企業内エンジニアリング部門の分社化による問題点

企業によっては、エンジニアリング部門を本体から切り離し別会社化している企業も多い
設計部門は、自社の設計だけを請け負うのではなく、広く他社の設計を受注させ少しでも収益を上げたいとの思いがあるからだ
そうは言ってもそんなうまい話は、無い。本体以外の部門で仕事が増えれば、所詮本体部分に力は入らなくなる
結果として、本体部でいろいろな問題が起こり始める
設計だけを本体から切り離し、収益を上げる手段として使うならまだしも、保全まで別会社に切り出すこともある
私の勤めていた企業も、1997年の合併後、エンジニアリングを別会社に移し、エンジニアリング会社化していた時期もある
なぜそんなことをしたかというと、合併するとエンジニアリング部門の人が余るからだ
別会社化して、運用すれば本体は人件費負担が見かけ上はないから楽なのだ
結果として、別会社化されたエンジニアリング部門は人減らしをする
気づいたときには、エンジニアリング部門の人が減りすぎて、技術力のみならず、機動力も低下する
もともと、保全と設計部門の一体化は不可欠なのに無理矢理切り離していれば、情報の共有化も不足する
結果として、設計のミスや保全の不備で事故が起こるという結末になる
2000年代、今までエンジニアリング部門を別会社化していた大手化学企業が一斉に本体にエンジ部門を吸収していった
保全や設計という根幹に関わるところで事故が起こり始めたからだ
1990年頃バブルがはじけて、化学企業が生き抜く作戦としてエンジ部門を分社化していたのだろうが結局失敗に終わった
化学企業など、本体に設計~保全まで一体的に業務管理できる組織がなければいつか事故が起きる
エンジニアリングの分社化というのは姑息な手法だが、経営上はメリットがあるのだろう
分社化されて、外部から収益を得よと言われれば、所詮本体への忠誠心はなくなるのだがそれは誤差範囲と考えるのだろうか

エンジニアリング部門の役割も変わってきている。昔のように、自らが全て行える時代ではない。外注比率は増えているはずだ
設計保全下請け会社、メンテナンス会社など外注パートナーをきちんとコワークできるエンジニアーを抱えることが求められている
とはいえ、そんな人材を採用するのは難しい。自前で育てられるかという、それほどチャンスも無いし、先生もいない
悩ましい時代になってきている

 

イラスと出典 総務省統計局 https://www.stat.go.jp/data/jigyou/2006/hanashi/3_2.html

 

2021年09月09日