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繰り返す タンクに直接溶接して爆発する事故

タンクに直接火を当てて、火気工事をしていた工事業者が爆発で死亡する事故は繰り返し起こっている
だいたい10年に一度どこかで、起こる事故だ
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%88%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%9B%E3%82%AC%E3%82%B9%E7%88%86%E7%99%BA%EF%BC%89/2018%E5%B9%B49%E6%9C%886%E6%97%A5%E3%80%80%E8%8C%A8%E5%9F%8E%E7%9C%8C%E7%A5%9E%E6%A0%96%E5%B8%82%E3%81%AE%E6%A8%B9%E8%84%82%E8%A3%BD%E9%80%A0%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E3%81%A7%E3%83%91%E3%83%A9
全て報道されるわけではないから、知られないのだ。たとえ報道があっても、事故の原因はその後報道されることはほとんど無い。
過去起きている同様な事故から、こんなことがわかっている。
外部での火気工事でも、溶接などの温度は1000度近くもある。
その熱は、当然薄い鉄板を伝わって内部に温度は伝わる。
鉄板の厚さは数ミリで、金属であるから熱伝導性も良い。タンク内部側は数百度の温度になってしまう。
数百度という温度は、たいていの可燃物であれば発火点を越えてくる。
つまり、タンクの鉄板の内側に油かすや残渣などが付着していることが多いからその可燃物が暖められることになる。
暖めれば、当然可燃性のガスを発生する。廻りには、空気が存在するからガスの量が徐々に増えていき爆発混合気ができてしまう。
タンク内を換気していなければ、当然爆発混合気ができる
鉄板の内側は数百度もあるのだから当然着火して、爆発という現象が起こることになる。
今回の事故は、液を入れたままだったのか、抜いていたのかはわからない。
液を入れたままであれば、当然可燃性蒸気は存在していたはずだ。
強制換気をして、爆発混合気ができないようにしておかなければ今回のような事故になる。
たとえ液を抜いていたとしても、天板や側板の裏側には何らかの油かすなどが付着している。
その部分を外側から、火気工事などで暖めれば、やはり可燃性ガスは出てくる。
たとえ液を抜いていても、強制換気をして爆発混合気ができないようにしておくことだ。
できれば窒素でシールをして、本質安全対策を行って欲しい。
タンクの外側の工事だからと言って安心するなだ。同様の事故は繰り返し起きている。
私の講演や講義でこの話は繰り返し話している。
https://handa.jpn.org/1/schedule.html
過去の事故事例に学んで欲しい。

 

2025年10月20日

停電が引き金の爆発死亡事故

今から半世紀前の事故だ。停電が引きがねで4人が死亡した事故がある
1973年10月8日 千葉県で市原市で起きた事故だ
配管が良く詰まる製造設備だった。年中配管掃除をする手間のかかる設備だった
あるとき配管清掃中爆発が起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000146.html
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00265.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00265_s.pdf
裁判での争点になった記録も残っている
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/10591.html
プロピレンというポリマー設備だ。配管が詰まるため、年中運転中に配管清掃していた
運転中に配管を外すのだから、当然安全対策は必要となる
インターロックが設置されていた。運転中事故が起きないようにだ
ところが、年中配管を清掃していたことからマンネリ化が起きていた
この日は、インターロックを解錠していた。つまり安全装置が、効かない状態にして配管清掃をしていたのだ
運の悪いことに、停電が起き暗くなった。暗かったことから、本来とは違う設備に触ってしまった
結果として、運転している反応器の底部から大量の可燃物が漏れてしまった
数百メーター離れた非防爆の電気リレーの火花で可燃性ガスが着火したという
停電が引き金だが、安全インターロックをバイパスしていたなど多くのミスが大事故につながった
過去の事故事例の中に、停電が引き金事例は多い。停電を甘く見ないで欲しい
この事故は、インターロックが解除されていたことも重要な事故の本質だ
簡単に解除されてしまっては、何のためのインターロックだと言うことになる
もう一つ、事故の本質に関わることがある
詰まりやすいプロセスだったと言うことだ。詰まり易いプロセスは、どうしても人に負担がかかる
結果としてこのような事故も起きてしまう。詰まりやすいというのも、事故のリスクと考えて欲しい

 

2025年10月17日

不安定化学物質による事故を防げ

不安定物質とは、なんなのだろうか。安定していない物質だ。
安定しているとは、変化しないということだ。金属にたとえると、金のようなものだ
金などは非常に安定していて錆びることはない。たいていの金属は、空気があれば酸化される。
酸化されると、酸化物になり元の金属から変化する。鉄は、酸化されて酸化鉄に変化する。つまり、錆びるのだ。
鉄という金属は、鉄のまま存在してはいられない。空気で酸化されて変化するから安定ではないと言える。
ナトリウムなどアルカリ金属なども不安定だ。水に入れれば激しく反応する。
化学物質の中でも、熱や衝撃を加えると激しい反応を起こすものがある。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/20/1/20_2/_pdf/-char/ja
これらは、不安定物質とよばれている。過去不安定物質は、沢山事故を起こしてきている。
1980年代に起きた爆発死亡事故を紹介する。医薬品を製造するときの中間体で5CTという物質が原因だ。
5CTとは5-クロロ-1,2,3-チアジアゾールの略号だ。不安定物質であったため、試作製造中に熱を加えたことにより爆発事故を起こした。
不安定物質は熱や衝撃が加わると暴走的に反応を起こす。2名が負傷し17人が怪我をする大惨事となった。
事故当時、日本ではまだ使われていな物質で性状は余りよく知られていなかった。
海外では既に事故は起きていたが、それを知らずに試作をしていて起きた事故だ。
この事故には、「生産委託」という事故のキーワードがある。爆発を起こしたのは、生産を委託された会社だ。
生産を委託した会社は、海外で事故は起こしているのは知っていたものの、委託先へはその情報を伝えていなかった。
当時、化学産業界では医薬品などの物質はそれほど危険と考えられていなかった。だから、危険と考えなかったかもしれない。
新しい物質を使う時は、国内の情報だけではなく広く海外の情報まで集めないと危険だということだ。
この事故は、多くの文献があるが下記のURLをまず参照されたい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/46/6/46_401/_pdf/-char/ja
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200058.html
この事故も参照すると良い
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000129.html

 

2025年10月10日

電気配線のゆるみによる電気火災を甘く見るな

電気設備は、配線のゆるみによる発熱事故に注意する必要がある
ある原子力発電所で、停電時に自動起動するはずの非常用発電機をテストしたら動かなかったというトラブルがある
原因は、非常用発電機の配線のねじが緩んでいたことだ
原因を調査したところ、どうやら約10年前の納入段階から配線は緩んでいたという
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51948640Y9A101C1L41000/?n_cid=SPTMG002
トラブルを起こした、北海道電力は、製造した会社の監査が不十分だったとしている
いわゆる、製品の受け入れ検査のありかたに問題があったという意味らしい
https://www.hepco.co.jp/info/2019/1246121_1803.html
このトラブルは、発注者側の受け入れ検査能力の問題と、製造メーカー側の品質管理能力の両方が関係すると考えた方がいい
製造メーカーが悪いでは、事は済まされない
トラブルの背景には、発注者側にも、メーカーの能力を見抜けるようなたたき上げの人がいなくなってきていることだ
原発を造ったり、増設改造した人はたぶん電気盤などのメーカー検査の経験は沢山あったはずだ
昨今のように、原発の新設がなかったり、改造工事などがなければ、若い人は検査の経験を積むこともできない
製造メーカー側にも、ベテランが少なくなってきていることも背景にある
メーカーでの検査不備が起きたのは、2009年というから、丁度団塊の世代が大量退職していた時代
たたき上げの職人さんが、現場にいなくなり始めた時代だ
電気の配線チェックというのは、通常導通チェックという手法で一本一本配線を検査していく
線をつないでいなかった、誤ったところにつないでいれば、この方法で簡単に異常を見つけられる
しかし。今回のように、端子の絞めが甘かったというのを導通検査などで見抜くのは難しい
完全に緩んでいない限り、線の導通検査では発見できないこともあるからだ
今回は、初期不良だが工場にある何十万本という配線のゆるみを経年で管理していくことは難しい問題だ
配線の端子は、時間が経てば緩んでくるものもある
配線のゆるみは電気火災にもつながることもある
赤外線カメラなども使って接触不良をうまく見つけて欲しい

 

2025年10月05日

運転中の火気工事を甘く見るな-工事はいつもうまくいくとは限らない

運転中の火気工事で失敗した事故だ。1991年11月25日の事故だが、多くの教訓があるので紹介しておきたい
事故は,運転中に配管が腐食して漏れているのを見つけたことが発端だ
本来なら,運転を止めて補修するのが安全なのだが、運転を止めずに補修する方法を選択した
工事の方法は,腐食している配管の周りに一回り太い配管を溶接して,覆いを被してしまう方法だ
ボックスイン工法と呼ばれる手法だ リークボックス溶接とも呼ばれる
http://www.shippai.org/fkd/mf/MC0000151_02.jpg
http://www-it.jwes.or.jp/technology/images/cp2_table2.pdf
この工法は,溶接という火を使うので、工事の際に着火が問題となる
この為、穴の開いた部分には,水を流すか内部流体を水に置き換えることが必要になる
しかし,溶接というのは金属を溶かして行うわけだからリスクがある
特に、溶接は何度も何度も同じ箇所を溶接すると金属がもろくなって割れるという性質がある
割れれば,大量に内部の液が噴き出してくる
この事故も、溶接時間が長すぎて金属が割れ大量の水と可燃物が噴き出し火災になった事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000151.html
事故の原因は一つだけでは無い
もともと建設段階で材質を間違えていたのだ 本来ステンレスなのに鉄で工事をしていた
腐食性の流体が流れるところに,鉄を使っていたのだから腐食して穴が開くわけだ
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00036.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00036_s.pdf
もう一つの原因として,局部電池現象がある
鉄とステンレスという二つの金属が存在したことにより電池が出来電流の流れにより金属が溶けたのだ
局部電池現象というものも知っていて欲しい
この事故には多くの教訓がある
特に考えて欲しいのは運転中の火気工事を甘く見るなと言うことだ
工事はいつもうまくいくとは限らないからだ

 

2025年09月30日
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