なぜ海外では大規模事故が起こるのか--日本と外国の違い

なぜ海外では大規模事故が起こっているのに
日本では一度に2桁を越えるような死亡事故や、数千人規模の被害者が出る大きな事故はなぜ起きないのかと聞かれることがある
国や文化が違うのだから、当然色々な要素がある
一つは、法規制だ 欧米と日本の法規制の考え方は違う
法というのは、当然個人や企業を規制する 法で規制を強化すれば、企業の活動を縛ることになる
法を守るには、お金もかかる。厳しくすればするほど、企業経営にも影響する
結果として、法は必要最低限で定めることになる
では、法律を守っていれば安全かというと、必要最低限だからそうはいかない
法規制の方法は、大きく分けて2つある
一つは、必要最低限の要求事項は定めるが、その要求を満たす手法については企業自ら考え実施させ安全を確保させる方法だ
企業が主体となる安全だ。政府や行政はあまり細かなことを法で定めない。法を守る手段は企業側にあるので、自主保安となる
この手法は、欧米系の国々で採用される。その代わり、ひとたび事故を起こせばペナルテイは大きい
もう一つは、日本の法令のように、事細かに定める手法だ。事故が起きるたびに規制は強化されていく。企業にあまり手段の選択肢はない
欧米系の法体系は、企業にとって自由度はある。しかし、企業側での安全対策は当然バラツキが出る
結果として、自主保安がうまくいかないと、大きな事故が起こることになる
もう一つ、行政の管理密度だ。管理密度が低ければ、事故の確率は増えてくる
中国などで、地方の化学工場で大規模事故が起こるのは、地方の行政当局の管理が甘いからだとも言われている
次に、事故が起こる要素として技術力も大いに関係する
1980年代インドなどで過去大きな事故が起きているのは、急速な経済成長に技術を使いこなす能力が追いついていなかったからと言われる
雇用形態も関係している。日本のような終身雇用制に近いものであれば、退職まで一貫して技術・技能の伝承もできる
しかし。海外のように転職が当たり前の企業では、技術レベルを保つのにかなりの努力が必要となる
企業の安全文化も関係する。海外では安全優先ではなく、生産優先で大きな事故を起こしている企業もある
現場の安全管理体制も関係する。海外では、トップダウン型だ。言われたことを担当者が行えば良い方式だ。指示通りにやらなければ罰せられる
日本では、トップダウンとボトムアップの組み合わせという手法を長年とってきた
改善提案、ヒヤリハット活動など日本独自の現場の安全活動もある。結果としてボトムアップが行われる
とはいえ日本も、少しずつ欧米化してきている
お金も時間も限られている。日本の良さを維持しながら、どう安全を構築していくかが求められている

 

2022年09月03日