事故や災害に思う- 事故は非定常時に起こる

旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故から、約34年が経っ。1986年4月26日に起きた運転中の非定常作業で起きた事故だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85
この事故を若い人は知らないのかもしれない。世界に衝撃を与えた、史上最悪の放射能漏れ事故だ。未だに、半径数十キロには人は住めず周りは廃墟となっているという。この事故は、原子力発電所が通常運転をしているときに起こった事故ではない。
つまり、原子力発電所の動非定常時に起きている。原子力発電所の外部電源が切れた時を想定して、非常用設備が安全に機能するかを確かめる試験をしていた時に事故が起きてしまったのである。 本来なら、万一試験中に異常が起きても安全に原子炉が止まるようにしておかなければいけないのに、安全装置を解除した状態で、試験をしていたのである。安全装置を解除した状態で、試験を続けていたところ運転操作に失敗し原子炉が制御できなくなってしまい爆発が起こってしまった。爆発により大量の放射能が拡散したにもかかわらず、情報を隠したことにより被害が広範囲に広まった。事故は、運転員の操作ミスと当初は発表されたがその後の事故報告書では、多くの要因が重なって起きた事故であることがわかっている。設計段階から、運転操作が難しいという特性があった。つまり、運転が難しいと言うことは、それに見合った十分な教育訓練が行われていなければならないのに十分な教育訓練は行われていなかったという。この原子炉は、低出力では不安定という特性であったのに、試験はその危険な低出力運転状態で試験をするというハイリスクな試験だった。なのに、安全装置を解除した状態であったことがこの致命的な事故につながってしまった。更に完成を急ぐあまり、装置の耐熱材を不燃物ではなく可燃物に変更し工期を無理に短縮したという。この結果、火災も誘発させたのだろう。
2010年代、日本でも化学プラントで大きな爆発事故が起きている。化学反応によって発熱反応をする設備は、冷却が出来なければ反応暴走を起こすことになる。熱を制御できなければ、事故になってしまうからである。反応器などの装置は、発熱量に対して冷却能力はどのくらいの安全率を見て設計しているのだろうか。機械の設計をする際には、材料強度に対して3倍程度の安全率を見て設計すると言われる。JISなどで、安全率を規定されていると聞いたことがある。化学工学の世界では、設計に当たって安全率という数値的な基準は企業の中で、きちんと決まっているのだろうか。技術者の設計に任されているのだろうか。化学プラントにある発熱を伴う装置については、冷却能力の安全率について深く考えてみる価値があるような気がする 

2020年05月10日