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労働災害とリスクアセスメント

労働災害防止に向けて企業では多くの活動が展開されている。
厚生労働省など 行政機関や外郭団体も、リスクアセスメントに関する情報を提供している
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo01_1.html
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/j070501.pdf
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/press1.pdf
https://www.tokubetu.or.jp/risk_assessment.html
作業の中に危険なことが存在するなら、そのリスクを評価して対策を打っていくのが一般的だ。
一つ一つ作業毎に、リスク評価を行うわけであるが、作業中の時だけを評価していれば良いわけでは無い。
作業開始前の始業点検時などでも災害は起こる。作業終了時にも、同様に起こる。
例えば、始業点検時身を乗り出していていたりして動かし始めた機械に巻き込まれることもある。
作業終了時も、早く終わらせようと焦っていて労働災害を引き起こすこともある。
本質的なところを調べてみると、元々規定の作業時間で終わらない事実があるのに管理者がそれを見過ごしていたことも関連する。
場合によっては、生産量が増えていて現状の人数では対応できない事実があるのに管理者がそれを放置していて労働災害が起こることがある。
労働災害が起こると、災害を起こした本人に全責任を負わせていては災害の再発防止は図れない。
4M法などできちんと解析して環境に問題が無かったのか、管理という側面で問題は無かったのかなど深掘りして欲しい。
労働災害は、システマチックに対応していかないと再発の目をつぶすのは難しいからだ。
直接原因だけに目を向けていては再発の可能性がある
間接原因や事故の背景などにも目を向けて欲しい
常に事故や災害の本質は何かを探って欲しい

 

2025年01月20日

熱交換器の爆発死亡事故--事故の教訓を伝えていこう

今から約10年前の2014年1月9日に三重県四日市で起こった熱交換器の爆発事故を覚えていますか。
爆発により多くの人が死亡した事故です。
https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-0612.html
公式の報告書が出ることは望ましいのですが、事故の教訓を自社に展開する為のキーワードが何かがわかりずらいのが公式の事故報告書ではないでしょうか。そんな思いもあり、もう少しわかりやすく事故の原因と教訓を伝えたいと考えていました。
当時私は、日本化学工業協会(日化協)の支援メンバーであったことから、この四日市の事故で伝えるべき教訓をビデオ化しました。
その後、東ソーの蒸留塔の事故、三井化学の反応器の事故、日本触媒のタンク事故とビデオを作成していきました。
https://www.nikkakyo.org/news/page/6150
事故を伝えるには、事故の事実を伝えるのでは無く事故の教訓を伝えることに力点を置く必要性があります。それが、一番難しいのです。
熱交換器の事故は、多くの教訓を与えてくれています。特殊な物質を扱っていたから起こった事故だと単純に捉えてはいけません。
熱交換器の開放時に起きた事故であり、どこの化学工場でもやっている熱交換器の開放作業に関わる事故です。
熱交換器の蓋を開ける前に、無害化されているかがきちんと確認できるシステムになっていなかったことが事故になっていったのです。
安全かどうかは経験則に頼っていたのです。本質的な意味で、化学工学的に安全だというマニュアルになっていなかったのです。
年末から年始にかけて長時間窒素でパージしていれば安全と考えていたことが事故につながりました。
熱交換器に残っていた物質はドライ窒素のようなの乾燥した気体では爆発感度がものすごく上がることが事故報告書に記載されています。乾燥した、窒素でパージしたことが結果として事故の被害を大きくしました。窒素でパージすれば安全という、思い込みが事故につながっています。
事故の事実を伝えることよりも、その教訓を伝えた方が再発防止には有効です。
とはいえ、教訓とは何かを考えるのはなかなか難しいのです。何千件の化学プラントの事故事例を知り尽くした私でも悩むものです。
事故を防ぐ究極の答えが教訓だからです。

 

2025年01月15日

排水タンクの爆発事故-排水タンクだからと甘く見るな

排水タンクの爆発事故を紹介する。死者17名の大惨事だ。約20年ほど前にアメリカで起こった大惨事だが、教訓となるものが多い。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/32/3/32_200/_pdf
多くの死者が出たのは、現場に人が沢山いたからだ。現場に人が沢山いたことが犠牲者を増やしてしまった。
この企業は、事故が起こるまで140万時間も労働災害は無かったとの記述がある。
今まで事故が無かったというのは、将来事故が無いという保証は一切無いということでもある。事故を起こした排水タンク周りは、しっかりとHAZOPをやってはいたという。HAZOPはやっていても、事故は起こるということだ。
この排水タンクは、コーンルーフ型のタンクだ。廃液の中には酸素を発生する物質が含まれていた。
更に廃液には、可燃性物質もあったので、タンク内には可燃性ガスが存在していた。
当然、危険なのでタンク内の酸素濃度を測定する酸素分析計が1台設置されていた。
酸素濃度計と連動して、チッソがタンク内に自動的に供給されるシステムが設置されていた。
つまり、タンク内に、爆発混合気が出来ないように運転されていた。ところが、計器というものは故障する。
計器が故障して、酸素濃度は低めに出ていた。運転員は酸素濃度が低いから安全だと思い込んでいた。
指示が低いということは、チッソの供給量も連動して少なめになっていた。つまり、タンク内には爆発混合気が出来ていたのだ。 
タンク内のガスには、可燃性のガス分もあるため、一部を抜き出して有効利用する設計になっていた。
つまり、タンクからガスを抜くために圧縮機が設置されていた。あるときこの圧縮機が故障して修理に出していた。
その圧縮機が、修理から戻ってきて再起動する時に事故は起こったのだ。
圧縮機を設置復旧前に、一時的にタンクの窒素シールを停めて配管工事をしていた。
つまり、タンク内にはチッソが入っていないため、爆発混合気が出来る状態をわざわざ作り出していた。
その状態で、圧縮機を起動したのだから圧縮機はもろに爆発混合気を吸い込んでしまった。
気体は圧縮すれば断熱圧縮現象が起こるから、爆発混合気の温度は一気に上がり発火点を超え着火爆発した。
火炎はタンクへ逆流しタンク内に存在していた爆発混合気が一気に爆発したのだ。
HAZOP的な切り口での問題点は今後のブログで紹介したい
排水タンクだからと甘く見るなということだ

 

2025年01月10日

企業の事故調査報告書の読み取り方

事故調査報告書は誰が作るかによって書き方は変わってくる 大きな事故が起こると、事故調査報告書が作られることとなる
時代とともに誰が事故調査報告書を作るかが変わってきた
確かではないが1990年代までは大きな事故が起こると国などの行政が主体で事故報告書を作成してきた気がする
1997年に、今まで高圧ガス取締法と呼ばれた法律名が、高圧ガス保安法と名前を変えた
国は取り締まるではなく、自主保安と舵を切り替えたのだ
事故や災害を防ぐ主体者は国ではなく、事業者だという考え方の180度転換だ
国が取り締まると言えば、事故が起これば、取締りかたがわるかったのは国だという論理になる
とはいえ、取り締まるには限界がある 技術は絶えず変化し、技術の根底まで管理するのは行政には難しい
国も万能ではないと考えるのも道理である 
設備のリスクを知っているのはやはり、国ではなく企業などの事業者なのだという考え方もある
つまり、行政が規制するには限界があるということだ と言う観点から、自主保安という概念が1990年代から浸透し始めた
それを境にして、大きな事故が起きても国は事故報告書を自ら発行しなくなった
自主保安だから、企業が発行するべきだという考え方が根底にあるからだ
2003年という年は大きな事故が頻発した
2003.8.29名古屋エクソンモービル油槽所火災 2003.9.26~28出光苫小牧製油所火災
など大きな事故はあったがもう、国は事故調査報告書の発行主体者にはなっていない
https://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
https://tank-accident.blogspot.com/2016/04/2003.html
いずれも、地元消防機関や 企業が主体で作り上げた報告書が出されている
つまり、事故報告書の書き方は、規制する側の視点から書かれた物ではなくなってきている
企業の視点で事故報告書は書かれていると読み取らなければならない
微妙なニュアンスではあるが、書き方は、規制する側と規制される側と当然の違いがある
規制者であれば、単純に法という視点で書けば良かった。ところが、事故は法を守っていれば起こらないというわけではない
法以上のことをどれだけやっていたかも企業は書かなければいけない
とはいえ事故が起きれば裁判もある 裁判で企業が勝つには、企業は書けないこともあるはずだ
事故報告書を読み取るのがますます難しくなってきている

 

2025年01月06日

今年一年の重大事故を振り返って 

2024年を振り返ってみる。1/1から能登半島沖地震、羽田の航空機衝突事故など大きな災害が起きている
1月の能登半島沖地震では、原発で変圧器の油漏れなどのトラブルが起きている.直下型の地震であったろうから相当のガル数だったはずだ
https://www.rikuden.co.jp/press/attach/24010599.pdf
https://www.asahi.com/articles/ASS156GB1S15ULBH00D.html
https://www.data-max.co.jp/article/40167#:~:text=%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AE%E8%80%90%E9%9C%87%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%81%AF,%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82
地震で富山の高岡にある化学工場では、塩ビ管が壊れ漏れ事故が起きている。樹脂配管などにも配慮が必要だと言うことだ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC057LM0V00C24A1000000/
1月31日バイオマス燃料の火力発電所で摩擦熱による粉塵爆発事故が起きている。事故報告書もダウンロードできるので参考にされたい
https://www.jera.co.jp/news/information/20240501_1911
3月 静岡にある化学企業でダクトの爆発事故が起きている。ダクト内で爆発混合気ができたのだろう。ダクト事故も繰り返しおこっている
https://look.satv.co.jp/content_news/incident/33903
大分でスチレンモノマー工場で火災が起きている。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/obs/1078190?display=1
6月 化学工場で可燃性有機物の容器洗浄中火災が起きている
https://www.nippon-chem.co.jp/dcms_media/other/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E7%81%AB%E7%81%BD%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B%EF%BC%88%E7%AC%AC%EF%BC%91%E5%A0%B1%EF%BC%89.pdf
過去にも事故は起きているようだ この事故報告をみると取扱物質がわかるはずだ
https://www.nippon-chem.co.jp/dcms_media/other/20120905_jikohoukoku.pdf
7月禁水性物質による火災事故が起きている https://www.sankei.com/article/20240706-JUQFMQC7INLR3LRSA62D7XOYQE/
7月北海道のバイオマス発電所で爆発事故。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240719/k10014516081000.html
10月徳島の農薬工場で爆発事故が起きている https://www3.nhk.or.jp/lnews/tokushima/20241007/8020021460.html
11月ベネズエラで落雷によるタンクボイルオーバー事故が起きている https://www.tosoh.co.jp/news/info/2023/20231108.html
12月も事故は起きている https://news.yahoo.co.jp/articles/9674e2c82c7a7fa0d45094d122838f1110d2b844
事故の連鎖は相変わらず停まらない

2024年12月30日

タンク内作業での火災爆発事故は繰り返す

タンク内作業での火災爆発等の事故事故事例は多い。タンク内に入り人が作業することがあるからだ。
タンク内で火災などが発生すれば重大事故につながる。本来、タンクの中に入らずに外から作業が出来れば良いのだがそうはいかない。
どうしても、中に入ってやらざるを得ない作業があるからだ。中に人が入れば、酸欠事故になることもある。
タンク内にはスラッジなどの残渣が残っている。いわゆる油かすだ。油分には、ガスが内部に含有していることが多い
タンクに入る前に、ガス検知をしてもこの残渣に含まれるガス分はすぐにガスを発生していない可能性がある。
つまり、ガス検OKでタンク内に人が入ったあと、タンク内で作業して動き回ることで、油などがかき廻される。結果としてガスが発生する
可燃性ガスであれば、着火源さえあれば爆発事故になる。可燃性ガスの管理は、最初だけではなく作業中常時行う必要がある。
ガス濃度管理もさることながら、着火源を作り出さないことだ。作業でプラスチックのモップなどを使えば、静電気が起こる。
カッパを着ていれば、カッパもプラスチックだから、同様に人の動きで静電気が発生する。
金属製のシャベルなどでタンクの底板をすくえば金属による火花も発生する。
硫化水素など毒性ガスもあるだろうから、中毒の注意も必要になる。過去に多くの事故が起こっている。
タンクの火災事故でこんな事故事例がある。
http://tank-accident.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html
https://khk-syoubou.or.jp/pdf/accident_case/manabu_18_2_3_b_2.pdf
では、タンクの中に入って清掃するときなどのガイドラインはあるのかというとこんな物が存在する。
アメリカの規格ではあるが ANSI/API2016 石油タンクの入槽および清掃に関するガイドラインというのがある。
https://www.intertekinform.com/en-gb/standards/api-2016-2001-97063_saig_api_api_203424/?srsltid=AfmBOopQnLUfkuQVqIFYCsddJ6JndnX2tNF64tIBTRAx8Eg3W_35pU12
日本では、石油連盟から屋外貯蔵タンク清掃工事のガイドラインというのがある。手に入れられる人は見てほしい。
これらの情報は、危険物保安協会の冊子で過去に紹介されたことがある。
石油連盟のガイドラインは、Safty&tomorrow NO112 2007.3 79-81頁だ。
ANSI/API2016に関しては 、Safty&tomorrow No133 2010.9 60-64頁に記事がある。
タンクローリーはマンホールから何メーター離せ。ベントガスは、地上に向けて放出するな。
タンク内の可燃性ガス濃度は爆発下限界の何パーセント以下にせよなど具体的な情報が書かれている。
手元に無い方は国会図書館の複写サービスなどで文献を手に入れられるはずだ。
ぜひ皆さんには読んでほしい文献だ

 

2024年12月25日

地震という外乱が引き起こす事故

1987/12/17に千葉県で大きな地震があった。丁度師走の今頃だ
当時千葉県の京葉コンビナートに務めていたのでかなりの揺れを覚えている
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E6%9D%B1%E6%96%B9%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87_(1987%E5%B9%B4)
気象庁の公式記録では、M6.7,千葉県の広範囲で震度5を記録。死者2名、負傷者161名、建物全壊10棟、半壊93棟一部破損6万3692棟
当時は各市町村に地震計はなかったので、千葉の中央部などでは震度6弱があったと言われている
https://www.youtube.com/watch?v=7id7c7y0Llo
こんな文献もある。地震のガル数情報も書かれている 200ガルから最大400ガルと書かれている
https://www.shimztechnonews.com/tw/sit/report/vol49/pdf/49_006.pdf
震央に近い鹿島のコンビナート地区では41工場の内、33工場が一部プラントを停めた。全プラントを緊急停止したのは21工場だった。
減産も9工場だ。
震央から42K離れていた、千葉県市原にあった私の工場では被害はなかったが、一部プラントは停めた記憶もある
隣にあった日本合成ゴム(現ENEOS)は105~164ガルの記録がある。液状化の被害も多かった
横浜のコンビナートでは、地震でルール通り装置を停めなかったとして行政から指導が入っている
この地震以降、地震時の停止基準ルールの運用の厳格化が求められるようになったという
地震で東京電力の発電所が自動停止したり、送電線の異常で停電も起こっている
近隣の工場では地震による停電で除害設備から塩素を漏洩した事故が起きている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000197.html
地震で電気リレーが誤作動し停電になり、非常用電源に切り替わったもののすぐに停止してしまい、除害能力がなくなり塩素を放出した事故だ
千葉県東方沖地震が発生し、プラントは緊急停止した。正常にインターロックが働き、反応ガスは除害塔へ放出された
しかし、地震で変電所の地絡リレーが誤作動し停電となった。直ちに、バックアップ用の非常電源が起動した。
ここまでは良かったが、非常用発電機の冷却水低下検出器が発電機停止のインターロックに入っていた
地震の揺れなのに液面低下と検出してしまい非常用発電機が停止してしまったのだ。
それに気がつき、再起動させるまでの間、除害塔のNaOHポンプが廻らず除害できなかった塩化水素が2分間放出された。
近隣企業の社員が負傷した事故だ。地震が起これば、液面は揺れる、液面低下のような警報は出る。
警報だけなら問題は無かったが、インターロックで停止する設計にしていたのが問題だった
非常用発電機のインターロックの設計に問題が無いかみて欲しい

 

2024年12月20日

廃液や排ガスの設備や作業を甘く見るな

人は「廃」や「排」などの字がつくと、危険だと思わない性質がある。
いらない設備なのだから、たいして危険では無いと思い込むのだろう。
ところが、多くの事故事例を見て見るとこの字が付いている設備は、結構事故がおこるものだ。
規格外の廃棄予定製品を倉庫に置いていて火災になった事例もある
https://www.nissanchem.co.jp/news_release/news/n2020_06_23.pdf
2023年に配管に残った排ガスを処理中に爆発が起こり死亡事故が起きている
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tys/814840
http://www.daiankyo.or.jp/co_11/bakuhatsu_jiko_jouhou_20231107.pdf
廃液タンクや廃液ドラムなら、混触反応事故で火災や爆発事故が起こる。
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-0000.pdf
排水ピットなどでは、近くで火気工事をしていて着火事故が起こる。
液体ではなく排ガス関係設備でも事故は起こる。排ガスダクト内にあった堆積物を長期間清掃せず自然発火した事例も多い。
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000052.html
工場でも起こるが、研究所でも良く起こる事故だ。実験室から出る化学物質が排ガスダクト内で堆積するからだ。
排ガスダクトでは排気用のブロワーがあればこれも事故の発端になる。長期間点検をしていなければ羽根が腐食する 
バランスが崩れ振動がでる。これを放置すると、羽根などの金属部品が周辺の金属と接触して火花が出て着火源となり堆積物に火が出る。
それで火災となるのだが、ダクトの中の火災だからなかなか消火が出来ず大きな火災となることがある。
自分の工場や研究室の排ガスダクトの中は蓄積物が溜まっていないか、排気ファンなどは羽根の腐食が無いか見て欲しい。
排ガスファンや換気扇の能力が落ちるのも事故になる。
排ガスを逃がせなければ、含まれている可燃性ガスなどの濃度も上がるはずだから着火すれば火災では無く爆発になる。
爆発混合気が出来ていることも多いからだ
停電で排ガス焼却炉が爆発した事故事例がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/21/5/21_305/_pdf/-char/ja
換気扇はフィルターの目ずまりもみて欲しい 排気性能が落ちていれば事故になるからだ。
何十年も管理されていなければすぐに見て欲しい 事故が起きてからでは遅いからだ
「廃」や「排」などの字がつ設備や作業を甘く見ないで欲しい

 

2024年12月15日

なぜ工場や研究所で事故が起こるのか どうしたら防げるのか

なぜ化学プラントで事故が起こるのか
化学プラントに存在する危険源は何かをまず考えてみることです。危険源は沢山ありますが.体系的に分けると4つです。
①物質危険性 ②人 ③設備 ④外乱や天災です
最初のキーワードは物質危険性を甘く見ることです。毎日、毎日化学物質を扱っていると、事故が起きなければ危険と思わなくなることです
慣れが怖いのです
二番目は、人のミスです 人間は必ずミスを犯します 特に一人で作業しているとミスを犯しやすいのです
省人化により、二人作業は減っています 一人で作業している限り、思い込みや勘違いで事故が起きます
三番目は設備の故障です。機械は時間が経てば壊れます。定期的に点検して、機能を確認しなければ異常に気づきません
機械は点検が必要です きちんとした点検計画をつくって維持管理してください。点検コストをけちるから事故が起こるのです
四番目は、外乱です。突然外部から影響を受けることがあります。地震、雷、台風、停電など突然来ることがあります
この外乱というのは確率は低いのですがゼロではありません。必ず来ます。外乱対策を考えて下さい
事故が起こるのは、たねも仕掛けもあります。昔から事故は起こっているので、新しい事故というのはあまりありません
昔起こった事故が場所と時間を変えてただ起こっているだけです。過去の事故事例を学んで下さい
なぜ事故が起きルのかがわかっても事故は防げません。事故を防ぐ知恵が必要です
リスク管理技術という知識も必要です。管理とは何かを考えて下さい
事故の芽を摘み取る技術です。
まずは設計の段階で事故の芽を摘み取ることです。それでも駄目なら安全性評価をして事故の芽を摘み取るのです
運転中にもリスクはあります。運転管理をすることです。設備管理も重要です。設備は維持管理が大切だからです
工事中の事故の管理も必要です。世の中変化します。変更管理も重要なキーワードです
最後は、教育です。人に技術有りです。しっかりと、教育して技術伝承しなければ企業の未来はありません
いい文献があるので紹介しておきます。なぜ事故が起こるか、どうしたら防げるのかの情報が得られます
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmesed/2013.12/0/2013.12_1/_pdf/-char/ja
http://www.i-s-l.org/shupan/pdf/SE210_3_open.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/39/4/39_220/_article/-char/ja/

 

2024年12月09日

油の大量流出事故

過去何度も何度も油の流出事故が起きている 流出量が多ければ重大な海洋汚染を引き起こす
https://www.pcs.gr.jp/doc/incident/incidents.html
タンカーが起こした事故、製油所や化学工場のタンクからの漏洩事故が主な事故形態だ
タンカー事故の原因は、船の座礁、接岸中の事故、油移送中の流出などが原因だ
タンクからの漏洩事故は、地震や操作・作業ミスによる流出がある
日本で過去最も深刻な油流出が起きたのは今から50年前の1974年12月の18日だ
https://www2.nhk.or.jp/archives/movies/?id=D0009030132_00000
岡山県倉敷の水島コンビナートにある製油所から大量の油がタンクから流出した
流出した油は、瀬戸内海に広がり漁業被害も起こした
当時の金額で被害額は600億円だった。現在の価値に直すと約3倍の金額になるのだろう
当時は、まだ油の大量流出は想定されてはいなかった
タンクの周りには、防油堤はあったが防油堤が破壊されたことで一気に海まで流れ出たのだ
その後法規制が強化されたことで、その後同規模の事故は起きていない
この事故の特集号が出ている記事があるので紹介する
https://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/217/217_all.pdf
しかし、相変わらず油や化学物質の流出事故は起きている
https://www.youtube.com/watch?v=ACOsv13PCrw
https://tank-accident.blogspot.com/2012/11/blog-post_22.html
以下の資料の事故事例の2をみて欲しい
https://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/209/kikenbutsu_jikokanren_info02.pdf
漏洩リスクを甘く見ないで欲しい

 

2024年12月05日

台風や強風が原因で起こる事故

秋台風というのがある とんでもない被害をだすことがある
この時期、日本に直撃は少なくなっているがまだ沖縄近くでは、台風などと言う情報もある
台風や強風が来るとどんな被害が製油所や化学工場等で起こっているのかと調べてみた。
塩害の記録がある。碍子に塩が付着して電気設備に被害が出る現象だ。海沿いなら、注意して屋外の電気設備を点検しておくことだ。
塩害で電気の碍子などは時間が経ってから被害が出ることがある。しっかり清掃して事故を未然に防いでほしい。
タンク被害では、浮き屋根式タンクの雨水排水ますの点検を怠っていたことから屋根に被害が出たという記録がある。
タンク天板の排水がうまくいかなければ、沈み込んでしまうからだ。倉敷のコンビナートで起きている。
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000167.html
コンビナート地区の停電が起こることもある。装置が停まるとコンビナートではフレアーが一斉に吹くので、住民からの苦情も大きい。
高波で防潮堤を壊され配管に被害の出ることがある
1991年9月27日に九州地方にものすごい台風が来た 当時は100年に一度の台風と言われていた
北九州の小倉にある油槽所がとんでもない被害を受けた 高波により防波堤壊れ液化ブタンガスタンクの配管破損した事故だ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/31/4/31_285/_pdf/-char/ja
この台風で民間施設も大きな被害を受けた。当時の保険会社によるこの台風の損害記録がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/31/4/31_293/_pdf
強風が原因でタンク火災になった事例もある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/48/6/48_6_311/_pdf
アメリカなどではタンクヤードへの浸水によりタンクが浮力で浮いたという記録もある。
ハリケーンだ。大雨でタンク周りに水が来る場合は、タンク内を空に近い状態にしておくとこのようになる。しっかりと液を張っておくことだ。
強風で浮き屋根式タンクで内部のポンツーンという浮きが壊れて事故になった事例もある。
https://tank-accident.blogspot.com/2014/01/2012.html
台風での落下物が、油配管を破損して火災になった事故もある
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/191/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
岸壁のローデングアームが強風で破損したという事故事例もある
台風でプラントを停めた後、再スタート時に火災などを引き起こしている事例も多い
台風や強風は外乱の一種だ
外乱を甘く見ないで欲しい

 

2024年11月25日

事故と刑事罰

化学工場などで事故を起こすと当然、警察や労働基準監督署の調査が入る。労働基準監督署は労働法令に関し司法権のある役所だ。
事故の原因が複雑であれば、半年や1年で結論が出るわけではない。実際に起訴されるまでに2年や3年もかかる事例は多い
化学物質の関係する事故の原因はそう単純ではないからだ。法律上責任を問われるのは、法令違反があるかないかだ
法令の条文は、細かなことまで規定していないから、適用の検討に時間がかかる
つまり、法令の条文をどう解釈して個別の事故に対応させるかに時間がかかるのだ
単純な事故であれば、法の条文をそのまま解釈して適用できるが、化学物質の危険性に起因する事故はそう簡単にはいかない
刑事罰を問うには、事故の予見性と言うことが重要になる。事故になるとはわかっているのに何もしなかったというのは、犯罪になる
しかし、物質危険性などはその危険性を予測できないものもある。物質危険性というものは、全てわかっていると言うわけでは無いからだ
未知の領域が多数存在するから、事故の予見性を解析するのは容易なことではない
公知の事実であれば、それを知らなかったでは済まされない。事故は予見できるからだ
しかし、公知の事実でなければ、事故が起こることは予見することは難しい
化学プラントの事故の裁判を見て見ると、この事故の予見性について裁判官の判断がバラツキがある
裁判官は、化学の専門家ではないからだ。だからといって事故が起きていいと言うわけではない
事故が起きてしまえば、社員が刑事罰に問われることがある。刑事罰を受ければ、社員は精神的な負担も受ける
事故を起こせば社員にこのような負担がかかることもある
昔は事故を起こした直属の上司などが起訴されていたが今は違う。
事故は企業の文化や組織体制にも問題があるからだという観点から直属の上司だけでは無く工場長や社長なども起訴の対象となる。
企業のトップが本気にならなければ事故は減らせないからだ。
お金や人事権を握っているのは企業のトップそのものだからだ。
事故と刑事罰について書かれている情報があるので参考までに紹介しておく。
https://kigyobengo.com/media/useful/1944.html
https://osh-management.com/legal/information/legal-introduction-02/#gsc.tab=0
事故を起こせば犯罪となることもある
事故防止の技術を磨いて欲しい

 

2024年11月20日

HAZOPは深掘りがポイントだ--深掘りに失敗した事例を多く学べ

HAZOPに関する公開講習会を始めてもう7年になる
年に何回かHAZOPに関係する講義をする 個別企業に出向いての講義も有るが、公開版もある
今年最後の公開版の講義日程を紹介しておく。12月の23日に私の講義を予定している
https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AG2412E1.php
講義の中でいつも強調しているのは、
HAZOPで深掘りできるように、過去のHAZOP失敗事例を学べだ
まずは「ずれ」の見落とし事例も学ぶことだ。次は「ずれ」は見つけたが、対策が甘くて失敗事例を学んで欲しい
例えば、逆流というずれに対して、安易に「逆止弁」を設置する対策ですます事例だ
失敗しているのは、逆止弁が作動しなくて結果として事故になってしまった事例だ
設備をつけたらそれで安全だと思い込むところに事故の芽がある。点検周期などの運用管理迄深掘りして対策をとる必要がある
逆流が起きて短時間で対応が必要なら、緊急遮断弁の設置もしなければ事故は防げ無い
一つだけの対策は必ず破られる。2つ以上の対策を考えないと事故の未然防止は難しい
HAZOPの講演を始めたのはこんな理由だ
多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている
なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ
つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが問題点だ
その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えている
肝心のHAZOPで見落とすような危険源を上手に教えていないからだ
また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある
HAZOPを使ったり、HAZOP的な思考をすることは大変いいことだと思う
しかし、HAZOPの「失敗事例」を体系的に学ばなければ、企業としての実力はついていかない
つまり、誰でも気づくようなずれは、教えなくても皆が考えつく
皆が考えつかなかったような「ずれ」で起きた事故事例も知識として持っていないと、HAZOPで深掘りできない
私の知っている6500件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例を紹介して行く。 12月の23日に開催する
興味のある方は、一度聞いてみると良い

 

2024年11月15日

製油所の大規模火災に思う  事故の本質は何か

2017年1月22日に起きた和歌山の製油所で大規模火災が起きた事故を知っているだろうか
https://tank-accident.blogspot.com/2017/07/blog-post.html
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/2017/20170614_01_1150234.html
製油所が数十時間に及ぶ大火災となった事故だ。住民も避難させられた大きな事故だ。
きっかけは配管が腐食して穴が開き、ガスが漏れ火災になったことだ。このガス漏れが起きたときは、地上高い所にある配管で大きな炎ではなかった
すぐに緊急停止システムは作動させたが、原料ポンプは自動的に停まる設計仕様にはなっていなかった
緊急停止はしたものの、原料ポンプが停まらなかったことで原料が流れ続け長時間最初にガスが漏れた配管開口部から大量の液が流れ続けた
原料ポンプをすぐに停められればこれほどの大事故にはならなかったはずだ
何が問題だったかを解き明かすと、緊急停止インターロック機能に問題があった
緊急停止インターロックに、原料ポンプの停止を組み込んではいなかったからだ
次の問題点は。原料ポンプは遠隔で停止出来る方式にはなっていなかったことだ
ポンプは現場で起動停止する方式で、計器室からの遠隔停止操作はできない方式だったというのだ
いわゆる現場操作型のポンプだ。火災発生時現場でなんとか停めようと試みたものの、炎でポンプの周りに近づけず現場で停止出来なかったという。
電気室に近づくことは考えたものの、電気室にも火が迫っていて結局電気室でポンプの電源SWを切れなかったという。
ポンプさえ停められれば、流れ出る油を停められ火炎は一気に抑えることが出来たと思われる。
この事故の教訓は何かと考えてみると、遠隔操作で原料ポンプを止められなかったことだ。
ポンプが停まらないから、配管に開いた穴からいつまでも可燃物が吹きだし長時間火災となったことだ。
火災が起きるととにかく現場に近づけない。電気室も火が迫ってしまえばこのような事態が起こる。
自分のプラントのどこかの配管が破れたら、現場に行かなくても安全に流出を早期に停められるような装置になっているか検証してみて欲しい
人が少なくなっている昨今は、いかに緊急時の自動化停止化や遠隔操作化を進めていくかだ
緊急遮断弁の増設も考える必要がある。漏洩範囲を極小化することによるよる効果も大きい
自分たちの設備が、省人化に対応した設備になっているか一度検証して欲しい。時代の変化に対応した設備管理が求められている

 

2024年11月10日

摩擦熱で起こる事故-ベルトコンベアー火災

熱はエネルギーだ。火災や爆発にはこの熱エネルギーが必要だ
熱はエネルギーだから、着火源になる
着火源について、現場で使われる火気や反応熱などの事故事例は多く良く知られている。
しかし、案外見落とされているのが「摩擦熱」だ。
摩擦が起これば熱が発生する。当然、発火点以上になれば、物質は発火する。火災になるか爆発になってしまうかだ。
ベルトコンベアーなどの火災はこの摩擦熱が原因であることが多い。
先ほどネットを見ていたらこんな事故を見つけた
https://www.chunichi.co.jp/article/809046
ゴムという可燃物が存在するから着火する。
過去にも多くのベルトコンベアー火災は起きている
https://ecoeng.exblog.jp/16955693/ 
ロータリーバルブも摩擦熱に注意する必要がある。
内部に歯車があるからだ。歯車部の摩擦で、摩擦熱により着火爆発が起きている。
温度に敏感な過酸化物をロータリーバルブで輸送していて起こした事故もある。
排気ダクトなどの火災は摩擦熱が原因で起こる事例も多い。
ダクト内の換気ファンの羽根がダクトと接触して摩擦熱で着火火災になる事例だ。
工場だけでは無く研究所でも起こる。ダクトの換気ファンなどはめったに点検しないから、このような事故が起こる。 
ポンプの軸受けも注意が必要だ。ベアリングが錆びて摩擦熱を発生して着火。
グランドから漏れた液が、摩擦熱で着火という事故事例もある。
気体がすきまから噴き出すときにやはり摩擦熱が発生する。流動による摩擦だ。こんな文献もあるので参考にして欲しhttps://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/dannetu.pdf
摩擦熱にも注意を払って欲しい。

 

2024年11月05日

スチームハンマー 水撃 油激現象で起こる事故

スチームハンマーという言葉を聞いたことがあるだろうか。蒸気ハンマーとも言う 水撃と呼ぶこともある
蒸気を流し始めたときに起こる,激しい衝撃音を伴う現象だ。言葉で説明してもなかなか難しいので、ここにビデオがあるのでみて欲しい
https://www.tlv.com/ja-jp/steam-info/steam-theory/steam-trouble/0902water-hammer1
工場勤務をしていた時に、スチームハンマーで配管エクスパンションや柱のはりが曲がった事故を経験したことがある
圧力は1Mpaで,配管口径が16Bもある大口径配管だ
1989年10月26日の朝の出来事だ。昔は寒かったので最低気温は10度台だろう
蒸気配管を一度停め,その後復旧したとき,スチームトラップを活かすのを忘れていたのが原因だ
配管内に溜まった凝縮液が、排出されずスチームハンマーを起こした事故だ
もう一つ激しい衝撃が起こる現象で「油撃」という現象がある。油を流している配管の流れを急に停めたときに起こる現象だ
ボール弁などの様な急に閉めることのできる弁で,弁を急に閉めるとガンガンという激しい衝撃が起こる
流れているときの運動エネルギーを急に,停めることで起こる現象だ.緊急停止弁などを作動させたときにも起こる
大口径になればなるほど運動エネルギは大きくなるので、この油撃は起こりやすい
この資料の6ページ目に事故事例の記載がある。個々の表現では水撃という言葉が使われている
https://www.piif-osaka-safety.jp/Content/NewsPaper/%E5%B9%B3%E6%88%90/%E5%B9%B3%E6%88%9012%E5%B9%B44%E6%9C%88-%E5%B9%B3%E6%88%9013%E5%B9%B43%E6%9C%88/557%E5%8F%B7.pdf
こんな事故事例もある
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-597.pdf
水撃、ウオーターハンマー、油撃、蒸気ハンマー、スチームハンマーなど色々な言葉が混在して使われているが
蒸気や液体を流している配管で起こる衝撃を伴う現象だ
事故事例がほとんど公開されていないが、異常現象として知っておいて欲しい
https://pedia.e-houan.co.jp/cases/666/
https://www.apiste.co.jp/contents/pcu/chiller_guide/article/10/

 

2024年10月30日

4M解析の難しさ

事故や災害の解析にも4M解析という手法が使われている
化学工場での爆発火災や労働災害の4Mでは、man、machine、method、managementが使われる
https://f-suiso.jp/site1/wp-content/uploads/2012/10/5328380192ec865ddf5d1420502efbfa.pdf
人(Man)という切り口で事故の要因を解析する.次に、設備(machine)という切り口で解析だ
次は情報・手段(method)という切り口で解析する.最後は管理(management)という切り口だ
4つの切り口があることはわかったが、では事故や災害を解析するときの具体的なキーワードは何かというとそう簡単ではない
人という切り口で問題を解析するときに、どんなキーワードで解析するかきちんと知っていないと時間ばかりかかる
設備もしかりだ。何が悪かったのかだ
情報・手段(method)というところも難しい。人と人とが存在すれば必ず情報という問題が生じる
伝えなかったのか、伝わらなかったのか、伝える仕組みがなかったのかだ
手段というのもなかなか気づかないキーワードだ。作業手順書がなかったのか、手順書はあったが曖昧だったのかなど切り口は様々だ
最後の管理というのは、切り口のキーワードを常に頭に描いていないと4M解析は難しい
私が使っているのは、まずは設計管理の問題点を解析する。設計で失敗はなかったのかだ
次は、安全性評価だ。評価すらしていなかったのか、評価したがすり抜けたのかなどだ。評価システムそのものがない事例は、そこが問題点だ
運転操作や作業管理も重要な解析だ 作業手順書があるのかが最初の解析だ。無ければ,人によりバラツキが出る
保全管理も重要な項目だ。設備は設置したら終わりではない。維持管理が大切だ。それを怠れば事故は起きる
設備は定期点検や改造工事などをする。 点検・工事管理での問題点も拾い出すことだ
教育管理という大事な項目もある。人の切り口で解析してもいいが、管理という切り口で解析してみるのも大切だ
変更管理も重要なキーワードだ
抜けなく体系的に問題点を切り出すのは難しい
ことこつと過去の4M解析結果を解析して、キーワードを知識化して欲しい。キーワードの抽出を図り4M解析の生産性を向上させて欲しい
https://shop.jisha.or.jp/products/25283

 

2024年10月25日

計装設備が引き起こす事故

会社に入った時最初に配属されたのは「計装」という部署だ。
計装という業務は化学工場にある製造部門と直結する。
温度や圧力など化学プラントの重要なパラメーターを管理するセンサーや制御を取り扱う部門だ。
今から40年くらい前のことだ。入社当時はDCSなどは無くアナログ計器だった。空気式と電気式が混在していた。
頻繁に計器も壊れるので、構造原理も自然と身に付いた。製造プラントにも出入りするので、化学プロセスに関する知識も自然と身に付いた。
おかげで石油化学工場にあるあらゆる製造部門を知ることもできた。用役プラントや出荷設備なども担当させてもらった。
このことが、現在安全情報を発信する時に大いに役立っている。
最近は計装設備も壊れることが無くなり若い計装エンジニアーがトラブルを体験できないという。
プラントも建設する機会は無いからなおさらだ。
今から10年くらい前、雑誌「計装」という月刊誌で計装設備のトラブルをシリーズ物で1年間執筆したことがある
https://www.ice-keiso.co.jp/instrumentation.html
http://ice-keiso.co.jp/sumaho/file/ha/sumaho_ha_portal.html
http://ice-keiso.co.jp/sumaho/file/ha/2201_handa_re01.html
http://ice-keiso.co.jp/sumaho/file/ha/2201_handa_re02.html
http://ice-keiso.co.jp/sumaho/file/ha/2202_handa_re03.html
流量計が原因のトラブル事例に始まり、液面計、圧力計、温度計、分析計、調節弁と計装設備が関わるトラブル事例を紹介してきた。
緊急遮断弁などがうまく作動しなくて起きた事故事例も紹介したことがある。
http://ice-keiso.co.jp/sumaho/file/ha/2206_handa_re12.html
遮断弁がいざという時作動しなければ、化学工場なでは大変な事故になることがあると紹介した。
過去も現在も化学プラントの事故事例を調べていくと計装計器が引き金になっているものも多い。
たかが計装設備と思わないで欲しい。計装設備が引き金となって事故になるものも多い。
計装設備に関わる事故事例も学んで欲しい。

 

2024年10月20日

企業の実力-事故災害防止の技術力-外部監査

多くの企業と接することがあるが、企業の実力はピンからキリまである
大企業だから、優れているわけでもない.中小企業でも大企業並みの実力を備えている企業もある
コンサルタントや企業監査などを数多く経験してきているからそれがわかる
CSR報告書などを企業が公表しているが、文字だけでその企業の実力は見ることはできない。
実際の監査に入り質疑応答して企業の本質がはじめてわかる
ISOの認証を受けているからと言って、優れた企業であるとは断定できない。認証は取れても、企業の実力はピンからキリまである
今から40年前の事故ではあるが、大手石油化学企業でエチレンプラントで爆発事故が起きた
倉敷のコンビナートにある企業だ。原因を調べてみると、縁切りに原因があった。縁切りとは、危険な物を確実に遮断することをいう
化学プラントには爆発性の化学物質が存在するから、何か工事をするときには危険な物質が工事箇所に流れ込まないように縁切りをする
いまでは、縁切りには確実な方法が用いられるが当時は、まだまだいい加減な方法が使われていた
火を使う工事をするなら、化学工場では可燃性ガスが侵入しないように、弁を2重に閉めて縁切りしたり、仕切り板という金属の板を挿入する
火を使う現場に、可燃性ガスが万が一でも漏れこまないようにするためだ
ところが、今から40年前、事故を起こした大手企業では、ガムテープでフランジからガスが漏れないような安易な縁切り操作を行っていた
ガムテープでは少し圧力が上がれば、テープがはがれ危険なガスが漏れ混む可能性があるのに安易にそのような対応をしていた
案の定、結果としてガスが漏れ工事関係者に死傷者が出ることになった
他の企業では、すでに仕切り板を使うなど本質的に安全対策が行われていたのに、この大手企業はそのレベルまで達していなかった
1982年4月12日の事故だ このURLから詳細はみて欲しい 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/21/5/21_305/_pdf/-char/ja
事故が起きる前の、過去45年間このガムテープで縁切りして事故は起きなかったとの企業コメントがあるが、あまりにもお粗末だ
ガムテープと接着力は、わずかな圧力上昇で接着面は容易にはがれると想定すべきだ
今まで安全だったは、将来の事故を防ぐことを約束するものではない
企業は常の他人の目から見て安全かを検証して欲しい。井の中の蛙大海を知らずでは済まされない
常に外部監査を受け入れる仕組みを取り入れて欲しい

 

 

2024年10月17日

電気火災の原因や重大事故

企業は製造設備そのものには、リスクアセスメントを実施するが付帯設備などには関心が薄い。倉庫がその一例だ。
電気室は、工場のエネルギー源である重要設備だが、その管理は電気を取り扱う専門家に任されている
電気の専門家以外の人間のチェックの目が入りにくい。怖いのは、電気火災だ。
電気火災の原因は、短絡だ。早い話がショートして火花が出るからそれが着火源になる。近くに燃えるものがあれば火が付いてしまう。
JRの変電所で起きた短絡事故を紹介しておく。事故の3日前の地震が影響しているという。短絡で火が出たと言う。
本来なら安全装置が作動して電気は停まるはずが停まらなかったという
https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220412_ho01.pdf
電線類はプラスチックで出来ているものもあるから火が付く。接触不良が原因という電線が燃える電気火災もある。
電線などは、ネジ止めしているものもあるのでネジが長期間にわたって増し締めをしていなければ緩んでくる。
接触不良が起こると、発熱して周りの燃える物に着火する。
電気設備の経年劣化が原因となる電気火災も多い。時間が経てば、電気設備も劣化する。
20年から30年経過した設備では、絶縁物の劣化でショートして火が付くケースが多い。
最近は、企業でも電気設備の劣化が進み老朽劣化による発火事故も多い。
電気機器メーカーの設計上の配慮が不足していた事故もある。2017年1月5日に、大分県の製鉄所での電気火災事故だ。
電気盤内にアクリル製の感電防止板があったことからそれが燃えたのがきっかけだ。
電気盤内にあるリレーが異常作動を繰り返したことも原因だ。
リレーを制御する装置が故障して何度もリレーの接点が作動したことにより放電火花が繰り返し発生したという。
初期消火がうまく出来ず次から次へと隣の電気盤へ延焼して、さらに周りの電線にも火が付き電気室全体が火災となった事故だ。
損害は300億円と報告されている。製鉄所は7ヶ月間運転できなかったという大きな事故だ。
事故の報告書が企業のホームページから出ているので、見て見ると良い
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
報告書にはアクリル板に火が付いたとある。アクリル板は電気の業界で、感電防止によく使われているが一般のアクリルは難燃性ではない
アクリルは一般的に可燃性だ。難燃性を高めるなら、塩ビを使う必要がある
電気室火災は、初期消火に失敗すれば消すのは難しい。水をかけられないからだ。
電気室のリスクアセスも電気の専門家だけに任せず企業全体で取り組んで欲しい。
電気設備は今使えているから、設備更新は必要ないと考える企業経営者が多いが、30年以上使えば事故の確率は非常に高くなる。
老朽化対策は長期計画でしっかりやっておかないと後で高いつけを払うことになる。

 

2024年10月10日

小分けという作業を甘く見るな-

人は「小」という字がつくとたいしたことはないとか、それほど危険性がないと思ってしまう傾向がある。
小分け作業という作業がある。小さな分量に分けるという作業である。多くの職場で行われる作業だ
しかし、小分け作業でもリスクはある。化学物質を小分けするときは、大きな容器の蓋を開けて物質を取りだし小さな容器につめる作業が生じる。
この時、一時的ではあるにせよ化学物質を外に出す。つまり、空気と触れる状態が生じる。
化学物質は一般的に容器に閉じ込めておけば事故の可能性は少ない。しかし、外に取り出すとどうしても空気と触れることになる
そこに着火源があれば、着火したり爆発する可能性がある。
過去にも、小分け作業で多くに事故が起きている。小分け作業を甘く見ないことだ。参考までに、過去の事例を以下のURLで紹介する。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200081.html
この事故は、トルエンを含む液を小分け中に起きた爆発死亡事故だ
移液ポンプ自体は、防爆だった。ポンプのアースは取っていたが、肝心の充填容器は、アースを取っていなかった
容器に液を流し込むときには流動帯電という静電気が発生する。
アースを取っていなかった充填容器で静電気が徐々にたまり、アースを取っていた電位の低いポンプ側へ放電したのだろう
小分け場所では十分な換気も行われておらず、爆発混合気ができていた事例だ
有機溶剤などは、導電性が無いので静電気が発生する上、揮発し易く爆発混合気ができやすい
次の事例は、アクリル酸という重合反応する物質の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000126.html
アクリル酸は、冬場は凝固してしまう。ドラム缶の中に固まったものを使用する毎に電気ヒーターで暖め溶かして取り出していた
アクリル酸は、反応性物質なので反応を防止する為、反応禁止剤がドラム缶内のアクリル酸には添加されていた
ところが何回かに分けて小分けする形で液を取り出したことにより、小分けする毎に、重合禁止剤の濃度が薄まり効果が無くなってしまった
結果として、反応を抑える効果がなくなり異常反応した事故だ。
反応禁止剤などが添加されているものなどでは、小分けを繰り返すことで反応防止剤が効かなくなることもおこるのだ
厚生労働省の職場の安全サイトというところにも参考になる情報があるhttps://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/taisaku/LiquidTransfer201903.pdf
小分けで起こる事故事例も知っておいて欲しい

 

2024年10月06日

ガス漏洩事故に思う 吹き流し

仕事柄多くの化学工場を訪問する
必ずガスが漏れたときの対応を質問する
企業によっては、風向きを考慮せず一律避難場所を決めているケースも多い
風向きを考慮していないのだ
有毒ガスが漏れれば、避難した場所でまともにガスを吸うことになる
ガス漏洩時の安全対策を評価する指標の一つとして工場にどれだけ吹き流しのような風向きがわかるものがあるかだ
一つあればいいわけではない
大きな工場であれば、目立つところに設置して欲しい
ガス漏れ事故は沢山起こっているが報道されることは少ない
https://nsc-net.co.jp/wp-content/uploads/20210521_02news.pdf
http://tank-accident.blogspot.com/2020/07/12.html
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/jx/2014/pdf_export/20140630_01_0970780.pdf
過去の事故事例の中でガスが漏れて、風下に逃げて被害を大きくした事例は沢山ある
ガスの漏洩を考慮して、工場には吹き流しを設置して欲しい

 

2024年10月02日

フレコンバックで起こる爆発火災事故事例

フレコンバッグを使って原料などを投入したとき、静電気で着火や爆発事故が起こることがある
可燃性原料であればその静電気で着火する
フレコンはプラスチック製だから軽くて柔軟性も有り便利という利点もある
値段も安いので使い捨てもできる
かなりの頻度で起こっているフレコン事故だが、フレコンを使っている企業の従業員でも事故事例を知らないケースが多い
静電気の事故事例と静電気発生実験の文献がある
こんな資料が公開されているので見て欲しい
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2018/pdf_120/siryou_2.pdf
静電気発生防止用のバックを使えば、かなり防げる事故ではあるがコスト面から帯電しやすいフレコンバックが使われてしまう
静電気防止用フレコンとは、導電性を持たせたものだ
導電性があるため、静電気を逃がせるのだ
メーカーの資料があるので、見て欲しい
https://www.matai.co.jp/product/container/container5
粉体投入時などでの静電気放電は、フレコンバックだけではなく、紙袋でも起こる。
内袋と呼ばれる、ビニールなどの内側に入れたプラスチック製の袋が静電気発生源となることがある。
紙袋の内側に、プラスチックの袋がついているような袋はやはり静電気放電が起こる。注意が必要だ
プラスチックを使った袋なら静電気発生のリスクがあると考えて欲しい
このフレコンバッグの静電気発生事例とそのメカニズムを紹介した良い文献があるので紹介しておく。
下記のURLを見て欲しい。https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/7/2/7_JOSH-2014-0007-SO/_pdf

 

2024年09月26日

地震保険

化学工場で地震が起きれば被害を受ける 火災が起きても被害が出る
だから、多くの企業は火災保険や、地震保険には入っている
2010年代に起こったコンビナートの大きな事故でも、爆発や火災による損害はほぼ保険でカバーできている
https://www.ginsen-gr.co.jp/news_pdf/rsr_m_20131225.pdf
設備などの機械的損失はほぼ百%カバ-されているような気がする
事故を起こしたことによる、間接的な損失はカバーされないが、装置の損害などは確実に保険でカバーできる

火災の頻度、地震の頻度も確率的は少ないが、起これば影響は多い
地震保険についての文献を紹介しておく阪神大震災の時、安全工学会が地震特集をしたときの記事だ。https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/35/1/35_106/_pdf
阪神大震災の時に支払われた保険が760億円という。保険業界は、支払いを円滑に進めるようかなり努力をされたという文章もあった。
化学プラントも保険をかけておくことが必要だ 事故が起こったときには保険金支払いはありがたい。
経費節減で、保険を減らす風潮もあるようだが保険は減らすべきではない。
保険をやめたとたんに事故が起こったという事例も経験したことがある。
長いこと工場でトラブルも無く、ある設備の火災保険をやめてしばらくして事故が起きた
結局保険をかけておけば良かったのにとおもう
事故の確率はゼロではないということを肝に銘じるべきだ
保険というものに安全担当者も関心を持って欲しい
リスクをゼロにすることは無理だ
だらか、リスクを補填すると言うことも常に考えて欲しい

 

2024年09月21日

医薬原料の安全管理 GMP

化学物質を取り扱う工場では爆発や火災に対する備えが必要となる
医薬原料を製造する工場では、爆発火災のみならず医薬特有の配慮も必要となる。
GMP(Good Manufacturing Practice)への対応だ。
https://japia-gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp
https://industrymedicine.com/c7/16.html
製造・品質面でこれをクリヤーしなければならない。設計上も十分な配慮が必要だ。
安全のみならず品質まで含めた総合管理が必要だ。設計段階から深く深く考えておく必要がある。
医薬品は、人々の健康や生命に直接関与している
そのため、医薬品を製造する際は、定められた品質規格に適合することを確認するだけでなく、製造する過程についても適切に管理する必要がある医薬品を製造するための要件をまとめたものがGMP(Good Manufacturing Practice)である
日本語では「医薬品の製造管理及び品質管理の基準」と表現されている
GMPには重要な三原則がある
1. 人為的な誤りを最小限にすること
2. 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること
3. 高い品質を保証するシステムを設計すること
そうは言ってもGMPに強い人を育てるのは大変だ。
以前「GMP人材の技能教育・資格認定法」という書籍(http://www.gijutu.co.jp/doc/b_1830.htm)を発刊する会社から人材育成について執筆依頼を受けたことがある。
私は、その書籍の一部を書かせてもらったが、この書籍はGMPが適用される企業には有効なのだろうと思う。
出版したこの企業は、GMPに関して設計や保全などの書籍も発刊している。興味のある方は参考にして欲しい。
少し古い文献だが、エンジニアリング会社の方が書いた、GMP設計上の配慮についての文献がある。1997年安全工学の中の記事だhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/36/5/36_314/_pdf
世の中にある情報を有効に利用して欲しい

 

2024年09月15日

労働災害はなぜ無くならないのか

世の中で起こる事故や災害には、2種類ある
人が災害に巻き込まれて怪我をするのを労働災害という。人が被害に遭う災害のパターンだ
もう一つは、化学物質による事故や装置や機械が壊れる災害もある。それを事故と呼んでいる。爆発や火災、破裂事故などだ
当然、事故が起こると人が巻き込まれることもある
労働災害は、人が起こす事故だ。いわゆる、ヒューマンエラーと呼んでも良い
なぜ労働災害が起こるのかと言えば、人の弱点から労働災害は起きる。人には、色々な弱いところがあるからだ
例えば、忘れる、思い込む、勘違いなどが事故につながる
人は、できるだけ楽に仕事をしたいと思うから、省略行為も起こる
安全の為に色々なルールが決められているのに、人はちょっとだけなら大丈夫と思い込みルールを無視することもある
人は色々な判断をするときに、過去の情報を利用する
たまたまうまくいった過去の成功体験を信じて、作業をすると思わぬ失敗をする
過去の成功体験で、今回もうまくいくと思い込み失敗をする事例は多いからだ
この過去の成功体験で失敗する労働災害も多い
無知故に起こる労働災害も多い。教育をして色々な過去の災害事例を教えていれば防げる事故は多い
しかし、色々な災害事例があり、効果的に教育が行われていないからだ
災害事例は沢山ある。沢山事例を沢山教えればいいわけではない
沢山教えれば、手間と時間がかかる
労働災害にはパターンがある。パターン毎に、事故を防ぐコツを教育することだ
時間は限られている
災害を起こす本質を知っていくには、常に色々な切り口で物を見ることだ。
多様な見方ができると、事故からの教訓も上手に取り出せるようになる。
事故や労働災害の講義をすることもあるので興味があれば聞いて欲しい
https://www.e-jemai.jp/seminar/_accident_2024.html

 

2024年09月10日

ポンプのキャビテーションで起こる事故

キャビテーションという現象を知っているだろうか。ポンプの中で泡が発生する現象だ
水は地上では、100度で沸騰するが、富士山の山頂では圧力が低くなるため、100度よりも低い80度くらいで沸騰を始める
つまり沸点は、圧力により変化する
ポンプは、液体を吸い込むため一度内部で圧力が下がる構造になっている
圧力が下がると、先ほどの富士山での例のように、液体は大気中での沸点よりもかなり低い温度で気化を初めてしまう
つまり、ポンプ内で圧力が下がることにより、沸点が外気温に近いような流体の場合液が気化してしまう現象が起こる
つまりポンプ内で泡が発生してしまうのだ。泡が発生して、ポンプの出口側へ移動すると今度は圧力は上がるので泡は消える
この泡が消えるときに、泡で激しい振動が起こる
この振動が事故につながる。ポンプ廻りのフランジのボルトなどがゆるみ液が漏れ出すことがあるからだ
更に怖いのは、ポンプでキャビテーションが起こると液をうまく送り出せなくなる。吐出圧が維持できないと、液が逆流を始めることがある
ポンプで逆流が起こってしまうと阻止することは簡単にできない。逆流防止弁があるから大丈夫かというと、いざというとき作動しない事例は多い
逆流防止弁は定期的に点検していないと、錆び付いたり異物が付着して動かないことがあるからだ
公開された記録はないが、1969/10/13に大阪の製油所でポンプのキャビテーションが原因で起き,3人が死亡する事故がある
その後もキャビテーションで事故が起こっている
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00128.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00042.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000158.html
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00146.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200084.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-211.pdf
,https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2020-416.pdf
若い人達に常に語りかけて欲しい。キャビテンションを甘く見るなと

 

2024年09月06日

数十年大きな事故が無いと人は安全と思い込み事故を起こす

企業が公開している事故情報は時間が経てば消去される。製油所の統廃合で、和歌山にあった製油所は23年10月に運転を停止している
この製油所で,7年前に大きな火災事故があった。事故報告書も発行されている。この中には貴重な教訓が数多く書かれている
まだ情報は公開されているので,早めに一読して欲しい
2017年1月に和歌山の製油所で2件の火災事故が起きている。この事故では、事故報告書の最終版が公開されている。
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/2017/20170614_01_1150234.html
この事故は、最初がタンク小火災、数日して製油所が数十時間に及ぶ大火災となった事故だ。
住民も避難させられた大きな事故だ。事故報告書を見てやっぱりと思うことがある。
この工場は約40年間大きな事故もなくと書かれている。大きな事故がないと、自分の会社は安全と思い込んだのだろう。
長いこと事故がないと、みんな安全だと思い込んでしまい、目の前にある危険なことが見えなくなり、危険の感受性が落ちていく。
事故がないことはありがたいことなのだが、無事故の中で危険に対する意識レベルを維持するのはなかなか難しい。
最初のタンク小火災は、硫化鉄が発火した事故だ。製油所では、だれでも硫化鉄の発火の危険性を知識としては持っている
しかし実際に目の前で発火を見た人は、だんだん少なくなってきており危険の感受性は落ちていたことが事故の原因だ
報告書を読むと、作業マニュアルはあっても、状況に応じて対応する能力が落ちていたのだろうと感じる。
今回は、いつもよりタンク内に硫化鉄を含む残渣が多かったと書いてあった。ならば、発火しないように多めの水をかけておくことが望まれるのにうまく対応できていなかったようだ。社員も協力会社も、対応能力は落ちていたのかなとおもう文章が見受けられる。
それから、数日後の大火災は、緊急停止システムはあったが、原料ポンプは自動的に停まるようにはなっていなかったと書いてある。
つまり、現場でポンプをなんとか停めようと試みたものの火炎などで現場に近づけず停められなかったという。
命がけの対応を運転員はしていたのだ。ポンプさえ停められれば、流れ出る油を停められ火炎は一気に抑えることが出来たと思われる。
トラブルが起きたときの漏洩防止の基本は、圧力を下げ、温度を下げ、液レベルを下げ流出を停めることだ。
今回の事例では、遠隔操作で原料ポンプをすぐに止められなかったことが長時間の火災につながったとも報告書から読み取れる。
自分のプラントのどこかの配管が破れたら、現場に行かなくても安全に流出を停められるような装置になっているか検証してみて欲しい。
HAZOPでも腐食などにより配管からの大量漏洩を想定したケーススタデイを試みて欲しい

 

2024年08月30日

事故の本質

事故事例などの講義をすると、受講者からのアンケートがある。これはすごく大切な物だと感じている。
一般的なコメントもあるが、読んでいて痛いところを突かれているなと思うアンケート文章もある。
事故事例を説明してくれるのはいいが「事故の本質」は何かと問われることだ。
一番つらい言葉である。
世の中に公開される事故情報は,ほんのわずかである
公開された情報とて、事故の背景などが詳細に書かれているものは少ない
事故の原因も、人、設備、物質危険性など要因を切り分けて書かれている物も少ない
特に,事故の本質を知る為には人がどう考え行動していたかという情報が重要だ
人と言っても,事故を起こした個人だけの情報があればいいわけではない
人は組織で行動しているのだから、組織全体に関わる人の情報が必要となる
経営陣は安全にどう関与していたのかも重要だ
安全には人、物、金がかかる。経営が投資してくれなければ安全は確保できないからだ
経営資源を統括管理しているのは、経営陣だから経営陣の考え方は事故の本質に関与するものがある
現場の管理職の人に関する情報も,事故の本質を解析するには需要だ
組織で生きる限り、上司と部下の関係は重要だ
事故情報は事故の事実しか書かれていない物も多い。ニュース記事は事実しか伝えない。原因が書かれていることはまれだ
原因は書かれていても,対策まで書いてある事故資料は少ない
世の中に出回る事故情報は,事故の「事実」が主体で原因や対策に関する情報はほとんど出てこない
大きな事故で,きちんとした事故報告書が出てくることがあるがそれは,事故の全体から見ればまれである
結局、事故情報や、企業が発信する事故報告書には事故の本質と言われる物は書かれてはいない。
事故の本質などの情報はほとんど無いというのが現実だ。
事故の本質がわからなければ、抜本的な手の打ちようは無い。だから事故は繰り返す
事故を伝えていきたいと思う人にとって一番の悩みは、事故の事実に関する情報はなんとか見いだすことはできるのだが
事故の本質に関係する情報にたどりつくことが難しいことだ
そこに事故を教える者にとって大きな悩みがある。

2024年08月25日

事故データーベースの紹介

過去の事故事例を学ぶことは重要だ。今まで、こんな事故事例データーベースを見て事故の教訓を集めてきた。紹介しておく
①高圧ガス保安協会事故事例データーベース https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/incident_db.html
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/recent_hpg_incident.html
②産総研が提供する事故データーベース RISCAD https://riss.aist.go.jp/sanpo/riscad/ (現在リニューアル中 閲覧停止中)
③Deyamaの提供する事故事例データーベース http://deyama.a.la9.jp/ver_1/saigai.html
④失敗知識データーベ-ス http://www.shippai.org/fkd/index.php
⑤労働安全衛生総合研究所事故データーベースだ。数千件の事故情報がある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
いい内容が書かれてはいるのだが惜しいことに何月何日という事故発生日の情報が不足しているのが欠点だ 正確な日付がわからないのが問題点だ
⑥神奈川県では高圧ガスに関係する事故情報を下記のURLで公開している
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14873.html
このホームページの中で更に詳細を見ていくと、事故の詳細等という項目がある
個別の事故に関する物も公開されている 高圧ガス事故事例情報シートというのがある
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14877.html
⑦神奈川県環境科学センター事故データーベース https://www.pref.kanagawa.jp/documents/2302/kagakubushitujiko.pdf
⑧早稲田大学と共同で特定非営利活動法人災害情報センターが運営しているデータベースで略称はADICというものがある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php
⑨富山県高圧ガス安全協会 http://www6.nsk.ne.jp/toyama-kak/1hoanjoho/index.html
⑩宮城県過去の主な災害事例 https://www.pref.miyagi.jp/documents/26200/shiryouhen11.pdf
事故というのは、色々な視点で見ていかないと事故の教訓が得られない データーベース提供者には感謝したい
これらの情報が無ければ、過去の事例を学ぶのは難しいからだ。これからも、提供をお願いしたい

 

2024年08月19日

配管への水注入で起こる事故

配管への水注入という言葉を知っているだろうか
製油所などで行われている方法だ
石油製品をつくるとき、製造過程で色々な腐食性物質が存在する
この腐食性物質を薄めるため、配管内に水を注入することがある
水を注入するのはそれほど危険だと思わないのかも知れないが、過去に色々なトラブルを起こしている
水の入れ方が悪く、配管のエロージョンやコロージョン事故が起きるからだ
事故の記録として残っているのは、1960年代後半以降だ。現在に至るまで石油工場で国内や海外で事故が起きている
https://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012001.html
https://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012003.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000115.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000003.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012006.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200013.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-082.pdf
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-123.pdf
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-150.pdf
https://www.icheme.org/media/9857/xix-paper-70.pdf
2018/4/2愛媛県にある製油所で水注入箇所で漏洩事故が起きている。配管設置後8年目にして腐食で穴が開いた事例だ
原因は、点検対象から漏れていて、検査が行われていなかったことだ。
更に,他の水注入箇所は、耐食性のあるステンレスクラッド鋼への対策をしていたのに,事故箇所は鉄の配管だった
点検対象から外れていて事故になる事例も多い。点検対象から漏れていないか再確認も大切だ
水注入箇所配管への水注入を甘く見ないで欲しい
約半世紀同じような事故が繰り返し起きている
たかが「水」と思うから事故が起こるのだ
「水」という言葉にもリスクがあると常に思って欲しい

 

2024年08月16日

HAZOPでは循環プロセスにも着目して欲しい

今から10年前に起こった事故だ。千葉県の市原にあるゴム製造工場で起こった 2014/8/12の事故だ
HAZOP 循環系ポンプの空引きが引き起こした爆発事故だ
この事故は、事故を経験した当事者からの話を聞いたので今でも詳細を覚えている
スタート時ポンプから液を送っていたときに、突然ポンプが空引きを起こしたのがきっかけの事故だ
事故の概要はこうだ。スタート時、タンクから液をポンプで送り出していた。液面低下の警報は鳴ったが気づかなかった
当然、タンク内の液が無くなり、あっというまにポンプは空引きを起こした
すぐに,ポンプは停めたものの,循環プロセスだったため、圧力のあるドラムから大気圧タンクに液が逆流した
圧力差があれば,当然逆流が起こるのに逆流防止弁は設置していなかった
この大気圧のタンクは通常は,水が成分のタンクなので,危険物エリアではなく一般建屋内に設置されていた
非危険物という考え方だから,建屋内は防爆の電気機器はつけられていなかった
タンクは、開放型で、しばらくして液が溢れ出て室内に漏れ出した
逆流により,可燃性溶剤も混入していた。当然夏場で、溶剤も気化して、室内に可燃性蒸気が拡散していた
しばらくして何らかの原因で着火爆発が起こった。この事故をHAZOP的に解析してみるとこんなことがわかる
①HAZOPは、危険物エリアしか実施していなかった。事故部分は,非危険物工程だった。
事故後、ノンコードの工程もHAZOPを実施することにしたという
②スタート時のように、忙しくてうるさいときには警報を見逃すリスクに対して、対策を考えていなかった
③ポンプの空引きを起こしたタンクは、液面調節計は設置されていた。ところが、スタート時だったため,マニュアル状態だった
マニュアルにして運転しているという,情報が運転チーム内で共有されていなかった。
運転ミーテングは全員集合方式ではなく管理者だけで実施していたからだ。事故後全員方式に改められた
タンクに液面低下警報があるから大丈夫だと思い込まないで欲しい。聞き漏らすこともあるからだ
ポンプの空引きが重大な事故を起こすことがある。逆流対策もしっかり考えて欲しい
事故の原因と対策が詳細に書かれた報告書があるので参考にして欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-211.pdf
HAZOPとして、この事故の教訓は「循環系のタンク」ということもポイントだ
循環系は、どこかバルブを閉めたり、ポンプが停まればバランスがくずれ関係するタンクが溢れるリスクが高いと言うことだ
開放形の部分があれば必ず漏れ出すと思って欲しい
HAZOPでは循環プロセスにも着目して欲しい

 

2024年08月10日

火災時の耐火被覆効果

耐火被覆という言葉を知っているだろうか
化学工場で火災が起きたときは、可燃物が燃えさかるのは誰でも想像出来る
化学工場では、鉄骨構造物が沢山ある 火であぶられれば、鉄で出来た構造物でも熱で柔らかくなり被害を受ける
つまり、鉄で出来ていた頑丈なものも火であぶられれば強度が無くなるからだ
本当に鉄で出来た柱も、熱で弱くなり曲がり始める 化学工場の、パイプラックと言われる配管ラックはあっという間に火災で影響を受ける
2016年4月22日中国で起きた化学火災の事故の写真でパイプラックの被害写真がある
出典はこの事故情報だ  http://tank-accident.blogspot.com/2016/05/1.html
耐火被覆の無いパイプラックが、あめのように曲がっている
パイプラックの耐火被覆が、無かったことにより被害を最小化できなかったと思われる
このような状況になれば二次災害も起きる
配管のフランジは曲げにより隙間が出来てガス漏れが起こる。そこから2次火災が起こることがある

日本では、ある程度の法規制はされているが、耐火被覆の有用性はそれほど認知されていない
火災で影響を受け易い可燃物を扱う化学工場の屋外の柱は耐火被覆をして欲しい
ある事故報告書によれば耐火被覆の無かった工場での事故被害は数倍とも言われている
アメリカのCSB(Chemical Safty Board)という機関が公開している事故報告書に写真がある
以下の頁を開けて,final reportをダウンロードしてみて欲しい
https://www.csb.gov/valero-mckee-refinery-propane-fire/
耐火被覆をしている柱と、耐火被覆の無い柱の違いがよくわかる写真が30/65頁目にある
鉄でできている構造物は強いと思っているかも知れないが,炎であぶられればあっという間にぐにゃりと曲がる
耐火被覆をしっかり考えて欲しい

 

2024年08月05日

押出機でも爆発事故は起こる

プラスチックの原料ペレット製造や、成形加工では押し出し機という機械が使われる。
プラスチックは、温度を加えると溶けて加工しやすくなることから、溶けたものを押し出して加工することから押し出し機と呼ばれている。
このような機械を扱う工場でも、爆発や火災の危険性は存在する。プラスチックは可燃物だからだ。
原料は、粒状のペレットというプラスチックの米粒のような塊や粉体が使われている。
粒なら問題が無いのだが、切り子や粉体などでは当然加熱すると発生する可燃性ガスにより爆発が起こることがある
押し出し機は、高温で原料プラスチックを溶かすため温度が高いというのが事故の要因になる。
押し出し機を取り扱っている人は、温度が高いことはあまり気にかけないようだが、化学の世界は暖めることは事故の可能性を高めることだと理解しておく必要がある。
1989年10月4日に、死者14名を出す押し出し機の爆発事故がある。
インターネットで探してもさっぱり出てこないが、韓国のLUCKY社で起きた事故だ。押し出し機からこぼれていたABS樹脂が着火爆発した大事故だ。書籍「火災爆発事故事例集」 <安全工学協会編 >(コロナ社)78~81頁 にその記事がある。
当時この情報は、業界内で一斉に流されたものだが30年も経つと忘れ去られるのだろうか。
事故は繰り返すと言うが、まさに貴重な事故の教訓が伝えられないから繰り返し起こるのだろう。
押出機を使った事故で発泡材に着火した事例も多い
樹脂を膨らませて発泡させるとき,ペンタンのような可燃性ガスを使う
そのガスに火がつくのだ。原因は静電気だ。事故の詳細はなかなか世に出てこないがこんな情報がある
資料の7頁から事故について書いてある。参考にして欲しい
https://www.piif-osaka-safety.jp/Content/NewsPaper/%E5%B9%B3%E6%88%90/%E5%B9%B3%E6%88%9006%E5%B9%B44%E6%9C%88-%E5%B9%B3%E6%88%9007%E5%B9%B43%E6%9C%88/485%E5%8F%B7.pdf
押出機で火災や爆発事故が起こることを知っておいて欲しい
押出機に使われるプラスチック樹脂は,高温で可燃性ガスを出すので注意が必要だ
プラスチック樹脂は,炭化すると発火点が下がり火がつきやすくなるということも知っておいて欲しい
発火点というものは物質の状況により絶えず変化するこをを知っておいて欲しい

 

2024年07月30日

事故の背景にある技術技能伝承の問題

技術伝承ほど難しいことは無い。人から人へ技術を伝承していくことはたやすいことでは無い。
会社員が企業で勤める期間は約40年だ。そこで得た知識や経験は次の世代に受け継いでいく必要がある。
会社に入ってくる若い人は約20歳前後で入社する。その人たちに技術を引き渡すわけだが、そんなに悠長に引き継ぐわけではない。
たぶん数年で引き継ぐことが求められる。つまり、40年かかった経験を数年で引き継ぐのだから、かなりの効率が求められる。
つまり、ポイントを絞り込んで伝えなければいけないのだが、人はそう簡単に自分の経験を要約することは出来無い。
あーでもない、こうでもないと後輩に言っている間に、数年が過ぎ去り技術が伝承されないのだ。
技術伝承の中で選別しなければいけないのは、100年後でも伝えなければならないものと今伝えなければいけないものを選別しておくことだ。
100年後に伝えなければいけないものは文字で書き残す必要がある。
文字に表すとものすごく時間がかかり効率は悪いが文字で伝える手法が必要だ。
今すぐに伝えなければいけないのは、言葉で話すのが効率がいい。
写真やイラストを添えると更に効果的だ。技術伝承とは最適な手法を選択して効率良く伝えることだ。
今の社会は,昔のように現場で働いているのは社員だけではない
派遣の人達も職場にはいる。請負という仕事の形態もある.現場を支える人の形態がそもそも変わっている
これらを考えて会社は技術伝承というものを考えなけれればいけないのだが、旧態依然の手法で技術伝承を行っている
これでは,仕事が回るはずがない 職場によっては,社員より派遣の人のが多い職場もある
派遣の人のが社員よりスキルが高くなっているのに旧態依然として社員だけの技術伝承にこだわっている企業がある
誰が技術を持っているのかを見極めて、技術伝承の仕組みを作って欲しい
人に技術有りなのだからだ
川崎消防が出している資料で,危険物事故の背景になる技術伝承に関するとってもいい資料がある
是非見て欲しい資料だ
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10970825/www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000066/66065/kikenbutujikokeikou.pdf

 

2024年07月25日

埋もれている安全やリスクに関するレポートは多い

インターネットは便利な道具だ 特に検索という機能があることは実に便利だ
だからといって目的の情報が,検索結果の一番先頭に来るとは限らない
検索結果の 最後の最後に,自分の欲しい情報がならんでいることもある
安全と言うことに関して,仕事を始めてかれこれ20年以上になる
色々な情報を目にしてきた
要約された素晴らしい文献に行き当たることもある
既に公開をやめてしまって今では見れなくなった情報も沢山ある
URLが変わって見れなくなることもある。企業がホームページを更新して見れなくなることもある
民間企業などが公開していた資料は時間が経つにつれ見れなくなるものも多い
銀行や保険会社は、リスクに関して膨大な情報を持っている
化学プラントの事故、労働災害などの情報を沢山収集している
保険料の算定には必要な情報だからだ
例えば銀泉という会社がある 保険関係の会社だ
ここでは、安全やリスクに関して非常に良いレポートを出している
最近は,新しいレポートを出すのはやめたが,過去の資料はまだ公開している
例えば2010年代の重大事故に関してこんなレポートを出している
https://ginsen-risk.com/narage/newsletter/rsr_m_20131225.pdf
労働災害に関してもこんないいレポートがある
https://www.ginsen-gr.co.jp/news_pdf/rsr_m_20140507.pdf
https://ginsen-risk.com/narage/newsletter/rsr_m_20121217.pdf
気候変動などではこんなレポートもある
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2023/05/GRS-RMR-May2023.pdf
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2022/10/GRS-RMR-October-2022.pdf
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2022/04/GRS-RMR-April-2022.pdf
https://ginsen-risk.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/09/GRS-RMR-september.pdf
以下のURLで他のレポートも見れる 興味があれば見ると良い
https://ginsen-risk.com/?page_id=9

 

2024年07月20日

実ガスで気密テストをしたときのリスクを甘く見るな

定修などで機器の気密テストをすることはあるはずだ。一般的には窒素ガスが使われる
窒素は不活性ガスだから、火災や爆発の恐れがないからだ
とはいえ、必ずしも気密テストでは窒素が使われることはない。空気や実プロセスで使われる、プロセスガスを使って気密テストをすることも多い
過去には高圧の空気や,酸素を使って事故が起きている。酸素は酸化剤だから,設備に残渣などがなこっていると酸素と反応して事故になるのだ
酸素は強力な酸化剤で危険と感じてくれないからだ。
機器の気密テストにプロセスガスを用いるときは、縁切りが重要だ。他の系統で窒素で気密テストをしていると,漏れ混むからだ
こんな事故事例がある。気密テストに使った可燃性ガスがプラントの窒素のラインに入り込んでしまった
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000085.html
可燃性ガスが漏れ混んだことにより、窒素は、必ずしも安全な100%窒素ではなくなった
事故が起きたのは、この窒素を使って窒素パージをしているときに事故が起きた
熱交換器のボルトを締めるため、インパクトレンチという工具を使ってボルトを締めていた
その時工具から、金属火花が発生していた
漏れ出ていた、可燃性ガスを含む窒素にこの金属火花で火が付いたのだ
誰もが窒素パージをしている機器なのだから火が付くとはおもわなかった
ところが、窒素に可燃性のプロセスガスが漏れ混んでいたから事故が起きたのだ
だれでも、窒素の配管があると100%の窒素だと思い込む
ところが、化学工場などでは配管が色々な所と接続されていて、思わぬところから可燃性ガスが漏れ混もことがある
この漏れ込みが事故を引き起こしている
短い定修期間で効率良く作業を済ませようとすると、窒素配管がプロセス機器へ予め接続されていてバルブ一つで縁切りされているからだ
バルブ一つで縁切りと言うことは、バルブが漏れればプロセス側から窒素配管に逆流して漏れるリスクはある
定修中は,窒素配管系への実ガスを用いた気密テストのガスが漏れ込むリスクはしっかり検証して欲しい
窒素の配管と安易にプロセス機器と常時接続をすることもリスクだ。バルブ一つで縁切りしていて漏れ混んだ事例もある

 

2024年07月15日

活性炭による事故--吸着熱

発熱が事故につながると言うことはご存じだろう。とはいえ発熱には色々なパターンがある。
反応熱というと誰でも事故に関係する熱だと理解するが、反応熱以外の発熱となると案外理解していないのが現状だ。
吸着熱などという熱も、事故につながるとは考えていない事故事例が多い。
発熱温度が500度近くもなるのだから、誰でも知っていて欲しいのだが現実ほとんど知られていないから繰り返し事故が起こっている。
私も、この吸着熱に関心を持ったのは今から約20年くらい前だ。
下関と言うところにある工場に赴任していたとき,活性炭による吸着工程があるプラントを担当していた。
活性炭には発熱があるとは聞いていたがたいしたことは無いと思っていた。
あるとき活性炭は産地によりその特性が大きく変わると聞かされた。
最初は吸着性能だと思っていたが、良く聞くと発熱温度がかなり変わると言うことがわかった。
さらに聞くととんでもない温度迄上がると言うことがわかったのだ。
一般的に物質の発火点は300度だ。吸着熱はこれ以上になるという。400度~800度位にもなるという
活性炭を使えば発火することもあるのだ。活性炭を通過するガスが、爆発混合気の濃度なら火災では無く爆発にもなる
活性炭は着火源と考えた方がいい
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/08/a0703_01.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200109.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000089.html
活性炭を扱う装置なら、温度計は必ずつけて欲しい。一定温度を超えたら警報が鳴るようにして欲しい
活性炭は新品に交換したときが危ない。活性度が上がり、吸着熱が上昇するからだ
夏場外気温が上がるときも危ない。屋外に置いておいて自然発火した事例も多い
活性炭などの吸着性物質は、脱臭などの工程で多く使われている
活性炭は着火源と思ってしっかり管理して欲しい

 

2024年07月10日

企業の安全監査に思う

私の以前勤めていた石油化学企業では、安全監査制度というのがあった
安全担当の役員が、各工場をまわって安全について監査する制度だ
半年に1回行われていた。当時2つの工場があったので、1年毎にどちらかの工場を監査するという制度だった
監査のキーワードは実に様々だ
プロセス固有の危険性の評価、設計部門の監査、保全部門の監査、研究部門の監査
物流部門の監査、世の中で起きた重大事故への対応状況など時代時代に応じてタイムリーに監査が行われていた
1997年にある企業と合併し、その後この監査制度は無くなった
工場の数が2工場から7工場になったこともあるのだろう 手間もかかるのでやめたのだろう
いい制度ではあったが、工場を計画的に監査するという制度は無くなった
監査をしなくなったこととの因果関係はわからないが、その後事故は起こっている
2012年岩国にある工場で大きな爆発死亡事故が起きた
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2013/pdf/130123_02.pdf
この事故は、酸化反応プラントだ。過酸化物という非常に温度に敏感な物質を扱う。冷却が不十分であれば、反応暴走で爆発する
事故のきっかけは、工場の蒸気が停まったことだ。本来化学工場であればまず重要な用役である蒸気が停まることはない
ところが、長年の省エネで蒸気の発生源が、冗長化されなくなり、単一の蒸気発生源に頼っていた
その装置が停止したことで、工場全体の蒸気が簡単に停まってしまったのだ
用役の信頼性が、時間をかけて落ちていたことが事故の背景にある
もし、安全監査を続けていれば、この工場の用役の信頼性についてはどこかで監査のメスがはいったかも知れない
昨今、外部機関による安全監査に頼ることが増えてきているようだが、企業自らが基幹となる部分には監査をして欲しい
プロセスそのものの危険性などは、なかなか外部機関では深掘りした監査は難しいはずだ
安全監査を外部に丸投げしないで欲しい

 

2024年07月06日

事故の通報遅れに思う

事故が起こったときに通報遅れという問題がある。意図的なものもあろうが、結果としてそうなってしまうという現実がある。
この、通報遅れというのは、その事実があっても「なぜ遅れたのか」は報道もされない。
そこに、この通報遅れが減らない原因もあるのだろう。
行政側も、原因を解析し広報する努力を惜しまないようにして欲しい。数千件の事故事例を見てくるとこんなことも言える。
通報遅れは、ガス漏れが案外多い。その理由は、どこから漏れているのか探し出すのに時間がかかったという理由だ。
臭いや気分が悪くなったものの、どこから漏れているかを探し出すのは難しい。
うかうかしている間に、住民側から消防などに通報が行くパターンだ。結果として通報遅れとして処理される
背景には、会社側の通報手順が明確になっていないことも多い。
大きく漏れた場合は---などと手順書に書いてあるケースだ。大きい小さいは、相対的なものだ。これでは、現場側は判断を誤ることになる。
もう一つのパターンは、通報権限は保安の管理者や工場長などと決めているケースだ。事故を覚知したがんばの担当者には通報権限はない
これでは、現場に管理者や工場長が来ない限り通報はなされないから当然連絡が遅れる。
現場にいる人が判断できる通報システムを作らなければ、この問題は解決しない。
現役時代こんな思いをしたことがある。今から数十年前のことだが、地震が起きたとき化学プラントを安全に停める基準を決めた。
gal数に応じて、プラントを停止する定量的な基準を作成した。その後本当に、地震がやってきた。
基準通りに停めたプラントもあったが、停めずに運転を継続をしたプラントもあった。ルールはあっても、生産を優先する文化があったからだ。
生産優先ではない。安全を優先するする文化を創ろうとその後活動を進めていった
工場長のリーダーシップで、安全に停められるシステムがあるのだから、安全に停めるということを徹底した。
時間はかかったが、東北大震災の時にも、工場を基準通り、安全に停められたのはそういう文化を時間をかけて作り上げてきたからだ。
ガス漏れは、時間の関数で拡散する。遅れれば、広範囲に広がる。早めの広報も必要だ。避難も考える必要がある。
企業の人達だけで対応は難しい。事故は、被害の拡大を防ぐことを最優先とする考え方も必要な時代だ。
たかが通報遅れではと思わないで欲しい。
早めに通報し、行政などの力を併用し事故の拡散を防いで欲しい

 

2024年06月30日

アルカリが引き起こす事故

化学物質の代表的なものとして、酸とアルカリがあることは世の中で良く知られている
酸は金属を溶かすと言われる。だから、金属表面処理などにつかわれる。金属を腐食させたりするからだ
薬品に人が触れると薬傷を起こす
アルカリはと言うと、人を溶かすとも言われる。人の皮膚などは、タンパク質でできているから、それを良く溶かすからだ
いわゆる皮膚のとかす物質だ。目に入れば、眼球を損傷し失明させることもできる怖い化学物質だ
酸もアルカリも労働災害に関わることが多い薬品だ
酸は金属を犯すといったが、アルカリは金属にどんな影響を与えるのだろう
よく知られているのは、アルカリ腐食と言われる現象だ
アルカリによるステンレスの応力腐食割れ事故も多い
アルカリは触媒になることがある。ある特定の化学物質では、激しく反応を起こすことがある
無水マレイン酸の分解爆発の文献がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/2/2/2_106/_pdf/-char/ja
無水マレイン酸という物質ではわずかなアルカリが存在していても異常反応を起こす。混触という見方で見ても良い
過去こんな事故が起きている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200093.html
川崎で死者18名を出す爆発もある。プロピレンオキサイドとアルカリの事故だ
事故が起きた1964年にはプロピレンオキサイドとアルカリとの重合反応が起きることは知られていなかった
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000121.html
2017年1月に和歌山の製油所で起きた配管漏れ火災もアルカリが関与している
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/20170614_01_01_1150234.pdf
このアルカリ腐食のメカニズムはいまだに良く解明されていないという
酸が引き起こす事故も多いが、アルカリが引き起こす事故にも関心を持って欲しい

 

2024年06月24日

要約する技術が求められている-時間は限られているからだ

大学を卒業するときに論文を書く。数枚で終わるような論文を書けばいいかというとそうでは無い
結構長々と文章を書かないといけない。枚数が評価要素になることもあるからだ
当然、起承転結で理路整然と書かなくてはいけない 
ものすごい枚数も学位論文には必要なのかも知れないが企業には入ってからはその価値観は通用しない
今から何十年も前に企業で教えられたのはこうだ
何百億の投資も、数百万円の投資も経営会議にかけるときは金額の大小にかかわらずA4かA3用紙1枚に要約され経営会議で審議される
たった一枚の紙に要約された内容で審議されていく。投資として経営陣に認めてもらえるにはその数千文字に思いを込める必要がある
文章も相手が魅力を感じる表現が不可欠だ
経営が判断するのは,投資のメリットとそこに潜在するリスクの2つだ それを天秤にかけるわけだ
わかり易く端的に書かなければ、論議のテーブルに載ることはない 先送りにされる
会社を去って今でも多くの文章を読むが、何を言いたいのかわからない文章が実に多い
仕事柄事故やトラブルの報告書を読む機会が多い
起こった事実について筆者は、一生懸命書いているのだが、二度と同じ過ちを犯さないかという記述は実にお粗末だ
事故の事実を単に一生懸命書いているだけで、何を学んだか、何を後生に伝えたいかが書かれていない
事故というのは全く同じ事故はほぼ起きないから、事実を書いてもそれが大いに役立つわけではない
事故という失敗から学んだことは何かを、わかり易く書いて欲しいのだ それが他の人にも役に立つからだ
最近思うのは,写真や図面を貼り付けて枚数を単に増やしている見かけ倒しの報告書も多い
文字でうまく表現できないからそうしているのかも知れない
報告書というのは、先頭に必ず件名(タイトル)を書かせて欲しい。次に、報告書の要約を書かせるようにして欲しい
英語ではPREFACEとかSUMMARYという 序文とか要約という意味だ。短い文章でまとめる技術がビジネスでは不可欠だ
時間は限られている 情報はまず要約して前文を書き、詳しく知りたい人は、次の詳細を読む形態を取って欲しい
常に短い語句や文章で表現する技術を磨いて欲しい
要約する技術を磨いて欲しい
日本が世界に勝っていくためには、この要約する技術を身につけて欲しい
大学でも要約する技術などという講座を設けて欲しいと思っている
日本が勝ち抜いて行くにはこの要約する技術が不可欠だ

 

2024年06月20日

HAZOPは深掘りがポイントだ--事故の未然防止には深掘りに失敗した事例を多く学べ

HAZOPに関する講習会を始めてもう7年になる
年に何回かHAZOPに関係する講義をする 個別企業に出向いての講義も有るが、公開版もある
今年は、まず来月7/9に私の講義を予定している
https://www.rdsc.co.jp/seminar/2407127
講義の中でいつも強調しているのは、
HAZOPで深掘りできるように、過去のHAZOP失敗事例を学べだ
まずは「ずれ」の見落とし事例も学ぶことだ。次は「ずれ」は見つけたが、対策が甘くて失敗事例を学んで欲しい
例えば、逆流というずれに対して、安易に「逆止弁」を設置する対策ですます事例だ
失敗しているのは、逆止弁が作動しなくて結果として事故になってしまった事例だ
設備をつけたらそれで安全だと思い込むところに事故の芽がある。点検周期などの運用管理迄深掘りして対策をとる必要がある
逆流が起きて短時間で対応が必要なら、緊急遮断弁の設置もしなければ事故は防げ無い
一つだけの対策は必ず破られる。2つ以上の対策を考えないと事故の未然防止は難しい
HAZOPの講演を始めたのはこんな理由だ
多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている
なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ
つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが問題点だ
その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えている
肝心のHAZOPで見落とすような危険源を上手に教えていないからだ
また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある
HAZOPを使ったり、HAZOP的な思考をすることは大変いいことだと思う
しかし、HAZOPの「失敗事例」を体系的に学ばなければ、企業としての実力はついていかない
つまり、誰でも気づくようなずれは、教えなくても皆が考えつく
皆が考えつかなかったような「ずれ」で起きた事故事例も知識として持っていないと、HAZOPで深掘りできない
私の知っている6000件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例を紹介して行く。 7月9日に開催する
興味のある方は、一度聞いてみると良い

 

2024年06月16日

1年前の化学工場での死亡事故に思う--事故の本質

事故というものは1年も経つと忘れ去られてしまう。
2023年6月新潟県にある化学工場で配管切断工事中に死亡事故が起き 作業員1名が死亡した
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1140/20230614_denka_omi.pdf
事故には予兆があると言われるが、この企業では2023年4月に入って何度も火災事故が起きていた
この爆発死亡事故が起こる前には、消防の立ち入り検査も受けていた
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/457858?display=1
数年前の2020年にも工事で事故を起こしているという ずいぶん前から事故が継続していたようだ
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/762/20200907_denka_omi.pdf
事故から半年後、事故の調査報告書が企業から公表されていた
https://j-times.jp/archives/47833
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1193/20240111_denka_omi_finalreport.pdf
事故の要因を要約するとこうだ。乾燥すると爆発する危険な物質が配管内に残っていた
乾燥すると危険なことはわかっていたので,事前に水で湿らせて洗浄はした
しかし、水があると配管切断時液が噴き出すとリスクもあるので安全の為に窒素で再度パージした
誰でも,窒素でパージすれば安全と思い込む。ところが、この危険な物質は乾燥させると危険な状態になる物質だった
一度水で洗浄したから,湿らせて大丈夫と思い込んでいたようだ。しかし、配管内を窒素でパージしたことにより再び乾燥してしまった
配管を電動のこぎりのような道具で,切り始めたとき当然摩擦熱というのが発生する。熱は100度ぐらいだったようだ
配管内に残っていた危険な物質は。100度ぐらいで発火する物質だった
火がついて配管内を炎が逸走した。配管の一部に、この危険な残渣が残っており炎で爆発的な現象が起こり配管が吹き飛んだ
これにより,近くにいた作業員が死亡したという事故だ
乾燥させると危険な状態になる物質が関係する事故だ。窒素でパージしたことで,乾燥状態になり爆発したのだ
窒素でパージしたから安全と思わないで欲しい。乾燥させると危険な物質も沢山あるからだ
この事故と類似する事故が、2009年にも起きている。物質によっては、乾燥させると爆発性が格段に増すという物質も沢山ある
https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-0612.html
窒素でパージすれば乾燥するというリスクがある。でも、窒素でパージすれば安全と思い込んでいるからこのような事故が起きる
中途半端な安全対策ではいつか事故は起こる
事故の本質は何かをつねに考えて欲しい

 

2024年06月15日

反応暴走と文献紹介

化学の力で世の中に役立つ物が多く作られる。
製造工程の中には、反応工程という工程がある。
反応工程で怖いのは、反応暴走だ。化学反応を制御できなくなることだ。
反応工程を持っていたら、きちんと「なぜ」反応暴走が起こるのかを教えて欲しい。
色々な切り口で、反応暴走のリスクを検証するが、反応熱という切り口がある
発熱量(QDSC)と危険性の目安で下記のような目安がある
100J/g未満:ほとんど気にしなくてOK 弱い発熱反応だ
300J/g以上:反応暴走 要注意(100~500J/g以上は弱い~激しい発熱反応としている文献もある)
800J/g以上:発火 、爆発注意(500~1000J/g以上は激しい発熱反応としている文献もある)
1,500J/g以上:爆発要注意。そのまま扱うのは、かなり危険(1000J/g以上は極端に激しい発熱反応としている文献もある)

つまり、300J/g以上は要注意と考えた方がい
この発熱量でリスクの程度を知るという手法は案外知られていない

皆さん方の取り扱っている、物質について調べてみて欲しい
DSCという熱分析計を使えば測定することができる
https://handa.jpn.org/1/posts/post689.html
安全工学という冊子に「反応暴走」に関する情報があるので紹介しておく。以下のURLを見て欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/18/1/18_42/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/45/5/45_335/_pdf/-char/ja
高圧ガス保安協会が出した反応暴走に関するいい文献がある。反応暴走のメカニズムと過去の事故事例を紹介している。
反応工程のある工場の人達は一度目を通しておくと良い。
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2016_01_hannou.pdf
物質危険性を勉強したいなら、安全工学会の安全工学セミナーを聞いてみると良い。 物質危険性講座というのがある
http://www.jsse.or.jp/Events/Annual_cl/
また機会を見ながら世の中に埋もれている反応暴走に関する文献も紹介したい

 

2024年06月10日

繰り返すタンク変形事故  サイホン現象

前回のブログで、今年の消防統計の中にタンクが変形する事故を紹介した
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/240527_tokusai_1.pdf
公表資料の19頁にある、サイホン現象によるタンク変形事故だ
タンクが変形する事故は頻繁に起きている。 凹み、凸みなどの変形だ。
原因は、タンク内の圧力が急変するからだ。
タンクというのは、ほぼ密閉した容器だ。液を入れれば、排気設備がなければ当然タンク内の圧力は上がる
だから、排気設備が一般的には付けられている。ブリーザー弁やベント弁などとも呼ばれる装置だ
これによりタンクは、脹らむことはない。しかし、排気設備が故障すれば、液を入れていけば脹らむことになる
排気設備は、長期間点検しなければ錆び付いて動かなくなったり、金網などに異物が付き排気抵抗が大きくなる。
その結果、凸む事故が起こる
では、タンクから液を抜き出すときはどうだろう。やはり、吸気設備がなければ負圧になり凹んでしまう
吸気設備や吸気配管が必要となる。ブリーザー弁などと呼ばれる設備は、一般的に吸気と排気の両方の機能をもつ
しかし、時には排気機能はあっても、吸気機能を付けていなければタンクが凹む要因にもなる
タンクを凹ます要因の一つに、サイホン現象があることは案外知られていない
タンクの水張り検査などで、水を入れていているときに凹み事故が起こる
タンク上部のベント部にホーズをつないで、オーバーフローした水を地上に排出するようにしているときだ
タンク上部と、地上部では液ヘッド分だけ差圧がある
つまり、上から下へと液が一度流れ始めるとサイホン現象で水が止まらなくなるのだ
タンク内に水張りした水がどんどん減っていけばそこの空間部は負圧になる
水を止められなければ、結果として負圧空間がどんどん増え凹むのだ
事故事例を紹介する 川崎市が公開している資料だ
https://www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000096/96474/jikojirei.pdf
事故事例NO65を見て欲しい(資料の下に書いてある頁の139頁)
事故事例NO64にはタンクの膨らみ事故事例も紹介されている
事故事例NO66にはタンクの凹み事故事例もある
事故が起こるパターンはほぼ同じだ
タンクの凹みや凸む事故の危険源をしっかり学んで欲しい

 

2024年06月06日

消防事故統計が発表されていた

消防庁から、コンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計実績が発表された。
毎年5月末に発表されているレポートだ。前年の事故の概要をまとめた資料だ
コンビナートでの事故統計はここから入手出来る
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/240527_tokusai_1.pdf
事故の件数は395件だ。爆発が4件、火災が120件、漏洩が266件、その他(破裂など)5件だ
昨年より事故の件数は増えている。漏洩という件数が増加している
公表資料PDFの頁数で、12/20頁に図8という円グラフがある。
事故の要因だが、腐食疲労等劣化が昨年よりも増えている。
毎年毎年増えつずけているのこの腐食漏洩等だ
いわゆる設備の老朽化が進んでいると言うことだろう
16/20頁から主要事故の記述がある。
18頁に落雷事故の情報がある。落雷でフランジガスケットが破損し漏れて着火したという
19頁にタンクの液面計故障でタンクから液が漏れた事故事例がある
ただ漏れただけでは無く、サイホン現象でタンク内が真空になり側板が破損したという
水封器が関係しているらしい ベント排気が水封器方式の設備は注意が必要だ
もう一つ、危険物取り扱い施設での事故概要が公表されている
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/c0b9626202a69432697ce5de38fd04e7a80838f0.pdf
危険物施設事故件数は横ばい状態が15年ほど続いているが、今年は昨年より事故件数が増加している
公表資料のPDFの頁数で、29頁から、2023年(令和5年)に起きた主要事故の概要が記載されている
参考にするのも良いだろう
29頁の最下行に新潟で起きた配管工事での爆発事故が書いてある
乾燥させると危険な物質で、配管内の湿潤が不完全だった事故だ
工事会社にもその情報が伝えられていなかったようだ
以前四日市で起きた熱交換器の爆発事故を思い出した
窒素で長期間パージして乾燥しすぎて爆発事故を起こした事故だ
https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/pdf/14-0612b.pdf
まだまだ物性が良くわかっていない物質もあると思って欲しい

 

2024年05月30日

高圧ガスはなぜ法律で規制するのか

高圧ガス保安法という法律がある。昔は高圧ガス取締法という法律名だった
日本では、1910年台に高圧ガスを利用する技術が始まった
小さな容器で高圧でガスを圧縮して入れれば大量のガスを効率的に利用できるからだ
高圧というのは、当然事故が起こる
ボンベが破裂というのが、今から110年前頃の時代に沢山起きていた
そこで、高圧ガスのボンベ破裂事故があまりにも多いので、法律が整備された
1922年に「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」公布されたのだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/daikankyo/5/3/5_14C0704/_pdf/-char/en
現代の高圧ガス保安法の前身となる法律が、今から100年前にできたのだ
1951年に戦後の急速な産業発展に伴って「高圧ガス取締法」という法律が制定された
戦前の有機合成化学は原料にカーバイトを使い、アセチレンを基礎原料にしていた
このことから、主にアセチレン工業を法は規制していたが、高圧ガスの利用拡大や
石炭から石油への時代に対応して法整備を行ったのだ
1963年に法の一部が改正され「自主検査」という制度が導入された
従来の官の検査を補完し、事故防止に万全を期そうとしたのだ
石油化学産業の勃興により、1970年代に入るとコンビナートで多くの事故が起きた。これを受け新たな法整備が進んだ
今までの法律は、工場一つ一つを規制する法律だった
つまり、工場がまとまった単位であるコンビナートを規制する法律は存在し無かった
工場という「点」の規制からコンビナートという工場集団を規制する「面」という概念で新たな法律が作られた
1975年(昭和50年)に、コンビナートという集団を規制する石油コンビナート等災害防止法という法律が制定された
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350AC0000000084
高圧ガスや消防法を包括した新たな規制だ 高圧ガス単独では無く危険物という領域を含めた法規制が求められてきたのだ
圧力はエネルギーだ。上手に規制しないと事故になる
破裂という事故を防止する為に法規制が行われている
圧力という危険源を甘く見ないで欲しい

 

2024年05月25日

除害装置の設計能力に不足はないか

除害装置の設計で考えさえられることがある。
最悪の事態を考えて除害設備の能力を決めているかだ
そこそこの能力で設計しているから多くの事故が起きている
最悪の事態を想定せず除害装置を設計しているから、世の中で繰り返し事故が起こる
設計能力を超えて毒性ガスなどが除害装置に入り込んできて事故になることが多い。
リスクアセスメントが甘かったと言えばそれまでだが、過去にどんな事故事例があるかを知らなければ平均的な設計しかできないだろう。
最悪の事態のリスク想定を誤らないで欲しい。
能力を超えてしまう事例で多いのが、毒性ガスの想定で設計していたものが、液化ガスが入り込んできてしまう事例だ。
例えば、塩素ガスを処理するはずのものが、運転などが乱れて液化塩素そのものが直接除害装置に漏れ混む事例だ。
液化塩素が気化してガス化すれば、その量は膨大となる。
当然処理能力は足りなくなる。設計段階で企業が安全率を見ていても3倍程度だから、とうてい処理できる量ではない。
もう一つの事例は、毒性ガスを取り扱う装置が複数台あるケースだ。
トラブルが起こるのは、装置が故障するのは一つだけと思っていたのが同時に全ての装置が緊急停止するなどして
大量の処理すべき塩素などの毒性ガスが除害装置が流れ込むケースだ。
やはり、最悪の事態を想定していないから、事故になるケースだ。
もう一つの事例はこうだ。
トラブルに備え、予備の除害装置を予め用意していたのに事故になるケースだ。
除害装置は、トラブルが起きてもすぐに立ち上げられるものでは無い。
起動には時間がかかる。もたもたしている内に、処理が追いつかず大量の未処理ガスが放出されるケースだ。
それでも、遠隔で操作できるようになっていれば良いのだが全て手動起動という設備が多いからだ。
大量の毒性ガスが漏れているときは現場には近づけないはずだ。
除害装置は、遠隔で操作でき、しかも自動起動できる設備でありたい。
除害設備を設計する人は,除害設備の事故事例を学んで欲しい
こんな事故事例もある 参考にして欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-364.pdf

 

 

2024年05月20日

除害設備で起こる事故

有毒な化学物質を扱う化学工場には除害設備というものがある。無害化して安全な状態で大気に放出する設備だ
製油所や化学工場では塩素やホスゲンなど有毒なガスが使われていたり、硫化水素などのガスの発生もある
万一大気に漏らすと人命にも関わることになる
除害設備で起こる事故にはパターンがある。まず、事故が起きた時のタイミングで分かれる。
スタートや停止などの時なのか、通常運転で突然トラブルが起きたかだ
スタートや停止時では単純なバルブ操作の間違えで想定以上の液やガスが除害装置に流れるケースだ
つまり、除害装置の能力を超えてしまうケースだ
設計条件では、ガスしか来ないと想定していた物が液が入り気化して大量のガスが除害装置に流れ出るケースだ
液化塩素を取り扱う工場でこの事故のパターンが多い。誤操作や誤動作のヒューマンエラー対策を進める必要がある
バルブの開閉表示や、配管の行く先表示の不備も多い。人が間違いを起こしにくい設備になっているか検証して欲しい
通常運転中のトラブルで多いのが、接続配管が漏れた事例も多い。維持管理がおろそかだったからだ
配管や接続部の老朽化対策も必要だ 塩ビ配管などは劣化や割れなどに注意をして欲しい
運転中のトラブルとして、停電と地震というキーワードがある
停電は非常用電源などが起動しなかったとか、予備の除害塔に切り替わらなかったなど日頃の保守点検が悪い事例もある
地震は計器の誤作動が引き金になることも多い、液面計や液面SWの誤作動でうまく起動しなかったとか突然止まった事例も多い
揺れや振動による計器の誤作動対策もしっかり行うことだ
事故防止のポイントは3つだ。設計の段階で、最悪の事態を考えて設計しておくことだ。能力不足があれば必ず事故につながる
2つめはヒューマンエラー対策だ。本来とは違うバルブの誤操作が引き金になることも多い。バイパス弁をあやまって開けなどの事故もある
弁の開閉表示や弁番号表示も不足して起こる事故が多い。逆流させての事故もある。逆止弁の設置も設計段階から考えて欲しい
3つめは、除害設備の日常の維持管理だ。いざという時作動してくれなければ役に立たない。定期的な動作テストや除害液の管理も必要だ
設計段階で、ハード面では処理能力に関ししっかり見ることと、人がミスを犯しにくい配管フローなどの設計や表示をしておくことだ
最後の砦は、日常の維持管理だ。維持管理を甘く見ないで欲しい

 

2024年05月16日

除害設備があるから安全だと思い込まないで欲しい

有毒なガスが漏れると風に流されて広範囲に被害が広がる。工場内で被害が収まるわけではない
ガス漏れによる世界最大の事故は、インドで起きた
1万人以上の死者を出し。30数万人の健康被害を及ぼした事故だ。色々な文献が出ているので見て欲しい
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0300003.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/26/6/26_346/_pdf/-char/ja
甚大な被害を出したのは、除害設備がしっかりと機能し無かったということだ
それだけではない、行政への通報が遅れたことも大きな要因だ
有毒ガスの拡散は、かなりスピードが速い。事故が起きたら時間との勝負だということを物語っている
日本ではあまり知られていないが、四日市のコンビナートでガス漏れ事故を起こしている
1974年4月30日の事故だ。液化塩素を大気に漏洩し 住民12000人が被害を受け社会問題となった事故だ
これほどの大事故なのに、ネットで探してもほとんど情報が出てこない事故だ
当時は公害問題が起きており、公害罪で起訴したことからのその適用で解釈がむずかしく、ものすごく裁判が長引いた
業務上過失傷害ならすぐに結論が出たはずだ
https://core.ac.uk/download/pdf/229786048.pdf
4月と言えば新人がはいる時期だ。ベテランが新人と一緒に教育をかねてバルブ操作をしていたときにこの重大事故は起こった
この事故は、新人が開けてはいけない弁を開けてしまったのだ
更にどこが誤って開けられたのかに気づくのにも遅れ被害が広がった
単純な弁の誤操作がこれだけの被害を出す。有毒ガスに関係する事故は被害者の量が膨大となる
異常が起きたら、原因究明に時間をかけすぎるなということだ
高濃度のガス漏れだと、ガス検知器のセンサーもすぐに不良となる。ガス検知器が正確に指示を出さなくなるのだ
高濃度のガスは存在しているのに警報は鳴らないということになる
除害設備を持つなら過去の事故事例とその教訓を学んで欲しい
除害設備があるから安全だと思わないで欲しい

 

2024年05月10日

新人が関係する事故 トラブルにうまく対応できず事故になる

毎年4月になると新入社員がはいってくる。一定期間教育研修を受けた後、職場に配属されることになる
配属を受けた職場では、OJTという形で教育を始める。このOJT教育の段階で、先輩が手を抜くと思わぬ事故を引き起こす
大阪の製油所でポンプのキャビテーションが原因で起き,3人が死亡する事故を紹介する
経験1年の若手がスタート時に加熱炉循環ポンプを起動する作業をしていた
ポンプの行き先は、加熱炉であるため空だきを心配し、作業を焦っていた。
スタートアップ時に入社1年目の新人に一人で作業させていた
ポンプ起動時に1度目のキャビテーションがおきた。予備ポンプに切り替え。ガスを抜くことで対応しようとした
キャビテーションは収まるがしばらくして、キャビテーションが再発した。再びポンプを切り替え、エアーを抜こうとしていた。
この時、誤ってポンプ上部のエアー抜き弁ではなく。ドレン弁を開けてしまった。焦っていたのだろう。
ドレン弁を開けたものの,すぐには液が出てこなかった。弁が詰まっていたのだ
本人は、液が出てこないのでまた焦ってしまった。弁を更に大きく開けたところ詰まりがとれ大量の液が吹きだした
大量のナフサという可燃性の液体が噴き出したのだ
液とガスの拡散で、新人は一時的に目が見えなくなり、バルブの閉止が遅れた。
多量のガスと液が噴出したので弁を閉じようと,気を取り直しして近づいた時に引火爆発,火の海となった
着火源は、上方にあった400度の高温配管だ。
風下にいた運転員が全身火だるまになり3人が死亡した事故だ
入社して1年目であれば、定修後のスタートも初めての経験だったかも知れない
キャビテーションというトラブルで焦っていたのだろう
経験1年程度ではまだまだわからないことが多い。トラブルが起きたら。若い人を一人にさせるなと言うことだ
若い人達に常に語りかけて欲しい
トラブルが起きたら一人で対応するな
一人で対応するから事故になると言い続けてほしい

 

2024年05月06日

為替と設計技術力

時代時代により何が問題かは変わってくる。為替というのも、時代の変化に大きく関連する
為替の関係で少しでもコストダウンをしようと,海外から機器を輸入した時代があった
円高の時代だ。1990年代から2000年代だ。円高だから、各企業はこぞって外国から安い機械を輸入した
安かろう悪かろうの時代だった。溶接もいいかげん,強度計算もいい加減な外国製の機械が日本に入った
この結果2000年代後半には、日本の化学工場でも外国製機器の品質不良によるトラブルが多かった。
海外から輸入された機器の溶接や組立不良が多かったからだ
日本メーカーの技術力も低下してきたのもこの時代だ。日本で機械を作る機会が減ったからだ
結果として、日本の機器メーカーの技術力も低下していった。設計ミスも多く出始めていた
2000年代に入り大手重機メーカ-が,化学プラントなどの装置製造から撤退し始めた
装置の生産が海外企業に奪われたからだ
これにより,大手機器メーカーのノウハウが化学機器装置の製造に展開されなくなった
大手機器メーカの優れたノウハウが日本で展開されなくなったのがこの時代だ
設計技術力は。人も大きく関係する。
2000年代後半は、1970年代に入社して色々なトラブルを経験してきた熟練の技術者も日本では退職を始めていた
人に技術有りだ。人が持っている技術の全てが文書化されるわけではない
暗黙知の世界が存在する。技術伝承には,日頃のコミュニケーションが大切だ
製造現場では、コミュニケーションの時間をいかに作るかを考えて欲しい。言葉の中に技術は活かされていく
技術伝承とは何かというと場数を踏ませ、その結果のコミュニケーションの産物なのだろう
場数を踏まずして,ノウハウを手に入れることはできない。時間が必要だ
失敗の伝承、故障事例の伝承、設計の失敗など多くを伝えて欲しい
失敗は恥という文化がある。結果として、失敗は伝えられず消えていく
しかし、人は失敗から学んで成長してきている

 

2024年05月01日

事故や災害に思う-約20年前の自分が経験した事故に思う

今から約20年以前の2001/4/23当時勤務していた工場で爆発事故が起きた
朝の10時頃だ ものすごい音がしてキノコ雲のような煙が見えた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012016.html
圧縮機の中で爆発が起きた事故だ
取り扱っていたのは支燃性のガスで、半導体の製作時に使われるガスだが、海外ではロケットの燃料にも使われる可燃性ガスだ
火がつけば爆発することもあるガスだ
このブログを始めたきっかけの事故でもある
化学物質の持つエネルギーのすごさをはじめて感じたのがこの事故だ
2009年にもこの工場で爆発事故があり、この時は爆発時の写真がある
https://blog.goo.ne.jp/kecha2/e/298b4c68506f900af25742d149b5a723
化学物質の持つエネルギ-を、会社にいて感じるのはいかに難しいかこの事故を経験して始めてわかった
化学物質の種類によっては、試験管ベースでも爆発すればすごいエネルギーだ
ドラム缶や化学工場のタンク規模になればとんでもないエネルギーだと気づいたのがこの事故だ
事故は経験しなければわからない 特にその化学物質のエネルギーのすごさは文字では表せない
事故の怖さを伝えるのは本当に難しい。なぜなら、事故の恐怖心を文字で伝えるのは難しいからだ
炎や爆風の衝撃音を文字では書き表せない 驚きという感情も、文字で表現するには難しい
技術伝承の難しいところはそこにある。事故を自ら経験した人にしか事故を伝えるのは難しいからだ
体全体で表現していかないと、経験した事故は表現は難しい
最近ある化学系企業の新入社員60名に労働災害や事故の話をした 新入社員教育の最終日だ
教えるではなく気づかせる工夫をかなり織り込んだ
これからも機会ある限り事故の悲惨さを伝えていきたい

 

2024年04月25日

反応器の冷却能力は十分か--事故や災害に思う-12年前の事故に思う

今から12年前の今日(2012/4/22)当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起き、まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔はそうでは無かったのかも知れないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう
反応器などの装置は、発熱量に対して冷却能力はどのくらいの安全率を見て設計しているのだろうか。
機械の設計をする際には、材料強度に対して3倍程度の安全率を見て設計すると言われる。JISなどで、安全率が規定されているからだ
化学工学の世界では、冷却能力の設計に当たって安全率という数値的な基準は企業の中で、きちんと決まっているのだろうか。
技術者の設計に任されているのだろうか。
化学プラントにある発熱を伴う装置については、冷却能力の安全率について深く考えてみる価値があるような気がする
冷却能力不足で起こる事故事例は多いからだ 

2024年04月20日

廃棄物置き場火災

スクラップ置き場が火災という記事が出ていた。廃棄物置き場での火災だ。
廃棄物に関する爆発や火災は繰り返し起きている。
https://www.youtube.com/watch?v=dmvKsNFMtCI
廃棄物倉庫、廃液タンク、廃液ドラム缶、廃液ピットなど「廃」という字がつくと、人間は管理が甘くなる。
「廃」というのは、いらないもの。つまり、たいしたものでは無いと人は思い込む癖がある。
たいしたものでは無いと、考えるとそれは安全であると感じてしまう。
むしろ「廃」という字がつくと「ハイ」リスクと考えなければいけない。
廃液タンクやドラム缶であれば混触で良く事故が起こる。
混ぜるからである。廃液ピットなどでは、近くで火気工事をしていたとき油が流れてきて火災になることがある。
廃棄物倉庫などであれば、積み重ねたことにより自然発火することがある。積み重ねると熱が逃げにくくなる。
廃棄物の中で蓄熱が起こることが多い。熱がため込まれると廃棄物の温度はどんどん上昇する。着火点を越えたら当然発火する。
今頃のように、急に気温が上がり始めた頃にこのような事故が起き始める。
サーモビュアーという赤外線カメラをお持ちなら、ちょっと現場で危ない所は見て欲しい。
赤く表示されているところがあればすぐに対策を取って欲しい。
http://www.hitd.jp/html/thermo_gallery08.html
温度の高いところを検知して異常に早く気づいて欲しい
たかが廃棄物置き場と甘く見ないで欲しい
蓄熱などによる自然発火も起こる。 本来混ぜてはいけない薬液での混触反応も留意点だ
廃棄物置き場を甘く見ないで欲しい
蓄熱発火の可能性が高い場所だ
「廃」という字を甘く見ないで欲しい

 

2024年04月14日

ダクト火災を甘く見るな

ダクト火災は世の中で繰り返し起こる事故だ
事故の原因は、ダクトの中の状態が見えないからだ。ダクト内に色々な物が堆積しているのに気づかず事故になることが多い
ダクトの中に堆積物が溜まり蓄熱し自然発火する事例だ
ゴムや樹脂ペレット、ペンキなどがたまり時間の経過ともに、炭化し発火点が下がり火が付くことも多い
今回こんなダクト爆発事故があるのを知ったので紹介しておく。
結論から言うとダクト内の粉塵爆発だ。
https://www.rodo.co.jp/news/84153/
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG18H1C_Y7A210C1CC0000/
当初の報道では、爆発したとの情報だけだったが、その後企業の発表した情報では排気ダクトが爆発と言うことがわかった
企業が発表している事故の中間報告では、推定原因が書かれている
https://www.hsk.co.jp/ja/ir/news/news770459198963925383/main/0/link/00.pdf
ダクト内に溜まって付着していたアルミの粉を含む固まりが、当日の強風であおられた。
次に、その固まりがダクト内にある排気ファンの所に落ちて砕かれ粉状になった。
何らかの着火源で、着火し粉塵爆発となったということだ。
最終報告書が企業から出されているが、着火源は特定できなかったという。
https://www.hsk.co.jp/ja/ir/news/news8996936175914980609/main/0/link/00.pdf
最終報告書には、着火源の推定が3つ書かれている。

① 塗料乾固物と排気ファン衝突衝撃による着火
② 塗装ブース内非防爆非防塵リミットスイッチ内における着火
③ 排気ファン破損によるケーシングとの摩擦発熱による着火
対策も書かれているが、以下の記述は参考になる
(1)塗料乾固物の堆積/落下防止
① 水カーテン方式ブースの採用
② 排気ダクト点検、清掃の容易化

ダクト事故防止の基本はとにかく、ダクト内を容易に点検できる構造で設計することだ
その上で、定期的に点検して内部に付着物を残さないことだ
ダクトは日常の維持管理が大切だ

 

2024年04月11日

設備の老朽化事故を考える

日本で経済が急激に発展し始めたのは、1960年代だ。
この頃、日本では大型インフラ産業である製鉄所や製油所が造られた。
これらの、インフラ設備も手直ししながら使ってきたが、建設後約40年目に当たる2000年代から大きな事故が起き始めた。
2003年8月にエクソンモービル名古屋油槽所で火災が起きている。
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
http://tank-accident.blogspot.com/2016/04/2003.html
老朽化したタンクの開放準備中の火災だ。6名の死亡事故だ。省人化が進む中での事故だ。
その翌月には、名古屋である製鉄所でガスタンクの事故が起きている。
1960年代に造られたタンクの老朽化が原因だ。
http://www.bo-sai.co.jp/tankkasai.htm
省人化によりタンクの検査の専門家をおかず、単なる運転員の見回りだけで対応させていたという事故だ
老朽化すればするほど検査にも手をかけなければいけないのだが現実は安全を無視して使用していた事故だ
技術革新の激しい業態であれば設備は10年も使えばお払い箱になる。つまり、老朽化という問題は起こらない。
設備は、次から次へと新しくなるからだ。
ところが、石油や鉄鋼などは技術的には確立された産業であるから設備は長く使える。
設備は、しっかりと維持管理すれば長く使うこともできる。
しかし、日本では1989年にバブルが崩壊し企業にお金が無くなってしまう状況が発生した。
この結果、老朽化が進むものの、補修費は削減される一方で設備にお金はかけられなかった。
コストダウンにむけて、省力化、合理化、人員削減などが急速に進んでいったのが当時の状況だ。
つまり、老朽化に歯止めがかからなくなったのだ。
結果として、設備の管理もおろそかになり大きな事故が起きた。
2003年に厚生労働省から出された通達がある。
http://www.joshrc.org/files/20031225-001.pdf
当時の重大事故の背景がわかる。
それから約20年が経ち、老朽化の事故は後を絶たない
老朽化が大きな事故につながることもあることを知って欲しい

 

2024年04月05日

重大事故のキーワード 生産優先、ルール無視と休日夜間

多くの事故を見てくると、その事故本質的な原因を表す事故のキーワードがある
1991/12/22の日曜日に大阪で起きた死者8人の死亡重大事故を今回取り上げる
https://gcoe.tus-fire.com/archive_cms/kobayashi-k/cms/wp-content/uploads/2010/02/3ea56a8dae51cb3a9f18f3f5b77a24f3.pdf
この工場はケーキやチョコレートなどの食用油を作る工場だ。事故はクリスマスの数日前だから、その食用油を大量に作っていた
ところが、突然機械が停止した。急いで機械を修理しなければ、生産上重大な問題を起こすと現場の人は考えたのだろう
生産優先の気持ちが働いてしまったのだ
本来、装置の中に入るのは3時間以上パージしなければいけないのに、1時間で装置の中に入り作業を始めた
これが一つ目の過ちだ。ルールを無視して生産を優先させたのだ
二つ目の過ちは、ガス検知もしなかったことだ。装置では、引火点-22℃のヘキサンという物質を使っていた
引火点が低いから、何か着火源があれば簡単に火が付く
事故が起きた日は、日曜日だった。休日だから、工場には管理者はいなかった
管理者がいればどこかでブレーキがかかったのかも知れないが、残念ながらブレーキはかからなかった
装置の中に10人ほど入り作業を始めたとたん爆発火災が起こり多くの人が被災した事故だ
この事故から見える事故のキーワードは、「生産優先」、「ルール無視」、「休日夜間は管理体制が弱い」だ
この企業は事故が起こる前から何度も事故が起きていた。
火気工事での着火事故が何度も起こっていることを見ると前からガス検知で安全を再確認する文化は根ずいていなかったように思える
事故後労基から事故防止の通達がでている。通達文だけを見ると単調だが意図はこうだ
一つ目は作業規程をしっかり作れだ。作業方法や手順は文字に書いて見える化しろと言うことだ
その上で教育や訓練もしろといっている。文字に書かれていても、その背景を説明しておかないと人は納得しないからだ
人は納得しないとルールを守らないと考えておくべきだ。符落ちさせることが事故防止につながる
人は頭でわかってもなかなか行動には移せない。頭と体が一体で動くようにしておく必要がある。訓練をしておけば,頭と体が動くようになる
次に管理体制をしっかりせよといっている。人が集まると指揮者がいる。指揮者を決めて管理しなければ烏合の衆になると言うことだ
次は、工事前の最後の砦である可燃物の濃度測定を行えとしている。当たり前のことだが、これが徹底せず事故が繰り返し起こっている
最後は、安全意識の高揚を図れといっている
これは企業トップが安全の旗を振らなければ事故は防げ無いと言っているのだ
安全に関しては,企業トップの関与が強く求められている

 

2024年03月30日

事故を考える-- 過去の知見や事故情報の有効活用

日本で化学産業が始まったのは約100年前だ
当時の事故の詳細記録などは公開されてもいないし残ってもいない
わずかながら残っているのは、企業の社史に記載されている事故くらいのものだ
しかも死亡事故など大きな事故だけだ。内容などはわからない
事故データーベースなどで記録が残ってはいるが、件名程度で詳細はわからない
1958年に日本ではコンビナートが動き始めた 1970年代くらいから事故の記録が残り始めた
日本では高度経済成長が終わり、大量生産が始まった時代だ。大量生産が始まれば、装置はどんどん大型化する
人は大型化について行けたかというと、そうはいかなかった
結局装置の大型化に人はついて行けず、1970年は事故が多発した
事故は社会や経済が変化するから起こる
1980年代には、大量生産が終わり少量高付加価値の生産形態に移行した
少量だが危険度の高い物質も現れ始めた。それを、制御できずに事故も頻発した
1990年代は不景気だ。2010年頃まで日本経済は不景気が続いた
この間色々な社会変革が起こった
企業は金が無いから、業務の下請け化を推進した
今まで社員がやって来た業務を下請けに転換した
下請けが社員と同じスキルを持っているわけがない。結果として、事故は増える形となる
景気が悪いと企業は人を採用しない
人を採用しないと技術伝承が続かない。そんな時代が今に続いてきた
2000年中頃からは、事故や災害を多く経験してきた、人達が退職し始めた
2010年代には、事故や災害を経験してきた団塊の世代と呼ばれる人達が会社を去ってしまった
2020年代 なんとか企業は生き延びている
過去の事故や災害に関する知的財産は企業に沢山あるはずだ
Aiなどの最新技術を用いて有効活用できないだろうか
過去の知見をAIなどの技術を使って、高速で必要な情報を抽出し役立つようにして欲しい

 

2024年03月25日

人に技術有り

工場や研究所で事故が起こるのは世代交代が関係している
経験を積んだ人が退職すると、しばらくして大きな事故が起こることが多い
人が仕事で経験して得た知識が、会社に残っているかというとそうでは無い
作業手順書や技術標準に残されているように思えるが100%ではない
文字に書ける物が記録されただけで、文字に書き表せにくい暗黙知は企業には残らない
文字に書けるのは人の経験のどのくらいかはわからないが、1割にも満たないのではないだろうか
最近、アメリカのボーイングという飛行機会社の飛行機がトラブルが多いという記事があった
製造段階や検査段階でのミスが事故につながっている
この原因に、コロナ禍でのベテラン従業員の大量退職が関係しているとの記事を読んだ
コロナの時は、皆さん旅行にも行かず飛行機も生産しなかった
仕事がないので飛行機会社は大量の従業員を解雇した
若者もベテランも解雇された
人が辞めれば、企業には技術は残らない
コロナも終わり、再び景気が戻り人を採用したがベテラン従業員は戻って来なかった
ボーイングという会社はアメリカの西海岸にある
多くの優良企業もそこには存在する
ベテラン従業員を雇うにはそれなりの給与を払う必要がある
ところが、競合企業の方が給与も高くそこに人は流れた
結果として、ボーイングにはベテラン従業員の多くは戻って来なかった
その穴を埋めたのは、経験も無い若手従業員だ
飛行機産業は、自動車産業と違いほとんどが手作業だ
やはりそこには経験がいる
経験の無い若い従業員への教育にも手がまわらなかったののだろう
結果として製造や検査のミスを見抜けなかったという
昨今転職で人を補充する時代に変わってきている
そうは言っても職種によっては、時間をかけて技術伝承を必要とするものがある
やはり、IOTを進めていくに当たっても人に技術有りを考えて欲しい

 

2024年03月20日

安全弁作動時の異常振動を甘く見るな--サポートの大切さ

安全弁の「安全」という文字にだまされないで欲しい
安全という名前が付いているから事故は起きないかというとそうでは無い
安全弁は作動しなければ、その危険性はわからない
安全弁は作動したときに、激しい振動が起こることがある
高圧のガスなどが安全弁から大量に噴き出すのだから、反動で激しく安全弁や廻りの配管が振動する
配管サポートがしっかりしていなかったために、振動を吸収できずに何度も事故が起こっている
こんな事故事例がある。ポンプの出口側にある調節弁が突然全閉になった
原因は、計装設備の故障だ
調節弁ポジショナー内部の電気信号配線が切れてしまったからだ
ポンプは、出口側を締め切られると、閉めきり運転状態になり圧力が急上昇するという問題点がある
ポンプの出口側に安全弁があったことから、その安全弁が吹いてしまった
安全弁が吹き始めたことで、安全弁は激しく振動し続けた
安全弁廻りの配管サポートがしっかりとなされていなかったので異常振動が起きていた
結果として配管に亀裂が発生し、可燃物が漏れてしまったという事故だ
安全弁が吹く原因は何であれ、安全弁は何らかの原因で吹くことがある
その時の異常振動を考えて欲しい
こんな事故事例もある
安全弁は取り外して、定期的に点検することがある
取り外した際、配管サポートが邪魔だったので一時的にサポートを取り外した
ところが、安全弁を復旧する際このサポートを取り付けるのを忘れた
現場の運転員も、サポートが復旧されていないことを確認していなかった
あるとき安全弁が吹いた際、異常振動を起こし事故になった
安全弁のサポートには敏感になって欲しい

 

2024年03月15日

東北大震災から13年目に思う

忘れもしない午後2時46分。11年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、勤務していた技術研修センターという所にいた
勤めていた技術研修センターは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/training/index.htm 
当日、朝からこの技術研修センターで各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
安全工学会の主催だ 午前中も順調に進み午後からも安全体験が始まった
1時間半ほどの体験が終わり皆さんが休憩をしていたところだったと思うが、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた 地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 私の場所から30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった 翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
地震への備えは不可欠だ 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
東北大震災の余震と言われる震度6の地震もその後起きている。千葉県にあるコンビナートでも影響を受け、停電で化学プラントが停止した
当時の福島原子力発電所の原子炉が破壊しなかったのは奇蹟だ
化学プラントも巨大なエネルギーの固まりだ
最悪の事態を考え行動することが常に求められている。地震への備えをこつこつと行っていって欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/6/50_410/_pdf/-char/ja

 

2024年03月11日

残渣を甘く見るな

残渣とは、油かすのようなものを言う。
化学工場であれば、タンクの底に溜まったりする油かすだ。
この残渣が原因で多くの事故が起きているが余り知られていないのが実情だ。
残渣という言葉から連想するのは、残りかすでそれほど危ないものではないと思うのだろう。
ところが、残渣が原因で起こっている重大事故は沢山ある。
残渣の種類によっては蓄熱して自然発火する事故もある
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101094
たかが油かすと思わないことだ
残渣が原因で「詰まったり」することもある。これが事故の引き金になる。
タンクの排気弁が残渣で詰まりタンクが膨らむ事故も多い
排気弁は定期的につまりの点検が必要だ
残渣が原因でバルブなどが詰まると、液が抜き出せなくなる。
針金などでバルブをつついていて、突然液が噴き出し事故になるケースは多い。
次に残渣は、残渣の中にガス分が含まれていることで起こる事故事例も多い。
タンクなどに溜まった残渣を取り除く作業で起こる事故のパターンだ。
作業を始める前にタンク内をガス検しても、残渣の中にあるガスは測定できない。残渣はかき回さないとガスがでて来ないからだ。
それで、ガス検異常なしで、簡単に工事の許可が出てしまう。
ところが、残渣をスコップなどで取り出す作業を始めると残渣の中に隠れていた可燃性ガス分などが出てくる。
それに気づかず、作業を進めていると突然残渣が着火する事故だ。
逃げ遅れて大やけどをして死亡する事故が昔から起きている。
もう一つの事故のパターンは、残渣の自然発火だ。
残渣というものは混合物だ。発火点の低いものから高いものまで色々な物質が混在している。
残渣は油の固まりだから、固まりの中で発熱する物質があれば当然蓄熱する。
しばらくすると、発火点の低い物質に火がつき火災となるのだ。
こんな事故もあるので参考にして欲しい
反応副生物が蒸留残渣に蓄積して爆発した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000093.html

 

2024年03月05日

OFF-OJTをうまく進めるには

人材育成や技術伝承の用語に「Off-JT」という用語がある
OJT(On The Job Training)に対して現場を離れて、人を育てる手法だ。
会議室に集めて集合教育をするのもOFF-JT教育だ
上手に行うためには何点か注意点がある
OFF-JTの善し悪しは、先生の質と、教材の善し悪しで決まってくる
誰でも先生になれるわけではない。教える技術と、話す技術が必要だ
難しことを易しく説明できなければ教育の効果は上がらない。たとえ話を、さらに理解させる手法も使わないと効果が上がらない。
教えるとは相手にわかってもらうことだ。相手の目や表情を見て理解しているか探る必要もある
話す技術も必要だ。単調な話は眠くなる。抑揚を持たせたり、大事なところを繰り返し表現を変えて話すことも必要だ。
話をするとき、最初の5分が大切だと言われる
話しに関心を持たせるには、最初が肝心と言うことだ。
話しに興味を持たなければ、人はその後テンションが落ちていく。結果として話は聞いてくれないことになる。
次に、教材の善し悪しでOFF-JTの質も変わる
文字ばかりのパワーポイントもあきられる。例えば、パワーポイントをワードのように文字を沢山書く人の資料だ。
ポイントとなるキーワードを書いて、後は言葉で補足するのだ
文字数が多すぎると、受講者は文字を追うことばかりに力を使い、肝心の先生の話を聞く余力が無くなるからだ
写真やイラストを使うのも有効だ。写真やイラストは、見せるだけで数百文字分の情報がイメージとして伝えられるからだ
イラストというのは特に有効だ。強調したいところを、わざと強調して描けば更に効果が上がる
動画を使えば更に効果が上がる
文字よりも映像は多くの情報が含まれているからだ
教材作りにも力を入れて欲しい
最近は無料イラストもふんだんにある
日頃からこつこつとイラストを集め効果的な教材作りをして欲しい

 

2024年02月25日

OJTをうまく進めるには

OJTをうまく進めるにはコツがいる
人材育成や技術伝承の用語に「OJT」という用語がある
On The Job Trainingを略した用語だ 現場で先輩などが新人を直接指導して人を育てる手法だ
現場で先輩が後輩に直接会話をしながら技術や技能を伝えていく
非常にいい方法だが上手に行うためには何点か注意点がある
OJTをやると時には、先生が生徒の目線で考えて話ができるかがポイントだ
相手はわかるだろうと先生が考えてしまって、相手の理解度も考慮しないでやみくもにOJTを進めると生徒が消化不良を起こす
結果、中途半端な理解のまま時間だけが経っていくことになる。かならず、相手が理解できたかを確認しながら前に進むこともポイントだ
生徒からの返ってきた答えで,OJTの理解の度合いはわかるはずだ 理解度をしっかり先生が把握しなければOJTはうまくいかない
もう一つは,計画を立ててOJT教育をすることだ。教えることに日々「関連性」を持たせて,順序立てて教えていくことだ
バラバラの知識を与えるより、関連性を持たせながら継続的にトレーニングをした方が効率が上がるからだ
その為には,先生は教えることをリストアップし計画表を作って実施していく必要がある
思いつきで教育をしていてはだめだと言うことだ
次に、「なぜ」を説明することだ
教える目的は何かを説明して、なぜこの知識が必要かと説明してあげると良い
もう一つ、OJTの先生になる人は「教える技術」を学んで欲しい
教えるにも技術がある。話し方にも技術がある やみくもに話しても相手が理解しなければ教えたことにはならない
企業は、OJTの講師の人達にも事前に教育する必要がある 誰でも先生になれるわけではない
先生になってもらうには、最低限教える技術というのを企業は教育する必要がある
これを怠って、単にOJTをやっているのではうまく人は育たない
教える技術に関しては、いろいろな書籍なども販売されている
講演会などもある
OJTで教える立場にある先生は教える技術をまず身につけて欲しい
OJTをうまく進めるには、まず先生に教える知識のスキルアップが大切だ

 

2024年02月20日

仕切り板操作作業で起こる事故

仕切り板で起こる事故がある。
安全確保のため仕切り板を挿入するのであるが、挿入や取り外しで事故が起きては何にもならない。
一番単純なのは、仕切り板の挿入箇所を間違えるだ。うっかりでは済まされない。
計画段階でのミスや現場作業時でミスで多くの事故が起きている。
生きているラインで誤ってフランジをゆるめ始めてしまったなどという事例もある。
完全に脱圧や脱液が終わっていないのに作業者がフランジをゆるめ始め液が噴き出してきたという事例もある。
工事の着工許可も出ていないのに作業員が作業を始めてしまった事例だ。
現場説明を現地ですると、それで許可が出たと勘違いする協力会社員もいる。
社員が現場を離れたとたんもう作業を開始してこのような事故が起こることがある。
正式の仕切り板を使わず、強度の無いブリキ板を使って起こった事故事例もある。
1970年代当時はそのような事故が何件か続いた。
仕切り板を抜き取っていたときに摩擦熱で可燃物が着火した事例もある。
わずかに残っていた可燃性ガスに火がついたのだ。
仕切り板を抜き取るときはゆっくりと摩擦や火花が起こらないようにする配慮も必要だ
仕切り板挿入時誤って近くのボール弁のコックに手が触れ弁が突然開き液が噴き出したという事例もある。
ボール弁はハンドル廻しを外しておかないとこんな事故になる。
仕切り板を抜くとき圧があるのにまだラインは使用されていないと思い込み事故になった事例もあるhttps://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2015-200.pdf
ベテラン運転員だからわかるだろうと、情報を与えなかったことにより起きた事故だ
たかが仕切り板作業と思わないことだ。

 

2024年02月15日

HAZOPでは先入観を取り払え

HAZOPというのは1970年代にイギリスに始まった安全性評価の手法だ
日本に伝わったのは、10年後の1980年代だ
私の勤めていた会社でこの事故がきっかけで、HAZOPを始めるようになった。こんな1983/3/5の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000148.html
廃液タンクの爆発事故だ。1970年頃に新設されたタンクで、窒素シールも設置されていた
窒素シールがしてあれば誰も爆発が起こるとは考えていなかった
廃液だから危険ではないという先入観もあったようだ
このタンクは、プロセスで使われるトルエンという溶剤を、循環しながら一時的に貯めるタンクだ
通常運転がうまくいっていれば、タンクにはトルエンと、水しか入ってこない
ところが運転中に二つのトラブルが同時に起きた
本来入るはずのない、過酸化水素という物質がタンクに入り込んだ
その後、運転操作でミスをして苛性ソ-ダを含んだアルカリ性の水を入れてしまった
過酸化水素はアルカリと混ざると混触反応を起こす。混触反応では、大量の酸素を発生させる
過酸化水素は、アルカリだと、酸素を発生するという混触危険性を理解していなかったのだ
酸素は、廃液中に含まれる過酸化物である「過酸化水素」とタンク内のアルカリ液とで発生した
廃液量が多く、しかも廃液から大量の酸素が発生し爆発混合気ができて爆発した事故だ
たかが廃液タンクだと思わないことだ
窒素シールがあるから大丈夫だと思い込まないで欲しい
現場の人達が知識や経験が無いと、事故の予見性を見抜くのは難しい
安全性評価をすれば事故を防げるわけではない。危険なことを見抜くには豊富な事故事例を知っておく必要がある
リスクを見抜けるには、事故に関係するキーワードが直感的に頭の中に出て来ないと難しい
この事故をHAZOPで解析してもらうと多くの人は、タンクに窒素シールがあるから大丈夫だという先入観を持つはずだ
廃液だからそれほど危険ではないという、先入観を持つ人もいる
HAZOPは先入観を持たないことだ
最悪の事態を常に考えなければ、事故は防げ無い
安全性評価はそんな甘い物では無い

 

2024年02月10日

ヒヤリハット事例を有効に活用するには

ヒヤリ事故というのがある
事故には至らなかったというトラブル事例だ
ヒヤリハット事例は有効だということで多くの企業で、ヒヤリハット事例を活用している
集めるだけで有効活用できているかというとそうではない気がする
確かに、このヒヤリ事例は事故にはならなかったという貴重な情報の宝庫ではある
災害になるのをくい止めた事例もあるはずだ
装置の故障であれば、故障時の応急操作が適切だったはずだ 咄嗟の対応かもしれないがどう対応したかは貴重な情報だ
何故災害にならなかったかと言えば,ほとんどの場合事故回避の流れからわかるように,トラブル時の応急操作が適切であったからだろう
とはいえ、企業で本当にヒヤリハット事例がうまく利用されているかというと疑問点が多い
ヒヤリハット報告書の書式に問題点がある 単純に事実を書かせているのであれば、それは事故防止には使えない
「なぜ」ヒヤリでくい止められたが、情報と書かれていなければ事故防止に有効な情報とは言えない
たとえば、「もう一度チェックした」、「担当者に再確認した」、「すぐに作業を始めなかった」、「上司に再確認した」など
事故に至らないような何かの機転があるはずだ その情報を引き出さなければヒヤリは生きてこない
ヒヤリハット活動をただやるのではなく、事故にならなかったキーワードを徹底的に抽出して欲しい
ヒヤリハットを報告する書式にも工夫をして欲しい
つまり、事故を防いだ「ワンポイントキーワード欄」を設けて欲しい
なにが、事故に至らなかったかを情報として取り出すことが大切だ
ヒヤリハット活動はただやるだけでいいわけではない、効果的に災害防止に結びつける情報を抽出することを考えて欲しい
ヒヤリハット事例を災害防止の貴重な情報源として捉えて欲しい
参考となる情報をいかに紹介しておく
厚生労働省の情報だ
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/anrdh00.html
企業が公表している情報だ
https://www.shinetsu.co.jp/jp/news/other/%E3%83%92%E3%83%A4%E3%83%AA%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%

88%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%82%9

2%E6%9B%B4%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F-15/

 

2024年02月05日

共振という振動現象を甘く見るな

振動が原因で多くの事故が起きている
化学工場では多くの場所で振動が起きている
ポンプや圧縮機などはモーターを使うから必ず振動が起きる
工場にある設備はほとんどが金属でできている。金属は固くて上部なのだが、この固いことが事故につながる
柔らかければ、振動は吸収されるが、固ければ振動は吸収されず金属が損傷する
配管やフレキであれば亀裂が生じ漏洩する
振動の中でも注意しなければいけないのが。「共振」という現象だ
振動には周期がある。配管やフレキの長さによっては、振動の周期によっては激しく振動する現象がある
これを共振現象という
例えば、金属フレキの長さと共振する周期の波長が合致してしまうと、想定外の激しい振動現象が起こる
その結果フレキが振動で破れて事故になることもある
タービンの試運転時共振で事故が起きたこともある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000602.html
原子力発電所で温度計保護管の共振により事故も起きている
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/37/3/37_3_189/_pdf
共振が起こると短時間に金属は破壊されることが多い
フレキやホースを設置するとき、振動周期と長さがちょうど合致すると共振という現象が起こる
フレキやホースのある場所の振動を確認して欲しい
温度計の保護管でも共振による破損事故も起きている
設計段階から共振をチェックして欲しい
共振現象ということにも関心を持って欲しい

 

2024年01月30日

電気火災を甘く見ないで欲しい

電気設備が原因で事故が起こることがある。事故の原因は、様々だが接触不良と老朽劣化が多い
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/29/8/29_612/_pdf/-char/ja
電気は電線を伝って流れる つまりどこかで、電気装置と電線とつながる部分がある
そのつながる部分、いわゆる接続部に接触不良があると熱を持つ
温度が上がってしまうと、電線を包んでいる樹脂製の部分が溶けて燃えだしてしまう
電線の被覆は、難燃性のものもあるがコストが高いのでどうしても安い難燃性を持たないものが多用される
電線に火がつくと、最初はくすぶりながら周りに熱が広がっていく。そのうち、あっという間に周辺の電線に火がつき広がっていく
電線に油などが付着していると速いスピードで火災が進展する
電線を床の下にはわせる方式では、このケーブルダクトの中を見てみれば工場の電気火災に対する管理状態がわかる
2002年に宮崎県の化学工場で大きな電気火災事故が起きている
https://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile/NCODE/10610
当時の安全担当者に聞いたことがあるが、工場の人達は、まさかケーブルが燃えるとは思っていなかったというコメントがある
大きな間違いだ ケーブルが燃えると相当な発熱量がある しかも、延焼するから広範囲に燃える大火災になる
プラスチックやゴムの燃焼熱量は、ガソリンの燃焼とさほど変わらないと言われているからだ
この電気火災では大火災となり周辺住民を大量に避難させる事故であった
通報が遅れたことも原因だ。課長が消防への通報指示はすぐに出したが、誰が通報するということが決められていなかった
誰かが通報したと皆が思い込んでいて、結果として通報が遅れてしまった
通報者を決めておかなかったのが、通報遅れによる被害の拡大につながった
もう一つ地下のケーブルダクトに大量の油があったことも要因だ
この工場では、機械に使われている油が地下のケーブルダクトに時間をかけて流れ込んでいた
ところが誰もその油が危険とは思い込んでいなかった。電気火花で当然油にも火が着いてしまった
時間が経ってからケーブルの接触不良が起こることもある
新設時のねじの締め付け忘れや、締め付けのもれが時間が経ってから問題を起こす
1970年代に会社に入った頃は良くケーブルの増し締め作業を定修時にしていたのを覚えている
20年~30年経過した電源設備は老朽化という問題もある
私のブログでも何回か電気設備の老朽化の話をしているので検索してみるといい
ネズミなどがケーブルダクトに侵入して事故になることもある。ケーブルをかじるからだ ネズミ対策もしっかりと必要だ

 

2024年01月25日

長期間停止した設備の再稼働で起こる事故--現場パトロールの大切さ

長期にわたって設備を停めていると再稼働時事故を起こすことある。
企業活動の中で,設備を休止することもある。時間がたって再稼働したときに思わぬ事故に逢うこともある
今回過去に起こっている再稼働時の事故につていて紹介したい
東北大震災以降長期間停止した、原子力発電所を再起動していたときに起こった事故だ
九州の原子力発電所を再稼働してしばらくして蒸気が漏れたという事故だ
配管からの蒸気漏れだと言うことだったので、ガスケットの不良かと思っていた。
いつもよく見る世界のタンク事故情報を公開しているホームページを見ていたら、原子力発電所の蒸気漏れ事故の情報が記載されていた
2018年4月8日号の記事だ。写真もあるので興味のある方はみて欲しい。
配管の外面腐食に関する、診断法や維持管理のガイドライン等の文献等の紹介もあるので参考になるはずだ
http://tank-accident.blogspot.com/search?updated-max=2018-04-15T17:23:00%2B09:00&max-results=7
蒸気漏洩の原因はガスケットではなく、配管の腐食だと書いてあった、直径1cm程の穴が開いていたという。
蒸気の配管だから、当然保温がしてある
通常、蒸気を流していれば保温材の中は温度が高いから、保温材の中に雨水が入っても蒸発してしまう。
ところが、長期間蒸気を停めてしまえば保温材のすきまなどからしみ込んだ雨水などは蒸発せず配管を腐食させてしまったのだ
この原子力発電所は、約7年間という長期にわたって停めていたという。
蒸気配管の材質は鉄だった。腐食するには十分な材質だ。保温材の外側には、鉄が錆びたようなシミが付いていたという。
保温材を被った配管でシミが付いていたら、その場所で事故が起こる可能性があると思って欲しい。
鉄さびのようなシミであれば、内部で配管の腐食が進んでいると考えて欲しい。
もう一つ油のようなシミだ。配管の上のほうに油のようなシミがあるならそこから配管内部に油がしみ込んでしまったと考えて欲しい。
蒸気のような高温配管であれば、保温材にしみ込んだ油が温められ発火点を超え発火することがある。
油は新品の時の発火点と、古くなったものでは発火点が変わってくる。
過去の発火事故の文献などでは、油は古くなると発火点は新品時の2/3迄下がっている事例がある。
つまり、火が付きやすくなっているのだ。
更に、油は空気と触れて酸化するとき、酸化熱という熱を出すから保温材の中の温度は酸化熱も加わり相当高くなると思って欲しい。
現場をパトロールするときの感性を上げて欲しい。
たかが配管にシミが付いているだけだと思わないで欲しい。
保温材の中で何かが起きていると考え、早めに保温材を外して点検することが事故防止の基本だ。

 

2024年01月20日

FRPタンク天板からの転落事故は繰り返す

FRPなどの非金属でできたタンクの天板から人が転落する事故がある
太陽の紫外線などで天板が劣化していて強度が無くなっているのに、それを知らずに人が乗ってしまうからだ
2011年8月千葉県の船橋で2人が塩酸の入ったFRPタンクに落ちて死亡事故が起きている。
http://spotjn.blog.fc2.com/blog-entry-8.html
http://saigaijirei.sblo.jp/article/54558107.html
大学の研究室でのFRPの劣化について調査報告が以下のURLにある
http://www.cit.nihon-u.ac.jp/kouendata/No.39/6_MA/6-009.pdf
この事故以外でも過去に同様の事故が起きている。
http://www.kotobuki-grp.com/technology/pdf/topics1.pdf
FRPなどの樹脂でできているタンクは、古くなれば太陽の光などで劣化する
どんなことがあっても、天板の上には人を入れてはいけない。
FRPタンクを保有しているなら一度は上記の資料は読んで欲しい文献だ
昔、鳥取労働局がFRPなどの材質を使った塩酸タンクの事故事例と対策という文章を出している
参考になるはずだ
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/seido/ensan_taisaku2402.pdf
FRPなどの樹脂でできているタンクは、古くなれば太陽の光などで劣化する。どんなことがあっても、天板の上には人が乗ってはいけない
タンクへの転落防止には,タンクの猿ばしご付近にイラスト入りの転落注意の表示を取り付けて欲しい
厚生労働省のホームページにも事故事例がイラスト付きで載せられている
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101319
FRPタンクからの転落事故は繰り返し起きている
FRPタンクを所有しているなら参考にして欲しい

 

2024年01月15日

最近のHAZOPに思うこと

HAZOPと言う安全性評価手法がある。日本で、この手法が使われ始めたのは1980年代だ。いまから40年前だ
1970年代は事故が多発した。当時はまだ、事故が起きてから、原因と対策を考える時代だった
しかし、事故が起きてからでは遅い。事故が起きる前に、事故が起こる可能性を事前評価して事故の発生を減らしたいと皆が考えていた
そこに現れたのが、HAZOPという安全性評価手法だ。イギリスで開発された、安全性評価手法だ
仕掛けは簡単だ。プラントというのは、ずれが事故を引き起こすという所に着目している
温度が変われば、プラントのトラブルにつながる。圧力の変化も、トラブルにつながる
つまり、プラントでずれが起こると事故になるということに着目した安全性評価手法だ
まず、ずれが起きたとき、どんな悪いことが起こるか考える。ヒヤリで済むのか、漏洩か火災か爆発するのかを考える
ずれから悪いことが起こるシナリオを考えるのだ。つぎに、この悪いことに対して現状の安全設備がどうなっているのかを考える
まずは、異常に気づけるかだ。わかりやすく言うと警報があるのか無いのかだ。警報すら無ければ異常に気づけない
次は、異常に気づいたら事故にならないように対処できるのかを考える。人で対応できるならそれで良し
しかし、時間的に余裕がないなど人で対応できなければインターロックなど機械的安全装置が必要だ
このように、現状の警報や安全設備で事故が起きないかをシステマチックに検証していくのがHAZOPだ
この確認作業を配管一本一本、機器毎に確認していく。手間もかかる作業だが抜けがなければプロセスを網羅的にチェックできる
最近のHAZOPでは、さらに深掘りしてリスクベースで評価する手法も追加されている
機器故障確率やミスの発生頻度までも考察させている。ものすごく手間も暇もかかる手法になってきている
HAZOP導入当初の目的は、ずれから最悪の事態を予測して現状の設備で事故が防げるのかを簡便に評価していたはずだ
それがいつの間にか、人のミスの発生頻度、機械の故障確率など確率論的要素が追加され、時間を要する評価手法になってきている
限られた時間の中で、安全性は評価するしかない。HAZOPはやればいいものでは無い
HAZOPと言う物は、深掘りできるかも重要な要素だ
ずれから起こる、最悪の事態を直感的に予測する能力を常に研ぎ澄ますことにも時間を使って欲しい
機器故障確率や人のミスの発生頻度までも考察させている手法は時間がかかる。ずれだけで、リスクを簡便に摘出する手法も併用して欲しい

 

2024年01月10日

長期の休み明けで事故が起こることがある

今から10年前の2014年1月9日に三重県四日市で起こった熱交換器の爆発事故を覚えていますか
爆発により多くの人が死亡した事故です。
https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-0612.html
この事故は、多くの教訓を与えてくれています。
年末から年始にかけて長時間窒素でパージしていれば安全と考えていたことが事故につながりました
熱交換器に残っていた物質は乾燥させると危険な状態になる物質でした
ドライ窒素のようなの乾燥した気体では爆発感度がものすごく上がることが事故報告書にも記載されています
乾燥した、窒素でパージしたことが結果として事故の被害を大きくしました
窒素でパージすれば安全という、思い込みが事故につながっています
乾燥させると危険な物質も世の中には沢山あると考えて下さい
特殊な物質を扱っていたから起こった事故だと単純に捉えてはいけません。
熱交換器の開放時に起きた事故です
どこの化学工場でもやっている熱交換器の開放作業に関わる事故だととらえておく必要があります
熱交換器の蓋を開ける前に、無害化されているかがきちんと確認できるシステムになっていなかったことが事故になっていたのです
安全かどうかは経験則に頼っていたのでは駄目だと言うことです
本質的な意味で、化学工学的に安全だという作業マニュアルになっていなかったのです
長期の休み明けで、安全だということを確認する方法を明確にしておいてください
休み明けで起こる事故も多いからです
休み明けの現場確認をしっかりやってください

 

2024年01月05日

世の中なにが起こるかわからない

年始めに大きな地震だ 元旦のんびりしていたら、突然地震警報器が鳴り出す
我が家には、全国の地震を検知して警報を出す機器が3台ある
元旦16時過ぎ、3台ある警報器が突然なりだした なんなんだろうとテレビをつけたところ能登の地震だ
昨年能登は旅行に行ったばかりなので、輪島や能登空港の姿をしっかりと思い出す
震度7はとんでもない地震だ
輪島の大火災は、やはり初期消火は地震ではうまくいかなければこうなると感じた
しばらくして原発の情報も伝えられた
やはり、変圧器の事故が起こっていた 幸い火災にはならなかったが絶縁油が漏れた
過去原発では変圧器の火災がおこっている
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h20/1/7/cat2/871.html変圧器は油を使う 油が漏れれば火災になる 原発で怖いのはこのこの事故の教訓は活かされていたのだろうか
原発は電気で冷却ポンプなどを動かして冷却している 電気がなければ冷却出来なくて事故になる
電気が来なくなることはものすごくこわい
2重3重に電源系統があるから安全だと行っているが、地震のようなケースではそれが保障できるとは言い切れない
最悪の事態というのは、必ずしも想定された範囲内で起こるとは限らない
人は今まで経験してきた範囲でしかものを考えられないからだ
元旦が明け、1/2になったら羽田で飛行機事故が起きた
考えられない事故だ
滑走路上で飛行機どうしがぶつかるなんて考えられない事故だ
同じ滑走路に飛行機が2機あれば起こる事故だ
GPSがあるこの時代、滑走路上にある機体と侵入してくる飛行機と瞬時にAIで検出して警報を出せないのだろうか
人である限りミスはする
AI技術などを使って少しでも事故をなくせる技術を早く導入していきたい
今回の事故でも、基本は誰かの人にミスだ
人のミスは、機械でなんとかするしかない
技術をうまく使っていきたいと考えた年始めだ

 

2024年01月03日

今年一年の重大事故を振り返って 

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
1月は千葉県での火災だ。バイオマス発電所の燃料貯蔵サイロで木質ペレットの自然発火と言う事故がある
https://www.daigasgps.co.jp/emergency/index.html 近隣で異臭が継続していた事故だ。
可燃物を大量に貯蔵すれば酸化熱で自然発火するリスクが存在する。石炭の自然発火事例も多い。原材料の貯蔵リスクを甘く見なことだ。
4月 新潟にある化学企業で火災が発生した。その後も事故が続いた
https://www.uxtv.jp/ux-news/%E7%81%AB%E7%81%BD%E3%81%AA%E3%81%A9%E7%9B%B8%E6%AC%A1%E3%81%90%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%AB%E9%9D%92%E6%B5%B7%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E3%81%A7%E5%AE%89%E5%85%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%82%92%E7%A2%BA%E8%AA%8D/
6月には新潟のこの企業で配管を電動ノコで切断中爆発死亡事故が発生した
https://www.youtube.com/watch?v=4bTnVhvFEPw
その後事故の中間報告が出されている https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1181/20231122_denka_omi_interim_report.pdf
窒素などで乾燥させると爆発感度が上がる物質が存在していたという
7月に四国にある化学企業で塩素が漏れる事故が発生した。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/591310
8月には実験中に爆発事故が起きている https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/630454?display=1
8月にボイラーの爆発事故が起きている https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230830548152/
https://kuni2.com/mitsubishi-paper-mills-hachinohe-plant-boiler-explosion-accident/
ボイラーの事故は、たびたび起きているが事故の情報というのは公表されない。危険物でも無く。高圧ガス設備でも無い。
労安法の規制を受ける設備だ。ボイラー協会などが情報を持っているが、なかなか積極的に情報を公開していはいない
8月倉敷のコンビナートで落雷火災があった。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230823/k10014171391000.html
9月タンク爆発事故がある https://www.youtube.com/watch?v=YnGelX90JbU
11月徳山で工場爆発があった 死亡事故なのに、その後情報は公開されていない https://www.tosoh.co.jp/news/info/2023/20231108.html
11月名古屋で電気集塵機による火災があった この企業はすみやかに事故の原因を公表している
https://www.nissanchem.co.jp/news_release/news/n2023_11_17.pdf
企業によって事故の情報の公表のしかたが大きく異なる
真摯に情報を公開する企業もあれば、今後関係省庁と連携し調査していきますと書いただけで何らその後情報を公開しない企業もある
事故の原因を公開してくれた企業に感謝したい。事故を防ぐには、事故から学んだ情報が必要だからだ

 

2023年12月30日

事故は他人事ではない 技術技能伝承の難しさ

過去の石油や化学工場の事故事例を見ると,世の中では10年周期で大きな事故が起こっている
10年も経つと,人も技術も,環境も変わってくるからだ
長い間事故が無いと企業は安全だと思い込んでしまう
経営者も、管理者も、現場で働く従業員も皆そうだ
事故が無ければ安全と考えるのは当たり前のかもしれないが、たまたま事故が起きなかっただけである
事故の芽は常に企業の中にある
老朽化などは典型的な例だ。新設の機械は事故は起きないが、やはり時間が経てば機械は壊れて事故を起こす
ベテランが退職していけば、組織の実力は落ちる 技術伝承はしていると思っても、全ての技術は伝承できない
文書化できないこともある いわゆる、文字に書けない暗黙値といわれる技術や技能は沢山ある
技術や技能は人が退職すれば失われていくものは多い
人に技術有りだからだ
企業は成長して存在意義がある 成長をつかさどった人は常に年を取り退職していく
ベテランがいなくなれば企業の技術力や安全力も低下する
事故が起こるのはそれに気づかないからだ
いままで大丈夫だったは通用しない 企業の安全を守るにはかなりの努力がいる
事故が起きるのは、企業への警鐘だ そろそろ手を打ちなさいと警鐘しているのだ
自分たちでなんとしようと思うのは大切だが、スピードが大切だ
世の中に色々な技術を持っている人は沢山いる
その人達の力を借りることだ
いわゆる安全のプロの力を借りて早く問題を解決することが企業の存続につながるのだろう
暗黙知と言われる分野は技術伝承が難しい
事故は必ず起きる
事故を防ぐのは,なぜ事故が起きるのかを知らないからだ
事故が起きるメカニズムを知って欲しい

 

2023年12月25日

フォークリフトのエンジンが着火源になることもある

フォークリフトのエンジンは、着火源となることがあると思っているだろうか
可燃物を取り扱うようなところでフォークリフトを使うことはある。
たとえば廃油などを扱う工場では、廃油はそれほど危険ではないと思っている人も多い
だから、廃油処理関係の工場では事故が繰り返し起こることがある
廃油そのものの引火点は、それほど低くないが廃油を処理するときには
メタノールという可燃性の液を使うことがある
メタノールは、引火点が低く着火源があれば簡単に火がつく
2019年3月17日に廃油の処理工場でこのような爆発死亡事故が起こっている
http://tank-accident.blogspot.com/2017/03/3.html
この事故は、ポンプ出口側にに取り付けてあった樹脂製ホースが外れ
可燃物の混ざった処理中の廃油が流れ出した
従業員が、近くにあったホークリフトのエンジンをかけ退避しようと動かし始めたところ
それが着火源になり爆発した事故だ
エンジン点火用の装置の火花が原因のようだ
危険物保安技術協会から、詳しい報告が出ているので
それも参考にして欲しい
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/187/kikenbutsu_jikokanren_info01.pdf
工場内でなにもトラブルがないときは安全かも知れないが
可燃性ガスが万一発生した時には、フォークリフトなどの車両は着火源と考えて欲しい
安易に動かさないことだ
可燃物を取り扱う工場では、防爆のフォークリフトも販売されているので導入を検討しておくことだ
フォークリフトが着火源になることもあると思って欲しい

 

2023年12月20日

コンビナートの計器室

コンビナートにある計器室を見たことがあるだろうか
コンクリートでできた丈夫な建物だ
爆風にも耐えられるように、頑丈なコンクリートでできている
化学プラントがある方向には、窓は取り付けられていない 過去に窓から爆風が吹き込んで事故になったことがあるからだ
万一爆発が起こっても、計器室内に爆風が入らないように製造プラント側に窓がない仕様になっているのだ
外国では過去に爆発で、計器室が爆風で大きな被害を受けたことがある
その教訓が日本にとり入れられているのだ
1974年イギリスで大きな爆発があった その時計器室が大きな被害を受け沢山の死傷者が出た
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0058048.html
化学プラントがある方向にガラスの窓があったことから爆風をもろに計器室内で受けた事故だ
これを教訓に、プラント側には窓は作らないのが世の中の流れとなった
こんな巨大な爆発事故もある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/2/30_122/_pdf/-char/ja
ケーブルダクトを通って計器室に火が入りそうになった事故だ
この事故の教訓から、ケーブルダクトの延焼防止なども強化された
計器室は地面より少し高めに作られている。密度の重いガスが漏れて地上を流れてきても計器室内に流入しないようにしているのだ
さらに、計器室内はわずかに加圧している。室内の圧力を少し高めているのだ
工場で万一有毒なガスが漏れても、計器室内に入り込んでこないような設計をしているのだ
人は過去の失敗に学ぶという
先輩方の失敗に学び今の設備はできていると思って欲しい
過去の失敗事例をこつこつと学んで欲しい

 

2023年12月16日

ガスケットで起こる事故

ガスケットで起こる事故は多い。ガスケットのことはパッキンとも言われる
材質を間違えるという事故の形態も多い
ガスケットは、温度、圧力、耐食性を総合的に判断して最適の物を選定する
ところが、これらの条件を考慮せず選定して事故になることも多い
一つは、温度などの条件を甘く見たというケースだ
本来なら最悪の条件でガスケットの選定を考えるべき所を通常の運転条件で判断していたケースだ
サイズを間違える事故事例も多い。取り付けた物の面圧が足りず、漏れたという事故も多い
ガスケットは見かけは似ていても材質が違うものも多い
しょっかりと荷札などを付け識別管理をしなくてはいけないのに、それを怠っていたことで起こる事故も多い
倉庫などでの管理をしっかり行うことだ
仮ガスケットで起こる事故も多い
定修工事中に、洗浄作業をする際、本来の材質要理はグレードの低い仮ガスケットを使うことがある
例えば水洗浄する為に安価なシートガスケットを使う
本来なら、運転にはいる前にこの仮ガスケットを取り外し正規のガスケットに戻すはずだ
ところがうっかり仮ガスケットのままスタートしてしまい事故を起こす事例も多い
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000186.html
仮がガスケットの管理をしっかりやって欲しい
仮ガスケットであることが目立つような表示をつけるなどして事故を防いで欲しい

 

2023年12月10日

HAZOPでの失敗事例 警報の見落とし

HAZOPという安全性評価ツールがある。どんな、安全性の評価をしようと、見落とすこともある
そこそこの安全対策では、100%事故が防げるわけでは無い
例えば、警報があるから事故に気づき、事故は起こらないと考えたら大間違いだ
警報はあっても、聞き漏らすこともあると考えなくてはいけない
通常運転で、なにもトラブルが無いときなら警報を見落とすことも無いかも知れない
ところが、スタートアップや停止作業時では警報がいっぱい鳴る時などでは見落とすこともあると考えた方が良い
スタート時に、警報を見落とし加熱炉内の炉床が火災事故になった事例があるので紹介しておく
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-217.pdf
加熱炉は、元々は燃料ガスによる単独の炉だったのだろう
あるとき、プロセス内で発生する排ガスを有効利用し炉で燃焼しようと考えたようだ
蒸留塔のリフラックスドラムから発生するガスを、この加熱炉に引き込んで燃焼させ有効利用しようと設備改造を行った
この廃ガスを燃料として有効利用していたようだ
ところが、プラントのスタート時リフラックスドラムの液面がHIレベルを超えているのに警報を見落とした
ダラム内の液が、結果としてオーバーフローし、ベンドガスラインを通って加熱炉内に流れ込んだ
流れ込んだ液は、燃焼性の高い液だったので加熱炉内で異常燃焼が起こって事故になってしまったのだ
警報で事故を防止する手法は、人に大きく頼る安全性手法だ
人が100%警報を認識するという保障は無い
HAZOPの信頼性を上げるには、人が警報を見落としても安全かを考えて欲しい
人が異常に気づかず重大事故になるならインターロックを追加する対策を考えて欲しい

 

2023年12月07日

窒素でパージしたから安全と思うな

2023年6月新潟県にある化学工場で配管切断工事中に死亡事故が起きた 作業員1名が死亡したという
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/234041
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1140/20230614_denka_omi.pdf
事故には予兆があると言われるが、今年4月に入って何度も火災事故が起きていた
消防の立ち入り検査も受けていた。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/457858?display=1
数年前にも工事で事故を起こしている。https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/762/20200907_denka_omi.pdf
2023年6月起きた配管切断工事中の死亡事故の中間報告が先日企業から公表されていた
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1179/20231122_denka_omi.pdf 
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1181/20231122_denka_omi_interim_report.pdf
事故の要因を要約するとこうだ。乾燥すると爆発する危険な物質が配管内に残っていた
乾燥すると危険なことはわかっていたので,事前に水で湿らせて洗浄はした
しかし、水があると配管切断時液が噴き出すとリスクもあるので安全の為に窒素で再度パージした
誰でも,窒素でパージすれば安全と思い込む。ところが、この危険な物質は乾燥させると危険な状態になる物質だった
一度水で洗浄したから,湿らせて大丈夫と思い込んでいたようだ。しかし、配管内を窒素でパージしたことにより乾燥してしまった
配管を電動のこぎりのような道具で,切り始めたとき当然摩擦熱というのが発生する。100度ぐらいだったようだ
配管内に残っていた危険な物質は。100度ぐらいで発火する物質だった
火がついて配管内を炎が逸走した。配管の一部に、この危険な残渣が残っており炎で爆発的な現象が起こり配管が吹き飛んだ
これにより,近くにいた作業員が死亡したという事故だ
乾燥させると危険な状態になる物質が関係する事故だ。窒素でパージしたことで,乾燥状態になり爆発したのだ
窒素でパージしたから安全と思わないで欲しい。乾燥させると危険な物質も沢山あるからだ

 

2023年11月30日

最近のHAZOPに思うこと

HAZOPと言う安全性評価手法がある
日本で、この手法が使われ始めたのは1980年代だ。いまから40年前だ
1970年代は事故が多発した。当時はまだ、事故が起きてから、原因と対策を考える時代だった
しかし、事故が起きてからでは遅い。事故が起きる前に、事故が起こる可能性を事前評価して事故の発生を減らしたいと皆が考えていた
そこに現れたのが、HAZOPという安全性評価手法だ。イギリスで開発された、安全性評価手法だ
仕掛けは簡単だ。プラントというのは、ずれが事故を引き起こすという所に着目している
温度が変われば、プラントのトラブルにつながる。圧力の変化も、トラブルにつながる
つまり、プラントでずれが起こると事故になるということに着目した安全性評価手法だ
まず、ずれが起きたとき、どんな悪いことが起こるか考える。ヒヤリで済むのか、漏洩か火災か爆発するのかを考える
ずれから悪いことが起こるシナリオを考えるのだ。つぎに、この悪いことに対して現状の安全設備がどうなっているのかを考える
まずは、異常に気づけるかだ。わかりやすく言うと警報があるのか無いのかだ。警報すら無ければ異常に気づけない
次は、異常に気づいたら事故にならないように対処できるのかを考える。人で対応できるならそれで良し
しかし、時間的に余裕がないなど人で対応できなければインターロックなど機械的安全装置が必要だ
このように、現状の警報や安全設備で事故が起きないかをシステマチックに検証していくのがHAZOPだ
この確認作業を配管一本一本、機器毎に確認していく。手間もかかる作業だが抜けがなければプロセスを網羅的にチェックできる
最近のHAZOPでは、さらに深掘りしてリスクベースで評価する手法も追加されている
機器故障確率やミスの発生頻度までも考察させている。ものすごく手間も暇もかかる手法になってきている
HAZOP導入当初の目的は、ずれから最悪の事態を予測して現状の設備で事故が防げるのかを簡便に評価していたはずだ
それがいつの間にか、人のミスの発生頻度、機械の故障確率など確率論的要素が追加され、時間を要する評価手法になってきている
限られた時間の中で、安全性は評価するしかない。HAZOPはやればいいものでは無い
HAZOPと言う物は、深掘りできるかも重要な要素だ
ずれから起こる、最悪な事態を直感的に予測する能力を常に研ぎ澄ます方にも時間を使って欲しい

 

2023年11月25日

乾燥炉トラブルが社会に大きな影響を及ぼすことがある

車のバネを製造する工場で爆発事故が起きた
この事故でトヨタの工場が停止するなど大きな影響がでたという
トヨタは在庫を持たない主義だから影響は甚大だった
https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20231026_30863
トヨタの国内8工場13ラインが稼働を停止したとのことだ
このように、生産トラブルが起こると大きな影響を及ぼすこともあるのが今の現状だ
労災自体は軽症で済んだ乾燥炉の爆発事故ですが、顧客の事業継続に多大なる影響を与えてしまった事故だ
乾燥炉の爆発原因はこうだ。通常、燃焼室のバーナーで作り出した熱を乾燥炉へ送り込んでいる
ところが、燃焼室と乾燥炉の間を循環しているダクトのフィルターの目詰まりが起きてしまった
目詰まりの原因は、近くで粉塵が出るような設備の撤去工事が行われていたからだ
工事の粉塵で、フィルターが詰まり、結果として空気循環が悪化したことにより、
燃焼室内の温度が上がりすぎた。温度が高くなったことから、運転対応としてバーナー燃焼用の空気供給量を抑えたところ
燃焼室から不完全燃焼のガスが発生、乾燥炉内に流入、蓄積するような状況となった
その後、炉内温度が下がり過ぎたため、バーナーへの空気供給量を増やす対応をした
当然、一気に燃焼量が増え、バーナーの火が強まり、乾燥炉内に溜まっていた不燃ガスに到達し引火して一気に爆発したようだ
最初のきっかけは、隣接エリアでの撤去工事で発生した粉塵の影響でフィルターが目詰まりしたことだ
次に、炉の温度変化に対し運転操作がうまくいかず不完全燃焼から爆発に至ったというわけだ
火が消えていれば、安全に停まるようなインターロックは持っていたはずだ。つまり失火検知機能だ
不完全燃焼時の対応は、たぶん人に頼るところが大きかったのかも知れない
他社でも空気ダンパーの急変などで同様な事故も起きている
トラブルが起きたときは安全に停めた方が事故にはならない 生産優先だったのかも知れない
乾燥炉を持っている企業は参考にして欲しい事故事例だ

 

2023年11月19日

AIと言うツールとどうつきあうか

AIというツールに世の中関心が集まっている
コンピューターがなせる技だ
1980年代日本でもコンピューターが登場した。NECが8001という機種をパーソナルコンピューターとして販売し始めた
BASICという言語でプログラムをつくり色々なことをやり始めた
私の務めていた企業でも、化学工場のメンテナンス計画をプログラミングしたのを覚えている
記憶できる量も、フロッピーデスクで1Mバイトだったと覚えている
この頃化学工場でもDCSという道具を使い始めた。外部記憶容量はまだ20Mバイトだった気がする
そのころ人工知能という言葉がはやり始め、チャレンジしてみたがやれることに限界があった
自分の知っている情報の範囲内で答えを出す方式で、まだまだ連想して答えを出す方式ではなかった
つまり使える情報は自分の情報だけだったからだ
ところが昨今のように、クラウドなどのシステムができたことによる取り扱える情報量が無限になった
おまけに翻訳システムも進化したので、海外の情報も自動翻訳して知識の一端として使えるようになった
このクラウドというインターネットシステムが使えるからこそ昨今のAIが効果的に使えると考えていいのだろう
ただクラウドにある情報は、著作権の壁を越え勝手に使われているという現状がある
一度クラウドにあげてしまうと著作権はあるようで無いと思った方がいい
この法律の壁を越え無限の情報を手に入れられるシステムがあるから急速にAIが成り立っている
今の世の中膨大な情報を簡単に手に入れられ、推論に使えるからだ
ビックデーターも手に入れられれば、更に分析能力は高まる
自分の持っている情報を対価も得ずに盗み取られるのがAIでもある
知的財産を持つ人は、AIと上手につきあうことも考えて欲しい
巨大AI産業だけがどんどん利益を得ていく構図だ
個々人の持つ知識が正当に評価され、対価が得られるAIであって欲しい

 

2023年11月10日

配管撤去で場所を間違える事故

2016年10月にドイツにある大手化学会社BASFで死傷者の出る大きな事故が起こっている。
何人もの人が亡くなり、数十人もの負傷者が出た。
https://blog.knak.jp/2016/10/basf-ludwigshafen.html
https://www.dw.com/en/cause-of-deadly-explosion-at-basf-chemical-plant-in-ludwigshafen-remains-unclear/a-36072867
原因は、何本もの配管が通っているパイプラインで誤って生きている配管を切断して漏れた油に火が付き爆発した事故だ。
BASFといえば100年以上の歴史ある化学会社だ。アメリカのDUPONなどともならび安全管理には厳しい会社であるはずだ。
誤って生きている配管を切るという事故は、日本でも繰り返し繰り返し起きている。
私も、撤去工事で工事業者が生きているメタノール配管を切りヒヤリとしたことがある。
幸い着火はしなかったが、いまでも、もし火が付いていたらどうなったのだろうとおもう重大ヒヤリだ。
日本でも、工事は工事業者任せになっていないだろうか。
安易に現場の立ち会いを減らすとこのような事故はおこる。
発注者側の管理体制がどうなっていたのかを知りたいところだ。
ある英文記事を見ていたら、着火源は近くでさび取りをしていた火花という情報もある。
パイプラインの中で、ごく近い位置での同時並行作業が招いた事故なのかもしれない。
運転中の火花の出る工事は、しつこい位に現場管理を行うことだ。
いくら立派な工事計画が立てられていようとも、現場でそれが守られているかを管理していない限り事故は起こる。
安全担当者はしつこいくらいに現場を回ることだ。
海外で起きている事故の情報はほとんど手に入ることはない
参考までの2016年に海外で起こっている主要タンク事故を紹介している文献がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/55/3/55_121/_pdf
世界中でとんでもない事故が繰り返し起きているということだ
過去の事故事例に学んで欲しい

 

2023年11月06日

フィルムデトネーション現象

フィルムデトネーション現象という言葉を知っているだろうか。
爆発より威力の高いものを爆轟(ばくごう)と呼んでいる。爆轟とは、英語でデトネーションと読んでいる。
フイルム状に爆轟が起こることをこの、フィルムデトネーションと呼ばれる。
https://www.youtube.com/watch?v=RVXUbYSm_yY
配管の中にたまったフィルムのような薄い油状のものに火がつき激しい爆発が起こることを一般的にいっている。
いわゆる、高圧圧縮機などの潤滑油が、吐出側の配管に付着している状態で配管内で爆轟を起こす現象だ。
日本では昭和58年に起こった事故が、失敗百選で公開されている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000196.html
学会誌安全工学にもこんな文献が公表されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/24/3/24_165/_pdf/
高圧の空気圧縮機を持っている企業の方々は一度読んでほしい。
空気は高圧になると、強力な酸化剤になる。圧縮機に使われる、潤滑油は可燃物だ.使っているうちに、油は劣化する。
劣化すれば当然発火点は下がるから、火がつきやすくなり着火すればフィルムデトネーションと呼ばれる爆発的な現象が起こることがある。
実験室や研究室でも、空気圧縮機は使われているはずだ。
ベビコンを含めた空気圧縮機には、給油式タイプと無給油式タイプの2種類ある。
そのうち、給油式タイプのものを使用している場合には、取扱説明書には定期的な清掃、点検が必要だと書いてある。
なぜなら、長時間使用しているうちに潤滑油の劣化物が配管の内側に膜状にこびりつく
そこに静電気とか断熱圧縮あるいは自然発火など何らかの着火源が発生した時に、爆発する恐れがあるからだ。
潤滑油のフィルムデトネーションを意図してのことだが、そこまで読み取れる人は少ない。
フィルムデトネーションと呼ばれる現象がおこれば、機械の損傷はもちろんのこと、配管が噴破するなどして人身事故につながることもある。
フィルムデトネーションという現象も知っておいて欲しい。
最後にある潤滑油メーカーのホームページに空気圧縮機の発火事故という情報もあるのでこれも是非見て欲しい。
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0706.php

 

2023年10月29日

圧力差を甘く見ていないか 吹抜け事故

化学プラントの製造装置であれば運転圧力は気になるところだ
圧力が高い高圧機器であればかなり気をつかうところだ
化学プラントの機器は配管でつながっている
圧力に応じて耐圧性能に値する金属材料が選定される
化学プラントは順調に運転されていれば問題は無いが、当然運転トラブルは起きる
運転トラブルの中で怖いのは吹抜けと呼ばれる現象だ
高圧の機器から低圧の機器へ液やガスが吹き抜ける現象だ
低圧側の耐圧性能を越える流体が流れ込めば、低圧機器は簡単に破壊する
一般的に、機器は安全率を見て約3倍の圧力がかかっても破裂しないように設計はされている
しかし、設計圧力の3倍を超えるような圧力が加われば機器は破壊される
過去の事故事例を見ると、4倍以上の圧力がかかれば破壊されている
これからわかることは、HAZOPなどで安全性を評価するときにも圧力差があるプロセスにはこの吹抜けをしっかり調査する必要がある
つまり、プロセスの中で、上流または下流側の運転圧力がおよそ3倍を超えるようなプロセスではこの吹抜けをしっかりとチェックすることだ
吹抜けで機器の破損が起こっている事例は沢山ある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/1/30_57/_pdf/-char/ja
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00149_s.pdf
この事故は,155MPaの高圧ドラムから0.9MPaで運転する低圧ドラムに吹抜けドラムが破裂した事故だ
死者こそ出なかったが,損害額は当時の価値で119億円だ
原因は吹抜けに気づかなかったことだ。液面計は沢山あったが,アラームを見落とした
インターロックはあったが、液面計の誤作動も多く配線を外していたという
つまりインターロックは作動しないまま長期間放置されていたという重大な過失があった
さらに、低圧ドラムの安全弁も火災の輻射熱しか想定しておらず,吹抜け対応で設計されていなかったと言う
設計段階のミスと安全装置の運用管理で失敗した事故だ
リスクマネージメントでもこの圧力差を見落とさないで欲しい

圧力のエネルギーを甘く見ないで欲しい

 

2023年10月25日

化学物質を扱う子会社の安全管理

工場内の敷地にある子会社で事故が起こることがある
事故が起こってしまえば、親会社も、責任を追求される
子会社化や分社が進んだのは、1980年代後半だ。その頃日本経済はバブル経済が破綻し企業の更なるコストダウン化が進んだ
製品の製造には、複雑な製造機能もあれば、単純作業の製造作業もある
原料の受け入れや、製品の移動運搬、貯蔵の業容は別会社化や下請け化が進んだ
企業は少しでもコストダウンしたいから、単純と思われる作業はコストの安い手法を採用する
請負という作業形態もある。子会社化や分社化という手法も使われる
コストは安くなるが、安全管理というレベルはそれ相応に下がる 安全はただではない。安全にはお金がかかるからだ
請負側や子会社や分社した組織に親会社並みの専門知識を持った技術者は確保できないのが現実だ
では、親会社が安全面をフォローすればいいと思うがそう簡単にはいかない
親会社とて、潤沢な人材を持っているわけではない。その結果、子会社で事故が起きるようになる
製品を入れた移動式タンクで静電気が原因で起こった事故がある
アース不良で静電気で粉塵爆発が起きた事故だ
https://blog.knak.jp/2010/04/post-724.html
固定式のタンクなら、しっかりと接地がなされ静電気事故のリスクは低い
ところが、移動式であれば接地がおろそかになるというリスクを甘く見ていて起きた事故だ
タンクが塗装されていれば、接触不良も起きやすい
事故後、親会社である発災企業から再発防止策が公開されている
https://www.sumitomo-chem.co.jp/news/files/docs/20100512_1.pdf
参考にして欲しい
生産機能を細切れにし、安全管理の責任をあいまいにすると事故も起きるということだ
子会社化、分社化すれば、安全管理の機能は落ちる
そこをどう補っていくかもしっかり考えて欲しい
人に技術有りだ
最近は企業のDX化が話題になる
しかし、企業活動というものは、単純にAIやIOTで補えないものも沢山あると思って欲しい

 

2023年10月21日

配管の腐食漏洩事故防止の難しさ

化学プランは配管だらけだ。小さなプラントでも数千m、大きくなれば数万mもの長さがある
つまり。対象となる配管が大量にあると言うことだ。腐食に対し検査はするものの全数検査ではない
重要なところの抜き取り検査が主体となる。結果として、想定していなかったところから漏れて事故になる
配管の肉厚検査をしても、数センチ離れれば状況は違う 局部的な腐食も起こるからだ
では、放射線検査で写真をとって平面的に見ればいいのだが、点で検査する超音波検査などに比べコストがかかる
腐食漏洩事故は、2種類ある。外面腐食と内面腐食だ。
やっかいなのは保温を被せた配管だ。保温材の中に入り込んだ水で徐々に腐食が進行する
保温材をはぐってみないと腐食状況がわからないので対応が難しいところがある

化学災害事例を見て見ると、配管の腐食漏洩事例が多い
保温材や保冷材を被せている配管での事故事例が多い
間欠運転であれば、配管に液などが流れていたり、いなかったりするからおこる事故の形態もある
温度のある流体であれば、配管が冷えたり、熱くなったりを繰り返すのだ
冷えれば、空気中の水分が結露する。保温材や保冷材のすき間を通って配管表面に水分が侵入する
時間が経てば、配管の外面腐食が起きて穴が開くのだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-028.pdf
間欠運転で使用する配管は、保温や保冷材にすき間がないかをしっかり見て欲しい
結露で配管腐食事例は多いからだ
間欠運転でもう一つ配管で気おつけなければいけないのは、スラッジだ
連続的に流体が流れていれば、スラッジは溜まりにくいが、間欠運転だとどうしてもスラッジが配管内部に溜まりやすい
配管の立ち上がり部などにスラッジは溜まることになる
腐食性の物質が含まれていれば、スラッジ部で濃縮されたりして腐食速度は上がる
気づかずに運転していると突然穴が開いて噴き出す事例も多い
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00082.pdf
間欠運転だからと行って、管理密度を下げないで欲しい
連続運転や間欠運転で起こる事故要因にも目を向けて欲しい

 

2023年10月15日

安全配慮義務とは

安全配慮義務という言葉がある 誰が誰に対する義務かというと、【労働契約法第5 条】ではこう定めている
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする
」使用者とは、賃金を払う人だとこの法律では定めている。つまり、雇用主と労働者の関係で求められる義務ということになる
労働契約法と、労働基準法とは異なるので注意が必要だ。労働契約法とは、民法だ。刑事罰のような罰則は無い
労働基準監督署の行政指導の対象でも無い。しかし、安全配慮義務を怠ると損害賠償請求を起こす根拠となる
民事上の損害賠償請求を、使用者は求められることになる。使用者と労働者の関係であれば化学企業の中でも安全配慮義務は存在する
化学工場で労働者が機械に巻き込まれたりすれば、安全配慮義務違反という問題も発生する
労働安全衛生法という法律がある。この法律は、事業者(会社)が守るべきこと及び労働者が守るべきことを規定している
事業者が機械を設計する際安全を配慮した設計をせず法律も守っていなければ、安全配慮義務違反にもなる
刑法の法違反は刑事罰で処分されるし、民法上の安全配慮義務違反は民事裁判等で審議される
では、化学企業が装置を停止して、建設業などの協力会社に定修工事を発注するときは安全配慮義務は生じるのかどうかである
発注書は、元請け企業に発注する。元請けは、下請けに仕事を発注するのが建設業などの形態だ
工事で、下請けの労働者が怪我をしたとしよう。
化学企業は、怪我をした労働者の使用者では無い。では、安全配慮義務は生じないかというとそうはいかない
たとえば、下請けの労働者は、化学物質で薬傷を負ったとしよう。発注者は、作業をする労働者が薬傷などを負わないような配慮が必要だ
例えば、装置や配管などの薬液を抜き、十分な水で洗浄を行い安全な環境を確保する必要がある。
それを怠っていれば、安全配慮義務違反から逃れることはできない
発注者は、使用者では無いから安全配慮義務は問われないと思わないで欲しい
多層の契約形態であっても、労働者の安全に関わる事項であれば、上流である発注者までその責任が及ぶことがある
安全配慮義務に関する法令や違反事例については、勉強しておいて欲しい
https://www.oreyume.com/column/p-cat-02/9449/
https://www.irric.co.jp/risk_info/worker/31.php
イラスト出典 https://www.think-sp.com/2013/08/19/kikikanri-anzenhairyogimu/
協力会社が作業するに当たって安全な環境を発注者が提供できていなければ、安全配慮義務を問われることもある
化学企業も人がどんどん減ってきている。事故や災害を自ら経験した人も既に退職している
協力会社に振り向けられる、マンパワーや時間も減ってきている
とはいえ、いかに安全な環境を提供できるかしっかりと発注者は考えて欲しい

2023年10月10日

自動弁が突然開く重大事故は繰り返し起きている

工事の安全管理の中で、「縁切り」という重要な作業がある。危険な物を遮断する作業だ
工場には、危険なものが沢山存在するから、この作業は非常に重要だ。
可燃物が外に出てきてしまえば、火災になる。毒性ガスや、窒素などが漏れ出せば、人は中毒になったり、酸欠になる。
化学工場などは、色々な装置と配管でつながれている。
万一配管を伝って、これらの危険な物が漏れ出せば事故になるから、この縁切りという作業が必要になる。
つまり、「縁切り」とは危険なものを確実に遮断する作業だと考えて欲しい。
配管のフランジ部などに、仕切り板(ブランク版と呼ぶこともある)といわれる金属製の板を挿入して遮断するのが一般的だ。
手動弁を閉めて、縁切りする方法もあるが、バルブは漏れることも考えておく必要がある。
したがって、手動弁を使う場合は2つのバルブを同時に閉めておく必要がある。
つまり、2重にして縁切りの信頼性を確保する方法だ。
一番危ないのは、手動弁ではなく自動弁を使う方法だ。しかも、自動弁を一つだけ使って、縁切りする方法だ。
自動弁が突然開いてしまえば確実な縁切りとはならない。人が間違って、弁を動かして開けてしまうこともあるからだ。
計装空気などで動く自動弁であれば、空気が停止すれば動き始めて弁が突然開いてしまうことがある。
自動弁が意図せず開いてしまうと、可燃物や危険なガスが外に漏れ出し重大な事故につながる。
このような事故は繰り返し起こっているのだが、案外知られていない。
公開されている以下の出典を見て過去の事故事例を勉強して欲しい。
1973/10/8 停電で誤って生きている反応器の自動弁を開き4人死亡 http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000146.html
1987/12/10 自動弁一つで縁切りしていてタンク事故 http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000086.html
1989/10/23 アメリカで23人死亡 https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/2/30_122/_pdf/-char/ja
1994/4/14 大口径自動弁で縁切りして漏れ出し http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000006.html
2003/7/9 一酸化炭素漏れ出しによる中毒事故 http://www.joshrc.org/~open/files/20031118-001.pdf
2007/12/21 高温油漏洩火災で4人死亡事故https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2016_10-2.pdf
自動弁一つだけで縁切りをすることは、大変危険だと仲間にも伝えて欲しい

 

2023年10月08日

有機溶剤中毒

有機溶剤に関して,今まで爆発や火災という切り口ではブログを書いてきた
しかし,中毒などの健康障害という切り口ではコメントはしていなかった
有機溶剤は確かに燃えるから爆発火災というリスクは存在する
有機溶剤は便利な液体だ。色々なものを溶かすという性質がある
水で溶かせれば問題は無いのだが,水では溶かせないという物質も沢山ある
底で登場するのが有機溶剤だ
シンナやトルエン、ベンゼンなどの用語を聞いたことがあるだろう
シンナーというのは,よく使われるのは塗料を溶かす溶剤だ
トルエンなどの有機溶剤の集まりだ
有機溶剤を吸って死亡事故にもなることもある
どのくらいの濃度が危険なのか知っていて欲しい
数十%オーダーの溶剤を吸えばすぐに中毒になる 死亡事故にもなる
数%オーダーの溶剤でも条件によってはすぐに意識を失う
防毒マスクを使えるのもそれ以下の濃度だ
作業環境でやはり数十PPM程度の濃度ではないと人にやさしいとは言えない
数PPMMオーダまで濃度を下げる必要がある
局所排気装置が必要だ
作業者の立ち位置も重要だ
必ず風上側の立たせて作業をする必要がある
有機溶剤は便利な薬液で多くの産業に使われている
しかし、便利さ故に健康障害も多い
有機溶剤を甘く見ないで欲しい

 

2023年09月30日

HAZOP講習

HAZOPに関する講習会を始めてもう6年になる
毎年1から2回ほどWeb方式で講義している
遠隔の方もWebだと酸化したいはずだ
今年最後の私のHAZOP講義は下記のURLにある
https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AG231058.php?gclid=CjwKCAjwgsqoBhBNEiwAwe5w06S9Ae5LjA9LJ9Ivl70-bEifuQDXTd9DClhRUPVyb0f7wfUGMZ0TLRoChmYQAvD_BwE
今年はこれが最後の講義なので興味のある方は聞いて欲しい
HAZOPの講演を始めたのはこんな理由だ
多くの企業が、HAZOPを利用してリスクアセスをしてはいるものの、相変わらず事故は起こっている
なぜなのだろうと考えてみると、HAZOPはやっているものの危険源そのものを見落としているか、リスクは抽出したものの、その対策に甘さがあるかだ
つまり、HAZOPの深掘りが出来ていないのが多くの企業の現状だ
その理由はなぜなのだろうと考えてみると、HAZOPの手法ばかり教えていて、肝心のHAZOPで見落とすような危険源を教えていないからだ
また、せっかくHAZOPで抽出したリスクに対する安全対策も対策が中途半端で事故になった事例もしっかりと教えていないという現実がある
HAZOPを使ったり、HAZOP的な思考をすることは大変いいことだと思う
しかし、HAZOPの失敗事例を学ばなければ、企業としての実力はついていかない
心のあるかたは聞いてみて欲しい
私の知っている6000件の事故事例から抽出したHAZOPの失敗事例だ。 10月18日開催だ

 

2023年09月26日

製品受け入れ検査の大切さ

過去多くの事故の中で、製品の受け入れ検査を省略化したことで多くの事故が起きている
機械設備を購入したたらやはり受け入れ検査が必要だ
機械を製造メーカーに発注してしまえばそれで終わりでない
製造メーカーがきちんと要求通り製作できているか検査しなければ設置後思わぬ事故が起こることがある
事故が起きるのは、メーカーお任せにするからだ
メーカーとて神様ではない
発注者が、メーカーがきちんと検査しているか管理する必要がある。つまり、発注者はしっかり検査する必要がある
発注者が専門家では無いから検査は無意味だと思わないで欲しい
発注者が、検査しないと言えばメーカは手を抜く。それが世の常だ
ところが、発注者はメーカーに検査に行くとなったとたんメーカはやはり検査への対応を始める
発注者は専門家ではないのだから、検査の中身はそれほど専門的である必要は無い。検査に行くという行動が必要なのだ
多くのメーカ-は発注者にそれほどの技術力は無いと甘く見ている
自社のルールで作った物をユーザーに届ければいいと考えているメーカーは沢山ある
だから事故が起きる
メーカーの検査体制とて完璧ではない。発注者が検査に首を突っ込まなければ検査ミスによる製品も納入される
数十年前だが、硫酸ポンプのエアー抜き弁が材質選定ミスで納入された事例がある
使用を開始して数年後、突然エアー抜きプラグが腐食して外れ運転員が薬傷を負った事故事例だ
検査コストも省略しないで欲しい。必要不可欠だ
メーカー丸投げで事故も数多く起きている
しっかりとした検査をすることも事故防止の基本だ
発注者しっかりと検査する姿勢を見せなければメーカー側の検査は甘くなる
受け入れ検査を大切にして欲しい

 

2023年09月21日

10年毎に大きな地震はやってくる

コンビナートなどで、10年周期で大きな事故は起こっている
10年くらい経つと、環境や技術、人も変わってくるからだ
同じように、地震という災害もやはり10年毎にやってくる
過去約半世紀を振り返ると
1964/6/16新潟にあった当時の製油所で人型地震で大きな火災が起こった
マグニチュード7.5,震度5だ
1978/6/12宮城県沖地震が起こる マグニチュード7.4,震度5だ 仙台が大きな被害を受けた
1983/5/26日本海中部沖地震が起こる マグニチュード7.7,震度5だ 秋田が大きな被害を受けた
男鹿半島で7mの津波が起こっている
1995/1/17兵庫県で地震が起こる 神戸の地震だ マグニチュード7.3,震度7だ 直下型地震だ
2003/9/26北海道十勝沖地震が起こる  マグニチュード8.0,震度6だ 
2011/3/11東北大震災が地震が起こる マグニチュード9,震度7だ 津波で大きな被害が起こる
2023/9/11 地震はおきなかったが、関東大震災(1923年)から100年目だ

これをみると、10年周期で日本のどこかで大きな地震後起こっている
コンビナート地区もこつこつ地震対策を強化していくことが必要だということだ
2011年の東北大震災では、東北地区の企業が大なり小なり地震の影響があった
しかし、おもったほどその被害は多く無い
調べてみると、地震を想定してかなり早い時期から地震対策への投資をこつこつ行っていたという
地震対策の費用は膨大だ。一度に対策は出来ない
こつこつ分割して投資していくしかない
昨今大雨も心配のタネだ
排水設備の能力増強にも投資が必要だろう
地震や大雨などの外乱への投資をこつこつ行っていって欲しい

2023年09月15日

運転中の安易な補修工事で起こる事故

運転中にトラブルがおこればメンテナンス部門は修理する
修理がうまくいけば問題は無いのだが、必ずしもうまくいく修理ばかりではない
こんな失敗事例がある。製油所で起きた事故だ。運転中に小さなピンホールが配管に見つかった
本来なら装置を停めて修理すべきなのに、運転しながら修理することにした
LPGという可燃物の配管だから失敗すれば火がつく可能性はある
それでもこの企業は装置を停めずに修理作業を始めた。ボックスイン工法という手法だ
漏れている部分の外周に箱(ボックス)のようなものを取り付けて封じ込めてします工法だ
企業の参考情報があるので、工法のイメージとして紹介しておく
https://www.ipros.jp/product/detail/2000270319/
事故が起きたときの、工事工法は漏れている配管部分の外周にひと回り太い配管を溶接して周りを囲んで漏れを止める工事工法だった
圧力は1.4MPaある為、溶接するも漏れが生じている部分があり何度も溶接を繰り返した
そのうち時間が経ち、ピンホールの部分の穴が拡大してしまい、いっきにLPGを含んだ水が吹き出した着火した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000151.html
水でシールしながら火を使う工事をしても安全だと思い込んで起きた事故だ
LPGという可燃物が混入している水であれば簡単に着火すると考えるのが正論なのだが水があるから大丈夫だと思い込んだのだ失敗要因だ
大型の製造装置は誰でも装置は停止したくはない
立ち上げるのに時間とコストもかかるからだ
しかし安易に、運転しながら修理をすればちょっとした失敗でこのような事故になる
作業というのは、100%うまくいくという保障は無い
人はうまくいくと信じて作業をすることが多い
「うまくいかなかった」ときのリスクマネージメントもして欲しい
失敗への備えが必要だ。運転中の工事で失敗した事例を学んで欲しい

 

2023年09月10日

安全弁で起こる事故

安全弁という安全装置がある 安全装置が作動しなければ当然事故になる
安全弁は機械式の装置だ 錆び付いたりバネが引っかかれば作動はしない
だから定期的に動作点検をする必要がある
昔は、安全弁を過信して点検もせず使っていていざというときに作動しない事故事例も多かった
設定値の設定ミスというのも事故につながる
安全弁には基本的に元弁はつけない
なぜなら、元弁を開けるのを忘れていていざという時安全弁が役立たなかったという事故事例もあるからだ
安全弁は作動すると、設定圧力まで戻る間は吹きっぱなしの状態になるのが一般的だ
ところが、開いたり閉じたりを繰り返すチャタリング現象というのが起こることがある
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2016/03/DANWA2013_04_No82.pdf
非常に短い時間で開閉を繰り返すので激しい振動が起こることがある
安全弁廻りの配管サポートが弱いと配管などが折れることがある非常に怖い現象だ
今から20年ほど前だが製油所でこのチャタリング現象が起こったことがある
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00192.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00192_s.pdf
安全弁は作動しなければ、問題は無いが作動時の振動に対する対策も必要だ
作動時は、大量のガスなどを放出するのだから激しい振動と反動もある
サポートが弱ければ、配管が切断することもある
怖いのは安全弁の入口側の配管破断だ
配管が壊れれば、流出は停まらない
安全弁の振動対策をしっかりと行って欲しい

 

2023年09月04日

落雷事故-避雷針は万能では無い

先日倉敷の製油所で雷が落ち、火災になった事故が起きている
https://news.yahoo.co.jp/articles/32b1ffcd71e7a351f7c56c8eba9ae20e510b75fb
避雷針があれば雷は大丈夫だと思っている人は多いのかも知れないが、100%避雷針があれば安全というわけではない
雷は、避雷針をめがけていつも落ちてくるわけではないからだ 避雷針以外の所にも当然落ちる
日本では、雷による化学工場災害はあまりないが、外国では雷災害が繰り返し多発している
http://tank-accident.blogspot.com/search?q=%E9%9B%B7
http://tank-accident.blogspot.com/2020/07/blog-post_27.html
http://tank-accident.blogspot.com/2013/08/blog-post_21.html
雷のエネルギーはものすごいものだ。雷もうまく避雷針を狙って落ちてくれればそれでいいのだがそうはうまくいかない
避雷針を離れたところで雷が落ちるとどうなるかだ
落ちたところにわずかに金属同士のすきまがあればそこに火花が飛ぶ
タンクなどのように可燃物を貯蔵している設備であれば火花が着火源となる
あっという間にタンクに火が着き火災になる
つまり、避雷針があれば雷の災害を防げるわけではないというのだ
近年異常気象が続いている とてつもない雷も来る
アメリカでもタンク内の雷放電による事故を減らそうと努力をしているがなかなか被害を減らすことはできない
雷のエネルギはとんでもない量だからだ
雷が落ちた時金属に電気が流れると電磁誘導が起こる いわゆる磁力が発生する
これにより、金属が異常振動することがある
サポートの弱い配管で、腐食した配管が振動で折れる事故も過去にある
ポンプの8Bという太い出口配管が、雷で割れた事故事例だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000071.html
ポンプ出側の配管がエロージョンで減肉しているところに雷を受けたので激しく揺れて配管が割れたものだ
当然割れたところから可燃物が漏れ着火して火災になった事故だ
雷のエネルギはものすごいものだ

 

2023年08月25日

設備保全を深く考えるに当たって参考となる書籍

設備というのは設置したら終わりではない。維持管理していかなければならない
ところが、経営者からみれば今正常に動いている機械にそれほどお金はかけたくない
だから、保全担当者にとってメンテナンス費用の確保は容易ではない
昔メンテナンスを担当していたとき、保全費の獲得に悩んだものだ
メンテナンスにお金をいくらかけたらいいのか悩むところではある
設備は正常に動いていても、定期的に点検していなければ突然故障する
小トラブルで済めばいいのだが、影響が大きければ火災や、爆発事故につながっていくこともある
今回、保全について書かれた書籍を紹介しておく
1冊目は古い書籍だが、良い本なので紹介する。丸善株式会社が出版していた本だ
化学プラントの安全対策技術という4冊シリーズの第3巻だ
書名は 「保安・保全の管理技術」だ。化学工学協会編だ。1979年に発行された名著だ。
絶版ではあるが、ネットで検索すれば手に入れられることもある
化学工学会の会員であれば、ホームページから閲覧できるという
https://www.scej.org/publication/viewable-books.html

もう一冊は、2005年に発行された書籍だ。2000年代というのは設備の老朽化が問題となり始めた時期だ
産業ジャーナリストの丸田敬さんという人が書いた本だ 
タイトルは 危機を救うメンテナンスビジネス 「工場はなぜ燃えたのか」だ
エネルギーホーラムという出版社が発行している
ネットで探してもらえば今でも手に入る https://books.rakuten.co.jp/rb/3712474/
メンテナンスと事故についても書かれている。メンテナンスコストという切り口でも考察している
工場などの設備のメンテナンスを担当している人は読んでみる価値のある書籍だと思う


2023年08月20日

空冷式熱交換器の事故--エアフィンクーラー

夏の暑い時期、空冷式熱交換器の漏洩事故も増えてくる
冷却水で冷やす熱交換器もあるが、空気で冷やす熱交換器も工場で多く使われている
空気で冷却する熱交換器は、エアーフィンクーラーなどと呼ばれる
冷媒として空気を使えば、コストメリットはある。空気はただで手に入れることができるからだ
空冷式の熱交換器は、構造は実に簡単だ。
高温の設備を取り扱う製油所などでよく使われている
換気扇のような大きな羽根を、空冷式熱交換器の近くで回して強制的に冷やすのだ
ところが、この空冷式熱交換器は、結構事故を起こしている
冷却される液体を入れた細い配管チューブが腐食などで穴が開き、漏れたとき火災になる事例だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-150.pdf
流体温度は、数百℃だ。可燃性の油などがこの空冷式熱交換器で冷やされる
ガスケットのゆるみで漏れることもある
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2009-037.pdf
油が漏れると、重力があるから漏れた油は下に落ちていく
下に落ちた際、高温物体がなければいいのだが、たいていは下の方に高温物体がある
スチームトレースをしている蒸気配管などがありそれが着火源になることもある
蒸気の圧力によっては、数百度もあるので、流れ出た物質の発火点を超えていれば簡単に着火する
高温のポンプがエアーフィンクーラーの真下に設置されていて火災になることもある
空冷式熱交換器の下に高温の機器や配管を設置しないで欲しい。万一エアーフィンクーラーから可燃物が漏れれば自然発火する
高温機器の上下レイアウトは、漏れを考慮した配置として欲しい

 

2023年08月15日

最悪の事態を考え人は退避させよ

退避という言葉がある。避難させよという言葉だが、ものすごく意義深い言葉だ
事故が起きたとき、現場に人が沢山いるから被害が大きくなるという事実がある
現場に人がいなければ、被害者は出ない
ところが、トラブルが起きると人はどうしても現場に集まる癖がある
状況を見たいのだ
しかし、トラブルが起こったときは、現場に人を近づけてはいけないのだ
何が原因かもわからない段階で人が近づくことは危険だ
異音がする、異臭がすることがあれば大爆発の前兆と考えた方が良い
過去多くの事故の中でも、異常が起きたからと現場に多くの人が駆けつけたときに爆発が起こっている
1982年03月31日に製油所で多くの人が負傷した爆発事故が起こっている
パトロール中白煙を見つけた。そこへ現場の人が多く集まってきた
5人が死亡し6人が負傷する大事故だ
計器室に2名だけを残し、8人が現場確認のため集った
緊急停止をするために計器室に引返そうとした時だった
現場で可燃物の漏出が始まって4~5分という短時間で破裂したため大きな被害となった。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057045.html
見たい知りたいは人間の欲望だからこれを押さえるのは難しい
とはいえ、化学工場などでトラブルが起きたときは現場に人を近づかせないことだ
現場に近づいて爆発火災で大勢の人が犠牲になっているからだ

2023年08月10日

高温機器の安全管理

製油所や高温の製造装置などがある化学工場では、熱に関する管理が重要だ
常温で運転している機械ばかりではない
温度を上げて運転したり、低温で運転する機器もある
温度を上げて運転する機器はやはり温度管理が重要だ
高温機器の温度管理の目安は、まずは100度だ
水を扱う機器であれば100度を超えれば突沸現象などがおこる
100度前後の温度管理も重要だ
次のポイントは300度くらいだ
300度というのは多くの化学物質の発火点だ。発火点を超えれば火がつくと考える必要がある
300度程度の化学物質がフランジから漏れれば火がつくと考えた方が良い
300度前後の温度をしっかりと管理して欲しい
温度が急に下がると、急冷ということが問題となる。急に雨が降ってきて、冷やされると金属は急激に縮む
フランジなどが急冷して漏れて事故になることは多い
熱交換器のフランジ部では熱による事故も多い
雨が急に降ってきて、フランジが急冷され隙間ができて漏れる事故も多い
急激に金属が冷やされて隙間ができる事故だ
高温の熱交換器は、雨で影響を受けないようにフランジ廻りは雨よけカバーがつけられてい
ウエザーカバーという薄い金属でできた鉄板で保護している
雨よけのカバーをウエザーカバーという。.雨よけのためだから保温と言う機能は無い
単なる雨よけのカバーのはずなのだが、たまに誤解をして保温材をカバーに組み込んでしまうことがある
保温をしてしまうと、今度はカバーの中が温度が上昇しすぎて事故になることがある
温度が上がりすぎて事故になってしまうのだ。
フランジ廻りというのはほどほどの温度にしておかないと金属が伸びすぎて事故になる
暖めすぎず冷やしすぎずが管理のポイントだ
でもそこがなかなか難しい
人は、熱を無駄にしないように余計な保温をするからだ。暖めすぎればやはり問題が起こる
熱を上手にコントロールして欲しい

 

2023年08月05日

廃油をバキュームカーで処理して起こった着火事故

夏の暑い時期に工場の廃液をバキュームカーで処理していて起きた事故を紹介する
工場で廃液がでたときは、バキュームカーが使われることもある
排水など不燃性の流体は問題は無いのだが、可燃物となると着火爆発のリスクを考えなければならない
なぜならば、バキュームカーは車だから着火源となるものが存在する
エンジンやマフラーという高温部がある。更に機器を操作するスイッチ類もある。電気品は防爆ではないから火花は出る
可燃性物質は発火点や引火点が存在する。車の高温部と発火点や引火点が近ければ着火すると思わなければいけない
1974/8/2に川崎にある製油所で臨時の排水処理作業で起こった事故だ
<公開情報は無いが、高圧ガス保安協会が平成3年に発行した「コンビナート事故事例集」の事故事例NO125に詳細は記載されている>
事故の顛末はこうだ
廃油タンク(ガソリン、灯油他)の配管変更の工事を行なうことになった
300mある既設配管内の廃油の抜き取り作業を行なっていた
フランジのボルトをゆるめて、配管を吊り上げ廃油を少しずつ流出させて油を受ける小容器に受けながらバキュームカーで吸引していた
ところが、油の流れが悪いので30mの配管を吊りあげたところ配管のたわみ部に溜まっていた油が、一気に出て油受けから溢れてしまった
油受け皿と、バキュームカーが2m程しか離れていなかった。ルールではもっと離すことになっていたが守られていなかった
溢れた油が、バキュームカーの停まっている近くまで拡がってしまった
その結果、エンジン排気管付近から引火したという
バキュームカーの主電源スイッチを切ったときの火花で着火したという
配管の脱液が不完全だった事故ではあるが、バキュームカーを使ったことが法令違反だということだ
消防法ではガソリンなどの第一石油類はバキュームカーでの汲み上げはできないことになっている
引火点40度未満だからだ
バキュームカーが火気であるとの認識が薄れていたことが事故の原因でもある
更に法令で引火点40℃以下の可燃物はバキュームカーを使ってはいけないということを知らなかったことも要因だ
車は火花を出したり、高温部分もある
車は着火源でもあると考えて欲しい

 

2023年07月30日

電気ケーブル火災

電気ケーブルというのは工場で沢山使われている
電気ケーブルの被覆はプラスチックだから火がつけば当然燃える
ケーブルという物は可燃物なのに火災という切り口での関心は薄い
電気ケーブルに火がつく事例で、油の付着で劣化が進み漏電して火がつく事例がある
ケーブルの外側に油が付けば、ケーブルを保護しているプラスチックやゴムが劣化する
劣化が進むと、どこかで放電が起こる
ゴムやプラスチックは可燃物だから着火する
最初はくすぶる程度だが、炎が大きくなるとあっという間に延焼していく
工場などでは、ケーブルダクトに沢山の電線が張り巡らせてあるから当然近くのケーブルにも延焼する
コンビナートで電気火災に関心を持ち始めたのは今から50年前の1970年代だったと思う
色々な所で、電気室火災が起こり始めたからだ
電気ケーブル工事でケーブルに傷をつけたことにより起こった火災もある
ケーブルにわずかな傷でもあるとそこを起点に放電する性質があるからだ
端子の接触不良で発熱して火災になった事故もある
ケーブルダクトに延焼防止剤を塗布しておらず、トンネル効果で炎が広がった事例もある
この頃を契機に、各工場ではケーブルダクトの防火区画を設けるようになった
数十m置きに、難燃性の樹脂をケーブルダクト内に充填して延焼防止をはかったものだ
とはいえ、開放型のケーブルダクトではこれだけでは延焼防止はむりだ
とにかく電気ケーブルが発火しない環境を作り出すことだ
通風の悪いところは発火し易い 高温の製造装置からは、ケーブルダクトはかなり離すことだ
高温機器の真上にケーブルダクトを通していれば、どうぞ発火してくださいというようなものだ
油や油ミストがかかる位置にケーブルを配置しないことだ。ケーブルの寿命を短くするからだ
たかが電気ケーブルと思わないで欲しい.良く燃える可燃物だと思って欲しい
昨今、発熱の早期発見で赤外線カメラを使う企業も多い
異常に早く気づく為の安全投資にも力を入れて欲しい

 

2023年07月25日

使わなくなった設備早めに撤去せよ

学工場で使わなくなって放置していた設備が事故を起こすことが多い
まだ使うかもしれないから撤去しないケースもあるだろう
撤去したいが、撤去費が無いから撤去できないケースもある
多くはお金が無いから撤去できないというのが企業の実情だ
すぐに撤去できないで装置を放置していると色々な事故が起こる
多くの装置は鉄で出来ている。鉄は時間が経てば腐食する
腐食すれば穴が開くことがある。ならば、装置内の液を抜いておくことが望ましい
液に水分や腐食性のものがあれば必ず時間がたてば腐食が進行する
製油所で不要配管撤去中重油が漏洩した事例がある
本来使わなくなったのだから液を抜ききちんと洗浄すべきなのに液を入れたまま放置していたのだ
液には腐食性物質が含まれていた。時間とともに腐食が進行していたが気づいていなかった
腐食した部分は錆が発生し錆こぶが出来ていた
錆こぶのおかげで、漏れなかったが撤去のためチッ素で加圧したため錆こぶがとれ内部の液が漏洩した事故だ
https://shippai.org/fkd/cf/CC0000182.html
使わなくなった配管に水がたまり、冬場凍結して事故になった事例もある
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00207.pdf
15年間野ざらしにしていた反応器を再び使い始め破裂した事故もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057048.html
使わなくなった配管をバルブ1つで縁切りしていて起きた事故事例がある
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200096.html
ボイラーにつながる配管で、バルブ漏れで可燃物がボイラー側に流れ込みボイラー内で爆発が起きた事故だ
撤去せず安易にバルブ1つで縁切りしていたことが問題点だ
仕切り板でしっかり縁切りすることが大切だ
撤去費はなかなか企業でも認可されにくいという傾向がある
使わなくなった設備はそのまま放置しておけばいいという考え方が一般的だ
しかし、放置しておけばいつか色々な問題を起こす
使わなくなったら早めに撤去するかしっかりと既存の装置と縁切りして欲しい

 

2023年07月21日

タンクの窒素シール事故

可燃タンクには窒素シールが行われている
タンク内部をチッ素でシールして爆発混合気を作らないようにしている
可燃物のタンクであれば、可燃性液体が蒸発すれば当然可燃性蒸気がタンク内に出来る
可燃性蒸気は空気が存在すれば爆発混合気ができる
何らかの着火源があれば、タンク内で爆発が起こる可能性がある
この危険性を除去する為に、タンク内にチッ素を入れ込む方式がタンク窒素シールと言われる
このタンク窒素シールというのを企業が導入し始めたのは1970年代だ
それ以前は、タンクの爆発事故が多発した
では窒素シールという設備を導入したら安全かというと維持管理しなければ事故は起きる
チッ素が停まっているにに気づかなければやはり事故になる
チッ素はタンクが破裂しないように一定圧力で供給される
圧力調節計という計器で供給量が制御される
この圧力調節計を長いこと計器の点検をしなかったことで、タンク圧力が異常に高くなり事故が起きることがある
12年間計器を点検していなかったことによりタンクが破裂したこともある
計器にはゴムの部品が使われており、劣化していたのだ
タンクには圧力が高くなったとき、圧力を逃がす排気弁という安全装置も併用して設置されている
圧力調整用の計器が故障しても、圧力を安全に逃がせるようにしている
しかし、この圧力を逃がす排気弁も長期間点検されておらず故障していたのだ
装置の内部が錆び付いていて、正常に作動していなかったのだ
安全装置や計装機器は定期的に作動点検が必要だ
機械は時間が経てば故障することもある
定期的に正常の動作しているか確認して欲しい
機械は据え付けたら終わりではない
常に維持管理が必要だ

2023年07月15日

保護具の選定は最悪の事態を考えて選定せよ

保護具に何を使うかはよく考えて欲しい。目を守るのであれば、メガネを使う
ゴミや塵の飛散物から目を守るのであれば、ガラスを強化した保護メガネ(平メガ)が使われる
しかし、薬液から目を守るのには、これでは不十分だ 上下や側面から飛散した液が入ることがあるからだ
では、ゴーグルでいいかというとそうでもない 完全に密閉したゴーグルでは曇りがでるから、一部に空気抜きを設けているゴーグルもある
この空気抜きから薬液が入り込んだ事例もある
そうなると、ゴーグルの外側に透視面という透明のお面のようなものを併用することになる
こうすればほぼ100%に近い確率で目の保護が可能になる
ある化学工場での定期修理中で起きた猛毒のシアン系設備を洗浄中に起こった作業員の中毒死亡事故が起こっている
熱交換器という装置の中を高圧の水を吹きかけて、内部を洗浄する作業中作業員が死亡した事故だ
洗浄機器の中に残っていた猛毒のシアン化水素(青酸)を含んだ液を吸い込んだか飲み込んだという
https://www.sumitomo-chem.co.jp/news/detail/20220113.html
270PPMで即死と言うから、微量吸い込んだだけでも死にいたる物質だ
高圧の水を吹きかけて装置の中の残留物を吹き飛ばし除去する作業をしていた
作業員はゴムでできた作業着と、顔の部分には保護カバーの付いたマスクを着用していた
今までこの作業は、15年間行われており事故は無かったという
ところが、今回死亡事故が起きてしまったのだ
高圧ガス保安協会から事故の報告書が公開されている
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/2022/02_2021-000.pdf
作業員の保護具は単なる顔を水しぶきから守るゴム製マスクだけだったという
このマスクは、呼吸のために小さな穴が開いていてそこからガスを吸い込んだか、液が入り込み口に入り5日目に死亡したという
問題点は何かというと、完全密閉型の保護具を使っていなかったと言うことだ
私が以前勤めていた企業でもこの有毒なガスを製造していた。やはり、過去に死亡事故が起きている
猛毒の物質の洗浄作業なのだから、本来は万一を考えエアーラインマスクを使うべきだったのだろう
保護具に甘さがあつたと言うことだ 今まで事故が起きなかったのが不思議なくらいだ
猛毒の物質を使う企業は他にも沢山ある 今まで事故が起きなかったから、今の保護具で安全と言うことではない
命に関わる作業での保護具は、ワンランク上の保護具の採用も考えて欲しい
保護具の選定は最悪の事態を考えて選定して欲しい

 

2023年07月10日

低温というリスクを見落とすな

温度が髙いや低いは[HAZARD]として意識しているのだろうかいつも気になるところだ
自分のプラントに使われている金属は何度まで使えるか考えたことはあるのだろうか
たいていのプラントで使われているのは、鉄だ。この鉄は、高温なら何度まで使えるか知っているかだ
普通の鉄なら、350°くらいだ。ちょっと温度が髙いボイラーでも、550℃ぐらいと言うところだ
800℃や1000℃では鉄は使えない。ならば鉄は低温まで使えるかというと、低温には実に弱い
マイナス20℃がいいとこだ。ちょっとした寒波が来れば鉄はかなり「リスク」がある
低温脆化という言葉を知っているだろうか.金属は温度が下がると、脆くなり割れたりすることがある現象だ
皆さん方の所で、低温脆化をどれだけリスク評価しているのだろうか
低温脆化の事故事例は少ないが甘く見ないで欲しい。こんな事故事例もある。参考にして欲しい
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00271.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00272.pdf
ネットを見ていたら中国での化学工場事故が載っていた
http://tank-accident.blogspot.com/2019/08/15.html
酸素や窒素、アルゴンなどのガスを製造する極低温を取り扱う工場だ
液化温度はマイナス150位の温度になるので,非常に低い温度(極低温という)で運転することになる
非常に温度が低いため、設備は熱の移動を防ぐ為2重構造で設計されている
いわゆる魔法瓶のような構造だ。極低温のガスや液体が通る設備の外側には,断熱材が張り詰められている
その外側には,断熱材をカバーするような金属製の外筒が付けられている
内側の装置は、極低温で運転するのだから、低い温度でも耐えられる金属材料を選定する
しかし、外側の金属製の外筒は大気と接する温度なので,極低温に耐える金属は使用することは無い
つまり、価格の安い鉄が使われる。鉄は、常温では十分な強度を持っているが,マイナスの温度になると極端に金属強度が落ちる
今回の,中国の事故は内側の装置からマイナス150位の極低温のガスが漏れ出していた
結果として,極低温のガスが外側の,低温には弱い金属部まで達したようである
外側のカバーは,極低温のガスに触れたことによりもろくなり破裂してしまったようだ
HAZOPでも,温度の低いガスの近隣の設備はこの低温脆化のリスクを徹底的につぶしておくことが必要だ
極低温ガスが逆流すれば,鉄配管はひとたまりもない。熱交換器でも,急激な気化が起これば蒸発により急激に温度が下がることもある
零度以下の低温側への温度のずれについて常に関心を持って欲しい

 

2023年07月07日

小口径配管が引き起こす事故

製油所や化学工場では沢山の配管が存在する
太い配管は、漏洩などがおきればリスクが高いのでしっかりと点検や整備が行われる
ところが、口径の小さな配管は案外おろそかにされる
そこで多くの事故が起こっている
小口径配管という用語がある。配管サイズが1B未満の配管だ
ミリサイズで表現すると、直径25mm以下の小さな配管だ
計装設備の配管はこの小口径配管だ
ポンプ廻りの、エアー抜き配管やドレン配管も、この小口径配管だ
ポンプであれば当然振動もある。この小口径配管のサポートをしっかり取っていなければ、振動で折れることもある
小口径配管というのは、ネジ接続が多く使われる。ネジは、強度的に弱いのだがコスト的に安いのでこのネジが使われる
ネジ接続は、長期間振動が加わるとネジ部が破損する事故事例が多い
小口径配管は、口径にかかわらずきちんと配管サポートを取るべきなのにサポートはしっかり取られていない
結果として、長期間の振動でネジ部が外れたり折れたりして液の漏洩により事故が繰り返し起こっている
配管サポートは口径の大小にかかわらず必要だ
たかがサポートと思わないで欲しい エアー抜き弁だけではなく、ドレン弁の振動で配管折損事故も多い
ポンプや圧縮機などは目には見えなくても機械は微妙に振動している
振動が繰り返せば一番弱いところが壊れる
たいていはネジで接続した部分だ ネジは折れやすいからだ
振動だけでは無く、腐食事故もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000028.html
一度自分のプラントを「配管サポート」という切り口で点検して欲しい

 

2023年06月30日

ホットボルテングで起こる事故

配管の接続方法には「溶接」,「フランジ」,「ネジ」の 3 種類を使い分けて使用するのが一般的だ.
溶接で接続すれば,漏れが起こる確率は少ない.漏れてはいけない可燃性流体や,毒性ガスなどにはこの溶接方式が使われる.
フランジは,何かあったとき取り外して点検したり出来るのが利点だ
ところが、フランジはボルトで締め付けることから事故が起こり易い
締め付け力が足りていなければ当然漏れる。可燃物が漏れれば火災へとつながる
フランジを使うとやっかいなのがこの漏れである
更に装置の温度は一定では無い。常温から徐々に加熱していく作業もある。
逆に、停止する為温度を下げていくこともある
ボルトは、金属でできているから、温度変化により伸びたり縮んだりする
温度変化の大きいところであれば,フランジの締め付けボルトが熱で伸び縮みして締め付け力が緩む
そこで、スタートアップやシャットダウン時には、「ホットボルテング」と呼ばれるボルトの増し締め操作が行われる
低温系では、温度を下げていくときやはり「コールドボルテング」という締め付け管理が必要となる
ホットボルテングが事故の原因として理解され始めたのは、1970年代ころからだ
最初の頃は、増し締めするタイミングが理解できていなかった
ホットボルテングを300℃から始めて漏れた事例もある。事故後、200℃からホットボルテングを始めたという事故の記録もある
1回しかホットボルテングを実施せず失敗した事例もある
温度の変化が大きければ、1回やればいいわけでは無く、温度上昇の過程毎に繰り返す必要もある
また、大口径のフランジはホットボルテングは必要だが、小口径は不要との誤解も多かった
温度が変化するなら、口径にかかわらずホットボルテングは必要だ
温度を変化させるスピードも影響する。1時間当たり100度も変化させ漏れたという事例もある
事故後、昇温スピードは50度/時に変更してリスクを減らしたそうだ
温度の変化も漏れには重要なキーワードだ
フランジの熱応力に関するいい文献があるので紹介しておく
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/management/pdf/no-2.pdf
温度によるボルトのゆるみを甘く見ないで欲しい

 

2023年06月25日

目新しい事故が増えているわけではない 

例年5月末に,消防庁から火災などの事故の統計データーが公表される
一つは、全国の危険物事故データー集計版だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/230529_kiho_1.pdf
もう一つは,コンビナート地区での事故データーを集計したものだ
https://www.soumu.go.jp/main_content/000881793.pdf
相変わらず,コンビナート地区の事故件数は高止まりだ
事故の内容を見ても、半分くらいは人のミスだ。誤操作、誤判断などを繰り返している
設計や工事のミスも毎年同程度だ  徐々に増えているのが老朽化だ
化学産業が始まって約100年になる。
日本で化学産業などの工業が始まったのは1910代だ
多くの化学企業がこの頃に起業している
当時から事故の情報は資料としてほとんど残っていない
石油や化学工場での事故情報が活字で残るようになったのは、1960年代からだ
日本でコンビナートという化学産業形態ができたのが1958年だ
石油を原料とした石油化学産業が台頭した
石油精製は、戦後すぐに動き出したがやはり、1950年代からだ
つまり、1960年代から多くの事故が起き記録として残っているが、解析してみるとやはり同じような事故の繰り返しだ
事故のデーターベースがあるのでここに紹介しておく まずは高圧ガス事故だ
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.khk.or.jp%2FPortals%2F0%2Fkhk%2Fhpg%2Faccident%2F2022%2Fincident_db_2022.xlsm&wdOrigin=BROWSELINK
労働安全総合研究所の事故データーベースだ
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
これらの事故データーを見ると 目新しい事故が増えているわけではない 同じような事故が世の中で繰り返し起こっているだけだ
99%近くが同じような事故とも言われている
同じような事故が起こっていると言うことは人は同じミスを繰り返すと言うことだ
時間が経てば忘れる 10年も経てば,社会環境や技術も変化する だから技術伝承や変更管理が必要なのだ
過去を学んで欲しい 過去に起こった事故は将来起こる 過去に学事故を繰り返さないで欲しい

 

2023年06月20日

配管工事時の縁切りの大切さ

昨日新潟県にある化学工場で配管切断工事中に死亡事故が起きた 作業員1名が死亡したという
https://www.fnn.jp/articles/-/542229
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1140/20230614_denka_omi.pdf
事故には予兆があると言われるが、今年4月に入って何度も火災事故が起きていた
消防の立ち入り検査も受けていた
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/457858?display=1
数年前にも工事で事故を起こしている
https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/762/20200907_denka_omi.pdf
この工場に限らず、現場工事では何度も事故が起きている 過去の事故事例で配管工事に関わる事例をいくつかを紹介する
石油精製や化学工場で火気工事をするなら、縁切りが必要だ
工場内では可燃物や毒性ガスが沢山あるからだ 当然残圧があれば破裂事故も起きる
今から、26年前1987年には大きなタンクの爆発事故が3件起きている
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/28/3/28_167/_pdf/-char/ja
1987/5/26日におきたタンクの爆発事故を紹介する
https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000053.html
東京品川の電力会社の発電所の燃料タンクの事故だ 4人が爆発で吹き飛ばされ死亡した事故だ
火気工事管理のずさんさが招いた事故だ
タンクは在液のままであった。内容物は原油と他の混合油だ。当然可燃物である
タンクから液を抜き出すポンプ廻りで配管の枝出しをしようとして火気工事を始めたという
タンクと火気工事場所を配管の縁切りをしていたかというと、一部は実施したがポンプからタンクへ戻る配管はしていなかった
タンクは当然蒸気圧分のガスはあるから、この戻り配管を伝ってガスが火気工事場所に行ってしまった
結果として、配管周りで爆発して作業員が吹き飛ばされた この火炎は当然、タンク側へ戻りタンクそのものも大爆発してしまったのだ
火を使う工事であれば、しつこいくらいに危険物の除去や縁切り作業が必要だ
火を使う工事を甘く見ないで欲しい
現場工事の管理レベルというのは長い時間かけて出来上がったものだ
人に依存するところも多い ベテラン社員が退職していけば管理レベルも変化してくる 人に技術有りだからだ
現場の安全管理力が維持向上できているかチェックして欲しい

 

2023年06月15日

緊急時に作動させるスイッチなどの配置に思う

色々な企業や工場を見る機会がある
装置のそばには緊急時のスイッチが設置されているのを見る
労働災害を考えて、緊急停止スイッチが設けられている
機械に万一人が巻き込まれたときに作動させるスイッチだ
配置場所をよく見てみると、挟まれた人から遠すぎる配置になっている事例が多い
つまり、実際に事故が起こったことを考えずただスイッチを配置しただけなのだ
この位置では、どう見ても挟まれた人の手が届かないという事例を多く見かける
スイッチではいざという時、ピンポイントで押さなければいけない
痛みをこらえて押せるとは限らない
そこで、ヒモを引っ張る緊急時SWの形態や足で踏むタイプのSWを併用している企業も多い
労働災害対応用の緊急時SWは、配置場所や作動方法も深掘りして考えて欲しい
いざという時に本当に被害者が作動できるか見直して欲しい
火災などの事故を想定しての緊急時スイッチも配置場所が大切だ
火災を想定してのケースでは、発火場所に近すぎてもいけない
炎が大きすぎて、スイッチの近くまで行けなくて自動消火機能が作動しなかった事故事例も多い
つまり、現場に近すぎてもいざという時作動させられないのだ
そこそこの距離を離しておくことも大切だ
とはいえあまり離れると、いざという時設置場所を忘れていて対応が遅れるケースもある
出来れば、災害想定場所と少し離れた場所の2箇所に緊急時スイッチは設置したい
緊急時に使用する設備の作動スイッチはレイアウトもしっかり考えて欲しい
いざという時現場に近づけず作動させられ無かったということにならないようにして欲しい

 

2023年06月10日

電気火災におもう

電気や計装の事故解析をしてもう何十年にもなる
電気設備が原因で事故が起こることがある 電気設備には特有の事故原因がある
事故の原因は、様々だが電気が多く流れすぎたか、本来とは違うところに流れ込んだ現象である漏電が原因だ
電気設備には特有の事故は過電流による事故、漏電事故の二つだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/29/8/29_612/_pdf/-char/ja
過電流の原因は、異常電流に耐えられず電気部品がショートするからだ。つまり、絶縁不良がおこり電流が流れすぎて火がつくのだ
老朽化が原因となることもある。本体の性能が落ちてケーブルが劣化して短絡事故が起こることがある
漏電は水分が影響することもある。
工場で多いのは、塵や水分などが多い。粉塵対策がしっかり出来ていない電気の盤などでよく起こる
工場の雰囲気が悪いからだ。パトロールしていて電気盤内が汚れていれば粉塵が原因だとすぐわかる
電気火災は過電流と漏電が原因なのだから、事故を防ぐ手はある
過電流は、電気回路にしっかりと過電流遮断器を複数組み込んでおけば、かなりの確率で発火を防げる
しかし漏電は、過電流遮断器だけでは防げ無い。漏電遮断機という装置が必要だ
漏電発火事故が起こるのは、案外この漏電遮断機が設置されていない事例が多い
過電流遮断器というのはヒューズのような装置だ。ヒューズは必要なことは結構知られているが、過電流遮断器は知られていない
電気事故防止には、ヒューズの機能をする過電流遮断器は最低限必要だ
ところが、漏電遮断機は設置されていないケースが多くて漏電事故が多数起きている
電気設備の事故を無くすには、過電流遮断器と漏電遮断機をセットで設置する必要がある
電気回路の安全を守るにはこれらの遮断機を効果的に配置することが必要だ。これを系統設計という
企業の電気回路を見て、漏電遮断機が少ないか、設置されてなければやはり電気火災は起こる
電気事故防止にはそれなりの安全装置が必要だ。安全装置があれば小火は起こるかも知れないが、本格的な火災はくい止められる
安全担当者は製造系や機械系の技術者が多い。電気に関する事故は、電気の専門家で無ければ事故の本質を見抜くのは難しい
電気というのは目に見えないものだからだ
電気事故に関しては、電気の専門家のアドバイスが必要だ


2023年06月05日

危険物や高圧ガスで法規制されていない物質だからといって安心するな

時代の変化に伴って、新しい化学物質が生まれてくる
1990年代から2000年代にかけて、半導体産業やフロンガスの代替製品の開発で新しい物質が開発された
2000年6月10日に大きな爆発を起こした化学物質がある
ヒドロキシルアミンと言う反応性に富んだ物質だ
爆発で4人の死者が出て58人が怪我をしたという。以下のURLで事故の概要がわかる
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000050.html
当時危険なことはわかっていたが、国は消防法での規制はしていなかった
毒劇物での規制だけしかしていなかった
国内ではこの企業しか生産しておらず稼働率も高かったという
海外でのこの物質を生産する企業も少なく、物質危険性に関する情報も少なかったと思われる
とはいえ、アメリカで1992年2月にこの物質を造る工場で爆発死亡事故が起きている
海外で事故が起こっても、日本に情報が伝達するには時間がかかる
日本に情報が伝達されても、詳細情報が手に入るという保障は無い
事故を起こした企業が、海外の情報を入手していたかはわからない
結果として多くの死傷者出す爆発事故が日本で起きた
企業は事業を再開することも出来ず倒産した
事故後日本でも、法指定の有無が検討され、最終的に、消防法の規制対象になったという
危険なことはわかっていても、なかなか法規制の対象品目になるとは限らない
法は最低限の規制だからだ
法律で規制されないから安全だと思わないで欲しい
まだまだ化学物質については、わからないことは沢山あるのだ
非危険物だから安全だと思い込まないで欲しい

2023年05月30日

確立された技術だから安全だと思い込んでいないか

自分たちが取り扱っている技術を見て欲しい
まだまだ未熟な技術だと考えれば人は、危険だと思う
ところが開発されて数十年も経ち使われてきた技術は人は安全だと思い込む
そこに事故の芽がある
今まで安全だから、大丈夫と思い込むからだ
化学の世界で安全はない
危険な物をコントロールできているから安全で有り、少し間違えれば危険なことが起こる
人は危険な物は最初はかなり慎重になるが、時間が経つにつれ感性が鈍ってくる
そこで事故が起こるのだ
こんな事故がある。1970/5/15に起こった事故だ
アセトアルデヒド法の酢酸を製造するプロセスの爆発事故だ
当時は、この製造方法は確立されていて事故は起こるとは思われていなかった
スタートアップ時に、アセトアルデヒドの濃度管理が明確で無かったことにより異常反応が起きた事故だ
運転マニュアルも甘えがあったのかお粗末だった
濃度に関するチェック項目も無く、反応器に仕込んだ量を監視する液面警報も無くかなりずさんな管理だった
結果として濃度が高く爆発した事故だ
今まで大丈夫だったという考え方から、警報やマニュアルの整備も進んでいなかったのだろう
その当時は日本ではまだHAZOPも導入されていなかった。HAZOPを日本で使い始めたの1980年代だ
HAZOP的な対応をしていれば防げた事故だ
異常に気づく仕組みを導入して欲しい
警報があれば安全というわけでは無い。警報を聞き漏らしても安全な対策を立案して欲しい
HAZOPとはどんな物かは、私もセミナーで講演することがある
7/26にWebでの講演をするので興味があれば聞いてみて欲しい
https://www.rdsc.co.jp/seminar/230763

 

2023年05月25日

自動制御の進化

石油精製や化学工場では、自動制御があって成り立っている
広大な敷地にある設備を少ない人間で制御できているのは、自動制御が存在するからだ
しかし、すべて自動制御で行えばいいかというとそうはいかない
自動制御にはお金がかかるからだ
どこかで妥協点が必要だ
ここは人が見る、この領域は自動制御に任せると決めておく必要がある
自動機械の信頼性と、コストによりその業務分担は左右される
単純な仕事は機械に任せたい
とはいえ単純なら人のがコストは安いかも知れないが、人は単純な作業でもミスを犯す
複雑になると機械が必ずしもこなせるとは限らない。高度化に対応する機械を導入すればコストもかかる
人と機械の分岐の難しいところだ
人が得意なのは、何かだ。機械が得意なのは何かだ
瞬時の判断だと、必ずしも人は得意だとは限らない
時間が沢山あれば、有効な判断を人がしてくれるかも知れない
お金との兼ね合いはあるが、人が不得手なところは機械に任せればいい
今から40年くらい前の話だが運転がうまい人が沢山いた
なぜうまいのかと言えば、色々な経験をしてプロセス変動を先読みをするノウハウを持っていた
過去の経験値が沢山頭の中に詰まっていて、それを運転技術に活かしていた
しかし、もうそんなノウハウを持った人は工場にはいなくなってきている
たぶんそれを補うのはデジタル技術なのだろう。AIが昨今論議されるようになってきている
自動制御も単純なフィードバック制御から、AIなどの支援による制御へと進化していくのだろう
とはいえ技術の導入には人も金もかかる
対象分野を選んで上手に投資していくことが求められるのだろう

 

2023年05月20日

HAZOPでは2つ以上の安全対策の組み合わせを常に考えて欲しい

HAZOPはずれを想定して事故を未然に防ぐ安全性評価手法だ
基本的な手法は実に簡単だ。化学工場であれば、まず、製造プロセスで起こるずれを想定する
例えば、流量を考えてみよう。通常運転時から、流量が変化することはずれとなる
流れが減ったとか、増えたは「ずれ」となる
ある加熱炉の事故事例をHAZOP的に考えてみよう
鉄さびでポンプストレーナーが詰まり、蒸留塔への原料が減りそれが引き金で起こった事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-217.pdf
定修の期間が、いつもより長くなったことで配管内で錆がいつもの定修より増えていた
スタートアップ時には、この錆を取るため循環運転をしていた
しかし、循環運転の時間は、いつもより長めにすることはしなかった
このため、蒸留塔へ原料を供給し始めたものの運転は安定せず、本来塔頂側に行かない留分が行ってしまった
そこで、2番目のずれが発生した。リフラックスのポンプが過負荷で停止したのだ
その結果、リフラックスドラムが満液となった。3番目はリフラックスドラムの液面のずれだ
液が満液となったことで、リフラックスドラムから溢れた液は、フレアーラインにつながる気液分離ドラムへ流れ込んだ
4番目にずれは、気液分離ドラムの液面上昇だ。警報は鳴ったが、1回限りの警報で運転員は聞き漏らした
本来なら、気液分離ドラムから発生するガスは配管で加熱炉に送り込まれ、燃料用ガスとして用いられていた
ところが、本来行かないはずの燃料用ガス配管に液が入り込み、加熱炉へ流れ込んでしまった
結果として、炉床で異常燃焼が発生した事故である
HAZOP的にはどのような問題点があったか考えてみると良い
まず警報があれば大丈夫と考えるところが落とし穴だ。この事例のように1回限りの警報では聞き漏らすこともあるからだ
大事なポイントは、警報を見落としたときの対策だ。何分おきかで、繰り返し警報を鳴らすのも手ではある
しかし、異常に気づかなかったときはやはりインターロックで自動的に遮断して本質的な安全を確保するしかない
HAZOPで考えて欲しいのは、警報などの一つだけの安全対策では破られたら終わりだと言うことだ
2つ以上の安全対策の組み合わせを常に考えて欲しい

 

2023年05月15日

設計や保全部門を分社化するとどんな問題が起こるか

石油精製や化学企業などでは設計を担当する部署と、保全や工事を担当する部署がある
設計部門は、装置の設計をしたり改造をする部門だ。設計や エンジニアリング部門とも呼ばれることがある
保全は修理をしたり維持管理する部署だ。新設や定修時の工事管理も行うこともある。保全やメンテナンス部門と呼ばれることもある
工事管理の機能は、エンジニアニアリング部門に入れるかメンテナンス部門に入れるかは企業によって違う
企業内にこの設計や保全部門を保有する企業もあるが、これら部門を分社化しているケースもある
過去の歴史を見ると、エンジニアリング部門は分社化させ独立した事例も多い
三井系の企業で、昔東洋高圧工業(現三井化学)という企業があった。アンモニアの製造技術を保有し世界の企業に技術輸出をしていた
1960年代、そのノウハウを持ったエンジニアリングの技術者達を分社化させ独立させた事例がある
東洋エンジニアリングというエンジニアリング会社だ。エンジニアリングの分社化で成功した事例だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B4%8B%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0
保全や工事管理部門もその後、三井東圧機工や東圧プラント建設と企業として分社化している
企業内の合理化の延長のなかでいわゆる工務系(設計・保全・工事など)とよばれる人員削減のため、従来の社内保有技術を外部
に活用して稼げという分社化だ。企業内の一部機能を分社化するので機能分社とも言う
不景気や合理化という波はその後もやってくる
1980,1990年代に多くの企業で、工務系(設計・保全・工事など)などの分社化が行われた
分社後企業のねらい通り人員削減は行われて行ったものの人に技術有りだから、人が減るにつれ技術力や組織力は落ちていった
石油精製や化学企業などの親会社は、分社化した企業に仕事を頼む形で設計・保全・工事が行われていた
設計・保全・工事というのは、分割出来るところもあるが、分割するとそれなりの不具合も出てくる
例えば設計思想が、きちんと保全部門に伝わっていなければしっかりしたメンテナンスは出来ない
2000年代石油精製企業で配管の内部腐食事故が起きた 被害額は60~70億円と言われる
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200043.html
この事故を契機にして2000年代、石油精製や化学企業は分社化していたエンジニアリングやメンテナンス部門を本体側に戻していった
機能を分割するというのは簡単だが、すぐには弊害が出てこない。時間が経ってから問題が出てくるのが常だ
2010年代に石油精製や化学企業などの大きな事故が立て続けに起こった
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_15/15rijityou2.pdf
生産技術を細切れにし、安全管理の責任をあいまいにしたことも背景にあるのだろう

 

2023年05月09日

化学企業が行っているDX

2000年頃からDX(デジタルトランスホーメーション)という技術革新が始まった
コンピューター技術の革新がこのデジタル技術を使った技術革新を急速に推進してきている
企業には膨大な情報がある
化学産業であれば、製品を製造するときの運転時の温度や圧力などの情報が沢山ある
いつも、運転がまくいき製品が製造できるとは限らない
失敗のデーターも沢山ある
ならば、失敗を解析し2度と不具合品を生産しないようにと思うのは人の常だ
データーを解析しどの様な条件で不具合品が生まれるかを解析すれば
不具合品が出なくなることにより生産性は上がる。これがDXの一つの利点でもある
運転が難しいのであれば、ベテランのノウハウを蓄積し運転を自動化する技術を確立していけば良い
人が持つノウハウをデジタル化して、見える化すれば技術伝承に画期的な変化を起こさせることができる
ベテランの知恵をデジタル情報として収集し活用する
運転の難しい装置を、ベテランのノウハウを数値化し運転を容易にする
運転だけではなく、研究開発にも積極的にDXは行われている,下記資料の2-5項参照
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/010_04_00.pdf
今までは実験しなければわからなかったものが、デジタル技術でシミュレーションできる
企業が保有する膨大な情報を活かすことが、このDX革命だ
手法は様々だが、膨大な情報を解析し、用途毎に有効に利用する技術がDXの一つでもある
企業の中に埋もれている情報は膨大にある
それをどう解析し、有効に活かしていくかが今後のDXなのだろう
難しい運転プロセスをDXで運転容易にする
運転トラブル時は、AIによる運転支援など人を間接的に支援してくれるのだろう
そうは言っても未知の問題にはAIは答えてくれない
人という感性を研ぎ澄ます努力も必要なのだろう

 

2023年05月05日

ライニング機器が引き起こす事故

ライニングという言葉を知っているだろうか
化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
耐食性機器の内張などにこのライニングというものが使われる。本体そのものを、耐食性のある高級金属を使うとコスト面で割高になるからだ
本体は安価な鉄を使い、内張にライニング材を貼り付ければ機器を安く作れるという利点がある
そうは言っても、ライニングは、はがれてしまえば効果は無くなる。つまり、維持管理が大事なのだ
しっかりと、点検していれば良いのだがライニングが剥離すると思わぬ事故になる
硫酸などの酸を入れているタンクの内張の一部が破損すると母材の鉄と酸が反応して水素が出来る
酸と金属が触れると水素が発生する性質があるからだ
たまたま、火を使ってタンクなどの改造を始めたとき、水素に着火して爆発する事例が多い
鉄と酸による水素の発生は、案外知られていないから繰り返しこの種の事故が起きている
水素の発生を知らなくても、火気工事前にガス検知さえやっていれば防げる事故のパターンだ
ライニングに関する事故のパターンその-2は静電気だ。配管がライニング材で起きたこんな事故事例がある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200083.html
ライニング材は、電気を通さない非導電性材料が多いから静電気は起きやすい
可燃性の液体や粉体を入れればライニングで静電気が発生することが多い
これが原因で着火や爆発事故が繰り返し起きている。ライニング機器は、しつこいくらい静電気に留意して欲しい
原材料の投入時には、確実に窒素置換をして爆発混合気を作らせないことだ
定修工事などでのジェット洗浄時にも注意して欲しい。高圧ジェットの洗浄水の水しぶきでも静電気は発生する
過去にグラスライニング機器のジェット洗浄中に爆発事故が起きている
ライニングに付着していたポリマー物質に微量に含まれていた有機溶剤がガス化して可燃性ガスとなってドラム内に充満していたからだ
ジェット洗浄作業で静電気が発生しそれが着火源で爆発混合気に着火した事故だ。溶剤を使うプラントでは注意して欲しい
ライニング機器で注意して欲しいことがもう一つある
解体時だ。内部にゴムライニングがしてあることに気づかず火で溶断していて着火火災になった事例も多い
装置の内部に可燃性のライニングがあつたことで、火気解体時事故が起きている
ライニング機器を使うメリットもある。しかし、リスクも必ず存在する
しっかりとリスクを管理しながらライニング機器を使って欲しい

 

2023年04月30日

バルブ(弁)はゆっくりあけろ

工場の中にバルブ(弁)は沢山ある
バルブ操作の大原則はゆっくり開けろだ
弁というのは,せっかちに開閉操作をして良いことは無い
高圧のガスを扱う弁ならば急激に開けたり閉めたりすると,断熱圧縮という事故の要因で事故が起こる
急激に気体を圧縮すると起こるのがこの断熱圧縮現象だ
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11127012836
気体は、急に弁をしめて流れを停めると,急激に温度が上がる
物質には発火点がある
発火点を超える温度になれば,物質は火がつく
つまり、急激に圧力の変化が起こると温度が上がり火がつくことになる
しかし、圧力の変化が急激な温度の上昇につながり発火点を超えれば火がつくか爆発することをわかっている人は少ない
だから,事故が起きている.高圧ガスを取り扱う時にはとにかくゆっくりバルブを開けて欲しい
温度も圧力もエネルギだー。エネルギはエネルーの保存則によりエネルギーの形が変わる
温度になったり圧力になったりエネルギーの形態が変化するわけだ
このエネルギーが変化する原理原則があまり理解されていない
そこで事故が起こる
断熱圧縮という現象はあまり知られていないことも問題点だ
学校ではまず教えてくれない
これは、企業に入ってから教えなくてはいけない物理現象なのだが、企業もしっかり教えていない
断熱圧縮では、圧力がどのくらい変化すると、どのくらい温度が上昇するかも教えていない
だいたいの物質の発火点は300度だ。気体だと,1MPa位でほぼその温度まで上がる
液体もバルブはゆっくり開けるが基本中の基本だ
脱液時バルブを急に開けると、静電気などで火がつくことがある
よく言われるように、流速1m以下で液体を流せだ
有機溶剤や油など電気を通さない流体であれば、静電気で火がつくこともある
バルブはゆっくりと開けて欲しい

 

2023年04月25日

化学物質の安全管理とDX(デジタルトランスフォーメーション)

化学物質の安全管理という言葉は非常に幅広い意味を持つ
人が化学物質を取り扱うことへの人体への影響もある。排気や排水することによる動植物への影響
化学工場であれば、爆発火災の危険性という切り口で考える必要もある
いずれにせよ、しっかりとSDSや文献を集めて物質そのものが持つリスクを解析しておく必要がある
とはいえSDSですべてがわかるわけでは無い
混触反応など、色々な化学物質との組み合わせの情報がすべてSDSに書かれているわけではない
混触のリスクは重要なのだが、書籍もほとんどない
そこに混触を管理することの難しさもある
今から、数十年前にこんな書籍が出たのが最後だとおもう「化学薬品の混触危険ハンドブック 第2版」日刊工業新聞
この書籍のデーターは、労働安全衛生総合研究所から公表されている。利用されたい
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2021_03_HDDB.html
反応性や爆発性などの関する情報もそう簡単に手に入るわけでは無い
温度や条件によって物質は性質が変わる。更に濃度も違えば変わってくる
純物質での性質と、混合物での性質も又変わるということだ
多くの条件で情報が整理されてどこかに保管されているわけでは無い
そこに、物質危険性の情報を的確に得ることの難しさがある
小さな化学工場でも危険な物質を取り扱っている
小さな工場で化学の専門家を沢山保有しているわけでは無い
したがって、化学物質の安全性を迅速に捉えられるかというとそうはいかない
企業規模が小さければ、色々な情報を収集できない。そこに、事故の芽がある
物質危険性や事故や災害に関する情報を集約的に管理しきめ細かく公開する機関が欲しい
日本国内を見ても、安全に関して国の外郭団体がバラバラに存在する
それらの機関が又、バラバラに情報を発信している
インターネットで情報をうまくヒットできるかというとそうはいかないのが現実だ
企業でも個人でも安全管理に関する情報を効果的に入手できるような体制づくりが不可欠だ
化学物資を安全に取り扱うためにもこの分野のDXは進めていく必要がある

現状ばらばらに存在しているビックデーターを効果的に使えるようにしていくことだ


2023年04月20日

高圧ガスや消防に関する事故情報の入手の難しさ

行政などが事故の情報を公開する機会は少ない
事故情報を公開しているのは、経済産業省だ
高圧ガスの事故などは、毎年公開している
かなり詳細な情報を提供してくれる。高圧ガス保安協会という外郭団体が情報を公開している
高圧ガス保安協会のホームページから事故情報を入手出来る
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/comb.html
一方、 消防関係はというと、タイムリーに情報公開はしない
消防庁から公開される情報は限定的だ
年度毎に情報公開があるが、限定的な情報だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/454b64419c90e3ceddc24189a42ef1ff45727a40.pdf
消防関係の外郭機関、危険物情報協会という組織のメンバ-に入会するれば情報を入手出来るが有償だ
http://www.khk-syoubou.or.jp/hazardinfo/guide.html
無償で、火災や事故の情報を入手するのは難しい
ところが2021年に消防庁がかなりの火災爆発、漏洩事故事例情報を公開している事実がある
こんなに情報を提供するのは、消防という行政機関としてはまれな事例だ
そうは言っても貴重な事故事例を入手出来るのは事実だ
化学企業、石油精製、製鉄所、金属加工など多くの業種での災害事例が公開されている
2部に分かれ情報公開されている
一つは火災、爆発編だ
https://www.fdma.go.jp/publication/database/items/kikentoukei03.pdf
もう一つは漏洩編だ
https://www.fdma.go.jp/publication/database/items/kikentoukei04.pdf
これらのデーターを有効活用して欲しい
行政が事故データーを多数公開するのはめったにない
石油精製、化学企業、製鉄業、金属加工業など多くの業種でなぜ事故が起こっているのかの情報が満載されている
有効活用して欲しい
事故のパターンを学び取るにはいい情報だ

 

2023年04月15日

ボイラーや加熱炉で起こる事故

ボイラーや炉は多くの工場で使われている
ボイラーは蒸気を発生させる装置だ
炉は流体の加熱や乾燥などに使われる装置だ
いずれも火を燃やしている設備だから火災や爆発に注意しなければいけない
事故が起こりやすいのは、スタート時だ
火をつける時に、失敗して火災や爆発を起こす
点火前のパージが不完全で爆発事故が多数起こっている。燃料の漏れ込みに気づかず火をつけて爆発することもある
運転中で怖いのが、突然火が消えてしまうことだ。失火と呼ばれている
失火に気づかなければ、未燃焼の燃料で爆発混合気ができてしまう
怖いのは未燃焼ガスが残っていて何らかの着火源で爆発することだ
燃料が入らず火が消えたときはまだ安全だが、燃料は流れ込んでいて火が消えるのはとてつもなく危ない
装置を停止していくときにも事故は起こる
上手に燃料を停止していきながら火を徐々に消していかなくてはならないからだ
点火や消火は自動化が進んできてはいるが、機械も故障することもあるからしっかりとした知識と技能が必要だ
自分が取り扱っているボイラーが突然火が消えた時どう対応するかだ
火が消える理由をすぐに想定することだ
燃料系のトラブルと、燃焼空気系のトラブルかが想定されるはずだ
燃料の弁を誰かが誤って閉めるケースもある。重油などの燃料では配管が詰まり、燃料の供給が停まることもある
燃焼用空気のトラブルもある。空気ダンパーが突然閉まった事例がある
空気ブロワーが停電で停まったケースもある
排ガスや廃燃料を燃やすボイラーであれば、排ガス発生プロセスの異常で原料が突然停まるトラブルもある
多様な燃料を使えば使うほどトラブルの要因は多くなってくる
ボイラーや加熱炉などの燃焼設備を持っているなら設備の火が消えたときどう操作するかを論議しあい訓練して欲しい
トラブル時にどうすればいいかしっかりリスクマネージメントして欲しい
トラブルを想定して、訓練しておくことは大切だ
常日頃からの想定訓練が役に立つことは多い

 

2023年04月11日

真空プロセスで起こった死亡事故に思う

今から半世紀前の鹿島コンビナートで起こった、3人の若き研究者達が死亡した事故だ
1973年の12月4日に茨城県の鹿島コンビーナートで起こった爆発死亡事故を紹介する
1973年(昭和48年)というのは事故が多発した年だ 大きな事故が何十件も起きていた

新規開発した真空プロセスでの破裂事故である 死者3人、重軽傷者3人の大事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000107.html

事故の顛末はこうだ
新規開発で実験をしていたところ色々トラブルも起きていた しかし、原因を究明せず実験は続けられた
開発スケジュールのプレッシャもあったのかもしれない

結果としてトラブルが引き金で実験設備が爆発し、尊い命が失われた
真空系設備の事故は意図して空気を吸い込むことで起こる
装置の一部から空気が漏れ込んでいるのに気づいていなかったのが原因だ
さらに、爆発性の高い副生物もできていたがそれに気がついていなかった
結果として爆発事故を引き起こしてしまったのだ
当時の担当部門であるお役所の労働省から詳細な事故報告書も発行されている
今から半世紀前の紙で出された報告書だが今は世の中には存在しない
紙というものは時間が経てば棄てられるからだ
この事故が起きる前に私はこの企業の就職試験を受けたことがある
たぶん事故の起こる1年前だったはずだ 結果として、この企業には就職しなかった
今でも思うのは、もしこの企業に就職していればこの新規開発事業に参画していたかもしれない
そこに自分が入れば、事故に巻き込まれていたかもしれない つまり死んでいたかも知れないのだ
その後私は、その企業とは別の化学会社に就職した。同じ化学の世界を歩むことになったもだが命拾いをしたのかも知れない
おかげでこのようなブログも発信できる
運命とはわからないものだ

 

2023年04月05日

新人OJT教育の失敗が引き起こした重大事故

4月からは工場などにも新人が入る時期だ
入社時の基礎教育が終われば、職場に配置されOJ(On the Job Training)による教育が始まる
現場で先輩などについて行う実習教育だ
企業によっては、OJTでしっかり教えてくれることもあるが。即戦力的に入社後すぐに新人を使い始める企業もある
そこで問題が起こる
新人OJT教育中で起きた、こんな事故事例がある。今から半世紀前の1974/4/30に四日市で起きた重大事故だ

4月に入社した新人の指導を先輩が行っていた
塩素を取り扱う設備だ。塩素が漏れ、住民1万2千人が被害を受けた事故だ
公害裁判となった事件で、裁判記録も公開されている
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=22951
原因はこうだ
新人にバルブ操作を任せ、指導員は現場を離れた
新人は、弁操作を間違え、大量の塩素を大気に放出してしまったという事故だ
見習い者の初歩的ミスが一時原因だが、その後の応急対策が1時間半もかかった
工場全体の不手際など遅れが問題となった公害裁判事故だ
指導していた作業員が途中で現場をはなれていたことも問題点だ
背景には、人手不足で作業を掛け持ちしていたようだ
裁判では、見習社員を指導していた熟練社員と、管理者である係長が監督責任を問われ有罪となった
裁判で問われた事故の予見性であるが、新人であればこのようなミスが起こることは十分予見されると結論つけている
OJTというのは、マンツーマンで教えることだ
先輩が見本をまず見せて、新人にやらせてみる。まずいところがあれば、それを指摘し、技能を身につけさせる手法だ
手本も見せず、丸投げでやらせればこのような事故は起きる
これから、色々な企業で新人の教育が始まるはずだ
現場での新人教育で手を抜かないで欲しい

 

2023年03月31日

ヒヤリハット--事故解析の大切さ

ヒヤリ事故というのがある
事故には至らなかったというトラブル事例だ
当然原因と対策は考えるが、このヒヤリ事例は事故にはならなかったという貴重な情報の宝庫と考えるべきだ
災害になるのをくい止めたからだ
装置の故障であれば、故障時の応急操作が適切だったはずだ 咄嗟の対応かもしれないがどう対応したかは貴重な情報だ
何故災害にならなかったかと言えば,ほとんどの場合事故回避の流れからわかるように,トラブル時の応急操作が適切であったからである
災害事故 が発生した場合原因を分析することも重要である
しかし、災害が発生しないというヒヤリでの情報も有効だ
災害になるのを 喰い止めた応急操作の要因を分析することもで次に起こるかも知れない事故をくい止めることが出来る
ヒヤリハット事例を企業として公開している企業もある
https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2022/07/2022%E5%B9%B47%E6%9C%88%E3%83%92%E3%83%A4%E3%83%AA%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%88-1.pdf
かなり前から定期的にヒヤリハット事例を公開している
企業によって業務内容が異なるから、必ずしも参考になるとは限らないが、情報源としては有効だ
企業で労災が起これば原因や対策を考える
しかしこれは、後追いの事故防止策だ
本来なら、事故が起こる前に事故の芽を絶ちたいはずだ
そこで、このヒヤリハットをうまく活用して欲しい
現場で起こるヒヤリハットを、しっかりと情報として活用し、作業マニュアルなどの反映していけば労災の発生確率は減る
ヒヤリとしたことは、個人の情報で留めるのではなく、一緒に作業する作業員へも展開するのだ
交代勤務職場では、昼間にヒヤリを体験しているなら、その情報を夜勤の人へもうまく展開することが効果的だ
ヒヤリハット活動をただやるのではなく、運転作業書(運転マニュアル)や作業マニュアルへ反映を考えて欲しい
ヒヤリハット活動はただやるだけでいいわけではない、効果的に災害防止に結びつけることを考えて欲しい
ヒヤリハット事例を災害防止の情報源として捉えて欲しい

 

2023年03月26日

ダクト火災を甘く見るな-定期点検しなければ事故は起こる

研究所や工場での排ガスなどを流すダクト内部に溜まった物に火がつき火災になる事例は沢山ある
http://www.opus-gr.com/duct-fire
煙や排ガスを排出するダクトと呼ばれる装置は、工場や研究所であればどこにでも存在する。
でも、たかが煙や排気ガスが流れる装置と思っていると事故が起こる。
温度の低い煙なら問題は無いが、だいたい100度を超える煙だと火災などが起きることがある
物質の発火点はだいたい300℃前後だが、それは新品の場合だ。劣化して酸化された物質は、発火点がその半分くらいになることもある
さらに、ダクト内に油などが堆積してしまうと。表面から放熱が悪いため、内部が蓄熱して更に温度が高くなる
油やペンキの燃えかすだとか、粉などがダクトの内側に溜まっていれば思っているより低い温度で着火する
ダクトも中の様子を点検できるような設計になっていれば良いのだが点検口もなく、中の様子が見えないものが多い。
排煙ダクトの中を流れるガスも、流速が早ければ、燃えかすや粉なども溜まりにくい
しかし、ダクトが太すぎると流速が遅く色々な物が溜まりやすくなる
設計段階で、ダクト内に物が溜まらないように流速を考慮しておくことが大切だ。
ダクト内を点検や清掃ができるような設計をしておくことも事故のリスクを減らしてくれる。
設計の善し悪しで、事故が起こる確率は大きく変わる。又、可燃物が流れるダクトは金属製として欲しい。
過去、塩ビなど燃える可能性のある材料を使っていて火事になっている事例も多いからだ。
ダクトの内部点検を、年間の安全管理項目に織り込んでいるかも見て欲しい。
ダクト内部に、何か燃える物が溜まっていればいつか発火事故になる。点検清掃が肝心だ
安全確認項目にダクト内の、異物残留点検を織り込んで欲しい。冬場乾燥してくれば、乾燥して火がつきやすくなる。
ダクト内の滞留物が火災事故につながる。排煙ダクト内の異物点検を考えて欲しい。
工場も当然ですが、研究所の排煙ダクトも点検して欲しい。研究所の火災事例も沢山発生しているからだ。
製造設備はしっかり管理していても、実験や研究設備が盲点にならないように安全管理を行って欲しい。
たかが排煙、排ガスダクトと思わないで欲しい
ダクトの中に燃える物が蓄積すればいつか発火して火災になる
ダクトの中を見れるように、設計の段階からのぞき窓も出来れば設置して欲しい 点検しやすいように地上に近い所が望ましい
ダクトの中は、見える化が大切だ
点検口がなければいつか火災事故は起きる 
あなたの工場や研究所は大丈夫か一度点検して欲しい

 

2023年03月19日

電気室火災への対応を強化していますか

企業が電気室火災に関心を持ち始めたのは、今から半世紀前の1970年代だ
1974/2/18千葉県市原市のコンビナートにある製油所で電気室火災が発生した
水を使って消火したので、電気品が駄目になり5ヶ月間操業が停止した
今なら、電気火災用消火器が当たり前のように電気室には備え付けられているが当時は、当たり前では無かった
電気設備で大きな火災が起きるという関心もそれほど無かった
電気室には、電気ケーブルもある。その被覆はプラスチックだから火がつけば当然燃える
でも当時は、電気火災のリスクも甘かったのだ
翌年の1975/4/23にやはり千葉のコンビナートで電気室火災が起きている
遮断機の配線がゆるんでいて、接触不良で火災が発生した
配線のゆるみが原因だ
これらの事故の教訓から企業は、電気室火災への対策を強化していった
異常を早く検知するために、火災報知器や煙検知器を設置した
延焼を防ぐ為、ケ-ブルダクトの延焼防止剤を積極的に設置した
電気の漏電遮断機という設備も積極的に導入し設置した
電気火災は過電流だけでは無く、漏電でも起こるからだ
過電流遮断器も、小まめに設置した。大容量の過電流遮断器一つだけでは、遮断したときには影響が拡大しているからだ
事故を未然に防ぐために大事なのは、「異常」に早く気づくことだ
法定の火災報知器や煙検知器の設置台数では、異常に早く気づくのはやはり難しい
法定台数より上乗せした検知器を設置して欲しい。検知器はたかだか数万円だ
それをけちって、大きな火災になり損失を受けている事例も多い
電気設備も老朽化すれば事故が起きやすくなる。発火事故もしかりだ
電気部品の故障で大きな火災になることもある
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
電気設備関係の安全投資をけちらないで欲しい
昨今、発熱の早期発見で赤外線カメラを使う企業も多い
異常に早く気づく為の安全投資にも力を入れて欲しい

 

2023年03月12日

安全装置はつけたら終わりではない

安全装置をつけてしまえば、安全と考えている人は多い
安全装置はつけたら終わりではない
化学工場で機械は何十年も稼働する
定期的に点検して,機械はその機能を果たすことができる
何も点検しなければ,故障したり,いざという時に作動しない
昔安全弁がいざという時作動しないトラブルが多発した
安全弁が錆び付いていざという時作動しなかったからだ
タンクも昔は,一度も開放点検する必要はなかった
危険物タンクでも法的規制はなく、タンクは開放点検もせず無期限に使えた時代があった
鉄で出来たタンクは当然腐食する。時間が経って底板やアニュラ板に穴が開いて漏洩事故が多発した
つまり,機械は定期的な点検が不可欠だということだ
HAZOPで安全性を評価すれば,安全対策として警報やインターロックや,安全弁を設置するだろう
安全装置を設置すると決めると,みんなここで満足してしまう
だから,事故が繰り返すのだ
安全装置は設置したらそれで終わりではない
かならず,点検周期を決めてしっかりとメンテナンスする必要がある
しかし、HAZOPでの検討では点検周期まで論議はしない
だから,点検周期をあいまいにして結果として安全装置が作動せず事故が起きる
安全装置を設置したら,しっかりと点検周期を決めて欲しい
インターロックもつけたら終わりではない
運用管理の基準を決めておくことだ
特に、解除していい条件は、明確に数値で決めておくことだ。温度や圧力などの数値だ
上司の許可を取れば解除していいという運用は事故になることが多い
今から約10年前に、インタ-ロックを解除してこんな事故が起きている
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2012/pdf/120829.pdf
安全装置はつけたら終わりではない。点検基準や運用基準を明確にしておくことだ

 

2023年03月04日

技術伝承の難しさ --文字だけで伝えるのは限界がある

数日前に、腕時計が1分ずれているの気がついた。
電波時計で、狂うはずが無いと思っていたのに狂っていたのだ。
早速、取扱説明書を引っ張り出して調整を始めることにした。
Aボタンを押して、強制受信をさせて現在時間を確認せよ。
基準となる日時が合っているかBボタンを押して確認せよと取扱説明書には書いてあった。
指図道理にやっのだけど、うまく復旧しない。
どんどん深みにはまっていき、なんだかおかしな時間を時計がさすようになる。
あとで、落ち着いて取扱説明書を読み直すと、「読み違えていた」ところも有るのに気づく。
何秒以上ボタンを押せとは書いてあるが、その後結果が出るまでどのくらいかかるとは書かれていなかったからだ
「すぐに結果が出る」と思い、何かのボタンを次にすぐに押してしまい結果としてエラーになってしまっていたのだ。
説明書を書いている本人は、十分時計の機能はわかっているから「操作をしたらしばらく待つのは」あたり前のことだと思っている。
でも取説を読んでいる人はわからいことだらけなのである。当然、早く問題を解決したいのだから、それほど多く待つことはない
わかりすぎている人が、文書でちょっとしたことを書くのを省略しているからこのようなミスマッチングが起こる。
作業手順書や運転マニュアルでも同じような問題を起こしている
ベテランは常識だと思うことは、「書かない」ことが多い。常識が省略されてしまうという問題点がある
過去にもこんな事故がある。大量のベテランが退職し、大量の若手が採用された時期に起きた「自動弁が突然開いた」大事故だ
https://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200807.html
ベテランが書いた作業手順書を若手が読んで作業していたとき大量の油が噴き出した事故だ
ベテランが書いた手順書には、空気で動く自動弁が誤って動かないようにするのは常識だから「空気を止める」とは書かなかった
空気を止めずに作業したことにより起きた事故だ
当たり前という価値観は、全く門外漢の人には適用しない。
特に、始めてトラブルに遭遇した人は「当たり前」というのは全く想定外の出来事だ。
文章で、人に何かを伝えるのは難しい。
相手のレベルが良くわからないときは特に難しい。年齢だけで相手のレベルがわかるわけではないからだ
私も色々な人に講義をするが、相手の理解度がどのレベルに有るのかを見極めのにかなり注意を払う。
説明のしかたが、易しすぎても問題がある。難しすぎても当然問題はある。
人に技術を伝えるのは難しいものだ。口だけで伝えられることにも限界はある。
人は、文字だけではなく、写真やイラストを使うなどしてイメージを加えて色々なことを捉えている。
写真やイラストなどのイメージは、文字にすると数百文字分の情報が含まれているという
文字や話し言葉だけではなく、写真。イラストや映像を併用して上手に技術伝承をしてほしい

 

2023年02月27日

装置のスタートアップ準備の大切さ 動作確認が必要だ

化学プラントなどは定期的に装置を止めて、修理や検査をする
検査をしたから、問題なく装置を起動できるかというとそうでは無い
装置を長いこと止めておくと、運転時とは違う状況が起こる。装置は動いていると問題は無いのだが、停止すると固着して動かないこともある
つまり、装置を動かす前にもう一度安全確認が必要となる
一つは、気密テストや耐圧テストだ
装置を色々分解したりすれば、元通りに組み付けられている保障は無い。組み付けが正常かどうかの検査が必要となる
漏れの有無に関しては、気密テストや耐圧気密テストをすることになる
圧力関係で漏れが無いからといって安全ではない
機能が問題ないか確認も必要だ
電気や空気を定期検査時などに止めていれば、計装計器がしっかり動作するかも再確認が必要となる
機器を停止していると、どこか固着して動かなくなることもあるからだ
計装装置関係では、装置が動く前に必ず調節弁のストロークテストというのを実施する
計器室から模擬信号を出し、現場にある調節弁が予定通りの開度で動くか検査するのだ
例えば調節弁の開度が100%の指示を出しているのに、開度がその通りになっていないこともある
50%や80%開度を示していれば、その調節弁はおかしいとして、ストローク調整や修理するのだ
調節弁にはポジショナーという弁開度を制御する装置がある。それが故障して正しい開度で動かないこともある
ポジショナーと弁本体と接続する金具がゆるんでいたり、外れていたりして動作不良と言うこともある
定期修理が終了して、そのままうまくスタートアップできるという保障は無いということだ
時間が経てば、今まで正常だった機械も故障することもあると考えて欲しい
必ず、機械の動作確認が必要なのだ
機械は、いつも正常に動くと思わないで欲しい
機械は常に作動確認が必要だ
設備は設置したら終わりではない
機械は常に作動確認が必要だ
装置のスタートアップ時はしっかりと計器や機器類の動作確認をして欲しい

 

2023年02月22日

硫酸タンクと事故 その-2

前回のブログで硫酸タンクでの爆発事故を紹介した
いつもは濃硫酸を入れていたが、あるとき希硫酸を入れたので水素が発生した事故だ
希硫酸で水素が発生し、火気工事中が着火源となり起こった水素爆発事故だ
水などで希釈された濃度の低い希硫酸は、このように水素を発生する
しかし、濃硫酸ならば,一般的に水素は発生しないといわれている
濃硫酸の場合、含まれる水が少ないため電離した水素イオンが発生しにくいからだ
ただし、それは純粋な濃硫酸の話である いわゆる,新品の状態の時である
購入してまだ使用していない,新品の話なら濃硫酸は水素は発生しないと考えて良い
しかし,プロセスで使用した濃硫酸を循環して利用することもあるはずだ
水分が混入してくれば、濃硫酸でも、いつの間にか薄められて希硫酸になる
希硫酸になっていることに気づかなければ、水素で事故が起こることがある
濃硫酸内では鉄の溶解速度は十分に低いので. 濃硫酸タンクに鉄が広く用いられている
タンクに濃硫酸送る配管にも、鉄が使われる
鉄を使うことには、問題は無いのだが配管流速はしっかり管理する必要がある
流速と鉄の溶け出しは、相関関係があるからだ
流速が早すぎると、腐食速度が増し、鉄が急速に溶け出していく
こんな文献がある https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/41/11/41_11_777/_pdf
こんな事故が,1975/8/27千葉県市原で起こっている
濃硫酸タンクから液を送るポンプの循環ラインが頻繁に腐食していた
配管が細すぎて、流速が早く鉄が溶けて腐食していたのだ
ポンプから、タンクへ戻す配管だから腐食して溶けた鉄は、時間をかけてタンク内の濃硫酸に溶け込んでいた
溶け込んだ鉄は、H2SO4+Fe→FeSO4+H2のように水素が発生していた
あるとき、腐食した配管を交換しようと火気工事を始めたところ発生していた水素で爆発し作業員が死亡した
事故後、調べた所濃硫酸の中の鉄は1wt%入っていたという
色も透明では無く、灰白色に変色していたという 濃硫酸の鉄分や色は定期的にチェックして欲しい
火気工事前には必ずガス検知をしっかりして欲しい

 

2023年02月17日

硫酸タンクと事故 その-1

硫酸タンクで爆発事故が起こることを知っているだろうか
硫酸は,薬傷などの危険性については皆よく知っている
しかし,硫酸そのものは可燃物では無いので火気工事などでも危険だと思わないところに事故の芽がある
硫酸は可燃性では無いから安全だと思わないで欲しい
硫酸は酸性物質だ。酸性物質は,鉄などの金属と反応して水素という物質を発生する。
つまり、安易に火気工事をすれば発生した水素に火がつき爆発が起こることがある
硫酸などの水素イオンを持つ物質は常に金属と触れると水素が発生すると考えて欲しい。
硫酸の分子式の中に、H2という水素分子がある。薄められた硫酸水の水にもH2というのがある。
この水素イオンから水素が発生すると思って欲しい。タンクの材質は鉄だとすると、イオン化傾向の原則により起こるのだ
硫酸と鉄が反応すると次のように水素が発生する
H2SO4+Fe→FeSO4+H2
硫酸と言っても,濃硫酸のような濃度の高いものもある。水で希釈した,濃度の低い硫酸もある。
濃度の高い濃硫酸では水素は発生することはない。
水素を発生するのは、水などで希釈された濃度の低い硫酸だ
濃度の違いで,事故の確率は違う。
いつもは,濃硫酸を入れていたはずのタンクの硫酸濃度が下がったことに気づかず水素が発生し火気工事で爆発した事故がある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2015_07.pdf
水素は,とんでもない爆発力がある

酸は金属と触れると水素が発生すると思って欲しい
水素は臭いもしないから,嗅覚で感じることはできない
ガス検知もせず安易に火気工事をすれば,水素で爆発が起こる
水素の持つエネルギーを甘く見ないで欲しい。
硫酸を扱っていれば,水素が発生することもあると思って欲しい
可燃物ではないから、事故は起きないと思わないで欲しい

 

2023年02月12日

電気設備の技術者をしっかり確保せよ

近年化学工場でも電気系の技術者の採用が難しくなってきているという
電気というと、半導体などの微弱な電流を扱う分野もある
一方化学工場などでは。何万ボルトなどの高圧電力を扱う分野もある
大学を出た学生さんは、どちらかというと半導体などの電子分野の企業に就職する
結果として、化学工場の電気エンジニアーの採用が難しくなってきている
そうは言っても、工場には高圧電気を取り扱うエンジにアーも不可欠だ
工場がほしいいのはエネルギーだ。だから何万ボルトもの高電圧を取り扱うことになる
電気は目に見えない。この目に見えない物を取り使うのも一つの技術だ
工場の中のエンジにアーを見ると主流は機械エンジにアーだ
彼らは、目に見える物を扱う。機械は目に見えるからだ
ところが電気エンジニアーは、電気という全く目に見えない物を扱う
そこに難しさがある
電気というのは、電気配線でつながっている
工場の中でどこかで短絡などのトラブルが起これば、被害が及ぶ範囲は最小限にする必要がある
いわゆる電源ヒューズや、遮断機など瞬時に電気を遮断するシステムがふんだんに張り巡らされている
トラブルが起きたときに、何ミリ秒、何マイクロ秒の世界で、事故が起きた箇所を縁切りする
異常を工場全体に波及させないような設計が電気の世界では行われている
一つのトラブルが工場全体に波及しないような設計を系統設計とも言う
こんな仕掛けが工場で行われていることは、電気エンジニアー以外は知られていない
この仕組みは、化学工場だけではなく、日本の電力会社ネットワーク全体で行われている
電気の安全を守るためには電気のスペシャリストが必要だ
日本の企業も、しっかりと電気のスペシャリストを雇用維持して欲しい

 

2023年02月07日

「行き止まり配管」という用語にも関心を持って欲しい

「行き止まり配管」という言葉を知っているだろうか。
HAZOP的には、流れ「無し」がずれのキーワードだ。
流れが無いと安全だと思いがちだが、そうではない。
流れが無い部分は、流速がゼロなのだから汚れや残渣が溜まりやすいという傾向がある。
腐食性の物質が溜まれば、時間が経てば配管に穴が開く。
爆発性の物質が溜まれば、蓄積して高濃度になれば爆発することもある。
「行き止まり配管」という言葉が使われるようになったのは1980年代だ。
1982年3月31日に鹿島にある製油所で爆発が起きた。この事故では5人の命が失われている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057045.html
安全弁の出口側の配管で爆発が起きている。
安全弁の出口配管は、通常安全弁が作動しない限り流れが無い配管だ。
ところが、出口配管を温度の高い別の配管へ戻す設計をしていたため事故が起きたのだ。
流れが無い配管でも、温度差があると、中の流体はヒートパイプ現象と行って温度の高い方から低い方へ流れ始める。
つまり、配管内で流動が起こるのだ。
この為、鉄でできた安全弁出口側配管に腐食性物質が入り込み穴が開き可燃物の漏洩により爆発したのだ。
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00056.pdf
1989年3月6日には、水島コンビナートにある製油所でやはり行き止まり配管が原因の事故が起きている。
配管改造をした際、流れにくい部分ができてしまったのが原因だ。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000003.html
改造工事における変更管理の失敗事例でもある。
近年、高圧ガスの認定制度などの法改正で長期連続運転ができるようになってきている。
スタートアップにしか使わない配管も行き止まり配管だと考えて欲しい。
そんなところに腐食性のスケールが長期間たまっていればやはり突然穴が空いて事故になる。
行き止まり配管がどこにあるのかを把握してしっかりと管理をして欲しい。
行き止まり配管の持つリスクもしっかりと教育して欲しい

 

2023年02月03日

大型タンク内での火災死亡事故から学ぶこと

今から約20年前の1月、大型タンクの清掃中に5人が死亡する事故が日本で起きている。2006/1/17の事故だ
http://khk-syoubou.or.jp/pdf/accident_case/manabu_18_2_3.pdf
浮き屋根式の原油タンクの開放のため内部を清掃中に起こった事故だ。直径は約75M、高さも24mある大型タンクだ
エアーラインマスクを付けた作業員が中に入り、タンク底部にある残渣を軽油で溶解させポンプで回収して取り出していた
換気はしていたが、大型タンクで完全には換気ができていなかっため、スラッジから軽質分が気化して,爆発混合気を形成し爆発したといわれている
原油残渣の引火点は-20℃だ。何らかの着火源があれば簡単に火はつく
主要な再発防止策は、事故報告書に4つ書かれている
1つ目は,極力無人で洗浄する工法を取ると言うことだ
つまり、人が入る前に内部にある可燃性ガスを発生するスラッジを可能な限り無人状態で取り除くこと
原油洗浄と温水洗浄を併用し、無人作業でタンク内の油分・原油スラッジをできるだけ回収するという
危険作業は無人化することでリスクを減らすということだ
2つ目は。タンク内へ人を入れるときの許可基準を見直したという
作業中は、可燃性ガス濃度(1,400ppm以下→500ppm以下)を引き下げた
3つ目は、ガス検知の強化だ。さらに、タンク内部全体の可燃性ガス濃度および酸素濃度の測定ポイントを増やし、測定方法も工夫するという
タンク内作業場所に可燃性ガス検知器および酸素濃度計を常設し、異常に早く気づけるようにした
作業員の一人以上は携帯式の可燃性ガス検知器および酸素濃度計を常時携帯するように改善した
異常に早く気付けば事故のリスクは減るからだ
4つ目は発火源の削減だ。工事用電気機器のタンク内持込の制限を強化したという
この事故では、作業員の一人が「スタンド式の投光器が倒れ、しばらくして火が出た」と証言している
投光器は防爆型のスタンド式照明装置で、3台設置され、約1.4mの高さに位置に調整されていたが、固定されていなかった
このうちの1台が転倒していることが確認され、着火源は投光器による可能性が高いとみられていた
実証テストが行われたが、断定できる結果は得られず最終的には原因は不明とされている
とはいえこんな報告書もある。静電気が着火源だった可能性もあると言う。参考にされたい
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2014_03.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/2/50_101/_pdf/-char/ja
タンク内清掃に関する貴重な事故の教訓だ。活用して欲しい

 

2023年01月30日

寒波や凍結で起こる事故 その2

凍結で起こる事故が、とんでもない規模の事故になってしまう事故も沢山ある
凍結で装置が壊れ大量の可燃物が外に出て大事故になるケースだ
1985/1/18西ドイツで起こった事故だ。エチレンプラントで配管凍結で可燃物が漏れ蒸気雲爆発だ
使用していない予備ポンプの3Bバイパスライン内に滞留した水分が凍結して配管が折れ、大量のエチレンとプロピレンが漏れた
当日は-10℃であった。凍結で50cmの亀裂が生じたという
事故のキーワードは予備機と言うところだ。通常、使用していない機器や配管に関しては運転・保全の関係者はどうしても関心が薄くなる
つまり、予備のポンプとは言え、運転中機器と同一の管理が必要だと言うことだhttps://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00231.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00231_s.pdf
1989/12/1カナダの製油所で起こった凍結爆発事故だ。使用していない配管に水がたまり、凍結破損した事故だ
事故のキーワードは、遊休機器だ。使っていない配管で事故が起きている
使わないなら、すぐに配管を撤去しておけば起きなかった事故だ
企業の中に使わなくなった者は沢山あるが、なかなか撤去費をかけてまで撤去が進まない
いらなくなった物に金はかけたくないというのが背景にある
ところが、世の中この使わなくなった配管で起こる事故事例は実に多い
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00207.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00207_s.pdf 
1999/2/5 兵庫県にある製油所で起こった冬場の事故だ。
製油所近辺は異常な寒波に見舞われていた。内部流体は温度390℃、圧力14.7MPaの高温部配管の下側に保温をしていなかった
気温0℃、風速1.5m/sの異常寒波が襲来した。寒波で急冷しフランジにすきまが出来漏洩し火災になった事故だ
フランジの上側は雨カバ-があったが、下側は保温が無かった
折からの寒波に晒され、上下フランジの温度差が大きくなり、その繰り返しによりリングガスケットの当り面に微小な変化が生じ、漏えい自然発火に至った事故だ
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00198.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00198_s.pdf
ここに紹介したのは事故事例として公開されているものだ。公開されていない事例は沢山あるはずだ
気温の下がるこの時期の、寒冷対策はしっかりやって欲しい

 

2023年01月25日

寒波や凍結で起こる事故 その1

日本では今頃から、冷え込みが激しくなってくる
しっかりと、凍結対策を行わないととんでもない事故になる
凍結で事故が起こるのは、水が原因であることが多い
たかが水だと思うかも知れないが、凍結すれば体積が膨張する
配管内などで閉じ込められた状態で、凍結すれば簡単に配管は破壊される
可燃物を取り扱う工場であれば、わずかでも流体に水を含んでいればこのような凍結破壊事故を引き起こす
水分を含むラインでは、定期的な水抜きが冬場いかに大切かだ
水封器周りの管理も大切だ。冬場凍結しないようにしっかりと水を長し続ける必要があるからだ
調節弁の作動不良にも注意が必要だ。緊急遮断弁の動きも鈍くなる。空気シリンダーの動きが悪くなるからだ
計器の導圧管の保温を誤って停めて事故になった例もある
フェノールという凝固点40度の流体を窒素シールしているタンクの圧力計器の保温を誤って停めたからだ
こんな事故事例もある
冬場、配管工事をした後、水張り検査をした
水を抜いたものの完全に抜けきれず。配管の一部に水がたまっていた
夜になり、凍結して配管が壊れたと言う事故だ
冬場水を使う漏れテストでは注意を払って欲しい
高温配管フランジの保温が不十分だったという事故事例がある
フランジの周りの保温カバーは上側は取り付けていたももの、下側は何もなく冷やされ上下の温度差がガスケットがゆるんだという事故だ
こんな文献があるので紹介しておく
「寒冷積雪地における化学工場の冬季保安対策」という文献だ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/20/5/20_256/_pdf/-char/ja
凍結事例とその対策というのも記載されている
参考にして欲しい
この時期は、凍結対策をしっかりやって欲しい

 

2023年01月21日

なぜ事故が起こるのか HAZOP的視点で

なぜ事故が起こるかという問題を考えると色々な切り口がある
一つは、危険源が存在するからだという切り口だ
世の中にある、危険源は、物質危険性、人のミス、設備の故障、外乱がある
もう一つの切り口は、管理が悪かったという切り口だ
危険源があるということはわかっているのだから、危険源をどうコントロールするかだ
設計の段階で、危険源を押さえ込むこともできる
安全性評価をして、危険源を排除することもできる
運転操作や作業で出てくる危険源であれば、運転管理や作業管理を徹底することで事故を起こさないようにすることもできる
では、HAZOP的な視点で事故を起こさないようにするのはどうするかと考えてみたい
HAZOPはずれが事故を引き起こすというのが原点にある
ずれが起こることで、事故のシナリオが出来、安全対策が不十分であれば事故になるというロジックだ
ということは、事故が起きるのは「ずれ」に気づかなかったというのが、最初の入り口だ
ずれに気づいていれば人は何らかの対応をとり、事故は防げたかも知れない
つまり、ずれに気づけるような環境があるかが重要だ
計器に警報がついていなければ、よほどの偶然がない限り異常に人は気づけない
異常に気づくには、警報という設備がついているかがポイントとなる
次に人が異常に気づいても、事故を防げるとは限らない。時間的に余裕がなければ対応できない
時間的に余裕がなければ、機械的な安全装置が不可欠だ。安全弁をつけておくとか、自動インターロックをつけておくかだ
ではそれで、事故は起きないかというとそうでは無い
設備管理や、運用管理などがしっかり出来ていなければ事故は起こる
安全弁は、定期的に点検していなければいざという時に作動はしない
インターロックも、点検やインターロック解除条件などの運用管理が必要だ
事故を防ぐには異常に早く気づく道具や環境が必要だ
更に、気づいたら人にあまり負担をかけずに安全に停止するハードウエアーも備えておくことだ
安全は人と機械とバランスがとれておくことが大切だ

 

2023年01月15日

事故を防ぐ技術--事故はやみくもに起こるわけでは無い

事故はやみくもに起こるわけでは無い
労働災害という事故がある。火災爆発と化学物質に関わる事故もある。保安防災とも言われる領域だ
事故は大きく分けると、労働災害と化学災害がある
事故の原因は無知というのが基本にある
可燃物に火を近づければ燃えるのだが、取り扱っている物質が燃えるものだとは知らなかったという事例も多い
物質危険性の肝となるキーワードが伝えられていないからだ
着火点と引火点の違いが何かと質問したらきちんと答えられるかだ
着火点と引火点の数値はどちらが大きいかと質問したら即座に答えられるかだ
案外基本的なことが、きちんと理解されていないから事故は起こる
事故は、目に見えないものから起こると言われている
例えば静電気だ。静電気は直接目には見えない
静電気の事故は無知故に起こることが多い
静電気そのものに関する基礎的な知識が身に付いていない
導電性の無い可燃性液体を、バルブを開けて流出させていれば静電気は起こる
流速が1m/sを越えると静電気で着火する事故が多い
でも、流速1m/sを体感的に理解できていないから事故は繰り返し起こっている
静電気のように目に見えない物は人は危険と感じない
静電気の危険性を教えるのはたやすいことではない
人は目に見えない物は危険と感じないからだ
事故がなぜ起こるのかと言えば、世の中に危険源があるからだ
危険なこと危険な物が、世の中に存在する
では、何が危険源かと問うてもそう簡単に答えを返す人は少ない
事故の要因は沢山あるが、人は体系的にそれが何かを簡単に要約できないからだ
事故が起こる原因は沢山ある。企業の安全担当者がそれで済ましていては事故は防げ無い
なぜ事故が起こるのかを体系的に知っておくことが基本となる
体系的にとは何かだが、そう簡単に世の中には情報存在しない
そこに難しさがある

 

2023年01月13日

HAZOPでインターロックの作動不良をどう考えるか

HAZOPの講義でHAZOPでインターロックは作動しないことも想定するのかという質問があった。
作動しない原因は何かまで突き止めていれば、想定は不要と答えた。想定に当たってこのように考えてはどうかと回答した
つまり、検討を進める過程では、今あるインターロックは、「正常に作動する」として、それでも爆発や破裂などのHAZARDが発生するのか、しないのかをまず考える。
次は、インターロックの機能が働かない、つまり「作動しない」状況も考えてみる。
まずインターロックを作動させる、要素に着目するのだ。いわゆる、検出端と呼ばれるものだ。
例えば圧力異常を検出して、インターロックを作動させるなら「圧力発信器」の故障だ。液面なら、液面計という検出器の故障だ。
インターロックが作動する場合、通常まず警報が鳴るような設計をしているはずだ。例えば、圧力HIの警報が鳴る。
警報を聞いて、人が対応する。それでも対処し切れなければ圧力HI-HIのアラームが鳴る。それでも圧力が上がれば、自動的にインターロックが作動するような設計がなされているはずだ。
HAZOPで見抜かなければいけないのは、警報を出す圧力計とインターロックを作動させる圧力計が同じ計器になっていないかだ。
何を言いたいかというと、同じ計器で警報とインターロックを作動させるようにしていれば、計器の故障で警報も、インターロックもどちらもいっぺんに機能を失うことになる。
確実に対処するためには、HI警報用の発信器と、インターロックを作動させる発信器は別々の物になっている必要がある。
警報用の計器と、インターロック用の計器は別々のものにしておかなかったために過去事故が起きているからだ。
インターロックを作動する計器の故障を考えたら、次はインターロックにBY-PASSなどの解除SWがあるか見て欲しい。
運転中にインターロックを解除されてしまえば、インターロックは機能しない。つまり、作動しないことになる。
HAZOPでは、ソフト的な管理がしっかりしているかも検証する必要がある
なぜなら、人はインターロックというシステムがあるから安全だと思い込んでしまうからだ
ソフト面では、インターロックを解除などをする判断基準が明確に決められているか確認して欲しい。
上司の許可を取れば良いなどと言う曖昧な判断は駄目だ。現実今から約10年前にインターロックを解除して爆発事故が起こっている
http://handa.jpn.org/1/posts/post447.html
人が変われば、判断条件が変わる。上司も替わることがある。経験や知識も違うからだ。
解除していい条件など、温度や圧力条件などが数値化されているか確認して欲しい。判断は見える化が必要だ。
最後は、維持管理だ。計器やインターロック機能の点検周期が明確かを確認しておくことだ。
何も点検しなければ、インターロックの故障に気づかないからだ。設備は設置したら終わりでは無い。維持管理もポイントだ。
HAZOPでは、ハード、ソフト(運用管理、機能検査、設備管理)と両面で問題が無いか見抜いて欲しい
インターロックというシステムがあるから安全だと思い込まないで欲しい

 

2023年01月11日

寒くなって起こる事故ーー凍結トラブル

コンビナートで起こる事故を見ていくときに季節性というキーワードがある
夏に起こる事故、冬に起こる事故とそれぞれパターンがある
夏は温度が高いから、当然反応は進む
屋外に置いたドラム缶が蓄熱自然発火など温度上昇故の事故が多発する
とにかく化学物質は、日陰や冷暗所で保管しないと思わぬ反応が起こる
温度に敏感な過酸化物が、夏場事故を起こすケースが多い
ならば、冬は温度が低いから事故は少ないかというとそうではない
冬特有の事故が起こる
凍結での対応事例の失敗だ。最近は、温暖化で冬はあまり温度が下がらなくなってきたが以前はよく凍結トラブルに悩まされた
11月くらいになるとプラントをパトロールしながらスチームトレースを活かし始める
最初のうちは、勢いよく蒸気を出してくれるのだが、やはり蒸気は停めておくと鉄さびがスチームトラップに詰まる
蒸気を活かしてからもう一度パトロールが必要だ。これがスチームを活かすときのコツだ
スチームの元弁を開いたから大丈夫と思い込むと、あとで凍結トラブルに遭う
蒸気のトラップが作動していても、蒸気の量も見ておくことだ。吹き出し量が少ないと時間が経てば蒸気は停まることもある
10年に一度は大寒波がきて凍結事故が起こったものだ
凝固点が40℃くらいある物質を取り扱っているときはよく凍結トラブルに悩まされた
おまけにその当時は、保温材に石綿が使われていた
当時は、石綿が有毒だとはあまり意識せず軍手で触っていた。マスクもしてはいなかった
2000年頃に、規制がかかるまでは石綿の有毒性はほんとに皆意識していなかった
それでも、私より5才くらい年を取った人は、石綿による病気、中皮腫にかかった人がいる
機械系の保全担当者だ
やはり、石綿は怖いものだったのだとそのとき実感した
本題に戻るが、温暖化とはいえ急に気温が下がることもあるだろう
スチームトラップの点検には手を抜かないで欲しい

 

2023年01月09日

化学物質の貯蔵保管の失敗で起こる事故

化学物質の貯蔵保管の失敗で起こる事故事例は多い
物質という物は時間が経てば変質する
夏場であれば温度が影響する。湿度も関係することもある。水分を含むと悪いことが起こる事例も多いからだ
こんな事故事例がある。塗料工場で起こった事故だ。原料を長期間保管しておいたため、水分が混入していた
水分の混入に気づかず、反応させていたところ反応暴走が起こってしまった
規格以上の水分が混入したからだ。成分検査をしっかりしていれば防げた事故だ
長期間保管した原材料は、万一を考え成分検査をしてから使用することだ
貯蔵している物質の組成の変化に気づかずに起こした事例がある
燃料タンクでの事故だ。原油を原料にして燃焼させて製品をつくる工場での事故だ
原油に含まれる水分量が増えているのに気づいていなかった。そのまま、運転を続けていたところ突然炉が失火したという事故だ
油の中に水分量が増えれば、燃えにくくなるのは当然だ。水分量の管理は必須なのに怠ったというお粗末な事故だ
やはり、成分管理はしっかりと行う必要がある
タンクで反応性のある物質を一時的に保管して失敗した事故事例がある
約10年前の2012年に起きたタンク爆発事故だ。いつもとは違い、満液の状態で撹拌をしなかったことにより起きた事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2012-000.pdf
いつもは、タンク内に入る液はわずかで、冷却用コイルもタンクの底部にしか取り付けられていなかった
工事の時の廃液を一時的に入れる中間タンク、管理上重要視されておらず温度計も警報も取り付けられていなかった
反応器は重要とだれでも考えるが、貯蔵に使われるタンクはそれほど危険は無いとおもってしまうからこのような事故が起こる
化学物質の貯蔵保管について警鐘を鳴らず化学工学会の談話記事があるのでこれも参照されたい
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/10/DANWA2020_10_No172.pdf
たかが貯蔵保管と思わないで欲しい
化学物質であればしっかりと管理して欲しい
HAZOPでも貯蔵によるずれを見逃さないで欲しい

 

2023年01月07日

バルブの誤操作が事故につながる

バルブの誤操作による事故事例は多い。
ヒヤリから大事故に至るまで、化学工場の現場で起こるヒューマンエラーの中で主要な事故要因ではないだろうか。
誤操作の原因は様々だ
多いのは「忘れる」だ。開けるのを忘れたというのもあるが、閉めるのを忘れたという方が致命傷になることが多い
ドレン弁を開けていて、ちょっと現場を離れたケースだ。帰ってきたら、油が流れ出ていて着火した事故も多い
勘違いと思い込みも多い。本来開ける弁を閉めてしまったり、その逆もある。無知や教育不足、図面の確認ミスだ
本来動かしてはいけない弁であれば、施錠して欲しい
現場の標識表示や行き先表示が無くて誤って別の弁を操作する事例も多い。標識表示は充実して欲しい
複雑な配管で間違える事例は、ほとんどが表示の不備だ
バルブ配置が悪いという事例もある
本来正面から弁が操作できるならいいが、弁周りの空間が複雑で、逆手で弁操作をしていて勘違いして事故になることもある
配管設計時のレイアウトで、事故が起こりにくい環境をつくって欲しい
緊急停止時の操作が複雑だったという事故事例もある
新人にバルブ操作を任せ大きな事故になった事例もある
http://www.hamamatsusogo.com/hanrei/scs631027k42-8-1109.html
日本では、1973年という年にものすごく多くの事故が起きた。
1960年代にコンビナートができはじめ、1970年代には規模も大きくなり人が機械について行けなかった時代だ。
その頃、安全関係で多くの論文を出されていた横浜国立大学の井上さんのいい文献がある。
「化学工場における最近の災害事故と防止対策」というタイトルで、1974年にでた文献だ。
下記のURLからダウンロードできるので興味のある方は読んでほしい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/12/4/12_4_184/_pdf
この文献の中では、S44年当時の事故とS48年の事故多発時の比較やバルブ誤操作というヒューマンエラ-に関する考察がある。
今でも教訓として使える貴重な情報があるので1度目を通してみてはいかがだろうか。

 

2023年01月05日

教育について考える 人は知らなければ事故は起きる

人は知らなければ事故は起きる
無知故に事故が起こることがある
知識という物は時間が経てば身に付くものもある
とはいえ、なかなか日常の業務経験の積み重ねだけでは思いつかないものもある
だから教育が必要だ
自然に身に付く物は教育しなくても良い
ところが、時間が経っても自然に経験したり知り得ない物はやはり教育という手段で知識を与えていく必要がある

教育という物はやれば効果は出るものの、教育には費用も時間もかかる
何をどのくらい時間をかければいいのか企業は真剣に検討することも必要だ
法に定められた教育はしょうが無いが、技術や技能を向上させる教育はコストと効果を真剣に考えるべきだ
教育の時間は、消費税率の変化にたとえられる
全就業時間の3%、5%、8%、10%とも言われる
仕事の高度化が進めば教育の時間も増えていく
そうは言っても限りある時間だ

教育の内容や時間についても見直して欲しい
さらに効果も検証して欲しい
教材も陳腐化していないか検証して欲しい
教える人材にも教える技術を身につけさせて欲しい
単に喋るだけで技術は伝承しない
教育を受ける相手が教育から気づきを得ない限り人は成長していかないと思って欲しい
人は納得しないと知識を受け入れない動物だからだ

2023年01月03日

新年のごあいさつ  事故から何を学んできたのか

新しい年が始まる
このブログを始めて8年目になる
なぜ事故が起こるのかを情報発信してきた
事故が起こるのはパターンがある
そのパターンを知らないから事故が起きる
日本の化学産業が起こってから100年になる
石炭を原料とした化学産業から始まり、石灰を原料としたアセチレン産業も栄えた
天然瓦斯を原料とした時代もあった
1950年代後半からは石油を原料とした石油化学産業へと変遷した
事故が起こるのは、物質危険性、人のミス、設備の故障に加えて自然災害などの外乱が要因だ
100年経った今でもそれは変わり無い
事故の要因は変わらないのに、その要因は的確に伝えられていない
なぜなら、事故は起こらないようになってきている
今の若い人は事故を経験することもなくなってきている
失敗を経験することはない
人は失敗から学んで成長してきた
しかし、今の世の中失敗を経験できないという矛盾がある
事故が無いことはいいことなのだが、事故はやはり起こる
事故を対処する能力は不可欠なのだが、それを学ぶ機会が無い
過去の事故事例を学ぶしかない
とはいえ、過去の事故事例がわかり易く整理され企業内で伝承されているかというとそうでも無い
事故から学んだ失敗を伝承するのは難しい
日本の化学産業、事故から何を学んできたかを本にしたいのだが、なかなか時間がとれない
いつか、本にしてなぜ事故が起こるのかは伝承したい

 

2023年01月01日

今年一年の国内の重大事故を振り返って その2

今年最後のブログになる。年末ぎりぎりまで、事故は起きている。今日現在までの情報をまとめておく
2022/3/1火薬類を製造する工場で爆発死亡事故。 一人作業で、死亡しているため原因はわかっていない
https://www.youtube.com/watch?v=25_ulg_7Ohttps://www.youtube.com/watch?v=25_ulg_7OjE
2022/3/7 鉄粉を加工する大型機械が爆発死亡事故。粉塵爆発だ
https://matomebu.com/news/hyogo-jiko20220307/
2022/3/13 リン製品を製造する工場で火災6時間後鎮火 原因はわかっていない
https://tadatabilife.hatenablog.com/entry/2022/03/14/051717
2022/9/6 ボイラー爆発  
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/pdf/017_03_00.pdf
https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20220922535194&pid=140120220922535194
2022/11/28 燃やした木くずの灰を集めて冷却する設備の内部で、清掃をしていた作業員が灰に埋まり1人は救助されたが、2人が死亡
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20221128/3000026202.html
請負作業員の崩落事故だ。上から落ちてきた灰に埋まった事故だ
いつも行う作業で慣れていたのかも知れないが、今回は状況が違っていたようだ
慣れた作業でも、危険性は絶えず存在すると言うことだ。しつこいくらいに事前確認するという基本に忠実であることが求められている
塔槽内に入るときは、上からの崩落というリスクを考えておく必要がある
2022/12/27 東京の石鹸工場で火災  油脂工場の火災だ
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6448933
https://www.msn.com/ja-jp/news/entertainment/%E5%A2%A8%E7%94%B0%E5%8C%BA%E3%81%AE%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E7%81%AB%E7%81%BD-%E3%81%9B%E3%81%A3%E3%81%91%E3%82%93%E9%85%8D%E5%90%88%E5%AE%A4%E4%BB%98%E8%BF%91%E3%81%A7%E5%87%BA%E7%81%AB%E3%81%8B/vi-AA15ITQ9?ocid=winp0dash&pc=WSPWWU&cvid=9d2efa40e15641f9bb354208a0410da5&category=foryou
火の回りが早い。何が燃えたのかはわからないが今後の事故調査を期待したい
2022/12/29 三重県でアルミ工場の粉塵爆発。火気工事で粉塵に火がついたという
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/257219?display=1
アルミの粉の粉塵爆発は繰り返し起こっている。粉を甘く見ないことだ
過去の失敗事例に常に学んで欲しい

 

2022年12月30日

今年一年の重大事故を振り返って その1

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
事故の報道はされるが、1年経過しても原因や背景などはほとんどその後報道されることは無い
報道は,起きた事実だけを伝えるものだからだ 時間が経ってから2度と報道されることはほとんど無い
ここに、今年の国内外の主要事故を書いておく
2022/1/6 半導体の材料を製造する工場で爆発2人が重軽傷
https://www.rasa.co.jp/info2022011301.pdf
赤リンが関係する事故だ。消防法で危険物第二類として可燃性固体(着火しやすい固体や低温で引火しやすい固体)に指定されている
半導体材料の大手で市場へ与える影響も大きい。その後も、事故の原因は公表されていない
参考までに、2015年10月14日に起きた赤リンが関係する化学工場での事故事例があるので紹介しておく
事故の原因は、窒素を入れずに赤リンを投入していたからだ
原料として赤リンを入れていたが、投入網が赤燐の投入により動いたため、衝撃及び摩擦により発火して着火源となり、攪拌釜内のエーテル蒸気に引火したと言われる
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101509
2022/2/11 新潟の米菓工場で火災、アルバイト従業員4人を含む6人が死亡
夜間に起きた火災で、すぐに停電し煙の充満により非常口から脱出できなかった事故だ
この事故は企業から中間報告と最終報告の事故報告書が出されている
https://www.sanko-seika.co.jp/pdf/news20220601_1.pdf
https://www.sanko-seika.co.jp/apology/pdf/news20221215.pdf
火災時の避難訓練は、社員のみならず嘱託や協力会社員、アルバイトも含め必ず実施しておくことが大切だということだ。
非常灯は正常時には見えても、火災発生時は煙で見えない。やはり、訓練で逃げ道を体感させておかないといけないと言うことだ
着火源は油かすとの表現がある。職場の清掃がいかに大切か感じさせる事故だ
設備周りダクト周りの堆積物には常に注意を払う必要があると言うことだ
消防庁からも中間報告が出ている。参考にされたい
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/cf3de8ff43d91834b30f49931ad7cd1de74c7bfb.pdf
天井に張り付けられた発泡ポリウレタンが火災拡大につながったとの記述がある
引用すると
「発泡ポリウレタン※2が吹き付けられた火災現場を模した天井(10×5m)にガスバーナーを近づけたところ、10秒程度で天井表面に着火した。
2~3分程度で天井全体に炎が回り、5分程度で天井全面がほぼ燃え尽きることが確認された。

2022年12月28日

ガラス製機器が引き起こす事故--ガラス製のぞき窓

ガラス製のぞき窓の事故事例について紹介する
反応器やドラムなどにのぞき窓をつけていて破裂する事例は多い
安全弁や破裂板をつけていれば防げた事故だ
ガラス機器を取り付けるなら、その耐圧以下で作動する安全弁や破裂板をつけておいて欲しい
HAZOPを実施するときにも、ガラス機器が設置されている機器を見逃さないで欲しい
P&IDフローシートでは、のぞき窓の有無は確認できないはずだ
のぞき窓近くに照明機器があるならそれも注意して欲しい
機器の管理がずさんでケーブルの短絡を起こし漏れたガスで着火や爆発事故が起きている
可燃物を取り扱う機器なら、照明機器は防爆が不可欠だ
開閉できるのぞき窓なら開閉時可燃性ガスが漏れるはずだ
のぞき窓と照明器具に関わる事故事例も多い
トラブルが起きたときあわてて中を見ようとしてのぞき窓を開けて事故になることも多い
開ければ、空気が機器内に入り込むからだ
空気と可燃物が混ざり爆発混合気をつくり着火爆発している事例も多い
のぞき窓も開ければ空気が入り事故になると教育して欲しい
ボイラーなど温度の高い機器ののぞき窓は、高温環境にある
冷却用に空気を吹き付けたりしているものの冷却効果などが落ちると割れることもある
冷却性能の日常管理も必要だ
高温機器ののぞき窓についても注意を払って欲しい
タンクに付いているのぞき窓も割れることもある
タンク内の圧力が急に上がり破裂したこんな事故もある
https://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/2ca78a57e28a7a0cb56bc3137a579d21
タンクとて急激な圧力上昇があればのぞき窓は破裂する
繰り返すが、安全弁や破裂板の設置も忘れないで欲しい

2022年12月26日

ガラス製機器が引き起こす事故--ガラス式液面計

化学工場などではガラスでできた機器が使われることがある
ガラス式液面計、ローターメーター、サイトグラス(のぞき窓)が使われる
ガラスは機械的な強度が弱いことから、割れたり破裂したりして事故が起きている
ガラス式液面計の事故事例について紹介する
増し締めをした時締め付け過ぎて割れた事故事例がある。強く締め付け過ぎたからだ
決められたトルクで締め付ける必要がある
とはいえ漏れがあるなら、締め付けるよりパッキンそのものを更新した方がよい
パッキンが劣化した状態で無理に締め付ければ割れるのは当然だ
ガラスそのものにキズがあることもある
安易に対処療法で締め付けると割れて事故になる
ガラスもパッキンも時間が経てば劣化すると思って欲しい

突然ガラスが割れて液化塩素という液が噴き出したという事例もある
本来なら、自動止め弁が作動する仕様になっていたがなぜか作動しなかったという
おまけに塩素の蒸発による気化熱で手動弁の温度が下がり固着して弁そのものを閉められなかったという事故もある
そもそも漏れたら大変な有毒物質にガラス機器を選定したというのが間違いのもとだ
機器選定で、ガラスを使ってもいい条件をきちんと決めておく必要がある

メーカーの製作時のミスで引き起こした事故もある
ガスケットがきちんと組み込まれておらず、時間が経って2年後にガラスが割れて液が噴き出した事例だ
液が噴き出すと自動的に吹き出しを停める自動閉止弁付きではなかったので大量に液が噴き出し火災になった
自動閉止弁付きの仕様で購入していれば被害は極小化できたかも知れない
この事例は、運転温度40℃、圧力5MPaの高圧ラインで起きた事故だ
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00021.pdf
そもそも、このような高圧系にガラス機器を使うことも問題点だ
事故後、選定基準を見直し、別の金属でできた液面計に変更したという
機器選定の自社基準をしっかりと制定しておくことも事故防止には有効だ

 

2022年12月24日

粉塵爆発--ダクト内の清掃を怠るな

可燃性の粉を取り扱う工場では粉塵爆発のリスクが存在する
ところが、案外可燃性の粉ということに気づいていない事例が多い
さらに、粉が危険と言うことに感じていない事故事例が多い

粉を投入する設備で空気が同伴し粉塵爆発を起こす事例も多い
粉の投入時は、空気の漏れ込みにものすごく注意しなければいけないのにここが見落とされる
ダクトの切断中の事故も多い
粉塵が内部に堆積している状態で火気工事をするからだ
切断中に内部に付着した粉に着火し火災となる
ダクトというのは,1度火がつくと一気に燃え広がるのが特徴だ
煙突やダクトにはトンネル効果という現象がある
ダクトなどは入り口と出口とは高低差がある
高い所と低いところでは,わずかではあるが気圧の差ができる
水が高い所から低いところに流れるように,気体も上空の気圧の低い方へ自然に流れていく
更に、上空に風が吹いていれば気体の流出効果は増す
つまり,ダクト内に1度火がつくと火炎がダクト内を逸走するのだ
事故が起こらないポイントは3つだ
ダクトの内部を点検できるような構造にしておくことだ
次に,内部に堆積物をためないことだ。定期的にダクト内を清掃することがポイントだ
もうひとつ、大事なことはダクト内に流入する粉塵を含んだ気体の温度をできるだけ下げることだ
10℃でも、20℃でもいい。発火点に近づけなければ着火しないからだ
たかがダクトと思わないで欲しい
ダクトで起こる火災や爆発事例も知っておいて欲しい
年末の点検項目などにも織り込んで欲しい

 

2022年12月22日

調節弁の長期にわたる振動が引き起こした事故

高圧ポリエチレンを製造するプラントで起きた事故だ
調節弁の長期にわたる振動が引き起こした事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-463.pdf
設置から36年後。長期間の振動で金属疲労による割れが生じたものだ
振動による応力集中の事故だ
調節弁で発生する振動により常に下流側のベント弁の付け根の部分が振動していた
調節弁から40cmの離れた所にあるベント弁の溶接部が振動で破損した
流量調整弁の作動による繰り返し振動等で応力集中が繰り返し起こり、ベント弁の溶接部に亀裂が発生した事故だ

圧力13Mpa、-35℃、ベント弁は3/4Bと小口径配管だった。設備は36年前に設置されたものだった
約40年間振動は続いていたことになる
ベント弁のノズル亀裂部から漏洩した液化エチレンという物質が、保冷材内装のグラスウールの中にしみ込んだ
液が放出される際、ミスト状で放出された為に静電気が発生して可燃性の液に火がついたという
物的被害としては保温材約1mが消失だけですんだ
ひとつ間違えば大事故にもなったかも知れない事故だ

調節弁の振動にも関心を持って欲しい
微妙な振動でも基準値を超える振動であれば,時間が経てば何らかの影響が出る
自分の会社の,振動管理値はいくらなのか調べてみて欲しい
振動管理の数値だけではなく、実際に装置に触れたときの振れの感覚も知っておいて欲しい
この程度の振れが事故になるというのを実感して欲しい
理論的なことを単にに知っているだけでは、しばらくすると忘れてしまう
体感を含めた知識を持って知識の継続性を高めて欲しい

2022年12月19日

調節弁の差圧が大きくて異常振動

アンモニアを製造するプラントで起きた事故だ
差圧の大きい配管の調節弁の異常振動事故だ
運転中に8Bの調節弁に大きな振動が発生し、調節弁まわりのブルドン管圧力計取りだし部から突然液が吹き出した
配管折損により、4名被液した事故だ
対策として振動防止用サポートを強化したものの,すぐに同じような事故が起きた
調節弁の差圧が約2MPaもあり、出口側はフラッシュして気液混層となる使われ方をしていたのが異常振動の原因だ
アンモニアは沸点は常圧では-33℃だが、圧力を加えると沸点は常温近くとなる
1MPaにもなれば沸点は30度になるから、気液混層状態となり始める

更に配管設計も悪かった
弁の後方は口径が20B(調節弁は8B)と急激に配管が太くなっており、時々激しいフラッシュ現象を起こし、配管が激しく振動したていたという
液が瞬間的に気化すれば,ガス化により体積は千数百倍にもなる
気液平衡状態であれば、すぐに一部は再液化して体積が縮小する
これを繰り返せば異常振動で配管が折れるのは当たり前だ
単純な配管サポートだけで問題は収まらない
再発防止の為、事故が起こらないように2つの対策を実施したという
一つは弁の形式を,アングル弁に変更した
もう一つは弁の下流側に,流れを緩やかに拡大する拡張管という部品を取り付けた
これにより異常な振動を抑えることができた
使用条件が,気液混層になる条件であればこのような振動に配慮することだ
高差圧である弁も振動には注意が必要だ
弁形式もグローブ弁やケージ弁では適さないこともある
アンモニアは,毒性も有り爆発性もある
ひとつ間違えば大事故にもなったかも知れない事故だ
圧力変化に応じた蒸気圧曲線を見て、使用圧力で沸点が外気温に近くなれば気液混層状態になり始めると考えて欲しい
https://www.sdk.co.jp/assets/files/products/finegas-list/nh3_h.pdf
調節弁の異常振動にも関心を持って欲しい

2022年12月17日

変更管理の失敗事例 調節弁の内弁サイズ変更

1974/8/8に鹿島のコンビナートで起きた事故だ
調節弁と言うのは,流量や圧力を制御する弁だ
順調に制御できているときはいいのだが、圧力損失が極端に大きかったりすると異常振動を起こすことがある
いわゆる差圧が変わると問題を起こすのだ
この事故は、弁のサイズアップという変更管理の失敗事故でもある
調節弁の異常振動事故だ
弁の入り口と出口のΔP(差圧)が1Mpaもある高差圧弁だ
配管中のコントロールバルブ(調節弁)の処理能力を大きくするため,その内弁の大きさを5Bから6Bへ変更した
その結果、コントロールバルブが振動をおこしたのだ
バルブ内弁サイズアップによる振動発生とそれによる周辺亀裂・緩みが生じた
ノズル付根部分にクラック(割れ)が入り,炭酸カリ溶液10Lが霧状に漏洩した
内弁のサイズを変更したことにより、バルブの流量特性が変化し,ハンチングをおこしたからだ
弁の開閉を操作する空気シリンダーの推力不足が原因だ
空気シリンダーを動かす空気の圧力が不足していて、十分な推力のある空気シリンダーとなっていなかったのだ

事故後、空気シリンダーを動かす空気の圧力を0.24→0.28MPaにあげたという
内弁を変えたら,内弁を制御する空気シリンダの推力も十分検証しなければならない
単純に内弁を変えただけでOKと思い込んだのだろう
何かを変更したら必ず現場を見てまわることだ
かなりの異常振動が起こっていたはずだ
現場を見ていれば防げた事故だ
酸化エチレンというとんでもない爆発力を持つプラントの事故だ
大事故にもなったかも知れない異常振動だ
計装設備である調節弁を何か変更するならしっかりと変更管理を行って欲しい

2022年12月15日

気液混相流で起こる事故

物性というのを考えて欲しい
化学物質は、温度や圧力の条件により様態は変わる
液体であったり、気体であったり、固体だったりする
物質の様態の変化に関心を寄せて欲しい
化学装置の中で、流体は変化する。液体が気化したり、液飛沫を分離したり様々なことを行っている
気体と液体を分離することがある。気体と液体が混在する装置では色々な事故が起こる
気液分離槽という容器に穴が開いて爆発した事故だ。容器中に気体と液体が混ざった物を入れて、液とガスを分離して液を回収する装置だ
高速で気液が入り込むので、スプレ-ノズルを取り付け流速を落として分離させていた
とはいえ、容器の壁にこの気液が長期間衝突したことによりエロージョンコロージョンで穴が開きガスが漏れ爆発した事故だ
企業は、原因を調査し調査報告書を公表したものの、実は10年前にも同じようなトラブルがあり、官庁にも届けず無断で修理したことがわかった
社内の調査委員会のメンバーもそれを知っていたのにかかわらず、調査報告書には過去の事例は記載しなかった
更に調べると、同社の他工場でも高圧ガス保安法で定める手続き通り検査もせずに工事を行っていたことがわかった
結果として、高圧ガスの認定も取り消され、社内の経営陣も責任を取って社内処分も行われた事案だ
https://ceh.cosmo-oil.co.jp/csr/publish/sustain/pdf/2006/sus2006_05-06.pdf
機器の内部構造を変更したことにより起きた変更管理に関わる事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-082.pdf
安易に、気液分離方法をバッフル方式から、スプレーノズル方式に変えればトラブルの再発は起こらないと判断したのかも知れない
気液が分離している2層流というのはエロージョンコロージョンの事故が起こり易い
定点検査で肉厚検査をしていると、減肉箇所を発見できないこともある。場所が数センチ変わっただけでも、削られ方が変わるからだ
2層流の事故事例を紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200098.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-123.pdf
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2019-353.pdf
法規制のある機器を変更すれば、当然許可や届出が必要になってくる。時間もかかる。時間がかかれば生産損も出ると考えたのだろう
企業倫理を現場の末端まで徹底するのは難しい
たかが変更管理と考えないで欲しい
変更すれば、法に関わることも出てくると教育周知して欲しい

 

2022年12月10日

保温材にしみ込んだ油の発火

冬になると火災が増える.乾燥して火がつきやすくなるからだ。
化学工場でもこの時期火災には注意が必要だ。
保温材に油がしみ込んで着火し、火災になる事例をご存じだろうか。
保温をした配管の板金などが黒ずんで、油が内部にしみ込んだ形跡があるなら要注意だ。
通常の配管板金なら、汚れや染みなどは無いはずだ。
板金の表面に黒ずんだ油の跡などがあれば、油が保温材の内部にしみ込んだ可能性がある。
しみ込んだ油は、時間の経過とともに周辺の空気で酸化されていく。
酸化されると、酸化熱という熱を発生するので油のしみ込んだ箇所は温度が上がっていく。
更に、油は酸化されると通常の発火点より低い温度で発火するようになる。
例えば通常なら300度位の発火点の油でも、その1/2から2/3程度の低い温度で発火するようになる。
つまり、150~200度程度で自然発火する状態になる。
保温を実施しているところでは、蒸気などで暖めていることも多いので、その蒸気の温度で発火することになる。
SDSなどに書かれている発火点が高いから大丈夫だと思わないで欲しい。
それは、新品の時の話だ。劣化したり、酸化されれば発火点はどんどん下がってくる。
保温材の中は、空気も沢山ある。つまり、燃焼の3要素が成り立つ条件がそろっている。
油という燃える物があり、支燃性ガスである空気が存在する。
発火点は下がっているのだから、酸化された油は自然発火することになる。
工場内で多くの現場で起こっているが、小火程度であれば公開されることは少ないので案外この現象は知られていないというのが実情だ。
以下に公開されている、保温材に油がしみ込んだ事例を紹介しておく。
http://www.japc.co.jp/news/press/2002/pdf/141220a.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00452.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012011.html
保温材の中に油がしみ込むと、火災になると思って欲しい。
現場をパトロールしたときに、配管などの保温材に油の染みがあったら、早めに保温材をはぐって点検して欲しい。
保温材の内部に油がしみ込んでいたらすぐに、撤去して新品にやり替えて欲しい。

2022年12月08日

破裂板で起こる事故 その2

破裂板が原因で起こる事故について前回に引き続き書いてみたい
破裂板が設定圧とは異なる圧力で作動してしまう事例がある
一つはメーカーの製造ミスや品質不良だ
わずかに表面が荒れて製作されたことで設計値とは違う圧力で作動している事例もある
破裂した破裂板と同一ロットの破裂板を検査したところ、表面加工の仕上がりが粗く
コーナーの角度の加工が非常に鋭かったことから、表面加工傷に何らかの応力が集中し、亀裂が進展し破裂に至った事故もある
メーカー品だから大丈夫だと言うことはない
安全弁なら受け入れテストで作動確認ができるが、破裂板は破裂させては元も子もない
こんな事故事例もある
破裂板出口側の配管が狭かったことで起きた事故もある
放出配管の口径が小さく、またサポートが十分でなかったため作動時先端部分が振れ、配管が折れ曲がり破損した事故だ
流出した流体が折れ曲がった部分で断熱圧縮状態となり分解爆発を生じた事故だ
出口側が詰まるような設計をしていると、圧力が高いと断熱圧縮が起きて温度が上がり放出ガスに着火した事例だ
出口側配管が狭いと断熱圧縮で温度が上がり、異常反応が起こることも忘れないで欲しい
サポートもしっかりしていなかったことも関係している
出口側配管は、直角の曲げをつけてしまうとガス放出時の圧力でこのようなことになる
破裂板からのガス放出時はとんでもない圧力がかかる
放出部の設計も甘く見ないで欲しい
破裂板は金属だ。放出時に破片が飛び散ると金属同士ぶつかって火花を生じることもある
この火花が、着火源になることもある
破裂板に十文字のスリットが入っている物があるが、スリットのおかげで破片を飛び散りにくいようにしている
金属破片が着火源になることもあると言うことだ

破裂板放出口周りで問題になる設計が存在しないか現場で確認して欲しい
サポートもしっかり取られているのか。ゆるんでいたり外れている物が無いか見て欲しい

2022年12月04日

破裂板で起こる事故 その1

破裂板が原因で起こる事故について書いてみたい
化学工場では、圧力が上昇したときの装置の破壊防止のため破裂板や安全弁が使われる
破裂板は安全弁よりコストも安く、構造も簡単な為多くの設備に使われている
https://yuruyuru-plantengineer.com/rupture-disc-selection/
破裂板が破裂したとき大気に放出してはいけない物質であれば大気開放型は適さない
しかし、大気開放型であった為、周辺住民などに中毒などの被害を出すこともある
イタリアで起こったセベソの事故などはこの例だ
ダイオキシンという猛毒のガスが市街に流れ込み数十万人が被害を受けた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0300002.html
破裂板が作動するのも困ることだが、作動しないのも問題だ
破裂板に元弁を付けているケースだ
元弁を開けるのを忘れて、いざという時破裂板が作動せず装置そのものが破裂したという事故もある
http://www.shippai.org/fkd/hf/HB0011017.pdf
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000038.html
本来なら、破裂板や安全弁などは元弁は付けない方が良い このような事故を起こさないためにもだ
コンビナートにある化学工場などでは、このようなヒューマンエラーを防止する為に元弁は付けない
ところが、町中の設備は装置を使用中に安全弁を点検することが多いのでこのように元弁を付けることになる
バルブに施錠して管理してくれればいいのだが、そこまでの知識は持ち合わせていないケースが多い
結果としてこのような破裂事故を起こす
破裂板が作動しないケースをもう一件紹介しておく
破裂板に至る配管が詰まっているケースだ
ポリマーなど固まりやすい物質を取り扱うケースで起こる
結晶化する物質を取り扱う時にも起こる
凝固点や粘度に注目して欲しい
保温があって結晶化して詰まらないように対策をしていても、保温の管理が悪くて事故が起きていることもある
破裂板周りのパトロールも忘れないで欲しい

 

2022年11月30日

フレキシブルホースで起こす事故

フレキで起きた最大の事故はこの事故だろう
1974年6月1日イギリスでフレキ配管が折れ大量の可燃物が漏れ出す事故だ
死者28人、負傷者89人の大惨事だ
http://www.shippai.org/fkd/hf/HB0058048.pdf
http://www.sydrose.com/case100/306/
事故の顛末はこうだ
反応器が何台かある工場で、腐食により反応器に穴が開いた
修理のため一時的に、仮設で反応器を結ぶ配管を仮設した
本来は、金属でできた配管で反応器間をつないでいたが、フレキ配管で反応器と反応器の間を結んだ
フレキという弱い部分が仮設により存在するようになったが、それを保護するサポートは十分ではなかった
装置の運転をスタートしたとき、反応器を流れる流体の温度は徐々に上昇していった
温度が上がれば、配管やフレキなどの金属は膨張して延びていく
この金属の膨張による、フレキを支えていた支持部が外れフレキが外れ大量の可燃物が外に漏れ出した
しばらくして、漏れた可燃物に火がつき大爆発を起こしたのだ

金属製の鋼管配管であればそう簡単に漏れることはない
ところが、フレキというような薄い金属であれば無理な力が加われば破れることもある
仮設という作業を甘く見たことにより引き起こされた変更管理の事故だ
HAZOPでもずれが事故につながると考えリスクの検証をする
「変更」というのもずれの一つだ

PSM(プロセスセーフテイマネージメント)という概念の中にも、変更管理は重要な管理項目としていちずけられている
そうは言っても、現実の世界、変更と人が意識しなければ変更管理の意識は働かない
そこに変更管理の難しさがある

 

2022年11月28日

洗浄不十分で起こる事故  アルカリ洗浄

装置で何かを製造するには、清潔であることが不可欠だ
異物の混入は事故につながるからだ
水洗浄も一般的だが苛性ソーダなどのアルカリが洗浄に使われることもある
酸は金属を溶かすがアルカリなどは油分を溶かしてくれる
苛性ソーダなどを皮膚に付けるとぬるぬるするようになる
皮膚のタンパク質を苛性ソーダが溶かすからだ
アルカリ洗浄は便利なのだが、万一アルカリが残ったときにアルカリと反応することがないか検証しておくことが大切だ
アルカリと混触反応を起こす物質も沢山あるからだ
配管をアルカリ洗浄した。その後水で洗浄したものの、アルカリ分が残っていたことで事故が起きることがある
運転を始めたところ、原料と一緒にアルカリ分が蒸留缶に入ってしまった
蒸留缶内で、アルカリとの混触が起こり装置が破裂した事故だ
ニトロアミンは濃アルカリと混ぜると爆発する性質があったからだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000099.html
乾燥機のアルカリ洗浄後運転を始めたところアルカリ分がわずかに残っていた為、反応して爆発している事故もある
洗浄不足だ。水洗浄を行ったが、完全にアルカリ分が除去されていなかったからだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000136.html

アルカリを使えば効果的に洗浄できるものもある。しかし、アルカリ洗浄後に水洗浄してもアルカリは微量に残る
洗浄とは抽出操作なので、100%除去はできないからだ
わずかでもアルカリが残ると、混触反応が起こるならアルカリの洗浄はやめるべきだ
今回は紹介しなかったが、アルカリ分は応力腐食も起こす
時間が経ってから腐食で事故が起こることがあるのだ
効率より安全を優先すべきだろう

公開されている事例のみ紹介したが、現実は多くのアルカリに関する事故が起きているはずだ
自分の企業のアルカリに関する災害事例を調べてみることだ

 

2022年11月26日

安全弁や破裂板の大気開放型は正しい設計なのか

可燃物や有毒ガスなどの安全弁の大気開放型は問題は無いのだろうか
多くの工場を見て見ると安全弁の出口側配管は大気開放が沢山ある
本当にそれでいいのだろうか
安全弁は作動することはないという前提でそうしているのだろうか
ところが、ひとたび安全弁が作動すればとんでもないことが起こるはずだ
可燃性ガスの安全弁であれば、作動すれば着火することもある 静電気で簡単に着火する
水素などを含むガスであれば、噴出帯電で簡単に着火する
過去には安全弁が作動して、近くの高温蒸気配管で着火した事故事例もある
高温のガスが安全弁から放出して自然着火した事故事例もある
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-231.pdf
スタート時安全弁が作動し、同時に火気工事もしていたので着火した事故事例もある
http://blog.knak.jp/2019/10/post-2297.html
有毒ガスであれば、拡散して中毒事故が起こる
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0300002.html
安易に安全弁や破裂板の出口を大気開放型にして起こる事故は多い
大気開放型の設計は問題を多く起こしている
設計に当たってはもっとリスクを考えて欲しい
静電気着火対策であれば、出口側に蒸気を流して着火防止をしている対策もある
ブローダウンタンクへの放出も考えるべきだ
有毒ガスであれば、除害設備へ送る方式にするなどの対策も必要だ
安易に安全弁や破裂板の出口を大気開放型で設計しないで欲しい

 

2022年11月24日

調節弁のステライト盛りで起こる事故

ステライトという物質を知っているだろうか
固い金属だ。コバルトを主成分とした合金だ
https://www.hayaden.net/stellite/30
https://www.chiyoda-x.co.jp/latest-case/entry/entry000053.html
化学工場などでは、多くの金属が多く使われる
柔らかい金属も使われるが固い金属も使われる
調節弁の弁座は固くて漏れない方がいい。ステライト漏れは金属を固くする手法の一つだ
調節弁などは弁座の漏れを少なくするためこの固い金属で弁座をつくることもある
とはいえ全てを固い金属でつくるわけではなく、母材の表面に固い金属を盛り付ける
固いといことは調節弁などでは、弁座が削られることがなくなるため漏れが起きにくいという利点がある
いいことなのだが、腐食という観点からは万能では無い
硝酸を使うプラントでの事故だ
本来はSUS304Lむく材の調節弁内弁だった
ところが弁座にステライトが盛られていた

硝酸が使われる工程であった為ステライの盛り付け部が腐食で割れて漏れたという事故だ
腐食性環境でなければ、ステライトは固くて弁座で削られることもない
したがって弁座漏れにはなりにくい
ところが、腐食性環境だとこのような事故も起こる
2つの金属を組み合わせるからだ
結合が悪ければ事故になる

金属材料の選定は難しい

 

2022年11月20日

洗浄不十分で起こる事故  行き止まり配管の洗浄不足と水洗浄後の突沸

装置で何かを製造するには、清潔であることが不可欠だ
異物の混入は事故につながる
装置を起動させる前には、徹底的に装置内を洗浄するはずだ
わずかな異物が事故につながるからだ
異物混入には色々なものがある。金属片、製品カス、微量不純物、触媒残渣、修理作業に使った工具などだ
洗浄に使った水や薬剤も事故の要因になることがある
水で洗浄してもうまく洗浄できない部分は沢山ある
配管の行き止まり配管部だ
行き止まりと言うことは流れが無いということだから、水も行き渡らない
結果として洗浄不足となるのだ
ドレン弁も行き止まり配管だ
曲がれが無いからどうしても残渣などが残ってしまう
だから、ドレン弁などを一度開けて洗浄するのだがそれもまた事故の要因となる
バルブの閉め忘れだ
水を停めてしまえば、ドレン弁部は水は出なくなる
スタートアップ時にしっかりと閉めてくれればいいのだが、閉め忘れて事故になることも多い
ドレン弁出口配管に配管キャップを付けるようになったのは
この閉め忘れを防ぐためでもある
キャップが閉まっていれば、安全だからだ
洗浄に水を使ったときもう一つ注意することがある
水の沸点は100度だ
洗浄後100度を越える流体が流れてくるなら突沸も考えておく必要がある
どこかに水が残っていれば突沸が起こる可能性があるからだ
高温の油などが流れる配管はあるはずだ
突沸にも注意して欲しい

 

2022年11月18日

自動化を進めて省人化をするときに考えること

企業は生き残るために、省人化する
自動化をして一人でも人を減らそうと努力する
人が減れば、企業の固定費が減るから利益は増える
では、化学産業でどこまで人を切り詰めることができるかだ
今から数十年前は、化学プラントの運転員は今の2倍から3倍いた
ところが、1980年代DCSという道具が現れた
DCSはコンピューターによる運転システムだ
落ちついた平常運転時は、DCSで自動運転が行われることにより運転員の負担は減った
だから、トラブルさえなければ、少ない運転員で運転は可能になったことは事実だ
とはいえ機械という物は、いつも順調に動いているわけでは無い
機械は時間が経てば壊れる
機械が壊れたら、DCSが自ら修理してくれるわけではない
DCSは機械の故障で発生した警報を鳴らす機能しか無い
異常を感じて修復してくれる機能は無い
プラントが乱れれば、やはり人が対応しなければいけないのだ
昔のようにDCSも無く年中トラブルを経験してた運転員ならば対応は可能かも知れない
しかし、DCSでトラブルが減った現状の運転員はそトラブルの体験が少なくなっているはずだ
人は常にトラブルから学んで成長してきた
ところが、トラブルを経験できないような世界にしてしまえば、トラブル対応能力は向上しない
自動化すればするほど、人はトラブル時にはより高度な行動ができる能力が求められてくる
とはいえ自動化でトラブルが経験できなくなるのだから、矛盾する
そこを補うべき、高度なトレーニングシュミレーターが開発され訓練に時間をかけれるならいいのだがそんなところにコストはかけないだろう
やはり、半自動化でそこそこトラブルを経験させながら機械と人間の駆け引きをさせ
一歩ずつ自動化を進めるのが落としどころなんだろう
所詮人間と機械のバランスが取れなければ社会はうまくいかないのだろ
人は失敗から学びながら成長するからだ

 

2022年11月16日

ジェット洗浄作業で起きた中毒死亡事故に思う

1年ほど前に、ある工場での定期修理中で起きた猛毒のシアン系設備を洗浄中に起こった作業員の中毒死亡事故だ
熱交換器という装置の中を高圧の水を吹きかけて、内部を洗浄する作業中作業員が死亡した事故だ
洗浄機器の中に残っていた猛毒のシアン化水素(青酸)を含んだ液を吸い込んだか飲み込んだという
https://www.sumitomo-chem.co.jp/news/detail/20220113.html
シアン化水素は青酸カリなどに使われる化学物質だ。微量に吸い込んでも死に至る可能性がある物質だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%B3%E5%8C%96%E6%B0%B4%E7%B4%A0
270PPMで即死と言うから、微量吸い込んだだけでも死にいたる物質だ
高圧の水を吹きかけて装置の中の残留物を吹き飛ばし除去する作業を水ジェット洗浄という
こびりついた異物を取り除く一般的な工法ではある
高圧の水と残留物が作業中周囲に吹き飛ぶため、作業員はゴムでできた作業着と、顔の部分には保護カバーの付いたマスクを着用する
今回洗浄作業をしていたのは、猛毒の物質を製造した設備だ
当然、作業前には水や、空気、窒素などを使って装置の中は事前に工場側で洗浄は行われていた
今までこの作業は、15年間行われており事故は無かったという
ところが、今回死亡事故が起きてしまったのだ
その後企業側から、事故の詳細は報告されることはなかったが、先日高圧ガス保安協会から事故の報告書が公開されていた
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/2022/02_2021-000.pdf
これを読むと、類似の別プラントで過去洗浄作業をした際、シアン化水素が微量に検出されていたという
別のプラントでは、安全のため作業に使う保護具はエアーラインマスクに改めたという
ところが、今回事故が起こったプラントではこの情報は水平展開されず、単なる顔を水しぶきから守るゴム製マスクだけだったという
このマスクは、呼吸のために小さな穴が開いていてそこからガスを吸い込んだか、液が入り込み口に入ったという
結果として意識を失い病院へ搬送されたものの5日目に死亡したという
私が以前勤めていた企業でもこの青酸を製造していた。やはり、過去に死亡事故が起きている
猛毒の物質の洗浄作業なのだから、本来は万一を考えエアーラインマスクを使うべきだったのだろう
保護具に甘さがあつたと言うことだろう
今まで事故が起きなかったのが不思議なくらいだ
保護具の選定は最悪の事態を考えて選定して欲しい

 

2022年11月14日

電気室火災への対応を強化して欲しい

火災が起きたら、すぐに水で火を消すというのは誰でもわかっている
そうは言っても、消火器で消すというのも知っている
消火器で消火するというのは誰でもわかっているが消火器が近くにないとやはり水を使ってしまう
消火器も色々な種類がある
一般火災用もあれば、電気火災用もある
電気室などで火災が起きたときには、当然電気火災用の消火器を使うのだが、焦っていると水を使うことになる
それが思わぬ被害を起こす事例は多い
電気に水分は天敵だ
やはり。電気火災用消火器を使わなければいけないのだが
知識がないと水をかける
これが思わぬ被害を及ぼす。水は電気を通すのでショートする。火花も出る
こんな知識不足で、過去事故も多く起きている
高圧の電源設備は、このようなミスが起きると大事になるので、多くの企業では一酸化炭素消火器が付けられている
これも消化性能は抜群のだが、窒息というリスクもある
消火設備はどんどん進化している
消火設備のリスクもしっかりと職場で教育して欲しい
もう一つ大事なのは、「異常」に早く気づくことだ
法定の火災報知器や煙検知器の設置台数では、異常に早く気づくのはやはり難しい
法定台数より上乗せした検知器を設置して欲しい
検知器はたかだか数万円だ
それをけちって、大きな火災になり損失を受けている事例も多い
電気設備も老朽化すれば事故が起きやすくなる。発火事故もしかりだ
電気部品の故障で大きな火災になることもある
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
電気設備関係の安全投資をけちらないで欲しい
異常に早く気づく為の安全投資にも力を入れて欲しい

 

2022年11月12日

HAZOP的な思考で事故事例を活用しているか

HAZOPは、1980年代から活用されている安全性評価手法だ
「ずれ」が事故を引き起こすという基本的な概念を使った手法だ
例えば、反応器の冷却水が通常運転時より少なくなれば反応暴走になるかも知れない
タンクの入り口と出口の流量がずれて、入口側の液量が増えればタンクはオーバーフローとなる
つまり、ずれが起こると事故が起こることがあるという考えから事故の可能性を検証する手法だ
HAZOPの手法を知っていれば事故は防げるかというとそうはいかない
過去の事故事例をやはり知っておく必要がある
ところが過去の発生した事故のデーターベースなどの記述はHAZOP的な切り口では書いていない
単純な原因と結果といういう記述に終わっている表現が多い
そこから、HAZOP的なずれを抜き出さないといけない
そこに難しさがある
何十頁にもわたる事故報告書であれば、ずれという切り口で事故の要因は探れる
しかし、数行の事故DBではその辺は情報が不足して無理がある
もう一つ大切なのは、HAZOPは単一故障を前提とする
ところが世の中で事故が起きているのは、2つ以上の事故の要因が重なって事故は起こってしまう
2ツ以上の事故の要因がどう重なって重大な事故が起きたかがわかっていないと、HAZOPをやっているからと言って事故は防げ無い
一つ一つの事故をこつこつと、「ずれ」という視点で考えるくせを付けて欲しい
さらに、2つ以上の事故の要因が重なった事故も知っておいて欲しい
事故を防ぐには、2重、3重の歯止めがなければならない
1000年、10000年に一度の事故の発生確率に落とし込むには、ハードとソフトを複雑に組合わせた対策が必要だ
単に、アラームや安全装置を付けたから安全と思い込んでいたら事故は起きる
運用管理体制などソフト的な管理体制に甘さがあれば事故は起こる
インターロックを設置すれば安全と、おもわないで欲しい
インターロックを解除する運用規定がきちんと整備されていなければ、解除されて事故になることもあるからだ
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/08/a0502_02.pdf
HAZOP的な視点で事故を解析し、失敗に至った事例も学んで欲しい

 

2022年11月10日

タンクの防液堤の管理

タンクから液が漏れることがある
万一を考え液が漏れたときでも液を溜置く安全装置として防液堤というものがある
防液堤は、防油堤とも呼ばれる
1960年代に,新潟地震というものがあった
新潟にある製油所から大量の油が漏れた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012035.html#:~:text=6%E6%9C%8816%E6%97%A513,%E6%99%82%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%87%83%E3%81%88%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%81%9F%E3%80%82
当時の防油堤は,今のようなコンクリート一体構造ではなく単にブロックを積み上げた物だった
その為,地震で簡単に崩れ去り油が漏れ出てしまった
更に,防油堤に配管を通す貫通部に耐震性がなく地震の揺れで隙間ができ油を漏らす結果となった
1970年代に防液堤が関係する重大事故が起きたことがある
瀬戸内海の海に大量に油が流れ出た事故だ
https://digioka.libnet.pref.okayama.jp/detail-jp_c/id/kyo/M2004090621134837606
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012040.html
防油堤はあったものの,防油堤の一部が破損して油が海まで流れ出た事故だ
その後、法令が改正され、大型タンクの存在するコンビナートでは、一つの防油堤が壊れてもすぐに油などが海に漏れ出さないようになった
つまり、防油堤の外側を更に囲む防油堤が義務ずけられた。お城で言えば、内堀の外に外堀を設けたようなものだ
現在の法律では,可燃物にせよ毒劇物にせよタンクなどの貯槽にはこの防液堤の設置が義務ずけられている
きちんと防液堤が管理されていれば、全量漏れても防液堤内に納めることができる
ならば,防液堤があれば外部へ漏洩事故が起きないかというと管理が悪ければ事故は起こる
防液堤の外まで可燃物や毒劇物を流出させた事故の原因で多いのは防油堤に付いている水抜き弁を開けっぱなしにしていた事例が多い
水ぬき弁は、本来常時閉じておくことが原則だ
大雨などで、防液堤内に雨水が大量に溜まった時だけ、水抜き弁を開ける
しかし、運用管理がいい加減でいつも水抜き弁を開けているときにタンクから液が漏れて防液堤外に流れる事例が多い
タンクの水抜き弁はしっかり管理して欲しい

 

2022年11月08日

換気の大切さ

化学物質は濃度が高くなればなるほど危険さは増す
だから、薄めることも事故防止では重要な要素となる
可燃性物質には爆発範囲というのがある
濃すぎてもいけない。100%で爆発するかというとそうでは無い
80%、90%くらいになり,爆発範囲に入っていれば可燃性ガスなどは爆発する
濃度が低いから安全かというと言うと数%の濃度でも爆発範囲に入る物質も多数ある
物質を取り扱う時は、しっかりと爆発範囲を調べておく必要がある
可燃物を取り扱うなら、濃度0近くまで希釈しておく必要がある
つまり、爆発範囲にならない濃度まで薄めておかないと突然爆発する
化学物質は、濃度を下げよが事故防止の基本だ
密閉された空間であれば、換気でガス濃度を下げることになる
換気も自然換気と強制換気の両方がある
自然換気というのは,マンホールなどを開けて自然の風力を使って換気する方法だ
一つだけのマンホールでは駄目だ。2つ以上のマンホールを開けておかないと風は通らない
大型の装置になれば装置の奥まで自然換気できる保障は無い
送風機などを使って強制換気しないと均一な換気は行えない
過去換気不良で何度も事故が起きている
人が装置に入る作業で,酸欠事故だ。自然換気だけで、換気が不十分な事故が多い
換気が不十分で,可燃性ガスが残っていて電気火花などで着火爆発する事故も多い
鹿島のコンビナートで起きた事故だ まだ19才の運転員が爆発で死亡している
換気装置はあったものの,金網が詰まっていて十分な換気量が確保できなかったのだ
換気不足で爆発混合気ができているときに,照明灯の火花で着火した事故だ
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101268
たかが換気と思わないで欲しい
換気不足で起きた事故事例も学んで欲しい

2022年11月06日

保安防災と労働安全

保安防災という言葉を知っているだろうか
労働安全という言葉はかなり知られているが、「保安防災」という言葉はまだまだ幅広く知られていない
労働安全というのは、人がケガをするのを防ぐことだ
日本化学工業会の中で、RC(レシポンシブルケアー)活動を紹介する項目の中でこの「保安防災」という用語が書かれている
https://www.nikkakyo.org/responsible_care/doyouknow
レスポンシブル・ケアの実施項目の中に用語が存在する
●環境保全 (地球上の人々の健康と自然を守ります)
●保安防災 (設備災害の防止に努めます)
●労働安全衛生 (働く人々の安全と健康を守ります)
●化学品・製品安全 (化学製品の性状と取り扱い方法を明確にし、顧客も含めた全ての取扱者の
安全と健康、環境を守ります)
●物流安全 (化学品の輸送途上での事故を防ぎ、人の安全と健康と環境を守ります)
つまり,保安防災というのは設備に起因する災害を防止するということになる
労働安全は,人に起因する災害防止活動が主体になる。保安防災というのは、工場(設備の集まり)がケガをすることを防ぐのだ
つまり、工場が火災になったり爆発したりするようなことを防止するのだ。劇毒物なども,漏らしたりしてはならない
どちらも、バランス良く対応しなければいけないのだが、どちらかというと労働安全が工場の安全活動のメインになることもある
爆発や火災はめったに起きないことなので関心の度合いは低いからだ
そうは言っても、ひとたび爆発や火災が起これば大騒ぎになる
事故はいつも起こるわけではない。突然起こる
なぜ事故が起こるのか。どうすれば事故は防げるのかは、知識としてしっかりと企業内に展開し保安防災活動を展開していく必要がある
経営トップが先頭に立ち、安全文化と安全基盤をこつこつと構築していくことだ
工場に存在する設備リスクを特定し,評価して、対策を打っていく必要がある
時間やお金、人財は限られている。長期的な視点で、行っていくのが保安防災活動だ

 

2022年11月04日

調節弁の安全方向 フェイルセイフ

工場で多くの計装用調節弁が使われている
自動制御用の弁だ
この弁の設計には、トラブルが起きたときの安全対策を考慮して設計されている
いわゆる,フェイルセイフという設計思想だ
弁というのは,開けるか閉めるかだ
弁を動かすのは,空気か電気か,油圧などだ
これを駆動源という
空気や電気は,突然途絶えることもある。用役トラブルだ。停電などが引き金になることもある
配管が折れることもある。空気の供給源が故障することもある
電気とて停電することもあるからだ
ならば,万一のことを考えこの電気や空気が途絶えたときでも調節弁などの自動制御弁が安全な方向へ動くよう設計する必要ががある
例えば,反応器の冷却水の調節弁なら、安全方向として弁は開く方向になるようにして設計しておく
トラブルが起きたら,冷却水は多く流した方が良いからだ
弁が閉まる方向に設計されていたら,反応器の温度は上がり反応暴走になることもある
万一調節弁の空気が途絶えたり,電気信号が来なくなっても,安全となるように開くようにして冷却水を流し続けるのだ
この,安全な方向に動かすという設計思想は非常に重要だ
万一、設計をまちがえれば危険な方向になる
こんな事故事例がある
計器点検中誤って反応器の温度調節計のスイッチを切り,冷却水が停まり反応制御できず反応工程の塩化反応器が反応暴走した事故だ
調節弁のフェイラーポジションの設計ミスでもある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000020.html
安全な方向へ動くよう当初から設計されていなかった事故だ
設計時だけではなく,調節弁などを転用するときにもこのフェイラーポジションを確認して欲しい
調節弁を転用したときにフェイラーポジションの確認を怠たったことで起きた事例もある
自分達のプラントの調節弁のフェイラーポジションが本当に安全方向にあるか一度検証して欲しい

 

2022年11月02日

溶解度を甘く見て起こる事故 灯油はガソリンを吸収する性質がある

物質に関する情報として溶解度というものがある
SDSにも溶解度は書かれているが,それほど「溶解度」とい語句を気にする人は少ないはずだ
気体が液体などに溶け込みやすさという指標だ
たいしたことではない指標と思うのだろうが、やはり過去この溶解度が事故に関係している
昔、製油所で頻発した事故だ
1960年代ガソリンを積み込んだあと、灯油をタンクローリーに積み込むと事故が多発した
ガソリン運搬後灯油を積み込んだことにより事故が起こっていた
なかなか原因が突き止められなかったが、原因はこうだ
溶解度が関係した事故だ
灯油は、ガソリン蒸気を急激に吸収する性質がある
タンクローリは,灯油を積み込む前はガソリンが入っていたのだからローリーのタンク内にはまだガソリンの蒸気などが残っている
しかし、ガソリン蒸気で満たされていれば爆発範囲には入らない
ところが、灯油を積み込み始めると、タンクローリー内のガソリンガス濃度が急激に減る
灯油はガソリン蒸気を吸収してしまう性質があるからだ。つまり,溶解してしまうからだ
ガソリン蒸気が減ることは一見良いように見えるが、高濃度のガソリン蒸気が下がって爆発混合気の濃度になってしまったのだ
ガソリンは濃すぎてしまえば爆発混合気にはならないが、ほどよく濃度が減ると爆発混合気になってしまうためである
その後30年経過した後でも、このようなことはやはり技術伝承されずに,1990年代にも同じ事故が起こっている
作業手順書には反映されていたものの、そこに書かれている意味が作業者は十分理解できず再発した事故だ
「なぜ」がわからないと事故は起きる。溶解度などはよほどしっかり教育しないと理解されない物性値だ
手順書に手順が書かれていても,なぜそういう手順で作業をするのが,書かれていなければ人は納得しなければ事故を起こす
タンクが凹む事故がある。溶解度が関係している事故を紹介する
アンモニアを貯めるタンク内に誤って水を入れてしまった事故だ
タンク内のガスが急激に水に吸収されてタンク内が負圧になり変形してしまったのだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2008-272.pdf
物質危険性に関する教育は難しい
溶解度が原因で起こる事故も教えて欲しい

 

2022年10月31日

受け入れ検査の重要性

企業であれば必ずメーカーから設備を購入する
購入前に設備仕様をメーカー側に提出する
その通り製作してくれればいいのだが,必ずしもそうではない事例もある
製作時にメーカーが製作欠陥を起こしてしまうこともある
よくあるのが,鋳物製品で鋳物の中に巣があるにそのまま出荷して時間が経ってから装置が壊れる事故だ
過去にも,高圧の圧縮機が突然壊れる事故が起きている
放射線検査を予め要求しておけば防げる事故だ
金属の焼き戻しが不十分で起きた事故などもある
https://slidesplayer.net/slide/16470358/
ライニング機器のピンホール事故などもある
では、納入時の受け入れ検査をどうするかだ
メーカーに検査を丸投げして済ます方法もある
とはいえ最低限、メーカーの検査内容を吟味しておく必要がある
メーカーとて万能では無い
昨今は、メーカーが検査もせず出荷するコンプライアンス事例も多い
発注者がどうリスクを回避するかよくよく考えなければいけない
とはいえ、発注者はあらゆる面で検査はできない マンパワーを十分にかけるわけにはいかない
そこそこの知識はあるが,深掘りした専門知識があるわけではない
詳細な検査はどうしてもメーカー任せになる
結論として,受け入れ検査に関する基本的な考え方はやはり発注者として整備しておく必要がある
つまり、丸投げではメーカーの意のままになる
どこかにブレーキをかける要素を入れておく必要がある
工場に出向いて立ち会い検査をするも良し。詳細な検査報告書を出させるのも良し
メーカーとユーザーのバランスが取れて製品の品質は保たれる
丸投げは,とにかくやめて欲しい
受け入れ検査や立ち会い検査の重要性を忘れないで欲しい

 

2022年10月29日

耐圧気密テストで起こる事故  複雑な配管では事故が起こりやすい 

先日、こんな災害事例を見つけた。 怪我で済んだからいいものの、ひとつ間違えば死亡事故にもつながりかねない
耐圧気密試験時脱圧していないところを開放し高圧窒素ガス噴出したという事故だ
残圧確認不足だが、配管も複雑なのに簡易フローシ-トを使っていて操作する弁を間違えた事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/02-02_2018-406.pdf
工事期間中に工務部が主管する耐圧気密テストと製造部が主管する総合気密を輻輳して行っていたことが事故につながった
別々の部門が管理する加圧操作が同時に行われていたことが,事故の要因でもある
同時並行で,色々な作業をすればどこかでミスが起きる
同時並行作業は,極力減らすことだ

耐圧気密試験で安全を確保するには,いくつかの対策が必要だ
一つ目は,テスト計画書を作成し,しっかりとした検査用P&IDをつくることだ
簡易フロー図では事故が起こるから,マスターのP&IDフローシートから図面を作成することだ
バルブの開閉状態をしっかりと図面に書き込むことが不可欠だ
さらに,加圧時はしつこいくらいに圧力計を付けることだ。たった一つでは,駄目だ。2個以上は不可欠だ
指示値が見えれば,加圧状態がわかる
更に立ち入り禁止を徹底することだ。万一破裂しても,人がいなければ事故にはならない
縁切りは仕切り板を使うことだ。もしくは,ダブルブロック中抜きの対応を取ることだ。弁一つでは必ず漏れる。

化学工学会などにもこんな記事もあるので参考にして欲しい
https://www.aiche.org/ccps/resources/process-safety-beacon/archives/2013/september/japanese
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2016/03/DANWA2013_09_No87.pdf
とにかく圧力を甘く見ないで欲しい
人は目に見えない物は危険と感じない
圧力もその一つだ

2022年10月27日

耐圧気密テストで起こる事故-- 不燃性の窒素や水を使え

耐圧気密試験に使うのは普通なら窒素か水を使う
しかし、耐圧気密試験に空気を使ったことで何度も事故が起きている
空気は支燃性ガスだ。つまり物を燃やす性質がある
特に、物を燃やす性質は空気の圧力が高くなればなるほど増大する
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/24/3/24_165/_pdf/-char/ja
つまり高圧空気で耐圧検査をしているなら、わずかな可燃物があれば何かの着火源で燃焼や爆発が起こるということだ
こんな事故事例がある。16MPaという高圧機器の耐圧気密検査で起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200023.html
2つの機器があり、一つの機器の検査を終えた後、バルブを開いてもう一つの機器へ高圧の空気を移送した
この時、バルブを急に開いたので、断熱圧縮という現象が起きた
断熱圧縮とは、気体を急激に圧縮すると温度が急激に上昇する現象だ。いわゆる圧縮熱というのが発生する
たとえば、試験管内に閉じ込めた空気を急激に圧縮しても200℃や300度近くにもなる
この事故では、配管内に450度で発火する残留物質が残っていたため、断熱圧縮現象で温度が上がり配管内の可燃物が発火した
再現実験では圧縮熱は650度を超えていたと言われる

耐圧気密検査に使う気体は、不燃性気体である窒素を使って欲しい
空気は、燃えるものが配管内にわずかでもあれば簡単に火がつくからだ
高圧酸素ボンベなどは、接続配管にわずかに人の手垢(油分)が付いていただけで発火する事故も起きている

耐圧テストは、窒素を使わず水で実施することもできる いわゆる水圧テスト
水は非圧縮性なので、万一破裂したとしても飛散度は少ない
水が使えるなら、水を基本的に使って欲しい

 

2022年10月25日

耐圧気密テストで起こる事故    水素ぜい化

定修の終わり頃、高温高圧反応器の耐圧気密検査で、装置が破裂した事故を紹介する
圧力は5.5MPaで、製油所で起きた事故だ
44個の破片が100m四方に飛び散ったが幸い深夜で負傷者は出なかった
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0057044.html
原因は、約17年前の製作時の溶接欠陥だ
溶接時に溶接棒を間違えていたことにすぐに気づいた
間違えた箇所を削り取り再溶接をした
ところが、わずかな傷が残っていて、使用している間に少しずつ成長していた
さらに、この反応器内には水素が入るため、水素により水素脆化という現象が起こっていた
水素脆化とは、高温高圧の環境下で水素が存在すると、金属の組織内に水素が浸透する現象だ
金属結晶内に水素が浸透すると割れが起こってくる

この企業では、設備を設置してから毎年溶接部は全て検査をしていた
ところが、新設時から8年間が経過したとき、今まで問題が無いのだから全ての検査は必要は無いと判断してしまった
その後事故が起こる、約10年前からは溶接部の抜き取り浸透探傷検査と目視検査だけで、全数詳細検査をすることはなかった
つまり、溶接部全点検査をやめてしまったのだ
当然、検査コストも手間も大幅に減るというメリットもあるからそうしたのだろう
ところが、目視検査では内部の亀裂の進行はわからない
最後は耐圧検査の圧力に耐えられず破裂したのだ

当時は、この使用温度や圧力では水素脆化は起こらないと考えられていたので検査を簡略化したのだろう
この事故がきっかけで、水素浸食の目安となる、ネルソン線図の見直しが行われたという

高温高圧機器の溶接部の検査は、毎年検査で異常が無いからといって安易に抜き取り検査に変更しないことだ
機械設備は、時間が経てば立つほど傷んでいくと考えるべきだ 内部の傷は目視ではわからない
今まで大丈夫だったは検査に関しては通用しないということだ

 

2022年10月23日

耐圧気密テストを甘く見るな

今から半世紀ほど前の話しだが、私が勤めていた化学会社で耐圧気密検査中4人が死亡する事故が起きている
1965年9月13日だ
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php?q=%E5%B2%A9%E5%9B%BD%E3%80%80%E6%B0%97%E5%AF%86
耐圧気密の検査中に、縁切りが悪く装置が破壊し飛び散った破片で死亡した事故だ
4MPaの高圧の気体で検査は行われていた。破裂したのは、耐圧性能は0.4MPaしかない部分だ
当然、高圧がかからないように縁切りという措置はしていた
しかし、縁切りは単純に弁を閉めることだけで行われていた。ところが、弁が少しではあるが漏れていたが気がつかなかった。
いわゆる、弁の内漏れということだ
万一、弁が内漏れをしていても、耐圧性能の無い装置側のベント弁かドレン弁を開けておけば問題は無かった
つまり、漏れ込みがあっても圧力が逃げてくれるからだ。しかし、残念ながらベント弁やドレン弁は開けられていなかった
結果として、耐えられる圧力の約十倍の圧力がかかり破裂して死亡事故になった事例だ 
1960年代の事故で、当時はまだ石油化学産業が始まって間もない時期だった
耐圧気密試験の要領や作業手順書も完全には整備されていない時代だった。事故の翌年から、手順書などが整備されていった
事故を受け、耐圧気密検査の安全対策が要領書として整備された
1つ目は、検査には、基本は水を使えという基本方針が出された。水圧テストの方が、エネルギーは圧倒的に少なく安全だからだ
2つ目は、検査時の体制、方法を明確にした。製造部門の関与、検査を実行する保全や工務部門の体制を文書化した
事故以前は、担当者任せで管理の目が行き届いていなかったことへの反省だ
3つ目は縁切りは仕切り板で行うということだ。弁と違って漏れることはない。本質安全を確保すると言う考え方だ
仕切り板が基本だが、どうしても弁を使うなら、2つ以上の弁を閉め、その中間部を開放するという方法だ
4つ目は、検査のためにP&IDフローシートをしっかり作成し、加圧部を色塗りして検査箇所を明確にして、関係者と事前打ち合わせすることが義務ずけられた
5つ目は、ブルドン管圧力計を2つ以上付けるだ。1つだと針がひっかかかっていることもあり事故につながるからだ
6つ目は、現場の立ち入り禁止措置も徹底した。加圧中などの表示義務も課した。 それ以外にも色々なことが決められ、以後半世紀以上立つが同じような大事故は起こっていない
耐圧気密検査は、危ない作業だ。腐食して万一耐圧性能が無ければやはり装置は破壊する。高圧機器は、事前の放射線検査も義務づけられた
耐圧気密テストを甘く見ないで欲しい

 

2022年10月19日

危険物保安技術協会

危険物保安技術協会という組織を知っているだろうか。略称はKHKだ。高圧ガス保安協会(KHK)と同じ略称だ。
高圧ガス保安協会は、経済産業省の関連組織だ。
危険物保安技術協会というのは、総務省消防庁の関連組織である。つまり、消防関係の組織だ。
危険物関連の事故などはこの協会に多くある。ホームページを紹介している。http://www.khk-syoubou.or.jp/
この2つの組織の違いは、適用法令だ
一方は高圧ガス保安法、もう一つは消防法という違いがある
高圧ガス保安法が関連する、高圧ガス保安協会は、災害情報を無償で提供している
一方で、消防庁関連のこの危険物保安技術協会は、事故情報はさほどフリーでは公開していない
お金を払えば情報を得ることができる
http://www.khk-syoubou.or.jp/hazardinfo/guide.html
本来は、情報は公開されるべきなのに、このように外郭団体が入ると何らかの制限が入る
外郭団体の運営方針の違いはあるのだろうが、情報は無償で公開して欲しい
税金で運営される組織にあるなら、当然なのだが現実は,外郭団体であるから税金運営ではない
危険物保安技術協会は、機関誌、Safty&tomorrowを定期的に発行している
http://www.khk-syoubou.or.jp/guide/magazine.html
2018年からは、機関誌の中身は全て情報公開している。ありがたいことだ
この中に事故情報もある。貴重な情報源だ
情報はただでは無い
価値ある情報は金を出しても手に入れるべきなのだろう

 

2022年10月17日

たかがドラム缶と思って起こる事故

化学工場などに勤めていると、化学物質の危険性にマヒしてくる
入社してすぐの頃は、新人教育で危険性を教えられて少しは危険と感じているが時間とともにその感性は薄れていく
化学物質に対する慣れが、時間とともに出てくるのだ
それが一番怖い。事故につながるからだ
研究所にいる人も、たかが試験管ベースと思って事故になる
化学物質は、1滴でもとんでもないエネルギーを持っているからだ
まして、ドラム缶サイズの大きさになれば、とんでもないエネルギーと考えなければならない
ところが、現実そう考えてくれないからドラム缶で事故が起こる
ドラム缶に関する事故のビデオがあるので紹介しておく
https://www.youtube.com/watch?v=sESmSpde7a4
https://www.youtube.com/watch?v=XJRJXBF5OpQ
直射日光でドラム缶が暖められて起こる事故もある
ドラム缶の中に入っている化学物質が反応して破裂する事故がある
夏場などに、急に外気温度が上がり始めるとよく起きる事故だ

工場内をパトロールしてみて欲しい
屋外に置かれたドラム缶やペール缶が無いか見て欲しい
シートもかけず、屋根の無い所においていないか確認して欲しい
物質によっては、直射日光で暖めるだけで反応を始めるものがある
温度が30℃上がれば、反応速度は約8倍になる
反応速度は温度上昇で倍倍ゲームのごとく上がる
太陽光を甘く見ないで欲しい

2022年10月15日

世界の貯蔵タンク事故--個人のブログ紹介

世界の貯蔵タンク事故というホームページをご存じだろうか
このURLで見ることが出来る。http://tank-accident.blogspot.com/2022/10/
日本国内での主要事故、海外でのタンクに関わる事故事例を紹介している。
写真などもありわかりやすい。教訓となることも多く書かれており、安全に関わる人は見て欲しいホームページだ。
9月の記事ではアルゼンチンの製油所で原油の円筒タンクが爆発・火災がでていた
http://tank-accident.blogspot.com/2022/09/blog-post_30.html
海外の製油所火災、日本でのタンク火災やタンク内清掃事故の事故事例など参考となる事故が載っている
2011年から公開されている、もう10年以上も情報を発信してきているブログだ
タンク事故以外にも色々な情報を提供しくれている
興味のある方は、目を通して欲しい

 

2022年10月09日

電気火災に思う--電気ケーブル火災

電気ケーブルの寿命はどのくらいかと聞かれることがある
まずは、20年から30年と答える
電線メーカーも公式的にはそう言っているからだ
https://www.jcma2.jp/files/gijutsu/Shiryo/107.pdf
電気設備というものは、だいたいこの程度の期間は使えるように設計されている
但し、誤解してはいけないのはあくまでも、電気メーカーの標準設計条件に合う使われ方をしている場合だ
つまり、電気設備に周囲の温度は、一般的な外気温とあまり変わらないこと。つまり、0~40度程度
周囲の空気も、正常で腐食性ガスなどが存在していないという条件が満たされるケースだ
つまり、高温部や腐食環境などであれば、寿命はもっと短くなるということだ
過去の事故事例を見ると、機械の周囲の電線で常時油がかかるような所では数年で電線がトラブルを起こしている
室内で高温の装置がある近くを通っている電気ケーブルは10年も経たないうちに短絡事故を起こしている事例もある
使われる所の条件によって、寿命は大きく変わってくると考えた方がよい
一般的な電気火災の原因は「短絡」だ。つまり、ショートが原因で電気ケーブルの被覆や絶縁材に火がつくのだ。
ケーブルを施工したときに、工事で傷がついたことが発端になることもある
ケーブルの皮剥きの時の傷や、工事時のくぎや、ボルトの残材で傷がついた事例もある
傷があれば、微細放電する。時間をかけてその周りの劣化が進み最後は放電短絡となる
ケーブルは一般的に難燃剤被覆だ。最初はくすぶる程度で収まっても、ケーブルに油脂類が付着していればあっという間に燃える
ここ最近起こった、半導体工場の火災も、電線の短絡が原因だと言われている
ケーブル火災で怖いのは、延焼だ
ケーブルダクトはトンネル効果というものがある
燃え始めると上昇気流であっという間に延焼する
温度の高いところで使うケーブルは、まずは難燃ケーブル選定することだ
更に、ダクト内の延焼防止対策を行って欲しい

2022年10月03日

HAZOPで逆流というリスクを見落とすな--コーンルーフタンクの破裂

ポンプを停めるときに失敗すれば、高圧の吐出側から、吸入側へ逆流が起こる。
高圧のポンプで、逆流すればポンプ吸入側に接続している機器の耐圧がなけれ装置が破壊される
ポンプ停止は、人が行うものだ
人は必ずミスをする。ベテランだからと言って人は失敗しないわけではない
ポンプがあれば必ず逆流を考えて欲しい
逆流防止対策で、逆止弁を付ければ安全かというと100%安全というわけではない
逆止弁は100%作動するという保証は無いからだ。点検管理が行われていなければ、故障して作動しないこともある
逆止弁があるから大丈夫と思い込んで、何度も何度も事故が繰り返し起こっている現実がある 逆止弁はHAZOPで注意が必要なところだ
過去に起こっている事故事例で公開されているものがあるので一つ紹介しておく
岡山県の倉敷で1988/3/18日に起こった事故事例だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000135.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00026_a.pdf
HAZOPでポンプがあれば必ず逆流を考えて欲しい
ポンプが高圧ポンプであればその逆流リスクは徹底的に見て欲しい
ポンプの吸入側(IN)が圧力に弱いコーンルーフタンクであれば、逆流すれば簡単にタンクは破壊されると思って欲しい
逆流防止弁を付けたからと言って安全ではない。機械は故障することがあるからだ。HAZOPで注意しなけれいけないのは歯止めがいくつあるかだ
HAZOPで大事なことは、異常に気づく仕掛けがあるかだ。逆流なら、逆流で警報が出るかだ
液が噴き出して気づくのではもう遅い。少なくとも逆流検知器はほしい。警報は最低限欲しい
異常に気づいても、逆止弁は作動しないことはある
定期的に点検しなければ、いざという時作動する保証は無いからだ
逆流で時間的余裕がなければ、逆流を検知してすぐに流れを停める緊急遮断弁を併設しておくことだ
手動で操作できる緊急遮断弁があるからと安心しないで欲しい。手動では対応が遅れがちだ
逆流を検知した設備と連動して自動的に作動させて欲しい。人が気づいて作動させるのでは遅い
安全とは、2つ以上の安全対策を人の力を借りずに自動的に行うことも必要だと考えて欲しい
安全対策は1つでは破られる。人はミスをするから機械の力をかりるのだ

 

2022年10月01日

反応器で起こる事故--攪拌機の停止

反応器で起こる事故で、攪拌機の停止がきっかけというのがある
反応機を安定的に運転するには、2つの要素が同時に成立する必要がある
たいていの反応器は、発熱反応だから温度を常に一定に保つ必要がある
つまり、しっかりと冷却が行われることが条件となる
反応熱量は、温度との相関関係がある。しかし、直線的な関係ではない
指数関数的な関係だ。ちょっと温度が上がっただけで、反応暴走になることも多い
中途半端な冷却能力では反応暴走になる
攪拌機の停止を甘く見ないで欲しい
攪拌機が何分以上停止したら事故になるのか、設計書に書いてあるのかを調べて欲しい
設計書がないなら、もう一度安全検証して欲しい
攪拌機の停止は、過去致命的な事故を起こしているからだ
たった数分間の撹拌停止でも大きな事故が起こっている
再起動したときに、反応器内の溶液が激しく撹拌され、すぐに激しい反応が始まり事故になる事例だ
撹拌停止で、2相分離する反応形態に多い事故のパタ-ンだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000103.html
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000104.html
反応器の撹拌停止は、思いかけないことでおこる
停電だ。突然停電が起こることもあるはずだ
撹拌モーターの故障もある
電源系統のトラブルもある
撹拌停止の原因は様々だ
攪拌が停止しても安全が確保されるか検証して欲しい
反応暴走という現象にも関心を持って欲しい
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/srr/SRR-88-7.pdf

2022年09月29日

生産革新という言葉

1990年代頃化学業界で生産革新という言葉が使われ始めた。今から30年前だ 
https://www.jma.or.jp/seisankakushin/imgs/pdf/JMA201010.pdf
化学企業と言っても、古くからの小規模プラントが存在する時代だ
企業間にかなりの格差があった
DCSを完全に使いこなしている企業もあった。まだまだ、職人芸的なことをしている企業も沢山あった
そんな背景から、生産革新という言葉を打ち出した企業があった。政府もそれに乗り、生産革新という言葉をもてはやした
背景にはバブルがはじけた上、海外からの追い上げで化学業界も苦しい時代だったからだ
当時先進的な工場は、一つのプラントは数百メートル規模のプラントだ
しかし、昔ながらの古い小規模生産型の化学企業はたかだか数十メートル規模のプラントが工場内に乱立していた
明治、大正、昭和の家内工業的化学企業もまだ1990年代は存在していた
当然小規模プラントを多く持つこれらの企業が、生産革新に飛びついた
当時千葉県の京葉コンビナートで仕事をしていたが、この生産革新的なことは既に終わっていた
当時京葉コンビナートではそんなことは、とうの昔に完了しており、DCSで全て織り込まれていた
ところが、プラント規模の小さい岩国にある工場は、この生産革新という言葉に乗った
小規模の職人的な仕事をシステム化しようという活動だ
機能の全く違う小規模プラントを、無理矢理統合化しても本来それほど人は減らせない。しかも、人手がかかるバッチプラントだ
しかし、金額的な成果を出すためにはかなり無理な省人化をした。おかげで、安定化するまでに時間がかかった記憶がある
でもなぜか、当時の政府は生産革新をもてはやした。あたかも、すごいことのようにだ
昔ながらの小規模プラントの塊をあたかも統合化して生産革新をしたかのように言っていたのだがそれはそれで当時はもてはやされた
時代時代をみて思うのは、プラントの規模や特性を見て生産革新を続けていくことだ
化学産業を見て見ると、ものすごく企業間で、文化、技術、知識の差はある
一律に、生産革新という言葉はあり得ない
しっかりと、自分の企業の立ち位置を見ておくことだ
国内だけではなく、グローバルで見て見るとものすごい企業格差は存在する
だから事故は起こるのだ

2022年09月27日

装置の間欠運転で起こる事故

装置の使い方には、「連続」と「間欠」という使い方がある。この「間欠」という言葉に関心を持って欲しい
連続運転であれば、事故は起こらなかったのに「間欠運転」という運転方法であるが故に事故が起こることがある
労働災害で間欠運転が原因で起こる事故のパターンを紹介しておく
連続的に機械が動いていれば、音もしている。つまり、人は運転中に機械には手を出すことはない
ところが、間欠運転の機械では機械が停まっている時間がある。何も音ともしない状態だ
間欠運転する機械だとわかっていれば、手を出すことはないが、知らなければいきなり機械が動き始めて手や腕を巻き込まれたという事例が多い
化学災害事例を見て見ると、配管の腐食漏洩事例が多い
保温材や保冷材を被せている配管での事故事例が多い
間欠運転であれば、配管に液などが流れていたり、いなかったりする
温度のある流体であれば、配管が冷えたり、熱くなったりを繰り返すのだ
冷えれば、空気中の水分が結露する。保温材や保冷材のすき間を通って配管表面に水分が侵入する
時間が経てば、配管の外面腐食が起きて穴が開くのだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2010-028.pdf
間欠運転で使用する配管は、保温や保冷材にすき間がないかをしっかり見て欲しい
結露で配管腐食事例は多いからだ
間欠運転でもう一つ配管で気おつけなければいけないのは、スラッジだ
連続的に流体が流れていれば、スラッジは溜まりにくいが、間欠運転だとどうしてもスラッジが配管内部に溜まりやすい
配管の立ち上がり部などにスラッジは溜まることになる
腐食性の物質が含まれていれば、スラッジ部で濃縮されたりして腐食速度は上がる
気づかずに運転していると突然穴が開いて噴き出す事例も多い
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00082.pdf
間欠運転だからと行って、管理密度を下げないで欲しい
間欠運転故に生じるリスクに目を向けて欲しい

 

2022年09月25日

除害設備で起こる事故--過信するな

有毒な化学物質を扱う化学工場には除害設備というものがある。無害化して安全な状態で大気に放出する設備だ
製油所や化学工場では塩素やホスゲンなど有毒なガスが使われていたり、硫化水素などのガスの発生もある
万一大気に漏らすと人命にも関わることになる
除害設備で起こる事故にはパターンがある。処理能力が不足していて起こる事故も多い
最悪の事態を考え能力が決められていればいいが,多くの事故事例から能力不足という問題がある
よくある失敗は、ガスの流入を想定していたものの、液化塩素など液で流入してしまったケースだ。当然能力不足になる
例えば誤って、液化塩素を除害設備に流してしまう事故事例だ.液化塩素は気化すると容積が増え大量の有毒ガスが発生する
設計上の能力が、常時発生する排ガス程度であれば大幅に能力を超えることになる
停電で、装置が作動しなくて事故になることもある。運転員の作業ミスが引き金になることもある

除害設備というのは最悪の条件を想定して処理能力を決めておくことだ
更に、2系列化しておくことが望ましい。どちらか一つがうまく動かなくても他系列でカバーさせるのだ
停電でも確実に動くようにして欲しい。バックアップ電源が必要だと言うことだ。
異常時に自動起動する方式の除害設備は、定期的に作動テストをして欲しい。リレーが故障していていざという時作動しなかったという事例もある
地震時に設計が悪く除害設備が自動起動しなかった事例もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000197.html
非常用電源設備が,起動したもののすぐに停止してしまったからだ
地震の揺れで、冷却水の液面計が誤作動し、本来動くべきはずの非常用電源設備が動かなかったからだ
地震による液面計が誤作動する事例は多い.液面のスロッシングによる影響だ
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/analysis/372.html
除害設備を保有しているなら処理能力や動作条件を再検証して欲しい。最悪の事態でも対応できるかだ
保守も大切だ。確実に動くことを定期的に確認して欲しい

 

2022年09月21日

日本最大の粉塵爆発事故--安全神話にだまされるな

石油化学コンビナートができたのは今から60年前だ
それより前の化学工場の原料は石炭か石灰からつくるアセチレンという物質だった
石炭は、蒸し焼きにして化学物質の入ったガスを取り出す。石炭化学とも呼ばれた
蒸し焼きにした石炭は、製鉄産業の原料としても使われ、石炭というものは一石二鳥の物質だった
石炭は、地下から掘り出す。掘り出す際に細かな粉塵が発生する
採掘時には、この粉塵爆発に気をつける必要がある
電気機器は当然防爆型を使う。もう一つ大事なことは、絶えず水をまき粉塵を湿らせることをしていた
水分を含ませると、着火エネルギ-が高くなり簡単には火が着かないからだ
原始的ではあるが確実な方法だった
1963年11月9日福岡県大牟田市の三井三池炭鉱で、死者458人、重軽傷者555人という粉塵爆発災害が起こっている
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BA%95%E4%B8%89%E6%B1%A0%E4%B8%89%E5%B7%9D%E7%82%AD%E9%89%B1%E7%82%AD%E3%81%98%E3%82%93%E7%88%86%E7%99%BA
爆発に伴い発生した火災で、一酸化炭素により多数のCO中毒者を出した
この企業では、何十年も大きな粉塵爆発は無く、経営側も従業員も安全であるとの思い込みがあった。いわゆる安全神話があった
事故の起こった当時、この企業では労働争議があった。いわゆるストライキだ
ストライキで経営側と労働者側の関係は当然うまくいかなくなる
当然現場の安全管理もおろそかになる。現場の人が少なくなれば、粉塵爆発を防ぐ水まきの頻度も減る
火花が出ないように機器の補修をしなければいけないのにそれも怠った
安全管理レベルの落ちている状態で、石炭の採掘を続けた結果大爆発が起こってしまったのだ
いままで事故が起こっていないから安全だという企業側のおごりもあったのだろう。安全神話にだまされたのだ
大きな事故が起こるのは時代の変革というものも関係する
当時は、石炭から石油へと時代が変わり始めたことで、石炭産業が斜陽になり従業員に十分な給料を払えなくなっていったことが関係している
つまり、事故にはお金が大きく関係する
不景気になれば、安全に投資できない。人も採用できないからだ
人も採用できなければ、技術も伝承できない
企業はしっかりと稼いで、安全にお金を投資することだ

 

2022年09月19日

反応器で起こる事故--反応暴走

化学工場で起こる事故見て見ると、装置の種類によって事故のパターンというのがある
配管であれば、腐食漏洩。ポンプであれば、軸受け部からの漏洩や逆流。タンクであれば、底板腐食による漏洩などだ
今回は、反応器という装置に着目して事故のパターンを紹介してみたい
反応器であれば、最も怖いのは反応暴走だ
http://pe-eco.jp/articles/show/421/
発熱反応の物質であれば、冷却できなければこの反応暴走という現象が起こる
反応というのは、ある一線を越えると制御はできない。発熱量は、倍々ゲームのように指数関数的に増えるからだ
人間の手で何とかしようとすることはできない
今から10年前、当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起きた  まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が工場で停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔は蒸気の信頼性はかったかもしれないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう。自分のプラントの冷却能力を検証して欲しい
事故のリスクを減らすために、反応器の冷却能力を上げることも考えて欲しい
冷却能力不足で起こる事例は多いからだ

 

2022年09月17日

耐圧気密テストで起こる事故 

耐圧気密試験に使うのは普通なら窒素か水を使う
しかし、耐圧気密試験に空気を使ったことで何度も事故が起きている
空気は支燃性ガスだ。つまり物を燃やす性質がある
特に、物を燃やす性質は空気の圧力が高くなればなるほど増大する
つまり高圧空気で耐圧検査をしているなら、わずかな可燃物があれば何かの着火源で燃焼や爆発が起こるということだ
こんな事故事例がある。16MPaという高圧機器の耐圧気密検査で起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200023.html
一つの機器の耐圧気密検査を終えた後、バルブを開いてもう一つの機器へ高圧の空気を移送した
この時、バルブを急に開いたので、断熱圧縮という現象が起きた
断熱圧縮とは、気体を急激に圧縮すると温度が急激に上昇する現象だ。いわゆる圧縮熱というのが発生する
たとえば、試験管内に閉じ込めた空気を急激に圧縮しても200℃や300度近くにもなる
この事故では、配管内に450度で発火する残留物質が残っていたため、断熱圧縮現象で温度が上がり配管内の可燃物が発火した
再現実験では圧縮熱は650度を超えていたと言われる

耐圧気密検査に使う気体は、不燃性気体である窒素を使って欲しい
空気は、もえるものが配管内にわずかでもあれば簡単に火がつくからだ
高圧酸素ボンベなどは、接続配管にわずかに人の手垢(油分)が付いていただけで発火する事故も起きている

配管の中に逆止弁が入っていて完全に脱圧できていない状態で、破裂事故が起きている事例もある
耐圧気密テスト時は徹底的に逆止弁は取り除いて欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2008-333.pdf
耐圧テストは、窒素を使わず水で実施することもできる いわゆる水圧テスト
水は非圧縮性なので、万一破裂したとしても飛散度は少ない
水が使えるなら、水も使って欲しい

 

2022年09月13日

詰まったバルブで起こる事故のパターン

事故のパターンは、大きく分けて2つだ。
一つは、無理矢理、針金でつついて開けようとして起こる事故
バルブが詰まっていれば、安易に針金などでつついてみようと思う人は沢山いるはずだ
誰でも、バルブが詰まれば詰まりを解消したいと思うのは当たり前だ。ところが、この詰まりを取り除く作業には、思わぬ危険が潜んでいる。
詰まっているバルブの詰まりが突然とれたら、どうなるか考えて欲しい。
当然、詰まったものが噴き出してくるはずだ。
それで終われば良いのだが、たいていはバルブを開けた状態にして、詰まりを取り除こうとしているはずだ。
つまり、詰まりがとれればバルブは開放状態だから大量の液やガスが、その後噴き出してくる。
周りは、ガスや液が噴き出すのだから、霧がかかったような状態になるという。視界が極端に悪くなることもある。
可燃性の液やガスが噴き出してくれば、静電気で着火する。
毒性ガスが、噴き出してくれば周りにいる人がばたばたと倒れていく。
事故を、経験したことがない人はこの状況を予想できないだろうがこのような事故は過去に幾度も起きている。
今から半世紀ほど前の事故だが、詰まっているバルブを針金などでつついて詰まりを解消しようとして起きた事故がある。
製油所の事故だ。装置には硫化水素が含まれていた。定期修理に入るため、装置を停止していた。あるドラムで、液が抜けなかった。
現場の責任者達は、なんとか脱液しようと焦っていた。誰かが、針金を持ってきてドレン弁をつつき始めた。
バルブを開けた状態のまま針金でつついていたのだ。
しばらくして、突然詰まっていたものが取れ大量の硫化水素という毒性ガスを含んだ液が噴き出してきた。
周りにいた人達が次々に倒れ込んでいった。
毒性ガスが噴き出すとは思っていなかったので、防毒マスクも用意されていなかった。多くの人達がそこで命を失った事故だ。
バルブが詰まっていたら安易に針金でつついて詰まりを取ろうとしないで欲しい。
もう一つの事故のケースは、弁を少し開けて、液やガスが出てこないので、そのまま弁を開けたままにしていてしばらくして突然詰まりが取れる事故だ
バルブを開の状態にして。突然詰まりがとれてしまえば液やガスが噴き出してくる。弁が開放状態なのだからすごい勢いで噴き出してくる。
近づけないから、弁を閉めることもできない。とても恐ろしいことが起こると思って欲しい。
過去の事故事例を紹介しておく 参考にして欲しい
この事例は、詰まったバルブの弁を開けたままで仲間と相談中に突然詰まりが取れて起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200103.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00049.pdf

2022年09月11日

今から約100年前の化学工場の事故や労働災害

大正元年は1912年。昭和元年が1925年だ。
歴史のある日本の化学企業などもこの時代から、化学物質を作り始めている
私の勤めていた三井系の化学企業は、1912年に石炭から染料の原料であるアニリンという物質を製造している
住友系の化学企業は、1913年に創業し肥料を作り始めている
時を同じくして、九州の水俣にも化学工業が始まっている。アセチレンを原料とした化学産業だ
化学業界で、今から約100年前に何があったかというと、アンモニアという化学物質の製造が始まったことだ
画期的な発明であるが、ドイツで、空気からアンモニアをつくる新しい製法が発見された
チッソと水素があれば、アンモニアができるのだ。しかし、約50MPa、800度の高圧、高温下での反応だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E6%B3%95
https://www.titech.ac.jp/public-relations/about/stories/ammonia-synthesis
日本の企業は、まだ実験室で成功したばかりのこの技術を導入した
外国から技師を呼んで、外国製の機械も買い、日本でいきなり生産を始めようとした
外国製の機械とて、当時はそれほど信頼性は高くない。当然、水素が吹き出し着火爆発は日常茶飯事だったらしい
技術的に未確立の中で運転するのだから事故が起きて当然だ
当時の化学工場の様子はどうだったの色々調べてみたら、こんな本を見つけた
聞書水俣民衆史第4巻「合成化学工場と職工」草風館
http://www.sofukan.co.jp/books/33.html
数百ページの本の中に、当時の化学工場の運転状況や事故が書かれている
火災爆発は当たり前。町中に響きわたる、爆発音。
爆発するという前提で設計している。装置の廻りをコンクリートで覆い、爆風が上に抜ける設計だ
配管が破れれば、現場に飛んでいって弁を閉める。防毒マスクもないから、息を停めて現場に走り、弁を操作してくるのだ
生きるか死ぬかの世界だ。分析工も、薬液のガスを吸い長生きはしなかったようだ
職場によっては、1日で衣服が薬液でぼろぼろになると書いてある。とんでもない世界であったことが良くわかる
興味のある方は是非読んでみてほしい
この人達のおかげで今の化学産業がある
約100年前の平均寿命は43才から44才だったそうだ
https://www.taisho.co.jp/locomo/ba/sp/q1.html

2022年09月09日

タンク火災で起こるボイルオーバー事故

ボイルオーバ現象という言葉を知っているだろうか
タンク火災の時に起こる危険な現象の一つだ
タンクで火災が発生すると、タンク上部で油が燃える
油が長時間燃えているうち、突然タンク上部から油が爆発的に吹き上がり、火災が一挙に広がる現象だ
以下の資料を見て欲しい。イラストもあるのでイメージが掴めるはずだ
http://kikenbutu.web.fc2.com/90_TUTATU/2016H28/H280300manual/040900_manual_H2803.pdf
この現象が起こるには、水が必要だ。火災が起こると、泡などで消火する。泡と言っても水分が含まれている
水は油よりも思いから、時間とともにタンクの底に沈んでいく
つまり、タンクの底には水がたまることになる
タンクの上では火災が発生している。時間とともに、その熱でタンクの底にある水も徐々に温められていく
水は、100℃になると突沸する。つまり。上部からの伝熱で底にある水の温度が100℃になったときこのボイルオーバー現象が起きる
底にあった水は、突沸現象で上の油を押し上げタンク上部から燃えた油を吹き上げるからだ
過去に起こっているボイルオーバ現象に関する文献がある。興味のある方は読んでみると良い
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/55/4/55_253/_pdf/-char/ja

 

2022年09月07日

連続プロセス系とバッチ系の違い--事故の発生確率

化学プラントを見ると、バッチプロセスと連続プロセスがある
バッチプロセスというのは、容器に原料を入れ、何か反応とか混合をして、1回1回製品を作り上げる手法だ
原料を入れたり、温度を上げたり、撹拌をしたり人が色々とめんどうを見てやる必要がある
バッチプロセスは人が関与することが多い。人はミスを犯すから、どこかでトラブルが起こる確率は高い
連続プロセスというのは、人が関与せずかなりの部分が自動化されているので当然ヒューマンエラーが起こる確率は少ない
昔は、人件費もそれほど高くはなかったので、バッチプロセスが主流だった
ところが、人件費が上がるにつれ連続プロセスが主流になっていった
では、バッチプロセスの事故を見て見るととんでもない事故が過去起こっている
バッチプロセスというのは、同じような設備が存在することが多い
連続的に生産できないのだから、反応器は一つではない。何十個の反応器を設置して、切替えながら生産していくことになる
ある反応器は生産をさせているが、隣の反応器は生産を終え内部の清掃をしていることもある
つまり、生きている反応器と使っていない反応器が隣り合わせの状態で化学プラントが動いているのだ
現在のように、運転状態を監視できるモニターがしっかりと現場にあれば事故は起きないが昔はそうでは無かった
おまけに、運転員同士の連絡手段は今のように無線通信はなかった
そこで、すこしでも連絡がうまくいかないと、誤って生きている反応器でミスを犯すことになる
例えば、生きている反応器、つまり運転中の反応器のドレン弁を過って開いてしまう事故だ
たとえ、安全装置があっても人は、とんでもないことをする可能性はある
アメリカで起きた事故だがこんな事故がある。運転中の反応器のドレン弁の、安全蔵置を無視して強制的に開けた事故だ
大量の可燃物が吹き出し、5名の運転員が死亡した
https://www.youtube.com/watch?v=IRbC4kowrrY
https://www.csb.gov/assets/1/20/formosa_il_report.pdf?13838
日本でも、1960年代に同じような事故が九州の水俣にある塩ビ工場で起きている
バッチプロセスでは、人のミスをいかに抑えるかだ。バッチプロセスではヒューマンエラーを限りなく想定し、対策を打って欲しい

 

2022年09月05日

なぜ海外では大規模事故が起こるのか--日本と外国の違い

なぜ海外では大規模事故が起こっているのに
日本では一度に2桁を越えるような死亡事故や、数千人規模の被害者が出る大きな事故はなぜ起きないのかと聞かれることがある
国や文化が違うのだから、当然色々な要素がある
一つは、法規制だ 欧米と日本の法規制の考え方は違う
法というのは、当然個人や企業を規制する 法で規制を強化すれば、企業の活動を縛ることになる
法を守るには、お金もかかる。厳しくすればするほど、企業経営にも影響する
結果として、法は必要最低限で定めることになる
では、法律を守っていれば安全かというと、必要最低限だからそうはいかない
法規制の方法は、大きく分けて2つある
一つは、必要最低限の要求事項は定めるが、その要求を満たす手法については企業自ら考え実施させ安全を確保させる方法だ
企業が主体となる安全だ。政府や行政はあまり細かなことを法で定めない。法を守る手段は企業側にあるので、自主保安となる
この手法は、欧米系の国々で採用される。その代わり、ひとたび事故を起こせばペナルテイは大きい
もう一つは、日本の法令のように、事細かに定める手法だ。事故が起きるたびに規制は強化されていく。企業にあまり手段の選択肢はない
欧米系の法体系は、企業にとって自由度はある。しかし、企業側での安全対策は当然バラツキが出る
結果として、自主保安がうまくいかないと、大きな事故が起こることになる
もう一つ、行政の管理密度だ。管理密度が低ければ、事故の確率は増えてくる
中国などで、地方の化学工場で大規模事故が起こるのは、地方の行政当局の管理が甘いからだとも言われている
次に、事故が起こる要素として技術力も大いに関係する
1980年代インドなどで過去大きな事故が起きているのは、急速な経済成長に技術を使いこなす能力が追いついていなかったからと言われる
雇用形態も関係している。日本のような終身雇用制に近いものであれば、退職まで一貫して技術・技能の伝承もできる
しかし。海外のように転職が当たり前の企業では、技術レベルを保つのにかなりの努力が必要となる
企業の安全文化も関係する。海外では安全優先ではなく、生産優先で大きな事故を起こしている企業もある
現場の安全管理体制も関係する。海外では、トップダウン型だ。言われたことを担当者が行えば良い方式だ。指示通りにやらなければ罰せられる
日本では、トップダウンとボトムアップの組み合わせという手法を長年とってきた
改善提案、ヒヤリハット活動など日本独自の現場の安全活動もある。結果としてボトムアップが行われる
とはいえ日本も、少しずつ欧米化してきている
お金も時間も限られている。日本の良さを維持しながら、どう安全を構築していくかが求められている

 

2022年09月03日

変更管理の失敗事故に思う--変更管理の大切さ

生産優先か安全優先かというと、安全優先というのが世の中の主流にはなってきている
そうは言っても、やはり大型の工場を停めれば多額の生産損が出る
結果として、漏洩などの小トラブル程度であれば内密に修理して、そのまま再稼働する事例もある
そのまま、何もなけれ世の中に公表されることもないのだろうが、トラブルというのは本質的に対応できていなければ繰り返す
こんな事故事例がある
https://xtech.nikkei.com/dm/article/HONSHI/20060627/118638/
気液分離槽という容器に穴が開いて爆発した事故だ。容器中に気体と液体が混ざった物を入れて、液とガスを分離して液を回収する装置だ
高速で気液が入り込むので、スプレ-ノズルを取り付け流速を落として分離させていた
とはいえ、容器の壁にこの気液が長期間衝突したことによりエロージョンコロージョンで穴が開きガスが漏れ爆発した事故だ
企業は、原因を調査し調査報告書を公表したものの、実は10年前にも同じようなトラブルがあり、官庁にも届けず無断で修理したことがわかった
社内の調査委員会のメンバーもそれを知っていたのにかかわらず、調査報告書には過去の事例は記載しなかった
更に調べると、同社の他工場でも高圧ガス保安法で定める手続き通り検査もせずに工事を行っていたことがわかった
結果として、高圧ガスの認定も取り消され、社内の経営陣も責任を取って社内処分も行われた事案だ
https://ceh.cosmo-oil.co.jp/csr/publish/sustain/pdf/2006/sus2006_05-06.pdf
機器の内部構造を変更したことにより起きた変更管理に関わる事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-082.pdf
安易に、気液分離方法をバッフル方式から、スプレーノズル方式に変えればトラブルの再発は起こらないと判断したのかも知れない
気液が分離している2層流というのはエロージョンコロージョンの事故が起こり易い
定点検査で肉厚検査をしていると、減肉箇所を発見できないこともある。場所が数センチ変わっただけでも、削られ方が変わるからだ
2層流の事故事例を紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200098.html
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-123.pdf
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2019-353.pdf
法規制のある機器を変更すれば、当然許可や届出が必要になってくる。時間もかかる。時間がかかれば生産損も出ると考えたのだろう
企業倫理を現場の末端まで徹底するのは難しい
たかが変更管理と考えないで欲しい
変更すれば、法に関わることも出てくると教育周知して欲しい

2022年08月29日

化学プラントの事故災害に関する情報源を紹介 --化学工学会

アメリカにCCPSと言う組織がある Center for Chemical Process Safetyを略してCCPSと呼んでいる
化学プラントの安全に関わる活動をしている組織だ
https://www.aiche.org/ccps
CCPSでは、毎月一回程度事故や災害などに関する情報を世界中に発信している
https://www.aiche.org/sites/default/files/202207beaconenglish.pdf?utm_source=Informz&utm_medium=Email&utm_campaign=%5BADD%20Name%20of%20Email%5D&_zs=jKx2X&_zl=F1GA3
この英文情報を日本の化学工学会が和訳して提供してくれている
公益社団法人化学工学会 産学官連携センター SCE・Netのホームページを見て欲しい
http://sce-net.jp/main/group/anzen/anzen_danwa/
2001年から情報を提供してくれている。当初は発行頻度は少なかったが、今は毎月新しい情報が提供される
この頁を開けると、PSB 和訳及び安全談話室というのがある
情報一覧表の、PSB和訳というところをクリックすると和訳した文章が出てくる
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/03/202003BeaconEnglish-Japanese.pdf
2006年の4月号からは、談話室というのが公開されている
化学工学会の有識者のコメントが載せられている
最新の翻訳記事と談話室の記事だ
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2022/07/202207BeaconJapanese.pdf
https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2022/07/DANWA2022_07_No193.pdf
化学物質を取り扱う工場の安全担当者や研究者などは是非みて頂きたい情報だ

 

2022年08月27日

事故データーベースの紹介

どんな事故データベースがあるのか聞かれることがある。公開されているものもあるので紹介しておく
過去の事故事例を学ぶことは重要だ。今まで、こんな事故事例データーベースを見て事故の教訓を集めてきた
①高圧ガス保安協会事故事例データーベース https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/incident_db.html
https://www.khk.or.jp/public_information/incident_investigation/hpg_incident/recent_hpg_incident.html
②産総研が提供する事故データーベース RISCAD https://riscad.aist-riss.jp/ (現在リニューアル中 一時閲覧停止中)
③Deyamaの提供する事故事例データーベース http://deyama.a.la9.jp/ver_1/saigai.html
④失敗知識データーベ-ス http://www.shippai.org/fkd/index.php
⑤労働安全衛生総合研究所事故データーベースだ。数千件の事故情報がある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
いい内容が書かれてはいるのだが惜しいことに何月何日という事故発生日の情報が不足しているのが欠点だ 正確な日付がわからないのが問題点だ
⑥神奈川県では高圧ガスに関係する事故情報を下記のURLで公開している
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14873.html
このホームページの中で更に詳細を見ていくと、事故の詳細等という項目がある
個別の事故に関する物も公開されている 高圧ガス事故事例情報シートというのがある
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/a2p/cnt/f5050/p14877.html
⑦早稲田大学と共同で特定非営利活動法人災害情報センターが運営しているデータベースで略称はADICというものがある。
http://www.adic.waseda.ac.jp/adicdb/adicdb2.php
事故というのは、色々な視点で見ていかないと事故の教訓が得られない
特に、人という切り口で原因を書いているものは少ない。これからの事故データーベースについて求めたいのは、教訓を書いて欲しい
それから、変更管理の視点とリスクアセスメントの視点で失敗の要因を書いていく必要があると思う
とはいえ、データーベース提供者には感謝したい

 

2022年08月25日

可燃物を非金属ホースで抜き出すな--静電気

可燃物は静電気で着火する
可燃物を取り扱う時の静電気対策は基本中の基本の注意事項だ
でもこれは、なかなか徹底されていないから着火事故が起こる
装置内に残液が残れば、抜き出すことになる
最初から、残液を抜き出す設備がついていれば、安全に抜き出せるが全ての設備はそうであるわけでは無い
たいていはホースなどを仮設して、液を抜き出すことになる
そこに事故の芽がある
導電率の少ない可燃物であれば、静電気が発生する
液の流速が速ければ数千ボルトから数万ボルトの静電気が発生している
それに気づかず液を抜き出していれば、静電気は放電するので可燃物なら簡単に着火する
この手の事故事例は実に多いのだが、静電気に関しての教育が企業内で展開されることは無い
だから世の中で繰り返し静電気事故が起こる
ホースに関しては、アースが取れないと静電気を逃がすことはできない
金属製のホースならアースは逃がせるが、塩ビなどの樹脂製ホースを使っているとやはり静電気で事故が起こる
塩ビホースなどで抜き出していれば、静電気で着火することになる
耐熱性に関しても注意が必要だ
塩ビは耐熱性もないので、ホースも外れることもある
ホースで抜き出す作業を甘く見ないで欲しい
静電気と耐熱性についてはしっかりと教育して欲しい

 

2022年08月23日

夏場暑くなって起こる事故-過酸化物事故--停電が引き金

今から40年前の話ではあるが、大阪堺市の鉄砲町という所にあった化学工場で大爆発があった
夏の暑い8月21日の大事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000179.html
http://www.sydrose.com/creativedesignengine/HTML/bb4-01225/bb4-01225.html
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumona.nsf/html/shitsumon/a100008.htm
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumona.nsf/html/shitsumon/b100008.htm
死者6名・重傷者6名・軽傷者198名と多くの被災者が出た とんでもない大爆発だ
被害が大きかったのは、爆発の形態が蒸気雲爆発だったからだ
現在は、そこには工場はない。その場所は今はショッピングセンターとなっている
https://ameblo.jp/tetsudotabi/entry-12311917366.html
当時の状況を知ることはできない
事故の発端は、前日の停電だ
停電というのは、多くの大事故の引き金になる外乱だ
停電でまずは、小爆発が起きた。反応器の攪拌が止まったからだ。化学工場で反応器の停止は、事故につながる
反応暴走につながるからだ。
最初の小爆発を受け、反応器にある爆発につながる化学物質は処理できた
ところが、停電前に反応器へ投入する予定であった原材料を入れた容器の処理だけは忘れていた
原材料には、過酸化物が投入されており時間とともに反応が進んでいた
放置された、過酸化物を含む原材料が42時間経過後反応暴走を起こし爆発したのだ
爆発が起こる前、装置から煙が出たので一斉に従業員が現場確認へ向かったところで大爆発が起きた
異常を検知して一斉に皆が現場に駆け寄ったことで多くの人が巻き込まれたのだ
異常が起きたらすぐに安易に、現場へ向かわないで欲しい
過去の事故事例から、現場へ安易に向かって巻き込まれた事例は多い。異音、異臭、煙を見たなどで安易にすぐに現場に駆けつけないで欲しい
爆発が起これば巻き込まれるからだ
この事故は過酸化物の爆発事故だが、温度に敏感な過酸化物を甘く見ないで欲しい
引き金が停電だったことにも着目して欲しい。停電時の対応マニュアルができているかも見直して欲しい

 


2022年08月21日

安全工学

安全工学という用語がある
今から半世紀前には、安全についてと言う学問はありませんでした
爆発とは何か、火災とは何かという、論理的な学問は日本には存在していませんでした
学問が無いということは、大学で安全について専門的に教えられることもありませんでした
日本でコンビナートという産業形態ができたのは、1958年でした。ところが当時は、大学に安全を学問とする学部はなかったのです
化学工学や応用化学など、化学に関する学部はあるものの安全という学問は存在していませんでした
横浜国立大学というところで、安全工学科という学科ができたのは1967年です
北川先生という人が当時活躍されていました
1977年当時安全工学は、全国の大学で専門講座があった 当時の講義名一覧表がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/16/6/16_504/_pdf
今は安全工学という名前の学科は、日本の大学では見当たらないようだ
大学には、プロセス安全などを取り扱う研究室は見当たるが、学科名として安全工学は存在しないようだ
安全に関しての学会で安全工学会というのが有る
https://www.jsse.or.jp/about/History/history03
コンビナートが動き出す前年の1957年にできた学会です
文字通り安全をテーマにする学会です
この学会では、学会誌「安全工学」を古くから発行しています
安全工学会から発刊されている定期刊行物です。1962年が創刊号だからもう半世紀以上出版されています
会員なら、冊子が送付されてくるので見ることが出来るが、書店で売られているわけではありません
「安全工学」の冊子は、今はネットから見ることができます。つまり情報が公開されているので
発行開始当時からのバックナンバーも見れるので、実にありがたいことです
図書館に出かけなくてもみれるとは、すばらしいことです
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/safety/58/3/_contents/-char/ja
過去3年以上前の学会誌は公開されています
興味のある方は是非見て欲しい
安全に関する情報が詰め込まれている

 

2022年08月18日

労働災害から読み取れること--業種別

労働災害の教材を作るときは、災害の種類別に資料をつくる
労働災害とはという、基礎的な話をするときには、災害のパターンを説明するから種類別の資料分類が必要となる
ところが、業種別に話をするときには、別の分類が必要だ
研究開発部門、工場などの製造部門、工事部門、物流部門などだ。
研究部門なら、ガラス器具などの切れ・こすれという災害が多い。
とはいえ、試薬や実験などに危険なガスも使うのだから、物質危険性に関わる労働災害にも着目しておく必要がある。
製造部門は、やはり機械を使う関係上挟まれや巻きこまれという労働災害が多い。
挟まれ巻きこまれは、死亡事故にもなる、重大災害だ。
工事部門となると、墜落災害などが増えてくる。道具を使うから、切れこすれも多い
屋内などで発電機を使っていて酸欠になることなども落としてはならない災害だ。
夏になれば、熱中症など屋外での作業も増えてくる。
物流部門は、輸送中の車両事故だ。屋内であれば、フォークリフトという車両による交通事故が多い。
輸送用のベルトコンベアーなど巻き込まれ事故も重大労災になる。
全産業共通で多いのは、転倒労災だ。いわゆる、転ぶという災害だ。
元々、人類の先祖は四つ足で歩いていた。ところが、ある時点から二本足で歩くようになった。
赤ちゃんのころのよちよち歩きを思い出して欲しい。少しバランスを崩せば倒れてしまう。
人は、二本足で歩いていれば、段差など少しでもバランスを崩す物が存在すれば転倒する。
段差や突起物などは作業現場に沢山ある。だから転倒は、全産業共通のNO1の労働災害となる。
災害というのは、色々な切り口で見ていく必要がある。
災害を起こす本質を知っていくには、常に色々な切り口で物を見ることだ。
多様な見方ができると、事故からの教訓も上手に取り出せるようになる。

 

2022年08月16日

長期の休みで起こる事故

ゴールデンウイーク時の連休、夏季休暇、年末から正月にかけて長い休みの時期がある。
この時期を利用して化学企業などは色々なことをすることがある。
装置を、停めてしまう企業もあれば、運転を継続する企業もある。
装置を停めて、修理や点検をする企業もあるだろう。
「 長期の休み」というリスクは管理が甘くなるリスクも存在する。
交代勤務など現場の人は定員があるので、減ることは少ないが、現場の係長や課長などは当然休みに入る。
つまり管理者がいなくなることにより、管理の密度は減ることになる。
福島県の化学企業で2005年5月11日に起きた事故だ。
連休のため、通常タンク内には反応促進剤は1日しか入れないのに3週間という長期間入れて保管していた。
この為、反応促進剤の活性度は落ちていた。
それに気づかず、連休明け後にスタートを始めた。
運転員は、通常通り原料を反応器に入れて、反応促進剤もいつも通りいれた。
反応を始めたところ、なかなか温度は上がってこず反応は進まなかった。
それでも、運転を継続していたところ突然反応暴走が始まった。
気づいたときには、温度も圧力も異常に上がり安全弁から液が噴き出した。
噴き出した液は空気と混ざり、発火点以上だったため着火爆発したという事故だ。
長期間の休みを考慮せず、反応促進剤をタンクに入れたままにしていたことが引き起こした事故だ。
消防研究所が出している消防研究報告通貫101号の中の26頁にこの事故に関する記載がある。
興味がある方は見て欲しい。
http://nrifd.fdma.go.jp/publication/houkoku/081-120/files/shoho_101s.pdf

長期間の休みを挟む作業には十分注意して欲しい

 

2022年08月12日

事故事例に学ぶ 熱交換器の重大事故--死者10名

高圧ガス保安協会が発行している協会誌「高圧ガス」に過去の事故事例に学ぶと言う特集が過去に組まれていることがある
2017年1月号から石油精製と石油化学分野で特集が組まれた
2017年2月号に過去の事故事例に、千葉県袖ヶ浦で起きた大きな事故の記事が出ていた
1992/10/16に起きた千葉県袖ケ浦市の製油所の熱交換器の事故が書かれていた。
熱交換器に関しては日本最大の犠牲者が出た事故だ。10人という死者が出た事故だ。それにしては、あっさりと書かれていた。
事故事例に学ぶという企画にしては、あまりにもあっさりとした文章だったのを覚えている。この事故は日本の産業界にとって実に貴重な事故だ。
反応器の事故は多くの犠牲者が出ると思っている人が多いが、反応器では犠牲者の数は少ない。むしろそれ以外の装置のが犠牲者の数は多い。
なぜなら、反応器は危険だと誰でも考えているから多くの安全装置を備え、事故に対する備えが多いからだ。
それに対して、熱交換器は誰でもそれほど危険と考えていない。だから事故が起こる。
高圧ガスという協会誌の記事は、会員しか見れないのでここには掲載できないので、他の記事のURLを紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011018.html
協会誌「高圧ガス」に記事を投稿してくれたのは、2017年頃の企業の安全部長さんだ
事故から、26年も経っているのだから、事故当時の当事者では無いだろう
事故から時間が経つと、事実を知っている人はどんどんいなくなる
それでも、誰かが過去の失敗を伝えなければいけないから記事を書く
この記事は、事故の当事者が書いているわけでは無い。過去の事故報告書を読んで書いたのだろう。
事故の事実を知らない人が、事故の本質を書くのは難しい。
過去の事故事例に学ぶと言うなら、この記事での論点は本来なぜ一度に10人もの犠牲者を出したかという所に論点を当てなければいけないはずだ。
しかし、当時の関係者で無ければそこまで深掘りした記事を書くことはできない。
一度失った命は、二度と戻ってこない。企業が、力を入れなければいけないのは死亡事故のような重大事故を防ぐことだ。
多くの事故を経験した人が自ら語っていくことが、事故の教訓に重みがある。
事故の教訓を伝えられるのは、事故を自ら経験した人しかいないからだ。
これからも情報を提供していきたい

 

2022年08月10日

計装設備が原因の事故

会社に入った時最初に配属されたのは「計装」という部署だ。
計装という業務は化学工場にある製造部門と直結する。温度や圧力など化学プラントの重要なパラメーターを管理するセンサーや制御を取り扱う部門だ。
今から50年くらい前のことだ。入社当時はDCSなどは無くアナログ計器だった。
空気式と電気式が混在していた。頻繁に計器も壊れるので、部品交換のたびに構造原理も自然と身に付いた。
プラントにもメンテナンスで出入りするので、化学プロセスに関する知識も自然と身に付いた。
おかげで石油化学工場にあるあらゆる製造部門を知ることもできた。
用役プラントや出荷設備なども担当させてもらった。このことが、今安全情報を発信する時に大いに役立っている。
最近は計装設備も壊れることが無くなり若い計装エンジニアーがトラブルを体験できないという。
プラントも建設する機会は無いからなおさらだ。
そんな背景もあり、2017年の1月から雑誌「計装」という月刊誌で計装設備のトラブルをシリーズ物で1年間執筆したことがある。
https://www.ice-keiso.co.jp/instrumentation.html
流量計、液面計、圧力計、温度計、分析計、調節弁類とトラブル事例を書いて紹介した。
過去も現在も化学プラントの事故事例を調べていくと計装計器が引き金になっているものも多い。
オリフィス流量計が関連した重大事故を紹介しておく
オリフィス板の下流側で起きたエロージョンコロージョンによる事故だ
数十年間点検せず、減肉に気づかず突然パイプが破裂して死傷者が出た事故だ
点検管理をしている協力会社が変わったことにより、点検周期データーが移管されず長期間点検漏れになった事例だ
配管の中にオリフィスを挿入すれば下流側は渦を巻く。鉄板をも削る。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011025.html
https://www.youtube.com/watch?v=PtvBSovjisM
温度計の保護管なども、下流側で渦をつくる。共振すれば、保護管も折れることがある
計装計器に関わる事故事例も知っておいて欲しい
私の知っていることを少しでもブログで発信し次の世代につなげていきたい。

 

2022年08月06日

吸着熱による事故事例その2

吸着熱の事故を紹介しておく
反応器などの反応熱による事故は関心があるかもしれないが、吸着熱による事故を知らない人は多い。
発熱という物は全て事故につながっていくと考えておくことだ。重合熱、酸化熱、中和熱など発熱にはいろいろある。
しかし、この吸着熱という物は案外事故の原因と知っている人は少ないのが現状だ。
しかし、繰り返し起こっている事故のパターンだ。
1976年3月9日姫路の企業で臭いのある物質を貯蔵するタンクで爆発事故が起きている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200109.html
臭いを取り去るため吸着性物質を使っていたところ、吸着熱が発火点を超えタンクが爆発した事故だ。
400度を超える温度まで、吸着熱で温度が上がっていたという。
1992年9月19日に千葉県茂原市にある工場で同様な事故が起きている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000089.html
廃液タンクで臭いを除去するため吸着性物質を使っていたときに起きた事故だ。この時の温度は500度を超えていたという。
同じ企業でその後同じように、また吸着剤による発火事故が起きている。
吸着剤による、発火事故は案外世の中では知られていないが、10~15年毎に爆発などの事故が起きているのは事実だ。
400度から500度くらいに温度が上がるのだから、たいていの物質の発火点を超えている。
2003年9月にも触媒抜き出し中に空気中の水分の吸着により発火事故が起きている
http://www.pref.kanagawa.jp/documents/15002/422124.pdf
触媒への水分吸着にも関心を持って欲しい
知らないと言うことほど恐ろしいものはない。

 

2022年08月04日

発熱による事故--吸着熱や酸化熱

発熱が事故につながると言うことはご存じだろう。とはいえ発熱には色々なパターンがある。
反応熱というと誰でも事故に関係する熱だと理解するが、反応熱以外の発熱となると案外理解していないのが現状だ。
吸着熱などという熱も、事故につながるとは考えていない事故事例が多い。
発熱温度が500度近くもなるのだから、誰でも知っていて欲しいのだが現実ほとんど知られていないから繰り返し事故が起こっている。
私も、この吸着熱に関心を持ったのは今から15年くらい前だ。
下関と言うところにある工場に赴任していたとき吸着性物質を取り扱うプラントを担当していた。
発熱があるとは聞いていたがたいしたことは無いと思っていた。あるとき吸着性物質は産地によりその特性が大きく変わると聞かされた。
いわゆる性能が大きく変わるというのだ。最初は吸着性能だと思っていたが、良く聞くと発熱温度がかなり変わると言うことがわかった。
さらに聞くととんでもない温度迄上がると言うことがわかったのだ。
今回のテーマは、酸化熱なので話を元に戻すと酸化熱も結構な温度になる。数百度にはなるのだ。
酸化熱で知っておいて欲しいのは、油の酸化だ。保温材などに油がしみ込むと酸化されて油の発火点が急激に下がる。
油は酸化されると発火点が下がる性質があるからだ。新品に比べ古くなった油は2/3程度の温度まで発火点は下がる。
発火点が下がれば、保温材を被った配管などはスチームトレースなどが施工されているからその温度で発火する。
スチーム程度の温度で酸化された油に火が付くのだ。空気が存在すれば必ず物は酸化される。
酸化されるときには酸化熱という熱が発生する。その熱を甘く見ると事故になる。
こんな事例がある。定修でタワーのマンホールの開放を行うため、水を流し内部は何回か洗浄された。
だいぶきれいになったと思い、マンホールを開けたところ翌日タワーが真っ赤になっているのが見つかった。
タワー内部に有機物が多く残っていたことにより、マンホールから侵入した空気で有機物が酸化され酸化熱でタワーが赤熱状態になっていたという事故だ。
空気があれば必ず物質は酸化される。その時必ず酸化熱という熱が発生していることを忘れないで欲しい。
定修でもタワーやドラムの中の温度計は活かしておいて欲しい
温度の異常に気づくのに遅れて火災になった事例は多い

 

2022年08月02日

電気火災に思う--赤外線カメラによる設備診断の有効性

電気設備の火災は起こると実に対応がやっかいだ。簡単に水をかけることはできず、大量の黒煙を発生する。
復旧も実に大変だ。ケーブルが焼ければ、一本一本つなぎ復旧していかなければならない。
ケーブルの調達も大変だ。ケーブルには色々仕様があり、大量生産されているわけではない。
一般的な電気火災の原因は「短絡」だ。つまり、ショートが原因で電気ケーブルの被覆や絶縁材に火がつくのだ。
長期間ケーブルを使っていれば、必ず劣化してくる。絶縁材が劣化すればいつか短絡が起こる。
電気設備の火災事故は、だいたい20年から30年くらい経ったときに起きるという事故報告が多い。
電気設備の更新を安易に伸ばすと事故になる。電気設備の更新計画をきちんとたてておかないと、思わぬ事故になる。
長期間の使用による劣化ではなければ、ケーブルなどの製造欠陥や設置時に工事の不手際で傷を付けたり異物を混入させたことが原因だ。
短絡が原因でなければ、接触不良を疑って見ることだ。ケーブルなどは、端子部分をネジで締め付けている。このネジが、時間が経つと緩むことがある。
最初から締め付けが甘いこともある。振動する設備が近くにあればその影響も受ける。
停電日などに、抜き取りで端子台の緩みをきちんと見ておくことだ。
一度も点検したことがないなら、電気火災のリスクは高い。端子の緩みを甘く見ないことだ。
なぜねじが緩むのかというと、気温の変化も影響する。一日の中でも温度差はある。年間を通じて、季節毎に温度も違う。
端子部は金属でできているから、温度が変化すれば必ず伸び縮みする。この伸縮で端子台が緩んだりすることがあるのだ。
昔は、定期的に増し締めを行っていたが、最近は赤外線カメラで端子部を見れば接触不良部は発熱しているので早期に発見することができる。
設備診断技術は進化している。診断技術やいい道具を、うまく使っていくことが事故防止につながる。

 

2022年07月29日

教育と訓練について--教育はコストか投資か

教育と訓練について書かれた今から約40年前の論文を読んだことがある。
出典は忘れたので紹介できないが、こんなことが書いてあったのを覚えている
1973年(昭和48年)に日本で化学プラントの事故が多発したときに書かれた論文だ。
当時、事故や災害が起きるのは、企業の教育や訓練に問題があるのでは無いかということが論議されていた。
今でも、当てはまる話題が書き綴られているので紹介したい。
最初の論議は、企業での教育は、本業務の一部なのか、余分な間接業務なのかだ。教育の位置づけに関する、根本に関わるところだ。
現在でも、この辺が曖昧にされているところに事故の芽が潜んでいるような気がする。
2番目の論議は、教育の主管は人事部門かだ。主管とは、責任を持って総合的に旗振りをするところだ。
責任とは、経営陣からお金を取ってくることも含めてだ。
いまや、各部門毎に教育の責任が振り分けられるものの、金銭的な裏付けは何も無く各部門の細々とした教育予算でなんとかやりくりされているのが実情では無いか
教育はコストだ。コストの切りつめがきびしいなか、製造や技術部門単独では教育の予算取りは難しい。
会社の中で教育の旗振り役がいなくなってきているところにも、最近の事故の芽があるような気がする。
誰が人を責任を持って育てるのか、企業の中でだんだん曖昧になってきているような気がする。
人は時間が経てば勝手に育つわけでは無い。
経験だけで育てようと思っても、今や失敗をあまり体験できない時代になってきている時代だ。
人を取り巻くリスクは消費税が上がるがごとくどんどん増えてきているのに、企業として人に知恵をつけることを怠っては事故は防げ無い。
教育は時間がかかる。少しずつでもいいから、こつこつと積み上げていくことだ。ちりも積もれば山となる。
教育訓練に手を抜かないことだ。時間もお金もかけることだ

 

2022年07月25日

暑くなると起こってくる事故-過酸化物事故

季節によって起こる事故のパターンがある
夏、温度が上がれば気温は上がる。化学物質は、温度が上がると反応を始めるのが一般的だ
つまり夏になると温度上昇で事故が起きやすくなる
温度に敏感な物質の一つに過酸化物というのがある
反応開始剤や、塗料の硬化剤などに使われる
少ない量で使われることから、あまり危険と感じず使われている事例が多い
過酸化物起こった最大の事故は、爆発で9人の人が命を落としている。とんでもない爆発エネルギーがある
1990年5月に起きた事故だ。http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200059.html
高純度の過酸化物を小分けしていたときに起きた爆発事故だ
わずかに含まれていたメタノール蒸気に着火爆発した事故だ
こんな事故もある
タンクに過酸化物を入れたものの、時間がかかり過酸化物の温度が計画よりも上がっていた
更にタンク内には冷却コイルはあったものの、上から下まで完全に冷却出来るようにはなっていなかった
冷却コイルよりはみ出した、過酸化物は冷えず温度が上がっていた
更に本来は、数日以内に消費されるはずが、試運転計画が遅れた
タンク内に、規定の温度を超える状態で保管されていた有機過酸化物が異常反応を始め事故になったのだ
https://www.asahi.com/articles/ASK7W42FFK7WUDCB00D.html
この企業では、2012年にも他の工場で有機過酸化物の爆発死亡事故が起きている

有機過酸化物を甘く見ていた事故事例だ
とにかく、有機過酸化物は冷やさなければ事故になる
種類によっては、屋外に置いて外気温程度で反応を始めるものもある
自分の工場で有機過酸化物が使われていないか検証して欲しい
有機過酸化物を甘く見ないことだ

 

2022年07月23日

安全文化を醸成することの大切さ--生産優先で起こる悲劇

生産優先の考え方が先行してしまうと思わぬ重大事故が起きるの
過去多くの事故がそれを教えてくれている
事故が起こりやすいのは、休日や夜間だと言われる
管理体制が甘くなる時だからだ。休日なら、管理者は出勤していない
交代勤務職場であれば、交代の責任者に権限がゆだねられることになる
今でこそ携帯などで簡単に連絡がつくが、昔は移動していればそう簡単には管理者と連絡がつかなかった
生産優先が引き起こした重大事故を紹介する
大阪で起こった、食品用油を製造する工場で起こった事故だ。死者8人を出す重大事故だ
事故の流れはこうだ。工場で食品用の油を抽出する装置が故障した
装置内は、ノルマルヘキサンという可燃物を取り合っていた
マニュアルでは、装置内に人が入り点検するには24時間換気をすると定められていた
ところが、数時間パージをしただけで装置内に人を入れてしまった
しかも、ガス検も実施せず人を装置内に入れ、作業を始めたのだ
まだ、装置内には可燃性の蒸気が蔓延していた
着火源は不明だが、可燃性蒸気に着火し大爆発を起こしたのだ
なぜ、こんなルール無視をしたかというと、当時この工場は稼働率が高くフル生産だったという
おまけに、チョコレート用の製品を製造していた。クリスマスを直前に控えて、工場はフル生産だった
たぶん、現場の管理職は少しでも生産を停めたくはないという思いがあったのだろう
1991/12/22日、日曜日の午後に事故は起こった。以下のURLで事故の概要がわかる
https://gcoe.tus-fire.com/archive_cms/kobayashi-k/cms/wp-content/uploads/2010/02/3ea56a8dae51cb3a9f18f3f5b77a24f3.pdf
国からはこんな通達も出ている https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-32/hor1-32-14-1-0.htm
安全文化はそう簡単に造り出されるものでは無い
企業トップがリーダーシップを取り、こつこつと作り上げていく必要がある

 

2022年07月21日

実験室解体中の爆発事故-休日夜間の工事管理体制は甘くなる

まだ企業に勤めていたときの研究所の解体工事での事故の経験だ
当時は、安全担当の仕事をしていていた
工事担当者から突然電話がかかってきた。工場に付属する研究部門の実験室を解体していたら突然爆発が起こったというのだ
解体する実験室は、今まで色々な化学薬品を使用して実験を続けていた場所だ
事故当日は、実験室の中の廃液を処理する流し台を解体していた
午前中、流し台の周りの板を剥がしていたところ薬品臭がした
作業員は危険だと思い、解体作業を停止した
しばらくして、薬品臭が消えた。工事に立ち会っていた研究所の担当者に工事を再開しても良いかと確認した
工事は再開してOKとの連絡を受け、再び工事を確認していたところ爆発が起こった
ちょうど、実験台周りの板を剥がしていて、電動工具で切断しようとしていたときに爆発は起きた
この研究所では、長年塩酸、硝酸、過塩素酸などなどの薬液を使って実験してきた

実験で残った液は、今回爆発した廃液処理流し台で処分してきた
長い間薬液を処理してきたので、飛び散っていた薬液が周辺の壁にしみ込んでいた
壁の中では、多くの薬液の混合により、副生物ができていた
この副生物は、衝撃を与えると爆発する物質だったが、研究所の人達はそれに気づいていなかった
結果として、撤去工事で流し台の周辺の板を工具で切断していた時に衝撃エネルギーで爆発が起こってしまったのだ
工事は、研究所で作業しない休日に行われていた
本来、工事には研究所側の管理者が立ち会うことになっていたが。立ち会っていなかった
代わりに、経験があまりない若手研究者が立ち会っていた
結果として、異臭がしていたのに事故を未然にに防ぐことができなかった
今回の事故を見ても、休日や夜間の工事は管理体制が甘くなる
多くの重大事故は、休日や夜間に起こる
休日や夜間の工事の安全管理をおろそかにしないで欲しい

 

2022年07月19日

粉塵爆発に思う--送風機の点検管理の大切さ

昨年の5月にこんな粉塵爆発が起こった
https://www.youtube.com/watch?v=i9D-3DJ-uRU
亜鉛の粉を取り扱う装置を起動していたとき爆発が起きたという
粉末に風を送る送風機で異音がして、しばらくして爆発したという
粉という物は着火源があれば簡単に火がつき、燃えるでは無く爆発することもある
亜鉛は金属だから燃えないと思う人がいるかもしれないが、金属でも条件さえ整えば燃えるのだ
粉になると空気と触れる表面積がどんどん増える。細かくなればなるほど、表面積と増えていく
当然火がつけば、表面積が多いのだから爆発的に燃焼する
http://www.bsb-systems.jp/page0136.html
今回の着火源は、異音がしたというのであれば摩擦熱の可能性もある
ファンの内部の羽根は金属でできている。羽根とファン本体の金属と接触すれば摩擦が起こる
もう一つは、金属と擦れ合えば金属火花も出る。金属火花も着火源だ
過去にも、ファンの摩擦熱で火災が起きている事例も多い
今回この事故の調査報告書が企業から公開されていた
https://www.sakai-chem.co.jp/jp/pdf/pr220107_3.pdf
https://www.sakai-chem.co.jp/jp/pdf/pr220107_2.pdf
原因は、ファンに粉塵がついていたことで、起動したとき回転軸のバランスが崩れたことだ
この結果ファンにつながるシャフトのベアリングカバーに無理な力が加わり固定部が割れたことだ
ベアリング固定がなくなったことでシャフトは激しく振動し、ファン本体部の改修カバーとシャフトが接触した
発火点を超える高温の金属粉が飛び散り、着火源となったというのだ
ファンで異音がしたら、無理に回さないことだ
できれば、定期的に点検をして欲しい
何十年も点検していなければ事故になると考えて欲しい

 

2022年07月17日

教育と訓練という言葉の違い--訓練の大切さ

教育訓練という言葉がある。何気なく使われる言葉だが、一体の用語ではない。
「教育」と「訓練」とは違う。
人間の体は、頭の部分と体の部分でできている
教育は「頭」の部分だ。「訓練」は体の部分だ
知識などは、頭の部分に蓄えられる。頭の中に蓄えられた「知識」はいざという時使えてこそ価値がある
ところが、人間の構造は、頭でわかっていても、いざという時、行動に移せないというのが一般的だ
だから、訓練が必要となる。いざという時、頭の中に蓄えた知識が行動に移せるかを試すのが訓練だ
世の中の人は、教育訓練という言葉を正しく理解できてない
教育と訓練は別物と理解していないからだ
今回、元国家元首が銃撃された
一回目の発砲では、弾は当たらなかった
かなりの、音がした
訓練では、たぶん元国家元首を守るには皆が覆い被さり、しかも元首の姿勢を低くして被弾しにくい姿勢を取らせると教えられたはずだ
でも訓練通りには行動は移せなかった
化学プラントの災害も同じだ。頭でわかっていても訓練をしていなければ、行動に移せるという保障は無い
昨今、色々な仕事が増えて、実地訓練の時間は削減されている
そうは言っても、実地訓練はいざという時に格段の効果はある
訓練はいざという時の効果的な保険だ
訓練に手を抜かないで欲しい

 

2022年07月15日

設備の種類毎に事故のパターンがある--タンクの凸や凹む事故

タンク事故を見て見ると多いのがタンク凸(破裂)やタンクが凹む事故だ
この事故は繰り返し繰り返し起こっている
タンクの凸やタンクが凹むという事故の教育は案外されているようでされてはいない
たかがタンクと思っている人が多いからだ
反応器など爆発する恐れのある機器については、しっかりと教育される。危険性が高いからだ
ところがタンクとなると、教育すらされないいないのが実情だ 爆発しないから大丈夫という思いがあるからだ
だから多くの企業でタンクの破裂や凹み事故が頻発する
背景には、なぜ事故が起こるのかが情報があまり公開されていないからだ
一企業の中でこの手の事故が起こる頻度は少ない
だから、多くの事故の教訓を一企業で持っているわけではない
業界単位で、情報の共有化が必要だ
そうはいっても、業界が事故情報を整理して持っているわけでは無い
日付順に情報は持っているのかも知れないが、設備の種類毎にきちんと整理しているわけではないのだろう
そこに難しさがある
私も、知っている情報をできる限り公開している
ブログでも公開している
http://handa.jpn.org/1/posts/post589.html
http://handa.jpn.org/1/posts/post588.html
http://handa.jpn.org/1/posts/post514.html
http://handa.jpn.org/1/posts/post478.html

半田化学プラント安全研究所のブログを有効に活用して欲しい

 

2022年07月13日

HAZOPをやる前に知っておくべきこと 機器の種類毎に起こる事故のパターン

HAZOPという安全性評価手法がある。「ズレ」をキーワードにして事故が起こるシナリオを考えるのだ
流量が減ったとか増えたとか、正常運転からのズレでどんな危険なことが起こるのかを考えるのだ
HAZOPを教える機会があるときに、こんなことを皆さんに言っている
まず、HAZOPの手法を習う前に、徹底的に機械の種類毎に起こる事故のパターンを身につけて欲しい
企業にも、HAZOPを導入するなら機器の種類毎に事故のパターンを書き出した一覧表をまず作成して欲しいとアドバイスしている
やみくもにHAZOPをやるのではなく、機器毎に着眼点を養って欲しいと入っているのだ
なぜならば、過去の事故事例から機器の種類毎に事故のパターンはわかっている
同じような事故が世の中で繰り返し起こるのだから、機器の種類毎に事故のシナリオパターンを理解させて欲しいのだ
例えば、ポンプを例に取ろう
ポンプの吸入側で流れ無しと言えば、空引きがおこる。時間が経てば、逆流が起こり事故につながるシナリオがある
ポンプの吐出側で流れ無しと言えば、締め切り運転事故の事例がある。短時間で液温が上昇する
仕切り板を抜くのを忘れていたという事例も多い
例えばこんな事故だ。液温上昇で、メカニカルシールが壊れ可燃物が漏洩着火というシナリオになる
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/188/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
流体が温度に敏感な過酸化物であれば、温度増というズレにより爆発か破裂事故になる
ポンプの吐出側弁を閉めて、吸入側に戻す循環運転を考えてみよう。液をグルグル回しにすると、やはり少しずつ液温が上がっている
結果として、過酸化物のような流体なら温度増というズレでやはり、爆発か破裂事故をこす
こんな事故事例がある。循環運転をすると温度が上昇するという知識が不足していたようだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200051.html
ポンプの種類によっても事故のパターンがあるので資料を集め整理しておくことだ
往復動ポンプは、締め切り運転をするとものすごく高圧となる。HAZOP的には出口側流れ無しのケースだ
ポンプ出口側につながる機器の耐圧が無ければ、機器が破裂する。ガラス式ローターメーターやサイトグラスはいっぺんで破壊される
対策としては安全弁を設置することになる
キャンドポンプは、内部で冷却用パイプが詰まり爆発して事例もある  http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0021002.html
構造原理まで見抜けないとHAZOP的には事故は防ぐのは難しい事例だ
HAZOPをやる前に機器毎に起こる事故のパターンを徹底的に身につけて欲しい

 

2022年07月11日

物質危険性-希釈熱という化学用語と事故事例を知っているだろうか?

希釈熱という物を知っているだろうか?。物質を希釈する時に発生する熱のことだ
硫酸や塩酸を水で薄める時などに熱が発生する。それが、希釈熱だ
苛性ソーダでも、希釈する時に発熱現象が起こる
熱という物は、事故につながる。発熱が引き金になり、事故という形になっていくのだ
重合反応などの「反応熱」というと、かなり発熱事故を知っている人は多い
しかし、「希釈熱」で事故が起こるとは考えている人は少ないから事故がたまに起こる
熱の発生のメカニズムにかかわらず、熱は事故の要因の一つとなる
今回、希釈熱の事故を紹介しておく。1998/11/9に福岡県の化学会社で起こった事故だ
過酸化物を含む硫酸廃液タンクで起きた事故だ
あるとき硫酸濃度が大きく異なる製品を造り始めた。これにより発生した廃液が廃液タンクに入ったことにより硫酸の濃度差が生じた
濃度の異なる廃酸が、廃液タンク内で混ざあうことによりり希釈熱が発生して、タンク内の温度が上昇した
廃液には、有機過酸化物という温度上昇で反応を始める有機過酸化物が含まれていたためタンク内で反応が始まった
有機過酸化物は温度の上昇で分解反応を始め、大量のガスがタンク内で発生した
タンクは圧力に耐えられず破裂して何らかの着火源で爆発した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200070.html
硫酸や塩酸など酸を扱っている職場は多いはずだ。無機物で可燃物では無いからと火災や爆発を想定していないと思わぬ事故となる
希釈熱について勉強して欲しい
こんな事故もある。冷却水が漏れて反応器内の発煙硫酸の希釈熱で起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000097.html
今後も、過去の事故から得られた貴重な教訓はブログで紹介していきたい

 

2022年07月09日

高圧ガス認定制度の変遷と2022年の法改正

高圧ガス認定制度というのがある 安全に関して安全文化や技術基盤がしっかりしている企業にインセンティブを与えようという制度だ
この制度は、海外との競争により日本の経済力が落ち始めた頃に運用が始まった
高圧ガス取締法のもと、長期連続運転が可能になったのは1987年からだ 今から35年前のことだ
従来1年毎に定期検査が必要だったのが、2年に延長された
そうは言っても、それに値する技術や管理体制のある企業に限られた。 これを、高圧ガス認定制度という
その後、約10年が経過した1997年に高圧ガス取締法が高圧ガス保安法と名称が変わる
1990年代は、バブルがはじけ経済は落ち込み、グロ-バル化が進んでいた時代だ
国が企業を取り締まるという体制から、企業自らが自主的な保安をおこうなうという世の中に変わった
がんじがらめの規制では、国際競争力を維持していくことが難しくなってきたという背景もある
確か1999年だったと思うが、2年から4年の長期連続運転が出来ることが可能になった。
2003~2007年頃認定取り消しを受けた企業が続発した。高圧ガス認定事業所で検査を未実施などの不祥事が多発し、2005年に認定要件が見直されている
4年連続運転が可能になって約20年経った、2017年から高圧ガスのスーパー認定制度というものが運用し始めた
最新の技術や高度な人材を育成して安全・安定運転が出来る能力を持った企業を認定する制度だ
この認定を受けることにより企業は最長8年という長期連続運転が可能というメリットを得ることが出来る
長期連続運転が可能になると言うことは、修繕費が大幅に削減でき企業にとって大きなメリットが発生する。
検査についても独自のものが可能となればコスト面でも有益となる。許可を得る範囲が減ると言うことは申請に費やす時間が減り人的コストが節約となる
そうは言っても、この制度を利用するには企業としていわゆる「高度な保安技術」を持っていることを証明しなければならない。企業はソフト、ハードの両面で国の要求条件を満たす必要がある。企業規模が大きくないと、かなりハードルがある制度だ。
2022年の通常国会で高圧ガス保安法が改正案が承認された。この認定制度も、世の中のニーズに対応して少し変わってくる
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220304004/20220304004.html
法改正前に経済産業省にコンサルタント会社からこのような石油や化学企業の事故や取り巻く課題を解析したレポートが出ている
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000284.pdf
実に参考になる情報だ。一度目を通す価値はある

 

2022年07月07日

HAZOP-連続プロセス系とバッチ系の違い--手順書HAZOP

石油精製、石油化学、化学物質を取り扱う化学工場では安全性評価の手段としてHAZOPの活用が求められている
HAZOPというのは、ズレが事故の要因になるという考え方から生まれた安全性評価手法だ
HAZOPは、もともと連続プロセスで始まった手法だ。では、バッチプロセスでも使える手法があるかといえばある
手順HAZOP又は手順書HAZOPなどと呼ばれている。バッチプロセスでは、運転手順書にしたがって生産が行われている
つまり、手順書からずれたことが起こったり、行われたりすると事故につながると考え、手順書からずれたらどうなるかを考えるのだ
連続プロセスHAZOPは、P&IDフローシートに書かれた配管を一つずつ順番にそこで起こるズレと影響を確認している
連続プロセスというのは、機械が主体となりプラントを自動制御している。したがって、ズレが起こるのは機械が故障したときだ
ポンプが壊れたり、計器が壊れたり、自動制御弁が故障したりするズレが事故を引き起こす
したがって機械の故障を重点的に、ズレと捉えて解析すれば、事故を未然に防げる
バッチプロセスは、配管一本一本をチェックしていくのではなく、手順書に書かれた項目を、1行1行順番にチェックしていくのだ
手順書には、製造手順が順番に書かれている。例えば、1つ目のステップでは、原料ポンプ1を起動する。ポンプ吐出弁を開けて反応器へ5トン送り込む
2つ目のステップでは、原料ポンプ2を起動する。ポンプ吐出弁を開けて反応器へ3トン送り込むというように手順が書かれていたとしよう
手順を間違えるとズレはこんな形で現れる
例えばNOだ。最初の手順では、ポンプ1を起動しないというずれもある。ポンプは起動したが、弁の操作を「忘れる」ズレもある
LESSなら、弁の操作が「不十分」又は投入量が不足した。MOREなら、弁を「開けすぎる」又は投入量が多すぎた
REVERSEならポンプを停めるとき液を逆流させたなどだ。otherであれば、「違う他のポンプの弁を操作した」などだ
2つ目のステップも、同様なズレが起こるはずだ。ポンプの起動忘れや、弁の開け忘れ、投入量の間違いなどだ
これらのズレに気づく警報や、安全装置があるのかまずチェックする。さらに、ズレでどんな悪いことが起こるのかも連続系HAZOPのように考える
更に、バッチ系HAZOPのガイドワードには、時間的な要素を追加する必要がある
バッチ系では手順が、時間通りに進むかも大切な要素となるからだ。例えば、操作するタイミングが、「速すぎた」、又は「遅すぎた」などだ。
所定の時間より、操作時間が短かかった、又は長すぎたなどだ。時間的要素も考慮する必要がある
つまり、バッチ系では、時間的なタイミングのずれも追加して考える必要がある
連続系で使う7つのガイドワードに加えて、時間的なズレのガイドワードを併用して使うのだ

 

2022年07月05日

私の勤めていた企業でHAZOPを始めるきっかけとなった事故

HAZOPというのは1970年代にイギリスに始まった安全性評価の手法だ
ズレ、すなわち変化に着目して事故が起こらないかをチェックする手法だ
日本に伝わったのは、10年後の1980年代だ
1980年代というのは、今から40年以上も前の話だ
1970年代というのは事故が多発した。だから、事故の原因と対策を徹底的に研究した
ところが、事故から学んだのは、事故が起きてから対策を考えても遅いと気づいたのがこの時代だ
事故が起こるまえに、事故が起こるシナリオを考え事故の未然防止を図りたいと考え始めたのだ
そうは言っても、事故が起こるシナリオを考えるのはそう容易ではない
1980年代日本に伝来したのが、HAZOPだ。事故は、「ズレ」が原因で起こるという概念だ
温度や圧力が正常範囲から、逸脱すれば。事故につながるということに着目するのだ
温度、圧力というパラメーターの変化はズレだ。安全安定運転にとっては好ましくないことだ
このズレが、事故につながる可能性がある
ならば、このズレを基点に、どんな悪い過去とが起こるかというシナリオを想定し
それに、今ある安全対策で対応できるのかを考えてみようというのがHAZOPだ
反応器で温度が上昇すれば事故につながる。ところが、温度上昇を検知して警報を出す道具が設置されていなければ異常には気づかない
異常に気づく道具があるか、まずチェックするのがHAZOPだ。警報が無いのに人は異常には気づかないからだ
私の勤めていた会社でこの事故がきっかけで、HAZOPを始めるようになった。こんな事故だ。1983/3/5の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000148.html
窒素シールもあった廃液タンクの事故だ。質素シールがしてあれば誰も爆発が起こるとは考えない
ところが、廃液量が多く、しかも廃液から大量の酸素が発生し爆発混合気ができて爆発した事故だ
酸素は、廃液中に含まれる過酸化物である「過酸化水素」とタンク内のアルカリ液とで発生した
過酸化水素は、アルカリだと、酸素を発生するという混触危険性を理解していなかったのだ
たかが廃液タンクだと思わないことだ
あなたは、この事故を、HAZOPで見抜けるか検証して欲しい
かなり、事故の予見性を見抜くのは難しい
安全性評価をすれば事故を防げるわけではない。見抜には豊富な事故事例を知っておく必要がある
安全性評価はそんな甘い物では無いということだ

 

2022年07月03日

リスクアセスメントの歴史を振り返ってみて

リスクアセスメントと言う言葉がある。今の時代当たり前のように使われている言葉だ
化学企業に今から半世紀前に就職したときは,リスクという言葉は使っていなかった気がする
新しい設備を作る際には、企業が定めた「安全性評価システム」に則り危険なことを明らかにして、それを危険で無い状態にできるかを論議した
研究開発の段階、事業化前の事前検討時、事業化決定後設備の基本設計段階、詳細設計段階、装置完成後の試運転前段階などで安全を確認した
試験管ベースから、装置が出来上がるまで、検討項目が見える化されていて安全性の評価をした記憶がある
私が、化学プラントの設計や保全に実務として携わっていたのは、1970年代~1980年代だ
この頃は、まだリスクという言葉ではなく「安全」ということばが主流だった気がする
1980年代頃から、HAZOPという安全性評価システムを使い始めたが、プロセス安全性評価というように「安全性評価」という言葉だった
リスクアセスメントの歴史を調べてみると、発祥はイギリスで、1991年にリスクとは、「発生確率」と「影響度」の産物と定義している
https://seisangenba.com/work-risk-assessment/
日本に持ち込まれたのは、1999年とある。 労働安全衛生マネージメントシステムに関する指針が出された年だ
http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-58-1-0.htm
安全をPDCAを回しシステマチックに管理しようとする試みが始まった頃だ。日本でもISOの認証取得なども始まった頃だ
2006年4月1日に改正され、労働安全衛生法に危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)の実施が努力義務規定として設けられた
リスクアセスメントの実施とその結果に基づき必要な措置を講ずることが定められたのだ
化学企業などでは、法の施行前よりリスクアセスメントの社内教育が始まり、作業工程でのアセスメントの評価が進んでいた
その後、国際的な安全の定義については2014年、ISO/IEC GUIDE 51:2014で「許容できないリスクがないこと」と定義されるようになった
2016年の法改正で、指定された化学物質(平成28年6月1日当時640種類~SDS交付義務もあり)の製造・取り扱う事業場に対して、リスクアセスメントの実施が義務化された。
労働災害のみならず、化学物質による危険性や有害性のリスク評価も進んできたと言える
2020年代に入った今では、2010年代に行ったリスククアセスメント結果を、再評価を行い危険源の漏れや評価の妥当性を検証している企業もある
リスク評価の進化が進んでいると言える。一度リスクを評価したらそれで終わりは無い
HAZOPのような「ずれ」の概念も織り込んでいく必要がある
1回目の評価では、化学物質を取り扱う人(管理者、担当者)も変わっているかもしれない。取扱量、製造工程や設備の変化もあるはずだ
時間が経ってから、2回。3回とリスクアセスメントの深掘りをして欲しい

 

2022年07月01日

静電気ーー噴出帯電

化学プラントで静電気はやっかいなものだ
着火源の一つだからだ。ピッいう音で,一瞬火花が出れば、簡単に着火する
しつこいくらいにアースを取っておかないと静電気が発生する
脱液するときには、とにかく流速を早めないことだ
当たり前のように言われている、流速1m以下にすることだ
バルブはゆっくりと、流し出す必要がある。しぶきが、ほとばしるようならもう完全に静電気ができている
液の中に気泡があれば、やはり静電気が発生していると考えなくてはならない
放出する配管の太さより、出ていく液の太さがちょっと細めくらいが安心な領域だ
もう一つ気おつけなければいけないのは、噴出帯電だ
導電性の無い流体がホースやノズルから勢いよく噴き出すとやはり静電気が発生する
つまり、噴出して周りの空気をかき乱すことで周辺に静電気が発生する
蒸気を噴出させても数千ボルトの静電気は発生する
スチームパージをしていて放電したこともある
危ないのは、ゴムホースの先端に金属製のノズルを付けたホースを使うと危ない
ゴムは電気を通さないから電気は逃げていかないのだ
ホースの先端に付けた金属製のノズルにアースを取ってくれればいいのだがほとんどの人はアースは取らない
そうすると、ホースから蒸気を出し始めると蒸気の出た周りの空気は蒸気の噴出で空気が帯電する
その帯電した空気から、金属ノズルに向かって放電が起こる
これが噴出帯電による現象だ
近くに可燃性ガスなどが漏れていれば一瞬で火がつく
この噴出帯電という現象は案外知られていない
安全体験などで体感できる機会があれば是非体験してみて欲しい
静電気に関する情報源としてこんなものがあるので紹介しておく
https://xn--1nrt08ch33ahravo.com/basic-static-electricity/manual/

 

2022年06月27日

安全はコストか投資か

経営者の姿勢を見るとき安全への関与度を見抜く必要がある
経営というのは所詮利益が物差しになる。株主がいる以上、利益は一つのバロメーターだ
安全にはお金がかかる。そこをどう経営者が理解しているかだ。安全にはお金が必要だ 誰でもそれはわかっている
ではいくらお金をかければいいのだろうか 目安があるのだろうか
保険というのがある 火災保険なら、火災が起きる確率はわかっている 
だから保険会社は、確率から計算して損をしない程度の保険料率を定める
自賠責という交通事故の保険も同じだ 自動車事故が起きる確率はわかっているからだ
化学プラントも火災や爆発事故の発生確率は長い歴史の間でわかっている
だから保険会社もそれをベースに火災保険料を策定する
平均値としてのデーターはわかっているが、企業の安全管理レベルにより事故の発生確率は、1桁~2桁くらいずれはあるはずだ
事故をよく起こす企業もある めったに事故を起こさない企業もある
それは、企業の安全基盤や安全風土に関係する
では、事故を防止する為にいくらお金をかければいいのかというとそう簡単には算出できない
今までかけてきたお金を基準にすればコストという考え方になる
事故を起こさない先行投資という考えにたてばこれは投資になる
企業利益の何%を投資すれば常に事故を防げるのかというとそれも答えは無い
人に投資すればいいわけでもない 安全設備などハード的な投資も必要だ
ソフトとハードの投資比率も難しい
人に技術有りだから、人すなわちソフトにも投資しないと事故を防ぐのは難しい
個人的考え方だが、消費税の利率程度は必要かもしれない。仕事をしている中で常に最低約1割程度安全のことを考えておく必要があるという意味だ
安全への投資はけっして減ることは無いはずだ 技術は高度化するし、人への負担も増えるからだ
企業はしっかりと収益を得て安全にも投資して欲しい
経営数値で安全にかけるお金もしっかり見て欲しい
安全にかけているお金は、サステナビリテイ(CSR、RC)報告書ではESGデーターとして公表されるべき数値だと考えている

 

2022年06月24日

乾燥設備や乾燥工程で起こる事故--乾燥工程にはリスクが存在する

製造工程には色々なリスクがある。反応工程だとしっかりリスクアセスメントはしてくれるが、乾燥工程はそれほど危険視されない
だから、乾燥工程で火災や爆発事故がかなりの頻度で起こる。事故の原因は、大きく分けて4つだ
一つ目は「乾燥させる物質」そのものに原因がある。もともと、熱を加えると燃えやすかったり、爆発しやすい性質を持っている場合だ
ゴムの乾燥作業などでよく火災が起こる。元々ゴムは燃えやすい。
着火点未満で、乾燥させていても装置内にゴムの破片などが残ってしまうと事故になる
残留したゴムは、長期間過熱されると炭化して着火点が下がるからだ。結果として、劣化したゴムの破片が自然発火して火災になる事例は多い
効率を考えると誰でも加熱温度は高くしたい。しかし温度を高くすれば燃えやすくなる 温度設定に慎重さを欠くと事故になる
事故防止策は、装置内の残留物である堆積物の清掃を定期的に行うことだ。燃える物が無ければ、燃焼の三要素が成り立たないからだ
熱で反応しやすい物質を乾燥していて起きた爆発事故を紹介する。きっかけは、乾燥機にある動く回転軸のグランドパッキンを強くしめたことだ
パッキンドを強く締め付ければ、動きにくくなるから当然、そこで摩擦熱が発生する この摩擦熱で乾燥していた物質が発火した事故だ
危険物第5類の自己分解性物質を乾燥していたときに起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000123.html
感光材による事故事例の報告書があるのでこれも紹介しておく https://www.toyogosei.co.jp/news/2008/07/2.html
二つ目は、「粉塵」だ。可燃性固体などを乾燥している時に起こる事故だ。固体が砕けると粉塵が発生する 粉塵濃度が高まると爆発が起こる
製薬会社で錠剤を製造するときなどで起こっているパターンだ 錠剤の破片が粉塵となって起こる事故だ 着火源は静電気が多い
三つ目は、「熱源」が原因だ。LPガスや、天然ガスを燃やして加熱する装置は多い。火が着いていても、突然火が消えることがある
火が消えている状態で、ガスはそのまま流れ続け、しばらくして何かの火種で再点火し爆発する事故も多い
それと、温度調節器が壊れたことで過熱され事故が起こるケースも多い。たいていは、設備の老朽化を放置していたからだ
温度計の設置位置が悪く正確に温度が計測されず、過熱気味になっていて事故が起こることもある
温度計の位置の設計ミスだ  電熱器過熱では、送風が停まると一部が異常過熱になり事故にもなる
四つ目は、乾燥させて「取り除きたい物質」が原因だ  加熱乾燥の目的は、付着している溶媒などを乾燥させるケースが多い
たとえば、塗装した部品などを乾燥すれば、シンナーガスなどが発生する
シンナーは可燃性で、一定濃度になれば爆発性ガスとなる。熱源に、電気ヒーターなどを使っていれば、故障で火花などが出れば火災や爆発になる
シンナー、ベンゼン、トルエン、アルコールなどの有機溶剤が使われた部品を乾燥することは多い。溶媒として使われることが多いからだ
製薬会社では、錠剤に含まれているアルコールなどを乾燥させているときの火災事例が多い
乾燥設備の電気設備は、防爆で設計することも考えて欲しい 換気と濃度管理も事故防止のキーワードだ
乾燥という名前のつく設備を甘く見ないで欲しい

 

2022年06月22日

2021年の消防事故統計が発表されていた

消防庁から、2021のコンビナート地区での事故統計と危険物施設での事故統計実績が発表された。
毎年5月末に発表されているレポートだ。
コンビナートでの事故統計だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/454b64419c90e3ceddc24189a42ef1ff45727a40.pdf
ここ数年は300件/年の事故件数だ。2019年(令和1)から30件ほど件数が減っているが、これは届出の範囲が変わっているからだ
2018年までは、軽微な漏洩でも届出が必要だった。かに泡程度の漏洩でもだ
しかし、人身にも影響を与えない「かに泡」程度の漏洩は事故件数には含めないと考え方を変えたのだ
ここに、情報がある
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/koatsu_gas/pdf/013_02_02.pdf
PDFの頁数で、17/25頁に図8という円グラフがある。事故の要因だが、腐食疲労等劣化が少しずつ例年より増えている
いわゆる設備の老朽化が進んでいると言うことだろう
21/25から主要事故の記述がある。
事故の事実を伝えるだけではなく、事故からの教訓が欲しいところだ
せめて、リスクアセスメント的なコメントは書いて欲しい。こんなリスクアセスメントが抜けていたとかだ
こちらは危険物取り扱い施設での事故概要だ
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/95af717506fe8b5a6b79f4800adf6589ab44dfa4.pdf
昨年同様、危険物施設事故件数は横ばいだ
PDFの頁数で、29/31頁から、2021年(令和3年)に起きた主要事故の概要が記載されている
参考にするのも良いだろう
こんな情報もある。行政機関宛に送られる資料だ。事故事例は写真やイラストもある 対策や効果のコメントもある
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/b24505e04c38d99101dda5c42b7f5f8f36aec676.pdf
PDFの頁数で、68/82頁からイラスト付きの事故事例紹介がある
残念なのは発生日の情報が無いことだ
相変わらず元号で発表している。 グローバル化の中そろそろ考えを変えられないのだろうか
行政文書だからしょうが無いのかも知れないが、せめて表紙の部分だけでも西暦を併記書きすることくらいやって欲しい

 

2022年06月19日

HAZOPは文献を読んだらわかるものでは無い

7/4(月)にWeb方式でHAZOPの講義をする予定になっている。
https://tech-seminar.jp/seminar/2022-07-04-%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%82%84%E5%A4%B1%E6%95%97%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6HAZOP%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E8%AC%9B%E5%BA%A7
コロナ禍でもあり、Web講義だ。約20名ほどが参加申し込みを既にしていてくれる
HAZOPは、安全性評価手法として1980年頃から化学工場では使われ始めた手法だ。使用が開始されてから約40年が経つ。
40年が経過してはいるが、残念ながら日本ではHAZOPだけを主テーマにして取り扱った書籍は発行されてはいない。
安全関係の書籍の一部に安全性評価手法の紹介の一部として取り扱われる程度だ。
書籍だが安全工学会が発行している書籍でHAZOPについて書かれているものがある。
実践安全工学 シリーズ2「プロセス安全の基礎」 出版社は化学工業日報社である。
この分野の執筆者は、高木さんという人である。
毎年安全工学会で開催されるセミナーでも講演がある。興味があるなら聞いてみるとよい。
文献を紹介しておく まず高木さんが書かれている文献だ
非定常HAZOPの進め方-高木伸一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/53/4/53_244/_pdf
HAZOPの有効な適用方法
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/disaster/47.pdf
HAZOPに造形の深い先生で松岡さんという方がいる
ホームページを紹介しておく
http://www.hazop.jp/index.html
そうはいっても、文献を読んだだけでHAZOPと言う手法を使いこなせるわけでは無い
過去のHAZOPで見落とした事例も数多く知っておかないとHAZOPで深掘りできないからだ
まずは、HAZOPとは何かを概念として知ることも大切だ
興味があれば、私の話も聞いてみるのもいいだろう イラストなどを使って考え方や、HAZOPで失敗した事故事例も紹介する
講師紹介割引もある
期限も迫っているので申し込みは早めに!

 

 

2022年06月17日

タンクの地震対策--耐震補強

日本という国は地震は頻繁に来る
日本で最初にコンビナートが地震で被害を受けたのは、新潟大地震だ
今から60年前の出来事だ。製油所のタンクが地震で火災となった
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%9C%B0%E9%9C%87
この地震で多くのことを学んだ タンク周りの防液堤は、ブロックなどでは簡単に壊れてようをなさないことも学んだ
この地震で、液状化という現象も学んだ
防液堤は、ブロック壁ではなく、コンクリートの一体壁が必要だと事故報告書で述べられている
その後、色々な地震が起きた。地震というのは様々だ
1978年には宮城沖地震というのが起きた。仙台で起きた震度5の地震だ。東北の製油所が被害を受けた
1983年には秋田で地震が起きた。M7.7 震度5の日本海中部沖地震が11:59分に発生。地震動のスロッシングによる屋外タンク火災が起こっている
日本海中部地震により発電所の浮き屋根タンクリング火災を経験した
原油タンク浮屋根揺動,摩擦発火.新潟石油共同備蓄石油タンクでスロッシングも経験した。
火力発電所浮屋根シールタンク35000㎘タンクの浮屋根付近から黒煙が発生しリング火災にもなった。
泡消火設備が点検中で作動迄時間がかかり2時間燃え続けた。
2003/9/26には北海道で地震が起き、大きなタンク火災が起こった。大型タンクでは、泡消火設備が能力不足で機能しなかった事例だ
その後の日本各所のコンビナートでは消防能力の強化が図られた
2007/10月には新潟で地震が起こり電力開所の変圧器が火災を起こした。新潟県中越沖地震だ
新潟県中越沖地震で新潟県柏崎市原発のトランスが燃える事故も起こった
現場での地震強度の観測値は、東西方向2,058ガルで設計値834ガルを大きく超えていた。とんでもないガル数だ。
直下型では、とんでもない加速度が生じるといことだ。今までの想定対策を越える衝撃があると言うことだ
2011/3月には千葉県にある石油会社の球形タンクが火災を起こした
地震対策をしていても、とんでもない規模の地震が起こることは否めない
地震対策の限界があると言うことだ

 

2022年06月14日

本社の安全管理部門に求められること

1970年代事故が多発した。この時、問題提起されたのは本社の安全管理機能だ
当時は、工場に付属する安全管理部門が機能すれば事故は起こらないと考えられていた
ところが、工場長の指揮下にある安全管理部門は所詮工場長の指揮を受ける
結果として、やはり工場としては生産優先になる。そこに、事故の芽が出てくる
本来なら、危険なことがあればブレーキをかけるのが工場の安全部門だが、所詮工場長の指揮下であれば生産とのバランスを取ることになる
結果として、工場に帰属する安全部門では事故は防げ無いといういうことがわかったのが1970年代の事故の連鎖だ
行政もこれらを鑑み、企業に本社機構に安全を社長直下で統括する安全管理部門を設置することを求めた
企業をこれを受け、本社に安全管理部門をつくったのが1970年代だ
社長の指揮を受けるというのが、ガバナンスに大きく貢献した
最初のうちはそうそうたるメンバーがいたものの、時代とともに本社の安全管理部門は色あせていった
大きな事故が無ければ、安全管理部門の影は薄れていく
とはいえ工場に任せていれば安全は確保できるわけではない
1970年代行政が本社の安全管理部門に求めたのは、工場が気づいていないリスクや弱みを的確に把握する機能だ
さらに、本社経営陣に人材や資金をタイムリーの捻出させるスキルを本社の安全部門に要求している
本社の安全部門は単に、年間計画をこなすのが仕事ではない
工場が求める必要な人材や資金を最大限捻出する機能を果たすの本社の安全管理部門だ
更に、工場とは違う価値観で工場に潜在するリスクを拾い上げ、工場をガバナンス機能を持つことも求められている
工場の延長線上で考える人ではなく、ゼロベースでリスクを拾い上げられる人が本社に求められている
本社の安全管理部門の機能が、きちんと機能しているか検証して欲しい
工場とは違う価値観で考えられる人も本社は抱えて欲しい
そうは言っても工場が抱える人材や資源は限られている
そこを上手にフォローできる本社スタッフを本社安全部門は抱えて欲しい

 

2022年06月12日

製菓工場火災に思う--火災後の停電が怖いーー非常訓練を怠るな

今年の2月に新潟県にある大手菓子メーカーの工場で火災死亡事故が起こったのを覚えているだろうか
6人の方が、逃げられずに死亡した惨事だ
今回初めて社長が出てきて謝罪したという新聞報道があった
https://www.chunichi.co.jp/article/480879
この席上、調査報告書が出されたとの発表があった
事故報告書は以下のURLから入手できる
https://www.sanko-seika.co.jp/pdf/news20220601_1.pdf
この工場では、過去に何回も小火があったという。1988年7月~2019年11月、8件の火災が確認されている
部分焼が4件、ぼやが4件で、けが人はいなかったという 大きな火災にはならなかったが、事故を予見する兆候はあったと言うことだろう
過去の8件は、ほとんどが煎餅の生産工程で生地を乾燥させる機械に堆積した菓子くずから発火したというという
今回の火災を巡っては一部の従業員が「炭化した菓子のかすから出火した」と証言しているという情報もある
大きな事故が起きないと報道されないが、油が付着したかすなどが原因で起こる自然発火はよく知られた現象だ
自治体の防災関係の、広報にも沢山の情報がある
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/7415/sizenhakka.html
今回の報告書の中に、火災とほぼ同時に停電が起こっているとの記述がある
火災の炎で、機械の上の方にあったケーブルダクト内の高圧ケーブルがショートしたという
結果として、火災後停電が起こり、避難していた人達が非常口をうまく見つけられずに犠牲者が増えたと思われる
報告書の非常口の写真を見ると、防火シャッタの真横に位置する
煙で視界も悪く、更に停電で暗闇の中で、真横に位置する非常口を訓練などで知っていない限りそこから抜け出すことはできなかったのだろう
訓練さえしていれば、助かった命だ
非常訓練の大切さを感じさせる
報告書には書かれていないが、電気ケーブルを通すダクトの材質と経路だ
乾燥設備周りなど、自然発火しやすい設備の周りには、ケーブルダクト通さないのが一般的だ
万一を考えるのだ。材質も不燃性の金属ダクトを選ぶ。今回はどうだったのだろう
安価な樹脂製ケーブルダクトが使われていれば一気に燃えたはずだ
ケーブルダクトのレイアウトにも注意を払って欲しい

 

2022年06月10日

スケールアップで起こる事故--10倍以上のスケールアップで多くの事故が起こっている

スケールアップという言葉がある。
事業を拡大したいと思えば、必ず装置規模は拡大する。化学工場で言えば生産能力を上げることだ
そうは言っても、実験を重ね、商業化に結びつけるのはそうたやすいことではない
試験管ベースでうまく言ったからと言って、生産規模を簡単に増やせるものでは無い。
実験を重ね商業化していくには、スケールアップしていくことになる
試験管ベースでうまくいっても、量を増やせばうまくいくという保障は無い
少しずつ量を増やしながら、中規模の試験設備にたどり着く
商業化するには、更に大きな設備にしていく必要がある
化学反応を伴う物質であれば、反応熱を考慮に入れる必要がある。反応容器を大きくすればするほど、冷えにくくなる
異物の考慮も必要だ。装置を大きくすれば思わぬ異物も入り込んでくる
異物混入の事故事例も多い http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000125.html
混触反応のリスクも増えていく
冷却能力不足も致命的事故になることもある http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200004.html
2007年にアメリカで起きたスケールアップの失敗を紹介する
以下のURLを見て欲しい。英文の報告書とビデオがある
当初は1Lという小型反応器で製造を開始したが、いきなり10m3の反応器にスケールアップしてしまった
何バッチか製造する段階で、温度が異常に上昇することがあったが、それが暴走反応とは気づいていなかった
原因を調査せず漫然と反応器を大型化した失敗事例だ
https://www.csb.gov/t2-laboratories-inc-reactive-chemical-explosion/
スケールアップ比率で考慮すべき数値は、色々な情報から考えるに、一度に10倍を超えてはリスクがある
段階的にスケールアップする必要があると言うことだ
スケールアップに存在するリスクを甘く見ないで欲しい

 

2022年06月08日

タンク表面を直接火気工事して起こる事故

タンクの側板や天板などに直接火気工事などをして爆発事故が起こっている事例は知っているだろうか
タンクの鉄板に直接火を入れれば、火災や爆発などになる事故事例は多数あるのだがこれは案外知られていない
タンクの鉄板は数ミリだ。外側から、溶接などをすればすぐに厚さ数ミリの鉄板を伝って熱がタンク内部に伝わっていく
数分もしないうちに、タンク鉄板の内側は数百度にもなる
タンク鉄板の内側には、何らかの残渣が付着しているはずだ
可燃物を保管するタンクであれば、その残渣は可燃物だ
残渣は暖められれば、すぐにガスを出す。ガスは、可燃性のガスだ
結果として、発生したガスがタンク内に充満してくる
だんだんガスが増えれば、結果としてタンク内のガスは爆発範囲に入るのが一般的だ
爆発範囲に入っていれば、火がつけば爆発する
結果として作業者が爆風で吹き飛ばされて被害に遭う
この手の事故は、10年に一度くらい死亡事故になる
死亡事故にならなくとも、かなりの頻度でこの手の事故は起こっている
鉄板などを外側から加熱すれば、必ず中に伝熱していく
アセエチレンや酸素の溶接であれば。温度は数千度だ。あっという間に、伝熱でタンクなどの内側は数百度になる
数百度という温度は、普通の物質であれば発火点を超えるから火がつくと考えて欲しい
薄い鉄板の外側から火を加えれば、内部は火がつく状態になると考えて欲しい
火を使う工事を甘く見ないで欲しい
溶接の火の粉などは、数千度だ。しばらくして冷めたとしても数百度だ
数百度もあれば、発火点を超えていると常に思って欲しい
火を使う工事を甘く見ないで欲しい

 

2022年06月05日

予備機があれば大丈夫か --HAZOP冗長化

HAZOPで設備を検討すると、信頼性を上げる手段として機器の予備機を持つことが対応策として提言される
確かに、予備のポンプや圧縮機を持てば片方の機器が故障してもトラブルを乗り越えられる確率は高い
ところが、問題はトラブルが起きたときすんなり予備機に切り替えられるかだ
切り替え操作というのは、訓練していなければ間違うこともある
頭ではわかっていてもいざというとき確実に切り替えられるという保障は無い
ヒューマンエラーを考慮しておく必要があるということだ
HAZOPで検討する際には、うまく切り替えられなかったときでも安全が担保するのかを考えて欲しい
うまく切り替えられなかった時には、どんな悪いシナリオになるのかだ
時間的な要素も見て欲しい。切り替えに失敗して数分で事故になるなら、インターロックや機械的な安全対策が必要だ
例えば圧力上昇につながるなら、安全弁は不可欠だ。安全弁があればなんとか対応できる。それがなければ、破裂するかも知れない
温度上昇なら、どう対応するかだ
予備機があるから安全だと考えないで欲しい。切り替えにうまくいかなかったときのトラブルを想定して、それに対する安全策も深掘りして欲しい
こんな事故事例がある
圧縮機の切り替えに失敗して、反応暴走が起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000112.html
次に予備機の管理がどうなっているのかを見て欲しい
予備機は管理が甘くこともある。予備機だからと管理をおろそかにするケースだ
結果として、予備機故に事故になる事例は沢山ある
もともと、振動値が高く、しょうが無く予備機扱いにしていた事例を紹介しておく
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/konbi_soku/2017-083.pdf
色々対策は打ったものの振動値が高くやむを得ず予備機にしていたケースだ
あるとき、運転トラブルで予備機に切り替えたもののやはり振動が多く、しばらくして油が漏れたなどの事故事例も多い
予備機とて、正機器並みの管理が必要だ。予備機だからと甘く見ないで欲しい。管理の基準は同じにしなければ、いつか事故は起こる

予備機で起こるリスクを見落とさないで欲しい
予備機だからと甘く見ないことだ

 

2022年06月03日

工事の工法を勝手に協力会社が変えて起こる事故--工事管理

化学プラントなどでは工事を頼むとき元請けという協力会社に仕事を頼む。大手のエンジ会社だ
大手だから安心かというとそうでは無い。協力会社は、多層構造だからだ
元請けは仕事は受注するが、下請けに仕事を発注する。工事規模が大きければ更に孫請けに仕事を任せる
下請けの構造は何重にもなる。下に行けば行くほど技術の管理レベルは下がる。そこで問題が起こる
発注者である、企業は大手に頼んだから安全と思い込んでいる。しかし、現場の末端の仕事は大手がやるわけではない
孫請けレベルの協力会社がやっている。問題はその企業の実力だ。監督がしっかりしていれば、問題が無いがそうとは限らない
発注者が考えた思いが、最終的な施工者レベルまで届いていればいいのだがなかなかそうはいかない
発注者も、工事現場に立ち会って施工者が意図した工法で工事をしてくれるかと確認すればいいのに現実は丸投げだ
なぜなら、発注者側も人がいないからだ
企業はどんどん人を減らし、現場の工事の施工管理もかなり手薄になっている
おまけに、現場の工事を見る発注者側の担当も経験不足、工事を受注した強力会社側も監督者の技量は落ちている
こんな事故事例がある。大阪の化学企業で起きた解体工事中の火災事故だ
発注者は、解体する煙突周りのダクト内にはFRPという可燃物が貼り付けられているためそれを除去してから切断せよと指示した
ところが、工事を受注した協力会社は、いちいちFRPを外していては効率が悪く、工事の手間もかかるのでいきなり火を使って切断し始めた
結果としてFRPに着火して大きな火災になった
https://www.youtube.com/watch?v=UaIMQCbGFBY
発注者の要求した通り協力会社が工事をするわけではない
協力会社は常に効率を考える
手間暇をかけずに工事はやりたいのだ
一方で、発注者は言ったとおりにやってくれると単純に思ってる
歩合制ならまだしも、請けで仕事を受けるなら受注者は必ず効率の良い仕事の方法を考える
そこに発注者と受注者のミスマッチが起こる
仕事を人に頼むときは、発注方式を含めて考えて欲しい
受注額が決められた請負方式で発注すれば、受注者は必ず効率の良い方法を考える
そこにどうくさびを入れられるかが発注者の腕の見せ所だ
発注したとおりに仕事をやってもらうのは大変な苦労がいると考えて欲しい

 

2022年05月28日

たかがホースと思わないで欲しい--耐熱性や耐薬品性などの知識が必要だ

化学プラントの中でホースを使う仕事は沢山ある
脱液や移液などでホースは頻繁に使われる
ホースの種類は様々だ。用途に合ったホースを選定すればいいのがそうは問屋が卸さない
人は身近にあるホースを使ってしまうからだ
流す流体の温度が高いのに、耐熱性の低いホースを使って事故になる。薬品の耐酸性や耐油性にあわないホースを使って事故にもなる
なぜなら、ホースに関しての事故事例はあまり教育されていないからだ
自分の部下などに質問して欲しい。ホースの耐熱性についてだ。たぶん多くの人は、ホースと耐熱性はうまく答えられないと思う
塩ビのホースは、どの程度の温度に耐えるのかと質問しても多くの人は答えられない
たとえば蒸気だ。水の沸点は100℃だ。ビニルホ-スは蒸気に耐えられるかだ
一般的に言われているのは塩ビホースなら、60度迄が許容温度だ。いわゆる温水だ
お風呂の温度が約40度くらいだから、それより少し高い程度までしか持たない。
当然蒸気には耐えられない。
良く誤解されるのが。網線入り塩ビホースだ。かなり強度があると思われがちだが。80度まで持てばいい方だ
やはり、蒸気には使えない
蒸気に使える、黒っぽい蒸気ゴムホースでも130度から140度だ。低圧蒸気には使える、高圧蒸気には使えない
使える使いえないはあるが、温度が高くなれば柔らかくなる。締め付け部がゆるむというリスクもある
たとえ破れはしないにせよ、柔らかくなりすぎてホースの固定が甘くなることも考えなくてはいけない
しっかりとクランプされていればいいのだが、固定が緩ければホースが抜けて起こる事故もある
ホースの材質で何度まで使えるのかはしっかりと教育して欲しい
耐酸性など化学物質に対する耐候性も教えて欲しい
たかがホースと思っていると思わぬ労災が発生する

 

2022年05月26日

安全に関する経営トップや本社の関与--コンプライアンス ガバナンス

ガバナンスやコンプライアンスという用語が最近は頻繁に出てくる
法令や社内ルールをきちんと遵守した経営を行っていることが今の世の中は求められている
今の世の中安全に関しては、かならず経営トップの関与を聞かれる。経営トップは収益だけを見ていれば済む時代ではない
必ず安全についての関与を問われる。部下に任しているという答えではノーだ 権限委譲だけではことはすまない
いかに経営トップとしてリーダーシップを取っているかが求められる。いかに取り巻きが、経営者を支えてくれているかだ
経営トップは、事務方がトップになるケースもあれば、技術職が経営トップになるケースもある
どちらが、安全に関してセンスがあるかというと、どちらとも言えない。本人の資質だからだ
バランス感覚のいい人もいる。そうで無い人もいるのは当然だ
とはいえ、そこそこの及第点は取る必要がある。社員を食わせなければいけないからだ
安全に関しては、安全に関する重役を割り当て権限を委譲する経営形態もある
権限委譲ではあるが、経営者が直接的には関与しない形態だ。経営者の負担は減るがそれでいいのか疑問は残る
間接的に安全をガバナンスすることが本当に正しいのかは疑問が残る
経営トップとは言え、裸の王様ではない。いかにスタッフが、支援しているかだ
スタッフの力量で、トップのリアクションも変わる。事務局や安全スタッフの能力が問われるのだ
組織は個人で動いているわけでは無い。最終判断は、トップにゆだねられるが、判断の所以となる情報はあくまでも取り巻きが作り上げるのだ
スタッフの能力はものすごく経営に関与する。安全スタッフには、そこが求められている
上に対しても情報発信することが必要だ。工場や各職場に対しても、しっかりと実質的な行動に移せる情報発信が求められている
企業の中でスタッフの役割は、参謀なのだろう
企業統治ができるのは、第三者的な機能が存在するかだ。皆身内という意識では、チェック機能が働かない
工場監査をするにしても、他工場の人が入ると格段に監査の質は上がる 文化や風土の違うところで育った人だ
他工場の人は、指揮命令系統の範囲外となるから自由な意見が出てくるから
ガバナンスには、第三者機能をいかに取り込むかが重要だ

 

2022年05月24日

検査データー改ざんや検査の未実施、見逃し問題--検査管理部門の重要性

検査に関する不祥事が続いている
この問題は根が深い。単純に検査部門だけが悪いでは済まされない問題だ
根っこの一つに人が減ったと言う問題がある 経営という大きな問題も関与している
1990年代にバブルがはじけて、徹底的に削られたのが管理検査部門ではないだろうか
管理検査部門は、トラブルがなくて当たり前だ。何もトラブルがなければ、安易に人を減らせる部門だと経営側には考えられてしまう
結果として、人減らしが行われてきて、その後、不祥事が顕在化したのだと考えるべきだ
バブルがはじけた1990年の検査管理部門の人数と、現在の人数を比較して欲しい。半分にも満たない人数しかいないのが現状ではないだろうか
コンビナートにある化学プラントは、法律により行政機関の検査を受ける
ところが、1980年代後半から、認定を受ければ、企業自らが検査を実施できる体制に変わり始めた
海外とのグロ-バル競争が始まった時代だ。少しでも企業側にメリットが出るようにと、国が雲焼死始めた制度だ
高圧ガス認定制度の開始だ。検査も一部は企業が自ら実施できること、検査周期も1年毎にから、数年へと延長することができるようになった
当然、企業もしっかりと検査体制を整えなければいけないのに、今までの延長線で検査や法申請を行っていた
結果として、法申請漏れや、検査の未実施が多くの企業で見つかり大問題となった
ちょうど2000年代に入った頃だ。次から次へと、企業が高圧ガスの認定が取り消される事態が起こった
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento079_29_sanko-4.pdf
高圧ガスの認定事業所の体制基準などの見直しが行われた
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/46/1/46_30/_pdf/-char/ja
2017年末にも、自動車会社の検査資格を持たない検査員による最終検査問題。金属業界での検査データー問題があった
2018年には、新幹線の台車製作時の強度不足問題など問題が続いている。報道はされるものの、時間が経つにつれ忘れ去られていく。
報道も、現場に問題があるような表現でなされている
確かに、問題の原点は現場であるが、なぜ検査部門でそれを防げ無かったかについては深掘りされることはない
JR台車問題については、検査の話はほぼ素通りだ。現場の監督の資質が低かったと決めつけている
現場には、削るなと表示がされているのに現場は削っていたから問題だと報道されているが、削るなと現場に掲示した人達は一体何を管理していたのだろうか
https://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/rep-inci/keika180628.pdf
事故が起こるのは、危険源が職場に存在するからだ。しかし、それを管理する組織は、企業には存在すはずだ。いわゆる検査管理部門だ
ところが、この検査管理部門がしっかり検査していない。おまけに、昔からの問題も抱え引きずっているからだ
検査部門があれば問題は起きないかというとそうでは無い。検査部門とて問題は起こす。それを、どうガバナンスするかだ
最近もある製油所で高圧ガス認定が取り消されている 
検査部門のガバナンスについてしっかり見れる企業が生き残っていくはずだ
検査管理部門の役割を甘く見ないで欲しい

2022年05月22日

工事の品質管理は難しい--現場監督の力量

化学プラントでは、新設、改造、定期点検が常に行われて行く
高温、高圧の設備もある。毒性ガスの設備もある。漏れれば危険な物を沢山取り扱っている
工事や点検は社員自らやるわけではない。工事施工会社などに頼むわけだ
大手工事業者に頼めば安心かというとそうとは限らない
今から数十年前は,ベテランの監督や技能者が沢山いた。工事を沢山経験した人達だ
2007年度問題というのが過去にあった。団塊の世代という経験豊かな人達が大量に辞めていく時期があった
それでも日本政府は、再雇用という制度を作って退職時期を5年引き延ばした
つまり、今から10年前の2012年頃までは腕のいい職人は多数確保できた
何も言わなくても工事の品質は確保されていた
つまり、監督などがしっかりしていなくても末端で働く労働者の質が平均的にかなり高く,めったなことではトラブルは起きなかったからだ
ところが,昨今はそうはいかない。監督者も経験不足。現場の作業者も技量のバラツキが大きいという現実がある
現場の質が落ちたというより、現場作業者のバラツキが大きくなったと理解する方が正しい
監督者もたたき上げと言うより、頭でっかちの監督者が増えてきている。経験は無いのに,立場は監督者という構図だ
では,仕事を発注する側の立場で考えると、どう工事の品質を確保するかだ
溶接技量などは、技量検定資格などもあり,ある程度能力は見抜ける。実技試験もあるから、できばえも評価できる
ところが監督という職業は、技量検定という制度は定着していない
とにかく、現場監督の力量で工事の質は決まる 優秀な現場監督が確保できる企業を選ぶことだ
企業規模ではない 人に技術有りだからだ。企業評価をするときには書面だけでは駄目だ。キーマンとなる監督者層と話す機会を作ってもらうことだ
その上で,発注先の能力を評価して欲しい。現場監督の力量でかなり安全や工事の質は変わってくる
現場で先頭に立つ,監督者層の力量を見て欲しい
仕事というものは発注したら終わりではない。きちんと100%の要求事項を満足してくれるかだ
1%でも欠けていれば後で何かまずいことが起こることになる
有能な現場監督のいる企業を選択することだ

 

2022年05月20日

充填物の抜き出し作業で起こる事故--静電気着火

定修などで充填物を抜き出す作業はある。ドラムやタワ-などに充填されていた充填物だ
問題は充填物などに、有機溶剤などの可燃物が付着しているケースだ
石油化学コンビナートなどでは、多くの設備で可燃物を取り扱っている。
充填物を使っている場合、性能が劣化したり汚れが多くなると充填物を取り替える
問題は、充填物の取り出しだ
可燃性の液体を処理している充填物であれば、充填物に可燃物が付着している
付着している状態で充填物を抜き出せば、火災や爆発になる
しっかりと、ガス検知をして欲しいのだが案外そこはおろそかになる
充填物は、可燃性ではなく無機などの不燃性の材料も多いからだ。充填物の材料が、不燃性だとそれで安心してしまう
この為、可燃性ガスが同伴した形で、充填物を抜き出していて着火や爆発になる事例は多い
充填物を抜き出すなら、必ずガス検知はして欲しい。わずかにでも可燃性の液体が付着すれば、静電気で発火事故が起こるのだ
無機の充填物であっても周辺に可燃物が付着していれば火災や爆発は起こる
どうしても微量の可燃性ガスが同伴するなら、抜き出すときは水をかけながら抜き出して欲しい
静電気での着火を防止する為だ
充填物を抜き出しているときの、静電気での着火爆発事故事例は多い
充填物の抜き出し作業を行うときには、必ずガス検知を行って欲しい
抜き出しに使うシュートは、金属製のものを使って欲しい。静電気を逃がすためにアースもとって欲しい
抜き出し用シュートが、非金属であった為に静電気で着火爆発した事例も多い
受台側も、非金属で静電気での着火要因になることもある
充填物の抜き出しにはしつこいくらいに静電気対策を図って欲しい

 

2022年05月18日

酸欠事故--思い込み 窒素の危険性をしつこく教育せよ

酸欠事故は繰り返し繰り返し世の中で起こっている
化学プラントでも酸欠事故は多い。化学プラントでは爆発混合気をつくらせないためにチッソを使うことは多い
チッソという気体を使って装置の中を爆発しないようにパージする作業は多い
大部分は、ヒヤリですんではいるものも、時には死亡事故につながることもある
問題はその危険なチッソを取り除く作業をするときだ
空気を送り込んで、空気に置換する作業もある
装置のマンホールという蓋を開けて空気を中に入れ込んでいく方法もある。開けたマンホールから空気を入れてチッソを置換するのだ
問題はこのマンホールを開ける作業だ。単純に指示を受けてマンホールを開けるなら事故は起きない
でも世の中には、このマンホールを開けていた作業者が、マンホールの中に入り死亡する事例も数多くある
実例として、化学プラントで起こった酸欠死亡事故の詳細が公開されているので興味のある方は見て欲しい
2020/5/14に起こった酸欠事故だ。協力会社の現場監督が死亡している
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2020-455.pdf
事故の顛末はこうだ。ドラムのマンホールを開けて、立ち入り禁止措置をするだけの指示を協力会社は受けていた
ところが、なぜか協力会社の監督が、ドラムの中に入り酸欠で死亡したという事故だ
周りにいた作業員は、ドラムの中に監督が入るのを停めなかったという
停めるまもなく中に入り、すぐにドラム内に転落したのかも知れない
なぜそんなことが起こるのかと言えば、チッソは臭いもなく色もないからだ。チッソが危険と人が色や臭いで感じることができないからだ
チッソは吸い込むと瞬時に酸欠になる。あっという間に意識が無くなる。 ほんの数秒で意識を失う
更に,瞬時に筋力も無くなる。自分の体を支えることもできなくなる
つまり,逃げだそうとしても自分の力では逃げ出せないのだ。今回の事故でも猿ばしごでおりようとしたらしい
降り始めてすぐに意識が無くなっただろうから、猿はしごをつかむ力も無くなり奥へ落ちてしまったのだろう
この怖さを教育で教えるのは難しい。体験型教育で工夫してチッソの怖さを感じさせようとするのだがなかなか難しい
チッソのある場所の管理をしっかりして欲しい。チッソに関わる作業も甘く見ないことだ
協力会社だけで、チッソに関わる作業をさせないで欲しい。発注者側も大事なところには立ち会うなどして関与して欲しい
チッソ(窒素)を取り扱う作業を甘く見ないで欲しい
協力会社を含めてその危険性をしつこく教育して欲しい

 

2022年05月16日

工場火災と初期消火--怖いのは一酸化炭素中毒

火災が起きたときどこまで対応すれば良いかと聞かれることがある
工場火災と言っても色々な工場が。コンビナートの化学プラントもある。屋外にある工場だ。化学物質や危険物を取り扱う
一方、建屋内に製造設備がある工場もある。屋内に機械が配置されている工場だ。でも、原料や潤滑油やなど燃えるものもあるはずだ
事務所火災もある。電気室火災もある
コンビナートの火災であれば、消火器で消せるのは小火程度だ。
運転中であれば、油がにじみ出て火がついたケースもある。保温材に油がしみ込んで自然発火したケースなどだ
配管が腐食して穴が開き、液が噴き出し着火しているケースでは、消火器での初期消火は無理だ
いずれにせよ、一人で対処せず初期消火の前に、通報して仲間を呼ぶことが基本だ
119番して、公設消防力を借りなければ消火は無理だ。自衛消防隊があれば、出動して消防車で初期消火に入ることだ
建屋内に製造設備があるケースでの火災の初期消火は、企業によってルールがあるはずだからそれに従うことになる
とはいえ、初期消火では、状況が急変して煙に巻き込まれることもある
最近ではこんな事故事例もある
https://parstoday.com/ja/news/japan-i66272?msclkid=d6e2886ec6ce11ec9b69a0787810c43c
残念なことに初期消火をしていた従業員2名が命を落としている
よく言われるように、天井に火が移ったら逃げろと言われる
しかし、工場などの天井は、一般住宅と違いかなり高いからこの教訓では限界がある
やはり、炎が自分の背丈を超えてきたような場合は、消火器での対応は難しくなる
自分の背丈の、2倍程度まで炎が高くなったらもう逃げた方が良いと思う
機械装置などに火がつけば、電線ケーブルや潤滑油など不完全燃焼を起こしやすいものにも火がつく
つまり、一酸化炭素中毒を起こす環境になってくる
消防に連絡しても、すぐに来るわけではない。正門に到着してから、誘導などで時間もかかる
火災発生から、10分程度になっているはずである
つまり、消防が来るまで初期消火をやっていたら、一酸化炭素中毒などで命を落とすこともある
一般的に火災が発生して、火災報知器が鳴るまで数分かかる。すぐに、現場に駆けつけても発火して何分も経っているはずだ
そこからの、初期消火では炎は背丈を超えているはずだ。下手に、初期消火で頑張らせると煙に巻き込まれるはずだ
炎が、2~4m程度になったら、とにかく建屋からは出て欲しい。一酸化炭素中毒に巻き込まれないようにして欲しい

 

2022年05月14日

小分けという作業を甘く見るな--空気に触れるリスク

小分け作業という作業がある。小さな分量に分けるという作業である。多くの職場で行われる作業だ
人は「小」という字がつくとたいしたことはないとか、それほど危険性がないと思ってしまう傾向がある。
しかし、小分け作業でもリスクはある。化学物質を小分けするときは、大きな容器の蓋を開けて物質を取りだし小さな容器につめる作業が生じる。
この時、一時的ではあるにせよ化学物質を外に出す。つまり、空気と触れる状態が生じる。
化学物質は一般的に容器に閉じ込めておけば事故の可能性は少ない。しかし、外に取り出すとどうしても空気と触れることになる
そこに着火源があれば、着火したり爆発する可能性がある。
過去にも、小分け作業で多くに事故が起きている。小分け作業を甘く見ないことだ。参考までに、過去の事例を以下のURLで紹介する。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200081.html
この事故は、トルエンを含む液を小分け中に起きた爆発死亡事故だ
移液ポンプ自体は、防爆だった。ポンプのアースは取っていたが、肝心の充填容器は、アースを取っていなかった
容器に液を流し込むときには流動帯電という静電気が発生する。
アースを取っていなかった充填容器で静電気が徐々にたまり、アースを取っていた電位の低いポンプ側へ放電したのだろう
小分け場所では十分な換気も行われておらず、爆発混合気ができていた事例だ
有機溶剤などは、導電性が無いので静電気が発生する上、揮発し易く爆発混合気ができやすい
次の事例は、アクリル酸という重合反応する物質の事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000126.html
アクリル酸は、冬場は凝固してしまう。ドラム缶の中に固まったものを使用する毎に電気ヒーターで暖め溶かして取り出していた
アクリル酸は、反応性物質なので反応を防止する為、反応禁止剤がドラム缶内のアクリル酸には添加されていた
ところが何回かに分けて小分けする形で液を取り出したことにより、小分けする毎に、重合禁止剤の濃度が薄まり効果が無くなってしまった
結果として、反応を抑える効果がなくなり異常反応した事故だ
反応禁止剤などが添加されているものなどでは、小分けを繰り返すことで反応防止剤が効かなくなることもおこるのだ
小分けで起こる事故事例も知っておいて欲しい

 

2022年05月12日

ロータリーバルブによる挟まれ巻き込まれ事故--労働災害

労働災害の中で重篤な災害の1つに、ロータリーバルブの巻き込まれと言うのがある
指や手を巻き込まれるのだ。場合によっては指などの切断事故になる
粉や粒状物質という粉粒体を取り扱っているとロータリーバルブという機械装置を使うことがある
この機械は粉粒体を移送するにはいい機械だが時々中で詰まることがある
この詰まったときに良く事故が起こる。詰まれば誰でも内部を点検したくなる
点検するなら機械を停めろが基本だが、これを知らない人は沢山いる。新入社員や経験の浅い人は教育されていないからだ
点検すると言っても単に状況を見るだけならば事故にはならない
人間というのは、必ず手を出そうとする。手を出せば、また正常に回り出すだろうと思い込むのだ
内部で何か引っかかったり、詰まったりしているからそれを取り除けばいいだろうと考えるのだ
機械が動いているケースでは、指を中に入れすぎて巻き込まれる。機械が止まっていても、誰かが動かしてしまうこともある
手を入れてしばらくして機械が動き始めるケースだ
すぐに手や指を引っ込めようとするのだが機械の動きの方が早いので巻き込まれてしまう
指先を切り落とすこともある。指そのものが切断されることもある。奥まで手を入れていれば,手まで巻き込まれる
私も化学企業で約40年間働いたが、災害事例で何度も聞いた。入社当時は、工場で数ヶ月おきにこの災害が起こっていた記憶がある
挟まれ巻き込まれないためには、LTTという安全対策がある
最初にやるべきことは機械が動かないようにすることだ 電気で動くなら,電気のSWを切るのだ。LOCKするのだ
次に、SWの所に表示をするのだ。つまり,目立つような札(Tag)を取り付けるのだ 触るなとか点検中だとかの札だ
最後は、本当に動かないか確かめるのだ。つまり、動かないことを自ら確かめるのだ これを,英語でTRY(試みる)という
この英語のLOCK、TAG、TRYの頭文字3文字を取ってLTTの安全対策という
言い方を変えると、安全には3つくらいの安全対策を同時に取っておかないと事故は防げ無いということだ
ところが、このLTTという概念はあまり日本では積極的に導入されていない。だから、この手の労働災害が頻繁に起こる
機械装置を使うなら,徹底的に挟まれ巻き込まれ対策を取って欲しい

 

2022年05月10日

化学物質の局部加熱で起こる事故--ドラム缶などの容器加熱を甘く見るな

局部加熱という言葉を知っているだろうか。部分的に温度が上がってしまう現象だ
化学物質は、ゆっくりと撹拌しながら均等に温度を上げていかないと事故になることが多い
部分的に温度が高くなると、そこで局部的に反応などが進んでしまうからだ
良く起こる事故では、ドラム缶を暖めるときに電気式のバンドヒーターを使う事例だ
ドラム缶の外側に電気ヒーターを巻き付けて暖める方法だ
温度計はドラム缶上部のキャップを外して入れる方式だから、実際の温度と温度計の示す温度はかなりの誤差が出る
しかも、温度というのはかなりの時間遅れがある。温度計の指示が上がってくるまでには時間がかかる
バンドヒーターを巻き付けた部分は既にかなりの高温になっているのに、温度計の指示はそれほど高くない
それで、まだ温度は上がっていないと勘違いしてしまうのだ
結果として、温度が上がりすぎて反応が始まり火災や破裂するなどの事故事例が沢山ある
こんな事故事例があるので紹介しておく
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000021.html
蒸気で加熱する時でも局部加熱は避ける必要がある
ドラム缶に固まったものを蒸気で溶かしていて事故になった事例を紹介しておく
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=100388
局部加熱で事故が起こることも教育して欲しい
加熱はゆっくりとしかも均等にが原則だ
化学工場でも研究所でも起こる事故のパターンだ
ドラム缶などの容器加熱を甘く見るな

 

2022年05月08日

熱交換器の上から転落--安全教育をイラストなどを使いわかり易く行うことだ

ホ-スを外すときに起こる労災は実に多い
残圧が残っているのに、圧力も確認せずに外そうとして外したときに災害になる事例だ
残圧が残っているかいないかは、やはり現場型圧力計を予め設置して置かなければ圧力はわからない
あんがい、この圧力計を準備し忘れていて起こる事故も多い
もう一つは、もともと脱圧を考えてホースをつないでいるかだ
脱圧弁なども付けずにホースをつないでしまえばやはり、圧力が残ってしまう
私が入社した1970年代はこのホースによる労災が多かった
教育されたのは、加圧するなら、脱圧するときのことを考えて加圧ラインを考えろとよく言われた
どこから、圧を抜くのかを予め考えろと言うことだ
つぎに、現場型圧力計を2つ用意せよと言われた。1つでは、狂っていることもあるからだ
さらに、ホースをつなぐところはできるだけ低い所にしろと言われた
接続するときや外すときの転落リスクを減らす為にだ
今回のイラストは、熱交換器の耐圧気密テスト後に、ホースを外すときに作業員が転落した労働災害だ
十分に脱圧もしていないのに、熱交換器の上のベント弁につないだ窒素ホースを外そうとしていたのだ
窒素ホースの元弁は閉めたものの、弁座の噛み込みでホースにはまだ残圧が残っていた
当然、ホースを外したとたんホースが激しく揺れて、作業員はバランスを崩し高さ1.7の所から地上に落ちた
死亡事故にはならなかったが、肋骨や頸椎を折り、休業60日の労災となった
圧力のかかったホースは、外れると激しく揺れるということは、今であれば安全教育でかなりの人が知っている
しかし、私が入社した半世紀前などは、まだまだ知らないことが沢山あった
今思うに、教育というのは本当に大切だ。こつこつと、安全教育をイラストなどを使いわかり易く行うことだ

 

2022年05月06日

コンビナート事故件数や消防統計--時代により積算根拠は変わる

私が会社に入った頃は、月に何回か工場内で自衛消防車が出動していた記憶がある。一週間に小火が何回というのが今でも記憶にある
火災という定義も今とは違う
小火は火災に入らない。消火器で消せれば、火災としてカウントはしない。当時はそういう解釈だった気がする
企業内の自衛消防隊で消火すれば、消防に通報する必要も無かった。つまり、火災統計には入らない
つまり、今から半世紀前の消防統計は、今の火災という定義と違うから一律に件数の比較は今の火災件数と比較できない
私は、千葉のコンビナートに今から半世紀前に勤めていた。ちょっとした現場の小火は多かった
何で、昔は小火が多かったかというと、それほど多くのガス検知器が製造現場に配置されていなかったからだ
ガス検知器も当時は高価だったので、十分な台数は配置されていなかった
火気工事をするなら、本来事前にガス検をすべきなのに台数もすくなかったので、状況判断で安易にガス検知を行っていなかった
サンダーやドリルによる工事であれば、それほどリスクはないとガス検知器などしていなかった
ところが、かなりの場所で残液や残ガスが残っていてやはり小火が起こっていた
直接火を使わなくても回転部の摩擦熱で、簡単に発火点を超えるからだ
確か1975年という年に、石防法という法律ができた
この法律で、コンビナートで起こる火災や爆発は届け出なくてはならないと定義された
つまり、それ以前は法律で届け出る基準はあまり明確にされていなかったのだ
つまり、企業内での管理が主体だ
統計というのは、データー採取基準が変わればズレが生じる
昔の災害データーと比較するときには、統計を取り始めた時の基本的な考え方をしっかりと調べて欲しい
時代時代により統計のデーター採取基準は変わるからだ

 

2022年05月04日

タンクの爆発事故- 不燃物という文字にだまされるな

タンクの爆発事故を今日は紹介してみたい。爆発で4人の人が亡くなっている
2009/12/24日に、大阪で起こった事故だ。無機系の化学会社で起こった事故だ。
http://celisith.blog109.fc2.com/blog-entry-5.html
タンク内のゴミを掻き出すために、側板をカッターで切断しているときに爆発が起こった事故だ。
タンク内を洗浄する為に安易に水を入れたことがきっかけだ。
このタンクは三フッ化ホウ素といって不燃性の物質を取り扱うタンクだ。
誰でも不燃性という言葉があれば危険物では無いと思い込んでしまう。
ところが、タンクの内壁には生産時に出た副生物が付着していた。スラッジだ。この中には、酸性の物質が存在した。
タンクの材質は、鉄であった。水を入れれば、酸と反応して水素が反応する。
世の中ではわかりきった物理化学現象だがそこの従業員は誰も気づいていなかった。
不燃物のプロセスだからと思い込み、作業前にタンク内の可燃性ガス検知は行わなかった。
タンク内には、酸と水とが反応して大量の水素ができているのに気づかなかったのだ。
そこへ、側板をいきなりカッターで切り始めたのだから火花で突然爆発が起こった。
この事故の教訓は何かと言えば、生産しているものが「不燃物」というキーワードだ。
製品が不燃物であったとしても、中間生成物や副生物が全て不燃物とは限らない。もしかしたら、製造過程の一部では可燃物も存在する。
製品が不燃物だからという思い込みで起こっている事故は多い。火気を使う工事を行う前には、ガス検知は絶対行って欲しい。
製品が不燃物であろうとガス検知は事故を防ぐ最低限の作業項目だ。事前のガス検知を行っていさえすれば死ななくていい事故は多いからだ。
火を使う工事や、カッターなどで火の粉が出るならガス検知はしつこいくらいに行って欲しい
金属と酸性物質が存在すれば、水素などの可燃性ガスが発生する恐れがかならずある
工場は金属だらけだ。しかも酸性物質も存在する。水素の発生も甘く見ないで欲しい

 

2022年05月02日

ポンプの締切運転が引き起こす事故--急激な温度上昇

ポンプに関連する事故事例は多い
今回は、ポンプの締切運転の事故事例を紹介する
危険物保安技術協会が、こんな事故事例を報告している
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/188/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
事故の概要はこうだ
ポンプの配管ルートを変更した際に、配管内に仕切り板が挿入されているのに気がつかなかった
ポンプを動かし、そのまま運転を続けていたところ、ポンプ内で温度上昇が起こり5時間後にポンプのシール材が焼損し油が漏れだした事故だ
5時間の締切運転でポンプ内の液体温度は、250度くらいまで上昇したようだ
ポンプは、吐出側の弁を閉めて締切運転をしたときに急激に流体の温度が上昇するのをご存じだろうか
昔、エネルギー保存の法則というのを習ったはずだ
通常ポンプに加えられたエネルギー(電力)は、液体を流すのに使われる
電力というエネルギーが、液体を動かす運動エネルギーに変わるわけだ
普通に液が流れていれば、電力は運動エネルギーに変わるので液温があがることはほとんど無い
ところが、ポンプを締切運転のような状態にすると、電力は運動エネルギ-に変換されない
つまり、ポンプ内に閉じ込めた液体の、温度を上げる為の熱エネルギーとしてせっせと加えられた電気エネルギーは消費される
締切運転をすることで、ポンプは電気ヒーターのような役目をしてしまうのだ
5.5KWのポンプで、ポンプ内に閉じ込めた液が10Lであれば1分間に4度あがるという、計算事例もある
時間に比例して温度は上昇する。たとえば、10分ならその10倍の40度になる
ポンプの電力量、効率、液の閉じ込め容積などがわかれば、温度上昇は理論的に計算できる
http://energy-kanrishi.com/pump-j/
とにかく、締切運転を長時間続ければ温度は確実に上がることを知っておいて欲しい
ポンプの締切運転は、急激な温度上昇で事故につながると知っておいて欲しい
今回は流体が、重油だったので発火点を超え火災になった
流れているものが、過酸化物などの爆発性のものであれば、爆発にもなる
ポンプの締めきり運転の危険性はしっかりと、繰り返し教育して欲しい

 

2022年04月30日

高度保安力強化という言葉の陰に隠れているもの

昨今、化学工場では高度保安力強化などの言葉がよく使われている
コンユーター技術などを積極的に使って保安力、すなわち安全の確保を図ろうとしているのだ
背景には、コンビナートなどでの化学工場で、新人の採用が難しくなってきているという
24時間勤務で働く化学工場の運転員の採用がそもそも難しくなってきてるというのだ
昔のように、現場で働いてくれる人が少なくなってきている
コンピューターなどのソフトウエアーの業種に人が移動しているのだ
結果として化学工場で働く運転員の確保が難しくなっている
そこのすき間を埋めようとして、色々な努力が払われている
1つの選択肢は、コンピューター技術でそれを補完しようとする考え方だ
いい考え方であるが、それはなかなか難しい
人は無限の考え方ができる
しかし、機械は過去に経験したことしか判断の根拠を持つことは出来ない
応用問題を解けるのは人にやはり優位性はある
とはいえ、IOTなどの技術活用は避けて通れない
この技術を取り扱える人材をいかに増やすかは企業の存亡に関わる
AIやIOT人材の育成計画については、きちんとESGという切り口で見て欲しい
短期的に育成できる課題ではない
企業がいかに長期的視点でものを見ているかも評価要素だ
安全というのは、いかに長期的視点でものが見えるかだ

 

2022年04月28日

安全弁の放出先は大気開放でいいか-海外グループ会社の安全管理

安全弁や破裂板は必ず作動したときにガスの放出が起こる
放出先は大気開放とすれば手間もかからない。しかし、可燃性ガスや毒性ガスであれば設計はそれでいいのだろうか
可燃性ガスであれば、着火源が無ければガスが安全弁から放出されても火がつくことはない
時間の経過とともに希釈されて安全上のリスクはなくなる
そうは言ってても、大気に放出されれば近くに着火源があれば火がつくはずだ
かなり放出先を高所に設置したとしてしてもガス密度によっては、ガスが地上近くに降りてくることもある
たまたま地上で火気工事などをしていればあっという間に火がつく。先日ネットを見ていたら、そんな事故がアメリカで起こっていた
この記事では事故の深層はわからないのだが、更にネットで英文記事を検索していたら事故の深層がわかってきた
英文ではあるが、こんなレポートがある
https://www.csb.gov/assets/1/20/csb_kuraray_factual_eng06.pdf?16387
この英文を要約すると、スタート中に反応器の温度制御がうまくいかなかった
温度上昇で反応器の安全弁が吹いた。安全弁出口は大気放出型で、エチレンという可燃性のガスが大量放出された
安全弁の近くでは、多くの協力会社が作業をしていて、火気工事をしていた作業者の火でこの放出された安全弁のガスに火がついた
あわてて作業員が逃げたものの大やけどをしたり、高所から飛び降りた人が多数怪我をしたというのだ
事故の背景には、反応器の除熱装置を変更したという記述がある
この除熱装置を、事前に性能テストしていたかの記述はないが、変更管理も関連する事故のようだ
除熱装置の能力確認も、スタート前にうまく確認していなかったのかも知れない
とはいえ、ものすごく簡単に火がつくエチレンというガスを取り扱っているのに安全弁の出口が大気開放というリスクが大きい
安全弁の大気開放が引き起こした事故だ。このアメリカの企業は、日本の企業の関係会社だと言うこともわかった
事故の発生により企業は、損害賠償を従業員から請求され結局数百億円で従業員側と和解したという
化学プラントをつくるときのリスクマネージメントは、海外事業展開でも甘く見ないことだ
さらに、スタート時に協力会社員を安易にプラント内に入れないことだ。
スタートアップ時の火気工事はリスクが高い。安易に許可すれば、こんな事故も起こると言うことだ。
火災や爆発が起これば重大な労働災害になる。日本の企業も海外に多くの事業展開をしている
海外グループ会社の安全管理も厳しく目を向けることが求められている

 

2022年04月26日

事故や災害に思う-約20年前の自分が経験した事故に思う

今から約20年前の2001/4/23当時勤務していた工場で爆発事故が起きた
朝の10時頃だ ものすごい音がしてキノコ雲のような煙が見えた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0012016.html
圧縮機の中で爆発が起きた事故だ
支燃性のガスで半導体の製作時に使われるガスだが、海外ではロケットの燃料にも使われる可燃性ガスだ
火がつけば爆発することもあるガスだ
このブログを始めたきっかけの事故でもある
化学物質の持つエネルギーのすごさを始めて感じたのがこの事故だ
2009年にもこの工場で爆発事故があり、この時は爆発の時の写真がある
https://blog.goo.ne.jp/kecha2/e/298b4c68506f900af25742d149b5a723
化学物質の持つエネルギ-を会社にいて感じるのはいかに難しいかこの事故を経験して始めてわかった
試験管ベースでも爆発すればすごいエネルギーだ
ドラム缶や化学工場のタンク規模になればとんでもないエネルギーだと気づいたのがこの事故だ
事故は経験しなければわからない 特にその化学物質のエネルギーのすごさは文字では表せない

事故の怖さを伝えるのは本当に難しい
なぜなら、事故の恐怖心を文字で伝えるのは難しいからだ
炎や爆風の衝撃音を文字では書き表せない 驚きという感情も、文字で表現するには難しい
技術伝承の難しいところはそこにある
事故を自ら経験した人にしか事故を伝えるのは難しいからだ
体全体で表現していかないと、経験した事故は表現は難しい
これからも機会ある限り事故の悲惨さを伝えていきたい

 

2022年04月24日

反応器の冷却能力は十分か--事故や災害に思う-約10年前の事故に思う

今から10年前の今日(2012/4/22)当時勤務していた企業で爆発事故が起きた
山口県岩国にある工場で爆発事故が起きた  まだ22才の若いオペレータが爆発で死亡した
過酸化物という温度に敏感な製品をつくる反応器が爆発したのだ。温度が上がり反応暴走した事故だ
http://tank-accident.blogspot.com/2013/01/2012.html  
調査報告書によれば、一度作動させた反応器の安全インターロックを運転員が解除したことが事故の原因とされている
裁判でも、インターロックを解除したことで罰金刑をこの運転員が受けている
まだ22才の部下である運転員が死亡していることを鑑みると裁判官としてはこういう結論を出すのだろうが
事故の本質を見て見ると色々考えさせられることが沢山ある
工場の蒸気が一斉に停まったのが事故の発端だ 化学工場で通常、用役である蒸気が停まることはあり得ない
蒸気を発生するボイラーを複数台常時動かし、蒸気が途絶えないようにするのが基本設計である
ところが、蒸気はある製造装置からの発生していた蒸気を有効利用していたから問題が起きた
つまり、ある一つの製造装置でトラブルが起これば全工場の蒸気に影響が出るという運転環境になっていたのだ
昔はそうでは無かったのかも知れないが、省エネだとか最適化だとかで結果的に蒸気供給の信頼性は落ちていたのだろう
そうは言っても、蒸気がなくなっても化学プラントで事故が起こるわけではない
安全に停止する設備は持っている 停止インターロック設備だ 今回もそれは正常に作動した
しかし、運転員はそのインターロックを解錠してしまった それは、思っていたほど反応器の冷却が進まなかったと感じたからという
もっと反応器の冷却能力に余裕があれば、事故は防げたのだろう
自分のプラントの冷却能力を検証して欲しい
事故のリスクを減らすために、反応器の冷却能力を上げることも考えて欲しい
冷却能力不足で起こる事例は多いからだ

 

2022年04月22日

新規製品開発時のリスクマネージメントの難しさ--DX技術の活用

企業では常に新規製品の開発が求められる
高付加価値の製品が求められるからだ
開発の難易度が上がれば上がるほどプロセス上のリスクも増える
企業には、新製品開発時の安全性評価システムはあるが、難易度が上がってきている昨今それをどう運用しているかだ
安全性評価システムを作った人は、考えに考えてシステムを作り上げた。しかし、つくった人はもう企業にはいないだろう
時代が変化すれば、世代交代があるからだ
運転マニュアルもそうだ。運転マニュアルを作った人は、行間まで読み取ることができる
しかし、運転マニュアルを渡された次の世代の人達は、マニュアルに文字で表された部分しか読み取ることができないからだ
安全性評価システムも同じようなことが言える
文字に書かれた部分は、必ず事故やヒヤリなどの教訓から生み出されたものだ
ところが、過去の事故やヒヤリ情報が解説に書かれていないことが多い
結果として、書かれている言葉の背景もわからず安全性評価が行われるようになって行く
形だけの安全性評価だけで終わるようになる
これまでに無い製法や条件や生産するのだから、リスクの抽出を誤ると事故になる
運転限界値や混触、副生物など慎重に評価する必要がある

文献だけで評価すると事故になることも多い
少量でもいいからサンプルを作り、実験や熱分析をしておくことも大切だ
とはいえ時間は限られているはずだ
開発が始まってからでは遅い
こつこつと常日頃から、情報を集め整理して持っておくことだ
ドラえもんのポケットのように、さっと情報が出てくる仕組み作りも大切だ
DX(デジタルトランスホーメーション)という活動を企業でしているなら、事故や災害の情報をどう効率的に取り出せるかも検討して欲しい
DXの技術を保安防災や労働災害防止に生かすことも考えて欲しい

 

2022年04月20日

HAZOPの限界--HAZOPは万能では無い-単一故障を前提

化学工場の安全性評価手法としてHAZOPというものが使われる
運転条件から、ずれが起こったときどんな危険な状況が起こるかを事前評価するのに、このHAZOPが使われる
化学プラントで、温度や圧力が正常値よりずれたときどんな悪いことが起こるかを評価することによって事故を未然に防ぐことができる
HAZOPの基本的考え方は、ズレだ。
流量がずれたらどうなるのか。温度がずれたらどんな悪いことが起こるのか。圧力が上がったら問題が無いのか
液面変動でどんな悪いことが起こるのかなどを考えるのだ。反応器であれば、温度が上がれば反応暴走になる
ならば、異常に気づくために温度警報はあるのかなどを検証する。異常に人が気づけなければ事故に未然に対応できないからだ
さらに、異常に気づいても人がすぐに対応できるのかを考える。時間的に余裕がなければ、安全弁やインターロックの設置も必要だと考える
しかしHAZOPで、色々検討しても全ての事故の可能性を見つけ出せるかだ。HAZOPをやる人の能力にかかわってくるからだ
色々なトラブルを沢山経験していれば、想定されるかなりの確率で事故は考えられる
しかし、事故の経験が少なければ全ての事故要因を引き出せるとは限らない
つまり、HAZOPを実施しても所詮HAZOPを実施する人の能力や経験に左右されてしまうのだ
HAZOPは万能では無い。手法だけを学ばせていても事故は防げ無い。そこに難しさがある
HAZOPの基本的なやり方は、シングルフェイラーを想定するという方法だ。単一故障を前提に考えるのだ
シングルフェイラーとは、計器などが一つだけ故障した場合を想定するやり方だ
複数の計器などが同時に故障すると想定すると、検討にものすごく時間もかかるので、HAZOPでは計器は一つだけ故障したという前提で考える
しかし実際の事故では、2つ以上のミスが同時に発生して事故の連鎖が起きる
例えば、最初に出た警報を見落とし、次に時間が経ってから出た次の別の警報も聞き漏らす
さらに、別の警報は出たのだが、対応に手間取りそれも見落としてしまうケースもある
さらに、途中で交代時間になってしまい、これらのトラブルも次の交代メンバーへ情報が引き継がれずそのまま事故の連鎖へとつながる
HAZOPで警報があるからといって安心しないことだ
警報は見落とすことがある。警報を見落としたら、次に異常に気づく手段はあるのかを必ず考えて欲しい
異常に気づく手段が1つだけでは、事故の確率は高い
少なくとも、2つ以上の異常に気づく手段があるか必ず検討して欲しい
HAZOPでは常に最悪の事態を考えながら、検討することが求められている

 

2022年04月18日

変更管理の運用は難しい  変更管理に関する文献を紹介

変更管理は大切だと世の中で言われているものの、残念ながら「変更管理」について書かれた書籍は今のところお目にかかったことは無い
私が講義している、化学プラントの事故防止実践講座でも、変更管理も講義テーマにしている
https://www.ccjc-net.or.jp/~ccji-pj/s2.html
https://www.sangishin.com/kougi/detail/190
一時間しか枠が無いので、講義では情報が不足するところもある。私のブログを使って情報を補っておきたい
変更管理に関する文献を紹介しておく。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/advpub/0/advpub_JOSH-2014-0006-SHI/_pdf
労働安全衛生総合研究所の島田さんという人が書いている文献だ。化学プロセス向けに「変更管理」で考えるべきポイントを書いている。
とても良い文献なので一度は目を通して欲しい。
化学工学会に安全部会というものがある。そこで変更管理について検討を行ったときの資料もある。2009年から2012年にわたって検討されたようだ。化学講学会に参加している人は参考にして欲しい。
http://www2.scej.org/anzen/security/files/pdf/TR43.pdf
化学プラントの爆発火災災害防止のための変更管理の徹底等についてという2013年に出されている厚生労働省の通達がある。
これも一度は目を通しておいて欲しい。
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-54/hor1-54-26-1-0.htm
変更管理の運用で難しいのは、これは「変更」だと各人が考えてくれなければ、変更管理のテーブルに乗らないからだ
テーブルに乗らなければ、それから先へは進まない
変更管理の運用はむずかしい

 

 

2022年04月15日

空気を圧縮する圧縮機の事故--古くなった潤滑油は簡単に火がつき爆発することもある

燃焼の三要素が成り立てば火がつくと言うことは誰でも知っている。
潤滑油を使う空気圧縮機であれば、空気と潤滑油という燃える物が存在することになる。
後は、着火源があれば当然火がつく。
着火源は何かと言えば、潤滑油などの油かすなどがたまっているからだ。それが空気で酸化されて酸化熱という熱が発生する。
その熱が、じわりじわりとたまっていく。
いわゆる蓄熱という現象だ。酸化熱で数百度くらい迄温度は上がるから十分火がつく。
空気圧縮機で、長いこと出口配管などにたまっている潤滑油などを清掃しないで放っておくと爆発事故を起こすことがある。
空気は、常圧ならばそれほど着火しやすいとは言えないが、圧力が上がれば上がるほど火がつきやすくなる。
高圧の空気圧縮機なら、ものすごくこの潤滑油の着火に注意を払う必要がある。
過去起こっている、高圧空気圧縮機の事故が以下のURLで紹介されている。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000196.html
潤滑油会社のホームページにも、潤滑油に関する事故のメカニズムが載せられている。
わかりやすい内容なので一度見て欲しい。
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0706.php
ここで言いたいのは、潤滑油は燃えると思って欲しいのだ。古くなって劣化した潤滑油は、新品とは違い燃えやすくなる。
更に、空気を圧縮する装置は、高圧の空気が存在しているのだから燃焼の3要素を十分に満たしていいる。
もし、高圧の空気圧縮機を使っているなら出口配管などに油かすが溜まっていないか定期的に点検して欲しい。
火がつくだけなら良いが、場合によっては爆発的な燃焼を起こす。潤滑油で爆発が起こることもあるのだ
デトネーションと呼ばれる激しい爆発現象だ。配管の中を音速以上の速さで爆発が進行する現象だ
https://kotobank.jp/word/%E3%83%87%E3%83%88%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-101191
潤滑油恐るべしである。
潤滑油は常に点検すること。時間がきたら新品に交換すること。劣化した潤滑油のかすなどは清掃して取り除く努力を惜しまないで欲しい
高圧の空気、古くなった潤滑油にも関心を持って欲しい
高圧の空気は特に危険だ。高圧の空気は強力な酸化剤になると考えて欲しい

 

2022年04月13日

マンホールを開けることで起こる事故

化学工場でマンホールは沢山使われている
中を見る為に使われることもある。中に物を投入するために使われることもある。中から物を書き出すときにも使われる
ドラムやタンク、タワーなどあらゆる装置にマンホールは設置されている
マンホールがあれば、必ずそれを開ける作業がある。それが危険につながることは実に多い
マンホールというのは蓋のことだ
装置のフタを開ければ、そこから必ず空気が入り込む
この空気が入り込むというのが事故につながるのだ
化学工場には可燃物は沢山ある。しかし、可燃物があるから火災になるわけではない
燃焼の3要素という、条件が全て整ったとき火災になる
燃焼の3要素とは、空気、燃える物、発火源の3つだ
化学工場であれば、燃える物は沢山ある。発火源は、溶接の火の粉や蓄熱という温度のあるものだ
装置などは普通、マンホールは閉じられている。
ところが、原料や触媒を装置の中に投入する時はやはり蓋を開けることになる
つまり、マンホールを開けるのだ。その時、当然あけたマンホールから空気が入る
空気が装置の中へ入ると、何か燃えるものがあれば、何らかの着火源で火がつく。つまり、火災が起こるのだ
マンホールを開けるというのは、空気が入るのだから火災になると考えて欲しい
ところが、マンホールを開ければ火災になるかもと考えつくれる人は皆無に等しい
だから、マンホールを開けたときに火災が沢山起こっている
マンホールを開けたら空気が入り、燃焼の三要素が成り立つんだと思って欲しい
マンホールを開けることは、火災のリスクがあると考えて欲しい

 

2022年04月11日

新入社員への安全教育--やってはいけないことから教えよ

4月は新人を受け入れる月だ。若手が入ってくる季節だ
技術は人から人へ移っていって企業は成り立つ。技術伝承無くしては企業の存在はない
教育にどこまで力を入れているかで企業の存亡は変わる
技術は自然に伝承されるものでは無い。計画的にしかも、意図的に技術伝承しなければ技術は伝承されていかない
次から次へと新しい技術もある。それを含めて毎年技術伝承のブラッシュアップが必要だ
企業は新人へは沢山教えたいという思いがある
しかし、教育というのは沢山教えればいいわけではない
人が吸収できる情報には限りがある。単位時間あたり、吸収できるのはわずかだ
高齢の経験豊かな人が講師になると、とにかく沢山教えたいと思い、いろんなことを新人に話し出す
これは、大間違いだ。経験豊かな人は、講師に向くとは限らない
なぜなら、新人目線でものを考えていないからだ
とにかく自分の目線で話すから、新人はなかなか意図が理解できない
結局、何時間の話をしても新人は消化不良で終わってしまう
新人教育を原点から考え直して欲しい
生徒が理解して吸収できなければ、時間の無駄だ
生徒の目線で、とにかく教育は考えて欲しい
新人への教育で最初にやることは、やってはいけないことを徹底的に教えることだ
大けがをしたり、命に関わることを最初のテーマにして欲しい
学校教育では、命に関わるようなことは教えていない
企業に入れば、命に関わることは沢山ある
入社したら、まず命に関わることに焦点を当て教育して欲しい
工場というのはエネルギーの固まりだ
エネルギーを甘く見るから、労働災害や化学災害が起きる
新人には、危険なことが何かをまず教えて欲しい

 

 

2022年04月09日

非金属製シュートで起こる発火事故

工場で品物を投入したり、排出しようとするとシュート(シューター)と呼ばれる道具が使われる
例えばタンクや反応器の中へ原料や触媒を投入する時にもシュートが使われる
出来上がった製品を,装置から抜き出すときにもやはりシュートが使われる
斜めに傾けて製品などを下に送り出すのだ
シュートを使う時に必ず材質を考えて欲しい
軽いのが誰でも好まれるので,塩ビなどの樹脂製シュートが使われることが多い
金属製であっても,軽量化のために表面はポリエチレンなどの樹脂でコーテングされているシュートも使われる
シュートが金属製であれば事故は起きないのだが、プラスチックなどの非金属や,樹脂ライニング製シュートで事故は起こる
樹脂を使えば非導電性だから静電気が発生する
わずかに可燃性の物質が存在すれば,発生した静電気で着火火災となる
樹脂でできたシューターならー静電気は数万ボルトも発生することがある
静電気で着火するのは,数千ボルトもあれば足りる
過去に多く起きている事故は,プラスチックを使ったシューターで原材料を入れていたり,製品を抜き出しているときに起こっている
事故が起きてから,実施している安全対策はシューターを金属製にしてアースを取るか導電性のあるシューターに取り替えるかだ
たかが,シューターと甘く見ないで欲しい
シューター部では必ず摩擦やこすれが起きる。非導電性材料であれば必ず静電気が発生する
静電気は着火源だ。可燃性蒸気や燃えるものがあれば簡単に火がつく
投入や搬出用シュートの材質をしっかり考えて欲しい
金属製で無ければ,静電気などは逃がせない。わずかでも可燃性の物質を取り扱うなら,非金属シューターは使えない
危険物や有機溶剤など多くの場所で使われているはずだ
導電性のあるシューターを使わなければ発火事故は起こる
自分の工場にある,シューターの材質が静電気が逃がせる物か検証して欲しい
石油、化学、金属加工、電気などあらゆる業種でシューターの材質が適切か点検確認して欲しい

 

 

2022年04月07日

商業化でのスケールアップの比率の許容限界はいくつか

実験を重ね商業化していくには、スケールアップしていくことになる
試験管ベースでうまくいっても、量を増やせばうまくいくという保障は無い
化学反応を伴う物質であれば、反応熱を考慮に入れる必要がある。反応容器を大きくすればするほど、冷えにくくなる
異物の考慮も必要だ。装置を大きくすれば思わぬ異物も入り込んでくる
異物混入の事故事例も多い http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000125.html
混触反応のリスクも増えていく
冷却能力不足も致命的事故になることもある http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200004.html
スケールアップで反応器などの容積が増えても、単純に冷却に関与する表面積が均等に増えるわけでは無い
反応熱に関係する体積は3乗で増えるが、冷却などの配管表面積は2乗でしか増えないからだ
スケールアップすれば、撹拌と冷却能力もバランス良く増やす必要がある。それを失敗すれば事故になる 
では、スケールアップは、どのくらいいの比率で進めていけば良いかだ
2倍なのか、5倍なのか、10倍なのか、50倍なのか、100倍なのかだ
数字が大きくなればなるほど、リスクは大きい
では、数字の大きい方で失敗した事例を紹介しておく
https://www.csb.gov/mfg-chemical-inc-toxic-gas-release/
スケールアップ比率で考慮すべき数値は、色々な情報から考えるに
1度に行うのは、最大1桁アップまででは無いかと感じている
プロセス危険性により変わるが、中試験ベースでも10倍毎くらいでスケールアップをするのが安全領域かと考える
こんな書籍も世の中で売られているので参考にして欲しい
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I023971472-00
スケールアップに存在するリスクを甘く見ないで欲しい

 

 

2022年04月05日

たかが塗装と思うな--下地処理が大切

工場で腐食を防止するために塗装が行われる
塗装というのは地味な作業だ。さほど重要では無いと考えられてしまうが塗装は、工場を長らえるための重要なキーファスターだ
過去の事故事例の中でも、塗装が関係する事例は多い
工場の中で使われる金属は大部分は鉄だ。鉄は安いから大量に使われる
しかし、鉄は腐食されるという問題点がある。雨に濡れれば簡単に腐食する
それを防止するには、塗料で塗装する必要がある
ペンキを塗るということなのだが、甘く見ないで欲しい
ペンキはただ塗ればいいわけではない
新設配管でのペンキ塗装でも注意が必要だ
とにかく、早く塗って欲しい。時間が経つと配管正面に錆や油かすが付着するからだ
錆や油分があると、ペンキ塗装してもしっかりと塗装が密着しないからだ。塗膜が浮き上がってしまうのだ
塗装が浮き上がった状態になると、塗装が徐々に浮き上がり、時間が経つと簡単に剥がれてしまう
塗装は、しっかりと配管などの本体部に付着しないと効果は無いと思って欲しい
新品の配管の塗装の時は、特に溶接部に気をつけて欲しい。溶接部は、薄い酸化皮膜がある
溶接部は、この酸化皮膜をブラシで取り除いてから塗装しないと、塗装が簡単に剥がれてしまう
配管表面の錆などの部分を取り除くことをケレンという
塗装というものは、しっかりと塗装を密着させるためには、配管表面などにある油や異物を事前に取り去る必要がある
すなわち金属表面上をきれいにしておく必要がある
塗装の基本は、下地が大切だ。塗る表面を以下にきれいにできるかで塗装の質が変わる
たかが塗装と思わないで欲しい
少々高くてもしっかりした塗装業者を選ぶことが安全につながる

 

2022年04月03日

ガス検知器が大量に鳴ったら--近隣企業のガス放出

運転中大量に,自社の工場のガス検知器が鳴ったらどう対応するかだ
こんな事故事例がある。2013年5月13日の鹿島コンビナートでの出来事だ
鹿島コンビナートにある化学工場のガス検知器が一斉に作動した。多くのガス検知器が鳴り始めたのだ
誰でも自分の工場のガス漏れと考えるはずだ
ところが、原因は近隣の工場で夜間に可燃性ガスを密かに放出していたためだった。夜ならわからないだろうと放出したのだ
風向きによって流れていく方向は違う
可燃性ガスの放出だったため、この時は風向きの影響で近隣企業のガス検が鳴ったのだ
放出していた、近隣工場から事前に放出の連絡を受けていなかったためあわてて消防に通報した
その後、時間が経ってから鹿島コンビナート内にあるM社のガス放出の影響とわかったがいい迷惑だった
ガスを放出したのは、コンビナート内の大手化学会社だ
たいしたことは無いと思って放出していたのだろうが、ガス放出は近隣企業のガス検に影響を与えることもある
安易なガス放出が引き起こした出来事だ
幸いにして自社のガス漏れでは無かったが、他社の無断のガス放出で迷惑を受けた事例だ
時に、一斉にガス検知器が鳴ったらコンビナートでは自社だけの問題では無いこともある
ガス検が鳴ったら地元消防機関にも伝え、近隣工場でのガス漏れも想定すべきだ

コンビナートは企業が密接している
何かをすれば、自分だけの問題では無いと考えよ
大量にガス検が鳴ったら、自社だけの問題では無いとも考えよ。近隣企業のガス漏れの可能性もある
近隣企業から影響を受けていることもあるかもしれないと考えて欲しい
わからないだろうと安易に思って、可燃性や毒性ガスの放出を行わないことだ

 

2022年03月31日

多目的プラントで起こる事故-混触による反応暴走--熱分析の大切さ

一つの反応器で色々な製品をつくることがある。多目的プラントとかマルチパーパスプラントとか呼ばれる
少量多品種の化学物質を生産することができる利点がある。しかし、気おつけないければいけないのが残渣だ
色々な化学物質を造るのだから、製品が変わる。都度都度反応器や配管などを洗浄する必要がある
化学物質には混触という反応がある
物質の組み合わせによっては激しい化学反応が起きる。このような現象を混触と呼ぶ
物質によっては組み合わせがまずいと、大爆発を起こすことがある
つまり、多目的プラントなどでは前に製造した製品の残渣などが残っていれば、このような混触反応を起こすのだ
昔大阪のある化学工場でこの多目的プラントを使っていて製品を造り始めて数バッチ目で大爆発を起こしたことがある
原因は前バッチで製造した物質が、わずかにフランジのすき間にに残っていて激しい混触反応を起こしたのだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200079.html
新しい製品をつくるときの、残渣など異物による混触反応を十分検証していなかった事故だ
もう一つの問題点は、反応器内の温度計不足だ
反応器の上の方には温度計が無く、激しい自己分解反応が始まったのを早期に検知できなかったことだ
過去の事故事例の中に温度計の設置個数が少なく異常を早期に検知できなかったという事例は多い
反応器は、しつこいくらいに温度計を設置して欲しい
特に、冷却コイルの無い部分には温度計を十分に設置することだ
過去の多くの事故事例も冷却コイルの無い部分で温度が上がっていたのに、温度計は上の方には付いていなかったというケースは多い
多目的プラントに使う反応器なら、温度計はしつこいくらいに付けて欲しい
この事故の教訓の中に、反応暴走に対するアセスメントが不十分というコメントがある
反応暴走の可能性のある物質は、DSCやARCなどの熱分析計で事前チョックできる
少量のサンプルをこの分析計の中に入れ、少しずつ暖めていき熱変化を見るのだ
どのくらいの温度から、急激な温度変化が現れるのか。反応に伴う発熱量はいくらかなどが分析できる
化学物質というのは文献データーだけではわからないことも多い
実際ににサンプルを使って反応熱や反応開始温度などの安全性分析をすることも大切だ

 

2022年03月29日

停電というトラブルに対してリスクアセスメントの難しさ

停電は事故の引き金になることがある リスクアセスメントで重要なキーワードだ
停電が起これば、色々なことが起こる それが引き金になり、トラブルの連鎖が続く
それに対応できなければ、事故という形になる
では、停電という言葉を考えたとき、停電の持つ意味は多様だ
停電といっても、全停電もある。部分停電もある。停電の発生する範囲の違いにより、リスク想定は大きく変わる
停電形態もいろいろある。非常に時間的に短い瞬時停電もある。数秒の停電もある。数時間の長期停電もある
このように、どんな事態を想定するかも必要だ
停電時間が短いから安全というわけでは無い。瞬時の停電でも、コンピュ-ターには影響を与える。制御が停まってしまうこともある
化学プラントで制御が停まることは致命傷だ。瞬時停電でも問題が起こらないように、バックアップ電源を設置しておく必要がある
バッテリーバックアップは、コンピュータに不可欠だ。
停電も、全停電なら安全に停まるケースもあるが、部分停電だと想定外のところが動いていて対応に失敗する事例もある
例えば、部分停電で反応系の所は動いていたが、反応系の冷却ポンプは停電して動かなかった事例だ
反応装置は動いていたが、冷やせなかったケースだ。やはり、部分停電は想定が難しく怖いケースだ
こんな事故事例がある。停電で引き起こされた事故だ。
名古屋の製鉄所で、停電が原因で何回もトラブルを起こした事故だ
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20141125_200_01.pdf
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20141125_200_02.pdf
https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20141125_200_03.pdf
この停電事故の連鎖を一度報告書を通して読んでみてみてほしい
事故の深層には、設備の全体を把握できる技術者が企業にいなくなってきていると書かれている
つまり、設備というものはどこかを改造すれば、どこかに影響が出る。
どこにどのような影響が出るかを見抜けなければ、このような停電事故になるということだ
電気という設備は色々な電源系統が関与している。それら全体を理解してリスクアセスをしなければいけないのだ
更に、最近は企業にいる電気の技術者が極端に減ってきている
化学工場もしかりだ 電気トラブルが起きたらどのようになるのか、一度話し合ってみて欲しい

 

2022年03月27日

脱液作業で起こる着火事故のパターン--静電気や流速過大

脱液作業というのは、液をバケツなどに抜き出す作業だ。可燃性の液であれば、着火することがある
この脱液は、作業頻度も多い。特別な技量も必要としない、簡単な作業とみられている
結果として、脱液時の着火事故は実に多い
燃えるものが存在して、周りに空気があり、何らかの着火源があれば燃焼の3要素が成り立つからだ
脱液時の留意点は、しつこいくらいに教育しなければいけないのだが、脱液は簡単な作業だからと甘く見られている
着火事故のパターンで多いのが、アースを取らなかっただ。静電気で火がつくこともあるのに、アースを怠ったケースだ
流速も事故の原因だ。速く作業を済まそうと、バルブを大きく開けて液を抜き出すことをすれば大量の静電気が発生する
あっという間に火がつくことになる
流速は1m/s程度でちょろちょろと流すのが基本だ。配管の太さと流出液の太さが同じか、少し細めに液を出すが目安だろう
ドレン弁を開けすぎて、出口から液が霧状にほとばしる状態であれば、大量の静電気が発生している
あっという間に火がつくのは当たり前だ
もう一つの事故のパターンは、バケツの仕様だ
プラスチック製のバケツは、静電気を逃がすことができないから使ってはいけないのに使うケースで事故が起きる
理由を聞いてみると、近くに金属製のバケツがなかったからという単純な原因がほとんどだ
可燃物を取り扱う工場では、プラスチックのバケツを置かないことだ。ちょっとだけなら良いだろうというのが着火事故につながっている
金属製のバケツを使っていても、着火事故が起こることがある
バケツの取っ手が、プラスチックのタイプだ
取っ手をどこかに引っかけて、アースは取らなかったというパターンだ
プラスチックの取っ手がついた、バケツの着火事例も多い
脱液時の着火防止教育はしつこいくらいに、イラストなどを上手に使って教育して欲しい

 

2022年03月23日

弁の分解点検時起こる事故-液だまり

弁を分解点検する作業は沢山ある
弁を取り外してくるときに注意しなくてはいけないのは液だまりだ
危険な流体が流れていれば、外す前に洗浄することが必要だ
見える範囲の内部はきれいに洗浄できても、弁によっては、構造上液だまりという部分がある
例えばボール弁だ。ボール弁は外すときに半開状態で取り外すのが一般的だ
半開だと液だまりができないからだ
ところが、この液だまりという現象を知らない人は、全開状態で外してしまう
そうするとポケット部ができてしまってそのすき間に液が入り込んでしまっているのだ
それでも、弁を外したときに分解する前に弁を半開にしてポケット部の洗浄をしてくれればいい
でもたいていは、この液だまりを残したまま分解点検などのため修理場に持ち込むことがある
修理の作業員も、この液だまりという現象を知り尽くしているベテランならいいが若手は知らないことがある
弁を分解点検し始めたときにいきなり液が流れ出てきてあわてるのだ
可燃物の液なら、着火源があれば火がつくことになる。冬場、作業場にストーブなどが燃えていて火がつく事例は多い
硫酸や塩酸などの薬品なら、薬傷を起こす
ガスなら火がつくこともある。
有毒なガスは中毒を起こす
夏場の点検時などでは、屋外に液だまりのあるボール弁などを放置しておくと液だまり部で液封が起こってることもある
屋内に弁を入れて作業を始めようと弁を少し動かしたときに液が急に液封部から飛び出してくる
弁の構造を教育するときは、この液だまりが起こるポケット部について必ず触れて欲しい
ボール弁のカットモデルなどを使うとわかり易い
できれば、目の前で液だまりを体験させて欲しい

 

2022年03月21日

東北で最大震度6強の地震-地震は繰り返す

2011/3/11に起きた東北大震災からもう11年になる。私の住んでいる千葉県でも地震の時はかなり揺れた
そんなことを考えていた矢先、昨日の夜に再び大きな地震が起きた。自宅の2階にいたがかなりの揺れだった
地震速報では震度4と言っていたが、かなりの揺れだった。
千葉に住んでいると年中地震が来るのでかなり慣れているが、今回はやはり柱につかまった
長周期型の揺れだった
昨年の2/14にも、東北で東北大震災の余震-最大震度6強が起こっている。その時よりは、今回揺れは多いと感じた
今日家の中を再び見回してみると、書籍棚の扉がやはり半開きになっていた
棚類などは全て固定してあるのでなんともなかった。今回の地震は、東北地方では震度6強という報道が流れていた
津波は小さかったのは幸いだ
去年の地震の時は、千葉の姉ヶ崎地区のコンビナートのフレアーの火はかなりの炎が出ていた
コンビナート企業の化学プラントが停止していたからだ
大手の総合化学企業だ 地震で電力供給が落ちて安全のため停めたらしい
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00588242
今回の地震の被害は、まだ詳細には把握していないが、やはり東北地方や関東地区のの火力発電所は多数停まっているようだ
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220317010/20220317010.html
今回は、新幹線が脱線したという情報には驚いた
震度6強とはすごいガル数(加速度)になるということだ
http://blog-imgs-93.fc2.com/j/u/n/junskyblog/20160422134800bd4.jpg
東北大震災からもう11年も経つのに余震なのだろう。毎年大きな余震が続くということだ
大自然から見れば11年というのはホンの一瞬なんだろう

 

2022年03月17日

空気と窒素を間違えて起こる事故--酸欠

窒素と酸素を間違えて起こる事故がある
エアーラインマスクというのがある。密閉された空間などに入るときの保護具だ
マスクには常時空気が送られて、人が安全に呼吸できるようにする装置だ
ところが、誤って窒素を送ったため酸欠で死亡した事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200060.html
本来は、工事の責任者がバルブ操作をするはずだったらしいが、現場の人達が勝手にホースをつないで起きた事故だ
弁の近くには、窒素という表示は無かったらしい
おまけに配管が、入り組んでいて区別が難しかったようだ
企業によっては、窒素の弁は施錠されていることが多いが、この企業は施錠はしていなかった
おまけに、社員では無く協力会社に弁操作をさせていたようだ
この事故事例は氷山の一角だ。死亡事故にはつながらなかったものの、ヒヤリ事例は山ほどある
現場でも社員の省人化が進んでいる
社員では無く、協力会社に権限を与えていることも増えてきている
この事故のように、簡単に操作ができてしまうことが事故につながる
できることなら施錠して欲しい。施錠が無理なら、針金で縛って、窒素という表示はして欲しい
窒素の弁の周りに、色を塗るのも一つの対策だ
一つでも歯止めのかかるものがあれば、防げる事故は多い
ホースステーションなどでの窒素管理を甘く見ないで欲しい

 

2022年03月15日

タンクの上で液をサンプリング中爆発事故--原因は静電気

タンクの上のマンホールを開けて、ベンゼンという液の成分分析のためにサンプリングしていて爆発事故が起きたことがある
横浜の製油所での事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200001.html
着火源は静電気だ
1972年の事故だが、当時は作業員は静電気を逃がす静電気防止服も着用していなかった
静電気を逃がす静電気防止靴も使用していなかったので人体に静電気がたまっていたのだ
今では、静電気防止服や靴は当たり前のように着用しているが、当時はまだまだ使用していなかったので静電気事故は多かった
更に当時のサンプリング手法を定めたJIS規格は、サンプリング用容器を吊すひも糸は木綿とされていた
導電性の無い木綿を使うのだから、静電気は逃げていかない。事故の後JISは改訂され、金属製の糸と規定された
事故が起きるまでは、導電性など何も考慮されていなかったのだ
もう一つの問題点は、当時はまだタンクに窒素シールを行うことは一般的ではなかったということだ
窒素シールされていないのだから、マンホールを開ければベンゼンという可燃性蒸気がそのまま出てきてしまっていたのだ
もう一つの問題点は、タンクの中に液を入れてからすぐにサンプリング着手したことだ
タンクの中に液を入れると、液がかき回され流動帯電という静電気が発生する
時間が経つと徐々に静電気は逃げていくのだが、かなりの時間がかかる
しばらく時間をかけて、静電気をにがしていくのだが、この必要な時間のことを、静置時間と呼ぶ
つまり、静電気が逃げるまでは安易にサンプリングをしてはいけないのだが当時はあまり考慮されていなかった
たかが静電気と思うかも知れないが、静電気に関しては色々学んで欲しい
タンクに液を入れたときの静置時間という教育はしっかりと行って欲しい
静電気に関する事故は、実に多いからだ
静電気を甘く見ないで欲しい

 

2022年03月13日

東北大震災から11年目に思う

忘れもしない午後2時46分。11年前この時刻で東北大震災が起きた。あのときを思い出しながらブログを書いている
当時は、まだサラリーマンで千葉県中央部の茂原という所にある、勤務していた技術研修センターという所にいた
勤めていた技術研修センターは、化学プラントの運転員を教育訓練する施設だ 
当日、朝からこの技術研修センターで各企業から参加した安全担当者が、見学したり安全体験をする催しが行われていた
安全工学会の主催だ 午前中も順調に進み午後からも安全体験が始まった
1時間半ほどの体験が終わり皆さんが休憩をしていたところだったと思うが、いきなりほぼ全員の携帯電話が鳴り響いた
緊急地震速報だ。そのあとしばらくして大きな揺れが何回か続いた 地面が大きく、ゆっくりと横に揺れ足を踏ん張って立っていた印象がある
すぐにテレビをつけたものの、最初は震度速報だけだった
安全体験に参加していた皆さんは、一斉に自分の会社に電話をかけ始めたものの電話は全くつながらない
その後、テレビにあのすさまじい津波のシーンが写り始める。信じられない光景だった
しばらくすると、千葉にあるコンビナートで球形タンクの爆発映像が映り出す 私の場所から30Kmくらい離れたところだ
安全体験に参加していた人達で電車利用の人達は、その日はJRも停まり帰れなくなってしまった
技術研修センターには宿泊施設も備えていたのでその日は泊まってもらった 翌日皆さんタクシーなどを手配して各自帰られていった
その後は、数週間計画停電、電車の間引き運転、ガソリンの入手困難など様々な困難が続いた
日本の化学プラントもこの事故を教訓としてその後、耐震性の強化を図ってきてはいる
限られた資源、時間ではあるが日本にある以上、地震への備えは不可欠だ 日本でも地震で過去大きな損害をコンビナートで何回も経験してきている
東北大震災の余震と言われる震度6の地震もその後起きている。千葉県にあるコンビナートでも影響を受け、停電で化学プラントが停止した
当時の福島原子力発電所の原子炉が破壊しなかったのは奇蹟だ
化学プラントも巨大なエネルギーの固まりだ
最悪に事態を考え行動することが常に求められている。地震への備えをこつこつと行っていって欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/50/6/50_410/_pdf/-char/ja

 

2022年03月11日

事故や災害の原因 マンネリ化

事故や災害の原因の中に、慣れという要素がある
化学工場でどんな危険な物を取り扱っていても、毎日作業をしているとなれてしまう
危険なものを危険と感じなくなってくるのだ
そこに事故の芽が潜んでいる
慣れというのは恐ろしい。危険なことを感じさせなくなるのだ
企業はめったに事故を起こすわけではない
何十年も事故を起こさない企業も沢山ある
たまたま事故を起こした企業に聞くと、今まで安全だったから事故は起きるとは思ってはいなかったという答えが出てくる
しかし、よくよく調べてみるとそこには、おごりがある
今まで事故が起きていなかったというおごりだ
たまたま運が良く事故が起きていなかぅただけなのに、我が社は安全と勘違いしていたケースだ
事故は確率で起きる。事故の確率はゼロでは無い
どこか、事故対策がうまくいっていなければ事故は必ず起こる
事故の要因の中にマンネリ化というのがある
たまたま、長い間事故が起きないと、今までやっている作業は安全だと思い込んでしまうのだ
ところがその中には、ほんのわずかの危険性が存在していてたまたま気づいていなかっただけなのだ
企業の中で安全ミーテングというのがある
毎朝、毎週、など頻度は様々だ
この時の運営でマンネリ化にならないで欲しい。絶えずフレッシュな情報を織り込んで欲しい
マンネリ化した情報では、
危機感の共有化はえられない
過去に起こった事故は時間が経ってから繰り返すことがある
同じ事故は起きないが、同じような事故は繰り返す
製造や研究のミーテングではマンネリ化を防ぐ努力を続けて欲しい

 

2022年03月09日

試運転を甘く見るな

試運転などで起こる事故も多い。試運転というのは、非定常作業だ。通常とは違う運転体系になる
事故は非定常時に起きやすいというが、まさに試運転というのは非定常作業そのものだ
非定常作業の定義に、めったにやらない作業をするというものがある
試運転は、めったにやらない作業に該当する
試運転の「試」という時は、ためしにという意味を持つ
人間は、このためしという言葉でだまされる
試しだから、それほど危険では無いと思い込むのだ
本運転にはいるとなると、かなり慎重になるのだが、試運転は本運転の前だからそれほど力を入れてくれないのだ
試運転というのは、品質や能力が十分かを試すのが主目的だ。そうなると、メンバーも品質や性能など技術面に関心がいってしまう
結果として、安全という部分は後回しになる。そこに、事故の芽が潜んでいるのだろう
始めよければ終わり良しということわざがある
試運転も、最初が肝心だ。関係者としっかりと事前の打ち合わせをすることが大切だ
人は誰でも思い込みというのがある。だから、計画を関係者に説明し何か問題が無いかを相互確認しておく必要があるのだ
事前打ち合わせで、幹部が確認しなくてはいけないことがある
試運転担当者は、うまくいくとの前提で計画を立てるのが常だ。現実は、試運転を始めると色々な問題が起こる
想定されるトラブルが、試運転担当者に考え尽くされていなければ事故になる
試運転というのは、うまくいくと思い込んで試運転を進めるからトラブルにうまく対応できずに事故になる
試運転の会議で幹部は聞いて欲しい
どんな最悪の事態が起こるのかを説明させてみることだ。この最悪という言葉がポイントだ
いろいろなトラブルを考え抜いていないと、簡単に最悪のトラブルとはの質問に回答できないからだ
常に最悪のトラブルは何かを考えさえることだ
想定外では済まされないのだ

 

2022年03月07日

薬傷や中毒事故への対策もしっかり行え

工場で起こる事故は、火災爆発だけではない。労働者がいるのだから、労働災害も起きる
劇物や毒物を取り扱う工場で、薬傷や中毒事故を防ぐのに万全の対策が必要だ
製紙会社では薬傷や中毒などの事故事例も多い
化学工場ではないから安全かというとそうでは無いのだ
紙を造るときに苛性ソーダという薬品を使う。これによる薬傷事故も多い
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101329
昨年末には、タンク洗浄中中毒になったというニュースが報道されていた
http://tank-accident.blogspot.com/2021/12/2.html
硫化水素による中毒事故だ。中毒だけではすまず、死亡事故になることもある
http://tank-accident.blogspot.com/2018/06/blog-post.html
3人が死亡している中毒事故だが、企業からは事故報告書は公開されていない
事故を4M的に類推すれば、こんなことが問題点なのかも知れない
人という切り口であれば、作業員はもう危険なガスは無いと思い込んだ。いわゆる思い込みが大きく関係している事故も多い
管理面であれば、ガスが完全に除去されていないのに、安易に許可を出した。ガス検知がおこなわれていなかったなどだ
機械装置面であれば、除害装置が故障して動いていなかったのに気づかなかったとか能力が十分ではなかった
手法面であれば、慣れている作業なので、いつもより早い段階でタンク内に入ってしまったなどだ
作業手順書などに、時間に関する規定やタンクに入って良いという判断基準を織り込んでいないケースだ
などなど色々な推測ができる
とはいえ真実はわからない。この手の事故は事故原因が調査報告書の形で公開されないからだ
だから同じ事故が繰り返えし起こる
事故の原因が公開されないから、事故原因の共有化がなされないのだ
企業は事故の原因は公開して欲しい
5W1Hで情報が公開されていれば防げる事故は多い

 

2022年03月05日

研究部門の安全管理体制に問題は無いか

研究所や実験施設など研究部門の安全管理で気になることがある
企業は製造もあれば研究部門もある。安全に関して製造レベルで研究を見ているかというとそうでは無い
取り扱う量が少ないから安全と思っているからだ。そうは言ってもかなり危ない物質も取り扱っている
最近の例などだと、リチウムバッテリーの開発で失火事故などもそうだ
化学系の企業は、近年研究部門を増やしている。付加価値の高いものへシフトしているからだろう
製品の差別化を図るには当然研究に力を入れる必要があるからだ
ならば、研究部門の安全管理をきちんと整備しているかというとどうもそうでは無いような気がする
研究部門の事故でもよほど大きな事故では無ければ新聞沙汰にはならない
研究はまだまだ安全と考えてしまう所以だ
研究というのは、非定常作業だ。毎日同じことをやるわけでも無い。しかも、個室で一人でやる作業も多い
思い込みなどヒューマンエラーリスクはものすごくある
管理者も、研究テーマもいろいろあれば全てに目を配れない どんどん専門性が増しているからだ
管理者といえども、安全のスペシャリストでは無いはずだ。
企業が管理者に安全の教育を体系的にしているかというとそうでも無いような気がする
この背景には、まず多くの企業で研究所の専属安全スタッフが配置されていないことが要因だ
総務や人事の業務の片手間に安全を見ているという企業も多い
製造工場には安全スタッフは必要だが、研究所は安全スタッフは不要と考えている経営トップが多いからだ
研究所こそ,未知なる分野に挑戦することも多いのだから有能な安全スタッフがいなければいけないのにそこは充足していないのが現状だろう
安全の専任者がいなければ、教育用の資料も当然充実していかないはずだ
管理職が研究の合間に作成できる教育資料などはたかが知れている
研究所では、工場規模の爆発には至らないかも知れないが、可燃物の爆発は指や腕を吹き飛ばすほどのエネルギーはある
研究部門での爆発や火災を甘く見ないで欲しい 労働災害もしかりだ
工場だけではなく研究部門への安全管理体制も充足して欲しい

 

2022年03月03日

振動を甘く見るな--長期間の振動でいつか事故になる

化学工場では、振動を甘く見るなと言う教訓がある。振動というのは、時間をかけて金属製の部分を破壊していくからだ
溶接部などは、長期間の振動でひびが入ることがある。亀裂が入れば、漏洩火災事故にもなる配管にはサポート(支持)が取り付けられている
大きな配管であればその重量を支えるためにサポートを取る。1/2Bや3/4Bの小さな配管であってもサポートは必要だ
例えば、振動のあるケースだ。ポンプのエアー抜きやドレン弁などだ。なぜかと言えば、ポンプはモーターなどで回転している
わずかではあるが回転により、弁も微妙に振動する
ポンプ本体とエアー抜き弁などの接続は、小口径配管と呼ばれる細い配管はネジの場合が多い
ネジは強度的に弱い 振動が続けば折れることもある。つまりサポートを取らない弁で、ネジ接続の場合はいつかネジ部が折れることもあると言うことだ
実際にそんな事故は何度も起きている。エアー抜き弁の根元が折れればポンプ内の液が漏れ出す
可燃性のものであれば火災になると言うことだ。こんな事故が報告されている
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200032.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00023_s.pdf
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00023.pdf
たかがサポートと思わないで欲しい エアー抜き弁だけではなく、ドレン弁の振動で配管折損事故も多い
ポンプや圧縮機などは目には見えなくても機械は微妙に振動している
振動が繰り返せば一番弱いところが壊れる
たいていはネジで接続した部分だ ネジは折れやすいからだ。溶接部も振動で破損する
20年から30年経過してネジ部や溶接部が破損することも多い
本管から枝出ししたベント配管などは、サポートを取っていなければ微妙に振動している
過去の事故報告書でも、取りだし部から長さ30cm以上あってサポートが無いものは総点検したという報告もある
一度自分のプラントを「配管サポート」という切り口で点検して欲しい

 

2022年03月01日

水抜き作業中は現場を離れるな--慣れた作業だから大丈夫と思うな

水抜きという作業がある。油の中に水が入るとまずいから、水を除去する作業だ
水という言葉を聞くとそれほど危険ではないと誰もが感じる。そこが、事故につながる。水抜きという作業には重大な危険が潜んでいる
石油精製や化学プラントなどでは、油の中にわずかに水が含有していることがある
販売する製品は基本的に油なので、水は不純物だ。
したがって、水を除去する作業が発生する。水は油より、密度が大きいので、相分離した場合下にたまる性質がある
タンクやドラムにたまれば、ドレン弁を開けて水を抜き出すことになる
バルブを開けて、水が出ている間は問題は無い。ところが、水が抜けて油が出始めたときが問題だ。
引火点が低い油であれば流速が速ければ静電気で着火することもある
作業中は現場を離れないで欲しい。時間がかかるから、ちょっとだけなら現場を離れても良いだろうと思わないで欲しい
いつもかかる時間は同じと考えないことだ。水の量が少なめであれば、いつもより短い時間で油が出てきてします
現場に人がいなければ、油が流れ出て火がつくこともある。事故事例を1件紹介しておく
水抜き作業中に現場を離れ火災が起きた事故だ。現場を離れる際、計器室にも連絡していなかったので対応も遅れた事例だ
ベテラン故の甘さが引き起こした事故でもある。慣れた作業だから大丈夫と思い込んでいたようだ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2006-113.pdf
過去に、水抜き作業で静電気着火事故は起きている
衣服に火が回り死亡した事故もある
水抜き作業というのは、本来液を抜くときは密閉系で処理できると良い
配管を 伝って地下にある排水ドラムなどへ抜き出せば空気に触れることも無い
空気と油が触れさえしなければ発火事故にはならないからだ
ところが、多くの事故はドレン弁を開けて大気に液を放出する水抜き作業を行っているから事故が起こる
水抜き作業は、空気に触れないで行う方法を考えて欲しい

 

2022年02月27日

詰まったバルブを安易につつくな

バルブが詰まっていれば、安易に針金などでつついてみようと思う人は沢山いるはずだ
誰でも、バルブが詰まれば詰まりを解消したいと思うのは当たり前だ。ところが、この詰まりを取り除く作業には、思わぬ危険が潜んでいる。
詰まっているバルブの詰まりが突然とれたら、どうなるか考えて欲しい。
当然、詰まったものが噴き出してくるはずだ。
それで終われば良いのだが、たいていはバルブを開けた状態にして、詰まりを取り除こうとしているはずだ。
つまり、詰まりがとれればバルブは開放状態だから大量の液やガスが、その後噴き出してくる。
周りは、ガスや液が噴き出すのだから、霧がかかったような状態になるという。視界が極端に悪くなることもある。
可燃性の液やガスが噴き出してくれば、静電気で着火する。
毒性ガスが、噴き出してくれば周りにいる人がばたばたと倒れていく。
事故を、経験したことがない人はこの状況を予想できないだろうがこのような事故は過去に幾度も起きている。
今から半世紀ほど前の事故だが、詰まっているバルブを針金などでつついて詰まりを解消しようとして起きた事故がある。
製油所の事故だ。装置には硫化水素が含まれていた。定期修理に入るため、装置を停止していた。あるドラムで、液が抜けなかった。
硫化水素を含む液が中に入っていた。現場の責任者達は、なんとか脱液しようと焦っていた。誰かが、針金を持ってきてドレン弁をつつき始めた。
バルブを開けた状態のまま針金でつついていたのだ。
しばらくして、突然詰まっていたものが取れ大量の硫化水素という毒性ガスを含んだ液が噴き出してきた。
周りにいた人達が次々に倒れ込んでいった。
毒性ガスが噴き出すとは思っていなかったので、防毒マスクも用意されていなかった。多くの人達がそこで命を失った事故だ。
バルブが詰まっていたら安易に針金でつついて詰まりを取ろうとしないで欲しい。
バルブを開の状態にして。突然詰まりがとれてしまえば液やガスが噴き出してくる。弁が開放状態なのだからすごい勢いで噴き出してくる。
近づけないから、弁を閉めることもできない。とても恐ろしいことが起こると思って欲しい。
過去の事故事例を紹介しておく 参考にして欲しい
この事例は、詰まったバルブの弁を開けたままで仲間と相談中に突然詰まりが取れて起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200103.html
http://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00049.pdf

 

2022年02月25日

重大事故は事故の本質も考えて欲しい

前回のブログで、新潟県にある大手菓子メーカーの工場で火災死亡事故をとりあげた。6人の方が、逃げられずに死亡した惨事だ
https://news.yahoo.co.jp/articles/74cb250fc4359019e908ec1af5851dfa9a1a08a3
油かすや製品くずなどが蓄積して火災が起こることは紹介した
油かすなどが引き金になっている可能性は高い。蓄熱自然発火の可能性もある
だだ、今回は火災とほぼ同時に停電が起こっているとの情報もあるので、着火源は電線などのショートという可能性もある
電線はショートすれば、火花を出す。火花が、油かすに着火すればこのような事故の形態となる
事故の原因について推定したものの、事故の本質についてはまだ調査報告書が出てこないので触れなかった
事故には、直接原因もある。しかし、事故は直接原因だけで起こっているわけでは無い
事故の本質となる背景が隠れている。世の中常に変化している。企業も厳しい時代を生き抜いている
そこには、当然色々な事故の間接的な要因がある
最近の重大事故を見て見るとこんなことを感じる。工場で働く人達の雇用形態が昔と大きく変わってきているからだ
昔は、現場で働く人は社員だった.だから、全員に教育や訓練が行われていた
ところが、1990年代にバブルがはじけてから、皆が社員という形態は無くなっていった
アルバイトがいたり、派遣社員がいたり、製造の一部や製品充填などを下請け会社の社員が請け負うようになった
工場での、指揮命令系統が大きく変わってきたのだ
日本の労働安全衛生法は、安全の責任は事業者、つまり雇用主と労働者(雇われた人)の雇用関係で規定している
つまり、給料を払う人である雇用主が変われば、別々の責任形態となる
つまり、派遣社員への教育、訓練は派遣会社自らがやる必要がある。製造請負の場合もそうだ。
法律というのは、指揮命令系統が違えば教育や訓練の運用もかわってくる
工場の安全担当者が、直接派遣会社の社員に、訓練に参加しなさいとは言えないのだ.派遣会社を通して依頼という形になる
そうなると、めんどうな作業も発生するので訓練は社員だけにしておこうなどという形態になる
雇用形態だけの問題だけでは無い.雇っている人も、ものすごく少なってきている.ぎりぎりで運営している
人が沢山いれば、いろんなところに目配りできる。しかし、人そのものが少なければ異常に気づくのも遅れる
今の日本が抱える人という問題だ

2022年02月23日

製菓工場火災に思う--油かすは自然発火すると思って欲しい

先日、新潟県にある大手菓子メーカーの工場で火災死亡事故が起こった。6人の方が、逃げられずに死亡した惨事だ
https://news.yahoo.co.jp/articles/74cb250fc4359019e908ec1af5851dfa9a1a08a3
この工場では、過去に何回も小火があったという。1988年7月~2019年11月、8件の火災が確認されている
部分焼が4件、ぼやが4件で、けが人はいなかったという 大きな火災にはならなかったが、事故を予見する兆候はあったと言うことだろう
過去の8件は、ほとんどが煎餅の生産工程で生地を乾燥させる機械に堆積した菓子くずから発火したというという
今回の火災を巡っては一部の従業員が「炭化した菓子のかすから出火した」と証言しているという情報もある
大きな事故が起きないと報道されないが、油が付着したかすなどが原因で起こる自然発火はよく知られた現象だ
自治体の防災関係の、広報にも沢山の情報がある
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/7415/sizenhakka.html
家庭内でも、Yシャツに油のついた状態で、くるくるとたたんで置いていたところ自然発火したという事例は沢山ある
油の発火点は、300℃程度だから、外気温数十度では燃えるわけが無いと皆が思っているからだ
発火のメカニズムはこうだ。まず、油は劣化すると発火点はどんどん下がってくる。200℃くらいにもなってくる
次に、油は空気に触れると酸化される。酸化されるときに酸化熱という熱を発生する。つまり、空気に触れてどんどん発熱するのだ
熱が逃げてくれれば良いのだが、油のついた布を折り重ねていたり、くるんでいたりすると内部に熱が自然とたまっていく
熱が逃げないまま、発熱は継続するので発火点を超えて火がつくのだ
八尾市という自治体のホームページに自然発火の実験報告と発火映像のビデオがある 400℃まで温度が上がったと記載がある
https://www.city.yao.osaka.jp/0000019191.html
工場などでも報道されないだけで、油かすや製品くずなどが蓄積して小火が起こっている
今回の事例も、油かすなどが引き金になっている可能性は高い。蓄熱自然発火の可能性もある
だだ、今回は火災とほぼ同時に停電が起こっているとの情報もあるので、着火源は電線などのショートという可能性もある
電線はショートすれば、火花を出す。火花が、油かすに着火すればこのような事故の形態となる
いずれにせよ、油が付着したものや油かすなどには常に自然発火の可能性があると理解して欲しい
機械装置本体だけではなく、油が付着する可能性のある.排煙ダクトなども注意すべき設備だ
油は空気に触れて徐々に酸化されていけば、蓄熱で火がつくこともあると覚えていて欲しい
電気火花などでも、油に火がつくこともあると知っておいて欲しい
常に油の付着箇所は小まめに清掃して発火リスクを減らして欲しい

 

2022年02月21日

ライニング機器の事故

ライニング機器が原因となる事故も多い
化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
耐食性機器の内張などにこのライニングというものが使われる。本体そのものを、耐食性のある高級金属を使うとコスト面で割高になるからだ
本体は安価な鉄を使い、内張にライニング材を貼り付ければ機器を安く作れるという利点がある
そうは言っても、ライニングは、はがれてしまえば効果は無くなる。つまり、維持管理が大事なのだ
しっかりと、点検していれば良いのだがライニングが剥離すると思わぬ事故になる
硫酸などの酸を入れているタンクの内張の一部が破損すると母材の鉄と酸が反応して水素が出来る
酸と金属が触れると水素が発生する性質があるからだ
たまたま、火を使ってタンクなどの改造を始めたとき水素に着火して爆発する事例が多い
鉄と酸による水素の発生は、案外知られていないから繰り返しこの種の事故が起きている
水素の発生を知らなくても、火気工事前にガス検知さえやっていれば防げる事故のパターンだ
ライニングに関する事故のパターンその-2は静電気だ
ライニング材は、電気を通さない非導電性材料だから静電気は起きやすい
可燃性の液体や粉体を入れればライニングで静電気が発生することが多い
これが原因で着火や爆発事故が繰り返し起きている。ライニング機器は、しつこいくらい静電気に留意して欲しい
原材料の投入時には、確実に窒素置換をして爆発混合気を作らせないことだ
定修工事などでのジェット洗浄時にも注意して欲しい。高圧ジェットの洗浄水の水しぶきでも静電気は発生する
過去にグラスライニング機器のジェット洗浄中に爆発事故が起きている
ライニングに付着していたポリマー物質に微量に含まれていた有機溶剤がガス化して可燃性ガスとなってドラム内に充満していたのだ
ジェット洗浄作業で静電気が発生しそれが着火源で爆発混合気に着火した事故だ。溶剤を使うプラントでは注意して欲しい
ライニング機器で注意して欲しいことがもう一つある
解体時だ。内部にゴムライニングがしてあることに気づかず火で溶断していて着火火災になった事例も多い
装置の内部に可燃性のライニングがあつたことで、火気解体時事故が起きている
ライニング機器を使うメリットもある。しかし、リスクも必ず存在する
しっかりとリスクを管理しながらライニング機器を使って欲しい

 

2022年02月19日

ある反応暴走事故に思う--安易な蒸気加熱-変更管理の大切さ

高圧ガス保安協会から、事故の報告書が公開されていた
https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/hpg/accident/jikogaiyouhoukoku/2020-416.pdf
2020年11月、兵庫県高砂にある大手化学会社の塩ビ反応器の事故だ。この企業は半世紀以上前から塩ビを製造している老舗のメーカーだ
スタート時反応器内で異常反応が起こったという。冷却水を増やしたものの温度上昇は止まらなかった
反応禁止剤を投入したものの更に温度は上昇。そのうちに、反応器内の粘度が上がり攪拌機が停止していしまった
攪拌が停止したので、今度は下から窒素を投入しながら重合禁止剤も追加投入した
それでも温度上昇が続き、ついには圧力も上がって安全弁が吹いたというのだ
その後、なんとか温度も圧力も下がり最悪の事態は避けられたという。火がつかなかったのは幸いだった
事故のきっかけは、スタート時原料が固まっていて、応急処置として保温をはぎ取り蒸気で暖めながら溶かして液を反応器へ送り込んだという
本来は温水加熱なのに蒸気で加熱したことにより液体の一部が気化し、正確な流量が計測されていなかったことが関係している
流量計は容積式だったので、本来は液体の容積が計量されるはずが、ガス分も混ざったので誤差が出ていたようだ
原料が固まっていたのは、供給配管が2重管で、温水を流すところで錆がつまり温水が流れなかったとのことである
スタートのスケジュールもあったのだろうが、取り急ぎ安易に蒸気加熱で固まった部分を溶かす対応したのが最初のきっかけだ
その後、温度上昇が始まり、反応禁止剤を投入したものの効果がなかったのは、反応器の回収系の弁を閉じていなかったからという
弁の閉め忘れで、本来、禁止剤が反応液へ落ち込んでいくはずが、回収系配管へ流れて効果が出なかったようだ
更に、その後色々な手を打つものの、実質的に反応禁止剤が送り込まれるまでにかなり時間がかかりすぎたようだ
事故報告書を読んでみると、この事故には色々な要素が重なって起こっていることがわかる
報告書には書き表されていないが、私なりに考えるとこんなことも背景にあるのではないか
現場の運転員の世代交代だ。団塊の世代が、会社を辞めていったのは2000年代後半から2010年代前半だ
色々なトラブルを経験したベテランはもう現場にはいないのだろう。この事故も、トラブル経験が少ない若い人が運転していたのだろう
反応禁止剤を投入するのもはじめてだったのではないだろうか。反応温度がどんどん上がって入れは、焦るだろう
だから、本来閉めるべき回収系の弁も閉め忘れたのではないだろうか。よほど訓練されていなければ、手順通りに進まないはずだ
もう一つの要素は、安易な蒸気加熱だ。温水と蒸気とは熱量が大きく変わる。原料の気化が、事故につながるとは見抜けなかったのだろう
2012年9月29日、別の企業ではあるが同じ兵庫県の姫路で起こったアクリル酸タンクの爆発事故も、温水から蒸気に加熱を変えたことで起こっている
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2018/11/2018-11-Beacon-Japanese.pdf
蒸気加熱には、重大なリスクがあると感じて欲しい 温水から蒸気に変えることは重大な変更管理だ

 

2022年02月17日

日本の化学産業約100年- 2020年代-化学産業もIOT技術の活用が進む

2020年(令和2年).令和という時代に入った。2020年代はまだ始まったばかりだ
2000年代中頃に大量に団塊の世代と呼ばれる経験豊富な人達が過ぎ次々と退職し始めた
その人達に変わり大量に採用された若手社員も、もう15年以上の経験を持つ中堅社員になっているはずだ
化学産業も、もう完全に世代交代をしてると言っていいのだろう
事故は、10年毎に起きるという言い伝えもある。10年経つと、人も技術も変わってくるからだ
技術伝承は20年周期と言われることもある。20代の入社時にまず技術が伝えられる
次は40代前後だ.企業の中で中堅人材として最も働き盛りの頃だから色々な人と技術交流が自然と行われるからだ
次は、60代だ。定年も近くなり、次の世代に色々な経験を伝える時期だ
2010年代後半から始まったIOTという技術革新の波は2020年代に確実に花開いていくのだろう
コンピュータ技術を応用した技術革新だ。安全の分野ではスマート保安などとも呼ばれている。国もこの技術革新を推進してきている
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/sangyo_hoan_kihon/pdf/002_01_00.pdf
海外との競争、省人化、設備の老朽化、経験豊かな人材の退職など多くの課題を企業は抱えている
コンピュータを使った技術を使い、少しでもこれらの課題を解決したいと思うのは当然だ
運転支援分野で、AI(人工知能)の活用だ。運転者に、有効な運転ガイダンスを出すことも可能だ
運転の安定化には、統計手法を用いた解析技術が使われてきている。過去のトラブルデータを解析して、より安定な運転状況を創り出せる
異常監視分野ではセンサーの高度化が進んでいる。ガス漏れなどは、従来配置されたガス検知器に頼っていた
いわゆる、点での監視だ。ところが監視カメラの画像センサーと連動すれば、面での監視も可能となる
保全や点検分野では、ドローンの活用も進んでいる.従来、高所での点検は足場を設置する必要があった。お金も時間もかかるのが難点だ
ドローンならこの問題も解決してくれる
良いことずくめのようだが、課題も存在する.まずそれを使いこなす新たな人財が必要となることだ
当然現場をよく知っている必要もある。単なるコンピューター技術者ではない
もう一つの問題は、セキュリテイだ。データーの領域が増えれば増えるほど厳密な対策も必要だ。国も情報を公開している
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/hipregas/files/20190425iotsecuritymanualver2.pdf
必要とする技術分野はどんどん増えてきている。効率の良い技術伝承を常に考え続けることが求められている
次の2030年代はどんな世界になるのだろう。後、8年後の時代だ

 

2022年02月15日

日本の化学産業約100年- 2010年代-東北大震災を契機に製油所や化学工場などで事故が続く

2010年(平成22年)代が始まった、2011年3月に東北大震災が発生した
千葉県で、石油会社の球形タンクが地震により柱が折れ火災爆発となる大災害が発生した
それから約半年後、今度は山口県で蒸留塔の原料トラブルが発生した際、運転操作に失敗し爆発事故が発生する
現場で対応していた、係長が命を落とした
さらに、約半年後に同じ山口県の企業で、工場の蒸気が一斉に停止するトラブルが発生した
停止インターロックを作動させプラントを停めている途中でインターロックを解除したことにより化学プラントが爆発事故を起こした
22才の若い運転員が現場で死亡した
さらに約半年後、今度は兵庫県にある化学プラントが能力向上テスト中タンクの循環冷却操作を忘れ爆発事故を起こした
わずか2年の間に立て続けに大きな事故が4件起こったのである
しかも、最初の事故を除く他の3件は人が巻き込まれて死亡事故にもなってしまった災害だ。
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_15/15rijityou2.pdf
これらの事故を見ると、「地震」発生時、原料や用役トラブル発生時の「緊急停止時」、「試運転時」などいわゆる「非定常時」に起きている事故だ
通常運転時の安全対応は、企業は進めてきているもの、まだまだ非定常時の対応は十分とは言えないことかも知れない

2016年に労働安全衛生法が改正され 危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)を義務付けた
2017年に、高圧ガススーパー認定制度が始まった。通常認定では4年だが、8年の連続運転可能となり、保安検査の方法も自ら設定可能になった
認定要件には、高度なリスクアセスメントの実施や先進技術の活用が求められている。更に、高度な教育訓練や第3者知見活用などがあげられている2010年代は、リスクアセスメントやIOTなどの先進技術の活用が求められる時代となってきた
度重なる重大事故を受け、「人材育成・技術伝承」が不十分ということがたびたび言われている
物づくりは、人づくりからともいわれるからだ。
安全への投資には、設備だけではなく「人」への投資も怠るなと言うことなのだろう
企業はこつこつと、人を育てる努力を惜しまないことが100年の教訓なのかもしれない
時代は、2020年代へと移っていく

 

2022年02月13日

日本の化学産業約100年- 2000年代 多くのトラブルを経験してきた団塊の世代の大量退職

2000年(平成12年)代について考察してみたい。化学産業では変更管理という管理が求められてきた
海外では1980年代にインドのボパールでの有毒ガス大量漏洩事故など化学物質が大量に漏洩する重大事故が起きている
これを受け、その後安全マネージメントが大切であるとの認識が進んでいった
アメリカで、1992年に米国労働安全衛生庁(OSHA)により、PSM (Process SafetyManagement)というプロセス安全管理の仕組みが法制化された
PDCAを回してシステマチックに安全を管理することが企業に求められるようになってきたのである。
このような安全管理の考え方は、2005年の高圧ガス保安法一部改定(認定制度)で日本でも取り入れられている
「変更管理」という考え方が日本でも注目されるようになってきたのが2000年代頃からだったと思う
2009年には化学工学会の安全部会で変更管理に関する検討チームが作られ論議を開始していた
2000年代後半からは、団塊の世代と呼ばれる経験豊富な人が大量退職の時代を迎える。2007年頃より退職を始めた
当時、2007年度問題と言われ、技術伝承に大きな影響を与えた
団塊の世代というのは、1960年代後半から70年代前半にかけて企業に大量に入社して色々なことを経験してきた人達だ
日本の高度経済成長期に入社した人達で、化学プラントの建設、改造などを自ら多くを体験できた世代だ
1960年代、1970年代は、化学プラントでの事故も多発した。この時代に団塊の世代の人達は、安全対策を自ら考え実行してきた
つまり安全対策などについて豊富な知識と、安全技術を持った人達だ。そういう人達が、大量に会社を去り始める時期が2000年代に到来したのだ
団塊の世代の大量退職と相前後して、当然のことながら大量の新入社員を採用することになる
次の世代の人達に対する「技術伝承」というのが大きな問題になり始めた時代だ
技術伝承の失敗は事故につながる2007年12月鹿島のコンビナートでエチレンプラントの爆発死亡事故が起きた
http://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200807.html
工事で縁切りをする際に、空気で作動させる遮断弁で縁切りをしていた時に起きた事故だ
工事が完了し、仕切り板を取り外そうとしていたときに突然縁切りに使っていた遮断弁が開き始め高温の液が噴き出した
周りで作業をしていた作業員4名が死亡した事故だ。担当していたのは、若い運転員だった
ベテランの運転員は、誤って弁が動かないように空気の元弁を閉めるか、弁につながる配管の一部を取り外すことは知っていた
弁の駆動源を無くしておくことは安全確保の基本である。元弁を閉めたりすることは、いわゆるベテラン層にとっては職場での常識であった
しかし、常識であるが故に作業マニュアルではその常識は文字では書き表されてはいなかった
当然、文字に書き表されていないのだから、なんらかの形で常識というものを知らなければ空気の元弁を閉めたりはしない。
工事を担当した、若い運転員には職場の常識は伝わっていなかった。作業マニュアルにはベテランの常識が書かれていなかったからだ
ベテランにとっては当たり前のことでも、きちんと次の世代に伝えなければ事故が起こると言うことだ
人が減りますます技術伝承が難しくなる環境は続いている。時代は、2010年代へと移っていく

 

2022年02月11日

日本の化学産業約100年- 1990年代-バブル経済崩壊後の不況

1990年(平成2年)10月イラクがクエートに侵攻。第3次石油危機が発生した
1980年代末に日本経済はバブルがはじけ不景気の時代となっていたので、不安定さは更に増すことになった
景気は低迷し、1990年代は失われた10年といわれることもある。多くの化学企業で人の採用が減った
人を採用しないということは、省人化などにより技術伝承が難しくなってきた時代だ 
更に、1960年代の高度成長期に建設された多くの設備が老朽化を迎える時期にも当たり厳しい時代環境だった
1990年代に入ると世界規模で環境に対する関心が高まってくる。地球環境をテーマにした国際会議が行われたのが1992年である
この国連環境開発会議では、地球環境の保全に関する宣言や条約が合意されている。リオ宣言と呼ばれる。
有害化学物質管理に関しては、「環境法を定める義務」、「有害な物質を他国に移転しない努力」、「汚染者費用負担」などが盛り込まれた
1996年にはOECD(経済協力開発機構)から日本を含めその加盟国に対して、有害化学物質管理を導入するよう勧告が行われた
日本で化学物質を管理するPRTR法が施行される背景となる国際会議だ
この時代には、フロンによるオゾン層破壊や地球温暖化現象が、地球存続の問題として提起されてくる。環境問題にも敏感になり始めた時代だ
当然化学物質の管理に関心が集まってくる。
1996年、高圧ガス取締法が、「高圧ガス保安法」と改称。規制中心の法体系から自主保安へと大きく変革する
優良な事業者には規制を緩和し、国際的な競争力もつけさせようというねらいもあった
この時代、ISO認証という新たなシステム化の時代が始まった。1996年9月にISO 14001環境マネジメントシステムが制定された 
1987年に制定された、ISO9001(品質)と1996年制定のISO14001(環境)への認証取得が活発化した時代だ
化学企業も国際化へ対応していくためには、ISO認証が求められる時代になってきた
コンピューター技術面では、1995年と1998年に、WINDOW95,98発売。パソコンが大衆化していく
一般家庭でもパソコンを使い始めた時代だ.企業もパソコンの活用を模索し始めた時代でもある
技術資料管理、設備保全計画にも使い始めた。経験と勘の保全から、データーの蓄積による保全管理が始まった
デジタルカメラも1990年代後半には多く使われ始める。設備点検時の記録やトラブル報告にデジタル写真が活用され始めたのだ
色々な事故や災害の記録が写真として残り始めたのがこの時代からだ
経済面では厳しい時代ではあったが、コンピューター技術などは確実に進歩していった時代でもある
1999年に化管法という法律ができる。PRTR法とも呼ばれる法律だ。有毒な物質の発生量や場所を明確にすることが目的だ 
世界的な有毒物質管理の流れに基づいて出来上がった法律だ
正式名称は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」だが、「化学物質把握管理促進法」を略して「化管法」とも呼ばれる。この法律では、化学品製造事業者はSDS(Safety Data Sheet)を作成し顧客などへ提供する義務を定めている。
失われた10年と言われる1990年代が終わり時代は、2000年代へと移っていく

 

2022年02月09日

日本の化学産業約100年- 1980年代 大量生産から少量多品種生産へ

1980年(昭和55年)代は、個人消費の鈍化により、GNP成長率が急激に低下してくる。国際競争力回復に向け、過剰設備の廃棄が進んだ
1970年代後半に登場したDCSという装置が1980年代になると本格的にプラント全体の制御に使われてきた
調節計や記録計を計器盤に組み付けて運転する計器盤による運転方式から、DCSによる運転方式へと変わっていく
1982年10月、NECが新しいパソコンを発売する。PC9801という、16Bitパソコンである
当時は,Microsoftのwindowsは登場していなかったので,Basicと言う言語でのプログラミングが必要だった
それでも、この新しいコンピューターは化学企業で取り入れられ、設備の点検計画や修繕費を算出する装置として利用され始めた
新規化学物質が増え始めたのもこの時代だ。1979年の第二次石油危機以降、石油を原料とする化学産業は大きな影響を受けた。
化学企業は新たな収益源として、高付加価値の化学物質の製造を試みるようになったのだ。医薬品や農薬など少量で高価な化学物質だ
いわゆるファインケミカル産業が発達し始めた。当然のことながら、新たな物質が出てくれば未知なる物質であるが故に事故は起こる。
1980年5月浦和にある薬品工場で爆発事故が起きている。この事故は、2名の死者と13名の負傷者を出し爆風で周辺の家屋を破壊した
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200058.html
原因は医薬品中間体である5CTという物質だ。事故後の調査で、衝撃を加えると爆発する不安定物質であることもわかった
医薬品のような物質は、一部を除き危険なものではないと当時は考えられていたので、化学工業界に衝撃を与えた事故だ
不安定物質のエネルギー評価に関心を持たせる契機になった事故だ
HAZOPの活用が始まった時代でもある。化学プロセスの運転・操作面を主体に安全性を評価する手法だ
化学プラントでは、通常運転から温度や圧力などに「ずれ」が生じると、トラブルが起こることがある
この、「ずれ」をキーワードに想定される危険源を考え、HAZARDと呼ばれる危険な状態を想定する
現状の設備や体制で安全性が確保されているかを評価する手法だ
そうは言っても、HAZOは万能では無い。手法だけを学ばせていても事故は防げ無い。そこに難しさがある
1986年、高圧ガス取締法が改正され自主保安認定制度始まる。1年毎の保安検査が2年になり、2年連続運転と言うものが可能となる
企業は、長期連続運転という経済的メリットを受けることになる.背景には、海外との国際競争力への対応があるからだ
一方で、定修機会が長期化することで、運転員がスタートや停止という非定常運転の経験が減っていったという問題点も生じてきた
大型プラントでは運転シミュレーターを導入し、スキルの補完を試みたものの必ずしも満足のいく物では無かった
1987年3月、ISO(国際標準化機構)によって品質保証のための国際規格ISO9000シリーズが制定される
国際的な対応が多くの化学企業も求められるようになったのだ
1989年、日本はバブル経済がはじけた。
時代は昭和から平成へと変わり、1990年代へと移っていく

 

2022年02月07日

日本の化学産業約100年- 1970年代 化学工場で事故が多発

1970年(昭和45年)は、コンビナートが本格的に稼働を始めていた時代である
技術革新、生産設備の高度化が進展するものの、設備の信頼性はまだ低く、設備故障も多発した
バルブの閉め忘れなど単純なヒュ-マンエラーの事故も多かった
人のミスであるヒュ-マンエラーに着目し始めたのもこの時代だ。
化学災害などの事故の情報が本格的に記録として残り始めたのもこの時代からだ
労働災害も多かった時代だ。災害の未然防止を進めようと国は1972年に労働基準法から安全衛生の部分を抜き出した
独立した法律として「労働安全衛生法」を施行している
1973年という年は、日本の石油や化学工場で事故が多発した。毎月のように事故が起こり新聞の一面を賑わしていた
事故の背景には急速な経済成長と、技術伝承の2つが関係したとも言われている
大量生産の時代を迎え、化学工場の装置はどんどん大型化していった。人が設備や技術の進化についていけなかったのだ
もう一つは、戦後化学産業に携わってきた人達が退職していく時期に当たっていたことだ
当時の定年はいまよりもずっと早く55才だ。工場を作り上げてきたベテラン従業員が退職することで技術伝承もうまくいっていなかった
若手人材への教育の大切さを認識し、教育体系をつくり教育の充実を図り始めたのもこの時代だ
一方で経済成長にブレーキをかける出来事も起こっている。1973年10月には、第1次石油危機が勃発した。 第4次中東戦争発生したから
OPECは原油公示価格の大幅値上げを通告してきた
石油の価格が上がり始めたのだ。石油化学の原料である石油の価格が上がることは石油化学産業に取って大きな痛手となる
更に、1978年、第2次石油危機発生 原油価格が急上昇した。 約5年にわたる長期不況の引き金となった
世界的なインフレ、生産消費の停滞、大量失業、国家財政の赤字増大、対外債務の増加、貿易の縮小と保護主義が台頭し始めた
貿易摩擦の拡大など世界的な同時不況をもたらした
1970年代後半頃、日本の企業で危険予知トレーニング(KYT)の手法が開発された
その後、中災防が開発した、問題解決4ラウンド法も使われるようになり日本の企業に危険予知活動が広まっていった
危険に対する感受性を鋭くし、一人一人が作業に潜む危険に気付くことで事故・災害を防ぐことの大切さに共感をよぶものであった。
その後、ゼロ災運動で指差し呼称も活用されるようになり一人一人が安全活動に参画するようになった時代でもある
1979年パソコンの時代が登場する。NECから発売されたPC-8001は1979年9月から市場に出回り始まる
8ビットのコンピューターだが、化学企業でもその活用を模索する動きが始まる
化学工場に存在する膨大な数の機器の保全計画を、コンピューターを使って試みようとすることが始まったのがこの時代だ
時代は、1980年代へと移っていく。高度成長が終焉、減速経済へと変わっていく

 

2022年02月05日

日本の化学産業約100年- 1960年代 日本の高度経済成長時代

1960年(昭和35年)代は、高度経済成長と呼ばれる時代。物は作ればつくるほど売れた時代だ。化学産業は、日本は大量生産の時代へと入っていく
1961年岡山県水島地区で製油所が稼働を始める。水島コンビナートが動き始めたのだ
1961年~1962年にかけて、大阪堺泉北地区の石油化学コンビナートも稼働を始める
計装分野では、空気式から電気式へと計器が変わり始める。https://www.azbil.com/jp/corporate/company/history/pdf/history100_12.pdf
1963年には徳山の製油所で電子式変位調節計が使われ始めたという。真空管からトランジスターへ電子技術も変化していく
1964年には徳山コンビナートで石油化学工場が動き出す.周南コンビナートも動き始めたのだ
一方で、工場規模が大きくなってきたことで災害の規模も大きくなり始めた
1964年は、新潟地震による新潟地区の製油所が被害を受ける。大規模な石油タンクの火災が起き地震対策の強化が図られた
https://www2.nhk.or.jp/archives/311shogen/disaster_records/detail.cgi?das_id=D0010060013_00000
1965年には、エチレン10万トン時代に入っていく。
1966年には、化学工業界初のプロセス制御用コンピューター(IBM1800)の導入された
https://ja.wikipedia.org/wiki/IBM_1800
大阪のコンビナートにあるアンモニア・尿素プラント、エチレンプラントの運転に活用されたという
ディジタル計算機により直接バルブが駆動されるDDC(Direct Digital Control)が実用化されたのだ
計算機が高価であったため多数のループを1台のCPUで制御する集中型であった。CPUが故障するとプラント全体が止まるというリスクはあった
1967年には、京葉コンビナートが動き出す。千葉での化学産業が始まった
静電気に関心が持たれ始めた時代だ。現場作業者への静電靴の着用が始まった.流速も1m/s以下を徹底し始めた時代だ
1967年は公害対策基本法が公布され公害問題へ対応が始まった時代だ。装置の大型化により公害という問題も起き始めた
1968年富山県の高岡で緊急停止中の、爆発死亡事故が起きている。当時は緊急停止が自動化されておらず、起こったヒューマンエラー事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000145.html
1960年代はまだまだ自動化は進んでいない時代だ。緊急停止も人手で、多くの現場操作をする中で起こった事故だ
ヒューマンエラ-対策がやっと始まった時代でもある
1969年には、千葉のコンビナートで30万トン/年の大型エチレンプラントが完成する
この年は、東名高速道路が完成し、宇宙開発分野では米国のアポロ11号で、月面にはじめて人間が立つた年でもある
経済は発展し、時代は、1970年代へと移っていく

 

2022年02月03日

日本の化学産業約100年- 1950年代 石油化学コンビナート始まる

1950年(昭和25年)と言う年は今から約70年前のことだ。日本の工業生産が戦前水準を回復した年でもある
1950年には山口県の岩国というところにある製油所がもう動き始めている
石油化学計画構想も出始め、わが国初の石油化学計画を通産省に提出している。化学産業の基礎原料が石炭から石油へと変わってきた時代だ
1950年という年は。朝鮮戦争が始まり大量の物資の生産が日本にも求められた。これを受け日本では化学物質なども増産を続けていく
塩化ビニルという化学物質の生産も始まった.現在でも使われている代表的なプラスチックだ
1951年には高圧ガスの利用拡大や石炭から石油への時代に対応して、高圧ガス保安法が公布された 
1952年になると、対日講和条約が発効され、日本に主権回復が回復して経済はますます活性化する
1953年には、日本初の白黒テレビ放送が始まる 
ポリエチレン製造に関しても、海外で低圧で触媒を使った製造法が開発されている。チーグラー触媒というものだ
1954年には、イタリアのナッタが、三塩化チタンを用いて、プロピレンの重合に成功した
チーグラー・ナッタ触媒(塩化チタンとトリアリキルアルミニウムとからなるものが代表的)によってポリエチレンやポリプロピレンなどオレフィンの重合の工業化と理論の解明が進んだ。石油を原料とした、プラスチックの時代が到来だ 
1954年は、国が石油化学工業育成の基本方針を決定した年でもある
民間の化学企業の動きは速く、1956年1月には石油化学計画を国に提出した企業が現れた。この年12月には工場の起工式が執り行われている
1958年には、山口県岩国と愛媛県新居浜市でコンビナートが動き始めた。当時のエチレン生産能力は、それぞれ2万トンと1.2万トン規模であった
コンビナートの稼働にも併せ、この年消防法が制定された
東京では、東京タワーが完成した年でもある。
翌年の1959年には、四日市のコンビナートでエチレンプラントが完成(2万2千トン)している.四日市コンビナートも稼働し始めたのである
誘導品のポリエチレンやエチレンオキサイドのプラントも動き始めたという。石油化学工業協会(石化協)という組織も発足した
http://www.jpca.or.jp/trends/50years.html  
法規制という観点からは、1959年に工場立地法が制定された.消防法も、規制の主体者が地方自治体から国へと移り始めた時代だ
エンジニアリング分野でも、ナフサ分解や液体原料のガス化などで高温技術の発展もしていく
1959年には、日本で始めて高張力鋼を採用した球形タンクが設置された。圧力容器に高張力鋼が使われ始めたのだ
とはいえ、溶接にはかなりの技量を必要とした
時代は、1960年代の高度経済成長へと移っていく

 

2022年02月01日

日本の化学産業約100年- 1940年代 戦後製油所が復活

1940年(昭和15年)にアメリカでは、高オクタン価ガソリンの需要急増で、石油化学工業が急激に発達しはじめた
1941年には、アメリカが日本への石油輸出を禁止した。同年12月には太平洋戦争が始まった
石油の輸入ができなくなったことにより、日本の化学工業は石炭から石油を作り始めた。人造石油と呼ばれていた
苦肉の策ではあったが、コストが高く採算の合う物では無かったという
工業用の潤滑油も不足していた。食用油から、潤滑油を作ることも軍の指導で行われた
1944年12月26日、和歌山県にある大豆から潤滑油を作り出す工場で大爆発が起きている
完成を間ぎわにした新設の大豆油脂抽出工場で、空気で加圧中軽油が漏れ近くの溶接工事の火で着火爆発した事故だ
死者13名, 重傷者21名, 軽傷者24名 軍人多数が現場で爆死したという
である油脂から潤滑剤をつくる工場で試運転中操作ミスで溶剤であるヘキサンが漏れ溶接火花で爆発したのだ
脂肪酸に水素添加して硬化油を製造する装置だ。終戦間際に、不足していた潤滑剤を製造中無理な試運転中の爆発でもある
何度か漏れがあり、補修を同時並行で実施。その最中に爆発。未完成の部分があって火気使用工事が行われていた
試運転と並行して電気溶接が行われていた。漏れたヘキサン蒸気に着火爆発し塔が飛散し, 破片により水素タンクが破損して発火した
約3時間燃焼したという
工場の稼働を急ぐあまり、試運転と火気工事による補修を同時並行で行ったことが事故につながった
気密テストには本来窒素を使うべきだが、戦時中で窒素が不足していたという
高圧の空気を気密テストに使ったことから燃焼を加速した
軍事機密の中での試運転であり本当の原因は何だったのか公開はされていない
1945年(昭和20年)戦争が終わると、日本の化学企業は一斉に肥料の生産に向かう。食糧事情を改善するためである
1948年には消防法が制定されている。戦後の復興で産業界でも危険物が多く使われるようになったからでもある
1949年に当時のアメリカ占領軍が、日本での製油所の復興を許可した、日本人ではじめて湯川秀樹氏が、ノーベル物理学賞を受賞した年でもある
製油所の復興は、日本のエンジニアリング技術を活性化させた。日揮や千代田化工などのエンジ会社が技術を蓄積したのもこの時代だ
その後、日本の石油精製企業が続々と稼働を開始していくことになる
一方で、この時代まだまだ工事管理は未熟で、運転中に火を使った工事大きな事故も起きている
1949/10/28で起きている事故だ。漏れていた、化学物質が爆発性の物質を造っているのに気づかず火気工事を進め8人が死亡した事故だ
時代は、1950年代へと移っていく

 

2022年01月30日

日本の化学産業約100年-昭和初期 1930年代

1930年(昭和5年)にアメリカのシェル石油が天然ガスからアンモニアを最初に生産開始した
天然ガスを原料にする化学産業が現れたのだ。
日本で天然ガスを利用した化学工業が始まるのは、戦後の1954年だ。新潟のガス田利用が最初だ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/15/9/15_9_474/_pdf
1930年には、フロンを米国GE社の研究者が開発している
昭和初期、当時の日本人の平均寿命を調べてみたら46歳だという。現在とものすごい違いだ
50才定年でも、生きていられるかという時代だ
1931年5月26日、日本で記録に残る最初の大規模な粉塵爆発が起きている。製粉会社での粉塵爆発事故だ
http://www.belca.or.jp/12l4.htm
この企業は事故から色々なことを学んだのだろう。今でも粉塵爆発について情報を提供している
https://www.nisshineng.co.jp/news/tech-info10.html
1933年(昭和8年)にはイギリスICI社で、超高圧基礎研究中に偶然ポリエチレン合成法を発見したという
気相での超高圧法(2400気圧、140-250℃)だ。高圧法によるポリエチレン生産技術が始まったのがこの時代だ
いまでもこんな高圧を扱うのは大変なのに、大変な思いをして運転していたのだろう
1935年(昭和10年)には、世界初の合成繊維ナイロン6.6の合成に成功(米デユポン社のカロザース)
石炭と水と空気から作られ、鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い、というのが当時のキャッチフレーズだった
1939年に日本でも石炭と石灰から製造するポリビニールアルコールを原料とした合成繊維ビニロン合成に成功している
ナイロンに次ぐ世界で2番目の合成繊維を日本でも造りだしたのだ
1939年5月9日日本でプラスチックの一種であるセルロイドによる大火災が起きている
セルロイド屑を運んできた貨物自動車の運転手の投げ捨てたたばこの火が、荷台のセルロイド屑に着火した
風にあおられ大火災となり多くの死傷者を出した
その年、ヨーロッパでは第2次世界大戦が始まり、時代は1940年代へと移っていく

 

2022年01月27日

日本の化学産業約100年-草創期 大正時代から昭和へ 1920年代

前回は、大正時代に始まった石炭化学とカーバイト化学について書いてみた
大正8年(1919年)にアメリカでは石油化学工業製品の製造に成功している。石油化学と言う時代がアメリカで始まり始めたのだ
世界最初の石油化学製品は、製油所ガス中のプロピレンから合成した「イソプロピルアルコール」だったという
日本で石油化学コンビナートができたのは1958年だから、実に約40年も前に外国では石油を原料とし始めたのだ
アメリカとは国力や技術力で圧倒的な差があったのがわかる事実だ
ヨーロッパではドイツのBASF社のボッシュ氏が尿素合成に成功している。尿素も肥料に使われる化学物質だ
明治から大正時代にかけてソーダ工業も発展してきた。食塩を原料として、塩素や苛性ソーダをつくる化学産業だ
ガス化した化学物質はボンベなどに充填することから、当時は高圧ガスによる事故が多発した  
日本では、現在の「高圧ガス保安法」の原点となる法律「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」が1922年に制定されている
制定のきっかけは、製氷業者からアンモニアガスが漏えいし大きな社会問題になった為と言われる  
1923年にはアンモニアからメタノールという化学の基礎物質がドイツのBASF社で合成された
1923年という年は、関東大震災を経験した年だ。大学の研究室で多くの火災が起こったという
原因は試薬瓶の倒壊による混触反応だ。この時代から、「混触反応」についての研究が進み始めたという 
日本でも独自技術によるアンモニア合成の成功し始めたのがこの時代でもある 

合成染料も重要な化学物質だ
第1次世界大戦でヨーロッパからの化学合成による染料輸入が途絶えた
これを受け、日本では「染料医薬品製造奨励法」ができ、染料製造が国策として進んだ
1927年(昭和2年)金融恐慌起こる。2年後は世界恐慌も発生した。日本経済は第1次世界大戦時の好況から一転して不況となる
さらに関東大震災後、「銀行が潰れたら、お金が引き出せなくなる」などの取り付け騒ぎが起こった
1929年という年には、アメリカで株式が大暴落した。 その後、世の中は世界恐慌へと続いていく
化学産業も大変だった時だ
時代は1930年代へと移っていく           

 

2022年01月25日

日本の化学産業約100年-草創期 明治~大正時代 1910年代石炭化学

前回は、日本の化学産業を簡単に振り帰って見た。
10年一昔という。10年くらい経つと、設備や技術などが変わってくる。当然人も変わる。うまく技術伝承できなければ事故になる
取り扱う物質も、種類や量も変わってくる
約10年くらいのくくりで、今回から化学産業の歴史を振り返ってみたい
明治時代の日本の産業の始まりは、鉄からだった。あの有名な八幡製鉄所ができたのが1901年だ。
鉄を作るには、熱源として石炭から作られたコークスが必要となる。石炭を高温で蒸し焼きにしてコークスを作る。
蒸し焼きにするときに、大量のガスが出る。このガスには多くの化学成分が含まれている。
この石炭ガスから化学成分を取りだしたのが、日本の化学産業の始まりだ。石炭から化学物質を取り出すので石炭化学と言われた
日本では1910年代に石炭化学産業が始まったと言われる。九州の大牟田というところで石炭が多く取れ、石炭コンビナートができていた
海外では、ドイツのBASF社が、ハ-バ-・ボッシュ法を用いた本格的なアンモニア合成工場を1912年に稼働(年産8700トン)した
BASF社は、既に アリザリン染料の商業化にも成功して、合成染料の生産高は、全世界の90%を占めていたという
1914年に第1次世界大戦が始まり、日本も外国から染料などの化学物質の輸入が途絶えた
これをきっかけに、石炭から色々な化学物質を生み出すことが求められるようになった
爆薬の原料になるフェノールという物質も、大分の石炭コンビナートでトルエンを使って生産を始めたのが1915年だ
また、石灰という原料から化学物質を造るカーバイト産業も1916年に大牟田で始まっている。石灰窒素事業と呼ばれていた
ハーバーがアンモニア合成の功によりノーベル賞を受賞(ドイツ)したのは、1918年だ
アンモニアというのは肥料生産に欠かせ無いものだ。
従来肥料は、天然資源から製造していたが当時の人口増加に天然資源では対応ができていなかった
空気から、窒素と水素を取りだしアンモニアを合成する技術は当時画期的だった
人を食べさせるには、肥料が必要だ。日本でもアンモニアを製造する技術を手に入れたかったが、当時はBASFから技術は公開されていなかった
日本がその後、合成アンモニアをつくる技術を外国から手に入れたのは、1931年だった

石炭堀イラストは、イラストAC無料イラストより引用

 

2022年01月23日

日本の化学産業約100年を振り返る

事故や災害を研究していると昔のことが気になる。過去があって現在があるからだ。
なにがしかのつながりがあって現在に至っている。今日は、日本の化学産業を簡単に振り返って見る。
今から約150年前の1868年が明治が始まった。この時期には、まだ化学産業という業態は無い。
大正元年が1912年だ。約110年前になる。あの有名な八幡製鉄所ができたのが1901年だ。
日本は欧米列強と戦うため、兵器や軍艦などを作るため鉄を必要とした時代だ。
鉄を作るには、熱源として石炭から作られたコークスが必要となる。石炭を高温で蒸し焼きにしてコークスを作る。
蒸し焼きにするときに、大量のガスが出る。このガスには多くの化学成分が含まれている。
この化学成分を取りだしたのが、日本の化学産業の始まりだ。石炭からコールタールという物質も得られる。
ベンゼンやトルエンから合成染料を作ることができる。当時染料は輸入品で高価だったことから染料産業も始まった。
トルエンは硝酸と化合させるとTNTなどの爆薬が作れることから軍需産業にも貢献した。当然医薬品や肥料などもつくられ始めた
日本には、石灰も沢山取れる。この為、石炭と石灰からカーバイトを作り出すカーバイト産業が盛んになる。
カーバイトという物質に水を作用させるとアセチレンという物質を造り出すことができる
アセチレン産業という新しい産業が生まれてきた。石炭のガス化で、メタノールやアンモニアなどのガス化産業も生まれてくる。
戦争が終わった、1950年代からは原料が石油へと変わってくる。
石油化学産業が勃発してきたのが、1950年代代だ。
1950年代後半の1958年には、日本ではコンビナートができた。今から約半世紀前だ。
その後、石油化学産業は成長を続ける。1960年代から大量生産時代が始まり、工場は大規模になって行く
1970年代に入ると石油危機が訪れ原料価格が高騰する。化学産業でも、少量で高価格品が模索されるようになる
1980年代からは、高機能製品を生み出すファインケミカルの時代も到来する。少量多品種で付加価値の高い化学製品をあみだしたのだ。
その後、日本は東南アジアや海外におされ厳しい状況になりつつあった。1990年代からは、海外に工場を設置するようになってきた
2000年代は、高度経済成長期につくった工場設備の老朽化が始まり老朽化という事故も増え始めた
さらに、2000年代後半からは、いろんな経験をしてきた団塊の世代と言われる人達が定年で会社を去っていった
2010年代に入ると、東北大震災や化学産業での事故も続いた。団塊の世代の退職も少なからず企業の安全力に影響してきているのだろう
2020年代は始まったばかりだ。IT技術で、安全を担保する動きも進んでいる。
限られた時間と、資源でどう安全を担保していくかだ。過去の失敗に学ぶことも大切だ

 

2022年01月21日

自動制御のおかげで化学プラントは運転できる

現代は巨大なコンビナートも、運転操作している人は実に少ない
何十万m2の広大な敷地を誇る化学工場でも、夜間運転に携わるひとは工場全体でも数百人もいない
私が化学工場に勤めていた頃の現役時代は工場にまだまだ沢山人がいた
今から半世紀前の1970年代だ
1970年代には電気式の調節計で化学工場が自動化されて運転されていたがまだ2倍近く人がいた気がする

日本ではじめてコンビナートができたのは、1958年だ。山口県の岩国と愛媛県の新居浜というところでコンビナートが動き始めた
その頃は、今の何倍もの人が化学工場にいた なぜなら、完全自動制御ではないからだ
当時の制御方式は空気式だ。しかし、フィードバック制御はもうこの時代には確立されていた
しかし、空気というのは、電気信号と違い計器信号を遠くへは伝送できない
したがって、計器室に全て情報が集まるわけではない 現場型の空気式調節計で運転されていたものも沢山あった
この為、絶えず、現場に出向き温度や圧力がうまく制御されているか確認しなければいけない作業が沢山あった
つまり監視には多くの人が必要だった 現場もそれほど自動化されず人による操作も多かった

いまでこそ、自動制御というのは当たり前だが、たかだか約半世紀前はまだ人海戦術だ
つまり、人が少しうっかりするとトラブルが起こり事故につながる。そんな世界があたり前だった

ところが、1960年代に入るとあっというまに状況は変わった トランジスターを使った自動調節計が使われるようになったからだ
1968年に確か当時の徳山にあった製油所で、電子式パネル調節計が使われるようになった
計器室で居ながらにして指示も見れるし、調節もできるようになったのだ
電気で動き、しかも現場に出向くことなく計器室で自動制御できる装置が世の中に出始めたのだ
電気式自動調節計だ

自動調節というのは、すごい世界だ 人間の仕事を画期的に減らしてくれた言ってもいいのだろう
これからも計装や制御機器は進化を続けていくのだろう
写真引用 DEYAMAさんホームページより http://deyama.a.la9.jp/

 

2022年01月19日

ライニング機器の事故-テフロンライニングのガス浸透

化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
耐食性機器の内張などに使われる。ライニング機器を使うに当たってライニング材の選定を間違うと事故になる
テフロンで内張ライニングをしたマグネット式ポンプから塩酸が漏れた事例を紹介する
使用を開始してから、3年目でテフロン膜を塩素ガスが浸透した結果鉄製本体部に穴が開き塩酸が漏れたという事故だ
購入後2年目の検査で異常は見つかっていなかったという

理由はこうだ。塩酸を流すポンプだが、塩素ガス分を含んだ流体だった。
テフロンは、液体は通さないが気体は、テフロンに空いた微細な穴を通って浸透していくという性質がある
ガス分を含むと言うことに配慮せず、テフロンライニングを選定したことがトラブルにつながったのだ
私も、過去に塩酸系のプロセスでテフロン製保護管内に納められた温度計シースが腐食しているのを見たことがある
まだ20代か30代の頃で、当時は原因がなぜかはわからなく単に温度計のシースを交換したことを覚えている
理由がわかったのは、それから20年後にこのテフロンライニングポンプのトラブル事例を知ったときだ

テフロンには微細な穴が開いていて、液は通さないがガス分は浸透することがあると思って欲しい
ライニング材質の選定に当たっては、ガス浸透を考慮に入れて欲しい

 

2022年01月17日

ライニング機器の事故-事故のパターン

ライニング機器が原因で起こる事故について書いてみたい
化学工場では、ゴムライニング、テフロンライニング、グラスライニングなどが使われている
酸を入れる耐食性機器の内張などに使われる。破裂板などの安全装置にも、ライニングをした板が使われることがある
ライニングの目的は、母材となる材料コストのコストダウンだ。酸などに耐える金属は、通常の鉄などと比べ格段に高くなる
ライニングをすれば、高級な金属をそのまま使うことがなくなり大幅なコストダウンになる
そこに目を付けて、ライニング機器が使われることになる

そうは言っても、ライニング機器故のトラブルはある。大きく分けて5つある
1つ目は、初期不良だ。製作段階で、微妙にピンホールなどができているケースだ。検査はするものの、すり抜けて後で問題を起こす
ライニングは、わずかなピンホールでもあればそこを通って腐食性物質などが漏れ母材を腐食する。結果としては漏洩事故になる
メーカー側も、欠陥のない製品を目指しているものの100%完璧なものは存在しない
2つ目は、ライニングの老朽劣化による剥離だ。しっかりと、点検していれば良いのだがライニングが剥離すると思わぬ事故になる
ライニング機器も、寿命があると考えなければいけない。点検もせずまだ使えると思い使い続けていていきなり漏洩事故を起こすパターンも多い
3つ目はライニング剥離時に、水素が発生して爆発を起こす事故だ。ライニング部が劣化して、金属と酸が接触すれば、水素が発生する
水素が発生しているのを知らずに火気工事をして爆発する事例は多い。火気工事前に、ガス検知器を怠るからだ
4つ目はライニング機器やライニングした投入シュートでの静電気事故だ
機器本体は金属でも、内側をライニングしてしまうと静電気を逃がすのは難しい。ライニング機器の静電気事故も甘く見ないことだ
5つ目は、改造や解体工事での事故だ。工事では、火を使うことになる。ゴムなどのライニングは、溶接の火の粉などが落ちれば着火する
溶接や溶断工事中火の粉が落ちて火災になる事例は多い
自分の工場でライニング機器やライニングした破裂板を使っているなら、事故のリスクをしっかりと知って使って欲しい

 

 

 

2022年01月15日

残液確認抜き取り作業での静電気着火事故

定修時や銘柄変更時などでドラム内を有機溶剤で洗浄することは多いだろう。
洗浄した液は、抜き出すもののいくらかの洗浄液は容器底部に残ることがあるだろう
底部にあるバルブを開けて残液を確認することが作業手順の中に含まれていると事故になることがある
可燃物を大気に出すのだから、このようなことが作業手順書に書かれていたらこの時の安全確保をどうするかだ
洗浄に有機溶剤を使っているのでば、底部にあるドレン弁はゆっくりゆっくり開けるはずだ
そうは言っても、サイズが大きければ少し開けただけでも液が多めに出るだろう.霧状にでれば、簡単に静電気で着火する
こんな事故がある 2014年5月14日の事故だ
http://www.gomutimes.co.jp/?p=66432
原因は抜き出し弁のサイズが普通使われるサイズよりかなり大きめだったこと。さらに、ドラム内にかなりの窒素の残圧が残っていたと記憶している
この事故の後、この企業は液の抜き出し確認をやめたという
つまり、大気に抜き出すのではなく、たぶん別途回収用ドラムに抜き出す専用配管を設けたと思われる
可燃性液体を大気に出さなければ、本質的に安全だからだ

可燃物を安易に残液確認だからと言って大気に出せば、静電気で着火する事例は多い
特に、窒素パージ後の圧力などが容器内に残ったままで脱液すれば思ったよりも激しく液が飛び出すことになる
現場の作業マニュアルの中に、容器内圧力確認を織り込んで欲しい
圧力が残ったまま液を抜き出せば思わぬ事故になるからだ
たかが残液確認作業だと思わないで欲しい

 

 

2022年01月13日

事故原因をしっかり解析して再発防止を図れ--なぜなぜ分析 4M分析を活用せよ

事故や災害が起きれば、企業は再発防止を図る。ところが、事故や災害要因の解析が甘ければ事故は本質的に削減することはできない
事故が起こると、事故を起こした本人に対して、注意するとか組織内で教育するとかの対策をとって再発を防止しようとするがこれではモグラたたきだ
同じ事故は起きないが、同じような事故は必ず起こる。事故が起きた職場だけに対策を取っても、違うところで必ず事故は起きるからだ
つまり、事故の要因を解析し、他の職場に水平展開しなければ企業内での事故の続発を防ぐことはできない
多くの企業の、労災報告書は仕事がら沢山見る。そこで気づくのは、報告書での記載事項の問題点だ
報告書の記述作業を全て、事故発生現場に丸投げしていることだ
事故を起こした職場は、安全解析の専門的知識を有しているわけではない。報告書の書式は決まっている。空欄は全て埋めなければいけないのだ
書式に従い4M解析などに関する記述欄の空欄を埋めることになる。一応空欄が埋まると受理されるのだろう
そのまま、全社展開ということになる
しかし、我々のような監査を仕事としているものから見ると、その企業の本社の安全部門がどこまで口を挟んでいるの疑問に思うものが実に多い
つまり、ほとんどの災害案件の対策が対処療法に過ぎないものが実に多い
教育するとか本人に注意するとかでお茶を濁している
私なりに、4M法で解析すれば、マネージメントの部分がものすごく欠落している
管理者は何をしていたのかと疑うように災害事例も多いのに、そのことは事故に再発防止策としてすっぽり抜けている
原因分析も曖昧なものも多い。なぜが、しっかり解明されていないからだ
なぜ、解明されないかというと、なぜの切り口がわかっていないか教育されていないからだ
なぜはまず人という切り口で見る必要がある。人がどんな理由で判断を間違えたり、作業を間違えたりしたかだ。ソフト的要因が切り口だ。
次に、物理的要因だ。機械の故障などハード的要因だ。ソフトとハードという両面で解析する必要がある。
事故や災害を防ぐには、ボトムアップとトップダウンも欠かせない
本人たちがいくら頑張っても限界がある。管理という仕組みでカバーが必要なのだ
再発防止策が曖昧だと事故は根絶しない

 

2022年01月11日

年の初めに考える--事故の教訓を伝えていこう

今から8年前の2014年1月9日に三重県四日市で起こった熱交換器の爆発事故を覚えていますか。爆発により多くの人が死亡した事故です。
事故後、事故報告書が作成され事故の原因はある程度公開されたものの、多くの人はなぜ事故がおこったのかという答えには満足していなかったのでは無いでしょうか。私もその1人です。https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-0612.html
公式の報告書が出ることは望ましいのですが、事故の教訓を自社に展開する為のキーワードが何かがわかりずらいのが公式の事故報告書ではないでしょうか。そんな思いもあり、もう少しわかりやすく事故の原因と教訓を伝えたいと考えていました。
当時私は、日本化学工業協会(日化協)の支援メンバーであったことから、この四日市の事故で伝えるべき教訓をビデオ化しまし。
その後、私は、日化協と協力しながら、東ソーの蒸留塔の事故、三井化学の反応器の事故、日本触媒のタンク事故とビデオを作成していきました。
脚本作りは自ら行いました。シナリオを自ら作り、脚本を考えました。
事故を伝えるには、事故の事実を伝えるのでは無く事故の教訓を伝えることに力点を置く必要性があります。それが、一番難しいのです。
ビデオ化すると、どうしても事故の事実を伝えようとする意向が強く反映され、肝心の教訓が消えさってしまうからですhttps://www.nikkakyo.org/press/5146 今回の事故は、多くの教訓を与えてくれています。
特殊な物質を扱っていたから起こった事故だと単純に捉えてはいけません。
熱交換器の開放時に起きた事故であり、どこの化学工場でもやっている熱交換器の開放作業に関わる事故だととらえておく必要があります。易しく言うと、熱交換器の蓋を開ける前に、無害化されているかがきちんと確認できるシステムになっていなかったことが事故になっていたのです。安全かどうかは経験則に頼っていたのです。本質的な意味で、化学工学的に安全だというマニュアルになっていなかったのです。年末から年始にかけて長時間窒素でパージしていれば安全と考えていたことが事故につながりました。熱交換器に残されていた物質は。ドライ窒素のようなの乾燥した気体では爆発感度がものすごく上がることが事故報告書に記載されています。乾燥した、窒素でパージしたことが結果として事故の被害を大きくしました。窒素でパージすれば安全という、思い込みが事故につながっています。これからも、チャンスがあれば事故の教訓をビデオ化してみたいと思います。過去に起こした、事故を教訓にしてビデオ化したい場合は相談して下さい。ビデオを作成するときにお手伝いは可能です。事故の事実を伝えることよりも、その教訓を伝えた方が再発防止には有効です。とはいえ、教訓とは何かを考えるのはなかなか難しいのです。何千件の化学プラントの事故事例を知り尽くした私でも悩むものです。事故を防ぐ究極の答えが教訓だからです。

 

2022年01月09日

年の初めに考える--非定常時作業などの技術伝承

化学工場で運転トラブルが発生すると、トラブルは、すぐに解消しなければいけないからベテランがさっさと対応する
若手は周囲にいてもトラブル対応への直接的に参画するチャンスは少ない。常にベテランがトラブルをすぐに解決してしまう
これでは、技術伝承はしていかない。失敗を伝えられないからだ
確かにトラブルが起これば時間との勝負だ。手遅れになれば、安全上問題になるかも知れない
生産損が生じるかも知れない。だから、トラブルが起これば、いつもベテランが短時間に解決する方法を選ぶ
これでは、なかなか後輩が育たないという現実がある
限られた時間の中で問題は解決しなくてはならないのだから、現実はこういうことになる
たしかに、トラブルは放置するわけにいかず、教育のために無駄な時間を割くことはできない
とはいえ、人にその技術を教えなければ企業は存続していかない
トラブルをどう対応するかは、自分だけの技術で終わらせないようにすることだ
自分が得たノウハウは、技術伝承しなければいけないのだ。それが企業存続への道なのだ
トラブルが起きているときは、技術伝承している暇は無い。それは認める
とはいえ、トラブルが一段落すれば時間はあるはずだ
100%は求めないが、トラブルで得た知見は次の世代に口答でも良いから伝えて欲しい
企業はそのような文化を育てて欲しい.機会も与えて欲しい
非定常時の技術伝承も大切だ

 

2022年01月07日

年の初めに考える--10年毎の事故の変革--技術伝承の大切さ

事故は10年毎に大きな事故が起こるという。10年くらいで、社会環境が変化していくのもあるだろう
2000年代で起きた事故のパターンは老朽化だ。戦後、50年たった石油精製系企業が軒並み事故を起こした
設備はいくらメンテナンスをしても、もって半世紀位だ。つまり老朽化の節目というのは、50年くらいと言うことを教えてくれたのだろう
2010年には、東北大震災をきっかけに半年ごとに大きな事故が化学産業で4件起こった
最初は、千葉で起こった球形タンクの柱が折れた事故だ。製油所での事故だ
省エネが進行し、ますます石油製品は売れなくなってきているという社会環境の変化もあるのだろう
その結果と、石油精製産業、昔と違い、経営利益は潤沢ではない。地震対策にお金も十分にかけられない。そこを襲ったのがこの事故だろう。
その後、山口県の徳山で事故が起きた。残念なことに、製造現場の係長が命を落とした
塩ビ系は鉄さびが触媒になるという、技術伝承が企業内でうまく伝承できていなかった事故だ
管理者が、事故が起きたとき何とかしようと思っても、化学物質はある一線を越えれば人がなんとかできるレベルではない
企業も事故時の危機管理を積極的に伝えていなかった不幸な事故だ
2012年4月今度は、過酸化物を扱うプラントで爆発事故が起こる。まだ22才の若い運転員が命を落とした
プラントで、異常が起こったらとにかく人を現場に出さないことだ。計器室の中にいれば爆風も避けられる
この事故では、まだ現場は安全と考え、人を現場に出したことが死亡事故につながった
反応器の近くで、コンプレッサーを起動しようとした運転員が爆発で死亡したのだ
インターロックを解除すれば、どんなリスクが生じるかがうまく技術伝承されていなかったじこでもある
2012/9/29今度は能力増強運転中爆発事故が起こる。アクリル酸という温度に敏感物質の事故だ
温度は40度程度で制御しないと、重合反応という反応が始まる物質だという
タンクの中にその反応性の物質を満液にしていたという
本来なら、タンクの中を循環させるポンプを運転させるはずだったがその操作をしなかった
結果として部分的に温度が上がりタンク内で反応暴走が起こりタンクが破裂した
めったに使用しないタンクで、液の循環を忘れたというのだ。非定常作業での事故だ
高温の液が近くにいた人達に降りかかり、消火作業をしていた消防士にも降りかかり死傷した事故が起きている
2010年代の事故は、何件かは過去に起こった事故とパターンは似ている
つまり、技術伝承がうまくいっていれば防げた事故かも知れない
2020年代はどんな重大事故が起こるのかはまだわからない
事故をくい止める努力は続けていきたい

2022年01月05日

年の初めに考える--現場では本当に安全を何よりも優先しているか

企業のCSRやサステイナブル報告書を見ると、企業の経営者が書いた安全方針には「安全優先」と書いてあることが多い
問題は、現場の課長層までその考え方が本当に届いているかだ
日々の運転管理を委託されている製造課長などは、装置を止めることなく運転を継続することが求められている
トラブルもなく安定的に運転していれば、安全装置を解除するようなことはない
ところが、運転にはトラブルは付きものだ。装置の調子が悪ければ、運転しながら装置を点検することになる
その時、安全装置をどうするかだ。点検中、万一装置が停まっては困ると思うのが管理者の常だ
点検中のミスで装置が停まって欲しくないのは当たり前だ。とはいえ、機械の調子が悪いのだから、何か問題があるのだ
ならば安全装置は解除してはいけないのだが、現実は生産優先という考え方で安全装置を解除して事故が起こってしまう
こんな事例がある。発電用タービンの調子が悪かった。点検しようと言うことになった
この時、点検中にタービンが突然停まってはいけないと思い管理者は、安全用インターロックは解除した
ところが不幸なことに、タービンが暴走回転を起こしタービンが吹き飛んだという事故が過去に起こっている
http://www.sydrose.com/case100/106/
https://www.isad.or.jp/pdf/information_provision/information_provision/no37/36p.pdf
こんな事故もある。千葉の京葉コンビナートにある東京電力の発電所での発電ボイラー爆発事故だ
発電所でボイラーの点検中爆発し作業員が死亡した事故だ
https://www.tepco.co.jp/cc/press/96071701-j.html
事故報告書は官庁に提出されているが、この企業はその後原因は公開していない
原因はこうだ。ボイラの負荷変動テストをしていた。その際、データー入力を間違えた
大型のボイラーのため、急変動により、ボイラー内で失火した
本来なら、火が消えれば自動的に燃料は停止するようになっていたが安全装置を切っていたため、炉内で未燃の燃料ガスが爆発したのだ
負荷変動テストの際、誤作動などにより誤ってボイラーが停止しないよう「安全装置」を解除していたことが事故につながった
安易に誤作動を気にして、肝心の安全をおろそかにした事故だ
安全装置はいついかなる時でも解除しないで欲しい
誤作動を気にして、安全装置を解除して重大な事故担った事例は多い
安全装置は、人を守る最後の砦だ。解除しないで欲しい

2022年01月03日

今年一年の国内外の重大事故を振り返って その2

2021年は今日で最後だ。2015年末から、このブログを書き始めて6年になる。
今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった 前回にひき続き、記憶に残る事故を紹介する
2021/7/6 トナー工場で粉塵爆発  安全対策を取って再稼働したものの 8/12 再び爆発が起こる
https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/2021081300000002.php
トナーという印刷に使う粉体の乾燥設備での事故だ
第三者委員会で対策は検討して、再稼働したはずだが、万全ではなかったようだ。 粉塵爆発への対策は難しい
2021/7/7 製紙工場のベルトコンベアーで火災
2019年4月と20年3月にも工場内のベルトコンベヤーから出火しており、温度を感知する装置を使った設備点検などの防火対策を講じてきたという。
https://www.sakigake.jp/news/article/20210817AK0015/
https://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/23d83930ffb83b8cabc130fc3c81f4fa
ベルトコンベヤアー火災は、世の中で繰り返し起きている。たまにしか報道されることはないが、事例は多い
ゴムが摩擦熱などで着火するのだ。ローラーなどが固着したり、ベルトが外れかけていて何かと当たり摩擦熱が生じることもある
2021/10/7 東京都と埼玉県で震度5強を観測する首都圏地震。
この事故で千葉県のコンビナートにある製油所で火災が起きた。大きな火災にならなくて良かった
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211008-OYT1T50042/
地震対策は難しい
2021/10/10 JR東京蕨変電所で火災 首都圏JR全面停止。首都圏地震の後だけに、地震との関連を知りたいのだが報告書は出ていない
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211011-OYT1T50238/
2021/11/29 大阪で物流倉庫火災。最近大規模建屋の火災が多い。窓もないので。消火が困難で長時間火災が続くパターンだ
逃げ遅れると一酸化炭素中毒にもなる。倉庫火災は恐ろしい
https://www.asahi.com/articles/ASPD23J56PD1PTIL01T.html
一年振り返ると色々な事故がある。近年倉庫の大型化で、大型倉庫火災も増えている
初期消火に失敗すれば、必ず大型火災になっている気がする
火災報知器が鳴ってから対応しても、現実は消火に至らないのだろう
こんなレポートもある。参考にして欲しい
https://gcoe.tus-fire.com/archive_cms/kobayashi-k/cms/wp-content/uploads/2017/09/e0f734e2bc5a186fbab044b000bd7f95.pdf

2021年12月31日

今年一年の国内外の重大事故を振り返って その1

今年一年を見ても多くの事故が化学工場などで起こった
事故の報道はされるが、1年経過しても原因や背景などはほとんどその後報道されることは無い
報道は,起きた事実だけを伝えるものだからだ 時間が経ってから2度と報道されることはほとんど無い
ここに、今年の国内外の主要事故を書いておく まずは、年初に起きた消火設備による死亡事故だ
2021/1/23二酸化炭素消火設備点検中誤作動で死亡事故
https://www.khk.or.jp/Portals/0/all_oshirase/2020/01_20210126_co2attention.pdf
過去にも沢山同様の事故は起こっている 以下のURLで過去の事例を見れる
http://labor.tank.jp/saigai/101007syoukasetubi.html
2021/3/19 半導体工場で火災
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210419/k10012982551000.html
まだ調査報告書は出されていない
2021/3/29 インドネシアの製油所で大規模火災
https://www.afpbb.com/articles/-/3339341
2021/4/26 セメント会社で5万KW発電用のボイラーが爆発
ボイラー内の水管が破れて水蒸気爆発が起きたという。報告書が出ているので参考にされたい
点検管理の大切さがわかる事例だ
https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/211109_2.pdf
2021/5/10 タンクで点検中タンク内に落ち死亡
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/790534
詳細はわからないが、腐食した天板などに乗ったことで転落事例もある 安易に天板などに乗らせないことだ
2021/5/11 亜鉛の粉末を製造している化学工場で爆発。粉塵爆発だ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1114R0R10C21A5000000/

今回紹介したいずれの事故も,1件を除き原因は報道されていない
事故が起きても、原因がわからなければ教訓として利用できない そこに,事故が繰り返される理由がある
事故の原因やその後の対策情報の公開を望みたい
イラスト 出典 イラストAC

 

2021年12月29日

事故調査方法の文献

事故や災害が起きると、時間をかけて調査をして調査報告書が作られる。
やみくもに調査を進めて、報告書を作ってもその報告書が活かさなければ何もしなかったのと同じことだ。
調査をする目的は、本来事故の再発防止が目的のはずだ。その目的にかなわなければ意味が無い。
とはいえ、何をどのように調査するかは知らなければ難しい。
労働災害発生時の調査や再発防止などは色々な情報が公開されている
https://www.tokubetu.or.jp/text_shokuan/text_shokuan9.html
危険物漏洩時の事故調査方法に関しては、消防庁からこんな資料が公開されている
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/h20/2008/200811-2houdou_b2.pdf
破壊事故の調査についてはこんな文献もある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws1943/52/4/52_4_357/_pdf/-char/ja
高圧ガス保安協会の方が書かれた事故調査に関するの文献も下記にあるので興味のある方は見て欲しい。
文献名は 事故調査と安全対策 著者は堤内さんだ このキーワードでもインターネットで検索できるはずです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/17/3/17_3_160/_article/-char/ja/
イラスト出典 いらすとや

 

2021年12月27日

排ガスを安易にパージ用ガスとして使うな--微量の成分でも反応する

排ガスは誰でも有効利用したいと思うのは当たり前だ
熱回収は当然行うだろう
燃焼後の排ガスなら,成分はほとんどがチッソだからパージ用ガスとして使いたいのはやまやまだろう
でも過去の事故事例を見て見ると失敗している事故事例は沢山ある
原因は,排ガスの中にわずかに可燃性ガスが含まれているケースだ
私の知るとこの最も古い事故事例は,1964年7月1日の四日市で起きた事故だ。ブタジエンを取り扱う合成ゴムプラントの事故だ
定修準備の為、反応器をパージしようとした。パージガスには、排ガスを利用していた。
ペンタンを燃焼させて出来る排ガスには、ブタジエンと反応する、NO2が数百PPM含まれていた。
当時は不活性ガスで事故がなぜ起きたか不明であったので、その後、時間が経ってから真相がわかった。
軽油の燃焼で製造された、微量のNO2を含む不活性ガスが反応器入口バルブのシール用に3B配管で供給されていた
この配管で爆発が発生,5mにわたり破裂飛散した。
事故の前に流量計が何度かハンチングしており、ペンタンを燃焼した際の加熱片が配管内に入り着火源になったという
原因は,排ガスパージ配管に枝管がありそこの弁の内漏れでブタジエンと排ガス中に含まれるNO2が反応してしまったのだ
ブタジエンは微量であれNO2と言う物質と反応して爆発性の物質を造る
その爆発性の物質が,爆発した事故だ
燃焼排ガスは,成分は100%窒素では無い。微量の不純物が混在する
その不純物が微量でも反応する物質がある箇所のパージには適さないということだ
安易に排ガスだからと言ってパージ用ガスとして使わないことだ
プロセス設計をするに当たっては、物質の性質をしっかり知っておくことだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/38/2/38_129/_pdf
イラスト出典 いらすとや フリーイラスト

 

 

2021年12月25日

安全配慮義務とは--化学産業

安全配慮義務という言葉がある 誰が誰に対する義務かというと、【労働契約法第5 条】ではこう定めている
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
使用者とは、賃金を払う人だとこの法律では定めている。つまり、雇用主と労働者の関係で求められる義務といことになる
労働契約法と、労働基準法とは異なるので注意が必要だ。労働契約法とは、民法だ。刑事罰のような罰則は無い
労働基準監督署の行政指導の対象でも無い。しかし、安全配慮義務を怠ると損害賠償請求を起こす根拠となる
民事上の損害賠償請求を、使用者は求められることになる。使用者と労働者の関係であれば化学企業の中でも安全配慮義務は存在する
化学工場で労働者が機械に巻き込まれたりすれば、安全配慮義務違反という問題も発生する
労働安全衛生法という法律がある。この法律は、事業者(会社)が守るべきこと及び労働者が守るべきことを規定している
事業者が機械を設計する際安全を配慮した設計をせず法律も守っていなければ、安全配慮義務違反にもなる
刑法の法違反は刑事罰で処分されるし、民法上の安全配慮義務違反は民事裁判等で審議される
では、化学企業が装置を止めて、建設業などに定修工事を発注するときは安全配慮義務は生じるのかどうかである
発注書は、元請け企業に発注する。元請けは、下請けに仕事を発注するのが建設業などの形態だ
工事で、下請けの労働者が怪我をしたとしよう。
化学企業は、怪我をした労働者の使用者では無い。では、安全配慮義務は生じないかというとそうはいかない
たとえば、下請けの労働者は、化学物質で薬傷を負ったとしよう。発注者は、作業をする労働者が薬傷などを負わないような配慮が必要だ
例えば、装置や配管などの薬液を抜き、十分な水で洗浄を行い安全な環境を確保する必要がある。
それを怠っていれば、安全配慮義務違反から逃れることはできない 発注者は、使用者では無いから安全配慮義務は問われないと思わないで欲しい
多層の契約形態であっても、労働者の安全に関わる事項であれば発注者までその責任が及ぶことがある
安全配慮義務に関する法令や違反事例については、勉強しておいて欲しい
https://www.oreyume.com/column/p-cat-02/9449/
https://www.irric.co.jp/risk_info/worker/31.php
イラスト出典 https://www.think-sp.com/2013/08/19/kikikanri-anzenhairyogimu/

 

2021年12月23日

ヒューマンエラー メカニズム--個人のミスか組織のミスか

事故や災害が起きると色々な解析が行われる
その切り口の一つに「人」がある。人がミスをするからと言う観点で問題を解析するのだ
ならばどんな切り口というキ-ワードがあるかというと。端的に教えてくれる教科書は無い
人というものが発端となるならこのようなポイントで解析するとよい
まず起点は脳だ
脳の入り口から見て見ることだ。つまり、まず必要な情報を入手できたかだ。そこを検証して欲しい
つまり、事故や災害であれば、人が異常に気づけたのかだ
疲れていて警報に気づかないこともあるだろう。警報音が小さすぎたら気づかないだろう(異常に気づく環境の問題)
異常に気づけたとすれば次は、脳での判断だ
的確に判断できたかがポイントだ。必要な教育訓練を、予め受けていなければ適切な判断はできないだろう。
十分な知識や技能が備えられていたかもチェックポイントだ
次は、判断は正しかったが行動に移せたかだ。
一人で対処できるならそれでいいが、部下がいるなら、指示命令が適切にできたかだ
情報が正しく関係者に分散できたかもポイントだ
この世の中、一人で何かを行っているわけでは無い
まず。個人としての情報入手、判断、情報の展開、指示ができていたかだ
その上で、組織として情報の入手、分析判断、情報の展開、指示ができていたかも検証することだ
ヒューマンエラーというのは個人だけのミスでは無い
組織としてのミスにも着目して欲しい
イラスト出典 https://ameblo.jp/enokingenokingenoking/image-12364316814-14159901191.html

 

2021年12月19日

事故や災害を防ぐにはシステマチックな対応が必要だ--なぜなぜ分析や4M解析

事故や災害を防ぐにはシステマチックな対応が必要だ。個人個人の努力も必要だが企業として組織的な対応が求められる。
とはいえ組織的な対応とは何かと問われると、なかなか理論立てて答えるのは難しい。
災害に対してきちんとPDCA回して、事故のリスクを減らす安全管理システムを活用することが今求められている。
2011年の東北大震災以降コンビナートで大きな事故が続発した。
これを受け、災害防止の取り組みについて国の主要機関で検討が進められてきた。
2014年5月16日に、内閣官房、消防庁、経済産業省、厚生労働省の4者連名により「石油コンビナート等における災害防止対策の推進について」と題し、企業や業界が取り組むべき事項について報告書がとりまとめられている。
これに書かれている内容を、わかりやすく解説している資料があるのでここで紹介しておく。
株式会社 インターリスク総研というところから出されている文献だ。下記のホームページにあるので参照されたい。https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/disaster/57.pdf
リスクアセスメントについては、非定常と変更管理で力を入れることを提言している。
技術伝承については、Know-Whyを織り込むことと、危険を予知する能力の伝承を強く求めている。
情報活用面では、自社の情報だけに頼らず広く社外の情報を活用することを求めている。
つまり、同じような事故は繰り返し繰り返し起こっている。過去の情報を知っていれば未然に防げる事故は多いと言うことだ。
そうは言っても、消防や警察に山のように埋もれている事故情報が公開されない限り現実問題、事故の情報を得ることは難しい。
公開されたと言っても、行政などが情報を要約加工した情報だけでは教訓を捉えることは難しい。
なぜなぜ分析や4M解析をするには、必要な情報が不足している
事故から学ぶことは事故の事実ではなく、事故の教訓だからだ。

 

 

2021年12月15日

酸とアルカリ物質の違い--アルカリ腐食

酸という化学物質がある 世の中に役立つから酸が存在する。アルカリという物質も存在する
酸という物質の代表的なものに、塩酸、硫酸、硝酸などが知られている
金属の表面洗浄などに使われる 酸化された黒っぽい金属を酸で洗えば汚れが取れてきれいになる
金属貨幣経済が始まった時に酸は重宝されたそうだ。明治の初め、大阪造幣局で貨幣を量産し始めたときに硫酸を大量生産したという記録がある
酸を使うときに気をつけなくてはいけないのが水素だ
金属は酸化されるときに水素を発生する。水素は爆発性物質だ。水素の発生を意識せず火を使えば爆発する
酸を扱えば、必ず水素が出てくると思って欲しい
では、カセーソーダなどのアルカリはどういう物質かと言えばこう考えて欲しい
酸は、金属を犯す。アルカリは、人の皮膚を犯すと考えて欲しい
人の細胞や皮膚は、タンパク質でできている。アルカリは、このタンパク質を犯すのだ
アルカリが目に入れば、失明することもある。皮膚につけば、皮膚が溶けてやけどのようになる
皮膚が犯されれば皮膚呼吸ができない
人間は口から呼吸しているわけでは無く皮膚の表面からも呼吸している
薬傷で皮膚が犯されれば、皮膚呼吸もできない
アルカリは皮膚など人間を壊すと考えて欲しい
化学産業などでアルカリは、油などの洗浄によく使われる。その際、アルカリは、ステンレスなどの金属でアルカリ腐食割れを起こすこともある。
https://www.ipros.jp/technote/basic-corrosion/
アルカリ割れの事故事例も、高圧ガス保安協会から紹介されている。酸の腐食は結構知られているが、アルカリ腐食も関心を持って欲しい
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2011-189.pdf
酸は、金属を溶かす、人にも薬傷を与える。アルカリは、金属をも壊すし、人の皮膚を溶かすと考えて欲しい
酸もアルカリも金属腐食などを起こす。しっかりと特性を知っておいて欲しい

 

2021年12月12日

除害設備の設計-処理能力に問題は無いか

有毒な化学物質を扱う化学工場には除害設備というものがある。無害化して安全な状態で大気に放出する設備だ
化学工場では塩素やホスゲンなど有毒なガスが使われていたり、硫化水素などのガスの発生もある
万一大気に漏らすと人命にも関わることになる
問題はその処理能力だ
最悪の事態を考え能力が決められていればいいが,多くの事故事例から能力不足という問題がある
処理能力は、何かを想定して通常決められている。一般的な決め方は、通常発生する有毒ガス量に安全率をかける方法だ
通常のガス量というのはそれほど多くない
ところが突然の運転トラブルや停電などで、通常時を大幅に超える事例も沢山ある。運転員の作業ミスが引き金になることもある
例えば誤って、液化塩素を除害設備に流してしまう事故事例だ
液化塩素は気化すると容積が増え大量の有毒ガスが発生する。設計上の能力が、常時発生する排ガス程度であれば大幅に能力を超えることになる
除害設備というのは最悪の条件を想定して処理能力を決めておくことだ
更に、2系列化しておくことが望ましい。どちらか一つがうまく動かなくても他系列でカバーさせるのだ
まら、停電でも確実に動くようにして欲しい。バックアップ電源が必要だと言うことだ。
異常時に自動起動する方式の除害設備は、定期的に作動テストをして欲しい。リレーが故障していていざという時作動しなかったという事例もある
地震時に設計が悪く除害設備が自動起動しなかった事例もある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000197.html
非常用電源設備が,起動したもののすぐに停止してしまったからだ
地震の揺れで、冷却水の液面計が誤作動し、本来動くべきはずの非常用電源設備が動かなかったからだ
地震による液面計が誤作動する事例は多い.液面のスロッシングによる影響だ
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/analysis/372.html
除害設備を保有しているなら処理能力や動作条件を再検証して欲しい。最悪の事態でも対応できるかだ
保守も大切だ。確実に動くことを定期的に確認して欲しい

 

 

2021年12月10日

混触反応の法則--化学物質の組み合わせ

化学物質は混ざると危険というリスクがあることを知っているだろうか
化学物質というのは、単独では問題は無くても他の化学物質を混ぜ合わせると危険なことが起こることがある
これを混触リスクと呼んでいる
たとえば酸と水を混ぜた時を想定して欲しい
濃硫酸と水を混ぜると激しく発熱する。とんでもない発熱反応が起こる
酸とアルカリを混ぜても中和熱という熱が発生して液の温度が上昇する
化学物質で怖いのは、温度上昇だ。 温度が10℃上昇すると反応速度は2倍になる
30度上昇すると、かけ算だから2×2×2=8倍になる
8倍というのは、アバウトな感覚でいえば、反応速度が一桁上がると言うことだ
では、温度が100度まで上がると同じような計算式で2を10回かけ算することになる
答えは、1024倍だ
100℃まで温度が上がれば反応速度は約1000倍というとてつもない反応速度になる
このスピードで反応が急激に高まることを反応暴走という
通常の冷却では、この暴走を止めることはできない つまり、冷却能力は1000倍必要となるからだ
化学物質には常に組み合わせのリスクが存在すると考えて欲しい
混触反応は、組み合わせの法則だといえる
最低限どんな物質と組み合わせたらまずいのかは知っておいて欲しい
https://www.google.com/url?esrc=s&q=&rct=j&sa=U&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/24/1/24_37/_pdf/-char/ja&ved=2ahUKEwjMpaHG1tH0AhVdy4sBHRWRD58QFnoECAMQAg&usg=AOvVaw1j1YPzr--URnuclxcBIVcz

https://www.google.com/url?esrc=s&q=&rct=j&sa=U&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/47/4/47_229/_pdf/-char/ja&ved=2ahUKEwjMpaHG1tH0AhVdy

BHRWRD58QFnoECAcQAg&usg=AOvVaw30sgcAgFU2TPLBOZjWWR1l

 

 

2021年12月08日

粉塵爆発に思う--金属の粉でも爆発すると思え

粉塵爆発の事故が報じられていた
https://www.youtube.com/watch?v=i9D-3DJ-uRU
亜鉛の粉を取り扱う装置を起動していたとき爆発が起きたという
粉末に風を送る送風機で異音がして、しばらくして爆発したという
原因は不明と言うが、粉という物は着火源があれば簡単に火がつき、燃えるでは無く爆発することもある
亜鉛は金属だから燃えないと思う人がいるかもしれないが、金属でも条件さえ整えば燃えるのだ
粉になると空気と触れる表面積がどんどん増える。細かくなればなるほど、表面積と増えていく
当然火がつけば、表面積が多いのだから爆発的に燃焼する
http://www.bsb-systems.jp/page0136.html
アルミという金属も良く爆発事故を起こす。タイヤのホールを製造する工場では、アルミを削るとき大量の粉ができるからだ
自分の工場でも、大量の金属粉塵がでるなら粉塵爆発のリスクを検討して欲しい
今回の着火源は、異音がしたというのであれば摩擦熱の可能性もある
ファンの内部の羽根は金属でできている。羽根とファン本体の金属と接触すれば摩擦が起こる
もう一つは、金属と擦れ合えば金属火花も出る。金属火花も着火源だ
過去にも、ファンの摩擦熱で火災が起きている事例も多い
ファンで異音がしたら、無理に回さないことだ
できれば、定期的に点検をして欲しい
何十年も点検していなければ事故になると考えて欲しい
こんな文献もある
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2017/100-column-2.html
粉塵爆発の映像があるビデオは消防庁から公開されている.興味があれば見て欲しい
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/post4.html

イラスト出典 いらすとやフリーイラスト

 

2021年12月06日

HAZOPは化学産業以外でも使われている-医療分野

HAZOPとは化学プラントなどで使われる安全性評価手法だ
http://hazop.jp/hazop_basic.html
化学プラントは、流量や温度、圧力、液面などが一定の条件で保たれていると安定的に生産ができる
ところが何かのトラブルが起こると。流量や温度が変化する。これを、ズレという。
ズレが起こると、化学プラントは乱れ始める。人がうまく対応すれば、もとの状態に戻せるが、うまくいかないケースがある
それが、事故だ。圧力が上がれば装置が破裂する。反応器などの温度が上がれば、反応暴走につながる
ならば、流量や温度などのズレが起これば、どんなまずいことが起こるのかを事前に検証すれば事故のリスクは減る
そこで考え出されたのが、ズレによる影響を解析し、対策を立てるとい安全性評価システムだ
ズレを考えるときの、キーワードが準備されている。外国からきた手法なのでこんな7つのキーワードがある。その中でいくつかを紹介すると
「No」:何もしなかったらどうなるのか? 「Less}:少なかったらどうなのか 「More]:量が多めだったらどうなるのか
「Reverse]:逆だったらどうなるのかなどがある
化学産業では、例えば「No」は、流量に関してみれば、流れないとどんな問題が起こるのかと考える
「less」は流量が規定より少なめなら、やはりどんな問題が起こるのかと考える
このように、ズレがおこると何か悪いことが起こるのではないかと考え安全対策を取っていく手法がHAZOPといわれている
最近は、このような手法は医学界などにも使われている
例えば「No」は、もし手術をしなければどんな悪いことが起こるかと考えるのだ
「Less」は、手術で取り除く範囲が、少なめだったら患者さんにどんな悪い影響が出るかを考える
「More」は、除去範囲が多すぎても悪いことが起こるのではないかと考えるのだ
「Less」は逆というキーワードだ。例えば手術する対象を逆にしてしまったケースだ
本来なら、右の肺を手術する予定だったのが、誤って左の肺を手術してしまうケースだ
X線の写真を左右取り間違えるケースなどで起こる。どうしたらそれが防げるかを、考えていくのだ
このように、HAZOPずれを想定して対策を打っていく処方なので、あらゆる業種で使うことも可能だ
ズレというものに常に着目して安全対策を取っていって欲しい

イラスト出典 いらすとやフリー素材

 

2021年12月04日

粉塵爆発を甘く見ていませんか

粉塵爆発は,頻度は少ないがひとたび事故が起こると甚大な被害を及ぼすことがある
化学工場では,粉よりも液体の危険物を取り扱うことは多い。だから、、粉に起因する事故事例の頻度は少ない
したがって,粉が原因で起こる事故は少ないが.少ないからと言って粉の事故を甘く見ないで欲しい
最近の、粉が関与する事故事例としては
2021/8/23に、印刷などに使われる粉であるトナー工場の爆発事故が起きている
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2108/13/news075.html
2017/12/1日、静岡県富士市の化学工場で多くの死傷者を出す粉塵爆発が起きている
事故から約1年が経った、11月20日に、この企業から事故報告書が発行されている。
http://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/document/news/20181120fuji7.pdf
事故報告書によると事故はこのようにして起きたという。
印刷インキ用樹脂を製造していた。固形樹脂を粉砕後フレコンと呼ばれる袋に粉状にして投入していたときに内部で静電気による放電が起きたのがきっかけという。袋の中で最初の粉塵爆発は起きた。これで、収まればこれほどの大事故にはならなかった。
粉塵爆発は怖いのが、最初の爆発が引き金となって次から次へと誘爆していくことだ。
フレコンと投入口は密閉構造では無かった為、炎は、投入口の近くにあった、粉塵除去用のダクトの中に吸い込まれていったようだ。
ダクトの中は清掃していなかったことから、当然粉塵は溜まっていた。
それにも火がつき、ダクト内で大きな粉塵爆発を起こした。
ダクトの出口から出た、爆風は室内のダクトの上などに溜まっていた粉塵を更に巻き上げ更なる粉塵爆発の連鎖を起こしたようだ。
最後は、室内に保管していた化学薬品に火がつき薬品火災も起こしてあのような大爆発となってしまったと書かれている。
報告書では、企業は粉塵爆発の危険性を感じていなかったとある。
しかし、粉を長年取り扱ってきている企業なのだから粉塵爆発にはかなり注意をしていたはずだ。
粉の取り扱いを甘く見ないで欲しい.粉塵爆発が起こるととんでもないエネルギーが放出される
人一人は簡単に殺せるエネルギーだ


2021年11月30日

研究所の実験設備の防爆管理を甘く見ていないか

研究所の安全管理で気になることは沢山ある
電気設備の防爆というのもその一つだ
可燃性物質の実験をするなら、着火爆発のリスクは限りなく存在する
しかし,研究所の幹部と話をしても防爆という用語の理解をする人は皆無に近い
だから,可燃物や有機溶剤の実験で事故は起こる
この背景には、まず多くの企業で研究所の専属安全スタッフが配置されていないことが要因だ
製造工場には安全スタッフは必要だが、研究所は安全スタッフは不要と考えている経営トップが多いからだ
研究所こそ,未知なる分野に挑戦することも多いのだから有能な安全スタッフがいなければいけないのにそこは充足していないのが現状だろう
研究所で可燃物を大なり小なり使えば必ず発火か爆発というリスクは存在する
電気ヒーター、電気で動く実験器具などは発火源となる。接点火花で、可燃性物質の着火源になるからだ
研究では、取り扱う化学物質の量が少ないから大丈夫と安易に考えないで欲しい
燃焼の三要素が整えば、物質は必ず燃えるし、激しく燃えれば爆発することもある
研究所では、工場規模の爆発には至らないかも知れないが、可燃物の爆発は指や腕を吹き飛ばすほどのエネルギーはある
研究部門での爆発や火災を甘く見ないで欲しい

可燃性の薬品を入れる冷蔵庫を市販の冷蔵庫を使っていて爆発したこともある
防爆の冷蔵を使っていなかったからだ
工場だけではなく研究部門への安全管理体制も充足して欲しい

 


2021年11月26日

タンク底板腐食--部分的な対応ではすますな

貯蔵用タンクなどは建設してからずっと使いつずけるはずだ
長いものでは,50年、60年使っているはずだ
タンクの材質は特別な理由がないかぎり材質は鉄だ
鉄は値段が安くて強度もあるから当然使われる
しかし、鉄には弱点がある。腐食に弱いと言うことだ
タンクに入れてある,物質に腐食性の物がわずかでも存在すれば少しずつ腐食していくことになる
タンクの中に入れる物質そのものは腐食性がなくても,わずかに水が混入してくることがある
例えば油などを入れるにしてもわずかに水が含まれることがある
水と油の比重を比べると,油は軽いので下の方に水はたまる
そうすると,タンクの底板と水が接触することになる
水の中に,塩素や硫黄などのイオンが含まれていれば,時間をかけて鉄は腐食されている
タンクの開放点検で底板に腐食が見つかったときどうするかだ
穴の開いたところを単純に補修するだけでは,単なる対処療法になる
全面肉厚測定をして,悪い箇所は広範囲に板を交換しない限り、次の開放点検までどこかで穴が開いていく
更に悪いことに,漏れた水は基礎部の土壌などにしみ込む
底板の裏面にも腐食性のある水などが回り込むことで、さらに外部からも腐食が広範囲に進行する
結果として最後は,内容物が腐食した穴を通って外部に流れ出す事故を起こすことになる
ここに,タンク底板腐食事故の情報があるので紹介しておく
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/199/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/h22/2211/221111_1houdou/05_houkokusyo.pdf
タンクの底板腐食を甘く見ないで欲しい

 


2021年11月24日

ボイラーの爆発事故--事故報告書が出されていたので紹介する-目視検査で大丈夫か

2021/4/26にボイラーの爆発事故があったのを覚えているだろうか
ビデオや写真を見るとかなり破片が吹き飛んでいる。近くの駐車場にあった車が燃えていた
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210426/k10012999561000.html
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210427-OYT1T50109/
これを見ると久々の大型ボイラーの爆発事故だ
5万KWの発電用ボイラーだという。燃料は石炭だという
ボイラーは法律としては労働安全衛生法で規制がかけられている 厚生労働省の管轄だ
ボイラー協会というところが民間の団体として活動している
事故の情報は沢山持っているようだが、会員以外には公開していないようだ
ボイラーの爆発大はきく分けると、燃料が原因の場合と水が原因の2種類だ
燃料は入れているのに火が消えたりすれば不完全燃焼が起こる。不完全燃焼が起こると、爆発混合気ができてしまう
そこで再点火すれば、爆発と言うことになる。スタート時でも、運転中でも起こる事故のパターンだ
もう一つは、ボイラーへの給水だ。ボイラーは、水を蒸発させる装置だ
蒸発装置は、中に入った水を加熱して蒸気を発生させる。蒸発した分だけ、水を自動的に補給して液面を維持している
ところが、何らかの不具合で水が無くなると空だきになる。装置は高温だから、そこへ水がかかれば水蒸気爆発を起こす
ボイラの中には,蒸気の元となる水を流している水管というものがある。この水管が,破れるとやはり炉内で水蒸気爆発が起こる
今回、この事故も調査報告も出ず,原因は公開されないのかなと思っていたら,企業から事故調査報告書が出されていた
水管の検査を、目視だけに頼って,減肉を定量的に管理できていなかったとの記述がある
目視検査という手法には限界がある。肉厚検査など、傾向管理も重要だ。コストとのバランスはあるが工学的検査手法を併用して欲しい
たかがボイラーと甘く見ないで欲しい爆発を起こすこともある装置だと考えて欲しい
イラスト出典 イラストAC無料イラスト

2021年11月22日

10年一昔-技術伝承 デジタルフォーメーション DX

1年も経てば、時代は変わる。まして、10年も経てば大きく変わっているのに人は気づかない
昨年の今頃を覚えているだろうか。3年前の今頃を覚えているだろうか。10年前の今頃を覚えているだろうか
数ヶ月前のことも覚えていなければ、もっと前のことはなかなか覚えていないはずだ
会社に入社して、退職するまではおよそ、約40年くらいだ。つまり、10年を四回繰り返すのだ
最初の10年は、新人としてがむしゃらに色々なことを覚える。次の10年は、後輩もいるだろうから、先輩として頑張る
次の10年は、昇進して管理者になる.責任ある地位になり、経営的な物の見方を覚える。最後の10年はどうう生きるかだ。
このように、サラリーマンをやっていれば10年毎の節目はある
設備も同じような、節目を持つ。最初は、トラブルも多く、色々手を加えて安定期に入る。
10年くらい経つと少し故障が出てくるが、手を加えれば正常に動く
20年経つと、少しずつガタが出てくる。でも、部品を交換すればまだ正常に動く
30年くらいから、すこし問題が出てくる.特に電気部品は、30年は持たない。更新が必要なのに、手をこまねいていると発火事故などを起こす
40年も経つと設備も寿命を迎える。でもそれを受け入れないから、火災や爆発という形で現れる
化学プラントに携わってきて、今振り返るとそう思う
10年という節目がある.それをしっかりと管理する必要がある
2020年代をどんな節目として捉えるかだ
DX技術が盛んにうたわれている.保有するデジタル情報をいかに有効に使うかが求められている
企業は膨大なデジタル情報を持っているが、それを使い切ってはいない。どう使いこなすかという人材も十分ではない
それ以前に、デジタル情報にどんな価値があるのかもわかっていない
化学産業も、1980年代からDCSというデジタル機器を使い始め、既に40年分の情報はあるはずだ
そろそろそれを使いこなしていい時期だ
でも、なかなかその価値をみいだす人材は育っていない
そこにDX推進の難しさがあるのだろう

イラスト出典 フリーのイラストルームホームページより

 

2021年11月20日

戦闘機の風防落下はパイロットの施錠ミス-人に頼らない安全対策も必要だ

航空自衛隊は、福岡県朝倉市付近で2021年10月、F2戦闘機から、操縦席を覆う約90キロの風防(キャノピー)が落下した事故がある
パイロットが、風防がロックされているかどうか確認しないまま飛行し、操縦席と外気との気圧差が生まれたのが原因とみられるという報道があった
パイロットは、ロックされていない場合に点灯する警告灯の確認もしていなかったという。
この報道をみて思うのは、高速で飛ぶ戦闘機が人がミスをすればそのまま何ら機械的な安全対策がなされず飛べてしまうと言う事実があると感じた
本来なら、戦闘機という道具を設計するに当たって、製造メーカーはフェイルセイフ、フールプルーフという概念で設計しているのかと思ったら現実はそうでは無いんだと感じ取れた
車であれば、シフトレバーをドライブに入れてあれば、エンジンキーを回してもエンジンは絶対かからない設計になっている
フールプルーフという安全設計思想で,事故が起きないように設計しているのだ
ところが、戦闘機になれば運転するのはプロだからという考えでこのキャノピーの安全対策はこのような設計がなされいない
ロックがされていなくてもて飛べてしまえるようだ
人はミスをすると考え方が、戦闘機には取り入れられていなくていいのだろうか
落下した、風防が一般人に被害を与えなかったから良かったものの、やはり設計上はおかしいという気がする
設計の背景には,とにかく軽くつくりたいという思いがあるのだろう
余計な部品を付ければ、機体は重くなる
設計の根幹では、民需品であれ軍需品であれ人はミスをするという考え方にもとずかないとこの手の事故は防げ無いのではないだろうか
プロだからミスをしないというわけでは無い。プロと素人の違いは単なる、ミスの確率の違いだけだ
所詮人である以上、ミスの確率はゼロではない
ミスが、致命的な事故につながるなら、プロアマ差を付けず、人に頼らない安全対策を実施すべきだ

写真出典 鉄道と飛行機の写真館

 

 

2021年11月18日

安全確保に必要なガバナンスの大切さ

安全に関する用語としてガバナンスという用語がある
企業統治などとも呼ばれる
大きな企業になればなるほど、末端の部分に経営者の目が届かなくなる
そうすると、色々な不祥事が生じる
大事にならないケースもあるが、末端での不祥事が企業をゆるがすことにもなる
安全に関しても、企業トップは部下に任していたでは、済まない
安易な権限委譲だけでは済まされない
実務的な権限委譲はしていても、最終判断という領域に関してはどれだけ経営トップが関与しているかは問われるところだ

最後は、経営トップに責任が求められるかだ
問題が起こらないように常に企業トップに情報が上がってくるシステムを構築し続けなくてはいけないのだ
PDCAがまわる仕組みが必要となる
企業を安全にコントロールすることが求められている


経営者に総合的な関与が求められている時代だ
安全をないがしろにしないで欲しい

2021年11月13日

延岡の半導体工場火災事故報告書が発行されていた

世の中半導体不足だ。半導体工場での火災事故が、日本では、2020年と2021年に立て続けに起きている。
2020/10/20、九州で半導体工場の事故が起きた 建屋内火災で数日間燃え続けた、大火災だ
この2020年宮崎県の延岡で起きた火災事故の報告書が出ていたので紹介しておく。
https://www.asahi.com/articles/ASP9G6WN5P9GTNAB005.html
企業が出した事故報告書もダウンロード出来る
https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2021/ze210914.html
半導体工場は秘密の固まりだ 事故の原因がわかってもたぶん公開されることはないだろうと思っていたがしっかりと公開してくれた
関連企業にとっては、本当にありがたい内容が数多く書かれている
推定原因と、再発防止策だ
推定原因では、電気関係と記述されている。電気ヒーターや、接点類も数多くある。発火源には十分なり得る
装置は、電気部周りは難燃性だが、周辺部にはプラスチック類も多く使われていて一度燃え始めると消すのは難しいとの記述もある
清浄剤として、アルコール類も使われており火炎逸走の被害拡大に関与したようだ
火災報知器はあったものの、人が先に異常に気づいたようだ。クリーンルーム内の空気循環で、検知が遅れたようだ
異常の早期発見には火災報知器の、設置場所にも工夫が必要であると記述している
更に、法定個数は満足していても、自主的に設置個数を増やすことも考えた方が良いとの表現もある
装置は、設置してから20年とある。電気部品などは、点検はしていたそうだが、SSRリレーなど交換部品はきちんと交換していたのだろうか
発熱リスクの高い部分の、交換などの記述はないが気になるところだ
報告書を読むと、いかに早期発見するかがポイントと読み取れる。難燃性の部材を積極的使うにしても、全ては難燃化できないからだ
人が気づいたときは、炎は2~3mあったとの記述もある。初期消火は難しいだろう。おまけに、一酸化炭素中毒の恐れもあり空気呼吸器を付け面体を付けた状態の視野の狭い中で、広がった炎を消すのは無理がある
火が出てしまえば、クリーンルームなどの密閉空間で初期消火はかなり難しいからだ
スプリンクラーも設計段階で考慮が必要だろう
以前私のブログでの半導体工場の事故について書いたことがある。そちらも参考にして欲しい。
2021/3/19未明に起きた半導体火災の事故報告書はまだ公表されていない.公表されることを期待したい

イラスト出典 イラストや

 

2021年11月11日

日本の炭鉱で起きた死者458人の粉塵爆発--粉塵爆発後一酸化炭素中毒

今から約半世紀前の、1963/11/9に九州にある炭鉱で石炭の粉塵による爆発が起こった
粉塵爆発の後、発生した一酸化炭素により、中毒も起こり死者458人、重軽傷者555人の大惨事となった事故がある
http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000611.html
1960年代というのは、産業構造が大きく変わり始めた年代だ
石炭から石油へと産業構造が大きく変わり始めていた
1958年には、日本では石油を原料とするコンビナートが生まれた
産業に使われていた原料が、石炭から石油へ変化することから、当時の主要産業であった炭鉱産業も大幅な変革を求められた
大規模なリストラが行われ、この事故を起こした炭鉱でも従業員が15000人から10000人に減らされた
人が減れば、当然安全対策もおろそかになる
石炭の粉は、粉塵爆発を起こすことは当時でも知られていた。粉塵爆発を防ぐには、水を常にまいて湿らせておくことが基本となる
この当たり前の事故防止策も、人が減れば十分にはできなくなる。
結果として、水まき作業などを怠るようになり、石炭を掘っていた坑道の中で粉塵爆発を起こしてしまったのだ
生産優先、安全をおろそかにした結果だ
産業構造が変化するとどうしても、経済性の劣る産業は無理をしてでも生産をすることになる
結果として安全対策がおろそかになってしまう
エネルギー政策の大きな変換点で日本で起こった悲惨な事故だ
今の世の中でも、企業経営の中でも採算性の悪い事業は、知らず知らずのうちに安全への投資がおろそかになる
安全投資についてもしっかりとした経営層のガバナンスが必要だ

 

2021年11月09日

「バイパス配管」が引き起こす事故-HAZOPでバイパス弁の閉め忘れを見落とすな

色々な設備には,バイパス配管と呼ばれる配管が取り付けられていることが多い
例えば、スタートアップの時は汚れた液が流れる場合は本来の配管を汚したくないためにバイパスする配管を取り付けることがある
バイパス配管は、正常な運転になれば流さないように弁をしっかり閉じて流れないようにするのが一般的だ
こんな事故事例がある。触媒を流す流量計の脇にバイパス配管が取り付けられていた 反応器に触媒を送る配管ラインだ
定期修理中は、流量計を異物から保護するため洗浄用の液はバイパス配管側を流していた
いよいよ,運転開始と言うときにこのバイパス配管側の弁を閉めるのを忘れた
装置の運転を開始し,触媒を流し始めたところ流量計の指示はあまり増えなかった
規定の量を入れようと流量計のバルブを更に開けていったところいきなり反応器内で異常反応が起こったという事故がある
事故の原因は,パイパス配管の弁を閉め忘れていたため流量計の指示量以上に大量の触媒が反応器へ流れ込んだからである
バイパス配管側を通って想定外の量の触媒が反応器へ送り込まれ異常反応が起こった事例だ
流量計の指示の8倍もの触媒が流れ込んでいたと報告書に書かれている。 結果として、反応器の温度計の針は500度を振り切れていた
異常に気づくのが遅れたのは、反応器の温度警報ヒューズが切れていたことも原因だ
つまりヒューズが切れていたことで、温度異常警報は鳴らなかったのだ
反応器からの安全弁から吹きだしていた白煙を見て始めて異常に気づいたという
幸いにして爆発はしなかったが、もう少し発見が遅ければ大災害になった事故だ
1971/8/5エチレンプラントのスタートアップ中の事故だ。ヒヤリで済んだので世の中の事故DBには載っていない
この事故の教訓は「バイパス配管の弁の閉め忘れ」が思わぬ重大事故を引き起こすと言うことだ
HAZOPでもどれだけの人が,バイパス配管を意識しているのだろうか
ぜひ、HAZOPでは計器のバイパス配管があれば,このような事故がおこると考えて欲しい
トラブルが起きれば、温度警報が必ず鳴るはずだと安易に考えないで欲しい 温度計が故障していることもあるはずだ
いつも警報が鳴るとは限らない 過去の事故事例の中でも,警報を聞き漏らしたという事例も多い
「バイパス配管」は、「ずれ」を引き起こす可能性のある危険源と思って欲しい
施錠するか、チエックリストをつくってしっかりと管理して欲しい

 

2021年11月07日

タンクのスロッシング現象ーー地震

地震が起こると怖いのは誰でも知っている
化学工場で地震が起こると、ある一定震度を超えると自動的に工場を停止するようになっていることも多い
装置は安全に停止するようになっているのは良いことだが、地震の揺れで思わぬことがおこることがある
タンクなどの液面が激しく揺れる現象だ。これを、スロッシング現象と呼ぶ
満液に近い状態でタンクに液をいれていれば、液面が激しく揺れたことにより思わぬトラブルになる
過去には、浮き屋根式タンクから液が漏れ着火した事故もある
新潟地震でのタンク火災だ
https://tank-accident.blogspot.com/search?q=%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%9C%B0%E9%9C%87
地震の揺れで液面が上下すれば、コーンルーフ型タンクであれば天板の溶接部に亀裂を生じることもある
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento100_14_shiryo3-2.pdf
長周期型と呼ばれる地震では、この地震による液面変動であるスロッシング現象が激しい
タンクをほぼ満液で使っていると地震時にこのような影響を受ける
地震に備え、液面管理はしっかりと行って欲しい

 

2021年11月05日

仕切り板を内蔵した弁もある

仕切り板を挿入することは、確実に縁切りができるというメリットがある
一方で、仕切り板を挿入する作業でミスが起こってしまえばやはり、漏洩、火災、爆発や薬傷などの事故になる
大口径の仕切り板を入れるとなると作業そのものも大変な作業になる。仕切り板も重量物となるからだ
場合によっては、足場や作業台の準備も必要になる。コストも馬鹿にならない
小口径配管なら、仕切り板を入れる場所を間違えたと言う事故事例もある
仕切り板を抜くとき、縁切りしていた自動弁が突然開き事故になった事例もある
茨城県の鹿島コンビナートで起こった事故がある。空気で動く自動弁の、下流側に挿入していた仕切り板を抜くときに起きた事故だ
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/pdf/saigai_houkoku_2016_10-2.pdf
空気式自動弁の、空気の元弁を閉めていなかったのだ。その為、仕切り板を抜くとき操作SWに触れ自動弁が突然開いてしまったのだ
大量の熱油が噴き出し、周りにいた作業員4名が死亡した事故だ。その後の安全対策として、仕切り板を内蔵したエスペロ弁という弁を採用したという
通常は普通の弁としての開の状態で使える。弁のハンドルを動かしていくと、内蔵された仕切り板が動いて、弁の中に仕切り板が入り込んで弁が閉まる構造だ
詳細は、メーカーのホームページを見て欲しい
http://www.insins.co.jp/wp/wp-content/uploads/2017/08/esperovalve.pdf
とはいえ、メーカにより微妙に構造も違う
過去にインドで、同じような仕切り板を内蔵した弁が半開状態になったときに液が漏れて火災になつた事故もある
http://tank-accident.blogspot.com/search?q=jaipur
この弁は構造上、半開状態で使うと、液が漏れ出す構造になっていたのだ
構造原理をしっかり理解してこの種の弁は利用して欲しい

 

2021年11月03日

HAZOP-連続プロセス系とバッチ系の違い

石油精製、石油化学、化学物質を取り扱う化学工場では安全性評価の手段としてHAZOPの活用が求められている
HAZOPというのは、ズレが事故の要因になるという考え方から生まれた安全性評価手法だ
連続プロセスと、バッチプロセスでHAZOPの違いがあるかとよく質問されることがある
私はこう答えている
連続プロセスというのは、機械が主体となりプラントを自動制御している。したがって、ズレが起こるのは機械が故障したときだ
ポンプが壊れたり、計器が壊れたり、自動制御弁が故障したりするズレが事故を引き起こす
したがって機械の故障を重点的に、ズレと捉えて解析すれば、事故を未然に防げる
ところが、バッチプロセスを見て見ると、人が介在する部分が連続系と比べて格段に増える。手動操作が加わるからだ
ということは、バッチ系では機械の故障もさることながら、人のズレも考慮に入れて解析しないと事故を未然に防げ無いことになる
人のズレはこんな形で現れる
例えばNOだ。弁の操作を「忘れる」。LESSなら、弁の操作が「不十分」。MOREなら、弁を「開けすぎる」。REVERSEなら、弁を「逆」に開けたと言うことになる
otherであれば、「余計なこと」をしただ。
更に、人のHAZOPのガイドワードには、時間的な要素を追加する必要がある
例えば、操作するタイミングが、「速すぎた」、又は「遅すぎた」などだ。
所定の時間より、操作時間が短かかった、又は長すぎたなどだ。時間的要素も考慮する必要がある
つまり、バッチ系では、人という切り口で、ズレを追加して考える必要がある
連続系とバッチ系の違いは、人という要素を考えるか考えないかだ

 

2021年10月31日

事故データーベース--産業安全総合研究所

日本では事故や災害のデーターベースは公開されているが、内容や情報量を考えるとまだまだ十分ではない
最近の公開情報を調べていたたら、産業安全総合研究所の事故データーベースが事故情報を追加し公開しているのがわかった
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2020_05.html
第6次の公開となるものだ
前回の第5次版と大きく変わったのは、新たにに1955年(昭和30年)から1964年(昭和39年)迄の情報が追加されたことだ
新たに2008年(平成20年)から2010年(平成22年)の新規追加もある
事故が多発した、1973年(昭和48年)と1974年(昭和49年)について事例を30件くらい追加している
公開されている、総件数は計6430件だ
鉄鋼、金属加工、化学工業、医薬製薬、石油精製、鉱山業など幅広い分野の事故情報が公開されている今回の新たな公開では、1950、1960年代の事故を追加で公開している
1950、1960年代は、日本でコンビナートという化学産業形態が始まる以前の時代だ
手工業的な従来の工場も多かったことが、データーベースから読み取れる
加熱源が直火が多いことが、事故の要因になっている。反応釜などから少し蒸気や液が漏れたとき、加熱用バーナなどに触れ着火事故が多く起こっている
又、自動制御も進んでいない時代だから、人のミスも多く見受けられる
興味のある方はこの事故DBを見て見ると良い

イラスト出典 IT用語辞典より

 

2021年10月29日

HAZOPをうまく活用するには--なぜ事故が起こるのか

石油精製、石油化学、化学物質を取り扱う化学工場では安全性評価の手段としてHAZOPの活用が求められている
HAZOPというのは、ズレが事故の要因になるという考え方から生まれた安全性評価手法だ
化学工場であれば、温度というずれが事故につながることがある。
例えば、反応器の冷却水が、流れなくなったとしよう。つまり流れ、無しというずれが発生したとする
結果として、反応器を冷やすことができなくなり、反応熱により反応暴走して爆発が起こるかも知れない
つまり、冷却水の流れが無しというずれが起これば、反応暴走という事故のシナリオが想定できる
事故につながる、ずれは流量だけではない。液面や、圧力、温度、化学物質の成分量など多くある
一つ一つのずれを、P&IDフローシートという図面でチェックしていけば潜在する事故の要因を全て拾い出すことができる
そうはいっても、ずれがどんな危険なことを起こし出すかを想定するのはたやすいことではない
そこそこの危ないことは想定できるだろうが、なかなか最悪の事態を想定するのは容易ではない
昔のように、事故を色々経験していれば、事故の想定は経験をもとに考えることはできるが、昨今のように事故やヒヤリの経験度合いが少ない現状では想像するのはなかなか難しい
HAZOPをやることはいいことだが、HAZOPをやる前にやはりなぜ事故が起きるかを体系的に教育することが不可欠だ
人はどんなミスを犯すのか、物質危険性が引き起こす事故、設備のトラブルがどのように事故に進展するのかを知っておく必要がある
HAZOPを有効に実施して行くにはやはり事故が起こるメカニズムについて体系的な基礎知識が必要だ

 

 

2021年10月27日

空冷式熱交換器の事故--エアフィンクーラー

空気で冷却する熱交換器も工場で使われている。エアーフィンクーラーなどと呼ばれる
冷媒として空気を使えば、コストメリットはある。空気はただで手に入れることができるからだ
空冷式の熱交換器は、構造は実に簡単だ。
高温の設備を取り扱う製油所などでよく使われている
換気扇のような大きな羽根を、空冷式熱交換器の近くで回して強制的に冷やすのだ
ところが、この空冷式熱交換器は、結構事故を起こしている
冷却される液体を入れた細い配管チューブが腐食などで穴が開き、漏れたとき火災になる事例だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2007-150.pdf
流体温度は、数百℃だ。可燃性の油などがこの空冷式熱交換器で冷やされる
ガスケットのゆるみで漏れることもある
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2009-037.pdf
油が漏れると、重力があるから漏れた油は下に落ちていく
下に落ちた際、高温物体がなければいいのだが、たいていは下の方に高温物体がある
スチームトレースをしている蒸気配管などがあるのだ
蒸気の圧力によっては、数百度もあるので、流れ出た物質の発火点を超えていれば簡単に着火する
高温のポンプが下に設置されていて火災になることもある
高温機器の上下レイアウトは、漏れを考慮した配置として欲しい

 

 

2021年10月25日

リスクアセスメントを成功させるには

今の世の中リスクアセスメントは企業にあっては必須条項だ
昔は事故が起こってから、事故の原因や対策を考えた。今の世の中、求められているのは事故が起こる前に対策を打つことだ
どうすれば、事故を未然に防げるかが求められている。この為には、自分の所に存在するリスクを評価することになる
そうは言っても、そう簡単にできるわけではない
経験や勘によってある程度は、リスクアセスはできる。しかし、個人差が出ては困る。システマチックにリスクを評価できることが求められる
そうはいっても、企業の管理者は皆同じレベルかと言えばそうでは無い
経験や教育訓練のレベルも違う。そこに問題がある。ならばどうするかだ。自前で教育をするのがいいかだ
どんなことをしても、必ず管理者にレベルの差は出てくる。これは避けられない
現場のたたき上げの人と、管理職が現場の知識に関して競争しても所詮勝てるわけがない
現場の知識は、現場の人がになえばいい
管理職に求められるのは、多様な価値観だ。常にその答えが正しいのかを、現場の人達とは違った価値観で考える能力だ
現場の人と同じ価値観で考えては、問題の発掘はできない。
皆が同じ考え方をしてしまうと、事故を防ぐのは難しい。どこかに、疑念を抱かなければいけないはずだ
管理職には、現場の人とは違う価値観を持っている人が求められているはずだ
とにかく管理職には、色々な価値観を持つ人と会うチャンスをつくってあげて欲しい
他職場の人、他工場の人、他社の人、違う業界の人、利害関係の異なる人、違う業種の人などとどれだけ接触できるかだ
井の中の蛙大海を知らずだ。多様な価値観を持つ管理者を育てなければ、企業の安全は向上しない

 

 

2021年10月23日

安全に関する経営トップの関与--ガバナンス--安全の掌握

今の世の中安全に関しては、かならず経営トップの関与を聞かれる。経営トップは収益だけを見ていれば済む時代ではない
必ず安全についての関与を問われる。部下に任しているという答えではノーだ
いかに経営トップとしてリーダーシップを取っているかが求められる。いかに取り巻きが、経営者を支えているかだ
経営トップは、事務方がトップになるケースもあれば、技術職が経営トップになるケースもある
どちらが、安全に関してセンスがあるかというと、どちらとも言えない
本人の資質だからだ。バランス感覚のいい人もいる。そうで無い人もいるのは当然だ
とはいえ、そこそこの及第点は取る必要がある。社員を食わせなければいけないからだ
安全に関しては、安全に関する重役を割り当て権限を委譲する経営形態もある
権限委譲ではあるが、経営者が直接的には関与しない形態だ。経営者の負担は減るがそれでいいのか疑問は残る
間接的に安全をガバナンスすることが本当に正しいのかは疑問が残る
経営トップとは言え、裸の王様ではない。いかにスタッフが、支援しているかだ
スタッフの力量で、トップのリアクションも変わる
事務局や安全スタッフの能力が問われるのだ
組織は個人で動いているわけでは無い。最終判断は、トップにゆだねられるが、判断の所以となる情報はあくまでも取り巻きが作り上げるのだ
スタッフの能力はものすごく経営に関与する
安全スタッフには、そこが求められている
上に対しても情報発信することが必要だ。工場や各職場に対しても、しっかりと実質的な行動に移せる情報発信が求められている
企業の中でスタッフの役割は、参謀なのだろう

出典イラスト イラストAC

 

 

2021年10月21日

保安防災と労働安全

保安防災という言葉を知っているだろうか
労働安全という言葉はかなり知られているが、「保安防災」という言葉はまだまだ幅広く知られていない
労働安全というのは、人がケガをするのを防ぐことだ
保安防災というのは、工場がケガをすることを防ぐのだ。つまり、工場が火災になったり爆発したりするようなことを防止するのだ
どちらも、バランス良く対応しなければいけないのだが、どちらかというと労働安全が工場の安全活動のメインになる
爆発や火災はめったに起きないことなので関心の度合いは低いからだ
そうは言っても、ひとたび爆発や火災が起これば大騒ぎになる
労働災害に関しては、かなり企業は情報を持っているが、保安防災に関しては十分な情報があるとは思えない
事故はいつも起こるわけではない。突然起こる
なぜ事故が起こるのか。どうすれば事故は防げるのかは、知識としてしっかりと企業内に展開して欲しい
事故や災害に関して色々と情報を持っている専門家の力を上手に活用して欲しい
一企業の中でできることは限られているからだ

 

2021年10月19日

金属に関する知識-鉄の強度

鉄という金属はあらゆる産業に使われている
金属の中では値段が安いのであらゆる所に使われる。
値段が安いと言うのは強みだ
そうは言っても鉄は万能では無い。低温脆化という問題点もある。温度が低くなると、金属は脆くなり割れなどが起こるのだ
鉄は高温領域でも使える。値段が安く強度もありあらゆる産業にて使われる
化学プラントでも金属選定では、あらゆる評価が行われる
強度、耐食性、コストなどを総合的に評価して材料選定が行われる
このバランスをとるのがなかなか難しい。経済性を考えすぎてもいけない。性能の限界を追ってはいけない。
どこかで妥協せざるを得ない。このバランスが難しい
鉄と言うものは、含有する炭素濃度によって性質はかわる
炭素分がほとんど入っていないと純鉄になる
炭素分が入らないと鉄の性質はとても固くなる。固いというのはいいことなのだが、折れやすいという欠点がある
日本刀であれば、炭素分が少なすぎると簡単に折れてしまう
鉄というのは、含有する炭素分を変えれば、固くすることもできる。逆に炭素分を増やせば柔らかくすることもできる
金属というのは実に面白い、微妙に成分を変えることで性質が変わってくる
金属の性質についても勉強して欲しい
化学工場で安全を担当するなら、金属に関する知識も必要だ

2021年10月16日

事故や災害情報の企業内展開のありかた--事故防止への効果を考えよ

大手の石油や化学企業が入手する事故情報はものすごくある。災害防止協議会、業界団体などから情報も入ってくる
労働災害にせよ、爆発火災漏洩など化学災害などの情報もかなりの情報が安全部門には入ってくるはずだ
企業は集めた情報を関係部署にそのまま流したらそれで効果があると思ったら大間違いだ
たれ流しの情報は何も役立たない
情報というモノは、ほしいと思った情報が手に入ればものすごく大切にするのだが、生半可に流れてきた生の情報はそれほど大切にはしない

安全環境部門が陥る最大のミスは、こんなに多くの事故情報を提供しているのに事故を未然に防げ無いと感ずることだ
事故情報は相手がどう捉えるかだ 情報を流しても相手が必要と感じなければ、情報は簡単に捨てられる
企業の安全担当部門が考えなければいけないのは、相手が本当に欲しい情報を提供しているかだ
欲しい情報を提供できなければ、企業の個別部門の安全スキルは上がらない

例えば、工場が定修に入る時期であれば、製造部門へは過去に起こった、プラントを停止していく際に起こった事故や労災情報を提供すればいい
定修に入ってしばらくしたら、定修工事で起こる災害事例。スタ-ト準備に入ったら、その時期に起こりやす災害事例やヒヤリ情報の提供
これから、だんだん気温が下がってくれば、寒波や凍結トラブル事例などタイミング良く欲しがる情報を流していくことだ

安全スタッフが常に考えて欲しいのは、現場がどんな情報を求めているのかを常にウオッチすることだ
情報というのは、必要とされない情報は簡単に捨てられる
常に、相手がどんな情報を求めているのかをウオッチして欲しい

イラスト出典 イラストボックス無料イラスト

 

2021年10月14日

地震後の影響を甘く見るな--電気トラブル

2021年10月7日、首都圏で震度5の地震が発生した。電車は停まり大変な目に遭った方も多いはずだ
千葉県の製油所で火災も起きた
幸い化学工場関連では大きなトラブルは他には起きなかった
だからといって、安心して欲しくない
2021/10/10東京でJRの変電所で火災が起きた。山手線始め、首都圏の電車が又全面的に止まった
まだ、地震との関連性は言及されていないが、地震後過去に化学企業でも電気トラブルを起こしている
地震が起これば地上も、地下も揺れる
電気設備というのは、地上や地下で色々な所でケーブルや電気設備が接続されている
接続部に無理な力がかかると、電気設備も事故を起こす
電気というのは隙間ができると、そこに放電するという現象が起こる。微細な火花ができ、その周辺に影響を与える
放っておくと火災や、爆発を起こす
地震が起これば、電気機器のケーブルや装置で引っ張りや、縮み現象が起こる
電気設備に負担がかかる
過去にも地震後、絶縁性を要求される碍子などが破損して化学工場でも発火事故が起きている
化学工場、製油所などは、電気設備についてもケーブルのたわみ損傷を見て欲しい
赤外線カメラを用いて、電気機器の温度異常の有無も見て欲しい
地震後しばらくして色々な所でトラブルが起こることもある
地震後のフォローを甘く見ないで欲しい

 

2021年10月12日

世の中に100%確立された技術は無い--化学工場への新技術の導入

技術というのは絶えず進歩している。この前の考え方が今は正しいとは限らない
会社員であれば入社したときに教育を受けるが、その後時間が経てばその当時教えられたことが今は正しいとは限らない
技術はどんどん進歩する、常に新しい考えをウオッチして受け入れることが技術者に求められている
とはいえ、明確な根拠も無しに今までの技術を否定するのもリスクがある
技術者に求められるのは、既存の技術は大切にしながら、新しい技術の裏ずけをとりながらスピーデーに受け入れるかだ
とはいえ技術の裏付けを取るのはたやすいことはない
石橋をたたきながら進歩するのも良い
そうは言っても、競争社会だ。少しでも前に出たいというのが営利企業だ
そのバランスを取るのは難しい
危険な物質を扱う化学産業では、根拠が明確ではないのに考え方を進めるのは難しい
とはいえ、社会どんどん進化している。追いつく必要性もある
新しい技術についていく必要がある
最近は化学工場でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入も進んできている
時間も限られている。覚えることもどんどん増えている
危険物を扱う産業の人達は、常に悩んでいるのだろう

イラスト出典 イラストAC無料

 

2021年10月10日

地震は忘れたころにやってくる

2011/3/21に起きた東北大震災からもう10年を越えた。私の住んでいる千葉県でも地震の時はかなり揺れた
大きな地震には、10年経っても余震がある言うが,2021/2/14に東北地方で震度6強の地震があったのを思い出した
この翌日のことだ。散歩をしていて、コンビナートの方を何げなく見ていたらいつもフレアーの火は小さいのにかなりの炎が出ていた
もう春の定修が始まったのかと思っていた。ところが、ネットでニュースを見ていたらコンビナート企業の化学プラントが停止しているという
大手の総合化学企業だ 地震で電力供給が落ちたり、安全のため停めたらしい
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00588242
この時は、東北地方の火力発電所は13基停まったという
仙台の製油所も配管などから油漏れがあったという
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210215006/20210215006.html
大きな被害は無いもののかなりの影響が出ていたという
そんなことを考えていた矢先、昨日の夜に再び大きな地震が首都圏で起きた 震源は千葉で震度5だという
千葉県の自宅の1階にいたがかなりの揺れだった。震度4だと報道していた
家の中を見回してみると、書籍棚の扉が半開きになっていた。書架の中のものもいくつか倒れていた
掛け時計も、外れかけている物が1台あった。ヒモで落ちないようにしてあったので落下は逃れた
棚類などは全て固定してあるのでなんともなかった
電気は大丈夫だったが、都市ガスは止まってしまった。風呂の追い炊きはできなくなった
外に出てガスメーターの、感震装置をリセットして事なきを得た

東北大震災からもう10年も経つ
大自然から見れば10年というのはホンの一瞬なんだろう

2021年10月08日

詰め込み教育が成功するとは限らない-効果的な教育を常に考えよ

教育に携わる人材は、色々教えようとする。教えるという意識があることはいいことなのだが,教育を受ける相手側の事情があることも意識して欲しい
教育をする先生は沢山教えたいと思うのは当然だ。ところが、生徒の視点でみれば、あまり色々言われても理解できないこともある
つまり、相手の受け入れる能力をきちんと先生は考えて講義をしなければいけないのだ
ところが、現実の世界では先生が一方的に自分のペースで合議を進めることが多い
結果として、先生は満足しても、生徒は消化不良で何も伝えてないという教育実態もある
教育というのは、単位時間当たり生徒が吸収できる量には限界があるということを常に考えておく必要がある
短時間に色々なことを教えたいという講師側の気持ちはわかるが、やはり詰め込みは無理だと理解して欲しい
パワーポイントなどを使って講義をするとすれば、一枚のパワポイントの中には理解できる情報量に絞り込んでおかないと無理が起こる
例えば、一枚のパワーポイントの中に数千字の情報を書き込んで説明しても、相手には的確に情報はつながらない
パワーポイントではなくワードになってしまっているからだ
一枚のパワーポイントに数十文字のエッセンスを書き言葉を添えるなら思いは伝わる
タイトルも大切だ。タイトルを見て、何を伝えたいかがわかる表題になっているかも常に検証して欲しい
単位時間当たり、相手に伝えられる情報は限界がある
常に、提供する情報の量をコントロールして欲しい
オーバーフローすれば、大切な情報とて伝わらない
教育をする人は常に、相手の目線に立ち必要な情報をコントロールしながら提供して欲しい
情報の過負荷を考えて欲しい

イラスト出典 文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249678.htm

 

 

2021年10月06日

HAZOPとは

HAZOPとは化学プラントなどで使われる安全性評価手法だ
http://hazop.jp/hazop_basic.html
化学プラントは、流量や温度、圧力、液面などが一定の条件で保たれていると安定的に生産ができる
つまり、変化がないことが安全安定運転につながる
ところが何かのトラブルが起こると。流量や温度が変化する。これを、ズレという。
ズレが起こると、化学プラントは乱れ始める。人がうまく対応すれば、もとの状態に戻せるが、うまくいかないケースがある
それが、事故だ。圧力が上がれば装置が破裂する。反応器などの温度が上がれば、反応暴走につながる
ならば、流量や温度などのズレが起これば、どんなまずいことが起こるのかを事前に検証すれば事故のリスクは減る
そこで考え出されたのが、ズレによる影響を解析し、対策を立てるとい安全性評価システムだ
ズレを起点に、化学プラントの異常へ向かうプロセスを考えるのだ
なぜズレが起こるのかを考える基点は、2つだ機械が壊れるか、人がミスをするかだ
計器が壊れたり、調節弁やポンプなどの故障も事故の引き金になる。人のミスは判断ミスや、操作ミスだ
色々なミスはあっても、問題は異常に気づくかだ。ミスの種類は様々だが、事故を未然に防げるかは、異常にまず人が気づくかだ
異常に気づけば人はかなりの確率で対応する。
とはいえ、警報などがなければ人は異常に気づくのは遅れる。警報の有無はHAZOPでの重要キーワードだ
次に異常に気づいても人で対処できるかだ。時間が無ければ、対応はできない
警報はあっても、異常の対処時間を考えることだ。時間的に余裕がなければ、機械的に処理が必要となる
自動インターロックで安全に停止するなどだ
ずれが、どんな危険な状況を引き起こすか見抜くのは難しい。かなり多くの事故事例を知らないと深掘りできない
計器に警報があるから安全と勘違いすることもある
警報は、聞こえないこともある。警報は、うっかりリセットすると再警報が出なければ重大事故につながることもある
重要警報なら、対応が取られるまで繰り返し警報が出るか、インターロックで安全に処理できることが必要だ
HAZOPは、そこそこ実施できればいいわけではない
深掘りできる能力が求められている

 

2021年10月04日

HAZOPなどで低温脆化というハザードを意識しているか--マイナス20℃以下では鉄は脆くなる

温度が髙いや低いは[HAZARD]として意識しているのだろうかいつも気になるところだ
自分のプラントに使われている金属は何度まで使えるか考えたことはあるのだろうか
たいていのプラントで使われているのは、鉄だ
この鉄は、高温なら何度まで使えるか知っているかだ
普通の鉄なら、350°くらいだ。ちょっと温度が髙いボイラーでも、550℃ぐらいと言うところだ
800℃や1000℃では鉄は使えない
ならば鉄は低温まで使えるかというと、低温には実に弱い
マイナス20℃がいいとこだ
ちょっとした寒波が来れば鉄はかなり「リスク」がある
皆さん方の所で、低温脆化をどれだけリスク評価しているのだろうか
-20℃の流体があれば、逆流などでのリスクを検証して欲しい
フラッシュして温度降下があるプロセスを持っていれば、低温脆化をHAZOPで考える必要がある
低温脆化の事故事例は少ないが甘く見ないで欲しい
こんな事故事例もある。参考にして欲しい
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00271.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00272.pdf

 

 

2021年10月02日

水抜きという作業を甘く見ていませんか

水抜きという作業がある。油の中に水が入るとまずいから、水を除去する作業だ
水という言葉を聞くとそれほど危険ではないと誰もが感じる。そこが、事故につながる。水抜きという作業には重大な危険が潜んでいる
石油精製や化学プラントなどでは、油の中にわずかに水が含有していることがある
販売する製品は基本的に油なので、水は不純物だ。
したがって、水を除去する作業が発生する。水は油より、密度が大きいので、相分離した場合下にたまる性質がある
タンクやドラムにたまれば、ドレン弁を開けて水を抜き出すことになる
バルブを開けて、水が出ている間は問題は無い。ところが、水が抜けて油が出始めたときが問題だ。
引火点が低い、油であれば流速が速ければ静電気で着火することもある
過去に、水抜き作業で静電気着火事故は起きている
衣服に火が回り死亡事故もある
水抜き中弁が半開で凍結して、LPGという液化石油ガスが大量に漏れて近くの高速道路を走って来るまで着火した事故事例もある
フランスの事故だが死者が45人も出ている
http://www.shippai.org/fkd/hf/HC0300001.pdf
http://tank-accident.blogspot.com/2015/01/lpg19661.html
水抜き作業というのは、本来液を抜くときは密閉系で処理できると良い
空気と油が触れさえしなければ発火事故にはならないからだ
ところが、多くの事故はドレン弁を開けて大気に液を放出する水抜き作業を行っているから事故が起こる
水抜き作業は、空気に触れない行う方法を考えて欲しい

 

2021年09月30日

運転中のインターロック検査で起こる事故

高圧ガスの認定工場では,長期連続運転が可能になる 2年、4年などプラントを停めずに長期連続運転ができる
その反面、安全装置の信頼性を確保するためインターロック装置などを運転中に検査することが求められる
運転中にインターロック機能を検査すると言うことはかなりの危険が伴う
運転を停止させないためには、一時的にインターロックを解除したり,装置が停止しないように処置をしなければいけないからだ
運転中にインターロックを検査しているときに誤ったことをすれば当然、事故につながる
2005年に運転中のインターロック検査中に爆発事故が起きている。人為的なミスがいくつか重なって起きている事故だが案外この事故は知られていない
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2005-335.pdf
その後、2018年9月26日に大阪の製油所で加熱炉のインターロック検査中に爆発事故が起きている
インターロック検査の準備段階での操作ミスだ。加熱炉の燃料弁が突然閉まり加熱炉が突然失火したのだ
あわてて、燃料弁を開けたため、炉内の未燃焼ガスが高温部に触れ着火爆発したようだ。原因は、弁を動かす計装計器の元弁だ
燃料配管系にある大気放出弁を開けようと、計装空気の元弁を閉めたところ、その元弁は燃料弁と共用されていた為突然燃料弁が閉まったのだ
消防関係の機関が発行している書籍に事故の詳細がある,燃料系のフロー図もあり 参考になるはずだ
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/magazine/191/kikenbutsu_jikokanren_info.pdf
この事故では、教訓となる事項も多い  高圧ガスの認定検査に関わる方は教訓にして欲しい
検査実施前に,リスクアセスをしたのはいいことだが、安易に定められた手順書以外の余計なことをしたことをしたのが事故につながっている
事故報告書には書かれていないが、インターロックを検査するために失火時の安全を確保する機能も一時的に解除していたのかもしれない
たとえば、失火時は再パージが行われない限り、燃料を自動的に遮断する緊急遮断弁は開にならない安全機能機能をインターロックに持たせているはずだ
このような機能も解除されいたため機能し無かったのかもしれない
もし、失火で燃料を自動遮断するインターロックがなければ、設置して欲しい
インターロックの運転中検査時に,トラブルが起きたときどう対処するかも教育訓練しておいて欲しい
2件の事故は幸い死傷者が出ていないが,爆発事故だから死傷者が出る可能性は十分あった
運転中の検査はものすごいリスクがあると思って欲しい
インターロックの運転中検査時に,トラブルが起きたときどう対処するかも繰り返し教育訓練しておいて欲しい

 

2021年09月28日

化学産業の重大事故に関係する根幹的問題点-行政の関わり方、事故調査のあり方、国際規格との整合性etc

何年か前に読んだ文献だが、再び読み直してみた
化学工場で重大事故が起こると、技術伝承不足、リスク評価不足、設備の老朽化、などが原因だというコメントは多い
そうは言っても、安全に対する行政の関わり方、事故調査のあり方、国際規格との整合性、公設消防と企業の自衛消防隊との権限のあり方など
もっと根っこの部分にまだまだ問題があるのではないかと言う2015年の文献だ
言われてみればそうだなと思うところが沢山ある
行政の縦割り問題だ。 総務省消防庁 厚生労働省 経済産業省などの役所が安全に複雑に関係している
事故が起これば、その上警察も加わってくる 膨大な情報が集まるのに公開されることはない
事故からの教訓が全く公開されず、もう百年も続いている
法規制のあり方についても問題点を指摘している
日本の法律は、仕様規定だ。細かく要求しすぎるから、企業の自由度がない。それでも、国は自主保安だと行っている。
自由度がなくがんじがらめなのにだ
外国では、性能規定だ。つまり、性能さえ満たせば企業が自由に方策が取れる
例えば日本のタンクの延焼防止の法規定は、何メーター離しなさいという規制のしかたをする
一方、外国では、性能規定だから、タンクは延焼しないように設計しなさいという条文になる。つまり、方策は企業が考えなさいなのだ
壁をつくって延焼しないようにしてもよい。距離は関係ないのだからだ
最近の重大事故は、行政が調査報告書を出すことは全く無い。行政が事故調査報告書を出さなくなってもう40年くらいになるのだろう
最近は、第三者委員会という名前のもとで企業が報告書を出すようになってしまった。当然裁判では不利になることは書かないから、見えない部分も多い
などなど、かなり考えさせられることが書いてある文献だ
興味がある方は読んでみると良い。ここに公開されている
http://www.cbims.net/doc/pdf/%20filename=2hasegawa.pdf

2021年09月26日

研究や化学実験における事故防止--リスクマネージメント

製油所や化学工場で起こる事故については、十分ではないが事故情報はそこそこ,行政機関からも公開されている
ところが大学や企業の実験室や研究所で起こる事故は公開されているかというと、ほとんど情報は無い
研究系でどんな事故が起こっているかは、整理した形で情報はほとんど公開されていないと言っても良い
こんな書籍がある。「化学実験における事故例と安全」という本だ。発行元はオーム社だ。2013年に発刊されている
https://www.ohmsha.co.jp/book/9784274213755/
研究系の安全管理に携わる人なら一度は読んで見てもいい書籍だ。
もう10年近く経つので、絶版になるまえに手に入れて欲しい
この本を読んでみてある程度の研究系リスクのキーワードはわかるかも知れない

もう一つ実験での事故の本を紹介しておく
丸善出版が発行している「有機化学実験の事故・危険 事例に学ぶ身の守り方」という本だ 2004年に発行されている
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b292881.html
研究系の事故で見られるのは、量が少ないから安全と安全と研究者が思いこむだ。
量が少ないと言うことが、大きな事故のキーワードだ
もう一つ、実験で勝手に方法を変えて起こる事故も多い。実験方法というのは厳密なものなのに安易にやり方を変えて事故になる
文献など資料探索の甘さも事故につながっている
SDSを鵜呑みにした事故事例もある。SDSに全ての情報が書かれているわけでは無い。濃度や温度条件が変われば化学物質の性質は変わる
実験条件と大きく異なるのに安易にSDSの情報を当てはめて起こる事故も多い
取り扱う薬品が多ければ、廃液処理時の混触事故も起こりやすい
研究系のリスクマネージメントも大切だ

 

 

2021年09月24日

計装計器の時間遅れを教えているか--計器検出値の伝達遅れ

製油所や化学工場などでは沢山の計器が使われている。入社後20年ほど計装設備の設計、保全、技術教育に関わったことがある
運転員に計装設備について教育するのだろうが、計器指示には時間遅れがあることは教えているのだろうかと気になった
流量計、圧力計、液面計などの計器類はプロセスが変化すればすぐに計器指示は変化する。検出にほとんど時間遅れはないからだ
ところが、温度計は時間遅れが生じる
温度計には、熱電対や測温抵抗体が検出器として使われる。ところが、検出器をそのまま装置には取り付けるのではなく保護管という保護カバーを取り付ける
保護カバーを取り付けることにより、熱が伝達してくるのに時間遅れが生じてしまうのだ
例えば加熱炉のような温度が比較的高い設備をスタートしていくときは、温度計の時間遅れを考慮して昇温操作していく必要がある
1960年代石油化学工業が始まったとき加熱炉の事故が多発した
昇温スピードをマニュアルで定量的に規定していなかったこともあり、運転員により個人差が出て、急激に温度を上げて事故も多かった
温度計に時間遅れがあるのに、まだ温度が上がらないと焦って燃料を多く入れすぎ加熱管が破損する事故も多かった
温度計の時間遅れを理解していなかったからだ
炉の最高運転温度も明確に規定していなかったりして事故も多かった
まだまだこの当時は、警報の数も少なく運転員が温度上昇に気づかなければやはり加熱によるチューブ破断も多かった

もう一つ分析計も時間遅れを生じる計器だ
配管などに直接設置される分析計なら、時間遅れはないが、分析計検出器とサンプリングポイントが離れている場合だ
分析計にサンプルが流れてくるまで、時間がかかることを考慮しておく必要がある
特に制御に使う計器ならなおさらだ
例えば反応器内の濃度を測る分析計なら注意が必要だ
指示がなかなか変化しないといって、原料や触媒を多く入れすぎて反応器が爆発した事例もある
計器に指示が正確に出てくるまで、時間を要する計器の種類があることをしっかりと教育してほしい
計装という技術もキーワードは伝承して欲しい

 

イラスと出典 長野計器ホームページより

 

2021年09月22日

安全講演に思う-気づき

私が化学企業に入社したのは今から半世紀ほど前だ
1970年代前半だ。製造部門ではなく、私は技術系部門で仕事を始めた
入社時教育は受けたが、その後今のように労働安全など体系的な教育は全く受けていなかった気がする
安全週間などでは、イベントはあるが単発的な教育だったようだ
当時は、たぶん高所作業という意味すらはっきり知らなかった気がする
企業が労働安全について体系的な教育をしていたかと聞かれれば、そうとは思えない 他に教えることに割く時間が多いからだ
今の状況も同じという感がする 昔とそれほど変わりはない
企業は自分でなんとかなると今でも思い続けているからだろうが、企業内の人材や資源で、できることは限界がある
労働安全にせよ保安防災にせよプロの知識を借りた方が良い
労働安全、保安防災に関しても、社員にインパクトを与えるような話ができる安全スタッフは企業内にはそれほどいない気がする
企業にはスタッフとして粛々と業務を処理する人はいるかも知れないが、講演できる人はそれほどいないはずだ

在職中、企業内に各工場の運転員を教育する技術研修センターという組織を作ったとき、企業内にいかに先生の資質を持った人がいないかと感じ取った
知識は持っているのだが、わかり易く人に伝える能力は備えていないのだ
教えるとは相手の目線に立って話す必要がある。新入社員なら、新人目線。ベテランなら、ベテラン目線で話す必要があるがそれが難しい
結果として、技術研修センター勤務時代は生徒を育てるより先生を育てるのに時間を多く割いた気がする

ただ単に安全講話をしても社員の意識レベルが上がるわけではない
色々な所で講演して感ずるのは、何かに気づいてくれたかだ。今までの価値観とは違う考え方が芽生えてくれたかだ
話をする目的は、聴講者に何かを感じてもらうことなのだ。聴講者が何かを感じて、前に進む原動力の一部を提供したいのだ
安全講演が少しでも役に立つことを願いたい

いらすと出典 いらすとやフリーいらすと

 

2021年09月20日

廃液処理の爆発事故に思う-廃液処理を甘く見るな- 変更管理の大切さ

2007/5/23日四日市のコンビナート工場の廃液処理で起きた事故だ
危険物保安技術協会の機関誌 Safty&tomorrow NO135 2011.1月号に詳細情報が載っているので興味のある方は文献検索して欲しい
負傷者も出ており工場長と現場責任者が、業務上過失傷害罪で起訴されている。起訴の理由は、作業手順書を適切に変更しなかったからだ
2人は農薬原料のうちの一つ「5フッ化プロパノール」の精製過程で、必要だった冷却作業をマニュアルに盛り込まなかったため、化合物が爆発
しやすい状態になっており、津地検は過失があると判断した。
農薬の原料であるフッ素化合物を製造する工場の廃液回収作業で爆発は起きている
貯めておいた廃液を、バッチ方式で処理して有効な薬液を濃縮して回収する作業だ
前年度である2006年度と2007年度では発生元の廃液の抜き出し工程が変化していて、大幅に不純物組成が変わっていた
廃液の抜き出し場所を変えたのだから、本来は変更管理の考えを適用し安全評価すべきだったが、実施していなかった
廃液は酸性なので、処理する際にKOHというアルカリ物質を入れて中和作業をしていた
廃液に含まれる不純物はアルカリ物質と混触反応を起こし、温度が上昇すると分解して大量のガスを発生するカリウム塩物質を形成する性質があった
今回、不純物の量が多いところから廃液を抜き出していたため、アルカリと不純物により激しい分解反応が起こった
反応熱に加え、酸とアルカリを中和しているのだから中和熱も発生し、分解反応はますます加速した
本来なら中和で温度上昇が起こるのだから、冷却が必要なのに冷却もしていなかった
容器内では、中和熱、混合熱が発生し温度は80度を超えていた。カリウム塩の分解温度を超えており、徐々に温度は上昇した
105度を超える時点から分解が激しくなった。分解はガスの発生が伴うので圧力が上昇し破裂した
爆発は4階建ての建物で、壁や屋根の一部が爆風で飛んだ。すさまじい爆風はコンビナートの壁を越えて、近くの信用金庫や理髪店のガラスまで割ったという

この事故の教訓は何かだ。一つは、廃液処理を甘く見るなと言うことだ。廃液には、混触反応を起こす物質があるということだ
もう一つは、廃液の成分や濃度は変わることがあると言うことだ。何かが変われば、変更管理の視点で見直すことが必要だ

廃液処理を甘く見ないで欲しい。自分たちの職場で、廃液処理時に適切に変更管理が行われているか見直して欲しい
新しい薬液を使い始めていないか。濃度は変化していないか。製造プロセスなどが変わっていないかだ

 

2021年09月17日

リスクマネージメント講座を立ち上げて5年

先日、今まで調査してきた化学プラントなどの火災爆発事故や破裂漏洩災害の数を調べてみたら6000件を越えていた。
事故や災害について、関心を持ち始めたのは、今から20年前のことだ。
下関にある工場で、爆発事故を経験して「なぜ事故が起きるのか」を考え始めてからだ。
そのころから、こつこつと書籍、事故調査報告書、公開されているインターネット情報を参考に「なぜ事故が起こるのか」について研究をしてきた。今から、11年前の2010年に調査してきた資料をデーターベース化する作業を始めてみたところ、同じような事故が、繰り返し起こっていることがはっきりわかってきた。つまり、事故や災害にはたねも仕掛けもあるのだ
それらを並べてみると、共通の要因がある。すなわち事故からの教訓と呼ばれるものだ。事故から学ぶことは、事故の事実ではない。
事故の原因や再発防止策から抽出した教訓だという考えに基づき、教訓を集めることに力点をおいて今まで作業を進めてきた。
つまり、事故を防ぐための普遍的な知恵が教訓だ。
今から、8年前にやっと「なぜ事故が起こるのか」の考え方を集大成し、岡山県の倉敷で2日間講座を立ち上げた。山陽人材育成という組織だ
2016年には、第二段階として「リスクマネージメントという」切り口で教訓を整理した2日間講座を立ち上げ、京葉コンビナート地区で講義を始めることにした。同年は、要望を受け岡山県の倉敷地区でも講義を行うことにした。
現在は、企業から私が依頼を受け工場に出向いて直接講義する形態も増えている。1日に短縮したコースも対応可能だ
HAZOPで見落としやすい危険源を教えるときもある
リスクマネージメントは、事故を未然に防ぐ有効な手段であるが。手法だけを学んでも効果的に化学プラントに存在する危険源を見つける能力が身に付くわけではない。つまり、設計段階でのリスクの見落としや評価の失敗事例。安全性評価の段階でリスク評価で抜け易いこと。
運転管理で管理すべきリスクは何か、過去どんなリスクマネージメントで