ブログ一覧

HAZOPは深掘りがポイントだ--深掘りに失敗した事例を多く学べ

HAZOPに関する公開講習会を始めてもう8年になる
年に何回かHAZOPに関係する講義をする 個別企業に出向いての講義も有るが、Web公開版もある
2025年度の公開版の講義日程を紹介しておく。
2件あるが4月はもうすぐだ。4月21日だ 申し込むなら急いで欲しい
https://www.gijutu.co.jp/doc/s_504214.htm

次は6月だ 6/30日に私の講義を予定している
https://www.rdsc.co.jp/seminar/2506142
講義の中でいつも強調しているのは、

多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている
なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ
つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが問題点だ
その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えている
肝心のHAZOPで見落とすような危険源を上手に教えていないからだ
また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある

しかし、HAZOPの「失敗事例」を体系的に学ばなければ、企業としての実力はついていかない
つまり、誰でも気づくようなずれは、教えなくても皆が考えつく
皆が考えつかなかったような「ずれ」で起きた事故事例も知識として持っていないと、HAZOPで深掘りできない
私の講義では、私の知っている6500件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例を紹介して行く。 
事故事例は教えていても、HAZOPという切り口で事故の教訓を教えている講義はほとんど無い
HAZOPの失敗事例を学んで欲しい
興味のある方は、一度聞いてみると良い

 

2025年04月05日

製油所で熱油を浴び作業員6人死傷事故--事故の教訓は何か

前回のブログでは、2024年の5月に千葉のコンビナートにある製油所で起こった事故を紹介した。
事故概要と再発防止策なども紹介したので、事故については理解してもらったと思う
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314.pdf
調査委員会の報告書も紹介はした
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314_2.pdf
事故報告書というものは、事故の事実を書いたものだ
原因や対策は書かれているが、事故の背景にある事故の本質や教訓を読み取るのはなかなか難しい
私なりに事故を読み解くと、こうなる
この事故は、昔から起こっている事故のパターンで分類すると、「縁切りの失敗事故」だと読み取る必要がある
縁切りとは、危険な物を確実に遮断するということだ
この報告書から読み取れることは、弁や仕切り板で物理的な縁切りを今回のケースでは、一切行っていないことだ
反応器から事故を起こした熱交換器のフランジまで約60mほどの距離があるが、縁切りできる弁やフランジも無かったのかも知れない
報告書からは、縁切り可能な場所があったのに、縁切りはしていなかったかは読み取ることはできない
まず、物理的な縁切りをしていなかった、又はできる場所が無かったことが事故につながったと考えておく必要がある
次に、脱液やパージは窒素でしたと書かれているが、窒素は気体である
高低差のある複雑な配管内の液を、気体で押し出すことは元々無理である
配管の低い所では必ず液だまりができる。低い箇所で、液を抜く弁があればまだしも、今回はそのような弁すらなかったようだ
液だまり部も時間がたつにつて、機器や配管に残っていた残液が落ち込んできて液だまりの量は徐々に増えていく
今回の事故のように、上流側の圧力が徐々に上昇してくれば液で充満された部分はピストンのように押し出されていくことになる
上流側の圧力が、開放部に至る液ヘッド分に到達すれば、今回のように液が開放部から噴き出すと言う現象が起こる
液ヘッドが1m程度なら、0.1Kgfというわずかな圧力で押し出せる。今回の事故では、反応器内でその程度の圧力が発生したという。
温度は下がっていたが、わずかな反応は継続していて圧力が発生していたという
安易に脱液やパージだけで縁切りをしたと思わないで欲しい。手動弁や仕切り板を使わなければ、本質的安全は守れないと思って欲しい

 

2025年04月04日

製油所で熱油を浴び作業員6人死傷事故--なぜ事故がきたのか

2024年の5月に千葉のコンビナートにある製油所で起こった事故だ。
昨年7月に油漏れ火災で社員が怪我をしたという報道はあった
https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20240702/1080023510.html
しかし、この熱傷事故は初耳だった。突然、事故調査報告書というのが、今月中旬に発表されていた
事故概要と再発防止策はこうだ
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314.pdf
調査委員会の報告書はここにある
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314_2.pdf
事故の報告書というのは長文だ。結論をずばり書いているわけでは無い。要点だけを抜き出してみるとこうなる
製油所で熱交換器のフランジから油が漏れた。緊急停止して、漏れたフランジのガスケットを交換することにした
数日かけ、リスクアセスメントヲしながら、手順に従い脱液、脱圧をした。熱交換器の上流側に大きな反応器が有り、脱液、脱圧をした。
更に、反応器から事故のあった熱交換器迄につながる、配管内の液を抜き出すため、窒素で押し出した
反応器から熱交換器まで約60m離れており、配管には上下するところも有り、途中配管の液は完全に抜けていなかった
脱液も脱圧を完了したと判断し、熱交換器のフランジを外した。少しガスは出たがすぐに収まった
フランジ面を点検するなど、作業は順調に進んでいた
フランジのガスケット交換しようとしていた時、突然気液混層状態で高音の油が噴き出してきて作業員が被災したというのが事故までの流れだ
事故の原因は、脱液ができていなかった途中配管の残液が時間の経過とともに押し出されて開放したフラン時面から吹き出しのだ
配管内の残液は、最初は管径の半分くらいだった。ところが、脱液した反応器内に残って液が時間の経過とともに下降した
反応器からの液は、途中配管まで到達し、管径全体を満たす量まで増えていた
反応器は、停止し温度は下がっていたものの、充填した触媒と触媒に付着していた微量の残液と反応しガスを発生していた
運転員は圧力の発生には気づいていなかった。圧力で途中配管内に溜まっていた液を押し出しフランジから吹きだしたのだ
反応器と熱交換機と仕切り板や手動弁で縁切りはしていなかったことも要因だ
物理的に縁切りができない配管系統で起こってしまった事故ととらえておく必要がある
次回ブログでは事故からの教訓を説明したい。まずは事故報告書を読み解いて欲しい

2025年03月30日

停電というリスクを甘く見ていませんか

リスクアセスメントという言葉がある。何をどう評価して対応するかは、常に考えていくことが求められている。
外乱という用語がある。めったには起きないが。でも確率はゼロではないという事象だ。
この外乱というリスクの一つに、停電というものがある。化学工場での停電事故をさかのぼってみてみると1950年代にこんな事故がある
停電で蒸留塔を停止したことで塔内温度が上がり爆発した事故だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000093.html
停電後に起こった事故だが、高圧ポリエチレンプラントで起きたこんな1960年代の事故もある
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.pecj.or.jp%2Fjapanese%2Fsafer%2Fknowledge%2Fdoc%2Fno-110.doc&wdOrigin=BROWSELINK
1970年代事故が多発したが、こんな停電事故もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000104.html
停電事故は、化学産業だけではない。過去にも、この停電が大きな事故を繰り返し引き起こしている。
2019/6/20午後2時すぎ、福井県永平寺町松岡石舟の繊維メーカー「豊島繊維」で火災があった。
火は約7時間後に消し止められ、敷地内で4人の遺体が見つかったという。
https://www.asahi.com/articles/ASN6L7QVTN6LPISC00G.html
4人もの死者が出た背景に、敷地建物間にある通路の二つの電動シャッターのうち一つが停電で開かない状態だったことが報道されていた。
逃げ道となる、通路の電動シャッターが停電で開かなかったことも死者を出した要因であったようだ。
死亡した人達は、この電動シャッタ-の脇で折り重なり死亡していたという
いつも自動的に空いてくれていたのだから、だれでもここが開くと思い込むのは無理はない
電動シャッターの脇に手動の扉があったのだが、煙でそこは見えていなかったようだ
亡くなったのはパートの従業員だ。社員には、火災訓練はしていたが、パート従業員には訓練に参加させていなかったのも要因だ
自分の工場で、電動シャッターがあるなら、停電で開けられなくて逃げられないことにならないか検証して欲しい。
電気というエネルギーがなくなれば、色々な不具合が起こる
電気がなくなったときのリスクアセスメントはしっかり行って欲しい

 

2025年03月26日

化学プラント緊急停止時の異常音

化学プラントではいろんな音がしている。ゴーとかガーというような音だ。
これは、機械が発する音でもある。
化学プラントで働いている運転員はこの音を微妙に聞き分けている。
正常音と、異常音とを聞き分けているのだ
いつも聞く音を、微妙に頭の中に入れている
機械は、その稼働状態を微妙な音で表現している。
回転式のコンプレッサは、流量が極端に減るとサージングという現象が起こる。
機械は苦しみうめき独特な音を出す
ポンプは、装置の中で泡ができてしまうと、キャビテーションという現象が起こる。
沸点に近いような流体が、ポンプの中で急激な圧力降下で気化して泡ができる現象だ。
泡がつぶれてはじけるときに、パチパチというような独特な音を出す。
スチームハンマリングという現象もある。配管に蒸気を流し始めた時に起こる現象だ。
配管がまだ暖まっていない状態で、いきなり蒸気を流し始めたとき起こる現象だ。
配管が冷えていると、蒸気は冷えて凝縮して液体になる。
蒸気が、液体になると急激に凝縮現象が起こる。蒸気が気体から凝縮して液になることで体積が、急に約1/1700になる。
この堆積が急激に変化することで、異常音が発生する。それをスチームハンマリングという。
装置を緊急停止して、急激に配管などの温度が下がったときに起きる現象だ。
何かのトラブルで、安全装置である安全弁が作動するとやはりとんでもない異常音が発生する。
安全弁からの異常放出音だ。ゴーというような異様な音がする。
いつも聞いていれば、なんともない音なのだが、トラブルの経験が無ければとんでもない異音である
安全弁が作動したときには、とんでもない高音を発生する。
昨今トラブルが工場で起こる頻度は少ない。したがって、とんでもない異音を経験した運転員は少ないはずだ
トラブル時に起こる異音についても、技術伝承をしておきたいものだ

 

2025年03月22日
» 続きを読む