事故や災害に思う

 

 今年も残り数日だ。前から、HAZOPについて講義をしたいと思っていた。数日前に、あるところから半日か1日コースでHAZOPの講義をしてくれないかという話が飛び込んできた。来年の3月だという。1月から3月という時期は、来年度の講義用教材の見直しでかなり忙しい時期だ。講義テキストだけで、約1000枚のパワポの見直しをしていくからだ。

 3月はその追い込み時期ではあるが、是非やってみたい講義でもあり引き受けることにした。過去に雑誌での執筆などをして構想はあるが、要領良く人に伝えていくとなるともう少し材料がいる。自分が整理した事故データーベースで検索したら、250件ほどがヒットした。年末は整理を始めようと思う。

 世の中にHAZOPの手法を教える講義はあるが、HAZOPの失敗事例を伝える講義などはあまりきかない。HAZOP手法をいくら知っていても、潜在するリスクをきちんと拾い出し結果として手を打てなければHAZOPをやっても時間の無駄だ。 私が伝えたいのは、HAZOPで危険源を見落として、事故になる具体的な事例をできるだけ伝えたいのだ。リスクを適正に評価できるためには場数が必要だ。つまり、実際に起こった事故を知らなければリスクを見落としたり評価を低く見積もってしまうからだ。

 こんな事例がある。ポンプのHAZOPをして、「逆流」というズレを導き出したとする。運転員が操作を誤ったことを想定したとしよう。対策は、逆止弁の設置というのが一般的な解になるはずだ。これで、本当にそれでいいのかと考えて欲しい。

 もし、逆止弁が故障して作動しなかったらどうなるかである。多少の逆流なら、運転員が対応できるかもしれない。しかし、新人運転員ならそうはうまくいかないはずだ。高圧のポンプなら、逆流に対応する時間もあまりない。ポンプに入口側がコーンルーフタンクなら、すぐにタンクの破壊事故が起こる。

 ポンプの逆流で、繰り返し繰り返し過去に事故が起きている。逆流が致命的な事故になる恐れがあるなら、逆流を検出して遮断弁で自動的に対策するところまでやっておかないと事故になる。

 つまり、HAZOPは手法を単純に学ぶことではなく安全性評価の失敗事例とリンクして事故事例を学ぶことが必要だ。HAZOPで見落としやすいことや実際に起こった事故事例を組み合わせて学ぶと実践的な知恵がつく。できることなら、今後は本を出してみたい物だ。

2016年12月29日