事故や災害に思う
電気火災について書いてみたい。企業は製造設備そのものには、リスクアセスメントを実施するが付帯設備などには関心が薄い。倉庫がその一例だ。7月27日のブログでも過酸化物という物質を保管した倉庫での火災事故を取り上げた。
今回取り上げるのは電気室だ。工場のエネルギー源である重要設備だが、その管理は電気を取り扱う専門家に任されているため、専門家以外のチェックの目が入りにくい。怖いのは、電気火災だ。
電気火災の原因は、短絡だ。早い話がショートして火花が出るからそれが着火源になる。近くに燃えるものがあれば火が付いてしまう。電線類はプラスチックで出来ているものもあるから火が付く。
接触不良が原因という電気火災もある。電線などは、ネジ止めしているものもあるのでネジが長期間にわたって増し締めをしていなければ緩んでくる。接触不良が起こると、発熱して周りの燃える物に着火する。
もう一つは電気設備の経年劣化だ。時間が経てば、電気設備も劣化する。20年から30年経過した設備では、絶縁物の劣化でショートして火が付くケースが多い。最近は、企業でも電気設備の劣化が進み老朽劣化による発火事故も多い。
2017年1月5日に、大分県の製鉄所で電気火災が起きた。2009年製の電気盤が火災となった事例だ。使用を開始して8年目だから経年劣化の事故では無かった。電気盤内にアクリル製の感電防止板があったことからそれが燃えたのがきっかけだ。電気盤内にあるリレーで火花が発生したという。そのリレーを制御する装置が故障して何度もリレーの接点が作動したことにより放電火花が発生したという。
最初は、一つの電気盤の火災だったが初期消火がうまく出来ず次から次へと隣の電気盤へ延焼して、さらに周りの電線にも火が付き電気室全体が火災となった事故だ。損害は300億円と報告されている。製鉄所は8月初旬まで運転できなかったという大きな事故だ。
事故の報告書が企業のホームページから出ているので、興味がある方は見て見ると良い。
http://www.nssmc.com/common/secure/news/20170518_100.pdf
報告書にはアクリル板に火が付いたとある。アクリル板は電気の業界で、感電防止によく使われている。アクリルは一般的に可燃性だ。しかし、インターネットで調べてみると難燃性のものもあるらしい。自分の会社にある電気の盤に使われているのは一般的な燃えるアクリルか難燃性のアクリルか一度メーカーに聞いてみると良い。
電気室火災は、初期消火に失敗すれば消すのは難しい。水をかけられないからだ。
電気室のリスクアセスも電気の専門家だけに任せず企業全体で取り組んで欲しい。電気設備は今使えているから、設備更新は必要ないと考える企業経営者が多いが、30年以上使えば事故の確率は非常に高くなる。老朽化対策は長期計画でしっかりやっておかないと後で高いつけを払うことになる。