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製油所で熱油を浴び作業員6人死傷事故--なぜ事故がきたのか

2024年の5月に千葉のコンビナートにある製油所で起こった事故だ。
昨年7月に油漏れ火災で社員が怪我をしたという報道はあった
https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20240702/1080023510.html
しかし、この熱傷事故は初耳だった。突然、事故調査報告書というのが、今月中旬に発表されていた
事故概要と再発防止策はこうだ
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314.pdf
調査委員会の報告書はここにある
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/news/2024/250314_2.pdf
事故の報告書というのは長文だ。結論をずばり書いているわけでは無い。要点だけを抜き出してみるとこうなる
製油所で熱交換器のフランジから油が漏れた。緊急停止して、漏れたフランジのガスケットを交換することにした
数日かけ、リスクアセスメントヲしながら、手順に従い脱液、脱圧をした。熱交換器の上流側に大きな反応器が有り、脱液、脱圧をした。
更に、反応器から事故のあった熱交換器迄につながる、配管内の液を抜き出すため、窒素で押し出した
反応器から熱交換器まで約60m離れており、配管には上下するところも有り、途中配管の液は完全に抜けていなかった
脱液も脱圧を完了したと判断し、熱交換器のフランジを外した。少しガスは出たがすぐに収まった
フランジ面を点検するなど、作業は順調に進んでいた
フランジのガスケット交換しようとしていた時、突然気液混層状態で高音の油が噴き出してきて作業員が被災したというのが事故までの流れだ
事故の原因は、脱液ができていなかった途中配管の残液が時間の経過とともに押し出されて開放したフラン時面から吹き出しのだ
配管内の残液は、最初は管径の半分くらいだった。ところが、脱液した反応器内に残って液が時間の経過とともに下降した
反応器からの液は、途中配管まで到達し、管径全体を満たす量まで増えていた
反応器は、停止し温度は下がっていたものの、充填した触媒と触媒に付着していた微量の残液と反応しガスを発生していた
運転員は圧力の発生には気づいていなかった。圧力で途中配管内に溜まっていた液を押し出しフランジから吹きだしたのだ
反応器と熱交換機と仕切り板や手動弁で縁切りはしていなかったことも要因だ
物理的に縁切りができない配管系統で起こってしまった事故ととらえておく必要がある
次回ブログでは事故からの教訓を説明したい。まずは事故報告書を読み解いて欲しい

2025年03月30日

停電というリスクを甘く見ていませんか

リスクアセスメントという言葉がある。何をどう評価して対応するかは、常に考えていくことが求められている。
外乱という用語がある。めったには起きないが。でも確率はゼロではないという事象だ。
この外乱というリスクの一つに、停電というものがある。化学工場での停電事故をさかのぼってみてみると1950年代にこんな事故がある
停電で蒸留塔を停止したことで塔内温度が上がり爆発した事故だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000093.html
停電後に起こった事故だが、高圧ポリエチレンプラントで起きたこんな1960年代の事故もある
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.pecj.or.jp%2Fjapanese%2Fsafer%2Fknowledge%2Fdoc%2Fno-110.doc&wdOrigin=BROWSELINK
1970年代事故が多発したが、こんな停電事故もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000104.html
停電事故は、化学産業だけではない。過去にも、この停電が大きな事故を繰り返し引き起こしている。
2019/6/20午後2時すぎ、福井県永平寺町松岡石舟の繊維メーカー「豊島繊維」で火災があった。
火は約7時間後に消し止められ、敷地内で4人の遺体が見つかったという。
https://www.asahi.com/articles/ASN6L7QVTN6LPISC00G.html
4人もの死者が出た背景に、敷地建物間にある通路の二つの電動シャッターのうち一つが停電で開かない状態だったことが報道されていた。
逃げ道となる、通路の電動シャッターが停電で開かなかったことも死者を出した要因であったようだ。
死亡した人達は、この電動シャッタ-の脇で折り重なり死亡していたという
いつも自動的に空いてくれていたのだから、だれでもここが開くと思い込むのは無理はない
電動シャッターの脇に手動の扉があったのだが、煙でそこは見えていなかったようだ
亡くなったのはパートの従業員だ。社員には、火災訓練はしていたが、パート従業員には訓練に参加させていなかったのも要因だ
自分の工場で、電動シャッターがあるなら、停電で開けられなくて逃げられないことにならないか検証して欲しい。
電気というエネルギーがなくなれば、色々な不具合が起こる
電気がなくなったときのリスクアセスメントはしっかり行って欲しい

 

2025年03月26日

化学プラント緊急停止時の異常音

化学プラントではいろんな音がしている。ゴーとかガーというような音だ。
これは、機械が発する音でもある。
化学プラントで働いている運転員はこの音を微妙に聞き分けている。
正常音と、異常音とを聞き分けているのだ
いつも聞く音を、微妙に頭の中に入れている
機械は、その稼働状態を微妙な音で表現している。
回転式のコンプレッサは、流量が極端に減るとサージングという現象が起こる。
機械は苦しみうめき独特な音を出す
ポンプは、装置の中で泡ができてしまうと、キャビテーションという現象が起こる。
沸点に近いような流体が、ポンプの中で急激な圧力降下で気化して泡ができる現象だ。
泡がつぶれてはじけるときに、パチパチというような独特な音を出す。
スチームハンマリングという現象もある。配管に蒸気を流し始めた時に起こる現象だ。
配管がまだ暖まっていない状態で、いきなり蒸気を流し始めたとき起こる現象だ。
配管が冷えていると、蒸気は冷えて凝縮して液体になる。
蒸気が、液体になると急激に凝縮現象が起こる。蒸気が気体から凝縮して液になることで体積が、急に約1/1700になる。
この堆積が急激に変化することで、異常音が発生する。それをスチームハンマリングという。
装置を緊急停止して、急激に配管などの温度が下がったときに起きる現象だ。
何かのトラブルで、安全装置である安全弁が作動するとやはりとんでもない異常音が発生する。
安全弁からの異常放出音だ。ゴーというような異様な音がする。
いつも聞いていれば、なんともない音なのだが、トラブルの経験が無ければとんでもない異音である
安全弁が作動したときには、とんでもない高音を発生する。
昨今トラブルが工場で起こる頻度は少ない。したがって、とんでもない異音を経験した運転員は少ないはずだ
トラブル時に起こる異音についても、技術伝承をしておきたいものだ

 

2025年03月22日

新幹線の連結器外れ事故に思う--事故の再発防止の難しさ

東北新幹線の連結器がまた外れたトラブルが起きている 連結器が外れたのは2回目だ
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250306-OYT1T50120/
連結器が外れても、自動的に緊急停止する設計になっているとは言うものの運転中に連結器が外れるとは信頼性に欠けた設計だ
電気的な方式で連結していて、1回目は金属ゴミのせいだとしていた。不思議なのは、なぜ機械的インターロックがないのかだ
一つだけの安全対策は、必ず破られるというのが一般的だ
電気だけに頼らず、最初から機械的インターロックを併用していないのはなぜなのだろうか
利便性やコストが優先していたのなら、安全軽視としか言わざるを得ない
もう忘れ去られている思うが、山陽新幹線でこんな重大ヒヤリがあったので紹介しておく
2018年山陽新幹線でも大事故につながりかねない重大ヒヤリだ。新幹線の台車に亀裂が入ったまま、数百キロ走りつずけたという重大ヒヤリだ
当時こんな報道がなされていた
https://toyokeizai.net/articles/-/211007
https://www.youtube.com/watch?v=hkX4dtJ2rIE
本来削ってはいけないて鉄板を製造メーカー側が削ったせいだと報道されていた。
本来7.0mmの鉄板でなければいけないのに、基準を無視して削ったことにより4.9mmになって強度不足だったというのだ。
この手の報道で、注意しなければいけないのは、なぜ削りすぎたのかと言うことだ。
何か、事情があったはずだ。そこに、メスを入れないと問題の本質は見えてこない。
何か削らなければいけない事情があったはずだ。でも、報道ではそこは一切触れていなかった。
メーカーが削りすぎたミスだと報道からは読み取れるが、JR側も素人では無い。
JR側からも何か、削らせる要求ががあったのかも知れないと考えるべきだ。
JRも台車の製作メーカーも素人では無い。何かがあったのだろう。
事故の要因は、必ずしも報道されるとは限らない。時間が経つと、知らないうちに忘れ去られる。
だから繰り返し事故が起こる。
この事故から約1年半後に事故の調査報告書もあるので詳しく知りたい人はそれを参考にされたい
https://jtsb.mlit.go.jp/railway/rep-inci/RI2019-1-1.pdf
事故の連鎖を停めるには、真実が必要なのだが真実が見えてくるには時間がかかる
その頃には、事故は忘れ去られてしまい真実を探求されることはなかなか無い。
そこに事故の再発防止の難しさがある。

 

2025年03月16日

東北大震災から14年目に思う--地震に備えよ

忘れもしない午後2時46分。14年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、勤務していた技術研修センターという所にいた
勤めていのは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/training/index.htm 
当日、朝からこの技術研修センターで安全工学会主催で各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
午後の地震の時に、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた 地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 私の場所から30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった 翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
地震への備えは不可欠だ 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
東北大震災の余震と言われる震度6の地震もその後起きている。当時の福島原子力発電所の原子炉が破壊しなかったのは奇蹟だ
東北大震災と化学プラントについて書いた文献がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/6/50_410/_pdf/-char/ja
化学プラントも巨大なエネルギーの固まりだ
最悪の事態を考え行動することが常に求められている。地震への備えをこつこつと行っていって欲しい

 

2025年03月11日
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