設計や保全部門を分社化するとどんな問題が起こるか

石油精製や化学企業などでは設計を担当する部署と、保全や工事を担当する部署がある
設計部門は、装置の設計をしたり改造をする部門だ。設計や エンジニアリング部門とも呼ばれることがある
保全は修理をしたり維持管理する部署だ。新設や定修時の工事管理も行うこともある。保全やメンテナンス部門と呼ばれることもある
工事管理の機能は、エンジニアニアリング部門に入れるかメンテナンス部門に入れるかは企業によって違う
企業内にこの設計や保全部門を保有する企業もあるが、これら部門を分社化しているケースもある
過去の歴史を見ると、エンジニアリング部門は分社化させ独立した事例も多い
三井系の企業で、昔東洋高圧工業(現三井化学)という企業があった。アンモニアの製造技術を保有し世界の企業に技術輸出をしていた
1960年代、そのノウハウを持ったエンジニアリングの技術者達を分社化させ独立させた事例がある
東洋エンジニアリングというエンジニアリング会社だ。エンジニアリングの分社化で成功した事例だ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B4%8B%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0
保全や工事管理部門もその後、三井東圧機工や東圧プラント建設と企業として分社化している
企業内の合理化の延長のなかでいわゆる工務系(設計・保全・工事など)とよばれる人員削減のため、従来の社内保有技術を外部
に活用して稼げという分社化だ。企業内の一部機能を分社化するので機能分社とも言う
不景気や合理化という波はその後もやってくる
1980,1990年代に多くの企業で、工務系(設計・保全・工事など)などの分社化が行われた
分社後企業のねらい通り人員削減は行われて行ったものの人に技術有りだから、人が減るにつれ技術力や組織力は落ちていった
石油精製や化学企業などの親会社は、分社化した企業に仕事を頼む形で設計・保全・工事が行われていた
設計・保全・工事というのは、分割出来るところもあるが、分割するとそれなりの不具合も出てくる
例えば設計思想が、きちんと保全部門に伝わっていなければしっかりしたメンテナンスは出来ない
2000年代石油精製企業で配管の内部腐食事故が起きた 被害額は60~70億円と言われる
http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200043.html
この事故を契機にして2000年代、石油精製や化学企業は分社化していたエンジニアリングやメンテナンス部門を本体側に戻していった
機能を分割するというのは簡単だが、すぐには弊害が出てこない。時間が経ってから問題が出てくるのが常だ
2010年代に石油精製や化学企業などの大きな事故が立て続けに起こった
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_15/15rijityou2.pdf
生産技術を細切れにし、安全管理の責任をあいまいにしたことも背景にあるのだろう

 

2023年05月09日