反応器の冷却能力は十分か--事故や災害に思う-12年前の事故に思う

今から12年前の今日(2012/4/22)当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起き、まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔はそうでは無かったのかも知れないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう
反応器などの装置は、発熱量に対して冷却能力はどのくらいの安全率を見て設計しているのだろうか。
機械の設計をする際には、材料強度に対して3倍程度の安全率を見て設計すると言われる。JISなどで、安全率が規定されているからだ
化学工学の世界では、冷却能力の設計に当たって安全率という数値的な基準は企業の中で、きちんと決まっているのだろうか。
技術者の設計に任されているのだろうか。
化学プラントにある発熱を伴う装置については、冷却能力の安全率について深く考えてみる価値があるような気がする
冷却能力不足で起こる事故事例は多いからだ 

2024年04月20日