多目的プラントで起こる事故-混触による反応暴走--熱分析の大切さ
一つの反応器で色々な製品をつくることがある。多目的プラントとかマルチパーパスプラントとか呼ばれる
少量多品種の化学物質を生産することができる利点がある。しかし、気おつけないければいけないのが残渣だ
色々な化学物質を造るのだから、製品が変わる。都度都度反応器や配管などを洗浄する必要がある
化学物質には混触という反応がある
物質の組み合わせによっては激しい化学反応が起きる。このような現象を混触と呼ぶ
物質によっては組み合わせがまずいと、大爆発を起こすことがある
つまり、多目的プラントなどでは前に製造した製品の残渣などが残っていれば、このような混触反応を起こすのだ
昔大阪のある化学工場でこの多目的プラントを使っていて製品を造り始めて数バッチ目で大爆発を起こしたことがある
原因は前バッチで製造した物質が、わずかにフランジのすき間にに残っていて激しい混触反応を起こしたのだ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200079.html
新しい製品をつくるときの、残渣など異物による混触反応を十分検証していなかった事故だ
もう一つの問題点は、反応器内の温度計不足だ
反応器の上の方には温度計が無く、激しい自己分解反応が始まったのを早期に検知できなかったことだ
過去の事故事例の中に温度計の設置個数が少なく異常を早期に検知できなかったという事例は多い
反応器は、しつこいくらいに温度計を設置して欲しい
特に、冷却コイルの無い部分には温度計を十分に設置することだ
過去の多くの事故事例も冷却コイルの無い部分で温度が上がっていたのに、温度計は上の方には付いていなかったというケースは多い
多目的プラントに使う反応器なら、温度計はしつこいくらいに付けて欲しい
この事故の教訓の中に、反応暴走に対するアセスメントが不十分というコメントがある
反応暴走の可能性のある物質は、DSCやARCなどの熱分析計で事前チョックできる
少量のサンプルをこの分析計の中に入れ、少しずつ暖めていき熱変化を見るのだ
どのくらいの温度から、急激な温度変化が現れるのか。反応に伴う発熱量はいくらかなどが分析できる
化学物質というのは文献データーだけではわからないことも多い
実際ににサンプルを使って反応熱や反応開始温度などの安全性分析をすることも大切だ