低温というリスクを見落とすな
温度が髙いや低いは[HAZARD]として意識しているのだろうかいつも気になるところだ
自分のプラントに使われている金属は何度まで使えるか考えたことはあるのだろうか
たいていのプラントで使われているのは、鉄だ。この鉄は、高温なら何度まで使えるか知っているかだ
普通の鉄なら、350°くらいだ。ちょっと温度が髙いボイラーでも、550℃ぐらいと言うところだ
800℃や1000℃では鉄は使えない。ならば鉄は低温まで使えるかというと、低温には実に弱い
マイナス20℃がいいとこだ。ちょっとした寒波が来れば鉄はかなり「リスク」がある
低温脆化という言葉を知っているだろうか.金属は温度が下がると、脆くなり割れたりすることがある現象だ
皆さん方の所で、低温脆化をどれだけリスク評価しているのだろうか
低温脆化の事故事例は少ないが甘く見ないで欲しい。こんな事故事例もある。参考にして欲しい
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00271.pdf
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00272.pdf
ネットを見ていたら中国での化学工場事故が載っていた
http://tank-accident.blogspot.com/2019/08/15.html
酸素や窒素、アルゴンなどのガスを製造する極低温を取り扱う工場だ
液化温度はマイナス150位の温度になるので,非常に低い温度(極低温という)で運転することになる
非常に温度が低いため、設備は熱の移動を防ぐ為2重構造で設計されている
いわゆる魔法瓶のような構造だ。極低温のガスや液体が通る設備の外側には,断熱材が張り詰められている
その外側には,断熱材をカバーするような金属製の外筒が付けられている
内側の装置は、極低温で運転するのだから、低い温度でも耐えられる金属材料を選定する
しかし、外側の金属製の外筒は大気と接する温度なので,極低温に耐える金属は使用することは無い
つまり、価格の安い鉄が使われる。鉄は、常温では十分な強度を持っているが,マイナスの温度になると極端に金属強度が落ちる
今回の,中国の事故は内側の装置からマイナス150位の極低温のガスが漏れ出していた
結果として,極低温のガスが外側の,低温には弱い金属部まで達したようである
外側のカバーは,極低温のガスに触れたことによりもろくなり破裂してしまったようだ
HAZOPでも,温度の低いガスの近隣の設備はこの低温脆化のリスクを徹底的につぶしておくことが必要だ
極低温ガスが逆流すれば,鉄配管はひとたまりもない。熱交換器でも,急激な気化が起これば蒸発により急激に温度が下がることもある
零度以下の低温側への温度のずれについて常に関心を持って欲しい