は見ることはできない。実際の監査に入り質疑応答して企業の本質がはじめてわかる
ISOの認証を受けているからと言って、優れた企業であるとは断定できない。認証は取れても、企業の実力はピンからキリまである
今から40年前の事故ではあるが、大手石油化学企業でエチレンプラントで爆発事故が起きた
倉敷のコンビナートにある企業だ。原因を調べてみると、縁切りに原因があった。縁切りとは、危険な物を確実に遮断することをいう
化学プラントには爆発性の化学物質が存在するから、何か工事をするときには危険な物質が工事箇所に流れ込まないように縁切りをする
いまでは、縁切りには確実な方法が用いられるが当時は、まだまだいい加減な方法が使われていた
火を使う工事をするなら、化学工場では可燃性ガスが侵入しないように、弁を2重に閉めて縁切りしたり、仕切り板という金属の板を挿入する
火を使う現場に、可燃性ガスが万が一でも漏れこまないようにするためだ
ところが、今から40年前、事故を起こした大手企業では、ガムテープでフランジからガスが漏れないような安易な縁切り操作を行っていた
ガムテープでは少し圧力が上がれば、テープがはがれ危険なガスが漏れ混む可能性があるのに安易にそのような対応をしていた
案の定、結果としてガスが漏れ工事関係者に死傷者が出ることになった
他の企業では、すでに仕切り板を使うなど本質的に安全対策が行われていたのに、この大手企業はそのレベルまで達していなかった
1982年4月12日の事故だ このURLから詳細はみて欲しい https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/21/5/21_305/_pdf/-char/ja
事故が起きる前の、過去45年間このガムテープで縁切りして事故は起きなかったとの企業コメントがあるが、あまりにもお粗末だ
ガムテープと接着力は、わずかな圧力上昇で接着面は容易にはがれると想定すべきだ
今まで安全だったは、将来の事故を防ぐことを約束するものではない
企業は常の人の目から見て安全かを検証して欲しい。井の中の蛙大海を知らずでは済まされない
常に外部監査を受け入れる仕組みを取り入れて欲しい

 

 

2021年03月27日

純酸素の安全弁事故-耐圧気密テスト 断熱圧縮現象 

酸素を取り扱うことがある たいていは、純酸素だ。濃度100%近くの酸素を取り扱うことはあるはずだ
酸素は、支燃性物質だ。支燃性とは、ものを燃やす能力があることだ
安全弁は定期的に検査をする 検査が終われば、気密試験をする
検査時に不燃性の窒素を使えば発火する事故は起こらない。ところが、実ガスを使うことも許されているので酸素を使うこともある
このときに、気おつけなくてはいけないのは断熱圧縮による温度上昇だ
バルブをゆっくり開ければいいのに、急に開けると気体がものすごい高温になる
酸素ボンベなどは、バルブを急に開ければ断熱圧縮で800℃から900℃くらいまで上がるという
この温度ならたいていの物質は発火点を超えるから着火する
高圧ガス保安協会の事故報告書にこんな事故がある。参考にして欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/02-09_2018-113.pdf
小型の安全弁の定期点検をした時に起きた事故だ。圧力は20MPaと高圧だった。異物が詰まっており清掃したのだ
異物を除去した際に、本来使用してはいけない、可燃物である有機溶剤を用いていた 有機溶剤は燃えやすい物質である
酸素のラインでは、使ってはいけない物質などに使用したのだ
その後、安全弁を本体設備に組み付けて酸素で気密試験を始めた
本来は、本体側の圧力は一度脱圧して圧力を下げておくルールなのにそれを怠っていた
安全弁の手元弁を、一気に開けたところ安全弁が赤熱し始めた 安全弁の金属部も溶け始めやけどをしたという事故だ
安全弁の中の弁シートはポリアミドイミドというエンジニアリングプラスチックが使われていた.発火点は300℃だから断熱圧縮があれば十分燃え始める
さらに有機溶剤を使って洗浄していたから火がつけばそれも助燃剤となる
その上、高圧の酸素は支燃性だから激しく物を燃やし、結果として1000度近くなり金属本体部まで溶けたというわけだ
バルブはゆっくり開けろだ 断熱圧縮現象による温度上昇を甘く見ないことだ

 

2021年03月25日

繰り返す廃液ピット火災

工場の中に廃液をためる開放型のピットは多いはずだ その廃液ピットで火災が起こることは多い
人は「廃」という字がつくと不要と考える いらなくなったものだからもう危険はないと考えるのだ
さらに「廃液」は水だから安全と思い込む
ところが、時として廃液に油が流れ込んでくることはある
工場の定期修理時や、どこかで清掃作業が行われたときだ
大雨が降ればどこかの側溝にたまっていた油かすが流れてくることもある
排水ピットに油が流れ込んでいてもすぐに火がつくわけではない
火災になるのは、排水ピットの周りで火を使った工事が行われるときだ
溶接の火の粉は、最初は数千度もある。金属が溶けるくらいだからだ。溶接ノロという火の粉が転がっていって、少し冷めたといっても数百℃はある
可燃性の液体ならあっという間に火はつく温度だ。燃えにくいと言われる潤滑剤でも、200℃から300℃で火はつく
油は軽いから液体の表面に浮いている。どこか火がつけば、全面火災となる
廃液ピットで火災になる原因は、火気工事が多い
火気工事をするときは、廃液ピットなどが周りにないか見て欲しい
まずは油が浮かんでいないか、つぎに何か気化した成分の臭いがしないかだ
その後可燃性ガス検知器をつかってガスの有無を確認して欲しい
廃液ピットの火災は繰り返し起こっている ガス検知を怠らないで欲しい

 

2021年03月23日

半導体工場での火災に思う--密閉型の建屋内火災

大手半導体会社の工場で火災が起きたことが報じられていた 2021/3/19未明だ 幸い火災は数時間で消えたらしい
https://www.renesas.com/us/ja/about/press-room/notice-regarding-semiconductor-manufacturing-factory-naka-factory-fire
半導体の供給不足が続く中での影響は大きいのだろう
昨年の2020/10/20にも、九州で半導体工場の事故が起きている 建屋内火災で数日間燃え続けた
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_48297.html
建物内の工場火災は火災が発生すると消火が難しい。密閉された空間で火災が発生するのだから建屋内に煙や高温のガスがたまる
電気設備がやられれば、照明は消え真っ暗となる
半導体工場は秘密の固まりだ 事故の原因がわかってもたぶん公開されることはないだろう
半導体工場などにはクリーンルームという部屋がある。ホコリを取り除き空間をものすごくクリーンに保つ部屋だ
この中に機械が存在する 機械は電気で動くから電気が発火源になることもある
クリーンルーム内で何か洗浄するときには、有機溶剤などを使っていれば火がつけば簡単に燃え出すはずだ
着火源は電気火花や静電気が推測される
こんな事故原因を憶測させる文献があるので紹介しておく
https://gcoe.tus-fire.com/eng/ffsa/pdf/K110602digest.pdf
自分の半導体工場ではないから大丈夫と思わないで欲しい
密閉型の建屋であれば、火災時のリスクは高い 二酸化中毒や酸欠のリスクが高いからだ
何かあればすぐに人を逃がすことだ。下手に初期消火をしていたりすると命を落とすこともある
効果的な消火装置の導入も考えることだ 被害の影響も極小化するようにスポット型の消火設備の設置も必要だ
屋外から、中の様子を見れるカメラなども付けておくことだ
いざという時に役に立つはずだ

 

2021年03月21日

純酸素の減圧弁事故-断熱圧縮 摩擦熱

酸素を取り扱うことがある たいていは、純酸素だ。濃度100%近くの酸素を取り扱うことはあるはずだ
酸素は、支燃性物質だ。支燃性とは、ものを燃やす能力があるということだ
普通、空気の中で燃える現象を見てもたいしたことは無い
ところが、酸素濃度が高い純酸素をつかった雰囲気では、燃え方はがらっと変わってくる
酸素の濃度が高いと、燃えるでは無く、激しく手の施しようがない程激しく燃え上がるという表現が正しいのかもしれない
酸素ボンベを取り扱う時に注意が必要だ.バルブはゆっくり開けろと言われている
1/8回転ずつゆっくり最初は明けろと言われる。つまりゆっくりゆっくりと弁を開けていけと言われているのだ
酸素ボンベなどを使う職場もあるのだろう。ならば、減圧弁は同様にゆっくり弁を開ける必要がある
更に加えて、減圧弁などは、内部に異物や金属粉が残っているか定期的に注意して内部の点検整備が不可欠だ

純酸素の供給の基本はバルブはゆっくり開けろだ
さらにパッキンやゴミを取るフィルターなどの部品に、わずかに異物や、微粒の金粉ができていないか徹底的に見てほしい
但し、ゴミを取るときには絶対に有機溶剤などを使わないで欲しい。酸素は支燃性だから、有機溶剤があればそれを激しく燃やすからだ
最近の事故報告書で、酸素を流すボンベ減圧弁の爆発事故がきている
高圧ガス保安協会の事故報告書にこんな事故がある。参考にして欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2019-603.pdf
こんな啓発資料もある
http://www.yutaka-crown.com/technicaldata/pdf/other/19-4G-G-016.pdf
事故は繰り返すものだ。自分の職場でリスクがないか見直して欲しい

 

2021年03月19日

労働安全の世界の潮流- ISO45001

半世紀前、日本でコンビナートが動き始めたころは、労働災害が頻発した
新しい、化学プラントを建設するために多くの工事労働者が集まり作業をしていたからだ
墜落落下、やけど、挟まれなど多くの労働災害が頻発した
国は、「労働災害防止団体等に関する法律」にもとずき労働災害防止に向け「中災防」(中央労働災害防止協会)という組織を1964年に作った
中災防は、その後色々な活動を展開し、労働災害は減少してきた。中災防のみならず、民間の企業が積極的な安全活動を続けてきたからだ
今まで、日本の労働安全へのアプローチは、ボトムアップと言われてきた
現場の管理者や現場で働く従業員が主体となって、安全を作り上げてきたからだ
現場で身を守るためには当然、自分たちで安全を作り上げていかざるを得ないからだ
しかし、1980年代以降になると省人化や機械化が進み現場で働く労働者の時間的余裕は減り始めた
現場で働く人達だけで安全を確保するのが難しくなってきた。限られた時間とお金でなんとかやりくりするには限界が生じてきたのだろう
個人的なノウハウで安全を管理するにしても、労働災害を色々経験してきた人も会社を去りつつあった為だ
2000年代に入ると、労働安全をシステマチックに行おうという考え方が出てきた
そこで「OSHMS」(Occupational Safety and Health Management System)という管理システムが導入され始めた
PDCAのサイクルを廻し、労働安全の向上を図ろうという概念である
海外でも同様な流れは起きていて、ILOなども国際的な労働安全マネージメントを模索していた
この結果、日本の持つボトムアップの労働安全の管理と、海外が得意とするトップダウンの労働安全管理システムが融合した
2018年3月に国際規格として現れたのがISO45001だ
日本の労働安全ノウハウと海外のノウハウが融合したのが、ISO45001と考えて良いのではないだろうか
私も、企業向けに安全講演や講義、安全コンサルタントをしているが、このISOの切り口で企業の安全管理上の課題を常に探索している
労働安全の管理レベルを上げるなら、このISOの概念を取り込むことは不可欠だ
労働安全のコンサルタントは数多くいるが、ISOの切り口で指導できる人は少ないのが現状だ

イラスト出典 中災防ホームページより

 

2021年03月17日

東北大震災事故に思う-原発暴走回避に努力した人達

連日、東北大震災から10年の報道が流れている
なぜか、必死の思いで福島原子力発電所の暴走を必死にくい止めた人の報道は流れてこない
津波で電源を断たれた原子力発電所を必死の思いで建て直そうとした人達があの日あのときいてくれたから今がある
電力会社の従業員、自衛隊、地元消防団などの人達だ
必死に冷却水を送り込み、圧力の放出を試みるなど、決死の思いで行動してくれた人がいたから今がある
電源喪失は致命的だ 今の世の中、エネルギーが供給されて全てが成り立っている
電気やガス、水道が当たり前のように供給されるという前提で生活が成り立っている
私も化学工場で40年間働いたが、電源の喪失経験は数回だけだ
台風で瞬間的に停電は起きたがすぐに電源は回復した
ほんの何秒かだが電源が無くなるのは気持ちのいいものでは無い
化学プラントの設計でも、電源が無くなったことを想定してのバッテリーバックアップ時間は30分程度だ
その間に、安全に停止出来るという前提だからだ
東北大震災事故のように、数日もの停電はもともと想定していない
とはいえ、2018/9/6に地震による北海道が全停電するような自体は起こっている
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html
この停電を見ても、人は学んでいないと感ずる
経済の原則は効率の良い発電だ。大型の発電所で発電すれば効率は良い。
しかし、大型の発電所が停まれば、他の小さな発電所で電力の穴埋めカバーは難しい
結果としてドミノ現象でばたばたと発電所が停まり最後は電力がゼロになったのだ
大型化すればするほど、メリットはある。一方で大型設備が倒れれば、その影響は大きい 小型分散のがリスク回避はできるが、経済性とのバランスが難しい
電力の信頼性にこれからも論議を続ける必要がある 大きいことがいいわけではない そこそこの規模で分散も必要だ
とにかく10前福島の原発で必死に努力してくれた人に今は感謝したい

2021年03月15日

1980年代に化学工場で起こった重大事故--縁切り不完全

1970年代はコンビナートで事故が多発したのを知っているだろうか
特に1973年には事故が多発した。毎月のように各地のコンビナートで大きな事故が起きていた
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/12/4/12_4_184/_pdf
これらの事故を受け、消防法などは全面改定され法の強化が進んだ。併せて民間企業なども積極的に事故防止を図ったのが、1970年代後半だ
事故は10年毎に大きな事故が繰り返すという
1980年代に入った1982年に立て続けに化学工場で事故が起きた。その中から、2件紹介する
詳細はダウンロードして見て欲しい https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/21/5/21_305/_pdf/-char/ja
安全工学という学会誌の情報だ
1件目は、運転中にタワーの熱交換器が詰まり、縁切りして熱交換器の清掃作業中に爆発した事故だ 1982/4/12水島コンビナート事故だ
教訓は何かというと、縁切りを弁一つで行っていたことだ。16Bの太い配管で、仕切り板は入れてなかった。
設計段階から、仕切り板を入れる為に作業台などの設備などを予め用意していなかったためだ
大口径の弁1つで縁切りだから、ガスはタワーに漏れ混んでいた。ガスの検知の手順書も定めていなかったからタワー内へのガス漏れを検知できなかった
熱交換器も、当初清掃のみの予定だったが、変更して詰まったチューブをガスで切断する火気工事にを行った
熱交換器内に窒素パージはしたが、窒素パージ用配管付近が熱交換機内にたまった樹脂状物資が付着していて完全に内部置換できていなかった
可燃性の残液が内部に残っていて、最初に熱交器内で着火爆発が起こり、その後タワー底部の残ガスに着火爆発した事故だ 協力会社に死者が出ている
2件目は、停電で緊急停止し後、再スタート作業中に残ガスが排ガス焼却炉に流れ爆発した事故だ 1982/5/26水島コンビナート事故だ
排ガスを処理する焼却炉が関係する事故だ.緊急停止で、焼却炉は停止したものの炉内はかなり赤熱状態で温度は高かった
反応系と排ガス焼却炉は大口径の排ガスダクトでつながっていたのに、完全に縁切りはされていなかった
時間の経過とともに、可燃性残ガスが炉内に流れ込み、結果として炉内がまだ高温だったため着火爆発した
停電で緊急停止した際に、排ガス炉との縁切りが確実でなかったのが事故の要因だ
HAZOPでも緊急停止時の非定常HAZOPでは、炉との縁切りが確実であるか検証して欲しい 火は消えていても炉内温度は高いので着火危険性はあるからだ
いずれの事故も「縁切り」を甘く見たことによる事故だ
縁切りという言葉を大切にして欲しい

 

2021年03月13日

東北大震災から10年に思う

午後2時46分。10年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、技術研修センターという所にいた
勤めていた技術研修センターは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ 
当日、朝からこの技術研修センターで各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
安全工学会の主催で行われていた 午前中も順調に進み午後からも安全体験が始まった
1時間半ほどの体験が終わり皆さんが休憩をしていたところだったと思うが、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた 地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 私の場所から30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった 翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
限られた資源、時間ではあるが日本にある以上、地震への備えは不可欠だ 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
1ヶ月前の2/13日の夜11時頃、東北大震災の余震と言われる震度6の地震も最近起きている
千葉県にあるコンビナートでも影響を受け、停電で化学プラントが停止した
当時の福島原子力発電所の原子炉が破壊しなかったのは奇蹟だ
こんな記事がある 読んでみるといい
https://news.yahoo.co.jp/articles/8c2bd167dc6d3d50130dfa87218916841143b27e
化学プラントも巨大なエネルギーの固まりだ
最悪に事態を考え行動することが常に求められていると言うことだ

 

2021年03月11日

液封現象を甘く見ないで欲しい

液封現象を知っている人はどのくらいいるのだろうか。
化学プラントに勤める人の中でも実感として液封現象がわかる人は数パーセントではないだろうか。
なぜらな、液封現象を具体的に写真などで見たことのある人はほとんどいないからだ。
個別の企業でも、液封で不具合が起こった事例を文字ではなく写真で提供できるのは皆無なのではないか。
世の中で、事故が繰り返し起こるのは世の中で起きている情報がうまく公開できていないからだ。
こんなに、インターネットで検索できる世の中でも必要な情報を得るのは難しい。
朝から晩まで企業の安全担当者が、インターネットを検索してればいいが、そうはいかない。
私のようにことある毎に情報をこつこつと集めている人間がいて、その情報を公開することが少しは企業の担当者に役立つのではないだろうか。
今日は、液封でポンプが壊れた事例を紹介する。福岡の消防機関から公開されている事例だ。活用して欲しい。以下のURLで見て欲しいhttp://119.city.fukuoka.lg.jp/app/files/News_174_pdf_file.pdf
数年前は、見れたのだが今日検索すると残念ながらこの情報は無い
ホームページがリニューアルされているからだ
ホームページがリニューアルされると消えていく情報もある
残念だがこれも時の流れだ
液封とは、液体が閉じ込められて温度が上がると体積が上昇して膨張したことによる破裂事故だ
液体は閉じ込められると液温の膨張が事故につながることがある
日中の気温の温度差程度でも液封現象はおこる
液封という現象を甘く見ないで欲しい

 

2021年03月09日

消防研究センター-文献など参考となる情報が公開されている

消防研究センターという組織がある。 総務省 消防庁の所管で消防大学校に属している
ここのホームページの中に、毎年行っている全国消防技術者会議の情報が公開されているhttp://nrifd.fdma.go.jp/public_info/gijutsusha_kaigi/
http://nrifd.fdma.go.jp/public_info/gijutsusha_kaigi/gijutsusha_kaigi_67th/files/prcd_67_gijutsu.pdf
数は多くはないが、過去の、化学工場での事故に関する報告記事がある
刊行物という項目の中に情報がある
例えば四日市の製油所で起こったタンクの火災だ
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/gijutsushiryo/gijutsushiryo_01_40/files/shiryo_no07.pdf
爆発性物質の研究もある
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/gijutsushiryo/gijutsushiryo_41_80/files/shiryo_no61.pdf
その他
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/gijutsushiryo/gijutsushiryo_41_80/files/shiryo_no71.pdf
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/gijutsushiryo/gijutsushiryo_41_80/files/shiryo_no75.pdf
東北大震災時の火災
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/gijutsushiryo/gijutsushiryo_81_120/files/shiryo_no82.pdf
興味のある方は、一度のぞいてみると良い

 

2021年03月07日

非定常HAZOPについて思う

非定常HAZOPをテーマとする講習会に参加したことがある
最近の事故を鑑みても、非定常が事故のキーワードになっているから、時代の趨勢とは合っているテーマとは感じている。
話を聞いてみると、非定常HAZOPとは、バッチプロセスHAZOPの手法を使い少し手を加えたものだった。
HAZOPには従来から、連続プロセス用と、バッチ用とが存在する。バッチプロセスHAZOPは、バッチという単位操作のリスク解析だ
つまり、プラントを立ち上げたり、止めるのはまさにバッチ操作だから非定常HAZOP解析に応用できる。
緊急停止のHAZOPも、バッチ操作だから、非定常HAZOPとも言える。
緊急に停止するという手順で、一つ一つの作業手順の中からリスクを拾い出す手法だ。
つまり、非定常HAZOPの手法としてはバッチプロセスの従来使われてきたものをうまく利用したと考えれば良い。
とはいえ、ハザードという潜在危険源が見えていない人達に、HAZOPで解析作業をさせても限界がある。
化学プラントで起こった過去の数千という事故事例から、HAZOP的に考えた場合どんなハザードを見落として事故になったのか、何が教訓だったのかをまず、しっかりと事前教育してから非定常HAZOP教育へと導かないといけないのだろう。
「緊急停止」、「スタート」、「停止」を切り口に何を危険源として見落としたことにより事故になったのか、あらいざらい探しだしてみることだ。
非定常という切り口で見るなら。ポンプ予備機への緊急切替えという作業は非定常操作だ。
HAZOPで見落としがちなHAZARDというものは何かも常に考えておく必要がある。
HAZOPでは、解析時の議論の発散や時間のかかりすぎを避けるため、複数の故障やトラブル条件が同時に発生することを想定していないが、現実の事故では複数のハザードが同時又は時間差で起こり事故になる。
事故は、一つの原因で起こるわけでは無いという現実がありながら、HAZOPではシングルフェイラーで検討を進めるという矛盾がある。
そこがHAZOPの悩ましいところ

 

2021年03月05日

保温材下腐食-GUI(Corrosion Under Insulation)

化学プラントの老朽劣化に関係する講演をすることがある
ネットで色々な文献を探していると参考になる情報も多い
省エネを目的として、色々なところに保温材が使われている
金属を保温材でおおってしまうと、保温材の内部で腐食が進行していても気づかないことも多い
保温材下の外面腐食はGUIと呼ばれる(Corrosion Under Insulation)
保温材の雨水などのしみ込みによる腐食に関して参考となる情報があるので紹介する
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_1/1rijityou2.pdf
徳山にある企業の方が、工場での経験を通じて得られた知見を書かれた文献だ
一般的に、保温材へ雨水などの浸入による外面腐食は10年に1度程度点検していれば防げると言われている
そうは言っても、運転温度条件も違えば腐食率も変化してくる
保温材の中に含浸する塩素分なども影響を与える 保温材メーカーも様々だ、保温材もグラスウールや、ロックウールケイ酸カルシウムなど色々だ
この論文では、次のことが提言されている
1.保温材中の塩素分は、腐食速度に影響を与える、塩素などの含有量がしっかり管理されているメーカーの保温材を使え
2.温度変化のないものと、昇温高温を繰り返す設備の配管は分けて管理せよ.温度変化のあるものは、塩素分が濃縮され腐食速度は大きいからだ
3.突起部は、平坦部に比べ腐食速度は速い。突起部は6年、平坦部は12年に一度塩素濃度を計測しろ。管理値を越えたら保温材を交換せよ
4.台風で塩害を受けたら、点検周期を短縮して検査せよ
5.塗装の有無で腐食速度は変わる.特にオーステナイト系ステンレスは溶接部、加工部等残留応力が高いところの塗装は有効だ
たかが保温材が原因で起こる腐食と思わないことだ
きちんとした考え方に基づいて点検を進める必要がある
とても参考になる文献だ
腐食という問題は奥が深い

 

2021年03月03日

事故や災害に思う 地下鉄非常停止ボタン事故

2016/4/4東京の地下鉄で乳母車を扉に挟んだまま電車が発車した事故があった。幸い乳母車には子どもは乗っていなかったのでけが人は出なかった。
しかし、挟まれた乳母車はホームの端の障害物にぶつかったのでたぶん粉々に壊れたのだろう。子どもが乗っていれば死んでたかもしれない事故だ
電車の扉は障害物が挟まれても,15mm以下なら検知せずランプは消え発車できてしまうと言う。
今回は、乳母車の挟まれた部分が15mmより細かったため検知出来なかったという。
10年ほど前にも同じような事故があり、国内の乳母車メーカーは15mmより太めの部材に改良したという。
今回の事故でも、乳母車が挟まれて電車が動いているのを見てホームにいた人が非常停止ボタンを押したと言うが電車は止まらなかった。
車掌は非常ベルの音は聞こえたが隣の駅まで運行させたという。つまり、ボタンが押されても電車は走り続けることが出来る設計になっているという。
しかし、地上を走るJRの非常停止ボタンは押されれば、強制的に電車が止まるという。設計の思想が全く異なるのだ。
地下鉄は、地下のトンネル内を走行するため火災時などを想定して自動的に停めない方が安全という考え方から非常停止ボタンが押されても強制的に停めないそうだ。しかし、今回の事故では火災では無い。すぐに、停止すべきなのに車掌は停めなかったヒューマンエラーだとされている。
一刻を争う非常時に人の判断を入れるとこのようなことになる。化学プラントも地震が起こったときに停止するかしないかは、
昔は人が判断してプラントを停めていた。私が勤めていたコンビナートの化学プラントでもある地震強度を越えると停止することになっていた。
あるとき基準を越える大きな地震が来た。本来なら、全プラントが停止するはずだが現場の判断で停めなかったプラントもいくつか存在した。
緊急時の人の行動は必ずしもルール道理にはいかないという事実だ。
マニュアルで決めているから人はマニュアル道理人が行動するとは限らない。過去の成功体験などが、人の判断を誤らせるからだ。
連続運転している化学プラントは、出来ることなら停めたくは無い。運転を継続したいのは誰でも同じだ。
しかし、安全を考え停めるという基準があるならそれを実行しないと何のために基準を作ったのかということになる。
たまたま、停止させなかったプラントで何も起きなかっただけである。 
そんなこともあり、その後ある規模の地震が来ると自動的に化学プラントを停止するシステムに変わっていった。
人を介させずに安全に停止する手法を選んだのだ。
今回の地下鉄の事故は、ヒューマンエラーだと報道されているが人のミスでかたづけてしまうと事故は繰り返す。
事故を防ぐには人と機械(システム、安全装置etc)の両方の対策を組み合わせないと防げ無いからだ。電車が加速を始めたほんの数秒以内で人に判断をさせるやりかたでは無理があるような気がする。

 

2021年03月01日

サイホン現象によるタンク凹み事故

事故が起こるのは、人がミスをする、機械が壊れる、物質危険性を知らないかの3つだ。
何千の事故事例を見てくると、この3つにつきると言える。
この3つの事故事例を体系的に知っていてくれさせすればかなりの事故は防げる。
今日は、物質危険性の事故事例のパターンの一例を紹介したい。
物質危険性という言葉の中には、物理化学現象という意味も含めている。
液体の温度が上昇すると液封現象を起こすとか、沸点を超えた状態で突沸現象が起こり事故になることもあるからだ。
今日紹介するのは、サイホン現象だ。液体が引っ張られて液が流れ続けるような現象を言う。
タンクなどの容器に液を入れ、そこにホースなどが接続されていれば、液がホースを伝って外部に流れ出てしまうことがある。
放っておけば、液が流れ続け、タンクの中の液は空となる。
周りに液が出入りする、バルブを閉めているとタンクの中は真空になり、タンクが簡単に凹んでしまう状況が起こる。
サイホン現象が過去に事故を起こしていることはある。たとえば上下作業だ。
化学工場なので、ストラクチャーと呼ばれる階層階では、上の方で作業をしながら、下で配管のバルブを操作することがある。
つまり、上と下とでは配管でつながっているから、バルブを開け閉めするタイミングがある条件だとその配管で、液が下に向かって流れ出すサイホン現象という現象が起こることがある。
つまり知らない間に、液が流れ続け思わぬ災害になるのだ。
すべては、重力がなせる技なのだが、事故を経験した人しかそのメカニズムはわからない。
サイホン現象恐るべしだ。
サイホン現象で、ヒヤリや事故を経験した方があれば是非情報を教えて欲しい。同じ事故を繰り返さないためには、皆が情報を共有化すべきだ。

 

2021年02月27日

要約する技術が大切だ

長々と話をする人もいる 端的に要領良く話す人もいる
一般の会話では,だらだらと話をしていてもいいがビジネスの世界ではそうは行かない
何か話をするなら、効率良くが求められる 時間は限られているからだ
ビジネスの世界であれば、結論から話をすることが求められる
結論の後、自分はなぜそういう結論を出したかと説明する
つまり,思考の過程をきちんと説明して結論の納得性を説明するのだ
5W1Hを簡潔に織り込むとわかり易い

色々な報告書やトラブル報告書はタイトルが大切だ
タイトルを見て報告書の内容がおおよそわかるタイトルの付け方を常に考えて欲しい
例えばある労働災害が発生して,担当者が労働災害発生報告書を書いたとしよう
タイトルをみれば、労働災害の概況が一目でわかることが望ましい
タイトルの書き方はこうだ
一般的に,「何なので」→「こうなった」とトラブル報告書の件名は記述されている
すなわち最初に,トラブルの発生源や発生した環境を書く。
その結果どんな悪いことが起こったのかと書いていくのが一般的だ
例えば,帰りがけ焦っていて転倒したのであれば
通勤バスに乗り遅れまいと焦っていて、更衣室で着替え中スノコが滑って転倒したなどとトラブルの内容を簡潔に書き表せる
何なのなのでという意味合いとの所に、トラブルの起こった環境条件などを付け加えるともっといいトラブル件名の表現になる

手袋を使うか使わなくてもいいかの判断条件が明確に示されていなかったので、手袋をせず作業をしていて手を切った
などというトラブル件名が書いてあれば,トラブル資料の詳細を細かく読まなくてもトラブルの全容が瞬時に判断できる
多くの文書には、かならずタイトルを付けて欲しい トラブル事例などもしかりだ 要約して文書の内容を表しているのがタイトルだ
要約する技術を身につけて欲しい 時間は限られているからだ

2021年02月23日

久しぶりに昔の化学プラントの事故事例文献を読んでみた

久しぶりに昔の事故文献を読んでみた。安全工学会の前身である。「安全工学協会」が1980年に発行した小冊子だ。
化学プラントの事故事例24件を書き表した50頁ほどの冊子だ。
イギリスのICI(Imperial Chemical Industries Limited)という化学会社の教育資料を翻訳して発行したものだ。
約40年前の資料だが、今でも繰り返し起こっている事故と共通する因子を書き表した内容だ。
化学プラントの事故事例-あやまちを二度と繰り返さないためにというタイトルだ
興味のあるかたは、今でも安全工学会から購入できるので読んでみてほしい。900円というお手頃な冊子だ。
https://www.jsse.or.jp/publication/book
化学プラントの事故の本質のキーワードを書き表しているが、多くの事故事例を求める人には物足りない内容かも知れない。
でも、たった50頁ではあるがものすごく基本的な内容が織り込まれていると私は感じている。
最初のキーワードは、事故は燃焼の3要素が成り立つから起きると書き表している。一例を挙げると。昔は、タンクの窒素シールなどはなかった。だから、ちょっとした条件で爆発混合気ができ何らかの(ほとんど静電気)着火源でよく爆発していた。
今当たり前のように、窒素シールはコンビナートでは行われているが、中小の化学企業ではそれが行われておらず事故は今でも起きている。
人はミスをする。バルブなら誤って動かすこともある。
ならば、施錠せよが事故防止の基本だ。でも相変わらず、重要な弁の施錠が行われておらずヒューマンエラーが繰り返されている。
化学装置は見かけほど頑丈では無い。コーンルーフタンクなどは簡単に破壊する。ベントが詰まれば、すぐの破壊する。これは、コンビナートでは基本中の基本常識だが、相変わらず事故は起きている。
金属でできている装置は、みんな頑丈だと思い込むからだ。でも、大型の機械装置は見かけほど強度があるわけでは無い。
各企業が持っている。失敗事例や事故情報をなんとか共有化して世の中に還元できる活動ができないかと常に考えたい。
事故には、パターンがあり原理原則がある。それを知らないから、事故は繰り返す。
事故のパターンを解析し世の中に発信する活動をこれからも続けていきたい

2021年02月21日

設計管理で大切なことは人にやさしい設計をすることだ

設計管理で管理すべきことは2つある。ハードとソフト面での配慮だ
プロセスや機械設備の設計であれば,「工学的な要件」を十分満足していることである。
使用される温度や圧力などに耐えうる強度の材質選定や構造設計が求められる。
もう一つの要件は,機械の故障や人のミスに配慮した設計になっているかだ。
設備は必ず故障する。また、人が使うのであるからかならず,人に配慮した設計が求められる。
設備の故障やヒューマンエラーに対して本質的な安全設計を考える時に大切なのがフェイルセーフとフールプルーフだ。
フェイルセーフとは,故障が発生したり人がミスをしても安全が維持される仕掛けだ。
鉄道に設置されている遮断機は,停電などが起これば必ず閉まる方向に設計されている。
電車の扉もいつもは閉まっている状態である。空気などのエネルギー加えると空く仕掛けになっている。
万一配管が壊れても扉は開かないように設計されている
つまり、空気が無ければ,閉まった状態になるように基本設計がなされている。
化学プラントにある自動調節弁は,電気や空気が無くなっだ場合必ず安全な方向に動くように設計されている。
冷却水の弁なら,冷却動作が継続して行われるように弁は開くように設計されている。
フールプルーフは,人が間違った行為をしようとしてもできないようにする仕掛けだ。
洗濯機であれば,蓋を閉めないとドラムは動き始めない
自動車であれば、パーキングやニュートラルの位置でなければエンジンはかからないように予め設計されている
万一、車の走行ポジションでドライブの位置でエンジンがかかれば急に走り始めてしまうからだ
このように,設計面で事故を起こさない為には,機械の故障や人のミスに対して本質的に安全な設計を行うことである。
しかし、現実は工学的な配慮はなされても,設備の故障や人への配慮は十分ではないから事故が起きてしまうのだ。
人にやさしい設計を心がけて欲しい

 

2021年02月19日

OJTをうまく進めるには

人材育成や技術伝承の用語に「OJT」という用語がある
On The Job Trainingを略した用語だ 現場でトレーニングなどをすることだ
現場で先輩が後輩に直接会話をしながら技術や技能を伝える方法だ
非常にいい方法だが上手に行うためには何点か注意点がある
OJTをやると時には、先生が生徒の目線で考えて話ができるかがポイントだ
相手はわかるだろうと先生が考えてしまって、相手の理解度も考慮しないでやみくもにOJTを進めると生徒が消化不良を起こす
結果、中途半端な理解のまま時間だけが経っていくことになる
かならず、相手が理解できたかを確認しながら前に進むことだ
つまり,時々質問をすることだ 何がわかったのかを簡単に話させることだ
返ってきた答えで,理解の度合いはわかるはずだ
もう一つは,計画を立ててOJT教育をすることだ
教えることに関連性を持たせて,順序立てて教えていくことだ
バラバラの知識を与えるより、関連性を持たせながらトレーニングをした方が効率が上がるからだ
その為には,先生は教えることをリストアップし計画表を作って実施していく必要がある
思いつきで教育をしていてはだめだと言うことだ
次に、なぜを説明することだ
教える目的は何かを説明して、なぜこの知識が必要かと説明してあげると良い
もう一つ、OJTの先生になる人は教える技術を学んで欲しい
教えるにも技術がある。話し方にも技術がある
企業は、OJTの講師の人達にも事前に教育して欲しい
いろいろな書籍なども販売されている
講演会などもある
先生は教える技術をまず身につけて欲しい

2021年02月17日

10年目に起きた東北大震災の余震-最大震度6強

2011/3/21に起きた東北大震災からもう10年になる
私の住んでいる千葉県でも地震の時はかなり揺れた
そんなことを考えていた矢先、昨日の夜に再び大きな地震が起きた
自宅の2階にいたがかなりの揺れだった
地震速報では震度3と言っていたが、震度4くらいあったような気がした
今日家の中を再び見回してみると、書籍棚の扉が半開きになっていた
書架の中のものもいくつか倒れていた
棚類などは全て固定してあるのでなんともなかった
今回の余震は、東北地方では震度6強という報道が流れていた
震源が深かったので津波は来なかったのが幸いだ
今日散歩をしていて、コンビナートの方を何げなく見ていたらいつもフレアーの火は小さいのにかなりの炎が出ていた
もう春の定修が始まったのかと思っていた
ところが、ネットでニュースを見ていたらコンビナート企業の化学プラントが停止しているという
大手の総合化学企業だ 地震で電力供給が落ちたり、安全のため停めたらしい
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00588242
東北地方の火力発電所は13基停まっているようだ
仙台の製油所も配管などから油漏れがあったという
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210215006/20210215006.html
大きな被害は無いもののかなりの影響が出ているようだ
東北大震災からもう10年も経つのに余震とは驚いた
大自然から見れば10年というのはホンの一瞬なんだろう

 

2021年02月15日

Web講義での通信障害に思う

Webソフトを使って講義や講演を始めてもう9ヶ月になる
Webex,Teems,Zoom等いろいろな通信ソフトを使ってきた
通信環境を整えるため、回線はADSLから光に切り替えた ADSLの時は、通信速度は下りが3M,上りは1Mというレベルだった
光にしたら上り下りとも100M~180Mくらいに高速化された WiFi環境だが安定して高速で使えている
いままで通信障害は感じなかった 講義は2日間続くこともあるのだがトラブルはなかった
ところが今週Webexを使って講義をしていたところ、通信障害の文字が画面上にちらっと出た
今までも他のソフトでそのような表示が出たことはあった 
システム音声利用がリセットされることは起きたが、すぐに再共有で解決できていた
ところが今回は、講義で使っていたパワポの画面が生徒側で動かなくなったのだ
通信速度が極端に遅くなったようでパワポのページが進まないという 画面がフリーズしたままだという
私はページを進めて入るのに生徒側はページが進まない現象がおきていた
生徒から連絡を受け一度共有を解除して再接続をするも解決しなかった
一度webソフトを切り、再接続をしたものの解決しなかった パソコンも再起動したが駄目だった
結局、10分ほど休憩を取るように受講生に呼びかけた
講義再開後はしばらくは、ページめくりスピードは遅かったがその後時間とともに解決した
約30分くらい通信障害トラブルは続いたようだ
あととで調べてみたら通信障害があったというような情報を入手した
その後数日してネットニュースにTeemsという別のWebソフトが通信障害を起こしたという記事が出ていた
通信障害は起こると想定していなかったことが、講義中うまく対応できなかったのだ 
今回の教訓は、通信ソフト会社のホームページを予めきちんと調べておくことだとおもった
通信障害のような状態になったとき、すぐにソフト会社から通信障害の有無の情報が得られる状況にしておくことだ
障害がおきているなら、講義中休憩を入れて障害が収まるのを持つしか手はなさそうだ 
交通機関が遅れることがあるように通信の世界もトラブルが起こると考えて行動することだ

 

2021年02月13日

ヒューマンエラーに関するいい書籍紹介

ヒューマンエラーに関心を持つ人にお勧めしたい書籍を紹介する。
今から30年くらい前、まだ現役で企業に勤めていたとき、管理職になったときに思ったのがマネージメントは何かという疑問だ。
マネージメントという言葉は、日本語では管理という言葉になる。
日本語の管理とは、どちらかというと決められたことを決められた手段で従わせるという意味合いにとられれる。
つまり、自分の思っていることを部下にどう伝えて実行してもらうかという気持ちが、マネージメントだった。
つまり、命令することがマネージメントという概念が当時の考え方であったが、人は自分の意図した通りには動かないだろうと言うことも感じていた。そんな思いもあり、マネージメントとは人の心を柔軟に読んで一つの目標に向かってともに仕事を進めていくことだと考えを変えた時期があった。人の心理や思いが理解できないでマネージメントは難しいと感じたのだ。
そのとき、興味を持ったのが心理学だ。世の中、存在するのは人と機械だ。人でできないことは機械でやらせる。でも、機械を操るのは人だ。そうは言っても人は一人で何かをしているわけでは無く、組織という大きな人の集団だ。工学的な知識を持つ以前に、人に関する知識を持たなければ社会で物を考えることは難しいと考え始めたのが今から30年前だ。
遠回しの文章になったが、当時興味を持ったのが黒田勲という人だ。
自衛隊の戦闘機のパイロットの身体的な医学管理と心身のスペシャリストだ。パイロットは選び抜かれた集団だ。心と体の頂点を極めたモノが選ばれる。最高の人材を選ぶ仕事に就いていた人だ。心と肉体をベストに保たれた人間とは何なのだろうかいつも気にかけていた。
あるとき、この黒田さんの書いた書籍を読んでみた。すごく理知的に人を解説していたのだ。心理的なものをじつにわかりやすく解説していた。
以後、黒田さんの著書は読んできたが、最近またその著書を読む機会があった。著書名は「信じられないミスはなぜ起こる」。発行所は中央災害防止協議会だ。900円の単行本だ。今は、再版はないので古書が売られている
ヒューマンエラ-というのは、永遠の課題だが目先だけ解決出来る問題では無い。時代が変われば、手の打ち方も変えなければならない。
でも、本質的に打つべき対策は不変だ。この不変となるもの、時代の変遷を考えとるべきことをうまく書き表してくれたのがこの書籍だと思う。
ヒューマンエラーの個別的対策を教えてくれる書籍ではないが、一度は読んでおいて損は無い本だ。

 

2021年02月11日

地震対策事例-公開されている情報

先日安全工学会で講演をした
安全マネージメントと人材育成がテーマだ
その後の、巨大地震にどう備えるかなどが論議になった
色々な企業が地震対策を進めているはずだ
何年か前にこのテーマで色々情報を調べてみたことがある

川崎市がコンビナート内の企業の地震対策に関するいい情報を公開している。
http://www.city.kawasaki.jp/kurashi/category/15-13-1-6-13-0-0-0-0-0.html 
ホームページの下の方に、PDF版の資料がある。
実際に企業が行っている地震対策が写真入りで、紹介されている。
球形タンクの柱の強化や、液状化対策、通信方法の強化など実に役立つ情報がある。
企業の安全担当者は1度見て見てはどうか。
地震対策のいい参考情報だ

このホームページの右端の四角い枠の中をみて欲しい
川崎市危険物等保安審議会と言うところをクリックしてみると良い
ここにも教育資料など参考となる情報が公開されている
化学工場の安全スタッフなどには役に立つ情報も多い
参考にされたい

2021年02月08日

2017年12月の粉塵爆発事故-3年後関係者が起訴された

2017年12月富士山の裾野にある富士市で粉塵爆発が起こったのを覚えているだろうか。
この業界では老舗の企業で、1976年から爆発事故をおこした製品を作っていたという
今回の事故だ、死者2名、重傷2名、軽傷11名の大惨事となった。
しかし、製造を開始してから約40年間大きな事故は無かったという。
事故から約1年が経った、11月20日に、この企業から事故報告書が発行されている。
http://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/document/news/20181120fuji7.pdf
事故報告書によると事故はこのようにして起きたという。
印刷インキ用樹脂を製造していた。固形樹脂を粉砕後フレコンと呼ばれる袋に粉状にして投入していたときに内部で静電気による放電が起きたのがきっかけという。袋の中で最初の粉塵爆発は起きた。これで、収まればこれほどの大事故にはならなかった。
粉塵爆発は怖いのが、最初の爆発が引き金となって次から次へと誘爆していくことだ。
フレコンと投入口は密閉構造では無かった為、炎は、投入口の近くにあった、粉塵除去用のダクトの中に吸い込まれていったようだ。
ダクトの中は清掃していなかったことから、当然粉塵は溜まっていた。
それにも火がつき、ダクト内で大きな粉塵爆発を起こした。
ダクトの出口から出た、爆風は室内のダクトの上などに溜まっていた粉塵を更に巻き上げ更なる粉塵爆発の連鎖を起こしたようだ。
最後は、室内に保管していた化学薬品に火がつき薬品火災も起こしてあのような大爆発となってしまったと書かれている。
報告書では、企業は粉塵爆発の危険性を感じていなかったとある。
しかし、粉を長年取り扱ってきている企業なのだから粉塵爆発にはかなり注意をしていたはずだ。
1986/4/23日にこの企業で岡山工場でサイロに製品を入れるときに粉塵爆発を起こしている。
事故を一度も経験しなかったわけでは無い。この事故も、事故発生の1年前に小爆発があったそうだ。
2021/1月当時の関係者が起訴された。
粉塵爆発防止の基本的事項が徹底されていなかったようだ。
作業も社員、下請けと多層化している。協力会社まで事故防止の基本が徹底できなければ事故を防ぐのは難しい
私がよく読んでいるブログに起訴内容の詳細が書かれている。参考にされたい
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%9B%E7%B2%89%E3%81%98%E3%82%93%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%89/2017%E5%B9%B412%E6%9C%881%E6%97%A5%E3%80%80%E9%9D%99%E5%B2%A1%E7%9C%8C%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E5%B8%82%E3%81%AE%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E3%81%A7%E7%B2%89%E7%A0%95%E3%81%97

 

 

2021年02月06日

保温材下腐食-GUI

化学プラントの老朽劣化に関係する講演をすることがある
ネットで色々な文献を探していると参考になる情報も多い
参考となる情報がある
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p15051.html
この中から検査手法や手順などの資料もダウンロード出来る
どの企業でも、外面腐食は悩みの種だ。特に、保温材を被った配管などはトラブルが多いはずだ。
塔槽類や高所にあるものであれば足場の費用も馬鹿にならない。
保温材下の腐食は、関連する因子をきちんと管理しておくことだ

保温材の中の温度だ。当然、100度以下が腐食しやすい環境になる
100度を超えれば、腐食に関係する水分は気化して飛んでいってくれるからだ
60度を境にして実験したことがあるが、60度未満では腐食が進むと言える
60度未満では、腐食率が3倍くらいにもなる現場も存在した
やっかいなのは温度が変化する配管だ
流れたり、流れが止まったりだとか断続的に流れる配管は温度が下がれば水分が凝縮する
保温材の中での水分率も腐食率に関係する
15%を超えると極端に腐食が進むというデーターがある
配管の塗装の善し悪しも関係する
ケレンや塗装も手を抜くと後で大きなつけが来る。
地下の埋設配管も防食対策が不可欠だ。 
腐食という問題は奥が深い

 

2021年02月04日

派遣や下請け化の労災に思う

派遣という制度ができてきたのは1986年だ。それまでは人材派遣などは許されていなかった
基本的に社員が主体で製造するという社会構造だった。
同年、労働者派遣事業と請負によって行われる事業を区別することを目的として「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」が告示されてる。
最初の派遣法において派遣で行える仕事は13業務に限定されていた。当時は専門語業務に派遣は限定されていた
しかし、景気の低迷とともに人材派遣業のニーズが高まったことから、1996年には26業務までに拡大された。
さらに1999年には一部の禁止業務を除き、広い範囲で派遣が認められることになった。
専門業務から汎用業務にも派遣が認められるようになってきた
それ以降、いくつかの見直しを経て、2012年、2015年、2020年の大幅な法改定に至っている。
当初の派遣の目的は、業務量の変化に対応して必要な人材を補充するという概念であった。
ところが、その後は単純労働など高度な知識を必要としない単純労働は社員から派遣へと業務形態が移行してきている。
今まで社員が行ってきていたことを、派遣という業務形態に切替えコストダウンが図られてきたのだ。
社員が作業してきたときは、企業側から社員へ教育が行われていた。
ところが、派遣に切り替わるとたんに教育もスリム化され新たな労働災害が発生してきているのではないだろうか
社員業務を派遣に切り替える際に、安全の確保が担保されるか検討してきていないことが問題点だ
派遣に切り替えるに当たっては徹底的に、リスクを解析し安全な作業環境と作業方式を導入することだ
社員でできていたから派遣でもできると安易な考えを持たないで欲しい
派遣への教育は極端に絞り込まれているはずだ。社員への教育内容とは圧倒的な差がある。
派遣に委託する作業では、本質的に安全な環境と作業内容になっているか見直して欲しい
社員だけが安全という考えでは成り立たない 派遣人材の安全も図ることが企業の責務だ
日本の企業が発展していくためには、派遣、下請けを含めた総合的な安全の確立が求められている

2021年02月02日

事故や災害に思う-2010年代の重大事故

危険物保安技術協会が募集した第15回「危険物事故防止対策論文」に応募してみたことがある。
消防庁、危険物保安技術協会が主催したものだ。
協賛は石油化学工業協会、日本化学工業協会や石油連盟など危険物を取り扱う業界団体だ。
私もサラリーマン時代にはお世話になった業界なので、少しはお役に立ちたいと思い筆をとってみた。
テーマとして最近の石油や化学企業で起きた重大事故を取り上げてみた。
演題は「最近の重大化学事故と安全管理の盲点」とした。
2010年代に起こった石油精製や化学企業の重大事故をテーマにした
化学会社に入社した40年前から、現在に至るまで化学産業を取り巻く環境はどう変化してきたのかを考察してみた。
切り口は、設計管理に始まり、安全性評価、運転管理、設備管理、工事管理、変更管理だ。日頃頭の中に描いていたことを論文にしようと書き始めたものの、いざ活字にしようとするとかなり大変だった。
努力の甲斐あって、この論文が入賞した。
論文も、危険物保安技術協会のホームページにも掲載されている。
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_15/15rijityou2.pdf
色々な事故を見ていくと、時代の変化に対応してタイムリーに対策を取るべきことがあると感じる
多くの方々が論文を見て、少しでも事故防止に役立ったらありがたいなと思っている。

2021年01月31日

技術伝承-産業安全塾-石油化学工業会 日本化学工業会 石油連盟

2011年の東北大震災から、もう10年が経つ。
2011年の東北大震災以降、化学関連業界では大きな事故が立て続けに起こった。
背景には、いわゆる豊富な経験を持っていた団塊の世代が企業から去って行ったことも関係していると言われている。
これを受け、石油化学工業協会、日本化学工業協会、石油連盟などの業界団体は技術伝承にも力を入れている。
2012年から保安教育強化の一貫として、年1回の頻度で企業の安全を担う中核人材を集めて教育講座が開かれている。
2014年迄は、「産業安全論」という名前だったが今は「産業安全塾」と名称が変更されている。
企業から選抜された中核人材30名程度が受講できる講座だ。
インターネットで「産業安全塾」と検索すれば出てくるので興味のある方は見て見るといい。
講師陣は、経済産業省などの官庁サイド、業界団体、企業の安全に関わる経営サイドのメンバー、技術伝承や人材育成の有識者など多岐にわたる講師陣だ。
それぞれ専門分野毎に、情報や貴重な経験を、約1時間半程度講師が話してくれる。合計で15回の講演が聞けるのだ。
非常に幅広い分野の情報を生の声で聞けるという、有意義な講座である。
しかも、参加者同士がコミュニケーションを行いながら安全情報ネットワークを構築できるという利点がある。
私もかれこれ10年くらいこの講座の講師として参加させてもらった。
安全教育・啓発の体系化と実践というカテゴリーを受け持ち、「事故事例から学ぶべき教訓」という演題で話をさせてもらった。
多くの事故事例からどのように教訓を抽出していくかという切り口を紹介するものだ。
90分という講演枠では、時間が足らないのだがエッセンスを抽出して伝えている。
残念ながら2020年度はコロナのせいで講演は中止された
昨今はWebと言う手段もある 今日も安全工学会の討議はWebで行った
ぜひ2021年度は業界として産業安全塾を復活して欲しい
まだまだコロナが続くのであれば、Web講義も考えて欲しい
継続は力なりである

2021年01月29日

製油所火災の事故報告書

2017年1月に和歌山の製油所で2件の火災事故が起きている。この事故では、事故報告書の最終版が公開されている。
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/2017/20170614_01_1150234.html
教訓となることも多く書かれているので一度は目を通して欲しい。
この事故は、最初がタンク小火災、数日して製油所が数十時間に及ぶ大火災となった事故だ。
住民も避難させられた大きな事故だ。事故報告書を見てやっぱりと思うことがある。
この工場は約40年間大きな事故もなくと書かれている。大きな事故がないと、安全と思い込んだのだろう。
長いこと事故がないと、みんな安全だと思い込んでしまい、目の前にある危険なことが見えなくなり、危険の感受性が落ちていく。
事故がないことはありがたいことなのだが、無事故の中で危険に対する意識レベルを維持するのはなかなか難しい。
最初のタンク小火災は、硫化鉄が発火した事故だ。
製油所では、だれでも発火の危険性を知識としては持っているが、実際に目の前で見た人が。工場ではだんだん少なくなってきているのだろう。
除去するための作業マニュアルはあっても、状況に応じて対応することができなくなっているのだなと感じる。
今回は、いつもよりタンク内に硫化鉄を含む残渣が多かったと書いてあった。ならば、発火しないように多めの水をかけておくことが望まれるのにうまく対応できていなかったようだ。
社員も協力会社も、対応能力は落ちていたのかなとおもう文章があった。
それから、数日後の大火災は前からなぜあんなに長時間燃え続けたのだろうと思っていたらその答えが書いてあった。緊急停止システムはあったが、原料ポンプはそれに組み込まれていなかったと書いてある。つまり、現場でポンプをなんとか停めようと試みたものの火炎などで停められなかったという。やはり命がけの対応を運転員はしていたのだ。ポンプさえ停められれば、流れ出る油を停められ火炎は一気に抑えることが出来たと思われる。
トラブルが起きたときの漏洩防止の基本は、圧力を下げ、温度を下げ、液レベルを下げ流出を停めることだ。今回の事例では、遠隔操作で原料ポンプをすぐに止められなかったことが長時間の火災につながったとも報告書から読み取れる。自分のプラントのどこかの配管が破れたら、現場に行かなくても安全に流出を停められるような装置になっているか検証してみて欲しい。
HAZOPでも腐食などにより配管からの大量漏洩を想定したケーススタデイを試みて欲しい

 

 

2021年01月27日

マネージメント(管理)の大切さ

化学プラントなどで事故が起こるのは、自分の職場の危険源が見えていないからだ
化学プラントにある危険源を体系的に理解することが事故防止の基本です。
過去の事故事例を、危険源の種類毎に整理してそこから抽出される教訓を抜き出していくことです。
そこから得られた教訓が、化学プラントの安全をマネージメントしていくために重要なキーワードです。
では、どんな切り口でマネージメントするために必要な事故事例を整理するかがポイントです。
化学プラントの一連のサイクルに分けて、整理するのがいいでしょう。
私は、7つに分類してマネージメントのキーワードを整理しています。
まず、「設計管理」です。事故を防止する最初の切り口は、設計です。
2番目は、「安全性評価」です。設計者が、見抜けなかったリスクを組織として、マネ-ジメントすることが求められているからです。
3番目は「運転管理」です。製造管理とか作業管理という言葉に置き換えてもいいと思います
4番目は、運転とともに大切な「設備管理」です。設備の維持管理や点検などのマネージメントを怠ると、機械による突然の故障などで事故が起こるからです。保全管理という用語でもいいです
5番目は、「工事管理」です。工事中の事故や災害にも目を向けておくことが大切です。日常工事や定期点検時の管理です
6番目は、人に関するマネージメントの重要なポイントである教育・訓練です。人に技術有りだからです
知らなければ事故になります。知っていても曖昧な知識なら、やはり事故になります。知識は整理してこそ生きてきます
訓練とは、体で覚えるものです 頭で理解しても、いざという時講堂に移せなければ何もなりません
7番目は、「変更管理」です。化学プラントは生き物です。お客様の要望に応じて絶えず作り出す製品も変わります。
コストダウンや生産効率を向上させるため、原材料や生産プロセスも変化します。
組織や人事異動により管理者が変わるのも「変更管理」で抑えておかなければいけない重要ポイントです。「変化」は危険源です。
危険源をきちんとマネージメントすることが求められています。
危険なことや危険な物を単位知っているだけでは事故は防げません
それを管理し事故を未然に防げ無ければ事故はなくならないのです
危険源を管理する能力を向上させてください 

 

2021年01月25日

4M解析の盲点-事故の深掘りができない

事故がおこると原因を解析する 原因を解析したら対策を打つわけだ
2度と事故が起きないように普通は対策を打つ しかし同じような事故が再発することは沢山ある
それはなぜなのかと聞かれれば,原因は2つある。1つは,原因と対策が合っていないからだ
例えば,誤って違うバルブを開けたという事故があったとしよう
ヒューマンエラーかも知れない 思い込みで,誤ったバルブを操作したのかも知れない
バルブの色が似ていて見間違えたのかも知れない バルブの配置が元々間違えやすい配置だったのかも知れない
前から誤操作が頻発していたのに,管理者は何もしていなかったのが原因かも知れない
色々な原因は想定されるはずだ。出てきた,原因で対策したとしたが、また再発したという事例は多い
よくよく調べたら,現場の照明が暗くて間違いやすい環境だったことが二度目の事故でわかった
一度目の事故では,そこが見つけ出せていなかったのだ。本質的な原因が見ぬけれなければ事故は再発する
4M解析の環境という切り口で事故の原因を見抜けていなかったのだ
事故原因を単に,現場の作業者からヒアリングしてそれだけで原因と考え対策しては事故は防げ無い
かなり事故の原因を深掘りして対策を打たないと事故の再発は難しい
4Mで人(man)と、マネージメント(管理)の要因解析でも注意が必要だ
人のエラーも単純に事故時の人のエラーだけを捉えていてはだめだ 
設計時点でフェイルセイフや,フールプルーフが考えられていなかったのが原因かも知れない
それを,管理の切り口で、設計管理の問題点として取り上げてくれればいいがそこまで踏み込んでくれない事例も多い
4M解析でも大切なのは,単に危険源だけを拾い出せばいいわけではない
設計、安全性評価、運転管理、保全管理、工事管理、教育訓練、変更管理など管理的な落ち度もしっかり見て欲しい
派遣や下請けに任せている作業なのに、社員でも難しい作業であれば事故は起こる
作業がシンプル化されていなかったのが本質的な問題点だ 人への負担が多すぎれば事故は起こる 自動化の不足が問題点だ
形だけの4M解析では事故の根絶は難しい 深掘りできる人材を増やしたい
4M解析を使いこなすのは難しい

 

2021年01月23日

工事の品質管理は難しい--現場監督

新設や改造で工事を発注することはあるはずだ。大手工事業者に頼めば安心かというとそうとは限らない
今から数十年前は,ベテランの技能者が沢山いて何も言わなくても工事の品質は確保されていたが今はそうでは無い
つまり、監督などがしっかりしていなくても末端で働く労働者の質がかなり高くめったのなことではトラブルは起きなかったからだ
ところが,昨今はそうはいかない。監督者も経験不足。現場の作業者も,技量のバラツキが大きいという現実がある
現場の質が落ちたというより、現場作業者のバラツキが大きくなったと理解する方が正しい
監督者もたたき上げと言うより、頭でっかちの監督者が増えてきている。経験は無いのに,立場は監督者という構図だ
では,仕事を発注する側の立場で考えると、どう工事の品質を確保するかだ

とにかく、現場監督の力量で工事の質は決まる 優秀な現場監督が確保できる企業を選ぶことだ
企業規模ではない 人に技術有りだから
企業評価をするときには書面だけでは駄目だ。キーマンとなる監督者層と話す機会を作ってもらうことだ
その上で,発注先の能力を評価して欲しい
現場監督の力量でかなり,安全や工事の質は変わってくる
現場で先頭に立つ,監督者層の力量を見て欲しい

仕事というものは発注したら終わりではない
きちんと100%の要求事項を満足してくれるかだ
1%でも欠けていれば後で何かまずいことが起こることになる

 

 

2021年01月21日

タンク清掃時に起きた火災死亡事故に思う

15年前の今日、製油所のタンク清掃時日本で大きな事故が起きている 2006/1/17日の出来事だ
タンク内を空にして軽油で清掃中、内部で爆発が起こり作業員5人が死亡し、2人が怪我をした事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2017/03/2006.html

タンクは内部を点検する前に空にして清掃する必要がある
可燃物が入っていたタンクであれば当然液を抜き出すが、底の方に残った液は完全には抜き出せない
底の部分には、油かすと呼ばれるスラッジというものがたまる
これをタンク内に人が入り人海戦術で取り除く作業が一般的に行われる
スラッジという油かすは、内部に可燃性ガスを含んでいることが多い
つまり、スラッジを取り出すときには内部にある可燃性ガスが外に出てくることになる
空気と混ざれば、爆発混合気ができてしまうのだ

タンク内にはなにがしかの可燃性ガスが最初は存在しているから窒素で安全にパージする
とはいえ、清掃のために人が内部に入るのだから窒素を入れたまま放置するわけにはいかない 酸欠になるからだ
マンホールを開けて、空気換気をするのだが大型のタンクになるとそう簡単に、タンク内を効率よく換気ができるわけではない
部分的にガス濃度の高いところもできてしまうこともある
そこで、何らかの着火源があれば清掃中に発生していた可燃性ガスに火がついてしまう

15年前の事故は、公式見解では原因は不明と報道されている
とはいえ、こんな調査報告もある
興味のある方は読んでみることだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/2/50_101/_pdf/-char/ja
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2014_03.pdf#zoom=100

可燃物を貯蔵していたタンクであれば,必ず残渣が残る。残渣には、可燃性ガスが潜んでいる
清掃作業でかき回せば,溶存していたガスは外に出てくる
タンク内作業は常時可燃性ガスを測定して、ガス濃度が高まれば早めに退避させることだ

 

2021年01月17日

キャンドポンプで起こった重大爆発事故-HAZOPで見落としやすいリスクだ

今から17年前の2004/1/13鹿島地区のコンビナートで大きな爆発がおこった
キャンドポンプというポンプ内で反応が起こりそれをきっかけに起こった爆発事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0021002.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2004-037.pdf
キャンドポンプは、密閉型のポンプで漏洩を嫌う物質に使われるポンプだ
毒性ガスなどポンプから漏れると影響が大きいので、漏れると危険という流体によく使われるポンプだ
事故が起こったプラントでは、温度が上がると自己分解性がありかつ重合して詰まりやすい四フッ化エチレンとい物質を流していた
この物質は温度が上がると反応が進む物質だった。その物質がキャンドポンプ内で詰まり温度上昇で爆発した事故だ
四フッ化エチレンの最小着火温度(150~400℃)を超えたことが第一原因だ
更に漏洩した四弗化エチレンが一次爆発し周辺部で二次爆発を起こした
破損機器は半径500m程度迄飛散した。爆風により半径1kmの範囲で被害が発生している
キャンドポンプ内には、モーターがある 電気を流してモーターを回転させると。モーターの周りには熱が発生する。
この熱を除去する為、モーター周りには細い配管が設置されている
冷却用の液体を流すのだ 通常、ポンプで流す流体の一部を、この細い冷却用配管にバイパスしてモーターを冷やしている
ところが、このポンプに流していた流体は温度が上がると爆発する物質だった
おまけに反応性が有り、反応を防止する液体が常に送り込まれていた
があるとき、その反応防止剤が流れてこないトラブルが起こった
そうすると、反応を始めるのでその流体は粘度が高まり冷却用の細い配管内の流れが悪くなった
その結果、液体の温度はどんどん上昇し最後は着火点を越えてポンプ内で爆発を起こした
キャンドポンプは、構造上冷却用内部配管が詰まると温度が上がり易い
温度が上がると危険な物質にキャンドポンプを使うならしっかりと安全対策を行うことだ
HAZOPなどの安全性評価でもポンプ形状によるリスクを見逃しやすいので注意が必要だ

 

2021年01月15日

緊急停止時の手順を間違えると事故になる-作業手順

トラブルが起これば、装置を緊急停止させることもある
緊急停止が自動化されていればいいがそうはいかない 多くの停止操作は,手作業で行われているのが実態だ
手作業で行うには,作業手順がしっかりと身に付いていないとなかなか難しい

こんな事故事例がある
あるとき工場でトラブルが起き,液体を加熱する加熱炉という装置を緊急停止することになった
手順書では、最初に加熱炉内の温度を下げるため、バーナーの火を消すことになっていた
つまり,バーナーの燃料弁を最初に閉めるのだ   燃焼の3要素である可燃物を無くすのだ
その後、バーナーの火が消えて,加熱管の温度が下がってから加熱管に流す液体を停めることになっていた

ところがトラブルが起きたとき,運転員はバーナーの火は消さずに、加熱管内に流れている流体を先に止めてしまった
加熱管を暖めるバーナーは止めなかったので,加熱管の金属はどんどん熱が加わって熱くなっていった
加熱管内には液体が流れていない状態なので、熱は流体により持ち去られないので一気に加熱管の金属の温度が上昇した
あまりにも高温になりすぎ金属が溶断し,残っていた内部の液体が外に漏れ、可燃性だったので炉内で火がついた

本来なら,先にバーナーを止め加熱管へ流れる液体を止める手順なのに順番を間違え、先に加熱管に流れる流体を止めたのが事故の引き金になった
緊急時は人は間違えを犯しやすい
訓練をしていれば,間違えを防ぐこともできるがそれでもミスを防ぐのは難しい
緊急時の操作は、可能な限り肝心な部分は自動化して欲しい
人は時間的に余裕があるときにはミスを犯さないが、時間に余裕がなければミスを犯しやすい
人は緊急時の対応は不向きだと思い自動化を進めて欲しい

 

2021年01月13日

安全管理指標-文書化できる能力

CSR監査や安全監査などで多くの企業を訪問することがある
それぞれの企業は、一生懸命安全な企業になろうと努力しているのは事実だ
安全に向けてどんな努力をしているか見極める時に、測る物差しがある
企業の管理者に、安全について質問をするとかなり優秀な答えがかえってくることもある
しかし、現場にいる人達続けて質問をすると、企業幹部の思いとは違う答えが返ってくる
つまり、企業は上から下まで同じ考えであるとは限らないとうことだ 幹部の言葉、だけで全てがわかるわけではない
企業の安全力を見るときに、口頭で回答させるのではなく文書を見せてもらうことも大切だ
まずは、企業トップの安全の考え方が明文化しているかだ
つまり経営の考え方が見える化されていなければ部下には伝わらないからだ
次は、安全担当の役員などの考え方をあらわした文書が存在するかだ 経営トップの言葉を租借した文書が存在するかだ
その次は、安全担当部長の文書だ 安全への基本的な考えを書きあらわした文書があるかないかだ
かなり具体的な内容が書き表せているかがポイントだ 
部長クラスも経営者とあまり変わらないなら、実践的指示が出ていないと思うべきだ
つぎは、製造部門の基本文書があるかだ 仕事の基本思想が書かれている文書があるかないかが分かれ道だ
文書はなくても組織は動くが、基本思想が無いということは運営にかなりバラツキがでるというリスクがあるということだ
基本思想があれば、運転の限界や、設備の弱点もわかる。それを承知しての管理ができるからリスクヘッジはやりやすい
強度計算書などエンジニアリング的な文書があるかもチェックしたい 工学的な思考をしているか確認することだ
物質危険性などはMSDSや文献をどの程度集めているかも調べてみることだ
安全の裏付けとなる情報をどれだけ集めているかも企業評価の一つだ 社外の事故事例を集めていることも大切だ
仕様書、図面、運転限界の考え方など技術文書のもみて欲しい 文書化できる技術があるかだ

口で言うのは簡単だが、文書で書き表すにはかなり考え方を整理していないと文書化はできないはずだ
ISOなどで文書化を要求しているのは、企業の成熟度を見る指標には文書化という大事なキーワードがあるからだ
文書化できる技術も磨いて欲しい

 


2021年01月11日

三重県四日市で起こった熱交換器の爆発死亡事故に思う

2014年1月9日に三重県四日市で起こった熱交換器の爆発事故を覚えていますか。爆発により多くの人が死亡しています。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E3%83%9E%E3%83%86%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E5%9B%9B%E6%97%A5%E5%B8%82%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E7%88%86%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85
事故後、事故報告書が作成され事故の原因はある程度公開されたものの、多くの人はなぜ事故がおこったのかという答えには満足していなかったのでは無いでしょうか。
私もその1人です。公式の報告書が出ることは望ましいのですが。多くの人が求めている事故の教訓を自社に展開する為のキーワードが曖昧なのが現在の公式の事故報告書ではないでしょうか。
私も、当時日化協の支援メンバーであることから、この四日市の事故をビデオ化してみたいと考えていました。
私の構想を実現してくれてビデオを作成してくれたのが日本化学工業協会です。
私が作成したシナリオをベースにビデオを作り込むことができました。
私は、当時日化協と協力しながら、東ソーの蒸留塔の事故、三井化学の反応器の事故、日本触媒のタンク事故とDVDビデオを今まで作成してきました。
事故を伝えるには、事故の事実を伝えるのでは無く事故の教訓を伝えることに力点を置く必要性があります。それが、一番難しいのです。ビデオ化すると、どうしても事故の事実を伝えようとする意向が強く反映され、肝心の教訓が消えさっつてしまうからです。今回の事故は、多くの教訓を与えてくれています。特殊な物質を扱っていたから起こった事故だと単純に捉えてはいけません。
熱交換器の開放時に起きた事故であり、どこの化学工場でもやっている熱交換器の開放作業に関わる事故だととらえておく必要があります。
易しく言うと、熱交換器の蓋を開ける前に、無害化されているかがきちんと確認できるシステムになっていなかったことが事故になっていたのです。
安全かどうかは経験則に頼っていたのです。本質的な意味で、化学工学的に安全だというマニュアルになっていなかったのです。年末から年始にかけて長時間窒素でパージしていれば安全と考えていたことが事故につながりました。
熱交換器に残されていた物質は。ドライ窒素のようなの乾燥した気体では爆発感度がものすごく上がることが事故報告書に記載されています。
乾燥した、窒素でパージしたことが結果として事故の被害を大きくしました。窒素でパージすれば安全という、思い込みが事故につながっています。
過去に起こした、事故を教訓にしてビデオ化したいことを考えられているかたがいらっしゃったら相談して下さい。ビデオを作成するときにお手伝いをします。事故の事実を伝えることよりも、その教訓を伝えた方が再発防止には有効です。とはいえ、教訓とは何かを考えるのはなかなか難しいのです。何千件の化学プラントの事故事例を知り尽くした私でも悩むものです。事故を防ぐ究極の答えが教訓だからです。

 

 

2021年01月09日

WINDOWS10へ更新

昨年の初めに,windows 10がでた 今までのwindows 7のサポートが終了することになったわけだ
仕事に持っていく、ノートパソコンは昨年買い換えて既にwindows 10にした
自宅にある、デスクトップ型の自作パソコンは仕事で年中使っていたため不具合が出ると困るので更新を引き延ばしていた

年明け仕事が一段落したのを機に、ついにWindows7からWindows10へバージョンアップすることにした
どうせやるならと思い、ハードデスクは新しいものに買換えてまっさらな状態からWindows10をインストールした
インストールはできたものの,なかなかインターネットにつながらない
Wifi環境なので何度か繰り返し,やっとつながった 今時は,インターネットにつながらないとインストールすらおぼつかない
次に、MICROSOFT OFFOICE2019を購入してノートパソコンにインストールした
パワーポイントそのものは動くのだが、ハイパーリンクが作動しない
パワーポイントの中にハイパーリンクで動画を埋め込んであるのだが、クリックしても全く反応しない
昨年新規の購入したノートに入れたときも動かなかった
windows10ではセキリテイ強化のためハイパーリンクでプログラムの自動実行をわざとさせない仕様にしているためだ

これを解決するには、レジストりーを書き換えればいいことがわかったがレジストリーはパソコンの心臓部の情報で有り書き換えるのは気持ちのいいものでは無い
レジストリーとやらを書き換えてみた。3ヶ月前にやった作業なのだが,もう忘れていてなんとか問題は解決した
次は,音が出ていないことに気づく。Windows10の画面モニター用ドライバーではうまく動かないようだ
モニターメーカーの最新ドライバーをインストールして解決する
その後も,プリンター用ドライバーを入れたりいろいろ手をいれてなんとかまともに動くようになる
Windows10では,表示用標準フォントが変わったせいかなぜか文字が見にくい
技術が進歩するのはいいことなのだが、次から次へとわからないことが増えてくる いわゆるブラックボックスだ
1980年代からパソコンとつきあい始めたがついていくのは大変だ

特にバージョンアップと言う名の下にわからないことが次々出てくる
パソコンとつきあい始めて40年になる コンピューターを使いこなすのは難しい

 

 

2021年01月07日

化学物質を扱う技術-スキルアップが求められている

世の中には数百万種類の化学物質があるという
良きに悪しきせよ化学物質が存在することで世の中は動いている
ときに化学物質は悪いことをするが、いいこともする
化学製品のおかげで我々は豊かな生活ができている
化学物質と上手につきあうことがこれから生き延びていくには大切だ
組み合わせが悪いければ問題も起きる
常温なら安全だが、暖めてはまずい物質も散在する
物質の性質を知り抜いてつきあうことが大切だ

昔、PCB(ポリ塩化ビフェニル)問題という事件が起こった
PCBという物質は日本では1954年に製造が開始された物質だ
PCBは電気を通さず、酸やアルカリでも変化しないという性質を持っていた
http://pcb-soukishori.env.go.jp/about/pcb.html
この為当時は、夢の化学物質と呼ばれていた
工場や家庭用変圧器や電気用コンデンサーなど多くの電気機器の絶縁材として使用されていた
当時は安定して危険ではない物質として認知されていて、工場の加熱用の熱媒体としても使われていた

ところが、1968年、食品油にPCBが混ざる食品公害事件が発覚した
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8D%E3%83%9F%E6%B2%B9%E7%97%87%E4%BA%8B%E4%BB%B6
「カネミ油症事件」といわれ、その油を使用した多くの人が健康障害を起こした
米ぬか油を作る工場の製造工程で配管に穴が開き加熱用の熱媒体として使っていたPCBが食品油に混入してしまったのだ
安全だと思われた物質でも、温度や圧力、濃度が変われば必ずしも安全とは言えない

SDSを見てもある一定条件の時の性質を書き表しているだけだ
ある条件で安全だから全ての条件で安全だと思わないで欲しい

 


2021年01月05日

正月休み中でも事故は起こる-のぞき窓の破裂事故

正月休み中に化学工場で事故がなければいいなと思っているが,休みのない工場も多い
正月でも事故は起きる。5年前にこんな事故が起きている 2016年1月3日に埼玉県にある化学工場で事故が起きた事故だ
https://www.sankei.com/affairs/news/180130/afr1801300041-n1.html
タンクの壁についた物質を、硝酸を水に溶かし洗浄していたところタンクが破裂したという。直径1m、高さ2mの小型タンクだ。
タンクは金属製で、中の様子を見るガラス製ののぞき窓が破裂で破損してそこからガスが吹きだしたという。
吹きだしたのは有毒ガスだという。2人の尊い命が、失われた。
このような事故を教訓としてとらえるときのキーワードは何かを過去の事故事例から紹介したい。
1つ目のキーワードは、突沸である。タンクの洗浄温度は、80度だったが、事故時はそれよりも高温だったという。
水は100度が沸点だから、もし100度を超えた状態であれば、大量の水蒸気が発生する。
水蒸気は、密閉したタンク内では逃げ場がないので、タンクの圧力はどんどん上がるはずだ。
もし、タンクに安全弁が無ければ、タンクの圧力は逃げ場が無くなり、一番強度の弱い部分が破壊する。
つまり、ガラス製ののぞき窓が破壊される。
第2のキーワードは、硝酸濃度だ。どうしても、洗浄作業を早く進めたいと思えば硝酸の濃度を上げることを考える。
そうすると、洗浄時間は短くなるが、硝酸との反応で大量のガスが発生する。
密閉されたタンクであれば,ガスの発生は圧力を上げることになる
事故の調査報告書によれば,規定の硝酸濃度より3倍にして洗浄していたという
結果として大量の蒸気がタンク内で発生して,強度の弱いガラス製ののぞき窓が割れたという
割れたところから大量の毒性ガスが漏れ死に至ったのだ タンクの温度が上がれ蒸気圧で破裂事故を想定すべきだ
反応残液などをタンクに入れるなら,万一を考え破裂板を付けて置いて欲しい
化学物質の取り扱いで温度と濃度は,事故につながる重要なキーワードだ
温度を上げるな,濃度を上げるなと言い続けて欲しい

 

2021年01月03日

2020年代はどう進んでいくのか

年が明けて、新しい年がきた
昨年2020年代になったと思っていたらもう1年が経った
日本の化学産業約100年の中で、私は化学産業で40年間お世話になった 
化学産業も10年毎に時代は変わってくる
今から百年前は、日本で石炭化学が始まった頃だ
当時石炭は、製鉄業に使われていた。石炭を蒸し焼きにしたコークスというのが製鉄に使われていた
石炭をコークスにするとき多くのガスが出る。当然ガスの中には有機物が含まれている。
このガスから、化学物質を取りだし有効活用しようというのが当時の石炭化学産業の始まりだった
その後、日本には石灰石という物が多く有り、石灰からアセチレンという化学物質を取り出す産業も栄えた
アセチレンから、色々な化学物質を造り出した
同じ頃、地中に埋まる天然ガスから化学物質を生み出そうという動きもでた
新潟や千葉県の房総半島地区では天然ガスが大量に出るので、天然ガスを利用した化学工場もできた
ところが、1950年代頃からは石油を原料とした石油化学工業が盛んになった
いまでも、石油を原料とした化学産業は続いている
昨今、自動車産業では、脱ガソリンがうたわれている 電気自動車や水素燃料電池へと動いている
電気を造るのに非化石燃料でまかなえるのか 原子力という選択肢を残すのか 考えどころだ
エネルギー源という問題と、素材産業の原材料という問題が絡み合っている
世界の人口は増えつずける一方だ 当然エネルギー消費も増える 食糧消費も増える
どうバランスを取るかなのだろうが、限りある資源だからだ
SDGSなどが示すように地球規模で物事を考える時代なのだろうが、なかなか難しい
持続できる社会を地球規模で目指す時代だ

 

イラスト出典 国連広報センター

 

2021年01月01日

6年前の大晦日に起こった有機溶剤爆発死亡事故

今日は年末31日大晦日だ。
自分が保有している、国内外過去50年間分の事故情報を久しぶりに見直してみた
今日は大晦日なので、12月31日に起きた過去の事故を調べてみた
けっこうな件数がヒットするかと思ったが、たった一件しか該当する物は無かった。

2014年12月31日に中国で発生した事故が目にとまったので紹介する。
https://staff.aist.go.jp/m.iida/news/News2014-2o.htm
中国の自動車部品工場で機械の洗浄に使っていた有機溶剤(シンナー)が近くで行っていた火気工事で爆発した事故だ
死者75人、負傷者は185人。  死亡者の数を見ても、日本では考えられない事故が、海外では起きているのが現実だ。

この事故のキーワードは、「有機溶剤」だ。日本でも、この有機溶剤を使用している化学工場では事故は繰り返し起きている。
有機溶剤は、色々な化学物質を溶かしたりするのに非常に便利な化学物質だから多くの現場で使われている。
しかし、引火点が低いので静電気で簡単に着火するという性質を持ち、取り扱いには非常に注意が必要な物質だ。

化学物質が着火するのは、溶接火花のような直火と言われるものか、静電気の火花のようなものがある。
日本では、溶接火花のような直火は、過去の火災事故の教訓からしっかりと管理されるようになってきている
しかし、外国ではまだまだ可燃物の近くで火気工事が行われる現実がある。
工事時の管理が日本ほど厳しくないからだといわれている

日本の企業は、今や世界中に展開してきているが、日本の安全管理に関する常識が世界の常識ではない。
海外では、可燃物のあるところで、平気で同時並行的に火気工事が行なわれることはありえると思っておく必要がある。
海外に赴任する日本の技術者は、日本で起こった過去の事故事例をしっかり学んで欲しい。
その上で、海外に展開する工場に対し、その知見を展開し少しでも事故の犠牲者を出さないような活動をしてほしい。
グローバル化が進む現在、日本の工場だけ安全で良いわけではない
日本の安全技術を海外に展開することも必要だ
今年も後十数時間で終わる
来年は大きな事故も無くいい年であって欲しい

 

2020年12月31日

今年一年の国内外の重大事故を振り返って

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
事故の報道はされるが、1年経過しても原因や背景などはほとんどその後報道されることは無い
報道は,起きた事実だけを伝えるものだからだ 時間が経ってから2度と報道されることはほとんど無い
ここに、今年の国内外の主要事故を書いておく
2020/1/14 スペインでエチレンオキサイドプラント爆発 死傷者10名
http://tank-accident.blogspot.com/2020/02/10.html
2020/4/29 韓国で倉庫建設中、火気工事火花がウレタンに着火、38名死亡
2020/5/7 インドでスチレンタンクからガスが漏洩し13人が死亡-コロナでタンクの管理を怠っていたようだ
http://tank-accident.blogspot.com/2020/07/12.html
2020/5/26 大分にある製油所で、定修中60mの蒸留塔内の硫化鉄が発火 熱による座屈で倒壊
長期間の工場停止が余儀なくされた事故だ
2020/6/3 インドで硝酸貯蔵タンクが爆発 死傷者87名 誤った物質を入れたことによる混触事故らしい
2020/6/10 滋賀県のLI電池工場で設備の解体作業中爆発 作業員死亡事故
 この事故は、企業のホームページから事故報告書を見ることが出来る
 https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2020/ip4ep30000001s4r-att/ze201028.pdf
2020/8/4 レバノンで硝酸アンモニューム倉庫が爆発 死者137名 負傷者数千人
硝酸アンモニュームの爆発は、もう100年以上も繰り返している https://www.afpbb.com/articles/-/3297669
2020/9/27 愛知県で繊維工場が火災となり初期消火中の管理者2名が一酸化炭素中毒で死亡
管理職故の責任感が招いた事故かも知れない https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200928/k10012638071000.html
2020/10/20 宮崎でLSIを製造する工場で火災 2日以上燃え続け住民避難
製品を購入していたお客様への影響も多大なようだ https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1207262

今回紹介したいずれの事故も,1件を除き原因は報道されていない
事故が起きても、原因がわからなければ教訓として利用できない そこに,事故が繰り返される理由がある
事故の原因やその後の対策情報の公開を望みたい

 

2020年12月29日

家庭用連動型火災報知器

年末のこの時期毎日のように一般家屋の火災事故がニュースで報じられている
火災で亡くなる人も多いようだ 寝ている間に火災になったり,気づいても逃げ遅れるようだ
消防法で一般家庭でも10年くらい前から火災報知器の設置が義務化されている
https://www.city.yao.osaka.jp/0000053610.html

しかし,相変わらず逃げ遅れのニュースは続いている
我が家も何カ所かに取り付けてはいるものの、年末の時期になぜ逃げ遅れるのかを考えてみた
我が家は2階建てだ。扉を締めてしまうと,1階の片隅で警報音が鳴っても気づかない
夏ならまだしも,冬は全ての部屋は扉を閉めて寝るのだから,少々警報音が鳴っても気づかないはずだ
試しに,警報音くらいの音量で1階でラジオを鳴らしてみたが2階の寝室では全く聞こえない

多くの火災死亡事故では,確かに家庭用火災報知器を何個か付けてはいるのだろう
でも現実は、単独型と呼ばれる警報器では階下で鳴っていても聞こえないから逃げ遅れるのかも知れない
とくに2階に上がる階段の所まで火の手がきていればもう階段からは逃げられない
ベランダから飛び降りることになるのだろうが、それでは大けがをする
2階のベランダに逃げるためのはしごを用意しているが火災発生時時間的余裕があるという保証は無い
結局、万一の時の保険と思い、連動して鳴る方式の火災報知器を全ての部屋に取り付けた
どこで火災が起きても、連動して全ての部屋で鳴りだしてくれる優れものだ
10個で5万円はかかったが,いつも払っている火災保険の1年相当だ
報知器の寿命は10年らしい と言うことは,1年当たり5千円だ
連動型火災報知器で安心を買ってみた

図引用先:総務省消防庁ホームページより

 

 

2020年12月27日

去年の今頃の製油所静電気着火火災事故

2019年12月24日神奈川県にある製油所で火災事故が起きている
油が漏れて静電気で火がついたという事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2020/04/blog-post_24.html

冬場であれば、可燃物が漏れれば静電気で火がつくということだ
ガソリンと軽油を取り出す装置だから漏れれば簡単に火がつくのだろう
肝心の漏れた原因は、企業からは公表されていない
一人が漏れた油を被ってやけどをしている
やけどということは、温度があるのだからやはり火がつきやすい条件が整うわけだ

事故の要因の中で、最初に考えなければいけないのが「漏れるから」事故になるのだ
可燃物でも、閉じ込めて空気に触れさえなければ燃え始めることはない
万一漏れても着火源が、無ければやはり燃えない
燃焼の3要素がそろわなければ火災や爆発にはならないからだ

とにかく可燃物を漏らさないことだ
腐食して穴が開く、フランジのボルトが緩んで漏れる。誤ってバルブを開けたままにしていたなど漏れる理由はいっぱいある
冬の時期はとにかく静電気に注意して欲しい

ドレン弁などを開けるときも、流速に注意してゆっくり開けて欲しい
静電気を甘く見ないで欲しい

出典 人体帯電イラストのみKEYENCEホームページより引用

 

 

2020年12月25日

半田化学プラント安全研究所のホームページを立ち上げてから5年

2015年の今日、私のホームページを立ち上げた
退職してから1年が経過した頃だ
ホームページはつくりたいと思ったのだが、どうつくればいいのかわからなかった
考えている内にあっという間に時間が経った
ところが何気なくネット見ていたら、ホームページを市販のソフトで簡単に立ち上げたという記事を見た
読んでいくと、ホームページビルダーというソフトがあることがわかった
1万円そこそこのソフトだ
早速買ってみてやり始めたもののやはりどうにもいかない日が数日続いた
添付の取説はみたものの肝心なところがうまくいかない
試行錯誤で1週間ほど経った頃やっと形が出来てきた

ところが、ブログを始めようと思ったのだがどこを開けば投稿画面が出てくるのかさっぱりわからなかった
これも試行錯誤で約一週間かかった
最初のブログを書き込みサーバーにアップロードできた時は実にうれしかった
ある時文字だけではなく、絵を入れてみたいと思った
ところがこれもなかなかうまくいかなかった
やはり又一週間奮闘してなんとかなった
取説はあるのだが、なかなか難しい
取説はこうすればこうなるとは書いてはいるが、うまくいくという前提で全て書かれている
うまくいかなかった時は、なぜなのか、何を勘違いしているのか、どうすればうまくいくのかと言う視点では書かれてはいないからだ
人に何かを伝えるのは難しい
自分のブログでも言いたいことがうまく言えているのか時々考えることがある
これからもわかりやすい文章でブログを発信していきたい

イラスト出典 いらすとやフリー素材

 

 

 

 

2020年12月23日

法規制だけで事故は防げるのか

新たな事故が起こるたびに、法律は見直され強化される ならば、同じような事故は起こらないかというとそうでは無い
法律で規制できるのは、必要最低限のことだからである

法というのは、人や法人(組織や企業集団)を規制する
法を知っていようといまいと守らなければ、罰を与えることができるのが法律だ
知らなかったでは済まされない そうすると、法で規制するのは本当に必要最低限と言うことになる

しかし、法を守っていれば罰を受けることはないのだから法は守るがそれ以外のことはしないのが人間の常である
余計なことをすれば当然コストがかかるからだ

法規制というのがむずかしいのは、どこで線引きをするかなのだ
過剰に要求すれば、企業の経営にも影響する 甘すぎる規制であれば再び事故は起きる
行政にも企業にも世間からは厳しい目で見られることになる

法規制の問題点は、「規制」という言葉にも本質的な問題点を残している
規制というものが出来ると、企業は規制を守れば法的なりリスクは逃れることができる
ならば、規制は守るがそれ以上のことはしないという考え方が当然芽生え始めるからだ

結果として、法は守るがそれ以上はしないという文化が生まれててしまう
1990年代頃に自主保安という方針を国は出し始めた
企業の安全は、法で規制することで達成されるものでは無いという考え方だ
そうはいっても、明治以来、親方日の丸が規制を進めてきたという文化はそう簡単に替わる物では無い
いまだに理論的根拠に基づかない行政指導という形態も多いからだ
法の理念は変わっても、法を執行していくのは一人一人の行政官(人)だからだ
法にはどうしても人の解釈が入ってきてしまう 本来の法の趣旨と違う動きが出ることもあるだろう
そこに難しさがある

 

イラスト出典 いらすとやフリー素材

 

2020年12月21日

混ざると危険-混触反応-ルール違反

春菊と野菜に大量の農薬が混入していたとニュースがあった
https://news.yahoo.co.jp/articles/1daba5edc11c2a58ef1806e1b196fbf7304ed43a
畑の隣の畝にまいた出荷間近の野菜に高濃度の農薬が付着したという
基準値の180倍で健康被害にもなる量という 食べ物なのにやはり生産優先なのだと感じた出来事だった
今度は、薬に想定外の成分が混入したというニュースが流れていた
水虫用の飲み薬に、本来混入しない睡眠導入剤という物質が入り込んだようだ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020121200124&g=eco
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%83%BB%E7%99%82%E9%A4%8A%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%80%80%E7%89%B9%E6%9C%89%EF%BC%89/2020%E5%B9%B412%E6%9C%884%E6%97%A5%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%80%80%E3%81%82%E3%82%8F%E3%82%89%E5%B8%82%E3%81%AE%E8%A3%BD%E8%96%AC%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%A7%E7%9B%AE%E6%B8%9B%E3%82%8A
薬を使った人は、急に眠気が差して死亡事故にもなっている
医薬品や食品などは、厳密な法令規定でこのような事態が起きないはずなのだが現実起きてしまったのだ

農薬の件は、やはり生産優先の問題なんだろう
隣の畝には明日出荷する野菜があるのに、数週間後に出荷する隣の畝に高濃度の農薬をまいたそうだ
混ざるといけないということはあえて考えず行ったのだろう

水虫薬の件は、もう死者が2名も出ている 本来なら二人作業を一人でやったという 明確なルール違反だ
又非公式だが、承認されていない、薬品の成分の追加作業をしていたという
追加では均一に混ざらないリスクがあるので法律では禁止しているらしい
事故の原因は一つだけではないはずだ

事故の詳細な原因は今後の報告を待つしか無いが、たぶんやってはいけないことをやってしまったのだろう
化学工場でも混ざると危険というのは理解しているが、混ぜて悪いことが起きるのは頻発している
酸とアルカリを混ぜれば中和熱で問題が起こる それ以外でも混触危険性のあるものを混ぜれば事故になる
混ざると危険と言うことは、繰り返し職場で教育して欲しい
命にも関わることなのだ

 

2020年12月19日

化学工場でビックデーターはどのように使われるようになってきているのだろうか

ビックデーターという言葉を知っているだろうか https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF
コンピュータが進化した今の世の中では膨大なデーターが存在する
コンピューターが記憶できる量が極端に増えたことがデーター量の拡大につながっている

一つ一つのデーターに意味は無くても、データー全体を解析するとデーターが持つ意味を解析することができる
町中で発信される携帯の電波の量を解析すれば、どこに人が集まっているかがわかる
時間毎に解析すれば、活動が活発な時間帯もわかる
どこから人が来て、どこへ戻っていくのも全体の通信デーアターを解析することができる
このようなことが可能になってきたのは、個人を特定しない方法で大量の情報を利用解析できることが可能な法体系が整備されてきたからだ
世の中にある情報を有効活用して、産業や安全活動に役立たせようとする考え方が進んできたからだ

産業界でもビックデーター解析が進んでいる
化学プラントであれば、DCSというコンピューターシステムを使っている
私が工場でDCSを導入した1980年代は、運転データーとして記憶できるのはフロッピーデスクだった
1日1枚で、数メガバイトだった
ところが、今のメモリー量は数百Gバイトだ 通信スピードも。メガからギガになっている
今のDCSなどには膨大な運転データーが保存され、通信で処理が行われている
温度や圧力の関係を解析すれば、トラブル時にどうすれば良いかなどの情報も引き出すことができる
膨大な運転データーを解析し安全に役立てようとする動きが、化学産業でも始まっている
まだまだ化学産業での詳細な活用例は公表されることはないが確実に進展しているはずだ
2000年代から始まったIOTという技術は確実に進んでいる

この技術によって少しでも化学工場の重大災害が減れば有りがたい

出典イラスト イラレットコム無料素材

 

2020年12月17日

変更管理の原点となる重大事故

1974年6月1日イギリスでフレキ配管が折れ大量の可燃物が漏れ出す事故が起きた
死者28人、負傷者89人の大惨事だ
http://www.shippai.org/fkd/hf/HB0058048.pdf
http://www.sydrose.com/case100/306/

事故の顛末はこうだ
反応器が何台かある工場で、腐食により反応器に穴が開いた
修理のため一時的に、仮設で反応器を結ぶ配管を仮設した
本来は、金属でできた配管で反応器間をつないでいたが、フレキ配管で反応器と反応器の間を結んだ
フレキという弱い部分が仮設により存在するようになったが、それを保護するサポートは十分ではなかった
装置の運転をスタートしたとき、反応器を流れる流体の温度は徐々に上昇していった
温度が上がれば、配管やフレキなどの金属は膨張して延びていく
この金属の膨張による、フレキを支えていた支持部が外れフレキが外れ大量の可燃物が外に漏れ出した
しばらくして、漏れた可燃物に火がつき大爆発を起こしたのだ

金属製の配管であればそう簡単に漏れることはない
ところが、フレキというような薄い金属であれば無理な力が加われば破れることもある
仮設という作業を甘く見たことにより引き起こされた変更管理の事故だ
HAZOPでもずれが事故につながると考えリスクの検証をする
変更というのもずれの一つだ

PSM(プロセスセーフテイマネージメント)という概念の中にも、変更管理は重要な管理項目としていちずけられている
そうは言っても、現実の世界、変更と人が意識しなければ変更管理の意識は働かない
そこに変更管理の難しさがある

 

 

2020年12月15日

繰り返すタンク負圧変形事故

タンクが負圧変形する事故について何度も述べてきた
タンクは呼吸できなければ、変形する
大量に液が入ってきたとき、タンク内のガスを放出できなければタンクは脹らむ

反対に、液を大量に抜き出すとタンク内は負圧になる。外部から空気を吸い込まなければ真空になり変形するからだ
いずれにしても、液の出入りによりタンク内の圧力は変化する
この為、タンクは呼吸できるような設備が設けられている

窒素シールで圧力コントロールをしているタンクもある 排気弁又は排気管が設置されている
タンクの中に貯蔵する液体がいつも同じ状態とは限らない
例えば色々な液がタンクに入り込んで来るとすると蒸気圧の差にも注意する必要がある

例えば蒸気圧の高い液体を入れていたとしよう
その後、温度も低く蒸気圧の低い別の液体を入れ始めると急激にタンク内の蒸気圧力は減少する
さらに新たに投入した液体が、今まで入っていた液体のガス分を吸収する性質の液体であれば一気に蒸気圧は低下する

あつという間にタンク内は負圧に近くなりタンクが変形することがある
物質の混合により蒸気圧は変化すると言うことだ
混ぜると危険という言葉がある 一般的には混合による化学反応を注意する言葉である

タンクの場合は、混ぜることにより蒸気圧が変化することが怖い
急激に蒸気圧が低下すれば減圧状態になりタンクが変形するからだ

タンクに関しては、蒸気圧の変化に敏感になって欲しい
混合タンクや中間タンクなど色々な液が混ざるタンクではこのような事故が起こりやすい
タンクの排気弁などのつまりや、窒素シールなどはしっかりと点検して欲しい

 

2020年12月13日

急激な温度変化が引き起こすフランジからの漏れ火災

定修前の脱液作業で液を抜き出す作業はかなり多いはずだ
時間的な余裕があれば、時間をかけてゆっくりと抜き出せる
とはいえ、段取りが悪かったりして時間的に余裕が無いと早く抜き出したい思うのが人間の常だ

こんな事故事例がある。熱交換器の中の液を抜き出したが,完全には抜けきれなかった
そこで気体を入れてその圧力で残液を押し出そうとした
しかし,熱交換器の中に残っていた液は、まだ320度と高温だった

抜き出しに使った気体は,温度が50度だった。温度差は270度もあることになる
温度が低い50度の気体を使って液を押し出し始めた
下流側のフランジの所は,最初は温度が320度の流体が流れていた
しかし,50度の気体と混ぜ合わさることで急激にフランジを流れる流体の温度は下がり,200度に下がっていた

つまり,フランジ部が元々の320度から200度まで急冷された状態になっていた
当然,フランジ本体やガスケットは金属だから収縮した
金属というのは均等に収縮するわけでは無い。冷え方にバラツキはでる
フランジのボルトの締め付けトルクもバラツキがあれば、どこかで部分的な隙間ができる

この結果、しばらくしてフランジから油が急激に漏れ始め、保温材の中で蓄熱し高温部で火がついたという事故事例がある
流れる温度が急激に変化したことにより、フランジ部で起こった漏洩事例だ

配管のフランジ部は急激な温度変化では、熱膨張や熱収縮が原因で漏洩事故が繰り返し起こしている
こんな類似事例もある 定修前の反応器温度を下げるときに温度降下スピードが早すぎてフランジから漏れた事例だhttps://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/konbi_soku/2017-132.pdf
定修時の温度を下げる操作や、脱液操作、,スタート時の昇温は時間的な余裕を見て作業手順書を作り慎重に行って欲しい
たとえば一時間当たり何度以内の温度降下なら安全範囲なのか考えて欲しい
金属は急冷させると歪んで事故が起こると言うことだ

 

2020年12月11日

要約する技術-時間は限られている

大学を卒業するときに論文を書く
数枚で終わるような論文を書けばいいかというとそうでは無い
結構長々と文章を書かないといけない

しかも起承転結で理路整然と書かなくてはいけない 
ものすごい枚数も学位論文には必要なのかも知れないが企業には入ってからはその価値観は通用しない
今から何十年も前に企業で教えられたのはこうだ
何百億の投資も、数百万円の投資案件も経営会議にかけるときはA4かA3用紙1枚に要約される
投資として経営陣に認めてもらえるにはその数千文字に思いを込める必要がある
文章も相手が魅力を感じる表現が不可欠だ
経営が判断するのは,そのメリットとそこに潜在するリスクの2つだ それを天秤にかけるわけだ
わかり易く端的に書かなければ、判断はせず論議のテーブルに載ることはない 先送りにされる

会社を去って今でも多くの文章を読むが、何を言いたいのかわからない文章が実に多い
仕事柄事故やトラブルの報告書を読む機会が多い
起こった事実は一生懸命書いているのだが、どう二度と同じ過ちを犯さないかという記述は実にお粗末だ
事故の事実を単に一生懸命書いているだけで、何を学んだかが書いていない
事故というのは全く同じ事故はほぼ起きないから、事実を書いてもそれが大いに役立つわけではない
事故という失敗から学んだことを書いて欲しいのだ それが他の人にも役に立つからだ

最近思うのは,写真や図面を貼り付けて枚数を単に増やしている報告書も多い
文字でうまく表現できないからそうしているのかも知れない

報告書というのは、先頭に必ず報告書の要約を書かせるようにして欲しい
英語ではPREFACEとかSUMMARYという 序文とか要約という意味だ
短い文章でまとめる技術がビジネスでは不可欠だ
時間は限られている 常に短い語句や文章で表現する技術を磨いて欲しい

イラスト出典 イラスト屋フリーイラストより

 

 

2020年12月08日

アメリカで起きた6万人避難の化学工場の爆発事故

世界ではとんでもない爆発事故が起こることがある
2年前の今頃 2018/11/27日アメリカのテキサスという所で起きた事故だ
ブタジエンという物質を製造する化学工場で爆発事故が起き、半径約6Kの住民6万人が避難させられた事故だ
社員3人と、住民5人が怪我をしたが死者は出なかった
これだけの事故で死者が出なかったのは奇跡だ 社員も住民も、とにかく早く逃げてくれたのだろう
先日、ネットでアメリカの雑誌「ケミカルエンジアリング」を見て見たらその事故の原因に関する記事を見つけた
https://www.thechemicalengineer.com/news/csb-releases-update-on-tpc-explosion/
化学プラントが大爆発している写真を見ることが出来る 写真出典 世界の貯蔵タンク事故より


アメリカの化学事故調査委員会であるCSBが中間報告を出している
https://www.csb.gov/assets/1/17/tpc_factual_update_10-29-2020.pdf?16614
事故の原因は、要約するとこうだ 製造していた物質は、可燃性で反応性に富むブタジエンだ
ブタジエンは、重合してポップコーンポリマーという白い固まりを作る性質がある
重合物は、もともとのモノマーの状態より体積が増え膨張する つまり、配管や容器の中でこの反応が起これば膨らみ破裂する
日本でもボンベやタワーの破裂事故なども起きている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200052.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000002.html
アメリカでの事故は、配管の中で、この固いプラスチックができて成長し配管を破壊したようだ

そこから大量の可燃物が漏れ出し、可燃性蒸気が大量に発生した所で何かの着火源で大爆発を起こしたという
このような現象は蒸気雲爆発といいとても怖い現象だ
沸点が常温に近い可燃性液体は簡単に蒸発して爆発性のガスを作り出すからだ
ブタジエンという物質は沸点-4℃だから、常温では大量の可燃性蒸気ができる

報告書の中に、同種の事故原因と思われる配管が膨らんで破裂した写真が掲載されていた
配管の中で化学物質が反応して固まりを作り膨らんだ事故だ
反応器以外でも反応が起ってしまえば配管破裂などと言う思わぬ事故になると言うことだ
参考までに膨らんだ配管の写真を掲示しておく 写真出典 CSB事故中間報告書より

2020年12月06日

真空プロセスで起こった死亡事故に思う

1973年(昭和48年)というのは事故が多発した年だ 大きな事故が何十件も起きていた
1973年の12月4日に茨城県の鹿島コンビーナートで起こった爆発死亡事故を紹介する

新規開発した真空プロセスでの破裂事故である 死者3人、重軽傷者3人の大事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000107.html

事故の顛末はこうだ
新規開発で実験をしていたところ色々トラブルも起きていた しかし、原因を究明せず実験は続けられた
開発スケジュールのプレッシャもあったのかもしれない

結果としてトラブルが引き金で実験設備が爆発し、尊い命が失われた
真空系設備の事故は意図して空気を吸い込むことで起こる
装置の一部から空気が漏れ込んでいるのに気づいていなかったのが原因だ
さらに、爆発性の高い副生物もできていたがそれに気がついていなかった
結果として爆発事故を引き起こしてしまったのだ
当時の担当部門であるお役所の労働省から詳細な事故報告書も発行されている
今から半世紀前の紙で出された報告書だが今は世の中には存在しない
紙というものは時間が経てば棄てられるからだ
この事故が起きる前に私はこの企業の就職試験を受けたことがある
たぶん事故の起こる1年前だったはずだ 結果として、この企業には就職しなかった
今でも思うのは、もしこの企業に就職していればこの新規開発事業に参画していたかもしれない
そこに自分が入れ、事故に巻き込まれていたかもしれない つまり死んでいたかも知れないのだ

その後私は、その企業とは別の化学会社に結局就職した。同じ化学の世界を歩むことになったもだが命拾いをしたのかも知れない
おかげでこのようなブログも発信できる
運命とはわからないものだ

2020年12月04日

リスクアセスメントの難しさ

事故が起きてから原因と対策を考えるのでは遅すぎる
事故が起こる前に、自分の職場で想定しうる危険源(危険なことや危険な物を)を拾い出し
それがどんな悪いことを引き起こすのかを考えるのがリスクアセスメントだ
横文字のカタカナで書かれているように外国から導入されたものの考えかただ

約70年前くらいまでは、どこの世界も事故が起きてから原因を解析し対策案を考えるが主流だった
1950年代頃には原子力や宇宙産業など巨大産業が始まった
事故が起きたら大変なことになる
この為、危険を評価することが始まった
1970年代日本では化学プラントで沢山の事故が起きた。 この為、HAZOPのような手法の導入を企業が考えるようになった
1980年代くらいからは事故が起こる前に色々なことを考えて対策を打つのが大切だと考えるようになってきた
いわゆるリスクマネージメントという概念が化学産業でも導入されるようになってきた

そうは言っても、隠れている事故の芽を見つけ出すのは容易なことではない
事故や災害を自ら経験することが無くなってきている昨今ではなおさらのことである

過去に起こっている事故事例をかなり学んでいないと潜在的な危険源を想像することは難しいはずだ
化学物質に関するリスクアセスメントは従来は努力義務であったが、労働安全衛生法の法改正で義務化されてきている
事故が起きて、リスクアセスメントが行われていなければ立件されることもある

そうは言っても、事故の芽を拾い上げて、ことの重大性を考え、被害の最小化を図るのを考えていくのは容易ではない
上手に、危険源を拾い上げたり、被害の最小化に何をなすべきかを体系的に考えることができる人材を組織内持っておく必要がある
難解なリスクアセスメントを職場で具体的に展開できる人材がいなければそう簡単にリスクアセスメントが定着できるわけでは無い

リスクアセスメントと言う手法で世の中の企業がものを考えられるようになるのはまだ10年くらいかかりそうだ
リスクアセスメントと言うのは難しい

 

2020年12月01日

繰り返すタンク負圧変形事故

タンクは液の出し入れで絶えず呼吸する
液が流入してくれば、圧力が上がるので内部のガスは放出されるようになっている
液が出ていけば、内部の圧力は減っていくので、負圧になら無いためにはガスを吸い込ませる仕掛けがある

タンクの上部には大気放出管というタンクが呼吸するための部品がある
タンク内の圧力が負圧なって変形したり、圧力が上がりすぎないようにガスを適当に出入りさせる装置だ
この装置があるおかげで、タンクは通常変形することはない
ところが、そこが詰まると圧力が逃げないのでタンクが破裂したり、負圧になり凹むことになる
先日、この種の事故事例の報告書を見つけた。2018年に起こった製油所の潤滑油タンクの凹み事故だ
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/193/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
タンクは、設置してから約半世紀のかなり古いタンクだ
長いこと放出管に設置していた金網の詰まりを点検していなかった為、ある日突然音を立ててタンクが凹み変形した事故だ

事故の報告書を読むと長いこと金網の部分は点検していなかったようだ
材質はステンレスだから腐食したわけではない 貯蔵していた油分から発生する成分が酸化して固化付着していたようだ

なぜ長期間点検しなかったのだろうかと疑問に思うのだが、そこについては報告書は触れていない
石油精製企業であれば、当然放出管の所には金網があるのは承知している
金網が詰まれば、こうなるのは十分わかっているはずだ

ならなぜ点検しなかったのだろうと憶測したくなる
放出管はタンクの中央部にある。そこに人が到達するには、薄いタンクの天板の上を歩かなければならない
万一腐食があればタンクの天板を突き破り人がタンク内に転落するというリスクがある
設置後50年も経過しているタンクなら、当然そのリスクがある
放出管を安全に点検にいけるような丈夫な歩廊が設置されていれば定期的に点検に行かせるのだろうが現実そうでは無いのだろう
タンクの天板はそれほど丈夫ではない 腐食すれば人も落ちる。放出管は点検させたいが転落のリスクがある
日本中の企業が今悩んでいるのではないだろうか

 

2020年11月29日

時代の変化に伴う新たな課題

世の中絶えず変化する 技術も進化すれば 世の中も変わる
十年一昔と言うが、時間が経つと新たな課題が生まれてくる
一生懸命人は課題を解決しようと努力を続けてはいるのだが、人の考え方や要求も常に変わるのでそう簡単に問題は解決しない
私が、生まれたのは1950年代だ
戦争が終わってまだ何年もしないうちに生まれた
小学校は一学年に60名くらいいた。12クラスあるから、一学年で720名にもなる。
それが、6学年分あるから生徒は4000人にもなる 教室に入りきれないからすぐ脇に分校がつくられたくらいだ
人が沢山いた ということは競争社会だった

会社に入ったのは1970年だ 最初はすごく景気が良かった なぜなら1960年代の高度経済成長が続いていたからだ
給料は倍々ゲームのように増えていた でも大量生産が始まり、技術的にも多くの課題を抱えた
しばらくしてオイルショックが起きた 突然石油の値段が倍々ゲームで上がったのだ コスト上昇という大きな課題が出てきた
日本経済は失速した 
1980年の日本は成長が大幅に鈍化する 大量生産から少量多品種生産に世の中大きく変化する
いけいけどんどんの経済成長ではなくなった
1990年代もしかりだ 1989年にバブルがはじけ景気が悪くなる その後労働単価の安い海外へと日本の工場は移転していった
結果として日本に技術が残らなくなったともいえる 日本で人は採用しなくなり、若手への技術伝承も途絶えていった
2000年になっても日本の景気は回復しなかった 結果としてコンプライアンスのような問題も出てきた
日本から少しずつ良心というようなものが無くなり始めた時代だ
この頃、団塊の世代という戦後生まれ企業に就職した人達が大量に企業から退職し始めた
いろんなことを企業で経験した人達だ 人に技術有りという 人がいなくなれば当然技術も企業からなくなる
多能化 省人化などきれい事のような言葉が出始めた
一人の人間に多くのことが要求される時代になった とはいえ、従来の何倍もの収入は得られるわけではない
数十年前に比べものすごく多くのことを要求される時代になってきている
実に多くのことを処理しなければいけないのだ
つまり、時間や仕事の効率を数十年前の数十倍の処理量で処理しなければいけない時代になっている
何十年も生きているとそれを冷静に感じるが、若い人はそれを感じ取るのは難しのだろう
仕事だけではなく教育や技術伝承なども効率良く効果の上がる方向を模索する時代だ

イラスト出典 文部科学省 学校におけるICT環境整備 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249678.htm

 

2020年11月27日

業種の違いがあってもリスクの摘出の基本項目に違いは無い

会社に入って石油化学と言う業種で約40年色々なことを経験した
墜落転落労働災害有り、化学薬品による化学災害も学んだ 
計装や電気を扱ったこともあり、22万Vの電気や4~20MAの微弱電流信号での取り扱いも経験した
制御用コンピューターなどのトラブルや、工場管理コンピューターでのリスクも経験した
退職後、RC監査を委託され実施しているので化学薬品を扱う他社の企業実体や設備概況も自分目で見ることも出来た
今年はプレハブ工法などの建材業も訪問し新たな視点も常に加わってきている
工場部門のみならず研究所も色々訪問し事故の芽を感じることができた
計装、電気工事業界とも色々仕事をさせてもらった

色々な企業が存在するが、基本的に事故ののパターンは業種にかかわらず全て同じだ
事故が起きたときに労働基準監督署に報告する事故のパターンは全ての業種に当てはまる
業種によりその比率が、多少変化するだけだ

製造業でああれば、挟まれ巻き込まれのウエイトが増えるだけだ 
製造業は、機械を多く使う比率が多いのだから機械による巻き込まれ災害が相対的に多くなるわけだ

建設業なら、高い所から落ちるリスクが増え墜落転落に重点を置く必要がある
化学産業であれば化学物質による爆発、火災や破裂という災害に注力する必要がある

災害のパターンは、墜落転落に始まり、転倒、--やけど、有害物による中毒--、火災,爆発、破裂、世の中に存在する。
業種により多少その重み付けは変わる

リスクアセスメントに関してはかなり業種別の情報が経済産業省などから提供されている
上手に自分の業種に関わる情報を入手して欲しい
塗装業なら塗装業、メッキ業ならメッキ業関係、鉱山業なら鉱山業という風にだ
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/risk/tosou04_6_1.html
世の中にある情報をうまく使って、リスクの低減化を図って欲しい

 

2020年11月25日

ヒューマンエラ-の構造解析その2-記憶を伝承する

人には忘れるという、ヒューマンエラーも存在する
なぜ忘れるのかと問われれば人間の脳に関連している
脳は、100億もの細胞でできている
人間の細胞は常に死んでいく 古い細胞が毎日死んでいく 一度死んだ細胞は二度と再生されることはない
古い細胞の中にも、情報は記憶されてる 古い細胞が死んでいけば、当然記憶していたはずの情報も無くなっていく
情報が無くなれば今まで覚えていたものは忘れ去られてしまうのだ

単純に記憶という形だけで考えると、脳細胞が死滅すれば記憶は当然無くなることになる
記憶というものは永遠に残しておくのは難しい

人は言葉というものを持っている
言葉を使って他人に何かを伝えることもできる
とはいえ、言葉というものは狭い空間で伝わるものである
時間が経てば狭い空間で伝わった情報は忘れ去られてしまうことも多い

だから人は、文字というのを発明し文字に残して長期的に情報を残すようにしたのだ
とにかく人は忘れる 忘れても問題が無いように、情報は記録したり、文字に書いてみんなにもわかるように見える化する必要がある

記憶というのは時間が経てば必ず失われていく
きちんと時間か経っても情報を残すにはどうすれば良いか常に考えて欲しい

かけがえのない情報をどう次の世代に残していかは人間に与えられた大事なミッションだ

2020年11月23日

ヒューマンエラ-の構造解析その1-記憶の曖昧さ

人が原因で事故が起こることがある これをヒューマンエラー事故と呼んでいる
原因は様々だ。とはいえきちんと原因を解析していないと、ヒューマンエラーによる事故は根絶が難しい
人間はどんなエラ-を犯すかは、かなりわかってきてはいるものの、それをきちんと理解して対策を打っていないのが現状だ

人間は色々なことを記憶していてそれを活用して仕事をしている
記憶というものは曖昧なものだ。思い出そうとしている時に、「こうだったかもしれない」と安易に思い込み誘導されると、実際はそうでないのに、「そうだと思い込んでしまう」

特に他人から、あれこれ言われると、そうかもしれないと思い込み始める
記憶というのは時間が経てばどんどん曖昧になる 他人から誘導尋問的なことを言われればそうかもしれないと安易に感じてしまう

自分の記憶に頼るだけでなく、現場現物を確認することが大切だと言われているのには、こういったことも関係している
また、重要な判断を下す場合、周りから、記憶を変化させるような余計なこと、誘導尋問的なことは言わないように注意する、といったことも必要なのだろう

人からあれこれ言われると、記憶は更に変化すると言われている
例えば事故が起こったとき事故の関係者にヒアリングするときの、注意が必要だ
一度だけの質問では、関係者の記憶が曖昧だから必ずしも正確な答えが出ているとは限らない
日を開けて何回か質問を繰り返すうちに事故当時の記憶を思い出しかなり正確な答えが出てくる

人間の記憶というものは実に曖昧で不正確なものである
時間が経てば記憶はどんどん変化する
外部からの影響を受けて当然記憶も変化する

記憶というものは絶対的なものでは無いと考えておく必要がある
世の中に絶対的な記憶は存在しないと考えて欲しい

イラスト出典 ピクトグラム無料素材より https://pictogram-free.com/04-relationship/365-image-illust.html

2020年11月21日

電気設備の安全

電気設備の設計や維持管理で事故が起こることがある
電気設備で起こる事故のパターンとしては感電や発熱や短絡による火災事故がある
感電は、電気のSWも切らずに電気設備に触れるから起こる
電気が流れている状態で触れば当然感電する
原因は、電気を知らない素人が手を出すか、ついうっかりでおおもとの電源SWを切り忘れるかだ
100V程度の電圧ならテスターで電圧を測るのはいいが、何万ボルトにもなるとテスターでは安全の保証は無い
知識のない人が電気設備を扱うのは困りものだ

電気のSWにも2種類ある。電流が流れている状態でも安全にSWを作動させられるものもある
電流が流れていると、SWを切ることができないものもある
電気を切るというのはたやすいことではない
電気を切り離そうとすると、電気の性質はいつまでも電流が流れようとする性質がある
それを無理矢理止めて電気を切り離すのだからアークという炎が発生する
炎を消す設備がないとそう簡単にSWを切り離すことはできない

大量に電気が流れると事故になる その為、過電流遮断器という安全装置がある
想定外の大電流が流れると自動的にSWを切る仕掛けになっている
ヒューズという安全装置もある 異常な電気が流れると発熱するので熱で溶けて異常電流を遮断する設備だ

電気は漏電というやっかいなトラブルもある 地絡とも言う
絶縁が落ちて、電気が大地に漏れてしまう現象だ
この現象に対する安全装置として漏電遮断機がある 大地に少しでも電流が漏れればたちどころに検知して電気を遮断する

このように、電気設備が万一故障しても通常は、火災や感電が起こらないように電気設備は設計されている
しかし、設計が正しくなかったり、設計道理安全設備が設置されていなければ事故は起きる
しっかりと電気の専門家も企業の中で保有しておいて欲しい
電気のように見えないものを扱うにはそれなりの知識と技能が必要だ

 

 

2020年11月19日

証券取引所のコンピュータ停止時の記者会見-危機管理好事例

実際に事故が起こってしまったような時を、危機という
事故が起こらないようにするのは、リスク管理だが、事故が起きてしまったときは危機管理をすることになる
まず、事故が起きたら被害を拡大しないようにすることだ 事故は、一定の確率で起こるのは避けられない
問題は、いかに被害の拡大を防げるかだ 小さな事故で済ませられるかは重要な危機管理のポイントだ
関係者への対策も重要だ 官公庁との円滑なコワークも欠かせない
マスコミへの対応も重要な危機管理事項だ 事故が起こったときの対策で情報をどう管理するかも重要だ
現場からの情報を誰に集約させるかだ 集約と同時に、関係する部署への情報展開も必要だから情報の共有化も重要なキーワードだ

この前、日本の証券取引所ののコンピューターが停止し大問題となった
マスコミは、コンピューターシステムを製造した企業が悪いとの対応で取材を進めていた
コンピューターも機械であるから,故障しないわけではないはずなのだが,機械が悪いとの決めつけだった
故障を回避する対策を行っていても100%機械の故障を避けられるわけではない
この時、機械メーカーが対応したときの謝罪会見の情報が公開されている
非常に上手なマスコミ対応だったという
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/2020%E5%B9%B410%E6%9C%8826%E6%97%A5%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%80%80%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%A8%BC%E5%88%B8%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%89%80%E3%81%8C%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0
事故が起きてしまったときのその後の対応に参考となる情報だ
その後の,展開を見るとコンピューターを製造した企業だけに責任を負わせるには無理な状況がわかってきている
証券取引所そのものが,このような事態が起きたときの危機対応をしっかりと考えていなかったことも背景にあったという
機械の故障が原因の事故や災害は必ず起きる
事故や災害は機械だけのせいにしないで欲しい
昨日も海外でも証券取引所のシステムトラブルが起きてているようだ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201116/k10012715021000.html
危機管理、すなわちトラブル発生時の備えをしっかりとして欲しい

 

2020年11月17日

混触危険性について

化学物質には危険なものがある。それは誰でもわかっている
一つ一つの化学物質の危険性はかなりの所までわかっている
SDSなどかなりの情報源で公開もされている

化学物質は混ざると危険という性質も持っている
化学物質は単独で存在すれば安全であっても、何かと混ざると危険なことが起こることがある
発熱、発火、爆発などの現象が起こることもある

これを混触危険性という
一般的な危険性はかなり世の中に伝えられているが、化学物質は何百万種類とある
この組み合わせは、多様にあるからそれを一つ一つ解析するのは多難な技だ

とはいえ基本的な法則はある
例えば過酸化水素など酸化剤と、アルコールなど有機物と接触させてまぜれば爆発的に反応する
酸とアルカリを混ぜればやはり反応する 中和反応で中和熱が発生する 熱は反応を更に加速させる

基本的に混ぜたら危険は、わかっているがその原因をわかりやすく説明する教育資料は少ない
化学は暗記せよで済ませていたらこの問題は解決しない

化学のメカニズムは、一目でわかる教育資料をつくることだ
図や表を上手に使うことも考えて欲しい

 

2020年11月15日

解体工事中の爆発死亡事故-事故調査報告書を読んでみて思うこと

2020年6月17日の私のブログでLiイオン電池の部品を製造する工場で解体工事中爆発が起きたという情報を提供した
2020年6月10に解体していた工事作業員が爆風で吹き飛ばされ2時間後に死亡したという災害だ
事故から約5ヶ月が経過した数日前に,この事故の原因が書かれた事故報告書が企業から公開されていた
https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2020/ip4ep30000001s4r-att/ze201028.pdf
報告書から抜粋される事故の原因をまとめるとこうなのだろう
爆発した容器は、製品を洗浄する為のもので中に危険物である有機溶剤を入れ使用していた
ステンレス製の細長い浴槽のような容器だ。温水で暖めるジャケットと呼ばれる部分が槽の周囲に存在した
槽の中央部には、四角い密閉された空間が存在した 本来、その空間内には危険物も入らないはずであった
しかし、温水が金属を腐食して四角い密閉された空間に入り込んだ。たまった温水は、さらに危険物との仕切りをしていた金属板を腐食させ穴が開いた。穴が開いたことにより、結果として四角い密閉された空間に危険物である有機溶剤が入り込んでしまった
しかし、だれもそのことに気づいてはいなかった 2019年9月に装置は使わなくなったので、液を抜き,付属する配管類も取り外し安全な状態にした。2020年4月から徐々に撤去工事を始めた
2020年6月10日の事故当日朝から装置溶断しながら解体撤去を始めた
装置の中央部にある事故の原因となった四角い密閉された部分の溶断作業を始めたときその部分が爆発し作業者が吹き飛ばされた
火を使って容器などを溶断していれば当然有機溶剤は暖められ爆発混合気をつくっていたはずだ
そこに生の火が入れば爆発することになる 容器を切断していて爆発死亡事故というのは繰り返し起こっている
今回の事故要因のキーワードは空洞部(中空部)だ。まさかそこに危険物が入り込んでいたとは想定していなかったのだろう
中空部だと認識していれば、いきなり火を入れなかったもしれない ドリルで小さな穴を開けるか、電動のこぎりで小さな切り込みを入れガス検知をしていただろう
教訓は,ジャケット付きなど2重構造の設備を溶断するときはジャケット部にも切り込みを入れガスの存在を確認せよと言うことだ
残念な事故ではあるが、貴重な事故の要因と教訓を企業が公開してくれたことに感謝したい

 

 

2020年11月13日

変更管理の概念はいつ頃から現れたのか

変更管理という概念がいつ頃から出てきたのかと聞かれることがある
変化や変更をキーワードに安全性の評価をするのが変更管理だ

産業界の歴史を見ると、巨大産業である原子力や宇宙産業が始まったのは1950年代だ。今から70年前だ
事故が起これば取り返しのつかないことになる
原子力や宇宙産業はとんでもないお金が投入される産業だ 国家予算のかなりの金額が投入された
その時代は、戦争が終わって民間経済の立て直しが急務だった
原子力や宇宙産業を振興させることで経済の活性化を図ったのだ

原子力のような巨大産業になればなるほどリスクも高い 事故が起こればとんでもないことになる
当然、事故を起こさないようなことが画策された
つまり、安全性を論理的に評価する、評価手法が開発され導入されることになる
当初は安全性解析と言うより、故障解析手法が開発された 故障が事故につながるからだ
故障と事故との因果関係を理論的に解析する手法が進化していった
フォルトツリー解析(FTA)や、イベントツリー解析(ETA)だ
https://embeddedsoftwaremanufactory.blogspot.com/2012/10/iso-26262-14-ftafmea.html

その後、石油を原料にした石油化学産業が登場してくる 石油は可燃物で、火災や爆発事故になることもある
1950年代後半からコンビナートという巨大な産業形態も現れてくる
日本では1970~1980年代にかけ社会に影響を与える石油化学産業による事故が多発した
この結果、事故を未然に防止するために、システマチックに事故防止を考える文化が芽生え始めた

海外では、1990年頃アメリカにPSM(プロセスセーフテイマネージメント)という概念が芽生え始めた
http://www.osakasys.com/Library_Files/keiso_201404_PSM.pdf
この中の管理項目の一つとして、変更管理という概念がでてきている
何かが変化すれば、そこに事故の芽が生じるという考え方だ
変化を管理することが事故防止にもつながるというのが変更管理の考え方だ
変化が事故につながると常に思って欲しい

2020年11月11日

安全という言葉の妄想

安全という言葉がある 安全とは何なのだろうかを考えたことはあるのだろうか
安全というものがそもそも身の回りにいつも存在するのだろうか

世の中危険なことだらけだ 交通事故もある 犯罪もある
身の回りにあるのは危険なことが本質的に存在する

交通事故を防ぐため、犯罪から身を守るためにも努力が必要だ
何もしなくてそれらから逃れることは難しいのだろう
努力することによって、その障害をなんとか防げるのかもしれない
それを安全な状態と言っているのかもしれない

安全とは危険をひっくり返したものだろうか
危険の裏側に存在するのが安全なのだろうか
簡単にひっくり返るものなのかどうかだ

やはり世の中に多く存在するのは、危険なのだろう
危険という環境の中からわずかに取り出せるのが安全なのだろう
しかし,人間は痛い目に遭わないと危険というものは感じない
事故や災害は他人事と思うからだ
一度事故や災害を経験して危険を身近に感じた人は強くなる かしこくもなる
失敗から教訓を学んだからだ

安全にはお金もかかる たゆまざる努力もいるのだろう
安全を勝ち取る熱意や手法も必要だ
安全という言葉の意味を常に考え続けなければいけないのだろう

2020年11月09日

安全はコストか投資か

安全にはお金が必要だ 誰でもそれはわかっている
ではいくらお金をかければいいのだろうか 目安があるのだろうか
保険というのがある 火災保険なら、火災が起きる確率はわかっている 
だから保険会社は、確率から計算して損をしない程度の保険料率を定める
自賠責という交通事故の保険も同じだ 自動車事故が起きる確率はわかっているからだ

化学プラントも火災や爆発事故の発生確率は長い歴史の間でわかっている
だから保険会社もそれをベースに火災保険料を策定する

平均値としてのデーターはわかっているが
ある固有の企業の事故の発生確率は、一桁くらいにずれはあるはずだ
事故をよく起こす企業もある めったに事故を起こさない企業もある
それは、企業の安全基盤や安全風土に関係する

では、事故を防止する為にいくらお金をかければいいのかというとそう簡単には算出できない
今までかけてきたお金を基準にすればコストという考え方になる
事故を起こさない先行投資という考えにたてばこれは投資になる

企業利益の何%を投資すれば常に事故を防げるのかというとそれも答えは無い
人に投資すればいいわけでもない 安全設備などハード的な投資も必要だ
ソフトとハードの投資比率も難しい
人に技術有りだから、人すなわちソフトにも投資しないと事故を防ぐのは難しい
私の個人的考え方だが、消費税の利率程度は必要かもしれない 仕事をしている中で常に最低約1割程度安全のことを考えておく必要があるという意味だ

安全への投資は決して減ることは無いはずだ 技術は高度化するし、人への負担も増えるからだ
企業はしっかりと収益を得て安全にも投資して欲しい

2020年11月07日

組織の硬直化を防げ-多様な価値観

組織とは何かだ 人一人のできることは限られている
だから人は集まって何かをする 会社形態になるか、チームになるかだ
人は生きていると色々なことを考える こつこつ自分なりに色々やれば良いと考える

しかし、今の経済がまわっているのは個人プレーではない
人それぞれ様々な能力を持っている 個人毎にはたいしたことは無くても、みんな集まるとかなりのものになる
安全に関してもしかりだ 一人でできることは限られている チームで動けばかなりのことができる
なぜチームで動くといいのかというと人は多様性があるからだ
みんな違うことを考える 同じことを考える人が10人集まってもそれは、一人と同じだ
ところが、10人考え方が違えばそれは10人の集まりだ
同じように、1000人違う考え方の人が集まれば、1000人の力となる

企業の中に長いこといると皆が同じ考え方になってしまう。考え方は同化し変化を受け付けなくなる
世の中絶えず変化している それに対応しなければ企業も成り立たない

大企業でも生き残っているのは変化に対応してきているからだ
最近の企業を見ると結構転職組が多い 中途採用者がかなり企業の中にも入っている
仕事柄、企業監査などで多くの人に会うが、中途採用の人と会う機会も多い
これらの人は前職で得た知識や文化風土がうまく生きている気がする
終身雇用制の時代では無くなってきている

多様な価値観を持つ人が求められている
私も多くの企業とつきあいながら多様な価値観を持つようにしたい

2020年11月03日

化学プラントが運転できるのは自動制御のおかげだ

現代は巨大なコンビナートも、運転操作している人は実に少ない
何十万m2の広大な敷地を誇る化学工場でも、夜間運転に携わるひとは工場全体でも数百人もいない
私が化学工場に勤めていた頃の現役時代は工場にまだまだ沢山人がいた
今から半世紀前の1970年代だ
1970年代には電気式の調節計で化学工場が自動化されて運転されていたがまだ2倍近く人がいた気がする

日本でコンビナートができたのは、1950年代後半だ その頃は、今の何倍もの人が化学工場にいた
なぜなら、完全自動制御ではないからだ
計器室に全て情報が集まるわけではない 現場型の空気式調節計で運転されていた
空気というのは、計器信号を遠くへは伝送できない
絶えず、現場に出向き温度や圧力がうまく制御されているか確認しなければいけない作業が沢山あった
つまり監視には多くの人が必要だった 現場もそれほど自動化されず人による操作も多かった

いまでこそ、自動制御というのは当たり前だがたかだか約半世紀前は人海戦術だ
つまり、人が少しうっかりするとトラブルが起こり事故につながる
そんな世界があたり前だった

ところが、1960年代にあっというまに状況は変わった トランジスターを使った自動調節計が使われるようになったからだ
1968年に確か当時の徳山にあった製油所で、電子式パネル調節計が使われるようになった
計器室で居ながらにして指示も見れるし、調節もできるようになったのだ
電気で動き、しかも現場に出向くことなく計器室で自動制御できる装置が世の中に出始めたのだ
電気式自動調節計だ

自動調節というのは、すごい世界だ 人間の仕事を画期的に減らしてくれた言ってもいいのだろう
これからも進化を続けていくのだろう

 

2020年11月01日

常に安全診断することの大切さ

企業の事故防止には安全診断というようなものが行われる
社内メンバ-がテーマを決めて行われることもある
社外の専門家が安全診断を行うこともある
どんなテーマを決めて診断するかも大切だ 今課題としていることに的を絞った方が有効なこともある 
そうはいっても、目先の診断では長期的な安全の確保ができるとは限らない

昔勤めていた化学企業では、40年くらい前には取締役クラスの企業幹部が工場を周り特定のテーマを決めて工場監査を実施していた
私もその監査のたびに色々調べ資料を作っていた 資料を作りながら、考えることにより職場の問題点に気づいたものだ
今思い出すと、定期的な工場監査というものは、ものすごい事故防止には有効な手段だった
自分の製造設備の安全というのは、わかっているようであんがいわかっていないと気づいたのもその頃だった
原点に立ち戻り色々なことを調べて事故防止策を考えていた

その後企業も、その作業量の多さを鑑みたのか、安全監査をあるときに止めてしまった
今から23年前だ。それから15年ほどして大きな事故が起きた 死亡事故だ 若い運転員が亡くなった
過酸化物というかなり危ない物質を製造する装置だ

その事故の背景には工場の蒸気供給の信頼性の低下や、プロセスの変更管理の問題点もある
今となっては検証できないが、もし安全監査を企業が継続して続けていたら防げた事故だと感じている
それを見抜く実力のある幹部スタッフは十分に企業にはいたはずだ
安全にいかに経営が関与することが、求められている
安全は上位下達ではない 権限の安易な委譲でも無い
危機を共有することなのだろう 幹部も現場の管理者も自ら考える時間をつくってあげることだ
今となっては安全監査を止めたから事故が起きたのかはわからないが、安全監査やっていれば起きなかったかもしれないと私は思っている

 

 

2020年10月30日

事故は他人事ではない

長い間事故が無いと企業は安全だと思い込んでしまう
経営者も、管理者も、現場で働く従業員も皆そうだ

事故が無ければ安全と考えるのは当たり前のかもしれないが、たまたま事故が起きなかっただけである
事故の芽は常に企業の中にある
老朽化などは典型的な例だ。新設の機械は事故は起きないが、やはり時間が経てば機械は壊れて事故を起こす
ベテランが退職していけば、組織の実力は落ちる 技術伝承はしていると思っても、全ての技術は伝承できない
文書化できないこともある いわゆる、文字に書けない暗黙値といわれる技術や技能は沢山ある

技術や技能は人が退職すれば失われていくものは多い
人に技術有りだからだ

企業は成長して存在意義がある 成長をつかさどった人は常に年を取り退職していく
ベテランがいなくなれば企業の技術力や安全力も低下する
事故が起こるのはそれに気づかないからだ
いままで大丈夫だったは通用しない 企業の安全を守るにはかなりの努力がいる

事故が起きるのは、企業への警鐘だ そろそろ手を打ちなさいと警鐘しているのだ
自分たちでなんとしようと思うのは大切だが、スピードが大切だ
世の中に色々な技術を持っている人は沢山いる
その人達の力を借りることだ
いわゆる安全のプロの力を借りて早く問題を解決することが企業の存続につながるのだろう

2020年10月28日

建屋内の工場火災に思う-事故発生時の広報

先日宮崎県の延岡という所で半導体関連の工場で火災が起きた 建屋内火災で数日間燃え続けた
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_48297.html
建屋の中で火災が起こると消火は難しい 中への突入消火は難しいからだ 大量の黒煙が発生し、熱風が屋内に大量に滞留するからだ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/63328/
地元住民などへの説明もうまくいっていなかったようだ
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_48352.html
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_48361.html

工場では色々な化学物質を扱う 火災が起きれば電気ケーブルなども焼ける 材質によっては塩素ガスなども発生する
火災の煙には色々な成分が入り込む 半導体工場には、発火性のガスもある 今回は、シランという爆発性の物質もあったようだ
シランというのは過去にも火災や爆発を起こしている その情報も不安を与えたのかもしれない
https://togetter.com/li/642732
この企業は、約20年前の2002年にも別の工場ではあるが延岡で火災が起きている
このときも長時間燃えた 9,000人以上の避難勧告が出て,工場は20時間以上燃え続けた。
その後,操業再開まで1年間かかっている とはいえこの時の広報などの対応は高い評価を得ていたらしい
https://rmcaj.net/www/_rmca/cramschool/rm_lab/029/140701_8.html

当時ははまだ、団塊の世代と言われる事故を色々経験した人達が企業には沢山いた
それらも、功を奏したのかもしれないが、あれから20年事故対応を経験した人はみんな退職してもう企業にはいない

事故発生時の広報や危機管理は難しい 常日頃からの地元との連携も大切だ 
最近建屋内の工場火災も増えている気がする 事故を想定しての、危機管理対策を練っておくことも大切だ
今回の事故で気になったのは、事故が起きたのは大手化学企業の関係会社だ 本体工場では無い
本来なら関係会社の事故で済まそうと考えていたのだろうか  そこが本体側の動きに20年前とは違いがあったのかもしれない
経営上の関係会社の立ち位置と、事故が起こったときの位置付けは違うと考えなければいけないのだろう
本当のところはよくわからないが、そんなことを思わせる火災事故である

イラスト出典は、イラストポップ無料提供サイトより

 

2020年10月26日

web講義ソフト-ソフトにより得手不得手がある-動画を使うなら選定時評価せよ

コロナが始まり一気にWebという世界が始まった
自宅にいながら仕事をするという世界だ
今までは、対面型の講義や講演をしていたのにそれが難しい状況も生じてきたからだ
これも避けられないと思い、自宅の通信回線をADSLから光回線に切り替えた
ものすごい進歩だ 音声が途切れることもなくなった ビデオ映像の途切れもない
今年の6月頃には、光通信の環境は不可欠だと感じた 6月には我が家は光通信環境になった
そのころから、Web講義の対応が始まった
まず最初に使ったのが、Zoomだった パワポや音声での講義は全く問題は無かった
ところが、私の講義はパワポの中にハイパーリンクという機能を使って動画を織り込んでいるのでZoomでは円滑にいかなかった
動画を流す毎に、動画の画像の共有操作を繰り返ししなければ対応できなかった
あきらめて、結局Zoomでは動画を見せるのをやめた

9月になり、今度はTeemsというWebソフトをして講義をする機会があった
Zoomと違い、すんなりと動画は何もせず見せられるようになったのだが、あいにくたまに音が出ない現象が起こる
動画の音声が、何もしないと出ないのだ。Webシステムの基本設定がそうなっているらしい
音が出ないたびに、システムの音声を使うという操作ボタンをクリックしなければならなかった

その後、今度はWebEXというWebソフトを使う仕事があった
何もせず、パワーポイントに埋め込んだ動画が何も操作せず円滑に使えることを確認した

最近は、又別のWebソフトで仕事をした 海外に多く支店を持つ企業らしくソフトは英語版だった

いろいろなWebソフトがある 単に、パワポなどを見せて音声を使うだけならどのソフトとも同じなのだろう
しかし、動画を使うなどのプレゼンテーションがあるなら一律どれもwebソフトは同じ対応はしてくれない
テストして最適なソフトを選ぶことだ

イラスト出典 いらすとやフリー素材より

 

 

2020年10月24日

災害防止-安全への投資を怠るな

国が考えている労災防止計画を知っていますか。第13次労働災害防止計画(2018年度~2022年度)というのがあります
厚生労働省からこのような基本計画が打ち出されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197309.html
労働者の高齢化という問題も提起しています。高齢化という問題も直視せざるを得ない状況です。
体力に衰えによる転倒労災の増加も見逃せません。 しかし、若いから大丈夫かと言えばそうではありません
つまずき転倒などは、若くても起こる災害です

正規非正規という問題も顕在化してきています。給与とモチベーションは直結します。
協力会社員だからといって、協力会社だけにに教育を任せていては、スキルの向上は見込めません
時には、発注者自らくさびを入れることも必要です 全て協力会社任せにしていれば労働災害いつか起こります
常に危険なことがあると考え自ら協力会社を含めて律することが大切です

安全はコストです。質が高いものを望めばそれなりの金額を払わなければなりません。
しかし、競争引き合いが行われる昨今、安かろう悪かろうが現実化しているのは事実です。

メンタルの問題も顕在化しています。心の病も労働災害に波及してきます
転倒が増えています。高齢化が関係するかもしれません。筋力が落ちていくのに気づかないのです

無理な動作という事故も増えています.腰や肩を痛めたなど無理な動作です。
安全ベルトの法規制が変わりました。でも、数メートルから落ちるのは新しい法規制での安全ベルトではなかなかカバーできません。
安全を確保するのは労働者本人です。事故は他人事と思っている限り、事故からは逃れられません。
自分の命は自分で守れです。されど、安全にはお金がかかります。

企業がしっかりと安全にお金をかけることが安全への基本です。
とはいえやみくもにお金をかけるのではなく、何が問題かは他人に見てもらうことです
長い間、同じ環境にいた人が問題点を見つけ出すのは難しいのです
時には、安全のプロに見てもらうのも必要な時代です

 

2020年10月20日

電気火災におもう

電気設備が原因で事故が起こることがある
事故の原因は、様々だが接触不良と老朽劣化が多い
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/29/8/29_612/_pdf/-char/ja
電気は電線を伝って流れる つまりどこかで、電気装置と電線とつながる部分がある
そのつながる部分、いわゆる接続部に接触不良があると熱を持つ
温度が上がってしまうと、電線を包んでいる樹脂製の部分が溶けて燃えだしてしまう
電線の被覆は、難燃性のものもあるがコストが高いのでどうしても安い難燃性を持たないものが多用される
電線に火がつくと、最初はくすぶりながら周りに熱が広がっていく
そのうち、あっという間に周辺の電線に火がつき広がっていく
電線に油などが付着していると速いスピードで火災が進展する

電線を床の下にはわせる方式では、このケーブルダクトの中を見てみれば管理状態がわかる
2002年に宮崎県で工場の大きな電気火災事故が起きている
https://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile/NCODE/10610
当時の安全担当者に聞いたことがあるが、工場の人達は、まさかケーブルが燃えるとは思っていなかったというコメントがある
大きな間違いだ ケーブルが燃えると相当な発熱量がある しかも、延焼する
プラスチックやゴムの燃焼熱量は、ガソリンの燃焼とさほど変わらないからだ

時間が経ってからケーブルの接触不良が起こることもある
新設時のねじの締め付け忘れや、締め付けのもれが時間が経ってから問題を起こす
1970年代に会社に入った頃は良くケーブルの増し締め作業を定修時にしていたのを覚えている

老朽化が原因のケースは、20年~30年経過した電源設備だ
私のブログでも何回か電気設備の老朽化の話をしているので検索してみるといい

ネズミなどがケーブルダクトに侵入して事故になることもある
ケーブルをかじるからだ ネズミ対策もしっかりと必要だ

 

2020年10月18日

熱交換器の爆発事故

28年前の今日1992/10/16日千葉県の石油精製会社で爆発事故があった
熱交換器の蓋が外れ、10名もの死者が出た事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011018.html
http://www.sydrose.com/case100/310/
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-34/hor1-34-21-1-0.htm

反応器は危険と思う人は多いが、熱交換器は危険と思う人は少ない
だから、とんでもない事故が起こることがある
ねじ込んでチャンネルカバーを固定する方式の外国製の熱交換器で爆発事故は起きた
ネジ部が外れ、チャンネルカバーが吹き飛び内部の高温の油が外に噴き出し人に降りかかったのだ
ネジというのは焼き付きやすい 焼き付くと外れにくくなる
焼き付きを防ぐには、ねじの頭を少しずつ削り、焼き付きを減らすことをする
これを繰り返すと焼き付きはなくなるが。ネジ部を削るのでかみ合わせ部が減りネジ部が外れやすくなる
あるとき、このネジ部が外れ熱交換器の蓋が吹き飛んだ
温度は数百℃もあるから大量の油が近くにいた人に吹きかけた
この結果、10名の人が命を失った

熱交換器の事故は繰り返し起こっている
最近では、2014年1月9日 三重県四日市で起きた事故もある 5人が亡くなり、13名が負傷している
https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/pdf/14-0612a.pdf
たかが熱交換器と思わないで欲しい
化学物質が内部にあれば吹きだしてきて火災や爆発することもあるのだ

反応器だけが爆発するわけではない
化学物質が入った装置であれば,爆発することもあると考えて欲しい

 

 

2020年10月16日

保温をしてはいけない場所について技術伝承をしているか

化学プラントで、温度が高いとことは保温するというのは当たりまえの考え方だ
熱を逃がせば省エネの観点から損をするというのが今の一般的な考え方だからだ

省エネという考え方が一気に始まったのは,1970年代初めの頃だ
石油の値段が急速に上がり、エネルギーコストが急激に上がった時代だ
1年間で石油の値段が2倍にもなる異常事態が起きた時代だ

当然,熱を逃がさないように保温と言うことが徹底的に行われた
省エネの観点ではいいことではある

ところが、金属というのは保温で温度が上がり過ぎると金属の性能上持たない部分もある
つまり、あえて保温をせず温度を過剰に上げないという場所もあるということだ

放熱によりある温度以上上がらないように意図的に保温をしない箇所もある
それがきちんと組織内で技術伝承されていれば良いのだがときにはうまくいかないこともある
保温材のやり替えなどをしていて,本来保温をしてはいけない箇所に誤って保温することにより事故が起こることがある
こんな事故事例があるので紹介しておく
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2008-625.pdf
この事故は氷山の一角だ 同じような事故は繰り返し起きている

ボイラーや加熱炉など高温の設備を扱う工場では,保温をしてはいけない場所もあると言うことをきちんと技術伝承して欲しい
省エネが全てでは無いということも伝えて欲しい

金属は熱に敏感なことも教えて欲しい 温度が上がりすぎると金属はもろくなるからだ

 

2020年10月14日

事故や災害に思う-過去の災害に学べ

報道はされなくても多くの事故が起こっている
年間何万件もの事故や災害は起こるのだがほとんど報道されることはない
化学プラントで事故が起こるのは、危険が存在するからだ。
危険源は、目の前にあっても、知識や経験の度合いでそれが見えるか見えないかが決まる。

日本では、1950年代後半から1960年代にかけて石油化学コンビナートが動き始めた
石油化学というのは新しい産業だからトラブルや事故が多発した
その後装置も大型化、複雑化していくことで事故も増えていった 人が技術について行けなかったのだ
1970年代に入ると事故が多発した 
つまり、1970年代に入社した、団塊の世代と呼ばれる人達は多くのヒヤリハットやいくつかの事故や災害を経験しながら育った。
自ら色々なことを数多く経験したことで、危険源を実感し目の前にある危険源に対応することが出来た。

2007年頃より、事故やトラブルを数多く経験した世代が60才になり大量に退職を始めた。
それでも、その頃出来た再雇用制度により5年間の定年延長などにより、2012年頃まで団塊の世代が企業に残っていた。

時を同じくして、2011年~2012年にかけて化学プラントで重大な事故が、半年ごとに起きていた。
その後も、化学産業だけではなく鉄鋼業界などでも事故が起こっている。 鉄鋼業界でも,団塊の世代が退職していったからだ
事故報告書を見ると、少なからず団塊の世代の退職が影響しているようにも感じる。
失敗という経験が技術伝承にも大きな役割を果たしているのだろう

私も1970年代前半に入社して、多くの経験をさせてもらったひとりだ。
多くの事故は、過去の事故事例からの教訓を知っていれば防げたのだろうと感る。
このブログを通じて私の知っていることをこれからも伝えていきたい。

 

2020年10月12日

安全担当者の悩み-保安力を高めるために-リスクアセスメント

保安力という言葉がある。事故を未然に防ぐ企業や組織が持つ力量を表すのに使われることがある
保安力の構成要素には色々なものがある

最近取り上げられているのは、リスクアセスメントの能力だ
リスクアセスメントをやっても事故を未然に防げ無ければ、リスクアセスメントをやっていることにはならない
そうは言っても、世の中にはあらゆるリスクがある それを的確に拾い上げられなければ、リスクは見落とされる

リスクの拾い出しは広く浅くもあるが、時には深掘りも必要だ この深掘りの要素も落としてはいけない
アセスメントの対象は、化学プロセスそのものもある。爆発や火災などの化学災害の防止だ
もう一つは、現場の、作業工程の人による作業のリスクアセスメントも大切だ。労働災害防止には不可欠だ

リスクアセスメントは時間がかかる、長期的な計画を立て、危険度の高いものから実施していくことだ
企業にはこの長期的という観点が常に必要だ。しかも重要度に応じてが大切だ

化学企業で重要度を格付けて物事を考えるようになったのは、1970年代後半だと記憶している
機械や計器の点検周期を決めていくときに重要度格付けというものの考え方が導入された

やみくもに装置を点検するのではなく、重要度の高いものは短い点検周期、低いものは長い点検周期で点検を実施する
重要なものは早く悪いところを見つけ出し、安全を確保しようという考え方だ

この考え方は、保全計画を立てるときに有効な武器となった
1979年に日本では、PC-8001というパソコンが販売された 
このコンピューターを使って当時の上司が、コンピュータで点検計画を立てていた
当時のコンピューターの処理能力はまだまだで、石油化学プラントの点検計画を立てるのに数日かかっていたのを覚えている
重要度を格付けするというのはリスクアセスメントの基本だ
常に重要なものを優先して考えていくことだ とはいえ、時には格付けの見直しも必要だ
常に、運転条件や原材料などお変化しているからだ 変更管理も必要だ

2020年10月10日

化学物質を保管する倉庫火災-環境汚染

化学物質を保管する倉庫で火災が起これば当然消火することになる
消火には水が使われる 化学物質が水に溶けたりすれば、消火用水に混ざる
流れ出た消火用水をそのままにしておけば、下水や河川に流れ込むことないなる
河川に化学物質が流れ込めば、そこに住む魚などの生き物に影響を与える
1986年にスイスで、重大な環境汚染を引き起こした倉庫火災が起こっている 
化学薬品の混ざった消火水が近くのライン川に流れた事故だ 川に沿ったヨーロッパの各国に被害を及ぼした
倉庫を保管する企業は、約100億円の損害賠償などを払ったそうだ
事故の保険金から払われたと言うが、たかが倉庫火災とは思われない金額だ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/26/6/26_355/_pdf/-char/ja
日本で起こった倉庫爆発火災事故で、過去最大の事故を紹介しておく
東京品川で起きたものだ。消火活動中の消防士が19名死亡し、重軽傷者117人を出す大惨事だ。
今から半世紀前の、1964年の夏に起きた事故だ。東京オリンピックの年でもある。
屋外に野積みしていた過酸化物による爆発事故だ。しかも違法に大量に保管していた。
危険なものが大量に保管されているという情報も、消防側に伝わらなかったために多くの人が爆発に巻き込まれた。
事故後消防の立ち入り権限が強化されるなどの法改正も行われている。貴重な倉庫事故の教訓だ。
以下のホームページに資料があるので見て欲しい。http://www.sydrose.com/case100/303/
以下のホームページでは、雑誌近代消防の記事の一部を読むことが出来る。
http://www.ff-inc.co.jp/syuppan/zassi/PDF/syobo14_07A.pdf
川のすぐそばの倉庫で、消火用水が川に流れ出たかもしれないがその情報は文献などには載っていない
1960年代はまだ環境汚染という問題には注目していなかったからだろう
倉庫火災は、単なる復旧だけの保険ではなく、環境汚染なども含め検討しておく必要もある

 

2020年10月08日

インターロックが原因で事故が起こることがある

インターロックという安全装置がある 安全を守るための鍵のようなものだ
事故を起こさないための歯止めの一つだ

安全装置だから事故は起きないかと言えば、そうでは無い
事故は、インターロックを何らかの理由で解除したときに起こる

頻度は少ないが電気部品の故障や、配線の間違いで起こることもある
1975年に徳山の化学工場で電気リレーの配線が外れていてインターロックが作動しなかった事例が報告されている
インターロックをバイパスして5年間元に戻すのを忘れていて爆発した事故事例もある
1987年にイギリスで起きた事故だ

試運転時などで、一時的に解除して起こることも多い
試運転中装置が誤作動などで停まっては困ると思い安易に、インターロックを解除したときだ
最近の事故事例では、2012年4月22日に起きた反応器の事故だ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2012/pdf/120829_02.pdf
1994年に川崎でタービン試運転中インターロックをバイパスし異常回転で爆発している
1996年に千葉県の火力発電所でボイラー試運転中インターロック要素の一部をバイパスし2人が死亡する事故も起きている
海外の原発事故だが、アメリカのスリーマイル島事故や、ロシアのチェルノブイリ事故も安易にインターロックを解除して
試運転で起きた事故だ

もう一つは、高圧ガスの認定設備などで運転中のインターロックを解除していたときにも事故が起こることがある
2005年に運転中のインターロック検査時にこのような爆発事故が起きている
人為的なミスがいくつか重なって起きている事故だが案外この事故は知られていない
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2005-335.pdf
その後、運転中のインターロック検査時の事故は起きていないのかと思ったらやはり事故は起きていた
2018年9月26日に大阪の製油所で加熱炉のインターロック検査中に起きた爆発事故だ
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/191/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
インターロックが原因で思わぬ事故が起こることがあるということも忘れないで欲しい

 

 

 

2020年10月05日

東京証券取引所のコンピューターが1日停止で思うこと-機械は故障する

10/1朝から株の取引ができなくなったという 証券取引所のコンピューターが故障したからだ
すぐに復旧はできず、取引ができたのは翌日だ 結局まる一日復旧できなかった
報道によると、コンピューターをバックアップする切替え部が正常に作動しなかったという
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64462740R01C20A0I00000/

化学プラントも、DCSと呼ばれるコンピューターによって運転され始めたのは今から40年前だ
私も、1970年代後半に当時売り出された最新式のDCSで化学プラントを建設した
しかし、当時はまだDCSには完全自動のバックアップシステムは装備されていなかった
中央演算装置と呼ばれる心臓部が故障すれば、一度に32の制御ループが停止することになる
修理するまで、化学プラントの運転は停止することになる
この為、安全に停止する為のインターロックを設置した
停止時間が短ければ、手動でも運転できるよう手動コントローラーも併設した
当時は手動でも運転できる運転員が多くいたからそのようなことも可能だった

1980年代に入ると、故障が起こると自動的に正常な装置側に切り替わるバックアップ機能がDCSにもついた
それでも、切り替え装置の故障はゼロとはいかなかった
いくら、装置の2重化、3重化を進めても最後は、切り替え装置がうまく作動してくれなければ自動的には切り替わらない
切り替わらない理由は、電気部品の故障などのハードが原因のこともある。ソフトウエアーのバグかもしれない
ハードは、自己診断機能などで信頼性は増してきた。ソフトは、色々試運転をしてバグはつぶすがなかなか難しい
結局冗長化しても、最後は「切替え部」の信頼性にかかっている
機械である限り、故障をゼロにするのは難しい。 ソフトウエアーとて人が作るものだからミスがないとは言えない

バックアップシステムがあるから大丈夫だと安易に考えないで欲しい
機械である限り故障はする 故障したときどう、軟着陸させるかだ
システムが巨大化すればするほど、そこの部分はしっかりと考えておく必要がある

 

2020年10月03日

電気設備の寿命-老朽劣化

工場などで使う電気設備にも寿命がある
家庭用の電気設備なら、故障しても大きな影響を与えないかもしれないが工場設備はそうはいかない
電気設備が故障すれば火花が出て発火火災になることもある
https://www.sdh.or.jp/information/casestudy/electric_accident/56.html
https://www.safety-kinki.meti.go.jp/denryoku/2019accident/denki_jiko_2019fy.html
電気設備は、20年経過頃からトラブルが頻発し始める
30年を超えるともう末期段階だ
でもそう考えてくれる人は少ない まだ大丈夫だと考える人が多いが、電気設備の故障はいきなり来る
突然発火したり、漏電したりする

企業監査で、私は電気設備更新計画をよく聞くようにしている
電気の更新計画がしっかりしている企業は突然の電気設備の発火リスクは少ない

電気設備は持って30年という考え方を持っている人は少ない
私が元勤めていた企業は電気火災は少なかった

電気のスペシャリストが企業の経営幹部になっていたからだ
技術系の経営幹部は機械系が多い 機械の老朽劣化には強いが、電気や計装の知識はうとい

電気や計装は目に見えない信号や電気パワーを扱う 目に見えない物をどう安全に扱うかが計装や電気エンジニアーに求められている

この目に見えない物をいかにリスクヘッジするかは大事な要素だ
電気設備の長期的な更新計画を立てて欲しい
20~30年計画の長期管理が必要だ
エネルギや計装信号など目に見えない物を扱う機器の寿命をしっかりと考えて欲しい

 

 

2020年10月01日

化学繊維会社の火災事故に思う-建屋内火災で初期消火

食品包装などのフイルムを製造する化学会社で火災が起きた
消火しようとしていた社員の方が亡くなったというニュース記事を目にした 悲しいことだ
https://www.chunichi.co.jp/article/128191
火災を拡大させまいと何とかしようとしてくれたのだろうが、一酸化炭素中毒になったらしい
初期消火しようとした係長と、班長が命を落としたという
https://www.chunichi.co.jp/article/127961
いずれも管理者という立場だ 何とかしようという思いだったのだろうが結果は残念なことになった
プラスチック製の食品フィルムを製造する機械からの出火という
火災で怖いのは、周りの空気を大量に消費すると言うことだ
開放された屋外の火災なら、周りに空気がある
ところが、建屋で閉め切られた工場内であれば屋内で火災が起これば空気の供給は十分でははない
つまり、空気が不足すれば不完全燃焼が起こる
不完全燃焼が続けば、二酸化炭素や一酸化炭素が発生し、中毒になる恐れがある
今回は、このような状態になった可能性がある 屋内での火災は、一酸化炭素中毒や酸欠の恐れがあるということだ
初期消火での不幸な災害だ

この企業では、2年前にも別の工場で大きな火災が起きている
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/796595
この時は、幸い負傷者は出なかったがかなりの大火災だ
この時の事故報告書は公表されていないが、事故の教訓はどう展開されていたのだろう

今回の事故は、調査が終わったら事故の報告書は公表して欲しい 同じような災害で被害を出さないためだ
今後事故報告書が出てきたら教訓にしたい
事故で管理職が命を落とすことは多い 何とかしようと思う気持ちが強いからだ
企業にとってありがたいことではあるが、勇気をもって逃げることも、教育して欲しい
設備は復旧できるが、失った命を取り戻すことはできない
人の背丈ほどの高さを炎が超えれば初期消火は難しい 逃げるという判断基準は明確にして欲しい

 

 

2020年09月29日

経営と安全-経営者の目線で説明できる安全担当者

安全投資をいくらにするか悩むところである
利益の何%投資すれば安全は確保できるのだろうか?
修繕費は、利益の何%が妥当なのだろうか?

安全担当者としては悩むところではないだろうか
設備はどんどん老朽化するのに修繕費は減らされる 矛盾があるのだろうが会社の方針は現実そうだろう
設備がどんどん老朽化すれば修繕費は増やさなければいけないのだが、現実経営はそう判断はしてくれない
反論はしても、それを考えるのが君たちの仕事だろうと経営は言い張るはずだ

確かに、技術者は最新の技術を導入してリスクベースの保全を目指し修繕費削減に答えなければいけないのは事実だ
最新の技術を使いこなしていくにせよお金はかかる

安全担当者は、いかに経営からお金をきちんと引き出せるかだ
その為には、リスクを明確に表現できる技術が必要だ
ただ危険だ、危険だと叫んでも経営からお金が出るわけでは無い
今どの程度リスクが存在し、それに対処するにはこれだけのお金が必要だという説明が必要だ
それでも、満額得られるわけではない
最悪の事態を考えながら、与えられた修繕費でリスクヘッジをするのが保全担当者だろう

そうは言ってもイエスマンでいいとは言っていない
経営トップには、きちんとリスクは目に見える形で安全担当者は説明して欲しい

専門用語ではなく、経営者でもわかる言葉で説明して欲しい
安全を経営者の目線でわかる安全担当者が多く育って欲しい

 

 

2020年09月27日

安全装置の設計-機械的インターロックか-電子式インターロックか

動力機械が動くところには必ず挟まれ巻きこ粉まれの災害がある
これを防ぐ為に色々な災害がある

事故の再発を防ぐには二つの方法がある 一つは、教育だ。事故の悲惨さを伝え意識レベルで事故を防ぐ方式だ
この方式は、長期的効果は無い。時間が経てば人が変わり、教育を受けた人そのものが
職場にいなくなるのだから、技術は伝承されない 時間が経てば人は忘れるからだ
一方何らかのハード対策を取れば、人とは関係ない
人が変わっても、事故を防げる確率は高い

事故が起こったら、再発防止で考えるのは、ハードとソフトの対策がバランス良くとれているかだ
ハード的な安全対策はやはりお金がかかる
とはいえお金のかからないソフト策を安易に優先して採用するとそれもリスクを引き去れないままリスクは永遠に残る

例えば、光電センサーなどを使って、人が入り込んだとき安全対策をする事例は多いはずだ
センサー単価は安いから案外多く使われている安全対策ではある

それでも事故は起きている。センサーとて故障していることもある。 センサーが作動した時のシーケンスの設計が
間違っていて人が巻き込まれる事故もゼロでは無い

本質安全的に、物理的な扉を新設してハード的立ち入りをさせない方策も必要だ 
それに加えて、電源を切断するインターロックなどを備えていれば更に安全だ

リスクアセスメントで対策を打つときはシンプルで本質的な対策が打たれているかみて欲しい
複雑な回路が入れば、設計ミスで本来の機能がいざという時に動作しないこともある

安全対策設備を設置したら、それで満足せず、ほんとにそれが機能するかあらゆる条件で検証チェックして欲しい
システムが複雑になればなるほど、いざという時に思い道理の機能は出ないかもしれないと考えて欲しい
シンプルイズベストの考え方は大切だ

 

 

2020年09月25日

なぜ事故は減らないのか-人材 社会的背景

これだけ技術が進歩してきているのになぜ事故は減らないかという質問を多く受ける
答えは簡単ではないが、時代の変遷や社会環境が影響する

事故を減らすには二つの要因がある
一つは事故の予兆を早く知る人材がどれだけいるかだ。多くの事故を経験していれば、事故の予兆に気づく。
つまり事故が起きる前に手を打てる
そうは言っても、多くの事故やヒヤリを経験しないと事故を予兆するのは無理だ
今時は、団塊の世代と呼ばれる事故などを多く経験した年代の人が企業には少ない
つまり、事故を経験したことがない人が企業に多数を占めているのだから事故の予兆を感じるのは難しい

もう一つは、安全投資だ 事故を防ぐには、お金がかかる 安全装置や安全対策などにお金がかかる 教育とてお金もかかる

1990年頃から日本はバブルがはじけお金がなくなった この頃は人も採用しないから、技術伝承がうまくできなかった
安全投資もできなかった つまりハード的な対策も進まなかった それが、30年後の今でも尾をひいている

1990年代後半から2000年代前半は、事故を沢山経験した団塊の世代が早期退職などで急速に会社を辞めた
企業は人件費削減のため、早期退職を勧めたからだ。 結果として、優秀な人から先に辞めていった
2000年代、政府は、再雇用政策を導入しベテラン層の退職を抑えようとしたが再雇用は5年の定年延長だ
5年しか持たなかった
結果として、2010年代に化学企業で事故が多発した

技術は人に有りだ 人から人へ技術は移っていく 急速に人を減らせば、技術伝承はうまくいかない
ベテラン層が急速に減ったことも事故防止には歯止めかからなかった

AIやIOTやビックデーターなどが提言されている
有効なツールであるが、使いこなせる人材を企業が豊富の持てる確証はない
普通の人間のスキルをいかに伸ばせるかだ
過去の事故事例教育など、当たり前の教育にも力を入れて欲しい

 

 

2020年09月23日

WINDOWS10恐るべし-技術の闇

今年の初めに,windows 10がでた
今までのwindows 7のサポートが終了することになった
これに合わせ対応をしてきたが、いろいろ不具合が出る
ノートパソコンを買い換えてwindows 10にした
これに併せて、MICROSOFT OFFOICE2019を購入してノートパソコンにインストールした
仕事で使う、ためだ。パワーポイントそのものは動くのだが、ハイパーリンクが作動しない
パワーポイントの中にハイパーリンクで動画を埋め込んであるのだが、クリックしても全く反応しない
今までのノートパソコンはwindows8でパワーポイントも2003できちんと動いていた
全く問題なく動いていてくれていた

ところが新しいノートパソコンで、windows10でパワーポイント2019にしたとたんハイパーリンクが全く作動しなくなった
いろいろやってみたが全く解決しなかった
ある日、ネットで検索していてwindows10ではセキリテイ強化のためハイパーリンクでプログラムの自動実行をわざとさせない仕様にしていることがわかってきた

これを解決するには、レジストりーを書き換えればいいことがわかったがレジストリーはパソコンの心臓部の情報で有り書き換えるのは気持ちのいいものでは無い
でもあえて、意を決してこのレジストリーとやらを書き換えてみた。なんと一発でこの問題は解決した

技術が進歩するのはいいことなのだが、次から次へとわからないことが増えてくる いわゆるブラックボックスだ
1980年代からパソコンとつきあい始めたがついていくのは大変だ

特にバージョンアップと言う名の下にわからないことが次々出てくる
パソコンとつきあい始めて40年になる コンピューターを使いこなすのは難しい
最近は、webソフトをなんとかマスターした
先月初デビューで5時間のWEB講義をした webソフトもいろいろある。 3種類まで使いこなしてきているが仕様は少しずつ違う
できればface to faceの講義の時代を取り戻したい

2020年09月21日

保護具の大切さ-防毒マスク、防塵マスク

保護具という道具がある 労災防止には有効な道具だ
保護具の中で、呼吸器系の保護具として使われるのは、防毒マスク、防塵マスクなどがある
当たり前のように使っている道具だが、使い方の注意点や、構造原理などはうろ覚えの方もいるだろう
法令に規定されているのだが、出典までは知らないだろう

今回、あるところから依頼を受けて、防毒マスク、防塵マスクについて執筆してみた
第一回目が、ネット上で掲載されたので興味のある方はみて欲しい
https://www.ipros.jp/technote/basic-gas-and-dust-mask1/

合計6回のシリーズもので執筆している
次回は10月中旬公開と聞いている
興味のある方は、みて欲しい

 

 

2020年09月19日

火気工事-誤って活きている配管を切る

配管を撤去するときに事故が起きることがある
何本も配管が並行して設置されているときは、撤去する配管には目印が書かれることが多い
撤去配管に、○や×などの記号を付けることもあるかもしれないがこれが思わぬ事故の要因となる

×という目印が事故の引き金になることがある。×印は二つの意味に取れることがあるからだ
ある人は×を見て、この配管は切ってはいけないと感じる人もある
違う人は、×を見てここを切れという場所を示していると考える人もいる
つまり、×印を見て「ここを切れ」と感じる人もいれば、「これは切ってはいけない」と思う人もいると言うことだ

このように記号、だけでは誤解を生じることもある。きちんと、文字を添えることが大切だ
人間の優れているのは、文字を使えることだからだ


記号の脇に 、この配管は「切るな」と書けば過ちが起こる確率は各段に少なくなる
もしくは、×の意味が切る配管であれば、「この配管を切れ」と書けば目的通り工事は遂行する

記号だけで、情報を伝えるのは難しい。簡単な言葉を付け足して欲しい

現場に危険と書いても何が危険かはわからない
危険の脇に、この人に聞けと書いて「電話番号」を書いておけば情報を確実に得ることができる
情報をすぐに得られなかったことが、勝手な思い込みにつながり事故につながることは多い

工事現場では情報源を、わかるように書く癖を付けて欲しい
単純な記号だけ書けばわかるだろうと思わないで欲しい ちょっと文字を添えるだけで防げる事故は多い

 

 

2020年09月17日

web講義の限界

今まで多くの講演や講義を行ってきた 2019年まではwebという講義は全く行ってこなかった
ところが、2020年になってwebという形態が始まった

講義という物は、相手とFACE TO FACEで接するから
理解度や相手の気持ちがわかる
眠そうな人が多くいれば、自分の講義がまだ未熟と感じることが直接できる
webだと一方通行だ 一方的に話すだけだ
相手の顔色は同時にはわからない

講義は5感で感じるところがあるはずだ
でもWEBにそれを期待することはできない

コロナ禍の中でも知を求めている人はいる
それに答えるのも我々の義務だ
とはいえ、web講義は緊急避難的な講義形式と考えて欲しい
感性を伝えることも大切だがwebでそれを補うのはかなりの無理がある
webは万能で無いこともわかっておいて欲しい

イラスト出典 いらすとやフリー素材より

 

 

2020年09月12日

20年前のタイヤ工場の大火災-事故が続いた年

約20年前の2003年という年は、大きな事故が続いた特異年と私は考えている
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm

大きな事故の一つとして、2003/9/8栃木でタイヤ製造工場で大火災があった
http://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200722.html
無許可で行われた火気工事が発端だ
近くにあったタイヤ製造に使う可燃性薬品に燃え移り、どの後タイヤにも延焼して大火災となった事故だ

タイヤなどのゴムの燃焼熱は、木材の3倍とかなり大きい。 ゴムの燃焼熱は、ガソリンとほぼ同じだと考えれば良い
ゴムが燃え始めれば、かなりの発熱量になるわけだ
保管していた15万トンのタイヤなどが2日間燃え続けたという 住民の避難も余儀なくされたという

直接原因は、火気工事だがこの事故には多くの間接要因がある
1989年に日本ではバブルがはじけ不景気になった この為、1990年代は企業経営がどこでも難しかった
この企業も、1997年に57才の早期退職を実施して、ベテラン層が会社から沢山いなくなっていた

2000年に入っても景気は回復せず、企業経営は厳しかった
1990年代後半から2000年代前半にかけては、いわゆる団塊の世代という、経験豊かな従業員が大量に会社を去り始めた時代だ
若い人達だけが残り、ベテランはいなくなった時期が2000年代だ 不景気で新卒者も採用されず技術伝承はうまくできない時代だ
この結果、ゴム火災の怖さなども若い世代にはうまく伝承できていなかったのだろう

タイヤ倉庫内も、防火シャッターが整備されていなかった 設備投資の予算もなかったのかも知れない

2003年に頻発した事故を受け、当時消防庁や経済産業省などが通達を出している
経営合理化だけを優先させず、安全に対して経営がもっとリーダーシップを取れと指示している

経営トップの安全に関する積極的なリーダーシップを強く求めるようになつたのはこの時代だったと言える
安全にはお金がかかる 人事権とお金を掌握しているのは経営者だからだ

2020年09月10日

直下型地震による影響--機器基礎の不等沈下

2年前の2018/9/8北海道で震度7の地震があった。M6.7だ。
地震で、北海道全停電となるとんでもない事態も起きた
大型の発電所が機能を停止したからだ。この発電所は、震源地から余り離れていなかったという。

過去に震度7という地震は、直近では2004年の新潟中越地震というのがある。2004年10月23日だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E5%9C%B0%E9%9C%87
震度7,M6.8、震源の深さ13kmの直下型の地震である。

震源地近くの小千谷観測点では、最大1500ガルを超える震動を観測している。
化学プラントなどでは、150~200ガル程度の地震が起きれば安全のために停めていることを考えると、1500ガルというのは
とんでもない加速度だ。
最近耐震強度の見直しがされた、球形タンクの耐震設計でも600ガルの耐震性能だ。
以前は300ガルの耐震性を満たせば良かった。

2004年に起きた、新潟中越地震では、原子力発電所の震度計は680ガルの値を記録している.。当時の設計想定の約倍だ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuwanobuo/20170716-00073311/
この地震により、原子力発電所で火災が起きている。電気室の外にある変圧器の火災だ。
電気室の建物の基礎と、外にあるトランスの基礎が別々の基礎であった為、地震の揺れで別々の動きとなったからだ。
別々の動きをすれば、電気のケーブルには無理な力がかかる.引きちぎられたりすれば、絶縁が不良となりショートする。
当然火花を出すから、このケースでは火災になった。当時は原発は自前の消防隊を持っていなかった
自治消防とも専用電話回線もなかった 自治消防もすぐには駆けつけられず火災はすぐに消せなかった
幸い原発には影響はなかったが、問題となる事故だった

機器の基礎が別々になっていると、こんな事故も過去に起こっている。
油を入れるタンクの外に、ポンプがあるケースだ。地震が来れば、タンクとポンプは別々に揺れる。
配管がずれれば、無理な力が加わり配管が割れて、油が大量に噴き出したこともある。
フレキを入れていても、ズレが大きければ引きちぎられる。
基礎を別個にするか、一体ものにするか地震対応では考えるべきことだ。

 

2020年09月08日

電気のエネルーギーを甘く見ていませんか 

電気はものすごくありがたいものである
とはいえ、目で見える物では無いし、日頃危険と感じることはない
家庭内での事故は少ないけれと、工場などで扱う電気はかなりのリスクもある

一般家庭での電圧は、100Vや200Vだが、工場では何万ボルトや何千ボルトも扱う
何万ボルトや、何千ボルトにもなると人はそれなりに危険と感じるのだが
事故が起こるのは、案外数百ボルトの世界が多い

工場の大部分のモーターは、100V、200Vか400Vで動く
つまり数百ボルトだ。何万ボルトではないので、電気の専門家と言える人でも危険と感じていない
でも人は数十ボルトの電圧で感電し、死ぬこともある

電気に触れれば、電気は体の中を通り心臓などを停めてしまうこともあるあるからだ
心臓は微少な電気パルスで動かされているから異常な電気が流れれば動きが止まる

電気で怖いのは、アークと呼ばれる電気放電だ
電気のSWは、入れる時とSWを切る時が怖い
電気を入れたとき急激に+から-に電流が流れるわけだから放電のような現象が起こる
紫外線のような物も放出するし、高温の火花も出る まともに影響を受ければやけどする
電気のSWを切る時も危険だ SWを切ろうとしても電気は、継続して流れ続けようとする性質がある
火花を飛ばし電気を流れ続けさせようと放電火花が飛ぶ
これも人体にとって危険な火花だ

電気のSWの入り切りで過去放電による事故が繰り返し起こっている
電気のSWを入り切りするときは火花が出ると思って欲しい 体の露出部や目を守って欲しい
電気SWが故障していたりすることもある。故障していればとんでもない火花が出ると思ってほしい
機械はいつも正常に作動するとは限らないからだ 最悪の事態を考えて電気のSW操作は行って欲しい

 

2020年09月06日

企業の事故調査報告書の読み取り方

事故調査報告書は誰が作るかによって書き方は変わってくる 大きな事故が起こると、事故調査報告書が作られることとなる
時代とともに誰が事故調査報告書を作るかが変わってきた
確かではないが1990年代までは大きな事故が起こると行政が主体で事故報告書を作成してきた気がする
1997年に、今まで高圧ガス取締法と呼ばれた法律名が、高圧ガス保安法と名前を変えた
国は取り締まるではなく、自主保安と舵を切り替えた
事故や災害を防ぐ主体者は国ではなく、事業者だという考え方の180度転換だ
国が取り締まると言えば、事故が起これば、取締りかたがわるかったのは国だという論理になる
とはいえ、取り締まるには限界がある 技術は絶えず変化し、技術の根底まで管理するのは行政には難しい
国も万能ではないと考えるのも道理である 
設備のリスクを知っているのはやはり、国ではなく企業などの事業者なのだという考え方もある
つまり、行政が規制するには限界があるということだ と言う観点から、自主保安という概念が1990年代から浸透し始めた

それを境にして、大きな事故が起きても国は事故報告書を自ら発行しなくなった
自主保安だから、企業が発行するべきだという考え方が根底にあるからだ

2003年という年は大きな事故が頻発した
2003.8.29名古屋エクソンモービル油槽所火災 2003.9.26~28出光苫小牧製油所火災
など大きな事故はあったがもう、国は事故調査報告書の発行主体者にはなっていない
いずれも、企業が主体で作り上げた報告書が出されている

つまり、事故報告書の書き方は、規制する側の視点から書かれた物ではなくなってきている
企業の視点で書かれていると読み取らなければならない
微妙なニュアンスではあるが、書き方は、規制する側と規制される側と当然の違いがある
規制者であれば、単純に法という視点で書けば良かった。ところが、事故は法を守っていれば起こらないというわけではない
法以上のことをどれだけやっていたかも企業は書かなければいけない

とはいえ事故が起きれば裁判もある 企業は書けないこともあるはずだ
事故報告書を読み取るのがますます難しくなってきている

 

2020年09月04日

昔起こった事故を知ることの大切さ--事故は繰り返す--事故のパターンを学べ

工場などで講演をしてアンケートを採ると、昔の事故事例が講演内容に多かったと不満を言う人がいる
昔の事故は、不要と考えているのだろう

昔の事故を知っているからこそ、このようなアンケートでコメントをするのだろうが
時間が経ったから事故の価値がなくなるわけではない

事故は繰り返し起こる。目新しい事故が沢山起こっているわけでは無いという現実を理解していない気がする

最近起こる事故もほぼ90何%以上は昔の事故のパターンだ
全く同じ事故は起きないが、今も同じような事故が時間と場所を変えて起こっているだけだ

だから、昔の事故でも伝えていく必要がある

技術的な問題の事故は、技術が進歩すれば確かに減ってくる しかし、技術は進歩する
新しい技術が出れば、そこに事故の芽が生まれる

しかし、人が原因の事故は時代が変わっても同じように起こる

機械的な技術は進歩するが、人という物はそれほど進化していないからだ
人に関わる事故はパターンがあり、繰り返し起こす性質がある

忘れた、勘違いした、思い込みなど繰り返し人が犯すミスだ

人に関わる昔の事故は繰り返し伝えていく必要がある

昔の事故だからと馬鹿にしないで欲しい
事故は時代とはあまり乖離しないと考えて欲しい 事故のパターンを整理して学んで行くことが大切だ

2020年09月02日

関東大震災と混触事故

明日はもう9月だ 防災の日でもある
今から約百年前、1923年9月1日に関東で強い地震が起きた 関東大震災と呼ばれている 地震後の火災で多くの人が命を失った
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD

この時多くの大学で火災が起こったのを知っているだろうか 薬品瓶などが倒れて、混触反応による火災だ
黄リンによる火災、揮発性物質の瓶が割れて着火したという

混触危険性は、混ぜると危険と言うことだが、薬品により危険の程度が違う
混ぜたらすぐに危なくなるものもあれば、時間がかかるものもある
この混触危険性というものは案外現場では知られていない
混ぜたら危険ということはもっと教えていかなければいけないと常に感じる

最近でこそ,地震対策で薬品棚の固定などは進んでいる
しかし、まだまだ地震対策が進んでいないところもあるはずだ
もう一度自分の職場の地震対策を見直して欲しい

薬品棚だけではなく、試薬を入れる冷蔵庫もチェックして欲しい
試薬も倒れて割れにくいように、固定されているかもみて欲しい
いつか来るであろう地震への備えを怠らないで欲しい

 

2020年08月31日

工場・研究所における事故や災害防止に関する新刊書籍紹介

今月31日に、「工場・研究所における災害・事故および各種リスクの可視化と対策」というタイトルの書籍が発刊される
770頁の本だ 本の詳細目次が見れる 試読もできるそうだ 著者紹介で割り引きもあるそうだ(私も者者の一人です)
https://www.gijutu.co.jp/doc/b_2062.htm

概略の目  次は以下の通りだ 
第1章 工場・研究所における事故・トラブル発生要因,その分類

第2章 火災・爆発事故の発生原因とその対策

第3章 薬品の取扱い,化学反応異常による事故の発生原因とその対策

第4章 容器配管の老朽化・閉塞・漏洩事故の発生原因とその対策

第5章 電気系統や回転機器,駆動装置の動作異常よる事故の発生原因とその対策

第6章 異物混入や汚染による事故の発生原因とその対策

第7章 地震・風水害・災害によるトラブルの発生原因とその対策

第8章 プラントの現場管理者の安全教育について

第9章 ヒューマンエラーおよび負傷・疾病とその対策

第10章 健全性評価,異常検査技術やリスク予測およびセンシング技術,IoT,AIの活用

第11章 工場・研究所における災害時の事業継続性(BCP)への対応

第12章 各企業における工場・研究所の安全管理の取り組み,事例紹介

 

 

2020年08月29日

事故の本質

世の中色々な事故が起こっている
私が主に担当する化学工場や石油精製工場の事故であれば火災、爆発、漏洩事故だ

事故にはパターンがある 闇雲に事故が起きるわけでは無い
事故の原因は大きく分けて4つだ
物質危険性、人のミス、設備の故障、地震や雷などの外乱だ
これが発端で事故は起こる

つまり事故にはたねも仕掛けもあると言うことだ
でもこの、たねと仕掛けが技術伝承されていないから繰り返し事故がおこる
おまけにほとんどの事故は、報道されることは無い
企業も、積極的に事故原因を報告することはない
この結果、世の中に有用な情報が展開されずに事故は繰り返す

事故が減らないのは、事故の原因が公開されないことにあるがそれだけではない
公開された情報をどう活かすかも大事な要素だ
事故報告書を読み取るにも高度な知識がいる
文章をそのまま鵜呑みにしても事故の本質がわかるわけではない
人、設備、物質危険性、外乱という切り口で再検証する必要がある
文字の行間を読む必要がある
しかし、これは至難の業だ

多くの過去の事故事例を知らないと行間から類推して色々なことを見つけ出すのは難しい
でも、行間が読めなければ事故の本質を見抜くのは難しい
行間を読めるようになったのは1000件くらい事故事例を見てきたときだ 事故のパターンも少しずつわかり始めた時期だ
今は累計すると6000件くらいの事故事例情報を見てきた 数百種類のパターンに分類して整理できている
事故を防ぐにはかなりの知識が必要だと言うことだ
事故の本質を見抜くのはたやすいことではない

 

 

2020年08月27日

タンクの落雷事故-避雷針は万能では無い

避雷針があれば雷は大丈夫だと思っている人は多いのかも知れないが、100%避雷針があれば安全というわけではない
雷は、避雷針をめがけていつも落ちてくるわけではないからだ 避雷針以外の所にも当然落ちる
日本では、雷による化学工場災害はあまりないが、外国では雷災害が繰り返し多発している
http://tank-accident.blogspot.com/2020/07/blog-post_27.html
http://tank-accident.blogspot.com/2013/08/blog-post_21.html
雷のエネルギーはものすごいものだ。雷もうまく避雷針を狙って落ちてくれればそれでいいのだがそうはうまくいかない
避雷針を離れたところで雷が落ちるとどうなるかだ
落ちたところにわずかに金属同士のすきまがあればそこに火花が飛ぶ
タンクなどのように可燃物を貯蔵している設備であれば火花が着火源となる
あっという間にタンクに火が着き火災になる

つまり、避雷針があれば雷の災害を防げるわけではないというのだ
近年異常気象が続いている とてつもない雷も来る
アメリカでもタンク内の雷放電による事故を減らそうと努力をしているがなかなか被害を減らすことはできない
雷のエネルギはとんでもない量だからだ

雷が落ちた時金属に電気が流れると電磁誘導が起こる いわゆる磁力が発生する
これにより、金属が異常振動することがある
サポートの弱い配管で、腐食した配管が振動で折れる事故も過去にある

避雷針を過信しないで欲しい
万一タンク火災がおこったら早期に火が消せることも予め考えて欲しい
事故は起こってから何かをするでは手遅れだ
もし事故が起こったらと言う視点で、こつこつとリスクアセスメントを進めて欲しい

 

 

2020年08月25日

事故の未然防止には情報公開が不可欠

毎回ブログで書いているが、事故情報は本当に公開されない

消防、警察、労基など情報は有り余るほど持っている
しかし、事故の情報が公開されることはない

個人情報保護法という問題もあるのかも知れないが、企業名や個人が特定されない方法で、とにかく事故情報を多く公開して欲しい
ちょっとした情報が世の中で、事故は防げる なぜなら同じような事故が繰り返し起こっているからだ

お役所も最近リスクアセスメントという言葉をよく使う
事故が起きると、リスクアセスメントをしていなかったというような情報を出す
リスククセスメントと言うのはたやすいことではない
まず最初のハードルは、危険と感じなければリスクアセスメントをしようとはだれも思わない
今まで大丈夫だったからと言う大きなハードルがそこに存在する
危険の感受性が上がらなければリスクアセスメントの入り口にすら到達しない

更にリスクアセスメントを始めたとしても、今まで大丈夫だったとの思いが強ければ事故は防げ無い
そこそこのリスクは拾い上げれるが、リスクを「深掘り」してくれないからだ
事故が起こると思ってくれなければ、リスクアセスメントは形だけのものになる

だから世の中に起こっている事故を公開しなければいけない
こんな些細なことでも事故は起こるのだと言うことを世の中に示さなければいけないのだ

でも現実はほとんど事故は公開されない
たとえ公開されても、事故の事実だけで事故の教訓は公開されることはない そこに問題がある
事故の教訓を伝えることが望まれている

 

2020年08月23日

タンク爆発-液を入れる挿入管の設計がまずく静電気が発生

タンクの中に液を入れる配管を挿入管という
挿入管は上から入れるか、下から入れるか設計は自由だ
しかし、可燃性液体を入れるときは自由度はあまりない
タンクの上から液を入れると、液がバシャバシャと落ちることから静電気が発生する
この静電気が原因でタンク内で放電が起こり爆発することがある
徳島県で起こったタンクの爆発事例がある
http://tank-accident.blogspot.com/search?q=%E5%BE%B3%E5%B3%B6

液を受入中にタンクが爆発した事故だ
報告書を見ると流速制限について作業マニュアルには何も書いていなかったという
可燃物の受入であれば、基本的に流速1m/秒は守るべき数値だ
こんな当たり前のことが従業員に周知されていないのだから日本中繰り返し事故が起こるのは当然だ
タンクの中に液を送り込む配管は、上から液を落とし込む設計になっていたという
これでは、液が落ちるときにしぶきとなって大量の静電気を発生する

このタンクは窒素シールをしていないのだから爆発混合気ができていれば
簡単に火が着き爆発するのは当たり前だ

タンクの中に液を入れる時は、可燃物は上から液を入れないことだ
下方から液の中に浸透させるように入れて欲しい
液のしぶきができないような入れ方をしなければ静電気で着火事故が起こる
液の中にパイプを送り込むような配管設計として欲しい

 

2020年08月21日

連続系のHAZOPとバッチ系のHAZOPの違い

HAZOPというリスク評価手法がある。日本では1980年代から導入されたものだ。
日本のコンビナート地区では、1973~1974年にかけ事故が多発した
これを受け多くの企業が、事故を未然に防ぐシステムとしてHAZOPを導入したのだ
最初は大手の化学企業や製油所が導入を始めた

近年リスクという言葉がすごく使われてきている。中小化学企業でも、HAZOPが着目されるようになったのは高圧ガス認定制度だ。
このお墨付きをもらうと、化学プラントは定修期間を大幅に延長できる。
通常化学プラントは、1年間動かしたら停めて官庁の検査を受けることになっていた。
ところが、1980年代から、安全体制の整った高圧ガスを取り扱う化学工場は2年又は4年連続運転できる制度が導入された。
いわゆる自主保安という制度だ。高度な安全体制が整った企業にはインセンテイブを与えてくれるというものだ
HAZOPを行ってプラントに潜在しているリスクを発掘できていれば事故の確率は減るからだ
HAZOPというのは、化学プラントに潜在するリスクを見つけ出し事故の芽を絶つことができる有効な安全性評価ツールだ

HAZOPの基本的考え方は実に簡単だ 「ずれ」を考えればいいのだ 運転中に起こるずれがどんな悪さをするか考えるのだ
たとえば、流量であれば流量のずれだ。流量が増えたらどんな悪いことが起こるのかを考える
流量が減れば、どんな危険なことがおこるのかも想定する。流量がゼロになったらどうなのか、逆流も考える
流量が終われば、温度、液面、圧力と順番に評価していく
次に、今ある設備で想定しうる危険なことが防げるのかを考える。 今の設備では対応できなければ設備を追加する
必要なレベルまで、リスクを低減し事故の確率を減らすのだ

化学プラントには、連続系とバッチ系と呼ばれるものがある。その違いは、人の介在する度合いだ
連続系は人のミスの度合いは低い なぜなら、連続系は機械がかなり仕事を自動的にしてくれるからだ
バッチ系はそうはいかない  人がバルブを開けたり閉めたり手作業の仕事が多い
そうなると、人が起こすミスをずれとしてチェックしておく必要がある
例えば、バッチ系は手動弁が多いから、人が弁を開けなかったというのもずれになる いわゆるNOというガイドワードだ
弁を開けるタイミングが遅れたというのもずれだ。タイミングが早すぎるずれもある。遅すぎるというずれもある
このように。連続系とバッチ系のHAZOPの違いは人のずれ要素をどれだけ入れて考えるかの違いだ
人に関わるずれを、バッチ系では重要視して欲しい

2020年08月19日

事故や災害はなぜ起きる -漏れ 漏洩が大事なキーワード

化学プラントでなぜ事故が起きるのか
結論は漏れるからだ

化学物質は閉じ込めておけば事故は起こらない
ところが、漏れるから事故が起こるのだ
有害物質であれば、漏れれば中毒事故になる

可燃物であれば、漏れれば着火して火災や爆発事故となる
化学物質はとにかく装置の外部に漏らして空気と触れさせないことだ

こんな簡単なことがなかなか守れない
塗装をせずに配管に穴が開いたり、塗装塗り替えはしたが下地処理が悪くて錆て穴が開くことも多い
バルブを閉め忘れて、人が化学物質を漏らしたりする事例も多い
配管が腐食して液が漏れればやはり事故になる

熱交換器のフランジなどは、温度上昇に応じてボルトを増し締めしなければ漏れることがある
温度変化があれば金属は伸びたり縮んだりしてフランジ部に隙間ができるからだ

漏らすなは 大事なキーワードなのだがなかなかこの意味をわかってもらえない
石油化学コンビナートの事故の原因の50%は漏洩だ

漏らすなを大事なキーワードとして欲しい

 

2020年08月17日

コンプレッサーの液圧縮事故-HAZOPチェックの重要項目だ

コンプレッサーなど圧縮装置に関する事故で多いのが液圧縮だ
コンプレッサーは、気体を圧縮する装置なのに液体が混じり込むと圧縮できず破壊することがある
気体は圧縮することができるが、液体は簡単には圧縮できないからだ
万が一、コンプレッサに液体が紛れ込むととんでもない事故になる

コンプレッサは気体は圧縮できるが、液体は圧縮できないと考えて欲しい
風船などは気体が入っているから、かなり圧縮することは可能だ
ところが液体が入っている注射器などは一所懸命力を加えても圧縮できないはずだ
液体と気体は全く性質が違うからだ

コンプレッサの入口側には、たいていは液体を取り除く小さな気液分離ドラムというのが設置されている
この容器で液体を取り除き圧縮機側に液体が紛れ込まないようにしている
ところが、この気液分離ドラムの液面計などが故障していれば液が圧縮機側に行ってしまうことがある
圧縮機というものは液体に弱い 液が来ればあっという間に壊れてしまう
HAZOPなどでも圧縮機があれば、液体が万一紛れ込まれないか徹底的にチエックして欲しい

 

 

2020年08月15日

タンクの排気設備を定期点検していますか-フレームアレスター金網点検

タンクなどにはフレームアレスターという設備が付いている 
http://www.protego.jp/tech01.html

可燃物を貯蔵するタンクであれば、単なる配管で排気していれば火が着く可能性がある
可燃物を貯蔵するタンクであれば、窒素をタンク内に入れて爆発混合気を作らないようにしている
窒素を入れるのだから、当然出口側に排気設備が着けられている
たいていは、フレームアレスターという防火用設備が設置されている
フレームアレスターという設備の内部には金網の部品がある
この金網の部品により万一、静電気などにより炎が発生しても炎を消滅させてしまう金網だ
金網のおかげで爆発や火災を防ぐことができる
ところが、この金網が何か異物で詰まると困ったことが起こる
金網が汚れていなければ、タンク内の排ガスはこの金網を通って正常に排気されていく
ところがこの金網が詰まれば、排ガスは大気にうまく破棄されずタンク内の圧力はどんどん上がっていく
窒素シールなどをしているタンクはどんどん圧力あがり最後は圧力に耐えられずタンクが破壊することになる
この種の事故は、毎年起きていると言っても過言ではない
タンクの排気側の設備の点検をほとんどに人がしていないからだ
タンクの排気設備は定期点検が不可欠だ
点検しなければ、タンクの出口側はふんずまりを起こす
金網の部分に付着物が堆積して詰まってしますこともある
圧力が上がればタンクは簡単に破壊される 天板破裂などの事故が起こる
タンクの排気設備の点検を怠らないことだ
定期的に点検して欲しい


 

2020年08月13日

安全に緊急停止出来る設備になっているか

装置を停止するときは、「通常停止」と「緊急停止」の2つの方法がある
今から20年前の1998/12/20日にDCSを用いた茨城県鹿島にある最新型のゴム製造工場でこんな事故が起こっている
ゴムをベルトコンべーアーで移送するダクト内で火災が起こった
消火設備を作動させたがうまく作動しなかった
この為、停止ボタンを押したがゴムを移送するベルトコンベアーはすぐには停まらなかった
結局機械は停まらないので、ダクト内のゴムが全て燃え尽きるまで火は消えなかったという事故だ

なぜ、ベルトコンベアーがすぐに停まらなかったというと問題は設計ミスだ
つまり、停止機能の設計に問題があった
運転者側は、計装設計者に要求したのは通常停止機能だけだった
停止ボタンを押せば、プロセスの上流側から、下流側に時間をかけて安全に順次時間をかけて停止していく方式だ
今回火災が起こった場所は、プロセスの下流側に位置している設備なので、停止ボタンを押してもすぐには停まらなかったのだ

「緊急停止」という機能は要求が無かったのですぐにベルトコンベアーは停まらない設計になっていたという
この事故を受け、多くの企業は装置の停止について「緊急停止もできる設計」になっているかを全面的に見直したそうだ
製造装置の個別部分がすぐに緊急に停止出来る設計にもなっているかを点検したという

装置という物はどんなトラブルが起こるかはわからない
いざという時に単独で緊急停止出来る設計になっているか自分のプラントも検討してみて欲しい
特に回転する機械は、人が巻き込まれることもある
法律でも緊急停止ボタンを要求している
停止という言葉には「通常停止」と「緊急停止」の両方の意味合いがあると考えて欲しい

 

2020年08月11日

計器はいつも正しい値を示しているとは限らない-タンクオーバーフロー

計装計器は故障することは少ないが、時には当然故障することもある
化学工場などでは、運転員が常に計器の温度を監視している
この時何気なく行っているのが、他の計器と比較して計器の指示が正しいのかチェックを行っている
計装計器でけっこうトラブルが多いのは空気式の液面計だ
タンクの中に液面を測るにはいろいろな液面計が使われる
タンクの中の液が詰まりやすかったりする液体だとパージ式という液面計がよく使われる
https://www.jemima.or.jp/tech/1-01-04-02.html
タンクの中にパイプを突っ込んで、そこに空気を送り込んで液面を計測する方式だ
常にパイプの中に空気を送り込んでいるのでパイプの中には詰まりやすい物が入ってこない利点がある
空気を送り込むとき液面の違いによりに圧力がわずかに変化することを検知して液面を測定する
パイプに空気を送り込んだときの圧力を背圧という。背圧という圧力と、液面の高さは相関関係があり背圧を測定すれば液面がわかる仕掛けだ
簡単な原理で、べとべとした油や廃液などの液面測定に使われる方式だ
背圧というわずかな圧力の変化を利用するのだから空気が漏れたりすればそれが誤差になることもある
たまに起こるトラブルは、空気配管の継ぎ手が緩んでいて空気漏れを起こしているケースだ
液面と空気圧と相関があると書いたように、空気が漏れれば液面の指示は実際の値より低めに指示することになる
つまり、空気漏れが起こると必ず指示は低めに出るというのがこの液面計の特徴だ
たとえば、タンクの中にポンプで油を送り込んでいるとしよう
計装空気配管から空気漏れが起こっていれば、指示は実際より低めに出る
まだタンクは、満杯ではないと思い込み液を入れ続けているとタンクの天板から油が溢れ出るという事故事例は多い
警報が付いているから大丈夫だと思っている人も多いが、計器そのものの指示が間違っているのだから警報は正しく出るはずは無い
タンクには、ガラス製のレベルゲージなどの液面計などを別途設けてあれば、計器の値と比較して異常に早く気づくことはできる
しかし、たいていの場合このガラス製のレベルゲージなどが付いていないケースが多い
設計段階から計器が壊れたら別の手段で確認できる設備があるのか確認して欲しい
HAZOPでも計器が故障すればずれと考えるはずだ 問題は計器の故障というずれを早期検知できるかだ
運転員が異常に気づけなければ結果として事故につながる
計器の故障も考慮に入れて設計や運転を行って欲しい

 

2020年08月09日

有機溶剤の静電気着火事故

研究所や実験室などで有機溶剤は沢山使っているはずだ
自分が取り扱っている物質の引火点を知っているだろうか。引火点とは、火がつく温度だ。
有機溶剤と言われる物質は、引火点は非常に低い。例えば、マイナス数度だ。
有機溶剤はガソリンと同じだ考えて欲しい
夏場の気温は30度前後だから、簡単に火はつく。火がつく原因は、静電気だ。
アセトンなど有機溶剤は導電性は無い
つまり、静電気は簡単に逃げていかない。アースという方法で有機溶剤の静電気は逃がせない。
流速が早ければ、静電気は大量に発生する。この流速というのがくせ者だ。
有機溶剤を流すときには、当然配管がある。配管の出口が、流速が遅いから安全だと思い込んでは困る。
出口の前の途中経過の流速が早いことも当然あるはずだ。
流速の早いところで静電気は起こっているから。その静電気が逃がせないまま出口まで到達する
かなりの高電圧のまま出口から液は噴出することになる
言いたいことは何かというと、長い配管途中で大量の静電気が発生するような状況では帯電した静電気が逃げなければ出口流速とは関係なくかなりの静電気が存在するので簡単に着火すると言うことだ。
とにかく、引火点の低い物質はしつこいくらいに静電気対策が必要だ。
床に落ちた有機溶剤を乾いた布で拭いただけでも静電気は発生する
乾燥した布なら簡単に火花が出て静電気で有機溶剤に着火する
有機溶剤を布で拭くなら、水で濡らした布で拭いて欲しい
水分量を増やせば静電気で着火は防げる
有機溶剤を甘く見ないで欲しい

 

2020年08月05日

ダクト火災-定期点検しなければ事故は起こる

研究所や工場での排ガスなどを流すダクト内部に溜まった物に火がつき火災になる事例は沢山ある
http://www.opus-gr.com/duct-fire
煙や排ガスを排出するダクトと呼ばれる装置は、工場や研究所であればどこにでも存在する。
でも、たかが煙が流れる装置と思っていると事故が起こる。
温度の低い煙なら問題は無いが、だいたい100度を超える煙だと火災などが起きることがある。
煙などを通すところは、排煙ダクトと呼ばれる。そこに、火がつくような燃えかすだとか、粉などが溜まっていることがある。
ダクトも、中の様子を点検できるような設計になっていれば良いが中の様子が見えないものが多い。
排煙ダクトの中を流れるガスも、流速が早ければ、燃えかすや粉なども溜まらないはずである。
しかし、余りにダクトが太すぎると流速が遅く色々な物が溜まりやすくなる
設計段階で、ダクト内に物が溜まらないように流速を考慮しておくことが大切だ。
設計段階で、ダクト内を点検や清掃ができるような設計をしておくことが事故のリスクを減らしてくれる。
設計の善し悪しで、事故が起こる確率は大きく変わる。
可燃物が流れるダクトは金属製として欲しい。
過去、塩ビなど燃える可能性のある材料を使っていて火事になっている事例も多いからだ。
ダクトの内部点検を、年間の安全管理項目に織り込んでいますか。
ダクト内部に、何か燃える物が溜まっていればいつか発火事故になります。
安全確認項目にダクト内の、異物残留点検を織り込んで欲しい。冬場乾燥してくれば、乾燥して火がつきやすくなります。
ダクト内の滞留物が火災事故につながります。排煙ダクト内の異物点検を考えて下さい。
工場も当然ですが、研究所の排煙ダクトも点検して下さい。研究所の火災事例も沢山発生しています。
製造設備はしっかり管理していても、実験や研究設備が盲点にならないように安全管理を行って下さい。
たかが排煙、排ガスダクトと思わないで欲しい
ダクトの中に燃える物が蓄積すればいつか発火して火災になります
ダクトの中を見れるように、設計の段階からのぞき窓を設置してください
ダクトの中は、見える化が大切です
点検口がなければいつか火災事故は起きます ダクトの中を見えるようにしておくことです
あなたの工場や研究所は大丈夫か一度点検して下さい

2020年08月03日

労働災害-挟まれ巻き込まれ災害とは

労働災害で「挟まれ巻き込まれ」という災害がある。この災害は何かというと,人間と機械が関係する災害だ
工場には沢山の機械がある。人間と機械が適度に離れていれば良いのだが、人は機械に近づきすぎることがある
製造業という業種で一番多い労働災害は、この挟まれ巻き込まれ災害だ
なぜ労働災害が起きるのかと言えば、機械の力というのを人間が甘く見ているからだ
機械にはたいていモーターというのが付いている。動力を生み出す機械だ
小さなモーターでもかなりの力持ちである
にぎりこぶし1つくらいの大きさのモーターであれば、1馬力の力を出せる
馬一頭分の力が、にぎりこぶしくらいの大きさのモーターから生み出せるのだ
馬一頭は人間にすると4人分の力に相当する
こんな小さなモーターでもこのような力を出せる
挟まれ巻き込まれ事故とは、機械と人間が戦ってまけた事故と考えても良い
機械の力を甘く見すぎているからこのような事故が繰り返し起こる
安全体験でも、モーターとロープを組み合わせて人と勝負させ簡単に人が負ける体験をさせることがある
その時は、機械の力を実感してもらえるがしばらくすると忘れてしまう
機械を甘く見ないで欲しい
にぎりこぶし1つ分のモーターでも馬一頭のとんでもない力だと常に思って欲しい
機械に手を出して無駄な勝負をしないことだ
自分を大切にして欲しい

 

2020年08月01日

「サイトグラス」が引き起こす事故

サイトグラスが設置されている容器は多い
ガラス製ののぞき穴だ 透明で中が見えるから便利で多くの機器に取り付けられている
一見便利そうだが,耐圧強度の無いガラス製品だから,事故の引き金になることもある
圧力が上昇すればガラスは割れる 割れるのは宿命だ
それでも多くの機械にガラス製のぞき穴が使われている
ガラスは金属と比較すれば耐圧強度は低い つまり,破裂や爆発が起これば真っ先にガラスが割れる
そこから,毒性ガスや可燃性ガスが漏洩し事故になる
こんな事故を繰り返し人は起こしている
サイトトグラスを付けたら,サイトグラスより低い耐圧で作動する安全弁を設置して欲しい
ガラスが割れては,そこからの漏れを停めることはできないからだ
サイトガラスが割れて起こる事故は多い
たかがガラスと思わないで欲しい

イラスト出典 厚生労働省職場の安全サイト

 

2020年07月30日

「バイパス配管」が引き起こす事故

色々な設備には,バイパス配管と呼ばれる配管が取り付けられていることが多い
例えば、スタートアップの時は汚れた液が流れる場合は本来の配管を汚したくないためにバイパスする配管を取り付けることがある
バイパス配管は、正常な運転になれば流さないように弁をしっかり閉じて流れないようにするのが一般的だ
こんな事故事例がある。触媒を流す流量計の脇にバイパス配管が取り付けられていた 反応器に触媒を送る配管ラインだ
定期修理中は、流量計を保護するため洗浄用の液はバイパス配管側を流していた
いよいよ,運転開始と言うときにこのバイパス配管側の弁を閉めるのを忘れた
装置の運転を開始し,触媒を流し始めたところ流量計の指示はあまり増えなかった
規定の量を入れようと流量計のバルブを開けていったところいきなり反応器内で異常反応が起こったという事故がある
事故の原因は,パイパス配管の弁を閉め忘れていたため流量計の指示量以上に大量の触媒が反応器へ流れ込んだからである
バイパス配管側を通って想定外の量の触媒が反応器へ送り込まれ異常反応が起こった事例だ
流量計の指示の8倍もの触媒が流れ込んでいたという 結果として、反応器の温度計の針は500度を振り切れていたという
異常に気づくのが遅れたのは、反応器の温度警報ヒューズが切れていたことも原因だ
つまりヒューズが切れていたことで、温度異常警報は鳴らなかったのだ
反応器からの安全弁から吹きだしていた白煙を見て始めて異常に気づいたという
幸いにして爆発はしなかったが、もう少し発見が遅ければ大災害になった事故だ
この事故の教訓は「バイパス配管の弁の閉め忘れ」が思わぬ重大事故を引き起こすと言うことだ
HAZOPでもどれだけの人が,バイパス配管を意識しているのだろうか
ぜひ、HAZOPでは計器のバイパス配管があれば,このような事故がおこると考えて欲しい
トラブルが起きれば、温度警報が必ず鳴るはずだと安易に考えないで欲しい 温度計が故障していることもあるはずだ
いつも警報が鳴るとは限らない 過去の事故事例の中でも,警報を聞き漏らしたという事例も多い
「バイパス配管」は危険源と思って欲しい
施錠するか、チエックリストをつくってしっかりと管理して欲しい

 

2020年07月27日

運転中のインターロック検査で事故が起こることがある

高圧ガスの認定工場では,長期連続運転が可能になる 2年、4年などプラントを停めずに長期連続運転ができる
その反面、安全装置の信頼性を確保するためインターロック装置などを1年毎に運転中に検査することが求められる
下記資料の13,14ページに高圧ガス設備のインターロックの検査について書かれているので参照されたいhttps://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/technical_standards/dl/hokokusho.pdf
運転中にインターロック機能を検査すると言うことはかなりの危険が伴う
一時的にインターロックを解除したり,装置が停止しないように処置をしなければいけないからだ
運転中にインターロックを検査しているときに誤ったことをすれば当然、事故につながる
2005年に運転中のインターロック検査時にこのような爆発事故が起きている
人為的なミスがいくつか重なって起きている事故だが案外この事故は知られていない
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2005-335.pdf
その後、運転中のインターロック検査時の事故は起きていないのかと思ったらやはり事故は起きていた
2018年9月26日に大阪の製油所で加熱炉のインターロック検査中に起きた爆発事故だ
下記資料の3ページ目 事故番号NO15番の事故を見て欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/2018/H30jikoitirann7-9.pdf
インターロック検査の準備段階で本来触ってはいけない燃料弁を閉めたために加熱炉が突然失火した
あわてて、再点火したため炉内の未燃焼ガスに着火爆発したようだ
この事故報告書には文字でしかの情報が提供されていなかったが最近もっと詳しい事故資料を入手した
消防関係の機関が発行している書籍だ
電子情報でも記事を入手できるので,興味のある方はみて欲しい 参考になるはずだ
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/191/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
この事故では、教訓となる事項も多い  高圧ガスの認定検査に関わる方は教訓にして欲しい
この事故では、検査実施前に,リスクアセスをしたのはいいことだが、安易に定められた手順書以外の余計なことをしたことをしたのが事故につながってしまった
過去2件の事故は幸い死傷者が出ていないが,爆発事故だから死傷者が出る可能性は十分あった
運転中の検査はものすごいリスクがあると思って欲しい
インターロックの運転中検査時に,トラブルが起きたときどう対処するかも繰り返し教育訓練しておいて欲しい

 

2020年07月24日

空気液化分離装置の事故-極低温

1959/7/11に山口県の宇部で空気液化分離装置の大爆発が起きている。http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000095.html空気を液化して、液体酸素、液体窒素アルゴンなどのガスを作り出す装置だ。工場では、窒素や酸素は数多く使用されている関係からこの装置は世の中で多用されている。とはいえ、運転や保全に係わらない限り知ることは無い設備かもしれない 
この設備の事故のキーワードは、温度が低いことから「極低温」だ。金属は、温度が低いともろくなる。低温脆性という性質を持っているからだ。温度の非常に低い設備は、金属材料面で慎重な配慮が必要だ。つぎは、「熱ひずみ」だ。運転を開始するときは常温だが、運転中は極低温になる。運転中と停止中と極端な温度差があるというのがこの装置の特徴だ。運転と停止を繰り返せば、温度差により金属に歪みが生じる。溶接部であればひびが入ることもあるからだ。
次のキーワードは、「濃縮」だ。液体酸素を作るプロセスで、アセチレンや炭化水素などが入り込み濃縮するとその物質が原因で爆発する。つまり、100%に近い高濃度酸素の中に可燃物が存在すれば濃縮物質により爆発事故が起こるからだ。
しかも、微量の蓄積で爆発してしまうというのが怖い。
もう一つキーワードがある。「液体酸素爆発」というキーワードだ。極低温の液体酸素が漏れて保温材や木などに染みこむと爆薬のような状態を作り出す。保温材も昔は、現在のような不燃性では無く動物の毛などが使われていた。毛は可燃物となり、酸素は支燃性ガスだからそこに着火源があれば燃焼の三要素が成り立つてしまう。これで事故が起きてしまうのだ。
空気液化分離装置という装置でキーワードを切り出してみたが、色々な装置は事故の引き金となるキーワードがある。
自分たちが取り扱っている装置を例に、何かキーワードか物質危険性や物理化学現象を切り口に話し合ってみることだ。
事故から学ぶことは、事故そのものでは無い。事故の教訓だ。
つまり、どんなことを知っていれば防げたのか、やってはいけないことは何だったのかを考えてみることだ。
事故の原因と対策だけを追っかけていては、応用問題は解けない。
教訓を学ぶことで、事故防止の本質的な能力を身につけることができる。
事故からの教訓は何かといつも深掘りをして欲しい。

2020年07月21日

労働災害発生率と工場の稼働率との関係

工場の稼働率と事故件数とは無関係ではない 一般的に稼働率が上がれば,事故や労働災害件数は増える
高圧ガスや消防関係の事故統計を見ても景気が良いときはやはり事故の件数は増えている
なぜ稼働率が上がると事故の件数が増えるのかと言えば,原因は2つだ
製造業の事故のパターンで多いのが挟まれ巻き込まれだ。なぜなら人と機械が混在しているからだ
人と機械と適度な距離を取れば事故は起きないが、トラブルなどが起きれば機械に近づかざるをえないからだ
稼働率が上がれば,機械のトラブルの件数も増える。結果として人が機械に近づく頻度が増え労災も増えるのだ
もう一つは、時間的余裕だ。稼働率が上がれば,仕事は増える 管理者も,現場の担当者もみんな時間的な余裕がなくなる
管理者というのは,部下にいかに時間を割けるかが安全を左右する
稼働率が上がったとき、いかに管理者の時間的余裕を確保するかは労災防止の大事なポイントだ
とにかく,管理者に現場をまわってもらうことだ
稼働率が上がって起きた災害事例を1つ紹介しておく ドラム缶を移動する時指を挟んだ事例だ
災害の原因はこうだ 稼働率が上がり,ドラム缶置き場はドラム缶の数が増えていった
仮置き場を作り対応すれば良かったのに何もしなかった この結果、ドラム缶同士のすきまが狭くなっていた
狭いすきまになったことで、ドラムポーターという運搬用機械も入らなくなった
結果手作業でドラムを移動させる頻度が増えた
あるとき,ドラム缶の中の液が半分程しか入ってないドラム缶を人が移動しようとしたら液が波打ちドラム缶が揺れた
作業員はバランスをくずし,となりのドラム缶と指を挟んだという労災だ
稼働率が上がったことにより、ドラム缶同士のすきまが狭くなっていたのが事故の発端だ
時間と空間というところに余裕がなくなると事故は起きやすい
稼働率が高くなった時のリスクを管理者や安全担当者はしっかりと見抜くことだ

 

2020年07月19日

2018年の消防関係事故の詳細データーを見つける

インタ-ネットを見ていると思わぬ所に貴重な事故情報があるものだ
消防庁が公開していたデーターで、2018年度の火災事故や漏洩事故の詳細情報を見つけた
火災・爆発事故の情報だ
https://www.fdma.go.jp/publication/database/items/kikentoukei03.pdf
流出事故の情報はここに情報がある
https://www.fdma.go.jp/publication/database/items/kikentoukei04.pdf

何百件もの貴重な事故情報が1件ごとに書き表されている
静電気による事故、凍結による事故、脱液時の事故などが沢山書かれている
どれを見ても繰り返し繰り返し起こっている事故のたぐいだ
過去100年以上繰り返し起こっている事故が場所と時間を変えて起こっているのがわかる
いつも思うのだが,何でこんな貴重な情報がきちんと毎年公開されないかと思う
事故は,決して目新しい事故が起こっているわけではない
同じような事故の繰り返しだ
それをきちんと行政は、公開し啓発してほしいのだがなかなかうまくできていない
事故報告書の文言を見ても、本当に事故の本質を見抜いているのか疑わしいものもある
それでも,企業の安全担当者は見て何かを感じ取れる貴重な情報もあるはずだ
時間があるならみて欲しい

2020年07月17日

事故データーベースは役に立つのか

公開されている事故データーベースが沢山あるが、数行で起きたこととを書き表す物がほとんどだ
ADICやRISCADなどはそのたぐいだ
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php
https://sanpo.aist-riss.jp/riscad/
いわゆる事故が起きたという事実を伝えるのが主目的だ
つまり,いつ、どこで何が起こったことの事実しか書いてはいない
しかも,詳細には書いていないのが一般的だ
起こったことは書いてあるが原因や教訓などは書いてないと思って欲しい
ニュース速報レベルの情報だと思って欲しい
これでは、事故の再発防止には役に立たない
事故を教訓として使うには,せめて数百文字の情報は必要だ。 少なくとも「なぜ」を知るための原因情報は必要だ
労働安全総合研究所というところが事故データーベースを公開している
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2018_02.html
こちらは、かなり事故のなぜがわかる.せめて事故情報はこの程度くらいの情報量は欲しい
中国で大きな事故が沢山の起こっているが,ニュースなどから原因や教訓が伝わることはない
ニュースは単に起きたことの事実を伝えるものだからだ
事故が繰り返すのは,世の中に教訓という物がうまく伝わらないからだ
行政からの情報も最近は少ない
沢山情報は持っているはずなのに原因や教訓が公表されることはない
世の中から事故を無くすのは本気で事故情報を公開していかないと事故を撲滅することはできない

2020年07月15日

事故の当事者だからわかること-教訓を伝えよう

自己紹介にも書いているが、このホームページやブログを始めたきっかけは事故を自ら体験したことにある
事故が起こると事故報告書が作成される。しかし、文字で全てが書き表されるわけではない
強度的な問題など工学的なことは、理論であるから正確に表現できる
ところが,人間の心理に至っては表現があいまいなところがある
事故発生時何をどう考えていたのか、どう判断したのか、何を間違えたのかなどは記憶があいまいになっているからだ
私も過去に,事故調査の為、当事者にヒアリングをする機会が何度かあったがこの聞き取り調査というのは実に難しい
結局,ヒアリングする担当者を変えながら同じことを3回聞いてなんとか聞き取りを進めることができた
時間と場所と,質問者を変えて同じ質問をしてみたのだ 聞くたびに答えが違うことも何度かあった
結局あいまいなところは,報告書には書き表すことはできない 「なぜ」の部分が、書き表せないこともある
先日、ある人のブログを見ていたら私と同じようなきっかけからブログを書いていることを知った
産業安全と事故防止について考えるというブログだ 1973年7月7日山口県で起きた事故の記述がある
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%81%AB%E7%81%BD%EF%BC%9B%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E6%93%8D%E6%A5%AD%E4%B8%AD%EF%BC%89/%EF%BC%BB%E6%98%94%EF%BC%BD1973%E5%B9%B47%E6%9C%887%E6%97%A5%E3%80%80%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E7%9C%8C%E5%BE%B3%E5%B1%B1%E5%B8%82%E3%81%AE%E7%9F%B3%E6%B2%B9%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%B7%A5%E5%A0%B4
この事故には多くの教訓がある。貴重な教訓を残してくれた事故だ
きっかけは,弁を誤って閉めたことだがその後の事故の連鎖で大事故につながった事故だ
今では当たり前で行っている重要弁に施錠をしていれば防げた事故でもある
事故から学ぶことは多い これからも,事故の教訓は次の世代に伝えていきたい

2020年07月13日

リスクマネージメントの難しさ

色々な企業でリスクマネージメントをやっている
仕事柄、色々な企業での活動実態を聞かせてもらっているがいつも感じているところがある
平均的なリスクマネージメントはやっているが,深掘りしたリスクマネージメントができているかというとそうは感じない
なぜかというと,関係者だけでやっているからだ
同じメンバーで価値観もあまり違わないメンバーでやれば,確かに平均点的な結果はでる
これでは,平均点のリスクマネージメントにすぎない。
それでも,リスクの8割くらいは拾い出せるだろうがそれでいいのかは考えどころだ
リスクマネージメントを始めたときは、それでいいが進化させるには深掘りが進まなければ無理だ
リスクマネージメントの進化には、価値観の違うメンバーが構成要員に入らなければ実現は難しい
例えば,化学物質の世界には,モノマーとポリマーという世界がある
モノマーは液体でネバネバすることもない取り扱いやすい物質だ
ところが,ポリマーは粘度も高く詰まりやすくやっかいな物質だ
職務経験の中で,ポリマーを多く取り扱ってきた技術者は詰まるのは当たり前と思う性質がある
ところが,モノマーを扱ってきた技術者は詰まるのはリスクだと考えるのが一般的だ
詰まれば,清掃作業が増えたり、詰まりで配管の圧力が上がったりで必ずリスクが増えるからだ
危険な化学物質を扱えば詰まり清掃時、薬液を被ることもある、詰まりが起これば,一般的にリスクが増えるのが常識だ
ところが,粘度が高いポリマーなどを常に扱う技術者は詰まるのが当たり前と考えるから。詰まりをリスクと考えない。
詰まりが当たり前と考えるエンジニアーに、詰まりのリスクを考えよと言ってもそれはリスクとして考えてくれないのだ
リスクマネージメントを上手にやるコツは、少しでもいいから価値観の違うメンバーを少し入れることだ
隠し味程度で価値観の違うメンバーを入れていくことだ それがリスクマネーメントの活性化につながるはずだ

2020年07月11日

「設備の老朽化」と「団塊の世代の退職」

事故原因としてよく取り上げられるのが、「設備の老朽化」と「団塊の世代の退職」という2つのキーワードだ。
前者は、ハード面の問題で、後者は技術伝承など人にかかわるソフト面の問題と考えることもできる。
しかし、設備の老朽化と言っても、機械が悪いわけではない。
設備は、人が異常を監視し、寿命予測を行うわけだから人間側にも管理や能力面で問題があったと考えておく必要がある。
異常を予見する能力だとか、異常の兆候を効率良く見つける能力が低下すれば、事故が起こりやすくなる。
言葉を換えると、決められたことを決められた通りにやる能力だけでは事故を未然に防ぐことは難しい。
色々考えて対応する、「考え抜く」力が今もとめられている。
団塊の世代とは戦後大量に生まれた人達のことだ
この人達は,ちょうど日本が高度経済成長していた1960年代後半から1970年前半に入社した人達だ
設備の建設や改造など色々なことを経験してきた人達だ
この人達が退職する時期が2000年代後半だった
急激な退職による技術伝承の問題を避けるため国は5年間雇用延長をできる再雇用制度を作った
この結果、2010年代前半迄はこの団塊の世代が会社には存在していた
先日、危険物施設の事故の傾向や技術伝承についての報告書を見つけた。
川崎の消防が各企業の安全担当者にアンケート調査した資料だ。
川崎市のホームページで紹介されている報告書だ。2015年に出された報告で参考になる内容が書いてある
設備の老朽化と技術伝承などの視点で川崎地区の現状を解析したいい資料だ
興味のある方は、一度見て見ると良い。
http://www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000066/66065/kikenbutujikokeikou.pdf

2020年07月09日

吸着熱による事故事例

吸着熱の事故はご存じだろうか。
反応器などの反応熱による事故は関心があるかもしれないが、吸着熱による事故を知らない人は多い。
発熱という物は全て事故につながっていくと考えておくことだ。重合熱、酸化熱、中和熱など発熱にはいろいろある。
しかし、この吸着熱という物は案外事故の原因と知っている人は少ないのが現状だ。
しかし、数十年に一度は起こっている事故のパターンだ。
1976年3月9日姫路に企業で臭いのある物質を貯蔵するタンクで爆発事故が起きている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200109.html
臭いを取り去るため吸着性物質を使っていたところ、吸着熱が発火点を超えタンクが爆発した事故だ。
400度を超える温度まで、吸着熱で温度が上がっていたという。
1976/3/9千葉県茂原市にある工場で同様な事故が起きている。
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2016/03/DANWA2014_02_No92.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%E9%85%B8%E3%83%A1%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%81%AE%E6%82%AA%E8%87%AD%E9%98%B2%E6%AD%A2%E7%94%A8%E5%90%B8%E7%9D%80%E5%A1%94%E3%81%AE%E5%90%B8%E7%9D%80%E7%86%B1%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%88%86%E7%99%BA%27
廃液タンクで臭いを除去するため吸着性物質を使っていたときに起きた事故だ。この時の温度は500度を超えていたという。
同じ企業でその後同じように、また吸着剤による発火事故が起きている。
吸着剤による、発火事故は案外世の中では知られていないが、10~15年毎に起きているのは事実だ。
400度から500度くらいに温度が上がるのだから、たいていの物質の発火点を超えている。
知らないと言うことほど恐ろしいものはない。

2020年07月04日

事故 タンク 爆発 混触反応 効率化 判断ミス 撹拌

インドで硝酸タンクの爆発事故が起こっている。
硝酸は爆発性物質ではない なぜ爆発したのかと考えていたら原因は混触反応だった
化学物質は,単独では安全でも何かと混ざるとはげしく反応することもある
今回の事故は,タンカーから荷揚げしてタンクに液を入れているときに起きた事故だ
2隻の別々の物質を積んだタンカーが入港した タンカーからタンクへ液を送り込んだのだが,入れるタンクを間違えた
すぐに上司に報告はしたが,上司はすぐに適切な対応はしなかった
時間が経ってから、なぜか本来入るはずのない物質が混ざり込んだタンクの循環ポンプを動かしてしまった
循環ポンプを廻したことにより、タンク内で,本来混ざってはいけない液どうしが撹拌で混ざったのだ
その結果、急激に異常反応を起こしタンクが爆発したというのだ
http://tank-accident.blogspot.com/2020/06/87.html
最終的に死傷者87名の記述がある 液の受入をしていた作業員は契約社員だ コストの切り詰めが見受けられる
液の受入でミスをしたのは,上司に報告しているから契約社員には全く責任はない
問題は,報告を受けた上司だ。その後いい加減な対応をしたことにより混触反応が起きた
間違えて入れた液体は、かなり比重差があり,タンク内では比重差により2層化して入っていたのだろう
液が分離している状態なら混ざり合うことはなくすぐには異境反応が起きなかったと思われる
ところが,この上司はなぜかタンクの撹拌ポンプを廻したらしい
この為,タンク内の液が一気に混ざり合いあっというまに混触反応が起こったらしい
混ざると危険は昔からの事故の要因なのだがいまだにこの種の事故は根絶できない
自分の職場で起こる混触反応は何かをもう一度考えて欲しい
反応器やタンク内で2層に分かれた液体を急に混ぜると急激に異常反応を起こし爆発などが過去に繰り返し起こっている
液が混ざれば事故になると常に考えて欲しい

 

2020年07月01日

事故は他人事なのか

事故が繰り返すのは,理由がある。
人は,自分の職場で起きた事故は真剣に考えるが,他職場や他社で起きた事故は他人事と考えてしまう習性があるからだ。
身近で起きた事故で無ければ、人は常に関係ないと思いたいのだ。
事故の内容によっては自分の職場で起こる可能性があるのに、人ごとと思いたいのだ。
他社の事故事例を学ばせるときに注意しなくてはいけないのは、事故は他社の事故事例と印象付けないような工夫が必要だ。事故の内容をあまりにも詳細に話してしまうと、このプロセスはうちの職場にはない,この物質も取り扱っていないと自分の職場とは関係ないと人は考える性質がある。
しかし,化学物質を扱っている限り物質の違いはあれ危険なことが起こるか可能性は同じだ。
品名にかかわらず,事故の可能性は存在する。
つまり,事故の教訓を学ぶときに,物質名はあまり言わないことだ。
物質名は言わず,危険物とか毒性物質というようにあらゆる職場にも共通する名称で表現するのが良い。
事故が起きたプロセスも、詳細は説明せず機器の種類などで説明することだ。
化学プロセスをあまり詳細に説明してしまうのも良くない
事故が起こったプロセスを詳細に説明しすぎると、このようなプロセスは自分の職場にはないと考えてしまうからだ。
タンクや,ドラムという機器レベル迄細分化し事故の話をする方がいい。
プロセスではなく,タンクで事故が起こったとかポンプで事故が起こったとかのように機器レベルで話をすることだ
タンクやポンプなら自分の職場でもあるはずだ。
そうすれば,他人の事故も身近に感じることができる

2020年06月29日

定修中蒸留塔が火災で中央部から折れる

定修中に蒸留塔で火災が発生したニュースが出ていた
8時間燃え続け火災の熱でタワーは折れ曲がり中央から折れ倒壊したようだ
60mの高さのあるタワーだからものすごいことになったのだろう
大牟田の製油所でのできごとだ https://www.oab.co.jp/sp/news/?id=2020-05-27&news_id=15384
硫化鉄による自然発火が原因のような報道がなされていた
製油所であれば,気おつけなければならないのは硫黄だ
なぜなら,製油所の原料である原油には燃えやすい硫黄が含まれているからだ
製油所は,この硫黄を途中で除去していくのだがどうしても装置の一部には残留硫黄がたまる
装置を停めたときにどうしても内部を清掃するためにマンホールを開ける
マンホールを開ければ,当然内部に空気が入る
空気と硫黄とが混合すれば自然発火の可能性がある
今回は,定修中に開けていたマンホールが原因でタワ-内部にある硫黄が自然発火したのだろう

製油所なら,硫黄の自然発火はかなり教育されているはずだ
それでも今回起きたのは何か原因があるのだろう
硫黄が原因による火災は数年周期で起きている
2017年に和歌山の製油所で起きているのも硫化鉄によるタンク火災だ
消防庁から次のような通達も出ている https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/290616_ki135.pdf
心して欲しい

2020年06月27日

通信技術の進歩-光通信

昨日から電話回線が光になった
今まではADSLでインターネツトを実施していた
さほど速度については不満ではなかったのだが,昨今コロナウイルスの関係で講義もWEBでという時代になってきた
そんな事情もあり,通信環境を光に変えてみた
光に変えたら通信環境は抜群に高速化されたのを実感した

かなりの効果がでている
おまけに、家の電話もアナログから光に変わり固定費もぐんと安くなるそうだ
トータル金額を計算するとさほど月月の支払いはアップしない計算だ
通信の世界を見て見るとものすごい進歩だ
昔インターネットを始めたころKBitの世界だった 今は数百MBitに近づいている
回線速度をチェックしたらダウンロードは100M、アップロードは150Mくらいだった
ISDNが出始めたときも64KBitのスピードとなり喜んだものだ
ADSLが出てきたときも早くなったと喜んだ
しかし,今回光にはおどろく
技術の進歩はありがたいものだ
IOTの時代はどううまく使いこなしていくかなのだろう

2020年06月26日

ロータリーバルブによる挟まれ巻き込まれ事故

粉や粒状物質という粉粒体を取り扱っているとロータリーバルブという機械装置を使うことがある
この機械は粉粒体を移送するにはいい機械だが時々中で詰まることがある
この詰まったときに良く事故が起こる
詰まれば誰でも内部を点検したくなる
点検すると言っても単に状況を見るだけならば事故にはならない
人間というのは,必ず手を出そうとする
手を出せば,また正常に回り出すだろうと思い込むのだ
内部で何か引っかかったり,詰まったりしているからそれを取り除けばいいだろうと考えるのだ
手を入れてしばらくして機械が動き始めることがある
すぐに手や指を引っ込めようとするのだが機械の動きの方が早いので巻き込まれてしまう
指先を切り落とすこともある
指そのものが切断されることもある
奥まで手を入れていれば,手まで巻き込まれる
私も化学企業で約40年間働いたが、災害事例で何度も聞いた
挟まれ巻き込まれないためには、LTTという安全対策がある
最初にやるべきことは機械が動かないようにすることだ 電気で動くなら,電気のSWを切るのだ。LOCKするのだ
次に、SWの所に表示をするのだ。つまり,目立つような札(Tag)を取り付けるのだ 触るなとか点検中だとかの札だ
最後は,本当に動かないか確かめるのだ.つまり、動かないことを確かめるのだ これを,英語でTRYという
この英語のLOCK,TAG,TRYの頭文字3文字を取ってLTTの安全対策という
言い方を変えると,安全には3つくらいの安全対策を同時に取っておかないと事故は防げ無いということだ
機械装置を使うなら,徹底的に挟まれ巻き込まれ対策を取って欲しい

 

2020年06月25日

事故や災害に思う-事故のきっかけとなった計装設備

事故や災害の報告書を見ると、爆発だ、火災だ、破裂だ、漏洩だとかいう見出しがあり、事故の概要が紹介されている。
原因も物質危険性や機械的なことが主体だ。ヒューマンエラーなど、一番肝心な部分はほとんど記載されていないのが現実だ。
事故の原因のうち半分程度が人にかかわるもののはずなのに、人にかかわる部分は記載が無いというのが実態だ。
人が状況認識をうまくできなかったのか、状況は把握できてはいたが判断を間違えたのか。
それとも、判断は正しかったのに、行動にミスや遅れがあったのかが知りたいところなのに何も書かれていない。
これが明確になっていなければ、人に関する再発防止の妥当性がわからない。
あえて書いていないのか、それともそこまで解析ができていないのかはわからない
たぶん解析ができていないから事故は繰り返されているのだと思っている。
また機械的な原因の記述に関しても、どちらかというと主要装置の故障は書いてある物の事故のきっかけになったであろう計装設備などの故障について触れている事故報告書は少ない。
化学プラントには、流量計、液面計、温度計、圧力計など様々な計装設備があり、運転員の判断を支援する設備がある。
これらの装置の故障が引き金で大きな事故になることもある。
計装設備がきっかけになった事故や労働災害なども沢山あるのだろう
化学プラントのリスクアセスを進めていくためには、タワー、炉など主要な機械設備という切り口だけでは無く、計装設備や電気設備などと言う切り口でも事故の危険源になる物は何かということを考えていく必要があるのだろうと思う
計装という切り口で「事故のきっかけとなった計装設備」というテーマで情報を整理して、投稿記事も書いていきたい。

2020年06月23日

摩擦熱で起こる事故-ベルトコンベアー火災

着火源について、現場で使われる火気や反応熱などの事故事例は多く良く知られている。
しかし、案外見落とされているのが「摩擦熱」だ。
摩擦が起これば熱が発生する。当然、発火点以上になれば、物質は発火する。火災になるか爆発になってしまうかだ。
ベルトコンベアーなどの火災はこの摩擦熱が原因であることが多い。
先ほどネットを見ていたらこんな事故が報告されていた
https://www.kanaloco.jp/article/entry-377871.html
ゴムという可燃物が存在するから着火する。
過去にも多くのベルトコンベアー火災は起きている
https://ecoeng.exblog.jp/16955693/ 
ロータリーバルブも摩擦熱に注意する必要がある。
内部に歯車があるからだ。歯車部の摩擦で、摩擦熱により着火爆発が起きている。
温度に敏感な過酸化物をロータリーバルブで輸送していて起こした事故もある。
排気ダクトなどの火災は摩擦熱が原因で起こる事例も多い。
ダクト内の換気ファンの羽根がダクトと接触して摩擦熱で着火火災になる事例だ。
工場だけでは無く研究所でも起こる。ダクトの換気ファンなどはめったに点検しないから、このような事故が起こる。 
ポンプの軸受けも注意が必要だ。ベアリングが錆びて摩擦熱を発生して着火。
グランドから漏れた液が、摩擦熱で着火という事故事例もある。
気体がすきまから噴き出すときにやはり摩擦熱が発生する。流動による摩擦だ。こんな文献もあるので参考にして欲しい。https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/dannetu.pdf
摩擦熱にも注意を払って欲しい。

2020年06月21日

中国でタンクローリー爆発死亡事故

中国で高速道路上でタンクローリーが爆発したという
死者19人、負傷者170名以上という大惨事だ
爆発は2度あったという 1回目は高速道路で 2回目は吹き飛んだタンクが近くの工場に落ち再度爆発したという
この2回目の爆発地点には人が沢山いて被害を大きくしたようだ
https://www.afpbb.com/articles/-/3288374?pno=2&pid=22442430
https://www.afpbb.com/articles/-/3288374?pno=0&pid=22442429
https://www.news24.jp/articles/2020/06/14/10661300.html
タンクローリはLNG(液化天然ガス)を積んでいたいたようだ
日本で起こっている過去のタンクローリー爆発事故を紹介しておく
今から約半世紀前、1965/10/26日に兵庫の高速道路でLPGタンクローリーが爆発した 陸橋に激突した事故だ
運転手の過労による居眠り運転と言われる 5人が死亡26人が負傷している
漏れたLPGが気化し、蒸気となって蒸気雲と呼ばれる爆発混合気を作った
すぐには爆発しなかったが、しばらくして大爆発を起こしたのだ
タンクローリー事故で怖いのは、気化した可燃性ガスに火がつくから激しい爆発が起こるからだ
蒸気雲爆発と呼ばれる現象には注意が必要だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012036.html
この事故をきっかけに日本では消防法が改正され規制が強化されている
もう半世紀前から色々な対策を取っているがなかなか事故そのものを無くすことができないのが現状だ
海外でも事故は繰り返している
https://www.afpbb.com/articles/-/3233331

2020年06月19日

工場の解体工事中爆発死亡事故

Liイオン電池の部品を製造する工場で解体工事中爆発が起きたという
解体していた工事作業員が爆風で吹き飛ばされ2時間後に死亡したという
ニュースでは火は見えなかったと書かれている
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1102351
どうやら、ステンレス製の容器を解体していたようだ
中には有機溶剤が残っていたという
もし火を使って容器などを溶断していれば当然有機溶剤は暖められ爆発混合気をつくっていたはずだ
そこに生の火が入れば爆発することになる
容器を切断していて爆発死亡事故というのは繰り返し起こっている
容器の中に何か残っていてそれが引き金になり爆発をするのだ
容器は金属製だから中は見えない
撤去工事だから、作業している人は中は空だろうと思い込むのかもしれない
もしくは内部の洗浄不足だ
過去に類似の事故が起きている。ガソリンスタンドの地下タンクを撤去するときの爆発事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200038.html
教訓となることも書いてあるので一度読んでみると良い
今回の事故は、内部を洗浄していたかわからないが「洗浄」というものは結構難しい作業だ
完全に危険な物を取り除くのは難しいからだ
確かこの企業は、延岡の解体工事でも火災事故を起こしていたような気がする
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_40955.html
解体工事を甘く見ないで欲しい

2020年06月17日

配管サポートの大切さを感じて欲しい

配管にはサポート(支持)が取り付けられている
大きな配管であればその重量を支えるためにサポートを取る
1/2Bや3/4Bの小さな配管であってもサポートは必要だ
例えば、振動のあるケースだ。ポンプのエアー抜きやドレン弁などだ
なぜかと言えば、ポンプはモーターなどで回転している
わずかではあるが回転により、弁も微妙に振動する
ポンプ本体とエアー抜き弁などの接続は、小口径配管と呼ばれる細い配管はネジの場合が多い
ネジは強度的に弱い 振動が続けば折れることもある
つまりサポートを取らない弁で、ネジ接続の場合はいつかネジ部が折れることもあると言うことだ
実際にそんな事故は何度も起きている
エアー抜き弁の根元が折れればポンプ内の液が漏れ出す
可燃性のものであれば火災になると言うことだ
こんな事故が報告されている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200032.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00023_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00023.pdf
たかがサポートと思わないで欲しい エアー抜き弁だけではなく、ドレン弁の振動で配管折損事故も多い
ポンプや圧縮機などは目には見えなくても機械は微妙に振動している
振動が繰り返せば一番弱いところが壊れる
たいていはネジで接続した部分だ ネジは折れやすいからだ
一度自分のプラントを「配管サポート」という切り口で点検して欲しい

2020年06月15日

RISCAD事故データーベースが再開-事故データーベース

長い間休止していた産総研が提供する事故データーベースRISCADが再開したそうです
かなり長期間休止していたデーターベースです ここを見てください  https://r2.aist-riss.jp/
RISCADはあくまで速報の情報です、教訓を伝える物ではありません
単なる事故情報速報版と考えて下さい たまに詳しく解析していることもありますがわずかです
過去の事故事例を学ぶことは重要です。今まで、こんな事故事例データーベースを見て事故の教訓を集めてきた。
①高圧ガス保安協会事故事例データーベース https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/comb.html
②Deyamaの提供する事故事例データーベース http://deyama.a.la9.jp/ver_1/saigai.html
③失敗知識データーベ-ス http://www.shippai.org/fkd/index.php
④労働安全衛生総合研究所事故データーベースだ。数千件の事故情報がある。https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2018_02.htmlを参照されたい。
この情報データーベースには、正確な日時が記載されていない。何年という年度はあるが日時の情報が無い。
他の情報データーベースと合わせながらたぶんこの事故だろうと思い解析を進めている。
RISCADの情報とは違う視点で、いい内容が書かれてはいるのだが惜しいことに日時情報が不足しているのが欠点だ。
せめて事故データーベースと言うなら、発生日については正確な情報を提供して欲しい。
これらの情報を組み合わせながら、約10年くらいかけて自分なりに約6000件の事故事例を勉強してきた。
それぞれの、データーベースに記載されている内容は様々だ。必ずしも、同じことが書かれているわけでは無い。
事故というのは、色々な視点で見ていかないと事故の教訓が得られない。特に、人という切り口で原因を書いているものは少ない。
事故は多面的に見て、色々なことがわかる。これからの事故データーベースについて求めたいのは、教訓を書いて欲しい。それから、変更管理の視点で失敗の要因を書いていく行く必要があると思う。とはいえ、前述のデーターベース提供者には感謝したい。これらの情報が無ければ、過去の事例を学ぶのは難しいからだ。これからも、提供をお願いしたい。

2020年06月13日

実験室での電気ドライヤーによる火災事故

実験室で詰まった弁をドライヤーで暖めている時に起きた死亡事故だ。
まだ26才の研究員が酸欠と全身やけどで死亡した。
事故の状況はこうだ。
実験設備から液を抜く弁が詰まった 詰まりを取ろうと、弁を電気ドライヤーで暖めた。
防爆ではなく、市販の電気ドライヤーだ。
ドレン弁は開けたままの状態だった。
加熱して溶解したことにより急に詰まりが取れ、弁から液が噴き出してきた
液は可燃性だ。 可燃性蒸気にドライヤーの高温部で火がついた。
火は一気に燃え始め、研究員の作業着に火がついた
全身やけどになったという
ナイロンを作る実験をしていたらしい
電気ドライヤーが着火源になるとは考えていなかったのかも知れない
大手の総合化学メーカーだ
うすうす誰かは危険だと気づいていたのかも知れないが歯止めがかけられてはいなかったのだ
研究室だからと甘くみないで欲しい
可燃物を実験に使っていれば、たとえ電気ドライヤーでも火がつくと言うことだ
詳細はここをみて欲しい
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200064.html

2020年06月11日

なぜヒューマンエラーは減らないのか

色々な安全講演をしていて、講演が終わるとヒューマンエラーが減らないと質問を受けることが多い。
私が回答する答えを紹介しておく。最初の答えは、「原因と対策が合っていない」が答えだ。
ヒューマンエラーの原因をきちんと解析できていないのが、問題点だ。
例えば、何か作業ミスをすると、対策は再教育をするで対応しようとする。
しかし、何を教育するのですかと尋ねると、作業手順書で再教育するという答えが返ってくる。
どこに、ポイントを置いて教育するかと聞けば、全てだと答えが返ってくる。
つまり、原因の特定無くしても、教育さえすればミスを防げると考えている典型的なパターンだ。
人がミスしたのはなぜかが、全く解析されていないところに問題点がある。
人の行動は大きく分けて、①情報の入手、②判断、③行動というように三つの段階を経て何かが行われる。

この3つの内どこでエラーが生じたのか見極めないと、正しい対策が打てない。

例えば、暗くて情報が入手できなかったなら、対策は明るくすることだ。何か障害物があって、見えなかったら、対策は障害物をどけることだ。

注意表示に気がつかなかったのなら、注意表示を見やすくするか文字を大きくすることが対策だ。

判断でミスをしたなら、その原因を突き止めることだ。

作業手順書の表現に曖昧さがあって判断ミスをしたなら、そこの部分をわかりやすくすれば再発をすぐに防げる。
このように、原因と対策が正しく整合すれば再発は防止できる。
しかし、企業の中にヒューマンエラーの原因をわかりやすく体系的に分類して教育できる人材がどれだけいるかと見て見ると、ほとんどいないのが現実ではないだろうか。

なぜ人はミスをするのかという、人の行動や弱点をきちんと層別したとらえ方ができないと、ヒューマンエラーをシステマチックにつぶしていくことは難しい。

安全を担当する人は、人はなぜミスをするのかというものにもっと関心を持って欲しい。

そういうテーマの本があれば、是非読んで人のメカニズムをよく知って欲しい。

最近は人間工学という言葉をあまり聞かなくなったが、人がミスをするメカニズを知り、人に優しい設計をする学問だ。

人の判断や行動のメカニズムなどをわかりやすく書いた書籍などがもっと増えてくれれば、ヒューマンエラーも減るのではないかと考えている。

2020年06月09日

タンク周りの火気工事で起こる爆発事故

タンクの側板や天板などで火気工事することがある。
タンクの上に、計器などを新設すると電線管用のサポートをタンクの側板などに溶接して取り付けるケースだ。
当然、火気工事であれば養生が必要だ。可燃物のタンクであれば、液を抜きパージまではするだろう。
これで、安心してしまうから事故が起きる。タンクの液を抜いたらばそれで安全というわけではない
安全を配慮し脱液をしていても、火気工事を始めて、しばらくしてタンクの中から煙が出始めてしばらくして爆発したという事例がけっこうあるのだ。
盲点は何かというと、「工事の場所はタンクの外側」だから事故は起きないという安心感なのだ。
外側だから事故は起きないと思い込んでしまってはいけない。
タンクの外側の工事だから、タンク内部で何かが起きるはずが無いと思い込んでしまってはいけないのだ。
タンクの外側の火気工事であっても、溶接などの熱は千度近くもあるはずだから、内部へ伝熱して伝わると思わなければいけないのだ。
溶接作業をすれば、タンク内側の金属板の表面温度は数百度にもなる。数百度もあれば十分着火温度だ。
タンク内の液を脱液したといっても、タンク内部は洗浄しているわけでは無いから油分がこびりついていることがある。
これが、熱せられて低沸点物の可燃性ガスがタンク内に充満していくことがある。時間が経てばガス濃度は増していくから、爆発混合気がタンク内部にできてしまうのだ。
溶接の伝熱で着火温度以上になってしまえば、あっという間に着火爆発という事態に発展してしまう。2010/9/24にこんな事故が起きている https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/51/5/51_339/_pdf/-char/ja
爆発まではいかないにせよ小火や火災はかなりの事例がある。
タンクの事故事例を紹介したが、金属製の排気ダクトなどでも外側で溶接などをしていると同様の事故は起きる。ダクトの内側に油スラッジなどが付着していることがあるからだ。
タンクの外側の火気工事だから安全だと思わないで欲しい

2020年06月07日

事故や災害に思う-事故は教訓を伝えよ

各地で講演すると必ず事故事例を話したら、その事故の対策を知りたいという要望が出る。
私が、限られた時間で講演する目的は、限られた時間に本質的なことを伝えたいのだ。
つまり、事故事例を話すのは。その事故を伝えたいからでは無く、その事故に含まれている貴重な事故の教訓を伝えたいからなのだ。その事故の、個別的な事故対策を話すのが目的では無いのだ。
個別的な事故の対策で一番知りたいのは、人に関する判断ミスなのだが、現実その情報を得ることは不可能に近い。
物質危険性や機械の故障原因など、工学的な部分は事故報告には書かれているが
しかし、人に関する人文学的な情報は事故を起こした企業からまず公開されることは無い。
事故の原因の半分以上は、人のミスと言われるが、事故を起こした企業が人にかかわる部分を公開することはほとんど無い。
つまり、人に関する情報が公開されないから事故は繰り返すといっても過言では無い。
全く同じ事故が、同じように二度と起こることは無い。
人は賢いから、事故に直接かかわった人は事故から何かを学び同じ事故は起こさないからだ。
とはいえ、直接に事故にかかわらない人は、情報を手に入れることはできない。
事故の本質に触れることはできないので、また同じような事故を他の人は起こす。 
これが、事故が繰り返されるからくりだ。
このような背景から、事故事例を簡単に説明しても対策まではあまり触れていないのだ。
また、あえて対策を説明していないのは、事故の対策は無数にありそれを説明していては無限の時間を費やしてしまうからだ。
時間は限られている。限られた講義時間で最大の効果を上げなければ時間の無駄だ。
私は、一つの事故から、他の職場でも教訓としてつかえるものを発掘し伝えることが、事故防止には不可欠な活動だと考えている。
時間は限られている。限られた時間で、いかに有効な情報や、気づきを伝えられるかは非常に重要な要素だ。

2020年06月05日

2019年の消防統計が発表されていた

消防庁から、昨年のコンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計が発表された。
毎年5月末に発表されている。
コンビナートでの事故統計だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/778a9538490d926ff9043e5db8331459fe204639.pdf
2018年と、2019年と比較すると、件数は2019年は減っている
これは、高圧ガスで漏洩の定義が変更されて、微少漏洩は計上しなくなったせいも関係しているのだろうか
役所が違うのでその記述はない
件数が増え時は論評しているが、減ったことには触れられていない気がする
2019年は実質件数は横ばいだ
22/26頁から主要事故の記述がある。
しかしどれも報道すらされていないものばかりと感じた
事故の事実を伝えるだけではなく、事故からの教訓がもう少し欲しいところだ


こちらは危険物取り扱い施設での事故概要だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/200529_kiho_02.pdf
危険物施設の数は減っているのに、危険物事故の件数は確実に増えているとの記述がある。
背景にあるのは、管理密度がどんどん減っているからだろう。
つまり、人も金も投資は減っているはずだ。そこに背景はあるのだろう。
平成元年と、令和元年と事故件数を比較しているが、平成元年はバブルがはじけて企業は不景気だったはずだ。
つまり平成元年から10年くらいは、設備の稼働率は低いときだから、単純に現在と比較するには少し無理があるのだろう
過去と比較は本当に難しい
31/34頁から、2019年(令和元年)に起きた主要事故の概要が記載されている
参考にするのも良いだろう

相変わらず元号で発表している。 グローバル化の中そろそろ考えを変えられないのだろうか
せめて西暦を併記書きすることくらいやって欲しい

2020年06月03日

インドボパールの有毒ガス事故

今年の4月末にインドでタンクからガス漏れ事故が起こっている。
深夜に工場からガスが漏れ、10人以上が死亡し、1000人近くが病院に運ばれたそうだ
インドでもコロナのせいで化学プラントを停めていて再稼働を始めた時に起こったらしい
https://www.afpbb.com/articles/-/3281972?pid=22352151
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200510-00000024-jij_afp-int

インドで起きた有毒ガス事例でボパールの事故という有名な事故事例がある。
アメリカの大手企業が関連する事故だ
歴史に残る事故で、その後アメリカ国内で化学工場などに関する法規制が見直される発端の事故だ
PSM(プロセス セーフテイ マネージメント)などがアメリカで法制化されたのもこの事故が関係している
http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CC0300003.html。
事故は毒性ガスが化学工場から漏洩して多くの住民が健康被害に遭ったものである。
数千人の人が亡くなり、数十万人が健康被害に遭う重篤な事故だ。
この事故は。事故後の通報の遅れや設備管理の問題点と捉えられるが変更管理の事故としても捉えておくことが重要だ。
問題となった化学物質は、水と接触すると反応する物質だった。
あるとき新任の管理者が、このプラントに赴任した。 水との反応を意識しなければいけないのに、プラントの清掃を部下に命じた。部下は、水を使って問題の物質が入っているタンク周りを水で洗浄した。
しばらくして、洗浄水がタンクに入り反応を始め大量の毒性ガスが発生したという事故だ。
新任で着任した管理者が水と反応する物質であることをきちんと意識していれば起きなかった事故だ。
もしあなたが、新しく管理者ととして着任したならまず徹底的に基本設計思想や、やってはいけないことを学んで欲しい。
指揮命令権のある管理者の言葉は重い常に感じて欲しい


2020年06月01日

現場監視人の重要性

定修工事など工事をしているときに現場監視人という人を配置する。
例えば溶接工事現場などだ。
溶接火の粉で万一火災が発生すればすぐに作業員が火を消すことが出来るとは限らない。
現場に、常時作業状況を監視する人がいれば、火災が起こってもすぐに消火器を使って火を消せることが出来る。
現場監視人が安全を確保する重要な役割を果たしてきた。
ところが昨今は現場監視人がめっきり減った。コストダウンのせいだ。人減らしだ。
では溶接工事を発注した側の、社員がパトロールを強化しているかというとそうでは無い。
社員の数も人減らしで、減らしているのだから、現場を細かくまわる余裕は発注者側にも無い。
結局、工事現場の管理密度は極端に減っているのが今の現実だ。
現場の管理密度を下れば、万が一の異常の対応能力は減る。
安全とコストとの問題はあるが、現場では何が起こるかわからない
現場の監視人など安全の監視コストの削減は安易に行えばどこかでつけが回ってくる。
何か異常が起きてしまえば、一人で対応することは難しい
誰かの力を借りなければ、被害を最小化することは出来ない
IOTの力を使えばいいのだろうが、それにもやはりコストがかかる
機械には能力の限界もある。総合的に臨機応変に対応できるのはやはり人だろう。
現場監視人の役割を評価して欲しい
リスクの高い工事には現場監視人をおいて欲しい。

 

 

2020年05月30日

なぜ事故が起こるのか-設計思想が伝わらない

設備というものは設計する人がいて、使う人もいる。
誰かが設計してくれなければ、設備が世に出ることは無い。
では設計することの思いをくんで、使う人は使用するかというとそうでは無い。
設計者とかなりかけ離れた考えで使われることは沢山ある。
設計者と、使う人との考えに差が生じることで事故が起きるのだ。
設計者も設計思想をきちんと文書で書き表しているかというとそうでは無い。
仕事というのは、次から次へと新たな要求が来る。次の仕事に、かまけてたいていの人は設計思想を残さないまま次の仕事にうつる。
そうして、設計思想が明文化されないまま色々な設備が世の中で使われることになる。
設計者の考えた通りに設備は使われるとは限らない。
そこに難しさがある。設計者は、色々なことを考えるが、無限の可能性については知る術も無い
良かれと思ったことも裏目に出ることもある。
利便性を考えすぎれば、リスクも生じる。
設計というのは実に難しい。相手がどう使うかも考えながら設計しなければいけないからだ。
昨今分業化がどんどん進んでいる。設計する人。あなたは使う人というように仕事はどんどん分業化している。
化学プラントもそうだ。昔と違って、設計も、保全も両方経験している人は少なくなってきている。
ましてや設計も運転も、安全も経験したなどという人は少ないはずだ。
安全というのは調和とバランスだ。設計者が何を考え、運転者はどう考え設備を使うのかの両方を知る人が必要だ。
設計者の考え方を伝えていかないどこかで事故が起こる。
設計思想について深掘りをして欲しい。

2020年05月28日

事故や災害に思う -企業の供給責任

コロナウイルスのせいで、中国で生産される物の供給が一時途絶えた。
日本で組み立てる車や多くの機械装置が作れなかった。薬の原料となる化学薬品なども手に入らなかったという。
事故や災害が起こると、この供給問題が必ず表面化してくる。これは、化学業界も同様である。
自社製品のマーケットシェアーが高ければ高いほど、事故発生時の影響は大きい。
国内企業への影響だけでは無く、世界中のお客様に影響を与える事態も発生する。
企業の事故は、経済への影響という視点でとらえる時代になっている。
化学産業の事故が、多くの企業に影響を与え始めたのは半導体産業が盛んになり始めてからだ。
半導体製造には特殊な化学物質が必要だからだ。1993/7/4、四国にある化学工場で起こった事故を思い出す。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200024.html
半導体を作るときに使うエポキシ樹脂を製造するプラントでタンクの爆発事故が起きた。
当時この工場では、世界で消費する量の6割を生産していた。事故の影響で供給が止まり、半導体企業に大きな影響を与える恐れがあった。幸いにして数ヶ月の在庫が、流通メーカーにあり事なきを得たが一つ間違えば大変なことになる。
当時の事故の記録があるので紹介しておく。事故の原因は実にたわいの無いことだった。タンクが2つあり別々の製品が貯蔵されていた。2つのタンクは配管で接続されていて、1つのバルブで縁切りがされていた。この縁切りしていたバルブが漏れ、液が混ざってしまったのだ。混ざると異常反応を起こす物質であったため、タンクが爆発してしまったのだ。「混触」が原因だ。
開発担当者は、混ざると危険ということは知らなかったという。
製品開発の段階で、混触の危険性について安全性評価をしていなかったのだろうか。
混触事故は繰り返し繰り返し起きている。
化学物質は組みあわせが悪いと異常反応を起こしたり発火することがあることは昔から知られている。
しかし、案外現場の人達には知られていないのが現実だ。
混触については、もっと啓蒙を図らないと混触事故は減らせないと感じている。

2020年05月26日

ベテランが起こすヒューマンエラー

事故や災害で怖いのはベテランが起こすヒューマンエラーだ。
ベテランが犯すミスで多いのが過去の成功体験で誤った判断をするケースだ。
このまえ、うまくいったという判断で単純に判断する事例だ。
ベテランであれば当然責任ある地位についている。
その人が間違えれば大きな事故になる可能性がある。
しかし、世の中で起こっている事故の中でベテランのヒューマンエラーが多いことに気づいていない。
それが、世の中で繰り返し事故が起こる要因だ。
企業の中で、新人と呼ばれるのは数年だ。残りは、中堅者やベテラン層と呼ばれる。
つまり社員の2/3以上はベテラン層と呼ばれる人達だ。ベテランだからといってミスを犯さないわけではない。
仕事をする限り必ずミスを犯す。ベテラン故に犯すミスを考えて欲しい。
その対策を考えないと、たぶんヒューマンエラーの半分以上は減らないのではないだろうか。
安全工学会の文献を読んでいて、参考になる文献があったのでそのURLを紹介しておく。参考にして欲しい。https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/38/6/38_352/_pdf/-char/ja
小松原さんという人が書いている。
この方は、2016年に丸善出版から「安全人間工学の理論と技術」という書籍を出版されている。
副題は、ヒューマンエラーの防止と現場力の向上とある。
ヒューマンエラーについて体系的に書かれている内容だ。興味のある方は一度読んでみると良い。

2020年05月24日

混触危険性に関する参考書籍や文献

混触危険性という言葉は聞いたことがあるかもしれない。
言葉は知っていても、いざ自分の職場できちんと取り扱っている物質の組み合わせを検証したことは無いが実態では無いだろうか。
だから、世の中で今でも混触事故が起こり続けている。
背景には、何と何を組み合わせたら混触事故が起こるのかという情報がうまく提供されていないからだ。
体系的にその情報は提供されていないからだろう。
SDSにもさらっと混触危険性は書いてあるが、世の中に存在する何百万という物質と組み合わせたらどうなるかは書いてはいない。
私が知るところの混触に関する書籍を紹介しておく。
その-1 ブレスリック危険物ハンドブック 第5版 田村昌三監訳(丸善、ISBN 4-621-04507-5、定価42,000円)
研究データや事故解析データが掲載されている
その-2 化学薬品の混触危険ハンドブック 第2版 東京消防庁編(日刊工業新聞社、4-526-04019-3、17,850円) 常温、常圧下における混触時の危険性と推算データを記載
その-3 混合危険予測のための改良プログラム REITP2とその性能という文献がある 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/22/1/22_12/_pdf/-char/ja
資料名:安全工学 巻:22 号:1 ページ:12-19  発行年:1983年02月15日  
REITP2とは消防庁の委託研究(昭和50年)により、当時の東京大学吉田研究室が開発した混触時の熱的危険性を予測するプログラムの改良版REITP2である。(1247物質搭載) ( Revision2: Evaluation of Incompatibility from Thermochemical Properties )参考にして欲しい
その4アメリカの大気汚染局が提供している情報だ
https://cameochemicals.noaa.gov/

2020年05月23日

工事現場で溶接工事中にウレタン断熱材に着火火災

2020/4/29に韓国で建設中の倉庫火災で38人もの死者が出ている報道があった。
断熱材であるウレタンの工事中に、溶接の火花が着火したという。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/232790

ウレタンに着火する事故は繰り返し起きている。しかも、死亡事故につながる。燃えるときに有毒ガスを出すからだ。

日本でも2018/7月に同様な火災が起きている。東京多摩のビル工事現場で大規模な火災だ。
5人の作業員が死亡し、数十名がガス中毒となった事故だ。
火災現場からは、真っ黒い黒煙がもうもうと出ている。
https://www.sankei.com/affairs/news/181221/afr1812210042-n1.html
http://tank-accident.blogspot.com/2018/09/blog-post.html
ビルの建設をしていて、鉄骨の柱の火気工事をしているときに、ウレタンという断熱材に火がついたという。
鉄骨の周りには、開口部があったようである。開いているところから、溶接か溶断した火の粉が下に落ちていった。
床の下には、今回の事故原因となったウレタンという断熱材が貼り付けられていたようだ。
つまり、作業をしている人の下の階の天井部分に火がついたのだ。
わずかに開いた開口部から、水を入れたり消火器の消化剤をかけても下の階に火がついているのだからそう簡単には消せない。
上からは見えない部分に火がついているはずだからだ。監視人もいたそうだが、すきまで燃え始めたのですぐには気がつかなかったはずだ。
この工事の元請け企業は、1ヶ月前にも同じような火災を起こしていたという。ウレタンに火がつくと言うことは、わかっていたはずだ。
ウレタンというのは、いまから半世紀前にできた化学製品だ。
1690年代から使用されている物質だが、繰り返し繰り返し火災を起こしている。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=%E3%82%A6%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%80%80%E7%81%AB%E7%81%BD
ウレタンに関わる事故は世界中で起きている。燃えると有毒ガスを出すから、今回のような中毒による被害者も出す。
溶接工事の火の粉を甘く見ないで欲しい。1000度近くもあるからだ。燃えにくいと言われる物質でも数百度あれば火がつく。
火気工事を甘く見ないで欲しい。
ウレタンに関してこんな情報もある 参考まで
https://ameblo.jp/suzuki-naturaldesign/entry-12394332347.html

2020年05月20日

事故や災害に思う- 運転マニュアルに従わず起こる事故

運転マニュアルに少しぐらい変えた操作をしても事故は起こらないと考えている人は多いのではないだろうか
例えば温度を、少しくらい変えてもいいと思う人は多いはずだ。ところが、10度温度を変えただけでも反応速度は2倍になる。
20℃かえれば4倍だ。30度かえれば2×2×2=8倍になる 反応速度が上がれば、反応暴走になる
でも、たかが10度くらい変えてもと思う人がいるから事故は起こるのだ
濃度も同じだ。濃度を上げれば当然反応速度もあがる。安易に濃度を上げれば反応暴走なども起きる
2016年1月3日に埼玉県にある化学工場で事故が起きている。タンクの壁についた物質を、硝酸を水に溶かし洗浄していたところタンクが破裂したという。直径1m、高さ2mの小型タンクだ。
https://saitama-np.co.jp/news/2018/01/31/02_.html
タンクは金属製で、中の様子を見るガラス製ののぞき窓が破裂で破損してそこからガスが吹きだしたという。有毒ガスだという。2人の尊い命が、失われた。
事故から2年後の、2018/1/30警察は作業員が通常より多い硝酸を使うなど、ずさんな作業工程によって事故が起きたとして、作業員ら3人を業務上過失致死の疑いで書類送検した。
タンクの洗浄作業でマニュアルの3倍以上の硝酸を使ったために大量の有毒ガスが発生したという。
洗浄作業を早めるために、高い濃度の硝酸を使ってしまったという。65%希硝酸なら沸点約120℃、純硝酸なら83度だ。濃度が上がれば沸点は下がるから、沸騰すれば大量の蒸気が発生してタンク内の圧力は簡単に上がることになる
事故の原因は、何かと言えばやはり効率だ。短時間にタンク内の洗浄をしたいと思い3倍の濃度の硝酸を使ったのだろう
化学物質は濃度を上げればリスクは増大すると思って欲しい
今回の事故の教訓はタンクに安全弁や破裂板が無かったことだ。
タンク内で急激なガスの発生で圧力が上がりのぞき窓が破裂して有毒ガスが吹きだしたからだ
HAZOPでも急な圧力上昇は見落とさないで欲しい。安全弁があれば防げた事故かもしれない
ガラス製の覗き窓があれば、安全弁を有無をHAZOPで確認して欲しい

2020年05月18日

事故事例の上手な伝え方-イラストをうまく使え

企業が事故事例を材題にして事故の教訓を学ばせることは良いことではある。
しかし、教育するときの気をつけなければいけないことがいくつかある。事故事例を教える時は、事故内容に深入りしないことだ。
製品名や製造工程、機器番号などいらないものは一切省くことだ。「事故の内容を教える」ことが目的では無いからだ。
教育の主目的はなぜ事故が起こったのか、自分たちにも当てはまる教訓は何だったのかを考えてもらうことだからだ。
なぜ起こったのかを説明する時も、「物質危険性」や「設備」だけに着目せず、「人」という切り口で事故の経過を考察して欲しい。
事故の原因の半分以上は「人」に係わるものなのに、人の部分は省略されがちだからだ。
人と言っても個人という視点はなく組織という視点でも、できるだけ注意して見て欲しい。
つまり組織が担う「マネージメント」で抜けているところは無いかという視点だ。
冬場反応器が異常反応して爆発事故を起こしたという事例であれば、どうしても「爆発」という所にスポットライトが当たってしまう。事故報告書では、物質危険性だとか反応器の構造などに多くのページが割かれているのが一般的だ。
そうすると、事故事例の教育資料などでも、「物質危険性」や「設備」が教育の主体になり人の部分が抜け落ちてしまう。
冬場の事故であれば、反応器の温度が上がらないから蒸気を上げすぎたのかもしれない。
それは、個人のミスでは無くマニュアルに昇温速度を企業が規定しなかったのが事故の引き金になっているというのが事故の教訓ということになるからだ。
個人のミスでは無く、マネージメントの問題として事故事例を使いながら、企業内のマニュアルの見直しをすすめることが大切だからだ。事故事例を使って、事故を未然に防ぐ知恵を社員に与えていくことだ。マネージメントの失敗として過去の事故事例を活用して欲しい。
事故事例教育の教材は文字ばかりではだめだ。
危険の感受性も上げて欲しいからだ。写真が手に入るなら、危険を感じるような写真を入れて欲しい。事故そのものでは無くても、類似のものがあればそれも引用して使うことだ。文字だけの教育では危険の感受性は上がらない。
イラストも併用して欲しい。現場の状況などは、沢山の文字で表現するよりイラストを見せれば直感的に人は理解するからだ。

 

2020年05月16日

化学物質リスクアセスメント事例集

"化学物質のリスクアセスメントの情報は沢山ある。参考になるものもあるが、断片的なものも多い 全体を理解させてくれくれる資料ももあれば、深掘りし専門的な理論を主体にしたものもある。 実際問題。知りたいのは理論では無く実践事例を知りたいはずだ。 例えばこんな製造工程で、リスクを評価したらこんな問題点が見つかりどう対応したかなどのはずだ 大規模な化学工場であれば、安全の専門家が沢山いる 事故の未然防止に向け、専門家が指導してくれるはずだ しかし、中小の化学企業であればそうはいかない 専門家を雇う余裕もないし、専門家を造り出す時間的余裕も無い 国は少しでも、中小企業のリスク管理能力を上げようと様々な努力をしている この資料も、中小企業への貴重な情報提供だ。 実践情報を探していたところいい情報が見つかった 化学物質リスクアセスメント事例集という資料を見つけた https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/kagaku5.pdf#search=%27%E9%83%A1%E5%B1%B1%E5%8C%96%E6%88%90++%E7%88%86%E7%99%BA%27 中災防が厚生労働省から委託事業で,企業向けリスクアセスメントをした事例の紹介である。 火災爆発防止を事例に上げている 1件目は有機溶剤を使う企業のリスクアセスメントだ 自動車部品を造る工場だ 2件目も有機溶剤への注意点だ 危険源の抽出から対策までがうまく書かれている 有機溶剤は静電気により爆発火災を繰り返し起こしていると説明している 中小企業のリスクアセスメントの実施事例だが,アセスメントの切り口を見つけたい方には参考になるかもしれない。 爆発火災という切り口と、健康障害防止関係 の二つの切り口での事例紹介がある。 参考にして欲しい"

2020年05月14日

インドでガス漏れ死傷者多数

ネットニュースでタンクからのガス漏れ事故が報じられていた
深夜に工場からガスが漏れ、10人以上が死亡し、1000人近くが病院に運ばれたそうだ
インドでもコロナのせいで化学プラントを停めていて再稼働を始めた時に起こったらしい
https://www.afpbb.com/articles/-/3281972?pid=22352151
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200510-00000024-jij_afp-int
写真を見ると、タンクから煙が出ている スチレンという物質を保有していたそうだ
http://www.jsia.jp/sm/index.html
http://www.jsia.jp/sm/sm_01.html#T_b
スチレンは毒性がある 沸点は145度だから かなり温度が上がらないとガスは発生してこない
ただ、反応性物質だから反応は上がれば温度は上昇する
酸などとの混触反応も起こるという

過去のタンク事故を紹介しておく タワーからの廃液を入れるタンクで起きた事故だ
廃液の温度が上がり反応を始めタンクが破裂してガスが漏れた事故だ
確かタンク内の冷却と撹拌がうまくいかなかった事故と記憶している
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200008.html

インドの事故はまだ原因はわからないがコロナのせいで長期間タンクに保存していた時の温度管理などに問題があったのかもしれない
タンク内の冷却水や撹拌を止めていれば徐々に反応が進み温度は上昇する可能性はある
いずれにせよプラントを停止している間が長くなればなるほど事故は起こり易い
停止期間中は、必要人員しか現場に残さないから管理密度は小さくなるからだ
人が沢山いれば誰かが異常に気づく しかし、人がすくないと異常に気づく確率は減る
日本も省人化で人はどんどん減っている 
教訓とすべき事故だ

2020年05月12日

事故や災害に思う- 事故は非定常時に起こる

旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故から、約34年が経っ。1986年4月26日に起きた運転中の非定常作業で起きた事故だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85
この事故を若い人は知らないのかもしれない。世界に衝撃を与えた、史上最悪の放射能漏れ事故だ。未だに、半径数十キロには人は住めず周りは廃墟となっているという。この事故は、原子力発電所が通常運転をしているときに起こった事故ではない。
つまり、原子力発電所の動非定常時に起きている。原子力発電所の外部電源が切れた時を想定して、非常用設備が安全に機能するかを確かめる試験をしていた時に事故が起きてしまったのである。 本来なら、万一試験中に異常が起きても安全に原子炉が止まるようにしておかなければいけないのに、安全装置を解除した状態で、試験をしていたのである。安全装置を解除した状態で、試験を続けていたところ運転操作に失敗し原子炉が制御できなくなってしまい爆発が起こってしまった。爆発により大量の放射能が拡散したにもかかわらず、情報を隠したことにより被害が広範囲に広まった。事故は、運転員の操作ミスと当初は発表されたがその後の事故報告書では、多くの要因が重なって起きた事故であることがわかっている。設計段階から、運転操作が難しいという特性があった。つまり、運転が難しいと言うことは、それに見合った十分な教育訓練が行われていなければならないのに十分な教育訓練は行われていなかったという。この原子炉は、低出力では不安定という特性であったのに、試験はその危険な低出力運転状態で試験をするというハイリスクな試験だった。なのに、安全装置を解除した状態であったことがこの致命的な事故につながってしまった。更に完成を急ぐあまり、装置の耐熱材を不燃物ではなく可燃物に変更し工期を無理に短縮したという。この結果、火災も誘発させたのだろう。
2010年代、日本でも化学プラントで大きな爆発事故が起きている。化学反応によって発熱反応をする設備は、冷却が出来なければ反応暴走を起こすことになる。熱を制御できなければ、事故になってしまうからである。反応器などの装置は、発熱量に対して冷却能力はどのくらいの安全率を見て設計しているのだろうか。機械の設計をする際には、材料強度に対して3倍程度の安全率を見て設計すると言われる。JISなどで、安全率を規定されていると聞いたことがある。化学工学の世界では、設計に当たって安全率という数値的な基準は企業の中で、きちんと決まっているのだろうか。技術者の設計に任されているのだろうか。化学プラントにある発熱を伴う装置については、冷却能力の安全率について深く考えてみる価値があるような気がする 

2020年05月10日

化学プラントでの技術伝承の難しさ

なぜ事故が起こるのかの要素に技術が伝承していなかったという事実がある。
企業が存続していくためには、人から人への技術のバトンタッチが不可欠だ。
日本の化学産業では、1990年代のバブル崩壊期に人を採用しなかったという技術伝承の大きな問題点がある。
1990年代は失われた10年と表現されることもある。日本がお金も投資できない、人も採用出来なかった時代だ。
技術というのは人についてくる。技術は全てが紙に書き表せるものではない。
運転マニュアルは全ての技術を書き表しているかというとそうではない。
運転マニュアルというものは、先輩の成功体験を書きあらわしたものである。
こうすれば、うまくと言うことのみ書きあらわしたのが運転マニュアルだ。
こうしたら、失敗したなどの失敗事項が運転マニュアルに書き表されることはあまりない。
人間が必要なのは、成功体験ばかりでは無い。失敗体験も必要だ。
運転マニュアルには失敗に関する情報がすくない。だからトラブルが起こると対応できずに事故が起きる。
人から人へと時間をかけて技術は移動するもので、移動する相手がいなければ技術は途絶えてしまう。
とはいえ、今の世の中時間をかけて技術を伝承する時間のゆとりはなくなってきている。
製造プロセスが、効率化するように、技術の伝承も効率化が求められているはずだ。
教育も伝承の効率化を真剣に考えなければいけない時代だと思う。
でも、現実の教育を見ていると効果的な教育が行われていないのが実情なのだろう。
イメージがわかる映像や、イラスト、写真などを効果的に使った事故防止教育の推進が求められている。
教育や技術伝承はやることに意味があるわけでは無い。
いかに効果的に、OFF-JTで印象に残るプレゼンや、OJTをするか常に考えて欲しい。
人の頭の中に短時間に強烈に印象づける教育を目指して欲しい

2020年05月08日

高圧ガススーパー認定制度での認定要件

高圧ガススーパー認定制度でのソフト面、ハード面の認定要件をまとめてみるとこうだ。 まずソフト面で人材や組織体制を要求している
人という切り口では、高度な人材の確保と育成だ。つまり安全面で、潜在する危険源を確実に抽出し高度にリスク評価できる人材がもとめられている。HAZOP(Hazard and Operability Study)などの安全性評価手法を使いこなせる人材だ。
事故情報のデーターベース化などによる蓄積情報の充実で過去の教訓を使いこなすことも必要だ。
変更管理体制の充実も求めている。事故は何か「変更」したときに起きやすいという考え方からだ。
運転面では、定常時のみならず非定常時においても異常に対応できる高度な人材を育成し配置することを求めている。
事故は、緊急時、運転開始時、運転停止時や試運転時などいわゆる非定常時に起こりやすいからだ。
技術管理面では、長期連続運転を可能にする管理基盤を体系的に構築し、管理するシステムを作り上げてPDCAを回すことを求めている。
高圧ガス保安法ではこの仕組みを保安管理システムと呼んでいる。アメリカのPSMなどの要求項目を取り入れたものだ
検査管理面では、検査データーを高度に評価する人材を要求している。保全技能士、技術士、電気主任技術者などの有資格を入れて検査体制を充実することを求めている。長期連続運転には、高度な余寿命を推定する技術が必要だから。
膨大な検査データーをビックデーターとして解析し高度に活用し評価できる人材が求められてきている。
教育訓練では、緊急時対応能力の向上、体感型の教育訓練設備の活用やベテランOBを活用した技術伝承が要求される。
ハード面では、最先端の高度な技術導入と情報の活用を要求している。ドローン技術の活用、IOT(Internet of Things)やビックデーターなどの先端技術などが例に挙げられているが、最新の設備診断機器やセンサー技術も含めてのことだ。ドローン技術は図1にように高所での機器異常点検が試行されている。
機器点検分野では、超音波などを使った非接触型設備診断器具の活用、3Dレーザースキャンによる腐食箇所の早期検知などだ。
計装分野での先進技術としては、アラームマネージメント、AIなどを活用した運転支援システム、モバイル端末利用によるデーター収集と解析、赤外線カメラと組み合わせた高度ガス検、自己診断機能を持つスマートバルブの活用などが既に始まっている。安全計装システムの導入も高度な技術と言えよう。経済産業省からこんな文章が出ているので参考にされたい
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/images/sp-nintei/pdf/sp-nintei_naiki300330.pdf

2020年05月06日

高圧ガス認定制度の変革

高圧ガス取締法のもと、長期連続運転が可能になったのは1987年からだ 今から33年前のことだ
従来1年毎に定期検査が必要だったのが、2年に延長された
そうは言っても、それに値する技術や管理体制のある企業に限られた。 これを、高圧ガス認定制度という
その後、約10年が経過した1997年に高圧ガス取締法が高圧ガス保安法と名称に変わる
1990年代は、バブルがはじけ経済は落ち込み、グロバル化が進んでいた時代だ
国が企業を取り締まるという体制から、企業自らが自主的な保安をおこうなうという世の中に変わった
がんじがらめの規制では、国際競争力を維持していくことが難しくなってきたという背景もある
確か1999年だったと思うが、2年から4年の長期連続運転が出来ることが可能になった
2003~2007年頃高圧ガスの認定事業所で検査をしないなどの不祥事多発した。認定取り消しを受けた企業が続発した
2005年に認定要件が見直されている
4年連続運転が可能になって約20年経った、2017年から高圧ガスのスーパー認定制度というものが運用し始めている
最新の技術や高度な人材を育成して安全・安定運転が出来る能力を持った企業を認定する制度だ
この認定を受けることにより企業は次のようなメリット得ることが出来る
①最長8年という長期連続運転が可能 ②設備の検査方法を自ら設定が可能 ③許可を得ず自主的に行える範囲が拡大
④認定更新が5年から7年へと長期化
 長期連続運転が可能になると言うことは、修繕費が大幅に削減でき企業にとって大きなメリットが発生する。
検査についても独自のものが可能となればコスト面でも有益となる。許可を得る範囲が減ると言うことは申請に費やす時間が減り人的コストが節約となる。更に7年間もその利点を利用できるメリットは大きい。
 そうは言っても、この制度を利用するには企業としていわゆる「高度な保安技術」を持っていることを証明しなければならない。企業はソフト、ハードの両面で国の要求条件を満たす必要がある。
次回のブログでソフト、ハード面の要求条件をとりまとめて説明することとしたい

2020年05月04日

計装技術の変革

前回は19年前の自分の事故体験を書いた。 今回は少しさかのぼって約半世紀ほど前の話から始めて見たい
1970年代前半に千葉にある石油化学コンビナート企業に入社した。 入社して始めて携わったのが計装という分野である
学校では化学を学んだが計装という世界は全く知らなかった
入社して1ヶ月ほど研修を受けたがなにもわからない中で勤務は始まった
最初は毎日毎日先輩についていくOJTである
仕事は計装トラブル時の対応だ 先輩について見よう見まねでなにをするのかを学んでいった
計器が壊れたら代替機をもっていって交換すると言うのが仕事だった
計器の取説を読んで故障時の対応法を学んで行った
計器はただ交換すればいいわけでは無い 危険な流体を取り扱う計器もある 安全に液を抜き出すのは結構なノウハウがいる
調節計を交換する時は、手動操作にして縁切りをする 手動調節器という機械を用意して手動運転状態にする
調節計の交換前にPID設定値を写し取って、代替機にも再設定してやる
交換したら、自動運転に切り替えるのだがうまく制御してくれるかいつもひやひやだった
まだまだ空気式計器とトランジスター式のアナログ計器の時代で原理は簡単で理解はたやすかった
まだまだ一部計器には真空管も使われていた
それから10年程度でデジタル式の時代が現れDCSという道具を使いこなすようになった
1980年代に入るとDCSも高機能化が進んでいった 処理ループ数や通信速度が飛躍的に速まりプラントを統合して統合計器室時代が始まった
1990年代になるとフィールドバスなる物が現れた。現場計器と計器室にあるDCSがネットワークという形で情報がつながり始めた
2000年頃に計装という世界を離れてしまったがものすごい進歩の中にいたと感じている
計装の歴史を書いたこんな情報があるので興味があれば読んでみると良い
https://www.azbil.com/jp/corporate/company/history/pdf/history100_12.pdf

2020年04月26日

19年前の自分が経験した爆発事故に思う

自らが体験した爆発事故だ。2001/4/23に起きた事故だ
失敗知識データーベースでも公開されている事故だ http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012016.html
NF3という支燃性ガスを送るダイヤフラム式圧縮機が原因の事故だ 圧縮機は外国製で同業他社でも使用されていた
支燃性ガスとは、可燃物を激しく燃えさせる能力をもつガスだ
自分自身は燃えないが、何かが燃え始めたら相手を爆発的に燃焼させる能力を持つ危険なガスだ
事故が起こる前から、圧縮機の能力が落ちていた 少しずつ温度が上がっていた
一度圧縮機を停止して部品を交換してみたが性能は回復せず様子を見ていた 
圧縮機は気体を圧縮する時、熱を持つ。圧縮作用で温度が上がるからだ。
この圧縮機の弁にはエンジニアリングプラスチック製の弁が用いられていた
エンジニアリングプラスチックは当然燃える物質である 発火点を超えれば火がつくはずだ
運転を続けていたところ突然圧縮機周りで爆発が起こったのだ(1回目)
原因は、圧縮器内のガス温度が上昇してエンジニアリングプラスチック製の弁が着火したからだ
流れているガスは支燃性ガスだから、圧縮器内で激しい燃焼が起こり発生したガスの圧力で強度の弱い圧縮器内のダイヤフラムが破壊された
圧縮器内には潤滑油がある。潤滑油は当然可燃物だ。流れ込んできた支燃性ガスで激しく燃焼していった
さらに圧縮機二段目の吸入側配管に取り付けられた安全弁が作動したため、安全弁放出先となっている三フッ化窒素のドラムに放出され、作動油とNF3の分解で発生したガス圧力の上昇によってNF3ドラムが破裂した(2回目の破裂)
そのようにして最終的に装置が吹き飛び爆発したのだ 工場の建家・設備が広範囲にわたり破損した。
この爆発により付近で作業中の協力会社の従業員3名が軽傷を負った。今思うと死者が出なかったのが不思議なくらい激しく設備が損傷していた 周りに人がいなかったことが幸いした
この事故の原因は、支燃性ガスを流す圧縮機なのに弁に可燃物であるエンジニアリングプラスチックを使ったことだ
圧縮機は断熱圧縮により温度は上がる 放熱がうまくいかなければ温度は上昇する危険性がある
支燃性ガスを扱っているなら、配管や装置内では可燃性の部品は絶対に使わないで欲しい

2020年04月24日

8年前の爆発事故に思う

2012/4/22、当日勤めていた企業で爆発事故が起こった 事故から8年になる
事故の原因は、公表されている https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2013/pdf/130123_02.pdf
四十数頁に及ぶ詳細な報告書が出ている この事故を、皆さん方はどのように教訓として活用しているのだろう
事故というものは、事故の事実を詳細に教えてもさほど役には立たない なぜなら、まったく同じ事故は起きないからだ
しかし、同じような事故はおこる。この企業では、数年後に別の工場で火災事故を起こしている
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Date/20170803/
最初の事故も、別の事故も過酸化物という、温度に敏感な物質だ
物質危険性に関して言えば、過酸化物というのは熱に敏感な物質だ。冷却能力が足らなければ事故につながる
つまり、同じような事故が起きないためには何を教訓とすべきかを学び取ることが大切だ
事故からの教訓を学び取るときは、切り口がある 最初の切り口は設計だ 設計面からの教訓は何かと、見て見ることだ
この事故は、発熱反応がある反応器で起きている 最悪の事態が起きたときの、冷却能力が十分だったかと読み取るのだ
教訓というのは、必ず自分のプラントに置き換えて考えてみる必要がある
自分のプラントは、発熱量と冷却能力を比較した場合安全率をいくつにしているかだ
機械的な強度の安全率はJISで安全率3と決められている つまり機械設計では安全率3は常識の世界となっている
しかし、化学工学の世界では熱に関する安全率3という常識はない 各人各人で、発熱量と冷却量の比率は違う
企業内でも、大きくバラツキがあるはずだ 自分の企業の、熱に関する安全率がどうなっているかを調べてみるとよい
熱に関しての安全率について言及した設計書そのものがあるのか
その安全率は妥当なのか、運転操作マニュアルにもその情報が展開されているのかだ
同じようにして、安全性評価、運転管理、保全管理、工事管理、変更管理などの切り口で事故の教訓を切り出してみることだ
教訓を切り出す能力を上げていくことが事故防止につながると思って欲しい

2020年04月22日

送風機の事故事例 その-3

前回に引き続き、化学工場などで送風機の事故のパターンを紹介する
可燃物と空気を混ぜる酸化反応工程で起きた事故だ
反応器には原料となる可燃物が供給されていた
同時に、送風機で空気が反応器内に送り込まれていた
ある時停電で、送風機が故障で突然停まった 同時に反応器の冷却水も停まった
本来ならすぐに原料を停止すべきだったのに操作が遅れてしまった
反応器内の温度はかなり上昇していて、発火点を超えていた
空気送風機の停止により、反応器内の空気比率が変わり爆発混合気ができていたが気づいていなかった
しばらくして反応器内で爆発が起こったという事故だ
送風機が停まった時は、可燃性ガスが存在する場合、空気量の変化により爆発混合気ができることを考えて欲しい
ボイラーや燃焼炉についても、送風機が停まった場合爆発混合気ができる可能性がある
燃料と空気の比率が変わってくるからだ
炉内で万一火が消えれば、爆発混合気ができてくる
空気と可燃性ガスが混ざるところでは、比率により爆発混合気ができる
HAZOPでも送風機の停止や、能力低下などで爆発混合気ができないか検討して欲しい

2020年04月21日

送風機の事故事例 その-2

前回に引き続き、化学工場などで送風機の事故のパターンで代表的なものを紹介する
潤滑油が関係する事故だ
送風機は高速で羽根が回っている
送風機の羽根は高速で回転している。羽根を支えるベアリングへの注油は大切である。
羽のバランスがくずれれば異常振動を起こすからだ。
こんな事故事例がある。製鉄所の送風機が引き起こした事故だ。
製油所のボイラーに空気を送り込む送風機の異常振動による事故だ。
ボイラー運転中に空気の流量計が突然流量低下の警報を発した。
状況がわからず現場に行ってみると送風機近くで火災が起こっていたと言うのだ。
事故の原因は、送風機の回転軸を支えるベアリングの潤滑油不足だ。
ベアリングへは潤滑油を入れた容器から配管がつながっていて潤滑油が不足すれば自然に送られるシステムになっていた。
ところが、配管を固定していなかったことにより送風機の振動がいつも潤滑油を入れる容器に伝わっていた。
容器は長い間振動により揺らされていたため、ある時容器の底にあるドレン弁という弁が緩んで外れてしまった。
この為、潤滑油が外に流れ出てベアリングに油がいかない状態になっていた。
しかし、それに気づかなかったためある時ベアリングが破損して破片が吹き飛んだ。
吹き飛んだ金属の破片は漏れて流れ出ていた潤滑油に触れて潤滑油が自然発火してしまったのだ。
この事故は新設時の段階で配管のサポート(支持)をきちんと設置していなかったことが発端ではある。
しかし、機械という物は設置した後のメンテナンスが大切だ。
定期的に現場をパトロールして潤滑油容器周りの振動を点検していれば防げた事故である。
高速で運転される回転機械は、振動の変化を上手に把握して事故の未然防止を図って欲しい。

2020年04月19日

送風機の事故事例

化学工場などで送風機の事故のパターンで代表的なものがある
それは異常振動による事故だ
送風機は高速で羽根が回っている
回転する機械は回転物のバランスが大切だ バランスがくずれると異常現象を起こす
回転する羽根は金属でできていることが多い しかし、金属は腐食するところに問題がある
送風機の羽根は高速で回転している。万一羽根が変形したり、腐食でバランスがくずれれば異常振動を起こすからだ
こんな事故事例がある。製鉄所の送風機が引き起こした事故だ
製鉄所は高温の設備が多い。冷却用に多くの送風機が取り付けられている
ガスを送風する設備だったが送風機の羽根の材質の選定を間違えていた
ガスの成分の中にわずかではあるが腐食性のものがあった
腐食に強い材質をすべきなのに腐食に十分耐えられる金属材料を選定していなかったのだ
ある時、高速で回転する羽根が腐食したことによりバランスがくずれ羽根がバラバラになって吹き飛んでしまった
幸い人には当たらなかったが、近くにあった都市ガス用の配管を破損させてしまった
大量の都市ガスが漏れ始めしばらくして漏れたガスに着火して火災になったと言う事故だ
設計時点で金属の材質を間違えたのが発端だが、機械という物は設置した後のメンテナンスが大切だ
定期的に点検していれば防げた事故である。
送風機の異常は、振動という形で現れることが多い
振動測定を定期的に行うことで、異常振動は早期に発見できる
回転する機械は、振動の変化を上手に把握して事故の未然防止を図って欲しい

2020年04月15日

禁水性物質の事故事例

ある会社から化学薬品の取り扱いという執筆依頼を受けて原稿を書いている
いろいろ事故事例を探していたらこんな事故が見つかった
反応器に、マンホールから袋に入った禁水性物質を投入していた時に起きた事故だ
反応器には、トルエンという可燃性液体が入っていた
この為、内部を窒素でパージして窒素が充満するようにはしてあったそうだ
その後、マンホールを開け作業員が禁水性の粉末物質を投入し始めた
この日はとても暑いで作業場所は屋内で換気も悪かった
この為、作業員は大量の汗をかきその汗が投入していた禁水性の粉末に落ちたとたん火がついたというのだ

最初は炎は小さかったがあっという間に開けていたマンホール全体に火がついたという
マンホールを長時間開けておいたことで、反応器内に空気が入り込みトルエン蒸気がマンホールから出ていたのだ
なにせマンホールを数時間開けておいたのだから、最初に窒素でパージした効果はもう薄れていたのだろう

この事故の教訓は たとえ人の一滴の汗でも禁水性物質は着火すると言うことだ
マンホールを開けて投入すること自体にも問題がある マンホールを開ければ空気が入り込むからだ
反応器内に可燃性の引火しやすい液体があれば、マンホールから可燃性蒸気が出てくるはずだ
とにかく、反応器へ危険物を投入するなら密閉系で投入できないか考えて欲しい
詳細はここをみて欲しい
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101079

2020年04月11日

化学プラントの事故災害に関する情報源を紹介する

今回は、化学工学会が提供している情報について紹介する

アメリカにCCPSと言う組織がある Center for Chemical Process Safetyを略してCCPSと呼んでいる
化学プラントの安全に関わる活動をしている組織だ
https://www.aiche.org/ccps
CCPSでは、毎月一回程度事故や災害などに関する情報を世界中に発信している
この英文情報を日本の化学工学会が和訳して提供してくれているのだ
2001年から情報を提供してくれている
当初は発行頻度は少なかったが、今は毎月新しい情報が提供される
http://sce-net.jp/main/group/anzen/anzen_danwa/
この頁を開けると、PSB 和訳及び安全談話室というのがある
情報一覧表の、PSB和訳というところをクリックすると和訳した文章が出てくる
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/03/202003BeaconEnglish-Japanese.pdf
少し右側にある談話室というところの記事をクリックすると今度は、先ほどの和訳した情報に関しての
化学工学会の有識者のコメントが載せられている
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/03/DANWA2020_03_No165.pdf
非常に参考になる情報もちりばめられている
化学物質を取り扱う工場の安全担当者や研究者などは是非みて頂きたい情報だ

2020年04月07日

企業・組織のリスクマネジメントに関する情報源を紹介する その-2

前回MS&ADインターリスク総研という組織の情報を紹介した
今回は、予防時報という情報源を紹介する
日本損害保険協会が提供していた安全や災害に関するレポートだ
1950年から約70年間にわたって情報を提供してくれた素晴らしい情報源だ
残念なことに2016年の春をもってレポートの発行が停止されたが、過去発行されたものはいまだにアーカイブとして見ることが出来る
https://www.sonpo.or.jp/report/publish/bousai/yobou_jihou/archive.html
この頁から、いまでも過去の情報を検索できる
画面を開けるとバックナンバーの検索はこちらという文字がある
ここをクリックすると過去の情報を見るソフトがダウンロード出来る。エクセル版でレポート目次が一覧表で見れ
キーワードを使って、検索することもできる
もう少し画面を繰り下げていくと各号毎に見ていくことも出来る
1950年代からの資料を全部読んでみたが、時代時代の世の中の動きや人の考え方がわかる。貴重な資料だ
化学工場の事故情報、技術伝承のあり方、海外駐在員の安全、地震、リスクマネージメント、教育、安全etcなど実の多くの記事がある
ホームページのリニューアルが行われるたびに貴重な情報源が消えてきている
このアーカイブもいつか消える運命にあると思う
公開されているうちに、必要な情報を得て欲しい

2020年04月05日

企業・組織のリスクマネジメントに関する情報源を紹介する

MS&ADインターリスク総研という組織がある
ここのホームページから、リスクマネジメントにかかわる各種の資料・情報が提供されている
皆さんにも参考になる情報が沢山あると思う
この頁がメニュ-画面だ
https://www.irric.co.jp/risk_info/index.php
色々なカテゴリーがあるが、私は「災害リスク情報」と「労災・リスクインホメーション」の二つを利用させてもらっている
たとえば、災害リスクで情報を探してみると静電気に関してこんな記事がある
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/disaster/85.pdf
非常にわかりやすい文章だ
この他にも色々な情報があるので探してみて欲しい

労災リスクではこんな記事もある 安全文化に関する情報だ
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/worker/30.pdf

これ意外にも身近なリスクを取り上げている
最近の話題であれば、コロナウイルスの記事だ
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/bcm/2020_sp04.pdf
一度は見て見る価値のある情報源だとおもう
https://www.irric.co.jp/index.php

2020年04月03日

4月1日に起こっていたこと

今日は4月1日だ。企業によっては今日が年度初めだ。例年ならいろんなイベントが行われるはずだが今年はコロナで難しい
年度替わりでもあるので、過去4月1日という日にどんなことが起こっているのか調べてみた
今から約60年前、1959年4月1日に消防法が改定されている。四日市の旧大協石油で起こったタンク事故が原因だ
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/gijutsushiryo/gijutsushiryo_01_40/files/shiryo_no07.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200002.html
その当時は、消防関係の規制の制定は、各自治体任せであった。しかし頻発する大規模火災を受け、規制の主体者は国に変わった
国家消防という考え方に変わったのがこの時代だ

1967年4月1日 日本のある企業で、静電気事故防止の為、静電気防止靴の採用を始めたという 今から半世紀前だ
見えない静電気に関心を持ち始めた時代だ

1992年4月1日 耐圧気密時の断熱圧縮についても関心が持たれ始め、断熱圧縮について企業が注意を払うようになったという
しかし、断熱圧縮はいまだに余り理解されていないというのが実情だ

1995年4月1日 統括管理制度に関心が持たれ始めた 協力会社は、きちんと誰かが統括管理することにより事故のリスクが減るという概念から統括制度が活用され始めた時代だ 工事の安全管理に統括という仕組みが入ってきたのがこの時代だ
2000年代に入ると、安全文化などの概念も取り入れられてくる
2004年4月1日 企業でコンプライアンスという概念が取り入れられ、コンプライアンス遵守のルール遵守が始まった
2004年4月1日 高圧ガスの認定事業所では保安管理システムの運用が求められるようになった
           危険源を特定しシステマチックな安全管理システムが求められるようになった
           リスクアセスメントが法として要求されるようになってきた時代だ
2006年4月1日 労働安全衛生法が改正 工事での協力会社が被害が受けるのを受け、発注者の安全配慮義務などが法制化された
化学物質の危険性など発注者が知見を持つ情報を、協力会社に提供することにより事故のリスクを減らすよう法制化された
2007年4月1日 団塊の世代と呼ばれる人達が、大量退職を始めた時代だ
           これに伴い、大量の新規採用が始まった時代だ 若手への世代交代が始まった
2009年4月1日 2008年9月のリーマンショックを受け、新人採用が大きく減らされた
2020年4月1日 コロナ不況を受け、新人の採用が控えられたとの報道もある
技術伝承に支障が無いことを祈る

2020年04月01日

平均寿命と定年制度の変遷

今日は定年を話題を取り上げる
日本で定年制が導入されたのは、工業化が進んだ1920年代だ。定年制という制度は、約100年続けられていることになる
今から100年前の時代の定年は55歳。その時代の男女平均寿命は、45歳だ
https://www.taisho.co.jp/locomo/ba/sp/q1.html
平均寿命が45才だから、定年まで生きているというわけでもない
約70年前の、1950年の日本の平均寿命は約60才だ 男58歳、女61.5歳であった
1960年に男65.3歳、女70.2歳 1970年に男69.3歳、女74.7歳 
1980年に男73.4歳、女78.8歳と格段に伸びていたが、多くの企業においてまだ55歳が定年退職であった
55歳定年は1980年頃まで続いたという

定年年齢は企業が就業規則で規定するもので、法による決まりはないが、1980年当時の定年は大半が55歳とされていたという
1986年、国は高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正で「60歳定年制」を法制化した
その時の日本人男性の平均寿命が74歳を超えていた
企業は60歳定年制への段階的改正が求められ、60歳定年が企業への努力義務になった
そして1994年には「高年齢者(対象は主に55歳以上)雇用安定法」を改正し、1998年以降の60歳以上定年制を義務化した
また、2000年にはさらに高年齢者の就業安定対策を図った
つまり2000年から、10年間をかけて希望するもの全員が65歳まで継続して働けるよう各企業等の雇用制度の改正を訴えた
これにより、企業で再雇用と呼ばれる制度が始まった
2000年当時の平均寿命は男77.7、女84.6才だ。定年後も、10年~15年寿命はあるようになった
そして、2004年、「高年齢者雇用安定法」を更に改正し、企業に対して、65歳までの雇用確保措置の段階的義務化(2006年施行)を図る
2012年には企業に対して、希望する労働者全員を65歳まで継続雇用することが義務化がされた(2013年施行)
2013年には全ての企業が定年年齢を65歳以上に引き上げることを義務付けている
2020年1月、厚生労働省は、高齢者の希望次第で70歳まで働くことができる制度を整えることに関して
2021年4月から企業の努力義務にすることを決定した
さらに、2020年2月に政府は、“70歳までの就業機会確保を企業の努力義務”とする、高年齢者雇用安定法などの改正案を閣議決定した
国会で決定すれば、2021年4月に適用する見込みだ
この決定によると、定年後の継続雇用も求める内容になっている
定年70才時代になろうとしている 体力 気力 知力も必要だ

2020年03月30日

耐圧気密テストで起こる事故 その3

耐圧気密試験に使うのは普通なら窒素か水を使う
しかし、耐圧気密試験に空気を使ったことで何度も事故が起きている
空気は支燃性ガスだ。つまり物を燃やす性質がある
特に、物を燃やす性質は空気の圧力が高くなればなるほど増大する
つまり高圧空気で耐圧検査をしているなら、わずかな可燃物があれば何かの着火源で燃焼や爆発が起こるということだ
こんな事故事例がある。16MPaという高圧機器の耐圧気密検査で起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200023.html
2つの機器があり、一つの機器の検査を終えた後、バルブを開いてもう一つの機器へ高圧の空気を移送した
この時、バルブを急に開いたので、断熱圧縮という現象が起きた
断熱圧縮とは、気体を急激に圧縮すると温度が急激に上昇する現象だ。いわゆる圧縮熱というのが発生する
たとえば、試験管内に閉じ込めた空気を急激に圧縮しても200℃や300度近くにもなる
この事故では、配管内に450度で発火する残留物質が残っていたため、断熱圧縮現象で温度が上がり配管内の可燃物が発火した
再現実験では圧縮熱は650度を超えていたと言われる

耐圧気密検査に使う気体は、不燃性気体である窒素を使って欲しい
空気は、もえるものが配管内にわずかでもあれば簡単に火がつくからだ
高圧酸素ボンベなどは、接続配管にわずかに人の手垢(油分)が付いていただけで発火する事故も起きている

耐圧テストは、窒素を使わず水で実施することもできる いわゆる水圧テスト
水は非圧縮性なので、万一破裂したとしても飛散度は少ない
水が使えるなら、水も使って欲しい

2020年03月28日

耐圧気密テストで起こる事故 その2

定修の終わり頃、高温高圧反応器の耐圧気密検査で、装置が破裂した事故を紹介する
圧力は5.5MPaで、製油所で起きた事故だ
44個の破片が100m四方に飛び散ったが幸い深夜で負傷者は出なかった
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057044.html
原因は、約17年前の製作時の溶接欠陥だ
溶接時に溶接棒を間違えていたことにすぐに気づいた
間違えた箇所を削り取り再溶接をした
ところが、わずかな傷が残っていて、使用している間に少しずつ成長していた
さらに、この反応器内には水素が入るため、水素により水素脆化という現象が起こっていた
水素脆化とは、高温高圧の環境下で水素が存在すると、金属の組織内に水素が浸透する現象だ
金属結晶内に水素が浸透すると割れが起こってくる

この企業では、設備を設置してから毎年溶接部は全て検査をしていた
ところが、新設時から8年間が経過したとき、今まで問題が無いのだから全ての検査は必要は無いと判断してしまった
その後事故が起こる、約10年前からは溶接部の抜き取り浸透探傷検査と目視検査だけで、全数詳細検査をすることはなかった
つまり、溶接部全点検査をやめてしまったのだ
当然、検査コストも手間も大幅に減るというメリットもあるからそうしたのだろう
ところが、目視検査では内部の亀裂の進行はわからない
最後は耐圧検査の圧力に耐えられず破裂したのだ

当時は、この使用温度や圧力では水素脆化は起こらないと考えられていたので検査を簡略化したのだろう
この事故がきっかけで、水素浸食の目安となる、ネルソン線図の見直しが行われたという

高温高圧機器の溶接部の検査は、毎年検査で異常が無いからといって安易に抜き取り検査に変更しないことだ
機械設備は、時間が経てば立つほど傷んでいくと考えるべきだ 内部の傷は目視ではわからない
今まで大丈夫だったは検査に関しては通用しないということだ

2020年03月26日

耐圧気密テストで起こる事故

今から半世紀ほど前の話しだが、私が勤めていた化学会社で4人が死亡する事故が起きている
耐圧気密の検査中に、縁切りが悪く装置が破壊し飛び散った破片で死亡した事故だ
4MPaの高圧で検査は行われていた。破裂したのは、耐圧性能は0.4MPaしかない部分だ
当然、高圧がかからないように縁切りという措置はしていた
しかし、縁切りは単純に弁を閉めることだけで行われていた。ところが、弁が少しではあるが漏れていたが気がつかなかった。
いわゆる、弁の内漏れということだ
万一、弁が内漏れをしていても、耐圧性能の無い装置側のベント弁かドレン弁を開けておけば問題は無かった
つまり、漏れ込みがあっても圧力が逃げてくれるからだ
しかし、残念ながらベント弁やドレン弁は開けられていなかった
結果として、耐えられる圧力の十倍の圧力がかかり破裂して死亡事故になった事例だ 
1960年代の事故で、当時はまだ石油化学産業が始まって間もない時期だった
耐圧気密試験の要領や作業手順書も完全には整備されていない時代だった
事故を受け、耐圧気密検査の安全対策が色々と整備された
一つ目は縁切りは仕切り板で行うということだ。弁と違って漏れることはない
どうしても弁を使うなら、2つ以上の弁を閉め、その中間部を開放するという方法だ
二つ目は、検査のためにP&IDフローシートをしっかり作成し、加圧部を色塗りして検査箇所を明確にして、関係者と事前打ち合わせする
三つ目は、ブルドン管圧力計を2つ以上付けるだ。1つだと針がひっかかかっていることもあり事故につながるからだ
四つ目は、現場に加圧中という表示をすることだ 
それ以外にも色々なことが決められ、以後半世紀以上立つが同じような事故はこの企業では起こっていない
耐圧気密検査は、危ない作業だ。腐食して万一耐圧性能が無ければやはり装置は破壊する。
基本的には近づかない方がいいのだろうが、定修の最後の段階で行われることが多く人の動きも多い
先日、こんな災害事例を見つけた。 怪我で済んだからいいものの、ひとつ間違えば死亡事故にもつながりかねない
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/02-02_2018-406.pdf
耐圧気密テストを甘く見ないで欲しい
化学工学会などにもこんな記事もあるので参考にして欲しい
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2016/03/DANWA2013_09_No87.pdf
https://www.aiche.org/ccps/resources/process-safety-beacon/archives/2013/september/japanese

2020年03月24日

高圧ガス保安協会から事故調査報告が多数公開されていた

高圧ガス保安協会という組織をご存じだろうか
高圧ガス保安協会(KHK)は、高圧ガスによる災害を防止するため、今から半世紀ほど前に高圧ガス取締法という法律でつくられた専門組織だ
高圧ガスの保安に関する調査、研究及び指導、高圧ガスの保安に関する検査等の業務を行うことを目的としている
いわゆる高圧ガス保安の専門機関だ
当然、高圧ガスに関する事故や調査研究も行われている
事故の概要をまとめた、高圧ガス事故データーベースを以下の場所で公表している
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/incident_db.html
もう一つ貴重な情報を公開している
個別の事故について、A4頁版で数頁にまとめた高圧ガス事故概要報告書というのがある
たとえば、以下のようなものだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/02-08_2018-428.pdf
安全担当者にとっては、写真などもあり、大変参考になる情報だ
キーワードや教訓などの項目もあり情報を類別整理するには参考となる
しばらく、KHKのホームページを見ていなかったのだが数日前にこの高圧ガス事故概要報告が多数公開されていた
興味のあるかたはこのURLを見て欲しい
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/comb.html
これからも多くの情報提供を期待したい

2020年03月22日

撤去工事で起こる火災事故

撤去工事で火災事故が繰り返し起こっている 事故が起こるたびに、官公庁から通達が出される
しかし、相変わらず火災は繰り返し起こっている
日々起こる事故は目新しいものでは無くの、95%が過去に起こってきた事故の繰り返しだと言われる
目新しい事故が、いつも起こっているわけではない
同じような事故の繰り返しだ

こんな撤去工事での火災事故事例がある
大阪の化学会社で起きた事故だ
ボイラーから煙突につながるダクトと呼ばれる、ガスを通す設備が使用しなくなったため、撤去することになった
ダクト本体材質は鉄だが、ダクト内部には燃えやすいFRPが貼り付けてあった
大手工事会社と、事前に工事打ち合わせして工事の要領書も作成した
要領書では、火災が起きないよう火気を使用してのガス溶断はしないこととしていた

まず、可燃性の内張であるFRPを撤去する。 その後、燃える物が無くなった状態で、サンダーで残った鉄製ダクトを切っていくという工法だ
ところが、工事を始めたところ元請け会社の工事監督が勝手に工事方法を変えて作業を始めてしまったのだ
FRPを撤去せず、いきなり水をかけながらガスで溶断し始めたところ、可燃性のFRPに着火し火災になったという事故だ

詳細は、下記資料の47頁の右側の事故事例を見て欲しい
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/b16fc396c4418c92afd8c05a3af587f025224afb.pdf
FRPライニング煙道のガス溶断作業 委託工事による無断火気使用という件名の事故事例だ
資料では、発生日時は書かれていないが2018年6月21日に起きている撤去工事での事故だ
https://www.youtube.com/watch?v=Mb9weclJeRE

撤去工事を甘く見ないで欲しい
水をかければ着火しないと安易に思わないで欲しい
外側から水をかけても、中には入っていかないからだ 内側に水をかけるのは難しいと思って欲しい

2020年03月18日

事故が起こったときの経営者の責任

事故が起こったとき経営者の責任が問われる 道義的な問題と、経営的な問題、それに刑事的な問題だ
事故が起これば、最終責任は経営者に来る
とはいえ、企業規模が関係してくる 何万人もいる企業と数十人の中小企業と同列に評価するには無理がある
刑事裁判でもそこは、判断が難しいところだ つまり、多層化された大きな企業の責任分担、業務指示が論点になる
つまり、権限委譲がどう明確に行われていたかだ 決済、判断が刑事裁判上の重大な要素となる
わかりやすく言えば、工場長は安全上の基本方針を出していた、部長はそれをそしゃくしてもう少し具体的な行動指針を出した
課長は、更に自分の組織に合わせ具体的な安全の考え方を提示した。係長は更に実務に応じ具体的指示を出していたかが論点となる
事故が起きると、刑事裁判では責任と権限がものすごく重要になる
これを企業が曖昧にしておくと裁判で問題になる。課長も、係長も同様だ。
権限の委譲は難しい。
論点は何かというと、権限は委譲していたが、委譲された権限に正しく上司が部下をフォローしていたかも裁判の論点になる
つまり、PDCAを廻していたかだ 権限委譲とは、まるなげすればいいというものでは無い
縦割りの社会構造の中では、部下に任せなければ仕事は回らない
そうはいってもまるなげでは、管理責任を果たしていないと言うことだ
管理とは何かを考えて欲しい 命令を出すことが管理ではない まるなげすることも管理ではない
責任と権限のバランスがあって管理が成り立つのである
事故が起こったのは部下の責任ばかりでは無い
管理に問題もあったと考えて欲しい
だからといって管理を引き締めろといっているわけでは無い
管理される側の能力を最大限に引き出す管理こそが真の管理であると常に心がけて欲しい

2020年03月16日

火災時の耐火被覆効果

耐火被覆という言葉を知っているだろうか
https://www.weblio.jp/content/%E8%80%90%E7%81%AB%E8%A2%AB%E8%A6%86
化学工場で火災が起きたときは、可燃物が燃えさかるのは誰でも想像出来る
化学工場では、鉄骨構造物が沢山ある 火であぶられれば、鉄で出来た構造物も熱で柔らかくなり被害を受ける
つまり、鉄で出来ていた頑丈なものも火であぶられれば強度が無くなるのだ
鉄で出来た柱も、熱で弱くなり曲がり始める 化学工場の、パイプラッと言われる配管ラックはあっという間に火災で影響を受ける
2016年4月22日中国で起きた化学火災の事故の写真だ
出典はこの事故情報だ  http://tank-accident.blogspot.com/2016/05/1.html
耐火被覆の無いパイプラックが、あめのように曲がっている
このような状況になれば二次災害が起きる
配管のフランジは曲げにより隙間が出来てガス漏れが起こる。そこから2次火災が起こることがある

パイプラックの耐火被覆が、無かったことにより被害を最小化できなかったと思われる
日本では、ある程度の法規制はされているが、耐火被覆の有用性はそれほど認知されていない
火災で影響を受け易い可燃物を扱う化学工場の屋外の柱は耐火被覆をして欲しい
ある事故報告書によれば耐火被覆の無かった工場での事故被害は数倍とも言われている
アメリカのCSB(Chemical Safty Board)という機関が公開している事故報告書に写真がある
耐火被覆をしている柱と、耐火被覆の無い柱の違いがよくわかる写真だ

 

2020年03月14日

事故データーベースの紹介

過去の事故事例を学ぶことは重要だ。今まで、こんな事故事例データーベースを見て事故の教訓を集めてきた
①高圧ガス保安協会事故事例データーベース https://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/hpg_incident/incident_db.html
②産総研が提供する事故データーベース RISCAD https://riscad.aist-riss.jp/ (現在リニューアル中 一時閲覧停止中)
③Deyamaの提供する事故事例データーベース http://deyama.a.la9.jp/ver_1/saigai.html
④失敗知識データーベ-ス http://www.sozogaku.com/fkd/
⑤労働安全衛生総合研究所事故データーベースだ。数千件の事故情報がある
https://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2013_03.html
①や③の情報とは違う視点で、いい内容が書かれてはいるのだが惜しいことに何月何日という事故発生日の情報が不足しているのが欠点だ
⑥神奈川県では高圧ガスに関係する事故情報を下記のURLで公開している
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14873.html
このホームページの中で更に詳細を見ていくと、事故の詳細等という項目がある
個別の事故に関する物も公開されている 高圧ガス事故事例情報シートというのがある
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14877.html
⑦早稲田大学と共同で特定非営利活動法人災害情報センターが運営しているデータベースで略称はADICというものがある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php
事故というのは、色々な視点で見ていかないと事故の教訓が得られない
特に、人という切り口で原因を書いているものは少ない。これからの事故データーベースについて求めたいのは、教訓を書いて欲しい
それから、変更管理の視点とリスクアセスメントの視点で失敗の要因を書いていく必要があると思う
とはいえ、データーベース提供者には感謝したい
これらの情報が無ければ、過去の事例を学ぶのは難しいからだ。これからも、提供をお願いしたい

2020年03月12日

東北大震災から9年に思う

午後2時46分。9年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、技術研修センターという所にいた
勤めていた技術研修センターは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ 
当日、朝からこの技術研修センターで各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
安全工学会の主催で行われていた 午前中も順調に進み午後からも安全体験が始まった
1時間半ほどの体験が終わり皆さんが休憩をしていたところだったと思うが、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた
地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった
翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
限られた資源、時間ではあるが日本にある以上、地震への備えは不可欠だ
日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
これからも、地震で起きた事故からの教訓を整理した形でまとめ次の世代に伝える活動をブログや講演活動を通じて実施していきたい

2020年03月11日

乾燥設備や乾燥工程で起こる事故

乾燥工程で火災や爆発事故が起こることがある。事故の原因は、大きく分けて4つだ
一つ目は「乾燥させる物質」そのものに原因がある。もともと、熱を加えると燃えやすかったり、爆発しやすい性質を持っている場合だ
ゴムの乾燥作業などでよく火災が起こる。元々ゴムは燃えやすい。
燃えないような温度で、乾燥させていても装置内にゴムの破片などが残ってしまうと事故になる
残留したゴムは、長期間過熱されると炭化して着火点が下がる。劣化したゴムの破片が自然発火して火災になる事例は多い
効率を考えると誰でも加熱温度は高くしたい。しかし温度を高くすれば燃えやすくなる 温度設定に慎重さを欠くと事故になる
事故防止は、装置内の残留物である堆積物の清掃を定期的に行うことだ 
熱で反応しやすい物質を乾燥していて起きた爆発事故を紹介する。きっかけは、乾燥機にある動く回転軸のグランドパッキンを強くしめたことだ
パッキンドを強く締め付ければ、動きにくくなるから当然、そこで摩擦熱が発生する この摩擦熱で乾燥していた物質が発火した事故だ
危険物第5類の自己分解性物質を乾燥していたときに起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000123.html
感光材による事故事例の報告書があるのでこれも紹介しておく https://www.toyogosei.co.jp/news/2008/07/2.html

二つ目は、「粉塵」だ。可燃性固体などを乾燥している時に起こる事故だ。固体が砕けると粉塵が発生する 粉塵濃度が高まると爆発が起こる
製薬会社で錠剤を製造するときなどで起こっているパターンだ 錠剤の破片が粉塵となって起こる事故だ 着火源は静電気が多い

三つ目は、「熱源」が原因だ。LPガスや、天然ガスを燃やして加熱する装置は多い。火が着いていても、突然火が消えることがある
火が消えている状態で、ガスはそのまま流れ続け、しばらくして何かの火種で再点火し爆発する事故も多い
それと、温度調節器が壊れたことで過熱され事故が起こるケースも多い。たいていは、設備の老朽化を放置していたからだ
温度計の設置位置が悪く正確に温度が計測されず、過熱気味になっていて事故が起こることもある
温度計の位置の設計ミスだ  電熱器過熱では、送風が停まると一部が異常過熱になり事故にもなる

四つ目は、乾燥させて「取り除きたい物質」が原因だ  加熱乾燥の目的は、付着している溶媒などを乾燥させるケースが多い
たとえば、塗装した部品などを乾燥すれば、シンナーガスなどが発生する
シンナーは可燃性で、一定濃度になれば爆発性ガスとなる。熱源に、電気ヒーターなどを使っていれば、故障で火花などが出れば火災や爆発になる
シンナー、ベンゼン、トルエン、アルコールなどの有機溶剤が使われた部品を乾燥することは多い。溶媒として使われることが多いからだ
製薬会社では、錠剤に含まれているアルコールなどを乾燥させているときの火災事例が多い
乾燥設備の電気設備は、防爆で設計することも考えて欲しい 換気と濃度管理も事故防止のキーワードだ

2020年03月08日

溶接工事での迷走電流

電気溶接という言葉をご存じだろうか アーク溶接とも呼ばれる、一般的な溶接方法だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%BA%B6%E6%8E%A5
https://www.kousakukikai.tech/arc-welding/
原理は簡単だ、溶接する部分に溶接棒という金属の棒を近づけるのだ
溶接棒には数百ボルトのプラス電圧がかかっている。一方、溶接される側の金属にはマイナスの線を溶接機からつないでおく
溶接棒が金属に触れたとたん、電気がショートしたように電気放電が始まる この電気放電をアークといい、ものすごい高熱が発生する
この時の熱を利用して互いの金属を溶かし、金属同士をつなぎ合わせるのを溶接という
簡単で便利な溶接法であり、化学工場などでも多く使われる
溶接に伴い、金属内には電流が流れることになる
電流は、プラス側である溶接棒から、マイナス側に流れる つまり、溶接機からつないだマイナス側の接地部に向かって流れる
ところが、溶接部の近くにマイナスの接地をしないと、電流は戻る場所がわからなくなる
この結果、あたかも迷走するかのように色々なところに電流が流れてしまう
この迷走する電流を迷走電流と呼んでいる
迷走電流は、火災事故を発生することもある
https://mainichi.jp/articles/20200118/dde/041/040/026000c
こんな事故事例も起きている
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%81%AB%E7%81%BD%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%9B%E8%A3%B8%E7%81%AB%E7%AD%89%E4%BB%A5%E5%A4%96%E7%9D%80%E7%81%AB%E6%BA%90%EF%BC%89/2020%E5%B9%B41%E6%9C%8818%E6%97%A5%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%80%80%E3%80%8E%E5%B7%A5%E4%BA%8B%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E3%81%A7%E8%AC%8E%E3%81%AE%E5%87%BA%E7%81%AB%E3%80%80%E5%8E%9F%E5%9B%A0
迷走電流は、計器などを壊すこともある 計器の中を強い電流が流れてしまえば、中にある部品を破損させてしまうからだ
昔工場にいたとき、現場にある空気式調節計という計器の中に迷走電流が走ったことがある
空気式計器は、内部に細い金属部品が使われている その針金のような部品が溶けて無くなっていた
なぜ迷走電流が発生するかというと、マイナス側となる接地する設置場所が溶接部から遠すぎるからだ
基本は、溶接部のすぐ近くに接地線を取り付けることだ これであれば、迷走電流は発生しない 電流は、すぐに溶接機側に戻ってくれる
電気溶接工事現場をパトロールするときは、溶接線の接地線(戻り線)が溶接部のすぐ近くになるか確認して欲しい
協力会社に任せておけばいいと思わないで欲しい 安全は企業自らが守るものだ

2020年03月06日

製油所や化学工場でのドローン活用実証試験

巨大な製油所や化学工場で検査を目的にドローンの活用が検討されているようだ
IOT利用の一環として進んでいるのは聞いていたが実証実験の情報は初耳だった
ネットを見ていたらこんな記事を見つけた 
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/2020%E5%B9%B41%E6%9C%8831%E6%97%A5%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%80%80%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E5%B8%82%E5%8E%9F%E5%B8%82%E3%81%AE%E8%A3%BD%E6%B2%B9%E6%89%80%E3%81%A7%E5%B7%A8%E5%A4%A7
巨大な設備に足場を組んで点検していく従来の検査方法と比べると,ドローン利用は画期的だ
カメラ映像も今は4Kの時代だ 人間の目よりも詳細に見ることも出来るし,記録できるのが最大のメリットだ
当然後で,AIによる画像解析診断も出来る
いいことずくめのようだが,まだまだ検証すべきことはあるのだろう
昔、私もラジコンヘリコプターを操縦していたことがある
突然制御が効かなくなり,墜落させたこともある
電波操縦の機器である限りこのリスクはある
メリットとリスクのバランスを取りながらうまく活用していってほしいものだ

2020年03月03日

最近海外で起こったエチレンオキサイドプラント事故

久々に、エチレンオキサイドの事故が起きたとの情報を入手した。スペインで起きた爆発事故だ 
エチレンオキサイドプラントは,酸化反応プラントだ。石油から出来る,可燃性のエチレンという物質を,空気で酸化してつくる
この為,酸化エチレンプラントとも呼ばれる。
エチレンオキサイドは、非常に反応性に富んだ物質で、爆発すれば相当な被害を出す化学プラントだ
日本でも,各コンビナート地区に一つか二つくらい工場がある 
日本では,大爆発がおきたことは無いが,海外では過去何度か大爆発が起きている
今回のスペインの事故は,ここを見て欲しい 死傷者は10名だ
http://tank-accident.blogspot.com/2020/02/10.html
よくこの程度の被害で済んだとも思われる事故だ 
工場内で死者は3人のようだ。
工場から約2,500m離れたアパートに重さ約800㎏の物体が落下し、1人が死亡したとのことだ。残念なことに、一般人が犠牲になっている
軽自動車クラスの金属片が、2.5Km離れたところまで飛んでいったというのだ
飛散物体はプラントの反応塔などの上部の一部とみられ、金属片の大きさは約122×165×3cmだった
このエチレンオキサイドという物質は分解性だから,爆発したとき大量のガスを出す
つまり、大量に発生したガスでこの重い金属を吹き飛ばしたのだろう
酸化反応では,爆発下限界以下で微妙に制御するのがポイントだ
爆発下限界を越えれば,爆発することがあるからだ
酸素計の信頼性が大切だ。一つ故障しても大丈夫なように,少なくとも3台の酸素分析計を設置しているはずだ
異常があれば,安全に停止するインターロックも設置されているはずだ

原因はまだ不明とのことだが、早期に解明されることを望みたい

2020年03月02日

なぜ工場や研究所で事故が起こるのか

なぜ化学プラントで事故が起こるのか
化学プラントに存在する危険源は何かをまず考えてみることです。危険源は沢山ありますが.体系的に分けると4つです。
①物質危険性 ②人 ③設備 ④外乱や天災です
最初のキーワードは物質危険性を甘く見ることです。毎日、毎日化学物質を扱っていると、事故が起きなければ危険と思わなくなることです
慣れが怖いのです
二番目は、人のミスです 人間は必ずミスを犯します 特に一人で作業しているとミスを犯しやすいのです
省人化により、二人作業は減っています 一人で作業している限り、思い込みや勘違いで事故が起きます
三番目は設備の故障です。機械は時間が経てば壊れます。定期的に点検して、機能を確認しなければ異常に気づきません
機械は点検が必要です きちんとした点検計画をつくって維持管理してください
点検コストをけちるから事故が起こるのです
四番目は、外乱です
突然外部から影響を受けることがあります
地震、雷、台風、停電など突然来ることがあります
この外乱というのは確率は低いのですがゼロではありません
必ず来ます
外乱対策を考えて下さい
事故が起こるのは、たねも仕掛けもあります
昔から事故は起こっているので
新しい事故というのはありません
昔起こった事故が場所と時間を変えてただ起こっているだけです
過去の事故事例を学んで下さい

 

2020年02月29日

危機管理か危機対応か

新型コロナウイルスで世の中大変である 先日新聞を見ていたらこんな論説があった
危機管理という言葉は人のおごりであるというところから始まった
経験したことの無いことが起きたら、管理という言葉は適さないというのだ
危機を「管理する」という言葉は、人のおごりの表れだという
管理できると思うから、色々な問題が次々と出てくるというのだ
危機を経験した、ある自治体の長が語っていた言葉だ
管理しようとすると、人は小出しに対策を打つという
先の見えない危機に小出しで対応しても、問題はどんどん広がるだけだと論じていた
危機が起きたら、考えられる全ての対策を大風呂敷を広げるようにリーダーは実施せよと言っていた
とにかく、考えられる全てのことを一気にまず行えというのだ
組織であるから、かならず組織内で反論はある しかし、その反論を乗り越え一気に進ませるのがリーダーの役目だと言っていた
危機というものは管理するのではなく、危機が起こったら持てる対策を総動員して危機に「対応」するのだ
化学プラントでも、とんでもない危機に直面することはある
BCP(事業継続計画)や危機管理マニュアルは作っていても、それはある想定条件でつくられているはずだ
条件を外れれば、危機に対して応用問題を解くことになる 管理では無くやはり対応なのだろう
危機について考えさせられる言葉だった

2020年02月27日

事故文献、書籍等紹介

前回、事故に関する書籍の話をした
事故は過去の教訓が伝わらないから起こる。事故の教訓が伝われば、事故の確率は減らすことができる
確かに、過去の事故事例を勉強しようと思って町の本屋さんに行っても,事故に関する書籍などを手に入れられないのが現状です
過去に発行された非常に為になる書籍がすでに絶版になっているからです
多くの石油や化学企業の中でも、自社の事故事例ですらなかなか見られないのも実態かもしれません
1980年代に多くの企業では、3S活動というのがはやりました。整理、整頓、しつけなどの頭文字を取った活動です
整理、整頓などと言う活動の中で、多くの企業で書類が捨てられました。当然、事故や災害の資料も不要な物として廃棄されたのです
私の勤めていた化学企業でも、書類の半分以上は捨てられたと記憶しています
当時、今のようなコンピューターも無く、スキャナーも無かったので書類は記録されること無く貴重な情報が捨てられたのです
2000年代に、どこに事故の情報が残っているのだろうと色々探し歩いたら東京にある高圧ガス保安協会に貴重な書籍や情報が残っていました
当時、色々なことを勉強させてもらったのは、高圧ガス保安協会にある資料室です  https://www.khk.or.jp/aboutus/library.html
そこには、多くの事故文献、調査報告書、書籍があります
化学企業は高圧ガス保安協会に入っているところも多いでしょうから興味のある方は、一度訪ねるのもいいでしょう
有料ですが、コピ-もしていただけます。貴重な財産を有効に使って欲しいと思います
最近は蔵書の検索もできるようです http://www.lib-eye.net/khk/servlet/Index?findtype=1
当然、協会誌である冊子「高圧ガス」も創刊以来のものが保管されています
この中にも貴重な事故資料が残っています
創刊号から現在までの目次を見ることができます 下記のページを開いてください
https://www.khk.or.jp/public_information/public_introduction/high_pressure_gas.html
画面中央にバックナンバーという項目があります 創刊号から最新号までの目次はこちらという文字があるので
そこの、mokuji2002という部分をクリックしてみてください

2020年02月25日

事故について多くの事例を紹介している書籍紹介

最近感じるのは、製油所や化学工場で起こった事故を体系的に書き表した書籍が発刊されていないと感じている。
体系的に事故事例をまとめて本が出版されたのは、今から40年前が最後だ
日本では1970年代に事故が頻発した。化学プラントの安全技術を向上させていく為、多くの人が対策を考え実行していたのがこの時代だ
この貴重な情報を世に残すべきとして、当時の化学工学協会(現在の化学工学会の前身)から4冊の書籍が出されている
1978年から1979年にかけて丸善から発行された、「化学プラントの安全対策技術」というシリーズものの書籍である
第一巻は化学プラントの安全対策というタイトルで、化学プラントに存在する危険源や安全対策の基本的な考え方について紹介している
第二巻は化学プラントの安全設計というタイトルだ。設計という切り口で、考えるべきことを紹介している
第三巻は保安・保全の管理技術というタイトルだ。運転管理、設備管理、人間工学的な配慮などの切り口考えるべきことが紹介されている
運転マニュアルや教育訓練についても書かれており、現代でも参考になる情報だ
第四巻は事故災害事例と対策というタイトルだ。事故からの学び方、事故の調査方法とあわせ実際に起こった事故事例が数多く書かれている
中身は、装置別に実際に起こった事故事例が書かれている 反応器、タワー、タンクなど装置別に起こった事故が記述されている
プロセス別にも層別され事故事例が記載されている。石油化学であれば、エチレンプロセスで起こる事故。酸化エチレンで起こる事故などだ
海外の事故についても主要な事故の記述がある。
事故の件数で言えば、千点以上記述されている
既に絶版となっていて、書店で手に入れることは難しいが書籍のネット販売でたまに検索すると見つかることもある
化学工学会の会員なら、電子図書館というシステムがあるのでそこで閲覧することが出来る
高圧ガス保安協会(東京)の書庫にもあったと記憶している。そのいけば、コピーもできるし読むこともできる
40年前の書籍ではあるが、現代でも十分通用する化学プラントなどの事故のメカニズムがわかる内容である
一度は、読んでみてほしい書籍である

 

2020年02月23日

事故や災害につながるキーワード  安易な転用

設備の安易な転用で事故が起こることがある
本来ならきちんとお金をかけるべきなのに、転用でお金をけちったことにより起こる事故は多い
1986年08月13日に川崎でタンクを転用して起こった事故を紹介しておく
タンク周りにあるベント(排気)配管に、水分や異物が残っていたのにそのまま洗浄もせず転用した
タンク内に化学物質を入れ始めたところ、残っていた水分や異物と反応しマンホールから煙が吹き出したという事故だ
転用するときは、本体部分はしっかりとチェックするが、付属する周辺配管などはチェックされないことが多い
事故は、本体よりも周辺部で起こることがあると言われる
転用するなら、周辺部を含めてチェックしておく必要があると言うことだ
詳細はこの情報を見て欲しい
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000032.html
もう一件転用による事故事例を紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000029.html
反応器周りにある、溶剤を入れるタンクを転用した。
本来なら、他の設備ときちんと縁切りしておかなければならないのに
既存の周辺設備と縁切りは弁一つだけで行っていた
あるとき、弁は内漏れを起こした
その弁は、隣の触媒タンクにつながっていたため、本来入るはずの無い触媒が
溶剤とともに反応器へ入り込み異常反応が起こったという事故だ
機器を転用したとき、いらないものは徹底的に撤去しなければいけないのに
撤去費をけちって、残しておいた弁の漏れ込みから事故につながったものだ
転用したら、いらないものは徹底的に撤去せよ それは、転用するときの最低限のルールだ

2020年02月21日

安全工学

安全工学という学問がある
大学で、この講座ができたのは今から半世紀前だ
石油を取り扱う化学産業になって事故が多発したからだ
安全工学とは、なぜ事故が起こるのかを体系的にまとめた学問だ
事故が起こるのはタネも仕掛けもある
やみくもに事故が起こるわけではない
事故のメカニズムを知る人が増えれば事故は軽減されるはずだという考え方から安全工学という学問が普及した
1960年代にこの考えは広まった
1970年代に日本の各大学で安全工学を教える人は沢山いた
当時の各大学の安全工学の現状をまとめた資料がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/16/6/16_504/_article/-char/ja
最近は安全工学を担当する人はめっきり減った
大学も経済性を考えなくてはいけないからだ
最近は大きな事故が減ったように見える。一見安全だと世間も考えがちだ。
だから安全への関心は弱まる。結果として安全への関心はますます弱まる
いか仕方ないことではあるが、事故は現実ゼロではない
企業も安全のスペシャリストを育てることに関心を持って欲しい
安全に関心を持つ人を、大学の安全工学部門に短期留学させるのも有効だ
今から半世紀前の1977年に行われた安全に関する座談会の資料がある
当時の安全の専門家による会議だ。時間があれば読んでみられると良い
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/16/6/16_415/_pdf/-char/ja

2020年02月16日

事故や災害につながるキーワード その-6 安全設備が不十分

化学プラントで可燃物などが流出着火したとき、どこで流出が起きたかがすぐにわかるかというとそうはかない
警報があるから大丈夫だという考え方があるかもしれないが。うまく警報がでても現状認識ができるとは限らない
限られた情報から、現場の状況を考え出すのは難しいからだ
たとえば、配管が腐食して穴が開いたとしよう。
穴から大量の可燃物が噴き出したとすると、その時どんな警報が出るかである
圧力が下がってうまく、圧力低警報が出るかというとそうはいかない。
近くに流量計があって、流量が低下の警報があればいいが必ずしも、流量計があるとは限らない
警報を色々設置しているから大丈夫かというとそうはいかない 沢山鳴れば、それ故に特定が難しい
警報は出なくても、いきなりトラブルはやってくる
監視カメラで、現場の異常に気づくかもしれないが何が原因かはすぐにわからない
トラブルが起きて、後追いで警報は鳴るかもしれないが、警報からどこに異常が起きているのかを瞬時に見抜くのは難しい
異常が起きれば、プラントを緊急停止する措置を取るだろう
緊急停止すれば安全というわけではない たいていは、原料を停め、反応を停止させるのが通常の緊急停止だ
これだけでは不十分だ 配管などが破れ、液が漏洩しているならその漏洩を最小限にする必要がある
できれば、製造工程毎に緊急遮断弁を取り付け、ブロックする方法が有効だ
とにかく、狭い範囲で遮断してそれ以上漏洩が続かない措置をとることが事故の被害を拡大させないためには有効だ
昨今少ない人数で、化学プラントは運転しているのだから安全に停める対策を少しずつ充実して欲しい
自分のプラントのインターロックがここ数十年変更もされずに改善されていなければ対応を考えて欲しい
今のインターロックや安全設備で十分なのか常に考えて欲しい

2020年02月14日

事故や災害につながるキーワード その-5 共通という文字の持つリスク

今回は、共通という文字が付くと危険という話をしたい
世の中に。共通という文字が付く設備は多い
共通配管、共通ポンプ,共通タンクなど多くの設備が存在する
なぜ、共通にするかと言えば、それはお金と関係する
共通で利用すればコストが下がるからである
安全は、お金が関係すると何度も言ってきた
お金をかけられないから事故になるとも言ってきた
共通にするのは、コストダウンの一貫である
仲良く使うと言うことは、一見ありがたいことではあるが、そこにリスクは存在する
共通ポンプはと見て見ると、一つのポンプで色々な流体を流せば混ざるというリスクが発生する
混ざってはいけない物質同士であれば混触反応も発生する
共通配管も同様だ。色々な使い方がされると言うことは、誤って違うところへ流してしまうと言うヒューマンエラーも起こるだろう
しっかりと、標識や表示がなければなおさらだ
共通タンクも同様だ 入れ替わり立ち替わり色々な物質が入るのだから、コンタミもこるかもしれない
「共通」や「共用」という名前が付いていればそこにリスクが存在すると考えて欲しい
設計の段階で、本当に共通にしていいのか考えて欲しい
単独で設置することも必要なはずだ
HAZOPなどでも「共」の付く設備には関心を持って欲しい

2020年02月12日

事故や災害につながるキーワード その-4 人事異動

人事異動というのも、事故につながる要因だ。技術は人に有りと言われるからだ。
企業が持つ技術やノウハウはその職場にいる人が持っているものだ。
確かに、文書で書かれた物はあるが全てのことが文字で書かれているわけでは無い
カンやコツなどという暗黙知は、人に依存する物だ
化学工場などでは、昔は建設以来たたき上げの人が、係長という重要なポジションを占めていた
製造プラントの設計思想から、弱点、トラブル事例など何から何まで知っている人が係長だった
製造課長は、大学出の人で、課長とか係長がうまくバランスを取って組織運営が行われていた
製造課長は、数年で変わっても係長は長い間変わることがなかった
ところが、昨今はたたき上げの係長がめっきり減って、係長も課長も定期的に人事異動で人が変わる職場が増えた
人材不足もあるのだろうが、大学出はなぜか一定期間経つとローテーションをさせられるらしい
会社は、多能化、多くのキャリアーを積ませる目的だというが人をころころ移動させては技術は伝承しない
更に、最近は、代理という職位が極端に減った。
昔は、係長代理がいて、その人を一定期間経ってから昇格させ係長にしていた 経験を積ませるためだ
技術やノウハウが時間をかけて移行するシステムができていた
きちんと、組織が円滑に動く仕組みができていたような気がする
課長代理というのも職場に多くいた。課長代理というのは、たたき上げの係長が昇格して、課長を補佐するポジションだった
他の工場から、転勤してきた経験の浅い課長も安心して職場を運営できた
最近はどうだろう 機械的に、人事異動が行われているような気がする
2010年代に化学プラントで立て続けに、大きな事故が起きているがその中にも
短期間で製造課長や係長を替えていたという文章を目にしたことがある
化学プラントなどの人の移動は、慎重に行って欲しい

2020年02月08日

事故や災害につながるキーワード その-3 改善提案

今回は、多くの企業で実施ている改善提案が事故につながるケースを紹介する
改善提案の多くは、コストダウンや効率化などが関与している
たとえば、従来製品を輸送するのに金属製のドラム缶などを使っていたケースだ
ところが、物流費などを下げるためプラスチック製の軽いドラム缶にするケースがある
中に入れる製品は、静電気を発生しやすい物だったとしよう
金属製のドラム缶なら、静電気はドラム缶からうまく逃げてくれる
ところが、非金属の材質となったとたん静電気が逃げずに着火事故などを引き起こす
フレコンなどもそうだ。
今までは、静電気を逃がす機能を持ったちょっと割高なフレコンだったとしよう
コストを下げるため使い捨ての、静電気防止機能の無いフレコンになったとたん、静電気で火災事故が起こるケースもある
ドラム缶から、フレコンに変更して大きな事故が起きている事例がある
フレコンに変更すれば、梱包費や輸送コストも減るからだ
製品を入れる容器を変えたことによる事故だ
容器に入れる製品は、保管していると製品に含まれている微量な可燃性ガスがしみ出してくる
危険性があるので、密封した金属ドラム缶に今までは入れてガスがでないようにしていた
ところが、あるときフレコンに変更した。フレコンは、プラスチックできた大型の袋だ。
理由は、低温で保管すれば、ガスはほとんど発生しないことがわかったからだ
製造メーカーは、低温の倉庫会社に保管を依頼していたが、倉庫会社側は低温で保管の意味を余り理解していなかった
あるとき、倉庫内の管理温度が上がり漏れ出した可燃性ガスに着火して大きな火災になったという事故だhttp://www.shippai.org/fkd/hf/HC0200111.pdf
改善提案も変更管理が大切だ

2020年02月05日

事故や災害につながるキーワード その-2  故障修理

前回は経年劣化の話をした
機械は古くなれば、故障すれば
故障すれば修理する
修理をすることにより、又新たなリスクが現れる
修理は人がするのだから、必ず修理の作業工程でヒューマンエラーが発生する
部品の組み付けミスなどが起こることがある
修理すれば安全というわけではない
そこに難しさがある
修理は必ず人が介在する
修理時のヒューマンエラーが新たな事故の引き金となる
昔、日航のジャンボ機の隔壁修理ミスで飛行機が墜落した事故がある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0071008.html
修理時のミスで、多くの人が命を失った事故だ
たかが修理と考えないで欲しい
元通りに直すのはかなりの注意力と技術力がいると考えて欲しい

2020年02月03日

事故や災害につながるキーワード  その-1 経年劣化

事故が起こるキーワードを深く考えてみたい
一つ目は、経年劣化だ
古くなれば、事故が起こりやすくなる
だから、新しいものにする
新しくなることはいいことではある
故障はしなくなるという利点はある
とはいえ、新しくなれば安全かというとそうは行かない
古くなったものが、そっくり昔のままで新しくなるわけではない
時代が変化して、より新しいものになりかわるわけだから昔のものとは変わることもある
つまり、新しくなることは、新たなリスクが織り込まれる
新たな、事故の要素が加わることになるということも考えておく必要がある
古いものを、新しくしたら又新たな事故の要因が加わると常に考えなくてはいけない
古いものを新しくすれば新たな危険が追加されると考えて欲しい
新しくすることによって、何らかの変化が生じてしまうからだ
変更管理という概念があるように、変化が問題を生じることもある
単純に、新しくすれば問題は無くなると考えてはいけない
新しくなれば、常に新しいリスクが生まれる
そこに技術革新の難しさがある

2020年01月31日

事故や災害につながるキーワードを考える

なぜ化学物質を取り扱う工場で事故が起こるのかを考えたことがあるだろうか
化学物質を取り扱うのは、世の中に必要な物質を創り出す為だ
化学物質が無ければ、この世の中は成り立たない
だからといって、事故が起こって良いわけではない
事故が起こるのは、たねも仕掛けもある
何回かにわたって、事故が起こるキーワードを紹介する
まずは、初回なので、事故が起こるキーワードを4つほどあげてみたい
一つ目は、経年劣化だ
二つ目は、異常の発生に伴う補修と補強だ
三番目は、改善提案だ
四番目は、人事異動だ
これらのキーワードを見てなるほどと思う人はかなりの強者だ
たぶん、いろいろ痛い目に遭った人かもしれない
今回から、何回かにわたってこの4つのキーワードを深掘りしていきたい

2020年01月30日

加熱炉やボイラーなど高温設備で起こる事故と要因

工場内に入ると火気厳禁とは書いてあるが、堂々と火を使っている装置が工場内に存在する
加熱炉やボイラーなどの装置だ
火をたいて加熱する装置だから、加熱する流体が可燃物であれば漏れれば確実に火がつき火災となる
従って、加熱炉やボイラーで火災や、爆発事例は多い
事故の原因の一つに、加熱管と呼ばれる内部にある管が破れる事例が多い
加熱管とは火で絶えずあぶられる金属製の配管だ
高熱にさらされるのだから、火の当て方が悪ければ色々な問題が起きる
クリープ損傷、熱疲労、浸炭、メタルダステングなどが主な原因だ
クリープとは、火で暖められて金属が柔らかくなり延びてしまう現象だ
熱疲労とは、熱で暖めたり、冷えたりすることの繰り返しで金属が劣化する現象だ
金属組織が膨張、収縮を繰り返すことで、金属が劣化するのだ
浸炭とは、金属内にある炭素量が減って金属の性能が劣化することだ
金属は、一定量の炭素を内部に持っていて固さなどを維持しているからだ
メタルダステングとは、高温状態で金属を使用したときの腐食減肉のことだ
たとえば、石油化学工場などでナフサを熱分解する分解炉などで起こる
炉内温度は800度近くある状態だ
専門的なところは以下の資料を見て欲しい
https://d-engineer.com/zairiki/kuhirou.html
http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0040020510
https://www.ebara.co.jp/about/technologies/abstract/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/31/256_P31_r1.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr/56/3/56_3_84/_pdf/-char/ja

2020年01月26日

金属は燃えると思え

金属は燃えないと思っていたら大間違いだ
ある一定の温度を超え、条件が整えば良く燃える
金属たわしに炎を近づけてあぶっているとしばらくして燃え始める
細い金属の線でできているわけだから、表面積が多い
表面積が多ければ、金属の塊と違い温度も上がりやすく燃え始める
空気による酸化反応が起こる
大気中では無く、綬酸素のがあるような条件ではものすごく鉄などの金属も燃える
こんな事例がある
酸素の通る配管を溶接した際、溶接屑が配管内に残っていた
溶接屑をかたづけることをせず、酸素を流し始めたところ溶接屑が動き回り衝撃火花であっという間に火がつき溶接屑が赤燃した事故がある
酸化反応工程の酸素の配管での事故だ
もう一つこんな事故がある
タワーの中に、金属製の充填物が入っていた
タワー内には、支燃性のガスが流れていた
あるとき、火がつき金属製の充填物が激しく燃えた事故がある
充填物はたわしのような形状で、表面積が多く燃えやすいステンレス製の充填物だった
チタンが、酸素条件下では良く燃えるというのをご存じだろうか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/20/3/20_160/_pdf/-char/ja
http://www.titan-japan.com/wp-content/uploads/2017/04/20170413_2.pdf
耐食性があり化学プラントではよく使われる金属だ
金属は燃えないと思わないで欲しい 条件が整えば良く燃えると思って欲しい

2020年01月24日

消防に関する法の沿革 その-4 1970年代~現代

1970年代に入ると、化学プラントなどで事故が頻発した
特に、1973年という年は毎月のように事故が起こっている
当時の文献があるので紹介しておく
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/12/4/12_4_184/_pdf
1974年には、タンクの底板の亀裂による大規模海洋汚染が岡山県倉敷のコンビナートで起こっている
http://www.sozogaku.com/fkd/hf/HB0012040.pdf
この事故を契機に、1976年にタンクに関して消防法の改正が行われている
1980年代に入っても事故は続いた。この時代頃から、半導体産業が発達し始めゲルマンやシランなど新物質などによる危険物も増えていった
これを受け、有毒な化学物質の新たな規制、反応性の高い危険物の規制などが消防法令に盛り込まれていった
1990年代に入ると、1997年に神戸大震災が起きた
これを契機にタンクの耐震に関する法改正が行われている
2000年代に入ると、世の中ではリスクアセスメントを実施することが求められるようになってきた
2005年に、消防法も危険源の特定を要求するようになってきた
その後も、大きな事故が起きるたびに各種の通達が出されている
消防庁からの通達なども、目を通しておいて欲しい
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/300704_jimurenraku.pdf
法を守っていれば安全と言うわけではない
法律は、守るべき最低限の要求事項だ
企業が知恵とお金を出し、法に上乗せした様々な安全投資をしていくことも必要だ

2020年01月23日

消防に関する法の沿革 その-3 1960年代の災害を受けて

1960年代に入ると、高度経済成長が始まる 化学プラントなどの規模もどんどん増加していった
1960年7月に自治省(現在の総務省)消防庁が設置された
1964年(昭和39年)には新潟地震、昭和電工爆発、宝組勝島倉庫火災など危険物施設での大災害が続いた
新潟地震は、新潟にできた石油コンビナートが燃える1964年6月16日に起きた大災害だ
まだまだ化学工場に対する消防体制が弱飼った時代の大火災だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%9C%B0%E9%9C%87
https://www.youtube.com/watch?v=WCbzZXeXQPQ
昭和電工爆発は、川崎にある化学工場で1964年6月11日に起きた爆発事故だ
18名の死者と重軽傷や100名を超す大惨事だ
漏洩した化学物質が、近くの火気工事の火で着火爆発した大惨事だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%AD%E5%92%8C%E9%9B%BB%E5%B7%A5%E5%B7%9D%E5%B4%8E%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E7%88%86%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85
宝組勝島倉庫火災刃。東京品川で1964年7月14日起きた倉庫火災だ
消防関係者19人が殉職する火災爆発事故だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%93%81%E5%B7%9D%E5%8B%9D%E5%B3%B6%E5%80%89%E5%BA%AB%E7%88%86%E7%99%BA%E7%81%AB%E7%81%BD
立て続けに、起きた火災爆発事故だが、これ以前はこれほどの規模の火災は想定していなかった
これらの事故を受け、消防法令が改正されている
危険物取り扱い者の業務の明確化、保安員の専任などを規定し危険物管理の強化を図っている
ハード面でも、屋外タンクの耐震性や耐火性向上、、保有空地などの見直しが行われた
物質危険性についても、有機過酸化物に関する見直しも行われている

2020年01月22日

消防に関する法の沿革 その-2 戦後から高度経済成長へ

1950年代に入ると日本ではコンビナート言う産業形態ができはじめた
日本は軽工業から重工業へと変化を始めていた
1954年10月15日、四日市にある製油所で大規模なタンク火災がおこった
死者1名重軽傷者16名も出し、鎮火まで2日間かかった大災害だ
当時は、原因不明とされたが現在では、火災時に油が天板を壊して吹き上げるボイルオーバー現象が起こったと言われている
参考までに、ボイルオーバーに関する文献を紹介しておく
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/houkoku/081-120/files/shoho_117s.pdf
1950年代には、コンビナートという巨大な化学工場群ができはじめる
1956年、川崎、四日市、岩国、新居浜に石油化学コンビナートの建設が決定され
1958年に三井化学岩国(日本最初のコンビナート)、住友化学新居浜のコンビナートが稼働を始めた。
コンビナートは巨大な化学装置の集まりである
それまでとは、規模そのものが違ってきた
取り扱う化学物質の量や種類が大幅に増え始めた時代でもある
石炭から石油へと原料が代わり、危険物そのものの危険性が増してきた時代だ
https://www.jpca.or.jp/files/trends/1_kokusanka.pdf
1959年4月、消防法が全面的に改正された
規制の主体者は従来市町村であったが、規制の主体者は国とすることにしたのである
危険物の規制数量も市町村ではなく国が法令で定めることにしたというように国家ベースで消防関係の規制が行われるようになった
1960年代に入ると、高度経済成長が始まる 化学プラントなどの規模もどんどん増加していった
https://www.jpca.or.jp/files/trends/2_o_gataka.pdf
従来型の、木造建築物火災をベースとした消防体制では成り立たない地域もできはじめた

2020年01月21日

消防に関する法の沿革 その-1

江戸時代町火消しという消防組織があった
明治の時代、消防は警察機構の中に含まれていた。警察が、火災発生時には消火にあたるのが任務とされていた
警察は当然、犯罪対応などが主業務で有り、火災対応は副次的な業務で有った
火災が起こったら消火はするが、火災の未然防止という積極的な施策はとられていなかった。いわゆる消極消防であった
戦争が終わり、米軍は日本に進駐して日本の警察の機能についても見直しが行われた
戦後の占領政策の一環で、警察機構の見直しが行われた際に消防機能の強化を図ることが提言された
警察から消防機能を切り離し独立した行政機関が行うという施策だ
これにより、1948年に消防法が公布され消防庁という組織を発足させた
独立した行政機関として、消防行政を始めたのがこの時代だ。
とはいえ、規制の主体者はまだ国ではなく市町村であった
各自治体毎に消防機能を担う方式である
危険物の規制も自治体が主体で規制レベルもバラツキのある状況だった
市町村毎に、技術力や消防力が違うのだから当然である
これがその後に問題となってくる。規制の甘いところで大きな事故が起こってしまうのだ。
http://www.ff-inc.co.jp/syuppan/zassi/PDF/syobo13_08F.pdf

2020年01月19日

阪神神戸大震災から25年

今日は、1月17日だ。
1995年1月17日の夜明け前の朝5時46分に神戸で大地震が起きた
当時、私は会社に向かう朝の通勤電車でこの地震を知った
震度7の直下型地震だ テレビに流れる映像がものすごかったことを今でも覚えている
日本でも過去多くの地震が起き、法制面で規制が強化されてきている
消防法に関する、地震と法改正についていい文献があるので紹介しておく
http://www.i-s-l.org/shupan/pdf/se171_open.pdf
又、神戸大震災の時企業の研究所での被害状況と教訓を書いた文献もあるので紹介しておく
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/55/9/55_9_824/_pdf/-char/en
東北大震災の時にも、危険物を扱う企業などで被害が出た
しかし、被害を抑えられた企業も多い
10年15年と時間をかけてこつこつと対策をしてきたそうだ
地震への備えは大切だ
地震を甘く見ないことだ
対策にはお金と時間がかかる
こつこつと進めていくことだ

2020年01月17日

高圧ガスに関する法の沿革 その-2

昭和50年、1975年に石油コンビナート等災害防止法という法律が制定された
http://www.bousaihaku-smart.com/ff60years/11372/
高圧ガスという単独の規制領域だけでは無く、危険物も含めた総合的な規制が必要だとの考え方だ
法の縦割りで、高圧ガスや危険物というように規制する法律が異なるという現実が日本ではある
海外では、高圧ガスのみを取り締まるという法律はない 高圧ガス保安法というのは日本独自の法律だ
1975年~76年にかけては1970年代前半のコンビナート事故多発を受け法の強化を行っている
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/case_list_S49-past.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj1966/11/4/11_4_177/_pdf
1986年には、長期連続運転が可能となる高圧ガス認定制度という考え方が織り込まれた
1990年代に入ると自主保安という考え方が進んできた
国家が民間事業者を取り締まるのではなく、事業者自らが自主的に安全を管理するのが基本だという考え方だ
これにより、1997年には、「取締」という字句が法名称から無くなり「高圧ガス保安法」という名称に法が改められた
http://www.kansan.co.jp/material/data/1155890557198781.pdf
2005年には認定制度に関する事項が改定され体系的な保安管理システムを要求されるようになってきている
事業者自らがリスクアセスメントを行い、事故の防止を図るよう求められている
2017年4月には、スーパー認定といいプラントを長期間停止しないで運転を継続できる制度もできている
ハードルは高いが、企業にとってはメリットのある制度だ
https://www.khk.or.jp/certification/
安全は担保しながらも、企業の国際競争力強化を図る施策が取り込まれてきている
法の改正は世の中の動きを写している
条文だけでは無く、改正の背景も学んで欲しい

2020年01月15日

高圧ガスに関する法の沿革 その-1

日本では、1910年台に高圧ガスを利用する技術が始まった
小さな容器で高圧でガスを圧縮して入れれば大量のガスを効率的に利用できるからだ
高圧というのは、当然事故が起こる
ボンベが破裂というのが、今から110年前頃の時代に沢山起きていた
そこで、高圧ガスのボンベ破裂事故があまりにも多いので、法律が整備された
1922年に「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」公布されたのだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/daikankyo/5/3/5_14C0704/_pdf/-char/en
現代の高圧ガス保安法の前身となる法律が、今から100年前にできたのだ
1951年に戦後の急速な産業発展に伴って「高圧ガス取締法」という法律が制定された
戦前の有機合成化学は原料にカーバイトを使い、アセチレンを基礎原料にしていた
このことから、主にアセチレン工業を法は規制していたが、高圧ガスの利用拡大や
石炭から石油への時代に対応して法整備を行ったのだ
1963年に法の一部が改正され「自主検査」という制度が導入された
従来の官の検査を補完し、事故防止に万全を期そうとしたのだ
石油化学産業の勃興により、1970年代に入るとコンビナートで多くの事故が起きた。これを受け新たな法整備が進んだ
今までの法律は、工場一つ一つを規制する法律だった
つまり、工場がまとまった単位であるコンビナートを規制する法律は存在し無かった
工場という「点」の規制からコンビナートという工場集団を規制する「面」という概念で新たな法律が作られた
1975年(昭和50年)に、コンビナートという集団を規制する石油コンビナート等災害防止法という法律が制定された
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350AC0000000084
高圧ガスや消防法を包括した新たな規制だ 高圧ガス単独では無く危険物という領域を含めた法規制が求められてきたのだ

2020年01月13日

フレコンバッグで起こる事故 その-2

反応器などにフレコンバッグを使って原料などを投入したとき、静電気で着火や爆発事故が起こることがある。
静電気発生防止用のバックを使えば、かなり防げる事故ではあるがコスト面から帯電しやすいフレコンバックが使われてしまう。
フレコンの袋を開き、容器などへ移すときにも事故が起きる
粉が舞い散れば、静電気が起こる 静電気が引き金で、粉塵爆発なども起こる
この粉体投入時の静電気発生事例とそのメカニズムを紹介した良い文献があるので紹介しておく。
下記のURLを見て欲しい。
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2018/pdf_120/siryou_2.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/7/2/7_JOSH-2014-0007-SO/_pdf

2020年01月11日

フレコンバッグで起こる事故

今日は労働災害の話だ
フレコンバック(略してフレコンとも呼ぶ)という袋が、工場で使われることがある
https://www.monotaro.com/p/6108/2123/
このフレコンバッグが、引き起こす労働災害事例を、2019年7月1日のブログで紹介した
http://handa.jpn.org/1/posts/post245.html
フレコンバックと呼ばれる重い袋がくずれて事故になるケースは多い
フレコンバックは、原料や製品などの粉や粒状製品を入れる袋だ 
重さは、軽い物で数百キロ。1トンくらいの重い物もある。
何段かに積み上げて、保管することがあるが、崩れて人が挟まれる事故が多発している 
何百キロもの重みがあるのだから、人にのしかかってきたら死亡することもある。
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/528/20180304omutajko.pdf
フレコンバックなどを取り扱うところではこの種の災害をしっかりと防止して欲しい。
フレコンが崩れて死ぬこともあることを知らない人が多いからだ。
事故が起これば、会社側が、刑事責任を問われることもある
フレコンを積みつけるときの注意点を書いた情報があるのでここで紹介しておく
https://www.softbag.jp/info/useful/furekon-load.html
たかがフレコンと思わないで欲しい

事故が起きれば、新聞やニュースで会社名が報道される
報道に使われる会社名は,物流会社名よりむしろ,フレコンに入れた製品などの製造メーカーのケースが多い
物流会社や協力会社に物流や倉庫管理をまかしているから安心と思わないで欲しい
発注者としてしっかりと,事故が起きないか確認して欲しい

2020年01月08日

硫酸タンクと事故 その-2

前回のブログで硫酸タンクでの爆発事故を紹介した
いつもは濃硫酸を入れていたが、あるとき希硫酸を入れたので水素が発生した事故だ
希硫酸で水素が発生し、火気工事中が着火源となり起こった水素爆発事故だ
希硫酸と鉄が反応すると次のように水素が発生するメカニズムがある
H2SO4+Fe→FeSO4+H2
http://www.rainbow-chaser.info/?page_id=21
水などで希釈された濃度の低い希硫酸は、このように水素を発生する
しかし、濃硫酸ならば,一般的に水素は発生しないといわれている
濃硫酸の場合、含まれる水が少ないため電離した水素イ. オンが発生しにくいからだ
ただし、それは純粋な濃硫酸の話である いわゆる,新品の状態の時である
購入してまだ使用していない,新品の話なら濃硫酸は水素は発生しないと考えて良い
しかし,プロセスで使用した濃硫酸を循環して利用することもあるはずだ
水分が混入してくれば、濃硫酸でも、いつの間にか薄められて希硫酸になる
希硫酸になっていることに気づかなければ、水素で事故が起こることがある
濃硫酸内では鉄の溶解速度は十分に低いので. 濃硫酸タンクに鉄が広く用いられている
タンクに濃硫酸送る配管にも、鉄が使われる
鉄を使うことには、問題は無いのだが配管流速はしっかり管理する必要がある
流速と鉄の溶け出しは、相関関係があるからだ
流速が早すぎると、腐食速度が増し、鉄が急速に溶け出していく
こんな文献がある https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/41/11/41_11_777/_pdf
こんな事故が,1975/8/27千葉県市原で起こっている
濃硫酸タンクから液を送るポンプの循環ラインが頻繁に腐食していた
配管が細すぎて、流速が早く鉄が溶けて腐食していたのだ
ポンプから、タンクへ戻す配管だから腐食して溶けた鉄は、時間をかけてタンク内の濃硫酸に溶け込んでいた
溶け込んだ鉄は、H2SO4+Fe→FeSO4+H2のように水素が発生していた
あるとき、腐食した配管を交換しようと火気工事を始めたところ発生していた水素で爆発し作業員が死亡した
事故後、調べた所濃硫酸の中の鉄は1wt%入っていたという
色も透明では無く、灰白色に変色していたという 濃硫酸の鉄分や色は定期的にチェックして欲しい

 

2020年01月06日

硫酸タンクと事故 その-1

硫酸タンクで爆発事故が起こることを知っているだろうか
硫酸は,薬傷などの危険性については皆よく知っている
しかし,硫酸そのものは可燃物では無いので火気工事などでも危険だと思わないところに事故の芽がある
硫酸は可燃性では無いから安全だと思わないで欲しい
硫酸は酸性物質だ。酸性物質は,鉄などの金属と反応して水素という物質を発生する。
つまり、安易に火気工事をすれば発生した水素に火が着き爆発が起こることがある
硫酸などの酸性物質は常に金属と触れると水素が発生すると考えて欲しい。
硫酸の分子式の中に、H2という水素分子がある。薄められた硫酸水の水にもH2というのがある。
このHが分離して水素が発生すると思って欲しい
硫酸と鉄が反応すると次のように水素が発生する
H2SO4+Fe→FeSO4+H2
硫酸と言っても,濃硫酸のような濃度の高いものもある。水で希釈した,硫酸もある。
濃度の高い濃硫酸では水素は発生することはない。
水素を発生するのは、水などで希釈された濃度の低い硫酸だ
濃度の違いで,事故の確率は違う。
いつもは,濃硫酸を入れていたはずのタンクの硫酸濃度が下がったことに気づかず水素が発生し火気工事で爆発した事故がある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2015_07.pdf
水素は,とんでもない爆発力がある

酸は金属と触れると水素が発生すると思って欲しい
水素は臭いもしないから,嗅覚で感じることはできない
ガス検知もせず安易に火気工事をすれば,水素で爆発が起こる
水素の持つエネルギーを甘く見ないで欲しい。

硫酸を扱っていれば,水素が発生すると思って欲しい。

2020年01月04日

時代変革 技術革新 技術伝承

いよいよ2020年が始まる
日本の化学産業が,本格的に始まったのは1900年代初頭だからもう百年以上になる
1910年代は石炭を原料にした石炭化学だ
1945年に戦争が終わって,石油精製装置の復興が始まる
装置の復興に伴い,日本のエンジニアリング技術も産業化していく
1950年代は,石油化学の時代だ。
後半からは、コンビナートとという工場形態ができはじめる
1960年代は高度経済成長が始まる
工場の規模は,爆発的に拡大する
1970年代は,空気式から電気式計器の時代へと変わる
制御の高度化も進む
一方で,公害という問題も起きていた時代だ
省エネ、環境対策も始まる
1980年代は、DCSというコンピューターを使った運転方式に変わる
法も変わり、長期連続運転可能な時代が始まる
自主保安という時代に入る
1990年代は,バブルがはじけ不景気が始まる
人の採用もとまり、投資も抑えられる
工場の海外移転が始まった時代でもある
2000年代は,コンピューターの2000年問題で年明けだ
後半から,団塊の世代と呼ばれるベテラン層が会社を去って行く
人に技術有りだから,企業から技術や技能が無くなり始めた時代でもある
2010年代は,東北大震災を契機に化学産業でも大きな事故が続く
2007年以降、再雇用された人達も2012年頃から企業を去って行った
2020年代リスクマネージメントは深化し、IOTも進んでいくのだろう
それを使いこなすのは人だ
技術革新は上手に取り込み、技術伝承は効果的な方法を模索して欲しい
人も,お金も、時間も限られている
2020年代を生き抜いてく必要がある

2020年01月02日

今年一年の事故を振り返って

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
事故の報道はされるが、1年経過しても原因や背景などはほとんどその後報道されることは無い
報道は,起きた事実だけを伝えるものだからだ
2019/1/8京都のナイロン工場で大きな火災が起こった
https://www.sankei.com/west/news/190108/wst1901080029-n1.html
建屋の中で火災が起こり、燃え広がると,なかなか火が消しにくいということだ
安易に,機械の近くに油などを置いておくと一気に燃え広がる
2018/9/6に福井県で起きたナイロン工場火災と似ている事故だ
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/796595
2019/3/22,7/19には中国で大きな化学工場の事故が起きている 数十人の死者が出ている
https://www.afpbb.com/articles/-/3217146
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47565450Z10C19A7000000/
桁違いに被害者が多い 事故の原因は,その後も報道されていない
2019/4/17化学工場で粉末原料投入中爆発 粉塵爆発かもしれない
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/837428
いまだに原因は報道されていないが、静電気が着火源かもしれない
2019/7/17化学工場で爆発 粉塵爆発の可能性がある げが人が出なかったのが幸いだ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47469040Y9A710C1CN0000/
2019/8/3立体自動倉庫から火災 引火しやすい酢酸エチルやトルエンを保管していたという
https://matomedane.jp/page/34829
夏場の高温時での災害だ たかが倉庫と考えないことだ しっかりと温度管理も大切だ
2019/9/18 トルコで化学工場の爆発事故だ ダラム缶が吹き飛ぶビデオが公開されていた
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5974162
年末12月24日は川崎の製油所で火災事故が起きている
https://www.youtube.com/watch?v=Hx4Buw-OWRE
今回紹介したいずれの事故も,原因は報道されていない
事故が起きても、原因がわからなければ教訓として利用できない
そこに,事故が繰り返される理由がある
事故の原因やその後の対策情報の公開を望みたい

2019年12月30日

地震と工場火災

新潟地震というのを知っているだろうか
今から半世紀前1964年6月16日に起こった地震だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%9C%B0%E9%9C%87
https://www2.nhk.or.jp/archives/shogenarchives/postwar/news/movie.cgi?das_id=D0001831086_00000
当時新潟には大きな石油工場があった
この地震で、石油工場のタンクが火災を起こし大きな災害となった
日本で始めて、本格的に大きな工場災害を引き起こした地震と言って良い
新潟には,化学消防車はなく、タンク火災にはなすすべも無かった
東京から化学消防車が応援に駆けつける有様だ
現場に化学消防車が到着したのは、2日後の朝5時だ
到着はしたものの,持っていた泡消化剤などの原液はわずかで、大型のタンク火災が消せるわけは無い
自衛隊も応援に入ったものの火災は鎮圧でき無かった
結局、当時のアメリカ軍しか泡消化剤を大量に持っているところは無く、米軍の協力でやっと火災を鎮圧できたのが当時の日本の実力だ
この事故から多くの教訓を得たが、もうほとんど忘れさられているのでは無いだろうか
一番目は,タンクなどの化学設備は地震を考慮した設計とせよだ
当時のタンクは,アメリカの規格をまねたもので耐震設計を考慮してはいなかった
二番目は、自前の消防車をもてだ
地震のような災害時は,自治消防は民間人の保護で精一杯だ
化学企業は,自分の火災は自分の消防力で鎮圧できる能力を持つべきだ
三番目は,耐火性能だ
球形タンクの延焼事故があった。タンクそのものの爆発は逃れたものの、周りからの火炎で影響を受けた
特に,柱が火炎で簡単に曲がったのが問題となった
鉄でできた柱とて炎であぶられればひとたまりも無い
鉄も雨のように曲がる
この事故の教訓から,柱の耐火被覆という概念ができはじめた
そのほかにも多くの事故の教訓がある
過去の地震事故に学んで欲しい

2019年12月28日

製油所で火災 その-2 約30年前の事故の教訓

前回のブログで、川崎の製油所での火災情報を伝えた
今日の,ニュース記事を見ていたら1991年にも出火したとの記載があった
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191224-00000018-kana-l14
今回出火した、重質油熱分解装置での約30年前に事故があったのは事実だ 死亡事故でもある
今回の,事故の原因はわからないが,1991年の事故には多くの教訓があるので紹介しておきたい
事故は,運転中に配管が腐食して漏れているのを見つけたことが発端だ
本来なら,運転を止めて補修するのが安全なのだが、運転を止めずに補修する方法を選択した
工事の方法は,腐食している配管の周りに太い配管を溶接して,覆いを被してしまう方法だ
ボックスイン工法と呼ばれる手法だ リークボックス溶接とも呼ばれる
http://www.shippai.org/fkd/mf/MC0000151_02.jpg
http://www-it.jwes.or.jp/technology/images/cp2_table2.pdf
この工法は,溶接という火を使うのだから着火が問題となる
穴の開いた部分には,水を流すか内部流体を水に置き換えることが必要になる
しかし,溶接というのは金属を溶かして行うわけだからリスクがある
特に、溶接は何度も何度も同じ箇所を溶接すると金属がもろくなって割れるという性質がある
割れれば,大量に内部の液が噴き出してくる
この事故も、溶接時間が長すぎて金属が割れ大量の水と可燃物が噴き出し火災になった事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000151.html
事故の原因は一つだけでは無い
もともと建設段階で材質を間違えていたのだ 本来ステンレスなのに鉄で工事をしていた
腐食性の流体が流れるところに,鉄を使っていたのだから腐食して穴が開くわけだ
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00036.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00036_s.pdf
もう一つの原因として,局部電池現象がある
鉄とステンレスという二つの金属が存在したことにより電池が出来電流の流れにより金属が溶けたのだ
局部電池現象というものも知っていて欲しい
この事故には多くの教訓がある
特に考えて欲しいのは運転中の火気工事を甘く見るなと言うことだ
工事はいつもうまくいくとは限らないからだ

2019年12月26日

製油所で火災

朝のニュースを見ていいたら,いきなり川崎の製油所での火災情報が入ってきた
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191224/k10012226391000.html
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53723830U9A221C1CE0000/
年末に向け,従業員は安全確保で頑張っていただろうが残念だ
プラントではアスファルトを加熱してガソリンと軽油を精製しており
アスファルトは最高約900度になるという
かなりの高温部だ
通常、14人ずつ4班をつくり、交代で作業しているらしい
時間は,朝の7時頃だから交代勤務の交代時間に近い時刻だ
一人がやけどをしているらしいが命には問題ないというので一安心だ
この企業について調べてみた
2006年にバルブの閉め忘れというのが原因でタンク火災を起こしている
こんな事故だ 参考にして欲しい
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00141.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00141_s.pdf

2019年12月24日

FRPタンク天板からの転落事故

FRPなどの非金属でできたタンクの天板から人が転落する事故がある
太陽の紫外線などで天板が劣化していて強度が無くなっているのに、それを知らずに人が乗ってしまうからだ
2011年8月千葉県の船橋で2人が塩酸の入ったFRPタンクに落ちて死亡事故が起きている。
この事故以外でも過去に同様の事故が起きている。
昔、鳥取労働局がFRPなどの材質を使った塩酸タンクの事故事例と対策という文章を出している
参考になるはずだ
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/seido/ensan_taisaku2402.pdf
FRPなどの樹脂でできているタンクは、古くなれば太陽の光などで劣化する。どんなことがあっても、天板の上には人が乗ってはいけない
FRPタンクを保有しているなら一度は上記の資料は読んで欲しい
タンクへの転落防止には,タンクの猿ばしご付近にイラスト入りの転落注意の表示を取り付けて欲しい
厚生労働省のホームページにも事故事例がイラスト付きで載せられている
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101319
FRPタンクを持っているなら参考にして欲しい

2019年12月22日

プラスチック製ドラム缶が起こす事故

ドラム缶を使っている職場への情報だ
ドラム缶というと,昔は鉄製だった
その後、鉄さびが問題になりステンレス製も使われるようになった
鉄にせよステンレスにせよ金属だから重い
重ければ輸送コストもかかる
そこで、企業はコストダウンを考え,プラスチック製を使うようになった
確かにプラスチック製ドラム缶は軽くて,使いかっても良い
しかし、プラスチックは金属では無いからドラムに製品などを充填した際の静電気を逃がすことはできない
可燃性で電気を通しにくい物質を入れると静電気で事故が起こることを考えたことがあるだろうか
プラスチック製ドラム缶本体には、アースをとれないから、静電気を逃がすことはできない
可燃物などをプラスチック製ドラム缶に入れるときは考えて欲しい
静電気などで着火の可能性が高いからだ
あまり,プラスチック製ドラム缶の事故は報道されていないがかなり着火事故もあるのではないかとおもう
昔、雑誌Safety&tomorrow NO16 0 2015.3月にこのプラスチック製ドラム缶の事故情報が出ていた
横浜で起こった事故だ
プラスチック製ドラム缶に小分けしているときに静電気着火事故だ
静電気を逃がせないドラム缶にはリスクがあると思って欲しい

2019年12月19日

危険源の特定に関する法規制はどうなっているのか

危険物や高圧ガスを扱う工場では,事故の未然防止が求められている
事故が起きてから,原因と対策を考えるのでは無く,昨今では事故が起きる前に事故の未然防止をせよと要求しているのだ
アメリカでは、化学プラントに対し1992年に労働安全衛生法(OSHA)で化学プロセスを安全に管理する方法を法で規定している
PSM('プロセスセーフテイマネージメント)という管理手法だ
http://www.osakasys.com/Library_Files/keiso_201404_PSM.pdf
https://www.ipros.jp/technote/basic-process-safety/
この中でプロセスの危険源の特定や、リスク評価などの危険分析を行うことを要求している
では,危険源の特定に関して、日本の法律ではどうなっているか調べてみた
2000年代にはいって法関係の通達などが出されている
まずは,危険物関連の法律だ
2005年1月14日に、消防法 危険物の規制に関する規則の一部改正という通達が出ている
施行は,2005年の4月1日だ
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/170114ki14.pdf#search=%27%E6%B6%88%E9%98%B2%E5%8D%B1%E7%AC%AC14%E5%8F%B7%27
この中の,5ページ目 第二項 危険要因の把握に基ずく事故防止対策の推進に関する事項がある
製造工程や設備変更時に、危険要因の把握と対策を実施せよと規定している
いわゆる危険源の特定を行って,事故の未然防止をせよと要求している
高圧ガスに関する法関係では、2005年の3月30日に
「認定完成検査実施者及び認定保安検査実施者の認定に係る事業所の体制の基準を定める告示」(以下「認定告示」という。)
が制定されている
高圧ガスの認定工場に要求事項だ 告示86号だ
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2005/1784.html
この告示では、アメリカのOSHAで規定しているPSMの考えを幅広く取り込んでいる
今や,消防法や高圧ガス保安法でも危険源の特定を事業者に要求している時代だ
化学プロセスに潜んでいる危険源を拾い出し,評価し,対策を打つことだ
拾い出した危険源は,特定の従業員が知っていればいいわけではない
見える化して、そこに働く従業員に理解させておくことも大切だ
危険源を特定することを怠らないで欲しい

2019年12月18日

危険物保安技術協会が主催している事故事例セミナー

毎年行われている危険物保安技術協会が主催している事故事例セミナーの開催案内を入手した。
来年2月28日に東京、3月6日に行われるという。
危険物保安技術協会 事故事例セミナーホームページから情報を得ることができる
http://www.khk-syoubou.or.jp/seminar/2.html
今回は、高圧ガス認定工場だと思われる工場で起きた運転中の検査時に起きた事故事例の紹介もある
どんな原因だったか興味あるところだ
高圧ガスの認定工場であるなら,聞いてみる価値はあるのではないだろうか
私は、貴重な事故の教訓の情報源として数年前より聴講している
多くの事故は、知らなかったが主な原因である。少しでも、他社で起きている事故事例を知っていれば防げた事故は多いと感じている
危険物保安技術協会は、消防関係の組織が母体となる組織である。全国のあらゆる危険物の情報が入る組織と考えて良い
ホームページを見てもらえればわかるように、危険物関係の情報が得られる組織である
もし時間があるなら、事故事例セミナー受講されるといい
1年に一回の開催ではあるが、継続的に話を聞いていればかなりの情報が得られる
情報は、一朝一夕に得られるものでは無い。こつこつ集めることである

2019年12月17日

再雇用のベテラン運転員が起こす事故

2007年に再雇用制度というのができた
団塊の世代の大量退職を少しでも引き延ばそうというのが背景だ
色々な,経験を積んだ人が60才で定年になり企業からいなくなるのは避けようというねらいではあった
経験者を企業内に引き留めようというのはある意味いい政策ではあるが
ベテランという先輩方が,企業に残るのはある種の問題も起こる
3交代現場である化学企業の例だ
再雇用者をどういう形で企業内に残すかというと、3交代の直人員としては組み込むことはない
再雇用者は、昼間働く,常勤者スタッフという形態で働いてもらうことになる
一方、3交代の職場では,作業長(班長)の指揮下で全て仕事が行われていく
再雇用者は、常勤スタッフとなると,3交代組織の直属では無いので別系統の指揮下になる
再雇用者は、たいていは1年毎の契約となるので、実質もう社員では無い形になるので管理の形態が社員とは異なってくる
つまり、作業長(班長)の指揮下ではなくなると同時に,管理の形態も変わるため曖昧な管理状態がどうしても生じてしまう
ここに,色々な問題が生じてくる
3交代に組み込まれている社員は,最新の情報に基づいて教育訓練され情報も与えられる
一方、再雇用者はといえば1年毎の契約であるのだから,社員と同じレベルでの教育訓練や情報の提供もなされるとは限らない
再雇用者それに気づいてはいないこともある
したがって,昔の成功体験で仕事をこなそうとしてヒヤリや事故が起きる
最新の情報を提供されていないこともあるからだ
教育のギャップだけでは無い
再雇用者も、自分はベテランだという妄想もある
時代はどんどん変わり、過去の成功体験だけでは仕事をこなせないというという現実に気づいていないからだ
化学プラントの製造現場で,再雇用者を使っていくなら現役並みの教育や訓練をしておくことだ
時代はどんどん変わっている
再雇用者にも最新の知識を持たせて活用していくべきだ
こんな記事もあるので参考にしてください
https://www.think-sp.com/2012/06/04/kikikanri-anzenkyoiku/

2019年12月16日

仕切り板の事故と教訓その-2

仕切り板は,危険なものなどを確実に遮断する道具としてはシンプルで安価なものだ
半世紀ほど前までは ,仕切り板を使わず手に弁だけで縁切りをしていた
この為、漏れ込みなどが起こり事故が起きていた
確実な縁切りが行われなくて事故が起きていたのだ
では,仕切り板を使えばいいかというとそうではない
やはり,仕切り板を使うことによって副次的な事故も起きている
仕切り板は入れれば,確実に縁切りできると考えるのは間違いだ
縁切りをするなら,どこに仕切り板を入れたら最適かを常に考える必要がある
仕切り板を入れる場所が,適切ではなく起きている事故事例があるので紹介しておく
配管の一部で火気工事を行うため、仕切り板で縁切りをした
しかし、仕切り板を入れた場所がまずくて,仕切り板と弁本体にわずかに残っていた
可燃物が,火気工事側に漏れ込み火災となった事故だ
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/documents/h3071jiko.pdf
配管図を見てもらえば,わかるように仕切り板の入れる場所が悪い
仕切り板は入れればいいというものでは無い
この事故事例は、皆さんの職場でも是非紹介しておいて欲しい
私のブログの中で,過去仕切り板に付いて書いたものがある
時間があればそれを読んでほしい
2017/5/5と5/6
2019/5/16と2日前の2019/12/12のブログだ

2019年12月14日

仕切り板の事故と教訓

仕切り板というのを知っているだろうか
フランジなどの所に挿入して縁切りに使われる金属製の板だ
この板は,漏れ込みが原因である事故を防ぐのにはものすごく効果のあるものだ
今から半世紀前、日本は石炭産業から石油化学産業へと転換していった
石炭と違い、ものすごく燃えやすい物質を使い始めた時代だ
装置を停止すれば,当然バルブを閉めることになる
しかし,バルブは閉めてもわずかばかりに漏れる
漏れたものが,可燃性であれば当然火災や爆発事故になる
結果として,漏れたガスなどが原因となり爆発事故も起きた
耐圧気密テストでも事故は起きた
バルブだけで縁切りしていて,漏れ込んでいた高圧の気体で破裂事故が起きたりしている
今から半世紀前の,化学工場では積極的に仕切り板を使うという文化はなかったようだ
縁切りは,バルブだけで済ますというのが当時の風潮だったようだ
結果として,仕切り板を使わなかったことにより、仕切り弁からの漏れにより事故を頻繁に繰り返していた
弁は漏れると言うのは,今では当たり前の概念なのだが,今から半世紀前はその考えはあまりなかったようだ
弁さえ閉めれば,遮断できると安易に考えていたようだ
縁切りとはすごく大事な安全対策だ
危険なものを確実に縁切りできなければ,結果として必ず事故になる
仕切り板の大切さを考えて欲しい

2019年12月12日

リスクマネージメントの失敗

リスクマネージメントという言葉が使われて久しい。
昨今はリスクという言葉が付く用語も多い
リスクメネージメントとはという本も多い
しかし、リスクをそう簡単に管理できるものでは無い
隠れている無限のリスクを,見つけ出し手を打つのは生やさしいことではない
危険予知(KY)を導入している職場で、いつも失敗しているのはKYをやれば事故を防げると思っていることだ
事故を沢山経験したベテランであれば,過去の経験から事故が起こる可能性を予測して手は打てる
しかし,事故を余り経験していない若手が多い職場でKYをやらせても的確にリスクを拾い出させることはできない
事故の予見性を見抜くためには,過去の事例をきちんと整理して知っておく必要がある
企業の中で過去の事故事例を整理しているかというと案外整理されてはいない
単純に,日付順に事故資料をファイリングしているケースも多い
おまけに,事故の生情報を単純に保有しているケースも多い
昨今、企業の中で事故情報を社内に展開しているが生情報をそのまま流していても
リスクマネージメントに有効なわけではない
事故というものは,事実が大切なわけでは無いからだ
事故を活かすには、教訓が必要だ
事故から得た教訓は何かが大切なのに,教訓すら整理していない
過去の失敗を有効に使って行くには、整理した形で情報を展開することを考えて欲しい
過去の情報は大切だが,体系的に整理して知っておかないと
表面的なリスクマネージメントに終わって失敗するからだ

2019年12月10日

運転中のインターロック検査で事故が起こることがある

高圧ガスの認定工場では,長期連続運転が可能になる
2年、4年などプラントを停めずに長期連続運転ができる
その反面、安全装置の信頼性を確保するためインターロックなどを1年毎に
運転中に検査することが求められる
下記資料の13,14ページにインターロックの検査が書かれているので参照されたいhttps://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/technical_standards/dl/hokokusho.pdf
運転中にインターロック機能を検査すると言うことはかなりの危険が伴う
模擬信号を入れて、インターロック回路が正常に機能するかを
確認するためには,一時的にインターロックを解除しなければならないからだ
インターロックを解除すれば,万一運転中異常が発生してもプラントは安全に停止はしないリスクがある
もう一つ、運転中にインターロックを検査しているときに誤ったことをすれば
当然、事故につながる
2005年に運転中のインターロック検査時にこのような爆発事故が起きている
人為的なミスがいくつか重なって起きている事故だが案外この事故は知られていない
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2005-335.pdf
その後、運転中のインターロック検査時の事故は起きていないのかと思ったら事故は起きていた
2018年9月26日に大阪の製油所で加熱炉のインターロック検査中に起きた爆発事故だ
下記資料の3ページ目 事故番号NO15番の事故を見て欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/2018/H30jikoitirann7-9.pdf
インターロック検査の準備段階で本来触ってはいけない燃料弁を閉めたために
加熱炉が突然失火した
あわてて、再点火したため炉内の未燃焼ガスに着火爆発したようだ
事故報告書には書かれていないが
インターロックを検査するために失火時の安全を確保する機能も一時的に解除していたのかもしれない
たとえば、たとえば失火時は再パージが行われない限り
燃料を自動的に遮断する緊急遮断弁は開にならない安全機能機能をインターロックに持たせている
このような機能も解除されいたため機能し無かったのかもしれない
インターロックの運転中検査時に,トラブルが起きたときどう対処するかも教育訓練しておいて欲しい

2019年12月08日

技術伝承には要約する技術が大切だ

次の世代に技術を伝えていかなければ、社会の発展はない
技術伝承には時間と手間もかかる
しかも、膨大な技術が存在する
時間は限られている
当然、効果的な伝承方法が求められる
沢山教えればいいわけではない
ポイントをつかんで要領良く伝えることが常に求められている
そのためには要約する技術を身につけておく必要がある
だらだらと、とりとめもなく話をするタイプの人も多い
話しながら、自分の頭の中で考えを整理するタイプだ
日常生活の中でこれをやるのは問題がないが
時間が限られている、講義などでやられてはたまらない
講義時間内で、得るものが少なくなってしまうからだ
もう一つ、口数は少ないが、論点を端的に話してくれる人もいる
頭の中で、常に自分の考え方を予め整理して要点を後から口に出してくれるタイプだ
これは聞く方もありがたい
時間を効果的に使えるからだ
とはいえ、要約というのは難しい
ただ、要約するだけでは駄目だ
相手の理解できるレベル、聞きたいニーズなどをうまくつかんで常に要約しなければいけないからだ
単純に、短くすればいいというわけではない
要約する技術を身につけて欲しい

2019年12月06日

ポンプ循環ラインでのブタジエン液封事故

前回のブログでアメリカの化学工場爆発事故を紹介した。ここで取り扱っていた物質はブタジエンという。
2017年に日本で起きた事故で、ブタジエンの液封事故がある
ブタジエンのポンプを止めたときの液封対策で循環ラインに安全弁のような液逃がし弁という物を設置していた
下記のURLに事故報告とフローシートがあるので詳細はそれを見て欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/konbi_soku/2017-147.pdf
事故の原因は、肝心の液封対策で設置したはずの液逃がし弁内部でブタジエンが固まって正常に作動しなかったという事故だ
ブタジエンという物質は、重合物をつくる性質がある
本来なら液体の状態だが、流れが止まったり、長時間放置するとプラスチックのような固まりになると言うことだ
この固まりが、液逃がし弁内でできたため正常に作動しなかった事故だ
この事故の教訓として、液などが固まるようなポリマー化しやすい物質の液封を含めて圧力上昇対策としては
安易に機械的な安全弁の設置で済ますなと言うことだろう
液の動きがなければ、自然に固まる物質もある
安全弁は、液を通常とめてしまう物だから固まるのは当然だ
この事故報告にあるように安全以外の設備で圧を逃がしてやる必要がある
HAZOPをやるときには、重合性物質かも考えて欲しい
安全弁では、弁内部に重合性物質の固まりを作り、いざと言うときには作動しないのではないかと考えて欲しい
逆止弁も、同様に重合物の詰まりも考えて欲しい

2019年12月04日

アメリカの化学プラント爆発事故

インターネットを見ていたら、アメリカのテキサスという所の近くで化学プラントの爆発事故の記事が載っていた
数日前の爆発事故だ
https://www.cnn.co.jp/usa/35146053.html
爆発もさることながら、数万人の近隣住民避難が報じられていた
有毒な化学物質の漏洩も関連しているからだ
合成ゴムをつくるプラントらしく、ブタジエンという化学物質を取り扱っているという
ブタジエンは非常に反応性に富んだ物質だ
日本でもブタジエンを取り扱う工場で爆発事故は過去何度も起きているが
これほど大規模な事故は見たことがない
参考までにブタジエンが関連する日本の事故を何件か紹介しておく
2014年に千葉で起きた事故だ ポンプの逆流が発端だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-211.pdf
1982年に川崎で起きた爆発事故だ
仮補修をそのまま放置したため、5ヶ月後に漏洩し爆発した事故だ
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00220_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00220.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00220_a1.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00220_a2.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00220_a3.pdf
これ以外にも、日本では過去50年間で漏洩なども含め約50件位の事故は起きている
アメリカの事故の原因がわかるのはずいぶん先かもしれないが、今後も注目していきたい

2019年12月01日

事故と刑事罰

事故を起こすと当然、警察や労働基準監督署の調査が入る
事故の原因が複雑であれば、半年や1年で結論が出るわけではない
起訴されるまでに2年や3年もかかる事例は多い
事故の原因はそう単純ではないからだ
法律上責任を問われるのは、法令違反があるかないかだ
法令の条文は、細かなことまで規定していない
つまり、法令の条文をどう解釈して個別の事故に対応させるかに時間がかかる
単純な事故であれば、法の条文をそのまま解釈して適用できるが、化学物質の危険性に起因する事故はそう簡単にはいかない
刑事罰を問うには、事故の予見性と言うことが重要になる
事故になるとはわかっているのに何もしなかったというのは、犯罪だ
しかし、物質危険性などはその危険性を予測できないものもある
物質危険性というものは、全てわかっていると言うわけでは無いからだ
未知の領域が多数存在する
公知の事実であれば、それを知らなかったでは済まされない
しかし、公知の事実でなければ、事故が起こることは予見することは難しい
化学プラントの事故の裁判を見て見るとこの事故の予見性について裁判官の判断がバラツキがあることは事実だ
裁判官は、化学の専門家ではないからだ
だからといって事故が起きていいと言うわけではない
事故が起きてしまえば、社員が刑事罰に問われることがある
精神的な負担のみならず、刑事罰まで問われることもある
事故を起こせば社員にこのような負担がかかる
事故を起こさないように企業は努力をして欲しい

2019年11月28日

排気ダクトなどが関連する粉塵爆発

排気ダクトが引き起こす粉塵爆発事故事例は多い
製造工程で発生した、いらないものを排気するのが排気ダクトと呼ばれるものだ
排ガス、粉塵などいらないものをはき出してくれる
粉などが発生する製造工程では、この排気ダクトに思わぬ粉塵がたまることもある
可燃性の細かな粉塵が、ダクト内にたまっていることもある
ダクト内にこびりついてくれているなら、粉塵は悪いことはしない
ところが、何かの拍子に粉塵が振動などで舞い上がるとそれに着火源があれば粉塵爆発が起こる
2017年2月17日に起こった、金属加工業の工場で起こった粉塵爆発事故を紹介する
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%9B%E7%B2%89%E3%81%98%E3%82%93%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%89/2017%E5%B9%B42%E6%9C%8817%E6%97%A5%E3%80%80%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E6%A8%AA%E8%8A%9D%E5%85%89%E7%94%BA%E3%81%AE%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E3%81%A7%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF
不幸なことに、事故が起こった日は風が強くダクトが揺れて、内部に付着していた粉塵が揺れではがれて粉塵が舞っていた
長期間清掃していなかったから、ダクト内にはかなりの粉塵がたまっていた
不幸なことに、何らかの着火源でダクト内で粉塵爆発が起こり、従業員が死傷した事故だ
数日前に、労働基準監督署や警察がこの事故を起訴したニュースが流れていた
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52462230R21C19A1CC1000/
設備は設置したらそれでおしまいではない
定期点検が事故の防止には不可欠だ
排気ダクトは定期的に内部清掃が必要だ
定期的な点検に力を入れてて欲しい

2019年11月26日

10年一昔

時代の変化をどう感じているだろうか
一つの切り口として年単位というものもあるが、それほど大きな変化は感じられないだろう
10年一昔という言葉がある
確かに、10年経つと変化を感じ取ることができる
私は。1960年ころ、小学生だった。当時は、夢の東海道新幹線と言われていたが、今は現実に新幹線が日本全国走ってる
1970年代、東名高速ができモータリゼーションが始まった 車社会が始まった
その時代に化学会社に入ったが、まだ空気式と電気式の計器が混在していた
空気式計器は、構造原理がよくわかった 構造原理が目で見えたからだ
いまの、コンピューターでできた計器と違い動きが目で見えた
色々なことを直接体験できるいい時代だった
1980年代になるとDCSという道具ができはじめた テレビ画面を使って、工場を制御する計装制御システムだ
画期的な道具だった。人は、あっという間にそのようなコンピュータで制御する道具を使いこなすようになった
工場でも、自動化というものが本格的に進み始めた
1990年代になるとバブルがはじけ、不景気になった 日本にお金がなくなり始めたのだ
あっという間に、企業は人を採用しなくなり、日本は技術伝承ができにくくなった
同時に、企業は海外に工場を造り、コストダウンを図った その結果、技術は日本から少しずつなくなりはじめた
2000年代になると、大企業でも、派遣の採用を始めた。企業にいる人も、転籍などの制度を始め本体のスリム化を始めた
人にお金をかけなくなったのだ
このころから、企業人のモチベーションもかなり落ち始めた
結果として、コンプライアンスなどの問題も日本では起き始めた
人を大切にしなくなったことで、企業に忠誠を尽くすモチベーションが落ち始めたからだ
2010年代に入り、多くの経験を積んだ団塊の世代という人達も企業からいなくなり始めた。
2007年に再雇用制度というものを国はつくったが、5年限りの再雇用延長を越えた2012年には
技術を持った人が企業から去っていつた
2010年代はどうなるのだろうか 昔には戻らない
10年毎の変化をしっかり見ていきたい

2019年11月24日

ダミーパイプが引き起こす事故

配管の外面が腐食して、流体の漏洩で事故が起こることがある
神奈川県がこんな外面腐食事故防止情報を提供している
その中に、ダミーサーポートに関する情報がある
https://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/24098.pdf
資料の15ページ(PDF資料では17ページ)を参照して欲しい
本配管にダミーサポートと言って支柱になるような配管を取り付けることがある
パイプラックなどで柱に荷重を持たせるために使われる、支持パイプのことだ
このダミーパイプが思わぬ事故を起こすことが
先日、事故に関するいい資料が資料が見つかったので紹介したい
下記の資料をダウンロードして、
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/188/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
7ページからの事故事例を見て欲しい
ダミーパイプサポートの事故事例が書かれている
もし皆さんのプラントでダミーサポートを使っているなら参考にして欲しい

2019年11月21日

ポンプの締切運転が引き起こす事故

2019/11/17のブログで、ポンプの空引き事故の話をした
今回は、ポンプの締切運転の事故事例を紹介する
危険物保安技術協会が、こんな事故事例を報告している
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/188/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
事故の概要はこうだ
ポンプの配管ルートを変更した際に、配管内に仕切り板が挿入されているのに気がつかなかった
ポンプを動かし、そのまま運転を続けていたところ、ポンプ内で温度上昇が起こり5時間後にポンプのシール材が焼損し油が漏れだした事故だ
5時間の締切運転でポンプ内の液体温度は、250度くらいまで上昇したようだ
ポンプは、吐出側の弁を閉めて締切運転をしたときに急激に流体の温度が上昇するのをご存じだろうか
昔、エネルギー保存の法則というのを習ったはずだ
通常ポンプに加えられたエネルギー(電力)は、液体を流すのに使われる
電力というエネルギーが、液体を動かす運動エネルギーに変わるわけだ
普通に液が流れていれば、電力は運動エネルギーに変わるので液温があがることはほとんど無い
ところが、ポンプを締切運転のような状態にすると、電力は運動エネルギ-に変換されない
つまり、ポンプ内に閉じ込めた液体の、温度を上げる為の熱エネルギーとしてせっせと加えられた電気エネルギーは消費される
締切運転をすることで、ポンプは電気ヒーターのような役目をしてしまうのだ
5.5KWのポンプで、ポンプ内に閉じ込めた液が10Lであれば1分間に4度あがるという、計算事例もある
時間に比例して温度は上昇する。たとえば、10分ならその10倍の40度になる
ポンプの電力量、効率、液の閉じ込め容積などがわかれば、温度上昇は理論的に計算できる
http://energy-kanrishi.com/pump-j/
とにかく、締切運転を長時間続ければ温度は確実に上がることを知っておいて欲しい
締切運転は事故につながると知っておいて欲しい

2019年11月18日

ポンプの空引きが引き起こす事故

先日、講演をした折りに事故の話がでた
事故を経験した当事者からの話だった
スタート時ポンプから液を送っていたときに、突然ポンプが空引きでキャビテーション現象が起こった事故だ
私は、この事故はまだサラリーマン時代だったときで、事故の情報は知っていた
事故の概要はこうだ
スタート時、タンクから液をポンプで送り出していた
液面低下の警報は鳴ったが気づかなかった
当然、タンク内の液が無くなり、あっというまにポンプは空引き状態となった
しばらくして、タンク側に向けて液が逆流した
ポンプ出口側には逆止弁は設置されておらず
逆流した液が、タンクに入り込んだ
タンクは、開放型で液が溢れ出て室内に漏れ出した
液は可燃性ガスを含んでおり
しばらくして何らかの原因で着火火災となった事故だ
空引きによるキャビテーションが原因で逆流によるものだ
タンクから液を送り出すときは、在液量をしっかり管理して欲しい
タンクに液面低下警報があるから大丈夫だと思い込まないで欲しい
ポンプの空引きが重大な事故を起こすことがあるからだ
スタート時のように、忙しくてうるさいときには警報を見逃すこともあるとHAZOPでは考えて欲しい

事故の原因と対策が詳細に書かれた報告書があるので参考にして欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-211.pdf
HAZOPとして、この事故の教訓は「循環系のタンク」ということもポイントだ
循環系は、どこかバルブを閉めたり、ポンプが停まればバランスがくずれ途中のタンクが空になるリスクが高いと言うことだ
循環ラインにも着目して欲しい

2019年11月17日

社会への貢献

人は年をとる
いつまでも現役で働いていることはできない
必ず次の世代へ技術や技能を伝承することは不可欠だ
やはりある時点になれば、次の時代へ技術伝承が必要だ
技術を伝承すると言うことはそうたやすいことではない
知っていることをそのまましゃべれば、いいというわけではない
自分との価値観の違う人に伝えるのだから、違った価値観の人の言葉に逢わせなくてはいけないからだ
話せば、わかるだろうと言うわけではない
60才の人が20才の人に話すときは40年の時代のギャップがあると思わなくてはいけない
10年一昔と言われているのに、40年もギャップがあればとんでもないことだ
そうは言っても、昔起こったことは将来かならず起こる
事故や災害もしかりだ
過去に起きたことは必ず起きる
事故を未然に防ぐには過去を知ることだ
次の世代が事故を起こさないためにも
事故を経験した世代の人は次の世代に事故の経験を伝えて欲しい

2019年11月15日

安全を守るためにはスペシャリストかゼネラリストのいずれが必要か

安全を守るために、企業に必要な人材は何かと考えて欲しい
安全を担当する部門には、2つの人材が必要だ
幅広く物事を考える人も必要だ。いわゆるゼネラリストというタイプの人だ。
総合的に物事を判断するタイプの人だ。
しかし物事は、総合的に判断すればいいというわけではない。
総合的にと言うことは、平均値的な対応しかできないと言うことだ。
うまくいくケースもあれば、うまく行かないこともあるというのが総合判断だと言うことだ。
安全というものは、時に深く深く考えないと問題の本質は見つからないこともある
つまり、深掘りができる人がいないと問題の本質は見つけられない
本質が見つけられ無ければ、同じようなトラブルが繰り返す
深く深く物事を考えてくれる人がいてこそ
本質的な問題を解決できるという現状がある
総合的に物事を考える人、深化して深く深く物事を考えることのできる人
その両方の人を企業は組織の中に持つ必要がある
優しい言葉で言えば、組織の中に多様性のある人を織り込むことだ
皆イエスマンでは、安全は簡単に崩壊する
やはり、異論を唱える人が組織の中にいないとブレーキはかからない
いやかもしれないが、組織の中に
NOという人も育てて欲しい

2019年11月13日

電気配線のゆるみが事故につながることがある

先日北海道に出かけていたとき、何気なく地元の新聞を見ていた
北海道電力の原発設備の電気トラブルに関するものだった
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191109-00000001-htbv-hok
去年、停電時に自動起動するはずの非常用発電機をテストしたら動かなかったというのが発端だ
原因は、配線のねじが緩んでいたことだ
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/310781
1年かけて、調査をしてきたところどうやら約10年前の納入段階から配線は緩んでいたらしい
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51948640Y9A101C1L41000/?n_cid=SPTMG002
北海道電力は、製造した会社の監査が不十分だったとしている
いわゆる、製品の受け入れ検査のありかたに問題があったという意味らしい
https://www.hepco.co.jp/info/2019/1246121_1803.html
https://wwwc.hepco.co.jp/hepcowwwsite/info/2019/__icsFiles/afieldfile/2019/11/08/191108.pdf
発注者側の製造メーカーの品質管理能力の問題と製造メーカー側の品質管理能力の両方が関係する
今は、発注者側にも、メーカーの能力を見抜けるようなたたき上げの人がいなくなっているはずだ
原発を造ったり、増設改造した人はたぶん電気盤などのメーカー検査の経験はある
昨今のように、原発が動かなければ、若い人は検査の経験を積むこともできない
製造メーカー側にも、ベテランが少なくなってきているのだろう
電気の配線チェックは、通常導通チェックという手法で一本一本配線を検査していく
線をつないでいなかった、誤ったところにつないでいれば、この方法で簡単に異常を見つけられる
しかし。今回のように、端子の絞めが甘かったというのを導通検査などで見抜くのは難しい
完全に緩んでいない限り、線の導通検査では発見できないこともあるからだ
今回は、初期不良だが工場にある何十万本という配線のゆるみを経年で管理していくことは難しい問題だ
配線の端子は、時間が経てば緩んでくるものもある
赤外線カメラなども使って接触不良をうまく見つけて欲しい

2019年11月11日

安全文化と安全基盤

企業が事故を起こさないためには、色々な工夫が必要だ
事故を防ぐために、色々な教育をすることも大切だが、企業の文化風土を確立しておくことも大切だ
人は、色々な考え方をする
個人個人の考えも大切だが、化学物質を取り扱う企業であれば人に迷惑をかけることは望ましいことではない
化学物質を取り扱う企業に入ったら、きちんとした意識付けが必要だ
単純に事故防止の教育だけで、意識付けができるわけではない
安全を大切にしていくという、企業の考え方を植え付けていく必要がある
企業というのは、利益を得ることも大切だ
利益を得るためには、効率も大切だと人は感じる
効率を優先させると、安全がおろそかになることもある
この、安全と効率をどうバランスさせるか企業の考え方を植え付けておかないと判断を間違えることがあるからだ
企業の安全文化というのを根付かせる必要がある
では、文化だけで事故を防げるかというとそうはいかない
事故を起こさせないための知的情報を整理蓄積しておく必要がある
いわゆる、安全基盤を確立しておく必要がある
物質危険性、作業の要領、設計思想など知的事項を文書化して誰でも情報にアクセスできる体制をつくっておく必要がある
企業は、情報を見える化して有効に使えるシステムを作り込む必要がある
こつこつと、安全を確保する基盤を作り上げることが事故のリスクを減らせるからだ
安全文化と安全基盤に関するいい情報が無いかとネットで探していたらこんないい情報が出てきた
安全文化と安全基盤を強化して、企業の保安力を評価するという考え方だ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/49/4/49_205/_pdf/-char/ja雑誌安全工学の記事だ
石油化学産業を評価したものも公開されていた
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/55/4/55_265/_pdf/-char/ja
興味のある方は見て欲しい

2019年11月07日

警報が鳴ったら誤報と思うな

警報が鳴ったときにどう対応するかを考えてみたい
数日前に沖縄の貴重な遺産である首里城が火災で焼失した
警備は警備会社に依頼していたという
火災報知器が鳴ったが、すぐに消防には通報しなかったという
警備会社は現場の状況を確認してから通報したという
マニュアル道理の対応だと思うが、結果として遅れを生じた
警報が鳴れば、誤報と誰でも考えるのだろう
時間がたってから、煙を検知してやっと消防に通報したという
でも結果的に手遅れだったといのが今回の事故だ
警報が鳴ったらどう行動するか考えてみたい
誰でも、誤報かもしれないと考えるの自然だ
でも、いつも誤報とは限らない
警報が鳴ったときに、初期警戒活動という行動をとれば今回の火災もかなり小規模に防げたかもしれない
つまり、誤報かもしれないかもしれないけれど一応消防に警報が鳴った時点で連絡していれば
念のため消防は動き始めたはずだ
火災報知器などはめったに鳴ることは無い
でも、人は火災報知器が鳴ると誤報と考えがちだ
ここに事故の盲点がある
火災報知器など警報が鳴ったらすぐに、関係部門に連絡して欲しい
初期警戒活動を始めることだ
上に立つ人は、常に言って欲しい
警報が鳴ったら誤報かもしれないけど、すぐに関係者に連絡せよと言い続けて欲しい
つまり。警報が鳴ったら鳴ったことを関係者にすぐに伝えよと言うことだ
警報が作動したら、警報の作動を伝えよと常に言い続けることだ
異常が起きたことがわかってから伝えるのではなく、警報が鳴った時点ですぐに伝えよと言い続けることだ
異常だと確認しても、更に管理者が納得するまでにもう少し時間がかかる
それを待っていては遅すぎると言うことだ
警報が鳴るからには何かあるからだ 警報を信じて欲しい

2019年11月04日

逆流というリスクと事故事例  窒素配管へのプロセスガスの漏れ込み

10月23日のブログで、用役の圧力低下による逆流事故について紹介した
今回は、定修中に、窒素にプロセスガスが漏れ込んだ事故を紹介する
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000085.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00024.pdf
定修中にチッソを使って気密テストをしていた
ところが、チッソの中に別の場所から可燃性ガスが流れ込んでいた
それに気がつかず電動インパクトレンチで増し締めしたため火花で着火した事故だ
製油所で起きた事故だが、この企業では装置毎の窒素パージを簡単に行えるよう
窒素配管を、直接装置へつないでおくようにしていた
ダブルブロック、中抜き方式で本来はきちんと縁切りされていた
ところが、定修中にダブルブロックの弁の一部が開けられていた
弁が開いていたところの装置は、定修中にプロセスガスで気密テストが行われていた
プロセスガスは、可燃性でしかも窒素よりも圧力が高かった
この為、装置側の可燃性ガスがチッソの配管に漏れ込んでいたのだ
作業の効率を上げようとして、装置とチッソラインを直接つないでおくようにしていたものが裏目に出た事故だ
実ガステストと、チッソによるテストが同時並行で行っているときは、漏れ込みや逆流などに注意しておくことだ
ダブルブロックで中抜きバルブありの方式だがこのように閉め忘れてしまえば簡単に可燃性ガスが窒素に紛れ込む
事故後、逆止弁の取り付け、電動レンチの使用に当たっては、使用前にガス検知の実施を義務つけたという 
窒素パージ作業を効率化したいのは誰しも望むところだが
バルブだけで縁切りすれば、単純な誤操作で簡単に窒素という用役にプロセスガスが流れ込む
せめて、仕切り板1枚は入れたいところだ

2019年11月02日

研究所でのガラス器具洗浄中の破裂事故

今回も研究所での事故事例について紹介する
生石灰という物質を知っているだろうか
乾燥剤などにもつかわれる物質だ
この物質は、水と反応する性質がある
反応を始めると、150~300度にもなる
条件によっては800~900度にもなるという
あるとき、研究員がフラスコで生石灰を使う実験を終え、内部を水で洗浄し始めた
当然水が入れば、生石灰は反応を始め水はあっという間にお湯となり沸騰を始めた
あっという間にフラスコ内の蒸気圧が上がり、ガラス器具が破裂したという事故だ
不幸なことに、飛び散ったガラスの破片が頸動脈を切り研究員が即死したという事故がある
山口県にある大手の企業だ
洗浄に使う、たかが水と思われるかもしれないが、水と反応する物質は沢山ある
いわゆる水との混触反応が起きればあっという間に温度は上がる
100度を超えれば突沸状態となる
ガラス容器などは、温度や圧力に耐えられず破裂する
水と反応する物質がガラス容器内に存在すれば、洗浄時事故が起きることがあるということだ
たかが水洗浄と思わないで欲しい

2019年10月28日

物性データーをきちんと理解しているか

物性データーに関して、セーフテイデーターシートという情報がある
SDSとも表現される
このデーターをどう捉えているかだ
化学物質の情報は、条件によって大きく変わる
温度、圧力、濃度が変われば、化学物質の性質は変わってくる
純度によっても変わる
SDSに記載されるのは、標準的な状態の時だ
常温、常圧、濃度もほぼ100%の純物質の状態での情報がSDSに記載される
ところが、化学物質は必ずしも純物質で取り扱われるわけではない
たいていは、色々なものと組み合わされた混合物で使われる
混合物となると、必ずしもSDSに書かれた情報とは同じではない
ここにこんな実験中の事故事例がある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000096.html
事前の安全性の検討では、使用する試薬についての熱的な危険性は確認していた
100度までは安全と書かれていたようだ
しかし、実験は他の試薬と混ぜた混合物だった
当然、混合物であれば、100度で安全という保証は無いのに100度で実験を始めたところ爆発したという事故だ
混合した場合の熱的不安定性について確認していなかったことも要因だ
また、実験時に万一の場合に備えた十分な防護処置がなされていなかったために負傷事故となった事例だ。
物性データーというものは、温度や圧力、濃度など少しでも条件が変われば変わってくる
SDSを見れば全てがわかると思わないで欲しい
化学物質は、条件が少しでも変われば性質が変わってくると常に思って欲しい

2019年10月27日

研究所での解体事故

ブログの読者には、研究関係の人達も多いと思うので今回は研究所の設備の解体撤去時の事故事例を紹介する
ドラフトチャンバーの排気ダクトを解体中に起こった爆発事故だ
撤去前に、そのドラフトチャンバーは長期間硫酸、硝酸、過塩素酸などの物質を使っていた
協力会社が解体工事を始めたところ、変な臭いがした
排気ダクトや、木材にしみ込んでいた薬剤が気化して臭いを放ったようだ
その為、しばらく工事は中断した
臭いも収まり、FRP製の排気ダクトをサンダーで切断し始めたところ突然爆発した
原因は、FRPを切断し始めたとき粉塵が発生して粉塵爆発が起きたことだ
FRPには、過塩素酸という爆発性の物質も付着していたため着火爆発したという
過塩素酸は、不安定物質で有機物などと一緒に加熱すると爆発する物質だ
発注者側は、物質危険性を甘く見ていたようだ
とはいえ、工事は手作業でと指示は出していたので、少しは危険性は感じていたようだ
解体工事というものは、全て手作業というわけにはいかない
結局、ダクトの切断時にサンダーを使ったことで粉塵が発生し、しかも過塩素酸という薬品も付着していたことから着火爆発した
研究所で薬品やダストが蓄積した設備の解体工事は難しい
事故後、工事を再開したが対策はこうだ
まず水で徹底的に濡らした
ガスの発生を早期に知るため、ガス検知を強化したことだ
解体工事などは、休日に行われることが多い
この事故も休日だった
この為発注者側の幹部社員も立ち会いをしておらず、最初に変な臭いが発生したときの対応も十分でなかったのも要因だ
研究所での解体工事は、物性に詳しい当事者の立ち会いが不可欠だ

2019年10月25日

冷却塔の解体工事を甘く見るな

冷却塔に関する火災事故は頻発している
小さな事故はほとんど報道されないから、冷却塔の火災事故は無いと思っている人が大部分だ
冷却塔は良く燃えると思っていた方がいい
多いのは、解体中の火災事故だ
https://newspicks.com/news/1122776/
https://www.youtube.com/watch?v=k8YBmbepJqc
冷却塔は、水があるから燃えないと思っている人が多い
確かに、運転中は水がある
しかし、解体するときは水もなく乾燥している
しかも、冷却塔の内部には水を上手に分散させるためのプラスチック製の燃え易い部品が沢山ある
http://www.reiki-ct.co.jp/img/products_img13_l.jpg
だが、それを知っている人はほとんどいない
解体のため、火を入れ始めて内部にあるプラスチック製品に着火して火災になる事例は後を絶たない
もう一つの原因は、冷却塔内に油かすやわずかな油分が残っていて解体中に着火する事例だ
冷却塔の解体時は内部に燃えるものがあると常に思って欲しい
解体工事では、濡らした状態で火気工事に入って欲しい
可燃物でも濡らしておけば、着火点は確実にあがり火がつきにくくなる
湿度を上げて火がつきにくくなることも考えて対策を打って欲しい

2019年10月24日

逆流というリスクと事故事例  用役の圧力低下

定修時に、窒素を使ってパージすることは多いはずだ
通常の運転中なら、窒素の消費量は少ない
使用量も一定だから、圧力はほぼ一定だ
ところが、定修時のように色々なところで不規則に窒素を使用すればそうはいかない
消費量が多かったり少なかったりするはずだ
消費量が多ければ、当然窒素の元圧の圧力は落ちる
それに気づけばいいのだが、圧力計がなければ気づかない
窒素を使って装置をパージをしているときには
窒素の元圧は、パージ対象とする装置の圧力以上である必要がある
最初のうちは、窒素の元圧は高いのだが、いつの間にか圧力が下がってくる
結果として、パージ対象とする装置から、窒素の配管へ逆流が起こる事例が多い
0.5MPaの窒素の圧力が、半分になっていたなどの事例報告もある
窒素のなどの用役の圧力は、いつも一定圧力だと思わないで欲しい
大量に窒素を使用する定修などでは、極端に圧力が下がることもあると考えて欲しい

2019年10月23日

逆流というリスクと事故事例 その-5 ポンプ

ポンプの逆流で、忘れていた事例があるので紹介する
ポンプの出口側配管が複雑で逆流した事故だ
まず、ポンプ廻りの配管のフロー図と誤操作の状況を紹介する
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00012_a1.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00012_a2.pdf
2台のポンプ同士の吐出側がつながっている上に更に他の配管が合流している
いくつものバルブがある複雑な配管だ
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00012_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00012.pdf
運転中出側配管が複雑につながっているポンプ、のストレーナーを清掃するためにいちど停止した
冷却のため色々とバルブ操作している時に逆流し、開いていたドレン弁から高温の液が漏れ着火した事故だ
運転員の弁の操作ミスだと言ってしまえばそれまでだが
複雑な配管なのに逆止弁は設置されていなかったという問題点もある
事故後、吐出側の共用配管を撤去したという
機器や配管などを共用する事例は多いが、共用すれば必ず運用方法は複雑化する
安易な共用が事故を引き起こすと言うことも常に設計段階で考えて欲しい
ポンプの逆流に関する事故事例紹介はこれで終了する

2019年10月21日

逆流というリスクと事故事例  圧縮機 その-2

逆流によるリスクと事故事例をシリーズもので書いているがしばらく中断した
再び、圧縮機が関係する逆流事故について紹介する
圧縮機の吐出側に付いていた逆止弁が破損して、大量のガスが逆止弁から漏れて爆発した事故だ
逆止弁は、スイングタイプという構造だった
https://www.tlv.com/ja/steam-info/steam-theory/other/1307check-valve-3/
逆流を防止する部品である弁は、内部でフタのように動く構造だ
あるとき、圧縮機が急に停止した
再び、再スタートさせたとき内部の弁が破損し、飛び散った金属片で逆止弁本体を破壊し約10cm程の穴が開いた
この穴から大量の可燃性ガスが外部に流れ出した事故だ
しばらくして、蒸気雲爆発のような大規模な爆発が起こったという事故だ
事故の原因は、逆止弁の構造に欠陥があったと言われている
逆止弁は、逆流を防止するのであるから構造上丈夫な部品が使われている必要がある
つまり、逆流による圧力に耐えうる強度を逆流防止弁に持たせておく必要がある
しかし、強度的に問題のある逆止弁が使われていて起きた事故だ
逆流を防止するには、強度のある逆止弁が必要だ
しっかりとしたメーカのものを使って欲しい
事故に関しては、以下の情報を参考にして欲しい
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00209_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00209.pdf

2019年10月20日

石油コンビナート等災害防止3省連絡会議3省共同運営サイト

石油コンビナート等災害防止3省連絡会議3省共同運営サイトというホームページがあるのを知っているだろうか
https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/fieldList4_16.html
2011年頃に製油所や化学工場で大きな事故が起こったのをきっかけにできたものだ
消防庁、厚生労働省、経済産業省が合同で情報を共有化し公開しようというものだ
今までに何回も会合を開きその都度情報を公開している
最近では、コンビナートでのドローンの活用検討などの情報もある
https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/fieldList4_16/h30_konbunato_kaigi.html
リスクアセスメントに関する情報もある
https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/fieldList4_16/risk_shiryo.html
事故事例や災害統計なども掲載されている
https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/fieldList4_16/jiko_shiryo.html
https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/fieldList4_16/pdf/h30/01/01.pdf
いちどは見て見る価値があるホームページだと思う

2019年10月18日

台風による工場被害

台風19号は各地に甚大な被害を与えている
コンビナートなどどんな被害が出ているのか調べてみた
経産省のホームページに、届出のあった被害などが載っていた
まずは、千葉県に多くの被害を与えた台風15号の情報だ
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190919004/20190919004.html
製鉄所の煙突が折れたり、雨漏りで電気リレーのスパークなどの記載がある
今回の台風19号も、まだ情報は少ないが報告されている
https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191014001/20191014001.html
岸壁の破損や、変圧器にものが当たり絶縁油漏れなどが紹介されている
これらの報告書には載らないものの、各社で色々な被害が出ているのだろう
教訓として参考になるものが多いはずだ
業界団体などで情報を集め、広く展開してほしいものだ
備えあれば憂い無しだ

2019年10月14日

台風という外乱恐るべし

このブログは、関東に台風が来ている10月12日の午後9時頃に書いている。
先月の千葉の台風直撃からまだ一ヶ月緒経っていないのに又襲われた
私は、今姫路で足止めだ。
11日、12日と岡山で講演をして千葉へ戻りたいのだが帰れない
新幹線も、飛行機も動いてはいないからだ
今日も、飛行機はほとんど欠航だ
新幹線も、始発からは怪しいとの情報だ
たとえ動いても、関東圏のJRは午前中動かない
時間をつぶしながら明日中に帰れればいいなと思っている、
外乱恐るべしだ
被害が拡大しないことを祈るばかりだ

2019年10月13日

逆流というリスクと事故事例  圧縮機 その-1

先日迄のブログでは、ポンプの逆流の事故事例を紹介した
今日は、圧縮機が関係する逆流事故について紹介する
1973年(昭和48年)5月30日、和歌山県の当時東亜燃料という製油所で起きた事故だ
停電で、圧縮機が停まり、自家発電で再起動したものの
圧縮機内に蒸留塔から液体が逆流していて液圧縮が起こり
爆発した事故だ
逆流すれば、液などが入り事故の引き金になるというリスクが存在する
もう一つは、蒸留塔と圧縮機の電源系統が異なっていたのも要因だ
HAZOPでも電源系との相違まで考えてくれる人は少ない
電源系統の違いも、「ずれ」と考えて欲しい

普通、プラント内は全て電源系統は同一だと人は考えている
ところがこの事故のように、圧縮機と蒸留塔はつながっているのに
電源系統は別だったというところに事故の引き金があった
同一プラントの中で、電源系統が異なっているものが無いかチェックして欲しい
この事故の情報がわずかに載っている文献がある
この文献は、事故が多発した昭和48年の事故が沢山書かれている貴重な文献だ
時間があれば見て欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/12/4/12_4_184/_pdf

2019年10月09日

逆流というリスクと事故事例 その-4 ポンプ

今度は、ポンプの「空引き」が発端の逆流事故を紹介する
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200118.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00045_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00045.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00045_a.pdf
プラントを停止して、液の回収作業をしているときに起きた事故だ
タワ-内の底部にたまっていた液を、回収タンクへポンプで戻していた
底部の液がなくなり始めたら、慎重に液面監視を行い
ポンプを停止すべきなのにポンプを停めなかった
当然、ポンプは空引きを始める
空引き後、ポンプ内の液は逆流を始めたのだ
逆流に伴い、今度はタワー内のガスが回収タンクへ流れてしまった
ガスは爆発混合気が発生しやすい水素ガスだった
タンク内でガスや粉塵が巻き上がり、帯電しスパークが起こりタンクが爆発が起こったという事故だ
本来なら、タワー内を予め窒素でパージしておくべきなのにそれを怠ったという問題点もある
空引きが起これば、逆流の恐れがあると言うことも理解されていなかったように思われる
ポンプの空引きを甘く見ないことだ

2019年10月05日

逆流というリスクと事故事例 その-3 ポンプ事故

ポンプの緊急停止中の逆流事故を紹介する
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200115.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00035_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00035.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00035_a.pdf 
製油所でトラブルがあり、緊急停止に入った 
原料供給ポンプを停める操作を始めたが、ポンプ吐出側の流量調節弁は手動のため現場に行かないと閉止できなかった
一方、ポンプは、遠隔操作で停止出来るため停止操作を先に行ってしまった
本来なら、ポンプ吐出側の手動式流量調節弁を閉めてからポンプを停めるべきなのに
ポンプを先に停めてしまったのが事故の最初の引き金だ
ポンプには逆止弁は付いていたが、定期的に点検していなかったので
詰まっていて作動しなかった
高温の液が、ポンプ内に逆流を始めたのでメカニカルシールに熱ひずみが加わり破損した
破損部から高温の油が漏れ始め着火した
ポンプの上部には、空冷式の油を冷やす空冷式の熱交換器が設置されていた
火災により炎であぶられチューブが破れ油が漏れだし火災は更に拡大したという事故だ
色々な問題点が有り、教訓となる事例だ
設計面では、ポンプだけ遠隔停止出来ても、出側の弁を遠隔操作でできるようにしていなかったという問題点がある
機器配置面では、漏洩の恐れのあるポンプの真上に油を流すエアーフィンクーラーという空冷式熱交換器を設置したことだ
保全面では、逆止弁を定期的に分解点検していなかったことだ
運転面では、停止マニュアル作成時の検討が不十分と言わざるを得ない
事故方向からは読み取れないが、マニュアルはしっかりしていたが、教育訓練が悪かったのかもしれない
緊急停止作業の自動化を進めている企業は多いと思う
ポンプ廻りの、自動停止化に当たっては十分検討して欲しい
中途半端な自動化は事故を招くという事例だ

2019年10月03日

逆流というリスクと事故事例 その-2 ポンプ事故

ポンプの逆流の事故事例をもうすこし紹介する
1976年(昭和51年)4月8日、岡山県倉敷にあるという当時日本鉱業という製油所で起きた事故だ
ナフサという物質を循環するポンプだ
通常運転中、流量が低下した。原因は、ポンプの中で泡ができるキャビテーション現象だ。
ポンプなどは、ストレーナーが詰まってくるとポンプの吸入圧は低下してくる
沸点が常温に近い流体であれば、圧力が下がれば液体の一部は気化し始める
そうするとポンプは所定量を流せなくなってくる
結果として突然ポンプが停止してしまった事故だ
キャビテーションが逆流の引き金になった事故だ
逆止弁が作動しなかったことも要因になっている
計器である流量計の配管が詰まっていて正常な指示も出せていなかったことも関係している
更に、吐出側の配管も詰まり気味だったたため配管抵抗も大きかったことも関係している
色々な要因が関係している事故だが、参考にすべきものは多い
ここに、情報があるのでいちど学んで欲しい
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00128_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00128.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00128_a.pdf

2019年09月30日

逆流というリスクと事故事例 その-1

化学プラントなどを運転していると「逆流」というリスクが存在する
HAZOPなどの安全性評価でも、逆流というリスクを見落とすと後で思わぬ事故に遭う
逆流とは、流れに関するリスクに見えるが、むしろ圧力という観点から見ておいた方が良い
つまり圧力に差が生じるところであれば、圧力の高いところから、低いところへ物は流れる
ポンプや圧縮機は、圧力を上昇させて流す機械だ
順調に動いているときは、逆流しない
しかし、停電で急に止まったり、停止操作を間違えれば逆流をひきおこす
過去にも、ポンプの停止操作などで逆流を引き起こし事故になっている事例は多い
ポンプを停めるというのは、単純に停めればいいというものでは無い
特に高圧ポンプであれば、逆流しないようにゆっくりと停めていく必要がある
岡山県で起きた、ポンプ停止に失敗して逆流が起き爆発したこんな事故事例がある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000135.html
吐出圧が19MPaもある高圧のポンプの停止操作に失敗した事故だ
逆流した流体が、ポンプの吸入側にあったタンクに入り込みタンクが破裂した事故だ
運転員の技量不足もあるが、逆止弁が作動しなかったことも原因だ
逆流を停める、緊急遮断弁は設置されていたが、運転員が逆流に気づいていなかったのも事故につながった
長期連続運転が、可能になった最近は運転員がポンプを止めたりする機会はますます減ってきているはずだ
経験不足の運転員が、逆流事故を起こす可能性は増えているのではないだろうか
逆止弁がついているから安全というわけではない
逆止弁は点検しなければ、故障していることもある
逆流で重大な事故が起こるプロセスでは、逆流時の自動インターロックなど
人に頼りすぎない安全対策を進めることも考えて欲しい

2019年09月28日

フォークリフトのエンジンが着火源になることもある

フォークリフトのエンジンは、着火源となることがあると思っているだろうか
可燃物を取り扱うようなところでフォークリフトを使うことはある。
たとえば廃油などを扱う工場では、廃油はそれほど危険ではないと思っている人も多い
だから、廃油処理関係の工場では事故が繰り返し起こることがある
廃油そのものは引火点は、それほど低くないが廃油を処理するときには
メタノールという可燃性の液を使うことがある
メタノールは、引火点が低く着火源があれば簡単に火がつく
2019年3月17日に廃油の処理工場で爆発死亡事故が起こっている
http://tank-accident.blogspot.com/2017/03/3.html
この事故は、ポンプに取り付けてあった樹脂製ホースが外れ
可燃物の混ざった処理中の廃油が流れ出した
従業員が、近くにあったホークリフトのエンジンをかけ動かし始めたところ
それが着火源になり爆発した事故だ
危険物保安技術協会から、詳しい報告が出ているので
それも参考にして欲しい
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/187/kikenbutsu_jikokanren_info01.pdf

2019年09月22日

神奈川県の列車衝突事故に思う

2019/9/5に神奈川県で電車が踏みきりでトラックに衝突する事故があった
https://www.sankei.com/affairs/news/190907/afr1909070016-n1.html
踏切に侵入したトラックに気づき、非常停止ボタンは押されたそうだが間に合わなかった
踏切に何かが侵入すると、異常を検知して列車の運転手に知らせる装置も正常に作動していたようだ
ではなぜ、衝突したかというとブレーキをかけるタイミングが遅かったようだ
とはいえ運転士に責任を負わせるには無理がある
現場はカーブで、見通しが悪いことが報道からうかがえる
異常を知らせる警告灯はあるが、カーブの手前では見ることは出来ない
本来なら、誰もが異常を知らせる警報が出たなら列車は自動的にブレーキがかかるはずだと思うだろう
ところが、この列車事業者のコメントでは自動的にはブレーキがかからず運転手の判断という答えになっている
一方、他の鉄道会社はというと、運転手の判断ではなく自動的にブレーキがかかるという
緊急時人に頼るのか、自動化された装置に頼るのかいつも問題になる
人は時間的に余裕があるときには、素晴らしい判断力を発揮する
しかし時間が限られている状況では、やはり機械に任せたほうが適正な判断をすることは知られている
今回のようなケースでは、人間に過度な要求をするのはやはり無理があるのだろう
2016年にも同じようなことを考えさせる事故があった
https://response.jp/article/2016/05/04/274647.html
地下鉄で非常停止ボタンを押したのだが電車は停まらなかった事故だ
停止判断は、車掌の判断にゆだねていたのだが、事故後非常停止ボタンを押せば列車は自動的に停まるように改善された
時間的に余裕が無い状況で重大な判断を人にゆだねるのはやはり無理があると考えざるを得ない
緊急時の対応が人に負担をかけすぎていないか検証して欲しい

2019年09月15日

神奈川県が公開している高圧ガス事故情報

工場などで起こった事故の情報は、県単位で公開されることもある
件の防災部工業保安課という組織が持っている情報の公開だ
神奈川県では高圧ガスに関係する事故情報を下記のURLで公開している
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14873.html
このホームページの中で更に詳細を見ていくと、事故の詳細等という項目がある
個別の事故に関する物も公開されている
たとえば、神奈川県で1975年以降に発生した高圧ガス事故のデーターベースを見れる
液化石油ガスの事故もある
もう少し画面の下の方を見ていくと、高圧ガス事故事例情報シートというのがある
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14877.html
ここには、個別の事故の詳細情報が書かれている
数はそれほど多くはないが、興味のある方はいちど頁を開いてみるのも良い
私の過去のブログに事故データーベースに関するものもあるのでそれも参考にして欲しい
2018年9月23日と2017年4月6日の私のブログも見て欲しい

2019年09月15日

風速50~60mの台風のその後

台風の後の後遺症も大変です
台風の翌日、羽田へ移動するときの出来事です
我が家から、20Kくらい離れた高速バスのターミナルへ移動するとき信号が半分くらい消えてました
信号が点灯していないというのはすごいことです
すいすい流れているところもあれば,何キロも動かない道路もありました
動かないところは,道路は自転車並みです
たかだか10Kしかない距離を高速バスが3時間遅れで到着してきました
インフラがやられるのはとんでもないことです
我が屋は電気は停電していないものの
インターネットは全く駄目です ネットがいまだに使えません
NTTの固定電話も使えません
幸い唯一携帯電話だけ通じるので消防などへの緊急時の対応がなんとかなるという状況です
たぶん電話局などの非常用電源が断たれたというの実情でしょう
道路を隔てたとなりの地区は電気すら復旧していません
今日中には電気は復旧しないと言います
非常用の備蓄は3日間をと言われていますがそれでは不足するような気がします
やはり。一週間は生き延びる手段を考えなければいけないと感じています
色々考えさせるところがあります
天災恐るべしです

2019年09月15日

風速50~60mの台風を経験して

昨夜、私の住んでいる千葉県の近くを台風が通り過ぎた
ちょうど東京湾を下から上に通り抜けた形である
夜中の12時頃から家が揺れ始めた
我が家は60m程の高台で、見晴らしも良いところなのですごい風だった
近くに木更津という町があるのだが、午前3時前頃に49mの風と言っていた
夜に窓から外を見ると雨がキリのように舞い上がっていた
午前4時近くに、かなり台風が接近してきた
ちょうど千葉市を通ったときが風速57mとか言っていた
朝起きて家の周りを見てみたら、案の定ベランダのテラス屋根が半分吹き飛んでいた
テレビのアンテナも倒れていた
幸いカーポートは、がっちりとした支柱をしていたので吹き飛ばされなかった
でも周りの家は軒並み、カーポートが吹き飛ばされていた
ひどいところは、支柱が折れ曲がり屋根ごと吹き飛んでいた
恐るべしである
近くの家の瓦は何軒も吹き飛んでいる有様だ
道路は街路樹がばたばたと倒れて通れない
もう12時間以上、停電しているうちもある
テレビでは高圧線の鉄柱が倒れている様子も流れていた
我が家の近くには、コンビナートがある
どんな状況か気になるところである
昔会社に勤めていたとき、夜間計装計器の指示がおかしいと呼び出されたことがあったが
今回の台風はそんなもんではなかった
自然現象恐るべしである

2019年09月09日

粉塵爆発

粉塵が爆発するというのは1892年イギリスで火災保険論という文書で書かれている
アメリカでは1924年に火災防止書籍に記載されている
現実に爆発したのは、1878年アメリカで大爆発があった
日本でも、今から百年以上前から石炭の粉塵爆発が起きていた
可燃物は燃えるといわれているが、気体は燃えやすいが、液体はそう簡単には火はつかない
固体も可燃性であっても、固まりであればなかなか火はつきにくい
ところが、粉末になると燃えやすくなる
つまり、固体を切り刻むことで粉末になり、その表面積が増えて燃えやすくなるのだ
たとえば、砂糖は可燃物だが粒子が大きいのでなかなか燃えにくい
しかし、小麦粉は可燃物だが、粒子が小さいので火炎を近づければ爆発的に燃焼する
いわゆる粉塵爆発のような現象が起こる
物質の性質は、温度、圧力、濃度、形状などわずかに条件を変えていくと
ある時点で爆発的にその性質は変わる
物性は変わらないと思っている人は多いようだが
少し条件を変えれば全く違う性質となる
粉体がいい例だ
粒度分布、粉塵濃度など少しで条件が変わればその性質は変わってくる
粉塵を取り扱う時には、いままで大丈夫だったかは通用しない
少しでも条件が変わればそのリスクは変化すると思って欲しい
物質危険性というものを深く知って欲しい

2019年09月07日

たかが溶接と思うな

溶接は、金属を溶かしてつなぎ合わせる方法だ。
接合する部分を、高温にして金属を溶かし互いの金属部をつなげてしまう手法だ。
当たり前のような技術だが、この金属溶かすタイミングや温度の調整が難しい。

化学プラントで問題となるのは、溶接の失敗で時間が経ってから漏洩事故を起こすことだ
溶接が少々悪くても、すぐには問題となっては表れない
腐食が進行して、溶接部の悪いところが出てくれば穴が開いて漏洩事故に結びつく
いわゆる溶接欠陥という物で事故が繰り返し起こっている
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/welding/trouble/surface.jsp
溶接の善し悪しは、見た目でもわかる
溶接棒などを使うアーク溶接と呼ばれる手法は、人間の手作業だ
溶接部分は、波のような跡が残る
その波の部分が、等間隔できれいならうまい溶接だ
間隔がバラバラで、しかもぎざぎざであればうまい溶接ではない
写真で溶接の善し悪しを見比べてみると良い
http://www.monozukuri.org/mono/db-dmrc/arc-weld/case/skill/sk25.html
たかが溶接と思わないで欲しい。
溶接は職人芸だ。 化学プラントの、高温高圧部は腕の良い溶接士を使って欲しい。
技術の無い溶接技術者を使えば何十年後に事故となって表れる。
たかが溶接と思わないで欲しい

2019年09月04日

たかが塗装と思うな

塗装について考えたことがあるだろうか
なぜ塗装をするかである
手間も時間もかかる塗装をなぜするかである
たとえば配管を設置するとする
一番価格の安いのは、金属であれば鉄だ 当然鉄の配管を多くの人は設置する

でも鉄は時間とともに腐食する
腐食するから、その腐食を停めるために塗装をすることになる
塗装をしたくないなら、価格の高いステンレスなど腐食に強い金属を選定すれば良い
しかし、人は当座のお金をかけたくないのでやはり値段の安い鉄を選定することになる
この結果、腐食を防ぐ為に多くのところで塗装が行われることになる
塗装と言ってもピンからキリまである
数年しか持たない塗装材料もあるし、数十年も耐久性のあるものもある
しかし、いくら長寿命の材料を選定しても塗装前の下地処理と言われる準備がおろそかでは長く寿命を延ばすことはできない
塗装で一番大事なのは、下地処理という物だ
塗装前に、古くなった塗装を徹底的に除去して、あわせて錆などを徹底的に取り除く作業だ
錆が残っている状況で、再塗装をしてもすぐに錆が悪さをして新たに塗装した部分がはがれてしまうことがある
塗装というのは、塗る前の下地処理というのがものすごく大事なのである
たかが塗装と思わないで欲しい
信頼の置ける塗装業者を選定して欲しい
塗装不良で起こった事故事例を紹介する
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-017.pdf
たかが塗装と思わないで欲しい

2019年09月02日

石綿が使用禁止になったことによるガスケット事故

法令でガスケットに石綿が使用できなくなったのは2007年9月からだ
それでも、代替の難しい物は2011年3月迄猶予されていた
たとえば300度以上の温度の高いところに使われるガスケットや酸性雰囲気で400度を超える物などだ
弁などに使われるグランドパッキンも使用条件が過酷な物は同様に、2011年3月まで石綿の使用製造が猶予されていた
この時期以降、石綿を使わないガスケットの変更が各工場で行われていった
石綿は非常に優れた鉱物資源で、産業用に使われる材料としては高温高圧にも耐える便利な物だった
温度や環境条件が悪いところで使われるガスケットの石綿使用が猶予されたのは、同等の代替品の製造が難しかったからだ
2018年5月8日の私のブログでも、ガスケットの変更での事故事例を紹介しているのでそちらも見て欲しい
http://handa.jpn.org/1/posts/post134.html
先日、非石綿化したガスケット関係の事故事例を調査していたらこんな情報があったので紹介しておく
1件目は、2014.5月に川崎で起きている事故だ
2006年に非石綿のガスケットに交換した。石綿と同等品に交換はした物の、実液でテストはしたが問題が無かった
交換してから、約8年後反応器の上部マンホールのガスケットが破れ漏洩したという
原因は、反応器の上部はガス系でガスケットにガスが浸透しやすかったからだという
反応器下部のマンホールなどは、同一材質だが異常は無かったという。
液相だから、ガス分は含まれておらず問題が無かったと報告書には記載されていた
もう一つ、実液ではテストはしたが常温常圧であり、実際のプロセスのように温度や圧力を上げた条件ではなかったことだ
過酷なプロセスでは、実プロセスと同様の条件で実液確認も必要だと言うことかもしれない
もう一つの事故は、2015年8月にやはり川崎で起きた事故だ
やはり、反応器の上部マンホールのガスケットが膨潤した事故だ
非石綿のガスケットに交換する際、浸透性の少ないガスケットにすべきなのに、一般用のガスケットを選定していた
結果として、やはりガス成分がガスケット内に浸透して膨潤したという
ガスケットを変更するのは、変更管理の対象と考えて慎重に行って欲しい

2019年08月31日

走行中の新幹線でドアーが突然開く

東北新幹線で「走行中の新幹線のドアーが開いたという」重大ヒヤリがあった
https://www.asahi.com/articles/ASM8R5CXZM8RUTIL02G.html
原因は、車両の清掃をしたときに清掃員がドアーの手動-自動を切り替える操作コックを自動に戻し忘れたのが原因だという
清掃後は、清掃の責任者が、操作コックが自動になっているか確認する手順になっているという
しかし、その場所の操作コックを清掃時に操作したのは、清掃の責任者であり、清掃後の確認も同じ人(責任者)が確認したという
清掃時にコックを操作した人と、清掃後にコックの状態を確認する人が同じ人であったことによるヒューマンエラーだという
操作コックを自動に戻さなかったことにより、手動のまま電車は発車してしまったという
手動だと、ドアーは閉まった状態を保てず開いてしまったというのだ
手動のポジションだと、清掃員が出入りすることができるように手で開けられるようだ
又緊急時手動にすれば、同様に手で扉を開閉できると報道では報じられていた
しかし、こんな単純なミスで走行中にドアーが開くなんて設計そのものに問題があるような気がした
報道を詳しく見ていると、問題を起こした新幹線はE-5系と呼ばれ現在の最新型のE-7系の前の世代だという
最新型は、操作コックの戻し忘れを検知する装置がついていると報道されていた
それにしてもびっくりだ
たとえ、手動の位置になっていても停車していたらドアを開閉できても、少しでも動き出したら手動でも扉は開かないというのが
設計としては当たり前ではないのだろうか
清掃員が頻繁に操作コックを操作するのだから、戻し忘れは当然有りうる
この戻し忘れがあっても、走行中には扉は開かないという設計になぜなっていなかったのだろうか
その謎に対する答えは、もう報道では出てこないのだろうが知りたいところである

2019年08月27日

HAZOPで逆流というリスクを見落とすな

ポンプを停めるときに失敗すれば、高圧の吐出側から、吸入側へ逆流が起こる。
ポンプ停止は、人が行う物だ
人は必ずミスをする
ベテランだからと言って失敗しないわけではない
ポンプがあれば必ず逆流を考えて欲しい
逆流防止対策で、逆止弁を付ければ安全かというと100%安全というわけではない
逆止弁は100%作動するという保証は無いからだ
逆止弁があるから大丈夫と思い込んで、何度も何度も事故が繰り返し起こっている
過去に起こっている事故事例で公開されているものがあるので一つ紹介しておく
岡山県の倉敷で1988/3/18日に起こった事故事例だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000135.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026_a.pdf
HAZOPでポンプがあれば必ず逆流を考えて欲しい
ポンプが高圧ポンプであればその逆流リスクは徹底的に見て欲しい
ポンプの吸入側(IN)が圧力に弱いコーンルーフタンクであれば、逆流すれば簡単にタンクは破壊されると思って欲しい
逆流防止弁を付けたからと言って安全ではない
定期的に点検しなければ、いざという時作動する保証は無いからだ
逆流で時間的余裕がなければ、逆流を検知してすぐに流れを停める緊急遮断弁を併設しておくことだ
安全とは、2つ以上の安全対策を行うことも必要だと考えて欲しい

2019年08月25日

HAZOPで低温というリスクを見落とすな

先日ネットを見ていたら中国での化学工場事故が載っていた
http://tank-accident.blogspot.com/2019/08/15.html
事故に伴い15人が死亡、16人が重傷、250人を超える多数のけが人が出ているという
酸素や窒素、アルゴンなどのガスを製造する工場だ
これらのガスは、大気中の空気から製造される
空気を冷やしていくと、ある温度で液化を始める
物質により液化を始める温度は異なるので,その性質を利用してガスと液に分離していく
液化温度はマイナス150位の温度になるので,非常に低い温度(極低温という)で運転することになる
非常に温度が低いため、設備は熱の移動を防ぐ為2重構造で設計されている
いわゆる魔法瓶のような構造だ。極低温のガスや液体が通る設備の外側には,断熱材が張り詰められている
その外側には,断熱材をカバーするような金属製の外筒が付けられている
内側の装置は、極低温で運転するのだから、低い温度でも耐えられる金属材料を選定する
しかし、外側の金属製の外筒は大気と接する温度なので,極低温に耐える金属は使用することは無い
つまり、価格の安い鉄が使われる
鉄は、常温では十分な強度を持っているが,マイナスの温度になると極端に金属強度が落ちるという性質がある
今回の,中国の事故は内側の装置からマイナス150位の極低温のガスが漏れ出していた
すぐに運転を停めて検査すればいいのにそのまま運転を続けていたようである
結果として,極低温のガスが外側の,低温には弱い金属部まで達したようである
外側のカバーは,極低温のガスに触れたことによりもろくなり破裂してしまったようだ
金属が低温でもろくなり強度が無くなることを「低温脆化」という
HAZOPでも,温度の低いガスの近隣の設備はこの低温脆化のリスクを徹底的につぶしておくことが必要だ
極低温ガスが逆流すれば,鉄配管はひとたまりもない
熱交換器でも,急激な気化が起これば蒸発により急激に温度が下がることもある
零度以下の低温側への温度のずれについて常に関心を持って欲しい

2019年08月22日

HAZOPで濃縮というリスクを見落とすな

物質危険性のリスクの一つに「濃縮」というリスクがある
濃度が上がると危険というリスクだ
HAZOPでは、この「濃縮」というリスクは案外見落とされている
反応工程は、危険だと考える人は多いが、濃縮工程は、危険とは誰も考えてくれないからだ
化学工場では、純度を上げて化学物質を商品化する工程は沢山ある
蒸留操作などはその典型だ
蒸留塔のトップからはかなりの高純度の製品を取り出すこともできる
しかし、これが災いとなることもある
蒸留塔で、全還流すれば当然高純度となる
しかし、その物質の中にわずかでも爆発性の物質であれば当然、爆発性の物質も結果として濃度が上がれば危険な状態となる
爆発事故も引き起こすこともあるのだ
蒸留塔の濃縮事故事例で代表的なのがこの事故事例だ
http://www.sozogaku.com/fkd/hf/HC0200063.pdf
ドラムなどの容器の中で濃縮するケースもある
容器の中で濃縮操作をしているときに、配管が詰まり予想外に濃度が上がり爆発した事故がある
数十名の死者を出した事故だ
配管内で物質が結晶化し詰まり、起きた事故だ
結晶化とは、濃縮が起こることだとHAZOPをやって何人の人が考えてくれるだろうか
この事故を書いた文献があるので紹介しておく
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/37/6/37_6_494/_pdf/-char/en
結晶化が濃縮につながるということもリスクとして知っておいて欲しい

2019年08月19日

著作権法

講演や著作をする人はきちんと著作権法を理解しておいて欲しい。
他人の著作物を引用したりすることがあるからだ。
講演資料を作成したり、原稿をつくれば少なからず他人の情報を使うことがある。
他人の情報を使うことで、自分の情報を引き立たせることもできる。
相手に、納得させる根拠を提供することもできる。
この引用という行為はすごく世の中のためにもなる。
そうはいっても、引用という定義をしっかりと理解しておく必要がある。
人が創造した物は、著作権法という法律でその権利が守られている。
創造した人に独占的な権利が与えられるという基本的な考え方に基ずく法律だ。
そうは言っても、社会の進歩のためには、この創造物を有効に使えることを許容している。
先ほどの、引用という方法で、著作権者の許可を都度とらずに利用できるという制度もある。
私も、物書きとして著作権法について常に勉強をしているが先日ある本を読む機会があった。
いままでは、弁護士などが書いた著作権法の本を読んでいたが、なぜか物足りなかった。
いわゆる法律論で有り、回りくどい解釈ばかりだった。
弁護士がどうこう言おうとも、結局は最後は裁判所の判断になるのだから読んでもすっきりしなかった
ところが、今回見つけた書籍は、この著作権に関する役所の元課長さんが書いた物だった
元法律の番人が解説するものだったので、法律の本質を理解できるような情報を得ることもできた
2007年に発行された物だが、手に入れられるなら読んでほしい
書籍名は「著作権とのつきあいかた」、著者は岡本薫
出版社は商事法務です

2019年08月17日

液封現象

液体は、密閉した空間に閉じ込めて加熱すると液膨張する。膨張した液体は、とんでもない圧力を発生する
これを液封現象と呼ぶ
閉じ込められた、液体が膨張すればとんでもない圧力になるのだが、世の中では余り知られていない
夏の暑い時期、液体などがバルブとバルブの間に締め切られた状態になれば
圧力が上昇し、ガスケットや金属部でも破壊される
http://guruguruhihakai.blog101.fc2.com/blog-entry-176.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2005-277.pdf
一般的には、手動弁と手動弁の間にある配管などで起こることが多い
しかし、手動弁と自動弁の組み合わせにも注意が必要だ
たとえば、緊急遮断弁(自動弁)を作動させたときに、前後の手動弁を閉めることがある
そうすると、その間の配管に液体が閉じ込められて、太陽の熱などが加われば温度上昇で液体は膨張する
液封状態となり、圧力が上がれば配管が壊れることになる
液封対策として、安全弁を取り付けて圧力を逃がすのも対策の一つだ
とはいえあらゆる配管に安全弁を取り付けるわけにはいかない
プラントを停めるときなどは、この液封が起きやすい
多くのバルブを閉めていくからだ
しっかりと、液封対策箇所を把握してリスト化しておいて欲しい

2019年08月15日

事故発生時の危機管理

実際に事故が起こってしまったような時を、危機という
事故が起こらないようにするのは、リスク管理だが、事故が起きてしまったときは危機管理をすることになる
まず、事故が起きたら被害を拡大しないようにすることだ
事故は、一定の確率で起こるのは避けられない
問題は、いかに被害の拡大を防げるかだ
小さな事故で済ませられるかは重要な危機管理のポイントだ
近隣住民への対策も重要だ
官公庁との円滑なコワークも欠かせない
マスコミへの対応も重要な危機管理事項だ
事故が起こったときの対策で情報をどう管理するかも重要だ
現場からの情報を誰に集約させるかだ
集約と同時に、関係する部署への情報展開も必要だから情報の共有化も重要なキーワードだ
工場で事故が起こったときは、本社の経営陣や事業部門との情報をどう共有化できるかだ
工場が知りたい情報と、本社が知りたい情報は違うと思っておいて欲しい
工場の情報を単に本社にたれ流しすればそれで満足かというとそうではない
知りたい情報が来ないと本社はやきもきするのが現実だ
工場で事故が起きたら、本社はすぐに工場に本社スタッフを送り込むことだ
欲しい情報は、工場に派遣した本社スタッフから吸い上げることを考えて欲しい
事故でてんてこ舞いの工場の負担を減らすことも本社部門は考えて欲しい

2019年08月13日

ハザード、リスク、危機、BCPという言葉の意味がわかっているか

最近はリスクマネージメントという言葉がよく使われている
一見、「リスクメネージメント」と聞くとなんかわかった気がするが
本当に多くの安全担当者がその言葉を良く理解しているか疑わしい
ハザードという言葉を理解できるだろうか
外国から入ってきた言葉だ
リスクマネージメントの基本となる言葉だ
ハザードとは、危険源と翻訳されることもある
つまり、ハザード(HAZARD)とは、世の中に存在する危険なこと、危険な物を表す言葉だ
事故の引き金になるものや危険なことという意味だ
事故の引き金があっても、事故はそう簡単に起こるわけでは無い
事故が実際に起こるとしたら、その大きさと頻度が重要な要素となる
リスクとは、実際に事故が起きるとすれば、どの程度の実害を及ぼすのか、どの程度の確率で起こるのかを考える概念だ
リスクとは事故は、まだ起こっていないが起こるとすればその影響度はどうなのかを考えるときの言葉になる。
リスクを考えて影響が大きければ、当然対策を打つ
小さければ、何もしないことになる つまり様子を見ると言うことだ
昔は、事故が起きてから、対策を考えた
今の時代そうはいかない
事故が起こる前に、事故の大きさや確率を予測する必要がある
事故を未然に防ぐために、このリスクという概念が表れたのだ
では、危機とは何だろうか
実際に事故や災害が起こってしまった状況を危機という。
爆発、火災や地震などが実際に起こってしまった状況が危機なのだ
当然、危機的なことが起こればそれに対処する必要がある
危機に対応することを危機管理という
最近は、企業はBCPなどを積極的に考えるようになった
危機が起きても、事業を継続的に行えるような施策をBCPと呼ぶ
BCPとは(事業継続計画)、Business continuity planningの略号だ
危機を乗り越える為の施策をBCPと呼んでいる

2019年08月11日

高圧ガス保安協会の事故データーベース2018年版

高圧ガス保安協会が事故データーベースを公開しているのをご存じだろうか
2016と2017年分の高圧ガス事故を追加したバージョンが公開されてた
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/incident_db.html
この事故のデーターベースには、1965年からの高圧ガスの事故が記載されている
又、データーベースには高圧ガス以外のいわゆる消防法などの事故事例と海外の事故もあるので
興味のある方はいちど見て見ると良い
事故の一部は、詳細情報も公開されているのでこちらも見て見ると良い
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/comb.html

2019年08月08日

事故は過信で起こる

事故は過信で起こるという教訓がある
事故と言うものは、そう頻繁に起こるわけではないから忘れた頃にやってくる
10年、20年経った頃に突然事故が発生することがある
その原因にはいくつかある
第一の原因は、長いこと事故が無いと安全だと思い込んでしまうことである
この結果、安全管理レベルが徐々に落ちているのに気づかずに突然何か弱いところで事故が起こってしまうのである
自分の会社の安全管理レベルは優れていると過信するから事故が起こる
第二の原因は、技術力の低下だ
言葉を換えると、技術が伝承しなくなった結果事故が起こるのだ
人から人へ、色々な情報が伝わることで技術などは維持できる
文字だけで技術は伝わるわけではない
人から人への生情報の伝承があってこそ技術は伝わる
特に、伝えなければいけないのは失敗の情報だ
人は、失敗から多くのことを学んで成長していくからだ
成功体験も伝わらなければ問題がある
こうすればうまくいくといういうのが成功体験だ
成功体験をうまく伝えれば、短時間に色々なことも解決できる
問題解決能力が飛躍的に向上する
自分の会社の技術力は優れていると過信するとやはり事故は起こる
現場の人達が、自分の会社は長いこと事故が無く安全だと思い込んでも事故になるが
幹部や経営者が安全だと思い込んでしまっては事故への歯止めはかかりにくい
事故の確率はゼロにすることはできない
企業運営をする限りリスクは存在する
安全だと思い込まないで欲しい
我が社、我が工場は何十年も事故も無かったからといって過信しないで欲しい

2019年08月07日

屋外に放置したドラム缶事故その-2

8/3の私のブログに屋外に放置したドラム缶事故を書いた
この時は、ドラム缶内の廃液による混触が原因の事例を紹介した
今回は、私が経験したドラム缶破裂事故を紹介する
今日のように、夏場この暑い時期だった
夕方17時過ぎに仕事を終えて工場の前にある社宅に戻りのんびりしていた
確か、18時前だったと思うがボンと工場の方で音がした
しばらくして、サイレンの音が聞こえた
これは、何かあったのかなと工場へ向かうと
門の前の道路に真っ白な物がまき散らされたような状況だった
急いで工場の門を閉めさせて、すぐに状況把握を図るが白い物が何かわからなかった
しばらくして、道路に近いところに置いていた化学物質の入ったドラム缶が破裂して中身が道路に吹き飛んだことがわかった
いわゆる発泡性のプラスチックが道路に飛び散ったのだ
色は白いが、ポップコーンのような固まりだ
社員を動員して、すぐに道路の清掃を始め、ちらばった物を回収した
それでも、ドラム缶本体は残っていたが、肝心のフタがどこかに飛び去っていた
皆で探し回るがずいぶん時間が経ってから、倉庫の屋根まで飛んでいたのが見つかり事なきを得た
原因は何かと後日調査したところ、ドラム缶を長期間屋外に放置していたことだった
ドラム缶に入っていた化学物質は、少しずつ反応していく性質が有り反応の進行を防止する薬剤を入れていた
薬剤も長期間の効果はあるものの、それでも時間が経過してしまえば反応を防止する効果は薄れていく
結局、長期間屋外に置いていて薬剤の効果が無くなっているところで連日の炎天下でドラム缶の中で反応が始まってしまったのだ
わずかでも、反応性のある化学物質はこの反応禁止剤をつかっていることが多い
反応禁止剤は永遠に効果があるわけではない
時間が経てば効果は消えていく
ドラム缶を保管するときには、しっかりと保管期限などは管理して欲しい
事故を起こしてからでは遅いからだ

2019年08月05日

化学工場倉庫での火災事故に思う

2019/8/3埼玉にある化学工場で火災というニュースが流れていた
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20190803-00000044-ann-soci
夜の7時頃の火災だという
幸い休日で負傷者はいないようだ
詳細はわからないが、化学物質を取り扱う工場ではあるのだろう
DICという会社名だから、昔の大日本インクという企業らしい
印刷インクなどを製造している企業である。インクが原因なら当然燃えるリスクはある
原因はわからないが、化学物質を扱う以上少し間違えば事故は起きる
この事故も原因が報道されることもなくたぶん数日経てば終わってしまうのだろう
最近暑いので製品を貯蔵した倉庫などでの発火リスクは高まっている
この企業の事故の原因はわからないが、倉庫に化学物質を保管する際には
蓄熱による自然発火対策を怠らないで欲しい
冷蔵倉庫だから安全だと思わないで欲しい
停電になれば、あっという間に冷却装置は機能し無くなる
冷やす能力が原因となる事故は多い
製品などの荷物の積み方にも注意して欲しい
温度に敏感な物質であれば、密着させないことだ
風通しが悪ければ、部分的に温度が上がりすぎて自然発火することもある。
換気にも留意して欲しい
倉庫内の換気扇の故障を見逃せば、倉庫内温度が上がりすぎる
たかが倉庫と思わないで欲しい
化学物質を置いてあれば事故になることもある
製造プラントだけリスク評価していればいいわけではない
倉庫のリスクアセスも大切だ
この時期温度上昇が事故の引き金になることも多いからだ
今後のこの事故推移を見てみたい

2019年08月04日

屋外に放置したドラム缶事故

場この暑い時期になるとドラム缶の廃液事故が増えてくる
廃液の処理で,ドラム缶を使用することは多いはずだ。
廃液は,色々な液が混ざり合う
液の種類によっては,混ぜると反応するものもある
混触反応という現象だ
でもこの混触反応と言うことを知らない人や企業は多い
ドラム缶に廃液を投入して処理するなら
せめて、日陰において欲しい
夏場の太陽の熱は,反応を始めさせるには十分な熱量を供給する
廃液を入れたドラム缶はできれば,投げ込み式の温度計をラム缶の中に入れることを考えて欲しい
更に,温度が異常に上がるときは人がいる計器室などに異常警報が出るようにして欲しい
発火事故を起こしてからでは遅い
たかがドラム缶の廃液と思わないで欲しい
新聞に出ないだけで,この手の事故は繰り返し起きている

2019年08月03日

防火用カーボン繊維シートを過信するな

火気工事の安全対策で、防火シートがよく使われている
溶接などの火気工事の火の粉の安全対策用だ
使うのはいいのだが、その性能を過信しないで欲しい
防火シートは、火がつかないわけではない
つまり燃えないという保証は無い
それなのに多くの人が燃えないと思っているから発火事故が送る
カーボンでできているのだから、炭素は燃えると思わなくてはいけない
昔は、防火シートは石綿でできていた
石綿は燃えないので、完璧な防火対策ができた
ところが、石渡が使えなくなり完璧という言葉はなくなった
防火用カーボン繊維シートは瞬間的には1000度以上の温度に耐える
ところが、大気中で150度以上では徐々に酸化蓄熱して火災の原因になる
たとえば、溶接の火の粉をこの防火シートにくるんで放置しておくと時間がたって蓄熱して発火する事故が多い
防火シートは、値段により性能も異なる
工事担当者は、防火シートの性能についていちど勉強して欲しい
火気工事現場周辺の水まきや燃える物を徹底的に取り除くことも忘れないで欲しい

2019年07月31日

安全の強化策は時代が変化しても大きな違いは無い

日本で大きな事故が多発したのは、今から約40年前の1970年代だ
当時は、化学会社で大きな事故が頻発していた
企業の自営消防車は毎週出動していた
それが当たり前の時代だった
しかし、トラブルを糧として化学会社は確実に事故防止のノウハウを身につけた時代だ
当時どのような、安全の強化策をとったかはどの企業にももう記録は残ってはいない
当時のことを思い出しながら少し書きだしてみる
事故が起きるたびに、安全組織の強化が行われた
当時は、安全は工場が執り行う物だとの観点があったが、やはり本社が安全を統括する機能を持つべきとの考えが生まれた
本社に安全管理部門新設、または強化が行われ、安全管理部門が社長、工場長直属組織に改編し権限強化が行われた
ここで大事なことは、本社がえらいというわけではない
工場は工場なりにしっかり安全管理はしても、やはり現業ベースと言う視点で安全を管理すると工場では見えない物も多く存在するとの問題点を感じたからだ。
本社の安全管理部門の当時の役割は、工場と違う視点で安全をみる能力が求められていた
当時は公害問題対策で、本社の安全部門は手一杯だった。つまり、本社機能を本来の姿に戻す(公害対策で忙しかった、官庁との渉外で忙しかった)ことが大きな課題であった。
もう一つの問題点は、当時は企業規模の拡大が問題点だった。
次々と事業拡大し、装置の大型化で管理者の管理スパンが急速に広がりだした時代でも有る。
これで良いのかと見直しが行われたものの十分ではなく、管理者の管理密度の問題が出始めたのもこの時代だった
この問題は今の時代でも顕在化している
管理者が見れる領域の限界を曖昧にしていると事故が起こる
安易に二つの組織を統合して管理スパンが広過ぎたことにより事故も起こっている
自分の企業の管理職の管理スパンが妥当なのか常に経営者はチェックして欲しい
組織の統合化が引き起こす事故も多いと言うことだ

2019年07月29日

なぜ化学工場で事故が起きるのか

事故が起きるのには種も仕掛けもある。一つ目の原因は、危険な化学物質を取り扱っているのに、いつの間にかその危険性に慣れてしまうからだ。慣れほど恐ろしいものはない。
二番目は、化学物質を扱うのは人で有り、人がミスをするからだ。.いわゆるヒューマンエラーが原因で事故を起こすことも多い。
事故の原因の半分程度は、人のミスが原因だと言われている。
三番目は、工場にある機械が突然壊れたりするからだ。機械の故障が事故の引き金になる。
四番目は、外乱と呼ばれるものだ。突然外部から影響を受けてしまうことだ。
たとえば、突然電気が来なくなり、停電してしまうような現象です。地震や、雷のような天災もこの外乱に値します。
停電が起これば、ポンプなどが動かなくなります、
もし、冷却水を流しているポンプが停電で停まれば冷却出来なくなり異常反応が起こるかもしれません
地震が来れば、機械が壊れるかもしれません。
このように、なぜ事故が起きるのかを体系的に理解しておくことが大切です。
事故はやみくもに起こるのではありません。
種も仕掛けもあるのです
この種や仕掛けをきちんと知っておいて、安全対策を行う必要があります
時間やお金は限られています
効果的安全対策をするにはどうすればいいのかを常に考えて欲しいのです
とはいえ。なぜ事故が起こるのかは専門家から学ぶのが効率的です
自分で調べるには、時間がかかりすぎます
プロに学ぶも一つの方法論です
http://www.ccjc-net.or.jp/~ccji-pj/s1.html
https://www.sangishin.com/kougi/detail/97
いつも言うように時間は限られているからです
常に効果的に学ぶことを考えて下さい

2019年07月27日

粉塵爆発とは

粉塵爆発とは粉を取り扱う時に起こる爆発である
爆発といってもいろいろな爆発があるが、燃える粉を扱えばこの粉塵爆発は起こる
粉塵が爆発するというのは1892年イギリスで火災保険論という文書で書かれている
アメリカでは1924年に火災防止書籍に記載されている
現実に爆発したのは、1878年アメリカで大爆発があった
粉塵爆発は100年前から知られていることだが、粉を甘く見ているというのが現実である
小麦粉も燃える。当然小麦粉でも粉塵爆発は起こる
砂糖も粉状の微粉になれば燃える。粉塵爆発は起こる
日本で記録に残る最初の粉塵爆発は、1931年川崎で起きている。
日清製粉という製粉工場だ。
火災で生産設備の大半を焼失したが、事故を教訓として安全対策にフィードバックして1933年に復旧した。
現在でもこの企業は、これを糧にして粉塵爆発の技術を有している
粉塵爆発とは特別な現象ではない
単に燃焼の三要素が成り立っただけだ
物質が、たまたま粉体だったと考えれば良い
物質が気体ならばガス爆発という。粉なら、粉塵爆発言うだけだ
粉塵爆発はガス爆発と同様な原因で起こる
1つ目は今まで大丈夫だったという考え方だ
事故は、今までと何か条件が変化すれば起こる。
粉の粒径に変化があった、投入方法が変わった、流速が変わったetcだ。
もう一つは、異常に気づく設備が不十分だったという事例だ。
爆発の一つ手前の、燃えるという現象は空気が存在するからだ
爆発混合気にならないように、常時酸素濃度を監視する設備がないとか、点検を長期間しておらず酸素計が正常な指示が出ていなかったという事故事例も多い。
もう一つは人為的なミスだ。手順を間違えるケースだ。
最後は、着火源だ。得てして、粉は静電気を発生する。静電気をうまく逃がせていないと着火する。
粉を甘く見ないで欲しい。

2019年07月25日

爆燃とは

京都のアニメスタジオでガソリンによる悲惨な事故が起きた。
ガソリンという物質が引き起こした事故だ。
爆燃とは、爆発的に燃焼するという現象を2文字で表している
化学物質の中には、爆発的に燃える物が沢山ある。
物が燃えるというのは、固体や液体が燃えるわけではない。
固体や液体が暖められて、発生したガスそのものが燃えるのだ。
ガスが燃えるのであった、固体や液体が燃えているわけではない。
つまり、暖めることによりガスが発生しやすい物が良く燃えると言うことになる。
ガスが発生しやすいかは、沸点を見ればわかる。
沸点が、低ければ常にガスが発生していると思わなければいけない。
ガソリンの沸点は、30度くらいだからその蒸気圧は大気圧を超える大量のガソリン蒸気が発生している
つまり、この季節の温度でガソリンをまけば大量のガソリン蒸気が発生する。
ガソリンは引火性だから火をつければ簡単に火がつく。
大量のガソリン蒸気に火がつくと、その燃焼熱で液体の状態のガソリンを更に加熱して更なる大量のガソリン蒸気を発生させてしまう。
その蒸気は、急速に拡散し火炎となって広範囲に拡散する。
ガソリンがコワいのは、火炎が急速に広範囲に拡散するからだ。
そこに人がいれば、やけどを負う。
それだけではなく、物が燃焼すると急速に周りの空気が燃焼で消費され酸素がなくなる。
物が燃えれば、一酸化炭素や、二酸化炭素が発生するから、酸欠状態になる。
爆燃が起こると、酸欠とやけどという2重の被害をこうむる
取り扱っている、物質の沸点を見て欲しい。
沸点が常温に近い物質なら爆燃は起こる。
物質危険性についてしっかりと学んで欲しい。

2019年07月22日

事故発生時の危機対応

世の中には色々な危機が存在する。
前回不祥事はなぜ起こるのかを書いたが、今回は事故発生時の危機対応について書いてみたい。
化学企業に勤めていた50歳になるころ、爆発と破裂事故を経験した。
その時、企業から過去に何度も訓練を受けていたことが危機対応には幸いした。
事故が起きたときまず行うのは人員点呼だ。
爆発事故の時も、従業員は現場見たさに現場に行っていた。
爆発などの事故が起きたときは怖いのは、2次爆発だ。
現場からすぐに呼び戻し点呼を行った。しかし、一人だけいなかった。
幸い、外出していことが確認でき事なきを得た。
次は、原因の究明だ。
化学工場であれば、温度や圧力などの記録を、すぐに解析することだ。
ところが、すぐに警察は現場保存をする為現場には立ち入れなくなる。
当時は、コンピューターの記録は、24時間経つと上書きされてしまうシステムであった。
なんとか交渉して、ハードデスクという記録媒体を現場から回収した。
その結果、その後の事故解析はすんなりといった。
事故の残骸が残る真っ暗な現場に入り、記録媒体を回収することは、実に危険な行動であったが
部下の協力でこれができた。
作業中、上から残骸が落ちてくる状況で、今思うと決死の行動であった。
その後、退職の数年前に山口県にある工場で爆発事故の事後調査を経験した。
その折りにも、貴重な経験をした。
機会があれば、今後その時の経験をどこかでお話ししたい。又、このブログでもその時の経験を機会があれば紹介したい。

2019年07月21日

なぜ不祥事は起こるのか

不正や不祥事が起こるのには種も仕掛けもある。
建築業界のデーター不正、自動車会社の検査データーに関わる不正など2000年頃から頻繁に起こり始めている。
化学業界でも2003年頃に高圧ガス認定事業関係で不祥事が頻発した
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/s1219-3e4.html
このような不祥事が起こるのは、不正のトライアングルと呼ばれる3つの条件が成立したときに起こるという。
一つは、不正が起こる機会(チャンス)が存在しているからだ。
2つ目は、不正をする動機があるからだ。
3番目は、不正を正当化してしまう要素や環境があるからだ。
このどれか一つでも、取り除くことができれば不正の起こる確率は極端に減る。
不正や不祥事はいきなり起こるわけではない。
時間をかけてじわりじわりと、不正の温床が組織内で成立していくからだ。
同じ仕事を長くさせれば、経験を積み効率良く仕事ができるようになる。
しかし、同じ人に仕事を長くやらせれば、外部からのチェック機能は働きにくくなる。
経験を積ませることは大切だが、任せ過ぎるとチェック機能はどんどん効かなくなっていく。
このバランスをとるのが難しい。
役人の世界では、不祥事を防ぐ為に絶えずローテーションをするシステムは存在する。それでも、不祥事は起こる。
抜け穴はいくらでもあるからだ。
昨今、省人化で検査部門などの組織はどんどん縮小されている。
人が少なくなればなるほど、相互チェックの機能は働くなる。
ガバナンスは難しい

2019年07月19日

BCP(事業継続計画)と大雨への対策

BCPとは、こういうことだ
企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことだ。
前回のブログで津波を取り上げた。自然災害の一種だ
最近の異常気象を見ると「大雨」というのも気になるところである
昔勤めていたコンビナート地区にある企業の工場であるとき大雨が降った
予想以上の大雨で、構内道路がかなり冠水した
電気室への侵入の恐れも有り土嚢を積み上げた
構内道路の排水も十分ではなく、マンホールから水がふきだした
水だけならいいのだが、マンホール内に付着していたと思われる油分が道路へも流れ出した
本来なら油分を含まない雨水系の排水設備に油が流れ込んでしまったのだ
海へ流れ出る前になんとか対応し事なきを得たが、大雨ではこのようなリスクがある
現在動いているコンビナート地区は1950年代~1980年代に造られたもので
当時の排水設計基準でつくられている
まだ、異常気象などそれほど起こらなかった時代だ。
建設してから、もう半世紀を過ぎているものもある
排水設備などのインフラ設備はそう簡単に全面的な改修ができるわけではない
とはいえ、昨今の集中豪雨などの異常気象を見ると排水能力などは検証しておく必要がある
せめて工場内のボトルネックとなる所は、段階的に強化をしておかないと痛いしっぺ返しを食らうような気がする
BCP(Business Continuity Plan )を考えるときには、このようなインフラ設備についても検討して欲しい
排水設計基準が最近の大雨に対応しているか確認して欲しい

2019年07月16日

津波に強いタンク情報

いつも見ている、タンク関連のブログ情報を眺めていたら津波に強いタンク情報が載っていた
2011年の東北大震災で宮城県にあった漁港の燃料タンクが津波で流された
あれから、8年経った今年タンク5基が再建され竣工したとの記事だ
http://tank-accident.blogspot.com/2019/
どんな構造かと興味を持って記事を読んでみた
新しい津波に強いタンクは、従来の鋼板製タンクの周りにコンクリートを巻き付けて強度を増しているようだ
コンクリートは鉄筋とピアノ線を入れ強度を更に増しているという
数百トンの大型漁船が衝突しても耐える強度だという
このような構造は、水圧のかかる大型の貯水槽などで既に採用されているそうだ
東北大震災の時も、このような構造の用水タンクは被害を逃れたとの記載がある
コストはかかるが、復旧にかかる期間や、油の漏洩による環境への負荷などを考えると海辺の設備はこのようなタンクが必要なのだろう。
日本は地震国である。
津波への備えが必要だ

2019年07月14日

安全工学便覧が20年ぶりに改定されて発行される

2019年7月30日に「安全工学便覧(第4版)」が10年ぶりに改訂版としてコロナ社から発行されるそうだ。
http://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339078213/
「安全工学便覧」は,安全工学という技術の発展とともに発刊された書籍だ。
わが国における安全工学の創始者である、横浜国立大学の北川徹三博士が中心となり体系化を進めた安全工学の科学・技術の集大成として1973年に初版が刊行された。私がちょうど大学を卒業して化学会社に就職した頃だ
まだまだ、アナログの計器盤が主流だった頃だ。
その後、時代の流れとともに科学・技術が進歩し,世の中も変化したため, 1980年に第二版が発行されている。
ちょうど、DCSという制御システムが世の中に出始め、コンピューターという技術が化学プラントでも使われ始めた頃だ。
私も、このDCSシステムを導入した化学プラントを立ち上げた頃だ。
さらにその後1999年に大幅な改訂を行い第3版として「新安全工学便覧」として刊行された。
その改訂から20年を迎えようとする今,「安全工学便覧(第4版)」が刊行の運びとなった。
最初の版が発行されてから、46年目であるから約半世紀だ。

この発刊の数年前に、私も安全工学便覧への執筆依頼を受けた。
新たな項目として加えられた、「安全マネジメント」の項で知見を文書化してくれないかという依頼であった。
この中で、教育・訓練に関しての執筆を依頼されたのである。
私も、運転員を育てる体験型の研修センターを立ち上げた経験があり、その時の経験や思いをなんとか伝えていきたいと思っていたところであり二つ返事でお引き受けした。
2018年には、安全工学という学会誌でも、教育・訓練について執筆をさせてもらっていいたので一部を新安全工学便覧へ織り込んだ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/57/3/57_256/_article/-char/ja/
次の世代に伝えたいことを便覧の一部でもあれ書き表せるチャンスを与えてくれた出版社には感謝する。
今回、執筆者と一人として貢献できて幸いである。これからも機会ある毎に、社会に情報を発信していきたい。

2019年07月10日

自動弁が突然開くと重大な事故になる

工事の安全管理の中で、「縁切り」という重要な作業がある。
工場には、危険なものが沢山存在するからだ。
可燃物が外に出てきてしまえば、火災になる。毒性ガスや、窒素などが漏れ出せば、人は中毒になったり、酸欠になる。
化学工場などは、色々な装置と配管でつながれている。
万一配管を伝って、これらの危険な物が漏れ出せば事故になるから、この縁切りという作業が必要になる。
つまり、「縁切り」とは危険なものを遮断する作業だ。
配管のフランジ部などに、仕切り板(ブランク版と呼ぶこともある)といわれる金属製の板を挿入して遮断するのが一般的だ。
手動弁を閉めて、縁切りする方法もあるが、バルブは漏れることも考えておく必要がある。
したがって、手動弁を使う場合は2つのバルブを同時に閉めておく必要がある。
つまり、2重にして縁切りの信頼性を確保する方法だ。
一番危ないのは、手動弁ではなく自動弁を使う方法だ。
しかも、自動弁を一つだけ使って、縁切りする方法だ。
自動弁が突然開いてしまうこともある。
人が間違って、弁を動かして開けてしまうこともある。
計装空気などで動く自動弁であれば、空気が停止すれば動き始めて弁が突然開いてしまうことがある。
自動弁が意図せず開いてしまうと、可燃物や危険なガスが外に漏れ出し重大な事故につながる。
このような事故は繰り返し起こっているのだが、案外知られていない。
公開されている以下の出典を見て過去の事故事例を勉強して欲しい。
1973/10/8 停電で自動弁が開き4人死亡 http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000146.html
1987/12/10 タンク事故 http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000086.html
1989/10/23 アメリカで23人死亡 https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/2/30_122/_pdf/-char/ja
1994/4/14 大口径自動弁で縁切りして漏れ出し http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000006.html
2003/7/9 一酸化炭素漏れ出しによる中毒事故 http://www.joshrc.org/~open/files/20031118-001.pdf
2007/12/21 高温油漏洩火災で4人死亡事故https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2016_10-2.pdf
自動弁一つだけで縁切りをすることは、大変危険だと仲間にも伝えて欲しい

2019年07月07日

停電というリスクを甘く見ていませんか

リスクアセスメントという言葉がある。
何をどう評価して対応するかは、常に考えていくことが求められている。
リスクという中に、外乱という項目がある。
めったには起きないが。でも確率はゼロではないという事象だ。
この外乱というリスクの一つに、停電というものがある。
過去にも、この停電が大きな事故を引き起こしている。
2019/6/20午後2時すぎ、福井県永平寺町松岡石舟の繊維メーカー「豊島繊維」で火災があったとの情報が流れていた。
火は約7時間後に消し止められ、敷地内で4人の遺体が見つかったという。
http://www.news24.jp/articles/2019/06/20/07454069.html
 このほか20~50代の男女4人が病院に搬送され、やけどなどの軽傷。工場など計4棟が全焼した。
同社は1963年に設立され、従業員はグループ合計で95人。アウトドア衣料メーカーなど多くのアパレルメーカーに生地を供給しているという。
4人もの死者が出た背景に、敷地建物間にある通路の二つの電動シャッターのうち一つが停電で開かない状態だったことが報道されていた。
逃げ道となる、通路の電動シャッターが停電で開かなかったことも死者を出した要因であったようだ。
この事故の教訓を考えると、電動シャッターを持つ工場はすぐにこのリスクを検証して欲しい。
電動シャッタ-は停電で動かないという事実があると言うことだ。
自分の工場で、電動シャッターがあるなら、停電で開けられなくて逃げられないことにならないか検証して欲しい。
電気というエネルギーがなくなれば、色々なな不具合が起こる
電気がなくなったときのリスクアセスメントはしっかり行って欲しい

2019年07月04日

フレコンバッグで起こる事故

フレコンバックと呼ばれる袋が輸送用に多く使われている。
原料や製品などの粉や粒状製品を入れる袋だ。
重さは、軽い物で数百キロ。1トンくらいの重い物もある。
何段かに積み上げて、保管することがあるが、崩れて人が挟まれる事故が多発している。
何百キロもの重みがあるのだから、人にのしかかってきたら死亡することもある。
厚生労働省の職場の安全サイトという災害事例を紹介するホームページでこんな災害が紹介されている。
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101193
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101103
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=1047
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100883
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100676
これ以外にも、繰り返しフレコンバッグが崩れてきて災害になる事例が報告されている。
フレコンバックなどを取り扱うところではこの種の災害をしっかりと防止して欲しい。
フレコンが崩れて死ぬこともあることを知らない人が多いからだ。
それから、フレコンという袋に穴が開いたら、安易に補修したり破損した穴の近くに寄らないで欲しい
袋の中身が少しでも出てしまうと、バランスをくずしたフレコンが崩れてくるからだ。
穴が開いたフレコンは、人ではなくフォークリフトを使って安全なところにすぐに移動して事故防止を図って欲しい
放置すれば会社側が、刑事責任を問われることもあるからだ
https://www.rodo.co.jp/column/6658/

2019年07月01日

地震というリスク

私の住んでいる千葉県は頻繁に地震が発生する。
地震の規模は2~4程度だが気持ちの良い物では無い。
先日、新潟や山形で震度6レベルの地震が起きている。
1960年代に起こった新潟地震を知っているだろうか。
日本で、最初にコンビナートに大被害を及ぼした地震だ。
https://www.youtube.com/watch?v=S1xtD6ahQVk
半世紀前の出来事だが、すごい地震だった。
人は時間が経つと災害を忘れ去る。
だから、事故や災害は忘れた頃にやってくる。
日本はどこでも地震の被害を受ける。
地震へ常に備えよだ。
経営陣はこつこつと地震対策に投資することだ。
2011年の東北大震災でも、東北地区の化学企業でも被害に遭った。
しかし、被害は昔からこつこつと行ってきた地震対策でかなり抑えることができたという。
地震対策は、短期間にはできない。
日頃からこつこつと投資して、地震などの外乱に備えるべきだ。
投資できる時間や費用は、単年度で対応できることには限界がある。
中長期的なリスクマネージメントも考えて欲しい

2019年06月29日

流動帯電によるタンク爆発事故 流速を甘く見るな

化学物質を扱う工場であれば、静電気には注意が必要だ。
当たり面ことなのだが、現実各企業で静電気を重要視しているいるかというとそうでは無い。
静電気は目に見えるもので物でも無いからだ。
先日、いつも見ているあるブログを見ていたらこんな情報が目に入ってきた。
徳島市の油槽所で油受入れ中の灯油タンクが爆発
という事故だ。
http://tank-accident.blogspot.com/2019/06/blog-post_17.htm
l2019/5/16に起きた事故のようだが、お役所も公表はしていない。
原因が特定できないと公表しないというスタンスなのかもしれないが、これでは何度でも事故は繰り返す。
事故の教訓を伝える努力を怠ってはならない。
世界の貯蔵タンク事故というブログで公開されている情報を私なりに理解するとこうだ。
タンクに、液を入れるときは
とにかく流速を抑えろと言うことだ
細かく言うと
● 受入時の初期流速は、充填配管の直径の2倍または61cmの深さ(どちらか小さい方)に浸漬するまで、1m/sに制限する。
● 初期流速の制限が終われば、受入流速を増加してもよいが、静電気の蓄積を最小にするため、最大流速は7m/s~10m/sとするのがよい。

ブログの写真を見る限りタンクに窒素シールが行われていないように見える
窒素シールが無ければ爆発混合気ができていたのだろう。
日本で、昔は窒素シールが無かったことにより多くの爆発事故が起きていた。
タンクの窒素シールは、爆発を防ぐ基本中の基本のような気がする。

2019年06月26日

ベテラン労働者と言うことにだまされるな

先日、事故はなぜ起きるのかという講義を東京で行った。
https://www.e-jemai.jp/seminar/accident_1.html
講義が終わってこんな質問を受けた。
ベテラン社員が、ベルト点検中に巻き込まれたがどう対策をすれば良いかとの質問だ。
ベルトが慣性でまだベルトが動いているのに手を入れたようだ。
経営トップは、この労災をきっかけに安全対策の強化をその企業の安全対策担当に色々なことを指示したそうだ。
たぶん、日本中の企業は何か起こると、やみくもに安全対策の強化を繰り返している。
そんなことで、事故が減るわけがない。
安全担当者は疲弊して疲れ果てるだけだ。
あれもこれも対策を短時間で打てるわけがない。
災害が起きたときにやるべきことは、二度と同じ災害が起きないよう対策を打つことだ。
的を絞ることだ。あれもこれもでの対策では、安全担当者だけではなく現場の人も疲弊してしまう。
同じ災害は起こしませんと、安全担当者が宣言しそこに力を入れることだ。
ベテラン担当者が起こす事故のパターンは、過去の成功体験で安易に判断してしまうがキーワードだ。
たまたまこの前はうまくいったという成功体験がベテランには悪さをするからだ。
ベテラン労働者は、2つの区分に分かれる。
こつこつと、色々なことを経験しながら、なぜを考え、原理原則を大切にしながら育ってきた集団もある。
原理原則と比較しながら、深く考える集団だ。
もう一つの集団は、余り深く物を物を考えず、ただただ言われるままに時間を消費してきた人達だ。
この集団は、深く物は考えない。いわゆる、成功体験に頼るタイプだ。
企業の中で、このメンバーは事故を起こしやすい。
なぜなら、企業は何十年もいればベテランだと安易に考えてしまうからだ。
ベテランになると個人個人の評価が甘くなる。
経験年数が増えるほど、人の評価を深掘りしなければいけないのにその手法を企業も確立していないからだ。
そこに事故が起こる要因がある。

2019年06月24日

リスクマネージメントで考えるべきこと

前回リスクマネージメントの話をブログで書いた。
リスクマネージメントで問題なのは、我が社はやっているから安全だと思うことだ。
企業が成り立つのは、社員だけで成り立つわけではない。
協力会社と呼ばれる、第一線で仕事をしてくれる人がいるから企業が成り立っている。
企業はそう考えて、協力会社への教育の大切さを社員に指導しているだろうか。
そこまで、やっている企業は少ないはずだ。
だから事故は起こる。
先日、あるタンク火災の情報を読み起こしていた。
和歌山県の製油所で起こったタンク火災だ
企業の事故報告書はここから入手できる。
https://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease/2017/20170614_01_1150234.html
企業の報告書では、タンク火災事故の原因はこう書いてある。
タンク内には燃えやすい硫化鉄という物質があったのに、管理が甘かったという表現だ。
一方お役所側が書いている、事故の概要を示す文書では
企業は硫化鉄に関するリスクアセスメントはしていたが、実際に作業を実施する協力会社が
硫化鉄という物に対するリスクを良く理解していなかったと書いている。
両方のコメントを組み合わせると
リスクは発注者だけで評価していればいいわけではない。
協力会社が、いかにリスクを理解しているかを発注者はリスク評価しなければいけないのではないかと感じるのである。
リスクマネージメントは本当に難しい

2019年06月22日

リスクマネージメントの難しさ

昨今リスクマネージメントの大切さが言われる。
昔は、リスクという概念が無かった。
事故が起きてから、原因と対策を考えるというのが数十年前では一般的だったからだ。
いわゆる,事故が起きてから対応するという「事後対応」である。
事故は起きない方がいい。ならば、事故が起きる前に対策を打とうというのがリスクマネージメントという概念である。
いい考え方ではあるが、そう簡単に事故の未然防止を図ることができるわけではない。
事故は、失敗に学ぶと言われる。
失敗の中から何かを学びとると言うことだ。
リスクマネージメントを行うには、過去の事故事例を徹底的に検証しておくことが不可欠である。
なぜなら、そう簡単に潜んでいる潜在危険源を考えつくのはたやすいことではないからだ。
ハインリッヒの法則がある。300件のたいしたことの無い事故。
29件の軽い事故。更にその中から、1件の重大事故が起こるという論理である。
ということは、300件くらいの事故や災害事例を知っていて始めて、重大な事故を見抜けると言うことになる。
あなたは、300件ぐらいの化学災害事例をすらすらと言えます。
労働災害もしかりである。300件ぐらいの労働災害をパターン別に分けて、紹介することができますか。
そのようなことができないなら、リスクマネージメントができていると言えないかもしれません。
安全を担当する人なら、安全率という概念を入れてその3倍である900件くらいの化学災害や労働災害をすらすらと言えないと
やはり会社としてリスクマネージメントができる体制になっているとは言いがたいのではないでしょうか。
そんなことを思う今日この頃です。

2019年06月20日

コーテングとライニングの違いを理解せず起こる事故

配管や機器などにテフロンなど樹脂を吹きつけ利用するケースは多いはずだ。目的は様々だが、耐食性をあげることによく使われる。
いわゆる腐食対策だ。
鉄などの安価な母材に、テフロンを貼り付けて腐食から守る方法だ。
高級な金属を使わない利点があるので、コスト面でも有効な腐食対策だ。
しかし、テフロンなどの樹脂を吹き付ける配管や機器を購入するときには、用語に注意して欲しい。
一般的に、コーテングと言えば薄くテフロンなどの樹脂を吹き付けることをいう。
厚みはμm単位だ.薄く吹き付けるのだ。
一方、ライニングという言葉がある。これは、樹脂などを厚く吹き付けることをいう。
単位はmmクラスでかなり厚くなる。
したがって、このコーテングとライニングという用語の違いを理解せず製造メーカーお任せすると事故になることがある。
テフロン樹脂を吹き付ける配管や機器を購入するときは、吹き付ける厚みに注意して欲しい。
コーテングのように薄ければ、浸透することがあるからだ。
良く起こるのが、塩酸を使う装置などでのテフロンの吹きつけだ。
塩酸という液体は、テフロンで耐食性を持たせることが出来るが、塩酸からガスが発生していると浸透する。
時間をかけてガスが浸透していきテフロンに膨らみをつくることがある。
そのように弱くなったところからガスが鉄などの母材に浸透し腐食が始まってしまうのだ。
塩酸を取り扱う液面計の事故を一件紹介しておく。
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-293.pdf
テフロンが薄くて塩酸ガスが浸透した事故だ.テフロンを吹き付けた機器を購入するときは厚みに注意して欲しい。
メーカーお任せでは事故が起こると思って欲しい。
PFAライニングの寿命診断というメーカーが公開している資料がある。
これも一読しておいてほしい。
https://www.nichias.co.jp/research/technique/pdf/363/06.pdf

2019年06月18日

第13次労働災害防止計画(2018年度~2022年度)

国が考えている労災防止計画を知っていますか。
厚生労働省からこのような基本計画が打ち出されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197309.html
労働者の高齢化という問題も提起しています。
高齢化という問題も直視せざるを得ない状況です。
体力に衰えによる転倒労災の増加も見逃せません。
正規非正規という問題も顕在化してきています。
給与とモチベーションは直結します。
安全はコストです。
質が高いものを望めばそれなりの金額を払わなければなりません。
しかし、競争引き合いが行われる昨今安かろう悪かろうが現実化しているのは事実です。
メンタルの問題も顕在化しています。
転倒が増えています。高齢化が関係するかもしれません。
無理な動作という事故も増えています.腰や肩を痛めたなど無理な動作です。
安全ベルトの法規制が変わりました。
でも、数メートルから落ちるのは法規制ではなかなかカバーできません。
安全を確保するのは労働者本人です。
事故は他人事と思っている限り、事故からは逃れられません。
自分の命は自分で守れです。
されど、安全にはお金がかかります。
企業がしっかりと安全にお金をかけることが安全への基本です。

2019年06月16日

脚立の天板に乗るなまたぐなの動画

先日労働災害について講演した。
講演の中で、脚立を使う時に禁止事項を話した。
一つ目は天板の上に乗るなだ。
狭い天板の上に乗れば、バランスをくずして転落する事故が多いからだ。
もう一つ、脚立にまたがるなと話をした。
またがる作業は、自分の目の前の何かをしようとして作業をしているパターンだ。
またがっているときは、当然前側に力をかける。
かけ過ぎれば、反動で脚立が後ろ側に倒れる。
つまり、後ろに倒れて転落する事故となることが多いから脚立にまたがるなと言われているのだ。
でも、口で説明してもなかなかこの状況は解りにくい。
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE(ナイト))というところで、ビデオが公開されている。
脚立の天板に乗った人が転落する動画だ。
興味のある人は、見て欲しい。https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/03170102.html

2019年06月15日

高圧ガス保安協会の安全セミナー紹介

一年に一度行われる高圧ガス事故事例セミナーの案内がネットで出ていた。
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/2019/R1seminar.pdf
今年で19回目だそうだ。
各界の専門家の人がお話ししてくれる講習会だ。
私は、毎年この講習会を楽しみにしてはいる。
実際に起こった事故事例を話してくれるから楽しみにしてはいるのだが.今年は事故事例は1件のみだ。
事故の教訓を得るのに有効な講演会だが、でも事例が一件とは寂しい。
おまけに、ネットでタイトルの事故事例を探したがネットでは公表されていないのだ。
これを見ていかに公表されていない事例が世の中に多いのかと感じた。
事故や災害事例が公表されていないから事故は繰り返す。そう思わざるを得ない。
もっと実際に起こった事故事例を官公庁や外郭団体はタイムリーに公表して欲しい。

2019年06月14日

2010年代の重大事故の考察

時代時代によって事故の要因や社会的背景は変わる。
企業を取り巻く環境、労働者である社員や協力会社を取り巻く環境は常に変わる。
十年一昔と言うが、まさに10年ぐらいで事故の引き金となる環境は変わって来ている。
半世紀前の高度経済成長期であった日本企業では事故は多発した。技術的に未知なことが多かったからだ。
その後、設備はどんどん巨大化して、人が大型化した設備について行けないことで事故は多発した。
単純な、人のミスも、事故に直結した。ヒューマンエラー対策がまだまだとられていないという時代環境があった。
その後、人はヒューマンエラ-を真剣に考え、人によるミスの削減に努力した。
その後、事故が起こってから対策を講じるのではなく、事故が起こる前に対策を講じるという概念が芽生えてきた。
リスクマネージメントとという概念だ。
リスクというものを考えるようになって、事故を未然に防ぐことが少しずつできるようになってきた。
時代時代を考察する文献は多いが、最近こんな文献を見つけた。
岐路にきた日本の安全管理という文献だ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/11/1/11_JOSH-2018-001-KA/_pdf/-char/ja
2010年代の重大事故の考察だ。
コメントの中に、「変化」というキーワードがある。
現場の人は減り、一人当たりの負荷は増大している。更に、昔のようにトラブルを経験できるチャンスも少ない。
失敗を経験できないと環境がある。
更に、管理者が、トラブルを経験せず短期間に管理者になり現場を管理しなければいけないという現実がある。
経験から学ぶというシステムが崩壊しているのに、それを補う環境も整備されてはいない。
金と人事権を持つ経営幹部がそこをどう対処しているかだ。
安全はコストだ。コストをけちれば.事故は起こるのは、自然の摂理だ。
だからといって無限に投資ができるわけでは無い。
お金では換算できないものもある。
モチベーションや日本流にいう企業への思いだ。
バランス感覚を持った経営者が増えて欲しいと思う今日この頃だ。

2019年06月12日

フィルムデトネーション現象

フィルムデトネーション現象という言葉を知っているだろうか。
爆発より威力の高いものを爆轟(ばくごう)と呼んでいる。爆轟とは、英語でデトネーションと読んでいる。
フイルム状に爆轟が起こることをこの、フィルムデトネーションと呼ばれる。
配管の中にたまったフィルムのような薄い油状のものに火がつき激しい爆発が起こることを一般的にいっている。
いわゆる、高圧圧縮機などの潤滑油が、吐出側の配管に付着している状態で配管内で爆轟を起こす現象だ。
日本では昭和58年に起こった事故が、失敗百選で公開されている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000196.html
学会誌安全工学にもこんな文献が公表されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/24/3/24_165/_pdf/
高圧の空気圧縮機を持っている企業の方々は一度読んでほしい。
空気は高圧になると、強力な酸化剤になる。圧縮機に使われる、潤滑油は可燃物だ.使っているうちに、油は劣化する。
劣化すれば当然発火点は下がるから、火がつきやすくなり着火すればフィルムデトネーションと呼ばれる爆発的な現象が起こることがある。
実験室や研究室でも、空気圧縮機は使われているはずだ。
ベビコンを含めた空気圧縮機には、給油式タイプと無給油式タイプの2種類ある。
そのうち、給油式タイプのものを使用している場合には、取扱説明書には定期的な清掃、点検が必要だと書いてある。
なぜなら、長時間使用しているうちに潤滑油の劣化物が配管の内側に膜状にこびりつき、そこに静電気とか断熱圧縮あるいは自然発火など何らかの着火源が発生した時に、爆発する恐れがあるからだ。
潤滑油のフィルムデトネーションを意図してのことだが、そこまで読み取れる人は少ない。
フィルムデトネーションと呼ばれる現象がおこれば、機械の損傷はもちろんのこと、配管が噴破するなどして人身事故につながることもある。
フィルムデトネーションという現象も知っておいて欲しい。
最後にある潤滑油メーカーのホームページに空気圧縮機の発火事故という情報もあるのでこれも是非見て欲しい。
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0706.php

2019年06月10日

鉄鋼業界の死亡事故情報

化学業界のみならず、他の業界でも事故は多発している。
鉄鋼業界での死亡事故情報が公開されているので紹介したい。
2015年~2016年にかけて発生した死亡事故である。
2017年7月に鉄鋼業界が発表した資料であるが、化学業界でも参考にしたい情報である
下記のURLを見て欲しい
http://www.jisf.or.jp/business/anzen/documents/juusaijirei2015-16_0724.pdf
写真やイラストが添えられているのでわかりやすい。
挟まれ巻き込まれ、酸欠など教訓となる事故事例が多い

2019年06月05日

油のしみ込んだ布の自然発火

だいぶ暑くなってきた。
この時期になると気になるのが、油を拭いた布の自然発火だ。
油のしみ込んだ布は.太陽の熱などで自然発火することがある。
この現象は、案外知られていないため暑くなるとあちこちの工場で小火を起こす。
発火のメカニズムはこうだ。
布にしみ込んだ油は.空気と触れて酸化されていく。
酸化されるときに、酸化熱という熱が発生する。
布にしみ込んだ油などが、劣化した油であれば発火点が新品の油より下がっているから火がつきやすい。
更に、油のしみ込んだ布が重ねられて置いてあれば、中の方の熱は放熱しないから熱はどんどん上がっていく。
最後は、発火点を超えて布に火がつく。
わずかに燃え始めると、油は気化して可燃性ガスも出す。
油という液体より可燃性ガスの方が、一般的に着火点は低いから火の勢いが強くなると言うわけだ。
ネットなどでも色々な記事がある.参考にして欲しい。
https://www.nipponpaint.co.jp/topics/hakka.html
https://plaza.rakuten.co.jp/denkiyakan/diary/200706180000/
尚、配管の保温材に油がしみ込んで着火し、火災になる事例は2018/12/15付けのこの半田のブログでも紹介している。
興味のある方は見て欲しい。

2019年06月03日

高圧ガスの事故統計情報紹介

昨日のブログでは、消防庁から、昨年のコンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計について紹介した。
この統計情報は、年に一度の発表だが、高圧ガスの事故情報や統計情報はもう少し短い頻度で発表されている。
高圧ガス保安協会のホームページの中で公表されているが、案外知らない人が多いのではないか。
https://www.khk.or.jp/public_information/information/incident_investigation/hpg_incident/statistics_material.html
上記のURLをクリックすると高圧ガスの事故統計資料等というページが表れるはずだ。
次に小見出しがある。「統計資料」という小見出しだ。1カ月毎に更新された統計情報がある。
数字やグラフの情報が主体だ。
具体的に発生している事故の内容を知りたいなら、もう少し下の方を見ていって欲しい。
高圧ガス保安法事故一覧表という小見出しがあるはずだ。
その中に、事故の内容を書いた一覧表がある。3ヶ月毎に最新版が発行されている。
現時点で、2018年の10~12月分の事故内容が公表されている。
更にもう少し、下の方を見ていくと小見出しで石油コンビナート等災害防止法の特定事業所で発生した事故一覧という見出しがある。
いわゆる、コンビナート地区で起こった事故の内訳である。
そのほかにも、安全担当者には参考となる資料が多くある。
時間があれば、一度覗いてみて欲しい。

2019年06月01日

消防統計が発表されていた

消防庁から、昨年のコンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計が発表された。毎年5月末に発表されている。
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/190527_tokusai02.pdf
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/190527_kiho02.pdf
今年の発表内容を見ていて気になることがある。
昨年と比べて、コンビナート地区での事故件数が2割も増えていることだ.
件数で表せば252件から、314件と大幅に増えている。今までは、250件くらいを推移していたのだからかなりの増加だ。
事故の内訳を見ると、漏洩が115件から155件とダントツ増えている。漏れによる事故が大幅に増えたと言うことだ。
火災も増えている、130件から146件と増えた。
爆発は、1件から6件に増えた.昨年の1件は非常に少ない特異的数値だ。例年5~6件だから、従来並に戻ったと言うことだ。
コンビナート事故の件数が、300件台の大台を超えてしまったと言うことだ。
業種別に見ると、化学工業と石油精製などで事故の8割を占めている。

2019年05月31日

真空ポンプの小火

ある研究所で、長いこと使っていなかった真空ポンプを動かしたところ、排気ベント部での着火事故を経験したとの研究所員の話があった。
数年前の話であるが、わたししもこの時は、事故原因は何かわからなかった。
その後、色々な事故事例を経験した結果こんな理由であることがわかってきた。
可燃物を取り扱う真空ポンプなら、排気には少なからず可燃性のガスが排気される。
ポンプの潤滑剤に、シリコンなどの潤滑剤を使えばこれも少なからず着火源があれば燃える可能性はある。
真空ポンプの排気部は、潤滑剤や排気ガスなどのミストで空気と攪拌されれば静電気が発生するという。
空気と油とが混ざり攪拌すれば周辺で静電気が起こるのだ。
ダクト排気部の静電気対策がしっかりと取られていなければどんどん静電気がたまる。
潤滑油に、水を使っていれば問題は無いが可燃性の潤滑油であれば静電気で当然着火する。
潤滑油は、時間とともに劣化して発火点は下がる.長いこと使っていなければ火がつきやすくなると言うことだ。
そして劣化した潤滑油ミストでダクト部などで小火になることがあるらしい。
真空ポンプメーカーなどの取説を読むと、可燃性ガスに使う真空ポンプなら
潤滑剤は水を選定せよという表現がある
研究所で、真空ポンプを使う時に潤滑油の選定に注意しないといけないと言うことだ。
排気部のダクトも樹脂製だと静電気が起こる。
金属製にして、静電気を逃がす方が良いとメーカーのカタログにもある。
たかが真空ポンプと思わないことだ。
しっかりと静電気対策を取らないと火災事故を起こすと言うことだ。

2019年05月25日

変更管理について

化学プラントでは常に変化が起こる。原料、運転条件、運転方法も変わることがある。顧客の要望に応じて生産能力や生産品目も変わるはずである。物質や設備の変化だけではなく、人や組織も変わっていく。
この変更や変化が時として危険源になることがある。事故を防ぐにはこの「変更」や「変化」という潜在する危険源を管理することも必要だ。
 変更管理という考え方はどのようにして出てきたのだろうか。
こんな歴史的背景がある。
 1980年代頃に、インドのボパールで有毒ガス大量漏洩事故が起こった。死者は一万人を越えると言われ、ガスを吸った人達の健康被害は数十万人に及ぶという大惨事だ。
 猛毒の物質を取り扱う化学企業であるのに、安全管理がおろそかだったことにより、化学物質が大量に漏洩し多くの人を死傷させた大事故だ。このような大事故を起こさない為には、化学企業は体系的な安全管理の仕組みが必要だと人々は考えるようになってきた。
 この流れを受け、アメリカでは1992年にOSHA:Occupational Safety and Health Administrationという組織(米国労働安全衛生庁)によってPSMというプロセス安全管理の仕組みが法制化された。
 PSMとはProcess Safety Managementの略号だ。
 PSMにはプロセス安全情報、プロセスハザード分析、作業手順やトレーニングなど管理すべき項目が14項目規定されている。このPSMの管理項目の中に「変更管理」という項目がある。
 つまり、1992年にアメリカで生み出された概念だ。
その後、日本でも化学企業で注目されるようになってきたのが2000年代頃からだったと思う。
 2005年の高圧ガス保安法一部改定(認定制度)で高圧ガス設備の認定要件の中に「保安管理システム」の構築と継続的改善を求める文言が記載されている。保安管理システムの中に、「変更管理」という項目が新たに取り入れられている。
 日本の法規制面でも取り組みが始まったのがこの時代からだ。
その後、2009年には化学工学会の安全部会で変更管理をテーマにした検討チームが作られ論議を開始している。参加メンバーからの文献なども公開されているので変更管理についてもっと知りたい方は参考にして欲しい。
http://www.jniosh.go.jp/publication/pdf/vol7_2/Vol07No2-05a.pdf
安全工学会にも変更管理について考えるに参考となる文献があるので以下を見て欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/45/4/45_250/_pdf/-char/ja

2019年05月18日

安全弁などの元弁の開け忘れや、仕切り板の抜き忘れの事故

安全弁などに元弁がついていることで起こる事故がある。 安全弁の元弁を開け忘れていて、破裂事故などがおこることがある。
このようなヒューマンエラーによる事故を防ぐ為、安全弁の入口側の配管には元弁を付けない会社は多いはずだ。
元弁を開け忘れていてそのまま装置を運転していて事故になるケースが繰り返し起きていいるという現実がある。
こんな事故事例がある。
http://www.shippai.org/fkd/hf/HB0011017.pdf
コールドエバポレーターといわれる、液化窒素などのタンクで安全弁の元弁を開け忘れて起こる事故事例は多い。
タンクに液化窒素を入れたままの状態で、安全弁を点検する為には元弁が必要だからだ。
安全弁を点検の為取り外すのに、元弁を閉めて縁切りする必要があるからだ。
安全弁を取り外している際に、万一圧力が上がれば当然タンクは破裂してしまうことになる。
それを防ぐ為、破裂板をも併設している。
破裂板の入り口の配管にも、元弁を付けているケースが多い。
万一破裂板が誤作動した際に、元弁を閉めて液化窒素の無駄な放出を防ぐ為だ。
破裂板を取り替えた後、元弁を開け忘れてタンクが破裂する事故も多い。
元弁があれば必ず開けるのを忘れたというようなヒューマンエラーが起こる可能性がある。
では、安全弁に元弁がついていないから、自分の会社は大丈夫だと思っていいのだろうか。
元弁がなくても、こんな事故事例がある。仕切り板の抜き忘れによる事故だ。
定修中に、コンプレッサー出口配管にある安全弁を通じて逆流が起こらないように安全弁の出口側に仕切り板を入れていた。
この安全弁は、排ガス燃焼共通配管につながっていているため万一を考え仕切り板を安全弁出口に入れて逆流を防止していたのだ。
定修が終わり、コンプレッサーの試運転を始めたが、運転操作に失敗した。つまり、運転員が吐出弁を開けるのを忘れていた。
一気にコンプレッサの吐出圧が上がった。
当然安全弁は正常に作動したものの、安全弁出口側に取り付けていた仕切り板を取り外すのを忘れていた為コンプレッサーが破壊した事故がある。
コンプレッサの安全弁出口に仕切り板を入れていたことにより起きた事故だ。
スタートアップ時は、安全弁の周りを見て欲しい。
元弁があれば開いているのか。万が一仕切り板が取り外されずに残っていないかきちんと点検して欲しい。

2019年05月16日

工事管理とは

工事管理とは何なのだろうか。
化学プラントという観点で、工事管理という言葉をもう少し深掘りしてみたい。
化学プラントの設備は、故障する。運転中に故障することもある。故障すれば、人が修理する。
定期的にプラントを停めて、不具合がないか検査をすることもある。人が点検するのだ。
プラントを停めたときに、改造工事などを行うこともある。生産能力の向上や、より安全なものにするためだ。
人が何らかの形で機械設備に手を加えることを工事と呼んでもいいのではないだろうか。
工事をするためには、まず工事対象が安全な状態にしておくことが必要だ。
危険な物質や温度や圧力があれば、工事をする人に危険が及ぶ。
工事中の安全確保も必要だろう。
工事が終わった後も、本当に安全かと検査も必要だ。
工事というものはチームプレーだ。
工事を発注する側の人もいる。工事を請けて、作業をする協力会社と呼ばれる工事会社の人もいる。
工事の協力会社は多層化している。
一次下請け、二次下請け、、三次下請けとへと続く。どこかで、情報が途切れると事故が起こる。
コンビナートなどでは、定期修理が行われる時期には1つの工場で数千人の協力会社の人達が工場に来る。
膨大な人数の人達が、工事や点検作業をすることになる。
化学プラントの工事管理とは、このような協力会社とのコワークをしっかりとやっていくことなのではないだろうか。
互いにリスクを認識し合い、工事の完遂に向け努力することが工事管理ではないだろうか。
工事の安全は一人で創りさせるものではない。協力会社と一体となって創り出すものだ。

2019年05月14日

設備管理とは

設備管理とは何なのだろうか。設備を管理することと言ってしまえばそれでおしましだ。
化学プラントという観点で、管理という言葉をもう少し深掘りしてみたい。
化学プラントの設備は、順調に稼働していれば事故は起きない。
しかし、故障というものが事故の引き金になると言うことがある。
突然故障することが、運転の安定性を損なうことになる。
今から半世紀前の化学プラントでは、装置が故障してから修理するのが当たり前だった。
つまり、無駄な費用をかけずに使えるだけ使えということだ。
専門用語で言うと、事後保全(故障が起きてから修理すること)という設備の維持管理方式だった。
この為、突然故障が起きて事故になり、人が事故に巻き込まれることが多かった。
それではいけないという考え方が起こってきて、故障が起こる前に点検をして修理するという考え方が取られるようになってきた。
専門用語で言うと、予防保全という言葉になる。
原子力発電所などでは、設備の故障が起こると大事故になるのでだいぶ前から採用してきた設備管理方式だ。
この方式を採用するようになって、化学プラントでも運転中に機械が故障する頻度が減っていった。
いわゆる安定的な運転ができるようになったのだ。
予防保全というのは、そろそろ機械が壊れそうだなと感じて壊れる前に手を打つのだがそこがなかなか難しい。
早め早めに点検をしてもいいが、余り早すぎると当然余分なコストもかかる。
つまり、この点検時期をいつにするかの判断が難しい。
点検時期を決めるために、過去の点検記録をきちんと整備して、それらを用いて解析できる体制ができていなければならないからだ。
1990年代後半に登場した、パソコンというのがこの記録の保存や、解析ににすこぶる役に立ち始めた。
結果として、1990年代後半から予防保全という体制が企業で積極的に進められた。
いまや、コンピューターが設備管理にも重要な役割を果たしてきている。
さて、本題に戻すが設備管理とはどう考えれば良いのだろう。
設備の信頼性と、設備の維持管理コストのバランスを取ることなのだろう。
維持管理しながらの話ではあるが、設備は数十年使える。
このライフサイクルの中で、安全と維持管理コストのバランスをとることが設備管理ではないのだろうか。

2019年05月12日

今年度の安全工学セミナー

安全工学会から今年の安全工学セミナーの案内がホームページに掲載されていた
http://www.jsse.or.jp/mumbxpwe0-24/#_24
タイトル 【開催案内】第41回 安全工学セミナー ~化学品を扱うプロセスの災害防止~
開催日時
● 物質危険性講座 2019年 9月5日(木)、6日(金) ◎ 空席あり
● 危険現象講座 2019年 10月1日(火)、2日(水) ◎ 空席あり
● プラント安全講座 2019年 11月14日(木)、15日(金) ◎ 空席あり
● 安全マネジメント講座 2020年 1月27日(月)、28日(火) ◎ 空席あり
※残席状況は2019年4月22日時点
安全のことを体系的に学びたいと考えている企業の安全担当者にはお勧めの講座だ。
4つのテーマに分けて、1年間に4回講義がある。各回2日間だから、合計8日だ。
世の中色々な安全講座はあるが、物質危険性に始まり
危険源やリスクマネージメント、安全管理の考え方や教育訓練など体系的に学べるのはこの講座だろう。
しかも、その道の専門家が最新の情報を踏まえて話してくれる。
安全について仕事を通じて経験から学べるかというと、今はそんな時代ではない。
きちんとした専門家に体系的に学ぶ方が効果的だ。
講座では、色々なことを聞いてみることもできる。
デスカッションもある。
興味のある方はホームページを覗いてみて欲しい。

2019年05月07日

運転管理とは

ブログで、設計管理、安全性評価とは何かを書いてきた。
安全性評価が終われば、次は設備が出来上がり本格的に運転が始まる。
では、何を管理すればいいのだろう。
管理というのは、決められたことを当たり前のように守らせるという意味もある。
たしかに、社員に好きかってに企業活動をさせていては問題も起こる。
人が2人以上存在すれば、人を束ねる組織というものが必要だ。
組織体制を整え、責任や権限も明確にしておく必要がある。
次に何をするかも明確にしておくことが管理上大切だ。人は、同じことを考え、同じ行動をするわけではない。
知識や経験により考え方も行動も異なると考えておくことが必要となる。
企業としての考え方、運転操作などの行動や判断基準も文書化して明確にしておく必要がある。
工場であれば、「ものづくり」をするための基本的な考え方を示した文書類が必要となる。
設計なら設計基準書と呼ばれるようなものだ。運転であれば、運転基準書だ。
いわゆる生産活動に必要なドキメントをきちんとそろえることが運転管理の基本だ。
作業を行う基準となる運転手順書や作業手順書などが必要だ。運転マニュアルなどとも呼ばれているものだ。
しかし、運転マニュアルなどは必ずしも完璧に作られているとは限らない。
人が、疑念を持つような記述もある。文字で書く限り、完璧な作業手順書は存在しない。
つまり人が、ある程度自分の裁量で判断を下す部分が存在してしまう。そこに、事故の芽が生まれる。
過去の多くの事故事例を見て見ると、人の判断に許容度を多くゆだねてしまうと、判断ミスで事故が起こる。
しかし、完璧な運転マニュアルは出来ないから繰り返し事故が起こるという現実がある。
ソフト面での管理に加え、運転用の資機材などハード面の管理も重要だ。
運転管理とは、運転手順、運転に携わる人の技量やハード的な設備を組織的に管理することだ。
人と設備をしっかりと管理することが求められている。

2019年05月05日

平成の時代から令和へ

平成の時代が終わり、令和という時代に変わってもう3日経過した。
この前まで、平成最後の***と言っていたのにもう令和***になった。
安全という視点で、平成の時代を考えてみた。
平成が始まったのは、1989年だ。
1990年秋 バブル崩壊 その後、景気低迷が長く続くことになる。
人を企業が採用しなかったことにより、技術の伝承が途絶え始めた時でもある。
一方で、1990年代は法整備や企業の安全管理体制の 確立により事故件数が減少した時代でもある
半導体産業が活性化し始め、化学産業においては、取り扱い物質が多様化し新たな事故(過酸化物、特殊ガス)が増え始めた
企業は、少しでもコストダウンを図ろうと、今まで聖域だった保全も競争引き合い時代へ移り始めた時代だ。
保全の質もこの頃から確実に落ちていった。
更に追い打ちをかけたのが、今まで社員が行っていた領域の変化だ。
製造の下請け外注化が進んでいったことだ。
1995年にはWINDOWS95,98年にはWINDOWS98が登場し企業でのパソコン利用が急速に進み始めた時代だ。
2000年代に入っても就職氷河期で、約10年ほど人の採用を控えた時代だ。
2000年代に入ると、デジカメの大衆化で、色々な事故の記録が映像として残り始めた時代でもある。
2006年には高圧ガス取締法が高圧ガス保安法と名称を変え、自主保安の時代に入る。
2007年頃からは、戦後生まれの団塊の世代という色々なことを経験してきた人が企業から大量に退職し始める時代になる。
これにあわせて、化学企業は大量に若手を取り始めた時代に入ってくる。
しかし、2008年にはまたリーマンショックという経済的なショックを経験することになる。
2010年代に入ると、2011年には東北大震災に襲われた。
化学産業会でも、そのころ立て続けに大きな事故が発生し、安全体制の再構築を図る。
2016年には熊本地震、2018.6月には大阪で直下型地震、広島で集中豪雨など災害が続いている。
2018.9月には北海道地震で、北海道の全停電を経験した。
時代は変われど、災害に備え安全の確保を行っていく必要がある。
常に備えよという言葉はいつの時代になっても変わらない。

2019年05月03日

安全性評価とは

先日のブログで、設計管理とは何かを書いてみた。
設計が終われば、当然その安全性を評価することになる。
では、何を評価すればいいのだろう。
会社には、安全に関する評価システムがあるはずだ。
当然企業であれば、それにしたがって実施していくこととなる。
評価システムにチェックリストがついているケースもある。
しかし、あらゆる検討案件についてキーワードが書いてあるわけではない。
基本的な安全性評価の考え方がわかっていないと、評価漏れが起こる。それが事故につながる。
まず、何を評価すればいいか基本的なことがわかっていなければならない。
基本的な切り口は、3つだ。
一つ目は、取り扱う物質の持つ危険性だ。物質固有の危険性だけではなく、共通的な性質も見て欲しい。
二つ目は、人だ。人は必ずミスをするからだ。人がミスをしても安全かを確認することだ。
当然、人がミスをしにくい設計になっているかも見て欲しい。
いわゆる、フールプルーフやフェイルセイフの設計思想になっているかだ。
設計した本人にこの思想があるかをまずチェックして欲しい。
三つ目は、設備だ。設計者に設計思想を聞いて欲しい。次に、装置の限界や弱点を聞いて欲しい。
答えがあいまいならやはり、将来事故になる。
最後は外乱だ。停電になったり地震が来たりしても安全かだ。外部からの突然の要因でも、安全上問題がないかだ。
安全性評価は、細かなところを評価することも大切だが、木を見て山を見ずにならないようにして欲しい。
基本的な設計思想などが、あるのかないのか。限界性能や弱点が何かをわかって設計しているのかを問うて欲しい。
最悪の事態を考えて、評価は行って欲しい。

2019年04月28日

設計管理とは

設計管理とは何なのだろうか。設計を管理するでは答えにはならない。
化学プラントなどの設備を設計する時には、エンジニアーは当然安全を考える。
危険なものを扱う設備だからだ。
しかし、安全だけを考えていればいいわけではない。
当然、お金のことも考える。いわゆるコストだ。
安全とコストを総合的に考えて、設計を進める。
当然安全を最優先にするが、コストとのバランスをとることは避けられない。
しかし、このバランスを取るのは容易ではない。
かなり、過去の失敗事例を知っていないと思わぬ落とし穴にはまる。
設計基準がまだ確立されていない時代は、エンジニアーは自ら考え安全とコストのバランスを取ることに力を入れた。
しかし、昨今のように各企業では設計基準書も整備されて余り考えずに設計できるようになると人は考えなくなる。
そこに、事故の芽があるような気がする。
もう一つは、コミュニケーションが減ったことだろう。
昔は、周りに人がいた。経験豊かな人に聞く環境があった。
しかし、省人化が進み設計部署も人数は大幅に減った。
人から情報を得られなくなったことも、事故の要因なんだろう。
最後の設計管理のキーワードは、設計品質だ。
私の考える品質とは、「人に優しい設計」になっているかだ。
化学プラントという巨大な機械も、人が扱うものだ。
人にとって扱いやすいものになっているかは非常に重要だ。
設計管理の中で「人に優しい」というキーワードを忘れないで欲しい。

2019年04月26日

仕切り板による縁切り

工事の安全管理の中で、「縁切り」という重要な作業がある。
工事をするためには、安全な状態にする作業だ。
今まで危険な物質が流れていたなら、それを除去して、更に水などで洗浄するか、気体ならば窒素でパージしてして安全な状態にする必要がある。
それだけで安全かというとそうではない。万が一、洗浄が終わっても漏れ混んで来る可能性が有り漏れ混む箇所を遮断する必要がある。
これを、「縁切り」という名前で呼んでいる。すなわち、危険なものを遮断する作業だ。
配管のフランジ部などに、仕切り板(ブランク版と呼ぶこともある)といわれる金属製の板を挿入して遮断するのが一般的だ。
この仕切り板は、単に配管サイズだけで考えてはいけない。圧力に応じて強度のある板厚にしておく必要がある。
今から40年前などでは、この板厚が配慮されず、薄っぺらなブリキ板を使い耐圧性能がなく事故になったことがある。
仕切り板は、圧力と口径を配慮しておくことが大切だ。
定修時などは、一つ仕切り板を配管に入れ忘れても事故になる。
昔は、仕切り板の管理をしていなくて事故が多かった。
当時の事故の教訓は仕切り板の全てに管理番号を付けたことだ。当然、仕切り板一つ一つに管理番号を付け一覧表にして管理した。
誰が、いつ、どこに挿入したかを管理表にして管理したのだ。一覧表に、一箇所でも空欄があればすぐに気がつく。
一つでも、取り付けミスがないように管理することでミスは確実に減った。
少し手間はかかるがこの結果、縁切りミスは皆無になった。
仕切り板に、番号を記入した管理札を付けて欲しい。
人の記憶だけに頼るアバウトな管理では、必ず抜けが起こる。
仕切り板は、一つずつ番号を付けて管理をしてほしい。
今時は、社員だけでは管理しきれないかと思う。
協力会社の力をうまく使って管理することも考えて欲しい。
事故を防ぐには「管理」(=マネージメント)が大切だ。

2019年04月23日

有機溶剤の静電気着火事故

自分が取り扱っている物質の引火点を知っているだろうか。引火点とは、火がつく温度だ。
有機溶剤と言われる物質は、引火点は非常に低い。
例えば、マイナス数度だ。
今時の気温は20度前後だから、簡単に火はつく。
火がつく原因は、静電気だ。
有機溶剤は導電性は無い。つまり、静電気は簡単に逃げていかない。
アースという方法で静電気は逃がせない。
流速が早ければ、静電気は大量に発生する。
この流速というのがくせ者だ。
有機溶剤を流すときには、当然配管がある。
配管の出口が、流速が遅いから安全だと思い込んでは困る。
出口の前の途中経過の流速が早いことも当然あるはずだ。
流速の早いところで静電気は起こっているから。その静電気が逃がせないまま
出口まで到達すればかなりの高電圧のまま出口から液は噴出する。
言いたいには何かというと、長い配管途中で大量の静電気が発生するような状況では
帯電した静電気が逃げなければ出口流速とは関係なく
かなりの静電気が存在するので簡単に着火すると言うことだ。
とにかく、引火点の低い物質はしつこいくらいに静電気対策が必要だ。
常に酸素濃度管理を怠って欲しい。

2019年04月21日

空気を圧縮する圧縮機の事故

燃焼の三要素が成り立てば火がつくと言うことは誰でも知っている。
潤滑油を使う空気圧縮機であれば、空気と潤滑油という燃える物が存在することになる。
後は、着火源があれば当然火がつく。
着火源は、何かと言えば潤滑油などの油かすなどがたまっていれば空気で酸化されて酸化熱という熱が発生する。
その熱が、じわりじわりとたまっていく。
いわゆる蓄熱という現象だ。数百度くらい迄温度は上がるから十分火がつく。
空気圧縮機で、長いこと出口配管などにたまっている潤滑油などを清掃しないで放っておくと爆発事故を起こすことがある。
空気は、常圧ならばそれほど着火しやすいとは言えないが、圧力が上がれば上がるほど火がつきやすくなる。
高圧の空気圧縮機なら、ものすごくこの潤滑油の着火に注意を払う必要がある。
過去起こっている、高圧空気圧縮機の事故が以下のURLで紹介されている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000196.html
潤滑油に関する会社のホームページにも、潤滑油に関する事故のメカニズムが載せられている。
わかりやすい内容なので一度見て欲しい。
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0706.php
ここで言いたいのは、潤滑油は燃えると思って欲しいのだ。古くなって劣化した潤滑油は、新品とは違い燃えやすくなる。
更に、空気を圧縮する装置は、高圧の空気が存在しているのだから燃焼の3要素を十分に満たしていいる。
もし、高圧の空気圧縮機を使っているなら出口配管などに油かすが溜まっていないか定期的に点検して欲しい。
火がつくだけなら良いが、場合によっては爆発的な燃焼を起こす。
潤滑油恐るべしである。

2019年04月16日

仮設ホースで逆流が招く事故

運転条件を変えることは、化学工場では当たり前のようにある。
例えば、装置に今までに無い液を加えることもある。
きちんと、金属製の本配管を設置すればいいのであるが、うまくいくかがよくわからないときは
金属では無く仮設ホースで済ますことは良くある。
流す流体に当然配慮して、仮設ホースを選定はする。とはいえ、できるだけコストのかからない安価なホースを選定する。
例えば、酸性の腐食性物質で無ければナイロンなどの安価なホースを使うこともある。
当然、耐圧も考え、それなりに材質のホースは誰でも使う。
たしかに、当初考えていた流体に合うホースは誰でも選定するのだが、問題は想定外の流体が流れてしまうことである。
例えば、ホースへの逆流である。当然、想定外の物質が流れてくるのである。
想定外だから、流体に耐えられなければホースが破れることになる。
こんな事故事例を見つけた。塩酸を取り扱う装置である。
あるとき運転条件を変更し、仮設でフロンを入れるナイロン製ホースを仮設した。
ところが、運転開始時ホースのバルブを閉め忘れ塩酸が逆流してホースが破れたという事故だ。
下記のURLを参照して欲しい。
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2013-066.pdf
HAZOPなどでも逆流はリスクの拾い出しで注意が必要な項目だ。
逆流は設計条件とは、想定外の条件になることだ。
逆流というキーワードで事故事例を学んで欲しい。

2019年04月14日

粉塵爆発と粉の性状

粉じん爆発については何回かブログに書いてきている。講演で粉塵爆発について話をしたとき、粉の粒径について聞かれる。
粉が細かくなればなるほど表面積は大きくなるから、爆発の可能性は大きくなるからだ。
たとえ話として、小麦粉くらいの粉であれば条件によっては粉塵爆発を起こすと答えている。
過去にも、製粉工場で大きな爆発が起きているからだ。ネットで探してもかなりの事故が起きていることがわかる。
粒径に関しては、一般的には、平均粒径が400~500ミクロン以下になれば、爆発する可能性が出てくると言われている。
平均粒径という言葉に注意して欲しい。平均であるから、小さな粒径の分布も考えなければいけない。
粒径の小さい粉は、より爆発しやすいからだ。
粒子の形状にも注意が必要だ。表面積が爆発燃焼の起こり易さに関係するからだ。
つまり、空気と接触する面積が大きければ大きいほど燃焼しやすくなる。
たとえば、粉の製造方法を変えたことで粒子の形状が極端に変化したら注意が必要だ。
粉の製造方法や粉の購入先を変更したときには、粉じん爆発特性を評価し直しておく必要がある。
粉の成分も爆発のしやすさと関係する。
粉じん爆発の原理上、可燃性揮発分が多く含まれている粉ほど、爆発しやすくなる。
その割合は、粉の種類や揮発分の種類によって大きく違ってくるが、文献によると、1~10%以上といったところだ。
一方、水分は燃焼を抑制する効果があるので、多く含まれているほど爆発しにくくなる。
粉などの種類などによって、爆発しにくくなる割合は大きく違ってくる。
目安としては、水分で10~40%以上といったところだ。
とにかく、粒径だけで安全だと考えないで欲しい。
物質の性状によっても決まってくるからだ。
粉を扱うなら、粉の安全性については専門機関できちんと事前に検証しておいて欲しい。
事故が起きてからの後始末にかかる費用よりよっぽど安いはずだ。

2019年04月12日

除害装置の設計能力

除害装置の設計で考えさえられることがある。
設計能力を超えて毒性ガスなどが除害装置に入り込んできて事故になることが多いからだ。
リスクアセスメントが甘かったと言えばそれまでだが、過去にどんな事故事例があるかを知らなければ平均的な設計しかできないだろう。
最悪の事態のリスク想定を誤るからだ。
能力を超えてしまう事例で多いのが、毒性ガスの想定で設計していたものが、液化ガスが入り込んできてしまう事例だ。
例えば、塩素ガスを処理するはずのものが、運転などが乱れて液化塩素が除害装置に漏れ混む事例だ。
液化塩素が気化してガス化すれば、その量は膨大となる。
当然処理能力は足りなくなる。安全率を見ていても3倍程度だから、とうてい処理できる量ではない。
もう一つの事例は、毒性ガスを取り扱う装置が複数台あるケースだ。
トラブルが起こるのは、一つだけと思っていたのが同時に全ての装置が緊急停止するなどして
大量の処理すべき塩素などの毒性ガスが除害装置が流れ込むケースだ。
やはり、最悪の事態を想定していないから、事故になるケースだ。
もう一つの事例はこうだ。
トラブルに備え、予備の除害装置を予め用意していたのに事故になるケースだ。
除害装置は、トラブルが起きてもすぐに立ち上げられるものでは無い。
起動には時間がかかる。もたもたしている内に、処理が追いつかず大量の未処理ガスが放出されるケースだ。
それでも、遠隔で操作できるようになっていれば良いのだが全て手動という設備が多いからだ。
大量の毒性ガスが漏れているときは現場には近づけないはずだ。
除害装置は、遠隔で操作でき、しかも自動起動できる設備でありたい。

2019年04月10日

粉塵爆発は二次爆発のが恐ろしい

前回のブログでは、粉塵爆発のメカニズムについて説明した。
粉塵爆発は、粉が引き起こす爆発だが特徴的なことがある。
爆発は、1度だけでは終わらないということだ。
1回目の爆発が小爆発であったとしよう。でも、周囲にたまっている粉があれば、小爆発で粉が更に広範囲に吹き飛ばされる。
当然そこに、また着火するからより広範囲に爆発し規模の大きな爆発を起こす。
さらにその爆発が、又周囲にある粉を巻き込んで更なる爆発が起こる。
過去の多くの事故報告書には、2次爆発などのことが書かれている。
現場の状況を確認すると、配管の上などに清掃されない粉がかなりたまっていたという記述が沢山ある。
粉を取り扱う職場は、いかに清掃が大事かである。
定期的に周囲に積もった粉を取り除いておけば、2次爆発は避けられるか可能性がある。
もう一つは、装置の設計段階からの配慮が欠けていることだ。
天井裏を通している配管などは、清掃がしづらいはずだ。
特に、天井裏と配管との間の間隔が狭ければ清掃も容易ではない。
詰まり掃除がしやすい装置設計をしておく必要がある。
以下に粉塵爆発の事故報告書を3件紹介しておくのでぜひ読んでみてほしい。
多くの教訓と再発防止策が書かれている。
http://www.idemitsu.co.jp/topics/2018/180619_2.html
http://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/document/news/20181120fuji7.pdf
http://www.jniosh.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2017_02.pdf#zoom=100

2019年04月08日

粉塵爆発とは

粉塵爆発については、このブログで何度も書いてきた。約1ヶ月前の3月3にも粉塵爆発のブログを書いた。
ガス爆発は知られていても、案外粉塵爆発は知られていない。
ガス爆発は、可燃性の気体が爆発することだ。
可燃性気体と空気が混ざると、気体は燃焼する。
安定的に燃焼なら良いのだが、可燃性気体と空気の比率がある一定の割合になると、爆発混合気という危険なガスができる。
これに火がつくと、爆発という現象が起こる。
粉塵爆発は、爆発する物質が気体ではなく可燃性の粉塵だと言うことである。
つまり、燃える粉であれば粉塵爆発を起こす可能性がある。
では、そのメカニズムについて説明します。
まずは雲状に粉が舞っているところに何かの着火源で火がつくとします。
その着火源のまわりにある粉に熱が伝わって、それらの周囲にある粉も加熱されます。
次に、その加熱された粉から可燃性ガスが発生してきます。
今度は、そのガスに火がついて燃えます。
そして、そのガスが燃えた時の熱によって、さらに隣にある粉が連鎖的に加熱され、可燃性ガスが大量に発生して、燃え始めます。
こういった具合に、次から次へと粉がガス化し燃焼していく急激な連鎖反応が起きる、これが粉じん爆発が起きるメカニズムです。
したがって、粉じん爆発を起こしやすい粉とは、①可燃性であり、②熱が伝わりやすく、③ガス化しやすい、④あるいは可燃性の揮発分を多く含んでいる粉、ということになります。可燃性の粉が飛散して高濃度の粉じん雲が形成され、かつ、その粉じん雲に着火させるだけのエネルギーを持つ着火源が付近に発生すれば、粉じん爆発が起こります。
粉じん爆発は、可燃性の粉であれば、それが何であれ、起こる可能性があり、たとえば普段、家庭で使っている小麦粉も、一見、爆発とは無縁なようですが、火がつけば、爆発することがあります。
金属は燃えないから、粉塵爆発は起こらないと考えていませんか。
金属も粉のような状態なら火がつけば燃え始めます。
アルミニュームのような粉は粉塵爆発を何度も起こしています。
粉を扱うなら粉塵爆発にも関心を持って下さい。

2019年04月06日

リスク管理は難しい

リスクを管理するときに、危険源が顕在化する頻度を考慮する。
例えば、数ヶ月ごとに起こるのか、数年ごとに起こるのか、数十年に一度起こるのかだ。
更に被害の大きさを考慮してリスク管理では考える。
化学プラントであれば、大きな爆発を頻繁に起こすようでは困る。
地震に対しても対策は行ってきている。
では、原発はどうであろう。
従来、原発のような最重要設備は、100年に一度の地震にでも耐えられるというキーワードで造られてきた。
最近100年で日本周辺で起きた地震のマグニチュードは、最大で8.2が2回、次が8.1で、これも2回だという。
ところが、2011年の東北大震災の地震規模は、マグニチュード9レベルだ。
これと同じ規模の地震は、869年に起きた「貞観地震」とよく似ているとの記事もある。
つまり、1000年前の地震が原発の悲劇を引き起こした。
1000年に一度、起きるか起きないかといった規模の大地震だった。
専門家が、まさか起きることはないだろうと思っていた地震が起きてしまった。
とはいえ、地球レベルで見て見ると、M9レベルの地震はおきている。
1900年以降、今回を上回る地震は、チリの9.5とアラスカの9.2が存在する。
日本という視点で見るのではなく、地球規模で見れば100年間でM9レベルの地震は起こると言うことだ。
リスク管理は本当に難しい。想定を厳しくすればするほどコストが嵩んでしまう。
隕石が落ちてくることも想定すべきリスクの一つだが、そこまで想定に入れているのだろうか。
どこで折り合いをつければいいのか?
やはり原発のような設備は、1000年に1度の地震にも耐えられるものが求められるだろう。
経営者に全て判断をゆだねてはいけない。
安全に関する専門知識を持ち、また現場にも精通している人が、リスクをしっかりと責任を持ち判断することだ。
天災などの外乱にが原因で事故を起こさない為には、自分の人生の何倍も何十倍も前までさかのぼって過去の事例を調べてみることだ。
安全を担当する人に、今まで大丈夫だったは通用しない。

2019年04月04日

消防博物館のホームページがリニューアル

消防博物館のホームページがリニューアルしていた。
リニューアルはいいことなのだが、今までの情報が削除されてしまうことがある。
消防博物館のホームページには、事故関係の記事が多く掲載されていた。
火災・事故防止に資する防災情報データベースというものがあった。百数十件あったと思う。
今回、調べてみたら今までとは違う別の場所に保存されていた。
http://www.bousaihaku-smart.com/firedb/
過去のデーターが全数あるのかと調べてみたら1/3程度は呼び出せなかった。
2019年度中には、新ホームページに移行とは書かれているが呼び出せなくなったものが見れるようになるのかはわからない。
興味のある方は、できるだけ早めに一度覗いてみるのが良い。
ホームページに記載されている情報は、次から次へと更新されて無くなることも多いからだ。
写真やイラストも有りわかりやすい情報だ。

2019年04月03日

年度替わりも変更管理のキーワードだ

今日から年度が替わる。新しい元号も発表されるという。
年度が替われば色々な変化が起こる。
新入社員が新しく入ってくる。
人の移動も沢山あるはずだ。
企業のニュース欄を見て見ると、幹部クラスの移動の情報が沢山掲載されている。
人に技術有りだから、人が移動していなくなってしまえばその技術も消滅する。
うまく技術伝承されていれば良いが、技術は自然に伝わるものでは無い。
昔なら、職場に人が沢山いて自然に時間をかけて引き継がれていった。
しかし、省人化が進む昨今ではそうはいかない。
移動に伴う引き継ぎも、時間が無いからどんどん簡略化されているのではないだろうか。
化学プラントの管理者の移動に当たっては、担当していた設備の設計思想はきちんと引き継いで欲しい。
設備には弱点があるはずだ。事故は設備の弱いところで起こる。
設備の弱点も伝えて欲しい。
設備だけではなく、部下となる人の特性も伝えて欲しい。
人にも、個人個人弱いところもある。当然強いところもある。
個人個人の弱みと強みも伝えて欲しい。
人と設備の両方がバランス良く機能して化学プラントなどは成り立っている。
年度替わりは、色々な変化があるはずだ。
変更管理を怠らないで欲しい。

2019年04月01日

隠れブログの紹介

インターネットでは、ブログというもので色々な情報が発信されている。
今現在、日々書き込まれているブログならインターネットで検索してすぐにヒットする。
ところが、昔は書かれていたもので今ではもう更新されていないブログは、インターネットで検索してもヒットする確率は低い。
昔書かれていたブログの中には、参考となる情報も多い。
先日たまたま、ある情報を検索していたとき、今は更新されていないブログを見つけた。
2010年頃から数年間運用していたらしい。
千葉県のコンビナートの化学会社に勤めていた人が運用していたようだ。
当時の事故情報などが、数多く書かれている。
記載されているネットで収集した事故情報も参考になるのだが、個人の安全に関する思いや教訓が数多く書かれているのはありがたい。
事故を取り扱う時に、事故の事実が最も大切なわけではない。事故をどう考え、教訓を引き出すかである。
このブログでは、ブログを書いている人のコメントも数多くある。
下記のURLだが、なかなかつながりにくいかもしれないが何回かやるとつながるはずだ。
http://lvingii.seesaa.net/archives/20120503-1.html
接続できなければ、何回か試して欲しい。数回やれば接続できた。
興味のある方は見て見て欲しい。

2019年03月31日

溶接の歴史

溶接というのがいつから始まったかと考えたことがあるだろうか。
現代では、金属と金属を接続するのに当たり前のように使われているのが溶接だ。
固い金属を、つなぎ合わせることは容易なことではない。
今から半世紀前に東京タワーを造るときには、溶接は使われていない。
リベットというピンのような部品を使って、金属をつなぎ合わせていた。
溶接は、金属を溶かしてつなぎ合わせる方法だ。
接合する部分を、高温にして金属を溶かし互いの金属部をつなげてしまう手法だ。
当たり前のような技術だが、この金属溶かすタイミングや温度の調整が難しい。
金属には、焼き鈍しや、焼き入れなどという手法がある。
温度をうまく調整して、金属を固くしたり、柔らかくする手法だ。
金属は、温度をうまく調整すれば、固くすることもできるし、柔らかくすることもできる。
固ければ良いかというとそうでは無い。割れが起きやすくなる。つまりひび割れしやすいのだ
柔らかいといいのではあるが、程度問題だ。
化学プラントで問題となるのは、溶接の失敗で金属が固くなることだ。
固くなるとどうしても、ひび割れが起こりやすい。
長いこと装置を使っていると、金属にひびが入りそこから可燃物が流れ火災につながる。
溶接にも高度な技術がいる。溶接に失敗して何度もやり直しを行えば、金属が固くなり割れが生じやすくなる。
たかが溶接と思わないで欲しい。
溶接は職人芸だ。 化学プラントの、高温高圧部は腕の良い溶接士を使って欲しい。
技術の無い溶接技術者を使えば何十年後に事故となって表れる。
最近ネットを見ていたら、溶接に関するWEBページがあったので紹介しておく
https://www.sanpo-pub.co.jp/library/history/

2019年03月30日

蒸気雲爆発

蒸気雲爆発という言葉を知っているだろうか。
爆発の一つであるが、巨大な爆発力を持つ。
可燃性の液体が漏れて、気化すれば可燃性蒸気がたちこめる。
白い霧のような蒸気の雲ができる。これを蒸気雲と呼んでいる。
この可燃性の蒸気に、火がつき大爆発を起こすことを「蒸気雲爆発」と呼んでいる。
日本でも、東北大震災の時千葉県にある石油会社でタンク事故が起きた時に蒸気雲爆発が起こっている。
2011年3月の出来事だ。下記のURLに情報がある。
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2011.html
爆発のエネルギ-は巨大だ。近くに人がいれば、大惨事になる。
日本の事故では、爆発前に人を逃がしたことで人的被害は最小限に抑えられた。
それでも、炎を直接見た人は目に障害を負っている。
数日前、中国で石油化学工場の爆発事故が起こったとの報道がでていた。
ニュースで報道された状況を見ると、この蒸気雲爆発に類似している。
漏れた可燃物から蒸気雲が発生していたのでは無いだろうか。
詳しいことはわからないが、蒸気雲爆発に類似している。
蒸気雲爆発は過去にも、幾度となく起きている。
知っておいて欲しい、物質危険性だ。
http://sache.org/beacon/files/2011/01/ja/read/2011-01-Beacon-Japanese-s.pdf
工場で可燃物が漏れ白い蒸気が立ち込み始めたら現場から逃げて欲しい。
白い蒸気のようなものをみたら逃げることだ。

2019年03月23日

設備の老朽化と事故

日本で経済が急激に発展し始めたのは、1960年代だ。
この頃、日本では大型インフラ産業である製鉄所や製油所が造られた。
これらの、インフラ設備も手直ししながら使ってきたが、建設後約40年目に当たる2000年代から大きな事故が起き始めた。
2003年8月にエクソンモービル名古屋油槽所で火災が起きている。
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
老朽化したタンクの開放準備中の火災だ。6名の死亡事故だ。省人化が進む中での事故だ。
その翌月には、名古屋である製鉄所でガスタンクの事故が起きている。
1960年代に造られたタンクの老朽化が原因だ。
技術革新の激しい、業態であれば設備は10年も使えばお払い箱になる。つまり、老朽化という問題は起こらない。
設備は、次から次へと新しくなるからだ。
ところが、石油や鉄鋼などは技術的には確立された産業であるから設備は長く使える。
設備は、しっかりと維持管理すれば長く使うこともできる。
しかし、日本では1989年にバブルが崩壊し企業にお金が無くなってしまう状況が発生した。
この結果、老朽化が進むものの、補修費削減る一方で設備にお金はかけられなかった。
コストダウンにむけて、省力化、合理化、人員削減などが急速に進んでいった。
つまり、老朽化に歯止めがかからなくなったのだ。
結果として、設備の管理もおろそかになり大きな事故が起きた。
2003年に厚生労働省から出された通達がある。
http://www.joshrc.org/~open/files/20031225-001.pdf
当時の重大事故の背景がわかる。

2019年03月17日

小冊子Safty&tomorrow

消防関係の組織である、危険物保安技術協会という組織が出している情報誌だ。
危険物保安技術協会は、昭和51年にできた組織だ。
この組織の沿革を見ると、昭和49年の水島タンク漏洩事故を受け、タンクの開放検査が義務ずけられたことに関連している。
それまでは、タンクは法令で一定期間ごとに開放検査は義務付けられてはいなかった。
このタンクの検査業務などを担当する組織として、危険物保安技術協会が設立されたようだ。
危険物保安技術協会 http://www.khk-syoubou.or.jp/
従って、この協会はタンク関連について豊富な情報を持っている。
さらに、消防法が規制根拠となるので消防と関係のつながりが強いようだ。
従って、消防関連の事故や災害については過去多くの情報を提供してきてくれている。
その情報提供の一翼を担っているのがこの、雑誌Safty&tomorrowだ。
いままでは、協会の会員のみしか読むことはできなかったが、最近ホームページで最近のものは読めることがわかった。
消防関係の情報を得るには非常に良い書籍である。
電子情報としてみることがでる。
興味のある方は一度見て見るとよい。
このURLから見ることが出来る
http://www.khk-syoubou.or.jp/guide/magazine.html
情報公開に感謝したい

2019年03月14日

ホースの使い方を誤って起こる事故も多い

現場で使うホースの、耐熱温度を考えているだろうか
価格の安いビニルホースなら耐熱性は-20~60度だ
庭の散水には適するが、化学工場で少し温度のある流体に使うには頼りない。
ビニルホ-スを安易に使って現場で労働災害などが沢山起きている。
ビニールホースは熱を加えれば柔らかくなる。
ホースをいくらきつく縛っていても、熱を加えて柔らかくなれば縛って固定している部分が簡単に外れてしまう。
そこから、熱水が噴き出してやけどをしてしまうパターンの労災が実に多い。
もう一つの原因は、流す液体がビニルホ-スなどに適合していない事例だ。
物質によってはビニル材質そのものを温度を加えなくても柔らかくさせてしまう性質の物質があり、注意が必要だ。
酸やアルカリなどの化学物質に耐えるためには、ケミカルホースと呼ばれるホースの使用が必要だ。
化学物質を流すなら、流体にあったホースの選定が必要になる。

市販の蒸気用ゴムホースなら 120~170度で使えるが、断続仕様で 150度程度だ
高圧の蒸気には使えない。温度が高くなりすぎるからだ
それでも長く使うと、ひびが入り危険だ
シリコン製ホースなら200度迄使える
但し、値段が高くなる
温度の条件とあわせて、もう一つ注意が必要だ。
曲げて使わないことだ
ホースは曲げに弱い。
曲げ半径というものが定められている。必ずカタログを見て欲しい。
曲げ半径の数値を超えて曲げると、極端に寿命が短くなると考えて欲しい。
使用中裂けることもある。
ホースを使うに当たっては注意して欲しい

2019年03月10日

熱をキーワードにした講演会

発熱が事故につながると言うことはご存じだろう。とはいえ発熱には色々なパターンがある。反応熱というと誰でも事故に関係するとは理解するが、個別の発熱となると案外理解していないのが現状だ。吸着熱などは典型的に事故につながるとは考えていない事例だ。発熱温度が500度近くもなるのだから、誰でも知っていて欲しいのだが現実ほとんど知られていないから繰り返し事故が起こっている。私も、この吸着熱に関心を持ったのは今から15年くらい前だ。下関と言うところにある工場に赴任していたとき吸着性物質を取り扱うプラントを担当していた。発熱があるとは聞いていたがたいしたことは無いと思っていた。あるとき吸着性物質は産地によりその特性が大きく変わると聞かされた。いわゆる性能が大きく変わるというのだ。最初は吸着性能だと思っていたが、良く聞くと発熱温度がかなり変わると言うことがわかった。さらに聞くととんでもない温度迄上がると言うことがわかったのだ。今回のテーマは、酸化熱なので話を元に戻すと酸化熱も結構な温度になる。数百度にはなるのだ。酸化熱で知っておいて欲しいのは、油の酸化だ。保温剤などに油がしみ込むと酸化されて油の発火点が急激に下がる。油は酸化されると発火点が下がる性質があるからだ。新品に比べ2/3程度の温度まで発火点は下がる。発火点が下がれば、保温材を被った配管などはスチームトレースなどが施工されているからその温度で発火する。スチームなどの温度で酸化された油に火が付くのだ。空気が存在すれば必ず物は酸化される。酸化されるときには酸化熱という熱が発生する。その熱を甘く見ると事故になる。こんな事例がある。定修でタワーのマンホールの開放を行うため、水を流し内部は何回か洗浄された。だいぶきれいになったと思い、マンホールを開けたところ翌日タワーが真っ赤になっているのが見つかった。タワ内部に有機物が多く残っていたことにより、マンホールから侵入した空気で有機物が酸化され酸化熱でタワーが赤熱状態になっていたという事故だ。空気があれば必ず物質は酸化される。その時必ず酸化熱という熱が発生していることを忘れないで欲しい。
今月末に熱をキーワードにした講演会を企画している
興味のある方は、聞いてみて欲しい
講師の紹介があれば、割り引くという。
セミナー案内と講義内容は以下のURLだ
http://www.gijutu.co.jp/doc/s_903204.htm

2019年03月08日

ウオーターハンマーとは

ウオーターハンマー(スチームハンマー)という現象を知っているだろうか。
流れている流体を、急に停めると衝撃音が出る現象だ。
化学プラントなどでは、配管などに流れている流体を自動弁で急に締め切ってしまうとガーンという音がする。
配管も振動してガンガンガンと衝撃的な音を発する現象だ。
流れている流体は運動エネルギーというものを持っている。
動いている物体は、動き続けようとする性質がある。
それなのに、流れを急に止めれば当然無理が生じる
その結果、流れている配管の異常振動が起こるのだ。
配管が割れてしまうくらい激しい現象でもある。
冷えている配管に蒸気を流し始めると、同様にガンガンガンと異常音が出ることがある。
蒸気の中に水となったドレンの粒がぶつかり合う現象だ。
これもかなりの音がする。
言葉で書いてもなかなか理解が難しいので、このURLを見て欲しい
動画で、ウオーターハンマー現象が見れるので参考になる
https://www.tlv.com/ja/steam-info/steam-theory/steam-trouble/0902water-hammer1/
実際の化学プラントで起こるウオーターハンマーはとんでもない音がする。
蒸気配管のバルブを少しずつ開け始めると、この現象が起こってくるのだ。
バルブはゆっくり開けろと言われるのも納得できる。
少しずつ開けていかないととんでもないことになる。

 

 

2019年03月06日

なぜ事故が起こるのか

このブログを始めた最初のブログ(2015年12月23日)で、なぜ化学プラントで事故が起こるのかを書いた。
事故や災害を考える時に、なぜ事故が起こるのかをきちんと理解していないと事故は防げ無い。
事故はやみくもに起こるわけではない。
種もしかけもある。
何も知識がないのに、事故を防ごうと思ってもそれは無理だ。
最近感じるのは、安全担当に任命されるものの何も知識を持たないのにその役職に就く人が多いことだ。
特に4月の人事異動で多い。
安全に関して見て見ると、昔は安全担当部門という組織があったもののの今は、人事や総務の担当が兼務する企業が多い。
とにかく、安全担当になったならその道のプロの講習会などに参加してみることだ。
化学プラントの安全担当になったら、化学プラントに存在する危険源は何かをまず考えてみることです。
危険源は沢山ありますが.体系的に分けると4つです。
①物質危険性 ②人 ③設備 ④外乱や天災です
でも言葉だけでは、わからにことは沢山あります
口頭でその道のプロに話を聞くことです。
百聞は一見にしかずですhttp://handa.jpn.org/1/posts/post.html

2019年03月04日

粉塵爆発の着火エネルギーは大きいから大丈夫と思わないで欲しい

最近粉塵爆発の報道を目にすることが多い。
危険な化学物質を取り扱う場合、ガスか液で取り扱うことが多いからガスや液の爆発は報道件数も多い
粉を取り扱うケースは少ないのだから、当然粉塵爆発などの報道件数は少ない。
しかし、少ないからといって粉塵爆発を甘く見てはいけない。
ひとたび事故が起こると、大きな事故にもなる.被災者の数も二桁になることもある。
先日、あるところでなぜ事故が起こるのかの講義をした後こんな質問があった。
粉塵爆発の方が、着火エネルギーは少ないのですよねと言う質問だ。
裏を返すと、爆発しにくいのではないかと考えていることだ。
たしかに、粉塵爆発とガス爆発の着火エネルギを比較すると、粉塵のが着火に要するエネルギは大きい。
数値の上では、粉塵に火をつけるのには約10倍のエネルギーを必要とする。
だからといって、爆発が起きないわけではない。
単純に、数値上で火が付きにくいと思い込まないで欲しい。
条件が変われば、着火させるエネルギーの数値は変わってくる。
粉の大きさが小さくなればなるほど着火エネルギーは小さくなるから簡単に着火する。
粉塵の濃度も変われば、着火に必要なエネルギーの数値も変わってくる。
粉塵爆発がおこればその被害は、ガス爆発より甚大となることがある。
粉を取り扱う場合は作業をしている人と粉との距離が近いことが多く、ひとたび爆発すれば大きな人災となるからだ。
粉塵爆発はあまり報道されることがないので、事故は起こらないという誤解があるがそれは間違いだ。
粉塵爆発はちょっとしたエネルギーでも着火爆発する事故だと思って欲しい。
燃焼の三要素が成り立てば、燃えるか爆発する。
燃える粉が存在して、マンホールなどから空気が入り、わずかなエネルギーが存在すればいいのだ。
粉を取り扱っている人は、粉塵爆発に関する私の過去のブログの日付を書いておくのでそちらも一度目を通して欲しい。
2019/2/21,2018/12/2,2018/11/18,2018/10/27,2017/12/2,2017/8/11日だ。

2019年03月03日

事故事例セミナーに行ってきました

危険物保安技術協会が毎年実施している事故事例セミナーに昨日行ってきた。
この団体は、消防関係の団体で毎年2月か3月に消防が関与した事故について数件紹介がある。
講師は、事故を起こした企業か、事故時に関与した地元の消防の消防関係者だ。
直接事故の情報をかなり詳しく持っていることから、事故の原因のみならず事故の本質も知ることができる。
1993年から始まったセミナーで、今年で第28回目となる。
2010年代に入ってからこのセミナ-をたびたび聞くようにしている。
午後から半日のセミナーで、費用も1万円以下だ。
東京で受講したが大阪でも開催しているので興味のある方は参加してみると良い。
今年は、4件の事故紹介があった。
興味を引いたのが、ポンプの締切運転での事故だ。あっという間に数百度まで温度が上がるというのには驚いた。
もう一つは、ホースの使い方だ。曲げて使うと、極単位強度が弱くなると言うことだ。
毎回本当に参考になる。時間があれば是非参加してみるとよい。
以下のURLで詳細を知ることができる。
http://www.khk-syoubou.or.jp/seminar/2.html

2019年03月02日

二人作業で起こる労働災害

二人作業だから安全と思っていないだろうか。二人故に起こる災害もある。
うすときねを用いて餅をつくときに二人の呼吸が合わなければケガをしてしまうことは想像できるだろう。
工場や製造現場でも、このように二人が一組になって行う作業もたくさんある。
ボルトの増し締めや、堅いボルトの取り外しなどが該当する。
一人がハンマーを持ち、相方はめがねなどの工具を持ってボルトに工具を当てている所をイメージして欲しい。
ハンマーでたたく人、工具を持つ人が呼吸が合っていれば問題は無い。
ところが、何かのタイミングで無意識に工具をずらすと誤って人の手を打ってしまう労働災害は多い。
この手の災害は、経験不足も多いがお互いに声を掛け合っていなかったことが原因として多い。
二人作業は、お互いの呼吸が合わなければうまくいかない。
声をうまく掛け合うことが大切だ。
もう一つの原因は、リーダーを決めていなかったことだ。
つまりどちらの人が、指揮するかを決めておかないとやはり労働災害が起きる。
二人の年齢がほぼ同じくらいだと、上下関係がはっきりしない。
お互い遠慮して声を掛け合わなかったことがやはり、労働災害になる。
二人作業の事故を防ぐには、まず指揮者を決めておくこと。
どちらが、指示や声を出すのかを決めておくと労働災害は起こりにくい。
二人だけではなく、複数人で仕事をするときは必ずリーダーを決めておくことだ。

2019年02月28日

行き止まり配管

「行き止まり配管」という言葉を知っているだろうか。
HAZOP的には、流れ「無し」がずれのキーワードだ。
流れが無いと安全だと思いがちだが、そうではない。
流れが無い部分は、流速がゼロなのだから汚れや残渣が溜まりやすいという傾向がある。
腐食性の物質が溜まれば、配管に穴が開く。
爆発性の物質が溜まれば、蓄積して高濃度になれば爆発することもある。
「行き止まり配管」という言葉が使われるようになったのは1980年代だ。
1982年3月31日に鹿島にある製油所で爆発が起きた。この事故では5人の命が失われている
安全弁の出口側の配管で爆発が起きている。
安全弁の出口配管は、通常安全弁が作動しない限り流れが無い配管だ。
ところが、出口配管を温度の高い別の配管へ戻す設計をしていたため事故が起きたのだ。
流れが無い配管でも、温度差があると、中の流体はヒートパイプ現象と行って温度の高い方から低い方へ流れ始める。
つまり、配管内で流動が起こるのだ。
この為、鉄でできた安全弁出口側配管に腐食性物質が入り込み穴が開き可燃物の漏洩により爆発したのだ。
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00056.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057045.html
1989年3月6日には、水島コンビナートにある製油所でやはり行き止まり配管が原因の事故が起きている。
配管改造をした際、流れにくい部分ができてしまったのが原因だ。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000003.html
改造工事における変更管理の失敗事例でもある。
近年、長期連続運転ができるようになってきている。
スタートアップにしか使わない配管も行き止まり配管だと考えて欲しい。
そんなところに腐食性のスケールが長期間たまっていればやはり突然穴が空いて事故になる。
行き止まり配管がどこにあるのかを把握してしっかりと管理をして欲しい。

2019年02月26日

残渣というものを甘く見るな

残渣とは、油かすのようなものを言う。
化学工場であれば、タンクの底に溜まったりする油かすだ。
この残渣が原因で多くの事故が起きているが余り知られていないのが実情だ。
残渣という言葉から連想するのは、残りかすでそれほど危ないものではないと思うのだろう。
ところが、残渣が原因で起こっている重大事故は沢山ある。
残渣は「詰まったり」する。これが事故の引き金になる。
残渣が原因でバルブなどが詰まると、液が抜き出せなくなる。
針金などでバルブをつついていて、突然液が噴き出し事故になるケースは多い。
次に残渣は、残渣の中にガス分が含まれていることで起こる事故事例も多い。
タンクなどに溜まった残渣を取り除く作業で起こる事故のパターンだ。
作業を始める前にタンク内をガス検しても、ガスは存在しない。
それで、簡単に工事の許可が出る。
ところが、残渣をスコップなどで取り出す作業を始めると残渣の中に隠れていた可燃性ガス分などが出てくる。
それに気づかず、作業を進めていると突然残渣が着火する事故だ。
逃げ遅れて大やけどをして死亡する事故が昔から起きている。
もう一つの事故のパターンは、残渣の自然発火だ。
残渣というものは混合物だ。発火点の低いものから高いものまで色々な物質が混在している。
残渣は油の固まりだから、固まりの中で発熱する物質があれば蓄熱する。
しばらくすると、発火点の低い物質に火がつき火災となるのだ。
こんな事故もあるので参考にして欲しい
反応副生物が蒸留残渣に蓄積して爆発した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000093.html

2019年02月22日

ダクト火災

ダクト火災については,2018/11/30日と2016/8/1のブログでも紹介した。
今回こんなダクト爆発事故があるのを知ったので紹介しておく。
結論から言うと粉塵爆発だ。
まずはインターネットの記事を見て欲しい。
https://www.sankei.com/affairs/news/170219/afr1702190009-n1.html
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG18H1C_Y7A210C1CC0000/
当初の報道では、爆発したとの情報だけだったが、その後企業の発表した情報では排気ダクトが爆発と言うことがわかった
企業が発表している事故の中間報告では、推定原因が書かれている
ダクト内に溜まって付着していたアルミの粉を含む固まりが、当日の強風であおられた。
次に、その固まりがダクト内にある排気ファンの所に落ちて砕かれ粉状になった。
何らかの着火源で、着火し粉塵爆発となったということだ。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6469/tdnet/1458748/00.pdf
最終報告書が企業から出されているが、着火源は特定できなかったという。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6469/tdnet/1633272/00.pdf
最終報告書には、着火源の推定が3つ書かれている。
対策が書かれている
① 塗料乾固物と排気ファン衝突衝撃による着火
② 塗装ブース内非防爆非防塵リミットスイッチ内における着火
③ 排気ファン破損によるケーシングとの摩擦発熱による着火
対策も書かれているが、以下の記述は参考になる
(1)塗料乾固物の堆積/落下防止
① 水カーテン方式ブースの採用
② 排気ダクト点検、清掃の容易化

ダクト事故防止の基本はとにかく、ダクト内を容易に点検できる構造で設計することだ
その上で、定期的に点検して内部に付着物を残さないことだ

2019年02月21日

PSM(プロセスセーフテイマネージメント)

2019/2/7のブログでリスクマネージメントの話をした。要約するとこんな内容だ。
宇宙や原子力が発達し始めたのは1950年代だ。航空機産業も飛躍的に発達した。
ひとたび事故が起これば、とんでもない影響を及ぼすような時代になってきた。
海外では、イタリアのセベソで大きな事故が起きている。猛毒のダイオキシンが漏れ出した事故だ。
1980年代になると、世界では巨大事故が多発した。
インドのボパールの事故。スイスバーゼルの事故だ。
この時代から、大量に化学物質などが漏れ出すことを食い止めるリスクマネージメントという概念が進展した。
このように海外では、1970-1980 年代に化学プラントで発生した一連の重大事故の調査によって「マネジメントシステム」が多くの事故の根本原因であることが認識されるようになった。
その後、欧米を中心にプロセス安全管理PSM (Process SafetyManagement)の仕組みが導入され、1990 年代に入ってからは、事故の減少傾向がみられる。
この流れは、日本にも当然影響を与えた。
2005年3月には高圧ガス認定制度の法改正を行っている。
高圧ガスの認定事業者制度で、このPSM的な概念の導入を行っている。
保安管理システムの導入を要求している。
この法改正で、危険源の特定が要求されるようになり各企業でHAZOPの導入が進んだ。
事故の未然防止をする仕組みを企業に要求してきている。
2010年頃より学会、エンジニアリング会社や企業のHSE部門から国際的に普及しているプロセス安全管理またはPSM という用語を聞くようになってきた。
この、PSMが出来上がってくる一連の流れを書いた文献を見つけたので紹介しておく。
わかりやすい文章で書かれているので、興味のある方は見て欲しい
http://www.osakasys.com/Library_Files/keiso_201404_PSM.pdf

2019年02月15日

小型発電機による酸欠事故

この時期に増えてくるのが。電気を取り出すために使う小型の発電機による酸欠事故だ。
排気ガスによる一酸化炭素中毒だ。
発電機を密閉空間で使えば排気ガスがでる。
長時間締め切った空間で発電機を使っていれば、一酸化炭素中毒となる。
この種の事故は、繰り返し報道されているが絶えることは無い。
冬場は寒いので作業現場は、扉は閉められることが多い。
電気溶接などのを行おうとすれば電気がいる。
発電機を動かすことになる。
発電機は、ガソリンなどの燃料を使用した小型の発電機が現場で多く使われる。
屋外で発電機を使うなら何ら問題は無いが、ケーブルの長さが十分でないと
屋内で発電機を使うことになる。
屋外であれば、排気ガスは室内にこもる。
時間が経てば、一酸化炭素が充満する。
知らないうちに意識を失い酸欠事故になる。
こんな事故が繰り返し起こされている。
厚生労働省の事故情報にもこんな事故がある
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101518
一酸化炭素中毒には気おつけて欲しい

2019年02月13日

体験型HAZOP

HAZOPというリスク評価手法がある。日本では1980年代から導入されたものだ。
近年リスクという言葉がすごく使われてきている。
HAZOPも着目されるようになったのは高圧ガス認定制度だ。
このお墨付きをもらうと、化学プラントは定修機関を大幅に延長できる。
通常化学プラントは、1年間動かした停めて検査を受けることになっていた。
ところが、1980年代台から、安全体制の整った化学工場は2年又は4年連続運転できる制度が導入された。
いわゆる自称保安という制度だ。
高度な安全体制が整った企業にはインセンテイブを与えようという制度だ。
1990年代からは、アメリカのPSMなる概念が日本でも浸透してきた。
システマチックに安全を確保しようという概念だ。
運転マニュアルの整備、社員への教育訓練、安全性の評価など安全を統合的に構築しようとする機運が生まれてきた。
この波にあわせ、高圧ガスの認定制度でも、潜在的な危険源を評価して対策を打つことが求められるようになった。
当然、潜在危険源を評価するにはHAZOPなどを使うことが求められてきた。
HAZOPはずれをキーワードにしてプラントの危険性を解析する手法だ。
ずれをいうシンプルな要因を使うわけだが、危険源を知り尽くしていないとそれを確実に実施するのは難しい。
先日、入社2年目の将来の幹部候補生にこのHAZOPを教えてきた。
単純な座学では無理なので、体験演習手法を使ってみた。
2日間の研修だったが、体験させることでかなりの効果があったとおもう。
やはり、HAZOPは体験しながら学習するに限る。
座学だけでマスターするには難しい。

2019年02月12日

内部浮き蓋式タンク事故

貯蔵タンクについて考えてみたい
原料や製品を貯蔵するには、コーンルーフタンクというタンクが多く使われている。
可燃物を取り扱うなら、タンク内にできる爆発混合気を考えて窒素シールを行うことになる。
1970年以前はこの窒素シールが一般的で無かったことにより多くの事故が起きた。
窒素でタンク内をシールするのは安全上非常に有効な手段である。
しかし、その後省エネということが多くの企業で行われるようになった。
窒素ガスは、瓦斯の単価はかなり高い。タンクの中に入れたガスは、当然可燃性ガスに同伴して大気に出ていくことになる。
それでは、かなりの無駄が出る。
その後、巨大な可燃物を貯蔵するタンクでは浮き屋根式というタンクが使われるようになる。
タンクの屋根は固定式ではなく、浮きのようにタンクの屋根が浮き沈むする方式だ。
窒素をタンク内に入れなくてもタンクを密閉できる方式だ。
更にその後、内部浮き屋根式タンクというのが開発された。
コーンルーフランクのような形はしているものの、内部に更に浮き屋根があり、可燃物の蒸発損失を防ぐ形態のタンクだ。
構造は少し複雑になるが、蒸発損失を防ぐことが出来、企業にとっては大いにメリットがある。
日本では、2002年11月23日にこのインナーフロートタンクで事故が起きている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0300007.html
インナーフロートタンクでは事故は起きないと考えられていたが事故は起きた
その後事故の再発防止で対策は取られている。
最近、bこのインナーフロート付きタンクの事故事例を見つけたので紹介しておく
以下のURLだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/47/4/47_218/_pdf/-char/ja

2019年02月11日

リスクマネージメントの大切さ

リスクという言葉が出てきたのはいつ頃からだろうか。
宇宙や原子力が発達し始めたのは1950年代だ。航空機産業も飛躍的に発達した。
ひとたび事故が起これば、とんでもない影響を及ぼすような時代になってきた。
世界では、事故を防ぐために事前に安全性を評価するシステムが作られ始めた。
日本では1960年代に高度経済成長という時代が来た。ものは作れば飛ぶように売れた。
結果として、大量生産が始まった。
化学企業は、大型の設備を作り始めた。
この結果、1970年代には人が設備についていけなくて事故が多発した。
海外では、イタリアのセベソで大きな事故が起きている。猛毒のダイオキシンが漏れ出した事故だ。
1980年代になると、世界では巨大事故が多発した。
インドのボパールの事故。スイスバーゼルの事故だ。
この時代から、大量に化学物質などが漏れ出すことを食い止めるリスクマネージメントという概念が進展した。
このように海外では、1970-1980 年代に化学プラントで発生した一連の重大事故の調査によって「マネジメントシステム」が多くの事故の根本原因であることが認識されるようになった。
その後、欧米を中心にプロセス安全管理PSM (Process SafetyManagement)の仕組みが導入され、1990 年代に入ってからは、事故の減少傾向がみられる。
この流れは、日本にも当然影響を与えた。
2005年3月には高圧ガス認定制度の法改正を行っている。
高圧ガスの認定事業者制度で、このPSM的な概念の導入を行っている。
保安管理システムの導入を要求している。
この法改正で、危険源の特定が要求されるようになり各企業でHAZOPの導入が進んだ。
事故の未然防止をする仕組みを企業に要求してきている。
2010年頃より学会、エンジニアリング会社や企業のHSE部門から国際的に普及しているプロセス安全管理またはPSM という用語を聞くようになってきた。
そうは言っても、色々なシステムを導入すれば事故を防げるわけではない。
危険源の特定はHAZOPがベストというわけではない。What-if方なども併用するのが良い。
そうは言っても、やはり、過去の事故事例を知らなければ、どんな手法を使おうと危険源を特定すること難しい。
過去の失敗事例をこつこつと学んで欲しい。
リスク評価の難しい所は誰でもそう簡単に危険源の特定ができるわけではないからだ。

2019年02月07日

体験型研修施設の活用

安全に関する体験型研修を行っている機関や組織を紹介しておく。
中災防 危険体感教育( 安全体感教育)実践セミナー   1日又は半日 茨城県鹿島
http://www.jisha.or.jp/seminar/kyoiku/y7070_taikan.html
京葉コンビナート人材育成講座 2日間 千葉県市原
http://www.ccjc-net.or.jp/~ccji-pj/a1.html
山陽人材育成講座 1~2日間 岡山県倉敷
https://www.sangishin.com/tokucho/
三井化学技術研修センター 1日間 千葉県茂原
http://jp.mitsuichem.com/csr/training/
日鉄住金ビジネスサービス 鹿島 安全体験に関しては老舗だ
http://www.nsb-kashima.nssmc.com/service/training/anzentaikan.html
明電舎
http://www.meidensha.co.jp/products/plant/prod_01/prod_01_01/index.html
コベルコ
https://www.kobelco-hrd.com/mcourse07.php
日立プラントコンストラクション
http://www.hitachi-plant-construction.co.jp/business/support/training/safety_education/index.html
真岡製作所 宇都宮
http://www.mohkamfg.com/safetyschool.html
日立テクノサービス
http://www.hitachi-chem-ts.co.jp/service/safety/menu/index.html
厚生労働者からは危険体感教育の講師用テキストなども公開されている。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/0903-2.html
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/120302.pdf
参考にして欲しい

2019年02月02日

技術伝承 人に技術あり

世の中の進歩は、人から人へと技術が伝承していくから成り立つ。
技術はどこにあるかというと、人の中にある。
人が何かを考え、文字や言葉にしてそれを仲間に話していく。
それを聞いた仲間は、更に考えそれを発展させていく。
技術というものは、そのようにして人から人へと伝承して、技術が次の世代へ移っていく。
技術というものは、全て紙に書き表されているわけではない。
微妙な部分は、なかなか紙や言葉に表せるわけではない。
身振り手振りで表現せざるをえない部分もある。
言葉が全てではない。
言葉以外の手段で技術を伝える努力をして欲しい。
写真やビデオなどの動画を使うことも考えて欲しい。
言葉で全てが伝えられるわけではないからだ。
人は、イメージや直感で理解するものも多い。
言葉以外の方法で技術を伝承して欲しい。
最近は体験型という手法で色々なことを伝えようとする動きもある。
体験型の有効なのは、自分もあたかもその場にいるかのように感じて
すごく感性の高い伝え方ができるからだ。
例えば事故事例の教育をすると多くの人は事故は他人事のように感じる
こんな事故は我が社ではおきない。こんなことは、関係ないと思い込むのだ。
それでは、教育の効果は出ない。
そこで目の前で危険なことを見せたり、危険なことを自ら体験させ、事故は他人事ではないと感じさせるのだ。
技術を伝承すると言うことはすごく難しい。
自然に技術が伝承しているわけではない。
人はものすごく苦労して技術を伝承していると思って欲しい。

2019年02月02日

20年~30年経過すると事故が起こるわけ

事故を起こしていない企業が、20年~30年くらい経つと事故を起こすという話がある。
長い間事故は起こっていなかったのに、企業で事故が起こるのはなぜだろう。
ある文献で、こんなレポートが載っていたので紹介したい。
一つは人の入れ替わりだ。企業で、現役で色々なことをやるのは30代だ。化学プラントであれば、プラントを建設して形あるものを残す。
40代、50代になると実務から離れ管理的な仕事に就く。
つまり、30代に製造設備などを作り込む業務に従事する。
ところが、それから20年~30年経つと定年などで会社を去って行く。
つまり、人に技術ありだから人が去れば設計思想も伝わらなく。
そこで、事故が起こるのだ。
もう一つは、機械の設計寿命だ。
機械設備は、通常10年程度持つように設計する。
そうは言っても、安全率を見て設計する。
JISなどの安全率は数値で3だから、だいたい30年程度は持つような設計となる。
従って、設備はだいたい30年程度はなんとか持ってくれる。
しかし、それを越えてくれば老朽劣化と言うことで事故につながってくる。
設備保全は重要だが、なかなかそれを理解してくれないから事故も起こる。
保全について興味深い本があるのでできれば読んでほしい。
工場はなぜ燃えたのかというタイトルで、丸田敬さんという人が書いている。出版社はエネルギー
フォーラムという会社だ。

2019年01月23日

事故発生時の対応マニュアル

事故というものはいつ何時起こるかわからない。
事故が起きたらどう対応するかは、文書にまとめて対応担当者に常日頃から訓練をしておくことが必要だ。
とはいえ、事故対応マニュアルを作れといってもどんなものを作るかイメ-ジ化は難しい。
和歌山県が以前講評した、マニュアル例があるので紹介しておく。
昔のホームページのURL場所を検索したが既に移動されていたようだ。
色々調べたら
下記のURLから入手できる。
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/032100/prtr/jigyousya/saigaijikotaiou.html
あくまでも一般的なひな形だ。
これをベースに自社の有識者や事故の経験者のコメントを入れ充実したマニュアル作りを試みて欲しい。

2019年01月19日

技術伝承の難しさ

数日前に、腕時計が1分ずれているの気がついた。
電波時計で、狂うはずが無いと思っていたのに狂っていたのだ。
早速、取扱説明書を引っ張り出して調整を始めることにした。
Aボタンを押して、強制受信をさせて現在時間を確認せよ。
基準となる日時が合っているかBボタンを押して確認せよと取扱説明書には書いてあった。
指図道理にやっのだけど、うまく復旧しない。
どんどん深みにはまっていきなんだかおかしな時間をさすようになる。
あとで、落ち着いて取扱説明書を読み直すと、読み違えていたところも有るのに気づく。
何秒以上ボタンを押せとは書いてあるが、その後結果が出るまでどのくらいかかるとは書かれていない。
すぐに結果が出ると思い、何かのボタンを押してしまい結果としてエラーになってしまっていたのだ。
説明書を書いている本人は、十分時計の機能はわかっているからあたり前のことだと思っている。
でも取説を読んでいる人はわからいことだらけなのである。
わかりすぎている人が、文書でちょっとしたことを省略しているからこのようなミスマッチングが起こる。
当たり前という価値観は、全く門外漢の人には適用しない。
特に、始めてトラブルに遭遇した人は当たり前というのは全く想定外の出来事だ。
文章で、人に何かを伝えるのは難しい。
相手のレベルが様々であるときは特に難しい。
私も色々な人に講義をするが、相手の理解度がどのレベルに有るのかを見極めのにかなり注意を払う。
易しすぎても問題がある。難しすぎても当然問題はある。
人に技術を伝えるのは難しいものだ。口だけで伝えられることにも限界はある。
人は、イメージで色々なことを捉えている。
イラストや映像を併用して上手に技術伝承をしてほしい

2019年01月15日

労働災害

労働災害について、毎年定期的に災害の状況について国から報告がある。
業種によって、災害の要因は多少変わってくる。
全産業平均で見ると、死傷病災害で多いのが「転倒」なのだ。
やさしい表現で表せば、転ぶという災害が1番多い。
考えてみれば、昔は四つ足で歩いていのに、いつのまにか不安定な2本足で歩き始めたのが人間だ。
当然、2本足は、四つ足より不安定だから転びやすくなる。
結果として、「転ぶ」という労災が多いのはわかるような気がする。
人間は頭が重い、重心がやはり上の方にあり転びやすい。
職場の中で、突起物や段差を無くしておくことだ。
ちょっとした段差で簡単に人は転ぶ。
数センチも有れば、人が転ぶのには十分だ。
では、製造業という業種に絞っての労働災害のNO1は何かと見て見ると、挟まれ巻き込まれが一番多い。
製造現場には、多くの機械が導入されているから機械に巻き込まれる災害が一番となるのだ。
自分の手を握ったくらいの、モーターの力は一馬力と言われている。
馬一頭分だ。馬一頭は人が4人分に該当する力だ。
拳程度で、そのくらいの力があるのがモーターだ。
工場ではそれより大きなモーターが使われている。
そんな機械に人が巻き込まれればひとたまりはない。
機械を甘く見ないで欲しい。
労働災害は機械との勝負に負けた結果だと思って欲しい。

2019年01月10日

電気設備火災

2年前の今日,2017/1/5に大分の製鉄所で電気室火災が起きている。鎮火まで35時間かかっている。
電気室からのケーブル類にも着火したことで消火に時間がかかっている。
本来なら部分火災ですんだものが、ケーブルの延焼というのが事故を大きくしている。
確か、1980年代ころにケーブルの延焼防止は論議されたが、その後対策が甘くなっているのかも知れ無い。
電気室など密閉した建屋内で火災が起こると消火が難しい。
電気設備には、水がかけられないこともありなおさら消火に手間がかかる。
この事故の1次原因は、高圧盤内の電気基板の故障だ。故障により、リレー呼ばれる部品が異常に作動を繰り返した。
繰り返しの作動によりアークという火花が飛び、近くにあった感電防止用のアクリル板に着火した。
本来なら、難燃性で火がつかないはずだがアクリル板に火が着き、回りに延焼して被害が拡大していった。
詳細は企業の事故報告書を見て欲しい。
http://www.nssmc.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
事故後、アクリル板を難燃性の塩ビ板に替えたという。異常の早期検知に向け、火災警報器を増やしたという。
事故を防ぐには、早期検知が大切だと言うことだ。
操業再開は、その年の8月だった。約7ヶ月も製鉄所の操業が停止した大事故だ。
たかが電気設備と思わないで欲しい。
電気がなければ、工場は動かないからだ。

2019年01月05日

長期の休みで起こる事故

ゴールデンウイーク時の連休、夏季休暇、年末から正月にかけて長い休みの時期がある。
この時期を利用して化学企業などは色々なことをすることがある。
装置を、停めてしまう企業もあれば、運転を継続する企業もある。
装置を停めて、修理や点検をする企業もあるだろう。
長期の休みというリスクは管理が甘くなる。
交代勤務など現場の人は定員があるので、減ることは少ないが、現場の係長や課長などは休みに入る。
つまり管理者がいなくなることにより、管理の密度は減ることになる。
福島県の化学企業で2005年5月11日に起きた事故だ。
連休のため、通常タンク内には反応促進剤は1日しか入れないのに3週間という長期間入れていた。
この為、反応促進剤の活性度は落ちていた。
それに気づかず、連休明け後にスタートを始めた。
運転員は、通常通り原料を反応器に入れて、反応促進剤もいつも通りいれた。
反応を始めたところ、なかなか温度は上がってこず反応は進まなかった。
それでも、運転を継続していたところ突然反応暴走が始まった。
気づいたときには、温度も圧力も異常に上がり安全弁から液が噴き出した。
噴き出した液は空気と混ざり、発火点以上だったため着火爆発したという事故だ。
長期間の休みを考慮せず、反応促進剤をタンクに入れたままにしていたことが引き起こした事故だ。
消防研究所が出している消防研究報告通貫101号の中の26頁にこの事故に関する記載がある。
興味がある方は見て欲しい。
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/houkoku/081-120/files/shoho_101s.pdf
RISCADデーターベースにも情報がある。検索して画面の下の方にフロー図もあるのでそれを見て欲しい。
事故の進展フローがわかるいい資料だ。
https://riscad.aist-riss.jp/acc/6555
長期間の休みを挟む作業には十分注意して欲しい

2018年12月30日

労働災害から読み取れること

来年1月に講演する労働災害の教材を作っている。今までの講義では、労働災害の種類毎に、災害事例と教訓を話していた。
今回は、業種別に労働災害をひもといていくことにした。
研究開発部門、工場などの製造部門、工事部門、物流部門などに分けてみた。
研究部門なら、ガラス器具などの切れ・こすれという災害が多い。
とはいえ、試薬や実験などに危険なガスも使うのだから、物質危険性に関わる労働災害にも着目しておく必要がある。
製造部門は、やはり機械を使う関係上挟まれや巻きこまれという労働災害が多い。
挟まれ巻きこまれは、死亡事故にもなる、重大災害だ。
工事部門となると、墜落災害などが増えてくる。
屋内などで発電機を使っていて酸欠になることなども落としてはならない災害だ。
夏になれば、熱中症など屋外での作業も増えてくる。
物流部門は、輸送中の車両事故だ。屋内であれば、フォークリフトという車両による交通事故が多い。
輸送用のベルトコンベアーなど巻き込まれ事故も重大労災になる。
全産業共通で多いのは、転倒労災だ。いわゆる、転ぶという災害だ。
元々、人類の先祖は四つ足で歩いていた。ところが、ある時点から二本足で歩くようになった。
赤ちゃんのころのよちよち歩きを思い出して欲しい。少しバランスを崩せば倒れてしまう。
人は、二本足で歩いていれば、段差など少しでもバランスを崩す物が存在すれば転倒する。
段差や突起物などは作業現場に沢山ある。だから転倒は、全産業共通のNO1の労働災害となる。
災害というのは、色々な切り口で見ていく必要がある。
災害を起こす本質を知っていくには、常に色々な切り口で物を見ることだ。
多様な見方ができると、事故からの教訓も取り出せるようになる。

2018年12月26日

事故事例セミナーの案内

危険物保安技術協会が実施している事故事例セミナーの案内が出ていたので紹介しておく。
この団体は、消防関係の団体で毎年2月か3月に消防が関与した事故について数件紹介がある。
講師は、事故を起こした企業か、事故時に関与した地元の消防の消防関係者だ。
直接事故の情報をかなり詳しく持っていることから、事故の原因のみならず事故の本質も知ることができる。
1993年から始まったセミナーで、今年で第28回目となる。
2010年代に入ってからこのセミナ-をたびたび聞くようにしている。
午後から半日のセミナーで、費用も1万円以下だ。
東京と大阪で開催しているので興味のある方は参加してみると良い。
以下のURLで詳細を知ることができる。
http://www.khk-syoubou.or.jp/seminar/2.html

2018年12月23日

金属フレキやFRPタンクの更新周期の決め方

講演後の質問で.消耗品であるフレキの更新周期や、FRPなど太陽の光で劣化するタンクの更新周期を決める資料が無く困っているとの質問がある。
ゴムや樹脂製のフレキもあり、金属製もあるので一概にフレキの更新周期は何年と言うわけには行かない。
メーカーの取扱説明書もあるのだろうけど、使用される環境条件も様々なのだろうから、明確な数値は示されていないのだろう。
使用条件の差というのが、くせ者だ。
とはいえ、なにもしなければフレキなどは、劣化していきなり液が噴き出す事故も起こっている。
FRPなどのタンクは、天板に人が乗ったときに、太陽の光で劣化した天板が壊れて人が落下する事故が起きている。
フレキは、基本的に連続的な振動を吸収する設備ではない。
地震のように、急にズレが生じた時に変移を吸収して事故になるのを防ぐのには有効な設備だ。
フレキは、連続的な振動などの変位を吸収してくれる設備ではない。
一過性のたわみには対応してくれるが、常習的な振動を吸収するのは得意ではないのがフレキと思って欲しい。
金属は固いのが利点だ。何回も繰り替えされる振動が金属に加えられると、金属は固いが故にそれに耐えられず壊れてしまう。
ゴムのフレキはどうかというと、時間が経つと太陽の光などで劣化が進む。
フレキを折り曲げて、配管の表面に亀裂ができていればそれは寿命と考えて欲しい。
FRPタンクなどの寿命は.目視では難しい。
FRPタンクの事故事例と劣化診断の情報があるので紹介しておく。
参考にして欲しい
http://www.kotobuki-grp.com/technology/pdf/topics1.pdf
フレキの更新についてはもう少し情報を探してみたい

2018年12月21日

保温材にしみ込んだ油の自然発火

冬になると火災が増える.乾燥して火がつきやすくなるからだ。
化学工場でもこの時期火災には注意が必要だ。
保温材に油がしみ込んで着火し、火災になる事例をご存じだろうか。
保温をした配管の板金などが黒ずんで、油が内部にしみ込んだ形跡があるなら要注意だ。
通常の配管板金なら、汚れや染みなどは無いはずだ。
板金の表面に黒ずんだ油の跡などがあれば、油が保温材の内部にしみ込んだ可能性がある。
しみ込んだ油は、時間の経過とともに周辺の空気で酸化されていく。
酸化されると、酸化熱という熱を発生するので油のしみ込んだ箇所は温度が上がっていく。
更に、油は酸化されると通常の発火点より低い温度で発火するようになる。
例えば通常なら300度位の発火点の油でも、その1/2から2/3程度の低い温度で発火するようになる。
つまり、150~200度程度で自然発火する状態になる。
保温を実施しているところでは、蒸気などで暖めていることも多いので、その蒸気の温度で発火することになる。
SDSなどに書かれている発火点が高いから大丈夫だと思わないで欲しい。
それは、新品の時の話だ。劣化したり、酸化されれば発火点はどんどん下がってくる。
保温材の中は、空気も沢山ある。つまり、燃焼の3要素が成り立つ条件がそろっている。
油という燃える物があり、支燃性ガスである空気が存在する。
発火点は下がっているのだから、酸化された油は自然発火することになる。
工場内で多くの現場で起こっているが、小火程度であれば公開されることは少ないので案外この現象は知られていないというのが実情だ。
以下に公開されている、保温材に油がしみ込んだ事例を紹介しておく。
http://www.japc.co.jp/news/press/2002/pdf/141220a.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00452.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012011.html
保温材の中に油がしみ込むと、火災になると思って欲しい。
現場をパトロールしたときに、配管などの保温材に油の染みがあったら、早めに保温材をはぐって点検して欲しい。
保温材の内部に油がしみ込んでいたらすぐに、撤去して新品にやり替えて欲しい。

2018年12月15日

たかが水と思うな その2

前回たかが水と思うなという話をした。
気密テスト時、水道水を使い事故になった事例を紹介した。
水道水中の塩素が、金属の応力腐食割れにつながった事故だ。
水に関わる事故事例をもう一つ紹介しておく。
「工業用水」を装置の洗浄に使ったことにより起きた事故事例だ。
配管洗浄に使用した工業用水の「塩素濃度が高かった」ことにより、応力腐食割れが起こった事故だ。
事故が起こった製油所の反応器では、定修時に薬液により中和洗浄が行われていた。
薬液による洗浄が終わった後、薬液を洗い流すために工業用水を使っていた。
本来なら、完全に工業用水が抜け出るはずだったが脱液で完全に抜けなかった部分が有り
運転開始後の高温により工業用水中の塩素が濃縮され、応力腐食割れを起こした事例だ。
薬液の希釈に使用した工業用水の塩素濃度が元々20-30PPMと高かった上、脱液に使った工業用水が
完全に抜けきらず系内に残ってしまったのが事故につながった。
工業用水で洗浄した設備は、高温であったことから塩素分で応力腐食割れを起こしてしまった事故だ。
塩素分の高い工業用水を使ったことが要因だが、洗浄時液が抜けない部分が存在していたことも要因だ。
事故後の再発防止に向け、洗浄には純水を使用することにしたという。
ステンレスを使う高温系では、塩素による応力腐食割れには注意して欲しい。
失敗百選に詳細情報があるので見て欲しい
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000162.html
石油連盟などが運営している事故事例情報データーベースにも情報がある
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00053.pdf
たかが水と思わないで欲しい。

2018年12月10日

たかが水と思うな

水という文字を見てたかが水と思う人は多い。
しかし、水という物が原因で色々な事故が起こる。
低温であれば、凍結が原因で事故が起こる。
高温になれば、100度近くで突沸という現象が起こる。
更に温度が上がり、1000度近くにもなると水蒸気爆発という事故を引き起こす。
では、温度では無く水質という点で見て見ると、水の中に入っている塩素が悪いことを引き起こすことがある。
こんな事故事例がある。耐圧気密テストで、水道水を使って破裂板の水張り検査をした。
その後運転を始めて、突然破裂板の部分が応力腐食割れで予期せぬ破裂が起こった事故事例だ。
下記のURLに事故についての詳細情報がある。
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/pe.pdf
原因は、水道水の中に入っていた塩素分が破裂板の金属に影響を与えてしまったからだ。
微量であっても塩素分は応力腐食割れの原因となる。
事故後、水道水を使うのを止め蒸留水にしたという。
たかが水と思わないで欲しい。

2018年12月08日

化学工場の現場で事故が起きたときすべきこと

前回、ノンテクニカルスキルの話をした。
人の持つ情報入手能力、状況判断能力、意志決定能力の善し悪しで現場力が変わってくるという現実がある。
現場で事故が起きたときは、このノンテクニカルスキルの善し悪しがその後の事故対応に関係してくる。
例えば、化学工場という現場で爆発音がしたり炎が見えたりしたらあなたはどう行動するかだ。
現場に近づくのか、それとも別の行動を取るのかだ。
安易に、現場に近づいて多くの人が命を落としている。
化学工場に勤めているなら、常日頃から爆発音を聞いたり火炎を見たりしたら自分はどう行動するのかを常に考えておいて欲しい。
多くの事故事例からの教訓から言えることはこうだ。
一人で行動するなというのが最初のキーワードだ。
すぐに仲間を呼べ。もしくはすぐに仲間に連絡しろだ。
自分の得た情報を、多くの人と共有化せよだ。
最初は、状況がわから無いのだからとにかく連絡して仲間や上司と情報を共有化することだ。
次に、安易に発災場所に近づくなである。
破裂音がしたなら、どこかが破損しているはずである。壊れたところから音も無く可燃性ガスが漏れているかもしれない。
炎が見えていなくても、漏れているガスがどこかの高温部で着火するか、爆発混合気なら爆発することもある。
炎が見えないから安心と思わないで欲しい。急な爆発事例も沢山ある。
特に白い蒸気のような物が漂っていたら、すぐに逃げて欲しい。蒸気雲爆発という、巨大な火の玉ができるような爆発事例もある。
音がするときも要注意だ。きしむような音がしていれば、どこかが高圧となり金属がきしんでいる状態だ。
しばらくして、破裂することもある。無数の金属片が飛び散ることもある。破片に当たればひとたまりも無い。
とにかく、安易に現場に近づかないで欲しい。
現場を見るにせよ、物陰から見ながら計器室へ連絡して欲しい。何かあったら身を守れる場所の確保だ。
しばらく経てば、上司からの指示もあるはずだ。
多くの人と情報が共有化出来てくれば経験のある人がかなり正確性のある考え方で今後の対応策を出してくるはずだ。
一人で勝手に行動しないことだ。
多くの人の知恵を使うことで、最善の事故対応策が出てくる。
自分一人で何とかしようという考え方を持たないで欲しい。

2018年12月06日

ノンテクニカルスキル

ノンテクニカルスキルという言葉がある。

事故を防ぐには、専門的知識だけを知っていれば良いわけではないからだ。
人が持つ固有の能力も向上させておかなければいけないと言われる。
つまり異常に気づく能力。現状をきちんと認識できて解析できる能力。意志決定能力。仲間とのコミュニケーション能力。チームワーク能力。人を束ねるリーダーシップ能力なども大切だというのだ。
最初「ノンテクニカルスキル」という言葉を聞いたとき、何を意味する言葉なのだろうと思った。
色々調べて見て、最近やっとわかってきた。
専門知識は、テクニカルと言う用語だから、専門以外の能力も事故防止には必要だと言うことで、ノンテクニカルスキルなどと言う用語が使われてきているのだ。
最近、ノンテクニカルスキルについてもう少し知りたいと本を探していたら、こんな本が見つかった。
「産業現場のノンテクニカルスキルを学ぶ 事故防止の取り組み」というタイトルの本だ。化学工業日報社が出している。
筆者は、南川 忠男さんというかただ。
自分の職場の現場力を高めたいが、部下の能力をどう引き上げるかと悩んでいる方にお勧めの書籍だ。
興味のある方は一度目を通してみると良い。

2018年12月04日

昨年12月に起きた粉塵爆発の事故報告書が出る

昨年12月富士山の裾野にある富士市で粉塵爆発が起こったのを覚えているだろうか。荒川化学という企業の富士工場だ。
この業界では老舗で、1976年から爆発事故をおこした製品は作っていたという
今回の事故だ、死者2名、重傷2名、軽傷11名の大惨事となった。
しかし、製造を開始してから約40年間大きな事故は無かったという。
事故から約1年が経った、11月20日に、この企業から事故報告書が発行された。
http://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/document/news/20181120fuji7.pdf
事故報告書によると事故はこのようにして起きたという。
印刷インキ用樹脂を製造していた。固形樹脂を粉砕後フレコンと呼ばれる袋に粉状にして投入していたときに内部で静電気による放電が起きたのがきっかけという。袋の中で最初の粉塵爆発は起きた。
これで、収まればこれほどの大事故にはならなかった。
粉塵爆発は怖いのが、最初の爆発が引き金となって次から次へと誘爆していくことだ。
フレコンと投入口は密閉構造では無かった為、炎は、投入口の近くにあった、粉塵除去用のダクトの中に吸い込まれていったようだ。
ダクトの中は清掃していなかったことから、当然粉塵は溜まっていた。
それにも火がつき、ダクト内で大きな粉塵爆発を起こした。
ダクトの出口から出た、爆風は室内のダクトの上などに溜まっていた分字を更に巻き上げ更なる粉塵爆発の連鎖を起こしたようだ。
最後は、室内に保管していた化学薬品に火がつき薬品火災も起こしてあのような大爆発となってしまったと書かれている。
報告書では、企業は粉塵爆発の危険性を感じていなかったとある。
しかし、粉を長年取り扱ってきている企業なのだから粉塵爆発にはかなり注意をしていたはずだ。
1986/4/23日にこの企業で岡山工場でサイロに製品を入れるときに粉塵爆発を起こしている、
事故を一度も経験しなかったわけでは無い。
何十年も大きな事故が無かったいうのが、危険の感受性を落としてしまったのだろう。

事故が起こらないと言うことは良いことなのだが、危険の感受性は落ちていく。
安全成績優秀な企業が危険の感受性を維持して行くことは難しい。

2018年12月02日

排煙ダクト火災

研究所や工場での排煙ダクト内部に溜まった物に火がつき火災になる事例は沢山ある。
煙を排出する装置は、工場であればどこにでも存在する。でも、たかが煙が流れる装置と思っていると事故が起こる。
温度の低い煙なら問題は無いが、だいたい100度を超える煙だと火災などが起きることがある。
煙などを通すところは、排煙ダクトと呼ばれる。そこに、火がつくような燃えかすだとか、粉などが溜まっていることがある。
ダクトも、中の様子を点検できるような設計になっていれば良いが中の様子が見えないものが多い。
排煙ダクトの中を流れるガスも、流速が早ければ、燃えかすや粉なども溜まらないはずであるが余りにダクトが太すぎると流速が遅く色々な物が溜まりやすくなる。設計段階で、ダクト内に物が溜まらないように流速を考慮しておくことが大切だ。
設計段階で、ダクト内を点検や清掃ができるような設計をしておくことが事故のリスクを減らしてくれる。
設計の善し悪しで、事故が起こる確率は大きく変わる。
可燃物が流れるダクトは金属製として欲しい。過去、塩ビなど燃える可能性のある材料を使っていて火事になっている事例も多いからだ。
ダクトの内部点検を、年間の安全管理項目に織り込んでいますか。ダクト内部に、何か燃える物が溜まっていればいつか発火事故になります。
これから、年末の安全確認項目にダクト内の、異物残留点検を織り込んで欲しい。冬場乾燥してくれば、火がつきやすくなります。
ダクト内の滞留物が火災事故につながります。排煙ダクト内の異物点検を考えて下さい。
工場も当然ですが、研究所の排煙ダクトも点検して下さい。研究所の火災事例も沢山発生しています。
実験や研究設備が盲点にならないように安全管理を行って下さい。
冬場は乾燥する季節です。
ダクト火災対策を行って下さい。

2018年11月30日

HAZOPでインターロックの作動不良をどう考えるか

先日、HAZOPの講義をした。その折り。HAZOPでインターロックは作動しないことも想定するのかという質問があった。
この時、質問者には回答はしたが舌足らずなところもあったのでここに私なりの回答を改めて書いてみる。
検討を進める過程では、今あるインターロックは、「正常に作動する」として、それでも爆発や破裂などのHAZARDが発生するのか、しないのかをまず考える。
次は、インターロックの機能が働かない、つまり「作動しない」状況も考えてみる。インターロックを作動させる、要素に着目するのだ。いわゆる、検出端と呼ばれるものだ。
例えば圧力異常を検出して、インターロックを作動させるなら「圧力発信器」の故障だ。液面なら、液面計という検出器の故障だ。
インターロックが作動する場合、通常まず警報が鳴るような設計をしているはずだ。例えば、圧力HIの警報が鳴る。
警報を聞いて、人が対応する。それでも対処し切れなければ圧力HI-HIのアラームが鳴る。それでも圧力が上がれば、自動的にインターロックが作動するような設計がなされているはずだ。
HAZOPで見抜かなければいけないのは、警報を出す圧力計とインターロックを作動させる圧力計が同じ計器になっていないかもだ。
何を言いたいかというと、同じ計器で警報とインターロックを作動させるようにしていれば、計器の故障で警報も、インターロックもどちらもいっぺんに機能を失うことになる。
確実に対処するためには、HI警報用の発信器と、インターロックを作動させる発信器は別々の物になっている必要がある。
警報用の計器と、インターロック用の計器は別々のものにしておかなかったために過去事故が起きているからだ。
インターロックを作動する計器の故障を考えたら、次はインターロックにBY-PASSなどの解除SWがあるか見て欲しい。
運転中にインターロックを解除されてしまえば、インターロックは機能しない。つまり、作動しないことになる。
解除などをする判断基準が明確に決められているか確認して欲しい。
上司の許可を取れば良いなどと言う曖昧な判断は駄目だ。
人が変われば、判断条件が変わる。上司も替わることがある。経験や知識も違う。
解除していい条件など、温度や圧力条件などが数値化されているか確認して欲しい。判断は見えるかが必要だ。
最後は、維持管理だ。計器やインターロック機能の点検周期が明確かを確認しておくことだ。何も点検しなければ、インターロックの故障に気づかないからだ。設備は設置したら終わりでは無い。維持管理もポイントだ。

2018年11月27日

なぜ過去の情報が残っていないのか

安全を担当する人なら誰でも、色々な情報源が欲しいはずだ。私も、日々色々な情報源を探している。
先日も、神田の古書店を歩き回った。それでも欲しい情報源となる本は見つからない。
前回のブログでも日本の化学産業が多くの事故を経験しているのだから、当然情報を持っていると話しはしたが、そう簡単に情報を手に入れることは難しい。
私も、会社に勤めていたとき、創業以来の約百年の事故や災害の情報を調べてみることを試みた。
でも、残念ながらほとんどの情報は消滅していることがわかった。
確か、1980年代だったと思うが企業では3Sだとか5Sだとか言う活動がはやった。TQC活動なども同時に行われていた時代だ。
不要な書類を捨てろという企業活動として進められた。書類は半分にしろなどの通達も出された。整理整頓を進める活動である。
本当に不要な物なら捨ててもいいのだが、その企業活動で作成した資料は捨ててはまずい物が沢山あった。
会社の命令で書類を半分にせよなど言われれば従わざるを得ない。この結果、多くの書類が意味も無く捨てられた。事故や災害の記録も、古い物は不要書類として捨てられた。古い物は不要だと判断されたのだ。
当時は、今のようにイメージスキャナーも無い時代だったから、電子情報として記録に残すこともできなかった。
今でも残念に思うが過去には戻れない。こんな結果、多くの紙媒体は捨てられてしまった。
同じような事故は、時間が経てば繰り返し起こる。人は、時間が経てば過去のことは忘れるからだ。
過去の情報も大切にして欲しい。次の世代に伝えなければ、過去の失敗は生きないからだ。
埋もれている情報も発掘して伝えて欲しい。

2018年11月24日

日本の化学産業100年

事故や災害を研究していると昔のことが気になる。過去があって現在があるからだ。
なにがしかのつながりがあって現在に至っている。
今日は、日本の化学産業を簡単に振り帰って見る。
今から150年前が明治が始まった時代だ。この時期には、まだ化学産業という業態は無い。
大正元年が1912年だ。約百年前になる。あの有名な八幡製鉄所ができたのが1901年だ。
日本は欧米列強と戦うため、兵器や軍艦などを作るため鉄を必要とした時代だ。
鉄を作るには、熱源として石炭から作られたコークスが必要となる。
石炭を高温で蒸し焼きにしてコークスを作る。
蒸し焼きにするときに、大量のガスが出る。
このガスには多くの化学成分が含まれている。
この化学成分を取りだしたのが、日本の化学産業の始まりだ。
石炭からコールタールという物質が得られる。
ベンゼンやトルエンから合成染料を作ることができる。
当時染料は輸入品で高価だったことから染料産業が始まった。
トルエンは硝酸と化合させるとTNTなどの爆薬が作れることから軍需産業にも貢献した。
その後、石炭と石灰からカーバイトを作り出すカーバイト産業が盛んになる。
これを水に作用させるとアセチレンになる。
アセチレン産業という新しい産業が生まれてくる。
石炭のガス化で、メタノールやアンモニアなどのガス化産業も生まれてくる。
戦争が終わった、1950年代からは原料が石油へと変わってくる。
石油化学産業が勃発してきたのが、1950年代代だ。
1950年代には日本ではコンビナートができはじめる。今から半世紀前だ。
その後、石油化学産業は成長を続ける。
1980年代からは、ファインケミカルの時代も到来する。
少量多品種で付加価値の高い化学製品をあみだしたのだ。
その後、東南アジアや海外におされ厳し状況になりつつある。
以後日本は、大量生産と少量の付加価値のある製品形態で現在に至っている。頑張って欲しい。
何せ、100年のノウハウを持っているのだからだ。

2018年11月21日

粉塵爆発の事故報告書

今年2月の横浜で起きた粉塵爆発事故の事故報告書が公開されていた。
現場の作業員が死亡するという事故だ。出光の関連会社で農薬の中間体の製造会社だ。
事故が起こると、企業はすぐに関係官庁と対応をとり再発防止を図っていきたいと公報はするものの
事故の原因をその後に公開する企業は少ない。
私も、この事故も、原因はあやふやにされるのかと危惧していた。
ところが、最近ネットを見ていたらこの事故はきちんと事故調査報告書が公開されていた。
http://www.idemitsu.co.jp/topics/2018/180619_2.html
さすが出光さんと言いたい。
事故の原因を公開することは、社会的意義は大きい。
今回の事故報告書に書かれているように、この企業は40年間事故は起こしていなかったという。
粉塵爆発は起こらないと考えていたのかもしれない。
報告書によると、粉塵の粒径が比較的大きいから大丈夫と考えていたような記述がある。
しかし、わずかながらではあるが、粉に含んでいた粒径の小さな粉塵が投入時粉塵雲を作っていたようである。
窒素を入れておけば防げたとの記述もある。変更管理の失敗でもあるとの記述もある。
今まで大丈夫だったから将来事故は起きないという考え方は安全に関しては通用しない。
粉を取り扱えば、粉塵爆発のリスクはある。
日本中、可燃性の粉を取り扱う企業は沢山ある。
粉塵爆が起こるのは、今までと何か変わる作業方法をするか
そのような作業をたまたましてしまったかだ。
作業時間が今まで以上にかかり、マンホールから今まで以上に空気が入り込んで
爆発混合気ができやすくなっていたケースが事故となるケースが多い。
作業マニュアルには、作業時間の制限についてもきちんと記載して欲しい。
例えば、マンホールを10分以上開けたら一度窒素パージを行うことなどを記載して欲しい。
今回の調査報告書も活用して粉塵爆発事故の防止を図って欲しい。

2018年11月18日

シングルフェイラー

シングルフェイラーという言葉がある。
ご存じだろうか?
計装の用語として使われるものだ。
工場などで異常の早期発見を目的に、計装設備として警報が設置される。
タンクなどで、液面が上昇してきたとき、HIレベルになれば液面高の警報が出される。
つまり、液面を測る計器を設置して、警報を出し事故の防止を図るのが一般的だ。
もし、計器が故障していたら警報は出ずに事故になる。異常を早期に発見できないからだ。
つまり、計器が一台(シングル)だけしか無ければ、計器は故障することがある。
1台だけの計器が故障してしまえば、警報が出なくなる。
これを、シングルフェイラー事故と呼ぶ。
異常を検知する計器が一台、すなわちシングル(一台)では計器の故障を考えると安全対策では
不十分だということだ。
事故になるととんでもない被害が出ると想定されるなら、1つだけ計器の設置では不十分だ
2つ以上の安全対策が必要になる。
異常時の対応としては、コスト面という観点では、できるだけ安くあげたい。つまり、1つだけの対応で済ましたい。
されど、計器の故障なども考えると1つだけでの対応では十分ではない。
シングルフェイラ-という、考え方はHAZOPの中でも大切な考え方だ。
タンクなどの液面以上警報として、1台の計器からHI(高)アラームとHI-HI(異常高)アラームを出すのは危険だ。
計器そのものが、故障してしまえば、HiとHI-HIアラームの両方が作動しない。
事故を防ぐには、HI(高)アラームとHI-HI(異常高)アラームを出すのは別々の計器から警報を出すように設計しておかなければならい。
重要な設備に対しては、2つ以上の安全対策を考えて欲しい。

2018年11月15日

酸と金属

今から20年前のことである。勤めている工場で部下から、小トラブルがあったとの報告を受けた。
硫酸を取り扱うタンクの,近くで火気工事をしていたらボンという音がして小爆発があったという。
誰もけがをせず,何事もなかった。
でもそのときは,何があったのか皆目理解できなかった。
それから,20年経過した今は,何があったのかははっきりわかる。
多くの事故事例を経験して、硫酸とタンクという組み合わせであれば,事故のパターンが見えてくるのだ。
硫酸は酸性物質だ。酸性物質は,鉄などの金属と反応して水素という物質を発生する。
つまり、20年前の出来事は発生していた水素に火が着き小爆発が起こったのだ。
硫酸などの酸性物質は常に金属と触れると水素が発生すると考えて欲しい。
硫酸の分子式の中に、H2という水素分子がある。薄められた硫酸水の水にもH2というのがある。
このHが分離して水素が発生すると思って欲しい。
硫酸と言っても,濃硫酸のような濃度の高いものもある。水で希釈した,硫酸もある。
水素は,濃度の高い濃硫酸では発生することはない。水などで希釈された濃度の低い硫酸で発生する。
濃度の違いで,事故の確率は違う。
しかし,濃度の低い硫酸はそこら中で使われているはずだ。
硫酸を扱っていれば,水素が発生すると思って欲しい。
水素は,とんでもない爆発力がある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/
adicdb2.php?q=%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%80%80%E7%A1%AB%E9%85%B8+%E6%B0%B4%E7%B4%A0
あらから,20年多くの事故事例を学んで硫酸が起こす事故事例が身近なものとしてとらえるようになった。
酸は金属と触れると水素を発生すると思って欲しい。水素の持つエネルギーを甘く見ないで欲しい。
東北大震災の時原発の建屋を吹き飛ばしのも水素の爆発だ。

2018年11月12日

国会での事故の議事録

1960年代のもう半世紀ほど前に新潟で起きた化学工場の事故だ。
緊急停止操作中、圧縮機の停止操作ミスが原因だ。
3人が死亡、6人が死亡した爆発事故だ。
まだ緊急時の自動化は進んでいない時代での出来事だ。
人が緊急時に、色々な操作を行ったことにより
本来閉めるべき、コンプレッサーのドレン弁を閉め忘れた。
この為大量のガスが漏れ続け、圧縮機室内にガスが溜まっていった。
圧縮機室内には、高温の蒸気配管がありそこでガスが着火爆発した。
失敗百選にも、記事があるので事故の事実はある程度わかっていた。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000145.html
前回のブログにも書いたが、事故の本質はなんだったのだろうかと思っていた。
何気なく、ネットで検索していたらこんな物が見つかった。
当時の国会の、事故に関する行政と議員さんとの委員会議事録が公開されていた。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/059/1560/05911221560002a.html
長文の議事録なので、下から1/3の所ぐらいから事故の答弁が始める。こんな文章が書いてある。
○杉原一雄君 先ほど、ここにお配りいただいておりますから、委員の皆さんも一応お目通しをいただきたいと思います。
 それは九月十八日の十七時十二分に富山高岡の
 一角に起こったできごとであります。*******、その爆発によって起こった被害は、
人的被害として私たちの仲間である労働者が三名死んでおります。重傷一、軽傷六、そうして物的被害として、
付近――もちろん会社工場内の施設がめちゃくちゃに破壊されている点もございますが、*****、
通産省は今日までこの爆発事故の原因、被害の実態、そして調査等の経過を経ながら、会社に対して何を要求し、
いかなる緊急処置をとり、指導監督を行なってきたか、同時にまた今後の見通しはどうなのか、
企業再建並びにそれに伴うこうした危険がまたもや起こるのではないだろうかということなどについての
具体的な指導等について、見通しを含めて報告をまずいただきたいと思うのであります。
○説明員(後藤正記君) お答え申し上げます。
*****
上記のような、文章で始まるところを探し、一度読んでみてほしい。
前回のブログでも書いた、事故の本質に少しでも行き当たるところがあるはずだ。

2018年11月10日

事故の本質

講義をすると、受講者からのアンケートがある。これはすごく大切な物だと感じている。
一般的なコメントもあるが、読んでいて痛いところを突かれているなと思う文章もある。
事故事例を説明してくれるのはいいが「事故の本質」は何かと問われることがある。
一番つらい言葉である。事故情報や、企業が発信する事故報告書には事故の本質と言われる物は書かれてはいない。
事故の本質など、どこにも情報は無いというのが現実だ。
しかし質問者の言うとおり、事故の本質がわからなければ、抜本的な手の打ちようは無い。
事故を伝えていきたいと思う人にとって一番の悩みは、事故の事実に関する情報はなんとか見いだすことはできるのだが
事故の本質に行き着くことは本当に難しい
そこに大きな悩みがある。
あきらめないで、多くの人と話を進めながら事故の本質や教訓を伝えていきたい。

2018年11月07日

静電気による事故

暑かった夏も終わりどんどん寒くなってきた。これから注意しなければいけないのは静電気事故だ。前回のブログで書いた、粉塵爆発の着火源にも静電気が原因のこともある。
私が昔読んだ資料で、静電気について書いた文献がある。出典は学会誌安全工学だ。下記のURLで公開されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/52/5/52_318/_pdf/-char/ja
化学産業における静電事故の再発防止手法というタイトルだ。
事故のデータベースから事故事例を紹介しながら、メカニズムを紹介しているところがわかり易い。
たいていの文献は、理論などで終わり実際の事故の紹介はないので読んでもイメージがつきにくい。
しかし、この文献のように事故の事例を紹介してくれるとわかりやすいものだ。
参考にして欲しい。

2018年11月04日

粉塵爆発を甘く見ないで欲しい

粉による爆発事故は多い。
粉を扱う工場では粉塵爆発を甘く見ないで欲しい。
粉を扱う工場なら、粉塵をとるバグフィルターという設備が多く設置されている。
製造過程で発生する粉を捕集する設備だ。袋のような物で、粉を集める設備だ。
粉を集める袋は布状の物で一般的にはプラスチック製の布が使われる。
プラスチックは、粉などの粉体と接すると静電気を発生する。
これが粉塵爆発の着火源となることもある。
この為、プラスチック製の布には細い金属線が埋め込まれこの静電気を除去するようになっているのが今では一般的だ。
昔は、この静電気を除去する機構が備え付けられていなくてバグフィルターでは多くの事故が発生してきた。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=%E6%84%9B%E5%AA%9B%E3%80%80abs
では、バグフィルターだけを静電気除去対策をしていれば安全かというとそうでは無い。
バグフィルターなどを置く架台も、静電気を逃がす工夫が必要だ。
架台が金属なら静電気は簡単に逃れてくれるが、架台がプラスチックなどの樹脂だと静電気は逃げてくれない。
バグフィルター本体だけの静電気除去対策だけでは無く、それを支える架台も静電気が逃げる工夫を怠らないようにして欲しい
バグフィルターの事故は沢山ある。粉を甘く見ないで欲しい。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%95%

E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC

2018年10月27日

世界の大規模災害

事故は世界中で起きている。
過去40年間で起きた海外での大規模災害をまとめた報告書が公開されている。
タイトルはハイドロカーボン大規模災害だ。
つまり、炭化水素という物質を取り扱う産業の事故だ。
もっと平たく言えば、石油、石炭、天然瓦斯、化学産業など燃える物質を取り扱う企業での事故をまとめた資料である。
https://www.jisha.or.jp/seizogyo-kyogikai/pdf/meetingNo6_1-1-2.pdf
海外で起こる事故は、日本と規模が違うものも沢山ある。
グローバル化が進む現在、海外の事故にも目を向けて欲しい。

2018年10月25日

化学プラントのリスクアセスメント

労働安全総合研究所という機関を知っているだろうか。
名前の通り安全に関する調査研究をしている機関だ。多くの技術資料や,調査資料を発行している。
https://www.jniosh.go.jp/publication/publication.html
私も多くの資料を見させてもらっているが。今日は化学プラントのリスクアセスメントの資料を紹介したい
https://www.jniosh.go.jp/publication/td.html#td2016
2016年の技術資料に プロセスプラントのプロセス災害防止のためのリスクアセスメント等の進め方 という資料があるので
それをダウンロードして見て欲しい
本格的にリスクアセスをしたい人に最適の資料だ
資料の61頁にも参考文献が書いてある。一度見て見るといい文献も数多くある。ネットで検索して見れる文献もあるので参考にして欲しい

2018年10月22日

HAZOP

先日HAZOPをテーマに講義をした。
https://www.e-jemai.jp/seminar/_1.html
20名ほどが参加してくれた。
HAZOPは、安全性評価手法として1980年頃から化学工場では使われ始めた手法だ。使用が開始されてから約40年が経つ。
40年が経過してはいるが、残念ながら日本ではHAZOPだけを主テーマにして取り扱った書籍は発行されてはいない。
書籍の一部に安全性評価手法の紹介と取り扱われる程度だ。
今日のブログは、HAZOPに関連する書籍や文献を紹介したい。
まず、書籍だが安全工学会が発行している書籍でHAZOPについて書かれているものがある。
実践安全工学 シリーズ2「プロセス安全の基礎」 化学工業日報社である。
この分野の執筆者は、高木さんという人である。
毎年安全工学会で開催されるセミナーでも講演がある。興味があるなら聞いてみるとよい。今年聞き漏らしても、来年同じような講義はある。
http://www.jsse.or.jp/Events/update/updatecabinet/?action=cabinet_action_main_download&block_

id=1690&room_id=18&cabinet_id=10&file_id=1030&upload_id=3767
文献を紹介しておく まず高木さんが書かれている文献だ
非定常HAZOPの進め方-高木伸一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/53/4/53_244/_pdf
HAZOPの有効な適用方法
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/disaster/47.pdf
HAZOPに造形の深い先生で松岡さんという方がいる
ホームページを紹介しておく
http://www.hazop.jp/index.html

2018年10月17日

コンピューターとつきあい始めて約40年

先日、自分のホームページを移設することになった。サーバーを提供してきた企業が、運営を辞めるというメールが突然送られてきたからだ。
メールにはいくつかの、移設先を紹介してあったが、どうすれば良いのか、移設先候補となるサーバーレンタル会社はどう違うのかも最初は皆目わからなかった。
移設の案内資料には、沢山の専門用語がならんでいるだけで、その意味を理解するのにかなりの時間を要した。
半日かけて、なんとか新規のサーバーレンタル会社を評価し、お試しがあるので仮登録してみた。
すぐに、どこにデーターを転送せよと連絡が来たが、これも一仕事だった。
今までのホームページデーターを転送してみたものの、なかなかホームページが画面に表れてこない。
色々試行錯誤して、どうやらサーバーの中にある新規ホルダーを創って入れることに気づいた。
試してみるとデーターは移ったが、今度は許可が無いと表示できませんと画面に出てくる。
そこで、いろいろサーバー設定画面とやらを調べたところ、あるところを設定しないと駄目なことがわかった。
そのほかにも、いろいろ設定しないと駄目らしくて結局朝から始めて夕方までかかってしまった。
でも、移設先のURLに自分のホームページ画面がくっきりと出てきたときには感動した。
まあ一日かかったが、なんとかこなせたのはコンピューターとの長いつきあいがあったからかなと思った。
会社でコンピューターというのを使い始めたのは、入社して6年目の1980年だった。
新規化学プラントの建設に携わり、当時自分に任された数億円の建設予算を管理するためにパソコンを導入した。
今のように、エクセルなどの表計算がない時代だったから、プログラムをBASICという言語で作成した。
製造現場には、DCSというコンピューター制御システムも導入した。ブラウン管式のCRT画面だ。
グラフィック画面を設計したり、プラントの自動制御用シーケンスを作成した。数億円の買い物だったが、プラントの自動運転化に多いに約だった。
その後、メンテナンス予算を作成するために職場にパソコンを導入した。
NECが売り出した、PC-8001を使いメンテナンス費用の管理や、点検台帳の印刷などをコンピュータ-で実施させた。
その後も、PC-9801などのコンピューターを導入し、課内資料を検索できるシステムを構築した。
当時は、文章もワープロだった。でも画期的だった。
コンピューターを使い始めて。かれこれ40年近くなるんだと気づいた。
草創期と比べるとすごい進化だなと思いつつ、次から次へと出てくる機能や新しい概念を理解していくのは大変なことだ。
技術の進歩恐るべしだ。

2018年10月14日

化学物質リスクアセスメント事例集

化学物質リスクアセスメント事例集という資料を見つけた
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/kagaku5.pdf#search=%27%E9%83%A1%E5%B1%B1%E5%8C%96%E6%88%90++%E7%88%86%E7%99%BA%27
中災防が厚生労働省から委託事業で,企業向けリスクアセスメントをした事例の紹介である。
中小企業のリスクアセスメントの実施事例だが,アセスメントの切り口を見つけたい方には参考になるかもしれない。
爆発火災という切り口と、健康障害防止関係 の二つの切り口での事例紹介がある。
参考にして欲しい

2018年10月05日

有機過酸化物について

有機過酸化物という化学物質を知っているだろうか。英語名でパーオキサイドと呼ばれることもある。
温度に敏感な物質で、物質毎に定められた温度を超えるとものすごい反応を始める。
液体も粉体もある。粉であれば、火薬のように爆発する。
管理温度が低いものは、屋外に放置するだけで反応をはじめて爆発することもある。
その為、冷蔵庫などに入れて保管するのだが停電で温度が上がり事故になったこともある。
温度管理には、大変神経がいる物質だ。
この物質は、1960年代後半からよく使われるようになった。
プラスチックなどの重合反応開始剤などにも使われる。
化学工場であれば、案外身近なところに存在する物質だ。
しかし、案外その危険性は知られていないし、むしろ甘く見ているといっても良いくらいだ。
1960年代後半事故の多発を受け、国は「有機過酸化物による爆発災害の防止について」という通達を
1971/6/25日に出している。基発第455号だ.下記のURLを見て欲しい
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-27/hor1-27-8-1-0.htm
この通達には、4件の事故事例も書かれている。
近年起きている、有機過酸化物の事故は山口県の岩国というところで起きている。死亡事故でもある。
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html
反応器内の攪拌が止まり、冷却コイルの無い部分で反応を始めた事故だ。
有機過酸化物は、冷やせなければ事故になる。
ごく最近の事故は、千葉県の茂原というところで昨年7月に起きている。
https://www.youtube.com/watch?v=SZ6mWKQsSfc
やはり有機過酸化物を入れた容器の一部が冷えていなかったと言う事故だ。
山口県の企業も、千葉県で事故を起こした企業は同じだ。
同じ企業でも、有機過酸化物の怖さは工場が違うとわからないのかもしれない。
有機過酸化物恐るべしということをこれからも伝えていかなくてはならないと思う日々だ

2018年09月27日

事故データーベース

世の中に公表されている事故は沢山ある。しかし、案外それを知らない人は多い。その一つが、これではないか。
労働安全衛生研究所という機関がある。独立行政機関だ。いわゆる、公的機関だ。
名前のごとく、事故や災害の研究している機関だ。公的機関であるから、あらゆる事故の情報は集まる。その情報を公開してくれている。
この機関が公表している、事故の情報データーベースがある。爆発火災の事故データーベースだ。
私も、これを使って勉強させてもらっている。先日何気なく、このホームページを見ていたら、データーを追加したとの情報があった。
今までは、1970年代から2000年までの情報だけだったが、もう少し情報を追加したということだった。
1965年~2005年までの情報を公開したという記事があった。
一度は見ていただきたい。一つの事故の概要と、原因がほどよい文字数でまとめられている。
この情報のURLはここだ。有効に活用して欲しい。エクセル版の事故データーベースだから検索もできる。
https://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2018_02.html
但し苦言を言えば、事故の日付が書いていないことだ。何年というおおざっぱな情報しか公開していない。これでは駄目だ。
事故のデーターベースには日付は不可欠だ。なぜかと言えば、事故のデーターベースは、他の事故のデーターベースと比較する必要がある
このデーターベースではこう書いてあるが、他のデーターベースではこのように書かれている。
それぞれを比較しながら事故の本質や要因を調べていくことになる。日付が書いてなければ、比較検証ができない。
このデーターベースに日付を入れていただければ、素晴らしい情報源になる。元ネタには日付があるはずだ。
次回の改定では、是非日付を入れて欲しい。事故情報は公開されて利用されてこそ意義がある。日付を入れれば意義あるものとなる。
数ヶ月かかったが、全てのデーターを読ませてもらった。大変参考になった。素晴らしいデーターベースである

2018年09月23日

水蒸気爆発

水蒸気爆発と言う言葉を知っているだろうか。
高温の物体と水が接触すると、瞬間的に水蒸気が発生し爆発を起こす現象だ。
火山のマグマが地下水などと接触すると同様に水蒸気爆発を起こし岩石を吹き飛ばし噴火が起こる。
製鉄所などでも溶けた鉄がこぼれ出し、冷却水などと接触すれば同様に水蒸気爆発が起こる。
7月初旬に広島や岡山などで起こった大雨でも、工場が水蒸気爆発を起こしている。
https://breaking-news.jp/2018/07/07/042364
大雨の予報を受け、工場ではアルミ地金を溶かす溶鉱炉を停止して従業員は帰宅した後、大量の水が押し寄せ
まだ熱が残っている高温の炉に水がなだれ込んで水蒸気爆発を起こしたものと思われる。
爆発音は数十キロ離れたところまで聞こえたと言うからすごい威力だ。
https://www.youtube.com/watch?v=7KbWdQXamsE
水蒸気爆発は、化学系の企業でも起こる。高温の炉を持っていれば、水が接触すれば水蒸気爆発は起こる。
研究所などにある電気炉も要注意だ。少しでも水がかかれば、水蒸気爆発は起こる。

2018年09月18日

タンク上部で溶接工事中爆発事故に思う

茨城県の神栖コンビナートでタンクの爆発事故が先週あったという。
タンクの上部で火気工事をしていた、工事業者が爆発で死亡したという。
http://www.dic-global.com/ja/release/2018/20180906_01.html
https://www3.nhk.or.jp/lnews/mito/20180906/1070004036.html
タンクの外部で溶接などの火気工事をして爆発事故は繰り返し起きている。
数年に一度の頻度で起きていると言って良い。全て報道されるわけではないから、知られないのだ。
数年前に起きた事故を紹介しておく。こんな事故だ。
http://re-rush-life.org/mitubishi-mate-haiyu
たとえ報道があっても、事故の原因はその後報道されることはほとんど無い。
過去起きている数十件の同様な事故から、こんなことがわかっている。
外部での火気工事でも、溶接などの温度は1000度近くもある。
その熱は、当然薄い鉄板を伝わって内部に温度は伝わる。
鉄板の厚さは数ミリで、金属であるから熱伝導性も良い。タンク内部側は数百度の温度になってしまう。
数百度という温度は、たいていの可燃物であれば着火点を越えてくる。
つまり、タンクの鉄板の内側に油かすや残渣などが付着していることが多いから
その可燃物が暖められることになる。
暖めれば、当然可燃性のガスを発生する。廻りには、空気が存在するから
ガスの量が徐々に増えていき爆発混合気ができてしまう。
鉄板の内側は数百度もあるのだから当然着火して、爆発という現象が起こることになる。
今回の事故は、液を入れたままだったのか、抜いていたのかはわからない。
液を入れたままであれば、当然可燃性蒸気は存在していたはずだ。
強制換気をして、爆発混合気ができないようにしておかなければ今回のような事故になる。
たとえ液を抜いていたとしても、天板や側板の裏側には何らかの油かすなどが付着している。
その部分を外側から、火気工事などで暖めれば、やはり可燃性ガスは出てくる。
たとえ液を抜いていても、強制換気をして爆発混合気ができないようにしておくことだ。
できれば窒素でシールをして、本質安全対策を行って欲しい。
タンクの外側の工事だからと言って安心するな。同様の事故は繰り返し起きている。
私の講演や講義でこの話は繰り返し話している。過去の事故事例に学んで欲しい。

2018年09月15日

北海道地震発電所の被害状況

北海道地震でいまだに主要な発電所が立ち上がらない。直下型地震の震源地近くだから、相当損傷が大きいと思っていた。
ネットを見ていたら写真付きの被害状況報告が北海道電力のホームページに掲載されていた。
http://www.hepco.co.jp/pdf/1809080103.pdf
ボイラー内の水管が破断しているようだ。相当な、衝撃が配管に加わったのだろう。
運転中であったのであれば、水か蒸気かが噴き出したのだろうからボイラー内部も破損しているかもしれない。
中には耐火レンガがあるから、レンガも損傷している恐れもある。
足場を組んで点検と補修をすることになるだろうから時間はかかる。
もう一つ気になるのは、発電タービンだ.火災が起きたと言うが、原因は書いてはいない。
潤滑油のパイプが破れて着火したのだろうか。
それとも、タービンという回転翼が金属部と接触して火災になったのだろうか。
回転翼がやられていれば補修にはかなり時間がかかる。
主要部分の故障でないことを祈る

2018年09月10日

直下型地震による影響

北海道で震度7の地震があった。M6.7だ。
震源地の地下37Kmで揺れが起きたという。今回の地震では、北海道全停電となるとんでもない事態も起きている。
大型の発電所が機能を停止したからだ。この発電所は、震源地から余り離れていないという。
過去に震度7という地震は、直近では2004年の新潟中越地震というのがある。2004年10月23日だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E5%9C%B0%E9%9C%87
震度7,M6.8、震源の深さ13kmの直下型の地震である。
震源地近くの小千谷観測点では、最大1500ガル、130カインを超える震動を観測している。
化学プラントなどでは、150~200ガル程度の地震が起きれば安全のために停めていることを考えると、1500ガルというのは
とんでもない加速度だ。最近見直しがされた、球形タンクの耐震設計でも600ガルの耐震性能だ。 以前は300ガルだった。
2004年に起きた、新潟中越地震では、原子力発電所の震度計は680ガルの値を記録している.。当時の設計想定の倍だ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuwanobuo/20170716-00073311/
この地震により、原子力発電所で火災が起きている。電気室の外にある変圧器の火災だ。
電気室の建物の基礎と、外にあるトランスの基礎が別々の基礎であった為、地震の揺れで別々の動きとなったからだ。
別々の動きをすれば、電気のケーブルには無理な力がかかる.引きちぎられたりすれば、絶縁が不良となりショートする。
当然火花を出すから、このケースでは火災になった。
基礎が別々になっていると、こんな事故も過去に起こっている。
油を入れるタンクの外に、ポンプがあるケースだ。地震が来れば、タンクとポンプは別々に揺れる。
配管がずれれば、無理な力が加わり配管が割れて、油が大量に噴き出したこともある。
フレキを入れていても、ズレが大きければ引きちぎられる。
基礎を別個にするか、一体ものにするか地震対応では考えるべきことだ。

2018年09月08日

実験室や研究所での事故事例情報

数日前に工場や研究所での事故事例と教訓という講演をした。
https://www.e-jemai.jp/seminar/_1.html
前から感じてはいたが、研究所に関する事故事例というのは余り公開されていないし,集めるのも難しい。
実験室という閉鎖空間で行われるのだから余り外に情報が出ることもない。
書籍で、私が研究所事故を考える時に使っているものを紹介する。
オーム社から出ている本だ。「化学実験における事故例と安全」という本だ。化学実験の安全を考えることが、書かれている。
その中に、事故事例を記載してある。事故の事実と、教訓も書かれている。
事故の概要、原因、対策、教訓とわかりやすく書かれていている。
もう一冊書籍を紹介する。丸善出版から出ている本だ。「有機化学実験の事故・危険」-事例に学ぶ身の守り方-と言う本だ
物質名毎の事故事例を紹介している。
ホームページではこんなものがある。
https://wikiwiki.jp/bake-tech/%E5%AE%9F%E9%A8%93%E4%B8%AD%E3%81%AE%E4%BA%8B%E6%95%85%

E3%83%BB%E5%8D%B1%E9%99%BA%E6%80%A7

http://tsuyu.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-c6dd.html
参考にされたい。
こんな情報もあるので参考にされたい
https://sanpo.aist-riss.jp/column/wakakura02/2018/08/p2918/

2018年09月03日

不安定物質による事故を防げ

不安定物質とは、なんなのだろうか。安定していない物質だ。
安定しているとは、変化しないということだ。金属にたとえると、金のようなものだ
金などは非常に安定していて錆びることはない。たいていの金属は、空気があれば酸化される。
酸化されると、酸化物になり元の金属から変化する。鉄は、酸化されて酸化鉄に変化する。詰まり錆びるのだ。
鉄という金属は、鉄のまま存在してはいられない。空気で酸化されて変化するから安定ではないと言える。
ナトリウムなどアルカリ金属なども不安定だ。水に入れれば激しく反応する。
化学物質の中でも、熱や衝撃を加えると激しい反応を起こすものがある。
これらは、不安定物質とよばれている。過去不安定物質は、沢山事故を起こしてきている。
1980年代に起きた爆発死亡事故を紹介する。医薬品を製造するときの中間体で5CTという物質が原因だ。
5CTとは5-クロロ-1,2,3-チアジアゾールの略号だ。
不安定物質であったため、試作製造中に熱を加えたことにより爆発事故を起こした。
不安定物質は熱や衝撃が加わると暴走的に反応を起こす。2名が負傷し17人が怪我をする大惨事となった。
事故当時日本ではまだ使われていな物質で性状は余りよく知られていなかった。
海外では既に事故は起きていたが、それを知らずに試作をしていて起きた事故だ。
この事故には、「生産委託」という事故のキーワードがある。爆発を起こしたのは、生産を委託された会社だ。
生産を委託した会社は、海外で事故は起こしているのは知っていたものの、委託先へはその情報を伝えていなかった。
当時、化学産業界では医薬品などの物質はそれほど危険と考えられていなかった。
だから、危険と考えなかったかもしれない。
新しい物質を使う時は、国内の情報だけではなく広く海外の情報まで集めないと危険だということだ。
この事故は、多くの文献があるが下記のURLをまず参照されたい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/46/6/46_401/_pdf/-char/ja
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200058.html
この事故も参照されたい
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000129.html

2018年08月20日

突沸による事故を防げ

沸点を超えれば、沸騰し突沸という現象が起こることがある。
水を温めて、お湯を湧かせば100度位で沸騰を始める。
安定的に、沸騰をしてくれれば良いのだが、突然熱水が噴き出すことがある。
これを突沸現象という。
突沸により、工場や研究所でも多くの事故が起きている。
工場で起きるのは、廃液タンクなどで起こることがある。廃液の粘度を下げようと蒸気などで暖めていて突沸が起こるのだ。
急減に大量の蒸気が発生するから、タンクの天板が破壊される。
漏れた可燃物や可燃性蒸気に火がつき火災や爆発になる。
研究所などでは、実験中温度が上がりすぎたときなどでおこる。
あわてて、実験器具の中に冷やそうとして水を入れるからだ。
実験器具の中の温度が、100度を超えている状態で水を入れれば突沸が起こる。
可燃物を取り扱っていれば、可燃性蒸気で研究室内で火災や爆発になる。
ビーカーなどから液が飛び散りやけどなどにもなる事例が多い。
沸点を超えれば突沸が起こると考えて欲しい。沸点を超えて暖めれば、突沸という危険源が顔を出すと常に思って欲しい。

2018年08月11日

配管切断工事などでの中毒事故

工事で配管を切断する作業は結構あるはずだ。
火気を使うのだから、誰でも火災は心配する。しかし、中毒になるとは思っていないところに中毒による災害が起こる。
切断には酸素やアセチレンで切断することもある。効率良く切断できるのだが、切断箇所が高温になる点に注意する必要がある。
配管の中に残渣や、液が残っていれば気化して有毒なガスを出すことがある。
硫酸などを扱う設備であれば、硫酸にはS分が含まれているから、熱で有毒な硫化水素が発生する。
過去にも事故が発生し、多くの被害者も出ている事例がある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=84775
配管を溶断するときは、しっかりと洗浄しておく必要がある。
もう一つ、注意しなければいけないのは配管内部にメッキをしている配管や、テフロンなどのライニングをしている配管だ。
亜鉛などのメッキがしてあれば、溶断時有毒なガスが発生する。
1例だがこのような事故が繰り返し起きている。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=85250
テフロンライニング配管も、溶断時に有毒ガスが発生する。
テフロンライニングをした、撹拌槽なども溶断作業は注意が必要だ。
過去に、金具を溶断しているときにテフロンが熱分解して有毒ガスを発生し中毒になっている事故もある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=85236
酸素やアセチレンを使って溶断するときは、単に火災だけに注意するのではなく、中毒という災害にも注意を払って欲しい。

2018年08月05日

工事現場で溶接工事中の火災に思う

先日東京多摩のビル工事現場で大規模な火災があった。5人の作業員が死亡し、数十名がガス中毒となった事故だ。
火災現場からは、真っ黒い黒煙がもうもうと出ている。
https://celebsokuho.com/6743.html
ビルの建設をしていて、鉄骨の柱の火気工事をしているときに、ウレタンという断熱材に火がついたという。
鉄骨の周りには、開口部があったようである。開いているところから、溶接か溶断した火の粉が下に落ちていったようである。
床の下には、今回の事故原因となったウレタンという断熱材が貼り付けられていたようだ。
床下つまり、作業をしている人の下の階の天井部分に火がついたのだ。わずかに開いた開口部から、水を入れたり消火器の消化剤を掛けても
下の階に火がついているのだからそう簡単には消せない。上からは見えない部分に火がついているはずだからだ。
この工事の元請け企業は、1ヶ月前にも同じような火災を起こしていたという。ウレタンに火がつくと言うことは、わかっていたはずだ。
ウレタンというのは、いまから半世紀前にできた化学製品だ。1690年代から使用されている物質だが、繰り返し繰り返し火災を起こしている。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=%E3%82%A6%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%
95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%80%80%E7%81%AB%E7%81%BD
ウレタンに関わる事故は世界中で起きている。燃えると有毒ガスを出すから、今回のような中毒による被害者も出す。
溶接工事の火の粉を甘く見ないで欲しい。1000度近くもあるからだ。燃えにくいと言われる物質でも数百度あれば火がつく。
火気工事を甘く見ないで欲しい。

2018年07月29日

化学工学会のホームページにある事故や災害情報

化学工学会という団体がある 名前の通り、化学関係の団体だ。 そこのホームページに、事故や災害の情報があるので紹介しておく。
公益社団法人化学工学会 産学官連携センター SCE・Netのホームページだ
http://sce-net.jp/main/group/anzen/anzen_danwa/
例えば、こんな情報がダウンロード出来る。beacon/201807/japanese?utm_source=Informz%20Email&utm_medium=Informz%20Email&utm_campaign=Informz&_zs=jKx2X&_zl=PhkI1
アメリカにある、同様な学会の組織であるCCPSが発行している文献を日本語に翻訳して紹介している。
爆発や火災などがテーマだ。
興味のある人は、一度CCPSのホームページも見て見ると良い
https://www.aiche.org/ccps/topics/elements-process-safety/learn-experience

2018年07月20日

教育訓練の大切さ

事故は知らないから起きる。
なぜ事故が起こるのかは、教育をしてしっかりとやっていないからだ。
事故の原因とやってはいけないことを伝えなければ事故は防げない。
火災になるのは、燃焼の三要素が成立するようなことをするからだ。
マンホールを開ければ装置の中に空気が入る。中に燃えるような物質が残っていれば、火災になるのは当然だ。
マンホールを開けるとは、空気を入れて燃焼の三要素を作り出すことだと考えなければいけない。
ドレン弁を開けて液を抜き出したり、ベント弁を開けて可燃性ガスを大気に抜き出すのは危険な行為だ。
わざわざ化学物質を外に出して空気と触れさせて燃焼の3要素が成り立つ状況を作り出しているからだ。
当たり前のようなことだが、なかなか伝わっていないことがたくさんある。
時間がたてば自然と伝わることは限られている。
時間がたっても伝わらないことは、しっかりと抜き出して教育が必要だ。
訓練も大切だ。教育は頭で学ぶことだが、訓練は体に覚えさせることだ。
いわゆる技能などは、訓練をしなければ身につかない
ポンプを止めるときに停止操作に失敗して液を逆流させて事故になることもある。
滅多にやらない作業は、訓練をしっかりしておく必要がある。

2018年07月13日

化学工場で爆発

福井県にある化学工場で今日爆発が起きた。又、尊い命が失われた。
爆発で、オレンジ色の煙が出たという。この色の煙が出るのは、海外でも多く有る。硝酸系の物質を使っているとこの種の煙が出る。
硝酸は、ニトログリセリンなどダイナマイトの原料にもなる素材だ。
爆発性の物質を作る能力を持つ。
今回の事故の原因はわからないが、報道ではこんな写真が出ている
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20180702-00000077-nnn-soci
これと同じような事故が海外でも起きている。
http://karapaia.com/archives/52184814.html
企業の広報では、今まで事故無かったと報じられている。
しっかりと安全対策は講じてきたいたのだろうが、事故はちょっとした要因で起こる。
爆発というのは、たいていは空気が関連する。空気が入り込んで爆発混合気が知らないうちにできてしまうのだ。
火災や爆発は、空気が必要だ。
いつもより、マンホールを開けている時間が長ければ空気は多く入り込んでいる。
空気と可燃物が混ざれば爆発混合気ができる。
爆発と燃焼とは違う。安定的に燃えるのは、燃焼という。線香の火が燃えるのは、安定的な燃焼だ。
でも、燃える物と空気がある一定の比率になると、安定では無くとんでもなく危険になる。
爆発という現象になる。
今回の事故は原因はわからないが、もしかしたら空気がどこからかいつもより多く入り込んでいたのかもしれない

2018年07月02日

事故データーベース紹介

事故のデーターベースというのがある。過去、私のブログ(2017年4月6日)でもこのデーターベース(DBと以下略す)について紹介しているがもう一つ追加で紹介しておく。
早稲田大学と共同で特定非営利活動法人災害情報センターが運営しているデータベースで略称はADICというものがある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?page=1288&q=
化学事故だけではなく、交通事故、家屋火災、労働災害などあらゆる事故事例をデーターベース化したものだ。
たいていの事故DBは、企業名は記載されていないが、このデーターベースは企業名がわかるものは書いているので知ることができる。
発生も日にちだけではなく、時間と分まで書いてあるものが多いので発生時刻も正確に知ることができるのが特徴だ。
このため、夜間管理の甘い時に起きている事故のパターンを拾い出していくこともできる。
検索機能があるので、物質名や会社名などをキーにデーターを検索することもできる。
情報の件数は多いが、一つ一つは100字程度で起きた事実だけが書いてある。興味がある人は一度見てみるとよい。

2018年07月01日

大阪で地震に遭う

先週月曜日大阪に行っていた。朝、ホテルにいたら突然大きな音がする。同時に部屋が激しく垂直に動き出す。久しぶりの激しい揺れだ
私は千葉県に住んでいるので、地震は良く来る。震度3~4はいつものことだ
でも大阪の時はそれを越えるかなりの揺れだった。しかし、時間は短かかった
もう30分も遅ければ電車の中で缶詰だったのだろう。
講演場所と連絡を取るも、やはり電話がつながらない。1時間くらいして、やっと連絡がつき講演取りやめを確認。
新大阪の近くのホテルだが、周りを見ると何ら被害は無い 人も何ら変わりなく歩いている。
しばらくして、周りを歩いてみると駅と駅の間に電車が沢山止まっている。10時くらいだったので、中に人はいなかった。
みんな避難したのだろう。
踏切は、閉まって警報音は鳴りっぱなしだ。
午後に新幹線が動くというので新大阪に行ってみたが人がいっぱいだ。
タクシーは長蛇の列。2000人ならんでいると報道が行っていた。
夕方になると、淀川の上の橋に人がいっぱいいる。在来線が動かないから歩いて帰るのだ
当日帰るのをあきらめ、ホテルでもう一泊して翌朝の飛行機で帰った。
都市部での地震は大変だ。

2018年06月27日

老朽化による事故情報

設備の老朽化で事故が起こることがある。「老朽化」というのも、事故のキーワードの一つである。設備は、しっかりと保全していけば古い設備でも、安全に使用できる。
しかし、点検や更新を怠れば事故につながる。事故に至るのは、保全費をけちるのが一つの要因だ。古くなれば、なるほど修繕費はかけていけなくてはいけないのだが現実はそうでは無い。多くの企業は、右下がりに修繕費を減らしてきているはずだ。
もう一つの要因は、検査の場所が外れてしまったことだ。修繕費を削減すれば、検査項目も減らさざるを得ない。確実に悪いところを狙って、検査しなければいけなくなる。その為には、他社の事故事例を多く知っておくことが大切だ。
そうはいっても他社の情報を手に入れることはたやすいことではない。
老朽化をキーにして文献を探していたら、こんな情報を見つけた。海外の事故データーベースを調査して、老朽化をキーにした文献だ。
消防庁の検討会の一つに、危険物施設の長期使用に関する検討会というのがある
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h29/kikenbutsu_tyouki/index.html
その中の資料に、海外の情報を調査した文献がある
危険物や高圧ガス等、各種危険性のある物質を貯蔵し、又は取り扱う産業施設の老朽化による事故事例について、海外で発生した事例を調査するとともに、維持管理・点検制度等の長期間使用する産業施設に対する対策等について海外動向を調査したものだ。
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h29/kikenbutsu_tyouki/03/shiryo3-4.pdf
海外で起こった事故は、日本でも起こる。
安全を担当する人達は、一度読んでみると良い

2018年06月08日

消防統計

消防庁から、昨年のコンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計が発表された。毎年5月末に発表されている。
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h30/05/300529_houdou_3.pdf
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h30/05/300529_houdou_1.pdf

又、消防庁のホームページを見ていたら各企業のリスクアセスメントに関する情報が発表されていた。参考になる情報だ
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h30/03/300326_houdou_1.pdf

2018年05月30日

反応暴走

反応操作で怖いのは、反応暴走だ。化学反応制御できなくなるからだ。
反応工程を持っていたら、きちんと「なぜ」反応暴走が起こるのかを教えて欲しい。
事故を防ぐには、事故事例を教えれば良いと思っている人が多い。しかし、事例をやみくもに教えても事故防止の知識としては身に付かない。
まず、最初に重要なキーワードをいくつか教えることだ。次に、重要なキーワードの意味することをわかりやすく例をあげながら説明していくことだ。
詰まり、順序立てて説明してあげると頭の中に入りやすくなる。では、反応暴走が起こるメカニズムを例に取りながら、説明してみる。
基本となるキーワードは何かと言えば、「温度」と「濃度」の2つだ。つまり、反応速度は、この2つの関数で示すことができるからだ。
一般的に、温度が上がれば、反応速度は増していく。同じように、濃度が上がれば反応速度は増す。
温度と濃度の管理ができなければ、反応暴走が起きることになる。
つぎは、温度というキーワードを使って、具体的に温度を管理できなかった事例を説明していく。ここからは、事故事例を使って例示をしていくと良い。
代表的なのは、反応器の冷却能力が足らなかっただ。冷やせないというのが、致命的な事故につながる。次に、なぜそうなったかの事例を話すと良い。
反応器を転用したとき、冷却能力をしっかり検証しなかったとか。生産能力を上げるとき、スケールアップをした時に、容器を大型化すれば冷却しにくくなると思わなかったなどだ。これは、人に関わるミスだが、設備に関する例もあげると良い。温度計の保護管の長さが適切でなかったことで、正確に温度を測っていなかったかとか、計器の点検をしっかりしていなかったためにやはり温度が正しく制御できなかったなどだ。
事故に関する教育をするときは、体系的に説明することだ。
ちょっと古い文献だが、安全工学という冊子に「異常反応をもたらす諸要因」という文章があるので紹介しておく。以下のURLを見て欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/18/1/18_42/_pdf/-char/ja
物質危険性を勉強したいなら、安全工学会の安全工学セミナーを聞いてみると良い。年一回しかチャンスは無いが、今年は、第40回安全工学セミナが。 9月中旬 第40回 安全工学セミナー(物質危険性講座) 化学会館(予定)
そのほか、10月中旬 第40回 安全工学セミナー(危険現象講座) 化学会館(予定)
        11月中旬 第40回 安全工学セミナー(プラント安全講座) 化学会館(予定)
【2019年】
1月中旬 第40回
安全工学セミナー(安全マネジメント講座) 化学会館(予定)
もうすぐ、正式な日程と内容が公開されるはずだ興味のある人は、安全工学会のホームページを見て欲しい
http://www.jsse.or.jp/Events/Annual_cl/
昨年の講座内容は以下のURLだ
http://www.jsse.or.jp/mujgndqes-24/#_24

2018年05月24日

事故や災害に思う

私の講義でリスクマネージメントという講座がある。
https://www.sangishin.com/kougi/detail/30
http://www.ccjc-net.or.jp/~ccji-pj/s2.html
今年度の講義テキストの見直しをしている。半年ぶりの見直しだが,けっこう修正するところが有る。
半年も経つと,色々な情報が入ってくるからだ。今まで,見ていた視点とは違う見方でリスクが見えてくるからだ。
多くの企業でリスクマネージメントを実施していると安全の年間計画に書いてある。リスクマネージメントをすることは良いことなのだが、リスクマネージメントをすると言うことはそうたやすいことではない。
まず、危険源をきちんと見つけ出す能力が身に付いているかだ。危険なこと,危険な物を知らなくてはリスクマネージメントはおぼつかない。
今の世の中、会社にいれば自然と危険源は何かがわかるわけではない。事故や災害を減らせば,危険なことは自分のみの周りで起こる確率は減ってくる。安全になれば経験はどんどん減っていくからだ。
HAZOPをやっていれば,事故は起こらないと考えたら大間違いだ。HAZOPも危険源を見抜く能力が付いていなければ深掘りはできない.
こんな事故事例があるので紹介しておく。
プラントを停止するときポンプを循環運転していた。すぐに止めるはずが,放置したことにより長時間循環運転していた。
ポンプは循環運転をすると,液体の温度が上がる。この液体は,温度に敏感な物質で,温度上昇により爆発した事故だ。http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200051.html
循環運転が事故になることもあると言うことだ。
あなたは,この事故事例を見てHAZOPでこの危険源を見抜けますか。HAZOPを実践的に使いこなすには、HAZOPで失敗した事故事例を数多く学んでおくことだ。
私もHAZOPの講座はそれほど多く開催はできないが,講座を9月に企画しているので紹介しておく。
https://www.e-jemai.jp/seminar/jikoboushi_rousai_H30.html#●

2018年05月19日

事故や災害に思う

前回のブログでは,フランジ部に使われるガスケットの変更管理の話をした。今回は、やはりフランジに関わる変更管理の話をしたい。
省エネをすればプロセスの温度が変わることがある。化学を得意とする,プロセスエンジニアーが省エネ設計をすることになる。
当然化学的な,省エネによる影響は検討することとなる。ところが,機械的な影響は見過ごされることが多い。
配管の温度が上がれば、当然フランジの締め付け力への影響が出る。
スタートアップの時、フランジ部の温度上昇に合わせボルトの増し締めをするホットボルテングという作業が行われる。
一回増し締めをすれば良いというわけでは無い。何回かに分けて,増し締めすることもある。
保全担当者にとっては,けっこうノウハウのいる仕事だ。
省エネで温度が上がれば,このホットボルテングのやり方も変更する必要がある。
ところがプロセスエンジニアーが保全部門などへ温度の上昇を伝えていないと,ボルトの締め付け力が足らなくて事故になる。
過去の事故事例を見ると、世の中でけっこうな頻度で起こっている。
こんな事故事例があるので紹介しておく。このURLを見て欲しい
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200056.html

2018年05月10日

事故や災害に思う

ガスケットの変更に関わる事故事例を紹介する。2000年代頃から、石綿がガスケットに使えなくなってきたのを覚えていると思う。
これに併せて、ガスケットの変更が各工場で行われたはずだ。
変更すれば何かが起こるというのは常識だ。
当時ガスケットメーカも非石綿の同等品というのも売り出したものの石綿からの切替えに時間も無かった。
同等品とは、カタログには書いた物の、色々な実験ができていたわけでは無い。
さらにガスケットを使うユーザー側も、メーカーの書いたカタログ条件とぴったしあうガスケットを選択していたわけでは無い。
この結果、非石綿ガスケットに交換して何年かするとガスケットが破れたりするトラブルが発生している。
温度や圧力の激しいところではやはり、石綿でできたガスケットにかなうわけが無いからだ。
高圧ガス保安協会などが発表している、事故事例の中にもガスケット変更が関係する事故が時々散見される。https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-231.pdf
皆さん方の工場でも、使用条件が厳しいところは非石綿化したガスケットは早めに開放して問題が無いか確認して欲しい。
たかがガスケットの変更と思わないで欲しい。

2018年05月08日

事故や災害に思う

"ゴールデンウイークの休みもそろそろ終わりだ。原稿の締め切りが迫っていて、安全工学会向け原稿をやっと書き終えた。 今回は「変更管理」を材題にした原稿だ。化学プラントの変更管理の事故と教訓を材題に書き下ろしてみた。最初に変更管理という物は、いつ頃から概念として取り込まれてきたのかを書いてみた。日本では、2000年代に入ってからだが、アメリカはその10年前から管理要素として取り入れている。やはり、最新の技術というのは、外国からは10年遅れで導入されてくる。 インターネットが使えるからと言って、すぐに技術が伝わるわけでは無い。とはいえ、インターネットでしか外国の技術をただでそう簡単に取り入れられるわけでは無い。高い飛行機代を払って学会に出かけるわけにもいかない。 本題に戻るが、化学プラントの「変更管理」という文献は少ない。化学工学会の文献は有意義なものであるが、それ以外いい文献には見当たらない。 時間はかかるが、「化学プラントの変更管理の失敗事例と教訓」などという書籍を発行してみたいもんだ"

 

2018年05月05日

事故や災害に思う

液封現象

物理化学現象を知らないと事故は起こる。液体は、密閉した空間に閉じ込めて加熱すると液膨張する。膨張した液体は、とんでもない圧力を発生する。閉じ込められた、液体が膨張すればとんでもない圧力になるのだが、世の中では余り知られていない。
金属でできた、容器でも簡単に破壊するくらいの圧力は発生する。
この現象は、自分の目で見て見ないとわからない現象だが現実存在する。
液封現象で、金属製の容器が壊れた事例が公開されているので参照して欲しい。以下にホームページのアドレスを記載する
福岡県の消防局の情報です ポンプが液封で壊れている写真があります

http://119.city.fukuoka.lg.jp/app/files/News_174_pdf_file.pdf

高圧ガス保安協会に、サンプリング容器の液封事故情報と写真があります

https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2008-533.pdf

2018年04月12日

事故や災害に思う

長期間停止した設備の再稼働時のトラブルだ。

東北大震災以降長期間停止した、原子力発電所を再起動している。先日、九州の原子力発電所を再稼働してしばらくして蒸気が漏れたという新聞記事をみた。配管からの蒸気漏れだと言うことだったので、ガスケットの不良かと思っていた。
昨日、いつもよく見る世界のタンク事故情報を公開しているホームページを見ていたら、原子力発電所の蒸気漏れ事故の情報が細かく記載されていた。2018年4月8日号の記事だ。写真もあるので興味のある方はみて欲しい。
http://tank-accident.blogspot.jp/2018/
蒸気漏洩の原因はガスケットではなく、配管の腐食だと書いてあった、直径1cm程の穴が開いていたという。
蒸気の配管だから、当然保温がしてある、通常、蒸気を流していれば保温材の中は温度が高いから、保温材の中に雨水が入っても蒸発してしまう。
ところが、長期間蒸気を停めてしまえば保温材のすきまなどからしみ込んだ雨水などは配管を腐食させてしまうことになる。
この原子力発電所は、約7年間という長期にわたって停めていたという。
蒸気配管の材質は鉄だった。腐食するには十分な材質だ。保温材の外側には、鉄が錆びたようなシミが付いていたという。
保温材を被った配管でシミが付いていたら、その場所で事故が起こる可能性があると思って欲しい。
鉄さびのようなシミであれば、内部で配管の腐食が進んでいると考えて欲しい。もう一つ油のようなシミだ。配管の上のほうに油のようなシミがあるならそこから配管内部に油がしみ込んでしまったと考えて欲しい。蒸気のような高温配管であれば、保温材にしみ込んだ油が温められ発火点を超え発火することがある。油は新品の時の発火点と、古くなったものでは発火点が変わってくる。過去の発火事故の文献などでは、油は古くなると発火点は新品時の2/3迄下がっている事例がある。つまり、火が付きやすくなっているのだ。更に、油は空気と触れて酸化するとき、酸化熱という熱を出すから保温材の中の温度は酸化熱も加わり相当高くなると思って欲しい。
現場をパトロールするときの感性を上げて欲しい。たかが配管にシミが付いているだけだと思わないで欲しい。保温材の中で何かが起きていると考え、早めに保温材を外して点検することが事故防止の基本だ。

2018年04月11日

事故や災害に思う

詰まったバルブを安易に針金などでつつくなと伝えて欲しい
バルブが詰まっていれば、安易に針金などでつついてみようと思う人は沢山いるのでは無いか。誰でも、バルブが詰まれば詰まりを解消したいと思うのは当たり前だ。ところが、この詰まりを取り除く作業には、思わぬ危険が潜んでいる。
詰まっている、バルブの詰まりが突然解消したらどうなるか考えて欲しい。当然、詰まったものが噴き出してくるはずだ。それで終われば良いのだが、たいていはバルブを開けた状態にして、詰まりを取り除こうとしているはずだ。
つまり、詰まりがとれればバルブは開放状態だから大量の液やガスが、その後噴き出してくる。周りは、ガスや液が噴き出すのだから、霧がかかったような状態になるという。可燃性の液やガスが噴き出してくれば、静電気で着火する。毒性ガスが、噴き出してくれば周りにいる人がばたばたと倒れていく。事故を、経験したことがない人はこの状況を予想できないだろうがこのような事故は過去に幾度も起きている。
今から半世紀ほど前の事故だが、詰まっているバルブを針金などでつついて詰まりを解消しようとして起きた事故がある。石油会社で、装置には硫化水素が含まれていた。定期修理に入るため、装置を停止していた。あるドラムで、液が抜けなかった。硫化水素を含む液が中に入っていた。現場の責任者達は、なんとか脱液しようと焦っていた。誰かが、針金を持ってきてドレン弁をつつき始めた。バルブを開けた状態のまま針金でつついていた。しばらくして、突然詰まっていたものが取れ大量の硫化水素という毒性ガスを含んだ液が噴き出してきた。周りにいた人達が次々に倒れ込んでいった。
毒性ガスが噴き出すとは思っていなかったので、防毒マスクも用意されていなかった。多くの人達がそこで命を失った事故だ。
バルブが詰まっていたら安易に針金でつついて詰まりを取ろうとしないで欲しい。バルブを開の状態にして。突然詰まりがとれてしまえば液やガスが噴き出してくる。弁が開放状態なのだからすごい勢いで噴き出してくる。近づけないから、弁を閉めることもできない。とても恐ろしいことが起こると思って欲しい。

この手の事故は繰り返し起こっている。約20年前の公開されている事故事例だ
過去の事故事例を一つ紹介しておく 参考にして欲しい
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200103.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00049.pdf

2018年03月26日

事故や災害に思う

たかが排水と考えている人は多いのだろう。排水が事故を起こすことは多い。こんな事故があるので紹介しておく。排水ポンプのストレーナーが詰まり、ストレーナ内の液などを排水溝に4m3放出した。温度は100度近く有りかなりの高温だった。廃液には可燃物は含まれていないから、大量に流しても大丈夫と運転員は考えていた。
ところが、排水溝には交代勤務の前方の運転員がわずかではあるが、可燃性の液体をわずかに含む廃液を流していた。そこに、100℃もある排水を流し込んだことにより、可燃性液体は気化して可燃性蒸気となり周囲に拡散した。当然、ガス検が鳴るような状態になった。ガス検が鳴るようなガスの濃度だから、近くに発火点以上のものがあれば着火する。
悪いことに、近くに高温熱交換器があり、高温のフランジ部がむき出しであったことからそこで可燃性ガスが着火して火災となった。
幸いなことに、運転員が現場にいたのですぐに消火器で消し止めた。何十年前の出来事だが、いまでも思い出す出来事だ。
スチームや高温水を排水溝に流せば、可燃性液体は簡単に気化して可燃性蒸気が発生すると思って欲しい。
高温部をむき出しにしないことだ。保温材などで覆って着火のリスクを下げて欲しい。

2018年03月22日

事故や災害に思う

化学物質の反応が原因で事故が起こると言うことは、化学産業に勤める人は「おぼろげながら」知っているはずだ。「おぼろげながら」と言ったのは、実際に事故を経験した人はそれほど多くはいないからそう言ったのだ。つまり。多くの人は化学会社に勤めていても事故に遭うことは皆無だからだ。
私は、40年間勤務して爆発を一回、破裂を一回しか経験したことはない。工場勤務が多かったので、事故に遭遇し得たのかもしれないので、工場勤めでなければたとえ化学会社に勤めていても事故に遭うことはないだろう。
私の知っている書籍で、「反応危険性-事故事例と解析」(発行所 施策研究センター)と言うのがある。物質名を切り口に事故事例を書いた書籍だ。
この本を読んでわかるのが、化学反応の事故は基本的に発熱反応を制御できなかったと言うのが本質的な原因と読み取れる。
いつも私の講演や講義で、反応熱に対して冷却能力は何倍の安全率を取って設計しているか検証してみて欲しいと言っている。自分が運転している装置に関して、発熱と冷却能力を安全率という切り口で考えて欲しいのだ。
熱量に関しては、発熱量に対して冷却能力と比較して安全率という切り口で企業は余り検証していない。機械工学の世界では、強度に対して安全率は3と定め、JISなどに基準が示されている。しかし、化学工学の世界では発熱と冷却という切り口で明確に安全率に関する指標はないというのが実感だ。
そこに、化学物質の反応に関わる事故の根源があるといつも感じている。

2018年03月18日

事故や災害に思う

化学物質の反応が原因で事故が起こると言うことは、化学産業に勤める人はおぼろげながら知っているはずだ。おぼろげながらと言ったのは、実際に事故を経験した人はそれほど多くはいないからそう言ったのだ。化学会社に勤めていても事故に遭うことは皆無だ。私は、40年間勤務して爆発を一回、破裂を一回しか経験したことはない。工場勤務をしていたから事故に遭遇し得たのかもしれないので、工場勤めでなければたとえ化学会社に勤めていても事故に遭うことはないだろう。
私の知っている書籍で、「反応危険性-事故事例と解析」(発行所 施策研究センター)と言うのがある。物質名を切り口に事故事例を書いた書籍だ。
この本を読んでわかるのが、化学反応の事故は基本的に発熱反応を制御できなかったと言うのが本質的な原因と読み取れる。
いつも私の講義で言うのは、反応熱に対して冷却能力は何倍の安全率を取っているのかだ。
熱量に関しては、発熱量に対して冷却能力と比較して安全率という切り口で企業は余り検証していない。
そこに、事故の根源があるといつも感じている。

2018年03月17日

事故や災害に思う

東北大震災からもう7年が経つ。3月11日になるとあの日の情景を思い出す。

私は、その日千葉県茂原市にある技術研修センターと言うところに勤めていた。その日の朝もいつも通りに、駅から工場の一画にある技術研修センターへ向かっていた。いつも通る交差点があるのだが、右折車が多くかなり気に掛けて渡るところがある。忘れもしない3月11日はその右折車がとても印象に残っている。猛スピードで、横断歩道を渡っている私の目の前を横切っていったのだ。そのとき何かいやな予感はしたが、まさか午後に大震災が起こるとは予想もしなかった。


当日、私の勤めていた技術研修センターでは安全工学会が主催した見学会で多くの企業の安全担当者が安全体験施設などを見学していた。14:46分床がうねるような勢いで大きく揺れ始めた。携帯の地震警報も鳴りひびいいた。すぐに、テレビをつけると最初のうちは状況がわからなかった。
しばらくして、あの津波の様子がテレビに映し出されるとやっと状況が飲み込めた。その後も余震が続いた。
技術研修センターは多くの人が集まるところなので、地震対策には力を入れていた。50年前のコンプレッサールームを転用したものではあるが、柱そのものはしっかりしていた。耐震性を持たす為に、かなりの追加梁を入れて補強したのを覚えている。おかげで、どこも壊れることもなくびくともしなかった。
当日は、電車も停まり帰宅できない安全担当者の方を会社の宿泊施設でお泊めし、食事の手配をしたのを覚えてる。研修施設なので40人分の宿泊施設を持っていたのが役に立った。その後、計画停電という形で、電気は途切れたが研修施設には停電訓練などに使う非常用発電機を保有していたので停電時も発電し情報を得ることができた。夜中2時過ぎだったと思うが、工場側の安全を確認して同僚の車で震災当日自宅に帰ったのを思い出す。帰り道、東京湾側を見ると真っ赤だった。千葉県の市原という所で、製油所のタンクが爆発していたからだ。あれからもう7年だ。

2018年03月11日

事故や災害に思う

検査数値のデーターデーター改ざん問題が続いている。昨年末の、自動車会社の検査資格を持たない検査員による最終検査問題。金属業界での検査データー問題。最近では、新幹線の台車製作時の強度不足問題など問題が続いている。報道はされるものの、時間が経つにつれ忘れ去られていく。
報道も、現場に問題があるような表現でなされている。確かに、問題の原点は現場であるが、なぜ検査部門でそれを防げ無かったかについては深掘りされることはない。
最近のJR台車問題については、検査の話はほぼ素通りだ。現場の監督の資質が低かったと決めつけている。現場には、削るなと表示がされているのに現場は削っていたから問題だと報道されているが、削るなと現場に掲示した人達は一体何を管理していたのだろうか。
事故が起こるのは、危険源が職場に存在するからだ。しかし、それを管理する組織は、企業には存在する。いわゆる管理部門だ。
製造部門と管理部門がバランス良く存在しなければ事故になる。
1990年代にバブルがはじけて、徹底的に削られたのが管理検査部門ではないだろうか。管理検査部門は、トラブルがなくて当たり前だ。何もトラブルがなければ、安易に人を減らせる部門だと経営側には考えられてしまう。結果として、人減らしが行われてきて、今の不祥事が顕在化したのだと考えるべきだ。
バブルがはじけた1990年の検査管理部門の人数と、現在の人数を比較して欲しい。半分にも満たない人数しかいないのが現状ではないだろうか。

2018年03月05日

事故や災害に思う

"FRPなどの非金属でできたタンクの天板から人が転落する事故がある。太陽の紫外線などで天板が劣化していて強度が無くなっているのに、それを知らずに人が乗ってしまうからだ。2011年8月24日 千葉県の船橋で2人が塩酸の入ったFRPタンクに落ちて死亡事故が起きている。 http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E8%B8%8F%E3%81%BF%E6%8A%9C%E3%81%8D

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大学の研究室でのFRPの劣化について調査報告が以下のURLにある http://www.cit.nihon-u.ac.jp/kouendata/No.39/6_MA/6-009.pdf

この事故以外でも過去に同様の事故が起きている。 http://www.kotobuki-grp.com/technology/pdf/topics1.pdf

FRPなどの樹脂でできているタンクは、古くなれば太陽の光などで劣化する。どんなことがあっても、天板の上には人を入れてはいけない。 FRPタンクを保有しているなら一度は上記の資料は読んで欲しい文献だ"

2018年03月02日

事故や災害に思う

新幹線の台車仁亀裂が入った重大事故で、今日事故の原因と思われる報道がされていた。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180228/k10011346261000.html


本来削ってはいけないて鉄板を削ったせいだと報道されていた。本来7.0mmの鉄板でなければいけないと言うに削ったことにより4.9mmになっていたと報道されていた。
この手の報道で、注意しなければいけないのは、なぜ削りすぎたのかと言うことだ。何か、事情があったはずだ。そこに、メスを入れないと問題の本質は見えてこない。何か削らなければいけない事情があったはずだ。でも、報道ではそこは一切触れていない。
メーカーが削りすぎたミスだと報道からは読み取れるが、JR側も素人では無い。JR側からも何か、削らせる要求ががあったのかも知れないという考えるべきだ。JRも台車の製作メーカーも素人では無い。何かがあったと考えるべきだ。
事故の要因は、必ずしも報道されるとは限らない。時間が経つと、知らないうちに忘れ去られる。
だから繰り返し事故が起こる。事故の連鎖を停めるには、真実が必要なのだが真実が見えてくることはなかなか無い。
そこに事故の再発防止の難しさがある。

2018年02月28日

事故や災害に思う

日本で、HAZOPという安全性評価システムが使われ始めて約40年になる。化学プラントを運転していればトラブルが起こる。トラブルが起これば、流量や温度が通常の値よりずれる。この「ズレ」に着目したのがHAZOPという手法だ。
「ズレ」がトラブルを起こす引き金と考え、事故の安全性評価を考える手法としたのだ。
HAZOPは今まで通常運転時からの「ズレ」に着目して利用されてきたが、最近「非定常HAZOP」という使われ方も進んできている。
スタートアップやシャットダウウン時など、時間とともに状態が変化する過程で「ズレ」が事故を起こすことがあるとの観点からだ。
作用手順書には書かれているのに、やるべきことをやらなかった。これもズレだ。ガイドワードで言う、「NO]という事項だ。
やるべきことの、タイミングが悪かった。これもズレだ。時間的なズレだ。
「ズレ」というキーワードに着目して欲しい。事故は、設計者や管理者の思い道理にならなかったことにより起こる。
自分の思い道理にならなかったらどうなるかを考えて欲しい。

2018年02月10日

事故や災害に思う

1月3日の私のブログで、ガラス製のぞき窓の破裂事故について紹介した。事故から2年も経つのに、事故の原因が公開されていなかったからだ。数日前、警察がこの事件で企業の関係者を起訴したニュースを見て原因が書いてあったので紹介しておく。
マニュアルで決められた濃度より高い濃度の硝酸を使っていたと書いてあった。決められた濃度を守らず、3倍の高濃度だと書いてあった。
濃度の高い硝酸のが効率良く作業ができたからとの記述もある。
硝酸は水で薄めると沸点は高くなる。市販されている、60数パーセントに薄めたものでは120℃くらいの沸点だ。
今回の事故での運転温度は80℃とか言っていたので、薄めた硝酸を使っていれば、希硝酸はそれほど蒸気圧は高くなかったはずだ。
ところが、硝酸は濃度を上げれば純硝酸なら沸点は83度になる。事故時は85度になっていたとの情報もある。
濃度の高い硝酸なら突沸が起こってタンク内の圧力が一気に上がってガラス窓が破れた可能性がある。
SDSで、沸点という温度を見たら突沸が起こる可能性がある温度だと思って欲しい。突沸とは、急に圧力が上がる恐ろしい現象だから。
起訴に関するニュース情報
https://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00383500.html
事故発生時の報道記事
https://mainichi.jp/articles/20160104/k00/00m/040/068000c

2018年02月01日

新潟地震

2日前神戸大震災のニュースが流れていた。23年前の直下型地震だ。
化学業界で地震による影響は過去に何回もある。日本で最初にコンビナートが地震で影響を受けたのは、今から半世紀前の1960年代だ。当時新潟にあったコンビナートの製油所タンクが大火災を起こした。自衛隊や東京からの消防応援でもなかなか火が消えなかった。泡消化剤は、米軍からもらって対応したほどである。消火器剤も十分ではなかった。地震でこれほどの被害がコンビナートで起こるなど想定していなかった時代である。新潟地震の当時の調査記録が、インターネットでも公開されている。興味のある方は見て欲しい
新潟地震 火災に関する研究 非常火災対策の調査報告書 昭和39年度
http://tsunami-dl.jp/document/144
私の住んでいる千葉県は小さな揺れがかなりある。地震ほど怖いものは無い。地震のための投資を怠らないで欲しい

2018年01月19日

参考文献、書籍等紹介

インターネットを見ていたら技術伝承の特集記事が出ていたのを見つけた。2016年2月頃の記事だが、取り組むべき課題や各社の取り組みなども紹介している。参考になるところも多いので、興味のある方は見て欲しい
出典は化学工業日報のホームページからだ まず記事の(1)は下記のURLだ
http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2016/02/01-23391.html
この頁を開けた後「技術伝承」という検索キーワードを画面右上の検索欄に入れて、さらに別の記事を見ていって欲しい 記事は全部で9つある。(1)~(9)までだ

2018年01月09日

事故や災害に思う

今日は1月3日だ。過去、正月に起こった事故を調べていたら、2016年1月3日埼玉県で起こった事故を思い出した。
http://toyokeizai.net/articles/-/99306

硝酸を含む物質が入ったタンクの事故だ。作業中突然タンクのガラス製ののぞき窓が破損して毒性のある硝酸ガスが噴き出した死亡事故だ。2人が死亡し、2人が負傷した事故でもある。6つあるのぞき窓のうち、3個が破裂していることから何らかの圧力上昇があったものと思われる。死亡しているのは、社員ではない。派遣作業員だ。派遣の人が災害に巻き込まれる傾向は、近年ますます増えてきているような気がする。
 圧力容器なら、法令上安全弁の設置が求められるがタンクなどの非圧力容器であれば法令上の義務はない。多くの事故を見て見ても、安全弁さえあれば防げたのにと思う事故は多い。純粋な硝酸の沸点は83度だ。運転していたときの温度は、80度だ。事故時は、85度になっていたいう。
 事故の可能性としては突沸がる。突然の蒸気発生で瞬く間に、圧力が上がったのだろう。
HAZOPをやられている企業は多いはずだが、こののぞき窓についてはチェックが甘い気がする。甘いと言うより、全く危険源として意識していないケースが多いのではないかと感じている。
あれから2年が経つ。企業のホームページやCSRを見て見たが事故の原因は何も書かれていない。貴重な事故の教訓が公開されずに終わってしまうのが今の現実だ。だから、事故は繰り返される。

今年も少しでも多くの人に私の知っていることは、安全講座や講演活動を通じて伝えていきたいと思う。

そう思った正月3日であった。

2018年01月03日

事故や災害に思う

新幹線台車亀裂事故に思う

新幹線の重大インシデントの報道が伝えられて久しくない。音や異音、振動が出ているのに300K近くで走る新幹線が3時間も走り続けたというものだ。台車に亀裂が入っている写真を見せられてぞっとした人は沢山いるのではないか。あれほどの傷が出来てているのになぜ、長時間走らせたのか疑問に思っている人は多いだろう。
 人間は異常を感じてもそれを否定しようとする性質がある。特に、新幹線のような公共交通機関を走らせている人にとってはなおさらだ。運転を制御する列車運行指令所の人にとっては寸分の遅れなく運行させるのが与えられたミッションだ。それを、停止させたり遅らせたりすることは、自分のミッションに反することだ。自分の目や、耳で直接感じられない間接的な情報であればなおさらだ。
 化学プラントでも昔こんなことがあった。工場に地震計が設置された。これにより、正確な地震のgal(地震時の加速度)がだれでもわかるようになった。150gal以上の地震が起きたときは、化学プラントを停止するというルールが決められた。あるとき、150galを越える地震が発生したとき、あるプラントの製造課長はルールに従いプラントを停止した。しかし、いくつかのプラントの課長はプラントを停めることはしなかった。たいした地震ではないからと勝手に解釈し運転を継続することを優先したのだ。
 工場長は、それを良しとはしなかった。たまたま、事故が起きなかっただけで、もしかしたらプラントを停めなければ事故になっていたかもしれないからだ。工場長は、企業で言えば経営トップだ。経営トップが曖昧に、停めなかった製造課長を良しとしていたらいつか事故は起こる。経営トップが安全に停めることを常に繰り返し言い続けない限り現場の判断でなかなか停めることはない。事故後の記者会見で経営陣は、教育を徹底すると言っていたが、「教育」という問題以前の話のような気がする。停止するときの判断基準などを、誰でもわかり易く理解できるルールなくして、教育は出来ないはずだ。精神論ではだめだ。判断基準が「見える化」されていたのか、今後の調査報告を待ちたい。

2017年12月27日

事故や災害に思う

労働災害防止に向けて企業では多くの活動が展開されている。作業の中に危険なことが存在するなら、そのリスクを評価して対策を打っていくのが一般的だ。一つ一つ作業毎に、リスク評価を行うわけであるが、作業中の時だけを評価していれば良いわけでは無い。作業開始前の始業点検時などでも災害は起こる。作業終了時にも、同様に起こる。
例えば、始業点検時身を乗り出していていたりして動かし始めた機械に巻き込まれることもある。作業終了時も、早く終わらせようと焦っていて労働災害を引き起こすこともある。本質的なところを調べてみると、元々規定の作業時間で終わらない事実があるのに管理者がそれを見過ごしていたことも関連する。場合によっては、生産量が増えていて現状の人数では対応できない事実があるのに管理者がそれを放置していて労働災害が起こることがある。
労働災害が起こると、災害を起こした本人に全責任を負わせていては災害の再発防止は図れない。4M法などできちんと解析して環境に問題が無かったのか、管理という側面で問題は無かったのかなど深掘りして欲しい。労働災害は、システマチックに対応していかないと再発の目をつぶすのは難しいからだ。

2017年12月12日

事故や災害に思う

化学工場で事故を起こせば、犯罪となるかどうか必ず警察の捜査が始まる。しかしながら、化学物質の関係する事故は警察も専門家の助けを借りなければ捜査は容易ではない。犯罪要件として成立するかを見定める必要があるからだ。
犯罪として成立するのは、危険だとわかっているのに必要な対策を講じていなければそれは犯罪となる。しかし、危険だと知らなければ、それは犯罪だとして罪を問うことは出来ない。
技術に関わる世界は、未知の分野が存在する。まだわからない分野を取り扱うことにより技術は進歩する。特に化学の世界はそういう分野を扱うこともある。
今日のニュースを見ていたら、3年前に四日市のコンビナートで起きた熱交換器の爆発事故の警察の処理が終わったと書いてあった。検察庁に書類は送ったが、起訴は求めないという内容だ。理由は、専門家から「予見は困難だった」という見解が示されているとという報道がなされていた。爆発で5人が亡くなった大きな事故だ。法律的な天秤にかけるとこういう結論になるのかもしれないが、この事故も事前に発火などの兆候もあった。
何かこの物質はおかしいと感じて行動を早めに起こしていれば防げたのではないかと思われる。
多くに事故は、事前に何か小トラブルなどが起きている。小さなトラブルを見逃さないで欲しい。常に変化を感じ取って欲しい。
化学物質を扱う限り未知の分野はある。常に、事故の予兆を読み取って欲しい。

 

2017年12月05日

事故や災害に思う

化学工場で事故が起きなければ良いなと思っていたら12月に入っての最初の日に事故が起きた。富士山のよく見える富士市と言うところらしい。
粉体の製品を袋つめしているときに爆発が起こりその後火災になったという。ニュース映像を見るとすごい勢いで、建屋内から火が噴き出していた。残念なことに、現場で作業している人が多く巻き込まれ死者まで出てしまったという。
粉塵爆発というのは、ガス爆発より被害は少ないと思う方がいるかもしれないが過去の事例を見ると多くの死亡者を出す威力のあるものだと思って欲しい。
ガス爆発というのは、着火爆発して爆発は一回で終わる。しかし、粉塵爆発は粉塵を巻き上げながら何度も爆発するので、爆発の範囲も広範囲にわたる。さらに、粉を扱う所は建物などの内部であることから、爆発すると爆風が外部に放散されずに建屋内の爆発となる。更に、周りに作業する人がいるのだから、人が巻き込まれるから被害者が多くなる。
粉塵爆発の事故事例を書いているホームページを紹介しておく。粉塵爆発以外の事故も多く紹介しているので興味のある方は見て欲しい。
http://pe-sawaki.com/wp/wp-content/uploads/2014/07/20081126.pdf

2017年12月02日

事故や災害に思う

排水タンクの爆発事故を紹介する。死者17名の大惨事だ。約20年ほど前にアメリカで起こった大惨事だが、教訓となるものが多い。

以下の安全工学会学会誌に詳細が書かれているので興味のある方は見て欲しい。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/32/3/32_200/_pdf

多くの死者が出たのは、現場に人が沢山いたからだ。タンクのガスを圧縮する、圧縮機の修理が終えたので起動させようと現場に多くの人がいたので結果として多くの人が爆発に巻き込まれたのだ。現場に人が沢山いたことが犠牲者を増やしてしまった。

この企業は、事故が起こるまで140万時間も労働災害は無かったとの記述がある。今まで事故が無かったというのは、将来事故が無いという保証は一切無いということでもある。

事故を起こした排水タンク周りは、しっかりとHAZOPをやってはいたという。HAZOPはやっていても、事故は起こるということだ。HAZOPは、やることに意味があるわけでは無い。「ずれ」という現象を使って安全性評価をする手法は、シンプルで有り上手に使えば危険なことに対ししっかりと安全性の評価ができる。しかし、ずれで起こるHAZARDは深掘りしなければいけないところは深掘りが必要だ。広く浅くでは、HAZOPをやっていても事故になる。この事故はそれを物語っている。

 この排水タンクは、コーンルーフ型のタンクだ。廃液の中には酸素を発生する物質が含まれていた。更に廃液には、可燃性物質もあったので、タンク内には可燃性ガスが存在していた。当然、危険なのでタンク内の酸素濃度を測定する酸素分析計が1台設置されていた。酸素濃度計と連動して、チッソがタンク内に自動的に供給されるシステムが設置されていた。つまり、タンク内に、爆発混合気が出来ないように運転されていた。

 ところが、計器というものは故障することもあるものだ。つまり、計器が故障して、酸素濃度は低めに出ていた。計器は狂っていると思わず、運転員は酸素濃度が低いから安全だと思い込んでいた。指示が低いということは、チッソの供給量も連動して少なめになっていた。つまり、タンク内には爆発混合気が出来ていたのだ。

 タンク内のガスには、可燃性のガス分もあるため、一部を抜き出して有効利用する設計になっていた。つまり、タンクからガスを抜くために圧縮機が設置されていた。あるときこの圧縮機が故障して修理に出していた。その圧縮機が、修理から戻ってきて再起動する時に事故は起こったのだ。

圧縮機を設置復旧前に、一時的にタンクの窒素シールを停めて配管工事をしていた。つまり、タンク内にはチッソが入っていないため、爆発混合気が出来る状態をわざわざ作り出していた。

 その状態で、圧縮機を起動したのだから圧縮機はもろに爆発混合気を吸い込んでしまった。気体は圧縮すれば断熱圧縮現象が起こるから、爆発混合気の温度は一気に上がり発火点を超え着火爆発した。火炎はタンクへ逆流しタンク内に存在していた爆発混合気が一気に爆発したのだ。

 HAZOPの問題点を挙げると、NO,NOTのガイドワードをうまく使えていなかったことだ。つまり、チッソが「流れない」というずれを甘く見たことだ。人がチッソの手動弁を閉めて一時的にせよチッソを停めてしまうと言う重大な危険を考えなかったか、又は見落としたことだ。本来なら、HAZOPでは、安易にチッソを停められないように手動弁を施錠したり、自動弁も低流量にならないように流量制限機能を取り付けておくべきだった。

次は、LESSというガイドワードだ。少なめというリスクだ。酸素の分析計が故障して、酸素濃度を低めに出すというリスクだ。分析計とチッソを供給する流量調節弁は連動しているから、指示が低ければチッソ供給量は減少する。見方を変えると、爆発混合気を形成する方向へと進んでいく。

計器は故障すると考えれば、HAZOPではこの酸素分析計は2台以上設置して計器の信頼性を向上させるとしなければならなかったはずだ。

重要な分析計が故障して事故になることは繰り返し世の中で起こっている。特にこのような、爆発混合気を作らないための重要計器であれば冗長化するのがHAZOPの基本だ。

 もう一つのミスは、圧縮機に関するずれの見落としだ。気体は圧縮すれば、断熱圧縮という現象が起こる。つまり温度が上がるということだ。気体の発火点を超えれば当然着火する。温度が上がるというずれをどう見ていたかだ。圧縮機は、温度上昇があるというずれを甘く見ないで欲しい。

 色々書いたが、HAZOPを使いこなしていくには、多くの事故事例を学んで欲しい。事故事例を知らずして、安全性評価は出来ない。リスクマネージメントが叫ばれる昨今ではあるが、事故からの教訓を学んで欲しい。

2017年11月15日

事故や災害に思う

 多くの事故を見てくると静電気が原因の事故が実に多い。火災や爆発事故の着火源は、溶接の火花など目に見える火が着火源だと思う方は沢山いるのかもしれないが、化学プラントなどの事故は着火源は静電気が多い。

 溶接などの火は事故になると言うことは誰でも想像がつく。したがって、これらの着火源はしっかりと管理されているのが実情だ。しかし、静電気は目に見えない故に管理は難しい。

 脱液をするのに、バルブを思いっきり開けて急激に液を出せば静電気で着火することがある。流速は1m以下にせよと言われることがある。早すぎると、静電気が発生して着火することがあるからだ。金属製のバケツに液を抜き出すなら良いが、プラスチックのバケツに液を抜き出せばアースもとれないのでたちどころに着火する。

これから、静電気が発生しやすい季節になる。徹底的に静電気による着火事故を防止して欲しい。

2017年11月12日

参考文献、書籍等紹介

タンク内作業での火災爆発等の事故。

タンク内に入り人が作業することがある。タンク内で火災などが発生すれば重大事故につながる。本来、タンクの中に入らずに外から作業が出来れば良いのだがそうはいかない。どうしても、中に入ってやらざるを得ない作業があるからだ。中に人が入れば、酸欠事故になることがある。スラッジなどから、可燃性のガスが出てくるわけだから可燃性ガスの管理も必要となる。ガス濃度管理もさることながら、着火源を作り出さないことだ。作業でプラスチックのモップなどを使えば、静電気が起こる。カッパを着ていれば同様に人の動きで静電気が発生する。シャベルなどでタンクの底板をすくえば火花も発生する。硫化水素など毒性ガスもあるだろうから、中毒の注意も必要になる。過去に多くの事故が起こっている。

今回タンクの火災事故を紹介している情報を紹介する。世界の貯蔵タンク事故という、ホームページを見て欲しい。http://tank-accident.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

では、タンクの中に入って清掃するときなどのガイドラインはあるのかというとこんな物が存在する。アメリカの規格ではあるが ANSI/API2016 石油タンクの入槽および清掃に関するガイドラインというのがある。日本では、石油連盟から屋外貯蔵タンク清掃工事のガイドラインというのがある。手に入れられる人は見てほしい。

これらの情報は、危険物保安協会の冊子で過去に紹介されたことがある。石油連盟のガイドラインは、Safty&tomorrow NO112 2007.3 79-81頁だ。ANSI/API2016に関しては 、Safty&tomorrow No133 2010.9 60-64頁に記事がある。タンクローリーはマンホールから何メーター離せ。ベントガスは、地上に向けて放出するな。タンク内の可燃性ガス濃度は爆発下限界の何パーセント以下にせよなど具体的な情報が書かれている。

手元に無い方は国会図書館の複写サービスなどで文献を手に入れられるはずだ。

2017年10月22日

事故や災害に思う

廃液タンクや排ガスダクトなどの事故

人は「廃」や「排」などの字がつくと、危険だと思わない性質がある

いらない設備なのだから、たいして危険では無いと思い込むのだろう

ところが、多くの事故事例を見て見るとこの字が付いている設備は、結構事故がおこるものだ

廃液タンクや廃液ドラムなら、混触反応事故で火災や爆発事故が起こる 

排水ピットなどでは、近くで火気工事をしていて着火事故が起こる

液体ではなく排ガス関係設備でも事故は起こる

排ガスダクト内にあった堆積物を長期間清掃せず自然発火した事例も多い。工場でも起こるが、研究所でも良く起こる事故だ

実験室から出る化学物質が排ガスダクト内で堆積するからだ

排ガスダクトでは排気用のブロワーがあればこれも事故の発端になる

長期間点検をしていなければ羽根が腐食する バランスが崩れ振動がでる 

これを放置すると、羽根などの金属部品が周辺の金属と接触して火花が出て着火源となり堆積物に火が出る

それで火災となるのだが、ダクトの中の火災だからなかなか消火が出来ず大きな火災となることがある

自分の工場や研究室の排ガスダクトの中は蓄積物が溜まっていないか、排気ファンなどは羽根の腐食が無いか見て欲しい

排ガスファンや換気扇の能力が落ちるのも事故になる

排ガスを逃がせなければ、含まれている可燃性ガスなどの濃度も上がるはずだから

着火すれば火災では無く爆発になる 爆発混合気が出来ていることも多いからだ

換気扇はフィルターの目ずまりもみて欲しい 排気性能が落ちていれば事故になるからだ

何十年も管理されていなければすぐに見て欲しい 事故が起きてからでは遅いからだ

 

 

 

 

2017年10月21日

事故や災害に思う

酸素分析計の事故事例

排ガスラインなどには酸素濃度を測る分析計が取り付けられている。排ガス中のわずかに残った、酸素量を量るためだ。

排ガスの大部分は窒素などの成分だからどうしても危険なガスでは無いと人は思い込んでしまう。

酸素の分析計は色々な種類がある。可燃性ガスが存在するところでも使える物、使えない物など様々だ。

この中でジルコニア式分析計というのがあるが、この形式は可燃性ガスがあるところでは使えないが排ガスなどの高温ガスの測定が出来るのが特徴だ。

分析計を取り付けた排ガスラインに全く可燃性のガスが入り込んでこないのなら、この形式の分析計を使っても良いが万一可燃性ガスが漏れ込むなら設置対象としては不向きだ。

私も昔、ジルコニア分析計の校正をするために流す標準ガスを間違えて可燃性ガスを含むガスを流してボンと破裂して計器を壊した苦い思い出がある。

雑誌 計装という月刊誌がある。今年の一月から、シリーズ物で計装計器が起こす事故事例を紹介してきている

今月の10月号では、分析計の事例を紹介した。

この中で紹介した、実際の排ガスラインで起こっている事故事例を1件だ。 参考にして欲しい

情報の出典は http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/case_list_H12.html
開いたら、発生日 2000/7/12の事故事例を見てください
NO6の事例です 

 

11,12月号では調節弁や遮断弁などのトラブル事例を紹介する予定だ。興味のある方は見て欲しい

2017年10月18日

参考文献、書籍等紹介

 昨日京葉人材育成という人材育成組織で講義してきた。化学プラントの事故防止実践講座だ。その中で、変更管理も講義テーマにしている。

一時間しか話せないので、講義では不足するところもある。私のブログを使って情報を補っておきたい

変更管理に関する文献を紹介しておく。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/advpub/0/advpub_JOSH-2014-0006-SHI/_pdf

 労働安全衛生総合研究所の島田さんという人が書いている文献だ。化学プロセス向けに「変更管理」で考えるべきポイントを書いている。

とても良い文献なので一度は目を通して欲しい。

化学工学会に安全部会というものがある。そこで変更管理について検討を行ったときの資料もある。2009年から2012年にわたって検討されたようだ。化学講学会に参加している人は参考にして欲しい。

http://www2.scej.org/anzen/security/files/pdf/TR43.pdf

化学プラントの爆発火災災害防止のための変更管理の徹底等についてという2013年に出されている厚生労働省の通達がある。

これも一度は目を通しておいて欲しい。

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-54/hor1-54-26-1-0.htm

2017年09月28日

事故や災害に思う

 日本列島を秋台風が通り越していった。私の住んでいる千葉県は被害は出なかったが、東京湾アクアラインという千葉と東京側を結ぶ高速道路が一時通行止めになった。台風が来るとどんな被害がコンビナートで起こっているのかと調べてみた。

塩害の記録がある。碍子に塩が付着して電気設備に被害が出る現象だ。海沿いなら、注意して屋外の電気設備を点検しておくことだ。

タンク被害では、浮き屋根式タンクの雨水排水ますの点検を怠っていたことから屋根に被害が出たという記録がある。タンク天板の排水がうまくいかなければ、沈み込んでしまうからだ。倉敷のコンビナートで起きている。

http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CC0000167.html

コンビナート地区の停電もある。フレアーが一斉に吹くので、住民からの苦情も大きい。

高波で防潮堤を壊され配管に被害の出ることがある(火災爆発事故事例集<安全工学協会編>(コロナ社)2004年4月20日版188~194頁)

アメリカなどではタンクヤードへの浸水によりタンクが浮力で浮いたという記録もある。ハリケーンだ。大雨でタンク周りに水が来る場合は、タンク内を空に近い状態にしておくとこのようになる。しっかりと液を張っておくことだ。

浮き屋根式タンクで内部のポンツーンという浮きが壊れて事故になった事例もある。

http://kikenbutu.web.fc2.com/90_TUTATU-END/2013H25/H250731KI141TOKU154/H25KI141BETUTEN.pdf

電気の碍子などは時間が経ってから被害が出ることがある。しっかり清掃して事故を未然に防いでほしいい。

2017年09月19日

参考文献、書籍等紹介

医薬品開発における危険性評価という文献を見つけたので紹介しておく。

化学産業ではコンビナート事故などは報道されるが、医薬品関係企業の事故はあまり報道されることはない。しかし、結構危ない物質や反応もあり気を遣う産業ではある。製薬会社の人が書いている文献である。

参考にして欲しい

https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/37/6/37_401/_article/-char/ja/

2017年09月17日

事故や災害に思う

昨年北海道で自衛隊機が山に激突した事故の調査報告書が出ていた。

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170913-00000072-nnn-pol

調査結果によると、操縦士が誤って自動操縦機能を解除したうえ、それを知らせる警報や表示に気付かず、手動操縦に切り替わったことを認識していなかった。
 さらに、悪天候で視界が悪い中、機体が山に接近していることを知らせる警報にも気付かず、墜落を手動で回避しなかったという。機体に故障などはなかったとしている。パニックになれば警報音も人は見落とすと言うことだ。

 なぜ自動操縦が解除されたのか、別の新聞記事にはこう書かれていた。無線通話をするSWと自動操縦をオン・オフするスイッチの位置が接近していて、無線通話のSWを触ったつもりが誤って自動操縦のSWをオフにしてしまったと書いてあった。

 そんなに簡単に自動操縦SWが解除される設計になっていたのか疑問には思うが、操縦士のヒューマンエラとするには無理があるような気がする

設計面でもっと配慮できなかったのかと悔やまれる。

 多くの事故は設計の段階で、ヒューマンエラーをしつこいくらいに考慮していれば防げる。設計の段階で事故を排除することを試みて欲しい。

 

2017年09月15日

事故や災害に思う

 事故を起こせば労働基準監督署などから起訴されることが。労働基準監督署は労働法令に関し司法権のある役所だ。昔は事故を起こした直属の上司などが起訴されていたが今は違う。事故は企業の文化や組織体制にも問題があるからだという観点から直属の上司だけでは無く工場長や社長なども起訴の対象となる。企業のトップが本気にならなければ事故は減らせないからだ。お金や人事権を握っているのは企業のトップそのものだからだ。

 事故が起こるのその時には事故の情報は報道などで流れるが時間が経てば2度と事故の原因や対策などが公開されることが無いのが現実だ。結局事故の教訓をいかせない。特に、労働安全衛生法という法律面では何が問題だったのだろうと知りたいと思ってもなかなかいい情報が無い。

 そこで、私はこんな情報源を使って法律面での問題点などを調べている。興味のある方は参考にして欲しい。

http://labor.tank.jp/keijisyobun.html

2017年09月03日

事故や災害に思う

 昨日、高圧ガス保安協会が主催する事故の教訓と保安管理技術という事故事例セミナーに行ってきた。

私のブログで6月30日に書いた「今年1月に起きた和歌山の製油所大火災の事故」の説明があるというので興味を持って出かけてみた。

報告書の最終版が公開されているが、一つだけわからないことがあったからだ
http://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease_jxtg/2017/20170614_01_1150234.html

 

この事故は、製油所が数十時間に及ぶ大火災となった事故だ。住民も避難させられた大きな事故だ
なぜあんなに長時間燃え続けたのだろうと思って報告書を読んでみたら一応はその答えが書いてあった。

緊急停止システムはあったが、原料ポンプはそれに組み込まれていなかったと書いてある。つまり、現場でポンプをなんとか停めようと試みたものの火炎などで停められなかったという。

ポンプさえ停められれば、流れ出る油を停められ火炎は一気に抑えることが出来たと思われる
トラブルが起きたときの漏洩防止の基本は、圧力を下げ、温度を下げ、液レベルを下げ流出を停めることだ

今回の事例では、遠隔操作で原料ポンプをすぐに止められなかったことが長時間の火災につながったとも報告書から読み取れた
しかし、なぜ電気室にあるポンプの操作盤のSWを切ってすぐにポンプを停められなかったのだろうとずっと疑問に思っていた。

 

今回の事故報告会に参加して、その件について質問をした。

答えはこうだった。ポンプは現場で押しボタンを押して起動停止する方式で、計器室からの遠隔停止操作はできない方式だった。いわゆる現場操作型のポンプだ。。

この為、火炎で、ポンプの周りに近づけず現場で停止出来なかったという。

電気室に近づくことは考えたものの、電気室にも火が迫っていて結局電気室でポンプの電源SWを切れなかったという。


この事故の教訓は何かと考えてみると、ポンプを止められなかったことだ。ポンプが停まらないから、配管に開いた穴からいつまでも可燃物が吹きだし長時間火災となったことだ。

電気室がプラントの製造設備の近くにある場合は、このような事態が発生する可能性がある。

古い設備では電気室から現場への電線の長さを短くしようと、極力現場の近くに電気室を設置していたものだ。

火災が起きるととにかく現場に近づけない。電気室も火が迫ってしまえばこのような事態が起こる。

自分のプラントのどこかの配管が破れたら、現場に行かなくても安全に流出を停められるような装置になっているか検証してみて欲しい

2017年09月01日

参考文献、書籍等紹介

 化学プラントで事故が起こるのは、物質危険性、人と設備が原因だ。ポンプやコンプレッサ-など機械の故障が原因で起こる事故は公開されている資料や文献も多い。計装設備や電気設備が原因の事故となるとやはり情報源は少ない。

 計装関係の情報を発信している雑誌社から頼まれて「計装」という月刊号に計装設備が関係するトラブル事例という記事を書いている。

http://www.ice-keiso.co.jp/backnumber_detail/1701editdetail_01.htm

 1月号から年末の12月までの毎月連載シリーズだ。流量計が原因のトラブル事例に始まり、液面計、圧力計、温度計、分析計、調節弁と計装設備が関わるトラブル事例を紹介してきた。

 もう12月号の原稿締め切りなので、最後のトラブル事例として遮断弁に関するトラブル事例を書きあげた。遮断弁がいざという時作動しなければ、化学工場なでは大変な事故になることがあると紹介している。

 たかが計装設備と思わないで欲しい。計装設備が引き金となって事故になるものも多い。興味のある人は一度目を通して欲しい。

 

2017年08月30日

事故や災害に思う

電気火災について書いてみたい。企業は製造設備そのものには、リスクアセスメントを実施するが付帯設備などには関心が薄い。倉庫がその一例だ。7月27日のブログでも過酸化物という物質を保管した倉庫での火災事故を取り上げた。

今回取り上げるのは電気室だ。工場のエネルギー源である重要設備だが、その管理は電気を取り扱う専門家に任されているため、専門家以外のチェックの目が入りにくい。怖いのは、電気火災だ。

電気火災の原因は、短絡だ。早い話がショートして火花が出るからそれが着火源になる。近くに燃えるものがあれば火が付いてしまう。電線類はプラスチックで出来ているものもあるから火が付く。

接触不良が原因という電気火災もある。電線などは、ネジ止めしているものもあるのでネジが長期間にわたって増し締めをしていなければ緩んでくる。接触不良が起こると、発熱して周りの燃える物に着火する。

もう一つは電気設備の経年劣化だ。時間が経てば、電気設備も劣化する。20年から30年経過した設備では、絶縁物の劣化でショートして火が付くケースが多い。最近は、企業でも電気設備の劣化が進み老朽劣化による発火事故も多い。

 2017年1月5日に、大分県の製鉄所で電気火災が起きた。2009年製の電気盤が火災となった事例だ。使用を開始して8年目だから経年劣化の事故では無かった。電気盤内にアクリル製の感電防止板があったことからそれが燃えたのがきっかけだ。電気盤内にあるリレーで火花が発生したという。そのリレーを制御する装置が故障して何度もリレーの接点が作動したことにより放電火花が発生したという。

 最初は、一つの電気盤の火災だったが初期消火がうまく出来ず次から次へと隣の電気盤へ延焼して、さらに周りの電線にも火が付き電気室全体が火災となった事故だ。損害は300億円と報告されている。製鉄所は8月初旬まで運転できなかったという大きな事故だ。

事故の報告書が企業のホームページから出ているので、興味がある方は見て見ると良い。

http://www.nssmc.com/common/secure/news/20170518_100.pdf

報告書にはアクリル板に火が付いたとある。アクリル板は電気の業界で、感電防止によく使われている。アクリルは一般的に可燃性だ。しかし、インターネットで調べてみると難燃性のものもあるらしい。自分の会社にある電気の盤に使われているのは一般的な燃えるアクリルか難燃性のアクリルか一度メーカーに聞いてみると良い。

電気室火災は、初期消火に失敗すれば消すのは難しい。水をかけられないからだ。

電気室のリスクアセスも電気の専門家だけに任せず企業全体で取り組んで欲しい。電気設備は今使えているから、設備更新は必要ないと考える企業経営者が多いが、30年以上使えば事故の確率は非常に高くなる。老朽化対策は長期計画でしっかりやっておかないと後で高いつけを払うことになる。

2017年08月25日

事故や災害に思う

着火源について、現場で使われる火気や反応熱などの事故事例は多く良く知られている。しかし、案外見落とされているのが「摩擦熱」だ。摩擦が起これば熱が発生する。当然、発火点以上になれば、物質は発火する。火災になるか爆発になってしまうかだ。

 ベルトコンベアーなどの火災はこの摩擦熱が原因であることが多い。ゴムという可燃物が存在するから着火する。

ロータリーバルブも摩擦熱に注意する必要がある。内部に歯車があるからだ。歯車部の摩擦で、摩擦熱により着火爆発が起きている。温度に敏感な過酸化物をロータリーバルブで輸送していて起こした事故もある。

 排気ダクトなどの火災は摩擦熱が原因で起こる事例も多い。ダクト内の換気ファンの羽根がダクトと接触して摩擦熱で着火火災になる事例だ。工場だけでは無く研究所でも起こる。ダクトの換気ファンなどはめったに点検しないから、このような事故が起こる。

 ポンプの軸受けも注意が必要だ。ベアリングが錆びて摩擦熱を発生して着火。グランドから漏れた液が、摩擦熱で着火という事故事例もある。

気体がすきまから噴き出すときにやはり摩擦熱が発生する。流動による摩擦だ。こんな文献もあるので参考にして欲しい

https://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/dannetu.pdf

摩擦熱にも注意を払って欲しい。

2017年08月21日

参考文献、書籍等紹介

高圧ガス保安協会が出した反応暴走に関するいい文献がある。反応暴走のメカニズムと過去の事故事例を紹介している。

反応工程のある工場の人達は一度目を通しておくと良い。

http://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2016_01_hannou.pdf

2017年08月15日

参考文献、書籍等紹介

混触危険性という言葉は聞いたことがあるかもしれない。言葉は知っていても、いざ自分の職場できちんと取り扱っている物質の組み合わせを検証したことは何のが実態では無いだろうか。だから、世の中で今でも混触事故が起こり続けている。

背景には、何と何を組み合わせたら混触事故が起こるのかという情報がきちんと提供されていないからだ。公の機関からも体系的にその情報は提供されていない。

SDSにもさらっと混触危険性は書いてあるが、世の中に存在する何百万という物質と組み合わせたらどうなるかなどは書いてはいない。

私が知るところの混触に関する書籍を紹介しておきたい。

その-1 ブレスリック危険物ハンドブック 第5版 田村昌三監訳
(丸善、ISBN 4-621-04507-5、定価42,000円) → 研究データや事故解析データが掲載されている

その-2 化学薬品の混触危険ハンドブック 第2版 東京消防庁編(日刊工業新聞社、4-526-04019-3、17,850円)
    常温、常圧下における混触時の危険性と推算データを記載

その-3 混合危険予測のための改良プログラム REITP2とその性能という文献がある 

     著者:大内博史 (東大工)、宇田川れい子 (鹿島建設技研)、吉田忠雄 (東大工) 資料名:安全工学 巻:22 号:1 ページ:12-19
     発行年:1983年02月15日

     REITP2とは消防庁の委託研究(昭和50年)により、当時の東京大学吉田研究室が開発した混触時の熱的危険性を予測
      するプログラムの改良版REITP2である。(1247物質搭載)
       ( Revision2: Evaluation of Incompatibility from Thermochemical Properties )
参考にして欲しい

2017年08月14日

参考文献、書籍等紹介

 今日は粉塵爆発について、過去の事故事例に関する文献を紹介しておく。国内外の事故事例が数多く記述されている。出典も色々書かれているので、粉を取り扱っている職場の人は一度読んでおいて欲しい。出典は学会誌安全工学だ

https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/48/3/48_185/_pdf

粉塵爆発についての書籍も紹介しておく。オーム社から出されている本だ。粉体工業会が書いている本だ。

「実務者のための粉じん爆発・火災安全対策」というタイトルだ。

粉塵爆発は、小麦粉程度の粒度であれば起こる現象だ。粉は気体に比べると、着火エネルギーは高いので火はつきにくいが、起こると粉塵爆発は大きな災害になる。ガス爆発というのは、一回爆発すればそれで終わりだが、粉塵爆発は何度も爆発を繰り返すのが特徴だ。

 最初の爆発は小規模でも、爆風で周辺の粉塵が舞い上がる。そこに、再点火して更に規模の大きな粉塵爆発が起こる。大きな爆発が、更に周囲の粉を吹き飛ばし更に大きな爆発を発生させる。文字で書くと、イメージが掴みにくいかもしれないが一度粉塵爆発の動画を見てみると良い。

ユーチューブなどに多くの動画が投稿されている

2017年08月11日

事故や災害に思う

 液封現象を知っている人はどのくらいいるのだろうか。化学プラントに勤める人の中でも実感として液封現象がわかる人は数パーセントではないだろうか。なぜらな、液封現象を写真などで見たことのある人はほとんどいないからだ。

 個別の企業でも、液封で不具合が起こった事例を文字ではなく写真で提供できるのは皆無なのではないだろうか。

世の中で、事故が繰り返し起こるのは世の中で起きている情報がうまく公開できていないからだ。こんなに、インターネットで検索できる世の中でも必要な情報を得るのは難しい。朝から晩まで企業の安全担当者が、インターネットを検索してればいいがそうはいかないだろう。

 私のようにことある毎に情報をこつこつと集めている人間がいて、その情報を公開することが少しは企業の担当者に役立つのではないだろうか。今日は、液封でポンプが壊れた事例を紹介する。

福岡の消防機関から公開されている事例だ。活用して欲しい。以下のURLで見て欲しい

http://119.city.fukuoka.lg.jp/app/files/News_174_pdf_file.pdf

2017年08月10日

事故や災害に思う

年間数十回、何百人という人に安全講演をする。講演をしたあとアンケートが帰ってくるのだが、こんな答えが数多く寄せられる。

静電気で火がつくとは思わなかった。化学物質は混ぜると危険という混触については知らなかったという答えが沢山寄せられる。

静電気という物は、身近なところで起こる。人が服を着て動き回れば必ず静電気が発生する。摩擦で静電気は発生する。人から静電気が放電すれば、火花が発生する。小規模な火花ではあるが、たいていの化学物質を着火させるくらいのエネルギはある。でもそれが、案外知られていないのが現実だ。

だから、企業の中で事故は繰り返す。

次に案外知られていないのが混触だ。化学物質は混ぜると危険というこたが案外知られていない。これは言葉で表現しただけでは理解させるのは難しい。簡単な実験を見せるしか無い。

このように、物質危険性という物は、言葉だけでは伝えるのは難しい。写真やイラスト、動画など使って物質危険性を伝えて欲しい。

2017年08月07日

事故や災害に思う

 小分け作業という作業がある。小さな分量に分けるという作業である。人は「小」という字がつくとたいしたことはないとか、それほど危険性がないと思ってしまう。しかし、小分け作業でもリスクはある。

 化学物質を小分けするときは、大きな容器の蓋を開けて物質を取りだし小さな容器につめる作業が生じる。この時、一時的ではあるにせよ化学物質を外に出す。つまり、空気と触れる状態が生じる。

 化学物質は一般的に容器に閉じ込めておけば事故の可能性は少ない。しかし、外に取り出すとどうしても空気と触れることになる。そこに着火源があれば、着火したり爆発する可能性がある。過去にも、小分け作業で多くに事故が起きている。

 小分け作業を甘く見ないことだ。参考までに、過去の事例を以下のURLで紹介する。

http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CC0200081.html

http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CC0000126.html

http://www.takasago.com/ja/news/assets/pdf/20130610hiratsuka.pdf#search=%27%E5%B0%8F%E5%88%86%E3%81%91+%

E4%BA%8B%E6%95%85+%E7%88%86%E7%99%BA%27

 

2017年08月03日

事故や災害に思う

 インドで起きた有毒ガス事例でボパールの事故という有名な事故事例がある

http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CC0300003.html

 事故は毒性ガスが化学工場から漏洩して多くの住民が健康被害に遭ったものである。数十万人が健康被害に遭う重篤な事故だ

この事故は。事故後の通報の遅れや設備管理の問題点と捉えられるが変更管理の事故としても捉えておくことが重要だ。

問題となった化学物質は、水と接触すると反応する物質だった。あるとき新任の管理者が、このプラントに赴任した。

水との反応を意識しなければいけないのに、プラントの清掃を部下に命じた。部下は、水を使って問題の物質が入っているタンク周りを水で洗浄した。しばらくして、洗浄水がタンクに入り反応を始め大量の毒性ガスが発生したという事故だ。

 新任で着任した管理者が水と反応する物質であることをきちんと意識していれば起きなかった事故だ。

もしあなたが、新しく管理者ととして着任したならまず徹底的に基本設計思想ややってはいけないこをを学んで欲しい。

 指揮命令権のある管理者の言葉は重い常に感じて欲しい

 

 

2017年07月31日

事故や災害に思う

 このところ暑い日が続いている。今日の昼のニュースで、過酸化物を置いていた倉庫が火災という情報が流れていた。

過酸化物という物質は、温度に敏感な化学物質だ。物質によっては、常温でも反応をはじめてしまうやっかいな物質だ。

そうは言っても、きちんと定められた温度以下の低温で保管していれば問題のない物質だ。

しかし、過酸化物のこの性質はしっかりと教育されていないから繰り返し保管中でも事故が起こっている。

有機過酸化物の事故は目新しいものではなく、昭和40年代頃から事故は増え始め過去に次のような労基の通達も出ている

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-27/hor1-27-8-1-0.htm

保管中で起きているいくつかの事例を挙げると

①冷暗所に保管せず屋外に放置して保管していた

②倉庫内に保管してはいたが、冷却装置のない倉庫だったまたは換気装置がなく倉庫内に熱がこもる設計だった

③冷却装置はあったが装置が故障して、温度上昇により爆発した-故障時の対策をしっかり考えていなかった事例だ

④冷蔵庫に保管中停電となり温度上昇で事故になる

⑤実験室内でドライアイスで冷却していた。予定外にドライアイスの消費が進み温度が上がり事故になった

⑥過酸化物の袋を積み重ねて保管していた。風通しが悪かったため、部分的に袋の一部の温度が上がり反応を始め事故になる

 

とにかく温度が上がれば勝手に反応を始めるやっかいな物質だ。冷やせなければ事故になる典型的な事故のパターンだ

温度の上がるこの時期、倉庫内の化学物質管理について点検して欲しい

2017年07月27日

事故や災害に思う

 7月8日にタンクの爆発事故が起きている

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017070890121714.html

 タンクは空だったとの記述がある。多くに事故事例を見てくるとこの「空」という字が問題となることがある。

タンクの中に入っていたのは、フルフリルアルコールという物質だという

アルコールだから可燃物だ。引火点は75度、融点は-31度だという。つまり液体だ。 着火源さえあれば、夏のタンク内の温度を考えると着火することは可能と考えられる。

タンク事故で注意しなければならないのは、在液であれば誰でも危険と考えて注意を払う。しかし一度空になってしまうと突然危険源という

見方をしないところに繰り返し事故が起こっている。

タンクを空にするといっても、完全に空となっていれば良いが、わずかに残液が残っているのが常だ。可燃性の液体物質であれば、時間が経てば当然可燃性蒸気が発生する。 着火源があり、爆発混合気が出来ていれば簡単に爆発する。

空だからと安心して、マンホールを開けていれば空気が入り丁度良い爆発混合気が出来ているはずだ。

この物質は酸とも混触反応すると書いてある。

原因は何なのか報道はないが、きちんとした事故報告を期待したい。

2017年07月22日

事故や災害に思う

 事故や災害で怖いのはベテランが起こすヒューマンエラーだ。ベテランであれば当然責任ある地位についている・その人が間違えれば大きな事故になる可能性がある。

 しかし、世の中で起こっている事故の中でベテランのヒューマンエラーが多いことに気づいていないことが繰り返し事故が起こる要因だ。

企業の中で、新人と呼ばれるのは数年だ。残りは、中堅者やベテラン層と呼ばれる。つまり社員の2/3以上はベテラン層と呼ばれる人達だ。

 ベテランだからといってミスを犯さないわけではない。仕事をする限り必ずミスを犯す。

ベテラン故に犯すミスを考えて欲しい。その対策を考えないと、たぶんヒューマンエラーの半分以上は減らないのではないだろうか

 安全工学会の文献を読んでいて、参考になる文献があったのでそのURLを紹介しておく。参考にして欲しい。

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/safety/38/6/_contents/-char/ja/

 

2017年07月19日

事故や災害に思う

 今年から、HAZOPに関する講習会を始めた。今回は、日刊工業新聞社でのセミナーで講演する。セミナー内容は下記のURLにあるhttps://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/1057

 

 HAZOPの講演を始めたのはこんな理由だ。多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている。なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ。

 つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが多くの企業の現状だ。

 その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えていて、肝心のHAZOPで見落とすような危険源を教えていないからだ。また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある。

 HAZOPを使ったり、HAZOP的な思考をすることは大変いいことだと思う。しかし、HAZOPの失敗事例を学ばなければ、企業としての実力はついていかない。

 そんな思いから、HAZOPの失敗事例が学べる講座を開設しようと考えていた。そんな矢先に、セミナー会社から依頼があったのでHAZOPの失敗事例を学べる講習会を開催することにした。

関心のあるかたは聞いてみて欲しい。 私の知っている4000件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例だ。 10月25日開催だ

2017年07月17日

参考文献、書籍等紹介

 反応器などにフレコンバッグを使って原料などを投入したとき、静電気で着火や爆発事故が起こることがある。静電気発生防止用のバックを使えば、かなり防げる事故ではあるがコスト面から帯電しやすいフレコンバックが使われてしまう。フレコンバックだけではなく、紙袋でも起こる。内袋と呼ばれる、ビニールなどの内側に入れたプラスチック製の袋が静電気発生源となることがある。

 このフレコンバッグの静電気発生事例とそのメカニズムを紹介した良い文献があるので紹介しておく。

下記のURLを見て欲しい

https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/7/2/7_JOSH-2014-0007-SO/_pdf

2017年07月10日

事故や災害に思う

 事故が起こったときに通報遅れという問題ががある。意図的なものもあろうが。結果としてそうなってしまうという現実がある。この、通報遅れというのは、その事実があっても「なぜか」は報道もされない。そこに、この通報遅れが減らない原因もあるのだろう。行政側も、原因を解析し広報する努力を惜しまないようにして欲しい。

 数千件の事故事例を見てくるとこんなことも言える。通報遅れは、ガス漏れが案外多い。その理由は、どこから漏れているのか探し出すのに時間がかかったという理由だ。臭いや気分が悪くなったものの、どこから漏れているかの探し出すのは難しい。うかうかしている間に、住民側から消防などに通報が行くパターンだ。背景には、会社側の通報手順が明確になっていないことも多い。

 ひどい話だと、大きく漏れた場合は---などと手順書に書いてあるケースだ。大きい小さいは、相対的なものだ。これでは、現場側は判断を誤ることになる。

 もう一つのパターンは、通報権限は保安の管理者や工場長などと決めているケースだ。、これでは、現場に管理者や工場長が来ない限り通報はなされないから当然連絡が遅れる。人は、自分が納得しないと決断はしないからだ。

 現場にいる人が判断できる通報システムを作らなければ、この問題は解決しない。

こんな話がある。今から数十年前、地震が起きたとき化学プラントを停める基準を作った。gal数に応じて、プラントを停止する定量的な基準を作成した後、地震が来た。工場内のプラント毎にばらつきがあった。基準通りに停めたプラントもあったが、停めずに運転を継続をしたプラントもあった。ルールはあっても、生産を優先する文化があった。しかし、その後停める文化を少しずつ醸成していった。工場長のリーダーシップで、安全に停められるシステムがあるのだから、安全に停めるということを徹底した。時間はかかったが、東北大震災の時にも、安全に停められたのはそういう文化を時間をかけて作り上げてきたからだ。

 ガス漏れは、時間の関数で拡散する。遅れれば、広範囲に広がる。早めの広報も必要だ。避難も考える必要がある。企業の人達だけで対応は難しい。事故は、被害の拡大を防ぐことを最優先とする考え方も必要な時代だ。

たかが通報遅れではと思わないで欲しい。

2017年07月04日

参考文献、書籍等紹介

地震保険についての文献を紹介しておく
阪神大震災の時、安全工学会が地震特集をしたときの記事だ

https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/35/1/35_106/_pdf

阪神大震災の時に支払われた保険が760億円という。保険業界は、支払いを円滑に進めるようかなり努力をされたという文章もあった

化学プラントも保険をかけておくことが必要だ 事故が起こったときには保険金支払いはありがたい

経費節減で、保険を減らす風潮もあるようだが保険は減らすべきではない

保険をやめたとたんに事故が起こったという事例も経験したことがある

事故の確率はゼロではないということを肝に銘じるべきだ

2017年07月01日

事故や災害に思う

今年1月に起きた和歌山の製油所火災の事故報告書の最終版が公開されていた

http://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease_jxtg/2017/20170614_01_1150234.html

 

教訓となることも多く書かれているので一度は目を通して欲しい

この事故は、最初がタンク小火災、数日して製油所が数十時間に及ぶ大火災となった事故だ。住民も避難させられた大きな事故だ

事故報告書を見てやっぱりと思うことがある

この工場は約40年間大きな事故もなくと書かれている。大きな事故がないと、安全と思い込んだのだろう。2011年から2014年にかけて起こった製油所や、化学プラントの大きな事故を起こした企業も、数十年大きな事故がなかったのも事実だ。

球形タンク事故 https://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2011-078r1.pdf

塩ビタワー事故 http://www.tosoh.co.jp/news/assets/20120613001.pdf

反応器事故  http://jp.mitsuichem.com/release/2013/pdf/130123.pdf

アクリル酸タンク事故 http://www.shokubai.co.jp/ja/news/file.cgi?file=file1_0111.pdf

 

長いこと事故がないと、みんな安全だと思い込んでしまい、目の前にある危険なことが見えなくなったり危険の感受性が落ちていくのだろう。

事故がないことはありがたいことなのだが、無事故の中で危険に対する意識レベルを維持するのはなかなか難しいと感じた

最初のタンク小火災は、硫化鉄が発火した事故だ。製油所では、だれでも発火の危険性を知識としては持っているが、実際に目の前で見たひとが

製油所の中でだんだん少なくなってきているのだろう。除去するための作業マニュアルはあっても、状況に応じて対応することができなくなっているのだなと感じた。今回は、いつもよりタンク内に硫化鉄を含む残渣が多かったと書いてあった。ならば、発火しないように多めの水をかけておくことが望まれるのにうまく対応できていなかったようだ。社員も協力会社も、対応能力は落ちていたのかなとおもう文章があった

 

それから、数日後の大火災は前からなぜあんなに長時間燃え続けたのだろうと思っていたらその答えが書いてあった。

緊急停止システムはあったが、原料ポンプはそれに組み込まれていなかったと書いてある。つまり、現場でポンプをなんとか停めようと試みたものの火炎などで停められなかったという。やはり命がけの対応を運転員はしていたのだ。

ポンプさえ停められれば、流れ出る油を停められ火炎は一気に抑えることが出来たと思われる

トラブルが起きたときの漏洩防止の基本は、圧力を下げ、温度を下げ、液レベルを下げ流出を停めることだ

今回の事例では、遠隔操作で原料ポンプをすぐに止められなかったことが長時間の火災につながったとも報告書から読み取れる

自分のプラントのどこかの配管が破れたら、現場に行かなくても安全に流出を停められるような装置になっているか検証してみて欲しい

HAZOPでも腐食などにより配管からの大量漏洩を想定したケーススタデイを試みて欲しい

2017年06月30日

参考文献、書籍等紹介

 産業安全総合研究所というところをご存じだろうか。事故や災害に関する研究をしている組織の1つである。RISCADという事故情報データーベースを公開している組織だ。最近ポータルサイトを構築して、要望すればメールで情報を送ってくれるような活動をしている。7月にはRISCAD関連の説明会が東京と大阪で行われるとの情報もあった。筑波の研究所の一般公開もあるそうだ。

 興味のあるかたは下記のURLを開いてみると良い

https://sanpo.aist-riss.jp/

2017年06月25日

事故や災害に思う

 事故を起こすと単に利益を失うだけでは過ぎない。企業の社会的責任というものが求められてきている時代だ。企業が労働安全衛生法に違反して告発などを受ければ、最近は厚生労働省のホームページに記載される。2017年3月に次のような通達が出されている。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-02.pdf

 企業名と違反事実が公表されるのだ。既に、過度な残業をさせて告発された企業などが公表されている。公表されれば、ブラック企業と呼ばれてしまうこともある。実際に、下記のような形で公表されている。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-01.pdf 

2017年06月21日

事故や災害に思う

耐火被覆という火災時の対策がある。火災が起きたときに、柱などの倒壊を防ぐ措置だ。たぶん多くの企業の安全担当者は、法規制で無理矢理高いお金を払ってやらされているという印象しかないのではないだろうか。

パイプラックなどの柱の部分に耐火性の物を吹き付けて火災時の柱の損傷を防ぐ対策だ。

アメリカのCSBなどの事故報告書では、耐火被覆のある部分と無い部分の影響が写真で示されているレポートがある。一目瞭然だ.耐火被覆のない柱はあめのように曲がっている。当然、パイプラックの上の配管は影響を受けている様子がわかる。配管が折れ曲がっているから、フランジ部などから大量のガス漏れで火災が起こっていることが推測される。

一方、耐火被覆がある方は、パイプラック上の配管は一切損傷を受けていないような写真がある。

2010年代に入って大きな事故が起きているが、耐火被覆の効果については一切事故報告には載っていない。

願わくは、耐火被覆の効果を公開してほしいものだ。

2017年06月18日

参考情報、文献、書籍等紹介

今年も高圧ガス保安協会が開催する事故事例セミナーの案内がありました

8月に東京と大阪で開催されます 下記に情報があります

http://www.khk.or.jp/seminars_events/events/comb.html

2017年06月17日

参考文献、書籍等紹介

 先月、東京にあるコベルコ科研という企業から頼まれて、化学プラントの老朽劣化に関係する講演をした。1時間ほどの講演だが、老朽化に関する事故事例を紹介した。その後も、老朽化に関する情報を集めていたところいい情報を見つけた。

 高圧ガス保安協会が発行している会員誌「高圧ガス」の今月6月号に、化学プラントの外面腐食に関する特集記事が出ていた。大分にあるエチレンプラントを持つ企業の外面腐食管理についての記事だ。

 どの企業でも、外面腐食は悩みの種だ。特に、保温材を被った配管などはトラブルが多いはずだ。塔槽類や高所にあるものであれば足場の費用も馬鹿にならない。ケレンや塗装も手を抜くと後で大きなつけが来る。地下の埋設配管も防食対策が不可欠だ。 どうしたら効率的に点検が出来るか、しかもコストダウンを図れるか皆さん悩んでいるのではないだろうか。

 こんな悩みに答えてくれるような内容が、高圧ガスの特集記事に載っている。高圧ガス保安協会に加入している企業なら、この小冊子6月後が見れるはずだ。この記事を書いているのは、昭和電工(株)大分コンビナートの工務部長の 谷口芳弘さんというかただ。

 ネットで調べてみると今から10年くらい前から講演されていることがわかる。かなりのノウハウをお持ちのようだ。

高圧ガス保安協会の会員ではないが読んでみたというかたは、東京神谷町にある高圧ガス保安協会の資料室を訪ねると良い。そこに、小冊子高圧ガスもおいてある。閲覧は可能だ。

2017年06月09日

事故文献、書籍等紹介

 化学物質を取り扱う工場では爆発や火災に対する備えが必要となる。医薬原料を製造する工場ではこれに比べて、医薬特有の配慮も必要となる。

GMP(Good Manufacturing Practice)への対応だ。製造・品質面でこれをクリヤーしなければならない。設計上も十分な配慮が必要だ。

安全のみならず品質まで含めた総合管理が必要だ。設計段階から深く深く考えておく必要がある。そうは言ってもGMPに強い人を育てるのは大変だ。

 以前「GMP人材の技能教育・資格認定法」という書籍(http://www.gijutu.co.jp/doc/b_1830.htm)を発刊する会社から人材育成について執筆依頼を受けたことがある。私は、その書籍の一部を書かせてもらったが、この書籍はGMPが適用される企業には有効なのだろうと思う。

出版したこの企業は、GMPに関して設計や保全などの書籍も発刊している。興味のある方は参考にして欲しい。

 少し古い文献だが、エンジニアリング会社の方が書いた、設計上の配慮についての文献がある。1997年安全工学の中の記事だ。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/36/5/36_314/_pdf

2017年06月08日

技術伝承

 技術伝承ほど難しいことは無い。人から人へ技術を伝承していくことはたやすいことでは無い。会社員が企業で勤める期間は約40年だ。そこで得た知識や経験は次の世代に受け継いでいく必要がある。会社に入ってくる若い人は約20歳前後で入社する。その人たちに技術を引き渡すわけだが、そんなに悠長に引き継ぐわけではない。たぶん数年で引き継ぐことが求められる。つまり、40年かかった経験を数年で引き継ぐのだから、かなりの効率が求められる。

 つまり、ポイントを絞り込んで伝えなければいけないのだが、人はそう簡単に自分の経験を要約することは出来無い。あーでもない、こうでもないと後輩に言っている間に、数年が過ぎ去り技術が伝承されないのだ。

 技術伝承の中で選別しなければいけないのは、100年後でも伝えなければならないものと、今伝えなければいけないものを選別しておくことだ。

100年後に伝えなければいけないものは文字で書き残す必要がある。文字に表すとものすごく時間がかかり効率は悪いが文字が伝える手法が必要だ。

 今すぐに伝えなければいけないのは、言葉で話すのが効率がいい。写真やイラストを添えると更に効果的だ。

技術伝承とは最適な手法を選択して効率良く伝えることだ。

2017年06月06日

j事故や災害に思う

2016年のコンビナート事故の件数が消防庁から公開されていた  件数はまた増えている 心すべしである

http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h29/05/290530_houdou_4.pdf

2017年06月03日

事故や災害に思う

 プラスチックのペレット原料作成や、成形加工では押し出し機という機械が使われる。プラスチックは、温度を加えると溶けて加工しやすくなることから、溶けたものを押し出して加工することから押し出し機と呼ばれている。

 このような機械を扱う工場でも、爆発や火災の危険性は存在する。プラスチックは可燃物だからだ。原料は、粒状のペレットというプラスチックの米粒のような塊や粉体が使われている。粒なら問題が無いのだが、切り子や粉体などでは当然加熱すると分陰ガスにより爆発が起こることがある。

 押し出し機は、高温で原料プラスチックを溶かすため温度が高いというのが事故の要因になる。押し出し機を取り扱っている人は、温度が高いことはあまり気にかけないようだが、化学の世界は暖めることは事故の可能性を高めることだと理解しておく必要がある。

1989年10月4日に、死者14名を出す押し出し機の爆発事故がある。インターネットで探してもさっぱり出てこないが、韓国のLUCKY社で起きた事故だ。押し出し機からこぼれていたABS樹脂が着火爆発した大事故だ。

 書籍「火災爆発事故事例集」<安全工学協会編>(コロナ社)78~81頁 にその記事がある。

当時この情報は、業界内で一斉に流されたものだが30年も経つと忘れ去られるのだろうか。事故は繰り返すと言うが、まさに貴重な事故の教訓が伝えられないから繰り返し起こるのだろう。

2017年05月30日

事故や災害に思う

 日本で起こった倉庫爆発火災事故で、過去最大の事故を紹介しておく。東京品川で起きたものだ。消火活動中の消防士が19名死亡し、重軽傷者117人を出す大惨事だ。今から約50年前の、1964年の夏に起きた事故だ。東京オリンピックの年でもある。

 屋外に野積みしていた過酸化物による爆発事故だ。しかも違法に大量に保管していた。危険なものが大量に保管されているという情報も、消防側に伝わらなかったために多くの人が爆発に巻き込まれた。

 事故後消防の立ち入り権限が強化されるなどの法改正も行われている。貴重な倉庫事故の教訓だ。

以下のホームページに資料があるので見て欲しい。

http://www.sydrose.com/case100/303/

以下のホームページでは、雑誌近代消防の記事の一部を読むことが出来る

http://www.ff-inc.co.jp/syuppan/zassi/PDF/syobo14_07A.pdf

 

 

2017年05月28日

事故や災害に思う

尼崎市でスクラップ置き場が火災という記事が出ていた。廃棄物置き場での火災だ。

廃棄物に関する爆発や火災は繰り返し起きている。

http://matomame.jp/user/bohetiku/00f1a92075de27baf1c8

廃棄物倉庫、廃液タンク、廃液ドラム缶、廃液ピットなど「廃」という字がつくと、人間は管理が甘くなる。「廃」というのは、いらないもの。つまり、たいしたものでは無いと人は思い込み癖がある。たいしたものでは無いと、かんがえるとそれは安全であると感じてしまう。

むしろ「廃」という字がつくと「ハイ」リスクと考えなければいけない。

廃液タンクやドラム缶であれば混触で良く事故が起こる。混ぜるからである。廃液ピットなどでは、近くで火気工事をしていたとき油が流れてきて火災になることがある。廃棄物倉庫などであれば、積み重ねたことにより自然発火することがある。

 積み重ねると熱が逃げにくくなる。廃棄物の中で蓄熱が起こる。熱がため込まれるのだ。着火点を越えたら当然発火する。今頃のように、急に気温が上がり始めた頃にこのような事故が起き始める。サーモビュアーという赤外線カメラをお持ちなら、ちょっと現場をそれで見て欲しい。

赤く表示されているところがあればすぐに対策を取って欲しい。

http://www.hitd.jp/html/thermo_gallery08.html

 

 

 

2017年05月21日

事故や災害に思う


 熱交換器のチューブを取り替えのため溶断している時に起こった中毒事故だ。硫酸を取り扱う熱交換器で、残渣として付着して硫酸などを加熱したことにより化学反応が起こり有毒なガスが出ていたのだ。

 風邪のような症状だったため、そのまま作業を数日続けていたら死亡者が出たという事故だ。この事故では、次のような通達が出ている

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-34/hor1-34-19-1-0.htm

 残渣などの物質は、加熱すれば反応を起こすことがある。反応で有毒な物質が発生することもある。

化学工場では火気工事というと火災や爆発に気が向くが、中毒などの労働災害にもきお付けておくことだ

2017年05月18日

事故や災害に思う

 昨年10月にドイツにある大手化学会社BASFで死傷者の出る大きな事故が起こっている。何人もの人が亡くなり、数十人もの負傷者が出た。原因は、何本もの配管が通っているパイプラインで誤って生きている配管を切断して漏れた油に火が付き爆発した事故だ。

BASFといえば100年以上の歴史ある化学会社だ。アメリカのDUPONなどともならび安全管理には厳しい会社であるはずだ。

誤って生きている配管を切るという事故は、日本でも繰り返し繰り返し起きている。

私も、撤去工事で工事業者が生きているメタノール配管を切りヒヤリとしたことがある。幸い着火はしなかったが、いまでももし火が付いていたらどうなったのだろうとおもう重大ヒヤリだ。

昨年の事故直後に出ている、BASFJapanからの情報は以下のURLで見れる。

https://www.basf.com/documents/jp/ja/news-and-media/news-releases/2016/2016_10_28_Oct_27_German_Time_JP.pdf

 最終レポートを探してみたが現時点では出ていない。

日本でも、工事は工事業者任せになっていないだろうか。安易に現場の立ち会いを減らすとこのような事故はおこる。発注者側の管理体制がどうなっていたのかを知りたいところだ。

 ある英文記事を見ていたら、着火源は近くでさび取りをしていた火花という情報もある。パイプラインの中で、ごく近い位置での同時並行作業が招いた事故なのかもしれない。運転中の火花の出る工事は、しつこい位に現場管理を行うことだ。

 いくら立派な工事計画が立てられていようとも、現場でそれが守られているかを管理していない限り事故は起こる。

安全担当者はしつこいくらいに現場を回ることだ。


2017年05月17日

事故や災害に思う

 日本の製油所や化学プラントの老朽化は進んでいる。老朽化で事故が起きることもある。老朽化が進んでいるのは日本だけでは無い。海外でも同様だ。実情はどうなのかと、インターネットの英文記事を色々検索してみた。

 油田を持つ中東の実情を見ていたら、イランの情報が出てきた。イランは製油所、天然瓦斯プラント、石油化学プラントも存在する。日本も昔三井グループが支援したIJPCという合弁事業があった。その頃の施設も修理しながら今でも動かしているという。

 下記の英文記事を見ると火災などが12日に一度起こっているという表現もある。

限られた時間やお金でどう効果的な点検や保全をしていくかは一つの技術だ。日本のノウハウは今後展開できるのでは無いだろうか。

http://www.priceforbes.com/insights/post/fire-at-irans-oil-facilities

2017年05月15日

事故や災害に思う

 仕切り板挿入時に起きている事故で記憶に残しておく重大事故だ。インドの製油所で起きた事故だ。日本では使われてはいないが、インドではよく使われる仕切り板を挿入できる特殊な弁で起きた事故だ。11名の死者と150名の負傷者を出す大事故だ。

 この特殊な弁を使って縁切りしているときにガソリンが漏れ出した。なんとかしようと運転員が対応したが、噴き出すガソリンで意識を失った。

本来ならすぐにタンクの元弁(電動弁)を閉めれば流出は停まる。しかし、タンク元弁の操作SWは防液堤の中で近づけなかった。元弁は、計器室から遠隔操作できるようになっていなかったため漏れを停められず最後は蒸気雲爆発を起こしたという事故だ。

 仕切り板機能の付いたその特殊な弁は、作動の途中段階では開口部が出来る。つまり、完全に液が来ないようにしておかなければいけないのにタンク側の元弁(電動弁)が半開だったため液が漏れ出したのだ。

 日本だったらそんな危ない特殊な弁は使わないだろう。人が少しミスをすれば漏洩してしまう弁など危なくて使えない。

しかし、大口径の配管に仕切り板を取り付けるのは大変な作業になる。重機やチェーンブロックなども必要だ。だがこの特殊な弁なら、それらも必要ない。嵯峨用効率から言えば格段にいい道具だ。

 作業効率と安全を天秤にかけたのだろう。原因はそれだけではない。教訓となる情報も多い。

 詳細は以下のURLを開いてみて欲しい

http://tank-accident.blogspot.jp/2017/02/2009.html

2017年05月06日

事故や災害に思う

 仕切り板で起こる事故がある。安全確保のため仕切り板を挿入するのであるが、挿入や取り外しで事故が起きては何にもならない。

一番単純なのは、挿入箇所を間違えるだ。うっかりでは済まされない。計画段階でのミスや現場作業時でミスで多くの事故が起きている。生きているラインで誤ってフランジをゆるめ始めてしまったなどという事例もある。

 完全に脱圧や脱液が終わっていないのに作業者がフランジをゆるめ始め液が噴き出してきたという事例もある。工事の着工許可も出ていないのに作業員が作業を始めてしまった事例だ。現場説明を現地ですると、それで許可が出たと勘違いする協力会社員もいる。社員が現場を離れたとたんもう作業を開始してこのような事故が起こることがある。

 正式の仕切り板を使わず、強度の無いブリキ板を使って起こった事故事例もある。1970年代当時はそのような事故が何件か続いた。

仕切り板を抜き取っていたときに摩擦熱で可燃物が着火した事例もある。わずかに残っていた可燃性ガスに火がついたのだ。

 仕切り板挿入時誤って近くのボール弁のコックに手が触れ弁が突然開き液が噴き出したという事例もある。ボール弁はハンドル廻しを外しておかないとこんな事故になる。

 仕切り板を抜くとき圧があるのにまだラインは使用されていないと思い込み事故になった事例もある。

http://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2015-200.pdf

 

たかが仕切り板作業と思わないことだ。

2017年05月05日

事故や災害に思う

 安全工学会から1年間執筆を依頼されている。隔月発刊だから6回に分けての執筆である。テーマは、「事故の背景に存在する管理面の教訓」だ。私が知っている、化学プラントの過去約3900件の事故事例から抽出した教訓を書き表すことを考えている。第一回目は、「設計管理」という切り口で教訓を抽出してみた。

 安全工学会は、化学プラント関係のみならず、交通、医療、建設など幅広い業種の集まりだ。私の持っている知識は化学プラントを主体としたものだが、他の業種でも通用するような教訓を特に選び出して書きたいと思っている。

 締め切りが4月末だったので月末ぎりぎりに原稿を提出した。昨日印刷用校正原稿を無事出し終えた。とはいえ、次の原稿を書き始めないとと思いつつある。8頁ほどの原稿だが、皆さんに伝えたいことを抽出しながら書き始めてみると結構時間がかかる。まずは構想から考え始めている。

 次回は、8月号だ。安全性評価という切り口で執筆を考えている。

2017年05月04日

事故文献、書籍等紹介

 危険物保安技術協会という組織を知っているだろうか。略称はKHKだ。高圧ガス保安協会と同じ略称だ。高圧ガス保安協会は、経済産業省の関連組織だ。危険物保安技術協会というのは、総務省消防庁の関連組織である。

 つまり、消防関係の組織だ。危険物関連の事故などはこの協会に多くある。ホームページを紹介していく。

http://www.khk-syoubou.or.jp/

2017年04月29日

事故文献、書籍等紹介

 世界の貯蔵タンク事故というホームページをご存じだろうか 下記のURLで見ることが出来る

http://tank-accident.blogspot.jp/2017/

日本国内での主要事故、海外でのタンクに関わる事故事例を紹介している。写真などもありわかりやすい

教訓となることも多く書かれており、安全に関わる人は見て欲しいホームページだ。

 4月の記事ではアメリカの製油所火災、日本でのタンク内清掃事故の事故事例など参考となる事故が載っている

2017年04月26日

事故文献、書籍等紹介

川崎市がコンビナート内の企業の地震対策に関する情報を公開している

http://www.city.kawasaki.jp/kurashi/category/15-13-1-6-13-0-0-0-0-0.html

ホームページの下の方に、PDF版の資料がある。

実際に企業が行っている地震対策が写真入りで、紹介されている

球形タンクの柱の強化や、液状化対策、通信方法の強化など実に役立つ情報がある

企業の安全担当者は1度見て見てはどうか

地震対策のいい参考情報だ

 

2017年04月22日

事故や災害に思う

 バルブの誤操作による事故事例は多い。ヒヤリから大事故に至るまで、化学工場の現場で起こるヒューマンエラーの中で主要な事故要因ではないだろうか。

 日本では、1973年という年にものすごく多くの事故が起きた。1960年代にコンビナートができはじめ、1970年代には規模も大きくなり人が機械について行けなかった時代だ。その頃、安全関係で多くの論文を出されていた横浜国立大学の井上さんのいい文献がある。

「化学工場における最近の災害事故と防止対策」というタイトルで、1974年にでた文献だ。

下記のURLからダウンロードできるので興味のある方は読んでほしい。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/12/4/12_4_184/_pdf

 

 この文献の中では、S44年当時の事故とS48年の事故多発時の比較やバルブ誤操作というヒューマンエラ-に関する考察がある。今でも教訓として使える貴重な情報があるので1度目を等してみてはいかがだろうか

2017年04月22日

事故や災害に思う

 火災や爆発事故が起こるのは、燃焼の三要素が成り立つからだ。。化学物質は閉じ込めて置きさえすれば事故にはならないと繰り返し述べてきた。配管から可燃物が漏れるから、空気と触れて爆発混合気が出来る。そこに、発火点以上の高温部があれば当然着火する。生火などは必要は無い。発火点を超える温度の蒸気があれば良い。

 もしくはちょっとした静電気があれば良い。漏れた流体は、噴出するからそこには必ず噴出帯電をして静電気が起こる。簡単に着火する。

タンクに窒素シールをするようになったのは、1970年代頃からだ。それ以前は、可燃性液体を貯蔵するタンクで良く爆発事故が起きていた。今でも、タンクの爆発事故は窒素シールの無いタンクで数多く起きている。

 特に排水タンクなどが危ない。通常は、確かに水なのだが、たまに油が排水に混じる。そうなると、油はタンク内で揮発するから感性の蒸気がタンク内に滞留する。何かの条件で着火爆発する事例が繰り返し起きている。

 粉体を取り扱う設備では粉塵爆発の恐れがある。サイロやベルトコンベアー、乾燥機などで爆発が起こる。原因を見て見ると、いつもは窒素を流して爆発混合気が出来ないようにしていたのに、窒素のバルブがしまっていただとか、誤って閉めてしまったとか言う事例が多い。

 窒素を流すことの意義が、現場にきちんと伝わっていないことも多いと感じられる。燃焼をや爆発を防ぐ目的で窒素を流しているらな、バルブを常時開で施錠するなど単純なヒューマンエラーで事故が起きないように対策を取って欲しい。

2017年04月12日

事故文献、書籍等紹介

 過去の事故事例を学ぶことは重要だ。今まで、こんな事故事例データーベースを見て事故の教訓を集めてきた

①高圧ガス保安協会事故事例データーベース https://www.khk.or.jp/activities/incident_investigation/hpg_incident/incident_db.html

②産総研が提供する事故データーベース RISCAD https://riscad.aist-riss.jp/

③Deyamaの提供する事故事例データーベース http://deyama.a.la9.jp/ver_1/saigai.html

④失敗知識データーベ-ス http://www.sozogaku.com/fkd/

 

これらの情報を組み合わせながら、約10年くらいかけて自分なりに約3800件の事故事例を勉強してきた。

それぞれの、データーベースに記載されている内容は様々だ。必ずしも、同じことが書かれているわけでは無い。

事故というのは、色々な視点で見ていかないと事故の教訓が得られない。

特に、人という切り口で原因を書いているものは少ない。

最近、更に多面的な切り口で事故を見て見たいと思い更なる事故データーベースを探していた。今回新たにこんな事故データーベースを見つけた。

労働安全衛生総合研究所事故データーベースだ。数千件の事故情報がある・

https://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2013_03.htmlを参照されたい

 

しかしこの情報データーベースには、正確な日時が記載されていない。何年という年度粘度はあるが日時の情報が無い。

他の情報データーベースと合わせながらたぶんこの事故だろうと思い解析を進めている。

①や③の情報とは違う視点で、いい内容が書かれてはいるのだが惜しいことに日時情報が不足しているのが欠点だ。

事故は多面的に見て、色々なことがわかる。せめて事故データーベースと言うなら、発生日については正確な情報を提供して欲しい。

これからの事故データーベースについて求めたいのは、教訓を書いて欲しい。それから、変更管理の視点で失敗の要因を書いていく行く必要があると思う。

とはいえ、前述のデーターベース提供者には感謝したい。これらの情報が無ければ、過去の事例を学ぶのは難しいからだ。

これからも、提供をお願いしたい。

 

2017年04月06日

事故や災害に思う

 ライニング機器が原因の事故について書いてみたい。化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている。耐食性機器の内張などに使われる。しっかりと、点検していれば良いのだがライニングが剥離すると思わぬ事故になる。

 硫酸などの酸を入れているタンクの内張の一部が破損すると母材の鉄と反応して水素が出来る。たまたま、火を使って配管などの改造を始めたとき水素に着火して爆発する事例が多い。

 鉄と酸による水素の発生は、案外知られていないから繰り返しこの種の事故が起きている。水素の発生を知らなくても、火気工事前にガス検知さえやっていれば防げる事故のパターンだ。

 ライニングに関する事故のパターンその-2は静電気だ。ライニング材は、電気を通さない非導電性材料だ。可燃性の液体や粉体を入れれば静電気が発生する。これが原因で着火や爆発初事故が繰り返し起きている。ライニング機器は、しつこいくらい静電気に留意して欲しい。

 原材料の投入時には、確実に窒素置換をして爆発混合気を作らせないことだ。

定修工事などでのジェット洗浄時にも注意して欲しい。高圧ジェットの洗浄水の水しぶきでも静電気は発生する。過去にグラスライニング機器のジェット洗浄中に爆発事故が起きている。ライニングに付着していたポリマー物質に微量に含まれていた有機溶剤がガス化して可燃性ガスとなってグラスライニングしたドラム内に充満していたのだ。ジェット洗浄作業で静電気が発生しそれが着火源で爆発混合気に着火した事故だ。溶剤を使うプラントでは注意して欲しい。

 ライニング機器で注意して欲しいことがもう一つある。解体時だ。内部にゴムライニングがしてあることに気づかず溶断していて着火火災になった事例も多い。装置の内部に可燃性のライニングがあつたことで、火気で解体時事故が起きている。

2017年04月03日

事故や災害に思う

 今年の1月22に和歌山の製油所で起きた事故に関して事故調査委員会の中間報告が発表されている.1/18日にもタンク火災が起きているが、それに関しても記述されている。中間報告なので、詳細は記述されていないが1/18日のタンク火災は硫化水素による自然発火事故だという。

 タンクを開放して、内部のスラッジを取り除く作業時の事故だ。スラッジ内に硫化鉄が含まれていたという。硫化鉄は、発火性の物質だ。空気と触れれば自然発火する。過去のも多くの事故が起きている。繰り返されている事故だ。

 1月22日の事故は41時間も火災で燃え続けた事故だ。中間報告では12箇所の配管開口部が見つかったと書いてある。1箇所の配管フランジ部の不具合という表現もある。これが可燃物の漏洩に至った物と思われる。

 

http://www.tonengeneral.co.jp/news/press/uploadfile/docs/20170228_2_J.pdf

 

2017年03月23日

事故文献、書籍等紹介

 混触で事故が起こることがある。混ぜると危険というのは基本的なことなのだが、案外知られていないという現実がある。目の前で、実験して見せたりビデオを見て始めてその怖さがわかってもらえる。

 現場でよく使われている過酸化水素などは、握り拳1つくらいの有機物とまざれば工場のスレートを吹き飛ばす威力がある。とはいえ何と何を組み合わせたらどうなるかはガイドブックなどを便りに調べないとわからない。

よく知られている書籍を紹介しておく 発行されてからだいぶ経つが、ネットなどで購入することも可能だ


化学薬品の混触危険ハンドブック 単行本 – 1997/6  田村 昌三 (監修), 東京消防庁 (編集), 吉田 忠雄  日刊工業新聞社; 第2版


危険物ハンドブック 大型本 – 1998/9  ブレスリック (著), 田村 昌三 (翻訳)

 

データーベースとしては、アメリカ大気汚染局が公開しているものがある

https://cameochemicals.noaa.gov/help/cameo_chemicals_help.htm#t=6_reactivity%2Freactivity_prediction_method.htm

日本ではデーターベースを探してみた物の、残念ながら公開されている物は見つからなかった

日本でも是非混触のデーターベースを公開して欲しいところだ

少しでも混触について多くの人が情報を持ってくれれば事故は減らせるのではないか

2017年03月16日

技術伝承

 2月の末に労働災害のポイントについて1日で学ぶ講習会を開催した。https://www.e-jemai.jp/seminar/accident.html

30名ほどが受講してそのアンケートが出てきた。それを見て感じるところを書いてみたい。

 今回の講習のねらいは、労災事例を単に多く紹介するのでは無い。労働災害からの「教訓」や災害から「教訓」を引き出すときの考え方を学ぶことを主眼にした。

 多くの労働災害を解析すると、あるパターンに基づき災害が起こっている。パターンを学んでいけば短時間に労働災害の全容を学ぶことができる。起こった労働災害の中身を詳しく学んでもしょうが無い。どうしたら防げるかのパターンを学ぶことが大切だ。

 つまりどうしたら、災害が起きなかったかと深掘りをしていくことが大切だ。そうすると「教訓」というものにたどり着く。そうは言っても、そう簡単に労働災害を見て、すぐに教訓が答えとして出てくるわけでは無い。

 この講座を作るために、約10年ほどかけて数千件の労働災害事例を読み解いてきた。一つ一つ災害に起因するキーワードを絞り出し、同じキーワードで現れる事例を並べて見る。そこから、もしこれを考えていれば起きなかっただろうと言うことを考えてみる。

 「人」、「人が取り扱う設備」「人と設備を取り巻く環境」ならびに「人と設備の管理」という切り口で教訓を考えてみる。

そこから、教訓と言うものがやっと出てくる。教訓を引き出すには多くの事例を見る必要がある。

 そうはいっても、企業で働いている安全関係の担当者が多くの時間を割いて教訓を学んで行くのは現実不可能だ。私のように、現役を退き時間のある人がこつこつ現業部門の役に立つ情報を発信していくのが現役と退職組のコワークの1つのあり方なのだろう。

 これからも皆さんの役に立つような仕事を続けていきたい。

2017年03月07日

事故や災害に思う

 最近感ずるのは、事故が起こってから長時間燃え続ける事例が多い。マスコミは、発災者のコメントをそのまま受け、安易に火を消すと危ないからだという報道を流してしいるが本当にそれでいいのだろうか。事故が起こって長時間燃え続ければ、周りにいる多くの人が被害を受ける。煙を吸ったり、避難所への避難など多くの犠牲者が出る。

 1月下旬に和歌山の製油所で長時間の火災が起きた。2月の下旬には、事務用品の会社の巨大な倉庫の火災が起き数日間も燃え続けた。初期消火に成功していれば、防げたかもしれない火災だ。

 初期消火という概念はものすごく災害の規模を抑えるのには重要なキーワードであるのにあまり重要視されていない。

事故は一定の確率で起こる。大事なことは、起きたときにいかに被害を少なくするかが大事な要素だ。消防訓練など多くの企業で行われているが

初期消火をを論点にして欲しい。被害の拡大を防ぐことも、重要な因子だ。

 被害の拡大防止という観点で、消防訓練のシナリオ作りを考えて欲しい。装置も大型化が進んでいる現状を見ると被害の拡大防止は重要なキーワードだ

 

2017年02月22日

事故や災害に思う

 2月17日に東京で開催された、危険物保安技術協会の講演会に行ってみた。この団体は消防関係の団体なので、危険物関連の事故を材題に事故事例の紹介がある。今年も、横浜や川崎などの消防関係者から事故事例の紹介があった。事例に中に、同じような事故が起きるのだなと感じさせられた事故事例があったので紹介しておく。

 数年前に、姫路でアクリル酸タンクが爆発して消防車が燃え消防士に多くの死傷者が出た事故を覚えているだろうか。この物質は、冷やしていないと発熱反応を始めてしまうもので、タンク内の液の循環を忘れたことにより冷却コイルの無いタンク上部で反応が進みタンクが破裂爆発した事故だ。反応性物質なのに監視用の温度計も無かったことで、異常に気づくのが遅れたことも原因だ。

 今回の講演会で紹介があったのも、アクリル酸エステルという物質を貯蔵するタンクだ。このタンク内で異常反応が起こっているのに気づくのが遅れ、タンク上部のベント配管から可燃性蒸気が噴き出したという事故だ。幸い、タンク外部から放水による緊急冷却や、窒素のタンク内への吹き込みで爆発はま逃れた。対応が遅ければ、姫路と同じようにタンクが蒸気圧で破裂爆発した可能性がある事故だ。

 2015年8月12日に川崎で起きていた事故だと紹介があった。家に帰って何か当時の報道記事があるかと調べてみたが、火災や爆発もしていないので報道記事すら無かった。つまり、表に出てこない類似事故は多いのだ。

 事故の原因はこうだ。この物質は、反応しやすいので反応禁止剤という物質が加えられている。ところが、購入しているこの物質に加えられている反応防止剤が少なかったのだ。つまり、条件が整えば勝手に反応が始まる状況になっていた。しかし、反応禁止剤の量が少ないことは、運転側は気づいていなかった。

 あるとき、タンク内で液が少し固まるトラブルが起きた。原因は良くわからなかったので、タンクの中に液を滞留する時間を増やしたのだ。つまり、タンクの中に液がいる時間が長くなったことにより、ますます反応禁止剤が消費されてしまっのだ。つまり、タンク内に存在する反応禁止剤が少なくなったことにより、タンク内で発熱反応が開始していたのだ。

 タンクには、温度計は一つしか付いていなかった。タンクは外側から冷やす方式で、タンクの下半分にしか冷却用ジャケットは付いていなかった。温度計は、タンクの冷却ジャケット部側に取り付けられていたので、タンクの下部の温度しか測定できなかった。

 更に悪いことに、タンクには撹拌装置は取り付けられていなかったので。

タンクの冷却は下側しか行われず、撹拌装置も無かったことにより上の部分で発熱を伴う反応が進んでいた。温度計は、タンク上部には無かったので、上部の異常反応による温度の上昇には気づかなかった。この物質は、反応すると粘度が上がるので、ネバネバした状態になる。つまり流動性が悪くなるのだ。撹拌装置は無いのだから、自然対流はますます行われない状態になり、タンク上部側で温度がどんどん上昇して行った。

 タンク上部から大量の蒸気が噴き出したときには、温度計の指示は振り切れていたと言うからかなりの暴走反応状態だったはずだ。

まさかタンクの中で反応は起こるまいと考えていたのかもしれないが、反応性の物質を入れていれば、タンクは反応器に突然なり得ると考えておくべきだ。

2017年02月18日

事故や災害に思う

 高圧ガス保安協会が発行している協会誌「高圧ガス」2月号に過去の事故事例に学ぶという特集記事が出ていた。1992/10/16に起きた千葉県袖ケ浦市の製油所の熱交換器の事故が書かれていた。熱交換器に関しては日本最大の犠牲者が出た事故だ。10人という死者が出た事故だ。

 それにしては、あっさりと書かれている。事故事例に学ぶという企画にしては、あまりにもあっさりとした文章だ。

この事故は日本の産業界にとって実に貴重な事故だ。反応器の事故は多くの犠牲者が出ると思っている人が多いが、反応器では犠牲者の数は少ない。むしろそれ以外の装置のが犠牲者の数は多い。なぜなら、反応器は危険だと誰でも考えているから多くの安全装置を備え、事故に対する備えが多いからだ。

 それに対して、熱交換器は誰でもそれほど危険と考えていない。だから事故が起こる。

2014年に起きた四日市の熱交換器爆発事故もしかりだ。この事故でも5人が亡くなっている

 話を元に戻すが、過去の事故事例に学ぶと言うなら、この記事での論点は本来なぜ一度に10人もの犠牲者を出したかという所に論点を当てなければいけない。一度失った命は、二度と戻ってこない。企業が、力を入れなければいけないのは死亡事故だ。

 この記事は、事故の当事者が書いているわけでは無い。過去の事故報告書を読んで書いていると思われる。事故の事実を知らない人が、自己の本質を書くのは難しい。

 多くの事故を経験した人が自ら語っていくことが、事故から学ぶことを伝えられるのでは無いだろうか。

団塊の世代がもう少し頑張って情報を発信して欲しい。事故の教訓を伝えられるのは、事故を自ら経験した人しかいないからだ。

2017年02月15日

事故や災害に思う

 会社に入った時最初に配属されたのは「計装」という部署だ。計装という業務は化学工場にある製造部門と直結する。温度や圧力など化学プラントの重要なパラメーターを管理するセンサーや制御を取り扱う部門だ。今から40年くらい前のことだ。入社当時はDCSなどは無くアナログ計器だった。空気式と電気式が混在していた。良く計器も壊れるので、構造原理も自然と身に付いた。プラントにも出入りするので、化学プロセスに関する知識も自然と身に付いた。おかげで石油化学工場にあるあらゆる製造部門を知ることもできた。用役プラントや出荷設備なども担当させてもらった。このことが、今安全情報を発信する時に大いに役立っている。

 最近は計装設備も壊れることが無くなり若い計装エンジニアーがトラブルを体験できないという。プラントも建設する機会は無いからなおさらだ。そんな背景もあり、今年の1月から雑誌「計装」という月刊誌で計装設備のトラブルをシリーズ物で1年間執筆することになった。流量計、液面計、圧力計、温度計、分析計、調節弁類とトラブル事例を書いていく予定だ。

 過去も現在も化学プラントの事故事例を調べていくと計装計器が引き金になっているものも多い。私の知っていることを少しでも次の世代につなげていきたい。

2017年02月09日

事故や災害に思う

 発熱が事故につながると言うことはご存じだろう。とはいえ発熱には色々なパターンがある。反応熱というと誰でも事故に関係するとは理解するが、個別の発熱となると案外理解していないのが現状だ。前回説明した、吸着熱などは典型的に事故につながるとは考えていない事例だ。発熱温度が500度近くもなるのだから、誰でも知っていて欲しいのだが現実ほとんど知られていないから繰り返し事故が起こっている。

 私も、この吸着熱に関心を持ったのは今から15年くらい前だ。下関と言うところにある工場に赴任していたとき吸着性物質を取り扱うプラントを担当していた。発熱があるとは聞いていたがたいしたことは無いと思っていた。あるとき吸着性物質は産地によりその特性が大きく変わると聞かされた。いわゆる性能が大きく変わるというのだ。最初は吸着性能だと思っていたが、良く聞くと発熱温度がかなり変わると言うことがわかった。さらに聞くととんでもない温度迄上がると言うことがわかったのだ。

 今回のテーマは、酸化熱なので話を元に戻すと酸化熱も結構な温度になる。数百度にはなるのだ。

酸化熱で知っておいて欲しいのは、油の酸化だ。保温剤などに油がしみ込むと酸化されて油の発火点が急激に下がる。油は酸化されると発火点が下がる性質があるからだ。新品に比べ2/3程度の温度まで発火点は下がる。発火点が下がれば、保温材を被った配管などはスチームトレースなどが施工されているからその温度で発火する。スチームなどの温度で酸化された油に火が付くのだ。

 空気が存在すれば必ず物は酸化される。酸化されるときには酸化熱という熱が発生する。その熱を甘く見ると事故になる。

こんな事例がある。定修でタワーのマンホールの開放を行うため、水を流し内部は何回か洗浄された。だいぶきれいになったと思い、マンホールを開けたところ翌日タワーが真っ赤になっているのが見つかった。タワ内部に有機物が多く残っていたことにより、マンホールから侵入した空気で有機物が酸化され酸化熱でタワーが赤熱状態になっていたという事故だ。

 空気があれば必ず物質は酸化される。その時必ず酸化熱という熱が発生していることを忘れないで欲しい。

2017年02月07日

事故や災害に思う

 吸着熱の事故はご存じだろうか。反応器などの反応熱による事故は関心があるかもしれないが、発熱という物は全て事故につながっていく。重合熱、酸化熱、中和熱など発熱にはいろいろある。しかし、この吸着熱という物は案外事故の原因と知っている人は少ないのが現状だ。

 しかし、数十年に一度は起こっている事故のパターンだ。1976年3月姫路に企業で臭いのある物質を貯蔵するタンクで爆発事故が起きている。臭いを取り去るため吸着性物質を使っていたところ、吸着熱が発火点を超えタンクが爆発した事故だ。400度を超える温度まで、吸着熱で温度が上がっていたという。

 1976/3/9千葉県茂原市にある工場で同様な事故が起きている。廃液タンクで臭いを除去するため吸着性物質を使っていたときに起きた事故だ。この時の温度は500度を超えていたという。同じ企業でその後同じように、また吸着剤による発火事故が起きている

 吸着剤による、発火事故は案外世の中では知られていないが、10~15年毎に起きているのは事実だ。400度から500度くらいに温度が上がるのだから、たいていの物質の発火点を超えている。

 知らないと言うことほど恐ろしいものはない。

 

2017年02月02日

事故や災害に思う

 1月23日和歌山県で製油所の火災事故が起きた。その5日前には、同じ製油所でタンク火災が起きていたという。1月23日の製油所本体の精製装置で起きた火災は激しく燃える姿がテレビで繰り返し放送されていた。住民へは避難命令が出されたという。40数時間燃え続けて、ようやく鎮火したという。住民への直接の被害は無かった物の、避難命令がでたというのは残念だ。

 安全上危険物を燃え尽きさせるために、長時間かかったという報道があるがなぜそんなに長時間漏洩が続いていたのだろう。漏えい部周りの調節弁や遮断弁を閉めきることで漏洩箇所の縁切りを早期に実施し、漏洩量を最小限にできなかったのだろうか。事故が起こるとすぐには、事故部の詳細の特定はできない物の、想定箇所はわかるはずだ。

 なぜこれほどまでに長時間、火災が継続したのかと言うことも今後の事故調査では調べ公開して欲しい。安全上燃え尽きるまで燃やすというのは、現場にいる人間にとっては道理だが、住民側にとっては不安を招く。

 事故が起きたときに素早い対応を行い、初期消火で被害の拡大を防ぎたい。今回の事故の中には、火災発生時の対応に関して貴重な教訓があるはずだ。今後の事故調査に期待したい。

2017年01月27日

事故や災害に思う

 2月24日に東京で労働災害について講義を行うことになっている。今までは、火災、爆発を主題にした講義だったが今年から労働災害をもテーマにして講演や講義活動を展開しようと思っている。今までこつこつと集めてきた数千件の労災データーを昨年末から、読み始め講演用資料を作り始めた。できるだけ、イラストや写真を取り込むことにしている。

 安全教育に使う資料は文字を沢山書いてもだめだ。伝えたいことを簡潔に書いたキーワードと、事故を防ぐための教訓をわかりやすく伝えることが大切だ。

 多くの企業の中で、労働災害の水平展開と称してヒヤリや労災の資料を職場展開しているが生の情報をそのまま流しても教育に使うのは不向きだ。生の情報では、余計なことが、沢山書かれすぎているからだ。機器番号だとか、協力会社名だとかその事故現場固有の情報は、他職場の人にとっては、関係の無い情報だ。再発防止対策も、沢山書きすぎていることも多い。

 本質的に何をすれば、再発を防げるのかがわかりにくい形で生の労災情報が水平展開されるところに問題があるような気がする。

労災情報を社内に水平展開するなら、教訓を1行でも入れて情報発信して欲しい。どうしたら災害を防げたのか、考えて考え抜いた末に出てくるのが教訓だからだ。

2017年01月14日

事故や災害に思う

 もう早いもので正月も7日になる。今年は暖かいせいか、庭の梅が5輪も花を咲かしている。

さて正月中の事故はといえば、1月5日に、大分の製鉄所で電気室が火災を起こしている。黒煙をあげている写真がネットで見れる。35時間後に鎮火したという。電気設備の火災は起こると実に対応がやっかいだ。簡単に水をかけることはできず、大量の黒煙を発生する。復旧も実に大変だ。ケーブルが焼ければ、一本一本つなぎ復旧していかなければならない。ケーブルの調達も大変だ。ケーブルには色々仕様があり、大量生産されているわけではない。

 今回の事故では何が原因かはわかっていないが、一般的な電気火災の原因は「短絡」だ。つまり、ショートが原因で電気ケーブルの被覆や絶縁材に火がつくのだ。長期間ケーブルを使っていれば、必ず劣化してくる。絶縁材が劣化すればいつか短絡が起こる。

 電気設備の火災事故は、だいたい20年から30年くらい経ったときに起きるという事故報告が多い。電気設備の更新を安易に伸ばすと事故になる。電気設備の更新計画をきちんとたてておかないと、思わぬ事故になる。

長期間の使用による劣化ではなければ、ケーブルなどの製造欠陥や設置時に工事の不手際で傷を付けたり異物を混入させたことが原因だ。

 短絡が原因でなければ、接触不良を疑って見ることだ。ケーブルなどは、端子部分をネジで締め付けている。このネジが、時間が経つと緩むことがある。最初から締め付けが甘いこともある。振動する設備が近くにあればその影響も受ける。

 停電日などに、抜き取りで端子台の緩みをきちんと見ておくことだ。一度も点検したことがないなら、電気火災のリスクは高い。端子の緩みを甘く見ないことだ。

 なぜねじが緩むのかというと、気温の変化も影響する。一日の中でも温度差はある。年間を通じて、季節毎に温度も違う。端子部は金属でできているから、温度が変化すれば必ず伸び縮みする。この伸縮で端子台が緩んだりすることがあるのだ。

 昔は、定期的に増し締めを行っていたが、最近は赤外線カメラで端子部を見れば接触不良部は発熱しているので早期に発見することができる。

設備診断技術は進化している。診断技術やいい道具を、うまく使っていくことが事故防止につながる。

2017年01月07日

事故文献、書籍等紹介

 明けましておめでとうございます。今年初めてのブログです。夕方には、孫達が来るのでブログを書くどころでは無くなってしまうはずですから今書いておきます。パソコンを見れば、キーボードを押し始められるからです。

 今日は、学会誌「安全工学」についてです。安全工学会から発刊されている定期刊行物です。1962年が創刊号だからもう半世紀以上出版されていることになる。会員なら、冊子が送付されてくるので見ることが出来るが、書店で売られているわけではない。前から、昔の号から読んでいってみたいと考えていた。昨年秋に、県立図書館である文献を見ていた時、県内の別の図書館で保管していることがわかった。取り寄せてもらって、一度読んでみようと思っていた。

 昨年末、インターネットである文献を探していたら偶然「安全工学」の冊子がネットから見れることがわかった。しかも、2004年から現在に至るまでのバックナンバーも見れるのだ。実にありがたいことだ。図書館に出かけなくてもみれるとは、すばらしいことだ。

 早速、年末から読み始めた。興味のある方は、下記のホームページにあるので見て見ると良い。

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/safety/43/0/_contents/-char/ja/

 

2017年01月02日

事故や災害に思う

 今年最後となるブログだ。希釈熱という物を知っているだろうか?。物質を希釈する時に発生する熱のことだ。硫酸や塩酸を水で薄める時などに熱が発生する。それが、希釈熱だ。苛性ソーダでも、希釈する時に発熱現象が起こる。

 熱という物は、事故につながる。発熱が引き金になり、事故という形になっていくのだ。重合反応などの「反応熱」というと、かなり発熱事故を知っている人は多いが「希釈熱」で事故が起こるとは考えている人は少ないから事故が起こる。

 熱の発生のメカニズムにかかわらず、熱は事故の要因の一つとなる。今回、希釈熱の事故を紹介しておく。

1998/11/9に福岡県の化学会社で起こった事故だ。

濃度の異なる廃酸が、廃液タンク内で混ざり希釈熱が発生した。廃液には、過酸化物という温度で反応を始める有機過酸化物が含まれていた。

有機過酸化物は温度の上昇で分解反応が始まり、大量のガスがタンク内で発生した。

タンクは圧力に耐えられず破裂して何らかの着火源で爆発した事故だ。

硫酸や塩酸など酸を扱っている職場は多いはずだ。無機物で可燃物では無いからと火災や爆発を想定していないと思わぬ事故となる。

希釈熱について勉強して欲しい。

来年も可能な限り、過去の事故から得られた貴重な教訓はブログで紹介していきたい。

ではよいお年をお迎えください。

 

 

詳細は下記のホームページから知ることができるので参考にして欲しい

失敗百選 http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CC0200070.html

リレーショナル化学災害データーベース https://riscad.aist-riss.jp/acc/7273

 

 

2016年12月31日

事故や災害に思う

 

 今年も残り数日だ。前から、HAZOPについて講義をしたいと思っていた。数日前に、あるところから半日か1日コースでHAZOPの講義をしてくれないかという話が飛び込んできた。来年の3月だという。1月から3月という時期は、来年度の講義用教材の見直しでかなり忙しい時期だ。講義テキストだけで、約1000枚のパワポの見直しをしていくからだ。

 3月はその追い込み時期ではあるが、是非やってみたい講義でもあり引き受けることにした。過去に雑誌での執筆などをして構想はあるが、要領良く人に伝えていくとなるともう少し材料がいる。自分が整理した事故データーベースで検索したら、250件ほどがヒットした。年末は整理を始めようと思う。

 世の中にHAZOPの手法を教える講義はあるが、HAZOPの失敗事例を伝える講義などはあまりきかない。HAZOP手法をいくら知っていても、潜在するリスクをきちんと拾い出し結果として手を打てなければHAZOPをやっても時間の無駄だ。 私が伝えたいのは、HAZOPで危険源を見落として、事故になる具体的な事例をできるだけ伝えたいのだ。リスクを適正に評価できるためには場数が必要だ。つまり、実際に起こった事故を知らなければリスクを見落としたり評価を低く見積もってしまうからだ。

 こんな事例がある。ポンプのHAZOPをして、「逆流」というズレを導き出したとする。運転員が操作を誤ったことを想定したとしよう。対策は、逆止弁の設置というのが一般的な解になるはずだ。これで、本当にそれでいいのかと考えて欲しい。

 もし、逆止弁が故障して作動しなかったらどうなるかである。多少の逆流なら、運転員が対応できるかもしれない。しかし、新人運転員ならそうはうまくいかないはずだ。高圧のポンプなら、逆流に対応する時間もあまりない。ポンプに入口側がコーンルーフタンクなら、すぐにタンクの破壊事故が起こる。

 ポンプの逆流で、繰り返し繰り返し過去に事故が起きている。逆流が致命的な事故になる恐れがあるなら、逆流を検出して遮断弁で自動的に対策するところまでやっておかないと事故になる。

 つまり、HAZOPは手法を単純に学ぶことではなく安全性評価の失敗事例とリンクして事故事例を学ぶことが必要だ。HAZOPで見落としやすいことや実際に起こった事故事例を組み合わせて学ぶと実践的な知恵がつく。できることなら、今後は本を出してみたい物だ。

2016年12月29日

事故や災害に思う

 今日は世間で言うクリスマスイブだ。事故は、浮かれているクリスマスイブであろうと起こる。12月24日起こった、タンクの爆発事故を今日は紹介してみたい。爆発で4人の人が亡くなっている。2009/12/24日に、大阪で起こった事故だ。森田化学という化学会社で起こった事故だ。

タンク内のゴミを掻き出すために、側板をカッターで切断しているときに爆発が起こった事故だ。

 タンク内を洗浄する為に安易に水を入れたことがきっかけだ。このタンクは三フッ化ホウ素といって不燃性の物質を取り扱うタンクだ。誰でも不燃性という言葉があれば危険物では無いと思い込んでしまう。

 ところが、タンクの内壁には生産時に出た副生物が付着していた。スラッジだ。この中には、酸性の物質が存在した。タンクの材質は、鉄であった。水を入れれば、酸と反応して水素が反応する。世の中ではわかりきった物理化学現象だがそこの従業員は誰も気づいていなかった。

 不燃物のプロセスだからと思い込み、作業前にタンク内の可燃性ガス検知は行わなかった。タンク内には、酸と水とが反応して大量の水素ができているのに気づかなかったのだ。

 そこへ、側板をいきなりカッターで切り始めたのだから火花で突然爆発が起こった。

この事故の教訓は何かと言えば、生産しているものが「不燃物」というキーワードだ。

製品が不燃物であったとしても、中間生成物や副生物が全て不燃物とは限らない。もしかしたら、製造過程の一部では可燃物も存在する。

製品が不燃物だからという思い込みで起こっている事故は多い。

火気を使う工事を行う前には、ガス検知機器は絶対行って欲しい。製品が不燃物であろうとガス検知機は事故を防ぐ最低限の作業項目だ。事前のガス検知機を行っていさえすれば死ななくていい事故は多いからだ。

 

2016年12月24日

事故文献、書籍等紹介

 2014年1月に三重県四日市で起こった熱交換器の爆発事故を覚えていますか。爆発により多くの人が死亡しています。三菱マテリアルの事故です。事故後、事故報告書が作成され事故の原因はある程度公開されたものの、多くの人はなぜ事故がおこったのかという答えには満足していなかったのでは無いでしょうか。私もその1人です。公式の報告書が出ることは望ましいのですが。多くの人が求めている事故の教訓を自社に展開する為のキーワードが曖昧なのが現在の公式の事故報告書ではないでしょうか。

 そんな思いもあり、もう少しわかりやすく事故の原因と教訓を伝えたいと考えていました。私も、日化協の支援メンバーであることから、この四日市の事故をビデオ化してみたいと考えていました。今年の初めから、自分なりにシナリオを作りビデオ化の構想を練ってきました。

私の構想を実現してくれてビデオを作成してくれたのが日本化学工業協会です。私が作成したシナリオをベースにビデオを作り込むことができました。私の思いを実現してくれたのです。

 私は、日化協と協力しながら、東ソーの蒸留塔の事故、三井化学の反応器の事故、日本触媒のタンク事故とDVDビデオを今まで作成してきました。ビデオには自分名前はでないのですが、脚本作りは自ら行いました。シナリオを自ら作り、脚本を考えました。事故を伝えるには、事故の事実を伝えるのでは無く事故の教訓を伝えることに力点を置く必要性があります。それが、一番難しいのです。ビデオ化すると、どうしても事故の事実を伝えようとする意向が強く反映され、肝心の教訓が消えさっつてしまうからです。

 それでもなんとか苦労したかいがあって、12/16日日化協からビデオが完成したとのプレスリリースが出されました

https://www.nikkakyo.org/press/5146

今回の事故は、多くの教訓を与えてくれています。特殊な物質を扱っていたから起こった事故だと単純に捉えてはいけません。熱交換器の開放時に起きた事故であり、どこの化学工場でもやっている熱交換器の開放作業に関わる事故だととらえておく必要があります。

 易しく言うと、熱交換器の蓋を開ける前に、無害化されているかがきちんと確認できるシステムになっていなかったことが事故になっていたのです。安全かどうかは経験則に頼っていたのです。本質的な意味で、化学工学的に安全だというマニュアルになっていなかったのです。

 年末から年始にかけて長時間窒素でパージしていれば安全と考えていたことが事故につながりました。熱交換器に残されていた物質は。ドライ窒素のようなの乾燥した気体では爆発感度がものすごく上がることが事故報告書に記載されています。

乾燥した、窒素でパージしたことが結果として事故の被害を大きくしました。窒素でパージすれば安全という、思い込みが事故につながっています。

 これからも、チャンスがあれば事故の教訓をビデオ化してみたいと思います。

過去に起こした、事故を教訓にしてビデオ化したいことを考えられているかたがいらっしゃったら相談して下さい。ビデオを作成するときにお手伝いをします。事故の事実を伝えることよりも、その教訓を伝えた方が再発防止には有効です。

 とはいえ、教訓とは何かを考えるのはなかなか難しいのです。何千件の化学プラントの事故事例を知り尽くした私でも悩むものです。

事故を防ぐ究極の答えが教訓だからです。

 

2016年12月23日

事故や災害に思う

 教育と訓練について書かれた今から約40年前の論文を読んでみた。1973年(昭和48年)に日本で化学プラントの事故が多発したときに書かれた論文だ。当時、事故や災害が起きるのは、企業の教育や訓練に問題があるのでは無いかということが論議されていた。今でも、当てはまる話題が書き綴られているので紹介したい。

 最初の論議は、企業での教育は、本業務の一部なのか、余分な間接業務なのかだ。教育の位置づけに関する、根本に関わるところだ。現在でも、この辺が曖昧にされているところに事故の芽が潜んでいるような気がする。

 2番目の論議は、教育の主管は人事部門かだ。主管とは、責任を持って総合的に旗振りをするところだ。責任とは、経営陣からお金を取ってくることも含めてだ。いまや、各部門毎に教育の責任が振り分けられるものの、金銭的な裏付けは何も無く各部門の細々とした教育予算でなんとかやりくりされているのが実情では無いか。教育はコストだ。コストの切りつめがきびしいなか、製造や技術部門単独では教育の予算取りは難しい。

 会社の中で教育の旗振り役がいなくなってきているところにも、最近の事故の芽があるような気がする。

誰が人を責任を持って育てるのか、企業の中でだんだん曖昧になってきているような気がする。

人は時間が経てば勝手に育つわけでは無い。経験だけで育てようと思っても、今や失敗をあまり体験できない時代になってきている時代だ。

人を取り巻くリスクは消費税が上がるがごとくどんどん増えてきているのに、企業として人に知恵をつけることを怠っては事故は防げ無い。

教育は時間がかかる。少しずつでもいいから、こつこつと積み上げていくことだ。ちりも積もれば山となる。

2016年12月17日

事故や災害に思う

 毎年行われている危険物保安技術協会が主催している事故事例セミナーの開催案内を入手した。来年2月17日に東京、3月3日に行われるという。私は、貴重な事故の教訓の情報源として数年前より聴講していいる。

 多くの事故は、知らなかったが主な原因である。少しでも、他社で起きている事故事例を知っていれば防げた事故は多いと感じている。危険物保安技術協会は、消防関係の組織が母体となる組織である。全国のあらゆる危険物の情報が入る組織と考えて良い。

 ホームページを見てもらえればわかるように、危険物関係の情報が得られる組織である。

もし時間があるなら、事故事例セミナー受講されるといい。1年に一回の開催ではあるが、継続的に話を聞いていればかなりの情報が得られる。

 情報は、一朝一夕に得られるものでは無い。こつこつ集めることである。

危険物保安技術協会 事故事例セミナーホームページ http://www.khk-syoubou.or.jp/seminar/2.html

2016年12月16日

事故や災害に思う

雑誌で高圧ガスというものが発行されている。1979年の特集号を読んでいる。昭和48年に事故が多発した時に、原因究明などが一段落したときに特集として組まれたものだ。

特集号の記事の中身は、当時の主要事故の調査報告書がある。徳山で起こった計装空気の元弁を誤ってしめてしまった事故。市原で起こった、生きている反応器の弁を誤って開いていてしまった事故爆発事故。直江津で起こった、ハンドル廻しの爆発事故などだ。

2010年代に入って化学業界では、立て続けに大きな事故が起こっているが、昭和48年当時と酷似しているものがいくつかある。

日本の化学産業は、1950年代後半にコンビナートという形態ができた。エンジニアリングや運転の中心になったのが、たぶん当時の30代から40代だろう。当時の、定年は55歳だから、ちょうど昭和の70年代に多くの人が退職する。

コンビナートの建設に携わった、経験豊かな人が1970年代に会社を去って行ったのだ。だから、昭和48年という年に事故が多発したということにも符合する。

特集後の中には、当時事故の再発防止に向けて色々な事柄が書かれている。一部は、法律として既に取り込まれているものもあるが、昨今の事故のでも通用するものも多いと感じる。

課長や部長などの管理スパンが広くなりすぎていた。本社安全部門の機能が形骸化していた。つまり、本社機能が本来工場にも目を向けるべきなのに、官公庁との渉外に時間を取られ工場のリスクを見抜けていなかったなどだ。

安全衛生委員会も形骸化していたとの記述が、当時の資料にある。単なる報告に終わり、安全審議が行われていないなど厳しい指摘がある。

これは、多くの企業も耳が痛いところではないだろうか。

40年間前の教訓であるが、企業の安全担当者は一度は目を通して欲しい情報だ。

雑誌高圧ガス 1974年のVOL11 2月号だ 昭和48年の事故特殊号だ

2016年12月04日

事故や災害に思う

色々な安全講演をしていて、講演が終わるとヒューマンエラーが減らないと質問を受けることが多い。

私が回答する答えを紹介しておく。

最初の答えは、「原因と対策が合っていない」が答えだ。ヒューマンエラーの原因をきちんと解析できていないのが、問題点だ。

例えば、何か作業ミスをすると、対策は再教育をするで対応しようとする。しかし、何を教育するのですかと尋ねると、作業手順書で再教育するという答えが返ってくる。どこに、ポイントを置いて教育するかと聞けば、全てだと答えが返ってくる。

つまり、原因の特定無くしても、教育さえすればミスを防げると考えている典型的なパターンだ。

人がミスしたのはなぜかが、全く解析されていないところにおおきな問題点がある。

人の行動は大きく分けて、①情報の入手、②判断、③行動というように三つの段階を経て何かが行われる。

この3つの内どこでエラーが生じたのか見極めないと、正しい対策が打てない。

例えば、暗くて情報が入手できなかったなら、対策は明るくすることだ。何か障害物があって、見えなかったら、対策は障害物をどけることだ。

注意表示に気がつかなかったのなら、注意表示を見やすくするか文字を大きくすることが対策だ。

判断でミスをしたなら、その原因を突き止めることだ。

作業手順書の表現に曖昧さがあって判断ミスをしたなら、そこの部分をわかりやすくすれば再発をすぐに防げる。

このように、原因と対策が正しく整合すれば再発は防止できる。

しかし、企業の中にヒューマンエラーの原因をわかりやすく体系的に分類して教育できる人材がどれだけいるかと見て見ると、ほとんどいないのが現実ではないだろうか。

なぜ人はミスをするのかという、人の行動や弱点をきちんと層別したとらえ方ができないと、ヒューマンエラーをシステマチックにつぶしていくことは難しい。安全を担当する人は、人はなぜミスをするのかというものにもっと関心を持って欲しい。

そういうテーマの本があれば、是非読んで人のメカニズムをよく知って欲しい。

最近は人間工学という言葉をあまり聞かなくなったが、人がミスをするメカニズを知り、人に優しい設計をする学問だ。

人の判断や行動のメカニズムなどをわかりやすく書いた書籍などがもっと増えてくれれば、ヒューマンエラーも減るのではないかと考えている。

2016年11月27日

事故や災害に思う

事故や災害が起きると、時間をかけて調査をして調査報告書が作られる。

やみくもに調査を進めて、報告書を作ってもその報告書が活かさなければ何もしなかったのと同じことだ。

調査をする目的は、本来事故の再発防止が目的のはずだ。その目的にかなわなければ意味が無い。

とはいえ、何をどのように調査するかは知らなければ難しい。

前回紹介した、インターリスク総研と言うところから「事故調査マネジメントシステムのポイント」という

調査報告が出されているので紹介する。

詳しくは、下記のURLを見て欲しい

http://www.irric.co.jp/risk_info/disaster/pdf/2010_38.pdf

高圧ガス保安協会の方が書かれた事故調査に関するの文献も下記にあるので興味のある方は見て欲しい

文献名は 事故調査と安全対策 著者は堤内さんだ このキーワードでもインターネットで検索できるはずです

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/17/3/17_3_160/_article/-char/ja/

 

2016年11月20日

事故や災害に思う

 事故や災害を防ぐにはシステマチックな対応が必要だ。個人個人の努力も必要だが企業として組織的な対応が求められる。とはいえ組織的な対応とは何かと問われると、なかなか理論立てて答えるのは難しい。

 災害に対してきちんとPDCA回して、事故のリスクを減らす安全管理システムを活用することが今求められている。

2011年の東北大震災以降コンビナートで大きな事故が続発した。これを受け、災害防止の取り組みについて国の主要機関で検討が進められてきた。2014年5月16日に、内閣官房、消防庁、経済産業省、厚生労働省の4者連名により「石油コンビナート等における災害防止対策の推進について」と題し、企業や業界が取り組むべき事項について報告書がとりまとめられている。

 これに書かれている内容を、わかりやすく解説している資料があるのでここで紹介しておく。

株式会社 インターリスク総研というところから出されている文献だ。下記のホームページにあるので参照されたい。

 

http://www.irric.co.jp/risk_info/disaster/pdf/2014_57.pdf

 

リスクアセスメントについては、非定常と変更管理で力を入れることを提言している

技術伝承については、Know-Whyを織り込むことと、危険を予知する能力の伝承を強く求めている

時報活用面では、自社の情報だけに頼らず広く社外の情報を活用することを求めている。つまり、同じような事故は繰り返し繰り返し起こっているだけで、過去の情報を知っていれば未然に防げる事故は多いと言うことだ。

そうは言っても、消防や警察に山のように埋もれている事故情報が公開されない限り現実問題、社外の情報を得ることは難しい

公開されたと言っても、生の情報だけでは教訓を捉えることは難しい。

事故から学ぶことは事故の事実ではなく、事故の教訓だからだ。

2016年11月19日

事故や災害に思う

 11月6日投光器の熱で着火事故が起きている。東京のある芸術作品展示場での火災だ。木製の展示物で中に木くずが敷き詰めてあったという。LEDの照明もあったが、夕方暗くなると周りが暗いため白熱電球製の投光器を展示物の中においていたという。

 数百ワットのかなり大きい投光器だ。表面温度は200度をける状態だったという。局部的には,更に高い温度だったのだろう。木くずが燃えるのは,200度を超えたあたりからだ。

 白熱電球タイプの投光器は,ガラス面の表面は手で触れないほどになる。十分な着火源となる。

化学プラントでも投光器による事故事例は多い。定修などで装置の中に入って作業をすることが多いからだ。

事故のパターンで多いのが、本来防爆形を使わなくていけないのに非防爆を使って着火爆発のケースだ。

第2のケースは、ケーブルの被覆などが破れていて火花が出て事故になるケースだ。可燃性ガスが存在すれば当然着火源になり爆発する。

タンク内の作業でこの投光器の事故が起こると,多くの場合は爆発火災となるため逃げられずに焼死するケースが多い。

今回の東京の投光器の事故も,展示物内から逃げられず焼死事故につながっている。

 投光器は,着火源と考える癖が必要だ。最近は、LEDによる投光器へ移ってきているが熱源としての危険性からはLED化を進めて欲しい。

とはいえ、ケーブルの損傷事故は存在するので日常点検は怠らないで欲しい。

 

下記の産業安全と事故防止について考えるの11/6の投光器事故情報も参考にしてください

http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/

 

2016年11月14日

事故文献、書籍等紹介

久しぶりに東京神谷町にあるkHK(高圧ガス保安協会)の資料室を訪ねてみた。ここには、事故や災害に関する多くの資料や書籍が置いてある。しかも、資料は著作権法で許可された施設として有料でコピーもできる。

 今回は,雑誌高圧ガスの中から興味のある記事をコピーしてもらうため出かけてみた。何せ,1960年代からの高圧ガスという雑誌の月刊号が全ておいてある情報の宝庫だ。

 高圧ガスの記事は,ホームページからエクセル版でダウンロードできるので予め興味のあるところを調べておける。

以下がホームページのURLだ。http://www.khk.or.jp/publications_library/library/index.html

 今回は,過去主要事故情報、事故からの教訓の手に入れ方,教育や技術伝承に関する記事など多くの情報を手に入れることができた。

何せ,半世紀にわたって時代時代の専門家が執筆している記事が多数あり目から鱗の情報も多数ある。

 これから得た情報は今後皆さん方にも紹介していきたい。

2016年10月30日

なぜ事故が起こるのか

 最近の事故原因としてよく取り上げられるのが、「設備の老朽化」と「団塊の世代の退職」という2つのキーワードだ。前者は、ハード面の問題で、後者は技術伝承など人にかかわるソフト面の問題と考えることもできる。

 しかし、設備の老朽化と言っても、機械が悪いわけではない。設備は、人が異常を監視し、寿命予測を行うわけだから人間側にも管理や能力面で問題があったと考えておく必要がある。異常を予見する能力だとか、異常の兆候を効率良く見つける能力が低下すれば、事故が起こりやすくなる。

 言葉を換えると、決められたことを決められた通りにやる能力だけでは事故を未然に防ぐことは難しい。色々考えて対応する、「考え抜く」力が今もとめられている。

 先日、危険物施設の事故の傾向や技術伝承について、川崎の消防が各企業の安全担当者にアンケート調査した資料を見つけた。川崎市のホームページで紹介されている報告書だ。技術伝承などに興味のある方は、一度見て見ると良い。

http://www.city.kawasaki.jp/840/page/0000066065.html

2016年10月12日

事故や災害に思う

 事故は起こるべくして起こる。火のないところに煙は立たないである。

2014年1月9日四日市で多結晶シリコンを製造する化学工場で熱交換器を開放作業中爆発が起こり多くの死者が出たのは覚えている方は多いと思う。最近、多結晶シリコンを扱う業界の安全対策はどうなっているのだろうと思って、研究をしていたところ、この業界がまとめた安全対策資料を見つけた。新金属産業における災害防止対策に関する行 動 計 画(平成27年度)という資料だ

http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList4_16/pdf/shinkinzoku_consent.pdf

この中に、多結晶シリコンなどの製造事業所で起こっていた事故情報が公開されている

火災や爆発が何回も起こっている。どこかで、事故に関与した物質の、物性を詳しく調べていれば大きな事故は起こらなかったと言うことがよくわかる。

 同じような物質を生産する企業は、事故情報を共有化していくことが求められている。

 

2016年09月30日

事故や災害に思う

 先日、今まで調査してきた化学プラントなどの事故や災害の数を調べてみたら3700件を越えていた。事故や災害について、関心を持ち始めたのは、今から15年前のことだ。下関にある工場で、爆発事故を経験して「なぜ事故が起きるのか」を考え始めてからだ。

 そのころから、こつこつと書籍、事故調査報告書、公開されているインターネット情報を参考に「なぜ事故が起こるのか」について研究をしてきた。

 今から、6年前の2010年に調査してきた資料をデーターベース化する作業を始めてみたところ、同じような事故が、繰り返し起こっていることがはっきりわかってきた。それらを並べてみると、共通の要因がある。すなわち事故からの教訓と呼ばれるものだ。

 事故から学ぶことは、事故の事実ではない。事故の原因や再発防止策から抽出した教訓だという考えに基づき、教訓を集めることに力点をおいて今まで作業を進めてきた。つまり、事故を防ぐための普遍的な知恵だ。

 今から、3年前にやっと「なぜ事故が起こるのか」の考え方を集大成し、岡山県の倉敷で2日間講座を立ち上げた。昨年には、第二段階として「リスクマネージメントという」切り口で教訓を整理した2日間講座を立ち上げ、京葉コンビナート地区で講義を始めることにした。今年は、要望を受け岡山県の倉敷地区でも講義を行うことにした。

 リスクマネージメントは、事故を未然に防ぐ有効な手段であるが。手法だけを学んでも効果的に化学プラントに存在する危険源を見つける能力が身に付くわけではない。つまり、設計段階でのリスクの見落としや評価の失敗事例。安全性評価の段階でリスク評価で抜け易いこと。運転管理で管理すべきリスクは何か、過去どんなリスクマネージメントで失敗事例などがあるかなど各管理項目毎にリスク管理の失敗事例を実際の事故事例から学んでおくことが必要だからだ。

 そろそろ、講義内容を書籍化してより多くの人に知らせたいと思っている。少しでも、化学プラントで事故が起こらないように自分の知っていることは伝承していきたいと思う今日この頃である。

 

2016年09月29日

事故文献、書籍等紹介

消防研究センターという組織がある。 総務省 消防庁の所管で消防大学校に属している

ここのホームページの中に、毎年行っている全国消防技術者会議の情報が公開されている

http://nrifd.fdma.go.jp/public_info/gijutsusha_kaigi/gijutsusha_kaigi_59th/index.html

数は多くはないが、過去の、化学工場での事故に関する報告記事がある

興味のある方は、一度のぞいてみると良い

 

2016年09月28日

事故文献、書籍等紹介

 事故調査のやり方を調べていたらインターネットでいい文献を見つけたので紹介しておく。タイトルは「事故調査マネージメントシステムのポイント」だ。インターネットの検索で、この文字をいれればすぐにヒットするはずだ。念のため、URLも書いておく。http://www.irric.co.jp/risk_info/disaster/pdf/2010_38.pdf

事故調査に見られる問題点、事故調査というマネージメントシステムの考え方など参考になる情報が記述されている。

 事故が起きてから、どう調査して行けばいいのかなどを学ぼうとしても遅い。日頃から、事故が起きたならどう根本原因を効果的に摘出して、教訓を足り出せばいいのかを考えておくことだ。

 そういう観点からすごく役に立つ情報だ。

2016年09月13日

技術伝承

 8月末締め切りの原稿をぎりぎりで書き終えた。テーマは「事故事例からの教訓」だ。石油化学工業協会で、毎年講演しているものを文書にして書籍の一部に取り込んで発刊するという。化学工業社という出版社が発行する「産業安全論」という書籍だ。改訂版を発行するとのことである。たぶん年末頃に発刊されるという。

 事故事例に学ぶことは大切である。しかし、過去の事故事例を手に入れることは容易ではない。公開されているものでも、どこにどんな情報があるかは案外知られていないからだ。

 次に事故の内容を知っても、そこから役に立つ情報を取り出すのはなかなか難しい。その事故固有の原因や対策を学んでも、応用が効かないからだ。事故から学ぶものは、事故の事実ではなく教訓でなければならないからだ。

 では、教訓とは何か。教訓はどうやって取り出すのかというと、これもなかなか難しい。取り出すには、こつがあるからだ。

今回の原稿では、私が過去数千件の事故事例を見て学んできた教訓を紹介しながら、教訓を取り出すこつを説明している。発刊されたらまた紹介するのでしばらくお待ちください。

 

2016年09月02日

なぜ事故が起こるのか

 事故が繰り返すのは,理由がある。人は,自分の職場で起きた事故は真剣に考えるが,他職場や他社で起きた事故は他人事と考えてしまう習性があるからだ。身近で起きた事故で無ければ、人は常に関係ないと思いたいのだ。事故の内容によっては自分の職場で起こる可能性があるのに、人ごとと思いたいのだ。

 他社の事故事例を学ばせるときに注意しなくてはいけないのは、事故は他社の事故事例と印象付けないような工夫が必要だ。事故の内容をあまりにも詳細に話してしまうと、このプロセスはうちの職場にはない,この物質も取り扱っていないと自分の職場とは関係ないと言うことに関心を持つようになる。

 しかし,化学物質を扱っている限り物質の違いはあれ危険なことが起こるか可能性は同じだ。品名にかかわらず,事故の可能性は存在する。

つまり,事故の教訓を学ぶときに,物質名はあまり言わないことだ。品名は言わず,危険物とか毒性物質というようにあらゆる職場にも共通する名称で表現するのが良い。

 事故が起きたプロセスも、機器単位で説明することだ。化学プロセスをあまり詳細に説明してしまうと,このようなプロセスは自分の職場にはないと考えてしまうからだ。タンクや,ドラムという機器レベル迄細分化し事故の話をする方がいい。

 事故は他人事と思わせないような話しぶりで,事故の教訓を伝えなければいけないところに事故の伝承の難しさがある。

2016年08月17日

なぜ事故が起こるのか

 設計管理で管理すべきことは2つある。プロセスや機械設備の設計であれば,「工学的な要件」を十分満足していることである。使用される温度や圧力などに耐えうる強度の材質選定や構造設計が求められる。もう一つの要件は,機械の故障や人のミスに配慮した設計になっているかだ。

 設備は必ず故障する。また、人が使うのであるからかならず,人に配慮した設計が求められる。

 設備の故障やヒューマンエラーに対して本質的な安全設計を考える時に大切なのがフェイルセーフとフールプルーフだ。

 フェイルセーフとは,人がミスをしても安全な方向に動作する仕掛けだ。化学プラントにある自動調節弁は,電気や空気が無くなっだ場合必ず安全な方向に動くように設計されている。冷却水の弁なら,冷却動作が継続して行われるように弁は開くように設計されている。

 フールプルーフは故障が起こっても致命的な事故につながらないような設計だ。

鉄道に設置されている遮断機は,停電などが起これば必ず閉まる方向に設計されている。電車の扉もいつもは閉まっている状態である。

空気などのエネルギー加えると空く仕掛けになっている。つまり、空気や電気が無ければ,閉まった状態になるように基本設計がなされている。

 このように,設計面で事故を起こさない為には,故障や人のミスに対して本質的に安全な設計を行うことである。

しかし、現実は工学的な配慮はなされても,設備の故障や人への配慮は十分ではないから事故が起きてしまうのだ。

2016年08月11日

なぜ事故が起こるのか

 タンクの側板や天板などで火気工事することがある。タンクの上に、計器などを新設すると電線管用のサポートをタンクの側板などに溶接して取り付けるケースだ。当然、火気工事であれば養生が必要だ。可燃物のタンクであれば、液を抜きパージまではするだろう。これで、安心してしまう。

 安全を配慮し脱液をしていても、火気工事を始めて、しばらくしてタンクの中から煙が出始めてしばらくして爆発したという事例がけっこうあるのだ。

 盲点は何かというと、「工事の場所はタンクの外側」だからという安心感なのだ。外側だから事故は起きないと思い込んでしまうからだ。タンクの外側の工事だから、タンク内部で何かが起きるはずが無いと思い込んでしまってはいけないのだ。タンクの外側の火気工事であっても、溶接などの熱は千度近くもあるはずだから、内部へ伝熱して伝わると思わなければいけないのだ。現実タンク内の金属板の表面温度は数百度にもなる。

 タンク内の液を脱液したといっても、タンク内部は洗浄しているわけでは無いから油分がこびりついていることがある。これが、熱せられて低沸点物の可燃性ガスがタンク内に充満していくことがある。時間が経てばガス濃度は増していくから、爆発混合気がタンク内部にできてしまうのだ。

 溶接の伝熱で着火温度以上になってしまえば、あっという間に着火爆発という事態に発展してしまう。

爆発まではいかないにせよ小火や火災はかなりの事例がある。インターネットで「室蘭製油所№242タンク火災事故」というキーワードで探してもらえば、ある火災事例の報告書を見ることができるので参照してみて欲しい。

 タンクの事故事例を紹介したが、金属製の排気ダクトなどでも外側で溶接などをしていると同様の事故は起きる。ダクトの内側に油スラッジなどが付着していることがあるからだ。

2016年08月01日

事故文献、書籍等紹介

 久しぶりに昔の事故文献を読んでみた。安全工学会の前身である。「安全工学協会」が1980年に発行した小冊子だ。化学プラントの事故事例24件を書き表した50頁ほどの冊子だ。イギリスのICI(Imperial Chemical Industries Limited)という化学会社の教育資料を翻訳して発行したものだ。

 36年前の資料だが、今でも繰り返し起こっている事故と共通する因子を書き表した内容だ。興味のあるかたは、今でも安全工学会から購入できるので読んでみてほしい。900円というお手頃な冊子だ。

 化学プラントの事故の本質のキーワードを書き表しているが、多くの事故事例を求める人には物足りない内容かも知れない。でも、たった50頁ではあるがものすごく基本的な内容が織り込まれていると私は感じている

 最初のキーワードは、事故は燃焼の3要素が成り立つから起きると書き表している。一例を挙げると。昔は、タンクの窒素シーなどはなかった。だから、ちょっとした条件で爆発混合気ができ何らかの(ほとんど静電気)着火源でよく爆発していた。今当たり前のように、窒素シールはコンビナートでは行われているが、中小の化学企業ではそれが行われておらず事故は今でも起きている。

 人はミスをする。バルブなら誤って動かすこともある。ならば、施錠せよが事故防止の基本だ。でも相変わらず、重要な弁の施錠が行われておらずヒューマンエラーが繰り返されている。

 化学装置は見かけほど頑丈では無い。コーンルーフタンクなどは簡単に破壊する。ベントが詰まれば、すぐの破壊する。これは、コンビナートでは基本中の基本常識だが、相変わらず事故は起きている。金属でできている装置は、みんな頑丈だと思い込むからだ。でも、大型の機械装置は見かけほど強度があるわけでは無い。

 各企業が持っている。失敗事例や事故情報をなんとか共有化して世の中に還元できる活動ができないかと常に考えたい。事故には、パターンがあり原理原則がある。それを知らないから、事故は繰り返す。

 事故のパターンを解析し世の中に発信する活動をこれからも続けていきたい

 

2016年07月15日

技術伝承

今日、高圧ガス保安協会が開催した非定常HAZOPをテーマとする講習会に参加してみた。最近の事故を鑑みても、非定常が事故のキーワードになっているから、時代の趨勢とは合っているテーマとは感じている。

 話を聞いてみると、バッチプロセスHAZOPの手法を使い少し手を加えたものだ。HAZOPには従来から、連続プロセス用と、バッチ用と存在するが、バッチプロセスHAZOPはまさに非定常作業向けのHAZOPとして適しているといってもいいたぐいのものだ。

 つまり、プラントを立ち上げたり、止めるのはまさに非定常作業であり、言われてみればそう言うことなんだと感じた。更に緊急停止のHAZOPを付け加え説明していた。これも、バッチプロセスを利用したもので、緊急に停止するという手順でのリスクを拾い出す手法に置き換えたものだ。

 つまり、非定常HAZOPの手法としてはバッチプロセスの従来使われてきたものをうまく利用したというのが実感だ。今回の講習では、手法の説明で終わっていたが、皆が求めているのは手法では無い。HAZOPでは、解析時の発散や時間のかかりすぎを避けるため、複数の故障やトラブル条件が同時に発生することを想定していないが、現実の事故では複数のハザードが同時又は時間差で起こり事故になる。

 事故は、一つの原因で起こるわけでは無いという現実がありながら、HAZOPではシングルフェイラーで検討を進めるという矛盾がある。

 また、ハザードが見えていないのに、HAZOPで解析作業をさせても限界がある。

化学プラントで起こった過去の数千という事故事例から、HAZOP的に考えた場合どんなハザードを見落として事故になったのか、何が教訓だったのかをまず、教育してから非定常HAZOP教育へと導かないといけないのだろう。

 今回の講習を聞かせてもらって考えた。私の持っている数千件の事故事例から、「緊急停止」、「スタート」、「停止」を切り口に何を危険源として見落としたことにより事故になったのか、あらいざらい探しだしてみたい。

 さらに、機器の種類毎や単位動作という切り口で、失敗を整理することなのだろう・HAZOPのノードという概念はユニットで考えることがいいのだろう。つまり、ポンプなら予備機への切替えという非定常操作。予備機への緊急切替え。つまり、緊急か通常の立ち上げか停止かで違いを見ればいいのであろう。

 私の知る数千件の過去の事故事例から、HAZOPで見落としがちなHAZARDという今後は講演をしていきたいと考えた一日だった。

2016年06月30日

事故や災害に思う

 空気液化分離装置の事故事例を知っているだろうか。空気を液化して、液体酸素、液体窒素アルゴンなどのガスを作り出す装置だ。工場では、窒素や酸素は数多く使用されている関係からこの装置は世の中で多用されている。とはいえ、運転や保全に係わらない限り知ることは無い設備かもしれない

 この設備の事故の最初のキーワードは、温度が低いことから「極低温」だ。金属は、温度が低いともろくなる。低温脆性という性質を持っているからだ。温度の非常に低い設備は、金属材料面で慎重な配慮が必要だ。つぎは、「熱ひずみだ」。運転を開始するときは常温だが、運転中は極低温になる。運転中と停止中と極端な温度差があるというのがこの装置の特徴だ。運転と停止を繰り返せば、温度差により金属に歪みが生じる。溶接部であればひびが入ることもあるからだ。

 次のキーワードは、「濃縮」だ。液体酸素を作るプロセスで、アセチレンや炭化水素などが入り込み濃縮するとその物質が原因で爆発する。つまり、100%に近い高濃度酸素の中に可燃物が存在すれば濃縮物質により爆発事故が起こるからだ。しかも、微量の蓄積で爆発してしますというのが怖い。

 もう一つキーワードがある。「液体酸素爆発」というキーワードだ。極低温の液体酸素が漏れて保温材や木などに染みこむと爆薬のような状態を作り出す。保温材も昔は、現在のような不燃性では無く動物の毛などが使われていた。毛は可燃物となり、酸素は支燃性ガスだからそこに着火源があれば燃焼の三要素が成り立つてしまう。これで事故が起きてしまうのだ。

 今回は、空気液化分離装置という装置でキーワードを切り出してみたが、同じように色々な装置は事故の引き金となるキーワードがある。自分たちが取り扱っている装置を例に、何かキーワードか物質危険性や物理化学現象を切り口に話し合ってみることだ。

 事故から学ぶことは、事故そのものでは無い。事故の教訓だ。つまり、どんなことを知っていれば防げたのか、やってはいけないことは何だったのかを考えてみることだ。

 事故の原因と対策だけを追っかけていては、応用問題は解けない。教訓を学ぶことで、事故防止の本質的な能力を身につけることができる。

事故からの教訓は何かといつも深掘りをして欲しい。

2016年06月26日

なぜ事故が起こるのか

 事故が起こるのは、人がミスをする、機械が壊れる、物質危険性知らないの3つだ。何千の事故事例を見てくると、この3つにつきると言える。この3つの事故事例を体系的に知っていてくれさせすればかなりの事故は防げる。

 今日は、物質危険性の事故事例のパターンの一例を紹介したい。物質危険性という言葉の中には、私は物理化学現象という意味も含めている。液体の温度が上昇すると液封現象を起こすとか、沸点を超えた状態で突沸現象が起こり事故になることもあるからだ。

 今日紹介するのは、サイホン現象だ。液体が引っ張られて液が流れ続けるような現象を言う。

タンクなどの容器に液を入れ、そこにホースなどが接続されていれば、液がホースを伝って外部に流れ出てしまうことがある。放っておけば、液が流れ続け、タンクの中の液は空となる。

 周りに液が出入りする、バルブを閉めているとタンクの中は真空になり、タンクが簡単に凹んでしまう状況が起こる。

 サイホン現象が過去に事故を起こしていることはある。たとえば上下作業だ。化学工場なので、ストラクチャーと呼ばれる階層階では、上の方で作業をしながら、下で配管のバルブを操作することがある。つまり、上と下とでは配管でつながっているから、バルブを開け閉めするタイミングがある条件だとその配管で、液が下に向かって流れ出すサイホン現象という現象が起こることがある。

 つまり知らない間に、液が流れ続け思わぬ災害になるのだ。

すべては、重力がなせる技なのだが、事故を経験した人しかそのメカニズムはわからない。

 サイホン現象恐るべしだ。

サイホン現象で、ヒヤリや事故を経験した方があれば是非情報を教えて欲しい。同じ事故を繰り返さないためには、皆が情報を共有化すべきだ。

2016年06月24日

事故や災害に思う

 各地で講演すると必ず事故事例を話したら、その事故の対策を知りたいという要望が出る。私が、限られた時間で講演する目的は、限られた時間に本質的なことを伝えたいのだ。つまり、事故事例を話すのは。その事故を伝えたいからでは無く、その事故に含まれている貴重な事故の教訓を伝えたいからなのだ。その事故の、個別的な事故対策を話すのが目的では無いのだ。

 個別的な事故の対策で一番知りたいのは、人に関する判断ミスなのだが、現実その情報を得ることは不可能に近い。

物質危険性や機械の故障原因など、工学的な部分は事故報告には書かれているが、人に関する人文学的な情報は事故を起こした企業からまず公開されることは無い。

 事故の原因の半分以上は、人のミスと言われるが、事故を起こした企業が人にかかわる部分を公開することはほとんど無い。

つまり、人に関する情報が公開されないから事故は繰り返すといっても過言では無い。

全く同じ事故が、同じように二度と起こることは無い。人は賢いから、事故に直接かかわった人は事故から何かを学び同じ事故は起こさないからだ。とはいえ、直接に事故にかかわらない人は、情報を手に入れることはできないので、事故の本質に触れることはできないので、また同じような事故を起こす。 これが、事故が繰り返されるからくりだ。

 このような背景から、事故事例を説明しても対策までは説明をしていないのだ。

また、対策を説明していないのは、事故の対策は無数にありそれを説明していては無限の時間を費やしてしまうからだ。時間は限られている。限られた講義時間で最大の効果を上げなければ時間の無だだ。

 私は、一つの事故から、他の職場でも教訓として考えて欲しい事項を発掘し伝えることが、事故防止には不可欠な活動だと考えている。

時間は限られている。限られた時間で、いかに有効な情報や、気づきを伝えられるかは非常に重要な要素だ。

 

 

 

2016年06月11日

事故や災害に思う

事故や災害の報告書を見ると、爆発だ、火災だ、破裂だ、漏洩だとかいう見出しがあり、事故の概要が紹介されている。原因も物質危険性や機械的なことが主体だ。ヒューマンエラーなど、一番肝心な部分はほとんど記載されていないのが現実だ。事故の原因のうち半分程度が人にかかわるもののはずなのに、人にかかわる部分は記載が無いというのが実態だ。

人が状況認識をうまくできなかったのか、状況は把握できてはいたが判断を間違えたのか。それとも、判断は正しかったのに、行動にミスや遅れがあったのかが知りたいところなのに何も書かれていない。

これが明確になっていなければ、人に関する再発防止の妥当性がわからない。

あえて書いていないのか、それともそこまで解析ができていないのかはわからないが、たぶん解析ができていないから事故は繰り返されているのだと思っている。

また機械的な原因の記述に関しても、どちらかというと主要装置の故障は書いてある物のの事故のきっかけになったであろう計装設備などの故障について触れている事故報告書は少ない。

化学プラントには、流量計、液面計、温度計、圧力計など様々な計装設備があり、運転員の判断を支援する設備がある。これらの装置の故障が引き金で大きな事故になることもある。

計装設備がきっかけになった事故や労働災害なども沢山あるのだろう。

化学プラントのリスクアセスを進めていくためには、タワー、炉など主要な機械設備という切り口だけでは無く、計装設備や電気設備などと言う切り口でも事故の危険源になる物は何かということを考えていく必要があるのだろうと思う

まずは、計装という切り口で「事故のきっかけとなった計装設備」というテーマで情報を整理して、投稿記事を書いていこうと思う。

 

2016年06月03日

事故文献、書籍等紹介

 ヒューマンエラーに関心を持つ人にお勧めしたい書籍を紹介する。今から30年くらい前、まだ現役で企業に勤めていたとき、管理職になったときに思ったのがマネージメントは何かという疑問だ。マネージメントという言葉は、日本語では管理という言葉になる。日本語の管理とは、どちらかというと決められたことを決められた手段で従わせるという意味合いにとられれる。つまり、自分の思っていることを部下にどう伝えて実行してもらうかという気持ちが、マネージメントだった。
 つまり、命令することがマネージメントという概念が当時の考え方であったが、人は自分の意図した通りには動かないだろうと言うことも感じていた。そんな思いもあり、マネージメントとは人の心を柔軟に読んで一つの目標に向かってともに仕事を進めていくことだと考えを変えた時期があった。人の心理や思いが理解できないでマネージメントは難しいと感じたのだ。
 そのとき、興味を持ったのが心理学だ。世の中、存在するのは人と機械だ。人でできないことは機械でやらせる。でも、機械を操るのは人だ。そうは言っても人は一人で何かをしているわけでは無く、組織という大きな人の集団だ。工学的な知識を持つ以前に、人に関する知識を持たなければ社会で物を考えることは難しいと考え始めたのが今から30年前だ。
 遠回しの文章になったが、当時興味を持ったのが黒田勲という人だ。自衛隊の戦闘機のパイロットの身体的な医学管理と心身のスペシャリストだ。パイロットは選び抜かれた集団だ。心と体の頂点を極めたモノが選ばれる。最高の人材を選ぶ仕事に就いていた人だ。心と肉体をベストに保たれた人間とは何なのだろうかいつも気にかけていた。あるとき、この黒田さんの書いた書籍を読んでみた。すごく理知的に人を解説していたのだ。心理的なものをじつにわかりやすく解説していた。
 以後、黒田さんの著書は読んできたが、最近またその著書を読む機会があった。著書名は「信じられないミス」はなぜ起こる。発行所は中央災害防止協議会だ。900円の単行本だ・
 ヒューマンエラ-というのは、永遠の課題だが目先だけ解決出来る問題では無い。時代が変われば、手の打ち方も変えなければならない。でも、本質的に打つべき対策は不変だ。この不変となるもの、時代の変遷を考えとるべきことをうまく書き表してくれたのがこの書籍だと思う。
ヒューマンエラーの個別的対策を教えてくれる書籍ではないが、一度は読んでおいて損は無い本だ。

2016年05月09日

事故や災害に思う

 日本の自動車会社で燃費ごまかしのニュースが大きく報道されている。過去にも、自動車のリコール隠しを行っていた日本の大手自動車会社だ。企業の体質というのは中々変わらない物だ。企業文化という物は、長い時間をかけて上司や先輩から後輩へ受け継がれていく。いい上司がいれば、良い文化が自然と受け継がれていくのだがなかなかそうは行かない。

 コンプライアンスという言葉が出始めてからかなりになる。企業では、コンプライアンス教育をしているがなかなか徹底が難しい。ほんのわずかな社員の不祥事でも会社の存亡にかかわる時代だ。

 化学プラントで事故が起きるのも企業風土と関係している。情報がオープンで、ヒヤリ事例がきちんと組織内に紹介されている職場は事故が起きにくい。ヒヤリ事例というのは、事故に至らなかったという貴重な情報だ。つまり、どうして事故にはならなかったという情報がそこに含まれているからだ。事故に至らなかった生の情報がヒヤリ情報には存在する。

 企業にRC監査で出向くことがある。このヒヤリをどう扱っているかで企業の体質がある程度わかる。ヒヤリといえども大切にしているかどうかだ。

 

2016年04月21日

事故や災害に思う

 先日東京の地下鉄で乳母車を扉に挟んだまま電車が発車した事故があった。幸い乳母車には子どもは乗っていなかったのでけが人は出なかった。しかし、挟まれた乳母車はホームの端の障害物にぶつかったのでたぶん粉々に壊れたのだろう。子どもが乗っていれば死んでたかもしれない事故だ

 電車の扉は障害物が挟まれても,15mm以下なら検知せずランプは消え発車できてしまうと言う。今回は、乳母車の挟まれた部分が15mmより細かったため検知出来なかったという。10年ほど前にも同じような事故があり、国内の乳母車メーカーは15mmより太めの部材に改良したという。

 今回の事故でも、乳母車が挟まれて電車が動いているのを見てホームにいた人が非常停止ボタンを押したと言うが電車は止まらなかった。車掌は非常ベルの音は聞こえたが隣の駅まで運行させたという。つまり、ボタンが押されても電車は走り続けることが出来る設計になっているという。しかし、地上を走るJRの非常停止ボタンは押されれば、強制的に電車が止まるという。設計の思想が全く異なるのだ。

 地下鉄は、地下のトンネル内を走行するため火災時などを想定して自動的に停めない方が安全という考え方から非常停止ボタンが押されても強制的に停めないそうだ。しかし、今回の事故では火災では無い。すぐに、停止すべきなのに車掌は停めなかったヒューマンエラーだとされている。

 一刻を争う非常時に人の判断を入れるとこのようなことになる。化学プラントも地震が起こったときに停止するかしないかは、昔は人が判断してプラントを停めていた。私が勤めていたコンビナートの化学プラントでもある地震強度を越えると停止することになっていた。あるとき基準を越える大きな地震が来た。本来なら、全プラントが停止するはずだが現場の判断で停めなかったプラントもいくつか存在した。緊急時の人の行動は必ずしもルール道理にはいかないという事実だ。マニュアルで決めているから人はマニュアル道理人が行動するとは限らない。過去の成功体験などが、人の判断を誤らせるからだ。

 連続運転している化学プラントは、出来ることなら停めたくは無い。運転を継続したいのは誰でも同じだ。しかし、安全を考え停めるという基準があるならそれを実行しないと何のために基準を作ったのかということになる。たまたま、停止させなかったプラントで何も起きなかっただけである。 そんなこともあり、その後ある規模の地震が来ると自動的に化学プラントを停止するシステムに変わっていった。人を介させずに安全に停止する手法を選んだのだ。

 今回の地下鉄の事故は、ヒューマンエラーだと報道されているが人のミスでかたづけてしまうと事故は繰り返す。事故を防ぐには人と機械(システム、安全装置etc)の両方の対策を組み合わせないと防げ無いからだ。電車が加速を始めたほんの数秒以内で人に判断をさせるやりかたでは無理があるような気がする。

2016年04月10日

事故や災害に思う

 危険物保安技術協会が募集した第15回「危険物事故防止対策論文」に応募してみた。消防庁、危険物保安技術協会が主催したものだ。協賛は石油化学工業協会、日本化学工業協会や石油連盟など危険物を取り扱う業界団体だ。私もサラリーマン時代にはお世話になった業界なので、少しはお役に立ちたいと思い筆をとってみた。

 テーマとして最近の石油や化学企業で起きた重大事故を取り上げてみた。演題は「最近の重大化学事故と安全管理の盲点」とした。化学会社に入社した40年前から、現在に至るまで化学産業を取り巻く環境はどう変化してきたのかを考察してみた。切り口は、設計管理に始まり、安全性評価、運転管理、設備管理、工事管理、変更管理だ。日頃頭の中に描いていたことを論文にしようと書き始めたものの、いざ活字にしようとするとかなり大変だった。書き上げたのは、締め切り当日の1月29日だった。

 努力の甲斐あって、昨日この論文が入賞したとの知らせを受けた。今年の6月6日に東京で開催される危険物安全大会で表彰されるといううれしい知らせだった。論文も、危険物保安技術協会のホームページにも今後掲載していただけるとのことだ。http://www.khk-syoubou.or.jp/guide/paper.html

 多くの方々が論文を見て、少しでも事故防止に役立ったらありがたいなと思っている。

 

2016年04月01日

技術伝承

 2011年の東北大震災以降、化学関連業界では大きな事故が立て続けに起こった。背景には、いわゆる豊富な経験を持っていた団塊の世代が企業から去って行ったことも関係していると言われている。これを受け、石油化学工業協会、日本化学工業協会、石油連盟などの業界団体は技術伝承にも力を入れている。2012年から保安教育強化の一貫として、年1回の頻度で企業の安全を担う中核人材を集めて教育講座が開かれている。2014年迄は、「産業安全論」という名前だったが昨年からは「産業安全塾」と名称が変更されている。企業から選抜された中核人材30名程度が受講できる講座だ。インターネットで「産業安全塾」と検索すれば出てくるので興味のある方は見て見るといい。

 講師陣は、経済産業省などの官庁サイド、業界団体、企業の安全に関わる経営サイドのメンバー、技術伝承や人材育成の有識者など多岐にわたる講師陣だ。それぞれ専門分野毎に、情報や貴重な経験を、約1時間半程度講師が話してくれる。合計で15回の講演が聞けるのだ。非常に幅広い分野の情報を生の声で聞けるという、有意義な講座である。しかも、参加者同士がコミュニケーションを行いながら安全情報ネットワークを構築できるという利点がある。

 私も昨年の夏に、四日市コンビナート地区で行われたこの講座の講師として参加させてもらった。安全教育・啓発の体系化と実践というカテゴリーを受け持ち、「事故事例から学ぶべき教訓」という演題で話をさせてもらった。多くの事故事故事例からどのように教訓を抽出していくかという切り口を紹介するものだ。90分という講演枠では、時間が足らないのだがエッセンスを抽出して伝えている。

 東京地区でも、昨年10月頃から今年の2月までこの講座が開催され、同じようなテーマで講演をさせてもらった。数日前、この講座の最終日に修了式があり参加して各企業から選抜された受講生達と話をさせてもらった。これからの企業を担う30代から50代の中核人材だ。この中に、4月からは中東のアブダビの石油精製会社へ派遣の辞令が出たという若者もいた。目がらんらんと輝いていた。

 この若者は、1月の私の安全工学会での講演の時にも熱心に質問をしてくれた。日本で学んだことが、赴任先の海外でも役立つこと願いたい。

安全もグロ-バル化の時代だ

2016年03月18日

事故や災害に思う

 あと20分すると、午後2時46分になる。五年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている。あのときも、今日と同じ金曜日だったと思う。当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、技術研修センターという所にいた。化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ。

 当日、朝からこの技術研修センターで各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた。安全工学会の主催で行われていた。午前中も順調に進み午後からも安全体験が始まった。1時間半ほどの体験が終わり皆さんが休憩をしていたところだったと思うがいきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた。緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れがきた。地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある。

 すぐにテレビを点けたものの、最初は震度速報だけだった。安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない。その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった。 しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す。

 安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった。技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった。翌日皆さんタクシーなどを手配して帰られていった。

 その後は、計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた。

日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる。限られた資源、時間ではあるが日本にある以上地震への備えは不可欠だ。

 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートでも経験してきている。 今年は、地震で起きた事故からの教訓を整理した形でまとめ次の世代に伝える活動もしていきたい。

2016年03月11日

技術伝承

 2014年1月に四日市のコンビナートで熱交換器を開放作業中爆発事故が起こっている。5人が死亡、13人が負傷する大事故だ。この事故は、運転中に起きている事故では無い。点検のために装置を開放する作業中に起こった事故だ。熱交換器のチャンネルカバーという蓋を開けるときに、中に残っていた爆発性の化学物質が原因だ。

 事故の原因となった物質は、衝撃を受けると爆発する性質を持っていた。事故のきっかけとなった衝撃は、作業中に熱交換器の蓋を開ける際の金属同士の衝撃だと言われている。わずかな衝撃が、化学物質を起爆させることになる事例だ。

 この事故に関しては、企業から事故報告書が出されている。http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-0612.html

87ページにわたる報告書だ。しかし、これだけのページ数になると、これを要領良く読んで事故からの教訓を読み取るというのは中々難しい。

 事故から学び取らなければいけないのは、事故の事実では無く多くの人にも共通で適用可能な事故の教訓だ。このためには、事故の事実も専門用語をあまり使わずに、なぜ起こってしまったのかを平易な言葉で書き表し、教訓は何かを導き出していく必要がある。

 技術伝承すべきは事故の教訓なのだが、文字で表現するとなると中々難しい。イラスト、写真、アニメーションを入れたビデオ化するのが望ましい。しかし、このシナリオ作りというのが実に難しい。ビデオを見て飽きずに、緊張して見れるのはせいぜい10分だ。この10分くらいのビデオだと、文字数にして3000文字位のシナリオになる。要点を専門用語を使わず書いていくというのが実に難しい。

 1ヶ月くらい前から、この四日市の事故のビデオシナリオを作り始めた。今まで、2011年から2013年に起こった化学プラントの重大事故を3件ビデオ化するのにシナリオを書いてきたが、今度の四日市の事故は今迄で一番難しい。衝撃を加えるだけで爆発する危険な物質が材題だからだ。

2016年03月09日

事故文献、書籍等紹介

 2月19日(金)危険物保安技術協会主催の事故事例セミナーに参加してきました。各地で起こっている化学企業などの事故がテーマです。事故を消防関係の人が、消防目線で解説してくれるという興味のある講演会です。企業が発表する事故報告書には、書かれていない事柄も話として出てくるのでとても参考になります。

 企業が作成する報告書は、多くの人に見てもらうという目的から一般の方がわかりやすい文章で書かれています。この結果、一般向けな文章表現になってしまのです。そうすると、文章が平易になりすぎてしまいます。特に事故の背景や、潜在的な原因などの部分はさらっと書かれているのが実情です。企業の安全担当者が、知りたい部分は事故の事実では無く、事故からの教訓です。なぜ事故が起こったの、背景は何かという部分です。一番肝心な部分は、事故を起こした企業の事故報告書からはなかなか読み取れないのです。

 今回の東京講習会には200人以上の人達が参加していました。大阪でも行われる予定ですから、同様に多くの人が参加すると思います。

事故から学ぶものは事故の事実ではありません。同じ事故が二度と起こることはありません。事実だけを学んでも、あまり役には立ちません。事故から学ぶものは、自分の企業にとっても役立つ教訓です。教訓を学び取るには、このような講習会は有効です。話してくれる情報量は、文字で書かれた情報より内容も多く情報密度が高いからです。

2016年02月24日

事故や災害に思う

 トヨタが日本国内で車が作れないという。部品供給工場の加熱炉爆発事故が原因だ。事故が起こると、この供給問題が必ず表面化してくる。これは、化学業界も同様である。自社製品のマーケットシェアーが高ければ高いほど、事故発生時の影響は大きい。国内企業への影響だけでは無く、世界中のお客様に影響を与える事態も発生する。企業の事故は、経済への影響という視点でとらえる時代になっている。

 化学産業の事故が、多くの企業に影響を与え始めたのは半導体産業が盛んになり始めてからだ。半導体製造には特殊な化学物質が必要だからだ。1993/7/4、四国にある化学工場で起こった事故を思い出す。半導体を作るときに使うエポキシ樹脂を製造するプラントでタンクの爆発事故が起きた。当時この工場では、世界で消費する量の6割を生産していた。事故の影響で供給が止まり、半導体企業に大きな影響を与える恐れがあった。幸いにして数ヶ月の在庫が、流通メーカーにあり事なきを得たが一つ間違えば大変なことになる。

 当時の事故の記録があるので紹介しておく。事故の原因は実にたわいの無いことだった。タンクが2つあり別々の製品が貯蔵されていた。2つのタンクは配管で接続されていて、1つのバルブで縁切りがされていた。この縁切りしていたバルブが漏れ、液が混ざってしまったのだ。

 混ざると異常反応を起こす物質であったため、タンクが爆発してしまったのだ。「混触」が原因だ。開発担当者は、混ざると危険ということは知らなかったという。製品開発の段階で、混触の危険性について安全性評価をしていなかったのだろう。

 混触事故は繰り返し繰り返し起きている。化学物質は組みあわせが悪いと異常反応を起こしたり発火することがあることは昔から知られている。しかし、案外現場の人達には知られていないのが現実だ。混触については、もっと啓蒙を図らないと混触事故は減らせないと感じている。

 もう一つこの事故には教訓がある。つまり、バルブ1つで縁切りしていたことだ。バルブは漏れるという昔から知られていることを無視したのも事故の原因だ。同じような設備が無いか、自分のプラントを一度点検して欲しい。過去に起こった事故の教訓を活かして欲しい。

 バルブは漏れる。混ぜたら危険は基本中の危険だ。

2016年02月08日

技術伝承

 企業が事故事例を材題にして事故の教訓を学ばせることは良いことではある。しかし、教育するときの気をつけなければいけないことがいくつかある。事故事例を教えるときは、事故の内容に深入りしないことだ。製品名や製造工程、機器番号などいらないものは一切省くことだ。「事故の内容を教える」ことが目的では無いからだ。主目的はなぜ事故が起こったのか、自分たちにも当てはまる教訓は何だったのかを学び取ることだからだ。

 なぜ起こったのかを説明するときにも、「物質危険性」や「設備」だけに着目せず、「人」という切り口で事故の経過を考察して欲しい。事故の原因の半分以上は「人」に係わるものなのに、人の部分は省略されがちだからだ。人と言っても個人という視点はなく組織という視点でできるだけ見て欲しい。つまり「マネージメント」で抜けているところは無いかという視点だ。

 冬場反応器が異常反応して爆発事故を起こしたという事例であれば、どうしても「爆発」という所にスポットライトが当たってしまう。事故報告書では、物質危険性だとか反応器の構造などに多くのページが割かれているのが一般的だ。そうすると、事故事例の教育資料などでも、「物質危険性」や「設備」が教育の主体になり人の部分が抜け落ちてしまう。冬場の事故であれば、反応器の温度が上がらないから蒸気を上げすぎたのかもしれない。それは、個人のミスでは無くマニュアルに昇温速度を企業が規定しなかったのが事故の引き金になっているというのが事故の教訓ということになるからだ。個人のミスでは無く、マネージメントの問題として事故事例を使いながら、企業内のマニュアルの見直しをすすめることが大切だからだ。事故事例を使って、事故を未然に防ぐ知恵を社員に与えていくことだ。マネージメントの失敗として過去の事故事例を活用して欲しい。

 事故事例教育の教材は文字ばかりではだめだ。危険の感受性も上げて欲しいからだ。写真が手に入るなら、危険を感じるような写真を入れて欲しい。事故そのものでは無くても、類似のものがあればそれも使うことだ。文字だけでは危険の感受性は上がらない。

 イラストも併用して欲しい。現場の状況などは、沢山の文字で表現するよりイラストを見せれば直感的に人は理解するからだ。

2016年02月06日

事故文献、書籍等紹介

 日本では1970年代に事故が頻発した。化学プラントの安全技術を向上させていく為、多くの人が対策を考え実行していって。この貴重な情報を世に残すべきとして、当時の化学工学協会(現在の化学工学会の前身)から4冊の書籍が出されている。1978年から1979年にかけて丸善から発行された、「化学プラントの安全対策技術」というシリーズものの書籍である。

 第一巻は化学プラントの安全対策というタイトルで、化学プラントに存在する危険源や安全対策の基本的な考え方について紹介している。第二巻は化学プラントの安全設計というタイトルだ。設計という切り口で、考えるべきことを紹介している。第三巻は保安・保全の管理技術というタイトルだ。運転管理、設備管理、人間工学的な配慮などの切り口考えるべきことが紹介されている。運転マニュアルや教育訓練についても書かれており、現代でも参考になる情報だ。第四巻は事故災害事例と対策というタイトルだ。事故からの学び方、事故の調査方法とあわせ実際に起こった事故事例が数多く書かれている。

 既に絶版となっていて、書店で手に入れることは難しいが書籍のネット販売で検索すると見つかることもある。化学工学会の会員なら、電子図書館というシステムがあるのでそこで閲覧することが出来るはずだ。前にも紹介した、高圧ガス保安協会(東京)の書庫にもあったと記憶している。40年前の書籍ではあるが、現代でも十分通用する内容である。一度は、読んでみてほしい書籍である。

2016年01月23日

技術伝承

明日は、安全工学会のセミナーで講演する。テーマは安全マネージメントと技術伝承だ。安全をマネージメントするには、危険源をしっかりと把握できる基礎的な能力が不可欠だ。危険源が目の前にあっても、知識や経験が無ければそれに気づくことすら難しい。昨今は、自ら事故や災害を経験することが難しいからだ。自ら事故や災害を経験できないのだから、擬似的に過去の事例に多くを学ぶしかない。しかし、残念ながら過去の事例をわかりやすく伝える情報が少ないのも事実だ。

明後日は、受講生とのグループ討議が予定されている。どんなところに疑問を持ち、どんな情報が欲しいのか聞き出すいいチャンスだ。

ニーズが見えなければ、技術伝承は難しい。一方通行の技術伝承は、出来るだけ避けた方がいい。

相手が知りたいことをうまく伝えていくのが、技術伝承なのだろう。

2016年01月13日

なぜ事故が起こるのか

日本で石油化学コンビナートが稼働し始めたのは、今から約50年前の1960年代だ。この時代は、まだまだ機械の信頼性も低く、事故を防ぐには技術的な問題を解決することに力点が置かれていた。1970年代に入ると、化学プラントの複雑化や大型化も進み人が技術について行けない状況も起こり始めた。ヒューマンエラ-による事故も多発した。コンビナートの事故要因の解析が進み、事故を防ぐには技術的な問題の解決に加え、ヒューマンファクターに着目した事故対策が必要だと考えはじめたのが、1970年代だ。

1980年代に入ると事故の未然防止という観点から、リスク管理という視点で事故防止対策が推進していった。危険の芽を見つけ出し、リスクを低減対策を打つことで事故を減らそうとする考え方だ。化学系企業で、HAZOPが使われ始めたのもこの時代だった。

1990年代に入ると、日本はバブル崩壊でコスト削減が強化され、いわゆる省人化が進んでいく。度を超えた省人化で、事故が増え始めたのもこの時代からだ。組織が関与する事故が起き始めたのもこの時代だ。

2000年代に入ると、技術伝承という問題が起き始める。バブルが崩壊してから、企業は人の採用を大幅に削減していたからだ.つまり、技術伝承をしようにも後輩が入社してこなかったのだ。更に、追い打ちをかけるように、2007年頃より、多くの事故やトラブルを体験してきた、団塊の世代が大量退職を始めたのもこの時代だ。

2010年代に入ると、化学産業で大きな事故が続いた.2012年頃から、ほぼ半年毎に事故が起きている。この頃は、2007年頃に定年となった、団塊の世代が再雇用を終えて企業から本当に去り始めた時代だ。化学企業だけでは無く、鉄鋼業界でも事故が頻発し始めたのもこの時代だ。

技術は人にありという。人が去れば技術は途絶える。技術の伝承は、長期プランで考える課題なのだが、現実そう対応されて異な事で事故が起こっている。

2016年01月11日

事故や災害に思う

 正月休み中に化学工場で事故がなければいいなと思っていたが、残念ながら2016年1月3日に埼玉県にある化学工場で事故が起きている。タンクの壁についた物質を、硝酸を水に溶かし洗浄していたところタンクが破裂したという。直径1m、高さ2mの小型タンクだ。タンクは金属製で、中の様子を見るガラス製ののぞき窓が破裂で破損してそこからガスが吹きだしたという。有毒ガスだという。2人の尊い命が、失われた。


 事故の原因は、現時点ではわからないかこのような事故を教訓としてとらえるときのキーワードは何かを過去の事故事例から紹介したい。
1つ目のキーワードは、突沸である。タンクの洗浄温度は、80度だったが、事故時はそれよりも高温だったという。水は100度が沸点だから、もし100度を超えた状態であれば、大量の水蒸気が発生する。水蒸気は、密閉したタンク内では逃げ場がないので、タンクの圧力はどんどん上がるはずだ。もし、タンクに安全弁が無ければ、タンクの圧力は逃げ場が無くなり、一番強度の弱い部分が破壊する。つまり、ガラス製ののぞき窓だったのかもしれない。

 第2のキーワードは、冬場寒い時期だということだ。どうしても、温度が低いと反応が遅くなる。そうすると、人は誰でも温度を早めに上げた方がいいと思うのである。しかし、温度計というものは応答遅れがある。実際の温度は上がっても、すぐに指示値は正しい値を示さないのだ。少し遅れて温度が上がってくる。つまり、温度計の指示値は、実際の温度より低めの温度を示すのだ。

 結果として、実際の温度はかなり高いのに、温度計指示値はまだ低いと思い、温度を上げすぎて事故になることが昔から繰り返されている。たとえば、冬場にバッチ反応器の温度を上げていて爆発事故などが起こる事例だ。

 温度計は、指示が正しく出るまでには時間がかかると言うことを教育で教えておくこと、マニュアルに必ず昇温速度を明記しておくことだ。急な温度上昇が、事故につながる事例は多いからだ。

2016年01月08日

なぜ事故が起こるのか

 今日は年末31日大晦日だ。自分が保有している、国内外過去50年間分の事故情報を見てみた。けっこうな件数がヒットするかと思ったが、たった一件しか該当する物は無かった。2014年12月31日に中国で発生した事故だ。中国の自動車部品工場で機械の洗浄に使っていた有機溶剤(シンナー)が近くで行っていた火気工事で爆発 死者75人、負傷者は185人。死亡者の数を見ても、日本では考えられない事故が、海外では起きているのが現実だ。この事故のキーワードは、「有機溶剤」だ。日本でも、この有機溶剤を使用している化学工場では事故は繰り返し起きている。

 有機溶剤は、色々な化学物質を溶かしたりするに非常に便利な化学物質だからだ。しかし、静電気で簡単に着火するという性質を持ち、取り扱いには非常に注意が必要な物質なのだ。化学物質が着火するのは、溶接火花のような直火と言われるものか、静電気の火花かだ。日本では、溶接火花のような直火は、過去の火災事故の教訓からしっかりと管理されるようになってきているが、外国ではまだまだ可燃物の近くで火気工事が行われる現実がある。

 日本の化学企業は、今や化学プラントを世界中に展開してきているが、日本の安全管理に関する常識が世界の常識ではない。海外では、

可燃物のあるところで、平気で同時並行的に火気工事が行なわれることはありえると思っておく必要がある。海外に赴任する日本の技術者は、日本で起こった過去の事故事例をしっかり学び、海外にもその知見を展開し少しでも事故の犠牲者を出さないような活動をしてほしい。

2015年12月31日

事故や災害に思う

 旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故から.約30年が経っという新聞記事が出ていた。世界に衝撃を与えた、史上最悪の放射能漏れ事故だ。未だに、半径数十キロには人は住めず周りは廃墟となっているという。

 この事故は、通常運転をしているときに起こった事故ではない。つまり、原子力発電所の動作試験をするという、非定常時に起きている。原子力発電所の外部電源が切れた時を想定して、非常用設備が安全に機能するかを確かめる試験をしていた時に事故が起きてしまったのである。 本来なら、万一試験中に異常が起きても安全に原子炉が止まるようにしておかなければいけないのに、安全装置を解除した状態で、試験をしていたのである。

 安全装置を解除した状態で、試験を続けていたところ運転操作に失敗し原子炉が制御できなくなってしまい爆発が起こってしまったのである。

爆発により大量の放射能が拡散したにもかかわらず、情報を隠したことにより被害が広範囲に広まったのである。事故は、運転員の操作ミスと当初は発表されたがその後の事故報告書では、多くの要因が重なって起きた事故であることがわかっている。

 設計段階から、運転操作が難しいという特性があった。つまり、運転が難しいと言うことは、それに見合った十分な教育訓練が行われていなければならないのに十分な教育訓練は行われていなかったという。この原子炉は、低出力では不安定という特性であったのに、試験はその危険な低出力運転状態で試験をするというハイリスクな試験だった。なのに、安全装置を解除した状態であったことがこの致命的な事故につながってしまった。更に完成を急ぐあまり、装置の耐熱材を不燃物ではなく可燃物に変更し工期を無理に短縮したという。この結果、火災も誘発させたのだろう。

 ここ数年、日本でも化学プラントで大きな爆発事故が起きている。化学反応によって発熱反応をする設備は、冷却が出来なければ反応暴走を起こすことになる。熱を制御できなければ、事故になってしまうからである。

 反応器などの装置は、発熱量に対して冷却能力はどのくらいの安全率を見て設計しているのだろうか。機械の設計をする際には、材料強度に対して3倍程度の安全率を見て設計すると言われる。JISなどで、安全率を規定されていると聞いたことがある。化学工学の世界では、設計に当たって安全率という数値的な基準は企業の中で、きちんと決まっているのだろうか。技術者の設計に任されているのだろうか。

 化学プラントにある発熱を伴う装置については、冷却能力の安全率について深く考えてみる価値があるような気がする。

2015年12月30日

技術伝承

なぜ事故が起こるのかの要素に技術が伝承していなかったという事実がある。

企業が存続していくためには、人から人への技術のバトンタッチが不可欠だ。日本の化学産業では、1990年代のバブル崩壊期に人を採用しなかったという技術伝承の大きな問題点がある。技術というのは人についてくる。技術は全てが紙に書き表せるものではない・

運転マニュアルは全ての技術を書き表しているかというとそうではない。だから事故が起きる。

人から人へと時間をかけて技術は移動するもので、移動する相手がいなければ技術は途絶えてしまう。

とはいえ、今の世の中時間をかけて技術を伝承する時間のゆとりはなくなってきている。

製造プロセスが、効率化するように、技術の伝承も効率化が求められているはずだ。教育も伝承の効率化を真剣に考えなければいけない時代だと思う。でも、現実の教育を見ていると効果的な教育が行われていないのが実情なのだろう。

イメージがわかる映像や、イラスト、写真などを効果的に使った事故防止教育の推進が求められている。

2015年12月25日

事故文献、書籍等紹介

 事故は過去の教訓が伝わらないからだと書きました。確かに、過去の事故事例を勉強しようと思って町の本屋さんに行っても現実事故に関する書籍などを手に入れられないのが現状です。、過去に発行された非常に為になる書籍が絶版になっているからです。多くの企業の中でも、自社の事故事例もなかなか見られないのも実態かもしれません。私が、色々なことを勉強させてもらったのは、高圧ガス保安協会にある資料室です。そこには、多くの事故文献、調査報告書、書籍があります。化学企業は高圧ガス保安協会に入っているところも多いでしょうから興味のある方は、一度訪ねるのもいいでしょう。有料ですが、コピ-もしていただけます。

2015年12月24日

マネージメント(管理)の大切さ

 事故は危険源が見えていないから起こると書きました。まず化学プラントにある危険源を体系的に理解することが事故防止の基本です。過去の事故事例を、危険源の種類毎に整理してそこから抽出される教訓を抜き出していくことです。そこから得られた教訓が、化学プラントの安全をマネージメントしていくために重要なキーワードです。

 では、どんな切り口でマネージメントするために必要な事故事例を整理するかがポイントです。化学プラントの一連のサイクルに分けて、整理するのがいいでしょう。私は、7つに分類してマネージメントのキーワードを整理しています。

 まず、「設計管理」です。事故を防止する最初の切り口は、設計です。2番目は、「安全性評価」です。設計者が、見抜けなかったリスクを組織として、マネ-ジメントすることが求められているからです。3番目は「運転管理」です。4番目は、運転とともに大切な「設備管理」です。設備の維持管理や点検などのマネージメントを怠ると、機械による突然の故障などで事故が起こるからです。5番目は、「工事管理」です。工事中の事故や災害にも目を向けておくことが大切です。6番目は、人に関するマネージメントの重要なポイントである教育・訓練です。7番目は、「変更管理」です。化学プラントは生き物です。お客様の要望に応じて絶えず作り出す製品も変わります。コストダウンや生産効率を向上させるため、原材料や生産プロセスも変化します。組織や人事異動により管理者が変わるのも「変更管理」で抑えておかなければいけない重要ポイントです。「変化」は危険源です。

 危険源をきちんとマネージメントすることが求められています。

2015年12月24日

事故や災害に思う

 化学プラントで事故が起こるのは、危険が存在するからです。危険源は、目の前にあっても、知識や経験の度合いでそれが見えるか見えないかが決まります。1970年代に入社した、団塊の世代と呼ばれる人達は多くのヒヤリハットやいくつかの事故や災害を経験しながら育ちました。自ら色々なことを数多く経験したことで、危険源を実感し目の前にある危険源に対応することが出来たのです。

 2007年頃より、それらの世代が大量に退職を始めました。それでも、その頃出来た再雇用制度により5年間の定年延長などにより、2012年頃まで団塊の世代が企業に残っていたのです。時を同じくして、その頃から化学プラントで重大な事故が、半年ごとに起きてしまいました。

 その後も、化学産業だけではなく鉄鋼業界などでも事故が起こっています。事故報告書を見ると、少なからず団塊の世代の退職が影響しているようにも感じます。

 私も1970年代前半に入社して、多くの経験をさせてもらったひとりです。多くの事故は、過去の事故事例からの教訓を知っていれば防げたのだろうと感じます。このブログを通じて私の知っていることをこれから伝えていきます。

2015年12月24日

なぜ事故が起こるのか

なぜ化学プラントで事故が起こるのか

化学プラントに存在する危険源は何かをまず考えてみることです。危険源は沢山ありますが.体系的に分けると4つです。

①物質危険性 ②人 ③設備 ④外乱や天災です

 

 

2015年12月23日