小分けという作業を甘く見るな--空気に触れるリスク

小分け作業という作業がある。小さな分量に分けるという作業である。多くの職場で行われる作業だ
人は「小」という字がつくとたいしたことはないとか、それほど危険性がないと思ってしまう傾向がある。
しかし、小分け作業でもリスクはある。化学物質を小分けするときは、大きな容器の蓋を開けて物質を取りだし小さな容器につめる作業が生じる。
この時、一時的ではあるにせよ化学物質を外に出す。つまり、空気と触れる状態が生じる。
化学物質は一般的に容器に閉じ込めておけば事故の可能性は少ない。しかし、外に取り出すとどうしても空気と触れることになる
そこに着火源があれば、着火したり爆発する可能性がある。
過去にも、小分け作業で多くに事故が起きている。小分け作業を甘く見ないことだ。参考までに、過去の事例を以下のURLで紹介する。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200081.html
この事故は、トルエンを含む液を小分け中に起きた爆発死亡事故だ
移液ポンプ自体は、防爆だった。ポンプのアースは取っていたが、肝心の充填容器は、アースを取っていなかった
容器に液を流し込むときには流動帯電という静電気が発生する。
アースを取っていなかった充填容器で静電気が徐々にたまり、アースを取っていた電位の低いポンプ側へ放電したのだろう
小分け場所では十分な換気も行われておらず、爆発混合気ができていた事例だ
有機溶剤などは、導電性が無いので静電気が発生する上、揮発し易く爆発混合気ができやすい
次の事例は、アクリル酸という重合反応する物質の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000126.html
アクリル酸は、冬場は凝固してしまう。ドラム缶の中に固まったものを使用する毎に電気ヒーターで暖め溶かして取り出していた
アクリル酸は、反応性物質なので反応を防止する為、反応禁止剤がドラム缶内のアクリル酸には添加されていた
ところが何回かに分けて小分けする形で液を取り出したことにより、小分けする毎に、重合禁止剤の濃度が薄まり効果が無くなってしまった
結果として、反応を抑える効果がなくなり異常反応した事故だ
反応禁止剤などが添加されているものなどでは、小分けを繰り返すことで反応防止剤が効かなくなることもおこるのだ
小分けで起こる事故事例も知っておいて欲しい

 

2022年05月12日