企業の安全監査に思う

私の以前勤めていた石油化学企業では、安全監査制度というのがあった
安全担当の役員が、各工場をまわって安全について監査する制度だ
半年に1回行われていた。当時2つの工場があったので、1年毎にどちらかの工場を監査するという制度だった
監査のキーワードは実に様々だ
プロセス固有の危険性の評価、設計部門の監査、保全部門の監査、研究部門の監査
物流部門の監査、世の中で起きた重大事故への対応状況など時代時代に応じてタイムリーに監査が行われていた
1997年にある企業と合併し、その後この監査制度は無くなった
工場の数が2工場から7工場になったこともあるのだろう 手間もかかるのでやめたのだろう
いい制度ではあったが、工場を計画的に監査するという制度は無くなった
監査をしなくなったこととの因果関係はわからないが、その後事故は起こっている
2012年岩国にある工場で大きな爆発死亡事故が起きた
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2013/pdf/130123_02.pdf
この事故は、酸化反応プラントだ。過酸化物という非常に温度に敏感な物質を扱う。冷却が不十分であれば、反応暴走で爆発する
事故のきっかけは、工場の蒸気が停まったことだ。本来化学工場であればまず重要な用役である蒸気が停まることはない
ところが、長年の省エネで蒸気の発生源が、冗長化されなくなり、単一の蒸気発生源に頼っていた
その装置が停止したことで、工場全体の蒸気が簡単に停まってしまったのだ
用役の信頼性が、時間をかけて落ちていたことが事故の背景にある
もし、安全監査を続けていれば、この工場の用役の信頼性についてはどこかで監査のメスがはいったかも知れない
昨今、外部機関による安全監査に頼ることが増えてきているようだが、企業自らが基幹となる部分には監査をして欲しい
プロセスそのものの危険性などは、なかなか外部機関では深掘りした監査は難しいはずだ
安全監査を外部に丸投げしないで欲しい

 

2024年07月06日