圧力差を甘く見ていないか 吹抜け事故

化学プラントの製造装置であれば運転圧力は気になるところだ
圧力が高い高圧機器であればかなり気をつかうところだ
化学プラントの機器は配管でつながっている
圧力に応じて耐圧性能に値する金属材料が選定される
化学プラントは順調に運転されていれば問題は無いが、当然運転トラブルは起きる
運転トラブルの中で怖いのは吹抜けと呼ばれる現象だ
高圧の機器から低圧の機器へ液やガスが吹き抜ける現象だ
低圧側の耐圧性能を越える流体が流れ込めば、低圧機器は簡単に破壊する
一般的に、機器は安全率を見て約3倍の圧力がかかっても破裂しないように設計はされている
しかし、設計圧力の3倍を超えるような圧力が加われば機器は破壊される
過去の事故事例を見ると、4倍以上の圧力がかかれば破壊されている
これからわかることは、HAZOPなどで安全性を評価するときにも圧力差があるプロセスにはこの吹抜けをしっかり調査する必要がある
つまり、プロセスの中で、上流または下流側の運転圧力がおよそ3倍を超えるようなプロセスではこの吹抜けをしっかりとチェックすることだ
吹抜けで機器の破損が起こっている事例は沢山ある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/30/1/30_57/_pdf/-char/ja
https://www.pecj.or.jp/japanese/safer/case_list/pdf/accident_00149_s.pdf
この事故は,155MPaの高圧ドラムから0.9MPaで運転する低圧ドラムに吹抜けドラムが破裂した事故だ
死者こそ出なかったが,損害額は当時の価値で119億円だ
原因は吹抜けに気づかなかったことだ。液面計は沢山あったが,アラームを見落とした
インターロックはあったが、液面計の誤作動も多く配線を外していたという
つまりインターロックは作動しないまま長期間放置されていたという重大な過失があった
さらに、低圧ドラムの安全弁も火災の輻射熱しか想定しておらず,吹抜け対応で設計されていなかったと言う
設計段階のミスと安全装置の運用管理で失敗した事故だ
リスクマネージメントでもこの圧力差を見落とさないで欲しい

圧力のエネルギーを甘く見ないで欲しい

 

2023年10月25日