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タンクの爆発事故 サンプリング 静電気 窒素シール

前回タンクの爆発事故を紹介した。今回はタンクの上のマンホールを開けてサンプリングしていた時起きた事故を紹介する
この手の事故防止には,タンクの窒素シールが有効だと言われる
タンク内に爆発混合気を作らなければ,本質的に爆発が起こることはない
今でこそ当たり前な考え方だが、歴史をさかのぼると昔は窒素シールは当たり前のようには行われていなかった
1961年4月7日にサンプリング中にタンクが爆発し作業員が吹き飛ばされる事故が起きている
1966年7月4日タンク車の液サンプリング中爆発事故が起こっている
液の流入速度が管理されておらず、1m/秒をかなり越える流速で液充填されていたという
当時はまだ静電服や静電靴の導入も進んでおらず事故が起こったという
流動帯電や,人体静電気の管理が問題になり始めた時代だ
1972/1/8横浜の製油所でタンクサンプリング中爆発が起き2名が負傷し14時間燃え続けた大事故が発生した
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200001.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/11/5/11_300/_pdf/-char/ja
この事故をきっかけに日本では、可燃性液体タンクの窒素シール化が進んでいった
しかし,窒素を投入すればランニングコストもかかる
必ずしも全ての企業で窒素シールの導入は進んだわけではなく,また事故が起こる
1981/12/16日だ  今度は岡山の製油所だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200045.html
その後は日本では、色々な改善を行い事故の情報は無い
タンクに窒素シール化が進んだのか,静電気対策が進んだのかはわからない
しかし前回のブログで紹介したようにサンプリング中のタンク事故は外国では起こっている
一度,可燃性液体を取り扱うタンクのサンプリングが行われているタンクでは問題がないか検証してみる必要があるのかもしれない

2025年04月20日

タンクの爆発事故 流動帯電 放電

可燃性液体タンクの爆発事故は絶えない 静電気などの放電が着火源になることがある
アメリカで起きた事故だが,教訓にすべき貴重な事故なので学んで欲しい。2007年7月17日の事故だ
https://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/accident_case/barton_solvents_20_8_8.pdf
アメリカのCSBという所の詳細報告書もここから入手出来る
https://www.csb.gov/barton-solvents-explosions-and-fire/
ビデオ映像もある ネットで以下のキーワードを入れて検索すれば出てくる
CSB Safety Video: Static Sparks Explosion in Kansas
タンクローリーからタンクに可燃性の液を入れているときに発生していた流動帯電が原因で起きた事故だ
ガソリンと似た様な性質を持つナフサという可燃物だ
ナフサの引火点は、一般的に40~47℃だ。ガソリンと性質が似ているため、危険物として取り扱いに注意が必要な物質だ
事故原因は,計装設備である液面計だ。タンクにはフロート式の液面計が設置されていた
液面計のフロートと,測定用のテープとの間にわずかな隙間ができていた
液の流動によりタンク内の液に溜まっていた静電気が、この隙間で放電現象が起こった
この放電スパークが着火源となり、可燃性蒸気に満たされていたタンクのナフサガスに引火し爆発したのだ
住民や消防士11人が負傷した。さらに,6000人が避難勧告を受けた事故だ
窒素シールはしていなかったという。窒素シールがあれば,防げた事故だ
爆発や火災が起こるのは,燃焼の三要素が同時に成り立ったときだ
事故を防ぐには,三要素のどれか1つを無くせば良い。まずは、着火源を無くせば良い。だから静電気対策が行われる
しかし、静電気対策はタンクの外での対策だけしていれば事故が起きないわけでは無い
非導電性の流体なら,液の流入時にどうしても流動帯電が起こる。
だから窒素シールをして,本質的に安全を確保する手法がとられている
今年に入ってこんなタンクの爆発死亡事故も起きている https://jp.yna.co.kr/view/PYH20250210113900882
密閉されたタンク内の爆発混合気や流動帯電を甘く見ないことだ

 

2025年04月15日

設計の段階で、ヒューマンエラーをしつこく考慮せよ

設計の段階で配慮が不足して起こる事故は多い.2017年5月に、北海道で自衛隊機が山に激突した事故がある。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/jsdf-lr2
https://news.ntv.co.jp/category/politics/372386
事故後に発表された事故調査報告書を解析するとこんなことが書いてある。機体そのものに故障などはなかったとしている。
事故原因は、函館空港への着陸中、操縦士が誤って自動操縦機能を解除したうえ、それを知らせる警報や表示に気付かなかったことだ
つまり、手動操縦に切り替わったことを認識していなかったことが原因だ
さらに、悪天候で視界が悪い中、機体が山に接近していることを知らせる警報にも気付かず、墜落を手動で回避していなかったという
警報音も人は見落とすと言うことだ。警報はあるから大丈夫ではなく、重要な警報は繰り返し鳴る設計にして欲しい
なぜ自動操縦が解除されたのか、当時の別の新聞記事にはこう書かれていた。
無線通話をするSWと自動操縦をオン・オフするスイッチの位置が接近していたのが原因だ
操縦士が、無線通話のSWを触ったつもりが誤って自動操縦のSWをオフにしてしまったと書いてあった。 
そんなに簡単に自動操縦SWが解除される設計になっていたのかとは疑問には思うが、これは事実なのだろう
操縦士のヒューマンエラ-ですませるには無理があるような気がする 。設計面でもっと配慮できなかったのかと悔やまれる
多くの事故は設計の段階で、ヒューマンエラーをしつこいくらいに考慮していれば防げる。
設計の段階で事故を排除することを試みて欲しい。残念ながら、この事故の調査報告書をネットで探してみたがもう見つからなかった
まだ起きて十年も経たない事故なのに、貴重な情報は消されてしまっている
民間機で、同じようなSW操作ミスの事故もある。一つ間違えば死亡事故にもなった事故だ
この事故もSWの誤操作で起きた重大ヒヤリ事故だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E6%97%A5%E7%A9%BA140%E4%BE%BF%E6%80%A5%E9%99%8D%E4%B8%8B%E4%BA%8B%E6%95%85
たかがSWの配置と思わないで欲しい。人は昔の記憶が残って誤操作することも多いと言うことだ
数日前にドクターヘリが墜落したニュースが流れていた。この事故もヒューマンエラーが絡んでいるのだろうか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250408/k10014773301000.html

 

2025年04月10日

HAZOPは深掘りがポイントだ--深掘りに失敗した事例を多く学べ

HAZOPに関する公開講習会を始めてもう8年になる
年に何回かHAZOPに関係する講義をする 個別企業に出向いての講義も有るが、Web公開版もある
2025年度の公開版の講義日程を紹介しておく。
2件あるが4月はもうすぐだ。4月21日だ 申し込むなら急いで欲しい
https://www.gijutu.co.jp/doc/s_504214.htm

次は6月だ 6/30日に私の講義を予定している
https://www.rdsc.co.jp/seminar/2506142
講義の中でいつも強調しているのは、

多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている
なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ
つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが問題点だ
その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えている
肝心のHAZOPで見落とすような危険源を上手に教えていないからだ
また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある

しかし、HAZOPの「失敗事例」を体系的に学ばなければ、企業としての実力はついていかない
つまり、誰でも気づくようなずれは、教えなくても皆が考えつく
皆が考えつかなかったような「ずれ」で起きた事故事例も知識として持っていないと、HAZOPで深掘りできない
私の講義では、私の知っている6500件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例を紹介して行く。 
事故事例は教えていても、HAZOPという切り口で事故の教訓を教えている講義はほとんど無い
HAZOPの失敗事例を学んで欲しい
興味のある方は、一度聞いてみると良い

 

2025年04月05日

製油所で熱油を浴び作業員6人死傷事故--事故の教訓は何か

前回のブログでは、2024年の5月に千葉のコンビナートにある製油所で起こった事故を紹介した。
事故概要と再発防止策なども紹介したので、事故については理解してもらったと思う
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314.pdf
調査委員会の報告書も紹介はした
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314_2.pdf
事故報告書というものは、事故の事実を書いたものだ
原因や対策は書かれているが、事故の背景にある事故の本質や教訓を読み取るのはなかなか難しい
私なりに事故を読み解くと、こうなる
この事故は、昔から起こっている事故のパターンで分類すると、「縁切りの失敗事故」だと読み取る必要がある
縁切りとは、危険な物を確実に遮断するということだ
この報告書から読み取れることは、弁や仕切り板で物理的な縁切りを今回のケースでは、一切行っていないことだ
反応器から事故を起こした熱交換器のフランジまで約60mほどの距離があるが、縁切りできる弁やフランジも無かったのかも知れない
報告書からは、縁切り可能な場所があったのに、縁切りはしていなかったかは読み取ることはできない
まず、物理的な縁切りをしていなかった、又はできる場所が無かったことが事故につながったと考えておく必要がある
次に、脱液やパージは窒素でしたと書かれているが、窒素は気体である
高低差のある複雑な配管内の液を、気体で押し出すことは元々無理である
配管の低い所では必ず液だまりができる。低い箇所で、液を抜く弁があればまだしも、今回はそのような弁すらなかったようだ
液だまり部も時間がたつにつて、機器や配管に残っていた残液が落ち込んできて液だまりの量は徐々に増えていく
今回の事故のように、上流側の圧力が徐々に上昇してくれば液で充満された部分はピストンのように押し出されていくことになる
上流側の圧力が、開放部に至る液ヘッド分に到達すれば、今回のように液が開放部から噴き出すと言う現象が起こる
液ヘッドが1m程度なら、0.1Kgfというわずかな圧力で押し出せる。今回の事故では、反応器内でその程度の圧力が発生したという。
温度は下がっていたが、わずかな反応は継続していて圧力が発生していたという
安易に脱液やパージだけで縁切りをしたと思わないで欲しい。手動弁や仕切り板を使わなければ、本質的安全は守れないと思って欲しい

 

2025年04月04日
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