HAZOPでは2つ以上の安全対策の組み合わせを常に考えて欲しい
HAZOPはずれを想定して事故を未然に防ぐ安全性評価手法だ
基本的な手法は実に簡単だ。化学工場であれば、まず、製造プロセスで起こるずれを想定する
例えば、流量を考えてみよう。通常運転時から、流量が変化することはずれとなる
流れが減ったとか、増えたは「ずれ」となる
ある加熱炉の事故事例をHAZOP的に考えてみよう
鉄さびでポンプストレーナーが詰まり、蒸留塔への原料が減りそれが引き金で起こった事故だ
https://www.khk.or.jp/Portals/0/resources/activities/incident_investigation/hpg_incident/pdf/2014-217.pdf
定修の期間が、いつもより長くなったことで配管内で錆がいつもの定修より増えていた
スタートアップ時には、この錆を取るため循環運転をしていた
しかし、循環運転の時間は、いつもより長めにすることはしなかった
このため、蒸留塔へ原料を供給し始めたものの運転は安定せず、本来塔頂側に行かない留分が行ってしまった
そこで、2番目のずれが発生した。リフラックスのポンプが過負荷で停止したのだ
その結果、リフラックスドラムが満液となった。3番目はリフラックスドラムの液面のずれだ
液が満液となったことで、リフラックスドラムから溢れた液は、フレアーラインにつながる気液分離ドラムへ流れ込んだ
4番目にずれは、気液分離ドラムの液面上昇だ。警報は鳴ったが、1回限りの警報で運転員は聞き漏らした
本来なら、気液分離ドラムから発生するガスは配管で加熱炉に送り込まれ、燃料用ガスとして用いられていた
ところが、本来行かないはずの燃料用ガス配管に液が入り込み、加熱炉へ流れ込んでしまった
結果として、炉床で異常燃焼が発生した事故である
HAZOP的にはどのような問題点があったか考えてみると良い
まず警報があれば大丈夫と考えるところが落とし穴だ。この事例のように1回限りの警報では聞き漏らすこともあるからだ
大事なポイントは、警報を見落としたときの対策だ。何分おきかで、繰り返し警報を鳴らすのも手ではある
しかし、異常に気づかなかったときはやはりインターロックで自動的に遮断して本質的な安全を確保するしかない
HAZOPで考えて欲しいのは、警報などの一つだけの安全対策では破られたら終わりだと言うことだ
2つ以上の安全対策の組み合わせを常に考えて欲しい