日本の化学産業約100年-草創期 大正時代から昭和へ 1920年代
前回は、大正時代に始まった石炭化学とカーバイト化学について書いてみた
大正8年(1919年)にアメリカでは石油化学工業製品の製造に成功している。石油化学と言う時代がアメリカで始まり始めたのだ
世界最初の石油化学製品は、製油所ガス中のプロピレンから合成した「イソプロピルアルコール」だったという
日本で石油化学コンビナートができたのは1958年だから、実に約40年も前に外国では石油を原料とし始めたのだ
アメリカとは国力や技術力で圧倒的な差があったのがわかる事実だ
ヨーロッパではドイツのBASF社のボッシュ氏が尿素合成に成功している。尿素も肥料に使われる化学物質だ
明治から大正時代にかけてソーダ工業も発展してきた。食塩を原料として、塩素や苛性ソーダをつくる化学産業だ
ガス化した化学物質はボンベなどに充填することから、当時は高圧ガスによる事故が多発した
日本では、現在の「高圧ガス保安法」の原点となる法律「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」が1922年に制定されている
制定のきっかけは、製氷業者からアンモニアガスが漏えいし大きな社会問題になった為と言われる
1923年にはアンモニアからメタノールという化学の基礎物質がドイツのBASF社で合成された
1923年という年は、関東大震災を経験した年だ。大学の研究室で多くの火災が起こったという
原因は試薬瓶の倒壊による混触反応だ。この時代から、「混触反応」についての研究が進み始めたという
日本でも独自技術によるアンモニア合成の成功し始めたのがこの時代でもある
合成染料も重要な化学物質だ
第1次世界大戦でヨーロッパからの化学合成による染料輸入が途絶えた
これを受け、日本では「染料医薬品製造奨励法」ができ、染料製造が国策として進んだ
1927年(昭和2年)金融恐慌起こる。2年後は世界恐慌も発生した。日本経済は第1次世界大戦時の好況から一転して不況となる
さらに関東大震災後、「銀行が潰れたら、お金が引き出せなくなる」などの取り付け騒ぎが起こった
1929年という年には、アメリカで株式が大暴落した。 その後、世の中は世界恐慌へと続いていく
化学産業も大変だった時だ
時代は1930年代へと移っていく