硫酸タンクと事故 その-2
前回のブログで硫酸タンクでの爆発事故を紹介した
いつもは濃硫酸を入れていたが、あるとき希硫酸を入れたので水素が発生した事故だ
希硫酸で水素が発生し、火気工事中が着火源となり起こった水素爆発事故だ
水などで希釈された濃度の低い希硫酸は、このように水素を発生する
しかし、濃硫酸ならば,一般的に水素は発生しないといわれている
濃硫酸の場合、含まれる水が少ないため電離した水素イオンが発生しにくいからだ
ただし、それは純粋な濃硫酸の話である いわゆる,新品の状態の時である
購入してまだ使用していない,新品の話なら濃硫酸は水素は発生しないと考えて良い
しかし,プロセスで使用した濃硫酸を循環して利用することもあるはずだ
水分が混入してくれば、濃硫酸でも、いつの間にか薄められて希硫酸になる
希硫酸になっていることに気づかなければ、水素で事故が起こることがある
濃硫酸内では鉄の溶解速度は十分に低いので. 濃硫酸タンクに鉄が広く用いられている
タンクに濃硫酸送る配管にも、鉄が使われる
鉄を使うことには、問題は無いのだが配管流速はしっかり管理する必要がある
流速と鉄の溶け出しは、相関関係があるからだ
流速が早すぎると、腐食速度が増し、鉄が急速に溶け出していく
こんな文献がある https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/41/11/41_11_777/_pdf
こんな事故が,1975/8/27千葉県市原で起こっている
濃硫酸タンクから液を送るポンプの循環ラインが頻繁に腐食していた
配管が細すぎて、流速が早く鉄が溶けて腐食していたのだ
ポンプから、タンクへ戻す配管だから腐食して溶けた鉄は、時間をかけてタンク内の濃硫酸に溶け込んでいた
溶け込んだ鉄は、H2SO4+Fe→FeSO4+H2のように水素が発生していた
あるとき、腐食した配管を交換しようと火気工事を始めたところ発生していた水素で爆発し作業員が死亡した
事故後、調べた所濃硫酸の中の鉄は1wt%入っていたという
色も透明では無く、灰白色に変色していたという 濃硫酸の鉄分や色は定期的にチェックして欲しい
火気工事前には必ずガス検知をしっかりして欲しい