ブログ一覧

HAZOPは深掘りに失敗した事例を多く学べ

HAZOPに関する公開講習会を始めてもう8年になる
年に何回かHAZOPに関係する講義をする 個別企業に出向いての講義も有るが、公開版もある
今年最後の公開版の講義日程を紹介しておく。12月の16日に私の講義を予定している
https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AG2512D4.php
講義の中でいつも強調しているのは、HAZOPで深掘りできるように、過去のHAZOP失敗事例を学べだ
まずは「ずれ」の見落とし事例も学ぶことだ。次は「ずれ」は見つけたが、対策が甘くて失敗事例を学んで欲しい
例えば、逆流というずれに対して、安易に「逆止弁」を設置する対策ですます事例だ
失敗しているのは、逆止弁が作動しなくて結果として事故になってしまった事例だ
設備をつけたらそれで安全だと思い込むところに事故の芽がある。点検周期などの運用管理迄深掘りして対策をとる必要がある
逆流が起きて短時間で対応が必要なら、緊急遮断弁の設置もしなければ事故は防げ無い
一つだけの対策は必ず破られる。2つ以上の対策を考えないと事故の未然防止は難しい
HAZOPの講演を始めたのはこんな理由だ
多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている
なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ
つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが問題点だ。その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えている
肝心のHAZOPで見落とすような危険源を上手に教えていないからだ
また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある
HAZOPを使ったり、HAZOP的な思考をすることは大変いいことだと思う
しかし、HAZOPの「失敗事例」を体系的に学ばなければ、企業としての実力はついていかない
つまり、誰でも気づくようなずれは、教えなくても皆が考えつく
皆が考えつかなかったような「ずれ」で起きた事故事例も知識として持っていないと、HAZOPで深掘りできない
私の知っている6500件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例を12月の16日に紹介して行く。 
https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AG2512D4.php
講師紹介割引もあるという。申込時、講師からの紹介だと言えば講義料を割り引いてくれるとのことだ
2名以上だと更に上乗せした割引があると言う 申込時確認して欲しい

 

2025年11月20日

冷却塔の爆発火災事故

冷却塔で爆発が起こると考える人はほとんどいないのだろうが。爆発事故は過去に起きている
1984/3/18インドで冷却塔の爆発事故が起きている冷却水にLPGが漏れ込み爆発で4人が死亡した事故だ
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00237.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00237_s.pdf
2013/8/23 やはりインドで29人が死亡する冷却塔の爆発事故が起きている
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2025/10/202510BeaconJapanese.pdf
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2025/10/DANWA2025_10_No232.pdf
冷却塔の事故では火災事故も多い。冷却塔は、水を扱うから燃えないと思っている人が沢山いるからだ
しかし、冷却塔は良く燃えると思っていた方がいい。多いのは、解体中の火災事故だ
https://news.ntv.co.jp/category/society/307732
https://www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000096/96474/3.pdf
https://www.bousaihaku.com/wp/wp-content/uploads/2017/04/010409001.pdf
確かに、運転中は水がある。しかし、解体するときは水もなく乾燥している
しかも、冷却塔の内部には水を上手に分散させるためのプラスチック製の燃え易い部品が沢山ある
https://www.reiki-ct.co.jp/service/maintenance/#03
だが、それを知っている人はほとんどいない
解体のため、火を入れ始めて内部にあるプラスチック製品に着火して火災になる事例は後を絶たない
もう一つの原因は、冷却塔内に油かすやわずかな油分が残っていて解体中に着火する事例だ
冷却塔の解体時は内部に燃えるものがあると常に思って欲しい
解体工事では、濡らした状態で火気工事に入って欲しい
可燃物でも濡らしておけば、着火点は確実にあがり火がつきにくくなる
湿度を上げて火がつきにくくなることも考えて対策を打って欲しい
化学工学会の談話室という所に、色々な安全情報がある
https://sce-net.jp/main/group/anzen/anzen_danwa/
折を見て尋ねてみるとよい

 

2025年11月14日

調節弁の内弁サイズ変更管理の失敗事例

変更管理の失敗は、色々な分野で起こる。原材料の変更、運転条件の変更など様々だ
今回計装分野で起きた変更管理の失敗事例を紹介する
1974/8/8に鹿島のコンビナートで起きた事故だ
調節弁と言うのは,流量や圧力を制御する弁だ
順調に制御できているときはいいのだが、圧力損失が極端に大きかったりすると異常振動を起こすことがある
いわゆる差圧が変わると問題を起こすのだ
この事故は、弁のサイズアップという変更管理の失敗事故でもある
調節弁の異常振動事故だ
弁の入り口と出口のΔP(差圧)が1Mpaもある高差圧弁だ
配管中のコントロールバルブ(調節弁)の処理能力を大きくするため,その内弁の大きさを5Bから6Bへ変更した
その結果、コントロールバルブが異常振動をおこしたのだ
バルブ内弁サイズアップによる振動発生とそれによる周辺亀裂・緩みが生じてしまった
ノズル付根部分にクラック(割れ)が入り,炭酸カリ溶液10Lが霧状に漏洩したという事故だ
内弁のサイズを変更したことにより、バルブの流量特性が変化し,ハンチングをおこしたからだ
原因は弁の開閉を操作する空気シリンダーの推力不足
空気シリンダーを動かす空気の圧力が不足していて、十分な推力のある空気シリンダーとなっていなかったのだ
事故後、空気シリンダーを動かす空気の圧力を0.24→0.28MPaにあげたという
内弁を変えたら,内弁を制御する空気シリンダの推力も十分検証しなければならない
単純に内弁を変えただけでOKと思い込んだのだろう
何かを変更したら必ず現場を見てまわることだ
かなりの異常振動が起こっていたはずだ。現場を見ていれば防げた事故だ。
酸化エチレンというとんでもない爆発力を持つプラントの事故だ 一つ間違えば鹿島のコンビナートも吹っ飛ぶ爆発力がある
大事故にもなったかも知れない異常振動事故だ
計装設備である調節弁を何か変更するならしっかりと変更管理を行って欲しい
弁サイズを変えたら、エアーシリンダのサイズ変更も必要だと考えて欲しい

 

2025年11月10日

フレコンバッグで起こる労働災害事故

フレコンバックと呼ばれる袋が保管や輸送用に多く使われている。
原料や製品などの粉や粒状製品を入れる袋だ。
重さは、軽い物で数百キロ。1トンくらいの重い物もある。
何段かに積み上げて、保管することがあるが、崩れて人が挟まれる事故が多発している。
何百キロもの重みがあるのだから、人にのしかかってきたら死亡することもある。
厚生労働省の職場の安全サイトという災害事例を紹介するホームページでこんな災害が紹介されている。
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101193
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101103
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=1047
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100883
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100676
これ以外にも、繰り返しフレコンバッグが崩れてきて災害になる事例が報告されている。
フレコンバックなどを取り扱うところではこの種の災害をしっかりと防止して欲しい。
フレコンが崩れて死ぬこともあることを知らない人が多いからだ。
それから、フレコンという袋に穴が開いたら、安易に補修したり破損した穴の近くに寄らないで欲しい
袋の中身が少しでも出てしまうと、バランスをくずしたフレコンが崩れてくるからだ。
穴が開いたフレコンは、人ではなくフォークリフトを使って安全なところにすぐに移動して事故防止を図って欲しい
放置すれば会社側が、刑事責任を問われることもあるからだ
https://www.rodo.co.jp/column/111466/
この種のフレコン事故は繰り返し起こっている
https://aisyousetu.com/entry/genmai-furecon-shitajiki-jiko-hokkaido-yunityou

 

2025年10月31日

繰り返す スレート屋根から転落する事故

スレートの屋根にのり作業中人が転落する事故事例は多い
頻繁に起こっているのだが、新聞やネットニュースでも取り上げられることは少ない
先日珍しくニュースにスレートの転落記事が出ていた
死亡事故にもなったから、取り上げられたのだろう
https://news.yahoo.co.jp/articles/51b8b3af206ade599c1a47b26bc88e8bdc0493f5
古くなったスレートは強度が弱くなる。人が乗っただけでも割れることがある
私もまだ会社に勤めているとき、何回かスレートから落ちる事故を知ったことがある
10m位の高さのスレートから作業員が落ちた事故だ
死亡事故になってもおかしくない事故だが、助かった
原因は、途中で配管に引っかかり転落していたので衝撃が和らいだのだ
しかし、肋骨を何本も折り半年くらい治療にかかったという
スレートの事故が起こるたびに通達はでる。しかし、この情報はなかなか現場までは届かない
https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/library/ibaraki-roudoukyoku/corner_kantoku/mito/pressrelease/h260530_slate.pdf
こんないい資料もある
https://rousaigojyokai.or.jp/rg/wp-content/uploads/anken2018.pdf
この中には、スレートの踏み抜きだけではなく、明かり取り窓の転落事故の情報も記載されている
参考になる資料だ
スレートの強度を甘く見ないで欲しい
仕事を発注した側も、このリスクをきちんと協力会社側に伝えて欲しい
発注社側にも安全配慮義務がある
過去のスレート転落事故事例に学んで欲しい。

 

2025年10月26日
» 続きを読む