事故文献、書籍等紹介

 久しぶりに昔の事故文献を読んでみた。安全工学会の前身である。「安全工学協会」が1980年に発行した小冊子だ。化学プラントの事故事例24件を書き表した50頁ほどの冊子だ。イギリスのICI(Imperial Chemical Industries Limited)という化学会社の教育資料を翻訳して発行したものだ。

 36年前の資料だが、今でも繰り返し起こっている事故と共通する因子を書き表した内容だ。興味のあるかたは、今でも安全工学会から購入できるので読んでみてほしい。900円というお手頃な冊子だ。

 化学プラントの事故の本質のキーワードを書き表しているが、多くの事故事例を求める人には物足りない内容かも知れない。でも、たった50頁ではあるがものすごく基本的な内容が織り込まれていると私は感じている

 最初のキーワードは、事故は燃焼の3要素が成り立つから起きると書き表している。一例を挙げると。昔は、タンクの窒素シーなどはなかった。だから、ちょっとした条件で爆発混合気ができ何らかの(ほとんど静電気)着火源でよく爆発していた。今当たり前のように、窒素シールはコンビナートでは行われているが、中小の化学企業ではそれが行われておらず事故は今でも起きている。

 人はミスをする。バルブなら誤って動かすこともある。ならば、施錠せよが事故防止の基本だ。でも相変わらず、重要な弁の施錠が行われておらずヒューマンエラーが繰り返されている。

 化学装置は見かけほど頑丈では無い。コーンルーフタンクなどは簡単に破壊する。ベントが詰まれば、すぐの破壊する。これは、コンビナートでは基本中の基本常識だが、相変わらず事故は起きている。金属でできている装置は、みんな頑丈だと思い込むからだ。でも、大型の機械装置は見かけほど強度があるわけでは無い。

 各企業が持っている。失敗事例や事故情報をなんとか共有化して世の中に還元できる活動ができないかと常に考えたい。事故には、パターンがあり原理原則がある。それを知らないから、事故は繰り返す。

 事故のパターンを解析し世の中に発信する活動をこれからも続けていきたい

 

2016年07月15日