労働安全の世界の潮流- ISO45001

半世紀前、日本でコンビナートが動き始めたころは、労働災害が頻発した
新しい、化学プラントを建設するために多くの工事労働者が集まり作業をしていたからだ
墜落落下、やけど、挟まれなど多くの労働災害が頻発した
国は、「労働災害防止団体等に関する法律」にもとずき労働災害防止に向け「中災防」(中央労働災害防止協会)という組織を1964年に作った
中災防は、その後色々な活動を展開し、労働災害は減少してきた。中災防のみならず、民間の企業が積極的な安全活動を続けてきたからだ
今まで、日本の労働安全へのアプローチは、ボトムアップと言われてきた
現場の管理者や現場で働く従業員が主体となって、安全を作り上げてきたからだ
現場で身を守るためには当然、自分たちで安全を作り上げていかざるを得ないからだ
しかし、1980年代以降になると省人化や機械化が進み現場で働く労働者の時間的余裕は減り始めた
現場で働く人達だけで安全を確保するのが難しくなってきた。限られた時間とお金でなんとかやりくりするには限界が生じてきたのだろう
個人的なノウハウで安全を管理するにしても、労働災害を色々経験してきた人も会社を去りつつあった為だ
2000年代に入ると、労働安全をシステマチックに行おうという考え方が出てきた
そこで「OSHMS」(Occupational Safety and Health Management System)という管理システムが導入され始めた
PDCAのサイクルを廻し、労働安全の向上を図ろうという概念である
海外でも同様な流れは起きていて、ILOなども国際的な労働安全マネージメントを模索していた
この結果、日本の持つボトムアップの労働安全の管理と、海外が得意とするトップダウンの労働安全管理システムが融合した
2018年3月に国際規格として現れたのがISO45001だ
日本の労働安全ノウハウと海外のノウハウが融合したのが、ISO45001と考えて良いのではないだろうか
私も、企業向けに安全講演や講義、安全コンサルタントをしているが、このISOの切り口で企業の安全管理上の課題を常に探索している
労働安全の管理レベルを上げるなら、このISOの概念を取り込むことは不可欠だ
労働安全のコンサルタントは数多くいるが、ISOの切り口で指導できる人は少ないのが現状だ

イラスト出典 中災防ホームページより

 

2021年03月17日