耐圧気密テストで起こる事故 その2

定修の終わり頃、高温高圧反応器の耐圧気密検査で、装置が破裂した事故を紹介する
圧力は5.5MPaで、製油所で起きた事故だ
44個の破片が100m四方に飛び散ったが幸い深夜で負傷者は出なかった
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057044.html
原因は、約17年前の製作時の溶接欠陥だ
溶接時に溶接棒を間違えていたことにすぐに気づいた
間違えた箇所を削り取り再溶接をした
ところが、わずかな傷が残っていて、使用している間に少しずつ成長していた
さらに、この反応器内には水素が入るため、水素により水素脆化という現象が起こっていた
水素脆化とは、高温高圧の環境下で水素が存在すると、金属の組織内に水素が浸透する現象だ
金属結晶内に水素が浸透すると割れが起こってくる

この企業では、設備を設置してから毎年溶接部は全て検査をしていた
ところが、新設時から8年間が経過したとき、今まで問題が無いのだから全ての検査は必要は無いと判断してしまった
その後事故が起こる、約10年前からは溶接部の抜き取り浸透探傷検査と目視検査だけで、全数詳細検査をすることはなかった
つまり、溶接部全点検査をやめてしまったのだ
当然、検査コストも手間も大幅に減るというメリットもあるからそうしたのだろう
ところが、目視検査では内部の亀裂の進行はわからない
最後は耐圧検査の圧力に耐えられず破裂したのだ

当時は、この使用温度や圧力では水素脆化は起こらないと考えられていたので検査を簡略化したのだろう
この事故がきっかけで、水素浸食の目安となる、ネルソン線図の見直しが行われたという

高温高圧機器の溶接部の検査は、毎年検査で異常が無いからといって安易に抜き取り検査に変更しないことだ
機械設備は、時間が経てば立つほど傷んでいくと考えるべきだ 内部の傷は目視ではわからない
今まで大丈夫だったは検査に関しては通用しないということだ

2020年03月26日