変更管理について

化学プラントでは常に変化が起こる。原料、運転条件、運転方法も変わることがある。顧客の要望に応じて生産能力や生産品目も変わるはずである。物質や設備の変化だけではなく、人や組織も変わっていく。
この変更や変化が時として危険源になることがある。事故を防ぐにはこの「変更」や「変化」という潜在する危険源を管理することも必要だ。
 変更管理という考え方はどのようにして出てきたのだろうか。
こんな歴史的背景がある。
 1980年代頃に、インドのボパールで有毒ガス大量漏洩事故が起こった。死者は一万人を越えると言われ、ガスを吸った人達の健康被害は数十万人に及ぶという大惨事だ。
 猛毒の物質を取り扱う化学企業であるのに、安全管理がおろそかだったことにより、化学物質が大量に漏洩し多くの人を死傷させた大事故だ。このような大事故を起こさない為には、化学企業は体系的な安全管理の仕組みが必要だと人々は考えるようになってきた。
 この流れを受け、アメリカでは1992年にOSHA:Occupational Safety and Health Administrationという組織(米国労働安全衛生庁)によってPSMというプロセス安全管理の仕組みが法制化された。
 PSMとはProcess Safety Managementの略号だ。
 PSMにはプロセス安全情報、プロセスハザード分析、作業手順やトレーニングなど管理すべき項目が14項目規定されている。このPSMの管理項目の中に「変更管理」という項目がある。
 つまり、1992年にアメリカで生み出された概念だ。
その後、日本でも化学企業で注目されるようになってきたのが2000年代頃からだったと思う。
 2005年の高圧ガス保安法一部改定(認定制度)で高圧ガス設備の認定要件の中に「保安管理システム」の構築と継続的改善を求める文言が記載されている。保安管理システムの中に、「変更管理」という項目が新たに取り入れられている。
 日本の法規制面でも取り組みが始まったのがこの時代からだ。
その後、2009年には化学工学会の安全部会で変更管理をテーマにした検討チームが作られ論議を開始している。参加メンバーからの文献なども公開されているので変更管理についてもっと知りたい方は参考にして欲しい。
http://www.jniosh.go.jp/publication/pdf/vol7_2/Vol07No2-05a.pdf
安全工学会にも変更管理について考えるに参考となる文献があるので以下を見て欲しい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/45/4/45_250/_pdf/-char/ja

2019年05月18日