事故や災害に思う

 発熱が事故につながると言うことはご存じだろう。とはいえ発熱には色々なパターンがある。反応熱というと誰でも事故に関係するとは理解するが、個別の発熱となると案外理解していないのが現状だ。前回説明した、吸着熱などは典型的に事故につながるとは考えていない事例だ。発熱温度が500度近くもなるのだから、誰でも知っていて欲しいのだが現実ほとんど知られていないから繰り返し事故が起こっている。

 私も、この吸着熱に関心を持ったのは今から15年くらい前だ。下関と言うところにある工場に赴任していたとき吸着性物質を取り扱うプラントを担当していた。発熱があるとは聞いていたがたいしたことは無いと思っていた。あるとき吸着性物質は産地によりその特性が大きく変わると聞かされた。いわゆる性能が大きく変わるというのだ。最初は吸着性能だと思っていたが、良く聞くと発熱温度がかなり変わると言うことがわかった。さらに聞くととんでもない温度迄上がると言うことがわかったのだ。

 今回のテーマは、酸化熱なので話を元に戻すと酸化熱も結構な温度になる。数百度にはなるのだ。

酸化熱で知っておいて欲しいのは、油の酸化だ。保温剤などに油がしみ込むと酸化されて油の発火点が急激に下がる。油は酸化されると発火点が下がる性質があるからだ。新品に比べ2/3程度の温度まで発火点は下がる。発火点が下がれば、保温材を被った配管などはスチームトレースなどが施工されているからその温度で発火する。スチームなどの温度で酸化された油に火が付くのだ。

 空気が存在すれば必ず物は酸化される。酸化されるときには酸化熱という熱が発生する。その熱を甘く見ると事故になる。

こんな事例がある。定修でタワーのマンホールの開放を行うため、水を流し内部は何回か洗浄された。だいぶきれいになったと思い、マンホールを開けたところ翌日タワーが真っ赤になっているのが見つかった。タワ内部に有機物が多く残っていたことにより、マンホールから侵入した空気で有機物が酸化され酸化熱でタワーが赤熱状態になっていたという事故だ。

 空気があれば必ず物質は酸化される。その時必ず酸化熱という熱が発生していることを忘れないで欲しい。

2017年02月07日