事故や災害に思う

 トヨタが日本国内で車が作れないという。部品供給工場の加熱炉爆発事故が原因だ。事故が起こると、この供給問題が必ず表面化してくる。これは、化学業界も同様である。自社製品のマーケットシェアーが高ければ高いほど、事故発生時の影響は大きい。国内企業への影響だけでは無く、世界中のお客様に影響を与える事態も発生する。企業の事故は、経済への影響という視点でとらえる時代になっている。

 化学産業の事故が、多くの企業に影響を与え始めたのは半導体産業が盛んになり始めてからだ。半導体製造には特殊な化学物質が必要だからだ。1993/7/4、四国にある化学工場で起こった事故を思い出す。半導体を作るときに使うエポキシ樹脂を製造するプラントでタンクの爆発事故が起きた。当時この工場では、世界で消費する量の6割を生産していた。事故の影響で供給が止まり、半導体企業に大きな影響を与える恐れがあった。幸いにして数ヶ月の在庫が、流通メーカーにあり事なきを得たが一つ間違えば大変なことになる。

 当時の事故の記録があるので紹介しておく。事故の原因は実にたわいの無いことだった。タンクが2つあり別々の製品が貯蔵されていた。2つのタンクは配管で接続されていて、1つのバルブで縁切りがされていた。この縁切りしていたバルブが漏れ、液が混ざってしまったのだ。

 混ざると異常反応を起こす物質であったため、タンクが爆発してしまったのだ。「混触」が原因だ。開発担当者は、混ざると危険ということは知らなかったという。製品開発の段階で、混触の危険性について安全性評価をしていなかったのだろう。

 混触事故は繰り返し繰り返し起きている。化学物質は組みあわせが悪いと異常反応を起こしたり発火することがあることは昔から知られている。しかし、案外現場の人達には知られていないのが現実だ。混触については、もっと啓蒙を図らないと混触事故は減らせないと感じている。

 もう一つこの事故には教訓がある。つまり、バルブ1つで縁切りしていたことだ。バルブは漏れるという昔から知られていることを無視したのも事故の原因だ。同じような設備が無いか、自分のプラントを一度点検して欲しい。過去に起こった事故の教訓を活かして欲しい。

 バルブは漏れる。混ぜたら危険は基本中の危険だ。

2016年02月08日