HAZOPを使いこなすことの難しさ
HAZOPという安全性評価手法を知っているだろうか。「Hazard and Operability Study」の略だ
化学プラントなどの安全性評価に使われる手法だ。「ずれ」が事故を引き起こすという概念だ
化学プラントでは、温度が上昇すれば事故になることもある。つまり正常温度からずれて、温度が高くなれば事故につながることもある
圧力もしかりだ。圧力が上がれば、装置が圧力に耐えきれず破壊することもある
ずれを起点に、ずれによりどんな最悪の事態が起こり、現状設置されている安全設備で事故が防げるのか、防げ無いのかを検討するのだ
現状の設備で不足するなら、追加の安全対策まで考えるのがHAZOPだ。
HAZOPを実施すれば、隠れている危険源をかなりの確率で見つけ出し対策することはできる
しかし、HAZOPも万能ではない。HAZOPを実施する人間の感性や経験度合いにより深掘りできるかできないのかに差が出る
まず、最初の登竜門が、ずれの想定だ。「Revers」という逆のずれは落としやすい。逆流現象などは見落とすことがある
「Others」というその他のずれも想定上の漏れが起こる。その他というのは、実に事象として沢山ある。抜けなく想定するには、かなりの事故経験が必要だ
HAZOPの実施は、労安法などの法的要求条件では無いが、実質的に実施が要求される分野も増えている
2005年3月には高圧ガス認定制度の法改正を行っている。この法改正で、危険源の特定が要求されるようになり各企業でHAZOPの導入が進んだ
事故の未然防止をする仕組みを企業に要求してきていると言う状況がある。HAZOPをやっていなければ、実質的に高圧ガスの認定が取れなくしている
とはいえ、HAZOPの手法に関する書籍は日本では発行されていない
アメリカでは、英文の書籍は出ているが日本では、書籍すらない 企業の中で実質的に行われているはずだとの考え方なのだろう
国はじわりじわりとHAZOPを要求してきている 高圧ガス保安協会などでも、講演会でHAZOPの説明はしているようだが、書籍は出していない
おかしなものである。要求するなら、本ぐらい出してほしいものである。
HAZOPとはなんぞやと公的な書籍もないのに、HAZOPを要求しているのだ
HAZOPという概念は今や、化学産業だけの物では無い。医療などの分野にも、その概念は使われている
HAZOPを文書化するのは難しいのだろうか。いまだに、化学工業の世界でも、医療の分野でもHAZOPの指南書は出てこない
概念はわかっていても、実質的な評価のしかたをうまく事例を挙げて紹介するのはむずかしいのかもしれない
HAZOPは慣れれば、誰でもできる。しかし、大事なところでは深掘りできなければ、潜在危険性見落とす
時間をかけても肝心な所で、危険源を見落とせば何もやらなかったのと同じだ。HAZOPは難しい
とはいえ、ずれという概念は使いこなすことはリスク回避の世界では不可欠だ