空気液化分離装置の事故-極低温

1959/7/11に山口県の宇部で空気液化分離装置の大爆発が起きている。http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000095.html空気を液化して、液体酸素、液体窒素アルゴンなどのガスを作り出す装置だ。工場では、窒素や酸素は数多く使用されている関係からこの装置は世の中で多用されている。とはいえ、運転や保全に係わらない限り知ることは無い設備かもしれない 
この設備の事故のキーワードは、温度が低いことから「極低温」だ。金属は、温度が低いともろくなる。低温脆性という性質を持っているからだ。温度の非常に低い設備は、金属材料面で慎重な配慮が必要だ。つぎは、「熱ひずみ」だ。運転を開始するときは常温だが、運転中は極低温になる。運転中と停止中と極端な温度差があるというのがこの装置の特徴だ。運転と停止を繰り返せば、温度差により金属に歪みが生じる。溶接部であればひびが入ることもあるからだ。
次のキーワードは、「濃縮」だ。液体酸素を作るプロセスで、アセチレンや炭化水素などが入り込み濃縮するとその物質が原因で爆発する。つまり、100%に近い高濃度酸素の中に可燃物が存在すれば濃縮物質により爆発事故が起こるからだ。
しかも、微量の蓄積で爆発してしまうというのが怖い。
もう一つキーワードがある。「液体酸素爆発」というキーワードだ。極低温の液体酸素が漏れて保温材や木などに染みこむと爆薬のような状態を作り出す。保温材も昔は、現在のような不燃性では無く動物の毛などが使われていた。毛は可燃物となり、酸素は支燃性ガスだからそこに着火源があれば燃焼の三要素が成り立つてしまう。これで事故が起きてしまうのだ。
空気液化分離装置という装置でキーワードを切り出してみたが、色々な装置は事故の引き金となるキーワードがある。
自分たちが取り扱っている装置を例に、何かキーワードか物質危険性や物理化学現象を切り口に話し合ってみることだ。
事故から学ぶことは、事故そのものでは無い。事故の教訓だ。
つまり、どんなことを知っていれば防げたのか、やってはいけないことは何だったのかを考えてみることだ。
事故の原因と対策だけを追っかけていては、応用問題は解けない。
教訓を学ぶことで、事故防止の本質的な能力を身につけることができる。
事故からの教訓は何かといつも深掘りをして欲しい。

2020年07月21日