廃液処理の爆発事故に思う-廃液処理を甘く見るな- 変更管理の大切さ
2007/5/23日四日市のコンビナート工場の廃液処理で起きた事故だ
危険物保安技術協会の機関誌 Safty&tomorrow NO135 2011.1月号に詳細情報が載っているので興味のある方は文献検索して欲しい
負傷者も出ており工場長と現場責任者が、業務上過失傷害罪で起訴されている。起訴の理由は、作業手順書を適切に変更しなかったからだ
2人は農薬原料のうちの一つ「5フッ化プロパノール」の精製過程で、必要だった冷却作業をマニュアルに盛り込まなかったため、化合物が爆発
しやすい状態になっており、津地検は過失があると判断した。
農薬の原料であるフッ素化合物を製造する工場の廃液回収作業で爆発は起きている
貯めておいた廃液を、バッチ方式で処理して有効な薬液を濃縮して回収する作業だ
前年度である2006年度と2007年度では発生元の廃液の抜き出し工程が変化していて、大幅に不純物組成が変わっていた
廃液の抜き出し場所を変えたのだから、本来は変更管理の考えを適用し安全評価すべきだったが、実施していなかった
廃液は酸性なので、処理する際にKOHというアルカリ物質を入れて中和作業をしていた
廃液に含まれる不純物はアルカリ物質と混触反応を起こし、温度が上昇すると分解して大量のガスを発生するカリウム塩物質を形成する性質があった
今回、不純物の量が多いところから廃液を抜き出していたため、アルカリと不純物により激しい分解反応が起こった
反応熱に加え、酸とアルカリを中和しているのだから中和熱も発生し、分解反応はますます加速した
本来なら中和で温度上昇が起こるのだから、冷却が必要なのに冷却もしていなかった
容器内では、中和熱、混合熱が発生し温度は80度を超えていた。カリウム塩の分解温度を超えており、徐々に温度は上昇した
105度を超える時点から分解が激しくなった。分解はガスの発生が伴うので圧力が上昇し破裂した
爆発は4階建ての建物で、壁や屋根の一部が爆風で飛んだ。すさまじい爆風はコンビナートの壁を越えて、近くの信用金庫や理髪店のガラスまで割ったという
この事故の教訓は何かだ。一つは、廃液処理を甘く見るなと言うことだ。廃液には、混触反応を起こす物質があるということだ
もう一つは、廃液の成分や濃度は変わることがあると言うことだ。何かが変われば、変更管理の視点で見直すことが必要だ
廃液処理を甘く見ないで欲しい。自分たちの職場で、廃液処理時に適切に変更管理が行われているか見直して欲しい
新しい薬液を使い始めていないか。濃度は変化していないか。製造プロセスなどが変わっていないかだ