ブログ一覧

今年一年の重大事故を振り返って リスクの深掘りが必要だ

2025年を振り返ってみる。
2月10日 韓国の油槽所で起きた事故だが、静電気によると思われる爆発死亡事故が起きている。マンホールでサンプリング中の事故だ。
油種は、アルコールだ。アルコールは導電性が有り、静電気は溜まりにくいと言うが事故が起きたと言うことだ。
タンクの窒素シールは、無かったという。窒素シールの要否についても、考えさせる事故でもある。
https://tank-accident.blogspot.com/2025/02/2.html
5月17日 大阪堺にある製油所で硫化水素が漏れ死亡事故 定修中の漏洩事故だ 事故調査委員会は立ち上げられたそうだ
https://www.eneos.co.jp/information/20250517_01_01_0944355.pdf
http://www.daiankyo.or.jp/co_11/jiko_jouhou_20250520.pdf
5月23日 姫路にある化学工場で定修中に現場分析室内で社員が酸欠死亡事故
定修時、計装空気が窒素に切り替わっていて起きた事故だ。窒素に切り替えると言うことは、案外知られていないのだろう
https://www.daicel.com/news/2025/20250524_1117.html
5月29日 大学の研究室で薬品を廃棄していたところ臭素と苛性ソーダの混触で爆発 女子学生が怪我をしている
https://news.livedoor.com/article/detail/28852456/
7月9日 化学工場で操作ミスで高濃度のガスが流れ排気用脱臭装置の爆発 この企業では数年毎に事故が起きている
https://www.shin-nakamura.com/wp/wp-content/uploads/2025/07/wakayamakouzyouzikoowabi20250715.pdf
7月27日 化学工場で塩素ガスが漏れ住民多数気分が悪くなる 消防への通報が早ければ、かなりの被害は防げたはずだ
原因の調査を優先させて、通報が遅れ被害が拡大した事故は数多い。特にガス漏れは5分10分で工場の外にガスが出ると思え
https://jp.mitsuichemicals.com/content/dam/mitsuichemicals/sites/mci/documents/release/2025/250903_1_2.pdf
8月7日 化学工場でNF3プラントで本来流さない配管にガスを流し、そこに設置されていた弁のテフロンパッキンが燃焼し爆発死亡事故
支燃性ガスの事故だ テフロンが存在すれば、激しく燃えるのは当然だ 誤操作防止の配慮が設計段階で必要だ
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01440/0c2a0ecc/f3cb/4370/af2b/f6d2fd1bac78/140120250912557066.pdf
10月20日 大学の低温培養室で計画停電対応のため室内にドライアイスを置いたが、それを知らない学生が室内に入り死亡
    5月にも混触爆発事故を起こしていたが、今度は死亡事故にもなった事故だ
https://www.asahi.com/articles/ASTBX2RSZTBXOXIE017M.html?iref=pc_national_$PAGE_TYPE_EN_list_n
12月も12/23日に大学の研究室で爆発事故が起きている https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2365002?display=1 
事故の連鎖は相変わらず停まらない ヒューマンエラーの連鎖だ まだまだリスクの深掘りができていないと言うことかも知れない

 


2025年12月25日

配管ライニング コーテングとライニングの違い

配管や機器などにテフロンなど樹脂を吹きつけ利用するケースは多いはずだ。目的は様々だが、耐食性をあげることによく使われる。
いわゆる腐食対策だ。
鉄などの安価な母材に、テフロンを貼り付けて腐食から守る方法だ。
高級な金属を使わない利点があるので、コスト面でも有効な腐食対策だ。
しかし、テフロンなどの樹脂を吹き付ける配管や機器を購入するときには、用語に注意して欲しい。
一般的に、コーテングと言えば薄くテフロンなどの樹脂を吹き付けることをいう。
厚みはμm単位だ.薄く吹き付けるのだ。
一方、ライニングという言葉がある。これは、樹脂などを厚く吹き付けることをいう。
単位はmmクラスでかなり厚くなる。
したがって、このコーテングとライニングという用語の違いを理解せず製造メーカーお任せすると事故になることがある。
テフロン樹脂を吹き付ける配管や機器を購入するときは、吹き付ける厚みに注意して欲しい。
コーテングのように薄ければ、浸透することがあるからだ。
良く起こるのが、塩酸を使う装置などでのテフロンの吹きつけだ。
塩酸という液体は、テフロンで耐食性を持たせることが出来るが、塩酸からガスが発生していると浸透する。
時間をかけてガスが浸透していきテフロンに膨らみをつくることがある。
そのように弱くなったところからガスが鉄などの母材に浸透し腐食が始まってしまうのだ。
塩酸を取り扱う液面計の事故を一件紹介しておく。
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-293.pdf
テフロンが薄くて塩酸ガスが浸透した事故だ.テフロンを吹き付けた機器を購入するときは厚みに注意して欲しい。
メーカーお任せでは事故が起こると思って欲しい。
PFAライニングの寿命診断というメーカーが公開している資料がある。
これも一読しておいてほしい。
https://www.nichias.co.jp/cms/nichias/pdf/report/2013/363_06.pdf

 

2025年12月21日

毒劇物に関する事故も甘く見るな

化学工場などでは、色々な法律で規制されている
危険物なら消防法、高圧ガスなら高圧ガス保安法、労働安全衛生関係なら労働安全衛生法だ
毒劇物を取り扱う場合、毒劇物取締法という法律の適用を受けることになる
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/dokugeki.html
毒劇物の事故情報はここにある
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/dokugeki.html#%E6%AF%92%E7%89%A9%E5%8A%87%E7%89%A9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BA%8B%E6%95%85
1999年度から2024年度迄の情報が保管されている。事故の要因についてこんな資料もあるので参照されたい
https://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/syuukei/99-01.html
毒劇物の流出漏洩要因で多いのは、タンク・配管等の腐食・亀裂・老朽化、機器の誤操作・作業手順ミス等、タンクの弁等の閉め忘れ・締め付け不十分、タンクマンホールの留金のかけ忘れにより発生だという。これらの要因が、全体の45%だという
腐食や老朽化、ヒューマンエラ-が事故の主要因と言うことだ
製油所や化学工場でもこの劇毒物の漏洩による重大事故も起きている
世界最大の毒劇物漏洩事故は、1984年インドのボパールという所で起きている。何千人もの死者を出した化学物質の漏洩事故だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0300003.html
日本で最大の劇毒物事故は、三重県の四日市で1974年7月30日ガスが漏れ住民1万2千人が被害を受けた事故がある
化学工場で入社3ヶ月の新人作業員にバルブ操作を任せて違うバルブを操作して塩素が漏れた事故だ
新人を指導していた指導員が現場を離れていたことで起きた事故だ
バルブ の開と閉とをまちがえた。右に回して締めるのに、新人は勘違いして左に回し開けてしまった事故だ
紙の記録は残っているが、現在公開されている情報は裁判記録のみだ
http://www.hamamatsusogo.com/hanrei/scs631027k42-8-1109.html
2020年代でも塩素ガス漏れや、硫化水素ガス漏れなどで重大事故が起きている
https://safegraphy.co.jp/case/1123/
https://news.yahoo.co.jp/articles/1c87d872a806894c1ea53bb5d9d43acb0fc55c15
毒劇物も甘く見ないで欲しい

 

2025年12月17日

インターロック解除で起こる事故-HAZOPでも考慮せよ

インターロックという安全装置がある 安全を守るための鍵のようなものだ。事故を起こさないための歯止めの一つだ
安全装置だから事故は起きないかと言えば、そうでは無い。事故は、インターロックを何らかの理由で解除したときに起こる事例が多い
頻度は少ないが電気部品の故障や、配線の間違いで起こることもある
1975年に徳山の化学工場で電気リレーの配線が外れていてインターロックが作動しなかった事例が報告されている
インターロックをバイパスして5年間元に戻すのを忘れていて爆発した事故事例もある。1987年にイギリスで起きた事故だ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/1/30_57/_pdf/-char/ja
試運転時などで、一時的にインターロックを解除して起こる事故も多い
試運転中装置が誤作動などで停まっては困ると思い安易に、インターロックを解除したときだ
最近の事故事例では、2012年4月22日に起きた反応器の事故だ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2012/pdf/120829_02.pdf
1994年に川崎でタービン試運転中インターロックをバイパスし異常回転で爆発している
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000154.html
1996年に千葉県の火力発電所でボイラー試運転中インターロック要素の一部をバイパスし2人が死亡する事故も起きている
https://www.tepco.co.jp/cc/press/96071701-j.html
海外の原発事故だが、アメリカのスリーマイル島事故や、ロシアのチェルノブイリ事故も安易にインターロックを解除して
試運転で起きた事故だ
もう一つは、高圧ガスの認定設備などで運転中のインターロックを解除していたときにも事故が起こることがある
2005年に運転中のインターロック検査時にこのような爆発事故が起きている
人為的なミスがいくつか重なって起きている事故だが案外この事故は知られていない
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2005-335.pdf
その後、運転中のインターロック検査時の事故は起きていないのかと思ったらやはり事故は起きていた
2018年9月26日に大阪の製油所で加熱炉のインターロック検査中に起きた爆発事故だ
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/191/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
インターロックが原因で思わぬ事故が起こることがあるということも忘れないで欲しい
HAZOPでもインターロックが設置されているから安全だと考えないで欲しい
インターロック解除に関する基準類に解除条件が明確に記載されているか確認して欲しい

 

2025年12月12日

HAZOP で「シングルフェイラー」という言葉を知っていますか

山口県でガス会社の圧力調整機器が故障して、火災事故が発生している。圧力が通常の12倍になっていたという
https://news.tnc.co.jp/news/articles/NID2025120428235
https://www.youtube.com/watch?v=YygUmlJQ2w4
機械が故障してこんな事故になるのは不思議だ。本来なら警報があるはずだ。異常になぜ気づかなかったのだろうか
HAZOPの用語で「シングルフェイラー」という言葉がある。ご存じだろうか?
工場などで異常の早期発見を目的に、計装設備として警報が設置される。異常を早く検知するには警報は有効な手段だ
例えば、タンクなどで圧力が上昇してきたとき、HIレベル警報があれば、異常に早く気づくことができる
つまり、圧力を測る計器を設置して、警報を出し事故の防止を図るのが一般的な事故防止の対策だ。
そうはいっても、圧力計をつけたからと言って安心していいわけではない
もし、圧力計という計器そのものが故障していたら警報は出ずに事故になることも考えなくてはいけない。
つまり、圧力計という計器を1台設置したら事故が防げるかというとそうでは無い。
つまり、計器が一台(シングル)だけしか無ければ、その計器は故障することがあると考えなくてはいけない。
1台だけの計器では、その計器が故障してしまえば、警報が出なくなると考えなくてはいけないのだ。
安全対策用の計器を1台設置しただけでは、計器が故障したときには歯止めとならないことから、これを、シングルフェイラー事故と呼ぶ。
異常を検知する計器が一台、すなわちシングル(一台)では計器の故障を考えると安全対策では不十分だということだ。
では2台つければいいのかというと、当然お金がかかる。どこかで妥協点を見いだす必要がある
例えば、事故になるととんでもない被害が出ると想定されるなら、1つだけ計器の設置では不十分だと考えた方が良い
2つ以上の安全対策が必要になる。被害金額と計器を余分に設置するときのコストを相対的に考えて判断すれば良い
異常時の対応としては、コスト面という観点では、できるだけ安くあげたい。つまり、1つだけの対応で済ましたい。
されど、計器の故障なども考えると1つだけでの対応では十分ではない。
シングルフェイラ-という、考え方はHAZOPの中でも大切な考え方だ。一つだけの対策では、不十分なこともあると言うことだ
タンクなどの液面以上警報として、1台の計器からHI(高)アラームとHI-HI(異常高)アラームを出すのは危険だ。
液面計器そのものが、故障してしまえば、HiとHI-HIアラームの両方が作動しない。計器が故障すれば警報は作動しないからだ。
事故を防ぐには、HI(高)アラームとHI-HI(異常高)アラームを出すのは別々の計器から警報を出すように設計しておかなければならい。
重要な設備に対しては、常に2つ以上の安全対策を考えて欲しい。
一つだけ(シングル)の対策では簡単に破られる。2つ以上の対策も常にHAZOPでは考えて欲しい

 

2025年12月06日
» 続きを読む