事故の本質

事故事例などの講義をすると、受講者からのアンケートがある。これはすごく大切な物だと感じている。
一般的なコメントもあるが、読んでいて痛いところを突かれているなと思うアンケート文章もある。
事故事例を説明してくれるのはいいが「事故の本質」は何かと問われることだ。
一番つらい言葉である。
世の中に公開される事故情報は,ほんのわずかである
公開された情報とて、事故の背景などが詳細に書かれているものは少ない
事故の原因も、人、設備、物質危険性など要因を切り分けて書かれている物も少ない
特に,事故の本質を知る為には人がどう考え行動していたかという情報が重要だ
人と言っても,事故を起こした個人だけの情報があればいいわけではない
人は組織で行動しているのだから、組織全体に関わる人の情報が必要となる
経営陣は安全にどう関与していたのかも重要だ
安全には人、物、金がかかる。経営が投資してくれなければ安全は確保できないからだ
経営資源を統括管理しているのは、経営陣だから経営陣の考え方は事故の本質に関与するものがある
現場の管理職の人に関する情報も,事故の本質を解析するには需要だ
組織で生きる限り、上司と部下の関係は重要だ
事故情報は事故の事実しか書かれていない物も多い。ニュース記事は事実しか伝えない。原因が書かれていることはまれだ
原因は書かれていても,対策まで書いてある事故資料は少ない
世の中に出回る事故情報は,事故の「事実」が主体で原因や対策に関する情報はほとんど出てこない
大きな事故で,きちんとした事故報告書が出てくることがあるがそれは,事故の全体から見ればまれである
結局、事故情報や、企業が発信する事故報告書には事故の本質と言われる物は書かれてはいない。
事故の本質などの情報はほとんど無いというのが現実だ。
事故の本質がわからなければ、抜本的な手の打ちようは無い。だから事故は繰り返す
事故を伝えていきたいと思う人にとって一番の悩みは、事故の事実に関する情報はなんとか見いだすことはできるのだが
事故の本質に関係する情報にたどりつくことが難しいことだ
そこに事故を教える者にとって大きな悩みがある。

2024年08月25日