事故や災害に思う

 正月休み中に化学工場で事故がなければいいなと思っていたが、残念ながら2016年1月3日に埼玉県にある化学工場で事故が起きている。タンクの壁についた物質を、硝酸を水に溶かし洗浄していたところタンクが破裂したという。直径1m、高さ2mの小型タンクだ。タンクは金属製で、中の様子を見るガラス製ののぞき窓が破裂で破損してそこからガスが吹きだしたという。有毒ガスだという。2人の尊い命が、失われた。


 事故の原因は、現時点ではわからないかこのような事故を教訓としてとらえるときのキーワードは何かを過去の事故事例から紹介したい。
1つ目のキーワードは、突沸である。タンクの洗浄温度は、80度だったが、事故時はそれよりも高温だったという。水は100度が沸点だから、もし100度を超えた状態であれば、大量の水蒸気が発生する。水蒸気は、密閉したタンク内では逃げ場がないので、タンクの圧力はどんどん上がるはずだ。もし、タンクに安全弁が無ければ、タンクの圧力は逃げ場が無くなり、一番強度の弱い部分が破壊する。つまり、ガラス製ののぞき窓だったのかもしれない。

 第2のキーワードは、冬場寒い時期だということだ。どうしても、温度が低いと反応が遅くなる。そうすると、人は誰でも温度を早めに上げた方がいいと思うのである。しかし、温度計というものは応答遅れがある。実際の温度は上がっても、すぐに指示値は正しい値を示さないのだ。少し遅れて温度が上がってくる。つまり、温度計の指示値は、実際の温度より低めの温度を示すのだ。

 結果として、実際の温度はかなり高いのに、温度計指示値はまだ低いと思い、温度を上げすぎて事故になることが昔から繰り返されている。たとえば、冬場にバッチ反応器の温度を上げていて爆発事故などが起こる事例だ。

 温度計は、指示が正しく出るまでには時間がかかると言うことを教育で教えておくこと、マニュアルに必ず昇温速度を明記しておくことだ。急な温度上昇が、事故につながる事例は多いからだ。

2016年01月08日