排水タンクの爆発事故 HAZOPの失敗事例でもある
2週間ほど前に 排水タンクの爆発事故を紹介した。
死者17名の大惨事だ。約20年ほど前にアメリカで起こった大惨事だが、教訓となるものが多い。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/32/3/32_200/_pdf
事故を起こした排水タンク周りは、しっかりとHAZOPをやってはいたという。HAZOPはやっていても、事故は起こるということだ。
HAZOPは、やることに意味があるわけでは無い。
「ずれ」という現象を使って安全性評価をする手法は、シンプルで有り上手に使えば危険なことに対ししっかりと安全性の評価ができる。
しかし、ずれで起こるHAZARDは深掘りしなければいけないところは深掘りが必要だ。
広く浅くでは、HAZOPをやっていても事故になる。この事故はそれを物語っている。
HAZOPの問題点を挙げると、NO,NOTのガイドワードをうまく使えていなかったことだ。
つまり、チッソが「流れない」というずれを甘く見たことだ。
人がチッソの手動弁を閉めて一時的にせよチッソを停めてしまうと言う重大な危険を考えなかったか、又は見落としたことだ。
本来なら、HAZOPでは、安易にチッソを停められないように手動弁を施錠したり、自動弁も低流量にならないように流量制限機能を取り付けておくべきだった。
次は、LESSというガイドワードだ。少なめというリスクだ。酸素の分析計が故障して、酸素濃度を低めに出すというリスクだ。
分析計とチッソを供給する流量調節弁は連動しているから、指示が低ければチッソ供給量は減少する。
見方を変えると、爆発混合気を形成する方向へと進んでいく。
計器は故障すると考えれば、HAZOPではこの酸素分析計は2台以上設置して計器の信頼性を向上させるとしなければならなかったはずだ。
重要な分析計が故障して事故になることは繰り返し世の中で起こっている。
特にこのような、爆発混合気を作らないための重要計器であれば冗長化するのがHAZOPの基本だ。
もう一つのミスは、圧縮機に関するずれの見落としだ。気体は圧縮すれば、断熱圧縮という現象が起こる。
つまり温度が上がるということだ。気体の発火点を超えれば当然着火する。温度が上がるというずれをどう見ていたかだ。
圧縮機は、温度上昇があるというずれを甘く見ないで欲しい。色々書いたが、HAZOPを使いこなしていくには、多くの事故事例を学んで欲しい。事故事例を知らずして、安全性評価は出来ない。リスクマネージメントが叫ばれる昨今ではあるが、事故からの教訓を学んで欲しい。
