乾燥設備や乾燥工程で起こる事故--乾燥工程にはリスクが存在する
製造工程には色々なリスクがある。反応工程だとしっかりリスクアセスメントはしてくれるが、乾燥工程はそれほど危険視されない
だから、乾燥工程で火災や爆発事故がかなりの頻度で起こる。事故の原因は、大きく分けて4つだ
一つ目は「乾燥させる物質」そのものに原因がある。もともと、熱を加えると燃えやすかったり、爆発しやすい性質を持っている場合だ
ゴムの乾燥作業などでよく火災が起こる。元々ゴムは燃えやすい。
着火点未満で、乾燥させていても装置内にゴムの破片などが残ってしまうと事故になる
残留したゴムは、長期間過熱されると炭化して着火点が下がるからだ。結果として、劣化したゴムの破片が自然発火して火災になる事例は多い
効率を考えると誰でも加熱温度は高くしたい。しかし温度を高くすれば燃えやすくなる 温度設定に慎重さを欠くと事故になる
事故防止策は、装置内の残留物である堆積物の清掃を定期的に行うことだ。燃える物が無ければ、燃焼の三要素が成り立たないからだ
熱で反応しやすい物質を乾燥していて起きた爆発事故を紹介する。きっかけは、乾燥機にある動く回転軸のグランドパッキンを強くしめたことだ
パッキンドを強く締め付ければ、動きにくくなるから当然、そこで摩擦熱が発生する この摩擦熱で乾燥していた物質が発火した事故だ
危険物第5類の自己分解性物質を乾燥していたときに起きた事故だ
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000123.html
感光材による事故事例の報告書があるのでこれも紹介しておく https://www.toyogosei.co.jp/news/2008/07/2.html
二つ目は、「粉塵」だ。可燃性固体などを乾燥している時に起こる事故だ。固体が砕けると粉塵が発生する 粉塵濃度が高まると爆発が起こる
製薬会社で錠剤を製造するときなどで起こっているパターンだ 錠剤の破片が粉塵となって起こる事故だ 着火源は静電気が多い
三つ目は、「熱源」が原因だ。LPガスや、天然ガスを燃やして加熱する装置は多い。火が着いていても、突然火が消えることがある
火が消えている状態で、ガスはそのまま流れ続け、しばらくして何かの火種で再点火し爆発する事故も多い
それと、温度調節器が壊れたことで過熱され事故が起こるケースも多い。たいていは、設備の老朽化を放置していたからだ
温度計の設置位置が悪く正確に温度が計測されず、過熱気味になっていて事故が起こることもある
温度計の位置の設計ミスだ 電熱器過熱では、送風が停まると一部が異常過熱になり事故にもなる
四つ目は、乾燥させて「取り除きたい物質」が原因だ 加熱乾燥の目的は、付着している溶媒などを乾燥させるケースが多い
たとえば、塗装した部品などを乾燥すれば、シンナーガスなどが発生する
シンナーは可燃性で、一定濃度になれば爆発性ガスとなる。熱源に、電気ヒーターなどを使っていれば、故障で火花などが出れば火災や爆発になる
シンナー、ベンゼン、トルエン、アルコールなどの有機溶剤が使われた部品を乾燥することは多い。溶媒として使われることが多いからだ
製薬会社では、錠剤に含まれているアルコールなどを乾燥させているときの火災事例が多い
乾燥設備の電気設備は、防爆で設計することも考えて欲しい 換気と濃度管理も事故防止のキーワードだ
乾燥という名前のつく設備を甘く見ないで欲しい