HAZOPでは先入観を取り払え

HAZOPというのは1970年代にイギリスに始まった安全性評価の手法だ
日本に伝わったのは、10年後の1980年代だ
私の勤めていた会社でこの事故がきっかけで、HAZOPを始めるようになった。こんな1983/3/5の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000148.html
廃液タンクの爆発事故だ。1970年頃に新設されたタンクで、窒素シールも設置されていた
窒素シールがしてあれば誰も爆発が起こるとは考えていなかった
廃液だから危険ではないという先入観もあったようだ
このタンクは、プロセスで使われるトルエンという溶剤を、循環しながら一時的に貯めるタンクだ
通常運転がうまくいっていれば、タンクにはトルエンと、水しか入ってこない
ところが運転中に二つのトラブルが同時に起きた
本来入るはずのない、過酸化水素という物質がタンクに入り込んだ
その後、運転操作でミスをして苛性ソ-ダを含んだアルカリ性の水を入れてしまった
過酸化水素はアルカリと混ざると混触反応を起こす。混触反応では、大量の酸素を発生させる
過酸化水素は、アルカリだと、酸素を発生するという混触危険性を理解していなかったのだ
酸素は、廃液中に含まれる過酸化物である「過酸化水素」とタンク内のアルカリ液とで発生した
廃液量が多く、しかも廃液から大量の酸素が発生し爆発混合気ができて爆発した事故だ
たかが廃液タンクだと思わないことだ
窒素シールがあるから大丈夫だと思い込まないで欲しい
現場の人達が知識や経験が無いと、事故の予見性を見抜くのは難しい
安全性評価をすれば事故を防げるわけではない。危険なことを見抜くには豊富な事故事例を知っておく必要がある
リスクを見抜けるには、事故に関係するキーワードが直感的に頭の中に出て来ないと難しい
この事故をHAZOPで解析してもらうと多くの人は、タンクに窒素シールがあるから大丈夫だという先入観を持つはずだ
廃液だからそれほど危険ではないという、先入観を持つ人もいる
HAZOPは先入観を持たないことだ
最悪の事態を常に考えなければ、事故は防げ無い
安全性評価はそんな甘い物では無い

 

2024年02月10日