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化学プラント緊急停止時の異常音

化学プラントではいろんな音がしている。ゴーとかガーというような音だ。
これは、機械が発する音でもある。
化学プラントで働いている運転員はこの音を微妙に聞き分けている。
正常音と、異常音とを聞き分けているのだ
いつも聞く音を、微妙に頭の中に入れている
機械は、その稼働状態を微妙な音で表現している。
回転式のコンプレッサは、流量が極端に減るとサージングという現象が起こる。
機械は苦しみうめき独特な音を出す
ポンプは、装置の中で泡ができてしまうと、キャビテーションという現象が起こる。
沸点に近いような流体が、ポンプの中で急激な圧力降下で気化して泡ができる現象だ。
泡がつぶれてはじけるときに、パチパチというような独特な音を出す。
スチームハンマリングという現象もある。配管に蒸気を流し始めた時に起こる現象だ。
配管がまだ暖まっていない状態で、いきなり蒸気を流し始めたとき起こる現象だ。
配管が冷えていると、蒸気は冷えて凝縮して液体になる。
蒸気が、液体になると急激に凝縮現象が起こる。蒸気が気体から凝縮して液になることで体積が、急に約1/1700になる。
この堆積が急激に変化することで、異常音が発生する。それをスチームハンマリングという。
装置を緊急停止して、急激に配管などの温度が下がったときに起きる現象だ。
何かのトラブルで、安全装置である安全弁が作動するとやはりとんでもない異常音が発生する。
安全弁からの異常放出音だ。ゴーというような異様な音がする。
いつも聞いていれば、なんともない音なのだが、トラブルの経験が無ければとんでもない異音である
安全弁が作動したときには、とんでもない高音を発生する。
昨今トラブルが工場で起こる頻度は少ない。したがって、とんでもない異音を経験した運転員は少ないはずだ
トラブル時に起こる異音についても、技術伝承をしておきたいものだ

 

2025年03月22日

新幹線の連結器外れ事故に思う--事故の再発防止の難しさ

東北新幹線の連結器がまた外れたトラブルが起きている 連結器が外れたのは2回目だ
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250306-OYT1T50120/
連結器が外れても、自動的に緊急停止する設計になっているとは言うものの運転中に連結器が外れるとは信頼性に欠けた設計だ
電気的な方式で連結していて、1回目は金属ゴミのせいだとしていた。不思議なのは、なぜ機械的インターロックがないのかだ
一つだけの安全対策は、必ず破られるというのが一般的だ
電気だけに頼らず、最初から機械的インターロックを併用していないのはなぜなのだろうか
利便性やコストが優先していたのなら、安全軽視としか言わざるを得ない
もう忘れ去られている思うが、山陽新幹線でこんな重大ヒヤリがあったので紹介しておく
2018年山陽新幹線でも大事故につながりかねない重大ヒヤリだ。新幹線の台車に亀裂が入ったまま、数百キロ走りつずけたという重大ヒヤリだ
当時こんな報道がなされていた
https://toyokeizai.net/articles/-/211007
https://www.youtube.com/watch?v=hkX4dtJ2rIE
本来削ってはいけないて鉄板を製造メーカー側が削ったせいだと報道されていた。
本来7.0mmの鉄板でなければいけないのに、基準を無視して削ったことにより4.9mmになって強度不足だったというのだ。
この手の報道で、注意しなければいけないのは、なぜ削りすぎたのかと言うことだ。
何か、事情があったはずだ。そこに、メスを入れないと問題の本質は見えてこない。
何か削らなければいけない事情があったはずだ。でも、報道ではそこは一切触れていなかった。
メーカーが削りすぎたミスだと報道からは読み取れるが、JR側も素人では無い。
JR側からも何か、削らせる要求ががあったのかも知れないと考えるべきだ。
JRも台車の製作メーカーも素人では無い。何かがあったのだろう。
事故の要因は、必ずしも報道されるとは限らない。時間が経つと、知らないうちに忘れ去られる。
だから繰り返し事故が起こる。
この事故から約1年半後に事故の調査報告書もあるので詳しく知りたい人はそれを参考にされたい
https://jtsb.mlit.go.jp/railway/rep-inci/RI2019-1-1.pdf
事故の連鎖を停めるには、真実が必要なのだが真実が見えてくるには時間がかかる
その頃には、事故は忘れ去られてしまい真実を探求されることはなかなか無い。
そこに事故の再発防止の難しさがある。

 

2025年03月16日

東北大震災から14年目に思う--地震に備えよ

忘れもしない午後2時46分。14年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、勤務していた技術研修センターという所にいた
勤めていのは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/training/index.htm 
当日、朝からこの技術研修センターで安全工学会主催で各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
午後の地震の時に、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた 地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 私の場所から30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった 翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
地震への備えは不可欠だ 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
東北大震災の余震と言われる震度6の地震もその後起きている。当時の福島原子力発電所の原子炉が破壊しなかったのは奇蹟だ
東北大震災と化学プラントについて書いた文献がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/6/50_410/_pdf/-char/ja
化学プラントも巨大なエネルギーの固まりだ
最悪の事態を考え行動することが常に求められている。地震への備えをこつこつと行っていって欲しい

 

2025年03月11日

タンクなどへの塔槽内作業の安全確保に思う

塔槽内作業という言葉がある。タンクやドラムなどの容器の中に入って作業をすることだ。
内部を清掃したり点検などを行う作業だ。
密閉された空間に人が入るのだから、酸欠、中毒や熱中症などの労働災害に配慮する必要がある。
もう一つは、中にあるのが燃えやすい化学物質であれば、火災や爆発に注意しなければならない
安全な作業をするには、爆発下限界の何分の1のガス濃度ならば良いのか。
バキューム車などを配置するときは、マンホールからどれだけ離せば良いのか何かガイドラインが企業は欲しいはずである。
石油タンクであれば、アメリカの規格であるANSI/API2016で規定されている。
日本でも2003年8月に名古屋でガソリンタンクを洗浄しているときに火災で3人が死亡している事故がある。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/43/2/43_120/_pdf
2006年には愛媛県で、タンク内のスラッジを回収しているときに内部で火災が起き5人が死亡する事故が起きている。
https://tank-accident.blogspot.com/2017/03/2006.html
https://khk-syoubou.or.jp/pdf/accident_case/manabu_18_2_3.pdf
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2014_03.pdf#zoom=100
これらの事故を受け、石油連盟が「屋外貯蔵タンク清掃工事のガイドラインを」作成しているが公開されてはいない。
タンク開放時の火災のいい文献があるので紹介しておく、
タンク開放時の火災原因を解析したものだ 、出典雑誌Safty&tomorrowNO102(2005.7)にも掲載されている
タンク火災は在液時では無く、半分は開放時に火災が起きているという記事だ
https://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_4/4tyoukan2.pdf
アメリカのAPI(American Petroleum Institute) でも、石油タンクへの入槽及び清掃に関する安全要件(Requirement for Safe Entry and Cleaning of Petoroleum Strage Tanks)という規格がある
https://tajhizkala.ir/doc/API/API_Standard_2015_7th_May_2014_Requirements.pdf
これも参照して欲しい
タンクへの入槽及び清掃に関するハザードは何か、タンク換気上の注意点、スラッジ、残渣除去時の注意点、ポンプや、真空機器使用上の留意点、可燃性蒸気に対する安全対策、タンクに入らず除去する方法、タンク外部からの除去、タンク内除去での注意点、火気の管理、硫化鉄の着火危険性、硫化鉄堆積物の除去方法、、硫化鉄発火の予防要件、入槽時のチェックリスト要件など有用な情報が書かれている。
事故防止の観点からも一度は読んでほしい

 

2025年03月05日

キャンドポンプで起こった重大爆発事故-HAZOPで見落としやすいリスクだ

キャンドポンプというポンプ内で反応が起こりそれをきっかけに起こった爆発事故だ
当時は誰も、キャンドポンプが事故の引き金になるとは思っていなかった
今から20年前の事故だが、忘れてはいけない事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0021002.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2004-037.pdf
キャンドポンプは、密閉型のポンプで漏洩を嫌う物質に使われるポンプだ
毒性ガスなどポンプから漏れると影響が大きいので、漏れると危険という流体によく使われるポンプだ
事故が起こったプラントでは、温度が上がると自己分解性がありかつ重合して詰まりやすい四フッ化エチレンとい物質を流していた
この物質は温度が上がると反応が進む物質だった。その物質がキャンドポンプ内で詰まり温度上昇で爆発した事故だ
四フッ化エチレンの最小着火温度(150~400℃)を超えたことが第一原因だ
更に漏洩した四弗化エチレンが一次爆発し周辺部で二次爆発を起こした
破損機器は半径500m程度迄飛散した。爆風により半径1kmの範囲で被害が発生している
キャンドポンプ内には、モーターがある 電気を流してモーターを回転させると。モーターの周りには熱が発生する。
この熱を除去する為、モーター周りには細い配管が設置されている
冷却用の液体を流すのだ 通常、ポンプで流す流体の一部を、この細い冷却用配管にバイパスしてモーターを冷やしている
ところが、このポンプに流していた流体は温度が上がると爆発する物質だった
おまけに反応性が有り、反応を防止する液体が常に送り込まれていた
があるとき、その反応防止剤が流れてこないトラブルが起こった
そうすると、反応を始めるのでその流体は粘度が高まり冷却用の細い配管内の流れが悪くなった
その結果、液体の温度はどんどん上昇し最後は着火点を越えてポンプ内で爆発を起こした
キャンドポンプは、構造上冷却用内部配管が詰まると温度が上がり易いというリスクがある
取り扱う流体が、温度上昇で問題を起こすリスクがあるなら、キャンドポンプの選定を取りやまると言うことをHAZOP的な知識として持っておく必要がある
温度が上がると危険な物質にキャンドポンプを使うならしっかりと安全対策を行うことだ
HAZOPなどの安全性評価でもポンプ形状によるリスクを見逃しやすいので注意が必要だ
キャンドポンプのリスクもHAZOPでは見をとさないで欲しい
HAZOPは、基本はP&IDベースでのずれをベースにリスクの拾い出しをするが機械の種類によるリスクも考慮できると事故の確率は減る
常にHAZOPで深掘りする技術を磨いて欲しい

 

2025年02月25日
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