技術伝承

 企業が事故事例を材題にして事故の教訓を学ばせることは良いことではある。しかし、教育するときの気をつけなければいけないことがいくつかある。事故事例を教えるときは、事故の内容に深入りしないことだ。製品名や製造工程、機器番号などいらないものは一切省くことだ。「事故の内容を教える」ことが目的では無いからだ。主目的はなぜ事故が起こったのか、自分たちにも当てはまる教訓は何だったのかを学び取ることだからだ。

 なぜ起こったのかを説明するときにも、「物質危険性」や「設備」だけに着目せず、「人」という切り口で事故の経過を考察して欲しい。事故の原因の半分以上は「人」に係わるものなのに、人の部分は省略されがちだからだ。人と言っても個人という視点はなく組織という視点でできるだけ見て欲しい。つまり「マネージメント」で抜けているところは無いかという視点だ。

 冬場反応器が異常反応して爆発事故を起こしたという事例であれば、どうしても「爆発」という所にスポットライトが当たってしまう。事故報告書では、物質危険性だとか反応器の構造などに多くのページが割かれているのが一般的だ。そうすると、事故事例の教育資料などでも、「物質危険性」や「設備」が教育の主体になり人の部分が抜け落ちてしまう。冬場の事故であれば、反応器の温度が上がらないから蒸気を上げすぎたのかもしれない。それは、個人のミスでは無くマニュアルに昇温速度を企業が規定しなかったのが事故の引き金になっているというのが事故の教訓ということになるからだ。個人のミスでは無く、マネージメントの問題として事故事例を使いながら、企業内のマニュアルの見直しをすすめることが大切だからだ。事故事例を使って、事故を未然に防ぐ知恵を社員に与えていくことだ。マネージメントの失敗として過去の事故事例を活用して欲しい。

 事故事例教育の教材は文字ばかりではだめだ。危険の感受性も上げて欲しいからだ。写真が手に入るなら、危険を感じるような写真を入れて欲しい。事故そのものでは無くても、類似のものがあればそれも使うことだ。文字だけでは危険の感受性は上がらない。

 イラストも併用して欲しい。現場の状況などは、沢山の文字で表現するよりイラストを見せれば直感的に人は理解するからだ。

2016年02月06日